JP2011046639A - ゲルベアルコールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第一級及び/又は第二級アルコールを、塩基触媒及び下記一般式(1)で表されるケトン化合物の存在下に反応させる、ゲルベアルコールの製造方法である。
R1C(=O)R2 (1)
(式中、R1及びR2は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を示す。)
【選択図】なし
Description
所望されるゲルベアルコールを調製する方法としては、従来、脂肪族アルコールをアルカリ金属水酸化物に代表される強塩基の存在下、240℃以上の高温で自己縮合させる方法(例えば、非特許文献1参照)が知られている。しかし、強塩基のみを触媒とする従来法では反応速度が遅く、反応効率の面で好ましくない。従来法で反応速度が遅い理由は、ゲルベ反応が、まず原料アルコールの脱水素によりアルデヒドを生成し、このアルデヒドがそれ自体でアルドール縮合し、次いで生成した縮合物が還元されてゲルベアルコールを生成する反応であり、この際、一段階目の原料アルコールの脱水素反応が進行しにくいためであると考えられている。そのため、通常、高温で反応させる必要があるとされている(例えば、非特許文献2参照)。
例えば、特許文献1には、水酸化カリウム等のアルカリ性物質と銅−クロム触媒等の脱水素触媒の存在下、第一級アルコールを加熱縮合反応させるにあたり、活性炭を添加して反応させるゲルベアルコールの製造方法が開示されている。
特許文献2には、水酸化カリウム等のアルカリ性物質と銅−ニッケル触媒等の脱水素触媒の存在下、第一級アルコールに可溶で水難溶性の溶媒中で、第一級アルコールを縮合させるゲルベアルコールの製造方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2の方法では、反応終了後に遷移金属共触媒を分離除去しなければならないという欠点がある。また、これらの遷移金属は、反応中に油中に溶解するため、それを除去するための蒸留精製が必要となる。しかし、これらの遷移金属を含有した混合液を高温で蒸留精製すると、副反応を起こして少なからず生成物の損失による収率低下を伴う。このような理由から、遷移金属共触媒を使用しない方法でゲルベアルコールを製造する方法が望まれる。
特許文献4には、脂肪族アルコールを、脂肪族アルデヒドと水酸化アルカリ金属の存在下に縮合させるゲルベアルコールの製造方法が開示されている。この方法において、同一のアルキル基を有する脂肪族アルコールと脂肪族アルデヒドを使用すれば、洗浄等の後処理を必要とせず、生成物の損失を防ぐことができるとされている。しかしながら、この方法による反応促進効果はそれほど高くなく、また反応機構上、脂肪族アルデヒドの添加モル量と等モル量の水素が不足するために、反応は初めに添加された脂肪族アルコールの量までは縮合反応が進行するが、生成するゲルベアルコールの収率は、初めに添加された脂肪族アルコールと脂肪族アルデヒドの総量より脂肪族アルデヒドの添加量分だけ必ず低下してしまうという問題がある。
すなわち、本発明は、第一級及び/又は第二級アルコールを、塩基触媒及び下記一般式(1)で表されるケトン化合物の存在下に反応させる、ゲルベアルコールの製造方法を提供する。
R1C(=O)R2 (1)
(式中、R1及びR2は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を示す。)
R1C(=O)R2 (1)
(式中、R1及びR2は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を示す。)
本発明において原料として用いられるアルコールは、第一級アルコール及び/又は第二級アルコールであるが、反応性の観点から、第一級脂肪族アルコールが好ましい。これらの中では、好ましくは炭素数4〜22、より好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数8〜14の脂肪族アルコールが好ましく、脂肪族第一級アルコールがより好ましい。
これらの原料アルコールは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、使用できる塩基としては、無機塩基、有機系塩基等が挙げられる。
無機塩基の具体例としては、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH等のアルカリ金属水酸化物、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Rb2CO3、Cs2CO3等のアルカリ金属炭酸塩、LiHCO3、NaHCO3、KHCO3、RbHCO3、CsHCO3等のアルカリ金属炭酸水素塩等が挙げられる。これらの無機塩基はそのまま用いてもよいが、水溶液として用いることもできる。
また、有機系塩基としては、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、t−ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、t−ブトキシカリウム等のアルカリ金属アルコキシド化合物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、ピリジン、4−メチルピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、1,5−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の第三級アミン類等が挙げられる。
上記の塩基触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の方法においては、反応速度を高めて反応時間を短縮すると共に、ゲルベアルコールの収率を向上させるために、前記の塩基触媒と共に、下記一般式(1)で表されるケトン化合物が用いられる。
R1C(=O)R2 (1)
一般式(1)において、R1及びR2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を示す。またR1及びR2は同一であってもよく、又は互いに異なっていてもよい。また、R1及びR2が互いに縮環していてもよい。
炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基等が挙げられる。なお、各種アルキル基とは、同一炭素数のアルキル基における各種の異性体をいう。これらの中では、炭素数1〜16のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
また、炭素数6〜18のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、キュメニル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、ジメチルナフチル基、アントラセニル基、メチルアントラセニル基等が挙げられる。これらの中では、炭素数1〜16のアリール基が好ましく、炭素数1〜12のアリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
特に好適なケトン化合物としては、ベンゾフェノン、アントロン、キサントン等の炭素数10〜18のアリールケトン化合物、カルコン等の炭素数10〜18のアリールビニレンケトン化合物、アントラキノン等の炭素数10〜18のアリールジケトン化合物から選ばれる1種以上が挙げられる。
上記のケトン化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、第一級及び/又は第二級アルコールを、塩基触媒及び下記一般式(1)で表されるケトン化合物の存在下に反応させる。この反応は脱水縮合反応(ゲルベ反応)であり、副生水が系内に滞留すると、副反応による脂肪酸生成を促進する。従って、反応速度向上及び副反応抑制のために、反応は、攪拌下、通常0.03〜0.09MPa程度の減圧下、又は常圧下で反応系内に窒素を導入し、生成する水を系外に除去しながら行うことが好ましい。
塩基触媒の使用量は、反応速度及び副反応抑制の観点から、原料である第一級及び/又は第二級アルコールに対して0.01〜15モル%が好ましく、0.3〜10モル%がより好ましく、0.5〜5モル%が特に好ましい。
一般式(1)で表されるケトン化合物の使用量は、反応速度及び副反応抑制の観点から、原料である第一級及び/又は第二級アルコールに対して0.1〜30モル%が好ましく、0.3〜20モル%がより好ましく、0.5〜10モル%が特に好ましい。
反応時間としては、アルコール転化率が80%以上、好ましくは90%以上になるような時間が望ましい。該反応時間は、反応温度及び塩基触媒やケトン化合物の種類及び使用量等に左右されるが、通常1〜20時間程度、好ましくは1〜10時間程度である。
本発明の方法により得られたゲルベアルコールを含む反応生成物は、そのまま各種用途に用いることができるが、必要に応じて蒸留操作等によって精製することができる。通常は、原料アルコール及びケトン化合物を減圧留去した後、水洗等により塩基触媒を除去することにより、純度95%以上のゲルベアルコールを得ることができる。
この純度95%以上のゲルベアルコールは、界面活性剤、繊維油剤、柔軟剤、粧品、医薬品、潤滑油等の原料又は中間原料等として有用である。
蒸留精製においては、例えば、反応器から出る粗製生成物をフラッシュ蒸留して、モノマーアルコール(遊離体)留分とゲルベアルコール(二量体アルコール)留分とに分離した後、モノマーアルコール留分を凝縮、冷却して、原料アルコールとして再利用することができる。フラッシュ蒸留で液相留分として得られるゲルベアルコール留分を、更に薄層蒸発器を用いて精製することもできる。
攪拌装置付きフラスコに、1−ドデカノール(花王株式会社製、商品名:カルコール2098)56.0g(0.30モル)、塩基触媒として水酸化カリウム(キシダ化学株式会社製、ペレット状)0.50g(0.009モル、3.0モル%対1−ドデカノール)、ケトン化合物としてベンゾフェノン(和光純薬工業株式会社製)1.63g(0.009モル、3.0モル%対1−ドデカノール)を仕込み、攪拌下、240℃にて窒素を系内に流通させながら(窒素流通量:50mL/min)、5時間、反応を行った。
反応終了後の溶液はヘキサンにより希釈した後、ガスクロマトグラフィー[カラム:Ultra−alloyキャピラリーカラム30.0m×250μm(Frontier Laboratories社製)、検出器:FID、インジェクション温度:300℃、ディテクター温度:350℃、He流量:4.6mL/min.]にて分析し、生成物を定量した。
その結果、アルコール転化率は97%、ゲルベアルコール収率は89%であった。
なお、アルコール転化率及びゲルベアルコール収率は、以下の式により算出した。
アルコール転化率(%)=100−[残存アルコールの量(モル)/[原料アルコールの仕込み量(モル)]×100
ゲルベアルコール収率(%)=[生成ゲルベアルコールの量(モル)×2/原料アルコールの仕込み量(モル)]×100
製造条件及び結果を表1に示す。
表1に示す製造条件で実施例1と同様にして反応を行った。なお、用いた原料アルコールはいずれも1−ドデカノール(0.30モル)である。結果を表1に示す。
実施例2及び3では、反応温度を220、200℃としても、ケトン化合物の添加によって反応が進行することを示している。特に実施例2においては、反応温度を220℃としても、240℃の場合と遜色ない収率でゲルベアルコールが得られている。これに対し、比較例2及び3では、ケトン化合物の添加がないので、それぞれの温度で反応が殆ど進行していない。このことから、より低い反応温度においてもケトン化合物の添加効果が顕著に現れることが分かる。
実施例4ではKOH触媒量を1モルとした場合でも、反応が充分に進行することを示している。これに対し、比較例4では、同触媒量において、ケトン化合物の添加なしでは殆ど反応が進行しないことを示している。このことから、ケトン化合物の添加により、塩基触媒量の低減も可能となることが分かる。
表2に示す製造条件で実施例1と同様にして反応を行った。なお、用いた原料アルコールはいずれも1−ドデカノール(0.30モル)である。結果を表2に示す。
また、実施例5〜9の製造方法によれば、ケトン化合物(ベンゾフェノン、アントラキノン、アントロン、カルコン)の添加により、反応温度が240℃の条件において、反応時間5時間以内でアルコール転化率が86%以上に達し、かつ82〜89%の収率でゲルベアルコールが得られることが分かる。
以上のとおり、本発明はゲルベアルコールの製造方法として極めて有利である。
得られたゲルベアルコールは、界面活性剤、繊維油剤、柔軟剤、化粧品、医薬品、潤滑油等の分野における直接又は中間原料として有用である。より具体的には、例えば、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー等の毛髪用化粧料、皮膚用化粧料、シャワー浴剤等の成分として、クリーム、ゲル、ローション、溶液、エマルジョン等の形態で使用することができる。
Claims (7)
- 第一級及び/又は第二級アルコールを、塩基触媒及び下記一般式(1)で表されるケトン化合物の存在下に反応させる、ゲルベアルコールの製造方法。
R1C(=O)R2 (1)
(式中、R1及びR2は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数6〜18のアリール基を示す。) - ケトン化合物が、一般式(1)におけるR1及びR2の少なくとも一方がアリール基であるアリールケトン化合物である、請求項1に記載のゲルベアルコールの製造方法。
- アリールケトン化合物が、炭素数10〜18のアリールケトン化合物、アリールビニレンケトン化合物、アリールジケトン化合物から選ばれる1種以上である、請求項2に記載のゲルベアルコールの製造方法。
- ケトン化合物をアルコールに対して0.1〜30モル%用いる、請求項1〜3のいずれかに記載のゲルベアルコールの製造方法。
- 反応温度が180〜250℃である、請求項1〜4のいずれかに記載のゲルベアルコールの製造方法。
- アルコールが炭素数4〜22の脂肪族アルコールである、請求項1〜5のいずれかに記載のゲルベアルコールの製造方法。
- 遷移金属共触媒の不存在下で反応を行う、請求項1〜6のいずれかに記載のゲルベアルコールの製造方法。
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