JP2011049413A - 圧電デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】基板上の素子配置、配線の自由度を上げる微小構造体の圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイス1において、表面に絶縁層14を備えた導電層13を上面に備え、複数のダイアフラム構造15を内部に並列して備えた基板10と、基板10の絶縁層14上に、ダイアフラム構造15に対応して配置された複数の圧電素子20であって、圧電体膜22の自発分極Pが、下部電極21側から上部電極23側に向かう向きに配向しており、下部電極21および上部電極23が、複数の圧電素子20間で互いに離間して設けられた個別電極である複数の圧電素子20と、複数の圧電素子20の上部電極23のそれぞれを、導電層13に電気的に接続する電気配線28とを備える。
【選択図】図1B

Description

本発明は、液体吐出装置(インクジェット式記録ヘッド)およびpMUT(Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer:圧電型超微細加工超音波トランスデューサー)などのMEMS(Micro Electro Mechanical system:マイクロエレクトロメカニカルシステム)圧電デバイスに関するものである。
近年、高性能な圧電体膜を利用したMEMSデバイスの開発が盛んに行われている。MEMSデバイスにおいては、圧電体膜を直接デバイス基板に成膜する製造方法が多く採用されており、この製造方法は、例えば、インクジェットヘッド(液体吐出装置)や圧電型超微細加工超音波トランスデューサー(pMUT)など高密度アレイ状に圧電素子を配列することを要するデバイスにおいて有効である。
デバイス基板に圧電体膜を成膜する方法としては、スパッタ法、CVD法、ゾル・ゲル法などが知られている。また、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの材料を用い、スパッタ法等で基板上に成膜された圧電体膜の中には、その自発分極が、成膜直後の状態で基板側(下部電極層側)から膜表面(上部電極層側)に向かって配向するものがある。
図6は、ダイアフラム構造上にスパッタリング法により成膜して形成されたPZT膜を有する圧電素子1つについての変位量の電圧依存性を示すものである。図6において、横軸である電圧の正側は、下部電極の電位を上部電極の電位よりも高くした場合を示し、負側は、下部電極の電位を上部電極の電位よりも低くした場合を示す。図6から、下部電極の電位を上部電極の電位よりも高くした方が、上部電極の電位を下部電極の電位より高くした場合に比較して、変位量を大きくすることができ、かつ履歴のない変位を示すことがわかる。
従って、このような下部電極側から上部電極側に向かう自発分極を有する圧電体膜を備えた圧電デバイスを実用化する場合、圧電素子駆動時の電界の向きを圧電体膜の自発分極の向きと一致させるために、下部電極を上部電極より高い電位とする必要がある。
そのためには、(1)アレイ状に配列された圧電素子の各下部電極を共通電極とし、上部電極側を素子毎に個別化してアドレス電極として、マイナス電圧を印加する、または(2)アレイ状に配列された圧電素子の上部電極を共通電極として、下部電極側を個別化してアドレス電極として、プラス電圧を印加するという2つの方法がある。
一般に流通している電源や駆動ICはプラス電圧対応品であり、マイナス電圧対応品は、コスト高、小型化の遅れなどプラス電圧対応品と比較して実用化に当たっては不利な点が多い。従って、実用化するには、(2)のプラス電圧駆動する方法が好ましい。
(2)の方法では、上部電極を共通電極とするので、各々の素子の上部電極を連結する必要がある。しかしながら、デバイス基板は狭い限られた面積に圧電素子、個別配線などが凝集しているため、デバイス基板上に全体に亘るような共通電極を形成するのが困難な場合が多い。現実的には、デバイスの大きさや素子の配置構成は、デバイス基板上における電気配線領域の確保のために制限を受ける場合が多い。
特許文献1では、圧電素子が搭載されているデバイス基板とは別に、配線用のインターポーザー(天板)を上部電極層の上方に配設し、そこに個別電極、共通電極の配線を形成することにより、電気配線の十分な引き回し領域を確保した装置が提案されている。この方法により、デバイス基板上における素子の配置構成の自由度は向上するものと考えられる。
特開2008−179095号公報
しかしながら、特許文献1に記載の天板を備えたデバイスを製造する場合、天板に貫通孔を形成し、導電性材料を貫通孔に充填し、さらにその天板を精度良くデバイス基板と接合する、という煩雑な工程を経る必要があり、歩留まりやコストの面で課題が多い。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板上にアレイ状に配列された圧電素子の上部電極を共通電極とし、下部電極側を個別化してアドレス電極として、プラス電圧駆動を行うことができるMEMS圧電デバイスであって、基板上の素子配置および電気配線領域を確保可能とすると共に、歩留まりを向上させ、コストを抑制することが可能な圧電デバイスを提供することを目的とするものである。
本発明の圧電デバイスは、表面に絶縁層を備えた導電層を上面に備えた基板と、
該基板の前記絶縁層上に並列して配置された、該絶縁層側から下部電極、圧電体膜および上部電極がこの順に積層されてなる複数の圧電素子であって、該圧電体膜の自発分極が、前記下部電極側から前記上部電極側に向かう向きに配向しており、前記下部電極および前記上部電極が、該複数の圧電素子間で互いに離間して設けられた個別電極である複数の圧電素子と、
前記複数の圧電素子の前記上部電極のそれぞれを、前記導電層に電気的に接続する電気配線とを備えていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明の圧電デバイスは、前記複数の圧電素子の前記上部電極のそれぞれが前記電気配線により前記導電層に電気的に接続されていることにより、前記複数の圧電素子の前記上部電極が、一様の電位が与えられる共通電極化されていることを特徴とするものである。
本発明の圧電デバイスは、前記基板として、複数のダイアフラム構造を内部に並列して備えたものを用い、前記複数の圧電素子が、前記複数のダイアフラム構造にそれぞれ対応して配置して構成することができる。
圧電素子が、ダイアフラム構造にそれぞれ対応して配置されているとは、圧電素子とダイアフラム構造が1:1で対応するものに限らず、複数:1、あるいは1:複数の割合で対応して配置されていてもよい。
本発明の圧電デバイスにおいては、前記基板が、シリコン基板を含み、前記導電層が、該シリコン基板に、導電性不純物がドープされて導電性が付与された層であることが好ましい。
また、前記絶縁層は、前記下部電極が形成された部分に隣接する領域に、前記導電層まで貫通する孔を有し、前記電気配線は、前記上部電極から該孔を通って前記導電層に至るように配置されていることが好ましい。なお、前記電気配線は、下部電極に接触しないように配線されていれば足りるが、絶縁材料により下部電極に対する絶縁パスを設けた上で配線することが望ましい。
本発明の圧電デバイスは、前記基板の裏面に、前記複数のダイアフラム構造により構成される空間の各々と個別に連通する孔を有する薄板を備え、前記空間が加圧液室を構成し、前記孔が該加圧液室内の液体を外部に吐出する液体吐出口を構成してなる液体吐出装置として構成することができる。
また、本発明の圧電デバイスは、前記複数の圧電素子を駆動させることにより圧力波を発生すると共に、該圧力波の反射波を検知する超音波トランスデューサーとして構成することができる。
本発明の圧電デバイスが、超音波トランスデューサーである場合、前記複数のダイアフラム構造が、同心円状に配置されていることが好ましい。
本発明の圧電デバイスは、表面に絶縁層を備えた導電層を上面に備え、複数のダイアフラム構造を内部に並列して備えた基板上に、下部電極側から上部電極側に向かう向きに配向した圧電体膜と、下部電極および上部電極が、複数の圧電素子間で互いに離間して設けられた個別電極である圧電素子を複数備えており、さらに、複数の圧電素子の上部電極のそれぞれを、導電層に電気的に接続する電気配線とを備えているので、該導電層を介して複数の圧電素子の上部電極を、一様の電位が与えられる共通電極化することができる。上部電極は、基板の導電層に接続すればよいことから、上部電極用の電気配線は、基板上で大きく引き回す必要がなく、基板上での上部電極用の電極配線のための領域を削減することができ、従って、基板上の素子配置および下部電極用の電気配線のための配線領域の確保が可能となる。
本発明の圧電デバイスにおいては、上部電極を共通電極化するに当たり、特許文献1のように、デバイス基板とは別の天板を備える必要がないから、製造工程も簡単化でき、従って、歩留まりを向上させ、コストを抑制することができる。
また、本発明の圧電デバイスにおいて、絶縁層が、下部電極が形成された部分に隣接する領域に導電層まで貫通する孔を有し、電気配線が上部電極から該孔を通って前記導電層に至るように配置されていれば、該上部電極用の電気配線の、基板上における配線領域を従来と比較して大幅に削減することが可能となるので、基板上の面積的な余裕ができる。従って、圧電素子の基板上への配列の自由度および下部電極側の電気配線等の配線の自由度を大幅に向上させることができる。
第1の実施形態の圧電デバイス(液体吐出装置)の一部を示す平面図 図1Aに示す圧電デバイスの1B−1B断面図 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その1) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その2) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その3) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その4) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その5) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その6) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その7) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その8) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その9) 第1の実施形態の圧電デバイスの製造工程を示す断面図(その10) 本発明の圧電デバイスを備えたインクジェット式記録装置の概略構成を示す図 図5のインクジェット式記録装置の部分上面図 第2の実施形態の圧電デバイス(pMUT)の要部概略を示す平面図 図5Aに示す圧電デバイスの5B−5B断面図 本発明の実施形態の圧電デバイスに用いられる圧電体の圧電特性を示すグラフ
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施形態の圧電デバイス>
本発明の第1の実施形態のMEMS圧電デバイスである液体吐出装置(インクジェット式記録ヘッド)1について説明する。図1Aは本発明に係る第1の実施形態の圧電デバイスの平面図、図1Bは図1Aの圧電デバイスの1B−1B断面図(圧電素子の厚み方向の断面図)、図2A〜図2Iは圧電デバイスの製造工程を示す断面図である。視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。
インクジェット式記録ヘッド1は、表面に絶縁層14を備えた導電層13を上面に備え、複数のダイアフラム構造15を内部に並列して備えた基板10と、基板10の絶縁層14上に、複数のダイアフラム構造15にそれぞれ対応して配置された、絶縁層14側から下部電極21、圧電体膜22および上部電極23がこの順に積層されてなる複数の圧電素子20と、各圧電素子20の上部電極23のそれぞれを、導電層13に電気的に接続する電気配線28とを備えている。また、基板10上には、各圧電素子20の下部電極21を、それぞれ図示しないプラス駆動ICに接続するための電気配線26が設けられている。
さらに、基板10の裏面に、各ダイアフラム構造15により構成される空間の各々と個別に連通する孔35aを有する薄板(ノズルプレート)35を備えている。このダイアフラム構造15とノズルプレート35により囲まれた空間は、インクジェット式記録ヘッドの加圧液室を構成し、液体(ここでは、インク)が貯留される。また、ノズルプレート35の孔35aは、加圧液室内のインクを外部に吐出する液体吐出口を構成するものである。
ダイアフラム構造15は基板の加工により形成されており、上壁がダイアフラム(振動板)15aを構成するものとなっている。このダイアフラム15a上に配置されている圧電素子20に印加する電界強度を増減させて圧電素子20を伸縮させ、この伸縮の結果ダイアフラム15aを凹凸変位させることにより、加圧液室への減加圧がなされ、液体の吐出や吐出量の制御が行われる。
図1Bに示す基板10は、Siハンドル層11、SiO2層12、導電層であるp型導電性の高ドープSiデバイス層13からなるSOI基板のSiデバイス層13表面にさらに絶縁層としてSiO2膜14を設けたものである。なお、基板10としては、表面に絶縁層14を備えた導電層13を上面に備えたものであれば、その材料に特に制限ないが、特にシリコンは加工性が良好であるため好ましい。例えば、シリコン基板を用いる場合、具体的には、基板の表面から導電性不純物をドープしてその拡散層が設け、拡散層表面に絶縁層を形成したものを用いる。なお、デバイス層、あるいは拡散層は、比抵抗が0.01Ω・cm程度以下となる程度の濃度で導電性不純物がドープされることにより導電層として機能する。その他、ステンレス(SUS)、シリコンカーバイド、ゲルマニウム等の基板を用いてもよい。
基板10の絶縁層14は、各圧電素子20の下部電極21が形成されている部分に隣接する領域に、導電層13まで貫通する孔14aを有する。上部側の電気配線28が下部電極21や下部側の電気配線26に接触しないように、孔14aの素子側に樹脂等の絶縁物質から形成される絶縁パス24が設けられている。この絶縁パス24上に該パス24に沿って、上部電極23から導電層13に至る電気配線28が形成されている。
圧電素子20は、その圧電体膜22の自発分極Pが、下部電極21側から上部電極23側に向かう向き(自発分極が図中上向き)に配向しており、下部電極21および上部電極23は、該複数の圧電素子間で互いに離間して設けられた個別電極である。圧電体膜22に対して、下部電極21と上部電極23とにより厚み方向に電界が印加されるようになっている。ここでは、複数の圧電素子の各上部電極23は電気配線28により、共通電極となる導電層13にそれぞれ接続され、共通電極化されて基準電位(一般には接地)とされている。一方、下部電極21はアドレス電極として、電気配線26によりプラス駆動ICに接続されて、正の駆動電位が与えられる。
下部電極21および下部側電気配線26の主成分としては特に制限なく、Au,Pt,Ir,IrO,RuO,LaNiO,及びSrRuO等の金属又は金属酸化物、及びこれらの組合せが挙げられる。
上部電極23および上部側電気配線28の主成分としては特に制限なく、下部電極21で例示した材料、Al,Ta,Cr,及びCu等の一般的に半導体プロセスで用いられている電極材料、及びこれらの組合せが挙げられる。下部電極21と上部電極23の厚みは特に制限なく、50〜500nmであることが好ましい。
圧電体膜22は、PZT系、BaTiO、LiNbOなど、特に限定されるものではないが、下記一般式(P)で表される1種又は複数種のペロブスカイト型酸化物からなる圧電体膜が好ましい。
一般式A・・・(P)
(式中、A:Aサイト元素であり、Pbを含む少なくとも1種の元素、
B:Bサイトの元素であり、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Sc,Co,Cu,In,Sn,Ga,Zn,Cd,Fe及びNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、
O:酸素原子。
a=1.0かつb=1.0である場合が標準であるが、これらの数値はペロブスカイト構造を取り得る範囲内で1.0からずれてもよい。)
圧電体膜22の膜厚は特に制限なく、通常1μm以上であり、例えば1〜10μmである。
本実施形態の圧電デバイス1の製造方法の一例を層構成の具体例と共に説明する。
図2Aに示すように、まず、Siハンドル層11、SiO2層12、導電層である比抵抗0.005Ω・cm未満のp型導電性の高ドープSiデバイス層13からなるSOI基板のSiデバイス層13表面にさらに絶縁層としてSiO2膜14を設けた基板10を用意する。各層の厚みは、一例として、Siデバイス層13の厚みが10μm、SiO2層12の厚みが1μm、Siハンドル層11の厚みは600μm、表面に設けられたSiO2膜14の厚みが1μmである。
次に、図2Bに示すように、基板10の内部にダイアフラム構造15および図示しないインク流路を、ボッシュ法を用いたドライエッチングにより基板10の裏面側からエッチング形成する。ダイアフラム構造15を構成する空間の開口サイズは一例として、400μm×800μmであり、このようなダイアフラム構造15を、基板内部にピッチ600μm程度で二次元アレイ状に多数形成する。
図2Cに示すように、SiO膜14上にスパッタリング法により下部電極層21Aを成膜する。下部電極層21Aは、一例として、Ti20nm/Pt100nmである。
図2Dに示すように、下部電極層21A上に圧電体膜22Aをスパッタリング法により成膜する。圧電体膜22Aは、一例として、5μmのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)膜である。
次に、図2Eに示すように、ドライエッチングにより圧電体膜22Aを個別パターン化する。
さらに、図2Fに示すように、ドライエッチングにより下部電極層21Aを個別化する。なお、下部電極21Aの個別化と共に、個々の下部電極21を図示しない駆動ICに電気的に接続するための電気配線26をパターニング形成する。
図2Gに示すように、SiO2膜14の、各圧電素子20の近傍に小窓を開け、高ドープシリコン層13を露出させる。
図2Hに示すように、紫外線硬化型樹脂であるSU−8をパターン形成し、圧電体膜22の上面から高ドープシリコン層までのSU−8からなる絶縁パス24を確保する。
図2Hに示す素子形成面上に、上部電極層を一様に形成した後、一般的なリソグラフィ法、エッチング法等を用い、図2Iに示すように、上部電極23および上部電極23を導電層13に電気的に接続する配線28を形成する。上部電極23および配線28は、一例として、Ti20nm/Au200nmとする。各圧電素子20の上部電極23は、配線28により、共通電極として機能する導電層13にそれぞれ電気的に接続されることにより、結果として共通電極化されている。
最後に、図2Hに示すように、別途作成した、各ダイアフラム構造15に対応した吐出口35aを有するノズルプレート35を、基板10の裏面に接合する。このように、基板10の裏面にノズルプレート35が接合され、各ダイアフラム構造15により構成される空間は加圧液室を構成することとなる。
以上のようにして、本実施形態の圧電デバイスであるインクジェット式記録ヘッド1を作製することができる。
圧電体膜の形成方法は、上述のスパッタリング法に限定されず、CVD法、ゾル・ゲル法、PLD(パルスレーザデポジション)法などであってもよい。電極および圧電体膜を直接構造体に成膜することが量産、歩留まり向上の観点から好ましい。なお、圧電体膜のスパッタリングに際しては、例えば、特開2008−081801号公報、特開2008−081802号公報、特開2008−106353号公報等に記載の成膜条件を用い、特開2008−081803号公報に記載のスパッタ装置を用いることができる。これらの成膜条件およびスパッタ装置を用いたスパッタリング法により、非常に圧電特性の良好な、下部電極側から上部電極側に向かう自発分極Pの圧電体膜を得ることができる。圧電体膜はPZT系に限るものではなく成膜時に自発分極するものであれば如何なる圧電材料からなるものであってもよい。なお、圧電体膜の成膜にPLD法、CVD法,ゾル・ゲル法を用いても膜厚方向に非対称の電荷分布を有していれば、同様の自発分極を得ることができる(Applied Physics Letters, vol.68、p.484; Journal of Japanese Applied Physics, vol.38, p.5364等参照)。
本実施形態の圧電デバイス1は、上部側の電気配線28は、絶縁層14に設けられた孔14aを通って導電層13に接続される非常に簡単な構成とされている。従って、基板10の素子形成面には、下部電極21の電気配線26のための面積的な余裕があり、その配線の自由度が高い。また、従来、上部側の電気配線、下部側の電気配線の形成のために基板上における圧電素子密度が制限されていたが、下部電極の電気配線の形成領域を確保すれば足りることから、基板上の圧電素子密度を従来と比較して高めることができる。圧電素子密度を高めることにより、インクジェット式記録ヘッドにおいては、より解像度の高いものとすることができる。さらに、特許文献1に記載の、圧電素子上に上部側電気配線のための天板を別途備える場合と比較して、小型かつ安価に構成することができる。
<インクジェット式記録装置>
図3および図4を参照して、上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド1を備えたインクジェット式記録装置100の構成例について説明する。図3は装置全体図であり、図4は部分上面図である。
図示するインクジェット式記録装置100は、インクの色ごとに設けられた複数のインクジェット式記録ヘッド(以下、単に「ヘッド」という)1K,1C,1M,1Yを有する印字部102と、各ヘッド1K,1C,1M,1Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、印字部102のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送する吸着ベルト搬送部122と、印字部102による印字結果を読み取る印字検出部124と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とから概略構成されている。
印字部102をなすヘッド1K,1C,1M,1Yが、各々上記実施形態のインクジェット式記録ヘッド1である。
デカール処理部120では、巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム130により記録紙116に熱が与えられて、デカール処理が実施される。
ロール紙を使用する装置では、図4のように、デカール処理部120の後段に裁断用のカッター128が設けられ、このカッターによってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃128Aと、該固定刃128Aに沿って移動する丸刃128Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃128Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃128Bが配置される。カット紙を使用する装置では、カッター128は不要である。
デカール処理され、カットされた記録紙116は、吸着ベルト搬送部122へと送られる。吸着ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)となるよう構成されている。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示略)が形成されている。ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部102のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによってベルト133上の記録紙116が吸着保持される。
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図示略)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図4上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図4の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。
吸着ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部102の上流側に、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹き付け、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後に乾きやすくなる。
印字部102は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図5を参照)。各印字ヘッド1K,1C,1M,1Yは、インクジェット式記録装置100が対象とする最大サイズの記録紙116の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙116の送り方向に沿って上流側から、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応したヘッド1K,1C,1M,1Yが配置されている。記録紙116を搬送しつつ各ヘッド1K,1C,1M,1Yからそれぞれ色インクを吐出することにより、記録紙116上にカラー画像が記録される。
印字検出部124は、印字部102の打滴結果を撮像するラインセンサ等からなり、ラインセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まり等の吐出不良を検出する。
印字検出部124の後段には、印字された画像面を乾燥させる加熱ファン等からなる後乾燥部142が設けられている。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けた方が好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部142の後段には、画像表面の光沢度を制御するために、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144では、画像面を加熱しながら、所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で画像面を加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして得られたプリント物は、排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット式記録装置100では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り替える選別手段(図示略)が設けられている。
大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列にプリントする場合には、カッター148を設けて、テスト印字の部分を切り離す構成とすればよい。
インクジェット式記録装置100は、以上のように構成されている。
<第2の実施形態の圧電デバイス>
本発明の第2の実施形態のMEMS圧電デバイスである圧電型超微細加工超音波トランスデューサー(pMUT)2について説明する。pMUTは例えば超音波内視鏡スコープの超音波プローブとして使われ、人体内の体腔内壁に向けて超音波を照射し、そのエコー信号から体内の状態を画像化して診断することができる。図5Aは本発明に係る第2の実施形態の圧電デバイス2の平面図、図5Bは図5Aの圧電デバイス2の5B−5B断面図である。
本実施形態のpMUT2は、表面に絶縁層44を備えた導電層43を上面に備え、複数のダイアフラム構造45を内部に並列して備えた基板40と、基板40の絶縁層44上に、複数のダイアフラム構造45にそれぞれ対応して配置された、絶縁層44側から下部電極51、圧電体膜52および上部電極53がこの順に積層されてなる複数の圧電素子50と、各圧電素子50の上部電極53のそれぞれを、導電層43に電気的に接続する電気配線58とを備えている。また、基板40上には、各圧電素子50の下部電極51を、それぞれ図示しないプラス駆動ICに接続するための電気配線56が設けられている。
基板40の絶縁層44は、各圧電素子50の下部電極51が形成されている部分に隣接する領域に、導電層53まで貫通する孔54aを有する。上部側の電気配線58が下部電極51や下部側の電気配線56に接触しないように、孔54aの素子側に樹脂等の絶縁物質から形成される絶縁パス54が設けられている。この絶縁パス54上に該パス54に沿って、上部電極53から導電層43に至る電気配線58が形成されている。
第1の実施形態の圧電デバイス1における各構成要素と同一名称の構成要素は、その材料、機能についてもほぼ同一であるため、同一部分については詳細な説明を省略する。
図5Aおよび図5Bに示す本実施形態のpMUTは、基板40のベースとしてシリコン基板41を用いている。このシリコン基板41は、上層に導電性不純物が高濃度にドープされた導電性不純物の拡散層43を導電層として備え、その拡散層43上にSiOからなる絶縁層44を備えている。一例として、シリコン基板41の厚みは2μm、SiO244の厚みは0.3μmである。
この基板40に多数設けられているダイアフラム構造45は、円柱状に形成されており、基板41裏面における開口形状が直径Dが200μmの円形である。ダイアフラム構造45は、基板40に同心円状に多数配置されている。図5Aにおいて、ダイアフラム構造45に対応して基板40上に16個の圧電素子が同心円状に配置されているが、これは模式的に示したに過ぎず、実際には、5〜10mm角程度の領域に数十〜数百のダイアフラム構造および圧電素子が配置される。
圧電素子50の圧電体膜52は、一例として、2μmのPZT膜である。上記第1の実施形態と同様に、圧電体膜52は、その自発分極Pが、下部電極51から上部電極53に向かう向きであればよく、PZTに限るものではない。
上記のpMUT2は、第1の実施形態のインクジェット式記録ヘッド1とほぼ同様の製造方法で製造することができる。
pMUT2は、圧力波としての超音波を発生させ、対象物により反響して戻ってきた圧力波(超音波)を検知するものである。ここで、ダイアフラム45aは圧力波を発生するトランスデューサーとして機能すると共に、圧力波を検知するセンサとして機能する。より詳細には、圧電素子50への電界強度を増減させることにより圧電体膜52を伸縮させて、ダイアフラム45aを振動させ、圧力波を発生する。さらに、その反射波(圧力波)によるダイアフラム45aの振動に伴い圧電体膜52に力が加えられ、電圧を生じる。圧電体膜52には、ダイアフラム45aの変位量に応じた電圧が生じ、この電圧が反響シグナルとして検出される。
pMUT2の各ダイアフラム45aから得られた反響シグナルに基づいて映像化することで、対象物の形状を知ることができる。なお、pMUTにおいては、基板上に配置されている圧電素子(基板に形成されているダイアフラム構造)が高密度であればあるほど、映像の解像度が向上する。
なお、ダイアフラム構造45は必ずしも同心円状に配置する必要はない。しかしながら、同心円状にダイアフラム構造45を備えることにより、同一の数であっても、他の配列と比較して解像度を向上させることができ、好ましい。
第1の実施形態の場合と同様に、本実施形態の圧電デバイス2においても、上部電極53の電気配線58を基板40上で引き回さない構造であるため、アドレス電極である下部電極の配線の自由度を高め、また、基板40上の電気配線による圧電素子密度の制限を緩和することができ、圧電素子をより高密度に配置することが可能となる。また、上部電極のために別途天板等を備える場合と比較して、容易に製造することができ、かつコストを抑制することができる。
また、pMUTにおいては、特許文献1に記載のような、上部電極配線のために素子上部に配置する天板を備えると、反射波が天板に回り込む等することにより、検出感度が著しく低下すると考えられる。一方、本実施形態の圧電デバイス2は、追加の天板を備えることなく、圧電素子50を露出させる構成であるため、検出感度を向上させることができると考えられる。
このような圧電型超微細加工超音波トランスデューサーは、例えば、超音波内視鏡に組み込んで使用することができる。
1 圧電デバイス(インクジェット式記録ヘッド)
2 圧電デバイス(圧電型超微細加工超音波トランスデューサー)
10、40 基板
13 導電層
14 絶縁層
15、45 ダイアフラム構造
20、50 圧電素子
21、51 下部電極
22、52 圧電体膜
23、53 上部電極
24、54 絶縁パス
26、56 下部側電気配線
28、58 上部側電気配線
35 ノズルプレート
100 インクジェット式記録装置

Claims (7)

  1. 表面に絶縁層を備えた導電層を上面に備えた基板と、
    該基板の前記絶縁層上に並列して配置された、該絶縁層側から下部電極、圧電体膜および上部電極がこの順に積層されてなる複数の圧電素子であって、該圧電体膜の自発分極が、前記下部電極側から前記上部電極側に向かう向きに配向しており、前記下部電極および前記上部電極が、該複数の圧電素子間で互いに離間して設けられた個別電極である複数の圧電素子と、
    前記複数の圧電素子の前記上部電極のそれぞれを、前記導電層に電気的に接続する電気配線とを備えていることを特徴とする圧電デバイス。
  2. 前記基板が、複数のダイアフラム構造を内部に並列して備えたものであり、
    前記複数の圧電素子が、前記複数のダイアフラム構造にそれぞれ対応して配置されていることを特徴とする請求項1記載の圧電デバイス。
  3. 前記基板が、シリコン基板を含むものであり、
    前記導電層が、該シリコン基板に、導電性不純物がドープされて導電性が付与された層であることを特徴とする請求項1または2記載の圧電デバイス。
  4. 前記絶縁層は、前記下部電極が形成された部分に隣接する領域に、前記導電層まで貫通する孔を有し、
    前記電気配線は、前記上部電極から該孔を通って前記導電層に至るように配置されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の圧電デバイス。
  5. 前記基板の裏面に、前記複数のダイアフラム構造により構成される空間の各々と個別に連通する孔を有する薄板を備え、
    前記空間が加圧液室を構成し、前記孔が該加圧液室内の液体を外部に吐出する液体吐出口を構成してなる液体吐出装置であることを特徴とする請求項2から4いずれか1項記載の圧電デバイス。
  6. 前記複数の圧電素子を駆動させることにより圧力波を発生すると共に、該圧力波の反射波を検知する超音波トランスデューサーであることを特徴とする請求項2から4いずれか1項記載の圧電デバイス。
  7. 前記複数のダイアフラム構造が、同心円状に配置されていることを特徴とする請求項6記載の圧電デバイス。
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