JP2011038574A - 真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫 - Google Patents

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Abstract

【課題】折り曲げ形状を有する真空断熱材又は当該真空断熱材を備えた冷蔵庫において、外被材の折り曲げ部の損傷を抑制することで、断熱性能の経時劣化を抑制することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明は、柔軟性を有する繊維系材料の芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備えた真空断熱材において、前記芯材は表面層の一部が溶着されて且つ中間層が溶着されず折り曲げ成形されたことを特徴とするものである。
【選択図】 図1B

Description

本発明は、真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に関する。
近年、省エネルギー性能の向上を目的として、冷蔵庫等の家電製品を中心に真空断熱材が適用されている。冷蔵庫においては、断熱材が充填されるスペースに限りがあり、断熱を必要とする部分の形状も複雑化している。一方、真空断熱材の寸法が小さくなると、ヒートブリッジ現象の影響が大きくなり、断熱性能が悪化する。そこで、真空断熱材の寸法をなるべく大きくするために、立体成形した真空断熱材が冷蔵庫等に適用され始めている。
真空断熱材の構成は、少なくとも芯材と、該芯材を収納するガスバリア性の外被材とを有しており、外被材中を減圧して封止した構造になっている。ここで、真空断熱材を真空パック後に折り曲げると、外被材は延伸され、ガスバリア層が薄肉化してガスバリア性(特に水蒸気バリア性)が悪化する。
上記前提において、特許3478780号公報(特許文献1)には、無機繊維からなる芯材をガスバリア性フィルムで覆い、その内部を減圧密封した後、圧縮成型により、真空断熱材の厚み方向に垂直な側面部に溝を少なくとも一本以上形成し、溝部で折り曲げを行うものが記載されている。
また、特開2006−118634号公報(特許文献2)には、真空断熱材の芯材を立体構造の展開図を形成するように配置させ、また、外被材における芯材を含まない部分の全面を熱溶着しており、各芯材の間における前記熱溶着部で真空断熱材8を折り曲げることにより、立体構造を形成するものが記載されている。
また、真空パック前、芯材をバインダー等の固定手段によって予め成形し、真空パック時に外被材を追従させることで、外被材のダメージを抑制する構成の一例として、特開2004−308691号公報(特許文献3)がある。これは、芯材を平均繊維径3〜5μmの無機繊維とし、該繊維に対し0.5〜1.5重量%のバインダーを塗布し、熱プレスして形成した成形体又は該成形体を2枚以上積層したものである。
また、特開2008−286282号公報(特許文献4)には、芯材をポリエステル短繊維とポリエステルバインダー短繊維とから構成される不織布とし、ポリエステル短繊維同士は、ポリエステルバインダー短繊維のバインダー成分が溶融または軟化することにより熱接着したものが記載されている。
特許3478780号公報 特開2006−118634号公報 特開2004−308691号公報 特開2008−286282号公報
しかしながら、特許文献1に記載の真空断熱材では、折り曲げ部に溝を設けるため、溝部は板厚が小さくなり、断熱性能が低下する、という課題があった。また、スプリングバック現象を考慮すると、真空パック後に成形するやり方では、実際に所望する曲げ角度以上に真空断熱材を折り曲げなければならず、ガスバリア性が低下する、という課題があった。
また、特許文献2に記載の真空断熱材では、折り曲げ部に芯材が無いので、芯材間の隙間から熱が漏洩し、断熱性能が低下する、という課題があった。
また、特許文献3に記載の真空断熱材では、フェノール等のバインダー成分を用いると、真空下で発ガスの原因となり、真空度が悪化して断熱性能が低下する、という課題があった。
また、特許文献4に記載の真空断熱材では、バインダー短繊維で芯材の主体となるポリエステル短繊維を結合しているため、繊維同士の接触熱抵抗が小さくなり、固体熱伝導が大きくなることで断熱性能が低下する、という課題があった。
そこで、本発明は上記課題を解決するために、折り曲げ形状を有する真空断熱材又は当該真空断熱材を備えた冷蔵庫において、外被材の折り曲げ部の損傷を抑制することで、断熱性能の経時劣化を抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の真空断熱材は、柔軟性を有する繊維系材料の芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備えた真空断熱材において、前記芯材は表面層の一部が溶着されて且つ中間層が溶着されず折り曲げ成形されたことを特徴とする。
また、前記芯材は熱可塑性樹脂からなる繊維系材料であって、該芯材の前記表面層に通気部が設けられたことを特徴とする。
また、前記熱可塑性樹脂はポリプロピレン,ポリスチレン,ポリエチレンテレフタレートのうち、少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする。
また、前記繊維系材料の軟化温度は前記中間層よりも前記表面層が低いことを特徴とする。
また、本発明の冷蔵庫は、外箱と、内箱と、前記外箱と前記内箱との間に設けられた真空断熱材とを備えた冷蔵庫において、前記真空断熱材は、柔軟性を有する繊維系材料の芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備え、前記芯材は表面層の一部が溶着されて且つ中間層が溶着されず折り曲げ成形されたことを特徴とする。
本発明によれば、折り曲げ形状を有する真空断熱材又は当該真空断熱材を備えた冷蔵庫において、外被材の折り曲げ部の損傷を抑制することで、断熱性能の経時劣化を抑制することができる。
本発明の実施例1における芯材の外観図である。 図1AにおけるA−A断面図である。 本発明の実施例1における真空断熱材の外観図である。 図2AにおけるB−B断面図である。 本発明の実施例1における真空断熱材の外観図である。 図3AにおけるC−C断面図である。 本発明の実施例における芯材の表面層の溶着厚さと真空断熱材の熱伝導率(指数)との関係を示す。 各実施の形態及び比較例におけるパラメータを示す図である。 本発明の実施例2における芯材の加工時の断面図である。 図6Aの芯材の真空パック時の断面図である。 本発明の実施例5における芯材の断面図である。 本発明の実施例5における真空断熱材の断面図である。 本発明の実施例7における真空断熱材の外観図である。 図8AにおけるF−F断面図である。 本発明の実施例10における芯材の外観図である。 図9AにおけるE−E断面図である。 本発明の実施例11における芯材の外観図である。 図10AにおけるD−D断面図である。 本発明の実施形態に係る冷凍冷蔵庫の縦断面図である。
以下、本発明に係る実施の形態について説明する。
まず、図1A,図1B,図2A,図2B及び図3A,図3Bを参照しながら、実施例1に係る真空断熱材の製造方法を説明する。芯材4は、熱可塑性樹脂からなる繊維系材料である。この芯材4の内部に吸着剤5を投入し、芯材4を圧縮しながら芯材4の平面部に熱を加えることで、最表面を熱溶着して溶着層4aを形成する。これにより、芯材4の全体形状は圧縮保持される。すなわち、熱溶着するのは芯材4の少なくとも平面部の表面であり、両平面部の表面に溶着層4aが設けられた芯材4の内層は、柔軟性を有する中間層4bである。これにより、芯材4全体としては通気性が維持されており、芯材4を立体形状に予め保持できると共に、芯材4の内部を脱気できる。
続いて、三方が溶着された袋状の外被材2へ圧縮成形された芯材4を収納する。そして、外被材2の内部を脱気し、外被材2の開口部を熱溶着によって封止する。これにより、外被材2がガスバリア性を低下させることなく芯材4の形状に追従した真空断熱材1を得ることができる。
また、芯材4を熱溶着すると熱硬化する。すると、図3に示す芯材4の稜線が直行する部分、すなわち芯材4の端部4eを熱溶着した場合、外被材2へ収納して圧縮成形するときに、外被材2を損傷するおそれがある。そこで、芯材4の端部4eは熱溶着しない構成とする。
次に、芯材4を溶着する方法として、熱板溶着の他、インパルス溶着,非接触熱板溶着,超音波溶着,振動溶着,半導体レーザー溶着,赤外線溶着が利用できる。
芯材4の外表面が溶着された溶着層4aの厚さは、真空断熱材1の厚さに対して10〜60%とするのが好ましい。より好ましくは10〜30%である。厚さ10mmの真空断熱材1の場合、1〜6mmとするのが好ましい。これは、1mm未満では芯材4を立体形状に保持するのが難しくなるためであり、また、6mmを超える場合であっても、真空断熱材1の断熱性能が十分得られないためである。
より具体的に、図4を用いて説明する。図4は、芯材4の表面層の溶着厚さと真空断熱材1の熱伝導率(指数)との関係を示す。ここでは、真空断熱材1の厚さを10mmとし、溶着厚さ0mmのときの指数を100として比較している。
これより、溶着厚さが6mmを超える場合、著しく断熱性能が低下することが分かる。なお、芯材4の表面を溶着する厚さは、前述の範囲で用途と厚みに応じて選定できる。また、芯材4の溶着層4aの厚さについては、芯材4の表面層における目付量の調整により制御が可能である。
外被材2における芯材4に接しない部分である外被材端部2aは、芯材4と接する部分と接しない部分とを境にして折り曲げる。更に、当該折り曲げ部をテープ,両面テープ若しくは接着剤等で固定してもよい。
また、外被材端部2aは、4辺全てを折り曲げてもよいが、必要に応じて4辺全てを折り曲げなくてもよい。例えば、三方が溶着された袋状の外被材2の場合、脱気後に封止される開口を形成する外被材開口端部2bのみを折り曲げて固定することも可能である(図6B参照)。
真空断熱材1の形状は、特に限定されず、適用される箇所と作業性に応じて各種形状のものが適用可能である。
次に、各基材の構成,加工条件等について詳細に説明する。
外被材2は、真空断熱材1の内部を減圧状態に保つために芯材4を覆うものである。外被材2は、外層から順に、表面保護層,ガスバリア層,熱溶着層を有する。表面保護層は耐傷付き性,耐衝撃性に対応するためのものである。ガスバリア層はガスバリア性を確保するためのものである。熱溶着層は熱溶着によって真空断熱材1の内部を密閉するためのものである。したがって、これらの目的に適うものであれば、あらゆる公知材料が使用可能である。
外被材2の具体的構成としては、表面保護層としてポリアミド樹脂,ガスバリア層としてアルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂及びアルミニウムを蒸着したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂,熱溶着層として高密度ポリエチレン樹脂を用いたラミネートフィルムが挙げられる。
このとき、表面保護層とガスバリア層における互いのアルミニウム蒸着面を貼り合わせると、ガスバリア性がより高くなる。また、各層を接着するための接着剤としては、2液硬化型ウレタン系接着剤が用いられるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、代わりにアクリル系接着剤,ポリエステル系接着剤,エポキシ系接着剤,シリコン系接着剤等を用いてもよい。そして、この外被材2は熱溶着層同士を貼り合わせた袋として使用される。
また、更に改善する手段として、例えば、表面保護層に金属または無機酸化物を蒸着することで耐衝撃性の他にガスバリア性を付加したり、ガスバリア層に金属蒸着または無機酸化物蒸着を有するフィルムを設けたり、あるいは金属箔を用いてもよい。用いる金属としては、アルミニウムやステンレス等が挙げられ、無機酸化物としては、シリカ蒸着等が挙げられる。
熱溶着層としては、高密度ポリエチレン樹脂の他に、シール性や耐ケミカルアタック性に優れた低密度ポリエチレン樹脂,中密度ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリアクリルニトリル樹脂などを用いてもよい。
また、外被材2の残存有機溶剤等の脱ガスを目的として、芯材4の挿入前に外被材2のエージングを施すことが有効である。このときの条件は、各種有機溶剤の除去が可能であるということから、例えば70℃以上で3時間以上の真空乾燥を行うことが望ましい。
芯材4は、ポリプロピレン繊維,ポリエチレン繊維,ポリスチレン繊維,ポリエチレンテレフタレート樹脂等の有機繊維からなる繊維系材料を適当なサイズ,形状にカットして用いる。また、ガラス短繊維材等の無機繊維を併用してもよく、有機繊維と無機繊維を積層したり、有機繊維で無機繊維をサンドイッチして積層したりしてもよく、更には異種の有機繊維を積層して用いてもよい。
繊維化する有機樹脂としては、ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリアミド,ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリ乳酸,ABS等の断熱性と加工性を両立でき、熱溶着が可能な熱可塑性樹脂であれば何でもよく、特に限定されるものではない。特に好ましくはポリスチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレートである。これらは熱溶着が可能であり、真空断熱材1にしたときの断熱性能が高い。その理由は曲げ弾性率が高いため、真空パック後に大気圧で圧縮されても比較的潰れにくく、繊維同士の接触熱抵抗が大きくなるからである。
また、樹脂繊維は熱伝導率が低いため、数秒から数分の間であれば軟化温度に設定された熱板で芯材4の表面を熱溶着しても、表面層4cが溶けるだけで芯材4の内部は通気性を保持することができる。
また、有機樹脂を繊維化する方法は特に限定されるものではないが、例えばメルトブローン紡糸法がある。これは、押出機で溶融した樹脂を極細のノズル孔から押出しながら、高速のガス流体で延伸することで樹脂を繊維化し、積層するものである。その他の繊維化手段として、スパンボンド紡糸法等を用いてもよい。
有機樹脂繊維の繊維径は1〜50μmであることが好ましく、更には1〜10μmであることが好ましい。これは、平均繊維径が50μmより大きくなったとき、繊維の接触面積が大きくなって接触熱抵抗が小さくなるので、熱伝導率が大きく劣ってしまうからである。一方、平均繊維径を1μm未満とすると、繊維の接触が小さくなることで接触熱抵抗は大きくなるが、1枚当たりの厚みが薄くなってしまうため、シート状の有機繊維集合体を重ねて厚みを稼ぐことで熱伝導率を低減しなければならず、生産性が劣ると共にコストも高騰するからである。
有機繊維の繊維方向については、真空断熱材1の厚み方向に対し水平方向に並んで配列するものが断熱性能の点で好ましい。これは垂直方向の熱伝導を低減するのに有効なためである。
また、芯材4の脱水,脱ガスを目的として、外被材2への挿入前に芯材4を乾燥処理することは有効である。このときの加熱温度は最低限表面に付着した水分の除去が可能であるということから、100℃以上であることが望ましい。樹脂の軟化点がこの温度より低いときは、軟化点を超えない範囲の温度で乾燥してもよい。また、真空乾燥を併用してもよい。
吸着剤5は、アルミノ・シリケートの含水金属塩を主成分とした親水性の合成ゼオライト,揮発性又は疎水性の有機系ガスの吸着能力を高めた疎水性合成ゼオライト,ドーソナイト,ハイドロサルタイト,カーボンナノチューブ,カーボンナノホーン,カーボンナノファイバー,グラファイトナノファイバー等の炭素繊維体等といった、被吸着分子と吸着剤とが物理化学的な親和力で吸着を実現する物理吸着剤や、生石灰をはじめとしたアルカリ土類金属の酸化物,アルカリ金属の酸化物,金属酸化物等のガス吸着剤やバリウム−リチウム合金等の合金といった、吸着性能に優れた化学反応型吸着剤を用いる。
また、公知の吸着剤5を単独あるいは併用して適用してもよく、これらの吸着剤5が公知の包装材に覆われていてもよい。また、形状はペレット,ビーズ,パウダー等、特に限定されるものではない。なお、吸着剤5は必ずしも必要ではなく、場合によっては無くてもよい。
ここで、化学反応型吸着剤とは、主に化学反応によって被吸着分子と吸着剤とが化学結合することにより吸着を実現する吸着剤5を指す。ここでいう化学結合とは、共有結合,イオン結合,金属結合,水素結合等の簡単には解離しない強い結合のことである。化学反応型吸着剤の例として、酸化カルシウム,酸化バリウム,酸化ストロンチウム等が挙げられる。
これらの吸着剤5を用いることで、真空断熱材1において真空排気し切れなかった水蒸気をはじめとするガスを吸着し、更に真空断熱材1内部の真空度を高めることができ、真空断熱材1を高性能化する。また、芯材4から放出される水蒸気や、外被材2を通して外部より進入するガス及び外被材2自身から発生するガスを吸着し、真空断熱材1の経時劣化を低く抑えることができる。
吸着剤5は、芯材4の繊維の積層間に挿入される。この挿入により、吸着剤5が真空断熱材1の表面に突出しないため、吸着剤5の粒によって外被材2を傷つけたり破断したりすることがなく、真空断熱材1の断熱性能に対する信頼性を損なうことがない。また、吸着剤5は複数箇所に設置してもよい。
次に、図5を用いて更に詳細に実施例について説明する。図5は、各実施例及び比較例の各パラメータを示す。
真空断熱材1は芯材4,吸着剤5と、芯材4及び吸着剤5を収納し且つガスバリア性フィルムからなる外被材2とを備えて構成されている。この真空断熱材1は、芯材4と吸着剤5とを三辺が熱溶着された外被材2に挿入した状態で、外被材2の内部を減圧し、外被材2の開口部を熱溶着して封止することによって作製される。
芯材4は、ポリスチレン(GPPS−679:PSジャパン株式会社の商品名)の樹脂固形物をメルトブローン法で紡糸して繊維化したポリスチレン繊維(平均繊維径10μm)を、吸着剤5は合成ゼオライトを、外被材2は表面保護層,ガスバリア層、及び熱溶着層で構成され、各層間が2液硬化型エステル型ウレタン系接着剤で接着されたラミネートフィルムを用いている。また、芯材4のサイズは幅450mm,長さ500mmとして、真空排気後の厚さが10mmとなるようにした。外被材2のサイズは幅520mm,長さ650mmとした。
外被材2のラミネート構成は、外層より表面保護層としてポリアミドフィルム(15μm),アルミニウム蒸着を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm),ガスバリア層としてアルミニウム蒸着を有するエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂フィルム(12μm),熱溶着層として高密度ポリエチレンフィルム(50μm)とした。
以上のように構成される真空断熱材1の作製手順について、図6A,図6Bを用いて説明する。まず、芯材4に吸着剤5を挿入し、発熱体11を用いて上下から加圧して圧縮及び成形を行い、その状態で数十秒間、芯材4の表面を芯材4の軟化温度以上で加熱して熱溶着し、芯材4の立体形状を保持する(図6A)。発熱体の溝12は、芯材4に通気部6となる未溶着部を形成するために設けている。これにより、芯材4の表面は、溶着層4aの間に通気部6となる複数の未溶着部分が設けられる。
続いて、三方が熱溶着された袋状の外被材2へ立体形状に保持された芯材4を収納し、これを真空チャンバ内にセットして1Paまで真空排気による減圧を行い(図6B)、外被材2の開口を熱溶着によって封止して、立体形状をした真空断熱材1が得られる。
実施例3は(図5参照)、上記実施の形態で述べた材料構成,作製方法による真空断熱材1の芯材4として、メルトブローン法により溶融紡糸したポリスチレン繊維(略号PS、軟化温度約70℃)を用いた。芯材の表面層4cの溶着厚さは片面で約1mmに調整した(真空断熱材1の厚さの20%)。ポリスチレン繊維の目付量は2000g/m2としたものを芯材4として用いた。加熱温度は約80℃である。得られた真空断熱材1の熱伝導率は0.0024W/m・Kであった。これを55℃の高温槽内で50日間放置した後に熱伝導率を測定した結果、0.0042W/m・Kであり、初期性能との差は0.0018W/m・Kであった。
実施例4は(図5参照)、上記実施の形態で述べた材料構成,作製方法による真空断熱材1の芯材4として、ポリエチレンテレフタレート繊維(略号PET、軟化温度約70℃)を用いた。芯材の表面層4cの溶着厚さは片面で約1mmに調整した(真空断熱材1の厚さの20%)。ポリスチレン繊維の目付量は2000g/m2としたものを芯材4として用いた。加熱温度は約80℃である。得られた真空断熱材1の熱伝導率は0.0026W/m・Kであった。これを55℃の高温槽内で50日間放置した後に熱伝導率を測定した結果、0.0044W/m・Kであり、初期性能との差は0.0018W/m・Kであった。
実施例5は(図5参照)、実施例3の真空断熱材1に対し、表面層4cをポリスチレン繊維(略号PS、軟化温度約70℃)とし、中間層4bをABS(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)繊維(軟化温度約90℃)とした。その構成を図7Aに示す。芯材4の中間層4bとして用いたABS繊維の目付量は1600g/m2とした。また、表面層4cとして用いたポリスチレン繊維の目付量は上下各層200g/m2で、これを中間層4bの上下に各1層積層した(芯材厚さ約2mm分)。加熱温度は約80℃である。得られた真空断熱材1(図7B)の熱伝導率は0.0025W/m・Kであった。これを55℃の高温槽内で50日間放置した後に熱伝導率を測定した結果、0.0043W/m・Kであり、初期性能との差は0.0018W/m・Kであった。
実施例6は(図5参照)、実施例5の真空断熱材1に対し、表面層4cをポリエチレン繊維(略号PE、軟化温度約110℃)とし、中間層4bをポリプロピレン繊維(略号PP、軟化温度約130℃)とした。芯材の中間層4bとして用いたポリプロピレン繊維の目付量は1600g/m2とした。また、表面層4cとして用いたポリエチレン繊維の目付量は200g/m2で、これを中間層4bの上下に各1層積層した(芯材厚さ約2mm分)。加熱温度は約120℃である。得られた真空断熱材1の熱伝導率は0.0027W/m・Kであった。これを55℃の高温槽内で50日間放置した後に熱伝導率を測定した結果、0.0045W/m・Kであり、初期性能との差は0.0018W/m・Kであった。
実施例7は(図5参照)、上記実施の形態で述べた材料構成,作製方法による真空断熱材1の芯材4として、メルトブローン法により溶融紡糸したポリスチレン繊維(略号PS、軟化温度約70℃)を用いた。図8に示すように、芯材4の表面は成形部のみを溶着し、芯材の表面層4cの溶着厚さは片面で約1mmに調整した(真空断熱材1の厚さの20%)。ポリスチレン繊維の目付量は2000g/m2としたものを芯材4として用いた。加熱温度は約80℃である。得られた真空断熱材1の熱伝導率は0.0023W/m・Kであった。これを55℃の高温槽内で50日間放置した後に熱伝導率を測定した結果、0.0041W/m・Kであり、初期性能との差は0.0018W/m・Kであった。
(比較例1)
上記実施の形態で述べた材料構成,作製方法による真空断熱材1に対し、芯材4を曲げ成形せずに、真空パックして平板状の真空断熱材1を作製した。これをプレス機等を用いて、図2の形状に立体成形した。得られた真空断熱材1の熱伝導率は0.0029W/m・Kであった。これを55℃の高温槽内で50日間放置した後に熱伝導率を測定した結果、0.0062W/m・Kであった。初期性能との差は0.0033W/m・Kであり、本実施例1に対し、断熱性能が低下していた。
(比較例2)
上記実施の形態で述べた材料構成,作製方法による真空断熱材1に対し、水等の溶媒で1重量%の濃度とした有機バインダー(フェノール樹脂)を芯材4にスプレーすることで塗布し、芯材4をプレス機で加圧加熱してバインダーを固め、図1の形状に成形した。この方法で作製した真空断熱材1の熱伝導率は0.0035W/m・Kであり、本実施例に対し、断熱性能が低下していた。
(比較例3)
上記実施の形態で述べた材料構成,作製方法による真空断熱材1に対し、芯材の表面層4cの溶着厚さを片面で約3.5mmに調整した(真空断熱材1の厚さの70%)。この方法で作製した真空断熱材1の熱伝導率は0.0087W/m・Kであり、本実施例に対し、断熱性能が低下していた。
図5に実施例1〜5及び比較例1〜3の結果をまとめたものを示す。これより、本発明によって立体成形された真空断熱材1は従来のものと比べ、優れた断熱性能を発揮できるといえる。
更に別の構成の一例として、軟化温度の低い樹脂繊維を表面層4cに配設し、2層目に配設する樹脂繊維として、表面層4cに配設した樹脂繊維の軟化温度より高い樹脂繊維を配設し、更に3層目に配設する樹脂繊維として、表面層4cに配設した樹脂繊維の軟化温度より高い2層目とは別の樹脂繊維を配設することが挙げられる。
また、図8A,図8Bで示すとおり、芯材4は成形されている部分のみを熱溶着して形状保持を行ってもよい。成形されていない部分については熱溶着されていないので、芯材4の表面部においても通気性を確保でき、真空排気がしやすくなる。
また、図9A,図9Bで示すように、芯材4の厚さ方向の表面の一部が溶着して固定されていてもよい。その際は、真空排気しやすくするために、通気部6を設けるのがよい。これにより、取り扱い性が向上する。
また、更に脱気しやすくするために、図10A,図10Bに示すような芯材4の表面に通気部6を設けてもよい。通気部6とは、表面のすべてを溶着せずに、一部溶着しない部分を残しておく等することで、芯材4に設けられた通気可能な芯材4の未溶着部である。通気部6の形状や方向,数は問わない。
また、芯材4の構成の一例として、図7A,図7Bに示す真空断熱材において、軟化温度の低い樹脂繊維を表面層4cに配設し、2層目に配設する樹脂繊維としては、表面層4cに配設した樹脂繊維の軟化温度より高い樹脂繊維を配設することが挙げられる。その際、熱溶着温度は最表面層4cに配設した樹脂繊維の軟化温度以上で且つ、2層目に配設した樹脂繊維の軟化温度以下とする。これにより、表面層4cを熱溶着しても、2層目以下は熱溶着されないので、芯材4内部の通気性を保つことができる。なお、芯材4が立体形状を保持しやすくするため(アンカーする)、それぞれの樹脂繊維は相溶性が高いものを用いることが望ましい。
また、芯材4の表面層4cには星型,クローバー型,楕円型等の表面積の大きい異型断面形状を持った繊維系材料や、表面に窪み,溝,穴等を設けることによって表面積を大きくした繊維系材料を配設してもよい。これら表面積の大きい繊維を表面層4cに用いることで、熱が熱板から伝わりやすくなり、熱溶着しやすくなると共に表面性が向上する。
なお、本実施例に示した製法,形態,立体形状に限ることはなく、同等の効果を奏する製法,形態等であればよい。
次に、外箱と内箱とを有する冷蔵庫本体において、該外箱と該内箱との間に発泡断熱材と共に、又は単独で上記実施例で示した真空断熱材をその形状に合わせて設けることで、断熱性能を向上でき、消費電力量を低減できる。
具体的に、真空断熱材を冷蔵庫に搭載する場合について、図11を参照しながら説明する。図11は本発明の実施形態に係る冷凍冷蔵庫の縦断面図である。
冷蔵庫の箱体30は、その外箱30aと内箱30bとからなり、該外箱30aと内箱30bとの間にウレタン等の発泡断熱材31と真空断熱材32a,32b,32c,32d,32eとを設けて構成されている。箱体30内は、上から順に、冷蔵室34,冷凍室35,36,野菜室37にそれぞれ区画形成されている。該各貯蔵室の前面開口を開閉可能に閉塞するように、冷蔵室扉34a,冷凍室扉35a,36a,野菜室扉37aがそれぞれ設けられている。
上述の通り、真空断熱材32a,32b,32c,32d,32eは、外箱30aと内箱30bとの間に配置し、その周囲を発泡断熱材31で覆われる。
また、箱体30の下部後方には、圧縮機38等を設ける機械室39が配置される。該機械室39は高温になるため、この高温からの影響を抑制するために、各貯蔵室と断熱的に区画することを要する。そこで、真空断熱材32c,32dは、上記各実施例で説明したように、機械室39及び該機械室39と隣接する野菜室37の形状に沿って折り曲げた形状としている。これにより、熱影響を低減して、省エネルギー性能を向上できる。
また、箱体20の上部には、制御基板等の電気品が配置される(図示なし)。よって、当該電気品が冷蔵室34に与える熱影響を低減するために、冷蔵室34の上方に配置される真空断熱材32aは、上記同様に折り曲げ形状とする。これにより、熱影響を低減して、省エネルギー性能を向上できる。
また、冷蔵庫に限らず、断熱箱体,給湯器の貯湯タンク,車両等、断熱性を要する製品にその形状に合った形で適用することで、高い断熱性能を得ることができる。
以上のとおり、通気性を有する繊維系材料からなる芯材と、ガスバリア性を有する外被材とで構成される真空断熱材において、前記芯材は表面の一部が溶着されることで立体形状に成形保持されていることを特徴とするものである。
また、芯材の表面の一部を溶着等によって固め、芯材の立体形状を保持するものである。よって、真空パック時に外被材を追従させられるようになるため、外被材のガスバリア性を損なうことがなく、断熱性能に優れた真空断熱材が得られる。
また、前記芯材は熱可塑性樹脂からなる繊維材料であり、前記芯材は表面の一部が熱溶着されることで立体形状に成形保持され、且つ前記芯材には通気部が設けられていることを特徴とするものである。
また、樹脂材料である芯材の表面の一部を熱溶着によって固めることで、芯材の立体形状を保持するものである。また、芯材の一部に通気部が設けられており、通気部からの真空排気を可能としている。
また、前記熱可塑性樹脂はポリプロピレン,ポリスチレン,ポリエチレンテレフタレートのうち、いずれか一つ又は複数を含むことを特徴とするものである。
また、熱溶着が可能な曲げ弾性率の高い樹脂を繊維化したものを芯材として用いることで、繊維同士の接触熱抵抗が高くなり、断熱性能に優れた立体成形真空断熱材が得られる。
また、前記芯材は複数の積層で構成され、前記芯材の表面層に配設する繊維系材料の軟化温度が中間層に配設した繊維系材料の軟化温度よりも低いことを特徴とするものである。
また、芯材の表面に熱をかけたときに、芯材内部の連通部までもが溶着されないようにするためのものであり、これにより、芯材表面の溶着厚さがコントロールできるようになる。
また、前記芯材は稜線が直行する部分が未溶着であることを特徴とするものである。
また、芯材の角(稜線が直行する部分)で外被材を傷つけないようにするため、その部分は未溶着にするものである。
また、前記芯材は成形されている部分のみが溶着されていることを特徴とするものである。
また、芯材は成形されていない部分については溶着されていないので、芯材の溶着による真空断熱材の断熱性能の低下を少なくできるものである。
また、前記芯材の表面層を溶着する厚さは、真空断熱材1としたときの厚さに対して10〜60%であることを特徴とするものである。
また、成形性と断熱性能を両立可能な芯材表面層の溶着厚さを規定したものである。
これにより、折り曲げ形状を有する真空断熱材又は当該真空断熱材を備えた冷蔵庫において、外被材の折り曲げ部の損傷を抑制することで、断熱性能の経時劣化を抑制することができる。
1 真空断熱材
2 外被材
2a 外被材端部
2b 外被材開口端部
4 芯材
4a 溶着層
4b 中間層
4c,4d 表面層
4e 端部
5 吸着剤
6 通気部
11 発熱体
12 溝
13 支持台

Claims (5)

  1. 柔軟性を有する繊維系材料の芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備えた真空断熱材において、
    前記芯材は表面層の一部が溶着されて且つ中間層が溶着されず折り曲げ成形されたことを特徴とする真空断熱材。
  2. 前記芯材は熱可塑性樹脂からなる繊維系材料であって、該芯材の前記表面層に通気部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材。
  3. 前記熱可塑性樹脂はポリプロピレン,ポリスチレン,ポリエチレンテレフタレートのうち、少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項2に記載の真空断熱材。
  4. 前記繊維系材料の軟化温度は前記中間層よりも前記表面層が低いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の真空断熱材。
  5. 外箱と、内箱と、前記外箱と前記内箱との間に設けられた真空断熱材とを備えた冷蔵庫において、
    前記真空断熱材は、柔軟性を有する繊維系材料の芯材と、ガスバリア性を有する外被材とを備え、前記芯材は表面層の一部が溶着されて且つ中間層が溶着されず折り曲げ成形されたことを特徴とする冷蔵庫。
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