JP2011037338A - 車両のスリップ判定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のスリップ判定装置は、第一の車輪速センサにより得られた第一の車輪速値と、車体前後加速度値に基づいて決定された車体速推定値とに基づいて車両の車輪のスリップ状態を判定するスリップ判定部とを有し、車体前後加速度値として、車輪がスリップ状態にないときには、第二の車輪速センサにより得られた第二の車輪速値の微分値の低周波数成分と前後加速度センサにより得られた加速度値の高周波数成分を加算して得られる値が用いられ、車輪がスリップ状態にあるときには、前後加速度センサにより得られた加速度値の高周波数成分が用いられることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
図1は、本発明のスリップ判定装置の好ましい実施形態が搭載される四輪駆動車を模式的に示している。同図に於いて、左右前輪12FL、12FRと、左右後輪12RL、12RRを有する車両10には、通常の態様にて、運転者によるアクセルペダル(図示せず)の踏込みに応じて前後輪に駆動力を発生する駆動装置16が搭載される。駆動装置16に於いて、図示の例では、エンジンと電動機とが差動歯車装置にて連結されてなるハイブリッド式の駆動ユニット18、電動機単体、或いは、ガソリン又はディーゼルエンジン単体からの駆動トルク或いは回転駆動力は、トランスミッション(変速機)20を経て、センタデフ(又はトランスファ)22へ伝達され、更に、前輪側デフ24及び後輪側デフ26を介して、前輪12FL、12FR及び後輪12RL、12RRへそれぞれ伝達される。なお、簡単のため図示していないが、車両10には、通常の車両と同様に各輪に制動力を発生する制動系装置、前輪の舵角を制御するステアリング装置が設けられる。
本発明のスリップ判定装置の内部は、図2−3に於いてブロック図の形式にて示されている如く構成される。なお、図示の構成及びその作動は、実際には、車両の運転中、電子制御装置内のCPU等の処理作動により実現されることは理解されるべきである。まず、図2を参照して、スリップ判定装置は、概して述べれば、下記の処理領域を含む。
(i)前後Gセンサ60aの検出値に基づいて車両の加減速状態を判定する領域(加減速判定部50c)
(ii)車両の加減速状態を参照しながら、各輪の車輪速センサ40iにて検出された車輪速値のうち、最も変化の進んでいる車輪速値(第一の車輪速値)を判定車輪速値として選択し、最も変化の遅れている車輪速値(第二の車輪速値)を基準車輪速値として選択する領域(最小値選択部50a、最大値選択部50b、切換部50d)
(iii)前後Gセンサ60a及び横Gセンサ60bの検出値から車体前後加速度値の高周波数成分を決定する領域(加算器50j、平方根演算器50k、切換部50l、ハイパスフィルター50m)
(iv)車体前後加速度値と基準車輪速値とに基づいて車体速推定値を決定する領域(微分器50e、ローパスフィルター50f、加算器50g、切換部50h、車体速推定部50i)
(v)横Gセンサ60bの検出値に基づいて車両の旋回中の外輪と内輪の車輪速差の推定値を算定する領域(外内輪車輪速差算定部50n)
(vi)判定車輪速値、車体速推定値、旋回外内輪車輪速差の推定値に基づいて車輪がスリップ状態にあるか否かを判定する領域(スリップ判定部50n)
(i)加減速状態判定領域
従前の四輪駆動車の車速推定又はスリップ判定装置に於いては、車両が加速状態にあるか或いは減速状態にあるかの判定は、ブレーキペダルの踏込みの有無により為されていた。しかしながら、その場合、エンジンブレーキなどにより車両が減速されている場合にそのことが判定できない。そこで、本発明の装置に於いては、車両の加減速状態は、前後Gセンサ60aの出力値によって判定され、これにより、ブレーキペダルが踏込まれていなくても、車両が減速しているときには、減速状態であると判定される。具体的には、車両の加減速状態を判定する領域では、図3(A)にて示されている如く、加減速判定部50cに於いて、前後Gセンサ60aにて検出された前後加速度値がハイパスフィルター52aに通されて、ドリフト、オフセット誤差、登降坂路によるずれなど低周波数成分が除去された後、比較器52b、52cへ入力される(下記(注)参照)。比較器52bに於いては、低周波数成分が除去された前後加速度値と加速判定閾値とが比較され、
(前後加速度値)>(加速判定閾値)
の状態が所定時間継続すると、加速状態を示す信号が出力され、RSフリップ−フロップ52dへ入力される。一方、比較器52cに於いては、低周波数成分が除去された前後加速度値と減速判定閾値とが比較され、
(前後加速度値)<(減速判定閾値)
の状態が所定時間継続すると、減速状態を示す信号が出力され、RSフリップ−フロップ52dへ入力される。RSフリップ−フロップ52dでは、比較器52bから加速状態を示す信号が到来すると、加減速判定出力を加速状態とし、比較器52cから減速状態を示す信号が到来するまで保持する。そして、減速状態を示す信号が到来すると、加減速判定出力を減速状態とし、比較器52bから加速状態を示す信号が到来するまで保持する。従って、加減速判定出力は、常に、加速状態と減速状態とのいずれかの状態を示すよう構成される。典型的には、例えば、加速判定閾値は、−0.5m/s2に設定され、減速判定閾値は、−1.0m/s2に設定され、これにより、(停車時を含む)等速走行時には、加速状態となるよう設定される。かかる構成により、アクセルペダルもブレーキペダルも踏込みが為されず、車両がエンジンブレーキにより減速するときには、車両が減速状態にあると判定されることとなる。
[(注)通常、加減速度が一定となることはないので、実用上、低周波数成分を除去した検出値を用いて加減速状態の判定は実行可能である。]
車輪速選択領域に於いては、最小値選択部50aにて四輪の車輪速値のうち、最小のものが選択・出力され、最大値選択部50bにて四輪の車輪速値のうち、最大のものが選択・出力される。そして、車輪速の最小値及び最大値は、切換部50dに於いて、加減速判定出力の示す状態に応じて、基準車輪速値と判定車輪速値とに振り分けられる。基準車輪速値は、最も変化の遅れている車輪速値なので、加速状態時には、最小値が割り当てられ、減速状態時には、最大値が割り当てられる。一方、判定車輪速値は、最も変化の進んでいる車輪速値なので、加速状態時には、最大値が割り当てられ、減速状態時には、最小値が割り当てられる。
既に触れた通り、前後Gセンサの出力する検出値の低周波数帯域には、路面勾配、温度ドリフト等による誤差成分が含まれ易い。そこで、後に説明される車体速の推定に使用する車体前後加速度値に於いては、前後Gセンサの出力する検出値から低周波数帯域の成分を除去した値が用いられる。また、特に、減速旋回中に於いては、コーナリングリングドラッグが減速に寄与するため、横加速度も減速成分として考慮される。(実車データにより、加速旋回中は、コーナリングリングドラッグの影響を受けにくいことがわかっているので、加速中は、横Gセンサの検出値は考慮しなくてよい。)。かくして、本実施形態の装置は、車体速の推定に使用するGセンサ検出の車体前後加速度値として、加速時には、前後Gセンサの検出値が用いられ、減速時には、前後Gセンサと横Gセンサの双方の検出値が用いられるよう構成される。具体的には、図2に例示されている如く、加減速判定出力の示す状態が加速状態であるときには、前後Gセンサ60aからの検出値が切換部50lにて選択される。一方、加減速判定出力の示す状態が減速状態であるときには、加算器50j及び演算器50kを経て算出された前後Gセンサ60aの検出値と横Gセンサ60bの検出値の自乗和の平方根が切換部50lにて選択される。かくして選択された値が、ハイパスフィルター50mを通過して低周波数成分が除去され、後に説明される車体速推定領域へ送られる。なお、ハイパスフィルター50mのカットオフ周波数は、前後Gセンサ60a及び/又は横Gセンサ60bの低周波数帯域の誤差成分(直流成分を含む)の殆どが除去されるよう所定の周波数に設計者により設定されてよい。
「背景技術」の欄に於いて述べたように、四輪駆動車の全輪駆動状態では、いずれの車輪に於いてもスリップ量が生ずるので、いずれかの車輪の車輪速をそのまま車体速として参照することができない。そこで、本発明の装置では、車体速値を決定するために、上記の車輪速選択領域にて選択された基準車輪速値、即ち、最も変化の遅れている車輪の車輪速値であり、全輪のうちスリップ量の最も小さい車輪速値、即ち、四輪の車輪速のうち車体速に最も近い値であると考えられる車輪速値(全輪の車輪速のうちの、加速時には、最低値となり、減速時には、最高値となる。)と、車体前後加速度から
[直前の車速推定値]+[車体前後加速度値]×[時間]
により予測される現在の車体速値とを比較し、適当であると想定される値が車体速の推定値として選択される。なお、ここで使用される車体前後加速度値に関して、既に述べたように、車輪速センサの出力値から得られる車輪速微分値は、路面の段差や継ぎ目等による高周波数帯域の誤差成分を含み易く、Gセンサの検出値は、路面勾配、温度ドリフト等による低周波数帯域の誤差成分を含み易い。従って、基本的には、車体前後加速度値としては、ローパスフィルターを用いて車輪速微分値から所定の周波数よりも高い高周波数成分を除去して得られる成分と、ハイパスフィルターを用いて前後Gセンサ検出値(減速時は、前後Gセンサ検出値と横Gセンサ検出値の自乗和の平方根)から所定の周波数よりも低い低周波数成分を除去して得られる成分とを重畳して得られる値が用いられる。しかしながら、いずれかの車輪がスリップ状態になったときには、車輪速値は、もはや真の車体速と乖離している可能性が高く、その微分値も真の車体前後加速度値と乖離している可能性が高くなる。そこで、本発明の装置では、いずれかの車輪がスリップ状態になったと判定された後には、車輪速微分値を一切使用せず、ハイパスフィルターを用いて前後・横Gセンサ検出値から所定の周波数よりも低い低周波数成分を除去して得られる成分自体が車体前後加速度値として用いられる。
Vx_limit_u=(p・Gx+qu)・Δt+Vxest_pre …(1a)
により決定され、乗算器54b、加算器54d、乗算器54f、加算器54hにより、車体速下限値Vx_limit_lが
Vx_limit_l=(p・Gx+ql)・Δt+Vxest_pre …(1b)
により決定される。ここにおいて、pは、車体前後加速度値に対するゲインであり、Gセンサの誤差に基づいて設定される。例えば、Gセンサの誤差が±10%程度であったとすると、pは、1/0.9とされてよい。qu(>0)、ql(<0)は、実験的に設定されてよい定数であり、Δtは、微小時間(制御サイクル時間)である。そして、Vxest_preは、単位遅延器54iにより与えられる現在よりもΔt時間前の車体速推定値である。要すれば、上記の(1a)、(1b)により与えられる車体速上限値及び車体速下限値は、車体前後加速度値とそれまでの車体速推定値とが与えられたときに現在に於いて想定される車体速の上限値と下限値に相当する。
Vxest=mid{Vx_limit_u,Vw_std,Vx_limit_l}…(2)
ここで、midは、括弧内の数値のうち、真中の数値を選択する演算子である。従って、基準車輪速値が、車体速上限値と車体速下限値との間にあるときには、基準車輪速値が車体速推定値に設定され、基準車輪速値が、車体速上限値よりも高いときには、車体速上限値が車体速推定値に設定され、基準車輪速値が、車体速下限値よりも低いときには、車体速下限値が車体速推定値に設定されることとなる。
車両の旋回中、デフ24又は26の作用により、旋回外輪が旋回内輪よりも早く回転する。一方、後に説明される如く、本装置に於いて、車輪がスリップしているか否かは、判定車輪速値、つまり、最も変化の進んでいる車輪速値と、車体速推定値、つまり、最も変化の遅れている基準車輪速値又はそれに基づいて決定された値との差分の大きさにより判定される。従って、判定車輪速値と基準車輪速値に対応する車輪の対が旋回外輪と旋回内輪との関係にある場合、旋回外内輪の車輪速差が判定車輪速値と車体速推定値との差分に入り込み、誤ったスリップ判定を惹起する可能性がある。そこで、本実施形態の装置では、後述のスリップ判定に於いて、旋回外内輪の車輪速差を補償するために、(車輪速値を用いずに)旋回外内輪の車輪速差の推定値(車両の旋回状態から想定される旋回外内輪の車輪速差)が算定される。
r=V12/Gy …(3a)
により与えられる。同様に、旋回外輪の車輪速値V2を用いると、
r+T=V22/Gy …(3b)
の関係が得られる。上記の式(3a)、(3b)からrを消去すると、
V2−V1=Gy・T/(V2+V1) …(3c)
の関係が得られる。ここで、V2−V1<<2V1であるとすることができるので、分母に於いて、V2−V1を無視すると、
V2−V1=Gy・T/2V1 …(3d)
の関係が得られる。ここで、V1の代わりに車体速値Vxを用いても同様なので、結局、旋回外輪と旋回内輪との車輪速差は、
V2−V1=Gy・T/2Vx …(3e)
により与えられる。実際の装置では、外内輪車輪速差算定部50nに於いて、図3(C)に示されている如く、車体速推定値Vxestと、横Gセンサ検出値(からハイパスフィルター56aにより誤差を含む易い低周波数成分を除去した値)とから、乗算器56b、乗算器56c、除算器56dを用いて、上記の式(3e)の右辺により与えられている旋回外輪と旋回内輪との車輪速差が算出され、スリップ判定部50aへ与えられる。
スリップ判定領域では、上記の各領域に於いて決定された判定車輪速値、車体速推定値、旋回外内輪車輪速差推定値を用いて、判定車輪速値と車体速推定値との差分の大きさが許容量を超えているか否かを判定して、車輪がスリップ状態にあるか否かが判定される。なお、本装置に於いては、判定車輪速値がスリップ状態にあると判定したときに、「車輪がスリップ状態にある」との判定が為される。
[(注)車両の加速中は、旋回外輪の車輪速値V2が判定車輪速値に選択され、旋回内輪の車輪速値V1(<V2)が基準車輪速値に選択される。判定車輪速値と車体速推定値との差分の絶対値V2−V1には、旋回外内輪車輪速差が含まれている。従って、許容スリップ量を旋回外内輪車輪速差の分だけ増大することにより、スリップ判定が誤って出力されることが回避される。車両の減速中は、旋回内輪の車輪速値V1(<V2)が判定車輪速値に選択され、旋回外輪の車輪速値V2が基準車輪速値に選択される。判定車輪速値と車体速推定値との差分(V1−V2)の絶対値は、V2−V1となるから、加速中と同様に許容スリップ量を旋回外内輪車輪速差の分だけ増大することにより、スリップ判定が誤って出力されることが回避される。]
上記に説明された本実施形態の装置は、以下の如く作動する。
(a)加減速判定
既に述べた如く、加減速判定部50cに於いて、車両の停止時は加速状態と判定され、切換部50dと切換部50lは、加速側に設定される。車両が発進し加速する間は、そのまま、加速状態との判定が維持され、その後、車両が減速されて前後Gセンサ検出値が減速判定閾値を下回った状態が所定時間継続すると、加減速判定部50cの判定が減速状態に切り換わり、切換部50dと切換部50lは、減速側に設定される。次いで減速度(加速度の絶対値)が小さくなり、前後Gセンサ検出値が加速判定閾値を上回った状態が所定時間継続すると、加減速判定部50cの判定が加速状態に切り換わり、切換部50dと切換部50lは、加速側に設定される。従って、常に、加減速判定部50cの出力は、加速状態か減速状態のいずれかの状態を示す。
車両の加速時には、判定車輪速値に車輪速値の最大値が選択され、基準車輪速値に車輪速値の最小値が選択され、車体前後加速度値には、車輪速センサ検出値の微分値の低周波数成分と前後Gセンサ検出値の高周波数成分との和が選択される。また、車両の減速時には、判定車輪速値に車輪速値の最小値が選択され、基準車輪速値に車輪速値の最大値が選択され、車体前後加速度値には、車輪速センサ検出値の微分値の低周波数成分と、前後Gセンサ検出値と横Gセンサ検出値の自乗和の平方根の高周波数成分との和が選択される。車輪のいずれもスリップ状態にないとき、センサ固有の誤差成分を除いて、車輪速センサ検出値の微分値と前後・横Gセンサとは、原理的に等しく、車体前後加速度値は、真の車体の前後加速度値であり、車体速の推定が正常に実行される。
車両の加速時にいずれかの車輪がスリップ状態となると、その車輪速値が上昇し、判定車輪速値に選択され、スリップ判定部50oに於いて、判定車輪速値と(基準車輪速に基づいて決定された)車体速値との差分の大きさが許容スリップ量を超えることにより、車輪がスリップ状態であると判定される。他方、車両の減速時にいずれかの車輪がスリップ状態となると、その車輪速値が降下し、判定車輪速値に選択され、スリップ判定部50oに於いて、判定車輪速値と車体速値との差分の大きさが許容スリップ量を超えることにより、車輪がスリップ状態であると判定される。
車輪がスリップ状態であると判定されると、その情報が車両のTRC装置、ABS制御装置などの車輪のスリップを抑制する各種制御装置へ送信される。また、スリップ判定出力に応答して、車体速推定領域の切換部50hが切り替わり、車体速推定部50iへ車体前後加速度値高周波数成分決定領域のハイパスフィルター50mの出力が直接入力されるようになり、車輪速微分値の成分を用いずに車体速推定が実行されることとなる。なお、この間に於いて、車体速推定部50iへ入力される車体前後加速度値の低周波数成分は略0となり、ここでの車体前後加速度値は車体の真の前後加速度とは完全に一致しないこととなるが、車輪がスリップ状態にあるときは、車体速の変化は小さくなること、及び、スリップ状態にある期間は長期間続かないことなどから、車体前後加速度値の低周波数成分が略0であることによる車体速推定値に於ける誤差は実質的に無視することができる。このことは、実験的に確かめられた(「実験例」参照)。
車輪がスリップ状態にある車両に於いて、車体速が増大(加速時)若しくは減少(減速時)するか、各種制御装置等により、車輪速が減少(加速時)若しくは増大(減速時)し、車体速と車輪速との乖離が縮まると、判定車輪速値と車体速推定値との差分の大きさが許容スリップ量を下回り、車輪がスリップ状態ではないと判定される。かかる判定が為されると、車体速推定領域の切換部50hが切り替わり、車体速推定部50iに於いて、車体前後加速度値高周波数成分決定領域のハイパスフィルター50mの出力と車輪速微分値の低周波数成分とを重畳した値を用いた車体速推定が再開されることとなる。
上記の本発明の装置の有効性を示すために、実際に車輪がスリップ状態となった車両に於いて、本発明の装置を用いて推定した車体速値と、GPS(汎地球測位システム)を用いた車体速測定装置による車体速値とを比較した。図4の上段は、その際の車輪速値(実太線)、本発明の装置による車体速推定値(実細線)、従来技術の装置(スリップ状態時でも車体速推定に車輪速微分値の低周波数成分を用いるもの)による車体速推定値(一点鎖線)及びGPS車体速測定装置による車体速値(破線)の時間変化をそれぞれ示している。同図を参照して明らかな如く、車輪速値が図に於いて山型に上昇し低減する間に於いて、本発明の装置による車体速推定値は、GPS車体速測定装置による車体速値と概ね一致した。これに対し、従来技術の装置による車体速推定値は、GPS車体速測定装置による車体速値よりも大幅に高い側に変位し、車輪速に近づいてしまうことが観察された。また、図示の状況に於いて本発明の装置及び従来技術の装置によりスリップ判定を行ったところ、図4の下段に示されている如く、本発明の装置に於いてスリップ状態と判定される期間(実線)は、車輪速とGPS車体速測定装置による車体速とが大きく乖離している期間に合致しており、従来技術の装置に於いてスリップ状態と判定される期間(一点鎖線)よりも長かった。上記の如く、本発明の装置による車体速推定値は、GPS車体速測定装置による車体速値と略一致し、スリップ判定は、車輪速と車体速とが乖離している期間に合致しており、これらのことから、本発明の装置によれば、従来よりも正確に車体速値が推定され、より正確にスリップ判定が行えることが確かめられた。
12FL、FR、RL、RR…車輪
14…アクセルペダル
16…駆動装置
18…駆動ユニット
20…変速機
22…センタデフ
24…前輪デフ
26…後輪デフ
40FL、FR、RL、RR…車輪速センサ
50…電子制御装置
60a、60b…前後Gセンサ、横Gセンサ
Claims (8)
- 車両のスリップ判定装置であって、第一の車輪速センサにより得られた第一の車輪速値と、車体前後加速度値に基づいて決定された車体速推定値とに基づいて前記車両の車輪のスリップ状態を判定するスリップ判定部とを有し、前記車体前後加速度値として、前記車両の車輪がスリップ状態にないと前記スリップ判定部が判定しているときには、第二の車輪速センサにより得られた第二の車輪速値の微分値から所定の周波数より高い周波数の成分を除去して得られる値と前後加速度センサにより得られた加速度値から前記所定の周波数より低い周波数の成分を除去して得られる値とを加算して得られる値が用いられ、前記車両の車輪がスリップ状態にあると前記スリップ判定部が判定しているときには、前記前後加速度センサにより得られた加速度値から前記所定の周波数より低い周波数の成分を除去して得られる値が用いられることを特徴とする装置。
- 請求項1の装置であって、前記第一の車輪速値が前記車両の各輪の車輪速値うちの最も変化の進んでいる車輪速値であり、前記第二の車輪速値が前記車両の各輪の車輪速値うちの最も変化の遅れている車輪速値であることを特徴とする装置。
- 請求項1又は2の装置であって、前記車体前後加速度値の時間積分値が前記車体前後加速度値に所定の時間を乗じて得られる値を前記車体速推定値の前回値へ加算して得られる値であり、前記車体速推定値が前記車体前後加速度値の時間積分値と前記第二の車輪速値とに基づいて決定されることを特徴とする装置。
- 請求項1乃至3のいずれかの装置であって、前記第二の車輪速値が前記車体前後加速度値の時間積分値から所定の範囲にて定められる値域内に在るときには、前記第二の車輪速値が前記車体速推定値として選択され、前記第二の車輪速値が前記値域外に在るときには、前記第二の車輪速値に最も近い前記値域の境界値が前記車体速推定値として選択されることを特徴とする装置。
- 請求項2の装置であって、前記スリップ判定部が前記第一の車輪速値と前記車体速推定値と前記車両の旋回外内輪の車輪速差とに基づいて前記車両の車輪のスリップ状態を判定することを特徴とする装置。
- 車両のスリップ判定装置であって、前記車両の各輪の車輪速値うちの最も変化の進んでいる第一の車輪速値と、前記車両の各輪の車輪速値うちの最も変化の遅れている第二の車輪速値に基づいて決定された車体速推定値と、前記車両の旋回外内輪の車輪速差とに基づいて前記車両の車輪のスリップ状態を判定することを特徴とする装置。
- 請求項5又は6の装置であって、前記第一の車輪速値と前記車体速推定値との差の絶対値が、前記車両の横加速度から算出される旋回外輪の車輪速値から旋回内輪の車輪速値を差し引いた値を前記車体速推定値に基づいて定められる許容スリップ量へ加算した値よりも大きいとき、前記車両の車輪がスリップ状態にあると判定することを特徴とする装置。
- 車両のスリップ判定装置であって、前記車両の各輪の車輪速値うち、少なくとも一つの車輪速値よりも変化の遅れている車輪速値と、前記車両の旋回外内輪の車輪速差とに基づいて前記車両の車輪のスリップ状態を判定することを特徴とする装置。
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