JP2011041562A - 乳酸発酵による麦芽飲料の製造方法 - Google Patents

乳酸発酵による麦芽飲料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】不快な麦汁フレーバーが低減された無アルコール麦芽飲料の製造方法の提供。
【解決手段】麦汁をラクトバチルス・アミロリティカス(Lactobacillus amylolyticus)またはその近縁種により発酵させることを含んでなる、麦芽飲料の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は乳酸発酵による麦芽飲料の製造方法に関する。
近年の健康志向の高まりの中でアルコール摂取量を自己管理する消費者が増加している。また、飲酒運転に対する罰則の強化など道路交通法の改正により、自動車等の運転に従事する者のアルコール摂取に対する関心が高まっている。このような中で低アルコールあるいは無アルコールのビール風味麦芽飲料への需要が一段と高まっている。
従来の低アルコールビール風味麦芽飲料は、通常のビール飲料同様、酵母による発酵を行うことでビールの風味を飲料に付与し、併せてアルコールの低減を図っている。これは、ビールと同様の味や香りを需要者が期待するため、アルコール発酵を完全に排除して低アルコール麦芽飲料を製造することは困難であると考えられてきたことによる。従って、従来の低アルコールビール風味麦芽飲料の製造は酵母による発酵が行われることを前提とし、酵母による代謝プロセスの改良や発酵生成物からアルコールを効果的に除去する方法が検討されてきた。
しかしながら、従来の技術ではいずれも酵母による発酵を前提としており、製品からアルコールを完全に除去することは現実的に不可能であった。従って、従来の低アルコールビール風味麦芽飲料はアルコールを摂取したくない者や自動車等を運転する者の飲用には適していない。
一方で、単に酵母による発酵を排除し、麦芽により生成された麦汁を最終製品とした場合、未発酵の麦汁には特有のフレーバー(麦汁フレーバー)が存在し、一般的には飲用に適さない。すなわち、この麦汁フレーバーは飲用した際も、戻り香となって味わいにまで悪影響を及ぼすことから、飴湯として飲まれている例を除いては飲料として直接には供されていない。
麦汁フレーバーは、麦汁の仕込工程、特に煮沸での熱分解により発生するアルデヒド類に由来しており、飴様臭・穀物様臭などの原因物質として知られている。これらアルデヒド類は、通常のビール類であれば発酵工程において酵母によって代謝され、激減する。しかし、前述のように酵母による発酵で生成するアルコールを完全にゼロとすることは困難である。
特許文献1には、麦汁にホモ型の乳酸菌(ラクトバチルス・カゼイ)を添加して発酵させるとアルコールの生成を伴わない発酵がスムーズに進行し、清涼感のある香気を持ち、麦芽に由来する特有のにおいのない発酵液が得られることが記載されている。
特開昭56−42574号公報
本発明者らがホモ型乳酸菌による麦汁の発酵を検証したところ、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)による発酵で微量にエタノールが生成することを見いだした。ラクトバチルス・カゼイを用いて乳酸発酵を行い、不快な麦汁フレーバーを低減させると最終製品に乳酸発酵によって生じたアルコールが含まれることになることから、無アルコール麦芽飲料の製造にラクトバチルス・カゼイによる乳酸発酵を利用することはできない。
本発明は、不快な麦汁フレーバーが低減された無アルコール麦芽飲料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、ホモ型乳酸菌のうちラクトバチルス・アミロリティカス(Lactobacillus amylolyticus)およびその近縁種を用いて麦汁を発酵させたところ、不快な麦汁フレーバーが低減されるとともに、検出限界0.5mg/lでエタノールが全く検出されないことを見いだした。
すなわち、本発明によれば、麦汁をラクトバチルス・アミロリティカス(Lactobacillus amylolyticus)またはその近縁種により発酵させることを含んでなる、麦芽飲料の製造方法が提供される。
本発明による製造方法によれば、ホモ型乳酸菌であるラクトバチルス・アミロリティカスまたはその近縁種による乳酸発酵を行うことで、アルコールを生成させずに、不快な麦汁フレーバーを低減させることができる。
本発明によれば、また、本発明による製造方法により製造された麦芽飲料が提供される。本発明による製造方法により製造された麦芽飲料は不快な麦汁フレーバーが低減されるとともに、乳酸発酵によって生じるアルコール含量が検出限界(0.5mg/l)未満であることから、無アルコール麦芽飲料として有用である。
ラクトバチルス・アミロリティカスにより麦汁を発酵させた場合のpH変化を示した図である。麦汁培地に発酵前液を1ml(△印)、5ml(▲印)、10ml(□印)添加して37℃で乳酸発酵させた場合のpH変化と、麦汁培地に発酵前液を1ml(黒菱形)、5ml(○印)添加して45℃で乳酸発酵させた場合のpH変化が示されている。 ラクトバチルス・クリスパトス、ラクトバチルス・アミロフィラス、ラクトバチルス・アセトトレランス、ラクトバチルス・インテスティナリスをそれぞれMRS培地で静置培養させた場合のpH変化を示した図である。 ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ジョンソニーをそれぞれMRS培地で静置培養させた場合のpH変化を示した図である。 ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブレッキ、ラクトバチルス・サケをそれぞれMRS培地で静置培養させた場合のpH変化を示した図である。 ラクトバチルス・クリスパトス、ラクトバチルス・アミロフィラス、ラクトバチルス・アセトトレランス、ラクトバチルス・インテスティナリスをそれぞれMRS培地で静置培養させた場合の濁度変化を示した図である。 ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ジョンソニーをそれぞれMRS培地で静置培養させた場合の濁度変化を示した図である。 ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブレッキ、ラクトバチルス・サケをそれぞれMRS培地で静置培養させた場合の濁度変化を示した図である。
発明の具体的説明
定義
本発明において「麦芽飲料」とは、麦汁を主体とする飲料を意味し、炭酸ガス等により清涼感が付与された麦芽清涼飲料も含まれるものとする。
本発明において「無アルコール」とは、乳酸発酵によって生じるアルコールが検出されないこと、すなわち、乳酸発酵によって生じるアルコール含量が検出限界:0.5mg/l未満であることを意味する。
本発明において「麦汁フレーバー」とは、未発酵の麦汁に特有のフレーバー(香り)を意味する。このような未発酵麦汁に特有のフレーバーとしては、麦汁の煮沸で熱分解により発生する飴様臭や穀物様臭のような不快なフレーバー(本明細書において「不快な麦汁フレーバー」ということがある)が挙げられ、これらの臭気はアルデヒド類に由来していると考えられる。
麦芽飲料の製造方法
本発明によれば、麦汁をラクトバチルス・アミロリティカスまたはその近縁種により乳酸発酵させることによって不快な麦汁フレーバーが低減された麦芽飲料を製造することができる。具体的には、麦汁を調製し、麦汁を乳酸発酵させ、得られた麦汁を濾過することにより、本発明による麦芽飲料を製造することができる。
以下、麦汁の調製、乳酸菌による発酵、麦芽飲料の濾過の順に説明する。
[麦汁の調製]
麦汁の調製は、ホップを添加しないこと以外は通常のビール用麦汁の製造方法に従って行うことができ、例えば、(a)麦芽粉砕物と水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得る工程を行うことにより得ることができる。工程(a)の後に、必要に応じて(b)得られた麦汁を煮沸する工程を行い、次いで、(c)煮沸した麦汁を冷却する工程を行ってもよい。
工程(a)において、麦芽粉砕物は、大麦、例えば二条大麦を、常法により発芽させ、これを乾燥後、所定の粒度に粉砕したものであれば良い。
麦芽粉砕物と水の混合物には副原料を添加してもよい。副原料としては、例えば、米、コーンスターチ、コーングリッツ、糖類(例えば、果糖ブドウ糖液糖などの液糖)、食物繊維などが挙げられる。副原料が糖類の場合には麦汁を糖化ないし濾過した後に添加してもよい。また、水はその全量を麦芽粉砕物と混合しても、あるいはその一部を麦芽粉砕物と混合し、残りを全部または分割して糖化後の麦汁に添加してもよい。
麦汁を構成する麦芽粉砕物、副原料および水の割合は適宜決定することができるが、工程(c)の後に得られる麦汁の糖度が3〜20%、好ましくは、7〜14%となるように麦芽粉砕物、副原料および水の割合を決定してもよい。
上記混合物の糖化および濾過は常法に従って実施することができる。
工程(b)では、(a)で得られた麦汁を煮沸し、沈殿により生じたタンパク質などの粕を除去してもよい。
工程(c)では、煮沸した麦汁を冷却する。この冷却は、乳酸菌が発酵するのに適した温度まで冷却するのが望ましい。
麦汁には、香料、色素、起泡・泡持ち向上剤などの添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、麦汁の糖化前に添加しても、麦汁を糖化ないし濾過した後に添加してもよい。
[乳酸菌による発酵]
本発明において、不快な麦汁フレーバーを低減させる乳酸発酵は、仕込工程以降の製造工程において適宜行い得る。本発明では、ラクトバチルス・アミロリティカスおよびその近縁種を麦汁の乳酸発酵に用いることができる。
ここで、ラクトバチルス・アミロリティカスの「近縁種」とは、ラクトバチルス・アミロリティカスの16S rRNA遺伝子または約1600ヌクレオチドの領域を少なくとも含む16S rRNA遺伝子の一部と、少なくとも85%以上、好ましくは、90%以上の同一性を示す16S rRNA遺伝子またはその一部を有する菌種を意味する(Ingrid Bohak et al., System. Appl. Microbiol. 21, pp360-364(1998)参照)。遺伝子の塩基配列の同一性は、BLASTなどの周知の相同性検索ソフトウェアを用いて、デフォルト(初期設定)のパラメーターを設定して算出することができる。
ラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種の具体例としては、ラクトバチルス・インテスティナリス(Lactobacillus intestinalis;16S rRNA遺伝子におけるラクトバチルス・アミロリティカスとの同一性は96.1%。以下同様に示す)、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus;96.8%)、ラクトバチルス・クリスパトス(Lactobacillus crispatus;96.4%)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus;95.7%)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus;96.0%)、ラクトバチルス・デルブレッキ(Lactobacillus delbrueckii;92.5%)、ラクトバチルス・アセトトレランス(Lactobacillus acetotolerans;93.0%)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri;91.9%)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii;91.9%)、ラクトバチルス・アミロフィラス(Lactobacillus amylophilus;89.4%)、ラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sake;87.0%)が挙げられる。ラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種は、好ましくは、ラクトバチルス・インテスティナリス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・クリスパトス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・デルブレッキ、ラクトバチルス・アセトトレランス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・サケである。
麦汁の乳酸発酵は、前培養により乳酸菌を継代し、得られた前培養液を用いて麦汁において本培養を実施することができる。前培養に用いられる培地としてはMRS培地、ホップを含まない麦汁、麦芽エキス、酵母エキスが挙げられる。また、前培養の条件は、例えば、20℃〜50℃、12時間〜96時間の静置培養とすることができるが、菌種ごとに適宜発酵条件を決定してもよい。
本培養に当たっては麦汁1ml当たり菌体数10〜1010個、好ましくは、10〜1010個となるようにラクトバチルス・アミロリティカスまたはその近縁種を含む前培養液を麦汁に添加することができる。本培養の条件は、例えば、20℃〜50℃、12時間〜96時間の静置培養とすることができるが、菌種ごとに適宜発酵条件を決定してもよい。
後記実施例に記載されるように、ラクトバチルス・アミロリティカスおよびその近縁種により麦汁を発酵させることにより麦汁のpHが時間の経過とともに低下する。香味の観点および食品衛生法により要求される殺菌処理を軽減する観点から、麦汁のpHが4.0未満になるまで乳酸発酵させることができ、好ましくは、麦汁のpHが3.5以上4.0未満の範囲内になるまで乳酸発酵させることができる。乳酸発酵の停止は、熱処理による殺菌、ホップあるいはホップエキスの添加、温度低下などによって行うことができる。
後記実施例に記載されるように、ラクトバチルス・アミロリティカスおよびその近縁種を用いて発酵させた場合、菌の増殖の停止と培地pHの低下とが関連していることから、麦汁のpHとともに、菌の増殖を観察することにより、発酵を止めるタイミングを決定することができる。
乳酸発酵により不快な麦汁フレーバーが低減・抑制されたか否かは、官能評価試験や成分分析試験によって確認することができる。成分分析試験を行う場合には、アルデヒド類の濃度を指標にして評価してもよい。
ラクトバチルス・アミロリティカスおよびその近縁種で麦汁を発酵させた場合には、不快な麦汁フレーバーが低減されるとともに、検出限界0.5mg/lで乳酸発酵により生ずるアルコール成分は麦汁中に一切検出されない。従って、本発明による製造方法では、製造された麦芽飲料中の、乳酸発酵により生ずるアルコール含量を0.5mg/l未満にすることができる。
[麦芽飲料の濾過]
乳酸発酵に付されて得られた麦芽飲料を濾過して不要なタンパク質を除去することができる。濾過は常法に従って行うことができるが、好ましくは、珪藻土濾過機を用いて行うことができる。濾過に当たっては、麦芽飲料に脱気水を加えて希釈後に濾過し、最終製品の糖度を3〜8%に調整してもよい。
また、乳酸発酵に付された麦汁にホップを添加し、煮沸することにより、ホップの風味・香気を煮出してもよい。あるいは、ホップエキスを添加し、煮沸せずにそのまま最終製品としてもよい。ホップあるいはホップエキスを添加することにより麦芽飲料にビール風味を付与して、ビール風味麦芽飲料とすることができる。ここで、「ビール風味」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りをいう。ホップを添加して煮沸した後、沈殿により生じたタンパク質などの粕を濾過により除去してもよい。
濾過の後、通常のビールまたは発泡酒の製造において行われる工程、例えば、脱気水などによる最終濃度の調節、炭酸ガスの封入、低温殺菌(パストリゼーション)、容器(例えば樽、壜、缶)への充填(パッケージング)、容器のラベリングなど、を適宜行うことができる。
本発明による製造方法では酵母による発酵を経ない麦汁を使用していることから、製造された麦芽飲料は酵母発酵により生ずるアルコール成分を含まない。また、本発明による製造方法では、ラクトバチルス・アミロリティカスおよびその近縁種を用いて麦汁を乳酸発酵させるが、ラクトバチルス・アミロリティカスおよびその近縁種はアルコール成分を生成しない。従って、本発明による製造方法は無アルコール麦芽飲料やビール風味無アルコール麦芽飲料の製造方法として有用である。
本発明の好ましい態様によれば、麦芽粉砕物から調製された糖度3〜20%の麦汁を、ラクトバチルス・アミロリティカスまたはその近縁種によりpH4.0未満となるまで発酵させることを含んでなる、麦汁フレーバーが低減された無アルコール麦芽飲料の製造方法が提供される。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:ラクトバチルス・アミロリティカスの評価
(1)発酵条件の決定、香味評価
ラクトバチルス・アミロリティカス(Lactobacillus amylolyticus)(DSM11664)とラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)(ATCC393)を麦汁(糖度10%、ホップ無添加)にて、様々な温度で発酵し、pH変化や菌の増殖の様子をモニタリングした。pHの変化はpHメーターHM−50V(東亜電波工業社)を用いた。その結果、ラクトバチルス・カゼイは約30℃で、ラクトバチルス・アミロリティカスは37〜50℃でよく増殖し、発酵することが判明した(データ省略)。なお、振動式密度計により測定した20℃における密度を糖度(%)とした。
また、ラクトバチルス・アミロリティカス(DSM11664)を麦汁(糖度10%、ホップ無添加)に添加して乳酸発酵させた場合の香味評価を行った。具体的には、乳酸発酵が終了した麦汁をpH調整せず、また、ホップエキスを添加せずに、試飲を行った。その結果、麦汁臭は、発酵が進むほど少なくなるが、発酵が進みすぎると酸味が強くなり、乳酸菌由来の独特な臭いも感じられるようになった。pHが4.0を切った程度(3.5〜4.0の間)が香味としては適当で、香味の観点からはこの範囲で発酵を止めることが望ましいと考えられた。
各pHにおける香味評価は以下に示される通りであった。
ラクトバチルス・アミロリティカスを用いて麦汁を発酵したときのpHと香味の関係
Figure 2011041562
(2)pH変化と発酵時間
10mlの麦汁培地(糖度10%、ホップ無添加)にラクトバチルス・アミロリティカス(DSM11664)(低温室保存)を添加し、37℃で72時間静置培養し、前培養液とした。
1mlの前培養液を1000mlの麦汁培地(糖度10%、ホップ無添加)に添加し、37℃、45℃でそれぞれ培養し、時間経過に伴うpHの変化を調べた。また、5mlの前培養液を1000mlの麦汁培地(糖度10%、ホップ無添加)に添加し、37℃、45℃でそれぞれ培養し、時間経過に伴うpHの変化を調べた。更に、10mlの前培養液を1000mlの麦汁培地(糖度10%、ホップ無添加)に添加し、37℃で培養し、時間経過に伴うpHの変化を調べた。
結果は図1に示される通りであった。
ラクトバチルス・アミロリティカスを用いて麦汁を発酵した場合、pH5.5を開始時点としても、20時間以内にpHを4未満に下げることが十分に可能であった。酵母による発酵を排除し、麦芽により生成された麦汁を最終製品とした場合、その製品は飲料の扱いとなるため、食品衛生法に基づき(厚生省告示第213号)、pH4.0未満の麦汁は、65℃×10分またはこれと同等以上の殺菌が必要となり、pH4.0〜4.6であれば85℃×30分またはこれと同等以上の殺菌が必要となるが、本発明によれば比較的短期間に製品のpHが4.0未満になるように乳酸発酵させることができることから、麦汁フレーバーを低減させることができるとともに、殺菌設備の制約や殺菌にかかるエネルギーコストなどの諸問題を緩和することが可能となる。
(3)アルコール生成
アルコールを含まない培地を調製し、乳酸発酵を行い、経時的にアルコール生成を調べた。培地は、MRS培地(OXOID社)を使用した。
具体的には、10mlのMRS培地にラクトバチルス・アミロリティカス(DSM11664)を添加し、中2日、37℃で静置培養し、ラクトバチルス・アミロリティカスの前培養液とした。次いで、4.5ml(試験1)および100μl(試験2)の前培養液を600mlのMRS培地に添加し、50℃で培養し、時間経過に伴うエタノール濃度の変化を調べた。
また、10mlのMRS培地にラクトバチルス・カゼイ(ATCC393)を添加し、72時間、室温で静置培養し、ラクトバチルス・カゼイの前培養液とした。次いで、100μl(試験3)および200μl(試験4)の前培養液を600mlのMRS培地に添加し、30℃で培養し、時間経過に伴うエタノール濃度の変化を調べた。
エタノール(EtOH)生成量は、ヘッドスペースGC/FIDにより分析した。具体的には、ガスクロマトグラフィー本体としてAgilent6890Nを、Headspace SamplerとしてAgilent7694を、それぞれ用いて測定を行った。
結果は以下に示される通りであった。
Figure 2011041562
ラクトバチルス・カゼイはホモ型乳酸菌であるが、発酵開始後20時間を経過すると発酵液中に2mg/l程度のエタノールを生成した(試験3、試験4)。一方、ラクトバチルス・アミロリティカスは、検出限界0.5mg/lで発酵液中に全くエタノールを生成しなかった(試験1、試験2)。
実施例2:ラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種の評価
(1)pH変化と発酵時間
10mlのMRS培地にラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種(低温室保存)をそれぞれ添加し、72時間静置培養し、各近縁種の前培養液とした。次いで、0.1mlの各前培養液を10mlのMRS培地に添加し、培養し、時間経過に伴う培地pHの変化を調べた。使用するラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種および培養条件については、以下の表3に示す。
Figure 2011041562
結果は図2〜4に示される通りであった。
ラクトバチルス・クリスパトス、ラクトバチルス・アセトトレランス、ラクトバチルス・インテスティナリス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブレッキ、ラクトバチルス・サケをそれぞれ培養した場合、pH約6を開始時点としても、培地pHを4未満に下げることが十分に可能であった。
以上の結果から、これらの近縁種を使用する場合であっても、ラクトバチルス・アミロリティカスを使用する場合と同様に、比較的短期間に製品のpHが4.0未満になるように乳酸発酵させることができることが示された。従って、ラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種を使用する場合であっても、麦汁フレーバーを低減させることができるとともに、殺菌設備の制約や殺菌にかかるエネルギーコストなどの諸問題を緩和することが可能となることが確認された。
(2)濁度変化と発酵時間
10mlのMRS培地にラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種をそれぞれ添加し、72時間静置培養し、各近縁種の前培養液とした。次いで、0.1mlの各前培養液を10mlのMRS培地に添加し、培養し、時間経過に伴う培地の濁度変化を調べた。使用するラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種および培養条件については、表3に示す通りである。
濁度の測定は、分光光度計(日立 U−2001)を用いて吸光度(OD600)を測定することにより行った。
結果は図5〜7に示される通りであった。
ラクトバチルス・クリスパトス、ラクトバチルス・アセトトレランス、ラクトバチルス・アミロフィラス、ラクトバチルス・インテスティナリス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ジョンソニー、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・デルブレッキ、ラクトバチルス・サケをそれぞれ培養した場合、培地の濁度は最高値に達した後、そのまま維持された。
以上の結果から、各近縁種は上記の試験条件において十分に増殖していることが確認された。また、実施例2の(1)の結果とあわせて、各近縁種の増殖の停止と培地pHの低下が関連していることが示された。飲料製造時にpHが4.0未満になっていない場合は、外部から酸を添加する、あるいは熱処理条件を厳しくして殺菌が行うこともあり得るが、上記試験条件はアルコール生成の有無の試験に用いるのに十分であるといえる。
(3)アルコール生成
10mlのMRS培地にラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種をそれぞれ添加し、72時間静置培養し、各近縁種の前培養液とした。次いで、0.1mlの各前培養液を10mlのMRS培地に添加し、培養し、時間経過に伴うエタノール濃度の変化を調べた。使用するラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種および培養条件については、表3に示す通りである。
エタノール(EtOH)生成量は、ヘッドスペースGC/FIDにより分析した。具体的には、ガスクロマトグラフィー本体としてAgilent6890Nを、Headspace SamplerとしてAgilent7694を、それぞれ用いて測定を行った。
結果は以下に示される通りであった。
Figure 2011041562
ラクトバチルス・アミロリティカスの各種近縁種は、検出限界0.5mg/lで発酵液中に全くエタノールを生成しなかった(試験5)。

Claims (5)

  1. 麦汁をラクトバチルス・アミロリティカス(Lactobacillus amylolyticus)またはその近縁種により発酵させることを含んでなる、麦芽飲料の製造方法。
  2. 麦芽飲料中、乳酸発酵により生ずるアルコール含量が0.5mg/l未満である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 麦汁のpHが4.0未満になるまで発酵させる、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. ラクトバチルス・アミロリティカスの近縁種が、ラクトバチルス・インテスティナリス(Lactobacillus intestinalis)、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・クリスパトス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・デルブレッキ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・アセトトレランス(Lactobacillus acetotolerans)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・アミロフィラス(Lactobacillus amylophilus)、およびラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sake)からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法により製造された、麦芽飲料。
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