以下、本発明の実施形態を図面により説明する。図1は本発明による光ディスク装置及び層間ジャンプ方法の一実施形態を示すブロック図であって、1は片側に記録面が2層以上あるディスク、2aはクランパ、2bはターンテーブル、3は対物レンズ、4はピックアップ、5はスレッドモータ、6はスピンドルモータ、7は信号処理回路、8はフォーカス制御回路、9はトラッキング制御回路、10はスレッド制御回路、11はスピンドル制御回路、12は微分回路、13はマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)、14は低域通過フィルタ(以下、LPFという)、15は前値保持回路、16aは上昇電圧値A、16bは上昇電圧値B、17aは下降電圧値A、17bは下降電圧値B、18a,18bは加算器、19a〜19cは切替スイッチ、19dは開閉スイッチ、19eは切替スイッチ、20はゲイン係数、21は乗算器、22aは信号レベル比較回路、22bは信号レベル比較回路、23aはスレッシュレベルA、23bはスレッシュレベルB、23cはスレッシュレベルC、24はオフセット値、25は値保持回路である。
図7は対物レンズ変位,フォーカス誤差信号,フォーカスエラー微分信号,対物レンズ駆動信号,対物レンズ移動速度の概略波形及び切替スイッチ19a〜19dの動作を、横軸を時間軸として、示している。
図1において、ターンテーブル2b上にセットされたディスク1はクランパ2aで、ターンテーブル2bに固定される。スピンドルモータ6が回転することでディスクは回転する。
ディスク1の情報を読み出すために、マイコン13はピックアップ4内の半導体レ−ザ−に発光制御信号を供給する。
図5はピックアップ4の半導体レーザー及び光学系の構成例と信号処理回路7のフォーカス誤差信号検出の構成例を示す図であって、1はディスク、3は対物レンズ、51はハーフプリズム、52は半導体レーザー、53は集光レンズ、54は光検出器、55は誤差演算器である。
同図において、半導体レ−ザ−52の発する光束はハーフプリズム51を通過して、対物レンズ3で焦点を絞られて、ディスク1上にビームスポットを結ぶ。ディスク1からのレーザー反射光は、再び対物レンズ3を通って、ハ−フプリズム51で反射され、集光レンズ53を通過して光検出器54にスポットを結ぶ。
ここで、光検出器54におけるフォーカスエラー信号の検出の具体的構成例を示す。
光検出器54は4つのエリアA,B,C,Dからなり、対角線上でペアを組んで電気的に接続されている。ディスク1と対物レンズ3が焦点位置にあるときに、光検出器54に入射するビームスポットが円になるように、光検出器54の位置を置くと、対角線上の光検出器54の加算出力を誤差増幅器55で増幅した出力は零となる。ここで、対物レンズ3の焦点位置に対してディスク1が上下にずれた場合には、光検出器54に入射するビームスポットが縦長または横長になる。これを利用すると、誤差増幅器55からは焦点位置からのずれ量及びずれた方向に応じた図6に示すようなフォーカスエラー信号(FE信号)が検出される(これが、いわゆる非点収差法である)。
図6において、横軸は対物レンズとディスクとの間の距離、縦軸はフォーカスエラー信号の信号レベルである。対物レンズの焦点がディスク記録面に合った地点で、フォ−カスエラー信号のS字曲線はゼロクロスする特徴を有する。なお、このS字曲線の極性は、誤差演算器55への入力の違いによって、逆になる場合もあり得るが、そのようなシステムの場合には、信号レベルとディスク変位の考え方を逆にすればよいことは言うまでもない。
この誤差演算器55で生成されたフォーカスエラー信号は、図1において、フォーカス制御回路8に供給され、このフォーカス制御回路8において、遅れ補償器や進み補償器等を用いて、フォーカスエラー信号のS字曲線におけるゼロクロス地点付近でフィードバック制御を行なうための、対物レンズ3を動かすアクチュエータ(図示せず)の駆動信号を生成して出力する。この出力信号は切替スイッチ19bに供給される。この切替スイッチ19bは、マイコン13の指令により、定常時はG側に切替わっており、ピックアップ4にフォーカス制御信号を駆動信号として供給する。この駆動信号によって対物レンズ3は上下方向に制御され、フィードバックループのフォーカス制御を実現して常に合焦点にいる状態を保つ。
一方、信号処理回路7で生成されるトラッキングエラー信号(TE信号)はトラッキング制御回路9に供給され、フィードバック制御で対物レンズ3をトラッキング方向に動かす駆動信号を生成する。この駆動信号はピックアップ4に供給される。このピックアップ4の内部に供給された駆動信号により、対物レンズ3はトラッキング方向に制御され、フィードバックループのトラッキング制御を実現し、常にディスク1の記録面におけるピット上にいる状態を保つ。また、このトラッキング制御回路9から出力された駆動信号はスレッド制御回路10にも供給され、このスレッド制御回路10において、対物レンズ3のトラッキング方向へのずれに応じてスレッドモータ5を制御する駆動信号を生成し、これをスレッドモータ5に供給し、スレッドモータ5を駆動してピックアップ4のスレッド(台車)を動かし、ピックアップ4自体を移動させる。
また、信号処理回路7では、ディスク1から読み取った回転周期情報をスピンドル制御回路11に供給し、この回転周期情報に基づいてスピンドル制御回路11がスピンドルモータ6を駆動する信号を生成し、スピンドルモータ6に供給する。
以上が、定常時において、合焦点上にあってフォーカス,トラッキング,スピンドル及びスレッドが制御された状態である。
ここで、ディスク1が上述したようにDVDの片側2層ディスクである場合、現在合焦している記録面の層から別の記録面の層へ合焦点位置を切換えなければならない場合がある。例えば、0層目の記録面の合焦点上に対物レンズ3の位置が有り、これから1層目の記録面に合焦点を移したい場合、つまり下の記録層(0層目)から上の記録層(1層目)に合焦点をジャンプする場合について説明する。
まず、これまで定常状態で0層目の記録面の合焦点上にいる状態のフォーカス制御回路8から出力する対物レンズ3を駆動する駆動信号は開閉スイッチ19dに供給されており、定常状態の場合には、これがONしているので、そのまま前値保持回路15に供給される。前値保持回路15では、この駆動信号の値が変化するまでは常にこれまで保存していた値をそのまま保持し続け、この保持した値をLPF14に供給する。このLPF14は、対物レンズ3を駆動する信号の高域成分(ノイズ成分)は除去するが、ディスク1の反り等でディスク1の回転によって生じる面振れのような低域成分は除去しないような周波数帯域を持っており、主にノイズ成分を除去して加算器18aに供給する。定常時には、以上のLPF14までの動作は常に行なわれている。
ここで、1層目の記録面の合焦点へ層間ジャンプする際、マイコン13は層間を移動するのに必要な駆動電圧、即ち、加速電圧値としての一定の上昇電圧値A16aと一定の上昇電圧値B16bと、加速した後に合焦点に停止させる為に減速を行なうのに必要な減速電圧値としての一定の下降電圧値A17aと一定の下降電圧値B17bの初期値を駆動電圧生成回路に設定し、また、スレッシュレベルA23a,スレッシュレベルB23b,スレッシュレベルC23c,オフセット値24及びゲイン係数20の設定回路にその初期の値を設定する。この初期設定後、マイコン13は切替スイッチ19bをH側に、切替スイッチ19cをB側に夫々切り替え、開閉スイッチ19dをOFFにする。これら切替スイッチ19b及び開閉スイッチ19dの切替えにより、これまで対物レンズ3を制御していたフィードバックループはオープンループとなってフィードバック制御が切断される。
しかる後、マイコン13は、切替スイッチ19aをC側に切換えるように指示を出す。これにより、上昇電圧値A16aが加算器18aに供給される。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号とこの上昇電圧値A16aとが加算器18aで加算されて切替スイッチ19cに供給される。切替スイッチ19cに供給された加算信号は、切替スイッチ19cがB側に切替っているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bはH側に切り替わっているため、加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を上昇させる。この上昇電圧値A16aが印加されたことにより、対物レンズ3は上昇を始める。
図7において、A点が以上の層間ジャンプの開始点であって、対物レンズ3の駆動信号として上昇電圧値A16aの値(Vup1)がそのまま対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印可される。
また、図1において、信号処理回路7から出力したフォーカスエラー信号を微分回路12に供給する。微分回路12では、入力されるフォーカスエラー信号を微分する。この微分回路12は、所定の帯域において時間微分となるようなハイパスフィルタ(HPF)のようなものでもよい。
さらに、信号処理回路7から出力したフォーカスエラー信号を比較回路22a、加算器18b及び値保持回路25に供給する。
図7に0層目から1層目への層間ジャンプを行なった場合のフォーカスエラー信号とフォーカスエラー微分信号(以下、微分信号という)を示す。以下、A点からI点までの区分毎に詳細に説明する。
A点から層間ジャンプを開始して対物レンズ3が上昇を始めると、B点までにフォーカスエラー信号が中点付近から徐々に立ち上がる。このとき、微分信号は、A点−B点間で中点付近から徐々に立ち上がり、最大値を経て徐々に値は減少していき、フォーカスエラー信号の最大値(B点)で中点(ゼロ)となる。さらに、対物レンズ3が上昇を続けると、D点で0層目から1層目への層間領域となるので、フォーカスエラー信号は最大値から徐々に減少して中点(ゼロ)となる。このとき、微分信号は、B点−D点間で中点(ゼロ)から減少し、最小値を経て徐々に増加して中点(ゼロ)となる。D点とE点との間は層間領域なので、フォーカスエラー信号と微分信号はともに中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が上昇すると、1層目の領域に入るので、G点までにフォーカスエラー信号が中点付近から徐々に立ち下がる。このとき、微分信号は、E点−G点間で中点付近から徐々に立ち下がり、最小値を経て徐々に値は増加していき、フォーカスエラー信号の最小点(G点)で中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が上昇を続けると、I点で1層目の合焦点となるので、フォーカスエラー信号は最小値から徐々に増加して中点(ゼロ)となる。このとき、微分信号は、G点−I点間で中点(ゼロ)から増加し、最大値を経て徐々に減少し、中点(ゼロ)となる。1層目の合焦点であるI点では、フォーカスエラー信号と微分信号とがともに中点(ゼロ)となる。
このように、微分信号を用いると、微分信号が中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を検出することにより、簡単にかつ確実にB点の対物レンズ3の位置を検出することができる。フォーカスエラー信号の信号レベルを監視することでも、B点を検出することが出来るが、フォーカスエラー信号の振幅レベルはディスクなどによっても異なり一様ではないので、確実に検出することは難しい。
そこで、微分回路12から出力される上記の微分信号をマイコン13に供給する。マイコン13は、供給される微分信号が中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を監視することにより、対物レンズ3がB点を通過したことを検出する。
ここで、マイコン13は、最初にB点の通過を検出すると、切替スイッチ19eをK側に切り替えるように指示を出し、スレッショルドレベルA23aの値を比較回路22aに供給する。この比較回路22aでは、信号処理回路7から供給したフォーカスエラー信号とスレッショルドレベルA23aの値とを比較し、その比較結果をマイコン13に供給する。さらに対物レンズ3が上昇を続けると、C点でスレッショルドレベルA23aをフォーカスエラー信号のレベルが下回るので、比較回路22aから比較検出信号をマイコン13に供給する。この比較検出信号により、マイコン13は切替スイッチ19aをD側に切り替える。これにより、上昇電圧値B16bが加算器18aに供給される。
LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号と上昇電圧値B16bとが加算器18aで加算され、切替スイッチ19cに供給される。切替スイッチ19cに供給された加算信号は、このとき、この切替スイッチ19cがB側に切り替わっているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、この加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を上昇させる。上昇電圧値B16bを印加したことにより、対物レンズ3は上昇を続ける。
そこで、図7において、C点が上昇電圧値の切り替わり点で上昇電圧値B16bの値(Vup2)がそのまま対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印可される。このときの上昇電圧B16bは、上昇電圧A16aよりも小さな値を設定する。これにより、上昇電圧A16aを印加したときよりも、対物レンズ3の上昇速度が遅くなる。C点を通過した後、マイコン13は切替スイッチ19eをL側にするように指示を出し、切替スイッチ19eはスレッシュレベルB23bの値を出力し、信号レベル比較回路22aに供給する。この信号レベル比較回路22aにおいては、信号処理回路7から供給されたフォーカスエラー信号とスレッシュレベルB23bとをレベル比較し、スレッシュレベルB23bを下回ると(図7におけるF点)、マイコン13に信号を出力する。マイコン13は、F点の通過を検出すると、上昇を続けていた対物レンズ3を減速させるための電圧値を印可するために、切替スイッチ19cをA側にするように指示を出す。
このとき、信号処理回路7から出力されたフォーカスエラー信号は微分回路12に供給され、この微分回路12で微分されたフォーカスエラー信号は乗算回路21に供給されており、乗算回路21に供給された微分回路12からの出力(微分信号)にゲイン係数20を乗算した結果を切替スイッチ19cに供給する。このとき、上記のように、切替スイッチ19cはA側に切り替わっているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。微分信号にゲイン係数を乗算した信号は、切替スイッチ19bを経由して対物レンズ3に減速電圧として供給される。
ここで、F点からG点までのフォーカスエラー信号は対物レンズの変位を表わしている(単調減少している)。一般に、変位を時間微分すると速度を表わすので、このフォーカスエラー信号を微分した信号は対物レンズの速度を表わしている。例えば、それまで印可した上昇電圧が大きく、減速電圧に切り替わる時の対物レンズの上昇速度が速い場合には、F点からG点までのフォーカスエラー信号は急峻に立ち下がる。この信号を微分すると、値が大きくなり、つまり減速電圧値が大きくなり、対物レンズが上昇する速度を抑制する力も大きくなる。また、逆に、印可した上昇電圧が小さく、減速電圧に切り替わるときの対物レンズの上昇速度が遅い場合には、F点からG点までのフォーカスエラー信号はゆるやかに立ち下がる。この信号を微分すると、値は小さくなり、つまり減速電圧値が小さくなり、対物レンズが上昇する速度を抑制する力は小さくなる。
以上のように、F点からG点までのフォーカスエラー信号を微分した信号を用いると、それまでの対物レンズの上昇速度に応じた減速電圧値を得ることができ、対物レンズの上昇速度を抑制できる。ゲイン係数20は前記フォーカスエラー信号を微分して得られる減速電圧の振幅レベルを調整するために用いる。
減速電圧を印可された後も、対物レンズは上昇を続ける。マイコン13は、F点を通過後、フォーカスエラー信号を監視してその最小値を検出する。
ここで、最小値を検出する方法を述べる。
信号処理回路7から出力したフォーカスエラー信号を加算器18b及び値保持回路25に供給する。加算器18bでは、オフセット値24と信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号を加算して比較回路22bに供給する。このオフセット値は、フォーカスエラー信号にノイズ等の影響を受けた場合、最小値を誤検出するのを防止するのに用いる。比較回路22bでは、マイコン13からの指示で加算器18bからのオフセット値を加算した出力と値保持回路25の出力とを比較し、加算器18bからの出力値の方が小さい場合、比較結果信号を値保持回路25に供給する。値保持回路25では、この比較結果信号により、これまで保持していた値から入力されているフォーカスエラー信号の値に更新する。
図11は最小値検出の様子を模式的に表わす図である。
図11において、フォーカスエラー信号は実線で、このフォーカスエラー信号にオフセット値を加算した信号を点線で夫々示している。例えば、オフセット値を加算しない場合、つまりオフセット値がゼロの場合には、フォーカスエラー信号の実線とオフセット加算の点線とは重なる。この場合には、まずは、点1の値を値保持回路25で保持して最小値とする。次に、この最小値と点2とを比較する。点2の方が値が小さいので、点2を最小値とする。次に、この最小値と点3とを比較する。点3の方が値が大きく、最小値は更新されないので、点2が最小値となる。
ここで、フォーカスエラー信号にオフセット信号を加算する場合について説明する。
最小値を検出する場合には、オフセット値の値は負の値とすると、元の信号(この場合には、フォーカスエラー信号)にこのオフセット値を加算した信号は、元の信号よりは小さい値となる。このときの最小値検出は、まず、点1の値を値保持回路25で保持して最小値とする。次に、点2においては、この最小値と点2にオフセット値を加算した点Bとを比較すると、点Bの方が小さいので、点2を最小値とする。次に、この最小値と点3にオフセット値を加算した点Cとを比較すると、点Cの方が小さいので、点3を最小値とする。次に、この最小値と点4にオフセット値を加算した点Dとを比較すると、点Dの方が小さいので、点4を最小値とする。次に、この最小値と点5にオフセット値を加算した点Eとを比較すると、点Eの方が小さいので、点5を最小値とする。次に、この最小値と点6にオフセット値を加算した点Fとを比較すると、点Fの方が小さいので、点6を最小値とする。次に、この最小値と点7にオフセット値を加算した点Gとを比較すると、点Gの方が値が大きく、最小値は更新されないので、点6が最小値となる。
図11でのフォーカスエラー信号の最小値は点5であり、これにオフセット値を加算すると、最小値は点6となってしまうが、オフセット値を加算しないと、上述の様に、点2を最小値と検出してしまう。
以上のように、オフセット値を加算した信号で最小値検出を行なうと、オフセット値分の振幅を持ったノイズや外乱の影響を受けずに、最小値検出を行なうことができる。
マイコン13では、上記の比較結果信号でフォーカスエラー信号の最小値の更新が得られなくなった時点でG点を通過したと判断する。マイコン13は、G点の通過を検出した時点で、上昇から下降へ推移しようとしている対物レンズ3を安定に停止させ、1層目の合焦点(図7のI点)に移動させるために、切替スイッチ19cをB側に、切替スイッチ19aをE側に夫々するように、指示を出す。切替スイッチ19aがE側に切り替わっているので、切替スイッチ19aは下降電圧A17aの値を出力する。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号と下降電圧値A17aを加算器18aで加算して出力し、切替スイッチ19cに供給する。切替スイッチ19cに供給されたこの加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切替っているので、そのまま切替スイッチ19bに供給されるが、このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、この加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印可される。対物レンズ3は、この下降電圧A17aにより、上昇速度がより抑制されて上昇が止められる。
また、マイコン13は、対物レンズ3がG点を通過後、切替スイッチ19eをM側に切り替えるように指示を出し、これにより、スレッショルドレベルC23cが比較回路22aに供給される。比較回路22aでは、信号処理回路7から供給したフォーカスエラー信号とこのスレッショルドレベルC23cとが比較され、その比較結果をマイコン13に供給する。
さらに、マイコン13は、対物レンズ3がG点を通過後、フォーカスエラー信号を監視してその最大値を検出する。ここで、最大値を検出する方法を述べる。
信号処理回路7から出力されたフォーカスエラー信号が加算器18b及び値保持回路25に供給される。加算器18bは、オフセット値24と信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号とを加算し、比較回路22bに供給する。比較回路22bでは、マイコン13からの指示により、加算器18bの出力と値保持回路25の出力とを比較し、加算器18bの出力値の方が大きい場合、比較結果信号を値保持回路25に供給する。値保持回路25では、この比較結果信号により、保持する値をこれまで保持していた値から入力されているフォーカスエラー信号の値に更新する。
このようにして、値保持回路25には、常にフォーカスエラー信号の最大値が保持されることになる。
図12は値保持回路25での最大値検出の様子を模式的に表わす図である。
図12において、フォーカスエラー信号を実線で、このフォーカスエラー信号にオフセット値を加算した信号を点線で夫々示している。
例えば、オフセット値を加算しない場合、つまりオフセット値がゼロの場合には、フォーカスエラー信号を示す実線とオフセット加算値を示す点線とは重なる。この場合には、まず、点1の値を値保持回路25で保持して最大値とする。次に、この最大値と点2とを比較する。この場合、点2の方が値が大きいので、点2を最大値とする。次に、この最大値と点3とを比較する。この場合、点3の方が値が大きいので、点3を最大値とする。次に、この最大値と点4とを比較する。この場合、点3の方が値が大きいので、最大値は更新されず、点3が最大値として保持されている。
次に、フォーカスエラー信号にオフセット信号を加算する場合について説明する。
最大値を検出する場合には、オフセット値は正の値とする。これにより、元の信号(この場合には、フォーカスエラー信号)にこのオフセット値を加算した信号は、元の信号よりは大きい値となる。このときの最大値検出は、まず、点1の値を値保持回路25で保持して最大値とする。次に、点2においては、この保持した最大値と点2にオフセット値を加算した点Bとを比較する。この場合、点Bの方が大きいので、点2を最大値とする。次に、この最大値と点3にオフセット値を加算した点Cとを比較すると、点Cの方が大きいので、点3を最大値とする。次に、この最大値と点4にオフセット値を加算した点Dとを比較すると、点Dの方が大きいので、点4を最大値とする。次に、この最大値と点5にオフセット値を加算した点Eとを比較すると、点Eの方が大きいので、点5を最大値とする。次に、この最大値と点6にオフセット値を加算した点Fとを比較すると、点Fの方が値が小さいのて、最大値は更新されず、点5が最大値となる。
以上のように、図12では、オフセット値を加算しないと、点3を最大値と検出してしまうが、オフセット値を加算すると、フォーカスエラー信号の点1から点8まででは、点5を最大値として検出される。従って、オフセット値を加算した信号で最大値検出を行なうと、オフセット値分の振幅を持ったノイズや外乱の影響を受けずに、最大値検出が行なえる。
マイコン13は、上記の比較結果信号でフォーカスエラー信号の最大値の更新が得られなくなった時点で対物レンズ3が上昇から下降へ移行したと判断する。対物レンズ3が上昇を続けると、H点でスレッショルドレベルC23cをフォーカスエラー信号のレベルが上回るので、比較回路22aからこの比較検出信号をマイコン13に供給する。この比較検出信号により、マイコン13は切替スイッチ19bをG側に切り替える。このとき、対物レンズ3は1層目の合焦点付近で速度ゼロの状態なので、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御を行ない、対物レンズ3を1層目の記録面の合焦点に引き込むことができる。
図7は上昇電圧と下降電圧のバランスがよい場合を示すものであって、上昇速度が1層目の記録面の合焦点あたりで移動速度がゼロとなるものであり、下降に移行することなく、1層目の合焦点に引き込まれることになる。
同様に、図8は0層目の記録面の合焦点上に対物レンズ3の位置が有り、これから1層目の記録面に合焦点を持っていきたい場合、つまり下の記録層(0層目)から上の記録層(1層目)に合焦点をジャンプする場合を示すものであって、これにより、加速電圧に対して減速電圧が大きすぎて、上の記録層(1層目)に辿り着く前に下降を始める場合について説明する。
図8において、A点からG点までの制御は、上記のように、上昇電圧A16aを最初に印加し、次に、上昇電圧B16bを印加し、0層目と1層目の中間層を通過した後、信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号を微分回路12で微分した信号を用いた速度制御を行なう。G点までは上昇を続けるが、速度制御により、G点付近で上昇速度がゼロになり、G点通過後の下降電圧値A17aの印加によって下降方向に移動を始める。これにより、0層目から1層目への層間移動は再び0層目へ戻り始める(J点)。
これでは、層間ジャンプを失敗するので、前述のマイコン13による最大値検出によって0層目への逆戻りを検出する。この逆戻りを検出した段階で、上述のスレッシュレベルC23cをフォーカスエラー信号のレベルが上回るのを待たずに、マイコン13は切替スイッチ19bをG側に切り替える。このとき、対物レンズ3は1層目の合焦点付近とは少し遠い位置にあるが、上昇速度及び下降速度がほぼ速度ゼロの状態なので、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御が行なえる領域にあることになり、1層目の記録面の合焦点に引き込むことができる。
次に、図9により、1層目の記録面の合焦点上に対物レンズ3の位置があり、これから0層目の記録面に合焦点を持っていく場合、つまり上の記録層(1層目)から下の記録層(0層目)に合焦点をジャンプする場合について説明する。
まず、これまで定常状態で1層目の記録面の合焦点上にある状態のフォーカス制御回路8から出力する対物レンズ3の駆動信号は開閉スイッチ19dに供給されており、この定常状態では、この開閉スイッチ19dがONしているので、そのまま前値保持回路15に供給される。前値保持回路15では、この供給される駆動信号の値が変化するまで常にこれまで保持していた値を保持し続け、この保持した値をLPF14に供給する。このLPF14は、対物レンズ3を駆動する信号の高域成分(ノイズ成分)を除去するが、ディスクの反り等でディスクの回転によって生じる面振れのような低域成分を除去しないような周波数帯域を持っており、主にノイズ成分を除去して加算器18aに供給する。定常時では、LPF14までの動作は常に行なわれている。
ここで、0層目の記録面の合焦点へ層間ジャンプする際、マイコン13は層間を移動するのに必要な加速電圧値としての一定の下降電圧値A17aと、一定の下降電圧値B17bと、加速した後合焦点に停止させる為に減速を行なうのに必要な減速電圧値としての一定の上昇電圧値A16aとスレッシュレベルA23aとスレッシュレベルB23bとスレッシュレベルC23cとオフセット値24とゲイン係数20とに初期値を設定する。
初期値を設定した後、マイコン13は切替スイッチ19bをH側に、切替スイッチ19cをB側に夫々切り替え、開閉スイッチ19dをOFFに切換える。切替スイッチ19b及び開閉スイッチ19dのかかる切替えにより、これまで対物レンズ3を制御していたフィードバックループはオープンループとなり、その制御が切断される。マイコン13は、切替スイッチ19aをE側に切換えるように、指示を出す。これにより、下降電圧値A17aが加算器18aに供給される。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号と下降電圧値A17aとが加算器18で加算されてスイッチC19cに供給される。切替スイッチ19cに供給されたこの加算信号は、このとき、スイッチC19cがB側に切替っているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を下降させる。この下降電圧値A17aが印加されることにより、対物レンズ3は下降を始める。
図9において、A点が層間ジャンプの開始点であって、対物レンズ3の駆動信号として下降電圧値A17aの値(Vdw1)そのものを対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印可する。
また、信号処理回路7から出力したフォーカスエラー信号を微分回路12に供給する。微分回路12では、入力されるフォーカスエラー信号を微分する。この微分回路12は、所定の帯域において、時間微分となるようなハイパスフィルタ(HPF)のようなものでもよい。
さらに、信号処理回路7から出力されるフォーカスエラー信号が比較回路22a,加算器18b及び値保持回路25に供給される。
図9に1層目から0層目へ層間ジャンプを行なった場合のフォーカスエラー信号とフォーカスエラー微分信号(以下、微分信号という)を示す。ここでは、A点からI点までの区分毎に詳細に説明する。
A点から層間ジャンプを開始して対物レンズ3が下降を始めると、B点までフォーカスエラー信号が中点付近から徐々に立ち下がる。その微分信号はA点−B点間で中点付近から徐々に立ち下がり、最小値を経て徐々に値は増加していき、フォーカスエラー信号の最小値(B点)で中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が下降を続けると、D点で1層目から0層目の層間領域となるので、フォーカスエラー信号は最小値から徐々に増加して中点(ゼロ)となる。その微分信号はB点−D点間で中点(ゼロ)から増加し、最大値を経て徐々に減少し、中点(ゼロ)となる。D点とE点との間は層間領域であるので、フォーカスエラー信号と微分信号とがともに中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が下降すると、0層目領域に入るので、G点までにフォーカスエラー信号が中点付近から徐々に立ち上がる。その微分信号はE点−G点間で中点付近から徐々に立ち上がり、最大値を経て徐々に値は減少していき、フォーカスエラー信号の最大点(G点)で中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が下降を続けると、I点で0層目の合焦点となるので、フォーカスエラー信号は最大値から徐々に減少して中点(ゼロ)となる。その微分信号は、G点−I点間で中点(ゼロ)から減少し、最小値を経て徐々に増加し、中点(ゼロ)となる。0層目の合焦点であるI点では、フォーカスエラー信号と微分信号とがともに中点(ゼロ)となる。
このように、微分信号を用いると、微分信号が中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を検出することにより、簡単にかつ確実にB点の対物レンズ3の位置を検出することができる。フォーカスエラー信号の信号レベルを監視することでも、B点を検出することが出来るが、フォーカスエラー信号の振幅レベルはディスクなどによっても異なり、一様ではないので、確実に検出することは難しい。
微分回路12から出力する上記微分信号をマイコン13に供給する。マイコン13では、供給される微分信号が中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を監視し、B点の通過を検出する。ここで、マイコン13は、最初にB点の通過を検出すると、切替スイッチ19eをK側に切り替えるように指示を出す。これにより、スレッショルドレベルA23aが比較回路22aに供給される。この比較回路22aでは、信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号とスレッショルドレベルA23aとを比較し、この比較結果をマイコン13に供給する。
さらに対物レンズ3が下降を続けると、C点でスレッショルドレベルA23aをフォーカスエラー信号のレベルが上回るので、比較回路22aからその比較検出信号をマイコン13に供給する。この比較検出信号により、マイコン13は切替スイッチ19aをF側に切り替える。これにより、下降電圧値B17bが加算器18aに供給される。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号と下降電圧値B17bとを加算器18が加算して出力し、切替スイッチ19cに供給する。切替スイッチ19cに供給されたこの加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切替っているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給されて対物レンズ3を下降させる。下降電圧値B17bを印加したことにより、対物レンズ3は下降を続ける。
図9において、C点が下降電圧値の切り替わり点であって、下降電圧値B17bの値(Vdw2)そのものを対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印可する。このときの下降電圧B17bは、下降電圧A17aよりも小さな値に設定されている。これにより、、下降電圧A17aを印加したときよりも対物レンズ3の下降速度が遅くなる。
C点の通過後、マイコン13は切替スイッチ19eをL側にするように指示を出す。これにより、切替スイッチ19eを介して、スレッシュレベルB23bが信号レベル比較回路22aに供給される。信号レベル比較回路22aは、信号処理回路7から供給されたフォーカスエラー信号をスレッシュレベルBと比較し、スレッシュレベルBを上回る(図9におけるF点)と、マイコン13に信号を出力する。
これにより、マイコン13は、F点の通過を検出すると、下降を続けていた対物レンズ3を減速させるための電圧値を印可するために、切替スイッチ19cをA側にするように指示を出す。これにより、信号処理回路7から出力されて微分回路12で微分されたフォーカスエラー信号(微分信号)は、乗算回路21に供給される。乗算回路21はこの微分信号とゲイン係数20を乗算し、その結果を切替スイッチ19cに供給するが、このとき、スイッチC19cはA側に切り替わっているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。微分信号にゲイン係数を乗算した信号は、切替スイッチ19bを経由して、対物レンズ3に減速電圧として供給される。
F点からG点までのフォーカスエラー信号は、対物レンズの変位を表わしている(単調増加している)。一般に、変位を時間微分すると、速度を表わすので、このフォーカスエラー信号の微分信号は、対物レンズ3の移動速度を表わしている。例えば、それまで印可した下降電圧が大きく、減速電圧に切り替わるときの対物レンズ3の下降速度が速い場合には、F点からG点までのフォーカスエラー信号は急峻に立ち上がる。このフォーカスエラー信号を微分すると、その値が大きくなり、つまり減速電圧値が大きくなり、対物レンズ3が下降する速度を抑制する力も大きくなる。また、逆に、印可した下降電圧が小さく、減速電圧に切り替わるときの対物レンズ3の下降速度が遅い場合には、F点からG点までのフォーカスエラー信号はゆるやかに立ち上がる。このフォーカスエラー信号を微分すると、その値は小さくなり、つまり減速電圧値が小さくなり、対物レンズ3が下降する速度を抑制する力は小さくなる。
以上のように、F点からG点までのフォーカスエラー信号の微分信号を用いると、それまでの対物レンズ3の下降速度に応じた減速電圧値を得ることができ、対物レンズ3の下降速度を抑制できる。
ゲイン係数20はフォーカスエラー信号を微分して得られる減速電圧の振幅レベルを調整するために用いる。減速電圧が印可された後も、対物レンズ3は下降を続ける。マイコン13は、F点通過を検出後、フォーカスエラー信号を監視し、その最大値を検出する。ここで、最大値を検出する方法は上述した方法を用いる。
即ち、信号処理回路7から出力されるフォーカスエラー信号が加算器18b及び値保持回路25に供給される。加算器18bでは、オフセット値24と信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号を加算し、比較回路22bに供給される。比較回路B22bでは、マイコン13からの指示で加算器18bの出力と値保持回路25の出力とを比較し、加算器18bからの出力値の方が大きい値の場合、比較結果信号を値保持回路25に供給される。値保持回路25では、この比較結果信号により、保持する値をこれまで保持していた値から入力されているフォーカスエラー信号の値に更新する。これにより、値保持回路25には、常にフォーカスエラー信号の最大値が保持されることになる。
マイコン13は、上記の比較結果信号でフォーカスエラー信号の最大値の更新が得られなくなった時点で、G点を通過したと判断する。そして、マイコン13は、G点の通過を検出した時点で、下降から上昇へ推移しようとしている対物レンズ3を安定に停止させて0層目の合焦点(図9のI点)に移動させるために、切替スイッチ19cをB側に、切替スイッチ19aをC側に夫々切り替えるように指示を出す。これにより、切替スイッチ19aがC側に切り替わり、切替スイッチ19aから上昇電圧値A16aが出力される。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号と上昇電圧値A16aとが加算器18aで加算されて出力され、切替スイッチ19cに供給される。切替スイッチ19cに供給されたこの加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切替っているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、この加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給しされ、物レンズ3を駆動するアクチュエータに印可される。対物レンズ3に、この上昇電圧A16aにより、下降速度がより抑制されて下降を止める。
また、マイコン13は、G点通過の判定後、切替スイッチ19eをM側に切り替えるように指示を出し、スレッショルドレベルC23cを比較回路22aに供給させる。この比較回路22aでは、信号処理回路7から供給したフォーカスエラー信号とスレッショルドレベルC23cとを比較し、その比較結果をマイコン13に供給される。
さらに、マイコン13は、G点通過の判定後、フォーカスエラー信号を監視してその最小値を検出する。この最小値を検出する方法は上述した方法を用いる。
即ち、信号処理回路7から出力されるフォーカスエラー信号を加算器18b及び値保持回路25に供給される。加算器18bでは、オフセット値24と信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号を加算して比較回路22bに供給する。このオフセット値は、フォーカスエラー信号にノイズ等の影響を受けた場合、最小値を誤検出するのを防止するのに用いる。比較回路22bでは、マイコン13からの指示で加算器18bからのオフセット値を加算した出力と値保持回路25の出力とを比較し、加算器18bの出力値の方が小さい場合、比較結果信号を値保持回路25に供給される。値保持回路25では、この比較結果信号により、保持する値をこれまで保持していた値から入力されているフォーカスエラー信号の値に更新する。
マイコン13では、上記の比較結果信号でフォーカスエラー信号の最小値の更新が得られなくなった時点で対物レンズが下降から上昇へ移行したと判断する。対物レンズ3が下降を続けると、H点でスレッショルドレベルC23cをフォーカスエラー信号のレベルが下回るので、比較回路22aからその比較検出信号をマイコン13に供給される。この比較検出信号により、マイコン13は切替スイッチ19bをG側に切り替える。このとき、対物レンズ3は0層目の合焦点付近で速度ゼロの状態なので、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御を行ない、対物レンズ3を0層目の記録面の合焦点に引き込むことができる。
図9は、下降電圧と上昇電圧のバランスがよい場合を示すものであって、下降速度が0層目の記録面の合焦点あたりで移動速度がゼロとなるものであり、上昇に移行することなく、0層目の合焦点に引き込まれることになる。
同様に、図10は1層目の記録面の合焦点上に対物レンズ3の位置があり、これから0層目の記録面に合焦点を持っていきたい場合、つまり上の記録層(1層目)から下の記録層(0層目)に合焦点をジャンプする場合を示すものであって、加速電圧に対して減速電圧が大きすぎて、下の記録層(0層目)に辿り着く前に上昇を始める場合について説明する。
図10において、A点からG点までの制御は、上記のように、下降電圧A17aを最初に印加し、次に、下降電圧B17bを印加し、1層目と0層目の中間層を通過した後、信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号を微分回路12で微分した信号を用いた速度制御を行なう。G点までは下降を続けるが、速度制御により、G点付近で下降速度がゼロになり、G点通過後の上昇電圧値A16aの印加によって上昇方向に移動を始める(J点)。これにより、1層目から0層目への層間移動は再び1層目へ戻り始める。
これでは、層間ジャンプを失敗するので、前述のマイコン13による最小値検出によって1層目への逆戻りを検出される。この逆戻りを検出した段階で、上述のスレッシュレベルC23cをフォーカスエラー信号のレベルが下回るのを待たずに、マイコン13は切替スイッチ19bをG側に切り替える。このとき、対物レンズ3は0層目の合焦点付近とは少し遠い位置にあるが、下降速度及び上昇速度がほぼ速度ゼロの状態なので、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御が行なえる領域にあることになり、0層目の記録面の合焦点に引き込むことができる。
なお、上記の対物レンズ3の上昇,下降によるフォーカスエラー信号の最大値,最小値の現われ方は、前述のように、誤差演算器55(図5)への入力の違いによって全く逆になることもあるが、その場合には、現われ方が逆になるとして考えればよいことはいうまでもない。
また、この実施形態では、アクチュエータに印加する電圧をフォーカスエラー信号によって制御する地点が3点であったが、さらに多くの点を用いて細かく制御してもよい。
また、以上の層間ジャンプ時の各制御はマイコン13によって行なうが、その際の制御のアルゴリズムのPAD図を図13に示す。このアルゴリズムにより、マイコン13で層間ジャンプが安定に制御できる。
以上説明したように、この実施形態では、層間ジャンプを行なう際に対物レンズ3の移動速度を検出して、減速の速度を一定にするように、減速電圧を可変制御し、面振れの影響や層間距離のばらつき,フォーカスエラー信号に加わるノイズ,対物レンズを駆動するアクチュエータの感度ばらつき,層間ジャンプ中の外乱などに拘わらず、層間ジャンプが安定的に行なえ、さらに、層間ジャンプ中のフォーカスエラー信号を監視してジャンプしたい方向と逆方向に移動を始めたのを検出し、ジャンプを開始した層に戻らないようにして層間ジャンプを確実に行なえる光ディスク装置を実現できる。
図14は本発明による光ディスク装置及び層間ジャンプ方法の他の実施形態を示すブロック図であって、16は上昇電圧値、17は下降電圧値、26は脱層防止用上昇電圧、27は脱層防止用下降電圧、28aはスレッシュレベルA、28bはスレッシュレベルB,29はレーザパワーコントロール回路、28cはスレッシュレベルC、28dはスレッシュレベルDであり、図1に対応する部分には同一符号を付けている。
同図において、ターンテーブル2b上にセットされたデータが記録可能なディスク1は、クランパ2aでターンテーブル2bに固定される。スピンドルモータ6が回転することでディスク1は回転する。ディスク1の情報を読み出すために、マイコン13は、レーザパワーコントロール回路29を制御してレーザーを発光させる。また、マイコン13は、データを記録可能なディスク1に記録するのか再生するのかに応じて、レーザパワーコントロール回路29を制御する。
例えば、相変化を用いたデータ記録可能なディスクであるDVD−RAMディスクの場合、記録膜となる合金膜にレーザー光を当て、そこで発生する熱をコントロールすることによって合金膜を結晶状態にしたり、アモルファス状態(非結晶状態)にする相変化現象を利用して情報の記録,消去及び再生を行なう。
記録の際には、高出力のレーザー光を合金膜に照射すると、合金膜が融点以上に熱せられて部分的に溶ける。溶けた後急冷すると、アモルファス状態になる。このアモルファス状態がデータを記録した状態である。一方、記録した部分の消去を行なう際には、記録の際よりは低い高出力のレーザー光を記録した部分、つまりアモルファス状態になった部分に照射すると、アモルファス状態(記録状態)から結晶化温度以上に熱し、冷やすと、結晶化が起こる。このアモルファス状態(記録状態)から結晶状態に戻すのがデータを消去した状態である。一般に、合金膜の結晶化温度は合金膜の融点温度より低いので、消去の際には、記録の際の高出力のレーザー光のパワーより低い高出力のレーザー光のパワーで良い。このように、レーザのパワーをコントロールすることにより、情報を記録したり、消去したりすることが可能である。
また、再生時には、記録時に照射する高出力なレーザーパワーの数十分の一程度の低出力のレーザー光を合金膜に照射し、結晶化した部分とアモルファス状態になった部分との光の反射率が異なることを利用してデータの再生を行なう。つまり、記録可能なディスクに記録及び再生が可能な装置においては、照射するレーザーのパワーを記録・消去・再生の3段階でコントロールすることにより、1つのレーザー光でデータをディスクに記録したり、消去したり、ディスクからデータを再生することが可能である。
上記のように相変化を利用した記録ディスクではレーザーパワーを制御して記録や再生を行なうのが一般的である。
マイコン13から記録用の高出力レーザパワーにするか、再生用の低出力レーザーパワーにするかを指示されたレーザーパワーコントロール回路29は、ピックアップ4内の半導体レ−ザ−に発光制御信号を供給する。
ピックアップ4の半導体レーザー及び光学系の構成例やその動作,信号処理回路7のフォーカス誤差信号検出の構成例やその動作は、先に図5及び図6で説明した通りである。
誤差演算器45(図5)で生成されたフォーカスエラー信号は、図14において、フォーカス制御回路8に供給され、このフォーカス制御回路8において、遅れ補償器や進み補償器などを用いてフォーカスエラー信号のS字曲線におけるゼロクロス地点付近でフィードバック制御を行なうための、対物レンズ3を動かすアクチュエータ(図示せず)のフォーカス制御信号を生成して出力する。この出力信号は開閉スイッチ19dに供給される。この開閉スイッチ19dは、マイコン13の指令により、定常時はON状態になっており、ピックアップ4に駆動信号としてこのフォーカス制御信号を供給する。このフォーカス制御信号によって対物レンズ3はディスク1に対してその垂直方向に制御され、フィードバックループのフォーカス制御を実現して常に合焦点にいる状態を保つ。
一方、信号処理回路7で生成されるトラッキングエラー信号(TE信号)はトラッキング制御回路9に供給され、遅れ補償器や進み補償器などを用いてフィードバック制御を行なうための、対物レンズ3をディスク1に対して水平方向(以下、トラッキング方向という)に動かす駆動信号を生成する。この駆動信号はピックアップ4に供給される。このピックアップ4の内部に供給された駆動信号により、対物レンズ3はトラッキング方向に制御され、フィードバックループのトラッキング制御を実現して、常に、ディスク1の記録面におけるピット上にある状態を保つ。また、このトラッキング制御回路9から出力された駆動信号はスレッド制御回路10にも供給され、遅れ補償器や進み補償器などを用いて、フィードバック制御を行なうための、対物レンズ3のトラッキング方向へのずれに応じてスレッドモータ5を制御する駆動信号を生成し、これをスレッドモータ5に供給し、スレッドモータ5を動かしてピックアップ4自体を移動させる。
また、信号処理回路7では、ディスク1から読み取った回転周期情報をスピンドル制御回路11に供給し、この回転周期情報に基づいて、遅れ補償器や進み補償器などを用い、フィードバック制御を行なうためのスピンドルモータ6を駆動する信号を生成し、スピンドルモータ6に供給する。このとき、レーザパワーコントロール回路29は、データ再生時では、マイコン13からの指示により、低出力のレーザー光を出力するように制御し、データ記録時では、データ記録用もしくはデータ消去用の高出力レーザー光を出力するように制御する。
以上が、定常時において、合焦点上にあってフォーカスやトラッキング,スピンドル,スレッド(ピックアップ4の台車)が制御された記録や再生の状態である。
ここで、ディスク1が上述したように記録可能なディスク(例えば、DVD−RAMディスクなど)であって、片側2層の記録ディスクである場合、現在データを記録している記録層から別の記録層へ合焦点位置を切り換えなければならない場合がある。例えば、0層目の記録層の合焦点上に対物レンズ3の位置があり、現在この記録層でデータを記録しているが、次に、データを記録する部分が1層目の記録層であるために、この1層目の記録層に合焦点を持っていきたい場合、つまりデータを記録中の下の記録層(0層目)から上の記録層(1層目)に合焦点をジャンプさせる場合について図15を用いて説明する。
図15は対物レンズの変位と、フォーカスエラー信号と、このフォーカスエラー信号を微分した信号(以下、微分信号という)、対物レンズ3を駆動するフォーカス駆動信号と、各スイッチの制御信号と、レーザーパワーのコントロール信号とを示しており、縦軸はその大きさを、横軸は時間軸を夫々示している。
まず、これまで定常状態で0層目の記録層の合焦点上にある状態のフォーカス制御回路8から出力されるフォーカス制御信号は開閉スイッチ19dに供給されており、定常状態の場合、開閉スイッチ19dはON状態にあるので、そのまま前値保持回路15に供給される。前値保持回路15では、駆動信号の値が変化するまでは常に現在保持している値が保持されてており、この保持された値をLPF14に供給する。このLPF14は、フォーカス方向に対物レンズ3を駆動する信号の高域成分(ノイズ成分)は除去するが、ディスク1の反り等でディスク1の回転によって生じる面振れのような低域成分は除去しないような周波数帯域を持っており、主にノイズ成分を除去して加算回路24に供給する。定常時には、以上のLPF14までの動作は常に行なわれている。このとき、フィードバックループは閉じられた状態であるので、フォーカス系の制御は面振れに追従し、フォーカス制御信号も面振れに応じて波打つ波形となる。
ここで、0層目でデータを記録中に1層目の記録面の合焦点へ層間ジャンプする際、マイコン13は層間を移動するのに必要な加速電圧値としての一定の上昇電圧値16と、加速した後に合焦点に停止させる為に減速を行なうのに必要な減速電圧値としての下降電圧値17と、層間ジャンプした後に目標とする1層目を行き過ぎて記録層を逸脱するのを防止するために必要な減速電圧値としての脱層防止下降電圧27と、ジャンプを開始した0層目への逆戻りを防止するために必要な加速電圧値としての脱層防止上昇電圧26と、スレッシュレベルA28aと、スレッシュレベルB28bと、スレッシュレベルC28cと、スレッシュレベルD28dと、ゲイン係数20とに初期値を設定する。この初期設定後、マイコン13は層間ジャンプを行なう前にレーザーパワーコントロール回路29を、記録用の高出力のレーザー光から再生用の低出力のレーザー光を出力するように、制御する。このレーザーパワーコントロール回路29は、マイコン13からの指示により、半導体レーザ42の出力を低出力とする。半導体レーザ42の出力が再生用の低出力となることにより、層間ジャンプ時に不用意に他の記録層の記録データや隣接のトラックの記録データを消去もしくは書き換えてしまうことを防止する。半導体レーザ42からの出力が再生用の低出力となった段階で、次のように、層間ジャンプを行なう。
まず、マイコン13は、切替スイッチ19cをB側に、切替スイッチ19bをH側に夫々切り替え、開閉スイッチ19dをOFF状態に切換える。このように、切替スイッチ19b及び開閉スイッチ19dを切り替えることにより、これまで対物レンズ3を制御していたフィードバックループはオープンループとなって制御が切断される。
しかる後、マイコン13は、切替スイッチ19aをE側に切り換えるように指示を出す。これにより、上昇電圧値16は加算器18に供給する。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号と上昇電圧値16とが加算器18で加算され、切替スイッチ19cに供給される。切替スイッチ19cに供給されたこの加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切り替わっているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、この加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を上昇させる。この上昇電圧値16が印加されたことに、より対物レンズ3は上昇を始める。
以下、図15を用いてA点からG点までの区分毎に詳細に説明する。
A点から層間ジャンプを開始して対物レンズ3が上昇を始めると、B点までにフォーカスエラー信号が中点付近から徐々に立ち上がる。このとき、このフォーカスエラー信号の微分信号は、A点−B点間で中点付近から徐々に立ち上がり、最大値を経て徐々に値は減少していき、フォーカスエラー信号の最大値(B点)で中点(ゼロ)となる。さらに、対物レンズ3が上昇を続けると、C点で0層目から1層目への層間領域となるので、フォーカスエラー信号は最大値から徐々に減少して中点(ゼロ)となる。このとき、微分信号は、B点−C点間で中点(ゼロ)から減少し、最小値を経て徐々に増加して中点(ゼロ)となる。C点とD点との間は層間領域であるので、フォーカスエラー信号と微分信号とはともに中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が上昇すると、1層目領域に入るので、E点までにフォーカスエラー信号が中点付近から徐々に立ち下がる。このとき、微分信号はD点−E点間で中点付近から徐々に立ち下がり、最小値を経て徐々に値は増加していき、フォーカスエラー信号の最小点(E点)で中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が上昇を続けると、G点で1層目の合焦点となるので、フォーカスエラー信号は最小値から徐々に増加して中点(ゼロ)となる。このとき、微分信号は、E点−G点間で中点(ゼロ)から増加し、最大値を経て徐々に減少し、中点(ゼロ)となる。1層目の合焦点であるG点では、フォーカスエラー信号と微分信号とがともに中点(ゼロ)となる。
このように、微分信号を用いると、微分信号が中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を検出することにより、簡単にかつ確実にB点の対物レンズ3の位置を検出することができる。フォーカスエラー信号の信号レベルを監視することでも、B点を検出することが出来るが、フォーカスエラー信号の振幅レベルはディスクなどによっても異なり一様ではないので、確実に検出することは難しい。
そこで、微分回路12から出力される微分信号をマイコン13に供給する。マイコン13は、供給される微分信号が中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を監視することにより、対物レンズ3がB点の通過を検出する。
ここで、マイコン13は、最初にB点の通過を検出すると、次に、フォーカスエラー信号がゼロクロスする点(C点)を検出する。さらに対物レンズ3が上昇を続けると、0層目と1層目との層間点の終わりであるD点を通過する。マイコン13は、フォーカスエラー信号のレベルを監視することよってD点を検出すると、上昇を続けていた対物レンズ3を減速させるための電圧値を印可するために、切替スイッチ19cをA側にするように指示を出す。上述したように、信号処理回路7から出力されたフォーカスエラー信号は微分回路12に供給されて微分信号が形成され、この微分信号が乗算回路21に供給される。乗算回路21に供給された微分信号はゲイン係数20が乗算され、その乗算結果が切替スイッチ19cに供給される。このとき、切替スイッチ19cがA側に、切替スイッチ19bがH側に夫々切り替わっているので、微分信号にゲイン係数20を乗算した信号は切替スイッチ19c,19bを経由して対物レンズ3に減速電圧として供給される。
ここで、D点からE点までのフォーカスエラー信号は対物レンズの変位を表わしている(単調減少している)。一般に、変位を時間微分すると、速度を表わすので、このフォーカスエラー信号の微分信号は対物レンズ3の移動速度を表わしている。例えば、それまで印可した上昇電圧が大きく、減速電圧に切り替わるときの対物レンズ3の上昇速度が速い場合には、D点からE点までのフォーカスエラー信号は急峻に立ち下がる。この信号を微分すると、値が大きくなり、つまり減速電圧値が大きくなり、対物レンズ3が上昇する速度を抑制する力も大きくなる。また、逆に、印可する上昇電圧が小さく、減速電圧に切り替わるときの対物レンズの上昇速度が遅い場合には、D点からE点までのフォーカスエラー信号はゆるやかに立ち下がる。この信号を微分すると、値は小さくなり、つまり減速電圧値が小さくな、り対物レンズが上昇する速度を抑制する力は小さくなる。
以上のように、D点からE点までのフォーカスエラー信号の微分信号を用いると、それまでの対物レンズ3の上昇速度に応じた減速電圧値を得ることができ、対物レンズ3の上昇速度を抑制できる。ゲイン係数20はフォーカスエラー信号を微分して得られる減速電圧の振幅レベルを調整するために用いる。
減速電圧を印可された後も、対物レンズ3は上昇電圧16で与えられた加速度で上昇を続ける。
減速電圧を印加した後、マイコン13は、微分回路12から供給される微分信号が再び中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を監視することにより、E点の通過を検出する。マイコン13が微分回路12から供給されたフォーカスエラー信号の微分信号によりE点の通過を検出すると、上昇から下降へ推移しようとしている対物レンズ3を安定に停止させ、1層目の合焦点(図15のG点)に移動させるために、切替スイッチ19cをB側に、切替スイッチ19aをF側に切り替えるように指示を出す。切替スイッチ19aがF側に切り替わることにより、切替スイッチ19aから下降電圧17が出力される。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号とこの下降電圧値17とが加算器18で加算され、切替スイッチ19cに供給される。切替スイッチ19cに供給されたこの加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切替っているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、この加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印可される。対物レンズ3は、この下降電圧17によ、り上昇速度がより抑制されて上昇が止められる。
また、マイコン13は、対物レンズ3がE点を通過後、切替スイッチ19eをN側に切り替えるように指示を出し、スレッショルドレベルD28dを比較回路22に供給させる。比較回路22では、信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号とこのスレッショルドレベルD28dとを比較し、その比較結果をマイコン13に供給する。対物レンズ3が上昇を続けると、F点でスレッショルドレベルD28dをフォーカスエラー信号のレベルが上回るので、比較回路22からその比較検出信号をマイコン13に供給する。マイコン13は、この比較検出信号により、切替スイッチ19bをG側に切り替える。このとき、対物レンズ3は1層目の合焦点付近で速度ゼロの状態にあるので、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御が開始され、1層目の記録面の合焦点に引き込む。
図15に示す例の場合には、上昇電圧16と下降電圧17のバランスが良い場合であって、上昇速度16が1層目の記録面の合焦点あたりで移動速度がゼロとなる場合であり、下降に移行することなく、1層目の合焦点に引き込まれることになる。
1層目の合焦点に引き込んだ後、現在位置をIDなどから検出し、1層目で記録を再開する目標位置まで対物レンズ3をディスク1と水平方向(トラッキング方向)に移動させる。目標位置まで対物レンズ3を移動させると、マイコン13はレーザーパワーコントロール回路29を再生用の低出力のレーザー光から記録用の高出力のレーザー光を出力するように制御する。このレーザーパワーコントロール回路29では、マイコン13からの指示により、半導体レーザ52(図5)の出力を高出力とする。これにより、1層目での記録部分にデータを記録すことができる。
同様に、図16は0層目の記録面の合焦点上に対物レンズ3の位置が有り、これから1層目の記録面に合焦点を持っていきたい場合、つまり下の記録層(0層目)から上の記録層(1層目)に合焦点をジャンプする場合を示すものであって、これにより、減速電圧(下降電圧17)に対して加速電圧(上昇電圧16)が大きすぎて、上の層(1層目)に辿り着いた後も上昇が止まらずに上の記録層の合焦点も通過し、さらに上の記録層でのフィードバックループのフォーカス制御が行なえない位置まで対物レンズ3が上昇してしまう場合について説明する。
図16において、A点からF点までの対物レンズ3への制御は、上記のように、上昇電圧16を最初に印加し、次に、0層目と1層目との中間層を通過した後、信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号を微分回路12で微分した信号(微分信号)を用いた速度制御を行なう。
ここで、図15での説明では、この速度制御により、E点付近で上昇速度が遅くなり、E点通過後の下降電圧値17の印加によって下降方向に移動を始め、G点付近では、上昇速度がゼロとなるとしたが、図16では、E点通過後での上昇速度が速すぎるので、下降電圧値17の印加によっても下降へのブレーキが効かず、上昇速度が遅くならない。さらに、F点でフォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御を行なっても、G点の合焦点付近で上昇速度がゼロにならないため、そのままG点の合焦点を通過して対物レンズ3は上の記録層を逸脱してしまい、フォーカスが引き込めない状態となる。
このため、予めマイコン13は、E点通過を検出後、切替スイッチ19eをN側に切り替えるように指示を出し、スレッショルドレベルD28dを比較回路22に供給する。この比較回路22では、信号処理回路7から供給されたフォーカスエラー信号とスレッショルドレベルD28dとが比較される。対物レンズ3が上昇を続けると、F点でスレッショルドレベルD28dをフォーカスエラー信号のレベルが上回るので、比較回路22からその比較検出信号がマイコン13に供給される。マイコン13は、この比較検出信号により、切替スイッチ19bをG側に切り替える。この段階で、フォーカスエラーのフィードバックループのフォーカス制御となる。
さらに、F点通過後、マイコン13は切替スイッチ19eをK側に切り替えるように指示を出し、スレッショルドレベルA28aの値を比較回路22に供給させる。この比較回路22では、信号処理回路7から供給したフォーカスエラー信号とスレッショルドレベルA28aとを比較し、その比較結果をマイコン13に供給する。
このとき、フィードバックループのフォーカス制御の状態であるが、上昇速度が抑制されないため、対物レンズ3が上昇を続けると、G点を通過し、H点でスレッショルドレベルA28aをフォーカスエラー信号のレベルが上回ることになり、これにより、比較回路22はその比較検出信号をマイコン13に供給する。マイコン13は、この比較検出信号によってH点通過を検出すると、切替スイッチ19bをH側に切り替え、開閉スイッチ19dをOFF状態に切換える。これら切替スイッチ19b及び開閉スイッチ19dの切替えにより、これまで対物レンズ3を制御していたフィードバックループは再びオープンループとなる。
このとき、マイコン13は、切替スイッチ19cをB側に、切替スイッチ19aをF側にするように指示を出す。切替スイッチ19aがD側に切り替わることにより、切替スイッチ19aは脱層防止下降電圧27を出力する。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号とこの脱層防止降下電圧値27とが加算器18で加算され、切替スイッチ19cに供給される。切替スイッチ19cに供給されたこの加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切替っているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、この加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印可される。これにより、上昇を続けていた対物レンズ3は、下降電圧により、その上昇速度がゼロとなり、上昇を止め下降を始める。
対物レンズ3が下降を始めることにより、上の記録層を逸脱することを防止することができる。対物レンズ3が下降を始めると、マイコン13は切替スイッチ19eをM側に切り替えるように指示を出し、これにより、スレッショルドレベルC28cが比較回路22に供給される。この比較回路22では、信号処理回路7からのフォーカスエラー信号とこのスレッショルドレベルC28cとが比較され、その比較結果をマイコン13に供給する。対物レンズ3が下降を続けると、I点でスレッショルドレベルC28cをフォーカスエラー信号のレベルが下回ることになり、これにより、比較回路22からその比較検出信号がマイコン13に供給される。マイコン13は、この比較検出信号により、切替スイッチ19bをG側に切り替える。この段階で、フォーカスエラーのフィードバックループのフォーカス制御となる。このとき、対物レンズ3は1層目の合焦点付近となって、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御が行なえる領域におり、さらに、対物レンズ3の下降速度はフィードバックループのフォーカス制御を行なうことができる程度の速度であるので、1層目の記録面の合焦点に引き込むことができる。
1層目の合焦点に引き込んだ後、現在位置をIDなどから検出し、1層目で記録を再開する目標位置まで対物レンズ3をディスク1と水平方向(トラッキング方向)に移動させる。この目標位置まで対物レンズ3を移動させると、マイコン13は、レーザーパワーコントロール回路29を再生用の低出力のレーザー光から記録用の高出力のレーザー光を出力するように制御する。このレーザーパワーコントロール回路29では、マイコン13からの指示により、半導体レーザ52(図5)の出力を高出力とする。これにより、1層目での記録部分にデータを記録することができる。
同様に、図17は1層目の記録層の合焦点上に対物レンズ3の位置があり、この記録層でデータを記録しているが、次にデータを記録する部分が0層目の記録層の部分であるために、0層目の記録層に合焦点を持っていきたい場合、つまり、データを記録中に、上の記録層(1層目)から下の記録層(0層目)に合焦点をジャンプする場合を示すものである。そして、図17は、対物レンズ3の変位と、フォーカスエラー信号と、このフォーカスエラー信号を微分した信号(以下、微分信号という)と、対物レンズ3を駆動するフォーカス駆動信号と、各スイッチの制御信号と、レーザーパワーのコントロール信号とを示しており、縦軸はその大きさを、横軸は時間軸を夫々示している。
まず、1層目の記録層の合焦点上でフィードバックループによるフォーカス制御が行なわれている定常状態にあるものとする。
ここで、1層目でデータの記録中に0層目の記録面の合焦点へ層間ジャンプする際、マイコン13は、層間を移動するのに必要な加速電圧値としての下降電圧値17と、加速した後合焦点に停止させる為に減速を行なうのに必要な減速電圧値としての上昇電圧値16と、層間ジャンプした後目標とする記録層を行き過ぎてこの記録層を逸脱するのを防止するために必要な減速電圧値としての脱層防止下降電圧27と、ジャンプを開始した記録層(ここでは、0層目)への逆戻りを防止するために必要な加速電圧値としての脱層防止上昇電圧26と、スレッシュレベルA28とa、スレッシュレベルB28bと、スレッシュレベルC28cと、スレッシュレベルD28dと、ゲイン係数20とに初期値を設定する。
初期設定した後、マイコン13は、層間ジャンプを行なう前に、レーザーパワーコントロール回路29を記録用の高出力のレーザー光から再生用の低出力のレーザー光を出力するように制御する。レーザーパワーコントロール回路29では、マイコン13からのこの指示により、半導体レーザ52(図5)の出力を低出力とする。半導体レーザ52の出力が再生用の低出力となることにより、層間ジャンプ時に不用意に他の記録層の記録データや隣接のトラックの記録データを消去もしくは書き換えてしまうことを防止する。
この半導体レーザ52からの出力が再生用の低出力となった段階で、層間ジャンプを開始する。まず、切替スイッチ19cをB側に、切替スイッチ19bをH側に夫々切り替え、開閉スイッチ19dをOFF状態に切り換える。切替スイッチ19b及び開閉スイッチ19dのかかる切替えにより、これまで対物レンズ3を制御していたフィードバックループはオープンループとなり、フォーカス制御が切断される。
そして、マイコン13は、切替スイッチ19aをF側に切り換えるように指示を出す。これにより、下降電圧値17が加算器18に供給される。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号とこの下降電圧値17とが加算器18で加算されて切替スイッチ19cに供給する。切替スイッチ19cに供給されたこの加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切り替わっているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bはH側に切り替わっているため、加算信号はこの切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を下降させる。下降電圧値17が印加されたことにより、対物レンズ3は下降を始める。
以下、図17を用いて、A点からG点までの区分毎に詳細に説明する。
A点から層間ジャンプを開始し、対物レンズ3が下降を始めると、B点までにフォーカスエラー信号が中点付近から徐々に立ち下がる。これを微分した信号(フォーカスエラー微分信号。以下、単に微分信号という)は、A点−B点間で、中点付近から徐々に立ち下がり、最小値を経て徐々に値は増加していき、フォーカスエラー信号の最小値(B点)で中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が上昇を続けると、C点で1層目から0層目への層間領域となるので、フォーカスエラー信号は最小値から徐々に減少し中点(ゼロ)となる。これの微分信号は、B点−C点間で中点(ゼロ)から増加し、最大値を経て徐々に減少し、中点(ゼロ)となる。C点とD点との間は層間領域であるので、フォーカスエラー信号と微分信号とはともに中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が下降すると、0層目領域に入るので、E点までにフォーカスエラー信号が中点付近から徐々に立ち上がる。これの微分信号は、D点−E点間で中点付近から徐々に立ち上がり、最大値値を経て徐々に減少していき、フォーカスエラー信号の最大点(E点)で中点(ゼロ)となる。さらに対物レンズ3が下降を続けると、G点で0層目の合焦点となるので、フォーカスエラー信号は最大値から徐々に減少して中点(ゼロ)となる。これの微分信号は、E点−G点間で中点(ゼロ)から減少し、最小値を経て徐々に増加し、中点(ゼロ)となる。0層目の合焦点であるG点では、フォーカスエラー信号と微分信号とがともに中点(ゼロ)となる。
このように、微分信号を用いると、微分信号が中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を検出することにより、簡単にかつ確実にB点の対物レンズ3の位置を検出することができる。フォーカスエラー信号の信号レベルを監視することでも、B点を検出することが出来るが、フォーカスエラー信号の振幅レベルは、ディスクなどによっても異なり一様ではないので、確実に検出することは難しい。
微分回路12から出力される微分信号をマイコン13に供給する。マイコン13では、供給される微分信号が中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を監視することにより、B点の通過を検出する。ここで、マイコン13は、最初にB点の通過を検出すると、次に、フォーカスエラー信号がゼロクロスする点(C点)を検出する。さらに対物レンズ3が下降を続けると、1層目と0層目との中間点の終わりであるD点を通過する。マイコン13は、フォーカスエラー信号のレベルを監視してこのD点を検出すると、下降を続けていた対物レンズ3を減速させるための電圧値を印可するために、切替スイッチ19cをA側にするように指示を出す。
一方、信号処理回路7から出力されたフォーカスエラー信号は微分回路12に供給され、その微分信号が得られる。この微分信号は乗算回路21に供給され、ゲイン係数20と乗算される。この乗算結果は切替スイッチ19cに供給するが、このとき、切替スイッチ19cはA側に切り替わっているので、そのまま切替スイッチ19cを経由して切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bはH側に切り替わっているので、微分信号にゲイン係数20を乗算した信号は、切替スイッチ19bを経由して対物レンズ3に減速電圧として供給する。
D点からE点までのフォーカスエラー信号は、対物レンズ3の変位を表わしているので(単調増加している)、前述したように、このフォーカスエラー信号の微分信号は対物レンズ3の移動速度を表わしている。例えば、それまで印加した下降電圧が大きく、減速電圧に切り替わるときの対物レンズ3の下降速度が速い場合には、D点からE点までのフォーカスエラー信号は急峻に立ち上がる。このフォーカスエラー信号を微分すると、その値が大きくなり、つまり減速電圧値が大きくなり、対物レンズ3が下降する速度を抑制する力も大きくなる。また、逆に、印加した下降電圧が小さく、減速電圧に切り替わるときの対物レンズ3の下降速度が遅い場合には、D点からE点までのフォーカスエラー信号はゆるやかに立ち上がる。このフォーカスエラー信号を微分すると、その値は小さくなり、つまり減速電圧値が小さくなり、対物レンズ3が下降する速度を抑制する力は小さくなる。
以上のように、D点からE点までのフォーカスエラー信号の微分信号を用いると、それまでの対物レンズ3の下降速度に応じた減速電圧値を得ることができ、対物レンズ3の上昇速度を抑制できる。ゲイン係数20は、フォーカスエラー信号を微分して得られる減速電圧(微分信号)の振幅レベルを調整するために用いる。
減速電圧を印加された後も、対物レンズ3は、下降電圧17で与えられた加速度のため、下降を続ける。減速電圧を印加した後、マイコン13は、微分回路12から供給される微分信号が再び中点(ゼロ)になる時点(ゼロクロス点)を監視することにより、E点の通過を検出する。マイコン13は、このE点の通過を検出すると、下降から上昇へ推移しようとしている対物レンズ3を安定に停止させ、1層目の合焦点(図17のG点)に移動させるために、切替スイッチ19cをB側に、切替スイッチ19aをE側にするように指示を出す。これにより、切替スイッチ19aがE側に切り替わるので、切替スイッチ19aは上昇電圧16を出力する。
そこで、LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号とこの上昇電圧値16とが加算器18で加算されて、切替スイッチ19cに供給される。この加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切り替わっているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。このとき、切替スイッチ19bがH側に切り替わっているため、加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印加される。これにより、対物レンズ3は上昇電圧16によって下降速度がより抑制され、下降を止める。
また、マイコン13は、E点の通過を検出後、切替スイッチ19eをM側に切り替えるように指示を出し、スレッショルドレベルC28cを比較回路22に供給する。この比較回路22では、信号処理回路7から供給したフォーカスエラー信号とスレッショルドレベルC28cとを比較し、その比較結果をマイコン13に供給する。対物レンズ3が下降を続けると、F点でスレッショルドレベルC28cをフォーカスエラー信号のレベルが下回るので、比較回路22から比較検出信号をマイコン13に供給する。マイコン13は、この比較検出信号により、切替スイッチ19bをG側に切り替える。このとき、対物レンズ3は0層目の合焦点付近で速度ゼロの状態なので、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御が行なわれ、0層目の記録面の合焦点に引き込まれる。
図17は、下降電圧と上昇電圧のバランスがよい場合を示しており、下降速度が0層目の記録面の合焦点あたりで移動速度がゼロとなる場合であって、上昇に移行することなく、0層目の合焦点に引き込むことになる。
0層目の合焦点に引き込んだ後、現在位置をIDなどから検出し、0層目で記録を再開する目標位置まで対物レンズ3をディスク1の水平方向(トラッキング方向)に移動させる。この目標位置まで対物レンズ3を移動させると、マイコン13はレーザーパワーコントロール回路29を再生用の低出力のレーザー光から記録用の高出力のレーザー光を出力するように制御する。このレーザーパワーコントロール回路29では、マイコン13からの指示により、半導体レーザ52(図5)の出力を高出力とする。これにより、0層目での記録部分にデータを記録すことができる。
同様に、図18は1層目の記録面の合焦点上に対物レンズ3の位置があり、これから0層目の記録面に合焦点を持っていきたい場合、つまり上の記録層(1層目)から下の記録層(0層目)に合焦点をジャンプする場合を示すものであって、これにより、減速電圧(上昇電圧16)に対して加速電圧(下降電圧17)が大きすぎて、下の記録層(0層目)に辿り着いた後も、下降が止まらずに、下の記録層の合焦点も通過し、さらに下の記録層でのフィードバックループのフォーカス制御が行なえない位置まで対物レンズ3が下降してしまう場合について説明する。
図18において、A点からF点までの対物レンズ3への制御は、上記のように、下降電圧17を最初に印加し、次に、1層目と0層目との中間層を通過した後、信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号を微分回路12で微分した信号を用いた速度制御を行なう。
ここで、図17での説明では、この速度制御により、E点付近で下降速度が遅くなり、E点通過後の上昇電圧値16の印加により、上昇方向に移動を始め、G点付近では、下降速度がゼロとなるとしたが、この図18では、E点通過後での下降速度が速すぎるので、上昇電圧値16の印加によっても、上昇へのブレーキが効かず、下降速度が遅くならない。さらに、F点でフォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御を行なっても、G点の合焦点付近で下降速度がゼロにならないため、そのままG点の合焦点を通過し、対物レンズ3は下の記録層を逸脱してしまい、フォーカスが引き込めない状態となる。
このため、予めマイコン13は、E点の通過を検出後、切替スイッチ19eをM側に切り替えるように指示を出し、スレッショルドレベルC28cを比較回路22に供給する。この比較回路22では、信号処理回路7から供給したフォーカスエラー信号とこのスレッショルドレベルC28cとを比較する。対物レンズ3が下降を続けると、F点でスレッショルドレベルC28cをフォーカスエラー信号のレベルが下回るので、比較回路22からその比較検出信号をマイコン13に供給する。マイコン13は、この比較検出信号により、切替スイッチ19bをG側に切り替える。この段階で、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御となる。
さらに、F点通過の検出後に、マイコン13は切替スイッチ19eをL側に切り替えるように指示を出し、スレッショルドレベルB28bを比較回路22に供給する。この比較回路22では、信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号とスレッショルドレベルB28bとを比較し、その比較結果をマイコン13に供給する。このとき、フィードバックループのフォーカス制御の状態であるが、下降速度が抑制されないため、対物レンズ3が下降を続けると、G点を通過し、H点でスレッショルドレベルB28bをフォーカスエラー信号のレベルが下回ることになると、比較回路22はその比較検出信号をマイコン13に供給する。マイコン13は、この比較検出信号により、H点の通過後、切替スイッチ19bをH側に、開閉スイッチ19dをOFF状態に夫々切り換える。切替スイッチ19b及び開閉スイッチ19dのかかる切替えにより、これまで対物レンズ3を制御していたフィードバックループは再びオープンループとなる。
これとともに、マイコン13は、切替スイッチ19cをB側に、切替スイッチ19aをC側に夫々するように指示を出す。そこで、切替スイッチ19aがC側に切り替わると、切替スイッチ19aから脱層防止上昇電圧26が出力される。LPF14で高域ノイズ成分を除去した信号とこの脱層防止上昇電圧値26とが加算器18で加算され、切替スイッチ19cに供給される。この加算信号は、このとき、切替スイッチ19cがB側に切り替わっているので、そのまま切替スイッチ19bに供給される。また、このとき、切替スイッチ19bがB側に切り替わっているため、この加算信号は切替スイッチ19bを経由してピックアップ4に供給され、対物レンズ3を駆動するアクチュエータに印加される。これにより、下降を続けていた対物レンズ3は、上昇電圧26により、下降速度がゼロとなり、下降を止めて上昇を始める。この上昇を始めることにより、下の記録層を逸脱することを防止することができる。
対物レンズ3が上昇を始めると、マイコン13は切替スイッチ19eをN側に切り替えるように指示を出し、これにより、スレッショルドレベルD28dを比較回路22に供給する。この比較回路22では、信号処理回路7から供給されるフォーカスエラー信号とこのスレッショルドレベルD28dとを比較し、その比較結果をマイコン13に供給する。
対物レンズ3が上昇を続けると、I点でスレッショルドレベルD28dをフォーカスエラー信号のレベルが上回るので、比較回路22からその比較検出信号をマイコン13に供給する。マイコン13は、この比較検出信号により、切替スイッチ19bをG側に切り替える。この段階で、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御となる。このとき、対物レンズ3は0層目の合焦点付近となり、フォーカスエラー信号によるフィードバックループのフォーカス制御が行なえる領域にあり、さらに、対物レンズ3の上昇速度は、フィードバックループのフォーカス制御を行なうことができる程度の速度であるので、0層目の記録面の合焦点に引き込むことができる。
0層目の合焦点に引き込んだ後、現在位置をIDなどから検出し、0層目で記録を再開する目標位置まで対物レンズ3をディスク1に水平な方向(トラッキング方向)に移動させる。この目標位置まで対物レンズ3を移動させると、マイコン13はレーザーパワーコントロール回路29を再生用の低出力のレーザー光から記録用の高出力のレーザー光を出力するように制御する。このレーザーパワーコントロール回路29では、マイコン13からの指示により、半導体レーザ52(図5)の出力を高出力とする。これにより、1層目での記録部分にデータを記録することができる。
なお、上記の対物レンズ3の上昇,下降によるフォーカスエラー信号の最大値や最小値の現われ方は、前述のように、誤差演算器55(図5)への入力の違いよって全く逆になることもあるが、その場合には、現われ方が逆になるとして考えればよいことはいうまでもない。
上記説明してきたデータを記録中に層間ジャンプが必要な場合とは、連続してデータを記録中に次にデータを記録するアドレスの位置が層間にまたがる場合である。この層間ジャンプを開始するタイミングは、データが記録されている領域が終了した後のデータの記録に関係のないアドレスが書き込まれている部分で行ない、目標のアドレスに移動すれば、連続してデータの記録を行なうことができる。
以上のデータの記録中の層間ジャンプ時の各制御は、マイコン13によって行なわれるが、その際の制御のアルゴリズムの流れを図19に示す。
同図において、記録中の層間ジャンプ開始にあたり、まず、最初に、光ディスク1に記録されている物理的なアドレス情報を取得して、対物レンズ3の現在アドレスを確認する(ステップ100)。そして、次にデータの記録を行なう記録層が、現在の層と同一であるかどうかを判断する(ステップ101)。このステップ101において、次にデータの記録を行なう記録層が現在の層と同一であると判断された場合には、層間ジャンプを行なう必要はないので、処理は終了する。一方、ステップ101において、次にデータを記録する記録層が異なると判断された場合には、層間ジャンプを行なうが、層間ジャンプを始めるにあたって、レーザーパワーを再生用の低出力にする。この段階で記録は中断される(ステップ102)。レーザーパワーが再生用の低出力になった段階で、上記の層間ジャンプ処理を行なう(ステップ103)。
この層間ジャンプ処理を行なった後、フォーカスサーボ処理を行なってフォーカスを目標の記録層に引き込ませる(ステップ104)。このとき、上記の層逸脱検出処理を行なってフィードバックループのフォーカス制御ではフォーカスが引き込めず、この記録層を逸脱してしまうと判断すると(ステップ105)、層逸脱防止処理を行なう(ステップ106)。そして、フォーカスサーボ処理を行なって(ステップ107)、フォーカスを目標の記録層に再度引き込ませる。そして、現在位置を取得し(ステップ108)、次にデータの記録を行なう記録層へ正常に層間ジャンプできたかを確認する(ステップ109)。この確認は層間ジャンプ中及び層間ジャンプ後のフォーカスエラー信号やその他サーボ関連信号の監視、または、ステップ108で取得した層間ジャンプ後の現在アドレスから判断できる。
次に、データの記録を行なう記録層への層間ジャンプが成功した場合には、データの記録を再開する目標位置まで対物レンズ3をディスクに水平な方向(トラッキング方向)に移動させる(ステップ110)。そして、次にデータを記録する位置まで対物レンズ3を移動した後、111においてレーザーパワーを記録用の高出力にして、データの記録を再開する(ステップ111)。
また、層間ジャンプが失敗したと判断された場合には(ステップ109)、サーボの復帰処理を行なう(ステップ112)。一般に、層間ジャンプによって目標とする記録層に到達できなかった場合には、フォーカス制御をはじめとして、その他のサーボ制御もはずれた状態に陥っているため、必要に応じてフォーカス制御の再引き込み処理などのサーボ復帰処理を行なう。フォーカス制御の引き込みなどその他のサーボ制御が復帰した後、ステップ100の処理から再度実行する。かかるアルゴリズムにより、マイコン13で記録層間ジャンプが安定に制御できる。
以上説明したように、この実施形態では、データを記録可能な記録層が複数あるようなディスクにおいて、記録中に層間ジャンプを行なう際、レーザパワーを制御して記録できないパワーにすることにより、既に記録がなされた部分の誤消去を防止するようにして、記録時にも、層間ジャンプが行なえるようにし、さらに、設定するスレッシュレベルをフォーカスエラー信号のレベルが超えることを監視することにより、層間ジャンプ終了時に目標とする記録層を逸脱するのを検出して、この記録層を逸脱しないようにアクチュエータを制御することにより、記録時にも、層間ジャンプが安定的に行なえるものである。