JP2001033476A - 車体スリップ角推定方法及び装置 - Google Patents
車体スリップ角推定方法及び装置Info
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Abstract
大きくなった場合であっても、車体スリップ角を正確に
推定すること。 【解決手段】 まず、走行車両のヨーレート△θ、横加
速度Gy、及び車体速度Vbを測定する(S110〜S
120)。そして、ヨーレートとロール角との関係をヨ
ーレートの2次遅れ要素H1を用いて記述した物理モデ
ル、及び横加速度とロール角との関係を横加速度の1次
遅れ要素H2を用いて記述した物理モデルから、H3=H
1/H2として導出した次式 △βH=H3(△θ)−Gy/Vb に上記測定値を適用して、車体スリップ角速度推定値△
βHを算出し(S140)、さらに、車体スリップ角速
度推定値△βHを積分演算することにより、車体スリッ
プ角推定値βHを算出する(S150)。
Description
る車体スリップ角を推定する車体スリップ角推定方法及
び装置に関する。
の操縦安定性を高める技術として、車体スリップ角制御
が知られている。この車体スリップ角制御は、車両にお
ける車体前後軸方向と車両の実際の進行方向とが成す角
度である車体スリップ角を推定し、この車体スリップ角
の推定値に応じて、旋回外輪側の前輪にかかる制動力
(ホイールシリンダ圧)を適宜増加させることにより、
車体スリップ角を減少させる技術である。
は、車体スリップ角の推定を高精度に行うことが必要で
ある。従来、車体スリップ角βの推定は、車両に取り付
けられたヨーレートセンサ等にて検出されるヨーレート
△θと、横加速度センサ等にて検出される横加速度Gy
と、車輪速度センサ等を用いて検出される車体速度Vb
とに基づき、下記式(1)を用いて車体スリップ角速度
△βの推定値△βpを算出し、さらに、これを積分演算
することにより、行われていた。
に基づいて車体スリップ角速度△βの推定値△βpを算
出するのでは、車両走行時に、車両がスピンした場合
や、車両のロール角が大きくなった場合に、推定値△β
pが、真値△βに対して大きく異なってしまい、その結
果、車体スリップ角βを正確に推定することができない
という問題があった。
ついて説明する。まず、例えば、図10(a)に示すよ
うに、旋回前の走行経路(x軸方向に沿った経路)に対
してヨー角ψの方向に進行している車両がスピンし、車
体スリップ角がβとなった場合(換言すれば、図10
(a)中に一点鎖線で示される半径Rの円を旋回軌道と
してヨーレートΔψで旋回している車両がスピンし、車
体スリップ角がβとなった場合)、車両に取り付けられ
たヨーレートセンサでは、ヨー角ψに対するヨーレート
△ψと、車体スリップ角βに対する車体スリップ角速度
△βとに基づく下記式(2)で表される値を、ヨーレー
ト△θとして検出する。
い状態で上記のように半径Rの円に沿って旋回した場合
にヨーレートセンサで検出されるヨーレートであり、以
下の説明では実ヨーレートとも記載する。
合(換言すれば、車体スリップ角βの絶対値が0に比べ
て十分大きい場合)は、車両に取り付けられた横加速度
センサにて検出される横加速度Gyが、車両に実際に作
用する横加速度Gy’(真値)と異なった値となる。
に作用する横加速度Gy’のうち、車体前後軸方向(図
10(a)中、「車体の向き」と記した方向)に対して
直交する方向の成分、即ち、車両に実際に作用する横加
速度Gy’の方向に対して車体スリップ角βだけ傾いた
方向の成分、を横加速度Gyとして検出するため、上記
のように車両がスピンして、横加速度が車体前後軸方向
に対して直交する方向に作用しなくなった状態では、横
加速度を正確に検出できなくなる。
に、車両のロール角φが大きくなった場合も、横加速度
センサにて検出される横加速度Gyが、車両に実際に作
用する横加速度Gy’(真値)と異なった値となる。つ
まり、横加速度センサでは、車両に実際に作用する横加
速度Gy’のうち、車体上下軸(図10(b)参照)に
対して直交する方向の成分、即ち、車両に実際に作用す
る横加速度Gy’の方向に対してロール角φだけ下方を
向いた成分を横加速度Gyとして検出するため、上記の
ようにロール角φが大きくなって、横加速度が車体上下
軸に対して直交する方向に作用しなくなった状態では、
横加速度を正確に検出できなくなる。
ップ角速度△βの推定値△βpを算出するのでは、車両
走行時に、車両がスピンした場合や、車両のロール角φ
が大きくなった場合に横加速度を正確に検出できないた
め、推定値△βpが、真値△βに対して大きく異なって
しまい、その結果、車体スリップ角βを高精度に推定す
ることができなかった。
れたものであり、その目的は、車両がスピンした場合
や、車両のロール角が大きくなった場合であっても、車
体スリップ角を正確に推定することができる車体スリッ
プ角推定方法及び装置を提供することである。
的を達成するためになされた請求項1に記載の車体スリ
ップ角推定方法では、まず、走行車両のヨーレート△
θ、横加速度Gy、及び車体速度Vbを測定する。そし
て、横加速度Gyの測定誤差を補償するために予め設定
された遅れ要素H3を用いた次式 △βH=H3(△θ)−Gy/Vb に上記測定されたヨーレート△θ、横加速度Gy、及び
車体速度Vbを適用して、車体スリップ角速度推定値△
βHを算出し、さらに、車体スリップ角速度推定値△βH
を積分演算することにより、車体スリップ角推定値βH
を算出する。
ば、横加速度Gyの測定誤差が大きい場合、即ち、車両
がスピンした場合や、車両のロール角が大きくなった場
合であっても、車体スリップ角速度推定値△βHを、実
際の車体スリップ角速度Δβ(真値)に近い値として算
出することができ、その結果、車体スリップ角βを推定
値βHとして高精度に推定することができる。
βHに基づき、例えば、車両旋回時において、旋回外輪
側前輪にかかる制動力(ホイールシリンダ圧)を適宜増
加させ、車体スリップ角を減少させれば、車両走行時、
特に車両旋回時における車両の操縦安定性を高めること
ができる。
βH算出用の式及び遅れ要素H3の具体的態様としては、
請求項2に記載の車体スリップ角推定方法のように、車
体スリップ角速度推定値△βH算出用の式を、ヨーレー
トと車両におけるロール角との関係をヨーレートの2次
遅れ要素H1を用いて記述した物理モデル、及び横加速
度とロール角との関係を横加速度の1次遅れ要素H2を
用いて記述した物理モデルから導出した式とし、遅れ要
素H3を、2次遅れ要素H1及び1次遅れ要素H2を用い
た次式 H3=H1/H2 にて表される遅れ要素とするものであっても良い。
おける車体スリップ角速度推定値ΔβH算出用の式にて
算出された車体スリップ角速度推定値ΔβHを積分演算
することにより算出された車体スリップ角推定値βH
は、後述実験例に示す実験の結果、車両がスピンした場
合や、車両のロール角が大きくなった場合であっても、
実際の車体スリップ角βと略一致しており、この推定値
βHを、実際の車体スリップ角βを正確に推定した値と
して適用可能であることが判った。
ば、上記物理モデルから導出された車体スリップ角速度
推定値ΔβH算出用の式で、ヨーレート△θの補正値で
あるH3(△θ)が、横加速度Gyの測定誤差を加味し
た値として設定されているため、車両がスピンした場合
や、車両のロール角が大きくなった場合であっても、車
体スリップ角速度推定値△βHを真値△βに近い値とし
て算出することができ、その結果、車体スリップ角βを
推定値βHとして高精度に推定することができるのであ
る。
ル角との関係をヨーレートの2次遅れ要素H1を用いて
記述した物理モデル、横加速度とロール角との関係を横
加速度の1次遅れ要素H2を用いて記述した物理モデ
ル、及びこれらの物理モデルと車体スリップ角速度推定
値△βHの算出式「△βH=H3(△θ)−Gy/Vb」
との関係(導出手順)については、後述実施例において
詳述する。
βH及び車体スリップ角推定値βHを算出する際に使用す
るヨーレート△θ、横加速度Gy、及び車体速度Vbの
具体的測定方法としては、ヨーレート△θを、例えば、
車両に取り付けられたヨーレートセンサにて検出し、横
加速度Gyを、例えば、車両に取り付けられた横加速度
センサにて検出し、車体速度Vbを、例えば、左右の従
動輪(フロントエンジン・リアドライブ方式の車両の場
合は、前輪)の回転軸に夫々取り付けられた車輪速度セ
ンサより得られる左右の従動輪の回転速度の平均値(平
均従動輪速度)として検出するものであっても良い。
上記の態様に限らず、後述実施例に示すように、まず、
各車輪の回転軸に夫々取り付けられた車輪速度センサよ
り得られる各車輪の回転速度を、他の方法にて測定され
たヨーレート△θを用いて補正し、車両が減速状態にあ
るときは、補正された各車輪の回転速度のうち、現時点
で最も車輪速度が大きい車輪についての値を車体速度V
b(推定値)として検出し、逆に、減速状態にないとき
は、補正された各車輪の回転速度のうち、現時点で最も
車輪速度が小さい車輪についての値を車体速度Vb(推
定値)として検出するものであっても良い。
請求項3に記載の車体スリップ角推定方法のように、ま
ず、車両のロールレートを測定し、次いで、ロールレー
トと横加速度との関係を記述した物理モデルに上記測定
されたロールレートを適用することにより、横加速度を
算出するものであっても良い。
体スリップ角速度推定値△βH及び車体スリップ角推定
値βHの算出に使用する横加速度Gyを測定する際、横
加速度Gyを直接測定するのではなく、まず、車両のロ
ールレートを測定し、この測定されたロールレートに基
づいて横加速度Gy(具体的には、横加速度Gyの推定
値GyH)を算出する。
ば、横加速度センサを用いなくても、車体スリップ角速
度推定値△βH及び車体スリップ角推定値βHの算出に使
用する横加速度Gy(推定値GyH)を測定することが
できる。尚、ロールレートと横加速度との関係を記述し
た物理モデルについては、後述実施例において詳述す
る。
に記載の発明方法を実現するための構成を備えた車体ス
リップ角推定装置の発明であり、まず、走行車両のヨー
レート△θをヨーレート測定手段にて測定し、横加速度
Gyを横加速度測定手段にて測定し、車体速度Vbを車
体速度測定手段にて測定する。次に、車体スリップ角速
度推定値算出手段では、横加速度Gyの測定誤差を補償
するために予め設定された遅れ要素H3を用いた次式 △βH=H3(△θ)−Gy/Vb に上記測定されたヨーレート△θ、横加速度Gy、及び
車体速度Vbを適用して、車体スリップ角速度推定値△
βHを算出する。そして、車体スリップ角推定値算出手
段では、車体スリップ角速度推定値算出手段にて算出さ
れた車体スリップ角速度推定値△βHを積分演算するこ
とにより、車体スリップ角推定値βHを算出する。
体スリップ角速度推定値算出手段にて、横加速度Gyの
測定誤差が大きい場合、即ち、車両がスピンした場合
や、車両のロール角が大きくなった場合であっても、車
体スリップ角速度推定値△βHを、実際の車体スリップ
角速度Δβ(真値)に近い値として算出することができ
る。そして、その結果、車体スリップ角推定値算出手段
にて、実際の車体スリップ角βを正確に推定した値とし
て、車体スリップ角推定値βHを算出することができ
る。
βHに基づき、例えば、車両旋回時において、旋回外輪
側前輪にかかる制動力(ホイールシリンダ圧)を適宜増
加させ、車体スリップ角を減少させるよう構成すれば、
車両走行時、特に車両旋回時における車両の操縦安定性
を高めることができる。
に記載の発明方法を実現するための構成を備えた車体ス
リップ角推定装置の発明であり、車体スリップ角速度推
定値算出手段にて使用される上記車体スリップ角速度推
定値△βH算出用の式を、ヨーレートと車両におけるロ
ール角との関係をヨーレートの2次遅れ要素H1を用い
て記述した物理モデル、及び横加速度とロール角との関
係を横加速度の1次遅れ要素H2を用いて記述した物理
モデルから導出した式とし、遅れ要素H3を、2次遅れ
要素H1及び1次遅れ要素H2を用いた次式 H3=H1/H2 にて表される遅れ要素とするよう構成したものである。
体スリップ角速度推定値算出手段にて使用される、上記
物理モデルから導出された車体スリップ角速度推定値Δ
βH算出用の式で、ヨーレート△θの補正値であるH3
(△θ)が、横加速度Gyの測定誤差を加味した値とし
て設定されているため、車両がスピンした場合や、車両
のロール角が大きくなった場合であっても、車体スリッ
プ角速度推定値△βHを真値△βに近い値として算出す
ることができる。そして、その結果、車体スリップ角推
定値算出手段にて、実際の車体スリップ角βを正確に推
定した値として、車体スリップ角推定値βHを算出する
ことができる。
に記載の発明方法を実現するための構成を備えた車体ス
リップ角推定装置の発明であり、横加速度測定手段を、
ロールレート測定手段にて、車両のロールレートを測定
させ、横加速度算出手段にて、ロールレートと横加速度
との関係を記述した物理モデルに上記測定されたロール
レートを適用させて横加速度を算出させるよう構成した
ものである。
加速度センサを用いなくても、車体スリップ角速度推定
値△βH及び車体スリップ角推定値βHの算出に使用する
横加速度Gy(具体的には、横加速度Gyの推定値Gy
H)を測定することができる。
共に説明する。まず、図1は、本発明の一実施例として
の車体スリップ角推定装置が適用された車体スリップ角
制御装置の全体的構成を表す概略構成図である。尚、本
実施例の車体スリップ角推定装置は、フロントエンジン
・リアドライブ(FR)方式の車両に適用される。
21から変速機22を介して出力される車両の駆動力
(駆動トルク)が、プロペラシャフト23及びディファ
レンシャルギヤ24を介して左右の後輪(駆動輪)(左
後輪25RL、右後輪25RR)に分配される。
前輪25FR、左後輪25RL、右後輪25RR)に
は、各車輪25FL〜25RRに制動力を与える油圧式
のブレーキ装置(以下、ホイールシリンダとも記す)4
1FL、41FR、41RL、41RRが夫々設けられ
ている。
2が踏み込まれると、マスタシリンダ43からブレーキ
油が圧送され、油圧回路40を介して、各ホイールシリ
ンダ41FL〜41RRに加わるブレーキ油圧が増圧さ
れ、各車輪25FL〜25RRに制動力が加えられるよ
う構成されている。
には、各車輪25FL〜25RRの回転速度(以下、車
輪速度とも記す)を検出するための車輪速度センサ31
FL、31FR、31RL、31RRが夫々設けられて
いる。そして、車輪速度センサ31FL〜31RRから
の検出信号は、車両に設けられた他のセンサである、請
求項3のヨーレート測定手段としてのヨーレートセンサ
32や、請求項3の横加速度測定手段としての横加速度
センサ33等からの検出信号と同様に、電子制御装置
(ECU)30に入力される。
らの入力信号に基づき、運転者によるブレーキペダル4
2操作とは別に、油圧回路40内に設けられた各種アク
チュエータ(図示はしない)を駆動して、各ホイールシ
リンダ41FL〜41RRに加わるブレーキ油圧を調節
することにより、各車輪25FL〜25RRに加わる制
動力を制御する。
に、上記各センサからの入力信号を用いて、車両におけ
る車体前後軸方向と車両の実際の進行方向とが成す角度
である車体スリップ角を推定し、この車体スリップ角の
推定値に応じて(具体的には、この車体スリップ角の推
定値と、車体スリップ角の推定値に対する車体スリップ
角速度の推定値とに応じて)、車体スリップ角を減少さ
せるよう、左右の前輪25FL、25FRのうち旋回外
輪側の前輪に加わる制動力(ホイールシリンダ圧)を適
宜増加させる車体スリップ角制御処理等を実行する。
M等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されて
おり、該ECU30には、ブレーキペダル42の踏込時
にオン(ON)状態となり、ストップランプ(図示はし
ない)を点灯させるブレーキスイッチ44からの検出信
号も入力される。
て繰り返し実行される車体スリップ角制御処理につい
て、図2〜図4に示すフローチャートに沿って説明す
る。図2に示す如く、車体スリップ角制御処理が開始さ
れると、まず、S110(Sはステップを表す)にて、
上記各センサ及びブレーキスイッチ44からの検出信号
を読み込む。そして、続くS120では、車体速度推定
処理を実行する。
み込まれた検出信号に基づき、車両の車体速度Vbを推
定(測定)する処理であり、図3に示す如く実行され
る。即ち、車体速度推定処理では、まずS310にて、
各車輪25FL〜25RRの車輪速度の補正演算を行
う。具体的には、車輪速度センサ31FL〜31RRか
らの入力信号から検出された各車輪25FL〜25RR
の車輪速度VWFL、VWFR、VWRL、VWRR
を、ヨーレートセンサ32からの入力信号より検出され
た車両のヨーレート△θを用いた下記式(3)〜(6)
を用いて、車両の重心位置の速度に換算する補正演算を
行う。
VWFLforVb、VWFRforVb、VWRLforV
b、VWRRforVbは、夫々各車輪25FL〜25R
Rの補正後の車輪速度を示す。また、Lfは、車両の重
心からフロント軸(フロントドライブシャフト)までの
最短距離を示し、Lrは、車両の重心からリア軸(リア
ドライブシャフト)までの最短距離を示す。また、ヨー
レートセンサ32からの検出値であるヨーレート△θ
は、左旋回(自転)時に正、右旋回(自転)時に負の値
として出力されるものである。
にあるか否かを判断する。この判断は、ブレーキスイッ
チ44からの入力信号がオン(ON)状態であるか否か
を判断することにより行われる。そして、S320にて
車両が減速状態にあると判断された場合は、S330に
移行し、下記式(7)にて車体速度Vb(推定値)を算
出する。
forVbは、上記式(3)〜(6)にて算出された全車
輪の補正後の車輪速度を示し、**は、各車輪25FL
〜25RRを示す。そして、上記式(7)は、全車輪の
補正後の車輪速度のうち、最大車輪速度であるものを車
体速度Vbとして算出することを示す。
ば、ブレーキの各車輪25FL〜25RRへの作用、あ
るいはエンジンブレーキの各車輪25FL〜25RRへ
の作用により、車輪が減速スリップに陥ることがあり、
減速スリップに陥った車輪の車輪速度(補正後の車輪速
度)が車体速度より極端に小さくなる可能性がある。
車輪速度のうち、減速スリップに陥っていない車輪(換
言すれば、路面にグリップした車輪)の補正後の車輪速
度に対応する最大車輪速度を車体速度Vbとして算出す
るのである。一方、S320にて車両が減速状態にない
と判断された場合は、S340に移行し、下記式(8)
にて車体速度Vb(推定値)を算出する。
小車輪速度であるものを車体速度Vbとして算出するこ
とを示す。つまり、車両が減速状態にない場合として
は、例えば、車両の加速中が考えられ、この際には加速
スリップに陥った車輪の車輪速度(補正後の車輪速度)
が車体速度より極端に大きくなる可能性がある。
車輪速度のうち、加速スリップに陥っていない車輪(換
言すれば、路面にグリップした車輪)の補正後の車輪速
度に対応する最小車輪速度を車体速度Vbとして算出す
るのである。そして、S330、或いはS340にて車
体速度Vbが算出されると、今度は、S350に移行す
る。
体速度Vbの変化勾配の制限を行い、車体速度推定処理
を完了する。即ち、S350では、前回フロー時のS1
30の処理(後述)にて推定値として算出された車体の
前後軸方向の加速度である車体前後加速度△Vbに応じ
て、前回フロー時に算出された車体速度から今回フロー
時に算出された車体速度への変化量を制限することによ
り、今回フローにて算出された車体速度Vbを補正す
る。
により、車体速度Vbが推定(測定)されると、今度
は、S130(図2参照)にて、車体前後加速度推定処
理を実行する。この車体前後加速度推定処理は、今回フ
ローにおける車体前後加速度△Vb(推定値)を算出す
る処理であり、図4に示す如く実行される。
S410にて、今回フローまでの所定時間内に車体速度
推定処理(S120)にて算出された車体速度Vbを、
ローパスフィルタにてフィルタリングする。具体的に
は、例えば、10Hz以下の周波数のみを通すローパス
フィルタを用いて、推定値としての車体速度Vb中のノ
イズを除去する。
タリングされた車体速度Vbを微分処理する。そして、
S430では、S420にて算出された値、即ち、車体
前後加速度△Vbをフィルタリングして、車体前後加速
度推定処理を完了する。具体的には、例えば、S420
にて算出された車体前後加速度△Vbを、2Hz以下の
周波数のみを通すローパスフィルタにかける。
30)により、今回フローにおける車体前後加速度△V
b(推定値)が算出されると、今度は、S140(図2
参照)にて、ヨーレートセンサ32からの入力信号より
検出された車両のヨーレート△θと、横加速度センサ3
3からの入力信号より検出された車両の横加速度Gy
と、車体速度推定処理(S120)により推定(測定)
された車体速度Vbと、後述の式(13)及び式(1
4)にて定義されるH1及びH2にてH3=H1/H2と表
されるH3と、をパラメータとする次式(9)にて、車
体スリップ角速度推定値△βHを算出する。
yは、左旋回(公転)時に正、右旋回(公転)時に負の
値として出力されるものである。また、車両が極低速で
走行している場合(例えば、5km/h以下のような車輪速
度センサ31FL〜31RRの分解能の限界以下の極低
速で走行している場合)には、上記式(9)においてV
bを0とした演算を行わないようにするため、Vbに固
定値(例えば、5km/h)を代入して車体スリップ角速度
推定値△βHを算出する。
算出された車体スリップ角速度推定値△βHを積分演算
することにより、車体スリップ角推定値βHを算出す
る。車体スリップ角速度推定値△βHの積分演算は、誤
差の蓄積によるオーバーフローを防ぐため、下記式(1
0)にて行う。
ば、k1=0.99と設定される。また、nは演算回数
を示し、βH(n)は、今回フローにて算出された車体スリ
ップ角推定値βHであり、βH(n-1)は、前回フローにて
算出された車体スリップ角推定値βHである。また、こ
のように算出される車体スリップ角推定値βHは、車両
における車体前後軸方向が車両の実際の進行方向に対し
て左方向に傾いた(自転した)場合に正、右方向に傾い
た(自転した)場合に負の値として出力されるものであ
る。
角速度推定値△βHを求める際に使用する上記式(9)
は、以下のように設定されている。即ち、まず、実ヨー
レート△ψ(「発明が解決しようとする課題」の項で述
べた△ψについての説明参照)と車両におけるロール角
φとの関係を記述した物理モデル(ラプラス変換された
モデル)と、横加速度Gyとロール角φとの関係を記述
した物理モデル(ラプラス変換されたモデル)とが、夫
々、下記式(11)と式(12)とのように表される。
D:ダンパー定数、K:ばね定数)
ート△ψと車体スリップ角速度△βとの関係を表す式
(2)に基づき、上記式(11)に△ψ=△θ−△βを
代入すれば、検出値であるヨーレート△θとロール角φ
との関係式を得ることができ、さらに、上記式(1
1)、(12)に対して、
θ(実ヨーレート△ψ)の2次遅れ要素H1と、ロール
角φに対する横加速度Gyの1次遅れ要素H2とを定義
すれば、上記式(11)と式(12)とが夫々下記式
(15)と式(16)とのように変形される。
等号で結び、H3=H1/H2とすれば、下記式(17)
が得られ、 H3(△β)=H3(△θ)−Gy/Vb …(17) さらに、上記式(17)におけるH3(△β)を車体ス
リップ角速度推定値△βHとすることで上記式(9)が
得られる。
ップ角速度推定値△βHは、上記式(17)での表記か
ら、車体スリップ角速度△βではなく、H3(△β)と
表されるものであるが、後述実験例に示す如く、この推
定値△βHは、実用上、実際の車体スリップ角速度△β
を正確に推定した値として適用可能なものである。
ップ角△βを推定する際に用いられた式(1)において
ヨーレート△θをH3にて補正した式であり、この補正
値H3(△θ)が、横加速度センサ33にて検出される
横加速度Gyの測定誤差を加味した値として設定されて
いるため、車両がスピンした場合や、車両のロール角φ
が大きくなった場合であっても、上記式(9)にて、車
体スリップ角速度推定値△βHを真値△βに近い値とし
て算出することができるのである。
度推定値△βHを用いたS150の処理にて、車両がス
ピンした場合や、車両のロール角φが大きくなった場合
であっても、車体スリップ角推定値βHを、実際の車体
スリップ角βと略一致した推定値として算出することが
できる。つまり、この推定値βHを、実際の車体スリッ
プ角βを正確に推定した値として適用することができる
のである。
理にて車体スリップ角速度推定値△βHが算出され、S
150の処理にて車体スリップ角推定値βHが算出され
ると、今度は、S160に移行する。S160では、上
記車体スリップ角速度推定値△βH(今回フローにおけ
る算出値)と、車体スリップ角推定値βH(今回フロー
における算出値)とを用いた下記式(18)にて、車体
スリップ角βのPI制御用パラメータwβを算出する。
絶対値が評価係数Kdより大きいか否かの判断を行う。
タwβの絶対値が評価係数Kdより大きいと判断された
場合、つまり、車両の走行(旋回)状態が不安定である
(例えば、車両がスピンする状態である)と判断された
場合は、S180に移行し、今度は、PI制御用パラメ
ータwβが0より大きいか否かの判断を行う。
タwβが0より大きい、即ち、正であると判断された場
合は、S190に移行して、旋回外輪側の前輪を右前輪
25FRであると判断し、油圧回路40内の各種アクチ
ュエータを駆動して、右前輪25FRに加わる制動力、
つまり、ホイールシリンダ41FRに加わるブレーキ油
圧を適宜増加させて車体スリップ角βを減少させ、当該
車体スリップ角制御処理を終了する。
wβが0より小さい、即ち、負であると判断された場合
は、S200に移行して、旋回外輪側の前輪を左前輪2
5FLであると判断し、油圧回路40内の各種アクチュ
エータを駆動して、左前輪25FLに加わる制動力、つ
まり、ホイールシリンダ41FLに加わるブレーキ油圧
を適宜増加させて車体スリップ角βを減少させ、当該車
体スリップ角制御処理を終了する。
メータwβの絶対値が評価係数Kdより大きくはないと
判断された場合は、車両の走行(旋回)状態が安定した
状態となっており、左右の前輪25FL、25FRのう
ち一方の制動力を増加させる必要がないと判断して、当
該車体スリップ角制御処理を終了する。
度測定手段に相当し、S140の処理は、請求項3の車
体スリップ角速度推定値算出手段に相当し、S150の
処理は、請求項3の車体スリップ角推定値算出手段に相
当する。以上説明したように、本実施例では、S110
及びS120にて測定されたヨーレート△θ、横加速度
Gy、及び車体速度Vbに基づき、式(9)を用いて車
体スリップ角速度推定値△βHを算出し(S140)、
さらに、この車体スリップ角速度推定値△βHを式(1
0)を用いて積分演算する(S150)ことにより、車
体スリップ角推定値βHを算出する。
れた車体スリップ角推定値βHが、車両がスピンした場
合や、車両のロール角φが大きくなった場合であって
も、実際の車体スリップ角βと略一致しており、この推
定値βHを、実際の車体スリップ角βを正確に推定した
値として適用することができる。
て、ヨーレート△θの補正値であるH3(△θ)が、横
加速度Gyの測定誤差を加味した値として設定されてい
るため、車両がスピンした場合や、車両のロール角φが
大きくなった場合であっても、車体スリップ角速度推定
値△βHを真値△βに近い値として算出する(S14
0)ことができ、その結果、車体スリップ角βを正確に
推定した値として、車体スリップ角推定値βHを算出す
る(S150)ことができるのである。
た車体スリップ角推定値βH(具体的には、車体スリッ
プ角推定値βH及び車体スリップ角速度推定値△βH)に
対する評価を行い(S170〜S180)、車両の走行
(旋回)状態が不安定である(例えば、車両がスピンす
る状態である)と判断された場合は、左右の前輪25F
L、25FRのうち一方の制動力を適宜増加させ(S1
90、S200)、車体スリップ角βを減少させる。従
って、車両走行時、特に車両旋回時における車両の操縦
安定性を高めることができる。
が、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、
種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例で
は、本発明をフロントエンジン・リアドライブ(FR)
方式の車両(換言すれば、後輪駆動車)に適用した場合
について説明したが、本発明は、フロントエンジン・フ
ロントドライブ(FF)方式の車両(換言すれば、前輪
駆動車)に適用しても、上記実施例と同様の効果を得る
ことができる。
度推定値△βH及び車体スリップ角推定値βHの算出(S
140、S150)に使用する横加速度Gyを測定する
(S110)際、横加速度センサ33にて横加速度Gy
を直接測定したが、横加速度センサ33の代わりにロー
ルレートセンサを設けて、まず、該ロールレートセンサ
にて、車両のロールレート△φを測定させ、次いで、E
CU30にて、該ロールレートセンサからの入力信号よ
り検出されたロールレート△φを、下記式(19)にて
表される、ロールレートと横加速度との関係を記述した
物理モデルに適用して、横加速度Gyに対する推定値G
yHを算出しても良い。
なくても、車体スリップ角速度推定値△βH及び車体ス
リップ角推定値βHの算出に使用する横加速度Gy(具
体的には、横加速度Gyの推定値GyH)を測定するこ
とができる。
項4のロールレート測定手段に相当し、上記式(19)
を用いてECU30にて行われる横加速度Gy(推定値
GyH)の算出処理は請求項4の横加速度算出手段に相
当する。また、一方、上記実施例では、車体速度推定処
理(S120)において、車輪速度VWFL〜VWRR
を車両の重心位置の速度に換算する(S310)際に、
車両のヨーレート△θを用いた式(3)〜(6)を用い
たが、式(3)〜(6)におけるヨーレート△θを、横
加速度センサ33からの入力信号より検出される横加速
度Gyを用いた下記式(20)にて換算値△θHとして
算出しても良い。
ーにて算出された車体速度Vbである。また、上記式
(20)を使用する態様では、車両が極低速で走行して
いる場合(例えば、5km/h以下のような車輪速度センサ
31FL〜31RRの分解能の限界以下の極低速で走行
している場合)には、上記式(20)においてVb
(n-1)を0とした演算を行わないようにするため、Vb
(n-1)に固定値(例えば、5km/h)を代入して△θHを算
出すれば良い。
(S120)において、車両が減速状態にあるか否かを
判断する(S320)際に、ブレーキスイッチ44から
の入力信号を用いて判断を行ったが、例えば、下記3つ
の態様(〜)のうち1つを採用しても良い。また、
下記3つの態様(〜)及び上記実施例の態様(即
ち、ブレーキスイッチ44からの入力信号を用いる態
様)のうち少なくとも2つを組み合わせた態様を採用し
ても良い。
にて算出される車体前後加速度△Vb(前回フローにて
算出された値)が正か負かを判断することによって車両
が減速状態にあるか否かを判断する。 ECU30にてIDL(アイドル)信号(例えば、
アクセルペダル(図示はしない)が踏み込まれているか
否かによって出力が変化する信号)を検出することによ
って車両が減速状態にあるか否かを判断する。
るマスタシリンダ圧センサ(図示はしない)を設け、該
マスタシリンダ圧センサによる検出値(圧力)が基準値
以上であって、実質的に車輪制動力を発生している状態
か否かを判断することによって車両が減速状態にあるか
否かを判断する。
処理(請求項3の車体速度測定手段に相当)としては、
左右の従動輪(フロントエンジン・リアドライブ方式の
車両の場合は、前輪25FL、25FR)の車輪速度を
検出する車輪速度センサより得られる左右の従動輪の回
転速度の平均値(平均従動輪速度)を車体速度Vb(推
定値)として検出するものであっても良い。
裏付ける各種実験例について説明する。 [実験例1]この実験では、上記実施例と同様の車体ス
リップ角推定装置が備えられ、且つ、操舵角センサ(図
示はしない)が取り付けられた実験車両を走行させ、ス
ピン発生を伴うレーンチェンジを行った場合(速度55
km/h)と、通常旋回(換言すれば、車両がスピンしない
旋回)を行った場合(速度40km/h)とにおいて、式
(9)にて算出される車体スリップ角速度推定値△βH
が、実際の車体スリップ角速度△βを正確に推定した値
として適用可能であるか否かを検証した。
いて説明する。まず、図5は、上記実験車両がスピン発
生を伴うレーンチェンジを行った場合(速度55km/h)
における各検出値(算出値)、即ち、△θ、H3(△
θ)、Gy/Vb、△βH、及び操舵角センサ検出値
(図中に「ステアリング」として示した検出値)の時間
経過に対する変化を示したものである。尚、操舵角セン
サからの検出値は、左操舵時に正、右操舵時に負の値と
して出力されるものである。
る車体スリップ角速度推定値△βHが、式(1)にて算
出される従来の推定値△βpと異なり、実際の車体スリ
ップ角速度△βに近い値として検出(算出)されること
が判った(βとβHの定量的な比較は実験例2で後
述)。
って補正されていない、ヨーレートセンサ32による検
出値)は、この実験車両がスピンしたと考えられる時点
t1より以前(換言すれば、時点t1以前で、実際の車
体スリップ角速度△βが0に近い値になると考えられる
時点)の、ステアリングが操舵された時点(換言すれ
ば、時点t1以前で、操舵角センサ検出値が負となった
時点)の直後から、Gy/Vbと離れはじめ、その結
果、式(1)にて算出される車体スリップ角速度△βの
推定値△βp(図示はしない)が、時点t1より以前に
おいて、0と異なった値となり、さらに、時点t1以降
においても、実験車両がいつスピンし始めたのかを正確
に検出することもできないことが判った。従って、式
(1)では、真値△βに近い値を算出することができな
いことが判った。
θ)とGy/Vbとは、時点t1より以前において、略
等しい値となり、その結果、式(9)の算出値である車
体スリップ角速度推定値△βHが0に近い値となり、こ
の推定値△βHが、真値△βに近い値となることが判っ
た。
点t1)、今度は、H3(△θ)とGy/Vbとが離れ
はじめ、対応する車体スリップ角速度推定値△βHが、
0と異なる値に変化し始める。つまり、車体スリップ角
速度推定値△βHが、真値△βと同様の変化を示すこと
が判った。
前の、ステアリングが操舵された時点の直後からロール
角φが大きくなると考えられ、さらに、時点t1以降で
はスピンも発生するため、横加速度センサ33にて検出
される横加速度Gyが、実験車両に実際に作用する横加
速度と異なった値となり、式(1)では、実際の車体ス
リップ角速度△βに近い値を検出(算出)することがで
きないが、式(9)によれば、このような場合であって
も、実際の車体スリップ角速度△βに近い値を推定値△
βHとして検出(算出)可能であることが判った。
(スピンを伴わない旋回)を行った場合(速度40km/
h)における上記各検出値(算出値)の時間経過に対す
る変化を示したものである。そして、図6においても、
式(9)にて算出される車体スリップ角速度推定値△β
Hが、式(1)にて算出される従来の推定値△βpと異な
り、実際の車体スリップ角速度△βに近い値として検出
(算出)されることが判った。
速度△βが常に0に近い値になると考えられるが、図6
では、ヨーレート△θが、旋回時においてGy/Vbと
異なった値となり、その結果、式(1)にて算出される
従来の推定値△βpが旋回時に0に近い値とならず、式
(1)では真値△βに近い値を算出することができない
ことが判った。
に略等しい値となり、その結果、車体スリップ角速度推
定値△βHが常に0に近い値となり、この推定値△βH
が、真値△βに近い値となることが判った。即ち、この
実験車両では、上記通常旋回時においてロール角φが大
きくなると考えられ、横加速度センサ33にて検出され
る横加速度Gyが、実験車両に実際に作用する横加速度
と異なった値となり、式(1)では、実際の車体スリッ
プ角速度△βに近い値を検出(算出)することができな
いが、式(9)によれば、このような場合であっても、
実際の車体スリップ角速度△βに近い値を推定値△βH
として検出(算出)可能であることが判った。
ら、ヨーレート△θの補正値H3(△θ)が、横加速度
センサ33にて検出される横加速度Gyの測定誤差を加
味した値として設定されており、車両がスピンした場合
や、車両のロール角φが大きくなった場合であっても、
式(9)にて、車体スリップ角速度推定値△βHを真値
△βに近い値として算出することができることを確認で
きた。
両がスピンした場合や、車両のロール角φが大きくなっ
た場合であっても、式(9)にて算出される車体スリッ
プ角速度推定値△βHが、実際の車体スリップ角速度△
βを正確に推定した値として適用可能なものであること
を確認できた。 [実験例2]この実験では、上記実施例と同様の車体ス
リップ角推定装置が備えられ、且つ、周知の対地速度計
(図示はしない)が車両後部に取り付けられた実験車両
を走行させ、式(9)にて算出された車体スリップ角速
度推定値△βHを積分演算して得られた車体スリップ角
推定値βHが、実際の車体スリップ角βを正確に推定し
た値として適用可能であるか否かを検証した。
いて、上記実施例における車体スリップ角推定値βHの
他に、式(1)にて算出される従来の車体スリップ角速
度推定値△βpを積分演算して得られる従来の車体スリ
ップ角推定値βpを検出すると共に、対地速度計による
検出値から算出される実際の車体スリップ角βも検出
し、これら3つの値を比較することにより、上記検証を
行った。
体前後軸方向の進行速度Vx、及び車体左右軸方向(車
体前後軸方向に対して垂直で、例えば車軸(フロントド
ライブシャフト、リアドライブシャフト)に平行な方
向)の進行速度Vyを検出した。そして、この実験で
は、下記式(21)にて実際の車体スリップ角β(検出
値)を算出した。
図7は、上記実験車両にアスファルト上を走行させた場
合について、図8は、上記実験車両に圧雪上を走行させ
た場合について、図9は、上記実験車両に氷上を走行さ
せた場合について、上記実施例における車体スリップ角
推定値βH(図7〜図9に「βH(補正値)」として示し
た検出値)、従来の車体スリップ角推定値βp(図7〜
図9に「無補正」として示した検出値)、及び実際の車
体スリップ角βの検出値(図7〜図9に「対地速度計」
として示した検出値)の時間経過に対する変化を示した
ものである。
も、車体スリップ角βが0に比べて十分大きくなるよう
な走行を行った際(つまり、実験車両がスピンしたり、
実験車両のロール角φが大きくなるような走行を行った
際)に、上記実施例における車体スリップ角推定値βH
が、従来の車体スリップ角推定値βpに比べ、実際の車
体スリップ角β(検出値)に近い値となることが判っ
た。
両がスピンした場合や、車両のロール角φが大きくなっ
た場合であっても、上記実施例における車体スリップ角
推定値βHが、実際の車体スリップ角βを正確に推定し
た値として適用可能なものであることを確認できた。
た車体スリップ角制御装置の全体的構成を表す概略構成
図である。
車体スリップ角制御処理を表すフローチャートである。
処理を表すフローチャートである。
度推定処理を表すフローチャートである。
る。
る。
る。
る。
る。
スリップ角を正確に推定できないことがあることを説明
する説明図である。
31RL、31RR…車輪速度センサ、32…ヨーレー
トセンサ、33…横加速度センサ、44…ブレーキスイ
ッチ。
Claims (6)
- 【請求項1】 走行車両のヨーレート、横加速度、及び
車体速度、を測定し、 該測定結果と、前記横加速度の測定誤差を補償するため
に予め設定された遅れ要素H3とに基づき、次式 △βH=H3(△θ)−Gy/Vb (但し、△θ:ヨーレート、Gy:横加速度、Vb:車
体速度)を用いて車体スリップ角速度推定値△βHを算
出し、 該車体スリップ角速度推定値△βHを積分演算すること
により、車体スリップ角推定値βHを算出することを特
徴とする車体スリップ角推定方法。 - 【請求項2】 前記車体スリップ角速度推定値△βH算
出用の式は、 前記ヨーレートと前記車両におけるロール角との関係を
前記ヨーレートの2次遅れ要素H1を用いて記述した物
理モデル、及び前記横加速度と前記ロール角との関係を
前記横加速度の1次遅れ要素H2を用いて記述した物理
モデルから導出した式であり、 前記遅れ要素H3は、前記2次遅れ要素H1及び1次遅れ
要素H2を用いた次式 H3=H1/H2 にて表される遅れ要素であることを特徴とする請求項1
に記載の車体スリップ角推定方法。 - 【請求項3】 前記横加速度の測定を、 前記車両のロールレートを測定した後、該測定結果に基
づき、該ロールレートと前記横加速度との関係を記述し
た物理モデルを用いて前記横加速度を算出することによ
り行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載
の車体スリップ角推定方法。 - 【請求項4】 走行車両のヨーレートを測定するヨーレ
ート測定手段と、 該車両の横加速度を測定する横加速度測定手段と、 該車両の車体速度を測定する車体速度測定手段と、 前記ヨーレート、横加速度、及び車体速度の測定結果
と、前記横加速度の測定誤差を補償するために予め設定
された遅れ要素H3とに基づき、次式 △βH=H3(△θ)−Gy/Vb (但し、△θ:ヨーレート、Gy:横加速度、Vb:車
体速度)を用いて車体スリップ角速度推定値△βHを算
出する車体スリップ角速度推定値算出手段と、 該車体スリップ角速度推定値算出手段にて算出された車
体スリップ角速度推定値△βHを積分演算することによ
り、車体スリップ角推定値βHを算出する車体スリップ
角推定値算出手段と、 を備えたことを特徴とする車体スリップ角推定装置。 - 【請求項5】 前記車体スリップ角速度推定値算出手段
において、 前記車体スリップ角速度推定値△βH算出用の式は、 前記ヨーレートと前記車両におけるロール角との関係を
前記ヨーレートの2次遅れ要素H1を用いて記述した物
理モデル、及び前記横加速度と前記ロール角との関係を
前記横加速度の1次遅れ要素H2を用いて記述した物理
モデルから導出した式であり、 前記遅れ要素H3は、前記2次遅れ要素H1及び1次遅れ
要素H2を用いた次式 H3=H1/H2 にて表される遅れ要素であることを特徴とする請求項4
に記載の車体スリップ角推定装置。 - 【請求項6】 前記横加速度測定手段は、 前記車両のロールレートを測定するロールレート測定手
段と、 該ロールレート測定手段にて測定されたロールレートに
基づき、該ロールレートと前記横加速度との関係を記述
した物理モデルを用いて前記横加速度を算出する横加速
度算出手段と、 を備えたことを特徴とする請求項4または請求項5に記
載の車体スリップ角推定装置。
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