JP2011020104A - 複層塗膜形成方法及び複層塗膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 電着塗膜が形成された被塗物の電着塗膜上に、中塗塗料、ベースコート塗料、クリヤーコート塗料を順次塗り重ねて、クリヤーコート塗料の硬化塗膜を表層に有する複層塗膜を形成する複層塗膜形成方法において、該クリヤーコート塗料の硬化塗膜が−20℃における抗張力が60MPa以上、かつ破断伸び率が5%以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【選択図】 なし
Description
また、本発明は、電着塗膜、中塗塗膜、ベースコート塗膜、クリヤーコート塗膜が順次積層されてクリヤーコート塗膜が表層に配置されている複層塗膜であって、該クリヤーコート塗膜が−20℃における抗張力が60MPa以上、かつ破断伸び率が5%以上であることを特徴とする複層塗膜を提供するものである。
電着塗料を塗装する被塗物に用いられる金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等及びこれらの金属を含む合金を挙げることができる。被塗物の具体例としては、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体及び部品を挙げることができる。
本発明においては、被塗物に電着塗料を塗装して、硬化させて電着塗膜を形成する。
電着塗膜を形成する電着塗料としては、種々の電着塗料が挙げられるが、好ましくはカチオン電着塗料である。鋼板に塗装された電着塗装膜層は、焼付け硬化させることが好ましい。焼付け温度は、100〜200℃が好ましく、焼付け時間は10〜50分間が好ましい。
電着塗料の乾燥塗膜の膜厚は、1〜50μmが好ましく、より好ましくは、5〜40μmである。
電着塗膜が形成された鋼板としては、自動車用鋼板をリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理し、カチオン電着塗装を施したものが好適である。
電着塗装層の硬化は、次の中塗塗料を塗装する前に、行うこともできるが、中塗塗料を塗装した後、中塗り塗装層の硬化と一緒に行うこともできる。この場合、中塗塗料の塗装は、ウェットオンウェット方式で行うことが好ましい。ここで、ウェットオンウェット方式とは、下塗り塗膜層を乾燥させない状態、又は十分に乾燥しない状態で、上塗り塗料を塗装することをいう。
硬化剤としては、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中塗塗料には、無機顔料、有機顔料、体質顔料などの各種顔料、表面調整剤、消泡剤、界面活性剤、造膜助剤、防腐剤などの各種添加剤、各種レオロジーコントロール剤、各種有機溶剤などの1種以上を含有させてもよい。
本発明の中塗塗料の硬化塗膜の膜厚は、20〜50μmが好ましく、より好ましくは、25〜45μmである。膜厚が、20μm未満の場合、被塗物の粗度を隠蔽することが出来ず、表面が平滑で光沢のある塗装面を得ることが出来ない。膜厚が50μmを超える場合には垂直で塗装された部位にタレが生じ易い。
中塗塗膜層は、ベースコート塗料を塗装する前に硬化させることが好ましいが、ベースコート塗料を塗装した後に硬化させることもできる。
本発明に用いられるベースコート塗料の樹脂成分として、基体樹脂及び硬化剤を含有することができる。その基体樹脂としては、特に制限がなく、公知の水系または溶剤系の樹脂成分を用いることが出来る。例えば、樹脂成分の基体樹脂の具体例としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの樹脂が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ベースコート塗料には、無機顔料、有機顔料、アルミ顔料、パール顔料、体質顔料などの各種顔料、表面調整剤、消泡剤、界面活性剤、造膜助剤、防腐剤、紫外線吸収剤などなどの1種以上を含有させてもよい。
ベースコート塗料の乾燥膜厚は、8〜25μmが好ましく、より好ましくは、10〜20μmである。膜厚が8μm未満では、ベースコート塗料の隠蔽性が劣る場合、中塗塗膜の色が透けて見え、ベースコート塗料本来の発色が得られない場合がある。一方、25μmを超える塗装時にタレが発生し易くなり、光輝材が配合されたベースコート塗料では光輝材の配向性に劣る場合がある。
なお、本発明における抗張力および伸び率(本発明の塗装品におけるクリヤー塗膜の抗張力および伸び率)とは、クリヤーコート塗料により得られる塗膜単独の抗張力および伸び率のことであり、次のようにして求められる。
クリヤーコート塗膜層の焼付け温度は、通常80〜180℃の範囲で適宜選定すればよく、焼付け時間は、通常10〜60分間の範囲で適宜選定すればよい。
クリヤーコート塗膜層の乾燥膜厚は、20〜60μmが好ましく、より好ましくは、25〜45μmである。膜厚が、20μm未満の場合、ベースコート塗料に光輝材を配合している場合、光沢が低下しやすい。一方、膜厚が60μmを超える場合には垂直で塗装された部位にタレが生じ易い。
本発明の複層塗膜は、初期の外観が優れることは勿諭のこと、寒冷地で車が高速走行するなど、低温において小石等が強く衝突する環境下においても塗膜の局部的剥離が発生し難く、塗装面の美観性を保持し、また、被塗物の錆発生を抑えることができる。
クリヤーコート用アクリル樹脂溶液A−1の製造
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル24部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら加熱し120℃を保った。次に、120℃の温度で、スチレン9.7部、メタクリル酸エチルヘキシル26.6部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル27.3部、アクリル酸1.3部のラジカル重合性単量体を均一に混合してモノマー滴下成分とした。一方、プロピレングリコールモノメチルエーテル7部にa,a’−アゾビスイソブチロニトリル2.4部を攪拌しながら完全に溶解して開始剤滴下成分とした。モノマー滴下成分と開始剤滴下成分とを別々の滴下ロートに仕込み、同時に一定速度で3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間同温度を保ち、追加触媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル1.5部にa,a’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部を攪拌して完全に溶解した溶液を30分間内に数回に分割して滴下した。その後、さらに120℃の温度で1時間保ったところで重合反応を終了し、アクリル樹脂溶液A−1を得た。アクリル樹脂A−1の固形分は67.5質量%、水酸基価は174mgKOH/g、酸価は10mgKOH/g、重量平均分子量は6,000であった。
ラジカル重合性単量体の組成を表1の配合にした以外は、アクリル樹脂溶液A−1と同じようにして、アクリル樹脂溶液A−2、A−3を得た。得られた樹脂の特性値は、表1に記載した。
攪拌機を備えた容器に、アクリル樹脂溶液A−1を80部仕込み、次いで、ソルベッソ#100(商品名、エクソンモービル社製、芳香族ナフサ)8部、キシレン3部、BYK−300(商品名、ビックケミー社製、表面調整剤、10質量%キシレン溶液)を0.1部、チヌビン292(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製、光安定剤、20質量%キシレン溶液)2.5部、及び、チヌビン900(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製、紫外線吸収剤、20質量%キシレン溶液) 5部を攪拌しながら順に仕込み、均一に混合した。次いでフローノンSH−290(商品名、共栄社化学社製、粘性調整剤、10質量%キシレン溶液)1部、ネオスタンU−100(商品名、城北化学社製、イソシアネート硬化触媒、1質量%キシレン溶液)0.4部を攪拌しながら順次仕込み、十分に攪拌して均一な混合物とした。使用直前に、得られた混合物100部に対して、デュラネートTHA−100(商品名、旭化成社製、HMDI系ヌレート型ポリイソシアネート硬化剤、不揮発分75%、NCO 23.1質量%)40部と、ソルベッソ#100/酢酸ブチル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる混合溶剤(混合比:60/20/20)15部とを、攪拌しながら仕込み、十分に均一になるまで攪拌し、クリヤーコート塗料C−1を得た。
アクリル樹脂及び硬化剤の組成を表2の配合にした以外は、クリヤー塗料C−1と同じようにして、クリヤーコート塗料C−1〜C−6を得た。
厚さ0.8mm、長さ150mm、幅70mmの亜鉛メッキ鋼板にリン酸亜鉛化成処理を施し、次いでカチオン電着塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製カチオン型電着塗料「カソガード500」)を用いて乾燥膜厚25μmになるよう電着塗装を行い、170℃で20分間焼き付けて、電着塗膜を形成し、被塗物とした。次に、この電着塗膜上に中塗塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製「ハイエピコNo.565」)を硬化膜厚30μmになるようにスプレー塗装し、中塗塗膜を形成し、140℃で20分間焼き付けた。次に、中塗塗膜上に、ベースコート塗料として、ポリウレタン・ポリエステル・メラミン樹脂系の黒色水系ベースコート塗料(BASFコーティングスジャパン(株)製水系ベースコート「アクアBC−3ブラックソリッド」)を乾燥膜厚12μmになるようにスプレー塗装し、ベースコート塗膜層を形成し、80℃で5分間乾燥させた後、乾燥したベースコート塗膜上にクリヤーコート塗料C−1を使用直前に硬化剤及び希釈シンナーと混合した上で、乾燥膜厚35μmになるようにスプレー塗装し、クリヤーコート塗膜層を形成し、室温で10分間放置した後、140℃で20分間焼き付けた。得られた試験片の耐チッピング性試験結果を表2に示した。
クリヤーコート塗料の組成を表2に示した塗料にした以外は、実施例1と同じようにして、実施例2、比較例1〜4の試験片を作成し、実施例と同じ試験を行った。試験結果を表2に示した。
<硬化塗膜の伸び率および抗張力の測定>
クリヤーコート塗料を錫箔上に乾燥膜厚30μmになるようにスプレー塗装し、140℃×20分間焼き付けた。その後、水銀アマルガム法にて錫箔を除去し、フリーフィルムを得た。このフリーフィルムを10mm×50mmの長方形にカッティングし、試験片とした。この試験片を引っ張り試験機(オリエンテック株式会社製、TENSILON UTM−III−200)を用い、サンプル引っ張り速度4mm/分にて、−20℃の条件下で測定を行った。試験片は各々の塗料につき5枚ずつ作成し、5回の測定で得られた平均値を伸び率および抗張力とした。
<耐チッピング性>
−20℃に冷却した低温室内で試験板を冷却し、飛石試験機(スガ試験機株式会社、JA−400型)の試験板装着部に水平から角度90°になるように試験板を垂直に固定し、0.49MPa(5kgf/cm2)の空気圧で7号砕石100gを5秒間で吹きつけ、試験板に傷を付けた。その後、試験板を水洗、乾燥させ、試験板塗面にセロハンテープを密着させ、テープの一端を持って引き剥がし、チッピングにより浮き上がった塗膜を除去して、はがれ傷の程度を下記の基準で評価した。はがれ傷の評価は、被衝撃部の縦70mm×横70mmの枠内で行った。
◎:最も良好。評価面積当たりの剥離面積率 0.7%未満。
○:良好。評価面積当たりの剥離面積率 0.7%以上、かつ1.2%未満。
△:劣る。評価面積当たりの剥離面積率 1.2%以上、かつ3.5%未満。
×:最も劣る。評価面積当たりの剥離面積率 3.5%以上。
また、表2中のカッコ付き添え数字は、以下のものを示す。
1)ソルベッソ100:商品名、エクソンモービル社製、芳香族石油ナフサ
2)表面調整剤溶液:BYK−300(商品名、ビックケミー社製)の10質量%キシレン溶液
3)光安定剤溶液:チヌビン292(商品名、チバスペシャルティケミカルス社製)の20質量%キシレン溶液
4)紫外線吸収剤溶液:チヌビン900(商品名、チバスペシャルティケミカルス社製)の20質量%キシレン溶液
5)粘性調整剤:フローノンSH−290(商品名、共栄社化学社製)の10質量%キシレン溶液
6)イソシアネート硬化触媒:ネオスタンU−100(商品名、城北化学社製)の1質量%キシレン溶液
7)HMDI系ヌレート硬化剤:デュラネートTHA−100、商品名、旭化成ケミカルズ社製、不揮発分75%、NCO 23.1質量%
8)イミノ基型メラミン樹脂:サイメル325、商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、不揮発分80質量%
9)IPDI系ヌレート硬化剤:デスモジュールZ4470SN、商品名、住化バイエルウレタン社製、不揮発分70%、NCO 11.8質量%
Claims (2)
- 電着塗料、中塗塗料、ベースコート塗料、クリヤーコート塗料を順次塗り重ねて、クリヤーコート塗料の硬化塗膜を表層に有する複層塗膜を形成する複層塗膜形成方法において、該クリヤーコート塗料の硬化塗膜が−20℃における抗張力が60MPa以上、かつ破断伸び率が5%以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
- 電着塗膜、中塗塗膜、ベースコート塗膜、クリヤーコート塗膜が順次積層されてクリヤーコート塗膜が表層に配置されている複層塗膜であって、該クリヤーコート塗膜が−20℃における抗張力が60MPa以上、かつ破断伸び率が5%以上であることを特徴とする複層塗膜。
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