JP2011055124A - 無線通信端末および通信方式選択方法 - Google Patents

無線通信端末および通信方式選択方法 Download PDF

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Abstract

【課題】バッテリ残存時間を長く保つとともに、場面によりアプリケーションに要求されるスループットを満たすことで、バッテリ利用効率の高い通信方式の選択を可能にする無線通信端末および通信方式選択方法を提供する。
【解決手段】複数の通信方式を選択可能な無線通信端末100であって、使用するアプリケーションの種別を取得するアプリケーション情報取得部170と、取得したアプリケーション種別により通信方式の選択基準を変えて、通信方式の切り替え時間に所定時間を加えた時間について評価量を算出する評価量算出部166と、算出された評価量を比較して、いずれかの通信方式を選択する方式選択部167とを備える。これにより、アプリケーションのリアルタイム性の要求に応じて、複数ある方式の中からバッテリ利用効率の高い通信方式の選択・切り替えが可能となる。
【選択図】図2

Description

本発明は、適した通信方式を選択する無線通信端末および通信方式選択方法に関する。
従来、複数の通信方式を選択可能にするマルチモード端末では、各通信方式のRSSIやCINR等の受信品質、スループット、消費電力、およびこれらの複合指標等を参照して通信方式の切り替えを決定するものが知られている(たとえば特許文献1〜3参照)。
特許文献1記載の複合携帯電話装置は、バッテリ残量が事前に設定した閾値を下回る場合は、消費電力が最も低い通信方式に切り替えるように制御を行っている。特許文献2記載の無線通信端末は、まず受信品質(RSSIやCINR等)を測定し、測定値からチャネル変動値を算出する。そして、算出した変動値に対応する変動レベルに対して、切り替えを行うか否かを判定するための受信品質に関する閾値を事前に設定しておき、測定値との比較を行う。この操作により頻繁な通信方式の切り替えを回避している。なお、閾値は各無線システムで独立に設定されている。特許文献3記載の無線端末装置は通信方式の切り替え時間とアプリケーションが許容する遅延量とを比較することで、通信方式の切り替えを行うか否かを判定している。
特許第4085748号公報 特開2006−262178号公報 特開2005−26878号公報
上記のような従来の端末は、バッテリ残量が閾値を下回る場合は消費電力の最も低い通信方式を選択するが、閾値を上回る場合は電波状況により通信方式を選択する。このため、バッテリ残存時間を長く保ちつつユーザが要求するスループットを満たすという要請には応えられない。すなわち、複数ある通信方式の中で、電波状況が最も良好な通信方式と最も消費電力の少ない通信方式とは必ずしも一致せず、消費電力が最も低い通信方式が要求されたスループットを満足しているとは限らない。そのため、閾値を高めに設定した場合は、消費電力は最も低いが、極端にスループットが低くユーザの要求を満たすことができない通信方式を選択する可能性がある。一方、低めに設定した場合はスループットが必要以上に高く消費電力が多い通信方式を選択し、バッテリ残存時間が短くなる可能性が高い。また、通信方式の切り替えが頻繁に起こる場合があり、同処理による消費電力やスループットの劣化が問題となる。
また、通信方式を変更する際の消費電力およびスループットの劣化量は、使用中の通信方式と切替先の通信方式の組み合わせにより異なると考えられる。しかしながら、従来の端末は、このような組合せを考慮して切替先の選択を行うことができない。そのため、頻繁な通信方式の切り替えは回避できるが、切り替えが必要な場合、切替先によっては消費電力やスループットの劣化が大きくなる。また、通信品質の変動値の算出や適応的な閾値設定や更新のための処理を追加する必要がある。
特許文献3記載の第4の処理手順には、消費電力を基準とした通信方式の切り替え手法の記載がある。リアルタイム性の高いアプリケーションの場合は、使用中の通信方式のスループットが同アプリケーションを実行する際に必要とされる伝送速度に満たない場合でも、切り替え時間が許容時間よりも長いために通信方式の切り替えを行わず、通信品質が大きく劣化する可能性がある。一方、リアルタイム性が低いアプリケーションでは、許容時間を設定していないために従来同様に通信方式の切り替えのオーバーヘッドが増大する。また、所定のデータ量をダウンロードする場合、消費電力が最小の通信方式を選択しても通信時間が長くなり結果として、多くの消費電力量がかかる可能性がある。このように、バッテリ利用効率の定義は使用するアプリケーションにより異なると考えられる。
近年の無線通信端末では、通信伝送速度の高速化や搭載アプリケーションの多様化に伴い、有限のバッテリを有効に活用することが重要になってきている。また、複数の通信方式を搭載するマルチモード端末においては、受信環境が変化するような場合に頻繁に通信方式の切り替えが起こり、切り替え自体にかかる消費電力やスループットロスが大きくなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、バッテリ残存時間を長く保つとともに、場面によりアプリケーションに要求されるスループットを満たすことで、バッテリ利用効率の高い通信方式の選択を可能にする無線通信端末および通信方式選択方法を提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の無線通信端末は、複数の通信方式を選択可能な無線通信端末であって、使用するアプリケーションの種別を取得するアプリケーション情報取得部と、前記取得したアプリケーション種別により通信方式の選択基準を変えて、通信方式の切り替え時間に所定時間を加えた時間について評価量を算出する評価量算出部と、前記算出された評価量を比較して、いずれかの通信方式を選択する方式選択部とを備えることを特徴としている。
これにより、アプリケーションのリアルタイム性の要求に応じて、複数ある方式の中からバッテリ利用効率の高い通信方式の選択・切り替えが可能となる。すなわち、場面に応じて無線通信端末のバッテリ残存時間を長く保つとともにアプリケーションに必要なスループットを満たすように通信方式を選択できる。また、方式切り替え回数を抑制することにより、切り替えによるオーバーヘッドを低減すると同時に異種ネットワークを有するインフラ側の負荷を軽減する効果も期待できる。
(2)また、本発明の無線通信端末は、前記評価量算出部が、前記使用するアプリケーションがリアルタイム性の要求の低いものである場合にはビット当たりの消費電力量を前記通信方式の選択基準とし、前記使用するアプリケーションがリアルタイム性の要求の高いものである場合には、消費電力値を前記通信方式の選択基準として、前記評価量を算出することを特徴としている。
これにより、リアルタイム性の要求の低いアプリケーションに対しては、所定のサイズのデータを少ない消費電力量で送受信する方式を選択でき、リアルタイム性の要求が高いアプリケーションでは、瞬時的な電力が小さく、要求されるスループットを満たす方式を選択できる。
(3)また、本発明の無線通信端末は、前記評価量算出部が、通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間を前記所定時間として評価量を算出することを特徴としている。
これにより、バッテリ利用効率を高くするのに最適な時間を対象に、通信方式の切り替えの有利不利を判断できる。また、通信方式の切り替え時のオーバーヘッドを加味して通信方式を選択することにより、冗長な切り替えを回避でき、バッテリ利用効率を改善することができる。
(4)また、本発明の無線通信端末は、前記評価量算出部が、前記通信方式の選択基準に応じて決まるペナルティ関数を用いて、前記評価量としてペナルティ値を算出することを特徴としている。このようにペナルティ関数を用いることで、画一的かつ簡易に通信方式の選択を判断できる。
(5)また、本発明の無線通信端末は、前記ペナルティ関数は、前記通信方式の選択基準を示すパラメータと乗算項の積である第1項と、前記第1項に加えられる加算項としての第2項とを有し、前記第1項は、通信方式の切り替え前後の定常状態に課せられるペナルティ値を表し、前記第2項は、通信方式の切り替え自体に課せられるペナルティ値を表すことを特徴としている。これにより、単に通信方式間の比較ではなく、通信方式の切り替えに伴う消費電力やスループットロス等も参照して通信方式を選択できる。
(6)また、本発明の無線通信端末は、前記ペナルティ関数は、前記使用するアプリケーションがリアルタイム性の要求の低いものである場合には、通信方式の切り替え時間および切り替えにかかる消費電力に比例し、通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間および通信方式切り替え後のスループット値に反比例する関数を前記加算項として有することを特徴としている。
これにより、リアルタイム性の要求の低いアプリケーションに対しては、切り替え時のオーバーヘッドにより阻害されるデータ送受信量が小さく、切り替え後のデータ送受信量が大きく、消費電力が小さい通信方式を選ぶことができる。その結果、大きいサイズのデータを小さい消費電力量で送受信できる。
(7)また、本発明の無線通信端末は、前記ペナルティ関数は、前記使用するアプリケーションがリアルタイム性の要求の高いものである場合には、要求されるスループットに対する実際のスループットの割合を前記乗算項として有し、通信方式の切り替え時間に前記所定時間を加えた時間に対する通信方式の切り替え時間の割合と、通信方式の切り替えにかかる消費電力とに比例する前記加算項を有することを特徴としている。これにより、リアルタイム性の要求が高いアプリケーションでは、切り替え時間が短く、瞬時的な電力が小さく、要求されるスループットを満たす方式を選択できる。
(8)また、本発明の無線通信端末は、通信環境の変動量を取得する変動量推定部と、前記取得された通信環境の変動量に基づき適応的に前記通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間を決定する所定時間決定部とを更に備えることを特徴としている。これにより、切り替え前後の通信方式の優劣が変化するまでの妥当な基準時間を決定することができる。
(9)また、本発明の通信方式選択方法は、無線通信端末において最適な通信方式を選択する通信方式選択方法であって、使用するアプリケーションの種別を取得するステップと、前記取得したアプリケーション種別により通信方式の選択基準を変えて、通信方式の切り替え時間に所定時間を加えた時間について評価量を算出するステップと、前記算出された評価量を比較して、いずれかの通信方式を選択するステップとを含むことを特徴としている。これにより、アプリケーションのリアルタイム性の要求に応じて、複数ある方式の中からバッテリ利用効率の高い通信方式の選択・切り替えが可能となる。
本発明によれば、アプリケーションのリアルタイム性の要求に応じて、複数ある方式の中からバッテリ利用効率の高い通信方式の選択および切り替えを可能にする。
本発明の無線通信端末の構成を示すブロック図である。 通信方式制御部の構成を示すブロック図である。 本発明の無線通信端末による通信方式選択の動作を示すフローチャートである。 通信方式の選択があったときの時間と通信方式の対応関係を模式的に示す図である。 方式維持と方式切り替えの場合についての不足ビット量を示す図である。 低リアルタイム性のアプリケーションについてのシミュレーション結果を示すグラフである。
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。以下では、ソフトウェア無線技術を用いて複数の通信方式を選択可能にする例として無線通信端末を説明するが、本発明は各通信方式に対応するハードウェアを具備する無線通信端末にも適用可能である。
(無線通信端末の構成)
図1は、無線通信端末100の構成を示すブロック図である。無線通信端末100は、たとえば携帯電話機である。図1に示すように、無線通信端末100は、送受信アンテナ110a、110b、RF部120、AD/DA変換部130、ベースバンド信号処理部140、通信環境取得部150、通信方式制御部160、アプリケーション情報取得部170、バッテリ残量取得部180およびソフトウェア記憶部190を備えている。
送受信アンテナ110a、110bは、それぞれ通信方式に対応して変調された高周波を送受信する。RF部120は、受信した高周波をベースバンド信号に変換するとともに、AD/DA変換部130から受けたベースバンド信号を高周波に変換する。AD/DA変換部130は、ベースバンド信号をアナログ信号からデジタル信号に、またはデジタル信号からアナログ信号に変換する。
ベースバンド信号処理部140は、現在選択されている無線通信方式に応じてベースバンド信号を処理する。通信環境取得部150は、CINR等の通信環境情報を取得し、通信方式制御部160に送出する。これにより、通信環境の評価を加味した通信方式の選択が可能になる。
通信方式制御部160は、通信方式の選択や変更を制御する。すなわち、通信環境取得部150で取得する各通信方式の通信環境パラメータ(たとえばCINR値)および、アプリケーション情報取得部170で取得したアプリケーション種別および要求されるスループットに基づいて、通信方式の切り替え時間に所定時間を加えた時間について課せられるペナルティ値(評価量)を算出する。そして、ペナルティ値に基づいて通信方式を選択する。
これにより、アプリケーションのリアルタイム性の要求に応じて、複数ある方式の中からバッテリ利用効率の高い通信方式の選択・切り替えが可能となる。また、方式切り替え回数を抑制することにより、同時に異種ネットワークを有するインフラ側の負荷を軽減する効果も期待できる。
また、通信方式制御部160は、選択された通信方式に対応するソフトウェアのベースバンド信号処理部140へのロードおよびRF部120の制御を行う。なお、通信方式制御部160の詳細については後述する。
アプリケーション情報取得部170は、アプリケーション種別の情報を取得し、通信方式制御部160に送出する。バッテリ残量取得部180は、バッテリ残量の情報を取得し、通信方式制御部160へ送出する。ソフトウェア記憶部190は、各通信方式に応じたソフトウェアを記憶する。
図2は、通信方式制御部160の構成を示すブロック図である。図2に示すように、通信方式制御部160は、要求スループット決定部161、切り替え時間記憶部162、変動量推定部163、所定時間決定部164、スループット・消費電力推定部165、評価量算出部166および方式選択部167を備えている。
要求スループット決定部161は、アプリケーション情報取得部170から得たアプリケーション種別とバッテリ残量取得部180から得たバッテリ残量の情報から要求スループット(ユーザが要求する基準のスループット)を決定する。要求スループットは、リアルタイム性の高いアプリケーションが要求するスループットの基準値である。切り替え時間記憶部162は、通信方式iから通信方式jへの切り替え時間tijを記憶する。
変動量推定部163は、通信環境取得部150で得られた通信環境の情報に基づき伝送路の変動量(通信環境の変動量)を推定し、所定時間決定部164に伝送路の変動量の情報を送出する。所定時間決定部164は、伝送路の変動量に基づいて、通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの所定時間Δtを決定する。Δtは、あらかじめ所定時間として決定され、評価量算出部166へ送出される。これにより、切り替え前後の通信方式の優劣が変化するまでの妥当な基準時間を決定することができる。
スループット・消費電力推定部165は、通信環境取得部150で得られた各通信方式の通信環境の情報に基づいて、スループットおよび消費電力を推定する。そして、スループットおよび消費電力の推定値を評価量算出部166に送出する。また、スループットおよび消費電力の推定値を基にビット当たりの消費電力量を算出する。
たとえば、各通信方式は、複数のMCS(Modulation and Coding Scheme)を有しCINRに応じて適応的にレートが制御されていると仮定する。そして、事前に作成された各CINRに対するスループット・消費電力値のテーブルを適宜参照して推定値を得ることができる。以下の表1に各CINRに対するスループット・消費電力値のテーブルの一例を示す。γ,b,P,Eは通信方式iのCINR、スループット、消費電力、ビット当たりの消費電力量を表し、E=P/bである。
Figure 2011055124
スループット・消費電力推定部165は、評価量算出部166から通信方式の指定を受けるとともに、受信品質情報(CINRまたはRSSI)等の通信環境パラメータを取得し、評価量算出部166が指定する通信方式および取得した通信環境パラメータに対応するスループットおよび消費電力を推定する。その際には、通信方式および通信環境パラメータに対してスループットおよび消費電力を対応付けている所定のテーブルを参照し、対応付けられたスループットまたは消費電力を推定する。
評価量算出部166は、アプリケーション情報取得部170で得られるアプリケーション種別の情報に基づいて通信方式の選択基準を選択して、通信方式の切り替え時間に所定時間を加えた時間についてペナルティ値(評価量)を算出する。すなわち、通信方式の選択基準に応じて決まるペナルティ関数を適用してペナルティ値を算出する。たとえば、通信方式の選択基準として、リアルタイム性の要求が低いアプリケーションではビット当たりの消費電力量Eを用い、リアルタイム性の高いアプリケーションでは消費電力Pを用いる。
このように、評価量算出部166は、リアルタイム性の要求の違いにより通信方式の選択基準を変える。なお、算出にあたり切り替え時間tijは、事前に切り替え時間記憶部162に記憶された値を用いる。なお、リアルタイム性の要求の高いアプリケーションとしては、動画ファイルをストリーミングするものが挙げられる。また、リアルタイム性の低いアプリケーションには、動画をダウンロードするものが挙げられる。ペナルティ関数の具体例についてはリアルタイム性の高低別に後述する。
方式選択部167は、評価量算出部166で算出されたペナルティ値を比較して、ペナルティ値が最も小さい通信方式を選択する。このようにして、無線通信端末100は、アプリケーションのリアルタイム性に応じたペナルティ関数を用い、最適な通信方式を選択できる。したがって、消費電力やスループットの劣化が大きくなる切替先は選択されにくい。これにより、バッテリ利用効率の高い通信方式を選択できる。
(無線通信端末の動作)
次に、上記のように構成された無線通信端末100の動作を説明する。図3は、無線通信端末100による通信方式選択の動作を示すフローチャートである。図3の例では、全通信方式数をNとし、各通信方式のCINRを取得後、アプリケーションの種別毎にペナルティ値(評価量)を算出し、N個の通信方式の中からペナルティ値が最も小さくなる通信方式を選択している。まず、通信方式制御部160は、アプリケーション種別を取得する(ステップS1)。そして、検討対象の通信方式をi=1に初期化する(ステップS2)。
通信方式制御部160は、通信方式iのCINRγを取得し(ステップS3)、取得したCINRγをもとに通信方式iのスループットb[bps]および消費電力P[W/bit]を選択する(ステップS4)。そして、使用するアプリケーションのリアルタイム性が低いか否かを判定し(ステップS5)、使用するアプリケーションのリアルタイム性が低いと判定された場合には、第1のペナルティ関数を適用する(ステップS6)。一方、使用するアプリケーションのリアルタイム性が高いと判定された場合には、要求スループットを算出し(ステップS7)、第2のペナルティ関数を適用する(ステップS8)。
次に、i=Nか否か、すなわち通信方式をすべて検討し終えたか否かを判定する(ステップS9)。i=Nでないと判定された場合には、iを1増加させる(ステップS10)。一方、i=Nであると判定された場合には、すべての通信方式のペナルティ値を比較し、ペナルティ値が最小となる通信方式を選択し(ステップS11)、動作を終了する。これにより、アプリケーションのリアルタイム性の要求に応じて、複数ある方式の中からバッテリ利用効率の高い通信方式の選択・切り替えが可能となる。なお、以上の動作はプログラムを用いて行うことができる。
(通信方式の選択基準)
次に、通信方式の選択基準について説明する。無線通信端末100は、バッテリ利用効率の高い通信方式を選択する際にアプリケーション毎に選択基準を切り替えることで常に良好な通信方式を選択する。
リアルタイム性の要求の低いアプリケーションに対しては、たとえば所定のデータサイズを最小の消費電力量で受信できる通信方式が望ましい。そのため、1ビット当たりの消費電力量を選択基準とする。一方、リアルタイム性が高いアプリケーションでは、瞬時的な電力が小さく、要求されるスループットを満たす通信方式が望ましい。そのため、消費電力を選択基準とし、要求されるスループットを満たさない通信方式に対しては、ペナルティ関数を適用する。
また、通信方式の切り替えのオーバーヘッドを加味したペナルティ関数を各選択基準に対して定義し、関数を用いて算出した値をペナルティ値とする。そして、ペナルティ値の小さい通信方式の選択を行うことにより冗長な通信方式の切り替えを回避する。
ペナルティ値は、通信方式の切り替え時間に通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間を加えた時間について算出される。これにより、バッテリ利用効率を高くするのに最適な時間を対象に、通信方式の切り替えの有利不利を判断できる。また、通信方式の切り替え時のオーバーヘッドを加味して通信方式を選択することにより、冗長な切り替えを回避でき、バッテリ利用効率を改善することができる。
ペナルティ関数は、通信方式を維持する場合、切り替える場合のそれぞれについて受信可能なビット数および消費電力量を基に定義される。ペナルティ関数を用いることで、画一的かつ簡易に通信方式の選択を判断できる。
図4は、通信方式の選択があったときの時間と通信方式の対応関係を模式的に示す図である。通信方式の選択の時点において通信方式を維持するか、他の通信方式に切り替えるかを判断する。現在採用している通信方式をi、切り替え先の候補のインデックスをjとし、切り替えにかかる時間をtijとする。また、切り替え完了後の所定時間Δt内では通信方式の優劣は変化しないとし、時間tij+Δt内での選択基準値を予測し、ペナルティ関数を生成する。また、Δtは無線環境の変動量を基に適応的に変化させることが好ましい。
ペナルティ関数はいずれも、通信方式の選択基準を示すパラメータと乗算項の積である第1項と第1項に加えられる加算項としての第2項とを有している。そして、第1項は、通信方式の切り替え前後の定常状態に課せられるペナルティ値を表し、第2項は、通信方式の切り替え自体に課せられるペナルティ値を表している。これにより、単に通信方式間の比較ではなく、通信方式の切り替えに伴う消費電力やスループットロス等も参照して通信方式を選択できる。以下に各アプリケーションのリアルタイム性に対応するペナルティ関数およびその導出過程を説明する。
(低リアルタイム性アプリケーションに対するペナルティ関数)
以下の表2は、ペナルティ値の算出対象時間tij+Δt内で、通信方式を維持する場合および切り替える場合の、受信可能ビット数、消費電力量、およびビット当たりの消費電力量を示している。Rは切り替えの際の消費電力を表し、切り替え前後の通信時の消費電力とは区別している。また、ペナルティ値の算出対象時間内では通信環境はほぼ一定とし、ビットレートおよび消費電力は通信方式の選択時から変化しないと仮定した。
Figure 2011055124
以上より、低リアルタイム性アプリケーションに対するペナルティ関数(第1のペナルティ関数)として次の数式が得られる。
Figure 2011055124
すなわち、通信方式を切り替える場合については、上記のように加算項がペナルティ値として加算される。加算項は、ペナルティ関数において通信方式の選択基準を含む項(上式ではEの項)に加算される項であり、上式ではj≠iのときの第2項である。
第1のペナルティ関数は、通信方式の切り替え時間および切り替えにかかる消費電力に比例し、通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間および通信方式切り替え後のスループット値に反比例する関数を加算項として有している。
これにより、リアルタイム性の要求の低いアプリケーションに対しては、切り替え時のオーバーヘッドにより阻害されるデータ送受信量が小さく、切り替え後のデータ送受信量が大きく、消費電力が小さい通信方式を選ぶことができる。その結果、大きいサイズのデータを小さい消費電力量で送受信できる。
(高リアルタイム性アプリケーションに対するペナルティ関数)
リアルタイム性が高いアプリケーションでは、消費電力値の比較を行う。ただし、要求されるスループットb(req)よりもスループットが低い場合は、切り替え時間に所定時間を加えた時間tij+Δt内で生じる不足ビット数を受信するための消費電力量を算出し、ペナルティ値の算出対象時間での消費電力量に加算する。総計の消費電力量をペナルティ値の算出対象時間tij+Δtで除算することによりペナルティ付き消費電力(ペナルティ値)を得る。ただし、bは以下の数式を満たす。
Figure 2011055124
図5は、方式維持と方式切り替えの場合についての不足ビット量を示す図である。図5に示すように、通信方式の切り替えを行う際は、切り替え時間にビットを受信できないために、不足ビット内に切り替えのオーバーヘッドを含んでいる。そして、上記の手順では要求されるスループットに満たないことに対するペナルティおよび切り替えオーバーヘッドに対するペナルティの両方が反映される。以下の表3は、通信方式を維持したときと切り替えたときについての消費電力量、不足ビット数、不足ビット消費電力量換算、およびペナルティ付き消費電力を示している。
Figure 2011055124
以上より、高リアルタイム性アプリケーションに対するペナルティ関数(第2のペナルティ関数)として次の数式が得られる。
Figure 2011055124
すなわち、通信方式の切り替えの有無にかかわらず、要求されるスループットに満たない通信方式に対してはペナルティとして乗算項が掛かり、切り替えを要する通信方式に対しては切り替えのペナルティとして加算項が加わる。乗算項は、ペナルティ関数において通信方式の選択基準(上式のP)に乗算される項であり、上式ではb(req)/b である。
上記のとおり、第2のペナルティ関数は、要求されるスループットに対する実際のスループットの割合を乗算項として有している。また、通信方式の切り替え時間に、通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間を加えた時間に対する通信方式の切り替え時間の割合と、通信方式の切り替えにかかる消費電力とに比例する加算項を有している。これにより、リアルタイム性の要求が高いアプリケーションでは、切り替え時間が短く、瞬時的な電力が小さく、要求されるスループットを満たす方式を選択できる。
なお、要求スループットb(req)はアプリケーション情報取得部170から得られるアプリケーションが必要なスループットおよびバッテリ残量取得部180から得られるバッテリ残量を基に算出する。例えば、バッテリ残量が十分にある場合は要求されるスループットを必要とされるスループットよりも大きく設定し、バッテリ残量が少ない場合には、要求スループットを必要とされるスループットと同一にする。
図6は、リアルタイム性の要求の低いアプリケーションについてのシミュレーション結果を示すグラフである。図6は、切り替え時間に対する総消費電力量を示している。データ受信時に2つの通信方式を比較する場合を仮想し、ユーザの移動速度を時速3kmとし,移動に伴う距離減衰・シャドウィングによりSINRを変動させた。また、通信方式によらず切り替え時間は全て同一であるとした。
データ量を1GBとし、ペナルティ関数を用いずに通信方式を切り替える場合と、上記の第1のペナルティ関数を用いて通信方式を切り替える場合について全データを受信するまでの総消費電力量を求めた。ペナルティ関数を用いない場合には、選択の基準としてビット当たりの消費電力量を用いた。ペナルティ関数を用いる場合には、所定時間Δt=100ms、500ms、1sそれぞれに対し、シミュレーションを行った。その結果、ペナルティ関数を用いない場合には切り替え時間の増加に応じて消費電力量も増加するのに対し,ペナルティ関数を用いる場合には切り替え時間に伴う消費電力の増加量を大幅に抑えられることが分かった。このように、本発明がバッテリ利用効率の高い通信方式の選択を可能にすることが実証された。
なお、以上の実施形態では、通信方式の選択を判断するための評価量としてペナルティ値を用いているが、評価量は必ずしもペナルティ値に限定されない。たとえば、上記のペナルティ値Qを変形し、定数Cに対して別の評価量C−Qを定義し、増加するほど好ましい通信方式となるような評価量を用いることもできる。このように評価量には、上記のペナルティ値を変形したもの等も含まれる。
100 無線通信端末
110a、110b 送受信アンテナ
120 RF部
130 AD/DA変換部
140 ベースバンド信号処理部
150 通信環境取得部
160 通信方式制御部
161 要求スループット決定部
162 時間記憶部
163 変動量推定部
164 所定時間決定部
165 スループット・消費電力推定部
166 評価量算出部
167 方式選択部
170 アプリケーション情報取得部
180 バッテリ残量取得部
190 ソフトウェア記憶部
i、j 通信方式
ij 切り替え時間
Δt 所定時間
(req) 要求スループット
、b スループット

Claims (9)

  1. 複数の通信方式を選択可能な無線通信端末であって、
    使用するアプリケーションの種別を取得するアプリケーション情報取得部と、
    前記取得したアプリケーション種別により通信方式の選択基準を変えて、通信方式の切り替え時間に所定時間を加えた時間について評価量を算出する評価量算出部と、
    前記算出された評価量を比較して、いずれかの通信方式を選択する方式選択部とを備えることを特徴とする無線通信端末。
  2. 前記評価量算出部は、前記使用するアプリケーションがリアルタイム性の要求の低いものである場合にはビット当たりの消費電力量を前記通信方式の選択基準とし、
    前記使用するアプリケーションがリアルタイム性の要求の高いものである場合には、消費電力値を前記通信方式の選択基準として、前記評価量を算出することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
  3. 前記評価量算出部は、通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間を前記所定時間として評価量を算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線通信端末。
  4. 前記評価量算出部は、前記通信方式の選択基準に応じて決まるペナルティ関数を用いて、前記評価量としてペナルティ値を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線通信端末。
  5. 前記ペナルティ関数は、前記通信方式の選択基準を示すパラメータと乗算項の積である第1項と、
    前記第1項に加えられる加算項としての第2項とを有し、
    前記第1項は、通信方式の切り替え前後の定常状態に課せられるペナルティ値を表し、
    前記第2項は、通信方式の切り替え自体に課せられるペナルティ値を表すことを特徴とする請求項4記載の無線通信端末。
  6. 前記ペナルティ関数は、前記使用するアプリケーションがリアルタイム性の要求の低いものである場合には、通信方式の切り替え時間および切り替えにかかる消費電力に比例し、通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間および通信方式切り替え後のスループット値に反比例する関数を前記加算項として有することを特徴とする請求項5記載の無線通信端末。
  7. 前記ペナルティ関数は、前記使用するアプリケーションがリアルタイム性の要求の高いものである場合には、要求されるスループットに対する実際のスループットの割合を前記乗算項として有し、
    通信方式の切り替え時間に前記所定時間を加えた時間に対する通信方式の切り替え時間の割合と、通信方式の切り替えにかかる消費電力とに比例する前記加算項を有することを特徴とする請求項5記載の無線通信端末。
  8. 通信環境の変動量を取得する変動量推定部と、
    前記取得された通信環境の変動量に基づき適応的に前記通信方式の切り替え完了時から切り替え前後の通信方式の優劣が変化する時までの時間を決定する所定時間決定部とを更に備えることを特徴とする請求項3記載の無線通信端末。
  9. 無線通信端末において最適な通信方式を選択する通信方式選択方法であって、
    使用するアプリケーションの種別を取得するステップと、
    前記取得したアプリケーション種別により通信方式の選択基準を変えて、通信方式の切り替え時間に所定時間を加えた時間について評価量を算出するステップと、
    前記算出された評価量を比較して、いずれかの通信方式を選択するステップとを含むことを特徴とする通信方式選択方法。
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