JP2011027218A - 圧力容器の製造方法および圧力容器 - Google Patents
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【課題】物理的強度を向上させた圧力容器を簡便に作製する。
【解決手段】圧力容器の製造方法は、中空形状のライナを作製するライナ作製工程S104と、ライナに水分を吸収させる水分吸収工程S106と、水分を吸収させたライナの外周部分に、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維を巻きつけるフィラメントワインディング工程S108と、熱硬化性樹脂を硬化させ、ライナを被覆する繊維強化樹脂層を形成する硬化工程S110と、を含む。
【選択図】図3
【解決手段】圧力容器の製造方法は、中空形状のライナを作製するライナ作製工程S104と、ライナに水分を吸収させる水分吸収工程S106と、水分を吸収させたライナの外周部分に、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維を巻きつけるフィラメントワインディング工程S108と、熱硬化性樹脂を硬化させ、ライナを被覆する繊維強化樹脂層を形成する硬化工程S110と、を含む。
【選択図】図3
Description
本発明は、圧力容器の製造方法および圧力容器に関する。
酸素や窒素など、常温常圧状態における容積の大きな気体を高密度、小容量にて貯蔵するための容器として、所定の圧力により圧縮させて液体または気体として貯蔵する、圧力容器が使用されている。従来、耐圧性を有する鋼鉄製その他の金属製圧力容器が使用されてきたが、近年、天然ガスや水素ガスなどを貯蔵した圧力容器を車両などの移動体に搭載し、燃料として使用する技術に適用するため、圧力容器に対して要求される性能として、高密度化可能な耐圧性、耐久性はもちろんのこと、容器の軽量化も重要な課題となっていた。
一方、例えば炭素繊維強化樹脂(CFRP)などの繊維強化樹脂(FRP)を用いた圧力容器が知られている。FRP製の圧力容器は一般に、金属製圧力容器よりも軽量であるため、車両などの移動体への搭載には有利であり、また、水素用圧力容器として使用する場合における、従来の鋼鉄製容器の課題であった水素脆化その他の懸念も少ないため、特に注目されている。
特許文献1には、複数のライナ構成部材をレーザ照射により接合し、また、場合によってはレーザ照射の前に予備加熱して、作製したライナを用いて高圧ガス容器を作製することについて記載されている。
ところで、ライナを構成する樹脂にエラストマーを適度に混合したものを用いて、圧力容器を作製すると、物理的強度、特に耐衝撃性が向上することが知られている。適切なエラストマーの混合により、ライナの伸縮性、柔軟性が高まり、圧力容器としての耐衝撃性が向上するものと考えられている。
しかしながら、エラストマーの混合は、高コスト化に繋がるばかりでなく、エラストマーの過度な混合は、ガスバリア性の低下に繋がり得る。このため、圧力容器に用いるライナの作製において、エラストマーの配合バランスを調整して、所望の耐衝撃性とガスバリア性とを同時に満足させることが困難な場合があり得た。
本発明は、物理的強度を向上させた圧力容器を簡便に作製することを目的とする。
本発明の構成は以下のとおりである。
(1)中空形状のライナを作製するライナ作製工程と、前記ライナに水分を吸収させる水分吸収工程と、水分を吸収させた前記ライナの外周部分に、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維を巻きつけるフィラメントワインディング工程と、前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ライナを被覆する繊維強化樹脂層を形成する硬化工程と、を含む、圧力容器の製造方法。
(2)上記(1)に記載の製造方法において、前記ライナが、ナイロン樹脂を含む複数のライナ構成部材を含み、前記ライナ作製工程が、複数のライナ構成部材を溶着する工程を含む、圧力容器の製造方法。
(3)中空形状のライナと、前記ライナの外周部分を被覆する繊維強化樹脂層と、を備える圧力容器であって、前記繊維強化樹脂層が、水分を吸収させた前記ライナの外周部分に、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維を巻きつけた後、前記熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成される、圧力容器。
(4)上記(3)に記載の圧力容器において、前記ライナが含有する水分量が、2質量%以上である、圧力容器。
物理的強度を向上させた圧力容器を簡便に作製することができる。
以下、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態における圧力容器の構成の概略を説明するための図である。図1に示す圧力容器100は、中空形状のライナ10と、ライナ10の外周部分を被覆する繊維強化樹脂層(FRP層)12とを備え、構成されている。圧力容器100にはまた、少なくとも一つの口金18を有する。口金18には、図示しないバルブが接続可能に構成されており、このバルブ操作により圧力容器100の内外への高圧流体の流通を調節することができる。図1に示す圧力容器100は、例えば図3に示すような方法により作製することができる。
図2は、図1に示すA−A’断面の構成の概略を示す拡大図である。図2に示すように、繊維強化樹脂層12は、ライナ10の外周表面に複数回および/または複数本巻きつけられた繊維14の間を熱硬化性樹脂16が埋めるような構成を有している。このとき、例えば、ライナ10の外周部分に対する繊維14の太さや巻き数を調整し、繊維強化樹脂層12の厚みを調整することにより、圧力容器100の設計圧力を制御することができる。繊維強化樹脂層12は、図1に示すようにライナ10の全体にわたり被覆するように形成されても良く、他の実施の形態として、ライナ10の一部、例えば、ライナ10の断面径の大きな胴部分にのみ形成されても良い。
図1〜3を参照して、圧力容器100の製造方法の一例について説明する。まず、S100において、複数のライナ構成部材を作製する。ライナ10は一般に、例えば略円筒状、略椀形状などのライナ構成部材を複数作製し、これを組み合わせることにより、所望の形状を有するライナ10を作製することができるが、成形コスト、耐久性等の観点から、作製する圧力容器100を二分割したものに対応する、二つの略同一形状のライナ構成部材を作製し、これを組み合わせてライナ10を形成することが好適である。実施の形態において、ライナ構成部材は、例えば、6−ナイロン(ナイロン6とも称する)、6,6−ナイロン(ナイロン66とも称する)などのナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂を、金型内に射出成形することにより作製することができるが、成形方法についてはこれに限定されるものではなく、例えばブロー成形など、公知のあらゆる成形方法を採用することができる。
本発明の実施の形態において、ライナ構成部材を作製する熱可塑性樹脂に対し、エラストマーをさらに配合させることができる。エラストマーとしては例えば、エチレンオレフィン系またはウレタン系など、従来のライナに配合可能な公知のものを適用することができる。実施の形態において、エラストマーの配合量は例えば、熱可塑性樹脂に対し20質量%以下とすることができる。エラストマーの適度な配合は、耐衝撃性などの物理的性質の向上に寄与するが、エラストマーの配合量が20質量%を超えると、ガスの種類によってはガスバリア性に不具合が生じる場合がある。
次いで、S102において、作製したライナ構成部材をアニールする。ライナ構成部材のアニールは、一般に、成形寸法の安定および/または応力緩和を目的として行われる。また、図1に示す口金18部分の固定に利用することもできる。また、他の実施の形態としては、ヒータなどの熱源を利用した加熱法や、遠赤外線法、誘導加熱法、温風法その他の公知の方法によりアニールすることもできる。
次いで、S104において、アニールした各ライナ構成部材を溶着し、ライナ10を作製する。各ライナ構成部材の溶着には例えば、所定の出力条件に設定したレーザ装置によるレーザ溶着が好適である。他の実施の形態として、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着などを適用して溶着することも可能である。なお、S102において熱水法によりアニールを実施した場合など、ライナ構成部材の接合面が溶着に適した状態でない場合には、予め送風などによるライナ構成部材表面の乾燥など、適切な前工程を実施しても良い。
このようにして作製したライナ10に水分を吸収させる(S106)。ナイロン樹脂などの、ある程度の吸水性を有する熱可塑性樹脂を含むライナ10に水分を吸収させることにより、柔軟性が向上するため、圧力容器100としての耐衝撃性を向上させることができる。実施の形態において、ライナ10へ吸収させる水分量は、少なくとも1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上である。ライナ10へ吸収させる水分量が2質量%以上の場合には、圧力容器100の耐衝撃性を向上させるためのエラストマーを配合した場合と同等程度の耐衝撃性が期待できる。また、ライナ10へ吸収させる水分量が1質量%未満の場合には、水分の吸収に伴う物性の変化が期待できない。一方、ライナ10へ吸収させる水分量の上限は無いが、所要時間が長くなるため、概ね4質量%程度までに留めることが好ましい。
図4は、図1に示すライナ10を構成する熱可塑性樹脂に対して水分を吸収させるに際し、吸収させる水分の温度と吸収速度との関係について例示したグラフである。熱可塑性樹脂として、ナイロン樹脂(6−ナイロン)のサンプルチップ(1cm×8cm)を用い、各条件下にて放置したサンプルの質量変化を測定し、比較したものである。図中、aは室温23℃、相対湿度50%、bは室温30℃、相対湿度80%の恒温恒湿条件下にそれぞれ放置したものである。一方、c〜eは、水温23℃、50℃、80℃の水中にそれぞれ浸漬させて放置したものである。
図4を参照すると、ライナ10に空気中の水蒸気を吸収させるには時間がかかり過ぎ、また吸収量にも限界があると考えられる(例えば、a,b)。一方、ライナ10を水中に浸漬させることにより、例えば2質量%以上の水分吸収が可能となるが、水温の上昇とともに、吸収速度が上昇する(例えば、c〜e)。作業時間短縮の観点から、80℃以上の水中にて浸漬させることが好ましい。なお、図4に示す試験結果はいずれも、大気圧条件下で実施したものである。圧力を上昇させるに伴い、水分の吸収速度は短縮すると考えられるが、ライナ10の変形が懸念されるため、ライナ10への水分の吸収は、0.5〜2.0MPa程度の圧力下で行うことが好ましい。
次に、S108において、フィラメントワインディングを行なう。より具体的には、ライナ10の外周部分に、熱硬化性樹脂16を含浸させた繊維14を巻きつける(図2参照のこと)。繊維14に対する熱硬化性樹脂16の含浸には、例えば浸漬法など、いかなる方法を用いることも可能であり、特に限定されない。
本実施の形態において、図2に示す繊維14の材料としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、ケブラ繊維などを用いることが可能であり、特に比強度、比剛性の観点から炭素繊維が好適に用いられる。より具体的には、T800繊維(東レ社製)、テナックスIM600(商品名)(東邦テナックス社製)などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、繊維14の機械的強度として、引張り強度が1GPa程度のものが好ましいが、これに限定されない。
また、繊維14の線径は、使用する材料の強度に応じて適宜選択することが可能である。具体的には、5〜10μm程度の線径(直径)のものが好適に用いられるが、これに限定されるものではない。
一方、図2に示すように、繊維14に含浸される熱硬化性樹脂16として、いかなる熱硬化性樹脂材料を用いることができ、要求される性能に応じて適宜選択することが可能である。具体的には、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などを使用することができるが、これに限定されない。
このようにして得られた、熱硬化性樹脂16を含浸させた繊維14をライナ10の外周部分に、圧力容器100の設計圧力に応じて数回から数十回程度巻きつける。
次いで、S110において、この熱硬化性樹脂16を硬化させ、ライナ10を被覆する繊維強化樹脂層12を形成する(図2参照のこと)。熱硬化性樹脂16の硬化条件は、用いる熱硬化性樹脂材料に応じて、適宜設定することが可能であるが、例えば100〜150℃程度で硬化させることができる。このとき、ライナ10を形成する樹脂の内部に浸透し、吸収された水分は、上述した熱可塑性樹脂の硬化温度程度ではほとんど蒸発しない。
本発明の実施の形態において、ライナ10が含有する水分量は、S106の前後において変化したライナ10の質量を測定することにより非破壊検査にて算出することができる。また、圧力容器100を解体してライナ10の一部を取り出し、これをカールフィッシャー水分計などの水分測定装置を用いて測定することもできる。
本発明の実施の形態において、図1に示す口金18は、図2に示すS100の各ライナ構成部材の作製と同時に一体成形しても良く、S102のアニール工程の前後に、作製したライナ構成部材の所定の位置に取付けることもできる。さらに、場合によっては、S104のライナ10の作製後に取付けても良い。
本発明は、移動体に搭載する水素タンクなど、あらゆる圧力容器において利用することが可能である。
10 ライナ、12 繊維強化樹脂層、14 繊維、16 熱硬化性樹脂、18 口金、100 圧力容器。
Claims (4)
- 中空形状のライナを作製するライナ作製工程と、
前記ライナに水分を吸収させる水分吸収工程と、
水分を吸収させた前記ライナの外周部分に、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維を巻きつけるフィラメントワインディング工程と、
前記熱硬化性樹脂を硬化させ、前記ライナを被覆する繊維強化樹脂層を形成する硬化工程と、
を含むことを特徴とする圧力容器の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法において、
前記ライナが、ナイロン樹脂を含む複数のライナ構成部材を含み、
前記ライナ作製工程が、複数のライナ構成部材を溶着する工程を含むことを特徴とする圧力容器の製造方法。 - 中空形状のライナと、前記ライナの外周部分を被覆する繊維強化樹脂層と、を備える圧力容器であって、
前記繊維強化樹脂層が、水分を吸収させた前記ライナの外周部分に、熱硬化性樹脂を含浸させた繊維を巻きつけた後、前記熱硬化性樹脂を硬化させることにより形成されることを特徴とする圧力容器。 - 請求項3に記載の圧力容器において、
前記ライナが含有する水分量が、2質量%以上であることを特徴とする圧力容器。
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