JP2011018399A - 樹脂スタンパ - Google Patents

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秀幸 常守
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Abstract

【課題】スタンパの生産性に優れ、光硬化性樹脂層に対する離型性が良好であり、離型時の強度に優れ、紫外光(UV光)の透過性に優れ、かつ使用後のリサイクル性にも優れた、UVナノインプリント技術に好適な、硬化樹脂組成物用樹脂スタンパ、中でも光多層記録媒体用の樹脂スタンパを提供する。
【解決手段】ポリカーボネート(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物(B成分)0.1〜10重量部よりなるポリカーボネート樹脂組成物(C成分)から形成されてなる、硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ、並びにかかる硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパを形成するためのポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、UVナノインプリント技術を用いた製品の製造に好適な樹脂スタンパに関する。中でも本発明は、光学多層記録媒体の製造に好適な樹脂スタンパに関する。併せて本発明は、該樹脂スタンパ用のポリカーボネート樹脂組成物、該樹脂スタンパの製造方法、並びに該樹脂スタンパを用いた積層体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、特定のシリコーン化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物から形成された樹脂スタンパであって、スタンパの生産性に優れ、光硬化性樹脂層に対する離型性が良好であり、離型時の強度に優れ、紫外光(UV光)の透過性に優れ、かつ使用後のリサイクル性にも優れた樹脂スタンパを提供するものである。
高精度なパターン形成を低コストで行うための技術として、ナノインプリント技術が知られている。ナノインプリント技術は、基板上に形成するパターンと凹凸が逆のスタンパを、該基板表面上に形成された硬化樹脂組成物層に対して型押しすることで、所定のパターンを転写する技術である。特に、硬化樹脂組成物としてUV硬化性樹脂を用いたUVナノインプリント技術は、加熱が不要であり、室温でのパターン形成が可能であるためパターンの変形が少なく、透明の型を使用することで基板と型の位置合わせが容易との利点がある。かかるナノインプリント技術は、半導体デバイスの回路、コイル・アンテナ類、マイクロ流体デバイス、フィルム型光導波路、バイオデバイス、モスアイパターン、並びにフォトニック結晶デバイス等の形成手法として期待されている。一方で、DVDやブルーレイディスクに代表される光ディスクの光学多層記録媒体における光透過性中間層を形成する際には同様の手法よりなされている。かかる点について以下により詳細を説明する。
光ディスクの分野においては、ハイビジョン映像等の情報技術における進展に伴い、情報記録媒体の大容量化が求められ、種々の方式が提案されている。その中でも、2層以上の記録面を有する多層記録媒体は従来の光ディスクと同サイズでありながら大容量化が達成できる技術として様々な検討が行われている。このような記録媒体の中でも光学多層記録媒体としては、図1のような断面を有する媒体構造が一般的に用いられている。図1では片面、2層タイプの書き換え可能な光学記録媒体を示す。
図中、ポリカーボネート樹脂やガラスあるいは金属等の素材からなる基板1の片面に第1相変化記録層2が設けられている。基板1の第1相変化記録層2形成側には、螺旋状、あるいは、同心円状に記録ピット形成用凹凸パターンが形成されており、この基板1の凹凸部に該当する部分の第一相変化記録層2は凹凸パターンが形成されている。第1相変化記録層2の上には光透過性素材(通常は樹脂)からなる光透過性中間層3、第2相変化記録層4、及び、カバー層5がこの順で形成されている。光透過性中間層3の第2相変化記録層4側の面には螺旋状に、あるいは、同心円状に記録ピット形成用凹凸パターンが形成されており、この基板1の凹凸部に該当する部分の第2相変化記録層4 は凹凸パターンが形成されている。第2相変化記録層4は硬化性樹脂、または、ポリカーボネート樹脂等の素材からなるカバー層5によって保護されている。
このような光学多層記録媒体は、図2、図3のような製造プロセスにより製造されている。
まず、樹脂成形やエッチングにより形成された記録ピット形成用凹凸パターンを片面に有する基板1(図2(a)参照)上に第1相変化記録層2を形成し(図2(b)参照) 、その上に未硬化の光硬化性樹脂3aをスピンコートなどの手段により塗布する。その後、光硬化性樹脂3aが未硬化状態でスタンパ6を積層する(図2(c)参照)。
スタンパ6はガラス、あるいは、ポリカーボネート、非晶性ポリオレフィン等の樹脂からなり、光を透過する。一方、第1相変化記録層2は、金属反射層を有するため、全くあるいはほとんど光を透過しない。
次いで図3(a)に示すように未硬化の光硬化性樹脂にその硬化に適した波長の光をスタンパ6を透過して照射することで、光透過性中間層3を形成する。その後、図3(b)に示すようにスタンパ6を取り去り、光透過性中間層3上に第2相変化記録層4及びカバー層5をこの順に形成する。
このような光学多層記録媒体の製造方法において、光硬化性樹脂3aが硬化して形成された光透過性中間層3とスタンパ6との離型性、並びに離型時のスタンパの強度が問題となる。例えば、光ディスク基板材料として使用されているポリカーボネート樹脂からなるスタンパは、ニッケル電鋳製のマザースタンパを利用した成形により多量複製が可能である。更には光学記録媒体の大量生産で培われた膨大な技術的知見を活用して、製造プロセスの低コスト化が可能である。しかしながら、概して光硬化性樹脂層との密着性が高いことから、離型が困難であるとの問題がある。
かかる離型性の改良のため、ポリカーボネート樹脂からなるスタンパに離型剤を塗布する方法が考えられる。しかし、前記の方法は、離型剤を塗布する工程が増える、並びに塗布する過程でごみや埃などを巻き込んでしまった場合、忠実な凹凸部形成ができない等の欠点がある。高コストで破損しやすいガラス製スタンパ、並びに依然高コストでありリサイクル性にも劣る非晶性ポリオレフィン性の樹脂スタンパが公知である。一方、ポリカーボネート樹脂は、多くの光学記録媒体の基板や、その難燃性他の優れた性質を利用して各種の筐体などに幅広く利用されている。更には縮重合系のポリマーであることからケミカルリサイクルも実用化されている。故に幅広い再生方法の選択肢があり、樹脂スタンパの如き極めて寿命の短い樹脂製品への適用性に優れている。特定の末端構造を有するポリカーボネート樹脂に、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂組成物に汎用される脂肪酸エステル系離型剤を配合した樹脂スタンパが公知である(特許文献1参照)。またポリカーボネート−ポリオルガノシロキン共重合体からなる樹脂スタンパが公知である(特許文献2参照)。しかしながら、いずれの方法も特定構造のポリカーボネート樹脂を別途製造する必要があると共に、前者は剥離性が未だ十分とはいえず、後者は製造コストが高くなるなどの課題を有していた。
尚、上記は光多層記録媒体を一例として説明したが、基板上に、光硬化性樹脂を積層し、該光硬化性樹脂をスタンパにより押圧して凹凸パターンが転写された構造を有する各種の製品は、基本的に同様の手法を用いて製造される。基板は、用途により平坦表面およびパターン化された表面を有することができ、基板表面は、有機物および無機物のいずれであってもよい。かかる製造において、上記スタンパにおける課題は程度の差はあるものの共通であり、殊に離型性の問題は、凹凸形状が微細であるほど、またそのアスペクト比が高くなるほど重要となる。
特開2009−096117号公報 特開2009−096924号公報
本発明の目的は、スタンパの生産性、光硬化性樹脂層に対する離型性、および紫外光(UV)の透過性に優れた樹脂スタンパを提供することにある。本発明の更なる目的は、かかる特性に加えて、スタンパ樹脂としての離型時の強度やリサイクル性にも優れた樹脂スタンパを提供することにある。更に本発明の目的は、殊にUVナノインプリント技術に好適な硬化樹脂組成物用樹脂スタンパを提供することにある。
従来ポリカーボネート樹脂は硬化性樹脂組成物層からの離型性に優れず、樹脂スタンパには不向きであるとの認識があるが、本発明者らは、驚くべきことにポリカーボネート樹脂であっても、特定のシリコーン化合物を配合することにより、上記目的を達成する樹脂スタンパが得られることを見出した。かかる知見に基づき更に検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。本発明によれば、上記課題は、
(構成1):主たる構成単位が一般式(α)のポリカーボネート(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物(B成分)0.1〜10重量部よりなるポリカーボネート樹脂組成物(C成分)から形成されてなる、硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパにより解決される。
Figure 2011018399
(式(α)中、Wは下記式(α−1)〜(α−3)および(α−5)からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基、単結合、または下記式(α−4)のいずれかの結合を表し、xおよびyはそれぞれ独立して0または1〜4の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、および炭素数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群より選択される有機残基を表す。)
Figure 2011018399
(式(α−1)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
Figure 2011018399
(式(α−2)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
Figure 2011018399
(式(α−3)中、uは4〜11の整数を表し、かかる複数のRおよびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、および該アルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基から選択される基を表す。)
Figure 2011018399
Figure 2011018399
(式(α−5)中、R11およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜10の炭化水素基から選択される基を表す。)
本発明の好適な態様の1つは、
(構成2):上記シリコーン化合物の屈折率(nD)が1.51〜1.59である上記構成1の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成3):上記シリコーン化合物の芳香族基量が10〜70重量%である上記構成2の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成4):上記ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、その粘度平均分子量が1.3×10〜2.4×10の範囲である上記構成1〜構成3の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成5):上記ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、A成分100重量部に対してシリコーン化合物0.2〜6重量部を含む上記構成1〜構成4の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成6):上記シリコーン化合物の重合度が5〜40である上記構成1〜構成5の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成7):波長300〜400nmの紫外光域における全ての波長域での紫外線透過率が100%の場合を、紫外線透過光量が100%であるとしたとき、上記ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、厚み2mmの平滑平板を用いて測定された紫外線透過光量が、30〜80%の範囲にあることを特徴とする上記構成1〜構成6の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成8):上記樹脂スタンパは、表面に微細な凹凸パターンを有し、該凸部の高さまたは凹部の深さが10〜400nm、凹凸部のピッチが0.01〜1.0μmである上記構成1〜構成7の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成9):上記樹脂スタンパは、その厚さが0.3〜1.5mmである上記構成1〜構成8の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成10):上記樹脂スタンパは、マザースタンパを備えた金型キャビティ内に溶融状態のC成分を充填するかもしくは開いた型に備えられたマザースタンパ上に溶融状態のC成分を塗布することにより、該マザースタンパを転写して製造されてなる上記構成1〜構成9の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
更に本発明の好適な態様の1つは、
(構成11):上記樹脂スタンパは、マザースタンパを備えた金型キャビティ内に溶融状態のC成分を充填することにより、該マザースタンパを転写して製造されてなる上記構成10の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成12):上記樹脂スタンパは、記録媒体のトラックまたは信号の複製に用いられる上記構成1〜構成11の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパである。
更に本発明によれば、その別の態様として、
(構成13):主たる構成単位として一般式(α)の構成単位を含有するポリカーボネート(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物0.1〜10重量部よりなる硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパを形成するためのポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
更に本発明によれば、その別の態様として、
(構成14):硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパの製造方法であって、
(i):該スタンパを形成する樹脂組成物として、上記一般式(α)のポリカーボネート(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物0.1〜10重量部よりなるポリカーボネート樹脂組成物(C成分)を準備する工程、並びに
(ii):マザースタンパを備えた金型キャビティ内に溶融状態のC成分を充填するかもしくは開いた型に備えられたマザースタンパ上に溶融状態のC成分を塗布する工程からなることを特徴とする硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパの製造方法が提供される。
更に本発明によれば、その別の態様として、
(構成15):基体層、並びに表面側に微細な凹凸パターンを有する硬化性樹脂組成物層が該基体層上に形成されてなる積層体(Z)の製造方法であって、
(i):基体層上に未硬化の硬化性樹脂組成物からなる層を積層し、基体層および未硬化の硬化性樹脂組成物層からなる積層体(Z−1)を得る工程、
(ii):積層体(Z−1)の未硬化の硬化性樹脂層側に、樹脂スタンパを積層し、未硬化の硬化性樹脂組成物層の表面に、樹脂スタンパの有する微細な凹凸パターンを転写した積層体(Z−2)を得る工程であって、該樹脂スタンパは、上記一般式(α)のポリカーボネート(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物0.1〜10重量部であるポリカーボネート樹脂組成物(C成分)から形成されている工程、
(iii):積層体(Z−2)の硬化性樹脂を硬化させ、基体層、硬化した硬化性樹脂組成物層、および樹脂スタンパからなる積層体(Z−3)を得る工程、並びに
(iv):積層体(Z−3)から樹脂スタンパを除去し、基体層および樹脂スタンパ表面の微細な凹凸パターンが転写された硬化性樹脂組成物層からなる積層体(Z)を得る工程
からなる製造方法が提供される。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成16):上記工程(ii)および(iii)の間に、積層体(Z−2)を回転させることにより、未硬化の硬化性樹脂組成物層の層厚みを所定の厚さとする工程を含む上記構成15の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、
(構成17):上記積層体(Z)は、光学多層記録媒体である上記構成15〜16の製造方法である。
尚、上記構成13〜構成17における好ましい態様は、上記構成1〜構成12の場合と同様である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(C成分)からなる樹脂スタンパは、スタンパの生産性、光硬化性樹脂層との離型性に優れ、しかも、紫外光(UV)の透過性にも優れるので特に、光学多層記録媒体の製造方法に好適である。殊に本発明は、汎用されるビスフェノールAを構成単位とするポリカーボネート樹脂であっても、特定のシリコーン化合物を配合することより、光硬化性樹脂層との離型性が優れていることを見出したものであり、幅広い分野に利用され、さらにスタンパ樹脂としての離型時の強度やリサイクル性にも優れる。したがって、その奏する産業上の効果は格別である。
片面2層構造の書き換え可能な光学記録媒体の層構成概略を示す図である。 該2層構造光記録媒体の製造プロセスのうち、(a)記録ピット形成用凹凸パターンを片面に有する基板上に、(b)第1相変化記録層を形成し、(c)該層上に未硬化の光硬化樹脂をスピンコート法で塗布し、該樹脂に樹脂スタンパを積層し押圧する工程の概略を示す図である。 該2層構造光記録媒体の製造プロセスのうち、(a)樹脂スタンパを押圧後、UV光を照射して光硬化樹脂を硬化させ、(b)樹脂スタンパを剥離し、(c)更に該光硬化樹脂層上に第2相変化記録層を形成し、(d)カバー層を形成する工程の概略を示す図である。
以下、本発明の詳細について説明する。
<A成分:ポリカーボネート>
本発明のポリカーボネート(A成分)はその主たる構成単位として上記式(α)の構成単位を含有する。ここで、“主たる”とは、末端を除く全カーボネート構成単位100モル%中、70モル%以上、好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、最も好ましくは100モル%の割合であることを示す。本発明の樹脂スタンパは、溶融成形によりマザースタンパを転写して製造されることが、生産性および製造コストの点から好ましく、特に射出成形により製造されることが好ましい。かかる射出成形による微細転写には、高温下での溶融が必須となり、樹脂組成物には優れた熱安定性が必要とされる。更に、樹脂スタンパは薄肉成形品であるが、樹脂スタンパにはその取り扱いにおいて割れないことも要求される。上記式(α)の構成単位を含有するポリカーボネートは熱安定性および強度に優れ、かかる要求を満足する。かかる本発明のA成分のうち、特に好適なポリカーボネートは、従来種々の成形品のために使用されている、それ自体公知のものである。すなわち、二価フェノール、および必要に応じて脂肪族および/または脂環式の二官能性アルコールと、カーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。またA成分のポリカーボネートは、3官能成分を重合させた分岐ポリカーボネートであってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、並びにビニル系単量体を共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
上記式(α)におけるWが単結合である構成単位を誘導する化合物としては、4,4’−ビフェノールおよび4,4’−ビス(2,6−ジメチル)ジフェノール等が挙げられる。
Wが式(α−1)である構成単位を誘導する化合物としては、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、およびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
Wが式(α−2)である構成単位を誘導する化合物としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
Wが式(α−3)である構成単位を誘導する化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、および1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
Wが式(α−4)のいずれかである構成単位を誘導する化合物としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドおよびビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
Wが式(α−5)である構成単位を誘導する化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−フェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、および1,1−ビス(2,3−ジメチルー4−ヒドロキシフェニル)デカン等が例示される。
上記二価フェノールの中でも、式(α−1)ではビスフェノールM、式(α−2)では9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、式(α−3)では1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、式(α−4)では3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、並びに式(α−5)ではビスフェノールA、ビスフェノールC、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンが好ましい。
更に式(α)以外の構成単位に誘導される二価フェノールとして、好適には2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、炭素数1〜3のアルキル基で置換されたレゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロインダン、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、およびエチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が例示される。
かかるポリカーボネートのその他詳細については、例えばWO03/080728号パンフレット、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報、および特開2002−117580号公報等に記載されている。
本発明のポリカーボネートに必要に応じて共重合する二官能性アルコールとしては脂環式ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、スピログリコール、1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−グルシトール、1,4;3,6−ジアンヒドロ−D−マンニトール、および1,4;3,6−ジアンヒドロ−L−イジトールなどが例示される。
本発明のポリカーボネートは、ポリオルガノシロキサン単位を含有する構成単位を、少量含むこともできる。利用方法としては、ポリオルガノシロキサン含有量の高いポリカーボネートを、ポリオルガノシロキサンを含有しないポリカーボネートに希釈し、濃度の希釈分を本発明のB成分で補う方法などが例示される。かかる方法により、硬化性樹脂組成物の離型性のより良好な樹脂スタンパが低コストで製造できる。かかるポリオルガノシロキサン単位を含有する構成単位を含有するポリカーボネートは、好ましくは、下記一般式(γ)で表される構成単位からなるポリオルガノシロキサン部を分子内に有する共重合体を挙げることができる。
Figure 2011018399
(ここで、R13、R14、R15およびR16は炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよく、好ましくはメチル基である。R17およびR18は脂肪族または芳香族化合物からの二価の有機残基を示し、好ましくは、o−アリルフェノール残基、p−ヒドロキシスチレン残基、4−アリル−2−メトキシフェノール残基、およびイソプロペニルフェノール残基である。)
上記の中でも、特にo−アリルフェノール残基が好ましい。また上記式(γ)におけるnはカッコ内の構成単位の重合度を示すが、かかる構成単位は2種以上の混合物であってもよい。かかるnの範囲はその数平均値において1〜500、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜70、更に好ましくは15〜30である。尚、各成分n数の上限は、好ましくは500、より好ましくは200、更に好ましくは70である。
分岐ポリカーボネートに使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、および4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03〜1.5モル%、より好ましくは0.1〜1.2モル%、特に好ましくは0.2〜1.0モル%である。
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
A成分のポリカーボネートは、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が好ましく挙げられる。これらのカルボン酸は、目的を阻害しない範囲で共重合してもよい。
最も好適なA成分のポリカーボネートは、ビスフェノールA由来の構造単位からなるポリカーボネートである。かかるポリカーボネートからなるポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は良好な強度、靭性および成形加工性を有し、更に低コストである点で本発明の目的に最も合致する。強度および靭性が不良で、樹脂スタンパに割れが生ずると、割れにより発生する微量の異物が樹脂スタンパを用いて製造される製品や製造工程を汚染する問題が生じやすい。また成形加工性に劣ると、マザースタンパに対する転写性の低下、成形サイクルの長時間化、および歩留まりの低下などの問題を生じやすい。
ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは1.4×10〜2.4×10であり、より好ましくは1.5×10〜2.1×10であり、さらに好ましくは1.6×10〜1.8×10である。粘度平均分子量が1.4×10未満のポリカーボネートでは、実用上十分な靭性や割れ耐性が得られない場合がある。一方、粘度平均分子量が2.4×10を超えるポリカーボネートから得られる樹脂組成物は、概して高い成形加工温度を必要とするか、または特殊な成形方法を必要とすることから汎用性に劣る。更に溶融粘度の増加により、射出速度依存性も高くなりやすい。
本発明におけるポリカーボネートの粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4Mv0.83
c=0.7
尚、本発明のポリカーボネート樹脂組成物(C成分)における粘度平均分子量の算出は次の要領で行なわれる。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンと混合し、組成物中の可溶分を溶解させる。かかる可溶分をセライト濾過により採取する。その後得られた溶液中の溶媒を除去する。溶媒除去後の固体を十分に乾燥し、塩化メチレンに溶解する成分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上記と同様にして20℃における比粘度を求め、該比粘度から上記と同様にして粘度平均分子量Mvを算出する。
<B成分について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(C成分)において使用されるシリコーン化合物(B成分)は、屈折率1.42〜1.60であり、好ましくは1.51〜1.59、更に好ましくは1.52〜1.56である。かかる屈折率が上記範囲の下限未満であると、シリコーン化合物の分散性の低下およびポリカーボネートとの屈折率差の拡大により、紫外線透過光量が低下しやすい。一方、B成分の屈折率が上記範囲の上限を超えても紫外線透過光量が低下すると共に、硬化樹脂の離型性が低下しやすくなる。すなわち、汎用されるビスフェノールAから誘導されるポリカーボネートの屈折率1.585に対して、低めの屈折率の範囲が好適である。
本発明のB成分の上記屈折率範囲の調整は、芳香族基の含有量によりなされることが好ましい。かかる芳香族基含有のシリコーン化合物は汎用され、入手が容易であり、本発明の目的の1つである低コスト化を達成しやすい。より具体的には、本発明のシリコーン化合物(B成分)は、その構造として芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%であることが好ましい。かかる芳香族量は、より好ましくは20〜69重量%、更に好ましくは45〜60重量%である。かかる下限未満では、ポリカーボネート(A成分)との相溶性が低下しやすい。かかる相溶性はシリコーン化合物の重合度を小さくすることにより改善可能であるが、一方でシリコーン化合物が成形時にガス化しやすくなるなどの弊害を生じやすい。またかかる下限未満では、概して屈折率差も大きくなるため、紫外線透過光量が低下し好ましくない。一方、上記上限を超えると離型性が低下し好ましくない。
尚、本発明のシリコーン化合物(B成分)における芳香族基量とは、シリコーン化合物中に上記一般式(σ)で示される芳香族基が含まれる割合のことをいい、下記計算式によって求めることができる。
(計算式) 芳香族基量=〔A/Ms〕×100(重量%)
ここで、上記式におけるA、Mはそれぞれ以下の数値を表す。
A=シリコーン化合物1分子中に含まれる、全ての一般式(σ)で示される芳香族基部分の合計分子量
Ms=シリコーン化合物の分子量
前記のB成分のシリコーン化合物は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
またB成分の平均重合度は、好ましくは3〜150、より好ましくは4〜60、更に好ましくは5〜40である。かかる所定の重合度範囲とすることにより、シリコーン化合物の揮発性とホリカーボネート樹脂への分散性との両立が図られる。揮発性が高いとマザースタンパを汚染し、その結果転写性を低下させる原因となる。分散性に劣ると紫外線透過光量が低下を招き、その結果転写性や生産効率を低下させる。ここで、重合度とは、[(R)SiO(4−a)/2](ここでRはSi原子に結合した原子または一価の基を表し、aは0または1〜3の整数を表す)を1シロキサン単位とするときの重合度をいう。
更にMを1官能性シロキサン単位(上記式にてa=3)、Dを2官能性シロキサン単位(上記式にてa=2)、Tを3官能性シロキサン単位(上記式にてa=1)とするとき、MD単位またはMDT単位からなるシリコーン化合物がより好ましい。すなわち、M単位およびD単位のみからなるシリコーン化合物、またはM単位、D単位およびT単位のみからなるシリコーン化合物がB成分として好適である。ここで、官能性とは、1シロキサン単位が有するシロキサン結合のための結合手数を意味する。
B成分における芳香族基は、好適には下記一般式(σ)で表される芳香族基である。中でもフェニル基が最も好ましい(即ち下記式(σ)においてn=0である)。
Figure 2011018399
(式(σ)中、XはOH基または炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。nは0〜5の整数を表わす。さらに式(σ)中においてnが2以上の場合はn個のXはそれぞれ独立に上記群から選択することができる。)
シリコーン化合物が複数のシロキサン単位を有する場合は、それらはランダム共重合、ブロック共重合、テーパード共重合のいずれの形態を取ることも可能である。
一般的にシリコーン化合物の構造は、以下に示す4種類のシロキサン単位を任意に組み合わせることによって構成される。
M単位:(CHSiO1/2、H(CHSiO1/2、H(CH)SiO1/2、(CH(CH=CH)SiO1/2、(CH(C)SiO1/2、(CH)(C)(CH=CH)SiO1/2等のRSiO1/2で示される1官能性シロキサン単位
D単位:(CHSiO、H(CH)SiO、HSiO、H(C)SiO、(CH)(CH=CH)SiO、(CSiO等のRSiOで示される2官能性シロキサン単位
T単位:(CH)SiO3/2、(C)SiO3/2、HSiO3/2、(CH=CH)SiO3/2、(C)SiO3/2等のRSiO3/2で示される3官能性シロキサン単位
Q単位:SiOで示される4官能性シロキサン単位
本発明において使用されるシリコーン化合物の構造は、具体的には、示性式としてDn、Tp、MmDn、MmTp、MmQq、MmDnTp、MmDnQq、MmTpQq、MmDnTpQq、DnTp、DnQq、DnTpQqが挙げられる。この中で好ましいシリコーン化合物の構造は、MmDn、MmTp、MmDnTp、MmDnQqであり、さらに好ましい構造は、MmDnまたはMmDnTpである。
(ここで、前記示性式中の係数m、n、p、qは各シロキサン単位の重合度を表す1以上の整数であり、各示性式における係数の合計がシリコーン化合物の平均重合度となる。)
上記M単位、D単位、およびT単位におけるRは、水素原子、または炭素数1〜20の一価の炭化水素基を表し、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。かかる炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基の如きシクロアルキル基、ビニル基およびアリル基などのアルケニル基、フェニル基およびトリル基などのアリール基、並びにアラルキル基などを挙げることができる。これらの基はエポキシ基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、アミノ基、およびメルカプト基などの各種官能基を置換基として含むものであってもよい。好ましいRは、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、特にはメチル基、エチル基およびプロピル基などの炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはフェニル基が好ましい。上記一般式で示される構成単位を含むシリコーン化合物は、前記の条件を満たすものであれば直鎖状であっても分岐構造を持つものであってもよい。
本発明のシリコーン化合物は、それ自体従来公知の方法によって製造することができる。例えば、目的とするシリコーン化合物の構造に従い、相当するオルガノクロロシラン類を共加水分解し、副生する塩酸や低沸分を除去することによって目的物を得ることができる。また、分子中に芳香族基、その他の有機残基を有するシリコーンオイル、環状シロキサンやアルコキシシラン類を出発原料とする場合には、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等の酸触媒を使用し、場合によって加水分解のための水を添加して、重合反応を進行させた後、使用した酸触媒や低沸分を同様に除去することによって、目的とするシリコーン化合物を得ることができる。
前記B成分のシリコーン化合物の組成割合は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して0.1〜10重量部である。かかるB成分の割合の下限は好ましくは0.15重量部、より好ましくは0.2重量部である。かかるB成分の割合の上限は好ましくは3重量部、より好ましくは2重量部、更に好ましくは1重量部である。上記下限を下回る場合には、硬化性樹脂組成物の離型性が悪化し転写性や生産効率が低下するようになる。一方上記上限を上回る場合には、樹脂スタンパの連続生産を実施した場合に転写性が悪化しやすくなる。特に数10ナノメートルオーダーの微細な転写になった場合、シリコーン化合物がマザースタンパの凹面が埋まりやすくなる。また、10重量部を超える場合は樹脂組成物自体の生産が困難となり、またその滑り性により成形時の噛み込み性が低下して樹脂スタンパの生産性が低下する。またシリコーン化合物の分散性が低下し、その結果紫外線透過光量が低下して生産効率が低下するようになる。
<ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)の特性>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、その粘度平均分子量が1.4×10〜2.4×10の範囲であることが好ましい。本発明の樹脂スタンパは、ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)を射出成形することによりマザースタンパを転写して製造することが、生産性および製造コストの点から最も好ましい。かかる製造方法において、樹脂組成物(C成分)には高い流動性が求められる。一方で、スタンパの離型時の強度も必要とされる。上記ポリカーボネート(A成分)の粘度平均分子量範囲が、樹脂スタンパに必要とされる高い流動性と離型時の強度とを両立することを本発明者らは見出した。かかる粘度平均分子量は、より好ましくは1.5×10〜2.1×10の範囲、更に好ましくは1.6×10〜1.8×10の範囲である。尚、C成分の粘度平均分子量の算出方法は上述のとおりである。
更に本発明のC成分は、上述のとおりその紫外線透過光量が30〜80%の範囲にあることが好ましい。ここで紫外線透過光量とは、紫外線硬化樹脂の硬化に汎用されるUV−A領域における透過光量を表す指標である。100%の紫外線透過光量とは、横軸に波長を、縦軸に光線透過率を取ったとき、横軸:300〜400nmの範囲、縦軸:0〜100%の範囲で囲まれる長方形の面積といえる。よって紫外線透過光量とは、横軸:300〜400nmの範囲における紫外線透過率の曲線、両縦軸、および横軸により囲まれる面積のかかる長方形の面積に対する割合(%)となる。
本発明は、上記紫外線透過光量を満足するポリカーボネート樹脂組成物(C成分)を選択することにより、より好適な硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパを提供する。かかる紫外線透過光量を満足するポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、B成分のシリコーン化合物を、従来公知の方法でポリカーボネート(A成分)に配合して製造することができる。即ち、本発明者らは、シリコーン化合物が配合されたポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、シリコーン化合物がポリカーボネートマトリックス中に良好に分散された場合には、シリコーン化合物を含有しない場合に比較して、優れた紫外線透過性を有し、更に良好な離型性をも有することから、特にUVナノインプリント用の樹脂スタンパに好適な樹脂材料となることを見出した。かかる現象は、シリコーン化合物が紫外線透過性に優れるためと考えられる。一方、シリコーン化合物が増量して分散が不良になると紫外線の散乱が増加するので、逆に紫外線透過光量は低下する。よって組成物中のシリコーン化合物には適量が存在する。かかる紫外線透過光量の特性は、光硬化性樹脂組成物の低エネルギーおよび短時間での硬化を可能にし、樹脂スタンパにより製造される製品の生産性を向上させ、生産コストを低減させる。
紫外線透過光量は、好ましくは40〜75%、より好ましくは60〜75%、特に好ましくは60〜72%である。かかる下限未満では紫外線の透過性が劣るため生産性に劣る場合がある。上記上限の紫外線透過光量は、生産性に十分である一方、ベースとなるポリカーボネートの紫外線透過光量を考慮すると適切である。
<樹脂スタンパの形状について>
本発明の樹脂スタンパは、表面に形成された微細な凹凸パターンの該凸部の高さまたは凹部の深さが10〜400nm、凹凸部のピッチが0.01〜1.0μmであることが好ましい。本発明の樹脂スタンパは、かかる微細な凹凸パターンを精密に転写するのに良好な離型性を有する。該凸部の高さまたは凹部の深さの上限は、より好ましくは200nm、更に好ましくは100nmであり、かかる下限は、より好ましくは20nm、更に好ましくは30nmである。凹凸部のピッチの上限は、より好ましくは0.5μm、更に好ましくは0.4μmであり、かかる下限は、より好ましくは0.1μm、更に好ましくは0.2μmである。
また、本発明の樹脂スタンパの厚みは特に限定されないが、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.4〜1.0mm、更に好ましくは0.5〜0.8mmの範囲である。樹脂スタンパは、上述のように使用寿命が短いため、できる限り薄い方が樹脂材料を節約でき好ましいものの、あまりに薄いとスタンパの生産効率が低下しやすい。更に樹脂スタンパの厚さがこの範囲にあると、樹脂スタンパが適度な柔軟性を有するために樹脂スタンパを光硬化樹脂組成物層から離型する際に、樹脂スタンパを変形させながら引き剥がすことができるので、離型が容易かつ、離型強度に優れ、積層体の表面を傷つけにくいので好ましい。
<樹脂スタンパの製造について>
本発明の樹脂スタンパは、マザースタンパの凹凸パターンを各種の方法で転写して製造することができる。かかる転写方法としては、第1にいわゆるホットエンボス法や熱ナノンイプリント法と称される熱プレス法(以下“方法−I”と称することがある)が、第2に射出成形(射出圧縮成形を含む)に代表される溶融転写法(以下“方法−II”と称することがある)が好適に例示される。前者方法−Iは、生産性の高いシート状成形体を利用できる利点はあるが、全体として工数が増える欠点がある。後者方法−IIは、ペレット形状の如き樹脂組成物から直接に樹脂スタンパが製造される点で効率的である。特に射出成形の適用は製造効率が高く好ましい。尚、本発明のポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、汎用されるポリカーボネート樹脂に比較して、良好な離型性を有することから、上記第1の方法および第2の方法のいずれにおいても、良好な転写性およびその形状保持性を有する。
より詳細には、前者の方法−Iは、(i)ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)からなる基材シートを準備する工程、(ii)該基材シートの内、少なくともマザースタンパの凹凸パターンを転写する表面を軟化する工程、(iii)かかる軟化された表面をマザースタンパに押圧して該マザースタンパの凹凸パターンを写し取る工程、並びに(iv)凹凸パターンの転写された基材シートを冷却した後、マザースタンパから離型し、樹脂スタンパを回収する工程からなる。
ここで方法−Iの基材シートは、厚みムラが低減されていることが好ましく、かかる厚みムラの範囲としては、好ましくは±5μmの範囲、より好ましくは±3μmの範囲、更に好ましくは±2μmの範囲である。また該基材シートは、5μm以上の異物が100個/g以下であることが好ましい。上記好ましい厚みムラを有するシートの製造は、例えば特開2006−277914号公報および特開2007−141408号公報に記載された製造方法に従い適宜条件を調整することにより製造することができる。
方法−Iにおける工程(ii)および(iii)は、従来公知の熱ナノインプリント法が適用できる。軟化温度は対象となる樹脂組成物のガラス転移温度Tg(℃)に対して、好ましくはTg+5(℃)〜Tg+50(℃)の範囲、より好ましくはTg+10(℃)〜Tg+40(℃)の範囲である。ここでTgはJIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。基材シートの加熱は、該基材シートと、スタンパもしくはスタンパを備えた型のいずれかと接触させ、かかるスタンパもしくは型の加熱によりなされることが好ましい。スタンパもしくは型の加熱は、高温媒体の流通、電気ヒーター、誘電加熱、超音波加熱、および赤外線加熱などの方法により行うことができる。赤外線加熱は、特開2008−188953号公報に開示された如く、スタンパを通して赤外線照射される方法で行うこともできる。
方法−Iにおけるマザースタンパへの押圧の圧力は、好ましくは1〜20MPa、より好ましくは3〜15MPa、更に好ましくは4〜10MPaである。かかる押圧においては、系内を減圧することができる。また、マザースタンパへの濡れ性の改善、および樹脂の可塑化の促進を目的として、亜臨界および超臨界の流体を含浸させた状態で押圧し、その後該流体をガス化する方法を選択してもよい。本発明のポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、かかる超臨界流体、殊に可塑性の良好な超臨界炭酸ガスの含浸性に優れる点で、かかる方法を適用し易い特徴も有する。
より詳細には、後者の方法−IIは、(i)ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)を溶融状態とする工程、(ii)マザースタンパを備えた金型キャビティ内に溶融状態のC成分を充填するかもしくは開いた型に備えられたマザースタンパ上に溶融状態のC成分を塗布する工程、(iii)溶融状態のC成分をマザースタンパに押圧して該マザースタンパの凹凸パターンを写し取る工程、並びに(iv)凹凸パターンの転写された成形品を冷却した後、マザースタンパから離型し樹脂スタンパを回収する工程からなる。
方法−IIの(i)における溶融状態にする方法は、通常射出成型機や押出成形機に備えられたスクリュー式可塑化装置が好適に利用される。方法−IIの(ii)における金型キャビティ内への溶融樹脂組成物の充填は、通常の射出成形法が好適に利用でき、特に射出圧縮成形が好ましい。かかる射出圧縮成形は、ポリカーボネート樹脂から光学記録媒体を成形する方法として幅広く利用されており、その成形条件は、成形時間、成形品の精度、歩留り、およびそれらのバラツキの点で、極限に近い条件を達成し、膨大な知見を有する。かかる光記録媒体の成形において従来公知のさまざまな方法および条件を、本発明の樹脂スタンパの成形においても適宜利用することができる。射出圧縮成形における型のプレス圧力は好ましくは1〜20MPa、より好ましくは3〜15MPaである。
一方、方法−IIの(ii)における開いた型上への溶融樹脂組成物の塗布は、マザースタンパ表面に溶融樹脂を塗布し、その後型を閉じて溶融樹脂にスタンパを押圧し成形する方法であり、該方法は例えば、特開2004−188822号公報および特開2007−283714号公報等に記載された方法を適用することができる。かかる方法における押圧の圧力は、好ましくは1〜30MPa、より好ましくは5〜25MPa、更に好ましくは10〜20MPaである。
上記の樹脂スタンパを製造する方法−Iおよび方法−IIにおいて使用されるマザースタンパは、シリコンモールド、SiC、石英、GaAs、ダイヤモンド、ガラス、並びにアルミニウムおよびチタン(これらの陽極酸化処理品を含む)などから作成できる。より好適には、シリコンの熱酸化膜を電子線直接描画にてパターニングしたものをから電鋳によりレプリカを取り、該電鋳レプリカがマザースタンパとして使用される。かかる電鋳レプリカの作成に用いるマスタースタンパは従来公知の各種の方法で製造されることができる。
成形工程での環境は、本発明の目的から考えて、可能な限りクリーンであることが好ましい。また、成形に供する材料を十分乾燥して水分を除去することや、溶融樹脂の分解を招くような滞留を起こさないように配慮することも重要となる。
<樹脂スタンパの用途>
本発明の樹脂スタンパは、半導体デバイスの回路、コイル・アンテナ類、マイクロ流体デバイス、フィルム型光導波路、バイオデバイス、モスアイパターン、フォトニック結晶デバイス、並びに記録媒体におけるトラックまたは信号の形成などに利用できる。中でも記録媒体のトラックまたは信号の複製が好ましい。かかる記録媒体の代表的な事例としては、光学多層記録媒体における光透過性中間層の形成が挙げられる。また、スタンパは、通常は1回使用した後、再度、粉砕・精製し、スタンパ成形用材料に再生する。一回限りの利用が望ましいが、原料樹脂を選択し、あるいは、硬化性樹脂組成物やその硬化条件を最適化して、あるいは、再利用前に検査を行うなどして2回以上用いることも可能である。
<その他の成分等について>
<樹脂以外の成分>
本発明の樹脂スタンパを形成するポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、本発明の効果を損なわない範囲で、離型剤、熱安定剤、および流動改質剤などのそれ自体公知の機能剤を含有できる。
(i)離型剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、本発明の効果を損なわない範囲で、B成分のシリコーン化合物のほかに、他の離型剤を併用しても良い。B成分のシリコーン化合物と併用する他の離型剤としては、例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも入手の容易さ、離型性および透明性の点から脂肪酸エステルが好ましい。かかるB成分のシリコーン化合物と併用する他の離型剤を含有させる割合は、ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、好ましくは0.005〜0.2重量部、より好ましくは0.007〜0.1重量部、更に好ましくは0.01〜0.06重量部である。含有量が上記範囲の下限未満では、離型性の改良効果が明確に発揮されず、上限を超える場合、マザースタンパの汚染などの悪影響を与えやすい。
上記の中でも好ましい離型剤として用いられる脂肪酸エステルについて、さらに詳述する。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、好適には3〜32の範囲、より好適には5〜30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール〜ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明の脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3〜32であることが好ましく、特に炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸(ベヘン酸)などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14〜20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。かかる脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明で使用される脂肪族カルボン酸の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。しかしながら全エステル(フルエステル)の場合には、離型性を向上させるため、少なくからず遊離の脂肪酸を含有することが好ましく、この点においてフルエステルにおける酸価は3〜15の範囲が好ましい。また脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
前述の脂肪酸エステルは、部分エステルおよびフルエステルのいずれであってもよいが、より良好な離型性および耐久性の点で部分エステルが好ましく、特にグリセリンモノエステルが好ましい。グリセリンモノエステルは、グリセリンと脂肪酸のモノエステルが主成分であり、好適な脂肪酸としてはステアリン酸、パルチミン酸、ベヘン酸、アラキン酸、モンタン酸、およびラウリン酸等の飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸、およびソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられ、特にステアリン酸、ベヘン酸、およびパルチミン酸のグリセリンモノエステルを主成分としたものが好ましい。尚、かかる脂肪酸は、天然の脂肪酸から合成されたものであり、上述のとおり混合物となる。そのような場合でも、脂肪酸エステル中のグリセリンモノエステルの割合は60重量%以上であることが好ましい。
尚、部分エステルは、熱安定性の点ではフルエステルに対して劣る場合が多い。かかる部分エステルの熱安定性を向上するため、部分エステルは、好ましくは20ppm未満、より好ましくは5ppm未満、更に好ましくは1ppm未満のナトリウム金属含有量とすることが好ましい。ナトリウム金属含有量が1ppm未満の脂肪酸部分エステルは、脂肪酸部分エステルを通常の方法で製造した後、分子蒸留などにより精製して製造することができる。
具体的には、スプレーノズル式脱ガス装置によりガス分および低沸点物質を除去した後に流下膜式蒸留装置を用い蒸留温度120〜150℃、真空度0.01〜0.03kPaの条件にてグリセリン等の多価アルコール分を除去し、更に遠心式分子蒸留装置を用いて、蒸留温度160〜230℃、真空度0.01〜0.2Torrの条件にて高純度の脂肪酸部分エステルを留出分として得る方法などがあり、ナトリウム金属は蒸留残渣として除去できる。得られた留出分に対し、繰り返し分子蒸留を行うことにより、更に純度を上げ、ナトリウム金属含有量の更に少ない脂肪酸部分エステルを得ることもできる。また前もって適切な方法にて分子蒸留装置内を十分に洗浄し、また気密性を高めるなどにより外部環境からのナトリウム金属成分の混入を防ぐことも肝要である。かかる脂肪酸エステルは、専門業者(例えば理研ビタミン(株))から入手可能である。
(ii)リン系安定剤
本発明の樹脂スタンパを形成するポリカーボネート樹脂組成物(C成分)には、その成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系安定剤が更に配合されることが好ましい。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。更にかかるリン系安定剤は第3級ホスフィンを含む。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
(iii)ヒンダードフェノール系安定剤
本発明の樹脂スタンパを形成するポリカーボネート樹脂組成物(C成分)には、その成形加工時の熱安定性、および耐熱老化性を向上させることを主たる目的としてヒンダードフェノール系安定剤を配合することができる。かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記(ii)リン系安定剤および(iii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の量は、ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。安定剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、逆に材料の物性低下や、スタンパ汚染を起こす場合がある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(C成分)には、適宜上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の酸化防止剤を使用することもできる。かかる他の酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどが挙げられる。これら他の酸化防止剤の使用量は、ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。
(iv)流動改質剤
本発明のポリカーボネート組成物(C成分)は流動改質剤を含むことができる。かかる流動改質剤としては、スチレン系オリゴマー、ポリカーボネートオリゴマー(高度分岐型、ハイパーブランチ型および環状オリゴマー型を含む)、ポリアルキレンテレフタレートオリゴマー(高度分岐型、ハイパーブランチ型および環状オリゴマー型を含む)高度分岐型およびハイパーブランチ型の脂肪族ポリエステルオリゴマー、テルペン樹脂、並びにポリカプロラクトン等が好適に例示される。かかる流動改質剤は、A成分100重量部当たり、0.1〜30重量部が適切であり、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部である。特にポリカプロラクトンが好適であり、組成割合はA成分100重量部あたり、特に好ましくは2〜7重量部である。ポリカプロラクトンの分子量は数平均分子量で表して1,000〜70,000であり、1,500〜40,000が好ましく、2,000〜30,000がより好ましく、2,500〜15,000が更に好ましい。
本発明の樹脂スタンパを形成するポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、他にも、ブルーイング剤、蛍光染料、帯電防止剤、および染顔料などの各種の添加剤を含有することができる。これらは、樹脂スタンパおよび該スタンパを用いた部材製造プロセスに支障のない剤および配合量を適宜選択して含有することができる。
ブルーイング剤は樹脂材料中0.05〜3.0ppm(重量割合)含んでなることが好ましい。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。蛍光染料(蛍光増白剤を含む)の配合量は、ポリカーボネート(A成分)100重量部に対して0.0001〜0.1重量部が好ましい。
<ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)の製造について>
本発明の樹脂スタンパを形成するポリカーボネート樹脂組成物(C成分)の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではなく公知の方法が利用できる。最も汎用される方法として、ポリカーボネート樹脂およびシリコーン化合物などの添加剤を予備混合した後、押出機に投入して溶融混練を行い、押出されたスレッドを冷却し、ペレタイザーにより切断して、ペレット状の成形材料を製造する方法が挙げられる。かかる製造法においては、殊にポリカーボネート樹脂からなる光ディスク用成形材料の製造方法を利用することが好ましい。
上記方法における押出機は単軸押出機、および二軸押出機のいずれもが利用できるが、生産性や混練性の観点からは二軸押出機が好ましい。かかる二軸押出機の代表的な例としては、ZSK(Werner & Pfleiderer社製、商品名)を挙げることができる。同様のタイプの具体例としてはTEX((株)日本製鋼所製、商品名)、TEM(東芝機械(株)製、商品名)、KTX((株)神戸製鋼所製、商品名)などを挙げることができる。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部手前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
更に添加剤は、独立して押出機に供給することもできるが、前述のとおり樹脂原料と予備混合することが好ましい。かかる予備混合の手段には、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などが例示される。より好適な方法は、例えば原料樹脂の一部と添加剤とをヘンシェルミキサーの如き高速攪拌機で混合してマスター剤を作成した後、かかるマスター剤物を残る全量の樹脂原料とナウターミキサーの如き高速でない攪拌機で混合する方法である。
押出機より押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、光学ディスク用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を行うことが好ましい。ミスカットの低減には、ペレタイザーでの切断時のスレッドの温度管理、切断時のイオン風の吹き付け、ペレタイザーのすくい角の適正化、および離型剤の適切な配合などの手段、並びに切断されたペレットと水との混合物を濾過してペレットと水およびミスカットとを分離する方法などが挙げられる。その測定方法の一例は例えば特開2003−200421号公報に開示されている。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。
本発明の成形材料におけるミスカット量は、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下である。ここで、ミスカットとは、目開き1.0mmのJIS標準篩を通過する所望の大きさのペレットより細かい粉粒体を意味する。ペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱(楕円柱を含む)であり、かかる円柱の直径は好ましくは1.5〜4mm、より好ましくは2〜3.5mmである。楕円柱において長径に対する短径の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上である。一方、円柱の長さは好ましくは2〜4mm、より好ましくは2.5〜3.5mmである。
<硬化性樹脂組成物について>
本発明が対象とする硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、光硬化性樹脂組成物が好ましく、特に紫外線硬化性樹脂組成物が好ましい。かかる光硬化性樹脂組成物は、通常、上記分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマーとともに光重合開始剤を含む。重合性の官能基は、ラジカル重合性、カチオン重合性のいずれであってもよく、更にその重合開始は、光化学重合のいずれであってもよい。より好適な官能基としては、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、およびエポキシ基等が例示され、特にアクリレート基および/またはメタクリレート基を有するアクリル系光硬化性樹脂組成物が好ましい。
かかる硬化性樹脂組成物を構成する重合性モノマーの一態様としては、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、ノルボルニルメチルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ヘキサンジオールメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、およびテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、並びにこれらの組み合わせが例示される。
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルギリオキシレート、2−ヒトロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド等の硫黄化合物;2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、重合性モノマー100重量部当たり、通常0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部の範囲である。重合開始剤の配合剤がこの範囲にあるときに大きな成形物でも、均一な硬化が可能となり、斑や黄変のなく、色合いものにも生産性良く製造できるので好適である。
<積層体(Z)の製造法について>
本発明によれば、下記の工程により基体層、並びに表面側に微細な凹凸パターンを有する硬化性樹脂組成物層が該基体層上に形成されてなる積層体(Z)が製造できる。なお、積層体として光学多層記録媒体を例にあげて説明する。
即ち、トラックまたは信号たる微細な凹凸パターンを第1の表面に有する基体層(S−1)、並びに該基体層(S−1)の第1の表面側にトラックまたは信号たる微細な凹凸パターンを有する硬化性樹脂組成物層(S−4)が該基体層上に形成されてなる光学多層記録媒体(Z’)の製造方法であって、
(i):トラックまたは信号たる微細な凹凸パターンを第1の表面に有する基体層(S−1)上に未硬化の硬化性樹脂組成物からなる層(S−2)を積層し、基体層(S−1)および未硬化の硬化性樹脂組成物層(S−2)からなる積層体(Z’−1)を得る工程、
(ii):積層体(Z’−1)の未硬化の硬化性樹脂組成物層(S−2)側に、トラックまたは信号たる微細な凹凸パターンを有する樹脂スタンパ(S−3)を積層し、未硬化の硬化性樹脂組成物層(S−2)の表面に、樹脂スタンパの有する微細な凹凸パターンを転写する工程であって、該樹脂スタンパは、上記ポリカーボネート樹脂組成物(C’成分)から形成されている工程、
(iii):硬化性樹脂組成物層(S−2)を硬化させ、基体層(S−1)、硬化した硬化性樹脂組成物層(S−4)、および樹脂スタンパ(S−3)からなる積層体(Z’−2)を得る工程、並びに
(iv):該積層体(Z’−2)から樹脂スタンパを除去し、基体層(S−1)および樹脂スタンパ表面の微細な凹凸パターンが転写された硬化性樹脂組成物層(S−4)からなる積層体(Z’)を得る工程
からなる製造方法が提供される。
上記基体層(S−1)は、特に限定されないが、例えばエッチング等により必要な形状としたガラス、またはポリカーボネート成形品からを好適に形成される。かかる成形方法としては、射出成形、射出プレス成形、プレス成形、および溶融熱転写成形などが挙げられる。これらの中でも、射出成形法及びプレス成形法が、凹凸形状の面内のバラツキを小さくでき好適である。プレス成形法としては、溶融押出法により作製したシート又はフィルム等を成形しようとする凹凸状の金型内で加温・加圧する方法が挙げられる。
上記基体層(S−1)の厚みは0.5mm〜1.5mmであり、ピットの凸部高さ10nm〜200nm、凸部のトラックピッチが0.2μm〜1.0μmが好ましく用いられる。かかる基板層(S−1)上には、未硬化の硬化性樹脂組成物層(S−2)を形成する前に、蒸着やCVDあるいはスパッタリング等により金属膜が形成される。金属膜としてはアルミニウム、銀合金が好適に用いられる。金属膜は光を透過しない、またはほとんど透過しない。更に該金属膜上には、第1相変化記録層として、第1誘電体膜、相変化記録膜、および第2誘電体膜がこの順で積層される。相変化記録膜の光学的特性を変化させることにより情報の記録及び消去が可能である。未硬化の硬化性樹脂組成物層(S−2)は、かかる第1相変化記録層上に形成され、光透過性中間層となる。
光学多層記録媒体の製造にあたり、2層目となる第2相変化記録層の構成として2つのタイプが汎用され、本発明においても好適に利用できる。一つは、第2相変化記録層は、光透過性中間層側から、第1誘電体膜、相変化記録膜、および第2誘電体膜の順で積層されるタイプである。2つ目は、第2相変化記録層は光透過性中間層側から、第0誘電体膜、半透明金属薄膜、第1誘電体膜、相変化記録膜、および第2誘電体膜の順で積層されるタイプである。記録層が3層になる場合には第2相変化記録層とカバー層との間に、さらに光透過性中間層と第2相変化記録層と同様の構成を有する第3相変化記録層を積層する。3層を超える記録層を有する光学多層記録媒体の場合はその数に応じて光透過性中間層と相変化記録層とを増やしていくことが可能である。
本発明の光学多層記録媒体の製造方法として、上記第1相変化記録層までが積層された基板に、例えば上記光硬化性樹脂組成物を公知の方法により塗布した後、本発明の樹脂スタンパを貼り合せる。塗工法としては、ワイヤバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、およびロールコート法等が挙げられる。特にスピンコート法が好適に用いられる。光硬化性樹脂組成物の粘度としては未硬化の状態で50〜800mPa・sが好ましい。その後、樹脂スタンパの垂直上方から紫外線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる。例えば、硬化後の光硬化性樹脂組成物層の厚みは10〜30μmが好ましい。
最後に、樹脂スタンパを光硬化樹脂組成物層から引き剥がす。引き剥がす方法としては、鉤状になったフックを使用して、樹脂スタンパの外周端又は内周囲端の一部を浮かせて、そこにエアブローを吹き付けることにより引き剥がすことができる。
以上のようにして、溝または凹凸形状を有し、光学多層記録情報媒体を構成する高い面精度の溝または凹凸形状を有する、基板及び光硬化樹脂からなる積層体を得ることができる。
第1誘電体膜、および第2誘電体膜には、記録再生用のレーザー光の適用波長に対して吸収能のないものが好ましく、具体的には消衰係数kの値が0.3以下である材料が望ましい。かかる材料としては、例えばZnS−SiO混合体(モル比約4:1)を挙げることができる。ZnS−SiO混合体以外にも、従来から光学記録媒体製造用に用いられている誘電体の材料をいずれも用いることができる。例えば、Al、Si、Ta、Ti、Zr、Nb、Mg、B、Zn、Pd、Ca、La、およびGe等の金属および半金属等の元素の窒化物、酸化物、炭化物、フッ化物、窒酸化物、窒炭化物、および酸炭化物等からなる層、並びにこれらを主成分とする材料を適用することができる。
相変化記録層としては、レーザー光の照射により、可逆的な状態変化を生じる材料であり、特にアモルファス状態と結晶状態との可逆的相変化を生じる材料が好適であり、カルコゲン化合物あるいは単体のカルコゲン等、従来公知の材料をいずれも適用することができる。例えば、Te、Se、Ge−Sb−Te、Ge−Te、Sb−Te、In−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Au−In−Sb−Te、Ge−Sb−Te−Pd、Ge−Sb−Te−Se、In−Sn−Se、Bi−Te、Bi−Se、Ge−Sb−Te−Bi、Ge−Sb−Te−Co、およびGe−Sb−Te−Auを含む系、あるいはこれらの系に窒素、酸素等のガス添加物を導入した系を挙げることができる。特に好適なのは、Sb−Te系を主成分とするものである。
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の製造例、実施例、および比較例において、各特性の測定法は次のとおりである。
(1)粘度平均分子量
本発明における樹脂組成物の粘度平均分子量は、以下の方法で測定・算出したものである。
まず、押出により得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを、30倍重量の塩化メチレンと混合して溶解させ、可溶分をセライト濾過により採取した。その後得られた溶液から溶媒を除去した後の得られた固体を十分に乾燥し、該固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。そして、下記式により算出されるMvを粘度平均分子量とした。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−4Mv0.83
ηsp:比粘度
η:極限粘度
c:定数(=0.7)
Mv:粘度平均分子量
(2)ガラス転移温度
得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを測定試料として用い、TAインスツルメント社製の熱分析システムDSC−2910を使用して、JIS K7121に従い窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
(3)紫外線透過光量
算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、日本製鋼所製の射出成形機 J−75E3を用いてシリンダ温度290℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間20秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。かかる3段型プレートの厚み2.0mm部の成形板における300〜400nmの光線透過率を日立分光光度計U−4100型にて測定した。本文中の方法に従い、横軸:300〜400nmの範囲、縦軸:0〜100%の範囲で囲まれる長方形の面積に対する、横軸:300〜400nmの範囲における紫外線透過率の曲線、両縦軸、および横軸により囲まれる面積のかかる長方形の面積に対する割合(%)を算出し、紫外線透過光量とした。
(4)樹脂スタンパの成形転写性
後述の“(2)樹脂スタンパの作成”の方法で樹脂スタンパを作成した。かかる樹脂スタンパにおける、ニッケル製メタルスタンパから転写した凸高さを、原子間力顕微鏡(セイコー電子工業製SPI3800N)を用いて、半径位置25、40、および55mmにて測定した。転写性は各3点の平均値を樹脂スタンパの凸高さとし、下記式により算出した。
Figure 2011018399
(5)樹脂スタンパの離型性
後述の“(3)光学多層記録媒体中間層の作成”の方法で、BD−R用のグルーブを有する光ディスク基板の作成、該基板上の光反射層の形成、該光反射層上へのUV硬化型樹脂(品番SD318)のスピンコート法による塗布、作成した樹脂スタンパのUV硬化樹脂層側への押し当て、並びに樹脂スタンパ側からの紫外線の照射を行い、厚さ約20μmのUV硬化樹脂層を得た。その後ピンセットを用いて樹脂スタンパの最外周部分を1cmの高さにつまみ上げ、得られたUV硬化樹脂層から樹脂スタンパが剥離するか否かを確認した。かかるつまみ上げによって樹脂スタンパ全面が剥離したものを○、剥離しなかったものを×として表中に記載した。
(6)樹脂スタンパの離型強度
樹脂スタンパを硬化性樹脂層から離型させる際に、仮に大きな変形があっても割れないことを確認するため、以下の要領で変形させて割れの有無を確認した。即ち、上記(4)で作成した樹脂スタンパの中心部分を固定し、外周部を2cm持ち上げて樹脂スタンパが割れの有無を確認した。10個の樹脂スタンパ成形品において割れない場合を○として表中に記載した(いずれも割れなかった)。
(7)光学多層記録媒体中間層の転写性
上記(5)の離型性評価と同様の操作により、硬化性樹脂層から樹脂スタンパを剥離し、得られた硬化性樹脂層の溝深さを、原子間力顕微鏡(セイコー電子工業製SPI3800N)を用いて、半径位置25、40、55mmにて測定した。転写性は各3点の平均値から下記式により算出した(尚、剥離しなかったものは評価しなかった)。
Figure 2011018399
また、原料は以下の原料を用いた。
(A成分)
PC−1:粘度平均分子量16,000の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成製パンライト(登録商標)CM−1000)
PC−2:粘度平均分子量20,800の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成製パンライト(登録商標)L−1225WS)
(B成分)
Si−1:屈折率(nD)が1.533、芳香族基量が57重量%のメチルフェニルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH710)
Si−2:屈折率(nD)が1.460、芳香族基量が25重量%のメチルフェニルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH556)
(B成分比較用)
Si−3:屈折率(nD)が1.403、芳香族基量が0のジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH200)
(上記Si−1〜Si−3のnDはアッベ屈折計を用い、温度23℃において、D線:589.2nmの波長を用いて測定された値である)
(他の成分)
RA:分子量343のグリセリンと脂肪族カルボン酸からなるモノエステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)
PCL:数平均分子量10,000のポリカプロラクトン(ダイセル化学工業製;プラクセルH1P)
ST:ホスファイト系熱安定剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製:Irgafos168;トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)
[実施例1〜5および比較例1〜3]
(1)樹脂スタンパ用成形材料の製造
表1記載の配合割合からなる樹脂スタンパ用成形材料を以下の要領で作成した。仕込み組成に従い、各原料をポリエチレン袋中に量り入れ、かかる袋を上下方向および左右方向に十分に回転させることにより、仕込み原料を均一にドライブレンドした。ドライブレンドされた混合物をスクリュー径30mmのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α−35BW−3V)を用いて、最後部の第1投入口に供給した。シリンダ温度およびダイ温度は270℃に設定した。スクリュー回転数は250rpm、1時間当りの吐出量は15kg/時、並びにベントの真空度は10kPaで行った。尚、スクリューセグメントの構成は、ベントの位置の上流および下流側にニーディングディスクにより構成された混練ゾーンを有していた。押出されたストランドを水浴において冷却した後、ペレタイザーで切断しペレット化した。得られたペレットは、数平均直径2.8mm、数平均長さ3.0mmであり、ミスカットは3ppmであった。かかるペレットを120℃で6時間、熱風乾燥機にて乾燥した。但し、比較例2の組成物は、噛み込み不良により押出性が悪く、一部得られたペレットを用いて射出成形を試みたが、噛み込み不良により成形ができなかった。
(2)樹脂スタンパの作成
評価に用いた樹脂スタンパは、次のように作成した。まず、(1)で得られた乾燥後の各ペレットを用いて、シリンダ温度は360℃および金型温度は固定側、可動側ともに125℃(実施例4のみ110℃)、並びに圧縮圧力を20MPaの条件において、外径120mm、内径15mm、厚さ0.6mmの樹脂スタンパを射出圧縮成形により作成した。用いた射出成形機[住友重機械工業(株)製SD−40E]には、BD−R用のNi製メタルスタンパ(トラックピッチ0.32μmおよび深さ50nmのグルーブを有する)を装着した。
(3)光学多層記録媒体中間層の作成
光学ディスク用のポリカーボネート樹脂(帝人化成製パンライト(登録商標)AD−5503)を用いてシリンダ温度360℃および金型温度115℃で外径120mm、内径15mm、厚さ1.1mmの光ディスク基板を射出成形した。用いた射出成形機[住友重機械工業(株)製SD−40E]には、BD−R用のスタンパ(トラックピッチ0.32μmおよび深さ50nmのグルーブを有する)を装着した。得られた基板の凹凸パターン側に高周波マグネトロンスパッタ装置(アネルバ製ILC3102型)によるDCスパッタリングによって100nmの金属薄膜を堆積させた。かかるスパッタリングは、Ndを5.0原子%、Biを1.0原子%含んだAg合金スパッタリングターゲット(コベルコ科研製)を用い、放電電力500Wで実施した。その他の成膜条件は、基板温度:22℃、アルゴンガス圧:2mTorr、成膜速度:5nm/sec、背圧:<5×10−6Torrとした。かかる光反射層の形成された基板をスパッタリング装置から取り出し、スピンコーターに取り付けた。ディスクを回転させながら、金属反射膜上に大日本インキ化学工業製の紫外線(UV)硬化型樹脂(品番SD318)をスピンコート法により塗布し、上記(2)の方法で成形した樹脂スタンパを紫外線硬化樹脂層側に押し当てた。その後、樹脂スタンパ側から紫外線を照射強度100mW/cmで3秒間照射し、約20μmの硬化性樹脂層を得た。樹脂スタンパの外径側からエアブローにより樹脂スタンパを硬化樹脂層から離型・除去した。得られた光学多層記録媒体中間層の凹凸パターンの深さを測定し、結果を表1に示した。
Figure 2011018399
表1の結果から明らかなように、ポリカーボネートと特定のシリコーン化合物からな形成された樹脂スタンパでは、樹脂スタンパとして良好な結果が得られる一方、汎用される光ディスク用のポリカーボネート樹脂材料、および他のシリコーン化合物ではかかる有用な特性が得られないことが分かる。また、樹脂スタンパに必要とされる紫外線透過性は、シリコーン化合物を特定範囲で配合することにより向上すること、並びにシリコーン化合物が多くなると転写性にも影響がでることが分かる。即ち、本発明の樹脂スタンパによれば、汎用される光ディスク用のポリカーボネート樹脂材料では得られない良好な硬化性樹脂組成物の微細形状が得られることが分かる。
[実施例6]
上記(3)光学多層記録媒体中間層の作成に用いた、実施例1〜5の使用済みの樹脂スタンパを各々粉砕機で粉砕した。かかる各々の粉砕物:20重量部に対して、ポリカーボネート樹脂(帝人化成製パンライト(登録商標)L−1225WP:80重量部、衝撃改質剤(三菱レイヨン製メタブレンSX−005):4重量部、および上記ST:0.05重量部を配合し、均一にブレンドして予備混合物を得た。かかる予備混合物をスクリュー径15mmのベント式二軸押出機(テクノベル(株)製KZW15−25MG)を用いて、最後部の第1投入口に供給した。シリンダ温度およびダイ温度は、いずれも280℃、スクリュー回転数は200rpm、吐出量は2kg/時、並びにベントの真空度は3kPaで行った。得られた樹脂組成物ペレットを120℃で6時間、熱風乾燥機にて乾燥処理した後、射出成形機((株)日本製鋼所製J75EIII型)によりシリンダ温度230℃、金型温度90℃、成形サイクル40秒で成形し、衝撃試験片(寸法:長さ80mm×幅10mm×厚み4mm)を成形し、23℃および−30℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さをISO−179に従い測定した。かかるシャルピー衝撃強さは、いずれも23℃では44〜50kJ/mの範囲に、−30℃では30〜42kJ/mの範囲にあった。かかる良好な衝撃強さから、使用済みの樹脂スタンパが他の有用な素材へのリサイクルに適していることが確認された。
本発明の樹脂スタンパは、半導体デバイスの回路、コイル・アンテナ類、マイクロ流体デバイス、フィルム型光導波路、バイオデバイス、モスアイパターン、フォトニック結晶デバイス、並びに記録媒体におけるトラックまたは信号の形成などに利用できる。
1 基板
2 第1相変化記録層
3 光透過性中間層
3a 光硬化性樹脂
4 第2相変化記録層
5 カバー層
6 スタンパ

Claims (17)

  1. 主たる構成単位として一般式(α)の構成単位を含有するポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物0.1〜10重量部よりなるポリカーボネート樹脂組成物(C成分)から形成されてなる、硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
    Figure 2011018399
    (式(α)中、Wは下記式(α−1)〜(α−3)および(α−5)からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基、単結合、または下記式(α−4)のいずれかの結合を表し、xおよびyはそれぞれ独立して0または1〜4の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、および炭素数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群より選択される有機残基を表す。)
    Figure 2011018399
    (式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
    Figure 2011018399
    (式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
    Figure 2011018399
    (式中、uは4〜11の整数を表し、かかる複数のRおよびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜3のアルキル基から選択される基を表す。)
    Figure 2011018399
    Figure 2011018399
    (式中、R11およびR12はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜10の炭化水素基から選択される基を表す。)
  2. シリコーン化合物の屈折率(nD)が1.51〜1.59である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  3. シリコーン化合物の芳香族基量が10〜70重量%である請求項1、請求項2のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  4. ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、その粘度平均分子量が1.3×10〜2.4×10の範囲である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  5. 上記ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、A成分100重量部に対してシリコーン化合物0.2〜6重量部を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ
  6. 上記シリコーン化合物の重合度が5〜40である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  7. 波長300〜400nmの紫外光域における全ての波長域での紫外線透過率が100%の場合を、紫外線透過光量が100%であるとしたとき、上記ポリカーボネート樹脂組成物(C成分)は、厚み2mmの平滑平板を用いて測定された紫外線透過光量が、30〜80%の範囲にある請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  8. 上記樹脂スタンパは、表面に微細な凹凸パターンを有し、該凸部の高さまたは凹部の深さが10〜400nm、凹凸部のピッチが0.01〜1.0μmである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  9. 上記樹脂スタンパは、その厚さが0.3〜1.5mmである請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  10. 上記樹脂スタンパは、マザースタンパを備えた金型キャビティ内に溶融状態のC成分を充填するかもしくは開いた型に備えられたマザースタンパ上に溶融状態のC成分を塗布することにより、該マザースタンパを転写して製造されてなる請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  11. 上記樹脂スタンパは、マザースタンパを備えた金型キャビティ内に溶融状態のC成分を充填することにより、該マザースタンパを転写して製造されてなる請求項10に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  12. 上記樹脂スタンパは、記録媒体のトラックまたは信号の複製に用いられる請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパ。
  13. 主たる構成単位として一般式(α)の構成単位を含有するポリカーボネート(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物0.1〜10重量部よりなる硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパを形成するためのポリカーボネート樹脂組成物。
  14. 硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパの製造方法であって、
    (i):該スタンパを形成する樹脂組成物として、上記一般式(α)のポリカーボネート(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物0.1〜10重量部よりなるポリカーボネート樹脂組成物(C成分)を準備する工程、並びに
    (ii):マザースタンパを備えた金型キャビティ内に溶融状態のC成分を充填するかもしくは開いた型に備えられたマザースタンパ上に溶融状態のC成分を塗布する工程からなることを特徴とする硬化性樹脂組成物用樹脂スタンパの製造方法。
  15. 基体層、並びに表面側に微細な凹凸パターンを有する硬化性樹脂組成物層が該基体層上に形成されてなる積層体(Z)の製造方法であって、
    (i):基体層上に未硬化の硬化性樹脂組成物からなる層を積層し、基体層および未硬化の硬化性樹脂組成物層からなる積層体(Z−1)を得る工程、
    (ii):積層体(Z−1)の未硬化の硬化性樹脂層側に、樹脂スタンパを積層し、未硬化の硬化性樹脂組成物層の表面に、樹脂スタンパの有する微細な凹凸パターンを転写した積層体(Z−2)を得る工程であって、該樹脂スタンパは、上記一般式(α)のポリカーボネート(A成分)100重量部及び屈折率(nD)が1.42〜1.60であるシリコーン化合物0.1〜10重量部であるポリカーボネート樹脂組成物(C成分)から形成されている工程、
    (iii):積層体(Z−2)の硬化性樹脂を硬化させ、基体層、硬化した硬化性樹脂組成物層、および樹脂スタンパからなる積層体(Z−3)を得る工程、並びに
    (iv):積層体(Z−3)から樹脂スタンパを除去し、基体層および樹脂スタンパ表面の微細な凹凸パターンが転写された硬化性樹脂組成物層からなる積層体(Z)を得る工程
    からなる製造方法。
  16. 上記工程(ii)および(iii)の間に、積層体(Z−2)を回転させることにより、未硬化の硬化性樹脂組成物層の層厚みを所定の厚さとする工程を含む請求項15に記載の製造方法。
  17. 上記積層体(Z)は、光学多層記録媒体である請求項15〜請求項16のいずれか1項に記載の製造方法。
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