JP2011051932A - ビシクロヘキサン構造を有するアルコールおよびその製造方法 - Google Patents

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則夫 伏見
Masaru Oguro
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Abstract

【課題】耐熱性の高い新規なアルコールとその好適な製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される
Figure 2011051932

(式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基を示す。)ビシクロヘキシル構造を有する脂環式アルコール、および特定構造の芳香族アルデヒドを水素化することを特徴とする脂環式アルコールの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、化学工業原料、特に(メタ)アクリレート等の合成樹脂原料、合成樹脂添加剤原料として有用な新規アルコール化合物及びその化合物を効率よく製造する方法に関する。
嵩高い構造を有するアルコールは各樹脂のモノマー成分として利用することにより耐候性、適度な耐熱性等に優れることから、各種合成樹脂原料等として有用である(特許文献1)。しかしながら、開示されているアルコールは耐熱性が不十分であることから、耐熱性が求められる用途への使用が限定されてきた。
特開平6−157375号公報
本発明は、耐熱性の高い新規なアルコールとその好適な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するためにビシクロヘキシル及び剛直な化学構造を有するアルコールの合成を検討してきた。その結果、芳香族アルデヒドの水添反応により合成することにより、目的とするアルコールが得られることを見出し、この知見に基いて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記式(1)で示される脂環式アルコールを提供するものである。
Figure 2011051932

(式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基を示す。)
また、本発明は、下記式(2)で示される脂環式アルコールを提供する。
Figure 2011051932
また、本発明は、下記式(3)で示される芳香族アルデヒドを水素化することを特徴とする式(1)で示される脂環式アルコールの製造方法を提供する。
Figure 2011051932

(式(3)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基を示す。)
本発明により剛直な化学構造を有するアルコール化合物が高収率で得られた。本アルコール化合物は耐熱性が高いという特長を有し、化学工業原料、特に合成樹脂原料、合成樹脂添加剤原料として利用される工業的価値の高いものである。
実施例1における生成物のIRスペクトル測定結果 実施例1における生成物のH−NMR測定結果 実施例1における生成物の13C−NMR測定結果 実施例1における生成物の13C−NMR測定結果(NNEモード)
本発明の脂環式アルコールは下記式(1)に示されるものである。
Figure 2011051932

(式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基を示す。)
式(1)中のRは水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基である。ここで、アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよく、また、環式構造を有していてもよい。また、アリール基としては、フェニル基や、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基等によって置換されたフェニル基等が挙げられる。Rの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、フェニル基、ヨードフェニル基、(ジ)ヒドロキシフェニル基、メトキシヒドロキシフェニル基、エトキシヒドロキシフェニル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
本発明の脂環式アルコールは、下記式(2)で示されるアルコール、即ち4―ヒドロキシメチルビシクロヘキサンであることが特に好ましい。
Figure 2011051932
式(1)のアルコールは、式(3)で示される芳香族アルデヒドを下記反応スキームで水素化することで得ることが出来る。式(3)中のRは式(1)と同様であり、水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基である。ここで、アルキル基は、直鎖、分岐のいずれでもよく、また、環式構造を有していてもよい。また、アリール基としては、フェニル基や、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アルコキシ基等によって置換されたフェニル基等が挙げられる。Rの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、フェニル基、ヨードフェニル基、(ジ)ヒドロキシフェニル基、メトキシヒドロキシフェニル基、エトキシヒドロキシフェニル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
Figure 2011051932

(式(3)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基を示す。)
(3)式で表される芳香族アルデヒドは公知の方法、例えば、Synlett, 6, 2000年, 856−858頁や、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 67, 8, 1994年, 2329−2332頁に記載の方法で合成することができる。
<反応スキーム>
Figure 2011051932
式(3)で示される芳香族アルデヒドの水素化に使用する触媒としてはロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金等の白金族元素を単独または組み合わせて使用する。これらの触媒成分は炭素、アルミナ、チタニア、シリカ等に担持させて使用するのが好適である。触媒の使用量は芳香族アルデヒド100質量部に対して白金族元素換算で0.025〜0.5質量部(5質量%担持触媒換算で0.5〜10質量部)程度とするのが好ましい。触媒は乾燥品、含水品のいずれを用いた場合も同様の結果を与える。
反応温度は50〜200℃が好ましく、80〜170℃が特に好ましい。反応圧力は0.1〜20MPaが好ましく1〜15MPaが特に好ましい。
本発明にかならずしも溶媒は必要としないが、原料が固体の場合などに可溶化するため適宜使用することは可能である。使用される反応溶媒は限定されないが、上記水素化反応条件で水素化されないものを使用する。n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド系溶剤;THF、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられる。
反応方式は回分式、連続式のいずれも可能である。この場合に触媒は液体の反応媒体中に懸濁していても良いし、ペレット、顆粒、球、押し出し成型品の様な成形体の形で使用し、固定床で実施することも可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、生成物の構造同定に際しては以下の分析機器を使用した。

核磁気共鳴装置:日本電子EX-270(内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS))
赤外分光光度計:ThermoFischer Nicolet-6700
ガスクロマトグラフ質量分析装置:Agilent Technologies 5975C VL MSD /6850 GC
<実施例1>
4−ヒドロキシメチルビシクロヘキサンの合成
5000mlオートクレーブ内に、溶媒として2−プロパノール(IPA、和光純薬、特級)910g、三菱ガス化学製ビフェニルアルデヒド364g(2.0mol)および5%Ru/Al(N.E.CHEMCAT製)7.3gを投入後、水素で10MPaに加圧し、150℃で8h攪拌した。冷却後、窒素雰囲気下で触媒を濾過した。ロータリーエバポレーターで溶媒除去後、減圧蒸留を行い、目的化合物である4−ヒドロキシメチルビシクロヘキサンを得た(収率80%、純度99%)。
生成物の構造同定は以下の手法で行った。まず生成物をガスクロマトグラフ質量分析装置(GC−MS)によりEI法で調べたところ、分子イオンピークm/z=196は極弱く観測された他、下記(2)式を支持するフラグメントm/z=178,163,150,149等が認められた。
Figure 2011051932
生成物のIRスペクトルをATR法で測定した結果を図1に示した。水酸基を示す3262cm−1のブロードな吸収と1034cm−1のシャープな吸収が認められた他、シクロヘキサン環を示す2915cm−1,2848cm−1,1447cm−1の吸収が認められた。
生成物のH−NMRおよび13C−NMRの測定結果をそれぞれ図2,3に示した(CDCl溶媒)。図2の2.1ppmにOHのシングレットが認められる。3.5ppmにCH−OHのメチレンを示すダブレットのシグナルが2本、積分比3:2で認められる。式(2)で表記される4−ヒドロキシメチルビシクロヘキサンはトランス、シスの2異性体よりなるが、3.5ppmの2本のシグナルはそれぞれの異性体に帰属され、その積分比が異性体比率となる。0.7〜2.0ppmにシクロヘキサン環由来のシグナルが認められるが、ブロードでカップリングも複雑であり、解析は困難である。図3の13C−NMRに加え、DEPT,NNE等のモードでの測定結果から、65,68ppmのシグナルがCH−OH、37〜44ppmがメチン、25〜31ppmがメチレンをそれぞれ示しており、式(2)の構造を支持することがわかった。NNEモードでの測定結果を拡大して図4に示した。各領域において、高磁場側と低磁場側の積分比が3:2となる異性体の組合せを示唆するシグナルが認められる。この比率はH−NMRでの異性体比率の考察結果と一致する。またシクロヘキサン環に置換基がある場合エクアトリアルの方が、アキシャルよりもシグナルが低磁場シフトする傾向にある。1,4−位置換シクロヘキサン環の場合、トランス(エクアトリアル、エクアトリアル)、シス(アキシャル、エクアトリアル)であることから、生成物の異性体組成はシス:トランス=3:2であると考えられる。
以上、GC−MS,IR,NMRの結果より生成物は目的とする式(2)の4−ヒドロキシメチルビシクロヘキサンであると同定された。

Claims (3)

  1. 下記式(1)で示される脂環式アルコール。
    Figure 2011051932

    (式(1)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基を示す。)
  2. 下記式(2)で示される脂環式アルコール。
    Figure 2011051932
  3. 下記式(3)で示される芳香族アルデヒドを水素化することを特徴とする式(1)で示される脂環式アルコールの製造方法。
    Figure 2011051932

    (式(3)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはハロゲン基を示す。)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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