以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
A:第1の実施形態
図2には、本願発明の第1の実施形態に係る制御装置が適用される作業機としてのクレーン車101、及び該クレーン車101の定格性能線Lを示している。
上記クレーン車101は、車体102上に旋回可能に搭載された旋回台103に、伸縮ブーム104を伸縮動及び起伏動可能に取り付けるとともに、上記車体102の前後左右の四ヶ所にはそれぞれアウトリガ111〜114を備えて構成され、クレーン作業に際しては、上記各アウトリガ111〜114をそれぞれ適宜の張出幅に張出させ、該各アウトリガ111〜114によって上記車体102を浮上支持した状態で作業を行なうようになっている。
このクレーン車101の制御のために、上記伸縮ブーム104にはブーム長さ検出器11が、上記旋回台103にはブーム起伏角度検出器12が、さらに上記各アウトリガ111〜114にはそれぞれアウトリガ張出幅検出器21〜24が配置されている。
図1には、上記クレーン車101の制御装置をブロック図として示している。この制御装置は、作業状態検出手段1とアウトリガ張出幅検出手段2及びコントロールユニット4を備えて構成される。
上記作業状態検出手段1は、上記クレーン車101の作業状態に関する情報を取得してこれを出力するものであって、上記伸縮ブーム104のブーム長さを検出するブーム長さ検出器11と、上記伸縮ブーム104の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器12を備えて構成され、これら各検出器11、12で検出されたブーム長さ及びブーム起伏角度はそれぞれ次述のコントロールユニット4の定格性能算出手段5に制御情報として入力される。
上記アウトリガ張出幅検出手段2は、上記クレーン車101に備えられた四つのアウトリガ111〜114の張出幅を検出するものであって、上記右前アウトリガ111に備えられた右前アウトリガ張出幅検出器21と、上記右後アウトリガ112に備えられた右後アウトリガ張出幅検出器22と、上記左前アウトリガ113に備えられた左前アウトリガ張出幅検出器23及び上記左後アウトリガ114に備えられた左後アウトリガ張出幅検出器24で構成されており、これら各アウトリガ張出幅検出器21〜24において検出された上記各アウトリガ111〜114の張出幅はそれぞれ次述のコントロールユニット4のアウトリガ選定手段6に制御情報として入力される。
上記コントロールユニット4は、次述の定格性能算出手段5とアウトリガ選定手段6及び最小垂直距離出力手段7を備えて構成される。
上記アウトリガ選定手段6は、上記各アウトリガ張出幅検出器21〜24において検出された上記各アウトリガ111〜114の張出幅を受けて該各張出幅を比較し、これら各アウトリガ111〜114のうち、張出幅が最小のアウトリガを選定してこれを特定アウトリガとするとともに、該特定アウトリガに対して旋回の周方向において隣接する他のアウトリガを選定し、これら両アウトリガの張出幅に関する情報を次述の最小垂直距離出力手段7に出力する。尚、この実施形態では、図2に示すように、最も張出幅が小さい上記左後アウトリガ114が上記「特定アウトリガ」となり、上記左前アウトリガ113が上記「他のアウトリガ」となる。
上記最小垂直距離出力手段7は、上記アウトリガ選定手段6からの上記左後アウトリガ114の張出幅に関する情報と上記左前アウトリガ113の張出幅に関する情報を受けて、
上記左後アウトリガ114の接地点P4と上記左前アウトリガ113の接地点P3を結ぶ直線Rに対する旋回中心Qからの垂直距離S1を算出し、これを最小垂直距離として次述の定格性能算出手段5に出力する。
上記定格性能算出手段5は、上記ブーム長さ検出器11からのブーム長さに関する情報と上記ブーム起伏角度検出器12からのブーム起伏角度に関する情報を受けるとともに、上記最小垂直距離出力手段7からの最小垂直距離に関する情報を受けて、現在の作業状態下での定格性能を算出する。具体的には、図2に実線図示する定格性能線Lを算出する。
ここで、上記最小垂直距離出力手段7において算出された定格性能線Lは、従来手法によって算出された定格性能線L0より大きい作業半径に設定され、この定格性能線Lと定格性能線L0の差分だけ、安全に作業を行なうことができる作業領域が拡大され、それだけクレーン車101の作業性能が向上することになる。
尚、従来手法により求められる上記定格性能線L0は、図2に示すように、最小の張出幅をもつ左後アウトリガ114の張出幅を他の全てのアウトリガ111,112,113の張出幅と仮定し、上記左後アウトリガ114の接地点P4と上記左前アウトリガ113´の接地点P3´を結ぶ直線R0に対する旋回中心Qからの垂直距離S0に基づいて算出されるものであり、この垂直距離S0と本実施形態における上記垂直距離S1との差分に起因して上述のように定格性能に差が生じたものである。
ここで、図3を参照して、実際の制御フローを説明する。制御開始後、先ず、ステップS1において、ブーム長さ、ブーム起伏角度、及び各アウトリガ111〜114の張出幅を読み込む。
次に、ステップS2において、上記各アウトリガ111〜114の張出幅に基づいて、最小張出幅のアウトリガを選定するとともに、この最小張出幅のアウトリガに対して旋回の周方向において隣接する他のアウトリガを選定する。
そして、ステップS3においては、ステップS2で選定された二つのアウトリガの張出幅に基づいて、最小垂直距離を算出する。さらに、ステップS4において、上記最小垂直距離に基づいて、定格性能を算出して出力するものである。
B:第2の実施形態
図5には、本願発明の第2の実施形態に係る制御装置が適用される作業機としてのクレーン車101、及び該クレーン車101の定格性能線Lを示している。上記クレーン車101の構成は上記第1の実施形態の場合と同じであるので、ここでの説明を省略する。これに対して、上記定格性能線Lは上記第1の実施形態における定格性能線Lとは異なったものとなっている。この定格性能線Lの相違は、次述するように、制御の基本思想の相違に基づくものである。以下、この実施形態における制御を具体的に説明する。
図4には、上記クレーン車101の制御装置をブロック図として示している。この制御装置は、作業状態検出手段1とアウトリガ張出幅検出手段2と旋回位置検出手段3、及びコントロールユニット4を備えて構成される。
上記作業状態検出手段1は、上記クレーン車101の作業状態に関する情報を取得してこれを出力するものであって、上記伸縮ブーム104のブーム長さを検出するブーム長さ検出器11と、上記伸縮ブーム104の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器12を備えて構成され、これら各検出器11、12で検出されたブーム長さ及びブーム起伏角度はそれぞれ次述のコントロールユニット4の定格性能算出手段5に制御情報として入力される。
上記アウトリガ張出幅検出手段2は、上記クレーン車101に備えられた四つのアウトリガ111〜114の張出幅をそれぞれ検出するものであって、上記右前アウトリガ111に備えられた右前アウトリガ張出幅検出器21と、上記右後アウトリガ112に備えられた右後アウトリガ張出幅検出器22と、上記左前アウトリガ113に備えられた左前アウトリガ張出幅検出器23及び上記左後アウトリガ114に備えられた左後アウトリガ張出幅検出器24で構成されており、これら各アウトリガ張出幅検出器21〜24において検出された上記各アウトリガ111〜114の張出幅はそれぞれ次述のコントロールユニット4のアウトリガ選定手段6に制御情報として入力される。
上記旋回位置検出手段3は、上記旋回台103の旋回位置、即ち、上記伸縮ブーム104の旋回位置を検出し、この旋回位置に関する情報を次述のコントロールユニット4の旋回位置検出値異常判定手段8に制御情報として出力する。
上記コントロールユニット4は、次述の定格性能算出手段5とアウトリガ選定手段6と最小垂直距離出力手段7、及び旋回位置検出値異常判定手段8を備えて構成される。
上記アウトリガ選定手段6は、上記各アウトリガ張出幅検出器21〜24において検出された上記各アウトリガ111〜114の張出幅を受けて該各張出幅を比較し、これら各アウトリガ111〜114のうち、張出幅が最小のアウトリガを選定してこれを特定アウトリガとするとともに、該特定アウトリガに対して旋回の周方向において隣接する他のアウトリガを選定し、これら両アウトリガの張出幅に関する情報を次述の最小垂直距離出力手段7に出力する。尚、この実施形態では、図5に示すように、最も張出幅が小さい上記左後アウトリガ114が上記「特定アウトリガ」となり、上記左前アウトリガ113が上記「他のアウトリガ」となる。
上記最小垂直距離出力手段7は、上記アウトリガ選定手段6からの上記左後アウトリガ114の張出幅に関する情報と上記左前アウトリガ113の張出幅に関する情報を受けて、
上記左後アウトリガ114の接地点P4と上記左前アウトリガ113の接地点P3を結ぶ直線Rに対する旋回中心Qからの垂直距離S1を算出し、これを最小垂直距離として次述の定格性能算出手段5に出力する。
上記旋回位置検出値異常判定手段8は、上記旋回位置検出手段からの旋回位置を受けてその旋回位置検出値が異常であるかどうかを判定し異常である場合に異常信号を出力するものであり、この異常信号は次述の定格性能算出手段5に入力される。
上記定格性能算出手段5は、上記ブーム長さ検出器11からのブーム長さに関する情報と上記ブーム起伏角度検出器12からのブーム起伏角度に関する情報を受けるとともに、上記最小垂直距離出力手段7からの最小垂直距離に関する情報と、上記旋回位置検出値異常判定手段8からの旋回位置検出値の異常に関する情報を受けて、現在の作業状態下での定格性能を算出する。具体的には、図5に実線図示する第1性能線L1と第2性能線L2からなる定格性能線L、及び破線図示する第3性能線L3を算出する。
ここで、上記第1性能線L1と第2性能線L2で構成される定格性能線Lは、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合の定格性能線であって、上記第1性能線L1は、安定性が最も低い旋回領域、即ち、上記旋回中心Qと上記左後アウトリガ114の接地点P4を結ぶ直線と、該直線から時計回り方向において上記旋回中心Qと上記左前アウトリガ113の接地点P3を結ぶ直線で囲まれた領域(反時計回り方向における点a〜点bの範囲)に対応するものであって、それ以外の安定性の高い領域に対応する第2性能線L2よりも小作業半径側に設定されている。
これに対して、上記第3性能線L3は、上記第2性能線L2に対応する領域において、上記第1性能線L1の延長上に設定されており(時計回り方向に点a〜bの領域)、上記第2性能線L2よりも小作業半径に設定されている。
従って、上記クレーン車101は、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合、即ち、上記ブーム起伏角度検出器12が正常に作動しておりその検出値の信頼性が担保されている場合には、第1性能線L1と第2性能線L2で構成される定格性能線Lによってその作業領域が制限される。これに対して、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されている場合、即ち、上記旋回位置検出手段3が正常に作動しておらずその検出値の信頼性が担保されていない場合には、実線図示する上記第1性能線L1と破線図示する上記第3性能線L3によってその作業領域が制限され、作業を安全に行なうことができる。
なお、図5に破線図示した定格性能線L0は、従来手法により求められる定格性能線であって、最小の張出幅をもつ左後アウトリガ114の張出幅を他の全てのアウトリガ111,112,113の張出幅と仮定し、上記左後アウトリガ114の接地点P4と上記左前アウトリガ113´の接地点P3´を結ぶ直線R0に対する旋回中心Qからの垂直距離S0に基づいて算出されるものであり、この垂直距離S0と本実施形態における上記垂直距離S1との差分に起因して定格性能に差が生じるものである。
因みに、従来手法の制御によれば、上記クレーン車101は、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合には、第3性能線L3の反時計回り方向に点c〜dの範囲と、第2性能線L2によってその作業領域が制限される。これに対して、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されている場合には、全旋回範囲にわたって第1性能線L1及び第3性能線L3によってその作業領域が制限される。
ここで、図6を参照して、実際の制御フローを説明する。制御開始後、先ず、ステップS1において、ブーム長さ、ブーム起伏角度、ブーム旋回位置及び各アウトリガ111〜114の張出幅を読み込む。
次に、ステップS2において、上記旋回位置検出手段3によって検出された旋回位置検出値が正常であるか、異常であるか、が判断される。そして、正常であると判断された場合には、ステップS3において、旋回位置に応じた全周の定格性能(即ち、上記第1性能線L1と第2性能線L2)を算出してこれを出力する。
これに対して、ステップS2において旋回位置検出値が異常であると判断された場合には、先ずステップS4において、最小張出幅のアウトリガを選定するとともに、この最小張出幅のアウトリガに対して旋回の周方向において隣接する他のアウトリガを選定する。
次に、ステップS5においては、ステップS4で選定された二つのアウトリガの張出幅に基づいて、最小垂直距離を算出する。さらに、ステップS6において、上記最小垂直距離に基づいて、旋回位置検出値が異常である場合における定格性能(即ち、第1性能線L1と第3性能線L3)を算出して出力するものである。
尚、クレーン作業の途中で、旋回位置検出値の異常が発生した場合の対処法は、以下の通りである。
(a)旋回位置検出値の異常の発生時点において、上記伸縮ブーム104の旋回位置が第1性能線L1に対応する領域にある場合は、元々この第1性能線L1によって作業性能が制限されているため、何等特別な対処法を講じることなく、そのまま第1性能線L1による制限の下で作業を継続すれば良い。
(b)旋回位置検出値の異常の発生時点において、上記伸縮ブーム104の旋回位置が第2性能線L2に対応する領域にある場合は、異常の発生に伴って定格性能線が第2性能線L2から第3性能線L3に変更される。このため、例えば、異常の発生時点において作業性能が上記第3性能線L3と第2性能線L2の間にあった場合は、転倒モーメントが増加する方向の動作、即ち、伸縮ブーム104の伸長動及び倒伏動、及び伸縮ブーム104の旋回動がそれぞれ規制され、上記伸縮ブーム104は転倒モーメントが減少する方向の動作、即ち、縮小動と起仰動のみが許容される。従って、直ちに、上記伸縮ブーム104を縮小又は起仰させて作業性能を第3性能線L3の範囲内へ移行させることが必要となる。
(c)旋回位置検出値の異常の発生時点において作業性能が上記第3性能線L3の内側にあった場合は、異常の発生とともに定格性能が第2性能線L2から第3性能線L3側へ切り替わり、自動的に上記第3性能線L3によって作業性能が制限されるため、何等特別な対処法を講じることなく、そのまま第3性能線L3による制限の下で作業を継続すれば良い。
C:第3の実施形態
図8には、本願発明の第3の実施形態に係る制御装置が適用される作業機としてのクレーン車101、及び該クレーン車101の定格性能線Lを示している。上記クレーン車101の構成は上記第1の実施形態の場合と同じであるので、ここでの説明を省略する。
一方、この第3の実施形態に係る制御装置は、上記第2の実施形態に係る制御装置の展開例として位置づけられるものであるが、上記第2の実施形態では、全アウトリガのうち、最小張出幅のアウトリガを選定して、これに基づいて最小垂直距離を算出していたのに対して、この第3の実施形態の制御装置では、上記最小垂直距離の算出に、車体102の一方側に配置された前後一対のアウトリガと、他方側に配置された前後一対のアウトリガの双方を考慮するものであって、その具体的な内容は以下の通りである。
図7には、上記クレーン車101の制御装置をブロック図として示している。この制御装置は、作業状態検出手段1とアウトリガ張出幅検出手段2と旋回位置検出手段3、及びコントロールユニット4を備えて構成される。
上記作業状態検出手段1は、上記クレーン車101の作業状態に関する情報を取得してこれを出力するものであって、上記伸縮ブーム104のブーム長さを検出するブーム長さ検出器11と、上記伸縮ブーム104の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器12を備えて構成され、これら各検出器11、12で検出されたブーム長さ及びブーム起伏角度はそれぞれ次述のコントロールユニット4の定格性能算出手段5に制御情報として入力される。
上記アウトリガ張出幅検出手段2は、上記クレーン車101に備えられた四つのアウトリガ111〜114の張出幅を検出するものであって、上記右前アウトリガ111に備えられた右前アウトリガ張出幅検出器21と、上記右後アウトリガ112に備えられた右後アウトリガ張出幅検出器22と、上記左前アウトリガ113に備えられた左前アウトリガ張出幅検出器23及び上記左後アウトリガ114に備えられた左後アウトリガ張出幅検出器24で構成されており、これら各アウトリガ張出幅検出器21〜24において検出された上記各アウトリガ111〜114の張出幅はそれぞれ次述のコントロールユニット4のアウトリガ選定手段6に制御情報として入力される。
上記旋回位置検出手段3は、上記旋回台103の旋回位置、即ち、上記伸縮ブーム104の旋回位置を検出し、この旋回位置に関する情報を次述のコントロールユニット4の旋回位置検出値異常判定手段8に制御情報として出力する。
上記コントロールユニット4は、次述の定格性能算出手段5とアウトリガ選定手段6と最小垂直距離出力手段7、及び旋回位置検出値異常判定手段8を備えて構成される。
上記アウトリガ選定手段6は、上記各アウトリガ張出幅検出器21〜24において検出された上記各アウトリガ111〜114の張出幅を受けて、車体102の右側の前後二位置に配置された一対のアウトリガ111,112のうち、最小張出幅のアウトリガを選定してこれを特定のアウトリガとし、この特定のアウトリガの張出幅と選定されなかった他のアウトリガの張出幅に関する情報を次述の最小垂直距離出力手段7に出力する。また、車体102の左側の前後二位置に配置された一対のアウトリガ113,114のうち、最小張出幅のアウトリガを選定してこれを特定のアウトリガとし、この特定のアウトリガの張出幅と選定されなかった他のアウトリガの張出幅に関する情報を次述の最小垂直距離出力手段7に出力する。
尚、この実施形態では、図8に示すように、車体102の右側においては、右後アウトリガ112が上記「特定アウトリガ」となり、右前アウトリガ111が「他のアウトリガ」となる。また、車体102の左側においては、左後アウトリガ114が上記「特定アウトリガ」となり、左前アウトリガ113が「他のアウトリガ」となる。
上記最小垂直距離出力手段7は、右側最小垂直距離算出手段71と左側最小垂直距離算出手段72と比較手段75を備えて構成される。
上記右側最小垂直距離算出手段71では、上記アウトリガ選定手段6からの右前アウトリガ111と右後アウトリガ112の張出幅に関する情報を受けて、上記右前アウトリガ111の接地点P1と上記右後アウトリガ112の接地点P2を結ぶ直線R2に対する旋回中心Qからの垂直距離S2を算出し、これを最小垂直距離として次述の比較手段75に出力する。
上記左側最小垂直距離算出手段72では、上記アウトリガ選定手段6からの左前アウトリガ113と左後アウトリガ114の張出幅に関する情報を受けて、上記左前アウトリガ113の接地点P3と上記左後アウトリガ114の接地点P4を結ぶ直線R1に対する旋回中心Qからの垂直距離S1を算出し、これを最小垂直距離として次述の比較手段75に出力する。
上記比較手段75では、上記右側最小垂直距離算出手段71と上記左側最小垂直距離算出手段72からの情報を受けて、車体102の右側における最小垂直距離S2と車体102の左側における最小垂直距離S1とを比較し、これらのうち、距離が短い方の最小垂直距離をクレーン車101の「最小垂直距離」として選択し(この実施形態では、左側の垂直距離S1が最小垂直距離として選択される)、これを次述の定格性能算出手段5に出力する。
上記旋回位置検出値異常判定手段8は、上記旋回位置検出手段からの旋回位置を受けてその旋回位置検出値が異常であるかどうかを判定し異常である場合に異常信号を出力するものであり、この異常信号は次述の定格性能算出手段5に入力される。
上記定格性能算出手段5は、上記ブーム長さ検出器11からのブーム長さに関する情報と上記ブーム起伏角度検出器12からのブーム起伏角度に関する情報を受けるとともに、上記最小垂直距離出力手段7からの最小垂直距離に関する情報と、上記旋回位置検出値異常判定手段8からの旋回位置検出値の異常に関する情報を受けて、現在の作業状態下での定格性能を算出する。具体的には、図8に実線図示する第1性能線L1と第2性能線L2からなる定格性能線L、及び破線図示する第3性能線L3を算出する。
ここで、上記第1性能線L1と第2性能線L2で構成される定格性能線Lは、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合の定格性能線であって、上記第1性能線L1は、安定性が最も低い旋回領域、即ち、上記旋回中心Qと上記左後アウトリガ114の接地点P4を結ぶ直線と、該直線から時計回り方向において上記旋回中心Qと上記左前アウトリガ113の接地点P3を結ぶ直線で囲まれた領域(反時計回り方向における点a〜点bの範囲)に対応するものであって、それ以外の安定性の高い領域に対応する第2性能線L2よりも小作業半径側に設定されている。
これに対して、上記第3性能線L3は、上記第2性能線L2に対応する領域において、上記第1性能線L1の延長上に設定されており(時計回り方向に点a〜bの領域)、上記第2性能線L2よりも小作業半径に設定されている。
従って、上記クレーン車101は、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合、即ち、上記ブーム起伏角度検出器12が正常に作動しておりその検出値の信頼性が担保されている場合には、第1性能線L1と第2性能線L2で構成される定格性能線Lによってその作業領域が制限される。これに対して、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されている場合、即ち、上記ブーム起伏角度検出器12が正常に作動しておらずその検出値の信頼性が担保されていない場合には、実線図示する上記第1性能線L1と破線図示する上記第3性能線L3によってその作業領域が制限され、作業を安全に行なうことができる。
なお、図8に破線図示した定格性能線L0は、従来手法により求められる定格性能線であって、最小の張出幅をもつ左後アウトリガ114の張出幅を他の全てのアウトリガ111,112,113の張出幅と仮定し、上記左後アウトリガ114の接地点P4と上記左前アウトリガ113´の接地点P3´を結ぶ直線R0に対する旋回中心Qからの垂直距離S0に基づいて算出されるものであり、この垂直距離S0と本実施形態における上記垂直距離S1との差分に起因して定格性能に差が生じるものである。
因みに、従来手法の制御によれば、上記クレーン車101は、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合には、第3性能線L3の反時計回り方向に点c〜dの範囲と、第2性能線L2によってその作業領域が制限される。これに対して、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されている場合には、全旋回範囲にわたって第3性能線L3によってその作業領域が制限される。
ここで、図9を参照して、実際の制御フローを説明する。制御開始後、先ず、ステップS1において、ブーム長さ、ブーム起伏角度、ブーム旋回位置及び各アウトリガ111〜114の張出幅を読み込む。
次に、ステップS2において、上記旋回位置検出手段3によって検出された旋回位置検出値が正常であるか、異常であるか、が判断される。そして、正常であると判断された場合には、ステップS3において、旋回位置に応じた全周の定格性能(即ち、上記第1性能線L1と第2性能線L2)を算出してこれを出力する。
これに対して、ステップS2において旋回位置検出値が異常であると判断された場合には、先ずステップS4において、車体102の左側において最小張出幅のアウトリガを選定するとともに、この最小張出幅のアウトリガに対して旋回の周方向において隣接する他のアウトリガを選定する。そして、ステップS5においては、ステップS4で選定された二つのアウトリガの張出幅に基づいて、最小垂直距離を算出する。
さらに、ステップS6において、車体102の右側において最小張出幅のアウトリガを選定するとともに、この最小張出幅のアウトリガに対して旋回の周方向において隣接する他のアウトリガを選定する。そして、ステップS7においては、ステップS6で選定された二つのアウトリガの張出幅に基づいて、最小垂直距離を算出する。
そして、ステップS8では、車体102の右側における最小垂直距離S2と車体102の左側における最小垂直距離S1とを比較し、距離が短い方の最小垂直距離を最終的な最小垂直距離とし、これに基づいて、旋回位置検出値が異常である場合における定格性能(即ち、第1性能線L1と第3性能線L3)を算出して出力するものである。
尚、クレーン作業の途中で、旋回位置検出値の異常が発生した場合の対処法は、上記第2の実施形態の場合と同様である。
D:第4の実施形態
図11には、本願発明の第4の実施形態に係る制御装置が適用される作業機としてのクレーン車101、及び該クレーン車101の定格性能線Lを示している。上記クレーン車101の構成は上記第1の実施形態の場合と同じであるので、ここでの説明を省略する。
一方、この第4の実施形態に係る制御装置は、上記第3の実施形態に係る制御装置の展開例として位置づけられるものであるが、上記第3の実施形態では、最小垂直距離の算出に、車体102の一方側に配置された前後一対のアウトリガと、他方側に配置された前後一対のアウトリガの双方を考慮するものであるのに対して、この第4の実施形態の制御装置では、最小垂直距離の算出に、車体102の一方側に配置された前後一対のアウトリガと、他方側に配置された前後一対のアウトリガの双方を考慮するのに加えて、さらに車体102の前部側の左右両側に位置する一対のアウトリガと、車体102の後部側の左右両側に位置する一対のアウトリガをも考慮するようにしたものであって、その具体的な内容は以下の通りである。
図10には、上記クレーン車101の制御装置をブロック図として示している。この制御装置は、作業状態検出手段1とアウトリガ張出幅検出手段2と旋回位置検出手段3、及びコントロールユニット4を備えて構成される。
上記作業状態検出手段1は、上記クレーン車101の作業状態に関する情報を取得してこれを出力するものであって、上記伸縮ブーム104のブーム長さを検出するブーム長さ検出器11と、上記伸縮ブーム104の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器12を備えて構成され、これら各検出器11、12で検出されたブーム長さ及びブーム起伏角度はそれぞれ次述のコントロールユニット4の定格性能算出手段5に制御情報として入力される。
上記アウトリガ張出幅検出手段2は、上記クレーン車101に備えられた四つのアウトリガ111〜114の張出幅を検出するものであって、上記右前アウトリガ111に備えられた右前アウトリガ張出幅検出器21と、上記右後アウトリガ112に備えられた右後アウトリガ張出幅検出器22と、上記左前アウトリガ113に備えられた左前アウトリガ張出幅検出器23及び上記左後アウトリガ114に備えられた左後アウトリガ張出幅検出器24で構成されており、これら各アウトリガ張出幅検出器21〜24において検出された上記各アウトリガ111〜114の張出幅はそれぞれ次述のコントロールユニット4のアウトリガ選定手段6に制御情報として入力される。
上記旋回位置検出手段3は、上記旋回台103の旋回位置、即ち、上記伸縮ブーム104の旋回位置を検出し、この旋回位置に関する情報を次述のコントロールユニット4の旋回位置検出値異常判定手段8に制御情報として出力する。
上記コントロールユニット4は、次述の定格性能算出手段5とアウトリガ選定手段6と最小垂直距離出力手段7、及び旋回位置検出値異常判定手段8を備えて構成される。
上記アウトリガ選定手段6は、上記各アウトリガ張出幅検出器21〜24において検出された上記各アウトリガ111〜114の張出幅を受けて、車体102の右側の前後二位置に配置された一対のアウトリガ111,112のうち、最小張出幅のアウトリガを選定してこれを特定のアウトリガとし、この特定のアウトリガの張出幅と選定されなかった他のアウトリガの張出幅に関する情報を次述の最小垂直距離出力手段7に出力する。また、車体102の左側の前後二位置に配置された一対のアウトリガ113,114のうち、最小張出幅のアウトリガを選定してこれを特定のアウトリガとし、この特定のアウトリガの張出幅と選定されなかった他のアウトリガの張出幅に関する情報を次述の最小垂直距離出力手段7に出力する。
尚、この実施形態では、図8に示すように、車体102の右側においては、右後アウトリガ112が上記「特定アウトリガ」となり、右前アウトリガ111が「他のアウトリガ」となる。また、車体102の左側においては、左後アウトリガ114が上記「特定アウトリガ」となり、左前アウトリガ113が「他のアウトリガ」となる。
上記最小垂直距離出力手段7は、右側最小垂直距離算出手段71と左側最小垂直距離算出手段72と前側最小垂直距離算出手段73と後側最小垂直距離算出手段74及び比較手段75を備えて構成される。
上記右側最小垂直距離算出手段71では、上記アウトリガ選定手段6からの右前アウトリガ111と右後アウトリガ112の張出幅に関する情報を受けて、上記右前アウトリガ111の接地点P1と上記右後アウトリガ112の接地点P2を結ぶ直線R2に対する旋回中心Qからの垂直距離S2を算出し、これを最小垂直距離として次述の比較手段75に出力する。
上記左側最小垂直距離算出手段72では、上記アウトリガ選定手段6からの左前アウトリガ113と左後アウトリガ114の張出幅に関する情報を受けて、上記左前アウトリガ113の接地点P3と上記左後アウトリガ114の接地点P4を結ぶ直線R1に対する旋回中心Qからの垂直距離S1を算出し、これを最小垂直距離として次述の比較手段75に出力する。
上記前側最小垂直距離算出手段73では、図11に示すように、右前アウトリガ111の接地点P1と左前アウトリガ113の接地点P3を結ぶ直線R3に対する旋回中心Qからの垂直距離S3を算出し、これを最小垂直距離として次述の比較手段75に出力する。
上記後側最小垂直距離算出手段74では、右後アウトリガ112の接地点P2と左後アウトリガ114の接地点P4を結ぶ直線R4に対する旋回中心Qからの垂直距離S4を算出し、これを最小垂直距離として次述の比較手段75に出力する。
上記比較手段75では、上記右側最小垂直距離算出手段71と上記左側最小垂直距離算出手段72と上記前側最小垂直距離算出手段73及び上記後側最小垂直距離算出手段74からそれぞれ入力される情報を受けて、車体102の右側における最小垂直距離S2と車体102の左側における最小垂直距離S1と、車体102の前部側における最小垂直距離S3と車体102の後部側における最小垂直距離S4とを比較し、これらのうち、距離が最も短い最小垂直距離をクレーン車101の「最小垂直距離」として選択し(この実施形態では、車体102の左側の垂直距離S1が最小垂直距離として選択される)、これを次述の定格性能算出手段5に出力する。
上記旋回位置検出値異常判定手段8は、上記旋回位置検出手段からの旋回位置を受けてその旋回位置検出値が異常であるかどうかを判定し異常である場合に異常信号を出力するものであり、この異常信号は次述の定格性能算出手段5に入力される。
上記定格性能算出手段5は、上記ブーム長さ検出器11からのブーム長さに関する情報と上記ブーム起伏角度検出器12からのブーム起伏角度に関する情報を受けるとともに、上記最小垂直距離出力手段7からの最小垂直距離に関する情報と、上記旋回位置検出値異常判定手段8からの旋回位置検出値の異常に関する情報を受けて、現在の作業状態下での定格性能を算出する。具体的には、図11に実線図示する第1性能線L1と第2性能線L2からなる定格性能線L、及び破線図示する第3性能線L3を算出する。
ここで、上記第1性能線L1と第2性能線L2で構成される定格性能線Lは、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合の定格性能線であって、上記第1性能線L1は、安定性が最も低い旋回領域、即ち、上記旋回中心Qと上記左後アウトリガ114の接地点P4を結ぶ直線と、該直線から時計回り方向において、上記旋回中心Qと上記左前アウトリガ113の接地点P3を結ぶ直線で囲まれた領域(反時計回り方向における点a〜点bの範囲)に対応するものであって、それ以外の安定性の高い領域に対応する第2性能線L2よりも小作業半径側に設定されている。
これに対して、上記第3性能線L3は、上記第2性能線L2に対応する領域において、上記第1性能線L1の延長上に設定されており(時計回り方向に点a〜bの領域)、上記第2性能線L2よりも小作業半径に設定されている。
従って、上記クレーン車101は、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合、即ち、上記ブーム起伏角度検出器12が正常に作動しておりその検出値の信頼性が担保されている場合には、第1性能線L1と第2性能線L2で構成される定格性能線Lによってその作業領域が制限される。これに対して、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されている場合、即ち、上記ブーム起伏角度検出器12が正常に作動しておらずその検出値の信頼性が担保されていない場合には、実線図示する上記第1性能線L1と破線図示する上記第3性能線L3によってその作業領域が制限され、作業を安全に行なうことができる。
なお、図11に破線図示した定格性能線L0は、従来手法により求められる定格性能線であって、最小の張出幅をもつ左後アウトリガ114の張出幅を他の全てのアウトリガ111,112,113の張出幅と仮定し、上記左後アウトリガ114の接地点P4と上記左前アウトリガ113´の接地点P3´を結ぶ直線R0に対する旋回中心Qからの垂直距離S0に基づいて算出されるものであり、この垂直距離S0と本実施形態における上記垂直距離S1との差分に起因して定格性能に差が生じるものである。
因みに、従来手法の制御によれば、上記クレーン車101は、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されていない場合には、第3性能線L3の反時計回り方向に点c〜dの範囲と、第2性能線L2によってその作業領域が制限される。これに対して、上記旋回位置検出値異常判定手段8から異常信号が入力されている場合には、全旋回範囲にわたって第3性能線L3によってその作業領域が制限される。
ここで、図12を参照して、実際の制御フローを説明する。制御開始後、先ず、ステップS1において、ブーム長さ、ブーム起伏角度、ブーム旋回位置及び各アウトリガ111〜114の張出幅を読み込む。
次に、ステップS2において、上記旋回位置検出手段3によって検出された旋回位置検出値が正常であるか、異常であるか、が判断される。そして、正常であると判断された場合には、ステップS3において、旋回位置に応じた全周の定格性能(即ち、上記第1性能線L1と第2性能線L2)を算出してこれを出力する。
これに対して、ステップS2において旋回位置検出値が異常であると判断された場合には、先ずステップS4において、車体102の左側において最小張出幅のアウトリガを選定し且つこの最小張出幅のアウトリガに対して旋回の周方向において隣接する他のアウトリガを選定するとともに、車体102の右側において最小張出幅のアウトリガを選定し且つこの最小張出幅のアウトリガに対して旋回の周方向において隣接する他のアウトリガを選定する。
次に、ステップS5においては、車体102の左側における最小垂直距離S1と車体102の右側における最小垂直距離S2と、車体102の前部側における最小垂直距離S3と車体102の後部側における最小垂直距離S4をそれぞれ算出する。そして、ステップS6では、これら各最小垂直距離S1〜S4を比較して、距離が最も短い垂直距離を最終的な最小垂直距離とし、これに基づいて、旋回位置検出値が異常である場合における定格性能(即ち、第1性能線L1と第3性能線L3)を算出して出力する。
尚、クレーン作業の途中で、旋回位置検出値の異常が発生した場合の対処法は、上記第2の実施形態の場合と同様である。