JP2003286536A - 低炭素フェロボロンの製造方法 - Google Patents

低炭素フェロボロンの製造方法

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JP2003286536A JP2002091729A JP2002091729A JP2003286536A JP 2003286536 A JP2003286536 A JP 2003286536A JP 2002091729 A JP2002091729 A JP 2002091729A JP 2002091729 A JP2002091729 A JP 2002091729A JP 2003286536 A JP2003286536 A JP 2003286536A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フェロボロン中の炭素含有量を従来に
比べて低下させ、希土類永久磁石原料として十分な品質
を有するフェロボロンを高い歩留まりで生産しうる方法
を提案する。 【解決手段】 耐火物容器内に高炭素フェロボロン溶
湯を収容し、1550〜1750℃の水素ガスを含む減圧雰囲気
中に保持して炭素を除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は低炭素フェロボロン
の製造方法であり、特に希土類永久磁石の原料として利
用される低炭素フェロボロンを、高炭素フェロボロンを
原料として製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フェロボロンは品質により大きく2種
類、すなわち高炭素フェロボロンと低炭素フェロボロン
とに区別されている。このうち高炭素フェロボロンは、
酸化ほう素、ほう酸等のほう素源、鉄スクラップ、酸化
鉄、鉄鉱石等の鉄源を原料とし、これにコークス、石
炭、木炭、黒鉛等を還元剤として混じて電気炉により大
量生産される。高炭素フェロボロンは比較的安価である
が、炭素含有量が高いために希土類永久磁石の原料とし
て利用することはできない。
【0003】一方、低炭素フェロボロンは、前記ほう素
源、鉄源をシリコン、アルミニウム、マグネシウムまた
はこれらの混合物または合金とテルミット反応により還
元することによって製造され、炭素含有量は低いがシリ
コン、アルミニウム含有量が高い。また、テルミット反
応という比較的小規模で、かつほう素収率が低いため、
希土類永久磁石の原料として利用できるが高価である。
参考のため、これら高炭素フェロボロン、低炭素フェロ
ボロンのJIS規格を表1に示す。
【0004】
【表1】 このような事情に鑑み、高炭素フェロボロンを脱炭して
低炭素フェロボロンを製造しようとする試みが従前から
数多くなされている。たとえば特開昭58-26025号公報に
は、容積比で酸素濃度を21〜100%含む酸素富化ガスを半
溶融ないしは溶融したフェロボロンに吹き付け、フェロ
ボロン中に含有されているアルミニウムおよび炭素を酸
化・除去する技術が開示されている。また、特開昭59-1
26732号公報には、ほう素合金溶湯中に純酸素ガスをバ
ブリングしてアルミニウムおよび炭素を酸化・除去する
技術が開示されている。
【0005】さらに、特開昭59-232250号公報には、電
気炉で製錬したフェロボロンをさらにその融点+150〜2
00℃の温度範囲で完全に再溶解した後、融点直上まで冷
却し、含有炭素を析出分離することによって低炭素フェ
ロボロンを得る技術が、また特開昭61-195953号公報に
は、溶滓を伴う溶融フェロボロンの表面に耐火性冷却材
を投入し、その表面に溶滓をからませて除滓してグラフ
ァイトやほう素炭化物を除去して非金属介在物の少ない
フェロボロンを得る技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、フェロ
ボロン溶湯は溶銑と異なり炭素含有量が低く、またほう
素の酸素との親和力が炭素と酸素との親和力より大であ
り、さらに、ほう素の含有量が高い。そのため、フェロ
ボロンに酸素を吹き付けて脱炭しようとする場合、フェ
ロボロン溶湯に吹き込まれた酸素は脱炭には寄与せず、
ほう素と反応して酸化ほう素を生成し、メタル中のほう
素含有量を低下させ、ほう素の収率を悪化させる。さら
に生成した酸化ほう素は製錬炉の耐火物と反応してMgO-
B2O3系、SiO2-B2O3系の低融点のスラグを生成し、その
ためライニングの損傷が著しい。この損傷は、ほう素の
酸化による溶湯温度の上昇により一層進行する。したが
って、高炭素フェロボロンの気体酸素による脱炭は現実
的ではない。
【0007】一方、フェロボロン溶湯の炭素の溶解度が
温度により異なることを利用する製錬方法は、上記酸化
法のような問題はないが、最終製品の炭素含有量が0.2%
(質量比、以下同様)どまりであって、希土類永久磁石
の原料として要求される炭素含有量0.1%以下にすること
が難しい。また、溶滓を冷材にからませてグラファイト
やほう素炭化物を除去する方法は、冷材の投入により溶
湯の温度が低下し、取鍋へのメタル付着量が増加し、ほ
う素の収率を悪化させる。また、メタルのフラックスへ
の混入によりフラックス中の主成分および微量元素がメ
タル中に混入し、メタル品質を低下させる等の問題があ
る。
【0008】本発明は、このような従来技術の問題点を
解決し、フェロボロン中の炭素含有量を従来に比べて低
下させ、希土類永久磁石原料として十分な品質を有する
フェロボロンを高い歩留まりで生産しうる方法を提案す
るものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の低炭素フェロボ
ロンの製造方法では、耐火物容器内に高炭素フェロボロ
ン溶湯を収容し、1550〜1750℃の水素ガスを含む減圧雰
囲気中に保持して炭素を除去する。
【0010】上記発明において、減圧雰囲気は圧力を6.
7〜79.8kPaの水素ガス雰囲気とするのが好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明においては出発原料として
高炭素フェロボロンの鋳塊または溶湯を使用する。高炭
素フェロボロンを出発原料とするのは、これが比較的安
価で、後工程での炭素および炭化物の除去に適している
からである。先に示したJIS FBH1およびFBH2を含めほう
素量が5〜25%の範囲の高炭素フェロボロンを好適に利用
できる。このような高炭素フェロボロンは、たとえば電
気炉での還元製錬により製造できる。
【0012】電気炉から出湯した高炭素フェロボロンを
耐火物容器、取鍋、坩堝などの容器に受湯する。取鍋の
材質は特に問わないが、高温における製錬中にフェロボ
ロン溶湯と容易に反応しないもの、例えば、MgO系、CaO
系、Al2O3、ZrO2系、又はこれらの複合耐火物とするの
が好ましい。
【0013】本発明では、上記耐火物製容器に収容され
た高炭素フェロボロン溶湯を高温の減圧水素雰囲気下に
曝すことによって、C+2H2=CH4で示される反応を進行
させ、フェロボロンの脱炭を行なわせる。そのため、溶
湯の保持温度および保持圧力条件について、耐火物がフ
ェロボロン中のCによって還元されず、かつ導入された
水素ガスH2によってC+2H2=CH4の反応が右に進行する
条件を選択することが重要である。
【0014】このうち溶湯温度については、1550〜1750
℃とする。温度が1550℃未満のときは、溶湯表面にフェ
ロボロンの固化物が生成し、その固化物が溶湯と水素と
の接触を阻害して脱炭の進行が妨げられるからである。
一方、保持温度を1750℃以上にすると耐火物ライニング
の損傷が大きくなり、溶損した耐火物がそのままの形で
製品中に混入するおそれがある。したがって、上記反応
を行うための溶湯温度は1550〜1750℃とする。
【0015】圧力については、水素ガス分圧が6.7〜79.
8kPaとなるようにする。上記温度範囲において水素分圧
が6.7kPa未満のときはフェロボロン中の炭素除去速度が
小さく、製錬に多大の時間を要する。一方、水素分圧が
79.8kPaを超えるとフェロボロン中のほう素と水素が直
接反応して水素化ほう素(BH)の生成量が多くなるため
製品のほう素含有量が低下する。したがって、雰囲気ガ
ス中の水素分圧は6.7〜79.8kPaとする。
【0016】上記条件に従う限り水素の導入方法はいか
なる手段によってもよい。たとえば溶湯表面に近接した
ランスノズルから水素を溶湯表面に吹きつけてもよく、
あるいはランスを溶湯内に挿入して水素を吹き込んでも
よい。
【0017】また、水素は純水素を利用できるほか、上
記水素分圧を維持できる限り、たとえばアルゴンガスや
窒素ガスとの混合ガスの形で反応系に導入してもよい。
しかしながら、空気との混合は避けなければならない。
空気中の酸素との反応により水素分圧が下がり、脱炭が
進行しなくなるばかりでなく、残存酸素のためほう素が
酸化されて製品のほう素含有量が低下するからである。
そのため、水素ガス、あるいは水素含有ガスの導入前に
は反応容器内を、たとえば2.7kPa以下に減圧しておく必
要がある。
【0018】本発明は、たとえば図1に示す装置を使用
して実施することができる。この装置では、真空槽1内
にMgO等のライニング2を施しその外周に水冷溶解用コ
イル3を配置した高周波誘導電気炉4、及び電気炉4で
脱炭された溶湯5を凝固させて製品とするためのタンデ
ィッシュ6、鋳型7が設置されている。この真空槽1は
真空ポンプ8及びアルゴンなどの水素ガスタンク9に接
続されており、その内部を所要の減圧雰囲気に調整でき
るようになっている。また、追装タンク10が備えつけ
られており、脱炭中に必要に応じて原料を追装すること
ができるようになっている。
【0019】本発明は、上記のように高温、減圧下にお
いて水素とフェロボロン溶湯中の炭素(C)を反応させ
て脱炭するものである。したがって、たとえば前述の特
開昭58-26025号公報で開示されているような高炭素フェ
ロボロン溶湯に酸素ガスを吹き込む方法などとまったく
異なり、脱炭により生成する物質はガス体の炭化水素で
あり、容易に系外にとりのぞくことができ、そのため介
在物の少ない清浄なフェロボロンを製造することが可能
である。また、フェロボロンのほう素含有量に依存する
ことなく、ほう素含有量が5〜25%の範囲の高炭素フェロ
ボロンが利用できる。
【0020】
【実施例】(実施例1〜3)高炭素フェロボロン(表2
に原料として示されている組成を有するもの)約3kgをM
gOでライニングした真空高周波誘導加熱炉に装入し、0.
13kPa以下に排気した後、水素ガスを水素分圧が実施例
1の場合6.7kPa、実施例2の場合27kPa、実施例3の場
合53kPaとなるように導入した後溶解した。溶解後、上
記水素分圧を維持したまま、溶湯を1550〜1600℃に30mi
n保持し脱炭をおこなわせた。その結果、表2に示す低
炭素フェロボロンが得られた。
【0021】(実施例4)実施例1〜3と同一の組成を
有する高炭素フェロボロン約100kgをMgOでライニングし
た真空高周波誘導加熱炉に装入し、0.13kPa以下に排気
した後、水素ガスを水素分圧が27kPaとなるように導入
した後溶解した。溶解後、上記水素分圧を維持したま
ま、溶湯を1550〜1600℃に30min保持し脱炭を行わせ
た。その結果、表2に示す低炭素フェロボロンが得られ
た。
【0022】(実施例5)溶解及び脱炭の際の水素ガス
分圧は79.8kPaとしたほかは、実施例1〜3と同様の条
件で高炭素フェロボロンを処理した。その結果、表2に
示す低炭素フェロボロンが得られた。
【0023】(比較例1)高炭素フェロボロン(表2に
原料例として示されている組成を有するもの)約3kgをM
gOでライニングした真空高周波誘導加熱炉に装入し、大
気圧空気雰囲気で溶解した後、溶湯を大気圧空気雰囲気
に1550〜1600℃に30min保持し脱炭をおこなわせた。結
果は表2に示す。
【0024】(比較例2)比較例1と同一の高炭素フェ
ロボロン約3kgをMgOでライニングした真空高周波誘導加
熱炉に装入し、アルゴンガスを27kPaとなるように導入
した後溶解し、その雰囲気で溶湯を1550〜1600℃に20mi
n保持し脱炭を行わせた。その結果は表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、高炭素フェロボロンを
出発原料として、炭素含有量の極めて低い低炭素フェロ
ボロンを極めて経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施する代表的な装置の模式図であ
る。
【符号の説明】
1:真空槽 2:耐火物ライニング 3:水冷溶解用コイル 4:高周波誘導電気炉 5:溶湯 6:タンディッシュ 7:鋳型 8:真空ポンプ 9:水素ガスタンク 10:追装タンク

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐火物容器内に高炭素フェロボロン溶湯
    を収容し、1550〜1750℃の水素ガスを含む減圧雰囲気中
    に保持して炭素を除去することを特徴とする低炭素フェ
    ロボロンの製造方法。
  2. 【請求項2】 減圧雰囲気は圧力が6.7〜79.8kPaの水素
    ガス雰囲気であることを特徴とする請求項1記載の低炭
    素フェロボロンの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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