JP2011046621A - カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の製造方法 - Google Patents

カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水への溶解性に優れたカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の製造方法、該製造方法により得られる混合粉砕物、及び該混合粉砕物を含有するカルシウム化合物含有組成物を提供する。
【解決手段】100gの水に対する溶解度が1g以下、かつ水を除いた残余の成分中のカルシウム化合物含有量が50質量%以上であるカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料とを、媒体式粉砕機で混合粉砕する、カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の製造方法、該製造方法により得られる混合粉砕物、及び該混合粉砕物を含有するカルシウム化合物含有組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、水溶解性に優れたカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の製造方法、該製造方法により得られる混合粉砕物、及び該混合粉砕物を含有するカルシウム化合物含有組成物に関する。
日本人が1日に必要とされるカルシウム量は600mgであるとされているが、厚生労働省が実施している国民栄養調査によると、カルシウム摂取量は、調査開始以来その所要量を満たしたことがない。その理由には、日本の土壌中に含まれるカルシウムが少ないという地域的な背景や、食文化の違い、及び食生活の変化等が指摘されている。カルシウムを所要量摂取するにはカルシウムに富む食品を意識的に摂取すれば問題ないが、それができないところにこの問題の本質がある。
この問題を解決するために、通常カルシウムをほとんど含まない食品にカルシウムを添加して不足しがちなカルシウムを補給する方法がある。この方法では、天然物由来あるいは人工的に合成された各種のカルシウム剤が知られている。
天然物素材としては、卵殻や貝殻、動物の骨などがあるが、これらの天然物素材は基本的に水に不溶であるため、飲料や液状食品に添加する場合、舌触りに違和感がないように微細に粉砕し、スラリーとした状態で使用される。しかしながら、粉砕可能な粒子の大きさは、数ミクロンのレベルが限界であり、食感に問題はないものの経時で沈降を起こすため、長期保存される食品には使用が困難であるし、短期保存食品に対しても使用が制限される問題がある。
このような沈降の問題を解決する方法として、例えば、特許文献1に500nm以下のヒドキシアパタイト(リン酸カルシウムの一種)を合成し、これをクエン酸またはその塩の含有液、たんぱく質又はペプチドを用いて表面処理する方法が開示されている。この方法では、沈降を抑制する効果は認められるものの、その効果が十分だとはいい難く、また食品へ添加した際に食味を変化させる可能性があるため、さらに分散性が改良されて食味に影響を及ぼさないカルシウム化合物含有剤が望まれていた。
また、難水溶性のカルシウム化合物含有原料の水への溶解性を改善するための方法として、湿式処理や有機溶媒などのケミカル的な処理する方法が提案されている(例えば、特許文献2及び3)。しかしながら、これらの方法では、乾燥工程や精製工程が必要であるので、操作が煩雑で時間も要するという問題がある。
このように、難水溶性のカルシウム化合物含有原料の溶解性を効率よく向上させたカルシウム含有剤を効率よく製造する方法の開発が望まれていた。
特開平9−289877号公報 特開2001−299280号公報 特開2007−191453号公報
本発明は、水への溶解性に優れるカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の製造方法、該製造方法により得られる混合粉砕物、及び該混合粉砕物を含有するカルシウム含有組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、特定のカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料とを混合粉砕することにより、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、100gの水に対し、溶解度が1g以下、かつ水を除いた残余の成分中のカルシウム化合物含有量が50質量%以上であるカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料とを、媒体式粉砕機で混合粉砕する、カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の製造方法、該製造方法により得られる混合粉砕物、該混合粉砕物を含有するカルシウム化合物含有組成物である。
本発明によれば、水への溶解性に優れたカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物を効率よく製造する方法、該方法により得られる混合粉砕物、及び該混合粉砕物を含有するカルシウム化合物含有組成物を提供することができる。
比較例5に示す、クエン酸カルシウム四水和物の結晶性が残存することを示すX線回折強度の測定結果を示すグラフである。 実施例2で得られた、混合粉砕物中のクエン酸カルシウム四水和物の結晶性が低いことを示すX線回折強度の測定結果を示すグラフである。
本発明は、100gの水に対し、溶解度が1g以下、かつ水を取り除いた残余の成分中のカルシウム化合物の含有量が50質量%以上であるカルシウム化合物含有原料と、セルロース含有原料とを媒体式粉砕機で混合粉砕する、カルシウム化合物とセルロースを含む混合粉砕物の製造方法に関する。以下、カルシウム化合物とセルロースからなる混合粉砕物を、単に「混合粉砕物」又は「複合化粒子」ともいう。
[カルシウム化合物含有原料]
本発明に用いられるカルシウム化合物含有原料は、該原料から水を取り除いた残余の成分中のカルシウム化合物の含有量が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上のものである。
市販のカルシウム化合物含有原料の場合、水を取り除いた残余の成分中のカルシウム化合物の含有量は、一般には85〜99質量%であり、他の成分としてタンパク質、無機物等を含む。
前記カルシウム化合物含有原料には、100gの水に対し、溶解度が1g以下のカルシウム化合物が含有されているものであれば特に制限がなく用いることができる。カルシウム化合物含有原料は、貝殻や骨類などの自然界に広く分布する化合物であり、本発明においてもこれらを使用することが好ましい。
100gの水に対し、溶解度が1g以下であるカルシウム化合物としては、クエン酸カルシウム四水和物、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、フェロシアン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中で、食品等の用途に使用する場合の風味等の観点から、クエン酸カルシウム四水和物、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ステアリン酸カルシウムが好ましい。これらのカルシウム化合物含有原料は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルシウム化合物含有原料中の水分含量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下が特に好ましい。カルシウム化合物含有原料中の水分含量が15質量%以下であれば、後述する粉砕処理により容易に粉砕ができるとともに、結晶性を容易に低減化させることができる。
[カルシウム化合物の結晶性]
本発明に用いられる、100gの水に対し、溶解度が1g以下のカルシウム化合物含有原料は、粉末X線回折によると、図1に示すようにカルシウム化合物の結晶性を示す鋭い回折ピークを有している。これに対して、本発明により製造される混合粉砕物中のカルシウム化合物は、好ましくは低結晶性カルシウム化合物であり、図2に示すようにカルシウム化合物の結晶性を示す回折ピークを有さず、全体が非晶質であることが示される。なお、本発明によって得られる、低結晶性カルシウム化合物の「低結晶性」とは、カルシウム化合物の結晶構造において非結晶部分の割合が多い状態を示し、カルシウム化合物の結晶性を示す回折ピークを実質的に有さないことを意味する。
[混合粉砕処理の前処理]
本発明では、例えば、カルシウム化合物含有原料を一般的な粉砕機や押出機等で前処理することで、カルシウム化合物含有原料の嵩密度及び平均粒径を所望の範囲にすることができ、好適である。
混合粉砕処理の前処理は、カルシウム化合物含有原料を単独で用いて行ってもよく、又はカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料の混合物を用いて行うこともできる。
本発明における混合粉砕処理に用いるカルシウム化合物含有原料の嵩密度は、50kg/m3以上が好ましく、100kg/m3以上がより好ましく、200kg/m3以上が更に好ましい。嵩密度が50kg/m3以上であれば、カルシウム化合物含有原料が適度な容積を有するために取扱い性が向上する。また、粉砕機への原料仕込み量を多くすることができるので、処理能力が向上する。一方、上記の嵩密度の上限は、生産性の観点から、1000kg/m3以下が好ましく、800kg/m3以下がより好ましく、700kg/m3以下が更に好ましい。
前記カルシウム化合物含有原料を衝撃式の粉砕機や押出機で処理することにより、圧縮せん断力を作用させ、カルシウム化合物含有原料の結晶構造を機械的に破壊して、カルシウム化合物含有原料を粉末化させることができる。
圧縮せん断力を作用させて粉砕する方法として、従来よく用いられる公知の衝撃式の粉砕機(あるいは破砕機)を用いることができる。衝撃式の粉砕機としては、例えば、ハンマーミル(ダルトン)、自由型粉砕機ピンミル(奈良機械)、フィッツミル(ダルトン)、パワーミル(パウレック)、コーミル(Quadro)等が挙げられ、所望の平均粒径及び嵩密度を有する粉砕原料が得られ、取扱い性を向上させることができる。
押出機としては、単軸、二軸のどちらの形式でもよいが、搬送能力を高める等の観点から、二軸押出機が好ましい。
二軸押出機としては、シリンダの内部に2本のスクリューが回転自在に挿入された押出機であり、従来から公知のものが使用できる。2本のスクリューの回転方向は、同一でも逆方向でもよいが、搬送能力を高める観点から、同一方向の回転が好ましい。
また、スクリューの噛み合い条件としては、完全噛み合い、部分噛み合い、非噛み合いの各形式の押出機のいずれでもよいが、処理能力を向上させる観点から、完全噛み合い型、部分噛み合い型が好ましい。
押出機としては、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えることが好ましい。ニーディングディスク部とは、複数のニーディングディスクで構成され、これらを連続して、一定の位相で、例えば90°ずつに、ずらしながら組み合わせたものであり、スクリューの回転にともなって、狭い隙間にカルシウム化合物含有原料を強制的に通過させることで極めて強いせん断力を付与することができる。スクリューの構成としては、ニーディングディスク部と複数のスクリュエレメントとが交互に配置されることが好ましい。二軸押出機の場合、2本のスクリューが、同一の構成を有することが好ましい。
処理方法としては、カルシウム化合物含有原料を押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。せん断速度としては、10sec-1以上が好ましく、20〜30000sec-1がより好ましく、50〜3000sec-1が特に好ましい。その他の処理条件としては、特に制限はなく、好ましくは処理温度が5〜200℃である。
また、押出機によるパス回数としては、1パスでも十分効果を得ることができるが、カルシウム化合物の結晶性を低下させる観点から、1パスで不十分な場合は、2パス以上行うことが好ましい。また、生産性の観点からは、1〜10パスが好ましい。パスを繰返すことにより粗大粒子が粉砕され、粒径のばらつきが少ない粉砕物を得ることができる。2パス以上行う場合、生産能力を考慮し、複数の押出機を直列に並べて処理を行ってもよい。
[セルロース含有原料]
本発明に用いるセルロース含有原料は、混合粉砕法によりカルシウム化合物との混合粉砕物を形成するための担体としての役割を有する。
本発明に用いるセルロース含有原料は、該原料から水を除いた残余の成分中のセルロース含有量が20質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上のものである。本発明におけるセルロース含有量とは、セルロース量及びヘミセルロース量の合計量を意味する。
前記セルロース含有原料には特に制限はなく、各種木材チップ、各種樹木の剪定枝材、間伐材、枝木材等の木材類;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類;;稲わら、コーヒー殻、茶殻、紅茶殻、とうもろこし茎等の植物茎・葉類;籾殻、パーム殻、ココナッツ殻等の植物殻類等が挙げられる。これらの中では、パルプ類や木材類が好ましい。
市販のパルプの場合、水を除いた残余の成分中のセルロース含有量は、通常75〜99質量%であり、他の成分としてリグニン等を含む。
セルロース含有原料中の水分含量は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。セルロース含有原料中の水分含量が15質量%以下であれば、容易に粉砕ができるとともに、後述する粉砕処理により結晶化度を容易に低減させることができる。
本発明の混合粉砕処理に用いるセルロース含有原料としては、効率よく混合粉砕物を形成させる観点から、低結晶性セルロース含有原料を用いることが好ましい。本発明における低結晶性セルロース含有原料の「低結晶性」とは、上記のセルロースの結晶構造においてアモルファス部の割合が多い状態を示し、下記式(1)から得られる結晶化度が好ましくは33%以下であり、0%である場合を含む。
本発明におけるセルロースの結晶化度とは、天然セルロースの結晶構造に由来するI型の結晶化度を示し、粉末X線結晶回折スペクトルから求められる回折強度値からSegal法により算出したもので、下記計算式(1)により定義される。
セルロースI型結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 (1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
セルロースI型結晶化度が33%以下であれば、カルシウム化合物との混合粉砕において、カルシウム化合物含有原料を効率的に低結晶化することができる。この観点から、結晶化度としては、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、分析でセルロースI型結晶が検出されない0%が特に好ましい。なお、上記式(1)で定義されたセルロースI型結晶化度では、計算上マイナスの値になる場合があるが、マイナスの値の場合は、セルロースI型結晶化度は0%とする。
一般に利用可能なセルロース含有原料のセルロースI型結晶化度は、上記式(1)によれば、概ね60〜80%の範囲に含まれる、これらはいわゆる結晶性のセルロースである。
[低結晶性セルロース含有原料の調製]
本発明で用いる低結晶性セルロース含有原料を調製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特許第4160108号公報および特許第4160109号公報に記載されているように、セルロース含有原料を、押出機で処理して、更に粉砕機で処理する方法や、ロッドを充填した振動ミルでセルロース含有原料を処理する方法により、分子量すなわち重合度が高く、かつ低結晶性のセルロース含有原料を簡便に調製することができる。
この方法に用いられる押出機処理は、上記と同様の方法及び条件で行うことができる。
粉砕機としては、媒体式粉砕機が好ましく用いられる。媒体式粉砕機には容器駆動式粉砕機と媒体撹拌式粉砕機とがある。
容器駆動式粉砕機としては転動ミル、振動ミル、遊星ミル、遠心流動ミル等が挙げられる。この中で、粉砕効率が高く、生産性の観点から、振動ミルが好ましい。媒体撹拌式粉砕機及び振動ミルの具体例としては、後述で例示するものを挙げることができる。
具体例としては、後述するものが同様に挙げられる。
処理方法としては、バッチ処理及び連続処理のどちらでもよいが、生産性の観点から連続処理が好ましい。
媒体がボールの場合には、ボールの外径としては、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。
粉砕機の媒体として用いるロッドは、後述するものを同様に用いることができる。
ボール、ロッド等の媒体の充填率は、粉砕機の機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。
粉砕機の処理時間としては、粉砕機の種類、ボール、ロッド等の媒体の種類、大きさ及び充填率等により一概に決定できないが、結晶化度を効率的に低下させる観点から、好ましくは0.01〜50時間、より好ましくは0.05〜20時間、更に好ましくは0.1〜10時間である。処理温度は特に制限がないが、熱による劣化を防ぐ観点から、好ましくは5〜250℃、より好ましくは10〜200℃である。
上記の処理方法により、低結晶性セルロース含有原料を効率よく得ることができ、前記の粉砕機による処理の際に、その内部に粉砕物が固着せずに、乾式にて処理することができる。
[混合粉砕処理]
本発明では、100gの水に対する溶解度が1g以下であるカルシウム化合物含有原料を、セルロース含有原料、好ましくは低結晶性セルロース含有原料とともに混合粉砕処理を行うことにより、混合粉砕物を形成してカルシウム化合物の結晶性を効率的に低減させることができ、水への溶解性に優れたカルシウム化合物を得ることができる。
また、粉砕原料として、いわゆる結晶性セルロース含有原料を用いた場合には、混合粉砕処理を行うことにより、該原料のセルロースI型結晶化度が効率的に低減するとともに、カルシウム化合物の結晶性を効率的に低減させることができる。
本発明の混合粉砕処理に用いるカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料は、任意の割合で混合して用いることができる。
カルシウム含有原料とセルロース含有原料の質量比(カルシウム含有原料/セルロース含有原料)は、カルシウム化合物を効率良く低結晶化させる観点から、好ましくは1/99〜95/5であり、より好ましくは3/97〜90/10、更に好ましくは5/95〜75/25、特に好ましくは5/95〜50/50である。上記の質量比が、1/99以上であれば、カルシウム化合物を効率良く低結晶化させることが可能となり、95/5以下であれば、セルロースの担体としての効果を発揮することができ、効率良く混合粉砕物を得ることができる。
混合粉砕処理に用いるカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料の混合物の平均粒径は、効率よく複合化させる観点から、好ましくは0.001〜1mm、好ましくは0.01〜0.7mm、更に好ましくは0.05〜0.5mmである。
本発明の混合粉砕処理に用いるカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料の原料混合物中の水分含量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。この水分含量が15質量%以下であれば、容易に混合粉砕できるとともに、粉砕処理による低結晶化速度が向上し、短時間で効率的にカルシウム化合物の結晶性を低下させることができる。一方、この水分含量の下限としては、生産性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。
上記の水分含量とするための乾燥方法としては、公知の乾燥手段を適宜選択すればよく、例えば、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。
上記の乾燥方法において、公知の乾燥機を適宜選択して使用することができ、例えば、「粉体工学概論」(社団法人日本粉体工業技術会編集 粉体工学情報センター1995年発行) 176頁に記載の乾燥機等が挙げられる。
これらの乾燥方法及び乾燥機は、1種でも又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明では、カルシウム化合物を低結晶化させるための混合粉砕法としては、媒体式粉砕機を用いて、圧縮、せん断、磨砕等の機械的エネルギーにより混合粉砕する方法、微細分散化する方法であれば、特に制限されない。例えば、媒体としてロッドまたはボールを充填した振動ミルや媒体撹拌式粉砕機で処理することで、該原料中のカルシウム化合物を効率的に低結晶化させることができ、好適である。
本発明で用いられる振動ミルとしては、中央化工機株式会社製の振動ミル、ユーラステクノ株式会社製のバイブロミル、株式会社吉田製作所製の小型振動ロッドミル1045型、ドイツのフリッチュ社製の振動カップミルP−9型、日陶科学株式会社製の小型振動ミルNB−O型等を用いることができる。
一方、媒体撹拌式粉砕機としては、タワーミル等の塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の撹拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機等が挙げられる。この中で、粉砕効率が高く、生産性の観点から、撹拌槽型粉砕機が好ましい。媒体撹拌式粉砕機を用いる場合の撹拌翼の先端の周速は、好ましくは0.5〜20m/s、より好ましくは1〜15m/sである。
粉砕機の種類は「化学工学の進歩 第30集 微粒子制御」(社団法人 化学工学会東海支部編、1996年10月10日発行、槇書店)を参照することができる。
粉砕機の処理方法としては、バッチ式、連続式のどちらでも良い。
媒体式粉砕機に充填するロッドとは、棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
ロッドの材質は、特に制限がなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、ガラス等が挙げられる。
粉砕機が振動ミルであって、媒体がロッドの場合には、ロッドの外径は、好ましくは0.5〜200mm、より好ましくは1〜100mm、更に好ましくは5〜50mmの範囲である。
ロッドの長さは、粉砕機の容器の長さよりも短いものであれば特に限定されない。ロッドの大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られるとともに、ロッドのかけら等が混入してカルシウム化合物含有原料が汚染されることなく効率的にカルシウム化合物を低結晶化させることができる。
ロッドの充填率は、振動ミルの機種により好適な範囲が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、カルシウム化合物とロッドとの接触頻度を向上するとともに、媒体の動きを妨げずに、粉砕効率を向上させることができる。ここで、充填率とは、振動ミルの容積に対するロッドのみかけの体積をいう。
粉砕機が振動ミル又は媒体撹拌式粉砕機であって、媒体がボールである場合には、ボールの外径としては、好ましくは0.1〜100mm、より好ましくは0.5〜50mmの範囲である。ボールの大きさが上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られるとともに、ボールのかけら等が混入してカルシウム化合物含有原料が汚染されることなく効率的にカルシウム化合物を低結晶化させることができる。
ボールの充填率は、粉砕機の機種により好適な充填率が異なるが、好ましくは10〜97%、より好ましくは15〜95%の範囲である。充填率がこの範囲内であれば、カルシウム化合物を効率よく低結晶化することができる。
粉砕機の処理時間としては、粉砕機の種類、媒体の種類、大きさ及び充填率等により一概に決定できないが、カルシウム化合物の結晶性を低下させる観点から、好ましくは0.01〜50時間、より好ましくは0.05〜20時間、更に好ましくは0.1〜10時間、特に好ましくは0.1〜8時間である。処理温度は特に制限がないが、熱による劣化を防ぐ観点から、好ましくは5〜250℃、より好ましくは10〜200℃である。
本発明のカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物(複合化粒子)は、上記の混合粉砕法を用いて処理することにより効率良く得ることができ、前記の媒体式粉砕機による処理の際に、その内部に粉砕物が固着せずに、乾式にて処理することができる。
得られる混合粉砕物中のカルシウム化合物は、カルシウム化合物の水への溶解性を向上させる観点から、低結晶性カルシウム化合物であることが好ましい。
得られる混合粉砕物の水分含量は、取扱い性やカルシウム化合物の溶解性の低下を抑制する観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
得られる混合粉砕物の平均粒径は、この複合化粒子を工業原料や医薬品等として用いる際の化学反応性及び取扱い性の観点から、好ましくは1〜150μm、より好ましくは5〜120μm、更に好ましくは10〜100μmである。特に平均粒径が10μm以上であれば、複合化粒子を水等の液体と接触させたときに「ママコ」になることを抑えることができる。
得られる混合粉砕物の嵩密度は、取扱い性の観点から、好ましくは100〜1000kg/m3、より好ましくは300〜800kg/m3、更に好ましくは400〜700kg/m3である。
得られる混合粉砕物の安定性は、例えばICHの安定性試験ガイドライン(Q1A)に記載される一般的な加速試験(40℃、75%RH)を行った時の混合粉砕物の状態によって確認することができる。
[混合粉砕物/カルシウム化合物含有組成物]
本発明の混合粉砕物(複合化粒子)は、上記の製造方法により、カルシウム化合物とセルロースからなる複合化粒子を形成する。
また、本発明において、上記混合粉砕物に必要に応じて添加剤を加えてカルシウム化合物含有組成物とすることもできる。
本発明の混合粉砕物及びカルシウム化合物含有組成物の形態は、特に限定されず、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ゲル状、ペースト状、乳状、懸濁状、液状等、用途に適した形態に成形することができる。
本発明の混合粉砕物及びカルシウム化合物含有組成物は、栄養素としてカルシウムを効率よく摂取することを目的に医薬、食品及び、化粧品等の各種用途に利用することができる。
添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤、界面活性剤、香料、滑沢剤、着色剤、抗酸化剤、隠蔽剤、静電気防止剤、流動化剤、湿潤剤、矯臭剤、溶出補助剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種または2種以上を配合して用いてもよい。
賦形剤としては、例えば、糖類(例えば、ぶどう糖、果糖、麦芽糖、乳糖、異性化乳糖、還元乳糖、ショ糖、D−マンニトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、パラチノース、トレハロース、ソルビトール、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン等)、無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、部分α化デンプン、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、アラビアゴム末、ゼラチン等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシルメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、ヒドロキシプロピルスターチ、コーンスターチ等が挙げられる。
矯味剤としては、例えば、白糖、D-ソルビトール、キシリトール、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、グルタミン酸ナトリウム、5'−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80等)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
香料としては、レモン油、オレンジ油、メントール、はっか等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、食用黄色5号、食用青色2号、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、ビタミンE等が挙げられる。
隠蔽剤としては、例えば、酸化チタン等が挙げられる。流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸塩、タルク、含水二酸化ケイ素等が挙げられる。
湿潤剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル酸硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等が挙げられる。
溶出補助剤としては、例えば、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等が挙げられる。
上記で具体的に例示した添加剤以外にも、公知の文献、例えば、薬事日報社2005年刊「医薬品添加物辞典」(日本医薬品添加剤協会編集)等に記載されているような添加剤を用いてもよい。
本発明の混合粉砕物を錠剤やカプセル剤として用いる場合には、前記のように製造された後、所望によって任意の包装が施される。かかる包装は、個別に包装されていない非単位包装(例えば、バルク包装)等であってもよいが、例えば、熱密着性フィルムで医薬品をシールする、いわゆるヒートシールのような密封包装が好ましい。
密封包装としては、密封性を有するものであれば特に限定されないが、水蒸気等の気体の流出入を防ぐことのできる性質を有するものが好ましい。
そのような密封包装としては、アルミフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、高密度ポリエチレンラミネート紙、ポリ塩化ビニリデンラミネート紙等が挙げられる。
また、該密封包装の形態としては、缶、瓶、袋(例えば、カートナー包装、シュリンク包装、ピロー包装等)等が挙げられる。
さらに、該密封包装の形態が袋であるとき、シングルチャック又はダブルチャックを有する袋であってもよい。なお、該密封包装には、例えば、日本薬局方規定の「気密容器」や「密封容器」を用いての包装も含まれる。ヒートシールには、PTP(Press Through Pack)包装やSP(Strip Package)包装等が含まれる。
上記の錠剤やカプセル剤が二次包装された内部の温度は、一般的に医薬品の保存時に用いられる乾燥剤、高分子ポリマーを構成成分とする吸水剤または保湿剤により制御することができる。
カルシウム化合物含有原料等の平均粒径及び水分含量、カルシウム化合物の水への溶解性(混合粉砕物の電気伝導度)及びカルシウム化合物の結晶性、並びにセルロース含有原料のセルロースI型結晶化度の測定は、下記の記載の方法で行った。
(1)平均粒径の測定
平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定条件は、試料測定前に超音波で1分間処理し、測定時の分散媒体として水を用い、体積基準のメジアン径を、温度25℃にて測定した。
(2)水含有量の測定
水含有量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、「FD−610」)を使用し、150℃にて測定を行った。
(3−1)セルロース含有原料のセルロースI型結晶化度の算出
セルロース含有原料のセルロースI型結晶化度は、サンプルのX線回折強度を、株式会社リガク製の「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定し、前記式(1)に基づいて算出した。
測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kV,管電流:120mA,測定範囲:回折角:5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minで測定した。測定用サンプルは、面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。
(3−2)カルシウム化合物の結晶性
カルシウム化合物の結晶性は、サンプルのX線回折強度を上記の条件で測定し、その回折ピークから、以下の基準により結晶性を評価した。
低結晶性:回折角5〜45°に半値幅が5°以下の鋭い回折ピークを有さない。
結晶性:回折角5〜45°に半値幅が5°以下の鋭い回折ピークを有する。
(4)カルシウム化合物の水への溶解性
カルシウム化合物の含有量として、1000質量ppmになるようにサンプルを水中に投入し、溶解時間が30分となった時の電気伝導度(μS)を、EUTECH INSTRUMENT社製「CyberScan con 400」を用いて25℃にて測定を行った。
溶解時間が30分となった時の電気伝導度が、本発明の処理を行っていないカルシウム化合物の電気伝導度に対して、1.3倍以上高くなっていれば、カルシウム化合物の水への溶解性が良好である。
製造例1[低結晶性セルロースの調製]
セルロース含有原料として結晶性セルロース含有原料(平均粒径25μm、セルロースI型結晶化度77%、日本製紙ケミカル株式会社製「KC-フロック W-400G」)を用いて、棚乾燥機〔アドバンテック(ADVANTEC)社製 真空定温乾燥器「DRV320DA」〕を用いて、乾燥後のパルプの水分含量が、1.2質量%になるように乾燥した。
乾燥処理により得られた結晶性セルロース含有原料を、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1」、容器全容量3.5L)に100g投入し、ロッドとして、直径30mm、長さ218mm、材質ステンレス、断面形状が円形のロッド13本を振動ミルに充填(充填率57%)して、振幅8mm、円回転1200cpmの条件で、60分間処理した。処理終了後、振動ミル内の壁面や底部に結晶性セルロース含有原料の固着物等はみられなかった。
得られた低結晶性セルロース含有原料の平均粒径は41μm、結晶化度は0%であった。
実施例1
カルシウム化合物含有原料として、炭酸カルシウム[東洋電化工業株式会社製「トヨホワイト」、カルシウム化合物含有量(水を除いた残余成分中の量、以下同じ)98質量%、100gの水に対する溶解度0.81g、平均粒径7μm、嵩密度395kg/m3]と、製造例1で得られた低結晶性セルロース含有原料を表1に示す割合で混合し、その混合原料(水分含量5.3質量%)80gを振動ミル(中央化工機株式会社製、「MB−1」、容器全容量3.5L)に投入し、ロッド(断面形状:円形、直径:30mm、長さ:211mm、材質:ステンレス)13本を振動ミルに充填(充填率57%)して、振幅8mm、回転数1200cpmの条件で1時間処理を行った。
得られた混合粉砕物中のカルシウム化合物は低結晶性であった。また、得られた混合粉砕物の平均粒径は67μmであり、その温度は、粉砕処理に伴う発熱により45℃であった。粉砕処理後、振動ミル内の壁面や底部にカルシウム化合物等の固着物等はみられなかった。得られた混合粉砕物を水に30分溶解させた時の電気伝導度は、80μSであり、水への溶解性が良好であることが示された。
比較例1
実施例1で使用したカルシウム化合物含有原料の水分含量、カルシウム化合物の結晶性及び電気伝導度を表1に示す。
比較例2
実施例1で使用したカルシウム化合物含有原料を用い、低結晶性セルロース含有原料を用いなかったこと、及び粉砕機及び媒体の種類を、バッチ式媒体撹拌式ミル(「サンドグラインダー」:容器容積800mL、5mmΦジルコニアボールを720g充填、充填率25%、撹拌翼径70mm)に変えて、処理条件を撹拌回転数2000rpm、撹拌速度7.3m/sとし、処理時間を7時間としたこと以外は、実施例1と同様に操作してカルシウム化合物含有原料の粉砕物を得た。得られた粉砕物の温度は、処理に伴う発熱により30〜70℃であった。得られた粉砕物中のカルシウム化合物は結晶性であり、粉砕処理後、媒体撹拌式ミル内の壁面や底部にカルシウム化合物等の固着物がみられた。得られた混合粉砕物を水に30分溶解させた時の電気伝導度は、52μSであり、水への溶解性は十分に改善されなかった。
Figure 2011046621
実施例2
カルシウム化合物含有原料として、クエン酸カルシウム四水和物(関東化学株式会社製、カルシウム化合物含有量98質量%、100gの水に対する溶解度0.1g、平均粒径184μm、嵩密度518kg/m3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作をして低結晶性カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物を得た。結果を表2に示す。
実施例3
カルシウム化合物含有原料及び低結晶性セルロース含有原料を表2に示す組成で用いたこと以外は、実施例2と同様に操作して低結晶性カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物を得た。結果を表2に示す。
実施例4
実施例3で用いた低結晶性セルロース含有原料に代えて、表2に示す結晶性セルロース含有原料(平均粒径25μm、セルロースI型結晶化度77%、日本製紙ケミカル株式会社製「KCフロック W−400G」)を用いたこと以外は、実施例3と同様に操作して低結晶性カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物を得た。結果を表2に示す。
比較例3
低結晶性セルロース含有原料を用いずに、実施例2で使用したクエン酸カルシウム四水和物80gを振動ミルに投入して、実施例1と同様に粉砕処理を行なった。粉砕処理終了後、振動ミル内の壁面や底部に粉砕物の水に溶け難い固着物等が見られ、収率が大幅に低下した。結果を表2に示す。
比較例4
実施例2で使用したカルシウム化合物含有原料のカルシウム化合物の結晶性及び電気伝導度を表2に示す。
比較例5
実施例2で使用したカルシウム化合物含有原料及び低結晶性セルロース含有原料の混合原料100gを、混合機(株式会社カワタ製、SUPER MIXER PICCOLO SMP-2型、回転数:3000rpm)で0.02時間処理して、カルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料の混合物を得た。結果を表2に示す。
Figure 2011046621
実施例5
カルシウム化合物含有原料として、ステアリン酸カルシウム(関東化学株式会社製、カルシウム化合物含有量93質量%、100gの水に対する溶解度0.004g、平均粒径10μm、嵩密度236kg/m3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作をして低結晶性カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物を得た。結果を表3に示す。
比較例6
実施例5で使用したカルシウム化合物含有原料のカルシウム化合物の結晶性及び電気伝導度を表3に示す。
比較例7
実施例5で使用したカルシウム化合物含有原料及び低結晶性セルロース含有原料の混合原料100gを、混合機(株式会社カワタ製、SUPER MIXER PICCOLO SMP-2型、回転数:3000rpm)で0.02時間処理して、カルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料の混合物を得た。結果を表3に示す。
Figure 2011046621
実施例6
カルシウム化合物含有原料として、リン酸三カルシウム(関東化学株式会社製、カルシウム化合物含有量98質量%、100gの水に対する溶解度0.0025g、平均粒径6μm、嵩密度319kg/m3)を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作をしてカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物を得た。結果を表4に示す。
実施例7
混合粉砕処理時間を2時間に変えたこと以外は、実施例6と同様に操作をしてカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物を得た。結果を表4に示す。
比較例8
実施例6及び7で使用したカルシウム化合物含有原料のカルシウム化合物の結晶性及び、電気伝導度を表4に示す。その結果、実施例6及び7で得られた混合粉砕物は、実施例6及び7で使用したカルシウム化合物含有原料と比べて、カルシウム化合物の結晶性が低減していることが確認された。
比較例9
実施例6及び7で使用したカルシウム化合物含有原料及び低結晶性セルロース含有原料の混合原料100gを、混合機(株式会社カワタ製、SUPER MIXER PICCOLO SMP-2型、回転数:3000rpm)で0.02時間処理して、カルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料の混合物を得た。結果を表4に示す。なお、実施例6及び7で得られた混合粉砕物は、比較例9で得られた混合物と比べて、カルシウム化合物の結晶性が低減していることが確認された。
Figure 2011046621
表1〜表4から、実施例1〜7では、比較例1〜9と比べて、混合粉砕処理によりカルシウム化合物の結晶性が低減し、得られたカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の水への溶解性が良好であることが分かる。
本発明の製造方法により得られる混合粉砕物、該混合粉砕物を含有するカルシウム化合物含有組成物は、水へのカルシウム化合物の溶解性が高く、栄養素としてカルシウムを効率よく摂取することができることから、医薬、食品及び、化粧品等の工業原料として特に有用である。

Claims (8)

  1. 100gの水に対する溶解度が1g以下、かつ水を除いた残余の成分中のカルシウム化合物の含有量が50質量%以上であるカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料を、媒体式粉砕機で混合粉砕する、カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物の製造方法。
  2. 下記式(1)に示される結晶化度が33%以下のセルロース含有原料を粉砕原料に用いる、請求項1に記載の混合粉砕物の製造方法。
    セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (1)
    [I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す]
  3. 媒体式粉砕機が、振動ミル又は媒体撹拌式粉砕機である、請求項1又は2に記載の混合粉砕物の製造方法。
  4. 粉砕原料に用いるカルシウム化合物含有原料とセルロース含有原料の混合物の水分含量が15質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の混合粉砕物の製造方法。
  5. 混合粉砕物が、低結晶性カルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物である、請求項1〜4のいずれかに記載の混合粉砕物の製造方法。
  6. 100gの水に対する溶解度が1g以下のカルシウム化合物が、クエン酸カルシウム四水和物、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム及びリン酸三カルシウムからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の混合粉砕物の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で得られたカルシウム化合物とセルロースの混合粉砕物。
  8. 請求項7に記載の混合粉砕物を含有する、カルシウム化合物含有組成物。
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