JP2011052671A - アルコール濃度推定装置及び燃料供給系故障診断装置 - Google Patents

アルコール濃度推定装置及び燃料供給系故障診断装置 Download PDF

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Abstract

【課題】エンジンの燃焼室に供給されるアルコール濃度をより高い精度をもって推定することのできるアルコール濃度推定装置、及び、このアルコール濃度推定装置を用いた燃料供給系診断システムを提供する。
【解決手段】ECU40は、アルコール濃度推定処理S3を実行開始すると、まず、ステップS31の処理として、空燃比F/B補正量を算出するとともに、ステップS32の処理として、点火遅角量(ノックF/B遅角量,ノック学習量)を算出する。これら空燃比F/B補正量及び点火遅角量を算出すると、ECU40は、続くステップS33及びS34の処理として、これら空燃比F/B補正量及び点火遅角量を用いて、当該ECU40に内蔵されたROMに記憶されている対応マップを参照し、エンジン11の燃焼室に供給されるアルコール濃度を推定する。
【選択図】図6

Description

本発明は、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定装置、及びこのアルコール濃度推定装置を用いた燃料供給系故障診断装置に関する。
従来、この種の技術として、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。この特許文献1に記載の装置は、まず、エンジンの燃焼室に供給される燃料がアルコール非含有燃料である場合の理論空燃比よりもリッチ側またはリーン側に目標空燃比を設定し、その設定した目標空燃比が得られる量の燃料をエンジンの燃焼室に供給する。そして、空燃比センサにて実空燃比を検出し、目標空燃比と実空燃比との比率に基づいて、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定する。
特開2005−48625号公報
ところで、実空燃比は、吸入された空気が燃料と混合されてエンジンの燃焼室にて燃焼された後、その排気から空燃比センサによって検出される。そのため、空燃比センサによる実空燃比の検出精度は、エアフローセンサや吸気温度センサを含む吸気系、及び、燃料噴射弁や燃圧センサを含む燃料供給系のシステム公差の影響を大きく受けてしまう。
上記特許文献1に記載の技術では、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定するに当たり、空燃比センサにて検出される実空燃比が用いられる。そのため、燃料のアルコール濃度の推定値も、システム公差の影響を大きく受けてしまう。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エンジンの燃焼室に供給されるアルコール濃度をより高い精度をもって推定することのできるアルコール濃度推定装置、及び、このアルコール濃度推定装置を用いた燃料供給系故障診断装置を提供することにある。
こうした目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ノッキングを検出するノックセンサと、前記ノックセンサによってノッキングが検出された場合には、点火時期がそれまでよりも遅れるように点火遅角量を設定する一方、前記ノックセンサによってノッキングが検出されていない場合には、点火時期がそれまでよりも早まるように点火遅角量を設定する点火遅角量設定手段と、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量に基づいて、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定手段とを備えることを特徴とする。
ノッキングは、点火時期によって発生するかしないかが変化し、点火時期が進角側であるほどノッキングが発生しやすく、遅角側であるほどノッキングが発生しにくい。しかし、ノッキングが発生するか否かは、点火時期のみではなく、アルコール濃度によっても変化する。詳しくは、エタノールやメタノール等のアルコールは、ガソリンよりも、そのオクタン価が高いので、燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度が高いほど、その燃料のオクタン価は高くなり、その結果、ノッキングが発生しにくくなり、アルコール濃度が低いほどノッキングが発生しやすいのである。
このノッキングはノックセンサによって検出され、点火遅角量設定手段は、ノッキングが検出されると点火時期が遅れるように点火遅角量を設定し、ノッキングが検出されないと点火時期が早まるように点火遅角量を設定する。したがって、燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度と点火遅角量設定手段によって設定される点火遅角量との間には相関がある。そのため、アルコール濃度推定手段は、点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量に基づいて、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定することができるのである。
また、排気センサの検出精度は、吸気系及び燃料供給系のシステム公差の影響を大きく受けてしまう。しかしながら、ノックセンサは、エンジンのシリンダブロックに取り付けられてそのエンジンに発生するノッキング振動の周波数に基づいてノッキングの有無を判断する単純な構造を有するため、そのノッキングの検出精度は良く、もちろん、上記吸気系及び燃料供給系のシステム公差の影響もほとんど受けない。検出精度の良いノッキングの検出結果に基づき点火遅角量が設定され、その点火遅角量に基づいてアルコール濃度を推定するので、上記構成によれば、エンジンの燃焼室に供給されるアルコール濃度を高い精度で推定できるようになる。
もっとも、請求項2に記載の発明のように、前記エンジンの排気の空燃比に応じた出力特性を有する排気センサを備え、前記アルコール濃度推定手段は、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記排気センサのセンサ出力値とに基づいて、前記エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定することが望ましい。排気センサのセンサ出力値もアルコール濃度に応じて変化する。そのため、請求項2に記載の構成によれば、点火遅角量に加えて排気センサのセンサ出力値も用いることで、アルコール濃度の推定精度が向上する。
具体的には、請求項3に記載の発明のように、前記点火遅角量が大きいほど前記アルコール濃度が高くなり、且つ、前記排気センサのセンサ出力値がリーン側の値を示す場合にはそれよりもリッチ側の値を示す場合に比べ前記アルコール濃度が高くなる相関を示す対応マップを記憶する記憶部をさらに備え、前記アルコール濃度推定手段は、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記排気センサのセンサ出力値と前記記憶部に記憶された対応マップとに基づいて、前記エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定するとよい。
ただし、排気センサのセンサ出力値に代えて空燃比フィードバック補正量を用いることもできることから、次のように両者を選択的に用いることがより好ましい。すなわち、請求項4に記載の発明のように、前記排気センサのセンサ出力値に基づいて前記エンジンの排気の空燃比を目標空燃比に一致させるため、前記エンジンの燃焼室内に供給する供給燃料量に対する補正量である空燃比フィードバック補正量を逐次決定する空燃比フィードバック制御手段を備え、前記アルコール濃度推定手段は、前記フィードバック補正量が決定されていない場合には、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記排気センサのセンサ出力値とに基づいて前記アルコール濃度を推定し、前記空燃比フィードバック制御手段により前記空燃比フィードバック補正量が決定されている場合には、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記空燃比フィードバック制御手段によって決定された前記アルコール濃度を推定するとよい。
エタノールやメタノール等のアルコールは、ガソリンよりも、その燃焼性能が劣ることが知られている。そのため、燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度が高いほど、その燃料の燃焼性能が低下することから、アルコール非含有燃料である場合の目標空燃比が得られる量の燃料をエンジンの燃焼室内に供給しても、排気センサのセンサ出力値は目標空燃比よりもリーン側の値を示す。排気センサのセンサ出力値がリーンであることを示すと、空燃比フィードバック制御手段は、より大きな空燃比フィードバック補正量をもって供給燃料量を補正する。したがって、空燃比フィードバック制御手段による空燃比フィードバック補正量が大きい場合、燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度は高いことを意味する。反対に、燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度が低いと、その燃料の燃焼性能はそれほど低下せず、その結果、アルコール非含有燃料である場合の理論空燃比が得られる量の燃料をエンジンの燃焼室内に供給すると、排気センサのセンサ出力値は僅かにリーンであることを示すに過ぎない。そのため、空燃比フィードバック制御手段は、供給燃料量を空燃比フィードバック補正量によってほとんど補正しなくてもよい。すなわち、空燃比フィードバック制御手段による空燃比フィードバック補正量が小さい場合、燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度は低いことを意味する。このように、空燃比フィードバック制御手段の空燃比フィードバック補正量に基づいて、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定することができる。そのため、点火遅角量設定手段の点火遅角量及び空燃比フィードバック制御手段の空燃比フィードバック補正量の双方を使用することで、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を高い精度をもって推定することができるようになる。
ただし、例えばエンジンの高負荷時においては、空燃比フィードバック制御手段が停止されることがある。このような空燃比フィードバック補正量が決定されていない場合には、点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と排気センサのセンサ出力値を用いてエンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定することとする。これにより、空燃比フィードバック補正量が決定されているか否かに関わらず、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を高い精度をもって推定することができるようになる。
また、上記目的を達成するため、請求項5に記載の発明では、エンジンの排気の空燃比に比例した出力特性を有する空燃比センサのセンサ出力値が予め定められた正常範囲から外れたか否かに基づいて、燃料供給系を構成する装置が故障しているか否かを診断する故障診断手段を有する燃料供給系故障診断装置であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルコール濃度推定装置と、そのアルコール濃度推定装置によって推定されたアルコール濃度に応じて、前記正常範囲の少なくとも上限値を設定する正常範囲設定手段とを備え、前記故障診断手段は、前記正常範囲設定手段により設定された正常範囲を用いて前記診断を行うことを特徴とする。これにより、上記請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルコール濃度推定装置を用いて燃料供給系の故障を診断することができるようになる。
ちなみに、従来の燃料供給系故障診断装置では、エンジンの燃焼室に供給される燃料はアルコール非含有燃料であることを前提として上記正常範囲が予め設定されており、空燃比センサのセンサ出力値がその前提で予め設定された正常範囲を外れると、燃料供給系が故障していると診断していた。
こうした従来の燃料供給系故障診断装置では、アルコールを含む燃料をエンジンの燃焼室に供給すると、燃料供給系が故障しているか否かについて精度よく診断することができなくなることがある。
詳しくは、燃料供給系が故障していない場合、アルコールを含む燃料をエンジンの燃焼室に供給すると、空燃比センサのセンサ出力値は、そのアルコール濃度に応じてリーン側に偏る。そのため、正常範囲がアルコール濃度に応じて予め設定されていれば、空燃比センサのセンサ出力値はその正常範囲内に収まり、燃料供給系が故障していないと診断されるにもかかわらず、正常範囲が上記前提にて予め設定されているため、空燃比センサのセンサ出力値がその正常範囲の上限値を上回り、燃料供給系が故障していると誤診断されることがある。
その点、上記請求項5に記載の構成によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルコール濃度推定装置によって推定されるアルコール濃度に応じて、正常範囲の少なくとも上限値を設定するため、燃料供給系を構成する装置が故障しているか否かについて精度よく診断することができるようになる。しかも、上記請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルコール濃度推定装置は、アルコール濃度を高い精度をもって推定することができることから、燃料供給系故障診断装置は、上記正常範囲の上限値を高い精度をもって設定することができ、ひいては、燃料供給系を構成する装置が故障しているか否かを高い精度をもって診断することができるようになる。
なお、請求項6に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明と同一の作用効果を得ることができ、請求項7に記載の発明によれば、上記請求項4に記載の発明と同一の作用効果を得ることができる。
本発明に係るアルコール濃度推定装置及び燃料供給系故障診断装置の一実施の形態について、これら装置を含めたエンジン制御システム全体の概略構成を示す図である。 エンジン制御システムによって実行されるノックF/B遅角量設定処理について、その処理手順を示すフローチャートである。 エンジン制御システムによって実行されるノック学習量更新処理について、その処理手順を示すフローチャートである。 ノックF/B遅角量及びノック学習量の推移を示すタイミングチャートである。 ベース空燃比のずれとアルコール濃度との相関、及び、点火遅角量とアルコール濃度との相関をそれぞれ示す図である。 本実施の形態のアルコール濃度推定装置によって実行されるアルコール濃度推定処理について、その処理手順を示すフローチャートである。 エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール燃料と燃料供給系の正常範囲との対応マップを示す図である。 本実施の形態の燃料供給系故障診断装置によって実行される燃料供給系故障診断処理について、その処理手順を示すフローチャートである。
以下、本発明に係るアルコール濃度推定装置及び燃料供給系故障診断装置の一実施の形態について、図1〜図8を参照して説明する。なお、図1は、アルコール濃度推定装置及び燃料供給系故障診断装置を含めたエンジン制御システム1全体の概略構成を示す図であり、このエンジン制御システム1で使用される燃料にはエタノールが含まれている。はじめに、図1を参照しつつ、エンジン制御システム1全体の概略構成について説明する。
図1に示されるように、内燃機関である例えば直列4気筒のエンジン11は、第1気筒〜第4気筒の4つの気筒を有し、このエンジン11の吸気管12の上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ等によって開度調節されるスロットルバルブ15と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ16とが設けられている。
さらに、スロットルバルブ15の下流側には、サージタンク17が設けられ、このサージタンク17には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ18が設けられている。また、サージタンクには、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド19が設けられ、各気筒の吸気マニホールド19の吸気ポート近傍に、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁20a〜20dが取り付けられている。エンジン運転中は、燃料タンク21内の燃料が燃料ポンプ22によりデリバリパイプ23に送られ、各気筒の噴射タイミング毎に各気筒の燃料噴射弁20a〜20dから燃料が噴射される。デリバリパイプ23には、燃料圧力(燃圧)を検出する燃圧センサ24が取り付けられている。
また、エンジン11には、吸気バルブ25と排気バルブ26の開閉タイミングをそれぞれ可変する可変バルブタイミング機構27,28が設けられている。さらに、エンジン11には、吸気カム軸29と排気カム軸30の回転に同期してカム角信号を出力する吸気カム角センサ31と排気カム角センサ32が設けられ、エンジン11のクランク軸の回転に同期して所定クランク角毎(例えば30℃A毎)にクランク角信号のパルスを出力するクランク角センサ33が設けられている。
一方、エンジン11の各気筒の排気マニホールド35が集合する排気集合部36には、排出ガスの空燃比を検出する空燃比センサ37が設置され、この空燃比センサ37の下流側に排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒等の触媒38が設けられている。なお、空燃比センサ37は、エンジン11の排気ガスの空燃比に比例した出力特性を有しており、特許請求の範囲の排気センサ及び空燃比センサに相当する。
また、エンジン11のシリンダブロックにはノックセンサ39が設けられており、このノックセンサ39は、エンジン11の燃焼室内の混合気が異常燃焼する現象であるノッキングが発生すると生じるノッキング振動を検出する。ちなみに、ノックセンサ39は、エンジン11のシリンダブロックに直接取付けられるベースと、慣性力によって移動可能な錘と、これらベース及び錘の間に設けられる圧電素子とを有して構成されている(いずれも図示略)。そして、ノックセンサ39がシリンダブロックから振動を受けると、慣性力によって錘の移動に遅れが生じ、圧電素子に圧力が加えられる。圧力が加えられた圧電素子は電圧を発生し、後述のECU40に出力する。
上記空燃比センサ37等、各種センサのセンサ出力値は、エンジン制御回路(以下「ECU」と記載する)40に入力される。このECU40は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶部)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁20a〜20dの燃料供給量や点火時期を制御する。なお、このECU40が、特許請求の範囲に記載の点火遅角量設定手段、空燃比フィードバック制御手段、アルコール濃度推定手段、故障診断手段、及び正常範囲設定手段に相当する。
詳しくは、ECU40は、まず、上記エアフローメータ14のセンサ出力値を用いて、エンジン11の燃焼室内に供給する基本供給燃料量を算出する。基本供給燃料量を算出すると、ECU40は、次に、空燃比F/B制御実行条件が成立するか否かを判断し、その判断結果に基づいて、空燃比F/B制御を実行する。なお、「F/B」とは「フィードバック」を意味しており(以下、同様)、本実施の形態では、この空燃比F/B制御実行条件として、例えば下記条件(1)〜(4)を採用している。
(1)空燃比センサ37が活性状態であること
(2)空燃比センサ37が異常(故障)と判断されていないこと
(3)エンジン11が暖機状態(例えば冷却水温が所定温度以上)であること
(4)エンジン運転領域(例えばエンジン回転速度と吸気管圧力)が空燃比推定精度を確保できる運転領域であること
上記空燃比F/B制御実行条件(1)〜(4)が全て満たされたと判断すると、ECU40は、空燃比センサ37のセンサ出力値に基づいてエンジン11の排気の空燃比を目標空燃比に一致させるため、上記基本供給燃料量に対する補正量である空燃比フィードバック補正量を逐次決定する。そして、ECU40は、その決定した空燃比F/B補正量にて上記基本供給燃料量を補正した最終供給燃料を、燃料噴射弁20a〜20dを駆動することによりエンジン11の燃焼室内に噴射供給する。
一方、上記空燃比F/B制御実行条件(1)〜(4)のうちいずれか1つでも満たされていないと判断すると、ECU40は、上記空燃比F/B補正量を決定しない。そして、ECU40は、空燃比F/B補正量にて補正することなく、上記基本供給燃料量を最終供給燃料量として、燃料噴射弁20a〜20dを駆動することによりエンジン11の燃焼室内に噴射供給する。
また、ECU40は、「最終点火時期=ベース点火時期−点火遅角量(ノックF/B遅角量−ノック学習量)」にて最終点火時期を算出し、この算出した最終点火時期に点火するように制御を行う。
ここで、ベース点火時期は、ノッキングが発生しない前提条件のもとで、最大機関出力が得られる点火時期であり、基本となる点火時期である。このベース点火時期は、機関回転速度及び機関負荷率といったパラメータで表されるエンジン11の運転状態に基づいて設定される。
また、ノックF/B遅角量及びノック学習量は、ノッキングの検出の有無に応じてそのノッキングを抑制すべく最終点火時期を遅角補正する補正量であり、ノッキングの検出の有無に応じて増減する値である。このうち、ノックF/B遅角量は、ノッキングが検出された場合には、最終点火時期がそれまでよりも遅れるように設定される一方、ノッキングが検出されていない場合には、最終点火時期がそれまでよりも早まるように設定される。また、ノック学習量は、ノックF/B遅角量の学習値であり、そのノックF/B遅角量が予め定められたノック学習量更新範囲内に収束するように更新される。具体的には後述するが、ノックF/B遅角量が上記ノック学習量更新範囲に対して最終点火時期が遅角する側に外れていれば、ノック学習量は最終点火時期を遅角側にするように更新され、ノックF/B遅角量が上記ノック学習量更新範囲に対して最終点火時期が進角する側に外れていれば、ノック学習量は最終点火時期を進角側にするように更新される。
ちなみに、ECU40は、ノックセンサ39のセンサ出力値から求めたノック強度がこのノック強度に対して予め定められた判定値を上回ること、及び、ノックセンサ39のセンサ出力値から求めたノック頻度がこのノック頻度に対して予め定められた判定値を上回ることの少なくともいずれか一方が成立することをもって、ノッキングが発生した旨を判断する(すなわち、ノッキングを検出する)。
図2は、ECU40によって実行されるノックF/B遅角量設定処理S1について、その処理手順を示すフローチャートである。なお、ECU40は、このノックF/B遅角量設定処理S1を一定周期T1毎に繰り返し実行する。
ECU40は、ノックF/B遅角量設定処理S1を開始すると、まず、ステップS11の判断処理として、ノッキングが検出されたか否かを判断する。ここで、ノッキングが検出された旨判断すると(ステップS11の判断処理で「Yes」)、ECU40は、続くステップS12及びステップS13の処理として、ノックF/B遅角量を一定増加量C1だけ増加するとともに、そのノックF/B遅角量の上下限ガード処理を行う。
詳しくは、最終点火時期には、設定可能な範囲が予め定められており、ノックF/B遅角量を一定増加量C1だけ増加しようとすると、最終点火時期がその設定可能な範囲の下限値を下回ってしまうことがある。このとき、ECU40は、ノックF/B遅角量を一定増加量C1だけ増加するのではなく、最終点火時期がその設定可能な範囲の下限値となるようにノックF/B遅角量を設定する。そして、ECU40は、このノックF/B遅角量設定処理S1をそのまま一旦終了する。
一方、ノッキングが発生した旨判断されないと(ステップS11の判断処理で「No」)、ECU40は、続くステップS14の処理及びステップS13の処理として、上記一定増加量C1よりも小さい一定減少量C2だけノックF/B遅角量を減少するとともに、そのノックF/B遅角量の上下限ガード処理を行う。
詳しくは、最終点火時期には、設定可能な範囲が予め定められており、ノックF/B遅角量を一定減少量C2だけ減少しようとすると、最終点火時期がその設定可能な範囲の上限値を上回ってしまうことがある。このとき、ECU40は、ノックF/B遅角量を一定減少量C2だけ減少するのではなく、最終点火時期がその設定可能な範囲の上限値となるようにノックF/B遅角量を設定する。そして、ECU40は、このノックF/B遅角量設定処理S1をそのまま一旦終了する。
なお、本実施の形態では、ノックF/B遅角量の一定増加量C1の大きさは、ノックF/B遅角量の一定減少量C2の大きさよりも大きく(数倍程度)設定されている。
図3は、ECU40によって実行されるノック学習量更新処理S2について、その処理手順を示すフローチャートである。なお、ECU40は、このノック学習量更新処理S2を一定周期T2毎に繰り返し実行しており、この一定周期T2は、ノックF/B遅角量設定処理S1が繰り返し実行される上記一定周期T1よりも長く設定されている。また、上記ノックF/B遅角量には、学習量減少判定値及び学習量増加判定値を限界値とするノック学習量更新範囲が予め定められており、ECU40は、ノックF/B遅角量がこの学習量更新範囲内に収束するように、ノック学習量を更新する。また、ノック学習量の初期値は、上記学習量更新範囲に収まる任意の値に設定されており、ECU40が内蔵されたROMに記憶されている。
ノック学習量更新処理S2が開始されると、ECU40は、まず、ステップS21の判断処理として、上記ノックF/B遅角量設定処理S1にて設定されたノックF/B遅角量が学習量増加判定値よりも大きいか否かを判断する。ここで、ノックF/B遅角量が学習量増加判定値よりも大きいと判断される場合(ステップS21の判断処理で「Yes」)、ECU40は、続くステップS22の処理として、ノック学習量を一定量Dだけ増加し、続くステップS23の判断処理に移行する。
また、上記ステップS21の判断処理において、ノックF/B遅角量が学習量増加判定値以下であると判断される場合(ステップS21の判断処理で「No」)、あるいは、上記ステップS22の処理が実行されると、ECU40は、続くステップS23の判断処理として、ノックF/B遅角量が学習量減少判定値よりも小さいか否かを判断する。ここで、ノックF/B遅角量が学習量減少判定値よりも小さいと判断される場合(ステップS23の判断処理で「Yes」)、ECU40は、続くステップS24の処理として、ノック学習量を一定量Dだけ減少し、続くステップS25の処理に移行する。
また、上記ステップS23の判断処理において、ノックF/B遅角量が学習量減少判定値以上であると判断される場合(ステップS23の判断処理で「No」)、あるいは、上記ステップS24の処理が実行されると、ECU40は、続くステップS25の処理として、ノック学習量の上下限ガード処理を実行する。
詳しくは、最終点火時期には、設定可能範囲が予め定められており、上記ステップS22の処理においてノック学習量を一定量Dだけ増加させようとすると、最終点火時期がその設定可能範囲の上限値を上回ってしまうことがある。このとき、ECU40は、ノック学習量を一定量Dだけ増加させるのではなく、最終点火時期がその設定可能範囲の上限値となるようにノック学習量を増加させる。一方、上記ステップS24の処理においてノック学習量を一定量Dだけ減少させようとすると、最終点火時期がその設定可能範囲の下限値を下回ってしまうことがある。このとき、ECU40は、ノック学習量を一定量Dだけ減少させるのではなく、最終点火時期がその設定可能範囲の下限値となるようにノック学習量を減少させる。そして、ECU40は、このノック学習量更新処理S2をそのまま一旦終了する。なお、本実施の形態では、ノック学習量を増加する場合でも、ノック学習量を減少する場合でも、ノック学習量の更新量は一定量Dである。
図4は、ノックF/B遅角量及びノック学習量の推移を示すタイミングチャートである。なお、この図4においては、ノックF/B遅角量の推移を実線にて、ノック学習量の推移を一点鎖線にて、学習量減少判定値及び学習量増加判定値を破線にて示す。また、この図4において、ECU40は、ノックF/B遅角量設定処理S1(図2)を上記一定周期T1毎に繰り返し実行しており、時刻t11〜t15における実行時にノッキングが発生した旨判断されたものとし、ECU40は、ノック学習量更新処理S2(図3)を上記一定周期T2毎に繰り返し実行しており、時刻t21〜t26における実行時にノック学習量の更新を行ったものとする。またさらに、ノック学習量は、当初、学習量増加判定値及び学習量減少判定値間にあるものとする。
ノックF/B遅角量は、ノッキングが発生した旨判断された実行時刻t11〜t15において、上記一定増加量C1だけ大きく増加し、その他の実行時刻において、上記一定減少量C2ずつ減少する態様にて推移する。
ノック学習量は、時刻t21においてノック学習量更新処理S2が実行されると、ノックF/B遅角量が学習量増加判定値を上回っていることから、一定量Dだけ増加する。また、ノック学習量は、時刻t22〜24においてノック学習量更新処理S2が実行されると、ノックF/B遅角量が学習量減少判定値を下回っていることから、一定量Dだけ減少する。また、ノック学習量は、時刻t25においてノック学習量更新処理S2が実行されると、ノックF/B遅角量が学習量増加判定値を上回っており、且つ、学習量減少判定値を下回っていることから、一定量Dだけ増加し、且つ、一定量Dだけ減少するため、そのまま増減しない。また、ノック学習量は、時刻t26においてノック学習量更新処理S2が実行されると、学習量減少判定値を下回っていることから、一定量Dだけ減少する。このように推移する。
エンジン制御システム1において、以上説明したノックF/B制御及び空燃比F/B制御が実行されると、点火遅角量の大きさとアルコール濃度との間、及び、ベース空燃比のずれとアルコール濃度との間に相関が表れるようになる。本実施の形態のアルコール濃度推定装置は、こうした相関を利用して燃料のアルコール濃度を推定する装置であり、ノックセンサ39及びECU40を有して構成されている。
図5に、点火遅角量の大きさとアルコール濃度との相関、及び、ベース空燃比のずれとアルコール濃度との相関をそれぞれ示す。なお、点火遅角量とは、ノックF/B遅角量からノック学習量を減じた遅角量であり、この点火遅角量が小さいほど最終点火時期はベース点火時期に近づくことを意味する。また、ベース空燃比とは、アルコール非含有燃料の理論空燃比である。
ノッキングは、点火時期によって発生するかしないかが変化し、点火時期が進角側であるほどノッキングが発生しやすく、遅角側であるほどノッキングが発生しにくい。しかし、ノッキングが発生するか否かは、点火時期のみではなく、アルコール濃度によっても変化する。詳しくは、エタノールやメタノール等のアルコールは、ガソリンよりも、そのオクタン価が高いので、燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度が高いほど、その燃料のオクタン価は高くなり、その結果、ノッキングが発生しにくくなり、アルコール濃度が低いほどノッキングが発生しやすいのである。このノッキングはノックセンサ39によって検出され、ECU40は、ノッキングが検出されると点火時期が遅れるように点火遅角量を設定し、ノッキングが検出されないと点火時期が早まるように点火遅角量を設定する。したがって、燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度とECU40によって設定される点火遅角量との間には相関(図5参照)がある。そのため、ECU40は、設定した点火遅角量に基づいて、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定することができるのである。
一方、エタノールやメタノール等のアルコールは、ガソリンよりも、その燃焼性能が劣ることが知られている。そのため、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度が高いほど、その燃料の燃焼性能が低下することから、アルコール非含有燃料である場合の目標空燃比が得られる量の燃料をエンジン11の燃焼室内に供給しても、空燃比センサ37のセンサ出力値は目標空燃比よりもリーン側の値を示す(ベース空燃比のずれがリーン側に大きく偏る)。空燃比センサ37のセンサ出力値がリーンであることを示すと、ECU40は、空燃比F/B制御として、より大きな空燃比F/B補正量をもって基本供給燃料量を補正する。したがって、空燃比F/B制御による空燃比F/B補正量が大きい場合、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度は高いことを意味する。
また、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度が低いと、その燃料の燃焼性能がそれほど低下せず、その結果、アルコール非含有燃料である場合の理論空燃比が得られる量の燃料をエンジン11の燃焼室内に供給しても、空燃比センサ37のセンサ出力値は僅かにリーンであることを示すに過ぎない(ベース空燃比のずれが小さい)。空燃比センサ37のセンサ出力値が僅かにリーンを示すに過ぎない場合、ECU40は、基本供給燃料量を空燃比F/B補正量によってほとんど補正しなくてもよい。したがって、空燃比F/B制御による空燃比F/B補正量が小さい場合、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度は低いことを意味する。
このように、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度と空燃比F/B制御のベース空燃比のずれ(ひいては空燃比フィードバック制御補正量)との間には相関がある(図5参照)ため、ECU40は、空燃比F/B補正量に基づくことにより、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定することができるようなる。
図6に、ECU40によって実行されるアルコール濃度推定処理S3の処理手順をフローチャートにて示す。なお、ECU40は、上記空燃比F/B制御及び上記ノックF/B制御を実行しつつ、このアルコール濃度推定処理S3を一定周期毎に繰り返し実行する。
図6に示されるように、ECU40は、アルコール濃度推定処理S3を実行開始すると、ステップS31及びS32の処理として、上記空燃比F/B制御の際に算出する空燃比F/B補正量、及び、上記ノックF/B制御の際に算出する点火遅角量(ノックF/B遅角量及びノック学習量)を用いて、当該ECU40に内蔵されたROMに記憶されている対応マップMP1を参照する。この対応マップMP1を参照すると、ECU40は、続くステップS33の処理として、エンジン11の燃焼室に供給されるアルコール濃度を推定する(読み出す)。なお、この対応マップMP1からわかるように、空燃比F/B補正量が大きいほど、且つ、点火遅角量が大きいほど、アルコール濃度は高く、空燃比F/B補正量 が小さいほど、且つ、点火遅角量が小さいほど、アルコール濃度は低い。
以上説明した上記実施の形態のアルコール濃度推定装置では、ECU40は、上記空燃比F/B補正量、上記点火遅角量(ノックF/B遅角量,ノック学習量)、及び上記対応マップMP1を参照して、エンジン11の燃焼室に供給されるアルコール濃度を推定することとした。これにより、空燃比F/B補正量及び点火遅角量の双方を使用することで、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を高い精度をもって推定することができるようになる。
また、本実施の形態の燃料供給系故障診断装置は、本実施の形態のアルコール濃度推定装置を利用して燃料供給系が故障しているか否かを診断する装置であり、ECU40を有して構成されている。図7に、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール燃料と燃料供給系の正常範囲との対応マップMP2を示す。この図7に示されるように、本実施の形態では、燃料にアルコールが含まれていない場合、正常範囲の上限値Thu及び下限値Thdは「理論空燃比+25%(=理論空燃比×1.25)」及び「理論空燃比−25%(=理論空燃比×0.75)」にそれぞれ設定されており、燃料にアルコールが含まれている場合、正常範囲の上限値Thu及び下限値Thdは、一定の勾配をもってリーン側に偏るようにそれぞれ設定されている。ちなみに、アルコール濃度が「10%」である燃料を使用する場合、理論空燃比がおよそ「6%」リーン側に偏ることが知られている。そのため、本実施の形態では、アルコール濃度が「10%」である燃料を使用する場合、正常範囲の上限値Thu及び下限値Thdは、「理論空燃比−19%(理論空燃比−25%+6%)」及び「理論空燃比+31%(理論空燃比+25%+6%)」にそれぞれ設定されている。また、この対応マップMP2は、ECU40に内蔵されたROMに予め記憶されている。
図8は、ECU40によって実行される燃料供給系故障診断処理S4の処理手順を示すフローチャートである。なお、ECU40は燃料供給系故障診断処理S4を一定周期毎に繰り返し実行する。以下、先の図7及びこの図8を併せ参照しつつ、燃料供給系故障診断処理S4について説明する。
ECU40は、まず、アルコール濃度推定処理S3(図6)を実行することで、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定しておく。そして、ECU40は、図7に示されるように、燃料供給系故障診断処理S4を実行開始する。
燃料供給系故障診断処理S4が実行開始されると、ECU40は、まず、ステップS41の処理として、この推定されたアルコール濃度に応じて、燃料噴射弁20a〜20dや図示しない燃圧センサを含む燃料供給系が正常であることを示す正常範囲の上限値Thu及び下限値Thdを、図8に示される対応マップMP2を用いてそれぞれ更新する。ちなみに、これら上限値Thu及び下限値Thdの初期値は、燃料にアルコールが含まれていない場合における「理論空燃比+25%(=理論空燃比×1.25)」及び「理論空燃比−25%(=理論空燃比×0.75)」にそれぞれ設定されている。
これら上限値Thu及び下限値Thdを更新すると、ECU40は、続くステップS42の判断処理として、空燃比センサ37のセンサ出力値が正常範囲から外れた(すなわち、空燃比センサ37のセンサ出力値が更新後の上限値Thu以下となり、且つ、更新後の下限値Thd以上となる)か否かを判断する。
ここで、空燃比センサ37のセンサ出力値が上記正常範囲から外れた旨が判断された場合(ステップS42の判断処理で「No」)、ECU40は、続くステップS43の処理として、燃料供給系は正常であると診断し、そのまま燃料供給系故障診断処理S4を一旦終了する。
一方、空燃比センサ37のセンサ出力値が上記正常範囲から外れた旨が判断された場合(ステップS43の判断処理で「Yes」)、ECU40は、続くステップS44の処理として、燃料供給系は故障していると診断し、そのまま燃料供給系故障診断処理S4を一旦終了する。
以上説明した上記実施の形態の燃料供給系故障診断装置では、ECU40は、まず、アルコール濃度推定処理S3(図6参照)を実行することで、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定しておき、この推定されたアルコール濃度に応じて、正常範囲の上限値Thu及び下限値Thdを対応マップMP2を用いてそれぞれ更新する。そして、ECU40は、空燃比センサ37のセンサ出力値が更新された正常範囲から外れたか否かに基づいて、燃料噴射弁20a〜20dを含む燃料供給系を構成する装置が故障しているか否かを診断することとした。アルコール濃度を高い精度をもって推定することができることから、ECU40は、上記正常範囲の上限値及び下限値を高い精度をもって設定することができ、ひいては、燃料供給系を構成する装置が故障しているか否かを高い精度をもって診断することができるようになる。
本発明に係るアルコール濃度推定装置及び燃料供給系故障診断装置は、上記実施の形態にて例示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々に変形して実施することが可能である。すなわち、上記実施の形態を適宜変更した例えば次の形態として実施することもできる。
上記実施の形態では、ECU40は、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定しておき、この推定されたアルコール濃度に応じて、正常範囲の上限値Thu及び下限値Thdを対応マップMP2を用いてそれぞれ更新していたが、上限値Thu及び下限値Thdの双方とも更新する必要はなく、少なくとも上限値Thuを更新すればよい。
上記実施の形態では、ECU40は、点火遅角量(ノックF/B遅角量,ノック学習量)に加え、空燃比F/B補正量を使用して、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定していたが、例えばエンジン11の高負荷時において、空燃比F/B補正量を決定しないことがある。この場合、空燃比F/B補正量を使用して燃料のアルコール濃度を推定することができないため、燃料のアルコール濃度の推定精度が低下することが懸念される。そこで、次のように実施するとよい。すなわち、ECU40は、空燃比F/B補正量を決定している場合には、点火遅角量に加え、空燃比F/B補正量の双方を用いて、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定する一方、空燃比F/B補正量を決定しない場合、点火遅角量に加え、空燃比センサ37のセンサ出力値を用いて、エンジン11の燃焼室に供給する燃料のアルコール濃度を推定してもよい。これにより、空燃比F/B補正量が決定されたか否かに関わらず、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を高い精度をもって推定することができるようになる。
ちなみに、ECU40は、点火遅角量に加え空燃比センサ37のセンサ出力値を用いてエンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定する場合には、点火遅角量が大きいほどアルコール濃度が高くなり、且つ、空燃比センサ37のセンサ出力値がリーン側の値を示すときにはそれよりもリッチ側の値を示すときに比べアルコール濃度が高くなる相関を示す対応マップ(図示略)を使用すればよい。
さらに、排気センサとして、エンジンの排気の空燃比に比例した出力特性を有する(すなわち、エンジンの排気の空燃比に比例した値を出力する)空燃比センサ37を採用したが、エンジンの排気の空燃比に対し二値の出力特性を有する(すなわち、リッチに相当する値及びリーンに相当する値を出力する)酸素センサを採用してもよい。点火遅角量及び酸素センサのセンサ出力値の双方を用いてエンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定する場合においては、点火遅角量が大きいほどアルコール濃度が高くなり、且つ、酸素センサのセンサ出力値がリーン側の値を示すときにはそれよりもリッチ側の値を示すときに比べアルコール濃度が高くなる相関を示す対応マップ(図示略)を使用すればよい。
上記実施の形態では、ECU40は、点火遅角量に加え、空燃比F/B補正量を使用して、エンジン11の燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定していたが、空燃比F/B補正量や空燃比センサ37のセンサ出力値を用いることなく、点火遅角量を用いて、燃料のアルコール濃度を推定することとしてもよい。例えばエアフローメータ14の下流から空燃比センサ37上流に至る経路において漏れ(小さな穴や配管の誤接続)などがある場合には、実際の空燃比と空燃比センサ37のセンサ出力値との間にずれが生じる。そのずれが生じている空燃比センサ37のセンサ出力値に基づいて空燃比F/B補正量が算出され、ひいては、その空燃比F/B補正量を用いてアルコール濃度が推定されてしまう。しかしながら、空燃比が目標空燃比付近で制御されていれば、点火遅角量は上記漏れの影響を受けることはない。したがって、この変形例によれば、上述のような場合に、空燃比F/B補正量や空燃比センサ37のセンサ出力値を用いるよりも、高い精度をもってアルコール濃度を推定することが可能となる。
上記実施の形態では、点火遅角量としてノックF/B遅角量からノック学習量を減じた結果である差を用いて、燃料のアルコール濃度を推定していたが、これに限らない。ノックF/B遅角量は上記一定周期T1毎に設定され、ノック学習量はその一定周期T1よりも長い上記一定周期T2毎に更新されることから、ノックF/B遅角量の方がノック学習量よりも激しく変動する。こうした激しく変動するF/B遅角量を用いるよりも、ゆっくりと変動するノック学習量のみを用いた方が高い精度をもってアルコール濃度を推定することが可能となる。したがって、点火遅角量としてノック学習量のみを用いて、燃料のアルコール濃度を推定することが望ましい。また、その場合には、ノック学習量が更新されてから次に更新されるまでの間に、その更新されたノック学習量を用いて、燃料のアルコール濃度を推定するとよい。あるいは、ノック学習量が更新前後で変化しないことが所定回数(例えば3回)連続する場合に、その変化していないノック学習量を用いて、燃料のアルコール濃度を推定するとよい。
上記実施の形態では、ECU40は、燃料のアルコール濃度自体を推定していたが、これに限らない。エンジン制御システム1がアルコール濃度センサを有する場合には、アルコール濃度センサのセンサ出力値を点火遅角量を用いて補正することにより、燃料のアルコール濃度を推定してもよい。
上記実施の形態では、ECU40は、当該ECU40に内蔵されたROMに記憶されている対応マップMP1を用いて、燃料のアルコール濃度を推定していたが、これに限らない。点火遅角量の大きさとアルコール濃度との間の相関、及び、ベース空燃比のずれとアルコール濃度との間の相関を立式しておき、その傾向式を用いて、アルコール濃度を推定することとしてもよい。
上記実施の形態では、エンジン11の燃焼室に供給する燃料として、エタノールを含む燃料を採用したが、これに限らず、メタノールを含む燃料を採用してもよい。
上記実施の形態では、アルコール濃度推定装置は、ノックセンサ39及びECU40を有する構成であったが、ノックセンサ39自体を有さなくてもよい。アルコール濃度推定装置は、ノックセンサ39のセンサ出力値が入力されるECU40を有する構成であればよい。
上記実施の形態では、アルコール濃度推定装置を構成するECU40は、空燃比F/B補正量を決定していたが、ECU40自らが空燃比F/B補正量を決定しなくてもよい。アルコール濃度推定装置を構成するECU40は、他のECUが空燃比F/B補正量を決定しているか否かを判断して、他のECUが空燃比F/B補正量を決定した場合にはその空燃比F/B補正量を利用すればよい。ちなみに、他のECUが空燃比F/B補正量を決定しているか否かを判断する判断処理が特許請求の範囲に記載の空燃比フィードバック制御実行判断手段に相当する。
11…エンジン、12…吸気管、13…エアクリーナ、14…エアフローメータ、15…スロットバルブ、16…スロットル開度センサ、17…サージタンク、18…吸気管圧力センサ、19…吸気マニホールド、20a〜20d…燃料噴射弁、21…燃料タンク、22…燃料ポンプ、23…デリバリパイプ、24…燃圧センサ、25…吸気バルブ25、26…排気バルブ、27,28可変バルブタイミング機構、29…吸気カム軸、30…排気カム軸、31…吸気カム角センサ、32…排気カム角センサ、33…クランク角センサ、35…排気マニホールド、36…排気集合部、37…空燃比センサ、38…触媒、40…ECU(点火遅角量設定手段、アルコール濃度推定手段、空燃比フィードバック制御手段、故障診断手段、正常範囲設定手段、空燃比フィードバック制御実行判断手段、)。

Claims (7)

  1. ノッキングを検出するノックセンサと、
    前記ノックセンサによってノッキングが検出された場合には、点火時期がそれまでよりも遅れるように点火遅角量を設定する一方、前記ノックセンサによってノッキングが検出されていない場合には、点火時期がそれまでよりも早まるように点火遅角量を設定する点火遅角量設定手段と、
    前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量に基づいて、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定手段とを備えることを特徴とするアルコール濃度推定装置。
  2. 請求項1に記載のアルコール濃度推定装置において、
    前記エンジンの排気の空燃比に応じた出力特性を有する排気センサを備え、
    前記アルコール濃度推定手段は、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記排気センサのセンサ出力値とに基づいて、前記エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定することを特徴とするアルコール濃度推定装置。
  3. 請求項2に記載のアルコール濃度推定装置において、
    前記点火遅角量が大きいほど前記アルコール濃度が高くなり、且つ、前記排気センサのセンサ出力値がリーン側の値を示す場合にはそれよりもリッチ側の値を示す場合に比べ前記アルコール濃度が高くなる相関を示す対応マップを記憶する記憶部をさらに備え、
    前記アルコール濃度推定手段は、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記排気センサのセンサ出力値と前記記憶部に記憶された対応マップとに基づいて、前記エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定することを特徴とするアルコール濃度推定装置。
  4. 請求項2または3に記載のアルコール濃度推定装置において、
    前記排気センサのセンサ出力値に基づいて前記エンジンの排気の空燃比を目標空燃比に一致させるため、前記エンジンの燃焼室内に供給する供給燃料量に対する補正量である空燃比フィードバック補正量を逐次決定する空燃比フィードバック制御手段を備え、
    前記アルコール濃度推定手段は、前記フィードバック補正量が決定されていない場合には、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記排気センサのセンサ出力値とに基づいて前記アルコール濃度を推定し、前記空燃比フィードバック制御手段により前記空燃比フィードバック補正量が決定されている場合には、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記空燃比フィードバック制御手段によって決定されたフィードバック補正量とに基づいて前記アルコール濃度を推定することを特徴とするアルコール濃度推定装置。
  5. エンジンの排気の空燃比に比例した出力特性を有する空燃比センサのセンサ出力値が予め定められた正常範囲から外れたか否かに基づいて、燃料供給系を構成する装置が故障しているか否かを診断する故障診断手段を有する燃料供給系故障診断装置であって、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルコール濃度推定装置と、
    そのアルコール濃度推定装置によって推定されたアルコール濃度に応じて、前記正常範囲の少なくとも上限値を設定する正常範囲設定手段とを備え、
    前記故障診断手段は、前記正常範囲設定手段により設定された正常範囲を用いて前記診断を行うことを特徴とする燃料供給系故障診断装置。
  6. ノッキングを検出するノックセンサによってノッキングが検出された場合には、点火時期がそれまでよりも遅れるように点火遅角量を設定する一方、前記ノックセンサによってノッキングが検出されていない場合には、点火時期がそれまでよりも早まるように点火遅角量を設定する点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量に基づいて、エンジンの燃焼室に供給される燃料のアルコール濃度を推定するアルコール濃度推定手段を備えることを特徴とするアルコール濃度推定装置。
  7. 請求項1、2、3、6のいずれか1項に記載のアルコール濃度推定装置において、
    前記エンジンの排気の空燃比を目標空燃比に一致させるため、前記エンジンの燃焼室内に供給する供給燃料量に対する補正量である空燃比フィードバック補正量を逐次決定する空燃比フィードバック制御が実行されているか否かを判断する空燃比フィードバック制御実行判断手段を備え、
    前記アルコール濃度推定手段は、前記空燃比フィードバック制御実行判断により前記空燃比フィードバック制御が実行されていると判断された場合には、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記フィードバック補正量とに基づいて前記アルコール濃度を推定し、前記空燃比フィードバック制御実行判断手段により前記空燃比フィードバック制御が実行されていないと判断された場合には、前記点火遅角量設定手段によって設定された点火遅角量と前記エンジンの排気の空燃比に応じた出力特性を有する排気センサのセンサ出力値とに基づいて前記アルコール濃度を推定することを特徴とするアルコール濃度推定装置。
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