図1は、本発明が前提とする第1実施形態の摩擦撹拌装置20を示す斜視図である。図2は、回転ツール30と被接合物33とを示す斜視図である。第1実施形態の摩擦撹拌装置20(以下、接合装置20と称する)は、突き合わされる2つの被接合部材31,32をそれらの境界線35に沿って連続接合する装置である。たとえば接合装置20は、アルミ合金から成る複数の被接合部材31,32を接合することで、鉄道車両、航空機、船舶、自動車または棟梁などの構造物の一部を構成することができる。
接合装置20は、2つの被接合部材31,32が突き合わされて構成される被接合物33を支持する。接合装置20は、回転ツール30を着脱可能に保持し、保持する回転ツール30を、その軸線まわりに回転させながら突き合わされた2つの被接合部材31,32の境界部分34に押付ける。回転ツール30は、先端部が被接合物33に摺接し、摩擦熱によって各被接合部材31,32の境界部分34を流動化させて撹拌する。これによって流動化した各被接合部材31,32が、互いに混ぜ合わされる。この状態で、回転ツール30が、各被接合部材31,32の境界部分34に沿って走行することによって、各被接合部材31,32を境界線35に沿って接合することができる。
回転ツール30は、接合ツールと称される場合がある。本実施の形態の回転ツール30は、略円柱状に形成されるショルダ部36と、ショルダ部36に対して同軸に形成されてショルダ部36から軸線方向一方に突出し、ショルダ部36よりも外径が小さい略円柱状に形成されるピン部37とが形成される。また本実施の形態では、接合装置20は、被接合物33の表面に垂直な軸線L2に対して、回転ツール30の軸線L1が、回転ツール30のピン部37まわりに走行方向下流側へと予め定める前進角度α傾斜した状態に維持する。これによって被接合物33に没入させた回転ツール30を良好に走行させることができる。
図1に示すように、接合装置20は、FSWヘッド21と、テーブル22と、移動手段19とを有する。FSWヘッド21は、回転ツール30を着脱可能に装着し、回転ツール30を、予め定める基準軸線L1まわりに回転駆動する回転手段となる。ここで、基準軸線L1は、回転ツール30の軸線に一致する。テーブル22は、2つの被接合部材31,32を突き合せて、被接合物33として保持および支持する支持手段となる。
移動手段19は、被接合物33に対してFSWヘッド21を相対的に変位移動する。本実施の形態では、テーブル22に保持される被接合物33に対して、FSWヘッド21を変位移動する。具体的には、移動手段19は、第1駆動体23と、第2駆動体24と、第3駆動体29とを含む。第1駆動体23は、FSWヘッド21を支持して、第2駆動体24に設けられる。
第1駆動体23は、第2駆動体24に連結される連結部50と、連結部50に設けられる第1方向モータと、第1方向モータによって発生する動力を伝達する第1動力伝達部と、連結部50に対して第1方向Zに移動可能に案内されてFSWヘッド21が固定される可動部52とを含む。第1方向モータの出力軸が回転すると、第1動力伝達部によって動力が可動部52に伝達され、可動部52とともにFSWヘッド21が予め定める第1方向Zに変位する。本実施の形態では、第1方向Zは、鉛直方向となる。第1駆動体23は、回転ツール30を軸線方向に変位駆動して被接合物33に押圧する押圧手段となる。
第2駆動体24は、第1駆動体23の連結部50を両持ち支持して門型に形成される支持部26と、第1駆動体23の連結部50を第1方向Zに直交する第2方向Yに変位駆動するための第2方向モータ(図示せず)と、第2方向モータによって発生する動力を伝達する第2動力伝達部と、第1駆動体23の連結部50を支持部26に対して第2方向Yに移動可能に案内する第2案内部とを含む。第2方向モータの出力軸が回転すると、第2動力伝達部によって動力が連結部50に伝達され、連結部50とともにFSWヘッド21が第2方向Yに変位する。本実施の形態では、第2方向Yは水平に延びる。
第3駆動体29は、第2駆動体24の支持部26を第1方向Zおよび第2方向Yに直交する第3方向Xに変位駆動するための第3方向モータ(図示せず)と、第3方向モータによって発生する動力を伝達する第3動力伝達部と、第2駆動体24の支持部26を第3方向Xに移動可能に案内する第3案内部53とを含む。第3方向モータの出力軸が回転すると、第3動力伝達部によって動力が支持部26に伝達され、支持部26とともにFSWヘッド21が第3方向Xに変位する。また本実施の形態では、図1に示すように、2つの被接合部材31,32の境界線35は、第3方向Xに沿って延びるように配置される。第2駆動体24および第3駆動体29の少なくともいずれかは、軸線方向に交差する走行方向に回転ツール30を相対的に変位駆動する走行手段となる。
これによって回転ツール30は、テーブル22に対して、第1〜第3方向Z,Y,Xに変位移動可能となる。また本実施の形態では、さらに回転ツール30の軸線L1を第1方向Zに沿って延びる軸線に対して角変位駆動するとともに、基準軸線L1を第3方向Xに沿って延びる軸線に対して角変位駆動する角変位駆動手段(図示せず)を有する。したがって回転ツール30は、5軸自由度を有して変位可能に形成される。
また接合装置20は、FSWヘッド21、移動手段19および角変位駆動手段を制御する制御装置25を有する。制御装置25は、たとえばシーケンサ装置によって実現され、摩擦撹拌接合の動作手順を実行するためのコンピュータプログラムなどが記憶されている。
図3は、接合装置20の構成を示すブロック図である。接合装置20は、回転ツール30をその軸線L1まわりに回転駆動する回転手段40と、回転手段40を制御する回転制御手段41と、回転ツール30の回転速度を検出する回転速度検出手段42と、被接合物33から回転ツール30に与えられる軸線まわりの回転抵抗力を検出するためのモータ電流検出手段43とを含んで構成される。
回転手段40は、本実施の形態では三相交流モータによって実現され、FSWヘッド21に搭載される。以下、「回転手段」を、「回転用モータ」または単に「モータ」と称する場合がある。回転制御手段41は、制御装置25から、回転ツール30の回転すべき設定回転速度を示す回転速度指令が与えられ、回転速度指令に応じた電流を三相交流モータに与える。回転制御手段41が回転手段40に所定の電流を与えることによって、回転手段40は、設定回転速度で回転ツール30を回転させる。回転制御手段41、回転速度検出手段42およびモータ電流検出手段43は、直流電源から三相交流モータを回転させるための電流を供給するインバータ装置44によって実現される。
また接合装置20は、回転ツール30を移動させる押圧手段45と、走行手段46とを含んで構成される。押圧手段45は、被接合物33に対して近接および離反する方向に回転ツール30を変位移動する。また走行手段46は、接合すべき被接合物33に設定される境界線35に沿って回転ツール30を変位移動する。
本実施の形態では、押圧手段45は、鉛直方向に沿って回転ツール30を変位移動する。具体的には、押圧手段45は、第1駆動体23の第1方向モータによって実現される。第1方向モータは、制御装置25によって直接または間接的に制御されることによって、回転ツール30を被接合物33に対して近接および離反する方向に移動させることができる。
また本実施の形態では、走行手段46は、水平方向に沿って回転ツール30を変位移動する。具体的には、走行手段46は、第2駆動体24の第2方向モータおよび第3駆動体29の第3方向モータの少なくともいずれかによって実現される。第2方向モータおよび第3方向モータは、制御装置25によって直接または間接的に制御されることによって、回転ツール30を被接合物33に設定される境界線35に沿って移動させることができる。
制御装置25は、入力部47と、出力部48と、演算部49と、記憶部54とを含んで構成される。記憶部54は、摩擦撹拌接合の動作手順を実行するためのコンピュータプログラムおよび演算部49の演算結果を記憶する。入力部47は、回転速度検出手段42およびモータ電流検出手段43から、それぞれ検出結果を示す情報が与えられ、与えられた情報を演算部49に与える。演算部49は、記憶部54に記憶されるプログラムを実行して、各検出手段42,43から与えられる情報に基づいて、摩擦撹拌接合の動作手順を実行し、回転制御手段41、押圧手段45および走行手段46の制御指令を生成する。演算部49は、生成した制御指令を出力部48に与える。出力部48は、演算部49によって与えられた制御指令を、回転制御手段41、押圧手段45および走行手段46にそれぞれ与える。演算部49は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理回路によって実現される。また記憶部54は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶回路によって実現される。また入力部47および出力部48は、コネクタなどの入出力回路によって実現される。
図4は、インバータ装置44を示すブロック図である。インバータ装置44は、インバータ回路55と、コントロール回路56と、エンコーダ57とを含んで構成される。インバータ装置44は、上述した回転制御手段41と、回転速度検出手段42と、モータ電流検出手段43とを兼ねる。インバータ回路55は、スイッチング素子を有し、直流電源58から直流電力が与えられる。インバータ回路55は、コントロール回路56から与えられるゲート指令にしたがって、スイッチング素子のオンオフを切り替えることによって、直流電源58から与えられる電流を三相の交流電流に生成し、回転ツール30を回転するための回転用モータ40に生成した交流電流を与える。
コントロール回路56は、制御装置25から回転速度指令が与えられる。またコントロール回路56は、エンコーダ57からモータ40の回転速度の情報が与えられる。またコントロール回路56は、インバータ回路55からモータ40に供給される電流の情報が与えられる。コントロール回路56は、与えられた情報に基づいて、回転速度指令に付与される設定回転速度を目標値として、フィードバック制御を行い、操作量をゲート指令としてインバータ回路55に与える。このようにしてモータ40は、インバータ装置44に制御されることで、回転ツール30に与えられる回転抵抗力が変動しても、予め定める設定回転速度で回転ツール30を回転することができる。
具体的には、インバータ装置44は、被接合物33から回転ツール30に与えられる回転抵抗力が大きくなると、モータ40に供給する電流を大きくする。また被接合物33から回転ツール30に与えられる回転抵抗力が小さくなると、モータ40に供給する電流を小さくする。このようにしてモータ40の回転速度を設定回転速度に保つ。ここで、モータ40に供給される電流と、被接合物33から回転ツール30に与えられる回転抵抗力とには比例関係にあり、モータ40に流れる電流から、回転ツール30に与えられる軸線まわりの回転抵抗力を求めることができる。またモータ40に流れる電流は、モータ40が回転ツール30に与える出力トルクおよび被接合物33から回転ツール30に与える負荷トルクに相当する。
コントロール回路56は、エンコーダ57から与えられるモータ回転速度を示す回転速度情報を、制御装置25に与える。またコントロール回路56は、モータ40に供給する電流値を示す電流情報を、制御装置25に与える。制御装置25は、コントロール回路56から与えられる電流情報に基づいて、被接合物33から回転ツール30に与えられる回転抵抗力を求めることができる。このようにインバータ装置44は、回転制御手段41と回転速度検出手段42とを兼ねる。また制御装置25とインバータ装置44とを含んで、被接合物33から回転ツール30に与えられる回転抵抗力を検出する検出手段を構成する。
図5は、被接合物33から回転ツール30に与えられる抵抗力の時間変化を示すグラフである。回転ツール30は、回転しながら被接合物33に没入することで、被接合物33に対して摺動回転する。このとき回転ツール30は、軸線まわりの回転に抗する回転抵抗力を、被接合物33から与えられる。また回転ツール30は、被接合物33に没入した状態で走行すると、走行に抗する走行抵抗力を被接合物33から与えられる。制御装置25は、インバータ装置44から与えられるモータ電流情報に基づいて、回転ツール30に与えられる回転抵抗力を取得可能である。
回転ツール30を回転させると、初期抵抗力r1が発生する。そして、回転ツール30がピン部37から被接合物33に没入すると、ピン部37が被接合物33に当接したピン部当接時刻t1から、ピン部37が被接合物33に没入する没入量が増加するにつれて、回転抵抗力が増加する。回転ツール30が一定速度で被接合物33に没入する場合、図5に示すように、回転抵抗力は、ピン部当接時刻t1から時間経過にほぼ比例して増加する。
そしてピン部37に連なるショルダ部36のショルダ端面が被接合物33に当接する。ショルダ部36が被接合物33に当接するショルダ部当接時刻t2における回転抵抗力をショルダ部当接抵抗力r2とし、ショルダ部当接時刻t2を経過した後の回転抵抗力をショルダ部没入抵抗力r3とする。この場合、ショルダ部没入抵抗力r3は、ショルダ部当接抵抗力r2よりも小さくなる。すなわちショルダ部当接時刻t2における回転抵抗力r2は、ショルダ部当接時刻t2とは異なる時刻の回転抵抗力に比べて極大値となる。言換えるとショルダ部当接時刻t2で、回転抵抗力がピーク値となる。回転抵抗力とモータ電流とは比例関係にあるので、制御装置25は、インバータ装置44から与えられるモータ電流情報が極大値となったときに、ショルダ部36が被接合物33に当接したことを判断することができる。
ショルダ部36が被接合物33に当接してから、所定の期間保持することによって、被接合物33の回転ツール没入部分の温度が上昇し、ピン部37によって撹拌される流動化部分が増加する。摩擦撹拌接合において、接合欠陥なく良好に回転ツール30を走行させるためには、ツール没入部分の温度が適正範囲に含まれていることが望ましく、適正温度の値は、接合条件によって決定される。
ショルダ部没入抵抗力r3が、予め定める走行開始設定値r5まで低下すると、ツール没入部分の温度が適正範囲に含まれ、被接合物33の回転ツール没入部分が過不足なく軟化したことになる。本実施の形態では、走行開始設定値r5は、定常抵抗力r6の1.2倍に選ばれる。ここで定常抵抗力r6は、予め定める摩擦撹拌接合条件で回転ツール30を境界線35に沿って走行させたときにおいて、被接合物33から回転ツール30に与えられる回転抵抗力となる。
具体的には、制御装置25は、モータ電流がピーク値に達したあとで、予め定められる走行開始モータ電流設定値に達したことを判断すると、回転ツール30の走行を開始する。また走行開始モータ電流設定値は、走行時における定常モータ電流設定値の1.2倍に設定される。
このように被接合物33が十分に軟化した状態で、回転ツール30は、走行を開始する。そして走行開始時刻t3を過ぎると、回転ツール30には、走行方向に抗する抵抗力となる走行抵抗力r4が与えられる。走行時の摩擦撹拌条件が一定の場合、走行開始時刻t3を所定時間経過すると、走行抵抗力r4は、ほぼ安定した値となる。この安定した値におけるモータ電流が定常モータ電流設定値となる。
ここで、走行開始設定値r5が大きすぎると、被接合物33の回転ツール没入部分の軟化が不足する。この場合、接合領域に気泡が発生するなどして接合強度が低下するおそれがある。また走行開始設定値r5が小さすぎると、被接合物33の回転ツール没入部分の軟化が過剰となる。この場合、回転ツール30が被接合物33に没入しすぎ、接合跡が目立つことになる。これに対して、走行開始設定値r5が予め定められる値、たとえば定常抵抗力r6の1.2倍に選択されることで、被接合物33の回転ツール没入部分が過不足なく軟化した状態で、回転ツール30の走行を開始することができる。
図6は、制御装置25による摩擦撹拌接合動作を示すフローチャートである。また図7は、摩擦撹拌接合動作を説明するための断面図である。図7では、図7(1)〜図7(8)の順に動作が進行する。制御装置25は、インバータ装置44から与えられる回転速度情報とモータ電流情報とを取得する。そして取得した各情報に基づいて、回転手段40となるFSWヘッド21と、走行手段46および押圧手段45となる移動手段19とをそれぞれ制御する。
まずステップa0で、回転ツール30がFSWヘッド21に装着されるとともに、各被接合物33が突き合わされた状態でテーブル22に支持されて、接合動作の準備動作が行われる。準備動作が完了するとともに、記憶部54に接合条件が記憶された状態で、作業者などから制御装置25に制御開始指令が与えられると、ステップa1に進み、制御装置25は、接合動作を開始する。ここで記憶部54に記憶される接合条件は、たとえば、摩擦撹拌時における回転ツール30の回転速度、回転ツール30が被接合物33を押圧する押圧力、回転ツール30の移動経路、回転ツール30の没入速度、回転ツール30の没入量、回転ツール30の走行速度などである。
ステップa1では、制御装置25は、回転ツール30の回転指令をインバータ装置44に与える。回転指令が与えられたインバータ装置44は、与えられる回転指令に含まれる設定回転速度で、回転ツール30を回転させる。インバータ装置44は、設定回転速度に達したことを示す回転速度到達情報を制御装置25に与える。制御装置25は、回転速度到達信号を取得すると、ステップa2に進む。
ステップa2では、制御装置25は、回転ツール30の没入指令を移動手段19に与え、ステップa3に進む。没入指令が与えられた移動手段19は、被接合物33に設定される没入開始位置よりも第1方向Zに離反した準備位置に回転ツール30を移動させる。次に図7(1)に示すように、移動手段19は、回転ツール30を第1方向Zに移動させて、回転ツール30を没入開始位置から被接合物33に没入する。これによって回転ツール30は、図7(2)に示すように、ピン部37が被接合物33の没入開始位置に当接し、ピン部37が被接合物33に没入する。
ステップa3では、制御装置25は、ショルダ部36が被接合物33に当接したか否かを判断し、当接したことを判断するとステップa4に進む。本実施形態では、制御装置25は、インバータ装置44から与えられるモータ電流情報がピーク値、すなわち極大値となったか否かを判断する。制御装置25は、インバータ装置44から与えられるモータ電流情報が極大値になるまでステップa3を繰り返し、待機する。制御装置25は、モータ電流情報が極大値に達すると、図7(3)に示すように、ショルダ部36が被接合物33に当接したことを判断し、ステップa4に進む。
たとえば制御装置25は、所定時間ごとにモータ電流情報を取得し、新しく取得したモータ電流情報と、その1つ前に取得したモータ電流情報とを比較する。1つ前に取得したモータ電流情報の電流値よりも、新しく取得したモータ電流情報の電流値が小さいか同じであることを判断すると、1つ前にモータ電流情報を取得した時刻に、ショルダ部36が被接合物33に当接したことを判断する。また制御装置25はモータ電流の時間による微分値を求め、微分値が正の値からゼロまたは負の値に変化した時刻に、ショルダ部36が被接合物33に当接したことを判断してもよい。
ステップa4では、制御装置25は、ショルダ部36が被接合物33に当接した後で、モータ電流が予め定める走行開始設定値r5に達したか否かを判断する。走行開始設定値r5は、被接合物33が過不足なく軟化した場合の回転抵抗力に抗して回転するために必要な設定値である。制御装置25は、インバータ装置44から与えられるモータ電流が走行開始設定値r5に達して、図7(4)に示すように被接合物33が過不足なく軟化したことを判断すると、ステップa5に進む。
ステップa5では、制御装置25は、回転ツール30の走行指令を移動手段19に与え、ステップa6に進む。走行指令が与えられた移動手段19は、図7(5)に示すように、没入開始位置から境界線35に沿って、本実施の形態では第3方向Xに、回転ツール30を走行させる。
ステップa6では、制御装置25は、予め定める終了条件を満足するか否かを判断し、終了条件を満足すると判断すると、ステップa7に進む。本実施の形態では、被接合物33に予め設定される没入終了位置に回転ツール30が移動すると、終了条件を満足したと判断する。
ステップa7では、制御装置25は、インバータ装置44と移動手段19とを制御し、予め定める終了動作を行う。具体的には、制御装置25は、移動手段19に離脱指令を与える。離脱指令が与えられた移動手段19は、図7(7)に示すように、回転ツール30を第1方向Zに移動させて、回転ツール30を被接合物33の没入終了位置から離脱させる。また制御装置25は、インバータ装置44に停止指令を与える。停止指令が与えられたインバータ装置44は、図7(8)に示すように、回転ツール30の回転を停止させる。制御装置25は、このような終了動作を行い、終了動作が完了すると、ステップa8に進む。ステップa8では、制御装置25は、接合動作を終了する。
図8は、外乱が発生する場合において、被接合物33から回転ツール30に与えられる回転抵抗力の時間変化を示すグラフである。具体的には、図8(2)に示す第2グラフは、図8(1)に示す第1グラフに対して、ピン部当接時刻t1からショルダ部当接時刻t2までの没入時間が長い場合(P2>P1)を示し、図8(3)に示す第3グラフは、図8(1)に示す第1グラフに対して、没入時間が短い場合(P3<P1)を示す。
図8(1)〜図8(3)に示すように、ピン部当接時刻t1からショルダ部当接時刻t2までの没入時間P1,P2,P3は、接合条件が一定であっても、接合状況ごとに変動する外乱の影響によって変化する。たとえば、第1グラフに対して第2グラフの外気温が低いと、第2グラフの没入時間P2は第1グラフの没入時間P1に比べて長くなる。また第1グラフに対して第3グラフの外気温が高いと、第3グラフの没入時間P3は第1グラフの没入時間P1に比べて短くなる。
したがって接合開始時刻t0から所定時間経過した時刻を回転ツール30の走行開始時刻t3として設定してしまうと、外乱の影響によって、被接合物33の回転ツール没入部分の軟化状態に過不足が生じた状態で、走行を開始してしまう。この場合、接合品質がばらついてしまう。外気温のほかの外乱としては、被接合物33の寸法および熱容量、テーブルの寸法および熱伝導率などが考えられる。またテーブル22は、被接合物33を回転ツール30とは反対側で支持する裏当て部材となる。
これに対して、ショルダ部36が当接してからの摩擦撹拌状態は、外乱の影響が少なく、回転ツール30の形状および記憶部54に記憶される接合条件に依存する。したがって本実施形態のようにショルダ部36が当接するショルダ部当接時刻t2を判断し、判断したショルダ部当接時刻t2に基づいて、回転ツール30の走行開始時刻t3を決定することで、外乱の影響を抑えて一定の摩擦撹拌状態で、回転ツール30の走行を開始することができる。このように回転ツール30の走行を開始することで、外乱の影響に起因して、回転ツール30の走行開始時における軟化状態のばらつきが生じることを防ぐことができる。たとえば作業者が回転ツール30の走行開始の時刻を決定する場合や、ピン部当接時刻t1から所定時間経過したことを判断して走行開始の時刻を決定する場合に比べて、被接合物33の品質のばらつきを防ぐことができる。
このように本実施の形態では、制御装置25が、モータ電流値すなわちツール回転モータの出力トルク波形に基づいてショルダ部当接時刻t2を判断し、判断したショルダ部当接時刻t2に基づいて回転ツール30の走行開始時刻t3を決定することで、被接合物33の品質を安定化することができ、接合強度不足を防ぐとともに接合後の仕上がりを良好に保つことができる。
また回転ツール30が被接合物33に与える押圧力の不所望な変動などによって、ショルダ部36が被接合物33に当接するときの回転抵抗力r11,r12,r13が変動する場合がある。このような場合であっても、ショルダ部36が被接合物33に当接するときに、回転抵抗力が必ず極大値となる。
本実施形態では、被接合物33から回転ツール30に与えられる回転抵抗力が極大値となったときに、ショルダ部36が被接合物33に当接したことを判断する。したがってショルダ部36が被接合物33に当接したときの回転抵抗力が、変動する場合であっても、精度よくショルダ部当接時刻t2を判断することができる。これによって被接合物33の品質のばらつきをさらに抑えることができる。
またショルダ部当接時刻t2の前と、ショルダ部当接時刻t2の後との2つの時刻で、回転抵抗力が、走行開始設定値r5に達する。本実施の形態では、ショルダ部当接時刻t2の後に、回転抵抗力が走行開始設定値r5に達すると、回転ツール30の走行方向への移動を開始させる。これによってショルダ部36が被接合物33に当接する前に回転ツール30が走行を開始することを防ぐことができる。
このようにショルダ部36が被接合物33に確実に当接した後で、回転ツール30の走行を開始することで、被接合物33の回転ツール没入部分が過不足なく軟化した状態で、走行を開始することができる。また回転抵抗力に基づいて走行開始時刻t3を決定することで、ショルダ部当接時刻t2から所定時間経過に走行を開始する場合に比べて、外乱の影響をさらに抑えることができる。
また走行開始設定値r5が、定常抵抗力r6に基づいて設定されることで、被接合物33が過不足なく十分に軟化した状態で、回転ツール30の走行を開始することができる。また走行開始設定値r5を容易に設定することができ、接合作業前に行う準備作業を簡単化することができる。
本実施の形態では、回転ツール30の回転抵抗力に基づいて、ショルダ部36が被接合物33に当接したことを判断するので、被接合物33の第1方向Zの寸法誤差がある場合でも正確に、ショルダ部当接時刻t2を求めることができる。また回転ツール30を第1方向Zに移動させるための移動手段が、押圧力の変化および移動量の変化を検出できない駆動手段、たとえばエアシリンダであっても、ショルダ部当接時刻t2を精度よく求めることができる。またモータの電流に基づくことによって、被接合物33から与えられる抵抗力を容易に求めることができる。これによって検出手段の構成を簡単化することができ、別途複雑な構成を必要とすることがない。
また本実施の形態では、回転ツール30を被接合物33に没入する過程では、ピン部37に過度の負荷が作用することを防ぐために、回転ツール30が被接合物33を押圧する押圧力を与える付勢手段と、付勢手段による押圧力が略一定となるように制御する付勢制御手段とを有する。付勢手段は、FSWヘッド21に搭載されるエアシリンダによって実現され、付勢制御手段はエアシリンダに供給する圧力を制御する減圧弁によって実現される。この場合、回転ツール30が走行するにあたって、被接合物33の厚みが変動する場合であっても摩擦撹拌接合を好適に行うことができる。
図9は、本発明が前提とする第2実施形態の制御装置25による摩擦撹拌接合動作を示すフローチャートである。第2実施形態の制御装置25は、第1実施形態の制御装置25とほぼ同様の動作を行う。第2実施形態の制御装置25のうち、第1実施形態の制御装置25と同様の構成については説明を省略する。また第2実施形態の制御装置25を備える接合装置20は、上述した接合装置20と同様であるので説明を省略する。
第2実施形態の制御装置25は、ショルダ部当接時刻t2に達する前と、ショルダ部当接時刻t2に達した後とで、摩擦撹拌条件を異ならせる。本実施の形態では、制御装置25は、回転ツールの回転速度を変化させる。具体的には、ショルダ部当接時刻t2に達した後には、予め定める接合条件で回転ツール30を境界線35に沿って走行させたときにおける良好な定常回転速度で回転ツール30を回転させる。またショルダ部当接時刻t2に達する前には、前記定常回転速度よりも高速の没入時回転速度で回転ツール30を回転させる。
まずステップb0で、接合動作の準備動作が行われる。作業者などから制御装置25に制御開始指令が与えられると、ステップb1に進み、制御装置25は、接合動作を開始する。制御装置25は、図6に示すステップa1〜ステップa3と同様の動作として、ステップb1〜b3の動作を順に行う。ここでステップb1では、制御装置25は、没入時回転速度で回転ツール30を回転するように、インバータ装置44に回転指令を与える。
ステップb3では、制御装置25は、ショルダ部36が被接合物33に当接したか否かを判断し、当接したことを判断するとステップb4に進む。ステップb4では、制御装置25は、定時回転速度で回転ツール30を回転するように、インバータ装置44に回転指令を与え、ステップb5に進む。ステップb5では、制御装置25は、インバータ装置44から定時回転速度に達したことを示す回転速度到達情報が与えられることで、ステップb6に進む。次に、制御装置25は、ステップa4〜a8と同様の動作として、ステップb6〜b10の動作を順に行う。ステップb10では、制御装置25は、接合動作を終了する。
第2実施形態の制御装置25を有する接合装置は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また第2実施形態によれば、制御装置25は、ショルダ部36が当接する前には、ピン部37の没入に適した摩擦撹拌条件で摩擦撹拌を行うことができる。また制御装置25は、ショルダ部36が当接した後には、回転ツール30の走行に適した摩擦撹拌条件で摩擦撹拌を行うことができ、より最適に摩擦撹拌接合を行うことができる。
具体的には、ショルダ部当接時刻t2に達する前には、前記定常回転速度よりも高速の没入時回転速度で回転ツール30を回転させることによって、短時間にショルダ部36を被接合物33に当接させることができ、接合時間を短縮することができる。またショルダ部当接時刻t2に達した後には、定常回転速度で回転ツール30を回転させることによって、接合品質が低下することを防ぐことができる。また本実施の形態では、ショルダ部当接時刻t2に達する前と、ショルダ部当接時刻t2に達した後とで、回転速度を変更したが、他の摩擦撹拌条件を異ならせてもよい。
図10は、本発明が前提とする第3実施形態の制御装置25による摩擦撹拌接合動作を示すフローチャートであり、図11は、第3実施形態の制御装置25の動作を説明するための回転抵抗力の時間変化を示すグラフである。第3実施形態の制御装置25は、第1実施形態の制御装置25とほぼ同様の動作を行う。第3実施形態の制御装置25のうち、第1実施形態の制御装置25と同様の構成については説明を省略する。また第3実施形態の制御装置25を備える接合装置20は、上述した接合装置20と同様であるので説明を省略する。
第3実施形態の制御装置25は、ショルダ部当接時刻t2に達した後で、回転抵抗力の時間変化が予め定める走行開始設定値となると、回転ツール30を走行方向に移動開始させる。まずステップc0で、接合動作の準備動作が行われる。作業者などから制御装置25に制御開始指令が与えられると、ステップc1に進み、制御装置25は、接合動作を開始する。制御装置25は、図6に示すステップa1〜ステップa2と同様の動作として、ステップc1〜c2の動作を順に行い、ステップc3に進む。
ステップc3では、制御装置25は、単位時間あたりの回転抵抗力の変化量、すなわち回転抵抗力の時間による微分値を求め、予め定める走行開始設定値であるか否かを判断する。この予め定める走行開始設定値は、負の値に設定される。たとえば制御装置25は、所定時間ごとにモータ電流情報を取得し、新しく取得したモータ電流情報と、その1つ前に取得したモータ電流情報とを比較する。新しく取得したモータ電流情報の電流値q2から1つ前に取得したモータ電流情報の電流値q1を減算した値(q2−q1)を、前記所定時間ΔTで除算した値(q2−q1)/ΔTが、走行開始設定値以下となるか否かを判断する。走行開始設定値は、少なくとも負の値に設定されることで、ショルダ部当接時刻t2に達したあとに、走行開始時刻t3を決定することができる。
本実施の形態では、モータ電流をモータの出力トルクに換算した状態で、設定値が−3Nm/s以下となるときの回転抵抗力Qの時刻を、走行開始時刻t3として決定し、ステップc4に進む。次に制御装置25は、ステップa5〜a8と同様の動作として、ステップc4〜c7の動作を順に行う。ステップc7では、制御装置25は、接合動作を終了する。
第3実施形態の制御装置25を有する接合装置は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ショルダ部当接時刻t2に達した後で、抵抗力の時間変化が予め定める走行開始設定値となると、回転ツール30の走行方向への移動を開始させる。抵抗力の時間変化は、ショルダ部当接時刻t2に達した後では、時間経過とともに、単位時間あたりの抵抗力の変化が小さくなる。この抵抗力の時間変化は、外乱の影響が少ない。また抵抗力の時間変化を求める演算式は、ショルダ部当接時刻t2を求める演算式と同じ演算式を用いて求めることができ、演算式を簡単化することができる。
また第1〜第3実施形態では、ショルダ部当接時刻t2を経過した後において回転ツール30に被接合物33から与えられる回転抵抗力に基づいて、走行開始時刻t3を決定したが、このほかの条件に基づいて走行開始時刻t3を決定してもよい。たとえばショルダ部当接時刻t2から予め定める待機時間経過した時刻を走行開始時刻t3として決定してもよい。
また本実施の形態では、インバータ装置44から与えられるモータ電流情報に基づいて、モータの出力トルクとなる回転抵抗力を求めた。制御装置25は、インバータ装置44以外の他の検出手段を用いて、回転抵抗力に対応する情報を取得してもよい。たとえばモータ40は、インバータ装置44に換えて、サーボアンプから電流が与えられて回転させてもよい。この場合、制御装置25は、サーボアンプに回転指令を与えることになる。制御装置25は、サーボアンプからモータ40に与えられる電流を示すモータ電流情報が与えられる。言換えるとサーボアンプは、回転抵抗力に対応するモータ電流情報を制御装置25に与える検出手段となる。またインバータ装置44およびサーボアンプなどを用いる以外に、モータの出力端子に電流計を取り付けられてもよい。この場合、制御装置25は、電流計によってモータ電流情報を取得する。また制御装置25は、プログラマブルコントローラであってもよく、パーソナルコンピュータであってもよい。
また回転ツール30を軸線方向に移動させるモータおよび圧電素子などによって、回転ツール30に与えられる軸線方向の抵抗力を検出可能である場合、制御装置25は、軸線方向の抵抗力に基づいて、ショルダ部当接時刻t2を決定してもよい。たとえば没入速度を一定に制御した場合に、軸線方向の抵抗力が極大値となった時刻を、ショルダ部当接時刻t2として決定してもよい。この場合であっても、第1〜第3実施形態と同様にして走行開始時刻t3を決定することができる。
また第1〜第3実施形態では、制御装置25が、被接合物33から回転ツール30に与えられる抵抗力を検出する検出手段と、制御手段とを兼用したが、抵抗力を検出するための検出手段が、制御装置25とは別体に設けられてもよい。この場合、制御装置25は、検出手段から与えられる抵抗力を示す情報に基づいて、回転手段、押圧手段および走行手段を制御する制御手段となる。
図12は、本発明が前提とする第4実施形態の接合装置120の構成を示すブロック図であり、図13は、被接合物33に発生するバリ60を示す図である。接合装置120は、第1実施形態の接合装置20と同様の回転手段40、インバータ装置44、押圧手段45、走行手段46、制御装置25を有する。これら各手段40,44,45,46,25については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
また接合装置120は、摩擦撹拌時に被接合物33から発生するバリ60を撮像する撮像手段59を有する。撮像手段59は、CCD(結合電荷素子)カメラなどの画像処理センサによって実現され、バリの撮像結果を示す撮像情報を制御装置25に与える。制御装置25は、撮像手段59から与えられる撮像情報から、被接合物33に発生するバリ60の成長状態を判断することができる。また制御装置25は、バリ60の撮像結果に基づいて、回転ツール30を走行方向に移動開始させる走行開始時刻t3を決定する。
回転ツール30が、被接合物33に没入することによって被接合物33から排出される排出金属がバリ60となる。被接合物33および回転ツール30に対してバリ60は、異なる色を有する。たとえば被接合物33および回転ツール30は、酸化被膜で覆われることで、灰色、白濁色または黒色など非光沢色となる。またバリ60は、金属光沢を有する。したがって制御装置25は、撮像手段59で撮像される画像を、適切なしきい値を用いて二値化することによって、バリ60の形状を抽出することができる。
図14は、第4実施形態である制御装置25による摩擦撹拌接合動作を示すフローチャートである。まずステップd0で、接合動作の準備動作が行われる。作業者などから制御装置25に制御開始指令が与えられると、ステップd1に進み、制御装置25は、接合動作を開始する。制御装置25は、図10に示すステップc1〜ステップc7に対応する動作として、ステップd1〜d7を順に行い、ステップd7では、制御装置25は、接合動作を終了する。
このうち、図14に示すステップd1〜d2、d4〜d7の工程は、図10に示すステップc1〜c2、c4〜c7と同様であるので説明を省略する。また図14に示すステップd3の工程は、図10に示すステップc3と異なる。ステップd3では、制御装置25は、撮像手段59から与えられるバリ60の撮像情報を取得して画像処理する。制御装置25は、予め記憶部54に記憶される走行開始バリ形状と、撮像手段59から与えられる撮像情報に含まれるバリ60の形状とを比較し、それらのバリ形状が予め定める類似範囲であると判断するまで、ステップd3を繰返す。そして走行開始バリ形状と、撮像情報に含まれるバリ60の形状とが類似範囲であると判断すると、ステップd4に進む。
ここで、予め設定される走行開始バリ形状は、被接合物33が過不足なく流動化した場合におけるバリ60の形状に設定される。走行開始バリ形状は、バリ60の面積、発生位置、長さ、幅などの特徴値が抽出された値であって、制御装置25は、走行開始バリ形状に設定される特徴値と、撮像情報に含まれるバリ形状における特徴値とを比較して、類似しているか否かを判断する。
図15は、バリ60の成長過程を側面から示す断面図であり、図15(1)〜図15(4)の順でバリ60が成長する。また図16は、図15の矢符S16−矢符S16から見た断面図である。図16(1)〜図16(4)の順でバリ60が成長する。
図15(1)、図16(1)に示すように、回転ツール30のピン部37が被接合物33に没入することによって、被接合物33の一部分が回転ツール30によって押し出される。押し出された部分は、被接合物33の表面に突出して、バリ60を形成する。本実施の形態では、回転ツール30は、前進角度αが付与された状態で被接合物33に没入するので、走行方向上流側X2に発生するバリ60が多くなる。
図15(2)、図16(2)に示すように、バリ60は、回転ツール30が被接合物33に没入する没入量が増えることによって増加する。またショルダ部36もまた被接合物33の表面に対して傾斜して配置されるので、ショルダ部36のうち走行方向上流側X2部分が被接合物33に没入する。これによって走行方向上流側X2に発生するバリ60が、走行方向下流側X1に発生するバリ60よりも多くなる。特にショルダ部36のうち走行方向下流側X1部分が被接合物33と当接しない場合には、走行方向下流側X1と走行方向上流側X2のバリ60発生量が大きく異なる。
回転ツール30が被接合物33を流動化させるとともに撹拌することによって、バリ60は、流動化する被接合物33に連れ回されて、回転軸線まわりに角変位する。図15(3)、図16(3)に示すように、被接合物33が十分に流動化すると、走行方向上流側X2のバリ60の一部が流動化した流動化部分とともに走行方向下流側X1に移動する。これによってショルダ部36のうち走行方向下流側の部分と、被接合物33との間にバリ60が侵入する。
図17は、被接合物33が十分に流動化した場合の、バリを拡大して示す図である。図16(3)に示すように、被接合物33が十分に流動化すると、バリ60が走行方向上流側に移動する。そして搬送方向上流側で、ショルダ部36と、被接合物33との間の隙間Pに進入する。したがってショルダ部36は、端部が全周にわたって、バリ60に没入した状態となる。
図18は、図17のS17−S17切断面線から見たバリを示す断面図である。被接合物33が十分に流動化した場合、基準軸線L1に垂直な切断面で回転ツール30を切断すると、上述したようにバリ60がショルダ部36を全周にわたって覆う。このとき、走行方向上流側のバリの量よりも、走行方向下流側のバリの量のほうが多い。言い換えると、走行方向上流側のバリの半径方向寸法A1は、走行方向下流側の半径方向寸法A2よりも小さい。
図15(4)、図16(4)に示すように、回転ツール30が走行を開始すると、走行方向下流側のバリ60は解消される。そして走行方向下流側とは異なる部分にバリ60が形成された状態で、回転ツール30が走行する。バリ60は、回転ツール30が被接合物33に没入される没入開始位置付近に形成されやすい。
本実施の形態では、制御装置25は、走行開始バリ形状は、走行方向下流側X1に発生するバリ60の形状に設定される。制御装置25は、走行方向下流側X1に発生するバリ60を撮像し、その走行方向下流側X1に発生するバリ60が、所定量以上に達すると、ステップd4に進む。たとえば走行方向下流側X1のバリ60の面積、高さおよび長さの少なくともいずれかが所定量以上に達すると、ステップd4に進む。これによって被接合物33を十分に軟化させた状態で、回転ツール30の走行を開始することができる。
たとえば撮像手段59を走行方向に垂直な方向に配置した場合、図15(3)に示すように、側面視における走行方向下流側X1のバリ60の高さH1、幅B1および高さH1と幅B1との積(H1×B1)の少なくともいずれかが所定量以上に達すると、制御装置25は、被接合物の軟化状態が予め定める状態に達したことを判断することができる。
また、バリ60が、搬送方向上流側で、ショルダ部36と、被接合物33との間の隙間Pに進入して、ショルダ部36と被接合物33との間の隙間Pが埋まると、被接合物の軟化状態が予め定める状態に達したことを判断してもよい。
またたとえば撮像手段59を走行方向下流に配置した場合、図16(3)に示すように、正面視における長さM1、高さH1および長さM1と高さH1との積(M1×B1)の少なくともいずれかが所定量以上に達すると、制御装置25は、被接合物の軟化状態が予め定める状態に達したことを判断することができる。ここで撮像手段59は、回転ツール30の走行方向下流側に配置されることが好ましい。たとえば境界線35に沿って走行方向を倣い制御する場合、倣い制御用のCCDカメラと、バリ撮像用のCCDカメラとを兼用することができ、新たな構成を追加する必要がない。
なお本実施の形態では、走行方向下流側X1のバリ60の形状が、走行開始バリ形状になったことを判断して、回転ツール30の走行を開始したが、これに限定されない。すなわちバリ60の撮像結果に基づいて、回転ツール30の走行開始時刻t3を決定する構成であればよい。たとえば走行方向下流側X1のバリ60の形状が所定の形状に達した時刻を判断し、その時刻から所定時間経過してから、回転ツール30の走行を開始してもよい。また走行方向下流側X1以外のバリ60の形状に基づいて、走行開始時刻t3を決定してもよい。
ピン部37が被接合物33に当接してからショルダ部36が被接合物33に当接するまでの摩擦撹拌状態は、外気温、対象物の寸法、対象物を支持する裏当て部材の寸法などの外乱によってばらつく。これに対して、バリ60の発生と摩擦撹拌状態との間の関係には、外乱の影響が少ない。したがって本実施形態のようにバリ60の撮像結果に基づいて、回転ツール30の走行開始時刻t3を決定することで、外乱の影響を抑えて一定の摩擦撹拌状態で、回転ツールの走行を開始することができる。
外乱の影響を抑えて一定の摩擦撹拌状態で、回転ツールの走行を開始することで、摩擦撹拌が不十分な状態となったり、摩擦撹拌が過剰な状態となったりすることを防ぐことができる。したがって摩擦撹拌後の品質のばらつきを抑えることができる。また本実施の形態では、バリ60の撮像結果に基づいて、接合条件を調整する一例として、走行開始時刻t3を決定したが、その他の接合条件を決定してもよい。たとえばバリ60の撮像結果に基づいて回転ツール30の回転速度を調整してもよい。この場合、バリ60の直径が所定範囲よりも大きい場合、制御装置25は、軟化状態が過剰であることを判断し、回転速度を低下させてもよい。これによって回転ツール30が過剰に被接合物33に没入することを防ぐことができる。
また接合装置20の構成は、上述した構成に限定されない。たとえばFSWヘッド21を移動する移動手段19は、FSWヘッド21を片持ち支持する構成であってもよい。また本実施の形態では、第2方向Yおよび第3方向XにFSWヘッド21を移動可能に構成されたが、被接合物33の境界線35が第3方向Xに沿って延びる場合には、第2方向Yに変位可能な構成でなくてもよい。また基準軸線L1を角変位する角変位手段がなくてもよい。さらに接合装置20は、車輪を有して被接合物33上を移動する自走式であってもよい。
以上のような本発明の第1〜第4実施形態は、対象物を被接合物として摩擦撹拌接合を行う場合について説明したが、本発明は、摩擦撹拌接合以外の摩擦撹拌装置および方法にも用いることができる。たとえば摩擦撹拌を用いて被処理部材の強度を改質する摩擦撹拌処理(FSP、Friction Stir Processing)法にも、本発明を適用することができる。
摩擦撹拌処理は、上述した回転ツール30と同様の形状を有する撹拌ツールと、上述した接合装置20,120と同様の構成を有する撹拌装置とを用いて行われる。たとえば摩擦撹拌処理が行われる対象物の材質として、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタニウム合金などが用いられる。撹拌装置は、撹拌ツールを軸線まわりに回転させながら対象物に没入させて対象物を摩擦撹拌する。また回転する撹拌ツールを、予め定める移動経路に沿って移動させることで、移動経路に沿って対象物を摩擦撹拌することができる。これによって対象物の組織改質、たとえば結晶粒微細化を行うことができ、結晶粒の微細化によって機械的特性を向上することができる。たとえば航空機用構造部材の接合部分の結晶粒を微細化することで、機械的性質を改善することができる。また曲げ変形加工予定部の結晶粒を微細化することで、曲げ加工性を改善する。
このような摩擦撹拌処理に本発明を用いた場合、対象物の軟化状態が予め定める状態に達したときに、撹拌ツールの走行を開始することができる。これによって外乱に起因する摩擦撹拌品質のばらつきを抑えることができ、安定した機械特性を得ることができる。
図19は、本発明に係る第5実施形態の摩擦撹拌接合装置251を含む接合設備250を示す斜視図である。本実施の形態では、接合装置251によって被接合物33に複数点在する被接合部分64を順次スポット接合する。たとえば接合装置251を用いて、自動車ボディや鉄道車両構体などの外板がスポット接合される。
接合設備250は、接合装置251と、接合装置251を保持する多関節ロボット252と、接合装置251および多関節ロボット252を制御する制御装置253と、接合装置251および多関節ロボット252に動力を供給するための電源供給装置254と、重ねあわされた複数の被接合部材31,32から成る被接合物33を保持する保持装置255とを含んで構成する。
多関節ロボット252は、被接合物33に予め定める被接合部分64に、回転ツール30を移動させる搬送装置となり、任意の位置および任意の姿勢となるように回転ツール30を把持した接合装置251を移動させる。接合装置251は、多関節ロボット252によって移動されて、保持装置255に保持される2つの被接合部材31,32を互いに接合する。
接合装置251は、予め定める基準軸線を有する。回転ツール30は、その軸線L1が前記基準軸線に一致するように、接合装置251に保持される。このとき回転ツール30の軸線L1と接合装置251の基準軸線とは同軸となる。以下、接合装置251の基準軸線を、回転ツール30の軸線と同じ参照符号L1で示す。また接合装置251に装着される回転ツール30は、第1実施形態に示した回転ツール30とほぼ同様の形状に形成される。また第5実施形態の回転ツール30は、ピン部37が略円錐台形状に形成され、ショルダ部36から離反するとともに縮径する形状に形成される。またショルダ部36の端面は、円錐周面状に形成され、半径方向内方に向かうにつれてピン部37の先端部から離反する方向に軸線方向に延びる。
図20は、接合装置251の構成を示すブロック図である。接合装置251は、ツール保持部271と、回転駆動手段272と、直進駆動手段273と、受け台274と、基体275とを含んで構成される。ツール保持部271は、回転ツール30を着脱可能に保持する。ツール保持部271は、基準軸線L1まわりに回転可能でかつ基準軸線L1に沿って直線変位可能に基体275に支持される。
回転駆動手段272は、ツール保持部271を基準軸線L1まわりに回転駆動する。直進駆動手段273は、ツール保持部271を軸線方向Xに直進駆動する。具体的には、各駆動手段272,273は、サーボモータを含んで実現される。各サーボモータは、動力伝達機構を介して、動力をツール保持部271にそれぞれ伝達する。これによってツール保持部271は、回転および直線変位する。
各サーボモータは、予め定めるトルクおよび回転量で回転するように、付与電流に基づいてフィードバック制御される。各駆動手段272,273は、各サーボモータに付与される付与電流を検出する付与電流検出手段がそれぞれ設けられる。また各駆動手段272,273は、各サーボモータの回転量を検出するエンコーダがそれぞれ設けられる。
回転駆動手段272に対応するエンコーダは、回転ツール30の回転速度を検出する回転速度検出手段となる。また回転駆動手段272に対応する付与電流検出手段は、回転ツール30の回転方向のトルクを検出する負荷トルク検出手段となる。直進駆動手段273に対応するエンコーダは、回転ツール30の軸線方向Xの位置を検出するツール位置検出手段となる。また直進駆動手段273に対応する付与電流検出手段は、回転ツール30が被接合物33を加圧する力を検出する押圧力検出手段となる。
受け台274は、ツール保持部271に対して軸線方向Xに関して対向する位置に設けられる。受け台274は、基体275に固定される。受け台274は、摩擦撹拌接合にあたって、回転ツール30と反対側から被接合物33を支持する。基体275は、多関節ロボット252のロボットアーム256の先端部に連結され、ツール保持部271、各駆動手段272,273および受け台274を直接または間接的に支持する。
基体275は、ロボットアーム256によって任意の位置および姿勢に変位駆動される。また基体275は、いわゆるCガンであって、略C字状に形成される。受け台274は、基体275の周方向一端部275aに設けられる。またツール保持部271は、基体275の周方向他端部275bに設けられる。
制御装置253は、各ロボットアームを駆動するロボットアーム駆動手段を制御するとともに、接合装置251の回転駆動手段272および直進駆動手段273を制御する。制御装置253は、ツール位置検出手段、押圧力検出手段、回転速度検出手段および負荷トルク検出手段から検出結果を示す信号が与えられる。制御装置253は、各検出手段から与えられる信号に基づいて、直進駆動手段273および回転駆動手段272を制御する。制御装置253が、各駆動手段272,273を制御することによって、目的とする回転速度および押圧力で、回転ツール30を被接合物33に没入させることができる。
また制御装置253は、CPU(Central Processing Unit)などによって実現される演算処理回路と、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などによって実現される記憶回路とを有する。記憶回路には、接合装置251の動作条件に関する動作プログラムが記憶されている。たとえば動作条件は、回転ツール30の回転数、被接合部分64への没入量、没入時間、押圧力などであって、予め最適な値が記憶される。また記憶回路には、被接合部分64の位置および基体275を移動する移動経路などを示す移動情報が記憶される。制御装置253の演算処理回路が、記憶回路から動作プログラムを読み出し、その動作プログラムを実行する。これによって制御装置253は、動作プログラムに従って、各駆動手段272,273およびアーム駆動手段を制御することができる。
図21は、制御装置253による摩擦撹拌接合手順を示すフローチャートである。また図22は、接合動作を説明するための断面図であり、図22(1)〜図22(6)の順番に動作が行われる。以下に1つの被接合部分64についてスポット接合する場合の制御装置253の動作を説明する。本実施の形態では、制御装置253は、ショルダ部36が被接合物33に当接したショルダ部当接時刻t2を判断すると、ショルダ部当接時刻t2に基づいて、回転ツール30を被接合物33から離脱させる離脱開始時刻t4を決定する。
制御装置253は、ステップe0で、被接合部分64の位置を示す移動情報が教示されるとともに、ツール保持部271に回転ツール30が把持されて接合準備が完了したうえで、作業者などによって接合開始命令が与えられると、ステップe1に進み、接合動作を開始する。
ステップe1では、制御装置253は、ロボットアーム駆動手段に動作指令を与え、基体275を被接合物33に設定される被接合部分64に近接した教示位置に移動させる。教示位置に基体275が配置されると、回転ツール30は、被接合部分64に対して軸線方向に間隔を開けて配置される。また教示位置に基体275が配置されると、受け台274は、回転ツール30と反対側から被接合物33に当接する。このように回転ツール30を接合待機位置に移動させると、ステップe2に進む。
ステップe2では、制御装置253は、回転駆動手段272を制御して、ツール保持部271を回転させる。これによってツール保持部271とともに回転ツール30が回転し、予め定める回転速度に達すると、ステップe3に進む。ステップe3では、制御装置253は、直進駆動手段273を制御し、ツール保持部271を軸線方向一方に移動させる。これによって図22(1)に示すように、回転ツール30が、軸線L1まわりに回転しながら被接合物33に近接移動する。回転ツール30の直進移動を開始するとステップe4に進む。
図22(2)に示すように、回転ツール30は、回転しながらピン部37から被接合部分64に没入する。次に回転ツール30は、図22(3)に示すように、被接合部分に没入した後も、回転しながら軸線方向一方にさらに進行する。回転ツール30は回転を続けているので、ショルダ端面227およびピン部37と被接合部分64との摩擦熱によって、軟化した各被接合部材31,32が回転ツール30に引きずられて、塑性流動して撹拌される。これによってピン部37の周囲において各被接合部材31,32が、混ぜ合わされた領域65が形成されて一体化する。
ステップe4では、制御装置253は、図22(4)に示すように、ショルダ部36が被接合物33に当接したか否かを判断する。たとえば制御装置253は、モータ回転立ち上り時の電流を除いて、回転ツール30を回転するサーボモータに流れる電流が極大値となる時刻を、ショルダ部36が被接合物33に当接したショルダ部当接時刻t2として判断する。このように制御装置253は、ショルダ部当接時刻t2を判断すると、ステップe5に進む。
ステップe5では、制御装置253は、ショルダ部当接時刻t2に基づいて、回転ツール30を被接合物33から離脱させる離脱開始時刻t4を決定する。本実施の形態では、ショルダ部当接時刻t2から、予め定める待機時間が経過した時刻を離脱開始時刻t4として決定する。したがって図22(5)に示すように、ショルダ部36は、被接合物33に部分的に没入する。制御装置253は、離脱開始時刻t4に達したか否かを判断し、離脱開始時刻t4に達したと判断するとステップe6に進む。ここで離脱時間は、ショルダ部36が被接合物33に当接してから、回転ツール30が各被接合部材31,32を充分に撹拌するであろう時間に設定される。
ステップe6では、予め定める終了動作を行い、ステップe7に進む。具体的には、図22(6)に示すように、制御装置253は、回転ツール30を被接合物33から離脱させるとともに、離脱後に回転ツール30の回転を停止させる。ステップe7では、制御装置253は、接合動作を終了する。このようにして1つの被接合部分64におけるスポット接合動作が行われる。同じ接合条件で複数の被接合部分64を順番にスポット接合する場合、制御装置253は、上述したステップe1〜e7を繰返す。
図23は、ツール回転用モータの電流値の時間変化を示すグラフである。図23(1)は、回転ツール30が被接合物33に与える押圧力が2450N(250kgf)の場合を示す。また図23(2)は、回転ツール30が被接合物33に与える押圧力が2695N(275kgf)の場合を示す。図23(3)は、回転ツール30が被接合物33に与える押圧力が2940N(300kgf)の場合を示す。図23では、その他の条件を一定にした。具体的には、押込み速度を一定値として、ツール回転速度を3000rpmとし、ツール押込み量を0.4mmとした。
回転用モータの電流値は、回転ツール30が一定の回転速度で回転するために必要な電流値である。回転用モータ電流値は、回転指令が与えられてモータの回転立ち上り時刻t0において、急峻に増加しすぐに低下する。そして回転ツール30が被接合物33に没入するまで、ほぼ一定の第1電流値A11,A21,A31となる。次に回転ツール30のうちピン部37が被接合物33に当接するピン部当接時刻t1には、第1電流値A11,A21,A31よりも大きい第2電流値A12,A22,A32となる。ピン部当接時刻t1から時間が経過すると、ピン部37がさらに没入することによって、電流値は第2電流値A12,A22,A32に比べて増加する。
次に回転ツール30のうちショルダ部36のショルダ端面が被接合物33に当接するショルダ部当接時刻t2における第3電流値A13,A23,A33は、立ち上り時刻t0における電流値A0を除いて、最も大きな電流値、すなわち極大値となる。ショルダ部当接時刻t2から時間が経過すると、被接合物33が軟化することで、電流値は第3電流値A13,A23,A33に比べて減少する。そして回転ツールを離脱させた離脱開始時刻t4以降には、電流値は、再び第1電流値A11,A21,A31となる。
上述したように、ピン部37が没入してからショルダ部36が当接するまでの時間P12,P22,P32は、接合条件のほかに外気温などの外乱によってばらつくことが多い。これに対して、ショルダ部36が当接してから被接合物33が過不足なく軟化するまでの時間P11,21,P31は、接合条件のみに依存して外乱の影響を受けにくい。本実施の形態では、ショルダ部36が当接するショルダ部当接時刻t2に基づいて、回転ツール30を被接合物33から離脱させる時間を決定する。これによって、ピン部37が被接合物33に当接する時刻に基づいて回転ツール30を被接合物33から離脱させる時間を決定する場合に比べて、接合後の接合品質のばらつきを少なくすることができる。
図24は、ツール押圧力が2695Nにおける破断強度と、回転ツール30の没入時間との関係を示すグラフである。図24(1)は、ショルダ部当接時刻t2から所定時間経過したショルダ接触後接合時間P21の変化における破断強度を示す。また図24(2)は、ピン部当接時刻t1から所定時間経過した総合接合時間P23の変化における破断強度を示す。ショルダ接触後接合時間P21および総合接合時間P23が増加するにつれて、破断強度が増加する。しかしながら接合時間P21,P23を長くしすぎると、回転ツール30の没入量が過大となり、被接合物33を貫通してしまうおそれがある。
ショルダ接触後接合時間P21における破断強度は、総合接合時間P23における破断強度に比べて、ばらつきが少ない。具体的には、同じショルダ接触後接合時間P21で接合した場合には、破断強度のばらつきは最大で約1000Nである。また同じ総合接合時間P23で接合した場合には、破断強度のばらつきは最大で約2000Nである。
図25は、ツール押圧力が3000Nにおける破断強度と、回転ツール30の没入時間との関係を示すグラフである。図25(1)は、ショルダ部当接時刻t2から所定時間経過したショルダ接触後接合時間P31の変化における破断強度を示す。また図25(2)は、ピン部当接時刻t1から所定時間経過した総合接合時間P33の変化における破断強度を示す。図25に示す場合と同様に、ショルダ接触後接合時間P31における破断強度は、総合接合時間P33における破断強度に比べて、ばらつきが少ない。
本実施の形態では、図24(1)および図25(1)に示すように、ショルダ部当接時刻t2に基づいて、回転ツール30を被接合物33から離脱させる離脱開始時刻t4を決定する。これによって破断強度のばらつきを減らすことができ、接合品質を向上することができる。また破断強度を確保するために接合時間を不所望に大きくする必要がなく、回転ツール30が被接合物33を貫通するおそれを減らすことができるとともに、接合作業に費やす時間を短縮することができる。またスポット接合においては、各接合部分における破断強度が総合されて被接合物33の強度が決定される。したがって各接合部分における破断強度がばらついて、いずれか1つでも低い場合には、全体として被接合物33の強度が大きく低下するおそれがある。本実施の形態では、上述したように破断強度のばらつきを減らすことで被接合物全体としても強度の低下を防ぐことができる。
以上のような本実施の形態は、発明の一例示に過ぎず発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば本実施の形態では、ショルダ部当接時刻t2を判断してから、所定時間経過した時刻を離脱開始時刻t4として決定したが、他の終了条件に基づいて離脱開始時刻t4を決定してもよい。たとえば第1実施形態で示したように、ショルダ部当接時刻t2を経過してから、回転用モータ40に与えられる電流、すなわち被接合物33から与えられる回転抵抗力が予め定められる離脱開始設定値に達した時刻を離脱開始時刻t4としてもよい。このようにショルダ部当接時刻t2を経過した後の回転抵抗力に基づいて離脱開始時刻t4を決定することで、さらに外乱の影響を少なくすることができる。また第2実施形態で示したように、ショルダ部当接時刻t2を経過してから、回転用モータ40に流れる電流の時間変化、すなわち被接合物33から与えられる回転抵抗力の時間変化が予め定める離脱開始設定値に達した時刻を離脱開始時刻t4としてもよい。このように第1〜第4実施形態で示した構成について、第5実施形態でも適用可能な構成については、適宜適用することができる。
またショルダ部当接時刻t2を決定するために、回転用モータの電流値に基づいて決定したが、押圧用モータの電流値に基づいてショルダ部当接時刻t2を決定してもよい。このように他の検出手段および検出方法に基づいて、ショルダ部当接時刻t2を決定してもよい。またショルダ部当接時刻t2に基づいて、離脱開始時刻t4を決定したが、回転ツール30が被接合物33に没入している間に調整可能な他の接合条件を変更してもよい。たとえば没入速度、押圧力、回転速度などを、ショルダ部当接時刻t2に基づいて変化させてもよい。
以上のような本実施の形態の摩擦撹拌装置およびその方法は、本発明の一例示であって、発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば本実施の形態では、アルミ合金を接合するとしたが、他の物質であってもよい。たとえばマグネシウム合金、銅合金、チタニウム合金、鉄または鋼などであっても、摩擦撹拌することができる。また接合装置は、上述した装置に限定されない。
本発明は、以下の実施の形態が可能である。
(1)略円柱状に形成されるショルダ部と、ショルダ部に対して同軸に形成されてショルダ部から軸線方向一方に突出し、ショルダ部よりも外径が小さい略円柱状に形成されるピン部とが形成される回転ツールを、軸線まわりに回転させながら対象物に没入させて対象物を摩擦撹拌する摩擦撹拌装置であって、
回転ツールを軸線まわりに回転駆動する回転手段と、
回転ツールを軸線方向に変位駆動して対象物に押圧する押圧手段と、
軸線方向に交差する走行方向に、対象物に対して回転ツールを相対的に変位駆動する走行手段と、
回転ツールが軸線まわりに回転しながら対象物を押圧するときに、対象物から回転ツールに与えられる抵抗力を検出する検出手段と、
回転手段、押圧手段および走行手段を制御する制御手段とを含み、
制御手段は、回転ツールを軸線まわりに回転させた状態で、回転ツールをピン部から対象物に没入させた後、検出手段によって検出される抵抗力が極大値となった時刻を、ショルダ部が対象物に当接したショルダ部当接時刻であることと判断し、前記ショルダ部当接時刻に基づいて、回転ツールを走行方向に移動開始させる時刻を決定することを特徴とする摩擦撹拌装置。
回転ツールのうちピン部が対象物に対向した状態で、回転手段が回転ツールを軸線まわりに回転駆動するとともに、押圧手段が回転ツールを対象物に向かって軸線方向に変位駆動する。回転ツールは、ピン部が対象物に当接し、ピン部が対象物に没入したあとで、ショルダ部が対象物に当接する。ショルダ部が当接した状態で、回転ツールが回転することによって、回転ツールが対象物に摺接する。そして対象物と回転ツールとの間に摩擦熱が生じて対象物が軟化する。このようにして対象物が非溶融の状態で部分的に流動化し、流動化した部分が撹拌されることで、対象物のうちでピン部が没入した付近を摩擦撹拌することができる。また回転ツールが対象物を摩擦撹拌した状態で、回転ツールが走行方向に走行することによって、走行方向に沿って摩擦撹拌することができる。
ピン部が対象物に当接してからショルダ部が対象物に当接するまでの摩擦撹拌状態は、撹拌条件が一定でも撹拌状況ごとに変動する外乱の影響によってばらつく。これに対してショルダ部が当接してからの摩擦撹拌状態は、外乱の影響が少ない。上述の実施形態では、制御手段は、検出手段によって検出される抵抗力が極大値となったときに、ショルダ部が対象物に当接したことを判断する。そしてショルダ部当接時刻に基づいて、回転ツールを走行方向に移動開始させる走行開始時刻を決定する。
このようにショルダ部が当接したことを判断し、判断したショルダ部当接時刻に基づいて、回転ツールの走行開始時刻を決定することで、外乱の影響を抑えて一定の摩擦撹拌状態から、回転ツールの走行を開始することができる。これによって摩擦撹拌が不十分な状態となったり、摩擦撹拌が過剰な状態となったりすることを防ぐことができる。したがって摩擦撹拌後の対象物の品質を安定化することができる。
またショルダ部当接時刻の抵抗力は、外乱の影響によって変動することがあるが、残余の時刻に比べて必ず極大値となる。したがって上述の実施形態のように、対象物から回転ツールに与えられる抵抗力が極大値となった時刻を、ショルダ部当接時刻として判断することで、抵抗力が予め定める値に達した時刻を、ショルダ部当接時刻として判断する場合に比べて、ショルダ部当接時刻を精度よく判断することができる。これによって対象物の品質をさらに安定化することができる。
(2)制御手段は、ショルダ部当接時刻に達した後で、検出手段によって検出される抵抗力が予め定める走行開始設定値に達すると、回転ツールを走行方向に移動開始させることを特徴とする摩擦撹拌装置。
ショルダ部当接時刻に達した後で、抵抗力が走行開始設定値に達すると、回転ツールの走行方向への移動を開始させる。抵抗力は、ショルダ部当接時刻で極大値となる。したがってショルダ部当接時刻の前と、ショルダ部当接時刻の後とで、抵抗力が、走行開始設定値に達することになる。上述の実施形態では、ショルダ部当接時刻の後で、抵抗力が走行開始設定値に達すると走行を開始させるので、ショルダ部が対象物に当接する前に走行を開始することを防ぐことができる。したがってショルダ部が対象物に確実に当接した後で、回転ツールの走行を開始することができ、対象物の回転ツール没入部分が過不足なく軟化した状態で、回転ツールの走行を開始することができる。
(3)制御手段は、ショルダ部当接時刻に達した後で、抵抗力の時間変化が予め定める走行開始設定値に達すると、回転ツールを走行方向に移動開始させることを特徴とする摩擦撹拌装置。
ショルダ部当接時刻に達した後で、抵抗力の時間変化が走行開始設定値に達すると、回転ツールの走行方向への移動を開始させる。ショルダ部当接時刻に達した後では、抵抗力の時間変化、すなわち時間による微分値は、時間経過とともに小さくなる。この抵抗力の時間変化は、外乱の影響が少ないので、対象物の回転ツール没入部分が過不足なく軟化した状態で、回転ツールの走行を開始することができる。またショルダ部当接時刻を求める演算式とほぼ同じ演算式を用いて求めることができ、走行開始時刻を決定する演算式を簡単化することができる。
(4)制御手段は、検出手段からショルダ部当接時刻に達する前と、ショルダ部当接時刻に達した後とで、摩擦撹拌条件を異ならせることを特徴とする摩擦撹拌装置。
ショルダ部当接時刻に達する前には、ピン部を対象物に没入するために適したピン部没入用摩擦撹拌条件に設定可能である。またショルダ部当接時刻に達した後には、回転ツールを走行させるために適したツール走行用摩擦撹拌条件に設定可能である。このようにショルダ部当接前とショルダ部当接後とで、撹拌条件を変更することによってより最適に摩擦撹拌を行うことができる。たとえばツール走行時に比べて、ピン没入時のツール回転速度を高くすることで、短時間に対象物を加熱することができ、摩擦撹拌動作に費やす時間を短縮することができる。またツール走行時においてツール回転速度を低くすることで、過撹拌による接合欠陥を防ぐことができる。
(5)回転ツールを、軸線まわりに回転させながら対象物に没入させて対象物を摩擦撹拌する摩擦撹拌装置であって、
回転ツールを軸線まわりに回転駆動する回転手段と、
回転ツールを軸線方向に変位駆動して対象物に押圧する押圧手段と、
軸線方向に交差する走行方向に、対象物に対して回転ツールを相対的に変位駆動する走行手段と、
回転ツールが対象物に没入されたときに、対象物から発生するバリを撮像する撮像手段と、
回転手段、押圧手段および走行手段を制御する制御手段とを含み、
制御手段は、回転ツールを軸線まわりに回転させた状態で、回転ツールを対象物に没入させた後、撮像手段によって撮像されるバリの撮像結果に基づいて、回転ツールを走行方向に移動開始させる走行開始時刻を決定することを特徴とする摩擦撹拌装置。
回転ツールが対象物に対向した状態で、回転手段が回転ツールを軸線まわりに回転駆動するとともに、押圧手段が回転ツールを対象物に向かって軸線方向に変位駆動する。対象物に対して、回転ツールの先端部が没入した状態で、回転することによって、回転ツールが対象物に摺接する。そして対象物と回転ツールとの間に摩擦熱が生じて対象物が軟化する。このようにして対象物が非溶融の状態で流動化し、流動化した部分が撹拌されることで、対象物のうちで先端部が没入した付近を摩擦撹拌することができる。
制御手段は、撮像手段によって撮像されるバリの撮像結果に基づいて、回転ツールを走行方向へ移動開始する時刻を決定する。たとえば制御手段は、走行方向下流側にバリが所定量発生したことを判断すると、回転ツールの走行を開始する。回転ツールの先端部が対象物に当接してから対象物に没入するまでの摩擦撹拌状態は、撹拌条件が一定でも撹拌状況ごとに変動する外乱の影響によってばらつく。これに対して、バリの発生と摩擦撹拌状態との間の関係には、外乱の影響が少ない。
したがって上述の実施形態のようにバリの撮像結果に基づいて、回転ツールの走行開始時刻を決定することで、外乱の影響を抑えて一定の摩擦撹拌状態で、回転ツールの走行を開始することができる。これによって摩擦撹拌が不十分な状態となったり、摩擦撹拌が過剰な状態となったりすることを防ぐことができ、摩擦撹拌後の対象物の品質を安定化することができる。
(6)略円柱状に形成されるショルダ部と、ショルダ部に対して同軸に形成されてショルダ部から軸線方向一方に突出し、ショルダ部よりも外径が小さい略円柱状に形成されるピン部とが形成される回転ツールを、軸線まわりに回転させながら対象物に没入させて対象物を摩擦撹拌する摩擦撹拌装置であって、
回転ツールを軸線まわりに回転駆動する回転手段と、
回転ツールを軸線方向に変位駆動して対象物に押圧する押圧手段と、
ショルダ部が対象物に当接したことを検出するための検出手段と、
回転手段、押圧手段および走行手段を制御する制御手段とを含み、
制御手段は、回転ツールを軸線まわりに回転させた状態で、回転ツールをピン部から対象物に没入させた後、検出手段によってショルダ部が対象物に当接したことを示すショルダ部当接情報が検出手段から与えられると、ショルダ部当接情報に基づいて、回転ツールを対象物から離脱させる離脱開始時刻を決定することを特徴とする摩擦撹拌装置。
回転ツールのうちピン部が対象物に対向した状態で、回転手段が回転ツールを軸線まわりに回転駆動するとともに、押圧手段が回転ツールを対象物に向かって軸線方向に変位駆動する。回転ツールは、ピン部が対象物に当接し、ピン部が対象物に没入したあとで、ショルダ部が対象物に当接する。対象物に対して、ピン部が没入するとともに、ショルダ部が当接した状態で、回転ツールが回転することによって、回転ツールが対象物に摺接する。そして対象物と回転ツールとの間に摩擦熱が生じて対象物が軟化する。このようにして対象物が非溶融の状態で流動化し、流動化した部分が撹拌されることで、対象物のうちでピン部が没入した付近を摩擦撹拌することができる。この後、回転ツールが対象物から離脱することで、対象物のうちの一部であるスポット部分を摩擦撹拌することができる。
制御手段は、ショルダ部当接情報が検出手段から与えられると、与えられたショルダ部当接情報に基づいて、回転ツールを対象物から離脱させる離脱開始時刻を決定する。たとえば制御手段は、ショルダ部当接情報が与えられてから、所定時間経過すると回転ツールを対象物から離脱させる。
ピン部が対象物に当接してからショルダ部が対象物に当接するまでの摩擦撹拌状態は、接合条件が一定であっても、接合状況ごとに変動する外乱の影響によってばらつく。これに対して、ショルダ部が当接してからの摩擦撹拌状態は、外乱の影響が少ない。したがって上述の実施形態のようにショルダ部が対象物に当接したことを判断し、ショルダ部当接時刻に基づいて、回転ツールの離脱開始時刻を決定することで、外乱の影響を抑えて一定の摩擦撹拌状態で、回転ツールを離脱させることができる。これによって、摩擦撹拌が不十分な状態となったり、摩擦撹拌が過剰な状態となったりすることを防ぐことができ、摩擦撹拌後の対象物の品質を安定化することができる。
(7)略円柱状に形成されるショルダ部と、ショルダ部に対して同軸に形成されてショルダ部から軸線方向一方に突出し、ショルダ部よりも外径が小さい略円柱状に形成されるピン部とが形成される回転ツールを、軸線まわりに回転させながら対象物に没入させて対象物を摩擦撹拌する摩擦撹拌方法であって、
回転ツールを軸線まわりに回転させた状態で、回転ツールをピン部から対象物に没入させた後、対象物から回転ツールに与えられる抵抗力が極大値となった時刻に基づいて、回転ツールによる摩擦撹拌条件を調整することを特徴とする摩擦撹拌方法。
回転手段によって回転ツールを軸線まわりに回転させた状態で、押圧手段によって回転ツールのピン部から対象物に没入させる。そして、対象物から回転ツールに与えられる抵抗力が極大値となった時刻に基づいて、回転ツールによる摩擦撹拌条件を調整する。たとえば摩擦撹拌条件の調整例として、回転ツールの走行を開始させる走行開始時刻を決定したり、回転ツールを対象物から離脱させる離脱開始時刻を決定したり、回転ツールの回転速度を変更したりする。
ここで抵抗力が極大値となる時刻は、ショルダ部が対象物に当接する時刻と一致する。ピン部が対象物に当接してからショルダ部が対象物に当接するまでの摩擦撹拌状態は、外乱の影響によってばらつく。これに対して、ショルダ部が当接してからの摩擦撹拌状態は、外乱の影響が少ない。したがって上述の実施形態のようにショルダ部が対象物に当接する時刻に基づいて、摩擦撹拌条件を調整することで、外乱の影響を少なくして、摩擦撹拌を安定して行うことができる。これによって摩擦撹拌後の対象物の品質を安定化することができる。
(8)回転ツールを、軸線まわりに回転させながら対象物に没入させて対象物を摩擦撹拌する摩擦撹拌方法であって、
回転ツールを軸線まわりに回転させた状態で、回転ツールの先端部から対象物に没入させ、撮像手段によって撮像されるバリの撮像結果に基づいて、回転ツールによる摩擦撹拌条件を調整することを特徴とする摩擦撹拌方法。
回転手段によって回転ツールを軸線まわりに回転させた状態で、押圧手段によって回転ツールの先端部から対象物に没入させる。そして、撮像手段によって撮像されるバリの撮像結果に基づいて、回転ツールによる摩擦撹拌条件を調整する。たとえば摩擦撹拌条件の調整例として、回転ツールの走行を開始させる走行開始時刻を決定したり、回転ツールを対象物から離脱させる離脱開始時刻を決定したり、回転ツールの回転速度を変更したりする。
バリの発生状態と摩擦撹拌状態との関係は、外乱の影響によって変動することが少ない。したがって上述の実施形態のようにバリの撮像結果に基づいて、摩擦撹拌状態を調整することで、外乱の影響を少なくして、摩擦撹拌後の対象物の品質を安定化することができる。