JP2011021228A - 超高純度合金鋳塊の製造方法 - Google Patents

超高純度合金鋳塊の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リン[P]などの不純物元素の金属Caによる還元精錬技術などを、製品鋳塊重量が例えば10kg以上となる実用規模の精錬技術にまで発展させるための具体的な方法を明示すること。
【解決手段】精錬剤は、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物である。Caハライド組成フラックスは、フッ化カルシウムに酸化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-CaO、フッ化カルシウムに塩化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-CaCl、または、フッ化カルシウムに酸化カルシウムおよび塩化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-(CaO+CaCl)である。合金溶湯プール6の重量に対する金属Caの添加率を0.5wt%以上とし、合金溶湯プール6の重量に対するCaハライド組成フラックスの添加率を、金属Caの添加率以上とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、超高純度(極低不純物含有量)が要求される高級ステンレス鋼や超合金などの合金鋳塊の製造方法に関し、特に、製品鋳塊の重量が10kg以上の実用規模鋳塊を製造するのに好適な製造方法に関する。
合金の耐食性に悪影響を及ぼす不純物元素として、炭素[C]、窒素[N]、酸素[O]、リン[P]、硫黄[S]などが知られている。また、これらの不純物元素濃度を極限まで低減させることにより、合金の耐食性が大幅に改善されることも知られている。
これらの不純物元素の濃度は、例えば[C]+[N]+[O]+[P]+[S]<100ppmとすることが目標となる。従来のステンレス鋼の量産製造法では、これら不純物元素の総量は高純度化されたステンレス鋼であっても250ppmほどであった。
一方、電解鉄、電解ニッケル、金属クロムなどの高純度合金原料を用いて、真空誘導溶解装置により溶製を行う方式であれば、[P],[S]は10〜20ppm程度に、[N],[O]は20〜30ppm程度に、[C]は30〜50ppm程度にまで、不純物元素を低減することができ、かなり高純度な合金鋳塊を製造することができる。しかしながら、高価な高純度合金原料を用いる必要がある。
また、Cr含有量の高いステンレス鋼溶湯から、[P],[N]などの不純物元素を除去する方法として、通常の耐火物るつぼ真空誘導溶解法では困難であることが知られている。鉄鋼材料中の通常の[P]の除去精錬では、酸化精錬法が用いられ、[P]をスラグ状のリン酸化物(P)に転換させて、スラグに[P]を吸収除去する。しかしながら、Cr含有量の高いステンレス鋼の場合は、[P]と同時に合金成分である[Cr]も酸化されてしまう。すなわち、通常の耐火物るつぼ真空誘導溶解法では、Cr含有量の高いステンレス鋼の場合、酸化精錬が困難となるという原理的な問題がある。
これに対し、リン[P]などの不純物元素の除去技術として、1970年台に、非特許文献1に示されるような還元精錬技術が報告されている。この報告では、エレクトロスラグ再溶解(ESR)装置を用いている。内径φ70mmの水冷銅るつぼ内で、溶融スラグとしてCaFを使用し、これに金属Caを溶解させたスラグ浴を形成させて、消耗電極材としてステンレス鋼(SUS304)の溶解精錬試験を行っている。結果として、ステンレス溶鋼中の不純物元素である[P],[Sn],[Pb],[As],[Sb],[Bi],[O],[S],[Se],[Te],[N]などが除去精錬できることが文献に示されている。この報告は、金属Caを用いる還元精錬手法の初期の報告であり、還元精錬法によりCr含有合金中からリン[P]などの不純物元素が、原理的に除去精錬可能であることを示した報告である。しかしながら、この報告で用いられたESRプロセスでは、スラグ浴自体に交流電流を通電して、その抵抗発熱によりスラグ浴を形成させる必要がある。そのため、精錬効果を高めようとして添加する金属Ca量を増やすと、スラグ浴自体の電気抵抗が著しく低くなり、十分な発熱量が得られず、スラグ浴の形成自体が困難となる。すなわち、実用的なプロセスとしては課題があった。
1980年代には、特許文献1〜3に示されるような、水冷銅るつぼを用いる磁気浮揚型の誘導溶解装置(コールドクルーシブル式誘導溶解装置)を用いた還元精錬技術が報告されている。この精錬技術は、ステンレス鋼の溶解自体を誘導加熱して合金溶湯プールを形成させ、これに金属Caおよびフッ化カルシウム(CaF)を精錬剤として添加して、リン[P]などの不純物元素を除去するものである。これらの報告では、内径φ60mmまたは内径φ84mmの水冷銅るつぼ(コールドクルーシブル)を用いて、ステンレス鋼(SUS316L)を0.8kg〜2.0kgほど溶解させる。その後、フッ化カルシウムおよび金属Caが溶融した棒状の精錬剤を、ステンレス鋼(溶湯プール)に直接添加して反応させる。これにより、リン[P]などの不純物元素の除去精錬ができる。しかしながら、これら報告も、非特許文献1に記載された報告と同様に、小規模な原理確認試験の規模であった。すなわち、実用的と思われる10kg以上の合金溶湯プールに対して、還元精錬技術が成立するか否か、あるいは成立する場合の具体的な条件などは、把握されていない状態であった。
前記した還元精錬方式では、フッ化カルシウム(CaF)をフラックスとして使用し、溶融フッ化カルシウム層を形成させて、これに金属Caを溶解させた状態を形成させる。そして、金属Caと合金溶湯プール中の[P]とを反応させてCa化合物とし、フッ化カルシウム浴中にCa化合物を吸収させる。これにより、脱リン[P]を行わせている。この精錬反応では、金属Caを溶解できるCaFなどの溶融フラックスを用いることが不可欠であることから、反応容器として、溶融CaFやCaと反応しない容器である水冷銅るつぼを用いる必要がある。すなわち、この還元精錬技術は、通常の耐火物るつぼ方式真空誘導溶解法には適用できない。したがって、実用化のためには、大型のコールドクルーシブル式誘導溶解装置での還元精錬技術を確立することが必要となる。
一方、本発明者らは、大型コールドクルーシブル式誘導溶解法技術として、特許文献4に示すような、内径φ400mm以上の水冷銅るつぼを用いた大規模なコールドクルーシブル式誘導溶解技術を確立している。前記した還元精錬技術を、このような大型のコールドクルーシブル式誘導溶解装置で成立させる条件が把握できれば、実用規模での精錬技術となることが期待される。なお、コールドクルーシブル式誘導溶解法技術について記載されたその他の文献として例えば非特許文献2や特許文献5〜7に記載されたものもある。
Y.Nakamura et.al: Refining of 18%Cr-8%Ni Steel with Ca-CaF2 Solution, Transaction ISIJ, Vol.16,(1976) p.623 岩崎、櫻谷、福澤:コールドクルーシブル浮揚溶解による極低リンステンレス鋼の溶製:鉄と鋼 Vol.88(2002)No.7,p.413 特開平11−246910号公報 特開2002−69589号公報 特開2003−55744号公報 特開平11−310833号公報 特開2003−342629号公報 特開2007−154214号公報 特開2007−155141号公報
そこで、本発明者らは、10〜50kg級の合金溶湯プールにおいて、前記した還元精錬技術が成立するか否かを見極めるため、内径がφ220mmの水冷銅るつぼを有する真空チャンバー付のコールドクルーシブル式誘導溶解装置を用いて、ステンレス鋼(SUS310組成)20kgを溶解し、これにフッ化カルシウムおよび金属Caを添加する試験を試みた。真空チャンバー内の雰囲気は、Caの酸化損失を抑制するため、真空チャンバー内を真空排気した後にArガスを600〜800hPaまで導入した不活性ガス雰囲気とした。市販のフェロクロム、低炭素鋼、電解ニッケルなどを合金原料として用いて、ステンレス鋼(SUS310組成)を20kg溶解し、合金溶湯プールを形成させた。その後、粉状フッ化カルシウム(CaF):400gと粒状金属Ca:100gとを混合した精錬剤を合金溶湯プールに添加する試験を試みたところ、精錬剤の添加と同時に、激しく金属Caの蒸発が始まり、黒色の煙状物(ダスト)が発生して、わずか数秒で、合金溶湯プール表面からの放射光も観察できない状況になることが明らかとなった。
ここで、通常の溶解操作では、合金溶湯プール表面の溶融状況を観察しながら、合金溶湯プール状態の保持が行われている。そのため、通常、合金溶湯プール表面が観察できない状況となることはないため、本発明者らは、直ちに(添加1分後)、高周波加熱電源をOffとして、水冷銅るつぼ内で合金溶湯プールを凝固させる操作を行った。
上記溶解精錬試験後、一晩の間、水冷銅るつぼを静置して、翌日に真空チャンバーを開放したところ、黒色のダストはほぼ沈降して真空チャンバーの床面や壁面に落下・付着していた。また、水冷銅るつぼ内には、凝固したステンレス鋼塊および凝固スラグ(CaF−Ca)が存在した。これらは凝固収縮により直径が小さくなっていたことから、これらを水冷銅るつぼから取り出すことが可能であった。凝固したステンレス鋼塊およびCaF−Caスラグを取り出した後、水冷銅るつぼ内の損傷の状況を観察すると、CaF−Caスラグにより侵食された状況はなく、水冷銅るつぼ自体は健全であることが確認された。また、精錬剤として添加した金属Caは全量溶融されていたが、フッ化カルシウムは、その一部が粉体のままで凝固スラグ(CaF−Ca)の上側に付着しており、全量が溶融できたのではないことも明らかとなった。
次に、取り出した凝固鋳塊(凝固したステンレス鋼塊)から分析用試料を切り出して、分析調査を行った。その結果、合金溶湯プール段階で0.018wt%ほどであった[P]濃度が、0.014wt%ほどと、若干であるが、除去精錬されていることが確認された。すなわち、10kg以上の合金溶湯プール重量規模(実用規模)においても、原理的に除去精錬できる可能性のあることが確認できた。しかしながら、効率的に除去精錬効果を得るためには、適正な精錬条件を究明することが不可欠であることが判明した。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、水冷銅るつぼを用いるコールドクルーシブル式浮揚溶解装置の実験室規模試験において原理確認されている、リン[P]などの不純物元素の金属Caによる還元精錬技術などを、製品鋳塊重量が例えば10kg以上となる実用規模の精錬技術にまで発展させるための具体的な方法を明示することにある。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、製品鋳塊重量が例えば10kg以上となる実用規模の合金溶湯プールから不純物元素を除去するために不可欠となる、金属Caの添加率、ならびにフラックスの成分組成およびその添加率などの範囲を見出し、この知見に基づき本発明が完成するに至ったのである。
すなわち本発明は、コールドクルーシブル式誘導溶解装置の水冷銅るつぼに合金原料を投入して、不活性ガス雰囲気下において、所定の合金組成に成分調整した合金溶湯プールを形成する溶湯プール形成工程と、前記合金溶湯プールに精錬剤を添加して、少なくともリンを含む不純物元素を除去する精錬工程と、を備える超高純度合金鋳塊の製造方法である。そして、前記精錬剤は、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物であり、前記Caハライド組成フラックスは、フッ化カルシウムに酸化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-CaO、フッ化カルシウムに塩化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-CaCl、または、フッ化カルシウムに酸化カルシウムおよび塩化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-(CaO+CaCl)であり、前記合金溶湯プールの重量に対する前記金属Caの添加率を、0.5wt%以上とし、前記合金溶湯プールの重量に対する前記Caハライド組成フラックスの添加率を、前記金属Caの添加率以上とする。
また本発明において、前記合金溶湯プールに前記精錬剤を添加した後、添加した前記精錬剤が全て溶融するのに要する時間の1/2に当たる時間T1以上、添加した前記金属Caの1/2が蒸発により失われる時間T2以下の間、前記合金溶湯プールを保持することが好ましい。
さらに本発明において、前記溶湯プール形成工程および前記精錬工程を複数回行って、少なくともリンの含有量が2ppm以下の超高純度合金鋳塊を製造することが好ましい。
さらに本発明において、前記した超高純度合金鋳塊の製造方法により製造した鋳塊を1次鋳塊とし、前記コールドクルーシブル式誘導溶解装置の水冷銅るつぼに前記1次鋳塊を投入して、合金溶湯プールを形成する第2溶湯プール形成工程と、前記1次鋳塊の合金溶湯プールに第2精錬剤を添加した後、チャンバー内の不活性ガスを排気して排気状態を15分以上保持し、少なくとも炭素およびカルシウムを含む不純物元素を除去する第2精錬工程と、を備え、前記第2精錬剤は、酸化鉄などの所定の合金組成主要成分元素の酸化物である酸化剤と前記Caハライド組成フラックスとの混合物であり、前記酸化剤の添加重量を、前記1次鋳塊の合金溶湯プール中の前記少なくとも炭素およびカルシウムを含む不純物元素を全量酸化させるために算出される算出重量の0.2倍以上、4.0倍以下とし、前記第2精錬工程において、前記1次鋳塊の合金溶湯プールの重量に対する前記Caハライド組成フラックスの添加率を、0.5wt%以上、5.0wt%以下とすることが好ましい。
さらに本発明において、前記した超高純度合金鋳塊の製造方法により製造した鋳塊に、脱酸元素系の合金成分を添加して、合金化することが好ましい。
さらに本発明において、前記した超高純度合金鋳塊の製造方法により製造した鋳塊を2次鋳塊とし、コールドハース式電子ビーム溶解装置の水冷銅製皿状容器に前記2次鋳塊を供給して、5×10−4mbarよりも低い気圧下において、当該水冷銅製皿状容器内と当該水冷銅製皿状容器に隣接する水冷銅鋳型内とに、合金溶湯プールを形成する第3溶湯プール形成工程と、前記水冷銅製皿状容器内の合金溶湯プールに第3精錬剤を添加して、不純物元素である炭素を除去する第3精錬工程と、を備え、前記第3精錬剤は酸化鉄などの所定の合金組成主要成分元素の酸化物である酸化剤であり、前記第3精錬剤の添加重量を、前記2次鋳塊の合金溶湯プール中の前記不純物元素である炭素を全量酸化させるために算出される算出重量の1.0倍以上、4.0倍以下とすることが好ましい。
本発明によれば、製品鋳塊重量が例えば10kg以上となる超高純度な合金の実用規模鋳塊を溶製により製造することができる。
コールドクルーシブル式誘導溶解装置を示す模式図である。 金属Caの添加率{Ca}Mと脱リン[P]率、脱窒[N]率との関係を示すグラフである。 合金溶湯プールの保持時間に対する、脱リン率および脱窒率の変化を模式的に示すグラフである。 金属Ca還元精錬反応をモデル化した図(図4(a))、および反応モデルにおける2つのパラメータ(Kmelt(Ca+Flx)、Kev(Ca))を試験結果から求めた例を示すグラフ(図4(b)、(c))である。 水冷銅るつぼの内径と精錬剤添加後の最適保持時間との関係を示すグラフである。 酸化鉄添加・真空酸化精錬における酸化鉄添加割合(WFe/MFeO)および合金溶湯プール重量に対するCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mと、脱炭[C]率との相関を示すグラフである。 酸化鉄添加・真空酸化精錬における酸化鉄添加割合(WFe/MFeO)および合金溶湯プール重量に対するCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mと、脱珪[Si]率との相関を示すグラフである。 コールドハース式電子ビーム溶解装置を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、文部科学省からの委託研究の成果を利用してなされたものである。
(コールドクルーシブル式誘導溶解装置を用いたCa還元精錬方法)
前記したように、本発明は、コールドクルーシブル式誘導溶解装置1の水冷銅るつぼ3に例えば原料フィーダー2により合金原料を投入し、不活性ガス雰囲気下において、当該合金原料を例えばコイル5により誘導溶解させて、所定の合金組成に成分調整した合金溶湯プール6を形成する溶湯プール形成工程と、形成された合金溶湯プール6に精錬剤を添加して、少なくともリンを含む不純物元素を除去する精錬工程と、を備える超高純度合金鋳塊の製造方法である。そして、上記精錬剤は金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物である。このCaハライド組成フラックスは、フッ化カルシウムに酸化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-CaO、フッ化カルシウムに塩化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-CaCl、または、フッ化カルシウムに酸化カルシウムおよび塩化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-(CaO+CaCl)である。本製造方法では、合金溶湯プール6の重量に対する金属Caの添加率を0.5wt%以上とし、合金溶湯プール6の重量に対するCaハライド組成フラックスの添加率を金属Caの添加率以上とする(番号は、添付の図1を参照)。
本発明の超高純度合金鋳塊の製造方法によると、製品鋳塊の重量が10kg以上の超高純度合金鋳塊を製造することができる。ある程度の熱間加工を施し、実用規模での部品を形成するためには、少なくとも10kg以上程度の製品鋳塊重量が必要となる。
超高純度合金鋳塊の成分組成は、その使用の目的により、様々な成分組成とすることができる。すなわち、本発明の製造方法は、Feを主成分とする合金材料、Niを主成分とする合金材料、Fe−Niを主成分とする合金材料、またはCoなどを主成分とする合金材料、などの合金原料への適用が可能である。なお、好適には、Fe−Niを主成分とするFe基Ni基合金材料に本発明の製造方法を適用することである。また、超高純度とは、現在すでに多用されている同種合金の鋳塊に比べて、不純物元素とされる少なくともPの含有量がきわめて少ないことを意味する。さらには、超高純度とは、現在すでに多用されている同種合金の鋳塊に比べて、不純物元素とされる例えばP、S、N、Sn、Pbなどの各含有量が総合的にきわめて少ないことを意味する。
本発明の製造方法を実施するためには、図1に示したような、水冷銅るつぼ3を有する磁気浮揚型のコールドクルーシブル誘導溶解(CCIM)方式の溶解設備(コールドクルーシブル式誘導溶解装置1)が不可欠であり、一般的な耐火物るつぼを用いる誘導溶解方式には適用できない。これは、精錬用フラックスとしてフッ化カルシウム(CaF)などのCaハライド系フラックスを用いる必要があるためである。通常の耐火物るつぼ方式では、耐火物るつぼが溶融フッ化カルシウムなどにより、著しく溶損されて、加熱用水冷銅コイルの溶損-水蒸気爆発などの事故につながる危険性があるためである。
コールドクルーシブル式誘導溶解装置1の水冷銅るつぼ3の内径D(m)は、10kg以上の合金溶湯プール6を形成させるために、直径0.2m以上とすることが望ましい。水冷銅るつぼ3の内径が、直径0.2m以下の場合、形成できる合金溶湯プール6の重量が少なくなり、10kg以上の合金溶湯プール形成に対しては、実用的と言えない。
CCIM方式での溶製では、雰囲気制御のための真空チャンバー4が設けられていることが必要である。そして、溶製する合金中からの合金成分の蒸発損失を防ぐために、真空チャンバー4内をArガスやHeガスなどを導入した不活性ガス雰囲気下とすることが有効である。不活性ガス雰囲気とするためには、事前に、真空ポンプにより真空チャンバー4内の排気を行った後、Arガスなどを導入することが望ましい。これは、精錬剤として用いる溶融金属Caが非常に活性なため、真空チャンバー4内に酸素ガスなどが存在すると、精錬反応前にCaが酸化されて消耗してしまうためである。なお、金属Caを用いる還元精錬においては、真空チャンバー4からの漏れを極力低減しておくことが望ましい。
実際の精錬操作では、コールドクルーシブル式誘導溶解装置1の水冷銅るつぼ3内において、所定の合金組成に成分調整した合金溶湯プール6を形成させた後、合金溶湯プール6の重量M(kg)に対して、以下の条件を満足する精錬剤を添加することにより、リン[P]、硫黄[S]、窒素[N]、錫[Sn]、鉛[Pb]、硼素[B]などの不純物元素を除去精錬する。合金溶湯プール6の下には合金凝固スカル層8が形成される。この様なCa還元精錬の状況は、模式的に図1のように表される。以下に示すような精錬条件を満足させることが、不純物元素を除去精錬して、超高純度(極低不純物)な例えばFe基Ni基合金鋳塊を溶製するために不可欠な条件となる。
内径φ220mmの水冷銅るつぼ3を有するコールドクルーシブル式誘導溶解装置1を用いて、多数の試験および検討を行い、明らかとなった精錬条件は次の通りである。
(1)精錬剤は、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物であること。
金属Caを用いる還元精錬法では、金属Caを安定に保持する必要がある。金属Ca単体の沸点は、1484℃である。CCIM法で形成される例えばFe基Ni基合金の溶湯プール温度は、1520℃前後(Fe基)から1450℃前後(Ni基)ほどである。そのため、単体で金属Caを合金溶湯プール6に添加すると、沸点が1484℃の金属Caは、ほぼ蒸発除去されてしまい、精錬反応のための金属Caが存在できない状況となる。したがい、金属Caの蒸気圧を低減させて、金属Caを合金溶湯プール6と共存させるための手段が必要となる。金属Caは、溶融フッ化カルシウム(CaF)などの溶融Caハライドに溶解することが知られている。フッ化カルシウムの融点は、1410℃ほどであり、Fe基合金の場合は、合金溶湯プール6の温度が比較的高いことから、合金溶湯プール6からの伝熱により溶融スラグ層7を形成させることが可能である。
(2)Caハライド組成フラックスの成分組成については、非特許文献1、特許文献1〜3においては、フッ化カルシウム(CaF)単体が用いられている。しかしながら、Ni含有量の多いステンレス鋼やNi基合金の場合は、CCIM法で形成される合金溶湯プールの温度が低いことから、フッ化カルシウム(CaF)単体では、それが溶融されずに粉体のままの状態で精錬反応が終わることがしばしば観察された。そのような場合、金属Caをフラックス浴に有効に保持することが困難となり、不純物除去精錬効果が得られにくくなる。多数の試験の結果、本発明者らは、フッ化カルシウム(CaF)を主成分とするものの、融点を降下させる化合物を添加したフラックスを用い、添加フラックスが容易に溶解される必要のあることを見出した。フッ化カルシウム(CaF)に添加して融点を降下させ、かつ精錬反応に影響の少ない化合物として、酸化カルシウム(CaO)、または塩化カルシウム(CaCl)を選択し、これらをフッ化カルシウム(CaF)に配合するフラックス組成とすることが適切であることを見出した。
Caハライド組成フラックスの具体的な組成は、CaF−CaO(5〜30wt%)、CaF−CaCl(5〜30wt%)、またはCaF−(CaO+CaCl)(5〜30wt%)組成などである。ここで、例えば、CaF−CaO(5〜30wt%)とは、フッ化カルシウムに酸化カルシウムを5〜30wt%(フッ化カルシウムに対する比率)配合したものである。また、CaF−(CaO+CaCl)(5〜30wt%)とは、フッ化カルシウムに対して、酸化カルシウムと塩化カルシウムとを合わせて計5〜30wt%配合したものである。
Ni含有量の少ないFe基合金に対しては、これらの中では、比較的に融点の高いCaF−20CaO(wt%)組成のフラックス(CaF−CaO(20wt%)組成のフラックス)が有効であった。CaFへの少量のCaOやCaClの添加により、フラックスの融点が低下し、合金溶湯プール6からの伝熱による溶融スラグ層7の形成が容易となる。しかしながら、添加するCaOが30wt%以上になると、CaOの溶け残りなどが発生するためと推定されるが、フラックスが溶解されにくくなり、スラグ浴の流動性が低下するため、これ以上の添加は有効では無いと判断された。また、塩化カルシウムの添加は、低融点化の効果が大きいため、Ni含有量が多く、その融点が低い合金に対して有効である。ただし、蒸発損失が激しいため、これも30wt%以上の添加は、精錬操作が不安定となったことから、30wt%以下が適切と見出された。
(3)合金溶湯プール6の重量M(kg)に対する金属Caの添加率({Ca}M(wt%))、および合金溶湯プール6の重量M(kg)に対するCaハライド組成フラックスの添加率({Flx}M(wt%))は、次の範囲を満足することが有効であることが、多数の試験の結果、明らかとなった。ここで、{Ca}M(wt%)、および{Flx}M(wt%)は、次式で定義される。
{Ca}M=WCa/M×100
{Flx}M=WFlx/M×100
WCa:添加する金属Caの重量(kg)
WFlx:添加するするCaハライド組成フラックスの重量(kg)
M:合金溶湯プール6の重量(kg)
なお、精錬剤として添加する金属Caの重量やフラックスの重量は、通常の取り扱いでは、フラックス中の濃度として整理されることが多い。しかしながら、合金溶湯プール6の重量M(kg)に対する重量割合として整理する方が、所要の金属Ca量やフラックス量を直接的に把握しやすいことから、ここでは、{Ca}Mや{Flx}Mのような定義の表示でそれらの重量を表すこととした。なお、合金溶湯プール6の重量Mは、水冷銅るつぼ3に投入する前の合金原料の重量と等しい。
そして、{Ca}Mおよび{Flx}Mの具体的な所要量は、次式を満足する必要のあることが判明した。
0.5≦{Ca}M かつ {Ca}M≦{Flx}M
金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物を合金溶湯プール6に添加すると、直ちに金属Caの蒸発が始まり、黒色の煙が発生する。金属Ca添加率が少ない条件({Ca}M<0.1)では、初期添加のCa蒸発損失により、添加したCaの多くが失われるため、除去精錬効果がほとんど得られない結果となる。金属Caの添加量を増加させると(0.4<{Ca}M)、添加後、数秒から数十秒で、発生する黒煙が真空チャンバー4内に立ち込めて、合金溶湯プール6表面からの放射光も遮られる状況となり、合金溶湯プール6の表面状況を観察することが困難となる。
本検討の初期の段階では、合金溶湯プール6表面の状態が観察できなることを懸念して、添加する金属Ca量を少なくした条件での試験を行った。例えば、φ220mmの水冷銅るつぼ3内に20kgの合金溶湯プール(Fe−20Ni25Cr)を形成させ、この合金溶湯プールに、金属Ca:30gとCaF−CaO(8:2):270gとを添加する試験({Ca}M=0.15%、{Flx}M=1.35%)を実施した。このような条件であれば、Ca蒸発ダストにより視界は劣化するものの、合金溶湯プール6表面の観察自体は、何とか可能な状態であった。
しかしながら、このような条件では、リン[P]などの不純物除去精錬効果は、脱リン[P]率として15〜30%ほどしかなく、全く不満足なものであった。ここで、脱リン率:ηp(%)、および脱窒[N]率:ηN(%)は、次式で定義される。
ηp=([P]0−[P])/[P]0×100
ηN=([N]0−[N])/[N]0×100
[P]0:精錬前[P]濃度(wt%)、[P]:精錬後[P]濃度(wt%)
[N]0:精錬前[N]濃度(wt%)、[N]:精錬後[N]濃度(wt%)
また、金属Ca添加量の少ない({Ca}Mが小さい)条件での精錬試験を繰り返した。その結果、金属CaとCaハライド組成フラックスとを添加する精錬試験を繰り返し実施しても、水冷銅るつぼ3の損傷は発生しないことが把握され、合金溶湯プール6を直接に目視観察する必要のないことが把握できた。そこで、金属Caの添加率{Ca}MやCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mを増加させた試験を引き続き実施した。
金属Caの添加率を増加させた精錬操業(0.4<{Ca}M)では、金属Ca添加後、数秒から数十秒で、発生する黒煙が真空チャンバー4内に立ち込める。そして、合金溶湯プール6表面からの放射光さえも遮られる状況となり、合金溶湯プール6の表面状況を目視観察することは不可能となる。しかしながら、合金溶湯プール6からの放射光の観察さえもできなくなるほどの量の金属Caを添加することが、精錬効果を得るために必要であることが判明した。
金属Caの添加率{Ca}M、およびCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mについて、合金溶湯プール6の重量Mを20kgから50kgまでの範囲で、様々に変化させた条件で、多数の精錬試験を実施した。その結果を整理すると、脱リン率(ηP)と{Ca}Mとの間には、図2(a)に示すような相関関係が見出された。これら相関のばらつきは大きいものの、合金溶湯プール6重量M(kg)に対する金属Caの添加率{Ca}M が大きくなるにつれて脱リン率(ηP)は増加し、{Ca}Mが1.0付近で、脱リン率および脱窒率が、ほぼ上限(80〜100%)に近くなることが判明した。不純物元素含有量の多い廉価な原料(例えば[P]0=200〜300ppmほど含有するフェロクロム原料など)を用いて、不純物元素含有量の少ない超高純度材料([P]<2ppm)を溶製するためには、複数回のこのようなCa還元精錬操作が必要となる。また、精錬回数を最小限にするためには、1回の精錬操作で、脱リン[P]率として少なくとも50%以上は必要と考えられる。50%以上の脱リン[P]率を得るためは、図2に示す相関関係より、金属Caの添加率は、少なくとも0.5≦{Ca}Mを満足させる必要がある。
なお、{Ca}Mが1.0近傍で、脱リン[P]率はほぼ上限に達することから、金属Caの添加率を、それ以上に過度に増やしても、大きな精錬効果は期待できない。したがって、脱リンという目的に対しては、{Ca}M=1.0前後が望ましい。
一方、脱窒[N]についても、リンの場合とほぼ同様な図2(b)に示す脱窒[N]率と{Ca}Mとの相関が得られるが、リンの場合と比べると、やや脱[N]率が低くなる傾向がある。これは、窒素については、精錬操作の際に若干の大気リークなどが発生すると、容易に空気中の窒素ガスが真空チャンバー4内へ流入して、窒素混入を引き起こすためと推定される。そのため、脱[N]という目的に対しては、{Ca}M =1.0〜1.2前後が望ましい。
また、金属Caの添加率については、原理的には{Ca}Mを多くするほど、確実に不純物除去効果が得られると考えられる。しかしながら、実際の精錬操作においては、{Ca}Mを1.5より大きくすると、Ca還元精錬操業自体は可能であるものの、精錬操作後の鋳塊に付着し、吸収される金属Ca量が多くなる。その結果、鋳塊の取り出しなどの後処理で、蒸発したCaダストの発火などの問題が起こりやすくなる。さらには、次の溶解精錬工程における鋳塊中溶解[Ca]の蒸発によるダスト発生などの操業阻害が顕著になる。本発明者らは、これらの問題を経験している。以上のことから、安定した精錬操作を行うには、{Ca}M≦1.5としておくことが好ましい。
また、{Flx}Mが、{Ca}Mより少ない場合は、添加した金属Caの蒸発損失が顕著となり、安定した精錬操作が行えなかったことから、合金溶湯プール6の重量M(kg)に対するCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}M (wt%)を、{Ca}M≦{Flx}Mとする条件が必要と判明した。さらには、金属Caを安定してCaハライド組成フラックス中に溶解させるためには、{Flx}Mは{Ca}Mの1.5倍以上あるほうが望ましい。
また、Caハライド組成フラックスの添加については、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合精練剤を添加する前に、あらかじめCaハライド組成フラックスを添加しておくことが好ましい。これにより、あらかじめ溶融Caハライド組成スラグ層を形成させて、添加する金属Caの蒸発損失を抑制することができる。あらかじめ添加しておくCaハライド組成フラックスは、合金溶湯プール6重量M(kg)に対するCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}M0(wt%)としてあらわす場合、{Ca}M≦{Flx}M0を満足する量としておくことが有効であった。
一方、このような金属Ca−Caハライド還元精錬法では、合金溶湯プール6からの伝熱により、溶融スラグ層7を形成させる必要がある。ここで、{Ca}M、{Flx}M、および{Flx}M0の総量が多くなりすぎると、溶融スラグ層7を形成させることが困難となった。多数の試験により、{Ca}M、{Flx}M、および{Flx}M0の総量は、合金溶湯プール6重量Mの5%以内することが望ましいと判明した。
[P]、[N]以外の不純物元素の除去精錬効果であるが、[S]は容易に除去された。また、[Sn]、[Pb]、[Sb]などは、[P]や[N]とほぼ同程度のCa還元精錬効果が得られた。なお、硼素[B]に関しては、{Ca}M=1.0における脱[B]率は約20%であり、分離除去精錬は可能である。
前記したように、合金溶湯プール6の重量に対する金属Caの添加率{Ca}Mを0.5wt%以上とし、合金溶湯プール6の重量に対するCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mを金属Caの添加率{Ca}M以上とすることにより、脱リン[P]率として50%以上は確保できる。しかしながら、合金溶湯プール6に精錬剤を添加した後の合金溶湯プール6の保持時間によっては除去精錬効果が大きく変化する。このことが、図2に示した相関関係のバラツキが大きくなる要因の一つとなっており、高い除去精錬効果を得るためには、適正な合金溶湯プール6保持時間を確保することが重要である。
そこで、本発明者らは、下記試験を実施した。
内径φ220mmの水冷銅るつぼ3を有するコールドクルーシブル式誘導溶解装置1を用い、ステンレス鋼材(Fe−20Ni25Cr、Fe−35Ni25Cr)などを水冷銅るつぼ3に投入して、重量M(20kg、40kg、50kg)の合金溶湯プール6を形成させる。その後、Caハライド組成フラックス(CaF−CaO(8:2)、CaF−CaCl−CaO(8:1:1)など)を添加({Flx}M0=1.5%)して溶融スラグ層7をあらかじめ形成させる。その後、{Ca}M=1.0%、{Flx}M=1.5%の条件で、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物である精錬剤を添加して、ある一定時間、合金溶湯プール6と溶融スラグ層7とを保持(2分〜60分)する。その後、直ちに高周波加熱電源を停止させて、合金溶湯プール6を、水冷銅るつぼ3内で急冷凝固させる。その後、急冷凝固させた鋳塊中のリン[P]、窒素[N]などの不純物元素を分析する。
上記試験を実施した結果を図3に示す。図3は、合金溶湯プール6の保持時間に対する、脱リン率および脱窒率の変化を模式的に示すグラフである。
図3(a)に模式的に示した試験結果の条件は下記のとおりである。合金溶湯プール6の重量は20kgとした。また、添加する金属Caの重量は200g({Ca}M=1.0)、Caハライド組成フラックスの重量は300g({Flx}M=1.5)、あらかじめ添加したCaハライド組成フラックスの重量は300g({Flx}M0=1.5)とした。
図3(b)に模式的に示した試験結果の条件は下記のとおりである。合金溶湯プール6の重量は50kgとした。また、添加する金属Caの重量は500g({Ca}M=1.0)、Caハライド組成フラックスの重量は750g({Flx}M=1.5)、あらかじめ添加したCaハライド組成フラックスの重量は750g({Flx}M0=1.5)とした。
図3(a)、(b)からわかるように、脱[P]率、脱[N]率とも、精錬剤(金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物)を添加した直後は低い値である。しかしながら、20kg合金溶湯プール6の場合(図3(a))は4〜7分の保持時間で、50kg合金溶湯プール6の場合(図3(b))は10〜17分の保持時間で、脱[P]率、脱[N]率は最大値(90〜95%ほど)に達する。しかし、さらに長時間、溶湯の状態(溶解した状態)を保持し続けると、逆に、脱[P]率、脱[N]率とも、再び低下する傾向が認められる。このような挙動は、合金溶湯プール6の重量が40kgの場合も、同様な傾向を示した。ただし、脱[P]率や脱[N]率が最大となる時間は、40kgの合金溶湯プール6の場合(添加する金属Caの重量:400g({Ca}M=1.0)、Caハライド組成フラックスの重量:600g({Flx}M=1.5)。あらかじめ添加したCaハライド組成フラックスの重量:600g({Flx}M0=1.5))で、8〜11分であった。
これらの試験結果から、添加する精錬剤の量が少ない場合(合金溶湯プール6の重量が少ない場合)には、最大の精錬効果が得られるまでの時間が短時間となる傾向が判明した。
また、高い脱[P]率や脱[N]率を得るためには、精錬剤(金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物)を添加した後の合金溶湯プール6の保持時間を適正な時間範囲に制御する必要のあることは図3から明らかである。したがって、精錬技術としては、水冷銅るつぼ3の内径D、合金溶湯プール6の重量M、および添加する精錬剤の量(金属Caの重量およびCaハライド組成フラックスの重量)などの条件に応じて、精錬剤(金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物)を添加した後の、適正な溶湯保持時間を明らかにすることが不可欠となる。
また、合金溶湯プール6の量が異なり、それに応じて添加する金属Caの量およびCaハライド組成フラックスの量が異なる場合は、脱[P]率が最大となる合金溶湯プール6の保持時間が異なるという試験結果から、次のような精錬反応機構が推定された。
合金溶湯プール6に添加された金属CaおよびCaハライド組成フラックスの融解は、合金溶湯プール6からの伝熱により始まる。これにより、溶融スラグ層7(Ca+フラックスの層)が形成されてゆき、スラグ中に溶解した金属Caの量が増加するに伴って、次のような脱リン[P]反応および脱窒[N]反応が促進される。
2[P]+3(Ca)→(Ca
2[N]+3(Ca)→(Ca
一方、溶融スラグ層7中の(Ca)は、Ca(g(ガス))として蒸発し続けている。この蒸発損失のために、溶融スラグ層7中のCa濃度は、一旦、溶融スラグ層7にCaが溶解した後は、徐々に低下していくと考えられる。金属Ca単体の蒸気圧は非常に高く、Caの蒸発速度は相当に大きくなることから、溶融スラグ層7中のCa濃度の低下も相当の速度で進むこととなる。溶融スラグ層7中のCa濃度が低下すると、一旦、Ca化合物化されて、溶融スラグ層7に吸収されていた(Ca)化合物、(Ca)化合物などは分解して、合金溶湯プール6中に再び[P]、[N]などが戻る。すなわち、次式のような、いわゆる復リン反応などが溶融スラグ層7中で発生する。
(Ca)→Ca(g)↑
(Ca)→2[P]+3(Ca)
(Ca)→2[N]+3(Ca)
このため、溶湯保持精錬時間を必要以上に長く取ることには意味がない。極端に長時間、合金溶湯プール6を保持した場合は、一旦、溶融スラグ層7に吸収されていた[P]や[N]が全て合金溶湯プール6側に戻り、全く精錬効果が得られないこともありうる。したがって、金属Caを用いる還元精錬法では、精錬剤を添加した後の時間管理が極めて重要となる。合金溶湯プール6の重量に応じて、添加すべき金属Caの重量、Caハライド組成フラックスの重量が異なることから、溶湯保持時間の管理では、添加する金属Caの重量やCaハライド組成フラックスの重量に応じて、適正な溶湯保持時間の範囲が異なることとなる。また、形成される溶融スラグ層7の量も、水冷銅るつぼ3の内径によって異なることから、これも考慮する必要がある。
そこで、本発明者らは、図1に模式的に示した溶解精錬状況を、図4に示すようにモデル化した。図4は、精錬剤(金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物)添加による還元精錬反応をモデル化した図である。
本発明者らは、下記の反応モデルを構築した。
合金溶湯プール6からの伝熱により、合金溶湯プール6の上部に添加した金属CaとCaハライド組成フラックスとが順次溶解して、溶融スラグ層7が形成される(図4の時間ステップ0から4への段階)。溶融スラグ層7が形成されると、溶融スラグ層7中のCaとの局所平衡により、合金溶湯プール6中の[P]濃度および[N]濃度、溶融スラグ層7中の(Ca)濃度および(Ca)濃度などが定まり、脱[P]、脱[N]反応が進行する。しかしながら、一旦完全に溶融スラグ層7が形成された(図4の時間ステップ4の段階)後は、溶融スラグ層7からのCa蒸発損失のために、時間と共に溶融スラグ層7中のCa濃度が低下する。このCa濃度の低下に応じて、局所平衡の反応により、再び、合金溶湯プール6中の[P]濃度や[N]濃度が増加する、という反応モデルである。
この反応モデルでは、初期の添加金属Caと添加Caハライド組成フラックスとが、単位面積単位時間当たりに合金溶湯プール6からの伝熱により溶解する溶解速度定数をKmelt(Ca+Flx) (kg/s/m2)とした。また、溶融スラグ層7から金属Caが蒸発する、単位時間単位面積当たりのCa蒸発速度定数をKev(Ca) (kg/s/m2)とした。そして、Kmelt(Ca+Flx)、Kev(Ca)をパラメータとして用い、これらのパラメータの値を、合金溶湯プール6の重量が20kg,40kg,50kgの場合における試験結果と整合するように求めた。
φ220mm水冷銅るつぼ3内に200gのCaFCaO(8:2)フラックスを添加すると、約1分〜2分ほどで溶融スラグ層7が形成される。このことから、精練剤の溶解速度定数(Kmelt(Ca+Flx))は、0.017〜0.088(kg/s/m2)ほどの範囲と推定される。金属Caを含有する場合は、スラグ融点が低下することから、これよりやや早い速度となることが予想される。一方、溶融スラグ層7(例えばCaCaFCaO(25/60/15wt%)など)からのCa蒸気の蒸発速度定数(Kev(Ca))は、純Caの蒸気圧を用いて、真空化での蒸発速度定数を求める式から算出すると、1〜2(kg/s/m2)程度となる。しかしながら、Ca還元精錬は、例えばArガス1気圧付近で実施されることから、蒸発速度はこれより低くなることが推定される。これについては、溶鋼プール中の[Mn]の蒸発速度が、真空下に比べてArガス1気圧雰囲気下では、約1/100程度に低下することが、R.G.Ward(JISI Vol201(1963)p.11)により報告されていることから、Caの蒸発においても同様と仮定すると、Kev(Ca)は0.01〜0.02(kg/s/m2)のオーダーとなることが予想される。そこで、合金溶湯プール6重量50kgに対して、初期装入フラックス量:{Flx}M0=1.5%(750g)を添加して溶融スラグ層7を形成させた後、金属Ca:{Ca}M=1.0%(500g)+Caハライド組成フラックス:{Flx}M=1.5%(750g)を添加して、精錬時間を変えてCa還元精錬試験を実施した試験条件に対して、反応モデルを用いて精練剤の溶解速度定数を変化させた場合の添加精練剤の溶解所要時間を求めると、図4(b)に示す通りである。この試験では、最も高い脱[P]率が得られた反応時間が、10〜17分(600〜1020秒)ほどと判明している。よって、この時間(600〜1020秒)で、添加した精練剤が完全に溶解して溶融スラグ層7になったものと判断できる。これより、Kmelt(Ca+Flx)は0.03〜0.06(kg/s/m2)ほどの範囲となる。この値は、フラックスの溶解速度から推定される速度定数とほぼ一致している。
次に、Kmelt(Ca+Flx)=0.045として、Kev(Ca)の値を変化させて、得られる脱[P]率を求めた結果は図4(c)に示す通りである。実際の精錬試験で得られた脱[P]率は、88%〜94%ほどであったことから、これに対応するKev(Ca)の値は、0.002〜0.012(kg/s/m2)ほどとなる。この値も、純Caの蒸気圧から推定したCa蒸発速度定数値と概ね一致しており、妥当な値が得られている。
同様に、40kgおよび20kgの溶湯プール条件の場合について、反応モデルより、試験結果を表す値を求めると、Kmelt(Ca+Flx)は、それぞれ0.04〜0.07および0.03〜0.06(kg/s/m2)となり、Kev(Ca)は、それぞれ0.002〜0.012および0.002〜0.012(kg/s/m2)となる。また特許文献2および非特許文献2には、φ84mmの水冷銅るつぼ内で1.6kgの溶湯プールをつくり、Ca+CaF精練剤をこれに添加して、精錬時間を変えた試験結果が報告されている。その結果では、最も高い脱[P]率(85〜95%ほど)が得られるのは、添加後1〜2分であることが開示されている。このデータに対して、同様に反応モデルによる解析を行うと、φ84mmの水冷銅るつぼでの試験におけるKmelt(Ca+Flx)は、0.04〜0.09(kg/s/m2)ほど、Kev(Ca)は、0.008〜0.0027(kg/s/m2)ほどとなる。φ220mmの水冷銅るつぼ3での試験と比べて、いずれもやや大きな値とはなるものの、ほぼ一致しており、ほとんどすべての直径の水冷銅るつぼ3を用いてのCa還元精錬試験に、この反応モデルを適用することができる。
以上の検討の結果、20〜50kgの合金溶湯プール6重量に対して満足する精錬剤(金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物)を完全溶融させる際の上記Kmelt(Ca+Flx)の範囲は、データのばらつきなどを考慮すると、0.03≦Kmelt(Ca+Flx)≦0.1ほどであり、一方、Kev(Ca)は、0.002≦Kev(Ca)≦0.012ほどであることが判明した。
これらの値を用いれば、任意のサイズの水冷銅るつぼ3内で、合金溶湯プール6を形成させ、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物からなる精錬剤を添加する際の、適正な溶湯保持時間を設定することができる。定量的には、精錬剤(金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物)を合金溶湯プール6に添加した後の、適切な合金溶湯プール6保持時間T(min)として、次のT1≦T≦T2 (min)の条件を満足することが、高い脱リン[P]率、脱窒[N]率などを得るための有効な条件となる。
時間T1、T2は、次のように設定することができる。(図3参照)
T1(min)は、精錬剤(金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物)の添加後、当該精錬剤が完全溶融するために要する所要時間の1/2である。
T1=WCa+Flx/S/Kmelt(Ca+Flx) /60/2
WCa+Flx=M×({Ca}M+{Flx}M)/100
WCa+Flx:精錬剤の合計重量(kg)
S: πD/4:水冷銅るつぼ3内の水平断面積(m2)、D:水冷銅るつぼ3の内径(m)
Kmelt(Ca+Flx) (kg/s/m2)=0.1として計算される上記時間T1の2倍の時間が、添加した精練剤が完全溶解して、溶融スラグ層7を形成するための所要時間である。この時間(T1×2)が最も精錬効果が最大となる時間であるが、実際にはばらつきも大きい。そのため、その時間の1/2の時間T1を最短の合金溶湯プール6保持時間とした。T1以上の時間、溶湯を保持する必要がある。
T2(min)は、添加した金属Caの1/2が蒸発損失により溶融スラグ層7から失われる時間である。
T2=WCa/2/S/Kev(Ca)/60
WCa=M×{Ca}M/100
WCa:添加する金属Caの重量(kg)
Kev(Ca) ) (kg/s/m2)=0.002として計算される上記時間T2が、添加した金属Caの1/2が蒸発して失われる時間であり、T2以下の時間で溶湯保持を終了させる必要がある。
実際の精錬操作に際しては、添加した金属Caの1/2が失われるまで保持する必要性は少なく、定性的には、添加した精錬剤(金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物)が全量溶融して溶融スラグ層7が形成される時間(T1の2倍ほどの時間)の精錬効果が最大であり、その時点で、できるだけ速やかに合金溶湯プール6を急冷凝固させて、Ca蒸発損失に伴う復リン反応などを抑制することが有効と考えられる。しかしながら、実際の精錬操作においては、前記精錬剤の添加後は、数秒から数十秒ほどの短時間でCa蒸発によるダストによって、合金溶湯プール6表面の目視観察を行うこと自体が不可能となる。そのため、前記精錬剤がどの時点で完全溶融したかを観察により確認することは不可能であり、時間によってのみ管理することが必要となる。
この場合、不純物除去精錬効果は、図3に示すように、前記精錬剤が溶融する段階では、脱[P]率や脱[N]率の時間変化の勾配は急である。逆に、一旦、完全に溶融スラグ層7が形成された後、Ca蒸発が進行して溶融スラグ層7中のCa濃度が減少する段階での、脱[P]率や脱[N]率の時間変化は緩やかである。以上より、確実に脱[P]率を確保するためには、やや保持時間が長時間に設定するほうが、より確実である。そこで、スラグ中のCa量の1/2が、蒸発により失われる時間(T2)を上限としている。
この関係を、水冷銅るつぼ3の内径D(m)に対して、適正な溶湯保持時間のT1およびT2の範囲の一例を、合金溶湯プール6の重量(L/D=0.75:水冷銅るつぼ3の内径×0.75高さ(L)の円筒状の合金溶湯プール6の重量)、事前添加Caハライド組成フラックスの重量({Flx}M0=1.5)、Ca+フラックス精錬条件({Ca}M=1.0、{Flx}M=1.5)の場合について示すと、図5に示す通りである。
水冷銅るつぼ3の内径により、適正保持時間が変化することが図5には示されている。試験データのばらつきが大きいこともあり、精度の点でやや問題はあるものの、より適正な溶湯保持の時間範囲は、T1についてはKmelt(Ca+Flx) (kg/s/m2)=0.06と設定した時間、T2についてはKev(Ca) ) (kg/s/m2)=0.006と設定した時間、である図5中の点線および二点鎖線で示した範囲内が妥当である。
以上より、ここで示した関係式(T1≦T≦T2)を用いることにより、φ200m以上の水冷銅るつぼ3内に形成させる合金溶湯プール6に対して施す金属Ca+Caハライド組成フラックスの添加による精錬操作の適正な時間範囲を設定することが可能となる。
前記したように、合金溶湯プール6の重量に対する金属Caの添加率{Ca}Mを0.5wt%以上とし、合金溶湯プール6の重量に対するCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mを金属Caの添加率{Ca}M以上とし、かつ、合金溶湯プール6の保持時間Tを、T1≦T≦T2とすることにより、リン[P]、硫黄[S]、錫[Sn]、鉛[Pb]などの不純物元素含有量を、それぞれ2ppm以下までに低減することが可能である。
例えば、不純物元素含有量の多いフェロクロム原料および低炭素鋼原料(転炉材)と、高純度な電解Ni原料とを合金原料として用いる。また、φ220mmの水冷銅るつぼ3を有するコールドクルーシブル式誘導溶解装置1を用いる。ステンレス鋼(Fe−20Ni25Cr)を50kg、水冷銅るつぼ3に投入して合金溶湯プール6を形成する。その後、CaF−20CaOフラックスを用いて、金属Ca+フラックス精錬剤(添加条件:{Ca}M=1.0,{Flx}M=1.5)を合金溶湯プール6に添加する。そして、11分〜15分間、合金溶湯プール6を保持する精錬操作を行う。この場合、最初の合金原料配合段階での合金溶湯プール6中の不純物元素濃度は、[P]0=250ppm、[N]0=250ppm程度である。これをCa還元精錬することにより、脱[P]率=約90%、脱[N]率=約85%となるので、不純物元素濃度は、[P]1=25ppm、[N]1=40ppm程度となる。この鋳塊を原料として2回目のCa還元精錬を行うと、[P]2=3ppm、[N]2=6ppm程度となる。さらに3回目の精錬操作を行うと、ほぼ化学分析法の分析限界である2ppm以下までに、すなわち、[P]3<2ppm、[N]3<2ppmとなる。
実際にこのような操作により、不純物元素含有量の多いフェロクロム原料と低炭素鋼原料(転炉材)とを用いて、φ220mmの水冷銅るつぼ3によるCCIM−Ca還元精錬を施した後、酸化鉄を添加して真空酸化精錬を行い、さらに電子ビーム(EB)溶製法において真空酸化精錬を施して鋳塊を製造し、通常の鉄鋼材料の化学分析法や微量分析が可能なGD−MS(グロー放電質量)分析法により、不純物元素分析を行った結果、化学分析法で[P]<2ppm(分析限界値以下)、GD−MS分析法では、[P]=0.5ppm程度にまで高純度化(不純物除去)された鋳塊が製造できている。このGD−MS分析法で測定したその他不純物の分析値は、例えば、表1に示す通りである。ここで、GD−MS分析法は、グロー放電質量分析法と呼ばれる分析法であり、半導体材料などの微量分析に適用されて、0.01ppmほどまでの金属元素・半導体元素・絶縁体元素などの微量分析が可能な分析方法である。高純度鋳塊の従来製造法である真空誘導溶解(VIM)−電子ビーム(EB)法により、電解鉄,電解ニッケル,金属クロムを溶解原料として用いて製造した鋳塊、さらに市販のステンレス鋼材(SUS304ULC)の分析結果を比較のために表1に示している。本Ca還元精練手法が、[P]、[S]や、[Sn]、[Sb]、[Pb]などのトレーストランプ元素の除去精錬に非常に有効であり、従来法鋳塊に比べて、高純度化できることが表1よりわかる。なお、窒素については、GD−MS分析が不可能であり、化学分析法の限界が5ppmであることから、[N]<5ppmまで不純物元素が除去されたことを確認している。
表1は、Ca還元精錬法、コールドクルーシブル式誘導溶解装置1を用いた酸化精錬法(詳しくは後述する)、コールドハース式電子ビーム溶解装置11を用いた酸化精錬法(詳しくは、後述するコールドハース式電子ビーム溶解方法を参照のこと)の順で製造した(本発明)鋳塊中の不純物元素濃度と、真空誘導溶解(VIM)−電子ビーム(EB)法により製造した(従来技術)鋳塊中の不純物元素濃度と、市販材(SUS304ULC)中の不純物元素濃度とを比較した表である。
Figure 2011021228
一方、溶解原料(合金原料)として、比較的に入手しやすい市販高純度原料である、電解鉄、電解Ni、金属Crなどを用いる場合、初期配合段階での合金溶湯プール6中の不純物元素濃度は、[P]0=10ppm、[S]0=10ppm、[N]0=20ppm程度である。これに対しては、1回のCa還元精錬を施すだけで、[P]1<1ppm、[S]1<1ppmが達成されることが確認されている。また、[Sn]、[Pb]、[Sb]などのトレーストランプ元素不純物は、GD−MS測定法で分析して、1ppm以下となることが確認されている。
(コールドクルーシブル式誘導溶解装置を用いた酸化精錬方法)
前記したように、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物を精錬剤として用いるCa還元精錬方法により、リン[P]などの不純物元素含有量が2ppm以下となる実用規模の合金鋳塊を製造することができる。
しかしながら、金属Caを用いて精錬した合金鋳塊中には、特にNiを合金成分として含有する合金鋳塊において、相当量の金属Caが鋳塊中に残留することとなる。例えば、Ni含有量が0(ゼロ)の合金の場合は、残留[Ca]濃度=約0.02wt%であり、20wt%程度の合金の場合は、残留[Ca]濃度=約0.05wt%となる。Ni含有量が35wt%程度の合金では、残留[Ca] 濃度=約0.09wt%となる。Ni含有量が45wt%程度の合金では、残留[Ca]濃度=約0.12wt%となる。さらに、Ni含有量が60wt%程度のNi基合金では、残留[Ca]濃度=約0.5wt%となる場合もある。このように、金属Caを用いて精錬した合金鋳塊中には、相当量の[Ca]が残留することとなる。合金鋳塊中の[Ca]などのアルカリ土類元素やアルカリ金属元素などは、耐食性を劣化させることが知られている。よって、超高純度合金鋳塊を製造するためには、これら不純物元素含有量を0.001wt%以下、望ましくは1ppm以下にまで低減しておくことが好ましい。
また、金属Caを用いての還元精錬の際、Caにより比較的還元されやすい、炭素、アルミ、などの元素が不純物として増加しやすい。[C]では30ppm程度、[Al]や[Si]に関しては0.005wt%程度の濃度増加が発生する場合がある。これらは、チャンバー(真空チャンバー4)内に付着する有機物やセラミック類が、金属Caにより還元されて、合金溶湯プール6中に吸収されるためと考えられる。これは、金属Caを用いての還元精錬を行う際にしばしば発生する現象であることが判明している。
一方、超高純度が要求される合金においては、炭素[C]<10ppm、ケイ素[Si]<0.01wt%などが要求される場合もある。よって、[Ca]とともに[C]、[Si]などを除去する技術が必要となる。また、硼素[B]が著しく耐食性を劣化させることもあり、[B]<1ppmが要求される場合もある。
ステンレス溶湯プール中の[C]不純物元素は、これを除去するために、次式の反応により脱炭反応を促進させる必要がある。
[C]+[O]→CO(g)↑
この反応を進めるには、合金溶湯プール6中に酸素[O]を供給するとともに、発生するCO(g(ガス))を除去して、CO分圧を低下させ、反応を促進させる必要がある。この具体的な手段として、合金溶湯プール6への酸素供給のために、酸素ガスを使用することも可能ではある。しかし、CO(g)の除去には、真空排気を行い、発生COガスを排出し続けることが有効となるため、ガス状での酸素供給よりは、固体状での酸素源となる酸化鉄などの所定の合金組成主要成分元素の酸化物である酸化剤を添加する方が有効である。特に、金属Caにより還元精錬された合金鋳塊中には、残留酸素[O]は多くの場合5ppm以下となっており、酸素源のない状態となっていることから、脱炭反応用の酸素源の供給が不可欠となる。酸化剤としては、Fe基合金の場合は酸化鉄(Fe,Feなど)、Fe−Ni基合金の場合は酸化鉄や酸化ニッケルが、Ni基合金では酸化ニッケルが、Co基合金の場合は、酸化コバルトなどが適用できる。これらの酸化剤は、固体の酸化剤であり、換言すれば酸化金属からなる酸化剤である。
また、炭素以外の合金元素として、[Si],[Al],[Ti],[Zr],[Hf],[B],[Ca]などの、鉄やニッケルと比べてその酸化物が熱力学的に安定となるような活性金属元素を除去しようとする場合は、以下のような酸化精錬反応を進め、それぞれの酸化物をスラク゛中に分離除去する必要がある。
[Si]+2[O]→(SiO
2[Al]+3[O]→(Al
[Ti]+2[O]→(TiO
[Zr]+2[O]→(ZrO
2[B]+3[O]→(B
[Ca]+[O]→(CaO)
また、合金鋳塊中の[Ca]については、溶解するだけでも蒸発除去されるが、若干量は合金鋳塊中に残留する可能性がある。これを完全に除去するには、同じく、酸化精錬を行うことが重要である。これらの元素を酸化物にしてスラグとして吸収する際、溶融スラグ層7中のCaOと反応させて、より安定な化合物として、溶融スラグ層7中でのこれら成分の活量を低下させておくことが、除去精錬反応にとっては有効である。例えば、[Si]を酸化して形成されるSiOは、CaOと反応させて、CaSiOなどの安定した化合物とすることにより、溶融スラグ層7中のSiO活量を低下させて、[Si]の酸化反応を進行させやすくすることが有効である。同様に、Al、TiO、Bなどについても、CaOと反応させて化合物化し溶融スラグ層7中の活量を低下させることが、これら元素の酸化除去精錬にとって有効である。そのため、溶融スラグ層7中のCaO量を、酸化反応により発生する種々のこれら酸化物の量に見合うようにしておくことが有効である。
本酸化精錬においても、前記したCa還元精錬と同様に、内径が0.2m以上の水冷銅るつぼ3を有するコールドクルーシブル式誘導溶解装置1を使用する(図1参照)。本酸化精錬では、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物を精錬剤として用いる前記したCa還元精錬方法により製造した鋳塊(合金鋳塊)をさらに精錬処理(酸化精錬処理)する。前記したCa還元精錬方法により製造した鋳塊(合金鋳塊)を水冷銅るつぼ3に投入して、不活性ガス雰囲気下において、所定の合金組成に成分調整した合金溶湯プール6を形成させた後、以下の条件を満足する精錬操作を施すことにより、炭素[C],珪素[Si],アルミニウム[Al],チタン[Ti],ジルコニウム[Zr],ハフニウム[Hf],硼素[B]などの活性元素の不純物元素を除去精錬する。不活性ガスとしては、ArガスやHeガスなどを用いる。
(1)精錬剤として、酸化鉄などの所定の合金組成主要成分元素の酸化物である酸化剤とCaハライド組成フラックスとを混合した精錬剤(第2精錬剤に相当する)を合金溶湯プール6に添加すること。
代表的な酸素源となる酸化鉄としては、Fe、またはFeなどを使用する。反応の結果、発生する酸化物を、溶融スラグ層7中に安定して吸収させる必要がある。そこで、酸化物吸収能の高いフラックスとして、フッ化カルシウム(CaF)や塩化カルシウム(CaCl)などのCaハライド系フラックスに、CaOを添加したフラックスとしている。
(2)上記Caハライド系フラックスは、基本成分のCaFより低融点化させた成分系とし、CaF−CaO(5〜30wt%)、CaF−CaCl(5〜30wt%)、またはCaF−(CaO+CaCl)(5〜30wt%)系(Caハライド組成フラックス)を使用すること。
これらCaハライド組成フラックスの成分は、前記したCa還元精錬で用いたCaハライド組成フラックスと同じ組成としている。これは、フラックスを低融点化させて、合金溶湯プール6からの伝熱により添加フラックスが容易に溶融して、溶融スラグ層7を形成させることが、反応推進にとって有効なためである。酸化反応により生成する酸化物を吸収するためには、CaOを含有するフラックスがより有効である。発生する酸化物を安定な化合物にするために必要なCaO量を、あらかじめフラックスに含有させた成分系がより有効となる。
(3)Caハライド組成フラックスの添加率は、合金溶湯プール6の重量に対するフラックス添加重量割合{Flx}Mが、0.5≦{Flx}M≦5.0(wt%)の範囲を満足すること。
Caハライド組成フラックスの添加率が少なすぎると、発生酸化物の吸収効果が得られないことから、少なくとも合金溶湯プール6の重量の0.5wt%のフラックス量は必要である。一方、金属Ca還元精錬の場合と同様に{Flx}Mが5.0wt%以上になると、合金溶湯プール6からの伝熱が不足し、溶融スラグ層7が形成されにくくなるため、5.0wt%を上限とする。
(4)上記混合精錬剤中の代表的な酸化剤である酸化鉄(FexOy)の添加重量(WFexOy(kg))は、以下の条件を満足すること。
0.2×MFeO≦WFexOy≦4.0×MFeO
ここで、
MFeO=M/100×([C/12.01+2×[Si]/28.09+1.5×[Al]/26.98+2×[Ti]/47.9+2×[Zr]/91.22+2×[Hf]/178.49+1.5×[B]/10.811+[Ca]/40.08−[O]/15.9994)/y×(55.85×x+16.0×y)
M:合金溶湯プール6の重量(kg)
[C]:合金溶湯プール6中のC濃度(wt%)
[Si]: 合金溶湯プール6中のSi濃度(wt%)
[Al]合金溶湯プール6中のAl濃度(wt%)
[Ti]: 合金溶湯プール6中のTi濃度(wt%)
[Zr]: 合金溶湯プール6中のZr濃度(wt%)
[Hf]: 合金溶湯プール6中のHf濃度(wt%)
[B]: 合金溶湯プール6中のB濃度(wt%)
[Ca]: 合金溶湯プール6中のCa濃度(wt%)
[O]: 合金溶湯プール6中のO濃度(wt%)
[C],[Si],[Al]などはCa還元精錬の際に、水冷銅るつぼ3の外周に設けている飛散溶湯受け用の耐火シートなどからの混入などが若干ある。よって、添加する酸素量の計算ではCa還元精錬中のピックアップ量を考慮する必要があり、具体的には、試験結果に基づき、[C]は30ppm、[Si]および[Al]はそれぞれ50ppmほどの汚染によるピックアップの可能性がある。上記計算式中の各元素の濃度は、装入した原料の分析値などを用いた配合計算値を用いる必要がある。上記計算式は、[C]はCOガスに、[Si]はSiOスラグに、[Al]はAlスラグに、[Ti]、[Zr]、[Hf]はそれぞれTiOスラグ,ZrOスラグ,HfOスラグに、[B]はBスラグに、[Ca]はCaOスラグに、変換するために、それぞれの元素の原子量で割って、必要となる酸素モル数を求め、これをFexOy酸化鉄により酸素供給する場合に必要となる重量を算出する式である。
なお、上記計算式には含めていないが、活性金属として、[アルカリ金属:EI]、[アルカリ土類金属:EII]、[Y]、[ランタン系・アクチニウム系金属:ER]などが存在する場合は、これらをEIO,EIIO,Y,ERなどのスラグに変換するために必要な酸素量を、上記計算式に付け加える必要がある。また、マンガン[Mn]については、Feと比べてさほど活性とはいえず、酸化精錬除去が比較的行われにくいこと、さらに、高真空化での溶解において、蒸発除去されやすいといった特性があることから、ここでの酸化精錬では除去対象としていない。なお、酸化剤として、酸化ニッケルや酸化コバルトを用いる場合は、上記式中のFe(原子量:55.85)を、Ni(原子量:58.71)あるいはCo(原子量:58.93)に置き換えて計算すればよい。
いくつかの溶製精錬試験の結果、脱炭[C]を主目的とする場合は、添加する必要のある酸化鉄重量:WFexOy(kg)は、図6(a)に示すように、計算量:MFeO(kg)の0.2倍以上必要であり、同時に添加するするフラックスの添加率:{Flx}Mは、0.5wt%以上必要であることが明らかとなった。WFexOyが、WFexOy<0.2×MFeO、{Flx}Mが、{Flx}M<0.5の場合は、脱[C]率も大幅に低下し、精錬効果が得られにくいこととなる。また、[Al],[Ti]などの元素と比べて、その酸化物の熱力学的な安定性が少ない[Si]や[B]の酸化除去精錬については、図7のWFe/MFeOおよび{Flx}Mと、脱[Si]率との関係に示すように、脱[Si]率として50%以上を得ようとするならば、添加する酸化鉄の重量は、1.0×MFeO<WFexOyを満足し、かつ{Flx}Mは、3.0<{Flx}Mを満足することが有効であることは明らかである。さらに、より確実に脱[Si]率を高くするためには、WFexOyをMFeOの1.5倍から2倍程度にする必要があった。これは、添加した酸化鉄が、全て反応に使われているのではないためである。一方、酸化鉄の重量を所要量の4倍以上添加すると、合金成分のCrなどの酸化損失が増えすぎるため望ましくない。
添加する酸化鉄の重量を、計算量:MFeOの0.2倍から1.0倍ほどとし、真空酸化精錬を施した場合、[C]や[Al],[Ti],[Zr],[Hf],[Ca]などの除去精錬は進むものの、[Si],[B]などの除去はさほど顕著には進行しないことが多い。しかしながら、酸化鉄の添加量をMFeO量の1.0倍以上とし、Caハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mを3wt%以上とすることにより、[Si]、[B]なども除去精錬できるようになる。例えば、[B]濃度は、精錬前50ppm→精錬後1ppmとなる。[Si]濃度は、精錬前0.22wt%→精錬後<0.01wt%となる。さらには、酸化鉄の添加量をMFeO量の2.0倍以上とし、CaF−CaO系またはCaF−(CaO+CaCl)系フラックスを使用し、かつ、合金溶湯プール6の重量に対するCaハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mを3.0wt%以上とすることにより、より[Si],[B]の除去精錬がより容易となる。
ただし、添加する酸化鉄の重量を、MFeO量の4倍より多くすると、酸化反応が激しくなりすぎて、合金元素であるCrなどの酸化ロスも著しく発生するようになるため、4倍より多くすることは好ましくない。
これらの量を具体的に示すと、例えば、Fe−20Ni25Cr組成のステンレス鋼を、市販廉価原料であるフェロクロム原料、低炭素鋼原料などと、高純度原料である電解Ni原料を用いて50kgの溶湯プールを形成させると、その溶湯プール中の不純物元素濃度は、[C]=0.02,[Si]=0.21,[Al]=0.015,[Ti]=0.0,[B]=0.005,[Ca]=0.001,[O]=0.02wt%程度となる。これらを酸化するために必要な酸素モル量は、8.9molと計算される。この酸素を、酸化鉄Feにより供給するとすれば、Feは、MFeO=515gとなる。そこで、Feを約800g(約1.5倍)添加すると、[C]は0.005wt%程度,[Al]は0.003wt%程度まで低下する。しかし、[Si]は0.19wt%程度,[B]は0.004wt%程度とあまり低下しない。しかし、Feを1300g(2.5倍)添加すると、[Si]は0.01wt%以下、[B]は0.0001wt%程度まで低下する。この際に用いたCaハライド組成フラックスはCaF−CaO(8:2)組成であり、添加率は{Flx}M=4.0%(2000g)としている。
この精錬により、市販の廉価原料であるフェロクロムや低炭素鋼材などを溶解原料として使用しても、電解鉄や電解Ni、金属Crなどの高純度原料を使用する場合と同等な不純物濃度([Si]<0.01wt%)にまで除去精錬できることが確認されている。
(5)Caハライド組成フラックスと酸化鉄との混合物である精錬剤(第2精錬剤)を添加した後、チャンバー(真空チャンバー4)内の不活性ガスを排気し(真空排気を行い)、その状態(真空状態(排気状態))で15分間以上保持すること。
Caハライド組成フラックスと酸化鉄との混合物である精錬剤を合金溶湯プール6に添加して、溶融スラグ層7が形成されれば、例えば油回転ポンプでチャンバー内の真空排気を行う。必要に応じて、メカニカルブースターポンプ、拡散ポンプなどによる真空排気を行い、真空雰囲気下での酸化精錬を行う。
真空度が10hPa以下になると、合金溶湯プール6から細かな溶滴(スプラッッシュ)が飛散するようになる。これは、[C]が[O]と反応してCO(g)ガスが放出される際、周囲の溶融メタルを吹き飛ばしているものと推定される。この現象は、合金溶湯プール6中の[C]濃度が低下すると、反応が終了する。例えば、初期濃度[C]0=250ppmほどの場合でも、およそ10分ほどで、激しいスプラッシュ発生は終了し、[C]濃度は20〜60ppmほどとなる。また、真空下で保持することにより、合金溶湯プール6の表面温度は高くなり、添加したフラックスが溶融しやすくなって、溶融スラグ層7が安定して形成されることが観察される。
このような脱[C]反応の後、合金溶湯プール6の表面には、酸化物と思われる溶融スラグ片が浮上してくるのが観察される。これらは、Caハライド組成フラックスの溶融スラグ層7に徐々に吸収されて消滅する。そして約15分ほどで、酸化物スラグの湧き出しもほとんどなくなり、合金溶湯プール6表面の浮遊酸化物が少なくなるのが観察される。したがって、15分以上は溶湯を保持する必要がある。
合金溶湯プールに酸化鉄を添加する操作は、特許文献5に記載されている。具体的には、不活性ガス雰囲気下において、φ84mm水冷銅るつぼ内の2kgの溶湯プールに対して酸化鉄およびCaFを添加している。本条件は、酸化鉄を利用する点では同じである。しかしながら、本発明では、φ200mm以上の水冷銅るつぼ3内で10kg以上の合金溶湯プール6を形成させ、実用規模での酸化鉄と低融点Caハライド組成フラックスの添加条件を明らかにしている。この点が先行技術と異なっている。さらに、本発明では、真空排気操作により、脱[C]反応を促進させて、それにより溶融スラグ層7の形成を促進させて形成酸化物を吸収させている。この点が先行技術と異なっている。すなわち、具体的な精錬効果を得るための条件を明示していることが、本発明の大きな特徴となっている。
(Ca還元精錬方法と酸化精錬方法との組み合せ)
前記したCa還元精錬方法と、前記した酸化精錬方法とを適宜組み合わせて精錬処理を実施することも好ましい。所定の合金組成に成分調整した合金溶湯プール6から、不純物元素として、リン[P],硫黄[S],窒素[N],トレーストランプ元素([Sn],[Pb],[As],[Sb],[Bi],[Se]など),硼素[B]などをCa還元精錬により除去する。さらに、硼素[B],炭素[C],珪素[Si],アルミニウム[Al],チタン[Ti],Zr[Zr],カルシウム[Ca],アルカリ金属元素などを、酸化鉄添加真空酸化精錬により除去する。これらにより、リン[P],硫黄[S],錫[Sn],鉛[Pb]などの不純物元素を2ppm以下までに低減できる。また、窒素[N]を5ppm以下までに、珪素[Si],アルミニウム[Al],チタン[Ti],ジルコニウム[Zr]などを100ppm以下までに低減できる。さらに、炭素[C]を50ppm以下までに,珪素[B],カルシウム[Ca]などを1ppm以下までに低減できる。
Ca還元精錬方法により、[C],[Si],[Al],[Ca]などの元素のピックアップが発生することから、酸化精錬方法(真空酸化精錬)は、Ca還元精錬の後工程として実施することが望ましい。ただし、溶解原料中の不純物元素である[C],[Si],[Al],[Ti]などの含有量が著しく多い場合は、Ca還元精錬の前に、酸化精錬を施し、[C],[Si],[Al],[Ti]などの濃度を低下させておくことが有効である。
例えば、ステンレス鋼のスクラップなどを溶解原料(合金原料)として用いる場合、合金組成にもよるが、[C]含有量が高いことや、[Si],[Al],[Ti]などの合金成分が1wt%前後含まれていたり、または[Zr],[B]などが数十ppmほど添加された合金であることなどもありうる。そのような場合は、酸化精錬の際の添加酸化鉄量を著しく多くすることが必要となる。このような、添加酸化鉄量を増やした酸化精錬を実施すると、合金溶湯プール6中の酸素[O]濃度が著しく高くなる可能性がある。最終の合金組成に成分調整するために、酸素含有量の高い合金溶湯プール6に対して活性金属合金元素を添加する場合は、歩留まりの大幅な低下による成分規格はずれや、非金属介在物発生量の著しい増大などを招く可能性がある。このような場合は、酸化精錬を2回に分けて実施することが望ましい。最初に酸化精錬(真空酸化精錬)を実施して、[C],[Si],[Al],[Ti],[B]などを除去する。その後、Ca還元精錬を施して、[P],[S],[Sn],[Pb],[N]などを除去する。そして、Ca還元精錬過程でピックアップされる数十から数百ppmの[C],[Si],[Al],[Ca]などをその後に再実施する(2回目の)真空酸化精錬で除去して、酸素[O]を過度に合金溶湯プール6中に残留させない。
以上のように、Ca還元精錬法と酸化精錬法(真空酸化精錬法)とを適宜組み合わせて精錬を施すことにより、超高純度な超高純度(極低不純物)Fe基Ni基合金鋳塊の溶解精錬が可能となり、超高純度化した合金鋳塊を製造することができる。
(脱酸元素系の合金成分の添加)
前記した酸化精錬方法により溶製した鋳塊、または前記したCa還元精錬方法と前記した酸化精錬方法とを適宜組み合わせて溶製した鋳塊を溶解原料として、当該溶解原料に脱酸元素系の合金成分を添加して合金化することが好ましい。脱酸元素系の合金成分としては、[Si],[Al],[Ti],[Zr],[B]などがある。これにより、所定の合金組成の超高純度(極低不純物)Fe基Ni基合金鋳塊を溶製することができる。
超高純度合金鋳塊の溶製において、最終工程として真空酸化精錬を施した場合、合金溶湯プール6中に多量の酸素[O]が含有された状態となっていることがあるから、活性元素の(脱酸元素系の)合金成分を合金溶湯プール6に添加する際、それらの脱酸酸化物が発生する。このような脱酸酸化物を合金溶湯プール6から分離除去するためには、Caハライド組成フラックスを、合金成分の添加とともに添加することが有効である。この場合のCaハライド組成フラックスの添加率は、{Flx}Mで0.5〜2wt%程度が適切である。
(コールドハース式電子ビーム溶解方法)
前記したCa還元精錬方法と前記した酸化精錬方法とを適宜組み合わせて溶製した鋳塊、または当該鋳塊に脱酸元素系の合金成分を添加して合金化した鋳塊、を2次鋳塊(合金原料)として、以下に記述するコールドハース式電子ビーム溶解方法で、さらなる脱炭[C]、脱酸[O]を行うことが好ましい。
内径φ200mm以上の水冷銅るつぼ3を有するコールドクルーシブル式誘導溶解装置1を用いて、合金溶湯プールの重量が10kg以上で、金属Ca還元精錬を実施して、[P],[S],[Sn],[Pb],[N],[B]などの除去精錬を行い、その後、酸化精錬(真空酸化精錬)を実施して、[C],[Al],[Ti],[Zr],[Ca],[Si],[B]などの不純物元素の除去精錬を行って合金鋳塊を製造する。あるいは、必要に応じてさらに脱酸元素系の合金成分を当該合金鋳塊に添加した鋳塊を製造する。その後、以下に記述するコールドハース式電子ビーム溶解方法により、脱[C]、脱[O]を施して、[C]<10ppm,[O]<10ppmにまで除去精錬することができる。この方式により、最も高純度(極低不純物)のFe基Ni基合金鋳塊を製造することが可能となる。
以下にコールドハース式電子ビーム溶解方法を説明する。なお、図8は、コールドハース式電子ビーム溶解装置11を示す模式図である。
前記した酸化精錬方法は、内径φ200mm以上の水冷銅るつぼ3を用いる誘導溶解方式により、製品鋳塊重量として10kg以上の超高純度なFe基Ni基合金の実用鋳塊を溶解精錬法により製造する方法である。しかし、コールドクルーシブル式誘導溶解装置1の特性上、前記した酸化精錬方法は、高真空下での実施が困難であることがある。そのため、脱[C]精錬においては、発生するCOガスの除去が不十分となる場合がある。すなわち、脱[C]反応を促進できず、[C]<10ppmまでに炭素を除去するのは、困難な場合がある。
これに対して、高真空下で溶解−真空精錬を行う電子ビーム溶解方式は、不純物元素である炭素の極限までの除去精錬や、前記したCa還元精錬方法および前記した酸化精錬方法で除去し切れなかった窒素[N]やマンガン[Mn]などの真空除去精錬が可能となる。
電子線を熱源として用いる電子ビーム溶解法においても、溶解容器の内寸として0.2×0.2m以上を有する水冷銅製皿状容器9(水冷銅ハース)と、水冷銅製皿状容器9から出湯される溶湯を受けて鋳塊を形成する水冷銅製鋳型10とを具備してなるるコールドハース式電子ビーム溶解装置11を用いることにより、不純物元素除去精錬効果をさらに増進させることができる。
実際の溶解操作においては、水冷銅製皿状容器9の出湯口の対面側から、棒状・塊状の溶解原料12(2次鋳塊に相当する)を供給して、水冷銅製皿状容器9上で溶解させる。水冷銅製皿状容器9に隣接して設けた水冷鋳型10内に、水冷銅製皿状容器9のハース出湯口からあふれ出る溶湯を注入し、水冷鋳型10内で凝固させて形成される鋳塊を逐次下方に引き抜くことにより、長尺な鋳塊が溶製できる。この様な溶解方式において、下記の条件を満足する精錬操作を行うことにより、不純物元素である炭素[C]の除去精錬を確実に行うことができ、従来法では製造できなかった炭素不純物の少ない鋳塊を製造することができる。
(1)高真空雰囲気(<5×10−4mbar)下で、溶製を行うこと。
脱炭反応は、真空度が高いほど促進されやすいため、極限までの脱[C]を行わせるには、高真空雰囲気下であることが望ましい。なお、「<5×10−4mbar」としたのは、真空チャンバー4内に微量のArガスを導入する場合があるからである。真空チャンバー4内にArガスなどの不活性ガスを導入しない場合は、1×10−4mbarよりも低い気圧下で溶製を行うことが望ましい。
(2)所定の合金組成の合金溶湯プール13を水冷銅製皿状容器9内と凝固塊製造用の水冷銅製鋳型10内に形成させた後、溶解原料12(2次鋳塊に相当する)と酸化剤(FexOyなど)とを水冷銅製皿状容器9上に送り出すこと(本実施形態では、溶解原料12の上に酸化鉄を載せて送り出している)。
溶解原料12中の酸素濃度が不足する場合は、高真空条件下においても、脱[C]されることはない。そのため、[C]の酸化に必要な[O]を供給する必要がある。しかし、電子ビーム溶解法は、高真空下で実施されるため、酸素ガスを供給することは困難である。そこで、固体の酸素源として、高純度な酸化鉄などの所定の合金組成主要成分元素の酸化物である酸化剤を溶解原料とともに供給する方式が有効である。この場合、微粉状の酸化鉄は、電子ビーム溶解の最初の真空排気の段階で、ガスの流れに巻き込まれて飛散し、真空ポンプにまで達して、当該真空ポンプを傷める結果となる。よって、事前に酸化鉄の焼結処理などを行い、顆粒状にした酸化鉄を添加することが望ましい。酸化剤としては、Fe基合金の場合は酸化鉄(Fe,Feなど)、Fe−Ni基合金の場合は酸化鉄や酸化ニッケルが、Ni基合金では酸化ニッケルが、Co基合金の場合は、酸化コバルトなどが適用できる。これらの酸化剤は、固体の酸化剤であり、換言すれば酸化金属からなる酸化剤である。
なお、コールドハース式電子ビーム溶解装置11に原料フィーダーを付属させている場合は、合金溶湯プール13を形成させた後、溶解原料12と酸化剤(FexOyなど)とを一緒に水冷銅製皿状容器9上に送り出す必要はない。この場合、原料フィーダーにより、溶解原料12の溶解具合に合わせて水冷銅製皿状容器9内の合金溶湯プール13に酸化剤(FexOyなど、第3精錬剤に相当する)を添加すればよい。
(3)上記酸化鉄(FexOy)の添加重量(WFexOy(kg))は、1.0×MFeO≦WFexOy≦4.0×MFeOを満足する範囲内とすること。
MFeO=WM/100×([C]/12.01)/y×(55.85×x+16.0×y)
WM:溶解原料の重量(kg)、[C]:溶解原料中のC濃度(wt%)
酸化鉄の添加重量は、目的とする炭素のCOガス化に必要な計算量と同程度か、4倍ほど多い量を添加することが、試験の結果、有効と判明している。添加量が少なすぎると、脱[C]が不十分となり、多すぎると、鋳塊中の酸素[O]濃度が高くなる傾向があり、経験的には、計算量の2から3倍程度の添加量が適正な場合が多い。
このコールドハース式電子ビーム溶解法を適用することにより、鋳塊中の非金属介在物などの浮上分離が進み、酸素除去方式としても、非常に有効であることが確認できている。この精錬により、鋳塊中炭素[C]が10ppm以下、酸素[O]も10ppm以下することが可能であり、条件が適正であった場合は、[C]<5ppm,[O]<5ppmを満足する分析結果が得られることもある。なお、合金成分の[Mn]は、電子ビーム溶解過程において蒸発除去されて、その[Mn]濃度は0.01wt%以下となる場合が多い。
(実施例)
精錬効果の確認に用いた試験装置の構造模式図は、図1および図8に示す通りであり、設備の概略仕様は、以下の通りである。
(1)コールドクルシ−ブル式誘導溶解(CCIM)装置1
高周波電源 最大出力:400kW,周波数:3000Hz
水冷銅るつぼ3 内径:φ220,セグメント数:24
到達真空度 10−2mbar台
真空排気装置 ロータリーポンプ、メカニカルブースターポンプ
(2)コールドハース式電子ビーム溶解(EBCHR)装置11
高圧電源 加速電圧:40kV,最大出力:300kW
電子ビーム銃14 2基
到達真空度 10−6mbar台
真空排気装置 ロータリーポンプ、メカニカルブースターポンプ、拡散ポンプ
原料供給機構 最大φ210×1000Lmm
鋳塊引抜機構 最大φ200×1000Lmm
(コールドクルーシブル式誘導溶解装置を用いたCa還元精錬試験の結果)
金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物である精錬剤を用いてのCa還元精錬試験の効果について表2に示す。このCa還元精錬試験では、内径φ220mmの水冷銅るつぼ3を有するコールドクルーシブル式誘導溶解装置1を使用した。不純物元素含有量の多い、廉価原料であるフェロクロム材や低炭素鋼材を合金原料として用い、Fe−20Ni25Cr組成、あるいはFe−35Ni25Cr組成の合金溶湯プール6を形成させた。その合金溶湯プール6に、金属CaとCaハライド組成フラックスを添加して、Ca還元精錬試験を実施し、脱リン[P]効果についてまとめると表2に示す通りとなる。
表2からわかるように、合金溶湯プール6の重量に対する金属Caの添加率{Ca}Mが、{Ca}M=0.2程度では、低い脱[P]効果しか得られなかった。0.5<{Ca}M以上にCa添加率を増加して初めて精錬効果がでる。また、比較例3、実施例3、および4において、Caハライド組成フラックスの添加率{Flx}Mが少なすぎると、金属Ca添加量は十分であっても、脱[P]率が低くなる。すなわち、精錬効果を得るためには、{Ca}M≦{Flx}Mが必要であることがわかる。
さらに、Fe−20Ni25Cr合金やFe−35Ni25Cr合金において、合金溶湯プール6の重量が20kgの場合と50kgの場合とにおいて、脱[P]効果に及ぼす金属Ca添加後の合金溶湯プール6保持時間の影響を調べた結果から、金属Caの添加量やCaハライド組成フラックスの添加量に応じて、最適な溶湯保持時間が存在することがわかる。
Figure 2011021228
(コールドクルーシブル式誘導溶解装置を用いた酸化精錬試験の結果)
また、Ca還元精錬を施した鋳塊(試験結果を表2に示した)について、酸化鉄とCaハライド組成フラックスとの混合物である精錬剤(第2精錬剤)を用いての酸化精錬試験の効果について表3に示す。この酸化精錬試験はCCIM装置を用いている。また、この酸化精錬試験では、フェロクロム(FeCr)、極低炭素鋼、および電解Niを溶解原料としている。
表3からわかるように、酸化鉄量が少なすぎる(WFe/MFeO<0.2)と、脱[C]効果が得られない。脱[C]を目的とする場合は、WFe/MFeO=0.2以上、かつ{Flx}M =0.5以上とすることで、効果が得られる。脱[Si],脱[B]効果を得ようとする場合は、WFe/MFeO=1.0以上、かつ{Flx}M=3.0以上とすることで、効果が得られるようになる。しかし、WFe/MFeO=5.0とすると、真空精錬時に脱炭反応に伴う激しい溶滴飛散(スプラッシュ)が発生して、安定した精錬操作が行えなかった。すなわち、酸化鉄添加量には上限が存在する。
Figure 2011021228
(コールドハース式電子ビーム溶解法による試験結果)
さらに、φ220mmの水冷銅るつぼ3を有するCCIM装置(コールドクルーシブル式誘導溶解装置1)で、Ca還元精錬、酸化精錬(真空酸化精錬)の順で精錬処理を施した鋳塊を溶解原料として、コールドハース式電子ビーム溶解装置11により、当該溶解原料に酸化鉄を添加して溶解を行った場合の、脱[C]効果は、表4に示す通りである。
試験前の不純物元素濃度(wt%)は、[C]=0.005、[O]=0.003であった。また、これら不純物元素の含有量から算出したMFeO量は0.011kgであった。
表4からわかるように、酸化鉄を適切量添加することにより、脱[C]が促進され、不純物元素[C]濃度10ppm以下の鋳塊を製造できる。すなわち、WFexOy/MFeO比は、1.0以上4.0以下であることが好ましく、より好ましくは、2.0以上3.0以下の値であることである。酸化鉄剤は、微粒のFe2粉末を1250℃で焼結して、顆粒状のFe2にしたものである。
顆粒状Fe2の添加量については、期待される脱炭反応に必要な酸素量に比べて、添加量が少なすぎると、脱炭反応が不十分となる。一方、過剰に入れすぎると、脱炭は十分に進むが、酸素含有量が高くなりすぎる問題がある。すなわち、EBCHRにおいて酸化鉄を添加する際の適切な範囲がある。
Figure 2011021228
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
1:コールドクルーシブル式誘導溶解装置
2:原料フィーダー
3:水冷銅るつぼ
4:真空チャンバー
6:合金溶湯プール
7:溶融スラグ層

Claims (6)

  1. コールドクルーシブル式誘導溶解装置の水冷銅るつぼに合金原料を投入して、不活性ガス雰囲気下において、所定の合金組成に成分調整した合金溶湯プールを形成する溶湯プール形成工程と、
    前記合金溶湯プールに精錬剤を添加して、少なくともリンを含む不純物元素を除去する精錬工程と、
    を備え、
    前記精錬剤は、金属CaとCaハライド組成フラックスとの混合物であり、
    前記Caハライド組成フラックスは、フッ化カルシウムに酸化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-CaO、フッ化カルシウムに塩化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-CaCl、または、フッ化カルシウムに酸化カルシウムおよび塩化カルシウムを5〜30wt%配合したCaF-(CaO+CaCl)であり、
    前記合金溶湯プールの重量に対する前記金属Caの添加率を、0.5wt%以上とし、
    前記合金溶湯プールの重量に対する前記Caハライド組成フラックスの添加率を、前記金属Caの添加率以上とすることを特徴とする、超高純度合金鋳塊の製造方法。
  2. 請求項1に記載の超高純度合金鋳塊の製造方法において、
    前記合金溶湯プールに前記精錬剤を添加した後、添加した前記精錬剤が全て溶融するのに要する時間の1/2に当たる時間T1以上、添加した前記金属Caの1/2が蒸発により失われる時間T2以下の間、前記合金溶湯プールを保持することを特徴とする、超高純度合金鋳塊の製造方法。
  3. 請求項2に記載の超高純度合金鋳塊の製造方法において、
    前記溶湯プール形成工程および前記精錬工程を複数回行って、少なくともリンの含有量が2ppm以下の超高純度合金鋳塊を製造することを特徴とする、超高純度合金鋳塊の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の超高純度合金鋳塊の製造方法により製造した鋳塊を1次鋳塊とし、
    前記コールドクルーシブル式誘導溶解装置の水冷銅るつぼに前記1次鋳塊を投入して、合金溶湯プールを形成する第2溶湯プール形成工程と、
    前記1次鋳塊の合金溶湯プールに第2精錬剤を添加した後、チャンバー内の不活性ガスを排気して排気状態を15分以上保持し、少なくとも炭素およびカルシウムを含む不純物元素を除去する第2精錬工程と、
    を備え、
    前記第2精錬剤は、酸化鉄などの所定の合金組成主要成分元素の酸化物である酸化剤と前記Caハライド組成フラックスとの混合物であり、
    前記酸化剤の添加重量を、前記1次鋳塊の合金溶湯プール中の前記少なくとも炭素およびカルシウムを含む不純物元素を全量酸化させるために算出される算出重量の0.2倍以上、4.0倍以下とし、
    前記第2精錬工程において、前記1次鋳塊の合金溶湯プールの重量に対する前記Caハライド組成フラックスの添加率を、0.5wt%以上、5.0wt%以下とすることを特徴とする、超高純度合金鋳塊の製造方法。
  5. 請求項4に記載の超高純度合金鋳塊の製造方法により製造した鋳塊に、脱酸元素系の合金成分を添加して、合金化することを特徴とする、超高純度合金鋳塊の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の超高純度合金鋳塊の製造方法により製造した鋳塊を2次鋳塊とし、
    コールドハース式電子ビーム溶解装置の水冷銅製皿状容器に前記2次鋳塊を供給して、5×10−4mbarよりも低い気圧下において、当該水冷銅製皿状容器内と当該水冷銅製皿状容器に隣接する水冷銅鋳型内とに、合金溶湯プールを形成する第3溶湯プール形成工程と、
    前記水冷銅製皿状容器内の合金溶湯プールに第3精錬剤を添加して、不純物元素である炭素を除去する第3精錬工程と、
    を備え、
    前記第3精錬剤は酸化鉄などの所定の合金組成主要成分元素の酸化物である酸化剤であり、
    前記第3精錬剤の添加重量を、前記2次鋳塊の合金溶湯プール中の前記不純物元素である炭素を全量酸化させるために算出される算出重量の1.0倍以上、4.0倍以下とすることを特徴とする、超高純度合金鋳塊の製造方法。
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