JP2011016457A - ウエビング巻取装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロック手段の作動状態で大きなエネルギーを長い時間吸収できるウエビング巻取装置を得る。
【解決手段】ロックベース32の回転が規制された状態でスプール20が引出方向に回転すると、ワイヤ112の第1エネルギー吸収部114が挿通孔102の一端から引き出されつつ変形されると共に第2エネルギー吸収部124が挿通孔102の他端から挿通孔102に引き込まれつつ変形するので、1本のワイヤ112で大きなエネルギーを吸収できる。また、第1エネルギー吸収部114が挿通孔102から引き出されることで、挿通孔102の一端に連結部140が到達して、連結部140が曲げ荷重やせん断荷重を受けると連結部140が破断して第1エネルギー吸収部114と第2エネルギー吸収部124との連結が解消される。このため、ガイド溝104内で第2エネルギー吸収部124が第1エネルギー吸収部114に干渉することがない。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両のシートに着座した乗員の身体を拘束するウエビングベルトを巻き取って格納するウエビング巻取装置に関する。
下記特許文献1に開示されたウエビング巻取装置(特許文献1ではシートベルトリトラクタと称している)は、トーションバーとは別に複数本のワイヤが設けられている。車両急減速時等にロックホイールの回転が規制されると、トーションバーを介してロックホイールに一体的に連結されているスプールの引出方向への回転も規制される。
しかしながら、トーションバーの機械的強度と全ワイヤの機械的強度を上回る力でウエビングベルト(特許文献1ではシートベルトウエビングと称している)が引っ張られて、スプールが引出方向に回転しようとすると、トーションバーに捩じり変形が生じると共に各ワイヤがスプールに形成された穴から引き出されつつスプールの回転周方向に変形させられる。
このように、トーションバーの捩じり変形分だけスプールは引出方向に回転でき、ウエビングベルトをスプールから引き出すことができると共に、ウエビングベルトを引っ張る力の一部がトーションバーに捩じり変形と各ワイヤの変形とに供され、これにより、ウエビングベルトを引っ張るエネルギーの一部を吸収できる。
特表2006−501105の公報
ところで、特許文献1に開示された構成では複数本のワイヤを用いているため、1本のワイヤでエネルギー吸収を行なうよりも大きなエネルギーを吸収できる。しかしながら、スプールの回転によりロックホイールに係止されたワイヤの先端がスプールに対して相対回転することで、別のワイヤが嵌挿されている穴に到達するとワイヤ同士が干渉してしまい、スプールの回転が不要に規制されたり、スプールの軸方向や半径方向にワイヤが変形したりする。
このため、このような構成では、穴から引き出すワイヤの長さを短く設定しなくてはならず、ワイヤの変形によるエネルギー吸収効果を十分に得ることが難しい。
本発明は、上記事実を考慮して、ロック手段の作動状態で大きなエネルギーを長い時間吸収できるウエビング巻取装置を得ることが目的である。
請求項1に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、ウエビングベルトの長手方向基端側が係止されて、軸周り方向一方である巻取方向へ回転することで前記ウエビングベルトを長手方向基端側から外周部に巻き取るスプールと、前記スプールに対して相対回転可能に前記スプールの軸方向一端側に設けられたロックベースを有すると共に、車両が急減速した場合又は前記スプールが所定の大きさ以上の加速度で前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転した場合に作動して前記ロックベースの前記引出方向への回転を規制するロック手段と、前記スプールの軸方向両端にて開口した挿通孔に挿通されて一端が前記ロックベースに係止された第1エネルギー吸収部と、前記第1エネルギー吸収部の他端に一端が連結されて他端側が前記挿通孔の他端から引き出された第2エネルギー吸収部と、を有し、前記ロック手段による前記ロックベースの回転規制状態で前記スプールが前記引出方向に回転することにより前記第1エネルギー吸収部が前記挿通孔の一端から引き出されつつ変形すると共に、前記第2エネルギー吸収部が前記挿通孔の他端から前記挿通孔の内側に引き込まれつつ変形し、且つ、第2エネルギー吸収部の一端が前記挿通孔の一端の近傍に到達した際に前記第1エネルギー吸収部と前記第2エネルギー吸収部との連結が解消されるエネルギー吸収手段と、を備えている。
請求項1に記載の本発明に係るウエビング巻取装置では、車両急減速状態又はスプールが所定の大きさ以上の加速度で引出方向に回転するとロック手段が作動する。これにより、スプールの軸方向一端側に設けられたロックベースの引出方向への回転が規制される。この状態で、スプールに巻き取られているウエビングベルトが引き出されることでスプールが引出方向に回転すると、スプールに対してはロックベースが相対的に巻取方向に回転することになる。
ロックベースにはエネルギー吸収手段を構成する第1エネルギー吸収部の一端が係止されているため、第1エネルギー吸収部の一端がロックベースと共にスプールに対して巻取方向に回転する。第1エネルギー吸収部はスプールの軸方向両端で開口した挿通孔に挿通されているため、ロックベースに係止されている一端が上記のように共にスプールに対して相対回転すると、その回転量に応じて第1エネルギー吸収部が挿通孔の一端から引き出される。
このように、挿通孔の一端から第1エネルギー吸収部が引き出される際には第1エネルギー吸収部に変形が生じ、引出方向へ回転するスプールの回転力の一部が、この第1エネルギー吸収部の変形に供されて吸収される。
一方、上記の第1エネルギー部の他端部には第2エネルギー吸収部の一端が連結されている。このため、第1エネルギー吸収部が挿通孔の一端から引き出されると、第1エネルギー吸収部と共に第2エネルギー吸収部の一端側が挿通孔の一端へ向けて移動する。第2エネルギー吸収部は他端側が挿通孔の他端部から引き出されているので、第2エネルギー吸収部の一端側が挿通孔の一端側へ移動すると、第2エネルギー吸収部の他端側が挿通孔の他端から挿通孔に引き込まれる。
このように、挿通孔の他端から第2エネルギー吸収部が引き込まれる際には第2エネルギー吸収部に変形が生じ、引出方向へ回転するスプールの回転力の一部が、この第2エネルギー吸収部の変形に供されて吸収される。このように、本発明におけるエネルギー吸収手段は、ベースロックに対するスプールの相対回転で、第1エネルギー吸収部における変形と、この第1エネルギー吸収部に一体的に連結された第2エネルギー吸収部における変形とが生じるため、吸収するエネルギー量を大きくできる。
また、このように第1エネルギー吸収部と共に第2エネルギー吸収部が挿通孔の一端側へ移動することで第2エネルギー吸収部の一端が挿通孔の一端の近傍に到達すると、第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部との連結が解消される。このため、第2エネルギー吸収部が挿通孔の一端から引き出されることがなく、ロックベースに対するスプールの引出方向への回転でスプールの周方向にスプールに対して相対回転した第1エネルギー吸収部の一端が第2エネルギー吸収部に干渉されることがないか、第2エネルギー吸収部による第1エネルギー吸収部の干渉が少ない。
このため、スプールがロックベースに対して引出方向に略1周(厳密には、1周するよりも僅かに小さな回転角度だけ回転するまで)第1エネルギー吸収部及び第2エネルギー吸収部の変形によるエネルギー吸収効果を持続させることができる。しかも、第1エネルギー吸収部に対して第2エネルギー吸収部が干渉することに起因したスプールの回転の規制を防止又は抑制できる。
請求項2に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項に記載の本発明において、前記第1エネルギー吸収部の他端と前記第2エネルギー吸収部の一端とを連結すると共に、前記挿通孔の一端から前記第1エネルギー吸収部が引き出されて前記挿通孔の他端から前記第2エネルギー吸収部が引き込まれる際に前記連結部に作用する引っ張り荷重に抗し、且つ、前記挿通孔の一端に前記連結部が到達した状態で前記スプールが前記ロックベースに対して回転することによって前記連結部に作用する曲げ荷重及びせん断荷重の少なくとも何れか一方により破断する大きさの機械的強度を有する連結部を前記エネルギー吸収手段に設けている。
請求項2に記載の本発明に係るウエビング巻取装置によれば、連結部は挿通孔の一端から第1エネルギー吸収部が引き出されて挿通孔の他端から第2エネルギー吸収部が引き込まれる際に連結部に作用する引っ張り荷重には抗する機械的強度を有している。このため、第1エネルギー吸収部が挿通孔の一端から引き出されると、第1エネルギー吸収部と共に第2エネルギー吸収部の一端側が挿通孔の一端へ向けて移動し、更に、2エネルギー吸収部の他端側が挿通孔の他端から挿通孔に引き込まれる。
このように、第1エネルギー吸収部が挿通孔の一端から引き出される際に第1エネルギー吸収部に生じる変形と、第2エネルギー吸収部が挿通孔の他端から引き込まれる際に第2エネルギー吸収部に生じる変形とによるエネルギー吸収効果を得ることができる。
また、挿通孔の一端に連結部が到達した状態でスプールがロックベースに対して回転すると、それまでの第1エネルギー吸収部と同様に連結部を変形させるような荷重が連結部に作用する。ここで、このような状態で連結部が曲げ荷重及びせん断荷重の少なくとも何れか一方を受けると連結部が破断する。これにより、連結部による第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部との連結が解消される。
このように、連結部の機械的強度を調整して連結部を破断させることで第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部との連結を解消するため、実質的には第1エネルギー吸収部、第2エネルギー吸収部、及び連結部(すなわち、エネルギー吸収手段)を1つの部材として構成できる。このため、コストを安価にできる。
また、上記のように、第1エネルギー吸収部と共に第2エネルギー吸収部が移動することで、連結部が挿通孔の一端に到達すると、連結部が破断して連結部による第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部との連結が解消される。このため、ロックベースに対するスプールの引出方向への回転による第1エネルギー吸収部の変形が終了した際に、第2エネルギー吸収部の変形も終了させることができる。
一方で、連結部における第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部との連結が解消されることで、第2エネルギー吸収部が挿通孔の一端から引き出されることがない。このため、スプールの軸方向一端側に挿通孔から引き出された第2エネルギー吸収部を収納するためのスペースが不要である。
以上説明したように、本発明に係るウエビング巻取装置では、ロック手段の作動状態で大きなエネルギーを長い時間吸収できる。
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置の構成の概略を示す正面断面図である。 本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置の要部の構成の概略を示す分解斜視図である。 スプールの一部を破断した図2とは別の向きからの斜視図である。 第1エネルギー吸収部が挿通孔から引き出される前の状態を示す図で、(A)がスプールの側面図、(B)がスプールの断面図である。 第1エネルギー吸収部が挿通孔から引き出されている状態を示す図4に対応した図である。 第2エネルギー吸収部の一端が挿通孔の一端部近傍に到達した状態を示す図4に対応した図である。 連結部が破断した状態を示す図4に対応した図である。
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置10の構成が概略的な正面断面図により示されている。
この図に示されるように、ウエビング巻取装置10は車両を構成する車体や車両のシートの内部の骨格部材等に固定されるフレーム12を備えている。フレーム12は各々が板状の一対の脚壁14、16を備えている。これらの脚壁14と脚壁16とは厚さ方向に互いに対向している。また、ウエビング巻取装置10はスプール20を備えている。スプール20は軸方向が脚壁14と脚壁16との対向方向に沿った筒状とされており、その大部分が脚壁14と脚壁16との間に位置するように配置されている。
このスプール20には長尺帯状に形成されたウエビングベルト22の長手方向基端部が係止されている。ウエビングベルト22はその長手方向基端側からスプール20の外周部に巻き取られている。例えば、本ウエビング巻取装置10に対応する車両の座席に着座した乗員がウエビングベルト22を装着するためにウエビングベルト22をその先端側へ引っ張ると、スプール20がその中心軸線周りの一方である引出方向に回転しつつウエビングベルト22がスプール20から引き出される。また、スプール20が引出方向とは反対の巻取方向に回転すると、ウエビングベルト22がスプール20に巻き取られて格納される。
スプール20の脚壁16側にはロック機構30を構成するロックベース32が設けられている。ロックベース32は嵌挿部34を備えている。嵌挿部34は外周形状がスプール20に対して同軸の円形に形成されている。この嵌挿部34に対応してスプール20には嵌挿孔36が形成されている。嵌挿孔36は内周形状がスプール20に対して同軸で且つスプール20の脚壁16側の端部で開口した有底の孔とされており、ロックベース32の嵌挿部34はスプール20に対して相対的に回転自在に嵌挿孔36に嵌め込まれている。
また、ロックベース32はラチェット部38を備えている。ラチェット部38は嵌挿部34に対して同軸的且つ一体的に形成されており、スプール20の脚壁16側の端部の側方に位置している。ロックベース32の回転半径方向に沿ったラチェット部38の側方にはロック機構30を構成するロックパウル40が設けられている。ロックパウル40はスプール20の中心軸線方向と同じ向きを軸方向とする軸周りに回動可能とされている。
ロックパウル40は回動することでその先端に形成されたラチェット歯42がラチェット部38の外周部に対して接離する。このラチェット歯42に対応してラチェット部38の外周部にはラチェット歯44が形成されており、ラチェット部38の外周部へ接近する向きにロックパウル40が回動すると、ロックパウル40のラチェット歯42がラチェット部38のラチェット歯44に噛み合う。このようにロックパウル40のラチェット歯42とラチェット部38のラチェット歯44とが噛み合った状態では、ロックベース32の引出方向への回転が規制される。

また、脚壁16の外側(すなわち、脚壁16の脚壁14とは反対側)にはロック機構30のハウジング46が設けられている。ハウジング46は、例えば、脚壁16側へ向けて開口した箱形状に形成されており、その内側には、車両急減速状態になることで作動してラチェット歯42をラチェット歯44へ噛み合わせる向きへロックパウル40を回動させる所謂「VSIR機構」を構成する各種部材や、ロックベース32が引出方向へ所定の多き以上の速度で回転した際に作動してラチェット歯42をラチェット歯44へ噛み合わせる向きへロックパウル40を回動させる所謂「WSIR機構」を構成する各種部材が収容されている。
また、スプール20には内径寸法が嵌挿孔36の内径寸法よりも小さな貫通孔52が形成されている。貫通孔52はスプール20の中心軸線上に形成されており、その脚壁16側の端部は嵌挿孔36の底部にて開口している。貫通孔52の内側にはトーションシャフト54が設けられている。このトーションシャフト54は変形部56を備えている。変形部56は長手方向がスプール20の中心軸線方向に沿った棒形状に形成されており、その脚壁14側の端部にはトーション側第1連結部58が形成されている。図2に示されるように、トーション側第1連結部58は、外周形状が六角形等の多角形や星形、又はスプライン形状等の非円形とされている。このトーション側第1連結部58に対応して貫通孔52の脚壁14側の底部には嵌挿孔60が形成されている。嵌挿孔60は内周形状がトーション側第1連結部58の外周形状と略同形状の非円形とされており、トーション側第1連結部58は嵌挿孔60に嵌挿されている。
このように、トーション側第1連結部58の外周形状及び嵌挿孔60の内周形状は上記のように非円形であるため、トーション側第1連結部58はスプール20に対して相対回転が不能となっている。この嵌挿孔60はスプール20の脚壁14側の端部で開口しており、トーション側第1連結部58の変形部56とは反対側の端部から突出形成された軸部62がスプール20の外側へ突出している。図1に示されるように、軸部62は変形部56に対して同軸的に形成されており、脚壁14に形成された開口部64を通過して、脚壁14の外側(すなわち、脚壁14の脚壁16とは反対側)で脚壁14に取り付けられたスプリングハウジング66に回転自在に支持されている。
スプリングハウジング66の内側には図示しないスプール付勢手段としての渦巻きばねが収容されている、渦巻きばねの渦巻き方向外側の端部はスプリングハウジング66に係止されており、渦巻き方向内側の端部は軸部62に直接又は間接的に係止されている。この渦巻きばねは軸部62が引出方向に回転することで巻き締められ、これにより生じた付勢力で軸部62を巻取方向へ付勢する。したがって、スプール20からウエビングベルト22が引き出されることで軸部62が引出方向に回転すると、これにより渦巻きばねにて生じた付勢力が軸部62を介してスプール20を巻取方向に付勢し、この結果、スプール20がウエビングベルト22を巻き取って格納できるようになっている。
一方、変形部56の脚壁16側の端部にはトーション側第2連結部72が形成されている。図3に示されるように、トーション側第2連結部72は外周形状が六角形等の多角形や星形、又はスプライン形状等の非円形とされている。このトーション側第2連結部72に対応してロックベース32には嵌挿孔74が形成されている。嵌挿孔74は内周形状がトーション側第2連結部72の外周形状と略同形状の非円形とされており、トーション側第2連結部72は嵌挿孔74に嵌挿されている。
このように、トーション側第2連結部72の外周形状及び嵌挿孔74の内周形状は上記のように非円形であるため、トーション側第2連結部72はロックベース32に対して相対回転が不能となっている。上記のように、ロックベース32の嵌挿部34はスプール20に対して同軸的に相対回転可能に嵌挿孔36に嵌挿されているものの、ロックベース32が相対回転不能に繋がったトーションシャフト54は、上記のようにスプール20に対して相対回転不能であるため、ロックベース32はスプール20に対して相対回転が不能となっている。このため、ロックパウル40のラチェット歯42がラチェット部38のラチェット歯44に噛み合ってロックベース32の引出方向への回転が規制された状態では、スプール20の引出方向への回転も規制され、スプール20からのウエビングベルト22の引き出しも規制される。
また、図1及び図2に示されるように、ロックベース32には透孔76が形成されている。透孔76は嵌挿部34に対して同軸的に形成されており、その一端はトーション側第2連結部72の底部にて開口し、他端はラチェット部38の嵌挿部34とは反対側の端部にて開口している。トーション側第2連結部72の変形部56とは反対側の端部からは軸部78が変形部56に対して同軸的に突出形成されており、この軸部78が透孔76を貫通している。図1に示されるように、透孔76を貫通した軸部78はハウジング46の内側に入り込んでおり、軸部78の先端側はハウジング46に回転自在に支持されている。
また、スプール20には挿通孔102が形成されている。挿通孔102は貫通孔84よりもスプール20の回転半径方向外側で、スプール20の中心軸線に対して略平行とされている(すなわち、挿通孔102の一端から他端への向きがスプール20の軸方向に沿っている)。さらに、スプール20の脚壁16側の端部にはガイド溝104が形成されている。図3に示されるように、本実施の形態においてガイド溝104はスプール20に対して同軸の環状とされており、スプール20の脚壁16側の端部にて開口している。
これに対して、図1に示されるように、スプール20の脚壁14側の端部にはガイド溝106が形成されている。図2に示されるように、本実施の形態においてガイド溝106はスプール20に対して同軸の環状とされており、スプール20の脚壁14側の端部にて開口している。上記の挿通孔102の脚壁16側の端部はガイド溝104の底部にて開口しており、挿通孔102の脚壁16側の端部はガイド溝106の底部にて開口している。
また、図2に示されるように、スプール20にはエネルギー吸収手段としてのワイヤ112が設けられている。ワイヤ112は第1エネルギー吸収部114を備えている。第1エネルギー吸収部114は軸方向がスプール20の中心軸線に沿った棒形状に形成されており、その長手方向中間部よりも基端側は挿通孔102の内側に収容されている。第1エネルギー吸収部114の先端側はガイド溝104の底部における挿通孔102の開口から突出しており、図1に示されるように、ガイド溝104と対向するようにラチェット部38(ロックベース32)に形成された係止孔116に入り込んでいる。係止孔116に入り込んだ第1エネルギー吸収部114の先端部は係止孔116に装着された保持具118により、係止孔116からの抜け出しが不能とされている。
このように先端が保持具118を介してロックベース32に保持された第1エネルギー吸収部114の基端部から、挿通孔102の脚壁16側の開口端までの長さ、すなわち、ワイヤ112の初期状態における第1エネルギー吸収部114の挿通孔102内に位置する部分の長さは、ガイド溝104の平均周長(すなわち、ロックベース32の半径方向中央側におけるガイド溝104の周長とロックベース32の半径方向外側におけるガイド溝104の周長との平均長さ)よりも短く設定されている。
一方、ワイヤ112は第2エネルギー吸収部124を備えている。図2に示されるように、第2エネルギー吸収部124は全体的に略C字形状(すなわち、一部が欠落した環状)とされており、ガイド溝106の内側に配置されている。このように内側に第2エネルギー吸収部124が配置されたガイド溝106は、スプール20の脚壁14側の端部に設けられた蓋130により閉止されている。蓋130は中央に軸部62の通過が可能な円孔が形成された円板状に形成されており、ねじ132等の締結固定手段によってスプール20に固定されている。このように、ガイド溝106が蓋130に閉止されていることで、ガイド溝106の開口端よりもスプール20の軸方向外側への第2エネルギー吸収部124の変位が規制されている。
また、第2エネルギー吸収部124の先端側は屈曲されており、この屈曲部分よりも、更に先端側は長手方向がスプール20の軸方向に沿った直線的な棒状とされている。この第2エネルギー吸収部124の先端部と上記の第1エネルギー吸収部114の先端部との間には連結部140が設けられており、この連結部140によって第1エネルギー吸収部114の基端部(特許請求の範囲で言うところの他端)と、第2エネルギー吸収部124の基端部(特許請求の範囲で言うところの一端)とが一体的に繋がっている。
本ウエビング巻取装置10では、連結部140の外径寸法は第1エネルギー吸収部114の外径寸法や第2エネルギー吸収部124の外径寸法よりも小径に形成されており、このため、連結部140の曲げ強度やせん断強度(軸方向に対して交差する向きに作用する力に対する強度)が第1エネルギー吸収部114や第2エネルギー吸収部124よりも低い。但し、連結部140の引っ張り強度は十分に大きく設定されており、スプール20の軸方向に第1エネルギー吸収部114を第2エネルギー吸収部124に対して離間する方向に引っ張っても、連結部140における破断が生じ難く、第2エネルギー吸収部124を第1エネルギー吸収部114に追従させてスプール20の軸方向に移動させることができるようになっている。
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、ウエビングベルト22が車両の乗員の身体に装着された状態で、車両急減速状態になると、ロック機構30を構成する「VSIR機構」が作動する。これにより、ロックパウル40が回動すると、ロックパウル40のラチェット歯42がラチェット部38(ロックベース32)のラチェット歯44に噛み合い、ロックベース32の引出方向への回転が規制される。
また、例えば、車両が急減速することで車両の乗員の身体が車両前方側へ慣性移動しようとし、これにより、乗員の身体に装着されているウエビングベルト22が引っ張られると、スプール20が所定の大きさ以上の速度で引出方向に回転する。上記のように、ロックベース32はトーションシャフト54を介してスプール20に対して相対回転が不能な状態で繋がっているので、スプール20が所定の大きさ以上の速度で引出方向に回転すると、ロックベース32が所定の大きさ以上の速度で引出方向に回転する。
このように、ロックベース32が所定の大きさ以上の速度で引出方向に回転するとロック機構30を構成する「WSIR機構」が作動する。これにより、ロックパウル40が回動すると、ロックパウル40のラチェット歯42がラチェット部38(ロックベース32)のラチェット歯44に噛み合い、ロックベース32の引出方向への回転が規制される。
このように、車両が急減速したり、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト22を引っ張ったりすると、ロック機構30が作動してロックベース32、ひいては、スプール20の引出方向の回転を規制する。これにより、スプール20からのウエビングベルト22の引き出しが規制されるので、乗員の身体はウエビングベルト22により強く拘束され、車両前方側への乗員の身体の慣性移動が規制される。
また、上記のように、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体は、ウエビングベルト22を引っ張ってスプール20を回転させようとするが、上記のようなロックベース32の引出方向への回転が規制されている状態で、スプール20に付与された引出方向への回転力がトーションシャフト54を構成する変形部56の機械的強度と、ワイヤ112の機械的強度との和を上回ると、トーション側第2連結部72におけるトーションシャフト54の引出方向への回転が規制されたまま、トーション側第1連結部58がスプール20と共に引出方向へ回転し、これにより、変形部56に捩じれるような変形が生じる。
このようにして許容されたスプール20の引出方向への回転量に応じた長さのウエビングベルト22がスプール20から引き出され、このようにして引き出しが許容されたウエビングベルト22の長さ分だけ乗員の身体は車両前方側へ慣性移動できる。
さらに、このように、ロックベース32の引出方向への回転が規制されたままスプール20に引出方向への回転が生ずるということは、ロックベース32がスプール20に対して相対的に巻取方向に回転したことになる。したがって、図4の(A)及び図5の(A)に示されるように、ロックベース32がスプール20に対して巻取方向に相対回転すると、保持具118によってロックベース32に係止された第1エネルギー吸収部114(ワイヤ112)の先端部がロックベース32と共に巻取方向に回転する。
これにより、第1エネルギー吸収部114の先端部が挿通孔102に対してスプール20の周方向に離間すると、図5(B)に示されるように、第1エネルギー吸収部114が脚壁16側の挿通孔102の開口端から引き出される。このようにして引き出された挿通孔102は、図5(A)に示されるように、挿通孔102の脚壁16側の開口端の縁でしごかれて、ガイド溝104の湾曲に倣うように変形する。
さらに、図4の(A)及び図5(A)に示されるように、第1エネルギー吸収部114の基端部は連結部140を介して第2エネルギー吸収部124の先端部に連結されているので、第1エネルギー吸収部114の基端側がスプール20の脚壁16側へ移動すると、これに伴い第2エネルギー吸収部124における挿通孔102内に位置する部分がスプール20の脚壁16側へ移動する。これにより、第2エネルギー吸収部124におけるガイド溝106内に位置する部分は先端側から挿通孔102内に引き込まれる。
このように第2エネルギー吸収部124のガイド溝106内の部分が挿通孔102に引き込まれるに際して挿通孔102の脚壁14側の開口端の縁でしごかれて、挿通孔102に倣うように直線状に変形する。なお、このように、挿通孔102の脚壁14側の開口端の縁で第2エネルギー吸収部124がしごかれても、第2エネルギー吸収部124は自らの剛性で変形に抗しようとするが、ガイド溝106は蓋130により閉止されているので、第2エネルギー吸収部124はガイド溝106の外側へ変位することができず、挿通孔102に引き込まれる際に第2エネルギー吸収部124は挿通孔102の脚壁14側の開口端の縁にしごかれて変形する。
したがって、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト22を引っ張る力のエネルギーの一部は、このような挿通孔102の両端でワイヤ112をしごくことで生じるワイヤ112の変形と、上記の変形部56(トーションシャフト54)の捩じり変形とに供され、これにより、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体の運動エネルギーの一部が吸収される。
次いで、上記のように、図6に示されるように、ロックベース32に対してスプール20が引出方向に回転し、第1エネルギー吸収部114の先端部が挿通孔102の脚壁14側の開口端の近傍に到達すると、連結部140が挿通孔102の脚壁14側の開口端の近傍に到達する。このようにして連結部140が挿通孔102の脚壁14側の開口端に到達して、その一部がガイド溝104に入り込むと、連結部140の第1エネルギー吸収部114側は巻取方向に曲げられ、更に、連結部140の第1エネルギー吸収部114側に対して第2エネルギー吸収部124側を巻取方向にずらすようにせん断力を連結部140は受ける。
ここで、連結部140はその長手方向に沿った引っ張り力に対しては高い強度を持つが、曲げやせん断力に対する強度は第1エネルギー吸収部114や第2エネルギー吸収部124よりも弱く設定されているので、上記のような曲げやせん断力が連結部140に作用すると、図7に示されるように、連結部140において破断が生じ、第1エネルギー吸収部114と第2エネルギー吸収部124との連結が解消される。
この状態では、第1エネルギー吸収部114は全てが挿通孔102から引き出されるので、ロックベース32に対してスプール20の引出方向への回転が継続されても、第1エネルギー吸収部114に変形が生じることはない。また、この状態では、第1エネルギー吸収部114と第2エネルギー吸収部124との連結が解消されているので、ロックベース32に対してスプール20の引出方向への回転が継続されても、第2エネルギー吸収部124が挿通孔102の脚壁14側へ移動することはなく、挿通孔102の脚壁14側の開口端の縁で第2エネルギー吸収部124がしごかれて変形することもない。すなわち、挿通孔102の脚壁16側の開口端の縁で連結部140が破断ささせると、第1エネルギー吸収部114及び第2エネルギー吸収部124での変形が終了し、ワイヤ112でのエネルギー吸収が終了する。
この状態で、変形部56が破断していれば、変形部56の変形によるエネルギー吸収も終了する。これに対して、この状態で変形部56が破断していなければ、変形部56の捩じり変形によるエネルギー吸収が継続される。したがって、この場合には、連結部140が破断する前よりもエネルギーの吸収量が小さくなり、結果的にエネルギーの吸収量が2段階となる。
また、このように、本実施の形態では、第1エネルギー吸収部114と第2エネルギー吸収部124とが連結部140により繋がっているものの、連結部140にて破断が生じることで第1エネルギー吸収部114と第2エネルギー吸収部124との連結が解消されるので、第2エネルギー吸収部124が挿通孔102の脚壁16側の開口からガイド溝104に入り込むことがない。このため、スプール20の脚壁16側に第2エネルギー吸収部124を収容するためのスペースが不要であり、また、ガイド溝104に第2エネルギー吸収部124が入り込んで第1エネルギー吸収部114の先端に第2エネルギー吸収部124が干渉することによるロックベース32に対するスプール20の相対回転の不要な規制の発生を防止できる。
なお、本実施の形態では、連結部140の外径寸法を第1エネルギー吸収部114や第2エネルギー吸収部124の外径寸法よりも小さくすることで連結部140の機械的強度を設定したが、連結部140の機械的強度の設定は、このような外形の設定に限定されるものではなく、例えば、連結部140に加熱処理や化学処理を施して、引っ張り力に対する強度を維持しつつお曲げやせん断力に対する強度を弱く設定してもよい。
また、本実施の形態では、ワイヤ112の一部に他の部分よりも機械的強度が低い連結部140を形成して、連結部140よりもワイヤ112の一端側を第1エネルギー吸収部114とし、連結部140よりもワイヤ112の他端側を第2エネルギー吸収部124とした構成、すなわち、第1エネルギー吸収部114も第2エネルギー吸収部124も同じワイヤ112の一部とした構成であった。
しかしながら、第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部とが同一の部材の一部である構成に限定されるものではなく、第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部とを別体で構成し、他の連結手段によって第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部とを機械的に連結し、例えば、第1エネルギー吸収部側に対して第2エネルギー側を巻取方向にずらすようにせん断力を連結手段が受けた場合には、連結手段による第1エネルギー吸収部と第2エネルギー吸収部との機械的な連結が解消される構成であってもよい。
10 ウエビング巻取装置
20 スプール
22 ウエビングベルト
30 ロック機構(ロック手段)
32 ロックベース
112 ワイヤ(エネルギー吸収手段)
114 第1エネルギー吸収部
124 第2エネルギー吸収部
140 連結部

Claims (2)

  1. ウエビングベルトの長手方向基端側が係止されて、軸周り方向一方である巻取方向へ回転することで前記ウエビングベルトを長手方向基端側から外周部に巻き取るスプールと、
    前記スプールに対して相対回転可能に前記スプールの軸方向一端側に設けられたロックベースを有すると共に、車両が急減速した場合又は前記スプールが所定の大きさ以上の加速度で前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転した場合に作動して前記ロックベースの前記引出方向への回転を規制するロック手段と、
    前記スプールの軸方向両端にて開口した挿通孔に挿通されて一端が前記ロックベースに係止された第1エネルギー吸収部と、前記第1エネルギー吸収部の他端に一端が連結されて他端側が前記挿通孔の他端から引き出された第2エネルギー吸収部と、を有し、前記ロック手段による前記ロックベースの回転規制状態で前記スプールが前記引出方向に回転することにより前記第1エネルギー吸収部が前記挿通孔の一端から引き出されつつ変形すると共に、前記第2エネルギー吸収部が前記挿通孔の他端から前記挿通孔の内側に引き込まれつつ変形し、且つ、第2エネルギー吸収部の一端が前記挿通孔の一端の近傍に到達した際に前記第1エネルギー吸収部と前記第2エネルギー吸収部との連結が解消されるエネルギー吸収手段と、
    を備えるウエビング巻取装置。
  2. 前記第1エネルギー吸収部の他端と前記第2エネルギー吸収部の一端とを連結すると共に、前記挿通孔の一端から前記第1エネルギー吸収部が引き出されて前記挿通孔の他端から前記第2エネルギー吸収部が引き込まれる際に前記連結部に作用する引っ張り荷重に抗し、且つ、前記挿通孔の一端に前記連結部が到達した状態で前記スプールが前記ロックベースに対して回転することによって前記連結部に作用する曲げ荷重及びせん断荷重の少なくとも何れか一方により破断する大きさの機械的強度を有する連結部を前記エネルギー吸収手段に設けた請求項1に記載のウエビング巻取装置。
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