JP2011052187A - 二液型ポリウレタン系塗膜形成材 - Google Patents

二液型ポリウレタン系塗膜形成材 Download PDF

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幸夫 松本
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Abstract

【課題】防水材あるいは床材用途において、塗膜強度が大きく、下地追従性、耐久性に優れ、厚塗りしても発泡を起こしにくい二液型ポリウレタン系塗膜形成材を提供する。
【解決手段】水酸基価10〜300mgKOH/gのポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と、ポリアミン(C)を含む硬化剤との組み合わせからなる二液型ポリウレタン系塗膜形成材であって、前記ポリオール(A)の平均官能基数が2.1〜2.5であって、ポリオール(A)が、開始剤(a)に、ポリカルボン酸無水物(b)とアルキレンオキシド(c)を開環付加反応させて得られたポリエステルエーテルポリオール(A1)を含むことを特徴とする二液型ポリウレタン系塗膜形成材である。
【選択図】図1

Description

本発明は、二液型ポリウレタン系塗膜形成材に関し、詳しくは、強度が大きく、厚塗りしても発泡を起こしにくい二液型ポリウレタン系塗膜形成材に関する。
イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー等のイソシアネート基含有化合物を含む主剤と、ポリアミン等の活性水素化合物を含む硬化剤との組み合わせからなる二液型ポリウレタン(以下、二液型ポリウレタンという)の硬化物は、その優れた柔軟性により、塗料、防水材、床材、シーリング材、弾性舗装材等の幅広い用途に用いられている。なかでも、硬化剤の活性水素化合物として用いられる4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(以下、MBOCAと記す。)は、イソシアネート基含有化合物との反応性が良好で、常温での可使時間と硬化性に適度なバランスを有し、また、形成された硬化物が耐水性、耐久性、防水性等の機械物性に優れる。このことから、MBOCAを、硬化剤の活性水素化合物として用いた二液型ポリウレタンは、防水材や床材として広く利用されている。
例えば、活性水素化合物としてMBOCAを用いた、防水材や床材用途の二液型ポリウレタンとしては、ポリオキシプロピレンポリオール等のポリエーテルポリオールと、トリレンジイソシアネートとの反応により得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを含む主剤と、ポリオキシプロピレンポリオールとMBOCAとを含有する硬化剤との組み合わせからなる二液型ポリウレタン等が挙げられ、これらが従来から好ましく使用されている。ポリオキシプロピレンポリオールは常温液体であるので、プレポリマーとした場合にも低粘度となり作業性がよい長所がある。
一方、原料ポリオールとしてポリエステルポリオールを用いた場合には、接着性は優れるが、ポリエステルポリオールの粘度が高いため、プレポリマーとした場合にはさらに高粘度となり、溶剤、可塑剤の併用が不可欠であった。近年環境問題への意識が高まるにつれて、建築住宅空間での有機溶剤の使用を差し控える動きが出てきた。そのため、接着剤や防水材用途で、粘度が低く、かつ接着性等の物性が優れ、耐久性にすぐれている材料の開発が望まれている。上記課題を解決する目的で、低粘度であるポリエーテルポリオールと接着性の優れたポリエステルポリオールを併用する方法が提案されている。
しかし、この方法では、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールの相溶性が悪く、2層分離する問題がある。また、ポリオールの反応性が異なるため、ポリイソシアネート化合物と2段階で反応させてプレポリマー化するなどの煩雑な工程を経る必要がある。また、ポリエステルポリオールを使用したプレポリマーと、ポリオキシアルキレンポリオールを使用したプレポリマーとを併用する方法も提案されたが、やはり相溶性不良で分離する問題がある。
また、特許文献1には、特定のアルキレンオキシドとラクトンモノマーとの混合物を開始剤に開環付加反応させて得られるポリエステルエーテルポリオールを用いる二液硬化型ポリウレタンについて開示されている。
特許文献2には、ポリカルボン酸無水物とアルキレンオキシドとの混合物を開始剤に開環付加反応させて得られるポリエステルエーテルポリオールを一液湿気硬化型の接着剤用途に用いることが開示されている。
国際公開2006−123586号パンフレット 特開2008−133459号公報
しかしながら、ポリオキシプロピレンポリオール等のポリエーテルポリオールと、トリレンジイソシアネートとの反応により得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーや、特許文献1記載の二液型ポリウレタンは強度が弱く、必ずしも接着性や下地追従性が十分でないといった問題があった。また、特許文献2では一液湿気硬化型の接着剤用途については開示されているものの、ポリエステルエーテルポリオールを用いて、厚塗りでしかも発泡しない二液型の防水材用途については何等開示されていない。
そこで本発明の目的は塗膜強度が大きく、高伸度であって下地追従性(ゼロスパンテンション)が大きく、かつ、耐久性に優れ、厚塗りしても発泡を起こしにくい二液型ポリウレタン系塗膜形成材を提供することにある。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、特定のポリオールとイソシアネートを反応させて得られるプレポリマーを含む主剤と、硬化剤とを反応させる二液型ポリウレタン系塗膜形成材とすることで上記課題を解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、平均官能基数が2.1〜2.5であり、水酸基価10〜300mgKOH/gのポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と、ポリアミン(C)を含む硬化剤との組み合わせからなる二液型ポリウレタン系塗膜形成材であって、前記ポリオール(A)が開始剤(a)にポリカルボン酸無水物(b)とアルキレンオキシド(c)とを開環付加反応させて得られたポリエステルエーテルポリオール(A1)を含むことを特徴とするものである。
また、本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、前記ポリオール(A)が、さらに平均官能基数2〜4、水酸基価が10〜300mgKOH/gのポリエーテルポリオール(A2)を含むことが好ましく、前記ポリオール(A)がポリエステルエーテルポリオール(A1)を20〜70質量%、ポリエーテルポリオール(A2)を30〜80質量%、かつ両者の合計量として50〜100質量%含むことが好ましい。
さらに、本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、前記ポリエステルエーテルポリオール(A1)が、開環付加反応を複合金属シアン化物錯体触媒(x)の存在下で行って得られたポリオールであることが好ましい。
さらにまた、本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、前記ポリエステルエーテルポリオール(A1)が、前記ポリカルボン酸無水物(b)が開環した単位を10〜50質量%含むことが好ましく、前記ポリカルボン酸無水物(b)が、無水フタル酸であることが好ましい。
また、本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、前記ポリアミン(C)が、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)であることが好ましく、前記二液型ポリウレタン系塗膜形成材が、手塗りタイプの常温で硬化する防水材、床材、および防食材より選択される一種であることが好ましい。
本発明によれば、強度が大きく、高伸度であって下地追従性が大きく、かつ、耐久性に優れ、厚塗りしても発泡を起こしにくい二液型ポリウレタン系塗膜形成材が得られる。
図1はゼロスパンテンション試験の方法を示した説明図である。
以下、本発明の実施の形態につき具体的に説明する。
[二液型ポリウレタン系塗膜形成材]
本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、ポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と、ポリアミン(C)を含む硬化剤との組み合わせからなり、ポリウレタン系樹脂の塗膜を形成する目的で使用されるものである。主剤と硬化剤の二液は、塗膜形成の際に混合され、その混合物は速やかに被着体上に塗布され、被着体上で反応硬化してポリウレタン系樹脂の塗膜が形成される。主剤と硬化剤の混合物は常温で反応硬化することより、塗膜形成に使用される時点までは主剤と硬化剤の二液は分離して保存される。本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、この二液の組み合わせ(セット、キットなどとも呼ばれるもの)をいう。
なお、以下、上記主剤と硬化剤の混合物を、硬化性混合物ともいう。また、二液型ポリウレタン系塗膜形成材から形成されるポリウレタン系樹脂の塗膜を、以下ポリウレタン系塗膜ともいう。
[ポリオール(A)]
本発明におけるポリオール(A)は、上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)を含むものであり、ポリエステルエーテルポリオール(A1)のみからなっていてもよい。しかし、伸びと耐久性のバランスをより良くするために、他のポリオールと併用することが好ましい。他のポリオールとしては、水酸基価が10〜300mgKOH/gであるポリエーテルポリオール(A2)が好ましい。ポリエーテルポリオール(A2)の水酸基価は、好ましくは20〜200mgKOH/gであり、より好ましくは、25〜150mgKOH/gである。さらに、場合によっては、ポリオール(A)は、上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)でもなく、ポリエーテルポリオール(A2)でもないポリオール(以下、ポリオール(A3)という)を含んでもよい。即ち、ポリオール(A)は、ポリエステルエーテルポリオール(A1)とポリエーテルポリオール(A2)とポリオール(A3)とを含むポリオールであってもよく、ポリエステルエーテルポリオール(A1)とポリオール(A3)とを含むポリオールであってもよい。なお、ポリエステルエーテルポリオール(A1)、ポリエーテルポリオール(A2)、ポリオール(A3)は、それぞれ、その範疇のものを2種以上使用することができる。
ポリオール(A)の水酸基価は10〜300mgKOH/gであり、好ましくは、20〜200mgKOH/g、より好ましくは、25〜150mgKOH/gである。ポリオール(A)の水酸基価が10〜300mgKOH/gであると、塗膜物性、下地追従性、耐久性に優れた塗膜が得られる。
また、ポリオール(A)の平均官能基数は2.1〜2.5であることが好ましく、2.1〜2.4がより好ましく、平均官能基数が2.1〜2.3であることがもっとも好ましい。平均官能基数が2.1以上であると、塗膜強度や耐久性に優れ、2.5以下であると塗膜の伸びが優れて、下地追従性に優れる。ポリオール(A)の平均官能基数とは、ポリオールの水酸基当量数の総和をポリオールのモル数の総和で除した値である。
ポリオール(A)はポリエステルエーテルポリオール(A1)のみからなっていてもよいが、上記のように他のポリオールをさらに含むことが好ましい。その場合、ポリオール(A)中のポリエステルエーテルポリオール(A1)の割合の上限は、95質量%が好ましく、90質量%がより好ましい。
上記のように、ポリエステルエーテルポリオール(A1)はポリエーテルポリオール(A2)と併用することが好ましい。ポリオール(A)がポリエステルエーテルポリオール(A1)とポリエーテルポリオール(A2)からなる場合、ポリオール(A)中のポリエーテルポリオール(A2)の量は、ポリオール(A)に対して80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。また、ポリオール(A)中のポリエーテルポリオール(A2)の量の下限は、ポリオール(A)に対して30質量%であることが好ましく、40質量%であることがより好ましい。
また、上記ポリオール(A)がポリエステルエーテルポリオール(A1)とポリオール(A3)からなる場合、ポリオール(A)中のポリオール(A3)の量は、ポリオール(A)に対して50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。また、その量の下限は、ポリオール(A)に対して5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましい。なお、ポリオール(A3)は、ポリオール(A)がポリエステルエーテルポリオール(A1)とポリエーテルポリオール(A2)とを含む場合は、必須ではない。
ポリオール(A)は、上記のように、ポリエステルエーテルポリオール(A1)とポリエーテルポリオール(A2)とを含み、かつ任意にポリオール(A3)を含む、ポリオールであることが好ましい。その場合、ポリオール(A)中の各ポリオールの割合は、ポリエステルエーテルポリオール(A1)が20〜70質量%、ポリエーテルポリオール(A2)が30〜80質量%、ポリオール(A3)が0〜50質量%であることが好ましい。さらにはポリエステルエーテルポリオール(A1)が30〜60質量%、ポリエーテルポリオール(A2)が40〜70質量%、ポリオール(A3)が0〜30質量%であることが、より好ましい。
[ポリエステルエーテルポリオール(A1)]
上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)は、開始剤(a)に対して、ポリカルボン酸無水物(b)およびアルキレンオキシド(c)を共重合して得られる。上記の共重合反応は、触媒(x)の存在下で、行われることが好ましい。
例えば、上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)は以下の方法で調製することができる。まず開始剤(a)、ポリカルボン酸無水物(b)、および触媒(x)を予め反応容器に投入しておき、そこへアルキレンオキシド(c)をゆっくり加えながら反応させる。その際に、アルキレンオキシド(c)より、ポリカルボン酸無水物(b)の方が開環反応が速く、ポリカルボン酸無水物(b)は連続付加反応しないので、ポリカルボン酸無水物(b)とアルキレンオキシド(c)が1モルずつ交互に付加した共重合鎖を有する共重合体を得ることができる。
この際に、アルキレンオキシド(c)を過剰に添加して、末端にアルキレンオキシド(c)のみをブロックで付加させることにより、得られるポリエステルエーテルポリオール(A1)の酸価を低減させることができる。ポリエステルエーテルポリオール(A1)の酸価は2.0mgKOH/g以下が好ましく、1.0mgKOH/g以下がより好ましく、ゼロでもよい。ポリエステルエーテルポリオール(A1)の酸価が2.0mgKOH/g以下であると、イソシアネートとの反応性が良いため好ましい。また得られるプレポリマーから得られるポリウレタン系塗膜の耐加水分解性が優れるため好ましい。
ポリエステルエーテルポリオール(A1)において、ポリカルボン酸無水物(b)とアルキレンオキシド(c)とが1モルずつ交互に付加している部分は、両者の比率が一定なので、開始剤(a)の分子量と末端のアルキレンオキシド(c)の付加量で全体の構造が設計される。
なお、フタル酸系ポリエステルポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリマーと、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるポリマーとを混合しても均一な混合物は得られない。また、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールとを先に混合し、これらの混合物にポリイソシアネート化合物を反応させてプレポリマー化しても時間が経つと分離しやすく、相溶性が不十分である。いずれにしても、ポリエステルエーテルポリオール(A1)を使用しない限り、本発明の所期の目的を達成することはできない。
上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)の水酸基価は11〜112mgKOH/gであることが好ましく、20〜80mgKOH/gであることが特に好ましい。すなわち水酸基あたりの水酸基価換算分子量は500〜5000であることが好ましく、700〜2500であることが特に好ましい。水酸基あたりの水酸基価換算分子量が500以上であると、得られる硬化性混合物の被接着基材への接着性が優れたものとなる。また、水酸基あたりの水酸基価換算分子量が5000以下であると、得られる硬化性混合物の低粘度化を達成できる。上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)の水酸基価換算分子量の調整は、開始剤(a)に対して重合させるポリカルボン酸無水物(b)およびアルキレンオキシド(c)のモル数を適宜調整することによって容易に行うことができる。
また、上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)は、その水酸基価換算分子量から開始剤(a)の分子量を除いた残りの分子量を開始剤(a)の官能基数で割った値(M’)が、100〜3000であることが好ましく、200〜1500であることが特に好ましい。ここで、上記の「水酸基価換算分子量から開始剤の分子量を除いた残りの分子量を開始剤の官能基数で割った値(M’)」は、ポリカルボン酸無水物(b)およびアルキレンオキシド(c)の共重合によって形成される共重合鎖1つあたりの平均分子量を意味している。M’が3000より大きいと、得られるポリエステルエーテルポリオール(A1)の粘度が高くなり過ぎ、M’が100未満であると、良好な接着性を発現させることができなくなることがある。M’の調整は、上記水酸基価換算分子量の調整と同様に、開始剤(a)に対して重合させるポリカルボン酸無水物(b)およびアルキレンオキシド(c)のモル数を適宜調整することによって容易に行うことができる。
[開始剤(a)]
上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)を製造する際に使用する開始剤(a)としては、1分子あたり2〜8個の水酸基を有する化合物を用いることが好ましい。そのような水酸基含有化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のアルコール性水酸基を有する化合物が挙げられる。このうちでも特に、活性水素原子(水酸基、カルボキシル基等が有するアルキレンオキシドが開環付加しうる水素原子をいう)を1分子あたり2〜8個有する化合物にアルキレンオキシドを開環付加して得られるポリエーテルポリオールを開始剤(a)として使用することが好ましい。
上記活性水素原子を有する化合物(以下、活性水素化合物という)としては、多価アルコール類、フェノール類を挙げることができる。好ましい具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの2価アルコール類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリンなどの3価アルコール類;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール類;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール類;ショ糖などの8価アルコール類などの多価アルコール類;ビスフェノールAなどのフェノール類が挙げられる。
また、これら活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる水酸基あたりの水酸基価換算分子量が150〜1500のポリエーテルポリオール(水酸基価37〜374mgKOH/g)が開始剤(a)として好ましい。
上記ポリエーテルポリオール以外に、上記活性水素化合物として例示したような多価アルコールを開始剤として使用できる。また、水酸基あたりの水酸基価換算分子量が150〜1500(水酸基価37〜374mgKOH/g)の、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなども開始剤(a)として使用できる。該ポリエステルポリオールとしては、多価アルコール類と多価カルボン酸とを縮合反応させて得られるものや多価アルコール類にラクトンモノマーを開環重合させて得られるものが挙げられる。
上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)を製造する際に触媒(x)として複合金属シアン化物錯体触媒を用いる場合、多価アルコール、または多価アルコールにアルキレンオキシドを付加した水酸基あたりの水酸基価換算分子量が150〜1500(水酸基価37〜374mgKOH/g)のポリエーテルポリオールが開始剤(a)として、好ましい。
本発明において、ポリオールの水酸基価換算分子量はJIS K1557に準拠した方法により測定した水酸基価を用い、下記の式を用いて計算した値をいう。
水酸基価換算分子量=(56100/水酸基価)×ポリオールの水酸基数
ポリエステルエーテルポリオール(A1)の水酸基数は、開始剤(a)の1分子あたりの水酸基数に一致する。本発明において、上記開始剤(a)として、1分子あたり2〜4個の水酸基を有する化合物を使用することがより好ましく、本発明におけるポリエステルエーテルポリオール(A1)の水酸基数は2〜3がさらに好ましい。
開始剤(a)の使用割合は、ポリエステルエーテルポリオール(A1)の合成に用いた全原料の仕込み量の合計100質量%に対して、1〜60質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。開始剤(a)の使用割合が1質量%以上であると開始剤の特性が現れ、上記範囲の60質量%以下であるとポリエステルエーテルポリオール中のポリカルボン酸無水物の量が多いため、得られるプレポリマーを含む硬化性混合物の接着性が優れ、またポリウレタン系塗膜の機械物性が優れたものとなる。
[ポリカルボン酸無水物(b)]
本発明におけるポリカルボン酸無水物(b)としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸などが挙げられる。特に、芳香族のポリカルボン酸無水物は極めて凝集力や極性が高いので、各種被着体への接着性に大きく寄与するため好ましい。そのなかでも、最終的に得られる硬化物の物性の面等から無水フタル酸が特に好ましい。
上記ポリカルボン酸無水物(b)の使用割合は、ポリエステルエーテルポリオール(A1)の合成に用いた全原料の仕込み量の合計100質量%に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%が特に好ましい。ポリカルボン酸無水物(b)の上記使用割合を10質量%以上とすることにより、得られるプレポリマーを含む硬化性混合物の接着性が向上し、またポリウレタン系塗膜の機械的強度を向上させることができる。また、50質量%以下とすることにより、得られるポリエステルエーテルポリオール(A1)の粘度を低く抑えることができる。
[アルキレンオキシド(c)]
本発明において、開始剤(a)に、ポリカルボン酸無水物(b)とともに重合させるアルキレンオキシド(c)としては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドが好ましい。具体例としては、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、およびエチレンオキシドなどが挙げられる。アルキレンオキシドは1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。本発明においては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの使用が好ましく、プロピレンオキシドのみの使用が特に好ましい。
アルキレンオキシド(c)の使用量は上記ポリカルボン酸無水物(b)に対しモル比(c/b)で50/50〜95/5が好ましく、50/50〜80/20がより好ましい。c/b=50/50よりもアルキレンオキシド(c)のモル比を多くすることでポリエステルエーテルポリオール(A1)中にポリカルボン酸無水物(b)の未反応物が残るのを抑え、ポリエステルエーテルポリオール(A1)の酸価を低くすることができる。また、c/b=95/5よりもアルキレンオキシド(c)のモル比を少なくすることで、硬化性混合物の接着性が優れ、またポリウレタン系塗膜の機械物性が優れるプレポリマーを得ることができる。
[触媒]
本発明におけるポリエステルエーテルポリオール(A1)は、上記開始剤(a)に、ポリカルボン酸無水物(b)およびアルキレンオキシド(c)を付加重合させることにより製造できるが、重合反応速度を速める点で、この重合反応に触媒(x)を使用することが好ましい。該触媒(x)としては開環付加重合触媒が好適に用いられ、具体例としては水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ触媒;複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒とも称す);ホスファゼン触媒等が挙げられる。その中でも、Mw/Mnの値がより小さいポリエステルエーテルポリオール(A1)が得られることから、複合金属シアン化物錯体触媒を使用することが特に好ましい。上記複合金属シアン化物錯体としては、亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体に有機配位子が配位したものが好ましい。有機配位子としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類や、tert−ブチルアルコールのようなアルコール類が好ましい。触媒(x)の使用割合は、生成物であるポリエステルエーテルポリオール(A1)に対して0.0001〜0.1質量%が好ましく、0.003〜0.03質量%がより好ましい。触媒(x)の使用割合が0.003質量%以上であると重合が確実に起こり、0.03質量%以下であると残存触媒の悪影響が少ない。
[ポリエーテルポリオール(A2)]
ポリオール(A)は、上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)以外にポリエーテルポリオール(A2)を含むことが好ましい。ポリエーテルポリオール(A2)は1分子あたりの活性水素原子数が2〜8個である活性水素化合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合して得られ、例えばポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール等が挙げられる。開始剤としては水、エチレングルコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの2価アルコール類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリンなどの3価アルコール類;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール類;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール類;ショ糖などの8価アルコール類などの多価アルコール類;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミンなどのポリアミン類;モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;ビスフェノールAなどのフェノール類、前記開始剤(a)と同様のポリエーテルポリオールなどが挙げられる。活性水素原子数は2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。水酸基価は10〜300mgKOH/gであり、10〜200mgKOH/gが好ましく、20〜120mgKOH/gがより好ましい。
開始剤に付加重合させるアルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドが好ましい。具体例としては、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、およびエチレンオキシドなどが挙げられる。アルキレンオキシドは1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。本発明においては、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの使用が好ましく、プロピレンオキシドのみの使用が特に好ましい。
[ポリオール(A3)]
ポリオール(A)は、上記ポリエステルエーテルポリオール(A1)およびポリエーテルポリオール(A2)以外のポリオールであるポリオール(A3)を含んでもよい。ポリオール(A3)としては、水酸基価がポリエーテルポリオール(A2)の範囲外にあるポリエーテルオール、多価アルコール、多価アルコール類と多価カルボン酸とを縮合反応させて得られるポリエステルポリオール、多価アルコール類を開始剤としてラクトンモノマーを開環重合させて得られるポリエステルポリオール、ポリオキシテトラメチレンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。ポリオール(A3)の1分子あたりの水酸基数が2〜8個のポリオールであることが好ましく、2〜4個のポリオールがより好ましい。水酸基価は10〜1250mgKOH/gが好ましく、20〜900mgKOH/gがより好ましく、20〜300mgKOH/gが特に好ましい。
[ポリイソシアネート化合物(B)]
本発明において使用しうるポリイソシアネート化合物(B)(単に、ポリイソシアネート(B)ということもある。)は、特に限定されないが、例えばジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート化合物;キシリレンジイソシアネート、メタテトラメチルキシレンジイソシアネートなどのアラルキルポリイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環族ポリイソシアネート化合物;ならびに、前記ポリイソシアネート化合物から得られるウレタン変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体、およびイソシアヌレート変性体などが挙げられる。
上記ポリオール(A)との反応性に優れていること、および得られる硬化性混合物の粘度が低くなりやすいことから、ポリイソシアネート化合物(B)としては芳香族ジイソシアネートおよびこれらの変性体が好ましい。なかでもジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ならびにこれらの変性体が好ましい。また、ポリイソシアネート化合物(B)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[イソシアネート基末端プレポリマー]
本発明におけるイソシアネート基末端プレポリマーは、ポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られる。該イソシアネート基末端プレポリマーは、上記ポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)を、イソシアネート基の水酸基に対するモル比(イソシアネート基/水酸基)が1.5/1〜3/1となるように反応させて得ることが好ましい。該モル比は、より好ましくは1.7/1〜2.5/1である。該モル比が1.5/1以上であると粘度を低く抑えられ好ましい。また3/1以下であるとイソシアネートモノマー量を低く抑えられ好ましい。イソシアネート基末端プレポリマーにおけるイソシアネート基含有量は1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましく、2〜5質量%が特に好ましい。該イソシアネート基含有量が1質量%以上であると硬化塗膜の強度が大きく好ましい。10質量%以下であると得られた硬化塗膜の伸びが大きく好ましい。
[主剤]
本発明のイソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤は、イソシアネート基末端プレポリマーの他に可塑剤または溶剤を含んでいてもよい。可塑剤としてはジオクチルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステルが挙げられる。溶剤としてはトルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトン等が挙げられる。主剤中の可塑剤または溶剤の割合は、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましい。
[ポリアミン(C)]
本発明に用いるポリアミンとしては、芳香環に直接アミノ基が結合した芳香族系ジアミン化合物、芳香環にアルキレン基を介してアミノ基が結合したジアミン化合物などの、脂肪族アミン、脂環族アミンが挙げられる。
具体的には、ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル −4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、 3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)等の芳香族アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族ジアミン、ピペラジン、ピペラジン誘導体等の脂環族ジアミンが挙げられる。それらのうち芳香族アミンが好ましく、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)が特に好ましい。
[硬化剤]
本発明の硬化剤は、活性水素化合物ポリアミン(C)の他に(A1)を除くポリオールおよび添加剤を含んでも良い。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール(A2)に示したポリエーテルポリオールが好ましい。(A2)の場合、硬化剤に使用するポリエーテルポリオールは、主剤のポリエーテルポリオールと同じでも違っていても良い。硬化剤中のポリオールの割合は活性水素化合物ポリアミン(C)とポリオールの総量に対して90質量%以下が好ましい。ポリオールが90質量%以下であると、塗膜の硬化性に優れ、得られた塗膜の強度に優れる点で好ましい。
[添加剤]
本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材の主剤や硬化剤に必要に応じて添加される添加剤として、例えば以下のものが挙げられる。これらの添加剤は主として硬化剤に配合するが、可塑剤および溶剤は主剤に配合してもよい。
(硬化触媒)
硬化触媒は硬化剤にのみ配合する。
硬化触媒として、ウレタン化反応やウレア反応を促進する公知の触媒が使用でき、例えばトリエチルアミン、モルホリン等の3級アミン化合物、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジオクチル錫マレエート、2−エチルヘキサン酸錫、2−エチルヘキサン酸鉛、などの有機酸錫や有機酸鉛等が挙げられる。
(その他助剤)
可塑剤、溶剤は主剤および硬化剤のどちらにも配合できる、
さらに、必要に応じて、硬化剤にチキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、消泡剤、接着付与剤などを使用することができる。
チキソ性付与剤としては、微粒炭酸カルシウム、アエロジル(日本アエロジル社品)、脂肪族アミド、水添ひまし油などが挙げられる。
酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、亜リン酸トリフェニルなどが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
顔料には、無機顔料と有機顔料とがあり、無機顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などを用いることができる。有機顔料としては、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。
消泡剤としては、ポリシロキサン化合物などが挙げられる。
接着付与剤としてはテルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂を用いることができる。
可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、塩素化パラフィン、石油系可塑剤等が使用できる。また、大豆油脂肪酸(分析例: リノール酸54%、オレイン酸24%、パルミチン酸10% 、リノレン酸8%、ステアリン酸4%)、糠油脂肪酸(分析例:リノール酸38%、オレイン酸41%、パルミチン酸17%、ステアリン酸2%、リノレン酸2%)等の脂肪酸のメチルエステルであるモノカルボン酸メチルエステル混合物も可塑剤として使用できる。
溶剤としては、イソパラフィン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、その硬化性混合物が下地追従性、耐久性に優れ、厚塗りしても発泡せず、得られるポリウレタン系塗膜の強度が高いことより、防水材あるいは床材用途に好適に使用できる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<使用原料>
以下の例で原料として用いたポリオールおよびポリイソシアネートは、以下の通りである。分子量は水酸基価換算分子量である。
ポリエステルエーテルポリオール(A1)
・ポリオールA:分子量1000のポリプロピレンジオールにプロピレンオキシドと無水フタル酸のモル比(PO/無水フタル酸)79/21を共重合させた分子量1937のポリエステルエーテルジオール。
・ポリオールB:分子量700のポリプロピレンジオールにプロピレンオキシドと無水フタル酸のモル比(PO/無水フタル酸)75/25を共重合させた分子量1937のポリエステルエーテルジオール。
ポリエーテルポリオール(A2)
・ポリオールC:開始剤としてグリセリンを用い、KOH触媒を用いて製造した水酸基価42mgKOH/g、分子量4000のポリオキシプロピレントリオール。
・ポリオールD:開始剤としてプロピレングリコールを用い、KOH触媒を用いて製造した水酸基価56mgKOH/g、分子量2000のポリオキシプロピレンジオール。
・ポリオールE:開始剤としてプロピレングリコールを用い、KOH触媒を用いて製造した水酸基価112mgKOH/g、分子量1000のポリオキシプロピレンジオール。
・ポリオールG:開始剤としてグリセリンを用い、KOH触媒を用いて製造した水酸基価56mgKOH/g、分子量3000のポリオキシプロピレントリオール。
その他のポリオール(A3)
・ポリオールF:分子量700のポリプロピレンジオールにプロピレンオキシドとε−カプロラクトン(33/67質量比)を共重合させた分子量2,000のポリエステルエーテルジオール。
ポリイソシアネート化合物(B)
・TDI(略称):住化バイエルウレタン社製、商品名スミジュールT−80
・MDI(略称):日本ポリウレタン社製、商品名ミリオネートMT
[ポリオールAの製造例]
開始剤として、プロピレングリコールに、KOH触媒を用いてプロピレンオキシド(以下、POということもある。)を反応させて製造した、水酸基価112mgKOH/g、分子量1000のポリオキシプロピレンジオールを用いた。上記開始剤に、プロピレンオキシドと無水フタル酸のモル比(PO/無水フタル酸)79/21の混合物を、TBA−DMC(亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体、配位子:tert−ブチルアルコール)触媒を開始剤、POおよび無水フタル酸の仕込み量の合計に対して100ppmの存在下で130℃で7時間反応させた。その後、反応容器内圧の低下が止まったことを確認した後、反応容器から生成物を抜き出した。水酸基価57.9mgKOH/g(水酸基価換算分子量1937)、共重合鎖あたりの平均分子量(M’)618.5、酸価0.14mgKOH/g、開始剤由来の構成単位の含有量50質量%、無水フタル酸由来の構成単位の含有量20質量%のポリオールAを得た。
[ポリオールBの製造例]
開始剤として、プロピレングリコールに、KOH触媒を用いてプロピレンオキシド(以下、POということもある。)を反応させて製造した、水酸基価160.3mgKOH/g、分子量700のポリオキシプロピレンジオールを用いた。まず、開始剤に、プロピレンオキシドと無水フタル酸のモル比(PO/無水フタル酸)75/25の混合物を、TBA−DMC触媒を開始剤、POおよび無水フタル酸の仕込み量の合計に対して100ppmの存在下で130℃で7時間反応させた。その後、反応容器内圧の低下が止まったことを確認した後、反応容器から生成物を抜き出した。水酸基価57.9mgKOH/g(水酸基価換算分子量1937)、共重合鎖あたりの平均分子量(M’)618.5、酸価0.14mgKOH/g、開始剤由来の構成単位の含有量36質量%、無水フタル酸由来の構成単位の含有量30質量%のポリオールBを得た。
<防水材製造例>
[実施例1]
ポリオールC29.3質量部と、ポリオールE7.3質量部、ポリオールA44質量部に、14.4質量部のTDI(NCO/OH比=2.05)を80℃で6時間反応させ、フタル酸ジオクチル5.0質量部を混合し、NCO基含有率3.5質量%(フタル酸ジオクチルを含んだNCO含有率。以下プレポリマーに可塑剤を混合した場合は可塑剤を含んだNCO含有率を表す。)のプレポリマーを得、これを主剤とした。4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.3質量部と、ポリオールD21.0質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル4.9質量部、キシレン3.0質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3.0質量部および硬化触媒として2−エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)0.8質量部を混合した液を硬化剤とした。次いで、これらを主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH+OH)比=1.1)の配合割合で下記条件に従い反応させ防水材用塗膜E1を製造した。配合割合は下記表1に示す。
[実施例2]
ポリオールC29.3質量部と、ポリオールE7.3質量部、ポリオールB44質量部に、14.4質量部のTDI(NCO/OH比=2.05)を80℃で6時間反応させ、フタル酸ジオクチル5.0質量部を混合し、NCO基含有率3.5質量%のプレポリマーを得、これを主剤とした。4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.3質量部と、ポリオールD21質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル4.9質量部、キシレン3.0質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3質量部および硬化触媒として2−エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)0.8質量部を混合した液を硬化剤とした。次いで、これらを主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH+OH)比=1.1)の配合割合で下記条件に従い反応させ防水材用塗膜E2を製造した。配合割合は下記表1に示す。
[実施例3]
ポリオールG22質量部と、ポリオールA58.6質量部に、14.4質量部のTDI(NCO/OH比=2.05)を80℃で6時間反応させ、フタル酸ジオクチル5質量部を混合し、NCO基含有率3.5質量%のプレポリマーを得、これを主剤とした。4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.30質量部と、ポリオールD21.0質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル4.9質量部、キシレン3質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3質量部および硬化触媒として2−エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)0.8質量部を混合した液を硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH+OH)比=1.1)の配合割合で下記条件で反応させ防水材用塗膜E3を製造した。
[比較例1]
ポリオールC29.3質量部と、ポリオールE7.3質量部、ポリオールD44質量部に、14.4質量部のTDI(NCO/OH比=2.05)を80℃で6時間反応させ、フタル酸ジオクチル5.0質量部を混合し、NCO基含有率3.5質量%のプレポリマーを得、これを主剤とした。4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.3質量部と、ポリオールD21質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル4.9質量部、キシレン3.0質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3質量部および硬化触媒として2−エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)0.8質量部を混合した液を硬化剤とした。次いで、これらを主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH+OH)比=1.1)の配合割合で下記条件に従い反応させ防水材用塗膜E4を製造した。配合割合は下記表1に示す。
[比較例2]
ポリオールF110質量部に、25質量部のMDIを80℃で6時間反応させ、NCO基含有率2.76質量%のプレポリマーを得、これを主剤とした。ポリオールD200質量部と、1,4−ブタンジオール9質量部の混合液を主剤/硬化剤の質量比=3.06/1(NCO/OH)比=1.05)の配合割合とし、触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTDLと略す)を主剤と硬化剤の合計質量に対して2質量%および消泡剤(楠本化成社製、ディスパロンX−710)を0.5質量%混合し、下記条件に従い反応させ防水材用塗膜E5を製造した。配合割合は下記表1に示す。
[比較例3]
ポリオールG55.8質量部と、ポリオールA24.8質量部に、14.4質量部のTDI(NCO/OH比=2.05)を80℃で6時間反応させ、フタル酸ジオクチル5質量部を混合し、NCO基含有率3.5質量%のプレポリマーを得、これを主剤とした。4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.30質量部と、ポリオールD21.0質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル4.9質量部、キシレン3質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3質量部および硬化触媒として2−エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)0.8質量部を混合した液を硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH+OH)比=1.1)の配合割合で下記条件で反応させ防水材用塗膜E6を製造した。
[比較例4]
ポリオールD36.6質量部と、ポリオールA44質量部に、14.4質量部のTDI(NCO/OH比=2.05)を80℃で6時間反応させ、フタル酸ジオクチル5質量部を混合し、NCO基含有率3.5質量%のプレポリマーを得、これを主剤とした。4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(溶融物)7.30質量部と、ポリオールD21.0質量部の混合液に、フタル酸ジオクチル4.9質量部、キシレン3質量部、炭酸カルシウム60質量部、顔料ペースト3質量部および硬化触媒として2−エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)0.8質量部を混合した液を硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の質量比=1/1(NCO/(NH+OH)比=1.1)の配合割合で下記条件で反応させ防水材用塗膜E7を製造した。
<防水材用塗膜の製造方法>
上記各実施例、比較例の防水材用塗膜は以下のように製造した。
150mlのディスカップに合計100gとなるよう、所定量の主剤と硬化剤を混合し、細金ベラで2分間十分に均一になるよう攪拌した。その混合物を135mm×280mmの離型剤を塗布したガラス板に流して均等厚みに金ベラで均し23℃、50%RHの条件で7日間放置し、約2mm厚みの防水材用塗膜を得た。
Figure 2011052187
<評価>
(引張強度):JIS A6021に準じて測定した。得られた結果を下記表2に示す。
(伸度):JIS A6021に準じて測定した。得られた結果を下記表2に示す。
(抗張積) :以下の式を用いて計算を行った。得られた結果を下記表2に示す。
(抗張積(MPa・mm))
=20mm×[伸度(%)/100]×引張強度(MPa)
(下地追従性:ゼロスパンテンション試験)
住宅都市整備公団「塗膜防水材の試験方法(KMK法)」の下地ひび割れ抵抗負担指数の測定法に準じて、ゼロスパンテンション試験により評価した。即ち、図1に示すように、あらかじめ、裏面中央部に切り込みを入れておいた6mm厚のスレート板1に防水材用プライマー(AGCポリマー建材社製:サラセーヌP)を0.2kg/m2塗布し、乾燥後、各種防水材を2.0mm厚みになるよう塗布し、硬化させ、防水層2を得た。次いで、20℃、7日養生を経て50mm幅の短冊状にカットし、スレート板1の、あらかじめ切り込みを入れておいた箇所を折った後、引張り試験機にて速度5mm/分で引張り、防水層2のゼロスパン亀裂幅W(切れるときの幅)を測定した。得られた結果を下記表2に示す。
(発泡状況)
塗膜の断面を切断してルーペで確認した。
気泡が見られない場合を○、気泡がある場合をXとした。得られた結果を下記表2に示す。
(下地接着性)
23℃、相対湿度50%の雰囲気で、モルタル板(70×150mm角、20mm厚、JIS−R5201−97、以下同じ)にプライマー組成物(AGCポリマー建材社製 サラセーヌP)を刷毛を用いて0.2kg/m2塗布し、乾燥後に二液ウレタン防水材を手塗りで塗布し、防水材塗布後7日目に防水材とモルタル板の接着強度を引張速度200mm/分で25mm幅の180度剥離強度で測定し、剥離強度50N/25mmを超えた場合○、以下の場合を×とした。得られた結果を下記表2に示す。
(耐熱水性)
防水材用塗膜の製造方法の項目に従って得られたシートをJIS A6021に準じてダンベルにてカットして試験片とし、その試験片を60℃温水に15、30日間浸漬した。一定時間経過した後、それぞれ取り出した試験片を乾燥後、引張強度を測定し、初期値(熱水に浸積していない状態の引張強度)を100%として強度保持率(%)で示した。熱水による引張強度の低下の度合いが小さい、つまり表2に示す強度保持率(%)が大きい程、耐久性が高いと評価できる。
Figure 2011052187
上記表2より、本発明の開始剤(a)に対して、ポリカルボン酸無水物(b)およびアルキレンオキシド(c)を共重合して得られるポリエステルエーテルポリオールを用いた本発明の二液型ポリウレタン塗膜のE1、E2およびE3(実施例1、2および3)は、従来のポリエーテルポリオールを用いたE4(比較例1)および従来のポリエステルエーテルポリオールを用いたE5(比較例2)と比べて、塗膜強度が格段に大きくかつ、伸びも優れていることがわかる。従って、抗張積も大きくゼロスパン値が小さく、下地追従性に優れていることがわかる。また厚塗りしても発泡せず亀裂が発生し難いため、下地接着性にも優れていることも確かめられた。一方、ポリオール(A)の平均官能基数が本願の範囲から外れるE6(比較例3)およびE7(比較例4)を見ると、E6は熱水による引張強度の低下度合いは比較的小さいものの、もともとの引張強度、抗張積および下地追従性が小さい。またE7は抗張積および下地追従性はある程度大きいものの、耐久性が低い。それに対して本発明の塗膜であるE1、E2およびE3は、上記性質に加えて、耐久性も優れていることが確かめられた。
本発明の二液型ポリウレタン系塗膜形成材は、手塗りタイプの常温で硬化する防水材、床材、および防食材として好適である。
1 下地スレート板
2 防水層

Claims (8)

  1. 平均官能基数が2.1〜2.5で、水酸基価10〜300mgKOH/gのポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と、ポリアミン(C)を含む硬化剤との組み合わせからなる二液型ポリウレタン系塗膜形成材であって、前記ポリオール(A)が開始剤(a)に、ポリカルボン酸無水物(b)とアルキレンオキシド(c)とを開環付加反応させて得られたポリエステルエーテルポリオール(A1)を含むことを特徴とする二液型ポリウレタン系塗膜形成材。
  2. 前記ポリオール(A)が、さらに平均官能基数2〜4、水酸基価が10〜300mgKOH/gのポリエーテルポリオール(A2)を含む請求項1記載の二液型ポリウレタン系塗膜形成材。
  3. 前記ポリオール(A)が、ポリエステルエーテルポリオール(A1)を20〜70質量%、ポリエーテルポリオール(A2)を30〜80質量%、かつ両者の合計量として50〜100質量%、含む請求項2記載の二液型ポリウレタン系塗膜形成材。
  4. 前記ポリエステルエーテルポリオール(A1)が、開環付加反応を複合金属シアン化物錯体触媒(x)の存在下で行って得られたポリオールである請求項1〜3のうちいずれか一項記載の二液型ポリウレタン系塗膜形成材。
  5. 前記ポリエステルエーテルポリオール(A1)が、前記ポリカルボン酸無水物(b)が開環した単位を10〜50質量%含む請求項1〜4のうちいずれか一項記載の二液型ポリウレタン系塗膜形成材。
  6. 前記ポリカルボン酸無水物(b)が、無水フタル酸である請求項1〜5のうちいずれか一項記載の二液型ポリウレタン系塗膜形成材。
  7. 前記ポリアミン(C)が、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)である請求項1〜6のうちいずれか一項記載の二液型ポリウレタン系塗膜形成材。
  8. 前記二液型ポリウレタン系塗膜形成材が、手塗りタイプの常温で硬化する防水材、床材、および防食材より選択される一種である請求項1〜7のうちいずれか一項記載の二液型ポリウレタン系塗膜形成材。
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