JP2011046764A - (メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】残存触媒の含有量が少ない高純度の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルを重合して(メタ)アクリル酸系重合体とする重合工程と、これを触媒存在下でニトロキシド化して(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体とするニトロキシド化工程とを含む(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法であって、前記ニトロキシド化工程以降において、アルコール溶媒存在下、塩基を用いて処理する工程を有することを特徴とする(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法に関する。
ノート型パソコンや携帯電話等の携帯電子機器、電気自動車等に用いられる二次電池は、エネルギー密度が高いこと、小型であること、大きな電流を流せること、サイクル特性に優れること等の特性が要求されている。これらの特性を満足させる二次電池用電極の活物質として、ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)(PTMA)に代表されるラジカル材料が提案されている(特許文献1参照)。
前記PTMA等のラジカル材料の製造方法としては、(メタ)アクリル酸化合物を架橋剤の存在下で重合した後、触媒存在下でニトロキシド化を行い(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を得る方法(特許文献2参照)等が知られている。
特開2002−304996号公報 国際公開2005/116092号パンフレット
特許文献2に記載の方法で製造した(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体は、例えば、二次電池用電極等に使用した際、ニトロキシド化工程において使用した触媒がセパレータの閉塞を引き起こし、充放電を繰り返す毎に電池性能が劣化し、電池としての機能が損なわれる場合がある。
本発明の目的は、残存触媒の含有量が少ない高純度の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を容易に製造する方法を提供することにある。
本発明は、以下に示すとおりの(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法に関する。
即ち、
項1.式(1):
Figure 2011046764
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸化合物を重合して(メタ)アクリル酸系重合体とする重合工程と、これを触媒存在下でニトロキシド化して(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体とするニトロキシド化工程とを含む(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法であって、前記ニトロキシド化工程以降において、アルコール溶媒存在下、塩基を用いて処理する工程を有することを特徴とする(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法、
項2.塩基が、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである項1に記載の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法、
項3.塩基の使用量が、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を構成する(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して、0.01〜20質量部である項1または2に記載の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法、
項4.アルコール溶媒が、メチルアルコールおよび/またはtert−ブチルアルコールである項1〜3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法、
に関する。
本発明によれば、残存触媒の含有量が少ない高純度の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を提供することができる。
本発明にかかる重合工程において用いられる(メタ)アクリル酸化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 2011046764
式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。
式(1)で表される(メタ)アクリル酸化合物の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル(メタ)アクリレートが挙げられ、市販品を用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」および「メタクリ」を意味する。
本発明にかかる重合工程において、(メタ)アクリル酸化合物を重合する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、懸濁重合法、乳化重合法および溶液重合法等の方法を用いることができる。
本明細書においては、実施形態の一例として、懸濁重合法についてより詳しく説明する。懸濁重合法の具体例としては、例えば、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管および冷却管を備えた反応器を用いて、高分子分散剤を水に混合した水層に、(メタ)アクリル酸化合物および必要により架橋剤を不活性炭化水素系溶媒に混合した有機層を、攪拌下で添加、混合して懸濁液とした後、窒素ガスにより脱酸素し、重合開始剤を添加して、加熱する方法が挙げられる。
高分子分散剤としては、懸濁液中における重合前の(メタ)アクリル酸化合物の分散安定性、および重合後に生成する(メタ)アクリル酸系重合体の分散安定性を向上させるものであれば特に限定されず、各種公知の高分子分散剤を用いることができる。また、高分子形態においても、特に限定されず、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ブロック共重合体およびグラフト共重合体は、(メタ)アクリル酸系重合体の分散安定性を向上させるだけでなく、高分子分散剤の分子量および親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合比によって、得られる(メタ)アクリル酸系重合体の粒子径を制御できるため好ましい。
前記高分子分散剤の具体例としては、ゼラチン、ガゼイン、アルブミン等のタンパク質類;アラビアゴム、トラガントゴム、キサンタンガム等の天然ゴム類;サポニン等のグルコシド類;アルギン酸およびアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸誘導体;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール類;ポリビニルピロリドン類;ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系共重合体樹脂;スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン−マレイン酸系共重合体;ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等のビニルナフタレン系共重合体;酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等の酢酸ビニル系共重合体;およびこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、懸濁液中における重合前の(メタ)アクリル酸化合物の分散安定性、および重合後に生成する(メタ)アクリル酸系重合体の分散安定性を向上させる観点から、ポリビニルアルコールが好適に用いられる。なお、これら高分子分散剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子分散剤の使用量は、懸濁液中における重合前の(メタ)アクリル酸化合物の分散安定性、および重合後に生成する(メタ)アクリル酸系重合体の分散安定性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して、1〜40質量部の割合であることが好ましく、5〜30質量部の割合であることがより好ましい。
高分子分散剤を分散させるための水の使用量は、特に限定されないが、高分子分散剤100質量部に対して、300〜100000質量部であることが好ましく、300〜30000質量部であることがより好ましい。水の使用量が300質量部未満の場合、懸濁液の粘度が増大するため、分散安定性が悪くなるおそれがある。また、水の使用量が100000質量部を超える場合、使用量に見合う効果が得られず経済的でなくなるおそれがある。
また、水層には、水と相溶する溶媒が含まれていてもよい。
さらに、水層には、界面活性剤を加えてもよい。このような界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、工業的に入手が容易で、安価であり、得られる化合物の品質が安定する観点から、アニオン性界面活性剤のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジメチルスルホコハク酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等が好適に用いられる。
架橋剤としては、分子内に複数個の重合性不飽和基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸系多官能化合物、アリルエーテル系多官能化合物およびビニル系多官能化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系多官能化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アリルエーテル系多官能化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアリルエーテルおよびジブチレングリコールジアリルエーテル等が挙げられる。ビニル系多官能化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、高い重合反応性を有する観点から、(メタ)アクリル酸系多官能化合物が好適に用いられ、特に、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが好適に用いられる。なお、これら架橋剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の使用割合は、優れた対溶媒安定性を有する(メタ)アクリル酸系重合体が得られる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して0.00001〜0.25モルの割合であることが好ましく、0.00005〜0.1モルの割合であることがより好ましく、0.0001〜0.05モルの割合であることがさらに好ましい。
前記不活性炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、n−ヘキサン、n−ヘプタン、リグロイン等の非環式飽和炭化水素系溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式飽和炭化水素系溶媒およびジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。
不活性炭化水素系溶媒の使用量は、反応を円滑に進行させる観点から、(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して50〜2000質量部であることが好ましい。
前記重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、ラウロイルパーオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート等の過酸化物系重合開始剤;α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系重合開始剤;過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン、過酸化ジ−t−ブチル/ジメチルアニリン、ラウロイルパーオキシド/ジメチルアニリン等のレドックス系重合開始剤等が挙げられる。これらのなかでも、安価であり取り扱いが簡便なα,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤が好適に用いられる。
重合開始剤の使用量は、使用する重合開始剤の種類や反応温度により異なるが、通常、(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して0.005〜5質量部であることが好ましい。
重合の反応温度としては、重合反応速度を制御する観点から、−20〜100℃であることが好ましく、−10〜80℃であることがより好ましい。また、反応時間は反応温度により異なるため一概には言えないが、通常、2〜10時間であることが好ましい。
また、前記懸濁重合法において、必要に応じてイソプロピルアルコール、メタノール等の連鎖移動剤の添加剤等を適宜、加えてもよい。
重合反応終了後は、重合反応液をヘキサン等の脂肪族炭化水素等の溶媒と混合し、当該(メタ)アクリル酸系重合体を沈澱させた後、ろ過する等して単離することができる。さらに、ヘキサン、メタノール等を用いて、未反応物等を除去、洗浄し、乾燥することにより精製することができる。
本発明において、前記(メタ)アクリル酸系重合体の粒子の形状は、なんら限定されるものではないが、後述のニトロキシド化を行う際に、反応を均一に行いやすいという観点から、中位粒子径が1mm以下の粉粒体であることが好ましく、中位粒子径が0.5mm以下の粉粒体であることがより好ましい。粉粒体の(メタ)アクリル酸系重合体を得る方法としては、例えば、一般に使用されるミキサーやブレンダー等を用いて粉砕する方法等が挙げられる。
本明細書において中位粒子径とは、累積体積分布から求められるものであり、その値は、一定粒度区間内に全体の何%の粒子が存在するかを表す度数分布を、粒子径の小さい方または大きい方より積分して求めた累積分布が50%を示すときの粒子径の値をもって示される。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所、商品名:SALD−2000)を用いて測定した値である。
本発明において、前記の重合工程により得られた(メタ)アクリル酸系重合体は、これを触媒存在下でニトロキシド化するニトロキシド化工程を経ることにより、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体とすることができる。ニトロキシド化の方法としては、特に限定されず、例えば、立体障害を有する第2級アミンを、触媒存在下で酸化剤を用いて酸化することにより、対応するニトロキシド遊離基を有する化合物を製造する公知の方法等を挙げることができる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸系重合体と不活性溶媒とを混合した後、攪拌下、触媒存在下で酸化剤を添加しながら反応させることにより、(メタ)アクリル酸系重合体をニトロキシド化することができる。
ニトロキシド化に使用する不活性溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等の脂肪族ニトリル類、ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類およびベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、並びに水等が挙げられる。これらの中でも、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、水が好適に用いられる。なお、これら不活性溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ニトロキシド化に使用する不活性溶媒の使用量は、反応を円滑に進行させる観点から、(メタ)アクリル酸系重合体100質量部に対して50〜10000質量部であることが好ましく、100〜5000質量部であることがより好ましい。
ニトロキシド化に使用する酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化ナトリウム等の無機系過酸化物;塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン;硝酸、亜硝酸等の硝酸系化合物;酸化銅、酸化鉛等の金属酸化物;塩化第2鉄等の金属塩化物;フェリシアン化カリウム等のフェリシアン化物;過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過炭酸ナトリウム、過炭酸アンモニウム等の過炭酸塩;過ホウ酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム等の過ホウ酸塩;過リン酸カリウム等の過リン酸塩;クロム酸カリウム、クロム酸ナトリウム等のクロム酸塩;塩素酸ナトリウム等の塩素酸塩;亜塩素酸ニッケル、亜塩素酸アンモニウム等の亜塩素酸塩;次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩;臭素酸カリウム等の臭素酸塩;過酢酸、過酢酸t−ブチル、過安息香酸、過安息香酸t−ブチルベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、キュメンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等の有機系過酸化物等およびこれらの混合物を挙げることができる。これらの中でも、過酸化水素が好適に用いられる。なお、これら酸化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ニトロキシド化に使用する酸化剤の使用割合は、反応を円滑に進行させる観点から、(メタ)アクリル酸系重合体の製造に用いた(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して1.5〜40モルの割合であることが好ましく、3〜30モルの割合であることがより好ましい。
ニトロキシド化に使用する触媒としては、通常のニトロキシド化反応に使用されている触媒を挙げることができる。ニトロキシド化の反応に用いられる触媒の具体例としては、タングステンおよびモリブデン等の18族型元素周期律表第6族から選ばれる金属元素を含む化合物であって、例えば、タングステン酸、リンタングステン酸、パラタングステン酸並びにこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)およびアンモニウム塩や酸化タングステン、タングステンカルボニル等のタングステン化合物;モリブデン酸、リンモリブデン酸、パラモリブデン酸並びにこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)およびアンモニウム塩や酸化モリブデン、モリブデンカルボニル等のモリブデン化合物等が挙げられ、さらに具体的には、パラタングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、リンタングステン酸、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブデン、モリブデンヘキサカルボニル等が挙げられる。なお、これら触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ニトロキシド化の反応に用いられる触媒の使用量は、使用する触媒の種類により異なるが、(メタ)アクリル酸系重合体の製造に用いた(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して0.001〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。
ニトロキシド化の反応温度としては、反応を制御する観点から、−10〜100℃であることが好ましく、20〜90℃であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸系重合体をニトロキシド化する方法の具体的操作としては、容易に収率よく反応できることから、まず(メタ)アクリル酸系重合体、不活性溶媒および必要に応じて触媒を混合した後、酸化剤を添加しながら反応させるのが好ましい。
酸化剤を添加しながら反応させる時間は、特に制限はないが、通常、1〜20時間であることが好ましく、3〜10時間であることがより好ましい。さらに、酸化剤の添加終了後、通常、前記温度に1〜10時間保持して反応を完結させるのが好ましい。
反応終了後は、ろ過や乾燥等の単位操作を組み合わせて、反応液から(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を単離することができる。
なお、得られた(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体のニトロキシド化率は、反応に用いた酸化剤の残存量を分析する方法、NMR法等を用いて反応生成物に残留するアミノ基を定量する方法や、ESR法を用いて反応生成物中のスピン濃度を定量する方法等により算出することができる。
本発明は、前記ニトロキシド化工程以降において、アルコール溶媒存在下、塩基を用いて処理する工程を有することを特徴とする。
塩基を用いて処理する工程の具体的方法としては、例えば、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を単離する工程において塩基を添加する方法;(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を単離した後に塩基を添加する方法等が挙げられる。これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体に含まれる残存触媒を効率よく減少する観点、および処理が簡便である観点から、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を単離した後に塩基を添加する方法が好適に用いられる。
本発明に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の無機化合物;メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1−エチルブチルアミン、トリメチレンジアミン、ベンジルアミン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、2−アミノキノリン、3−アミノキノリン、4−アミノキノリン、1,4−ナフタレンジアミン、2,4−ジアミノピリジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類等が挙げられる。これらの塩基の中でも、少量の使用量で効果が得られる観点から、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好適に用いられる。なお、これら塩基は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基の使用量は、得られる(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体に含まれる残存触媒を減少させる観点から、前記(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を構成する(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることが好ましい。塩基の使用量が0.01質量部未満の場合、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体に含まれる残存触媒を充分に減少できないおそれがある。また、塩基の使用量が20質量部を超える場合、使用量に見合う効果が得られないおそれがある。
本発明に用いられるアルコール溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、2−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ペンタノール、4−フェニル−2−メチル−2−ヘキサノール、1−フェニル−2−メチル−2−プロパノール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、イソアミルアルコール、2−エチル−1−ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、環境安全性、保存安定性、人体への安全性の観点、および(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体に含まれる残存触媒を効率よく減少させる観点から、メチルアルコールおよびtert−ブチルアルコールが好適に用いられる。なお、これらアルコール溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコール溶剤の使用量は、前記(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を構成する(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して1〜100000質量部であることが好ましい。アルコール溶剤の使用量が1質量部未満の場合、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体中への浸漬が十分に行えず、含まれる残存触媒が減少しないおそれがある。また、アルコール溶剤の使用量が100000質量部を超える場合、使用量に見合う効果が得られないおそれがある。また、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体中への浸漬を効率よく行うため、適度に水を加え、アルコール系溶剤の濃度を調整することもできる。
前記したごとく塩基を添加した後、所望により温度を調整したり、撹拌を行ったりして、塩基を(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体に充分に接触させた後、ろ過等によりろ別し、必要により水、メタノール等で洗浄後、乾燥させることにより、残存触媒の含有量が少ない(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を得ることができる。
以下に、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管を備えた1L容の4つ口フラスコに、ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製、商品名:ポバールPVA420、重合度2000、ケン化度78〜81mol%)6.8g、水654gを仕込み、攪拌下、90℃、4時間でポリビニルアルコールを溶解した後、25℃まで冷却し、ポリビニルアルコール溶解液を得た。
一方、300mL容のマイヤーフラスコに、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルメタクリレート40g(178ミリモル)、エチレングリコールジメタクリレート0.7g(3.5ミリモル)およびn−ヘプタン79.5gを仕込み、均一溶液を得た。この均一溶液を上記ポリビニルアルコール溶解液に加え、25℃に保ちながら、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5g(2.0ミリモル)を加えて、攪拌下、60℃にて6時間、重合反応させた。
反応終了後、懸濁液を室温まで冷却した後、モノフィラメントメッシュ(日本特殊織物株式会社製、商品名:PE18、オープニング1242μm)を用いて、凝集物等をろ別して粗メタクリル酸系重合体を得た。得られた粗メタクリル酸系重合体を、n−ヘプタン68.0g、次いで水800gで洗浄した後、減圧乾燥し、中位粒子径122μmの白色粉体のメタクリル酸系重合体39.8gを得た。
次に、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管および滴下ロートを備えた2L容の4つ口フラスコに、前記メタクリル酸系重合体39.8g、タングステン酸ナトリウム・二水和物2.92g(8.8ミリモル)および水1200gを仕込み、80℃に保持して、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、攪拌下、30質量%過酸化水素溶液403.2g(3.56モル)を8時間かけて滴下した。引き続き、攪拌下、80℃で3時間保持し、反応を完結させた。
反応終了後、反応液をろ過し、水500g、次いでメタノール396.5gで洗浄した後、減圧乾燥し、赤色粉体の粗メタクリル酸系ニトロキシド重合体43.1gを得た。
引き続き、攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた2L容の4つ口フラスコに、前記粗メタクリル酸系ニトロキシド重合体43.1g、水酸化ナトリウム0.043gおよびtert−ブチルアルコール水溶液(87質量%)572.4gを仕込み、攪拌下、70℃で8時間保持した後、反応液をろ過し、水500g、次いでメタノール396.5gで洗浄した後、減圧乾燥して赤色粉体のメタクリル酸系ニトロキシド重合体41.6gを得た(収率96.5%)。
[実施例2]
実施例1において、水酸化ナトリウムの使用量を0.86gに変更した以外は実施例1と同様にして、赤色粉体のメタクリル酸系ニトロキシド重合体41.0gを得た(収率95.1%)。
[実施例3]
実施例1において、水酸化ナトリウムの使用量を1.72gに変更した以外は実施例1と同様にして、赤色粉体のメタクリル酸系ニトロキシド重合体38.6gを得た(収率89.5%)。
[実施例4]
実施例1において、水酸化ナトリウム0.043gに代えて、水酸化カリウム0.043gを用いた以外は実施例1と同様にして、赤色粉体のメタクリル酸系ニトロキシド重合体41.4gを得た(収率96.1%)。
[実施例5]
実施例1において、tert−ブチルアルコール水溶液(87質量%)572.4gに代えて、メタノール572.4gを用いた以外は実施例1と同様にして、赤色粉体のメタクリル酸系ニトロキシド重合体41.9gを得た(収率97.1%)。
[比較例1]
実施例1において、tert−ブチルアルコール水溶液(87質量%)572.4gに代えて、水720gを用いた以外は実施例1と同様にして、赤色粉体のメタクリル酸系ニトロキシド重合体41.0gを得た(収率95.0%)。
[比較例2]
実施例1において、水酸化ナトリウム0.043gを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、赤色粉体のメタクリル酸系ニトロキシド重合体42.0gを得た(収率97.4%)。
[評価]
実施例1〜5および比較例1〜2で得られたメタクリル酸系ニトロキシド重合体について、それぞれ触媒含有量およびラジカル転化率を評価した。評価結果を表1に示す。
(1)触媒含有量
ICP−AES法(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、商品名 IRIS advantage型)により、メタクリル酸系ニトロキシド重合体に含まれる触媒(タングステン)の含有量を評価した。評価結果を表1に示す。
(2)ラジカル転化率
ラジカル転化率は、JES−FR30EXフリーラジカルモニタ(日本電子株式会社製)を用い、マイクロ波出力4mW、変調周波数100kHz、変調幅79μTの条件下、335.9mT±5mTの範囲で測定して得た一次微分型のESRスペクトルを2回積分して吸収面積強度を求めた。評価結果を表1に示す。
なお、ラジカル転化率は、同一条件で測定した既知試料(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシフリーラジカル(4−TEMPOL))の吸収面積強度と比較することにより算出した。
Figure 2011046764
表1の結果から、実施例1〜5で得られたメタクリル酸系ニトロキシド重合体は、残存触媒の含有量が少なく、ラジカル転化率が充分に高いことがわかる。

Claims (4)

  1. 式(1):
    Figure 2011046764
    (式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸化合物を重合して(メタ)アクリル酸系重合体とする重合工程と、これを触媒存在下でニトロキシド化して(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体とするニトロキシド化工程とを含む(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法であって、前記ニトロキシド化工程以降において、アルコール溶媒存在下、塩基を用いて処理する工程を有することを特徴とする(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法。
  2. 塩基が、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである請求項1に記載の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法。
  3. 塩基の使用量が、(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体を構成する(メタ)アクリル酸化合物100質量部に対して、0.01〜20質量部である請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法。
  4. アルコール溶媒が、メチルアルコールおよび/またはtert−ブチルアルコールである請求項1〜3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸系ニトロキシド重合体の製造方法。
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