JP2011033311A - 耐切創布帛およびそれを用いた耐切創防護衣料 - Google Patents

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Abstract

【課題】重量、厚みを大幅に増加させることなく耐切創性能を向上させ、さらにごわつき感なく良好な着用感を保持した、軽量で柔軟な耐切創布帛およびそれを用いた耐切創防護衣料を提供する。
【解決手段】高強度フィラメント糸からなる布帛であって、該高強度フィラメント糸には捲縮加工が施されており、残留捲縮度が10.0%以上、該高強度フィラメント糸の下記測定方法で測定した繊維間摩擦の最大値Fmaxが710以上であることを特徴とする耐切創性布帛とする。また、該耐切創布帛を用いた耐切創防護衣料とする。(繊維間摩擦の最大値Fmaxの測定方法)布帛を構成する繊維の一端を固定し、3回撚りをかけた後、他の一端に荷重(T1)をかけ、0.1m/分のスピードで繊維を動かした際の張力(T2)の最大値(T2max)を測定し、下式により繊維間摩擦の最大値(Fmax)を求める。Fmax=T2max―T1
【選択図】図1

Description

本発明は、軽量で耐切創性能に優れた布帛およびそれを用いた耐切創防護衣料に関し、さらに詳しくは、捲縮加工を施した繊維により構成され、重量を大幅に増加させることなく耐切創性能を向上させた布帛およびそれを用いた耐切創防護衣料に関するものである。
近年、バタフライナイフや出刃包丁のような鋭利な刃物により、理由無く切りつけられる事件や犯罪が多発している。このような刃物から身体を保護するために耐切創性に優れた防護衣料が求められている。従来、警察官や警備隊員など危険な任務の従事する人は、事前に危険を回避するため、防刃衣や防刃用具を着用することがある。これらを構成する防護衣料用材料として、鉄板やチタン板、セラミック板、ポリカーボネート樹脂板などの硬質の平板、またはこれらを布帛で被覆したものなどがある。しかし、これらは防護性能が十分であっても、比重が大きいために非常に重く、しかもそれ自体が全く柔軟性を有していないため、作業性が悪いという欠点があった。このため、軽量で作業性の良い点から高強力繊維を用いた防護衣料が開発されている。なかでもアラミド繊維を用いた布帛は軽量かつ柔軟性に優れ、通常の繊維からなる布帛に比べれば、高い防護性能を示すが、アラミド繊維を用いるのみでは刃物に対して十分な防護性能を有するとは言えず、布帛表面に硬質無機物粒子を固着させることにより耐切創性能を向上させた素材が提案されている(特許文献1)。しかしながら、これら特許文献1に開示された素材は、布帛の重量を大幅に増加させるだけでなく、ごわつき感があり作業性に劣るという問題点を有している。
本発明者らの検討によれば、紡績糸を含む繊維からなる繊維構造物について温水中で超音波処理などを行うことにより、耐切創性が向上することがわかったが、繊維構造体の薄くすると所望の耐切創性が得られないことがあることがわかった。
特開2002−031499号公報
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解決し、重量、厚みを大幅に増加させることなく耐切創性能を向上させ、さらにごわつき感なく良好な着用感を保持した、軽量で柔軟な耐切創布帛およびそれを用いた耐切創防護衣料を提供することにある。
本発明者らは、高強度フィラメント糸に捲縮加工を施した繊維により構成された布帛に、最適な処理、たとえば温水浸漬処理と同時に超音波処理を施すことで、繊維構造物を構成するフィラメントの繊維間摩擦の最大値Fmaxを向上させることができ、布帛の重量を大幅に増加させることなく高い耐切創性能を有し、軽量で柔軟な耐切創布帛が得られることを見出した。
かくして本発明によれば、高強度フィラメント糸からなる布帛であって、該高強度フィラメント糸には捲縮加工が施されており、残留捲縮度が10.0%以上、該高強度フィラメント糸の下記測定方法で測定した繊維間摩擦の最大値Fmaxが710以上であることを特徴とする耐切創性布帛が提供される。
(繊維間摩擦の最大値Fmaxの測定方法)
布帛を構成する繊維の一端を固定し、3回撚りをかけた後、他の一端に荷重(T1)をかけ、0.1m/分のスピードで繊維を動かした際の張力(T2)の最大値(T2max)を測定し、下式により繊維間摩擦の最大値(Fmax)を求める。
Fmax=T2max―T1
本発明によれば、重量を大幅に増加させることなく耐切創性能を向上させた、さらにごわつき感なく着用感に優れた、耐切創布帛およびそれを用いた耐切創防護衣料を提供することができる。
本発明の布帛を構成する繊維の繊維間摩擦を測定する装置を示す概略図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明においては、軽量でかつ柔軟な耐切創布帛および耐切創防護衣料を得るために、これを構成する高強度フィラメント糸には捲縮加工が施されており、残留捲縮度が10.0%以上、該高強度フィラメント糸の下記測定方法で測定した繊維間摩擦の最大値Fmaxが710以上であることが必要である。
ここで、繊維間摩擦の最大値Fmaxは、以下の方法により測定した値である。すなわち、布帛を構成する繊維の一端を固定し、3回撚りをかけた後、他の一端に荷重(T1)をかけ、0.1m/分のスピードで繊維を動かした際の張力(T2)の最大値(T2max)を測定し、下式により繊維間摩擦の最大値(Fmax)を求める。
Fmax=T2max―T1
本発明においては、高強度フィラメント糸に捲縮加工を施したものであることが肝要であり、これにより紡績糸などよりも高い切創抵抗力を得ることができる。このため、紡績糸からなる布帛により十分な耐切創性を得ようとすれば、目付をかなり高くする必要があり、着用感を阻害されるのに対し、本発明の耐切創布帛では低目付けでも十分な切創性を実現することができ、同時に快適な着用感をも達成することができる。
本発明でいう高強度フィラメント糸とは、強度が10cN/dtex以上のものを指し、好ましくは16cN/dtex以上のものが好ましい。これにより、高い耐切創性を発揮することができる。上記高強度フィラメント糸を構成する繊維としては、例えば、メタ型アラミド繊維、パラ型アラミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、高重合度ポリエチレン繊維、ポリケトン繊維などを好適に挙げることができる。特に本発明においては、織物や編物強度を向上させる目的でパラ系のアラミド繊維、すなわち、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、あるいは、これに第3成分を共重合した繊維などを用いることが有用である。ポリパラフェニレンテレフタルアミド共重合体の一例として、下記式に示すコポリパラフェニレン・3.4’オキシジフェニレンテレフタルアミドが例示される。
Figure 2011033311
(ここで、m及びnは正の整数を表す。)
本発明でいう捲縮加工とは、例えば、高強度フィラメントに加撚−解撚法、仮撚り法、押し込み捲縮法、擦過法、空気噴射法、ニット・デニット法、ギア倦縮法など公知の手法を用いて捲縮を付与させることを指し、捲縮数が3〜14山/25mmインチであれば、上記手法に限定されるものではない。また、捲縮付与後に繊維を加熱して捲縮形状を熱固定することもできる。残留捲縮率が10.0%以上であることが必要であり、13.0%以上であることが好ましく、13.0〜30.0%であることがより好ましい。
本発明では、該布帛が耐切創性に優れた性能であるためには、Fmaxの値は710以上である必要がある。好ましくは715〜860、また更に好ましくは720〜830である。Fmaxが大きすぎると着用した際にかたく感じ、また逆に小さすぎると十分な耐切創性が得られない。
布帛のFmaxの値を向上させるために例えば温水中で超音波処理を行うことが好ましく例示される。
温水としては40〜80℃が好ましく、処理温度が40℃以下の場合は耐切創性向上効果は著しいものではなく、また80℃以上であった場合には布帛の物性や形態が変化するため好ましくない。
超音波処理としては周波数20〜100kHzが好ましく、20kHz未満の場合は十分に処理できず耐切創性向上効果が著しいものではなく、100kHzより大きい場合はサンプル形状が変わってしまう可能性がある。またサンプルは温水中に完全に浸漬しているものとする。
この方法により、繊維間の摩擦を向上させることで、刃が布帛に接触した際に布帛が嵩高性を維持することができることにより耐切創性が向上するものと考えられる。
温水中で超音波処理をすることにより繊維間摩擦が上がる理由については明らかではないが、超音波処理により油剤等が繊維表面から脱落することや、繊維表面が衝撃により微細変化(フィブリル化等)が生じるによるものと考えられる。
単繊維繊度は0.5〜5.0dex、より好ましくは0.5〜3.0dex、更に好ましくは0.9〜2.4dexの範囲である。単糸繊度が小さすぎると耐切創性の改善が少なく、反対に大きすぎると、布帛(手袋や織編物等)に柔軟性がなく、ちくちく感を感じることもある。
本発明の耐切創布帛は、目付けが200g/m以上500g/m以下であることが好ましい。目付けが200g/m2を下回る場合には、十分な耐切創性能が得られない恐れがあり、500g/mを上回る場合には、防護衣料の重量が重くなり、着用者の負担を大きくするため、作業性を悪化させるだけでなく、疲労感を増大させる。また、厚みが4.5mm以下であることが好ましく、3.5mm以下であることが好ましい。布帛の厚みが4.5mmを上回る場合には、柔軟性が阻害され、ごわつき感が増大するため、着用感を悪化させる恐れがある。ただ、厚みがあまり低すぎると切創性が低下する傾向にあるため、布帛の厚みは、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましい。
耐切創性能としては、8.0N以上であることが好ましく、さらには9.0N以上であることがさらに好ましい。8.0N以下の場合、防護衣料としたときに切創に対して十分な効果を発揮できない恐れがある。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、実施例中の各物性は下記の方法により測定した。
(1)目付け
JIS L 1096に準拠した方法により測定した。
(2)厚み
JIS L 1096−90(織物)またはJIS L 1018−90(編物)に準拠した方法により、ディジマティック厚さ試験機を用いて測定を行った。
(3)繊維間摩擦
図1示す装置を用い、繊維構造物を構成する繊維の一端を固定し、3回撚りをかけた後、他の一端に荷重(T1=500g)をかけ、0.1m/分のスピードで繊維を動かした際の張力(T2)の最大値(T2max)を測定し、下記式よりFmaxを求めた。また、θは15°とした。
Fmax=T2max―T1
(4)残留捲縮率
JIS L1015 8.12.2に準拠した方法により測定した。
(5)切創抵抗力
ISO13997に基づき、TDM−100の装置を用い、45度方向にサンプルをセット後試験を行い、切創ストローク長が20mmの時の荷重を読み取った。
(6)着用感
耐切創布帛を用いた耐切創防護衣料を作製し、任意に選んだ試験者に1時間着用させ、軽量で着心地が良いものを○、ごわつき感があるものを×とした。
[実施例1]
パラ型アラミド長繊維フィラメント(帝人アラミド製、商標名:トワロン1000、単糸繊度1.7dtex)を使用して編み密度25本/inchの天竺編の編み物とした後、300℃×10分間の熱セットを行い、編地を解編してパラ型アラミド長繊維フィラメントに捲縮を付与した後、朱子織に製織して467g/mの布帛を得た。得られた布帛及び耐切創防護衣料の評価結果を表1に併せて示す。
[実施例2]
実施例1において得られた布帛を80℃の温水中で15分間超音波処理(島田理化株式会社製 3周波超音波洗浄機、28kHz)を2回行い、100℃、30分で乾燥させて耐切創布帛を得た。得られた布帛及び耐切創防護衣料の評価結果を表1に併せて示す。
[比較例1]
実施例2において、捲縮加工を施さない以外は実施例1と同様に実施した。得られた布帛及び耐切創防護衣料の評価結果を表1に併せて示す。
[比較例2]
実施例2においてパラ型アラミド短繊維(帝人アラミド製、商標名:トワロン1000、単糸繊度1.7dtex、カット長51mm)からなる紡績糸を用いて朱子織に製織した以外は、実施例2と同様に実施した。得られた布帛及び耐切創防護衣料の評価結果を表1に併せて示す。
[比較例3]
実施例2において得られた布帛に油剤を塗布した以外は実施例2と同様に実施した。得られた布帛及び耐切創防護衣料の評価結果を表1に併せて示す。
[比較例4]
パラ型アラミド短繊維(帝人アラミド製、商標名:トワロン1000、単糸繊度1.7dtex、カット長51mm)からなる紡績糸を用いて朱子織に製織して600g/mの布帛を得た。得られた布帛及び耐切創防護服衣料の評価結果を表1に併せて示す。
Figure 2011033311

Claims (2)

  1. 高強度フィラメント糸からなる布帛であって、該高強度フィラメント糸には捲縮加工が施されており、残留捲縮度が10.0%以上、該高強度フィラメント糸の下記測定方法で測定した繊維間摩擦の最大値Fmaxが710以上であることを特徴とする耐切創性布帛。
    (繊維間摩擦の最大値Fmaxの測定方法)
    布帛を構成する繊維の一端を固定し、3回撚りをかけた後、他の一端に荷重(T1)をかけ、0.1m/分のスピードで繊維を動かした際の張力(T2)の最大値(T2max)を測定し、下式により繊維間摩擦の最大値(Fmax)を求める。
    Fmax=T2max―T1
  2. 請求項1記載の耐切創布帛を用いた耐切創防護衣料。
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