JP2011021227A - 人工緑青被覆銅部材とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】銅又は銅合金からなる基材の表面に人工緑青被覆銅部材を製造する方法であって、試薬の硝酸の気化中に、加熱した基材を曝露することにより、当該基材の表面に亜酸化銅よりなる層と、この層の表面に形成された硝酸銅の水和物層とからなる二層構造を生成し、前記硝酸銅の水和物を脱水処理して塩基性硝酸銅を生成することを特徴とする。前記塩基性硝酸銅からなる層は、人工緑青被覆銅部材であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
この緑青被膜は特有の色彩による美観と各種構造物を100年以上保護する水に不溶の被膜となる。 不溶性の緑青被膜は大気中において酸素、水蒸気、硝酸ガス、炭酸ガス、亜硫酸ガス、塩素ガス等の化学種の反応によって生成する。
自然環境下で得られた緑青被膜は亜酸化銅と塩基性硝酸銅、塩基性炭酸銅、塩基性硫酸銅、塩基性塩化銅等からなる積層構造を有する。これらの緑青被膜は、それぞれの塩基性銅塩による異なった独自の色彩の天然緑青となる。しかし、近年は自然環境の悪化による酸性の霧や雨のために永い年月を経ても、安定な不溶性の積層構造被膜の緑青を得ることが困難になっている。
そのため、人工緑青の亜酸化銅と塩基性銅塩とからなる積層構造被膜の作製法、並びに亜酸化銅と単一の塩基性銅塩とからなる積層構造被膜は、多くの歴史的建造物の修復による保全と、近代建築に必要とされている。従来の人工緑青の製法は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、水酸化銅、塩化第二銅、塩化ナトリウム、明礬、亜硝酸エチル、亜砒酸等の化合物の幾つかを調合した水溶液を用いた各種の湿式による化学処理・電解処理及び、塗装等の湿式による方法を用いている。
得られた被膜は複雑な化合物と各種の塩基性銅塩の混合塩とからなるものであり、自然緑青とはかけ離れたものでしかなかった。
特許文献1に示された薬液で化学処理する方法では、銅又は銅合金基材の銅酸化被膜生成面を腐食性液(化成処理液)と化学反応させて該金属の表面に固着性のある水に不溶な腐食生成物層を形成させる処理が示され、その処理液としては塩酸,硝酸又は硫酸のアンモニウム塩とアルカリ金属塩化物及びアルカリ土類金属塩化物のうちの1種以上とを含む水溶液や、これに更に塩化第二銅を添加した水溶液も化成処理液等が例示されている。
当該方法は、緑青の発生が不均一になりやすい。また、銅板面へ短時間で発色した塩基性塩の沈殿物は、密着性が悪いため経年で剥離する事が問題となる。人工緑青色は剥離を防止する為にクリヤー塗装が必要となる。塗膜は紫外線(UV)で劣化し白亜化(チョーキング;塗面が白く粉が吹いた状態)が起き、塗膜表面が徐々に分解して、塗膜成分が粉状に変化するので問題となる。また、自然緑青との色合わせと人的な色彩感覚が要求される。工業的に用いる場合は、屋根加工が済んだ現地で、ハケ等で何回も繰り返し処理する必要があり、作業性が悪いためコスト高になってしまう。
この方法は、塗装法であるので密着性が良く、加工性は優れているが、経時変化で銅板面の塗膜は白亜化により、徐々に褪色した後、劣化により、塗膜が不均一になり剥離する。塗膜が剥離した部分には、経年変化での緑青色と異なるので再塗装が必要になる。
特許文献3は、電解液中で銅材を陽極として浸漬し、電解反応により銅材の表面に人工緑青を発生させる方法が記述されている。
特許文献4から9にも同様な方法が示されているが、いずれも、電解による急激成長した被膜は、密着性が悪いため、緑青被膜が剥離するという欠点がある。
発明2は、発明1の人工緑青被覆銅部材において、塩基性硝酸銅からなる層は、硝酸銅の水和物の脱水処理により得られたものであることを特徴とする。
発明3は、発明1から2のいずれかの人工緑青被覆銅部材を製造する方法であって、硝酸気化中に、加熱した基材を曝露することにより、当該基材の表面に亜酸化銅よりなる層と、この層の表面に形成された硝酸銅の水和物層とからなる二層構造を生成し、前記硝酸銅の水和物を脱水処理して塩基性硝酸銅を生成することを特徴とする。
また、発明3により、天然緑青と同様な構成の人工緑青を始めて生成し得るに至ったものである。
さらにその方法は、試薬の硝酸の気化中に加熱基材を曝露するという極めて簡便なものであることから、高い実用性を兼ね備えるものでもある。
また、その製造方法は、試薬の硝酸の気化中に、加熱した基材を曝露することにより、当該基材の表面に前記二層構造の緑青を生成するものである。
以下の実施例では、前記硝酸水溶液の蒸発分解により生成して、反応容器内に供給したが、二酸化窒素ガスと水蒸気とを別々に若しくは予め混合した雰囲気とすることも可能である。
反応容器(F)は、排気ポンプに接続した開閉バルブ付きの排気口(F2)と外気の流入を許す開閉バルブ付きの吸気口(F1)が設けてある。また、耐熱性のガラス(石英製ガラスも可能)よりなる容器で、熱的衝撃に耐え各種酸化性雰囲気で侵されないようにしてある。
なお、ガラスに変わりTi等の金属製又はテフロン(フッ素樹脂)等の耐熱性樹脂により形成するのも可能である。
反応容器台(E)は、前記反応容器(F)を設置する台であって、内部のヒータ(図外)が設置され、前記反応容器(F)内全体を一定の反応温度に保つようにしてある。
蒸発室(B)は、前記反応容器(F)内に、蒸発ヒータ(C)を受台にして設置した小型容器であって、前記反応容器(F)の外側に入り口と開閉コックとが配置された注入管(A)により、外部より硝酸溶液を注入可能にしてある。また、前記反応容器(F)の外部に切替弁とガス排出口(B1b)を配置し、前記切替弁により択一的に切り替えられる前記反応容器(F)の内側にて開口するガス注入口(B1a)を持つガス案内管(B1)が設けてある。この案内管(B1)により、前記蒸発室(B)内で発生した混合ガスを前記反応容器(F)内に供給するか、前記反応容器(F)外に排出するかを選択し、前記反応容器(F)内のガスを前記吸排気口(F1)(F2)との協働で、大気又は混合ガスのいずれかに変更できるようにしてある。
厚さ0.4mmのリン脱酸銅(JIS C1220、99.9%以上)を用い、15×10mmに銅板を切断後、表面をサンドペーパー#180〜#600により研磨後、硫酸10wt%で洗浄後、更に水→エタノール→アセトンの順に洗浄した銅板を試料(D)とした。
硝酸(HNO3特級、比重1.38(61.38%)、H2O38.62%含有)により混合ガスを発生させるガス源として用い、注入管(A)により、表1に示す量を蒸発室(B)に注入した。
また、蒸発ヒータ(C)により、表1に示す蒸発温度に加熱し、反応容器(F)内に硝酸が気化して発生した二酸化窒素(NO2)ガスと水蒸気(H2O)からなる混合ガスを注入した。
一方反応容器(F)は、受台(E)のヒータにより加熱して、表1の容器内温度にしてある。
一方、前記試料(D)は試料ヒータ(D1)により、表1に示す基材温度に加熱する。
反応容器内では注入した硝酸の加熱によって気化し、二酸化窒素ガスと水蒸気が発生して、表1の生成時間に示す時間が経過すると試料(D)表面には生成反応により、表1に示す被膜量の亜酸化銅と硝酸銅6水和物(Cu(NO3)2・6H2O)の積層構造の被膜が得られる。
得られる積層構造の被膜は少ないほど生成時間を短縮でき試料との密着性が良いが、被膜の色は薄くなる。
当該温度が高温すぎると、銅板が酸化し酸化銅(CuO)になる。(試作No.5)
低温すぎると試料(D)表面への亜酸化銅と硝酸銅6水和物の積層構造の被膜量が少なくなる。(試作No.4)
この試薬の硝酸と水との比率は、硝酸水溶液の濃度に密接に関係するので、前記範囲とするには、硝酸の濃度を5.7×10-3〜13.5×10-3mol/l、8.0×10-3〜12.0×10-3mol/l、より好ましくは8.0×10-3〜13.5×10-3mol/lとするのが望ましい。
蒸発室への硝酸滴下量は、0.01〜0.05ml、0.02〜0.04mlより好ましくは0.02ml〜0.20mlとするのが望ましい。(0.02ml〜0.20mlこの時のガス量は、7.7×10-5ml/cm3〜7.7×10-4ml/cm3)
硝酸水溶液の蒸発温度は、15×10℃〜45×10℃、15×10℃〜35×10℃、より好ましくは15×10℃〜30×10℃とするのが望ましい。
蒸発温度が低すぎると、試薬の硝酸が気化しないで、二酸化窒素ガスと水蒸気が発生しないため、生成反応は起きない。(試作No.1)(試料(D)表面へ亜酸化銅と硝酸銅6水和物の積層構造の被膜が得られない。)
また高すぎると硝酸水溶液を蒸発させるためのエネルギーを消費するのみで反応に特に影響はない。(試作No.3)
当該温度が高温すぎると、銅板が酸化し酸化銅(CuO)になる。(試作No.5)
低温すぎると試料(D)表面への亜酸化銅と硝酸銅6水和物の積層構造の被膜量が少なくなる。(試作No.4)
また反応時間は、60秒〜300秒、90秒〜300秒、より好ましくは90秒〜120秒とするのが望ましい。
反応時間が長すぎると、被膜量が過剰となり、短すぎると不足することとなる。
被膜の量は、10×10-4g/cm2〜40×10-4g/cm2、12×10-4g/cm2〜35×10-4g/cm2、より好ましくは12~30×10-4g/cm2とするのが望ましい。
被膜量がこれより多くなると反応(後述する実施例2と実施例3による反応)により塩基性硝酸銅(Cu2(OH)3NO3)の被膜が過剰に得られ、外観色(色彩)は濃くなり、密着性は、悪くなる。(試作No.6)
少ないと反応(後述する実施例2と実施例3による反応)により塩基性硝酸銅の被膜と亜酸化銅の被膜が試料表面にまだらに得られ、外観色(色彩)は薄くなり、密着性は、良くなる。(試作No.7)
その恒温湿度処理と、その安定化については、表2に示す通りの条件で結果を得た。
恒温湿槽の試料温度は、1×10℃〜5×10℃、1.5×10〜5×10℃、より好ましくは2×10℃〜5×10℃とするのが望ましい。
この試料温度が低すぎると、極端に長い処理時間を要することとなる。(試作No.1)
高すぎると、硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物の安定化を通過せず、塩基性硝酸銅の不安定な被膜が生成する。
湿度は、25%以上、40%以上、より好ましくは8×10%以上とするのが望ましい。
試料温度が高い場合は、湿度が少々低い場合でも反応が生じるが、この範囲を超えて低く過ぎると反応が生じない。また、前記範囲の高温域でも湿度が高いと塩基性硝酸銅の不安定な被膜が生成するので、試料温度の上限を設定することが望ましい。湿度の上限は特にないが具体的な試料温度上限は、50度となる。
例えば、被膜量12~30×10-4g/cm2が安定化するための槽内湿度と試料温度と時間の範囲は、槽内湿度85%以上、試料温度30~45℃、維持時間が半時間〜2時間とするのが最適である。
この場合、図1の装置を用いるに当たり、吸排気口(F1)(F2)を開き、反応容器(F)内の気体を、混合ガスから大気に交換してから用いた。
また、案内管(B1)は、ガス排出口(B1b)側を開き、万一でも反応容器(F)内に混合ガスが流入しないようにして用いた。
このようにして表3に示す条件にて、焼成した。
得られた試料の表面には自然緑青に類似する亜酸化銅と塩基性硝酸銅との水に不溶な積層構造被膜が得られる。
得られた被膜のX線による分析では亜酸化銅と塩基性硝酸銅との積層構造被膜であることを図2のX線回折の回折線から確認できる。
当該温度が高温すぎると、例えば180℃以上では銅板が酸化し酸化銅(CuO)になる。(試作No.6)
低温すぎると硝酸銅3水和物・硝酸銅2.5水和物とが残り、塩基性硝酸銅に完全に移行しない。(試作No.1.2)
また、焼成時間は、60秒〜300秒、90秒~300秒、より好ましくは90秒~180秒とするのが望ましい。
焼成時間が過剰に長いと塩基性硝酸銅へ生成させるためのエネルギーを消費するのみで反応に特に影響はない。
また、短すぎると硝酸銅3水和物・硝酸銅2.5水和物とが残り、塩基性硝酸銅に完全に移行しない。
これら焼成条件は、被膜量に比例して変化し、例えば、亜酸化銅と硝酸銅3水和物・硝酸銅2.5水和物の被膜量12~30×10-4g/cm2の焼成では、温度100~150℃、焼成時間120~300秒が最適な範囲である。
この場合、前記実施例1での処理が終了した後、案内管(B1)のガス排出口(B1b)側を開き、混合ガスの反応容器(F)内への流入を阻止し、吸排気口(F1)(F2)を開き、反応容器(F)内の気体を、混合ガスから大気に交換しながら放置した。
その具体例を以下の表4に示す。
当該温度が高温すぎると、例えば180℃以上では銅板が酸化し酸化銅(CuO)になる。(試作No.4)
低温すぎると硝酸銅6水和物が残り、塩基性硝酸銅に完全に移行しない。(試作No.5)
また、このときの放置時間は、10min〜30min、20min〜60min、より好ましくは10min〜20minとするのが望ましい。
当該時間が長すぎると、塩基性硝酸銅へ生成させるためのエネルギーを消費するのみで特に影響はない。
短すぎると、硝酸銅6水和物が残り、塩基性硝酸銅に完全に移行しない。
さらに、この間の試料温度は、10×10℃〜18×10℃、11×10℃〜17×10℃、より好ましくは12×10℃〜16×10℃とするのが望ましい。
当該温度が高温すぎると、例えば180℃以上では銅板が酸化し酸化銅(CuO)になる。(試作No.4)
低温すぎると硝酸銅6水和物が残り、塩基性硝酸銅に完全に移行しない。(試作No.5)
この製法では生成する被膜量を調整することが難しいが、硝酸の濃度が生成反応に深く関与していることから、硝酸の濃度を水の混合により調整する事によって、塩基性硝酸銅の被膜量を制御することは容易に類推できる。
当該温度が高温すぎると、塩基性硝酸銅の不安定な被膜が生成する。
低温すぎると極端に長い処理時間を要することとなる。
曝露時の外気平均湿度は、0%〜25%、10%〜40%、より好ましくは5%〜20%とするのが望ましい。
当該湿度が高すぎると、短時間では塩基性硝酸銅の被膜の外観色(色彩)が均一にならない。
低すぎる場合は、硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物から水和物が抜け塩基性硝酸銅の被膜へ生成しやすい。
また、このときの曝露時間は、1日〜14日、2日〜7日、より好ましくは7日〜14日とするのが望ましい。
当該時間が長すぎても特に問題はない。
短すぎると、硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物から水和物が抜けず、塩基性硝酸銅の不安定な被膜が生成する。
その条件と結果は、表6に示す通りである。
当該温度が高温すぎると、180℃以上では銅板が酸化し酸化銅(CuO)になる。(試作No.6)
低温すぎると硝酸銅6水和物が残り、塩基性硝酸銅に完全に移行しない。(試作No.5)
また、このときの焼成時間は、60秒〜300秒、90秒〜300秒、より好ましくは90秒〜180秒とするのが望ましい。
当該時間が長すぎると、塩基性硝酸銅へ生成させるためのエネルギーを消費するのみで特に影響はない。
短すぎると、硝酸銅6水和物が残り、塩基性硝酸銅に完全に移行しない。
焼成時の反応容器内温度は、10×10℃〜18×10℃、11×10℃〜17×10℃、より好ましくは12×10℃〜16×10℃とするのが望ましい。
なお、この方法では、最短5分で被膜が得られるが、急激に安定化させたため被膜へ突沸が起きてしまう。被膜の突沸を回避するためには、実施例2に記載した恒温湿度槽での装填か実施例4の処理が必要となる。
各ステップでの処理は表7に示すとおりとした。
ステップ1(SNo.1)
前記実施例1と同様に試薬の硝酸の気化中で、硝酸銅6水和物からなる層を生成する。
当該処理における諸条件範囲は前記実施例1と同様とする。
初期の被膜量はSNo.4で重要となり、SNo.2以降の生成反応時間調整のため多く付着しないようにする。
当該被膜量が多くなると、SNo.2以降の反応時間が多く掛かってしまう。
被膜の量は、10×10-4g/cm2以下、20×10-4g/cm2以下、より好ましくは5×10-4g/cm2~15×10-4g/cm2とするのが望ましい。
ステップ2(SNo.2)
SNo.1で得られた試料を、実施例2の恒温湿度処理して、硝酸銅6水和物を硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物に移行させる。
当該処理における諸条件範囲は前記実施例2と同様とする。特に、槽内湿度85%以上、試料温度30~45℃で半時間〜1時間維持し、硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物へと化学反応により移行させ安定化させるのが最適である。
ステップ3(SNo.3)
SNo.2で得られた硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物の試料を、実施例3と同様な焼成処理を行うことで、亜酸化銅と塩基性硝酸銅の二層構造を生成させる。
基本的には前記実施例3と同様な条件で行うことが可能であるが、焼成温度10×10℃~15×10℃、焼成時間2~5分焼成(実施例3により)するのが最適である。
ステップ4(SNo.4)
SNo.3で得られた試料を前記実施例1と同様に試薬の硝酸の気化中で、前記SNo.3で得られた層を溶解し、硝酸銅6水和物からなる層を生成する。
基本的には、前記実施例1と同様の条件で作成可能で、既に生成されている硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物の被膜をSNo.1よりも厚く、密着を強くするために硝酸銅6水和物とする。
SNo.4で得られた試料を、実施例2の恒温湿度処理して、その硝酸銅6水和物を硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物に移行させる。
実施例2と基本的には同様な条件で実施できるが、特に槽内湿度85%以上、試料温度30~45℃で半時間〜2時間維持するのが最適である。
ステップ6(SNo.6)
SNo.5で得られた試料を、実施例3と同様な焼成処理を行うことで、亜酸化銅と塩基性硝酸銅の二層構造が積層した人工緑青を得た。
基本的には前記実施例3と同様な条件で行うことが可能であるが、焼成温度10×10℃~15×10℃、焼成時間2~5分で焼成(実施例3により)するのが最適であり、このようにすることでSNo.1〜SNo.6までの総時間は3時間〜4時間で銅板表面へ“均一な”自然緑青の被膜と合致した、人工緑青の亜酸化銅と塩基性硝酸銅の積層構造被膜を得ることができる。
このように、銅板の表面に“均一な”自然緑青の積層構造からなる銅化合物被膜と、同構造の人工被膜を得る方法として実施例1と実施例2と実施例3を2回以上繰り返し実施することにより、3時間〜4時間で銅板の表面へ“均一な”自然緑青の積層構造被膜と合致した、人工緑青の亜酸化銅と塩基性硝酸銅の積層構造被膜を得ることができる。
各ステップでの処理は表8に示すとおりである。
ステップ1(SNo.1)
前記実施例7のステップ1(SNo.1)と同様にして、硝酸銅6水和物からなる層を持つ試料を得た。
ステップ2(SNo.2)
SNo.1にて得られた試料の表面に、メタノール、エタノール等のアルコール液を塗布して、アルコール層を形成した。
アルコールの塗布量は、1.0×10-2ml/cm2〜7.0×10-2ml/cm2、1.2×10-2ml/cm2〜6.0×10-2ml/cm2より好ましくは、1.3×10-2ml/cm2〜2.6×10-2ml/cm2とするのが望ましい。
この含浸量が過剰な場合は、硝酸銅6水和物を溶解してしまう。
この含浸量が少なすぎる場合は、硝酸銅6水和物の安定化反応が小さくなり安定した被膜を得難い。
ステップ3(SNo.3)
SNo.2で得られた試料に、前記実施例3と同様な焼成処理を行うことで、亜酸化銅と塩基性硝酸銅の二層構造を生成させる。
基本的には前記実施例3と同様な条件で行うことが可能であるが、焼成温度10×10℃~15×10℃、焼成時間2~5分焼成(実施例3により)するのが最適である。
ステップ4(SNo.4)
SNo.3で得られた試料を前記実施例1と同様に試薬の硝酸の気化中で、前記SNo.3で得られた層を溶解し、硝酸銅6水和物からなる層を生成する。
基本的には、前記実施例1と同様に作成することが可能である。
SNo.4で得られた試料を、実施例2の恒温湿度処理して、その硝酸銅6水和物を硝酸銅3水和物と硝酸銅2.5水和物に移行させる。
実施例2と基本的には同様な条件で実施できるが、特に槽内湿度85%以上、試料温度30~45℃で半時間〜2時間維持するのが最適である。
ステップ6(SNo.6)
SNo.5で得られた試料を、実施例3と同様な焼成処理を行うことで、亜酸化銅と塩基性硝酸銅の二層構造が積層した人工緑青を得た。
基本的には前記実施例3と同様な条件で行うことが可能であるが、焼成温度10×10℃~15×10℃、焼成時間2~5分焼成(実施例3により)するのが最適であり、このようにしてSNo.1〜SNo.6までの総時間は2時間〜3時間で銅板の表面へ“均一な”自然緑青の被膜と合致した、人工緑青の亜酸化銅と塩基性硝酸銅の積層構造被膜を得ることができる。
このように、銅板の表面に“均一な”自然緑青の積層構造からなる銅化合物被膜と、同構造の人工被膜を得る方法として実施例1を実施し、アルコール類を1.0×10-2ml/cm2以上添加した後、実施例3後、再び、実施例1を実施した後、実施例2、実施例3と実施することにより、3時間〜4時間で銅板の表面へ“均一な”自然緑青の被膜と合致した、人工緑青の亜酸化銅と塩基性硝酸銅の積層構造被膜を得ることができる。
この方法は、実施例1〜実施例3により人工緑青の亜酸化銅と塩基性硝酸銅の積層構造被膜が得られる生成時間の3時間〜4時間よりも1時間〜3時間(最大)短縮することができる。
(B) 蒸発室
(B1) ガス案内管
(B1a) ガス注入口
(B1b) ガス排出口
(C) 蒸発ヒータ
(D) 試料
(D1) 試料ヒータ
(E) 反応容器台
(F) 反応容器
(F1) 吸気口
(F2) 排気口
Claims (3)
- 銅又は銅合金からなる基材の表面に人工緑青が被覆されてなる銅部材であって、前記基材の表面に形成された亜酸化銅よりなる層と、この層の表面に形成された塩基性硝酸銅からなる層とにより人工緑青が形成されていることを特徴とする人工緑青被覆銅部材。
- 請求項1に記載の人工緑青被覆銅部材において、塩基性硝酸銅からなる層は、硝酸銅の水和物の脱水処理により得られたものであることを特徴とする人工緑青被覆銅部材。
- 請求項1から2のいずれかに記載の人工緑青被覆銅部材を製造する方法であって、試薬の硝酸の気化中に、加熱した基材を曝露することにより、当該基材の表面に亜酸化銅よりなる層と、この層の表面に形成された硝酸銅の水和物層とからなる二層構造を生成し、前記硝酸銅の水和物を脱水処理して塩基性硝酸銅を生成することを特徴とする人工緑青被覆銅部材の製造方法。
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2009
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