JP2011013169A - アンモニアガスセンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】アンモニア選択性に優れると共に、センサの感度の変動が少なく、さらに耐久性に優れたアンモニアガスセンサを提供する。
【解決手段】有底筒状をなす酸素イオン伝導性の固体電解質層4と、固体電解質層の外面に設けられる検知電極2Aと、検知電極を覆う選択反応層8と、固体電解質層の内面に設けられる基準電極6と、固体電解質層の内側に収容されて該固体電解質層を加熱するヒータ7とを有し、ヒータで加熱した時の固体電解質層の最高温度をTM℃とした場合、固体電解質層の温度分布がTM〜TM−40(℃)の高温均熱領域HR内にのみ検知電極が形成され、かつ検知電極の面積が高温均熱領域の面積の10%以上であるアンモニアガスセンサ100である。
【選択図】図3
【解決手段】有底筒状をなす酸素イオン伝導性の固体電解質層4と、固体電解質層の外面に設けられる検知電極2Aと、検知電極を覆う選択反応層8と、固体電解質層の内面に設けられる基準電極6と、固体電解質層の内側に収容されて該固体電解質層を加熱するヒータ7とを有し、ヒータで加熱した時の固体電解質層の最高温度をTM℃とした場合、固体電解質層の温度分布がTM〜TM−40(℃)の高温均熱領域HR内にのみ検知電極が形成され、かつ検知電極の面積が高温均熱領域の面積の10%以上であるアンモニアガスセンサ100である。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えば燃焼器や内燃機関等の燃焼ガスや排気ガス中のアンモニアガス濃度測定に好適に用いられるアンモニアガスセンサに関する。
自動車等の内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の浄化方法として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction、選択還元触媒)方式が開発されている。尿素SCR方式は、SCR触媒に尿素を添加してアンモニアを発生させ、アンモニアによりNOxを還元するものであり、NOxを還元するアンモニア濃度が適量かどうかを測定するためのアンモニアガスセンサが用いられている。
このようなアンモニアガスセンサとして、酸素イオン伝導性の固体電解質層の表面に基準電極と検知電極とを形成し、電極間の起電力に基づいてアンモニア濃度を検出するものが従来から提案されてきたが、アンモニア以外の可燃性ガス(CO、HC等)をも検出してしまうため、アンモニアガス濃度の正確な測定が困難であるという問題がある。
そこで、検知電極の表面に、Pdを含有する多孔質体を含むPd触媒層を形成し、この層でアンモニア以外の可燃性ガスを燃焼させることで、アンモニアを選択的に検知するセンサが提案されている(特許文献1参照)。
そこで、検知電極の表面に、Pdを含有する多孔質体を含むPd触媒層を形成し、この層でアンモニア以外の可燃性ガスを燃焼させることで、アンモニアを選択的に検知するセンサが提案されている(特許文献1参照)。
一方、固体電解質層と基準電極と検知電極とを有するガスセンサにおいては、固体電解質層を活性化するため、測定時にヒータで固体電解質層を加熱している。従って、測定の安定を図るため、固体電解質層上の充分加熱された部分に検知電極を配置する必要がある。このようなことから、筒型の固体電解質層内部にヒータを収容したセンサにおいて、ヒータが備える発熱抵抗体(実質的に加熱を行う部分)の前端と後端とで挟まれる領域に検知電極を形成するセンサが提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、上記特許文献1記載のアンモニアガスセンサの場合、Pd触媒層が完全な絶縁体とはならないため、Pd触媒層と検知電極が電気的に接続している。このため、実使用に伴ってPd触媒層の特性が経時変化した場合、この層が電極反応に寄与して検知特性に影響を及ぼす可能性がある。
又、筒型のアンモニアガスセンサの場合、板状センサに比べ、ヒータ加熱時に固体電解質層の温度分布の広がりが大きいため、測定ガスの流速等が変動した時にセンサ感度の温度依存性が大きくなる。一方、固体電解質層の温度分布の影響を小さくするため、固体電解質層のごく限られた狭い部分に小さな検知電極を形成することが考えられる。しかし、検知電極の面積を小さくし過ぎると、センサの測定精度や耐久性が劣化する。
すなわち、本発明は、アンモニア選択性に優れると共に、センサの感度の変動が少なく、さらに耐久性に優れたアンモニアガスセンサの提供を目的とする。
又、筒型のアンモニアガスセンサの場合、板状センサに比べ、ヒータ加熱時に固体電解質層の温度分布の広がりが大きいため、測定ガスの流速等が変動した時にセンサ感度の温度依存性が大きくなる。一方、固体電解質層の温度分布の影響を小さくするため、固体電解質層のごく限られた狭い部分に小さな検知電極を形成することが考えられる。しかし、検知電極の面積を小さくし過ぎると、センサの測定精度や耐久性が劣化する。
すなわち、本発明は、アンモニア選択性に優れると共に、センサの感度の変動が少なく、さらに耐久性に優れたアンモニアガスセンサの提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のアンモニアガスセンサは、有底筒状をなす酸素イオン伝導性の固体電解質層と、前記固体電解質層の外面に設けられる検知電極と、前記検知電極を覆う選択反応層と、前記固体電解質層の内面に設けられる基準電極と、前記固体電解質層の内側に収容されて該固体電解質層を加熱するヒータとを有し、前記ヒータで加熱した時の前記固体電解質層の最高温度をTM℃とした場合、前記固体電解質層の温度分布がTM〜TM−40(℃)の高温均熱領域内にのみ前記検知電極が形成され、かつ前記検知電極の面積が前記高温均熱領域の面積の10%以上である。
このような構成とすると、高温均熱領域では、固体電解質層がTM〜TM−40(℃)の温度範囲に維持され、温度分布の広がりが小さくなる。このため、高温均熱領域内にのみ検知電極を形成すれば、被測定ガスの流速等が変動しても固体電解質層の温度変化が小さく、センサ感度の温度依存性を低減することができる。
又、検知電極の面積を高温均熱領域の面積の10%以上とすることで、検知電極の面積を小さくし過ぎてアンモニアガスセンサの測定精度や耐久性が劣化することを防止することができる。
このような構成とすると、高温均熱領域では、固体電解質層がTM〜TM−40(℃)の温度範囲に維持され、温度分布の広がりが小さくなる。このため、高温均熱領域内にのみ検知電極を形成すれば、被測定ガスの流速等が変動しても固体電解質層の温度変化が小さく、センサ感度の温度依存性を低減することができる。
又、検知電極の面積を高温均熱領域の面積の10%以上とすることで、検知電極の面積を小さくし過ぎてアンモニアガスセンサの測定精度や耐久性が劣化することを防止することができる。
前記固体電解質層を前記ヒータで加熱した時、前記検知電極が形成された部分の前記固体電解質層の最高温度がTM℃となることが好ましい。
このように、固体電解質層が最高温度になる位置に検知電極を形成すると、固体電解質層の温度変化が最も小さい部分に検知電極が形成されることになり、センサ感度の温度依存性を更に低減することができる。
このように、固体電解質層が最高温度になる位置に検知電極を形成すると、固体電解質層の温度変化が最も小さい部分に検知電極が形成されることになり、センサ感度の温度依存性を更に低減することができる。
前記選択反応層は、被測定ガス中のアンモニア以外の可燃性ガス(CO、HC等)を選択的に燃焼させるので、アンモニアの検出精度が向上する。
この発明によれば、アンモニア選択性に優れると共に、センサの感度の変動が少なく、さらに耐久性に優れたアンモニアガスセンサが得られる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンモニアガスセンサ100の長手方向に沿う断面図を示す。なお、図1の下側をアンモニアガスセンサ100の先端とし、図1の上側をアンモニアガスセンサ100の後端とする。
アンモニアガスセンサ100は、アンモニアを検出するガスセンサ素子10Aを所定のハウジング内に組み付けたアッセンブリである。アンモニアガスセンサ100は、細長い有底筒状のガスセンサ素子10Aと、排気管に固定されるためのねじ部111が外表面に形成された筒状の主体金具110と、ガスセンサ素子10Aの径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ230と、外筒120と、軸線方向に貫通する挿通孔を有する筒状のセパレータ400等を備えている。ガスセンサ素子10Aの筒内には、丸棒状のヒータ7が挿入されている。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンモニアガスセンサ100の長手方向に沿う断面図を示す。なお、図1の下側をアンモニアガスセンサ100の先端とし、図1の上側をアンモニアガスセンサ100の後端とする。
アンモニアガスセンサ100は、アンモニアを検出するガスセンサ素子10Aを所定のハウジング内に組み付けたアッセンブリである。アンモニアガスセンサ100は、細長い有底筒状のガスセンサ素子10Aと、排気管に固定されるためのねじ部111が外表面に形成された筒状の主体金具110と、ガスセンサ素子10Aの径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ230と、外筒120と、軸線方向に貫通する挿通孔を有する筒状のセパレータ400等を備えている。ガスセンサ素子10Aの筒内には、丸棒状のヒータ7が挿入されている。
主体金具110は軸線方向に貫通する貫通孔116を有し、貫通孔116の径方向内側に突出して棚部114が形成されている。棚部114は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。そして、主体金具110は、ガスセンサ素子10Aの先端側を貫通孔116の先端側外部に配置し、ガスセンサ素子10Aの後端側を貫通孔116の後端側外部に配置した状態で、ガスセンサ素子10Aを貫通孔116に保持している。
そして、主体金具110の貫通孔116の内部には、ガスセンサ素子10Aの径方向周囲を取り囲む状態で、それぞれ環状のセラミックホルダ210、粉末充填層220(以下、滑石リングともいう)、および上述のセラミックスリーブ230がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。また、セラミックスリーブ230と主体金具110の後端部115との間には、加締めパッキン231が配置されている。そして、主体金具110の後端部115は、加締めパッキン231を介してセラミックスリーブ230を先端側に押し付けるように、加締められている。
さらに、ガスセンサ素子10Aの軸方向におけるセラミックホルダ210と滑石リング220の間の位置に、径方向外側に突出するフランジ部11が形成されている。従って、上記した加締めによって滑石リング220がフランジ部11を押圧しつつ圧縮されることにより、貫通孔116とガスセンサ素子10Aの間が気密充填されてガスセンサ素子10Aが保持される。
さらに、ガスセンサ素子10Aの軸方向におけるセラミックホルダ210と滑石リング220の間の位置に、径方向外側に突出するフランジ部11が形成されている。従って、上記した加締めによって滑石リング220がフランジ部11を押圧しつつ圧縮されることにより、貫通孔116とガスセンサ素子10Aの間が気密充填されてガスセンサ素子10Aが保持される。
一方、図1に示すように、主体金具110の先端113の外周には、ガスセンサ素子10Aの突出部分を覆うと共に、被測定ガスを導入する複数の導入孔部131、141をそれぞれ有する金属製(例えば、ステンレスなど)二重の外側プロテクタ130および内側プロテクタ140が、溶接等によって取り付けられている。又、外側プロテクタ130および内側プロテクタ140の底面には、被測定ガスを排出する排出口132、142がそれぞれ開口されている。
又、主体金具110の後端側112の外周には外筒120が固定されている。そして、外筒120の内側には、ガスセンサ素子10Aの後端に接する筒状のセパレータ400と、セパレータ400の後端に接するフッ素ゴム製の筒状のグロメット500が配置され、外筒120を径方向に加締めることでセパレータ400及びグロメット500がそれぞれ固定されている。
なお、セパレータ400と外筒120との間には略円筒状の保持金具610が介装され、セパレータ400の軸方向中央に形成されたフランジ部410が保持金具610の後端に係合され、保持金具610を介してセパレータ400が外筒120に保持されている。
なお、セパレータ400と外筒120との間には略円筒状の保持金具610が介装され、セパレータ400の軸方向中央に形成されたフランジ部410が保持金具610の後端に係合され、保持金具610を介してセパレータ400が外筒120に保持されている。
セパレータ400は、後述するガスセンサ素子10Aの検知電極2A、基準電極6、及びヒータ7とそれぞれ電気的に接続される4本の接続端子700(図1では3本のみ表示)をそれぞれ別個に収容する4つの挿通孔を周方向に沿って有する。各接続端子700の後端にはリード線710の芯線が加締められており、接続端子700がセパレータ400の挿通孔に収容され、リード線710がグロメット500の挿通孔に収容されると共にセンサ外部に引き出されている。
又、グロメット500の中心から軸方向に延びる連通孔が形成され、この連通孔にはフィルタ840及び留め金具850が挿入され、フィルタ840は連通孔と留め金具850との間に挟持されている。フィルタ840はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂からなり、水滴を通さず大気を通すため、連通孔を介してガスセンサ素子10Aに外気(基準ガス)を導入することができる。この実施形態の場合、フィルタ840を介して導入された外気は、セパレータ400に設けられた挿通孔(接続端子700が配置される孔)を通ってガスセンサ素子に導入される。
次に、ガスセンサ素子10Aのうちセンサとして機能する先端部分の構成について図2を用いて説明する。なお、図2は、図1と同じ方向から切断した断面図である。
ガスセンサ素子10Aは、略半球状の底を有し筒状をなす酸素イオン伝導性の固体電解質層4と、固体電解質層4の内面に形成される基準電極6と、固体電解質層4の外面の先端球状部に形成される検知電極2Aと、固体電解質層4の内側に挿入される丸棒状のヒータ7とを有する。
ガスセンサ素子10Aは、略半球状の底を有し筒状をなす酸素イオン伝導性の固体電解質層4と、固体電解質層4の内面に形成される基準電極6と、固体電解質層4の外面の先端球状部に形成される検知電極2Aと、固体電解質層4の内側に挿入される丸棒状のヒータ7とを有する。
検知電極2Aから固体電解質層4の外面に沿ってリード20が長手方向に延び、上述した接続端子700に接続されている。又、基準電極6は固体電解質層4の後端(図2の上方)へ延び、接続端子700に接続されている。ヒータ7は発熱抵抗体を有し、ヒータ7から引き出された一対のリードが2つの接続端子700にそれぞれ接続されている。
検知電極2Aが露出しないよう、選択反応層8は検知電極2Aの表面及び側端面を覆い、選択反応層8がガスセンサ素子10A本体から径方向外側に張り出すように構成されている。
固体電解質層4は例えば部分安定化ジルコニアを主成分とし、ヒータ7の加熱によって活性化されて酸素イオン伝導性を示す。基準電極6は例えばPt又はPt合金からなる。又、検知電極2Aは、例えばAu又はAu合金からなる。
検知電極2Aが露出しないよう、選択反応層8は検知電極2Aの表面及び側端面を覆い、選択反応層8がガスセンサ素子10A本体から径方向外側に張り出すように構成されている。
固体電解質層4は例えば部分安定化ジルコニアを主成分とし、ヒータ7の加熱によって活性化されて酸素イオン伝導性を示す。基準電極6は例えばPt又はPt合金からなる。又、検知電極2Aは、例えばAu又はAu合金からなる。
ヒータ7は、先端側に配置される発熱抵抗体(実質的に加熱を行う部分)と、発熱抵抗体から後端に向かって延びる一対のヒータリード線とを有し、発熱抵抗体及びヒータリード線が絶縁体中に埋設されている。発熱抵抗体は例えばW又はW合金、Pt又はPt合金からなる。
選択反応層8は被測定ガス中のアンモニア以外の可燃性ガス(CO、HC等)を燃焼させ、これらの可燃性ガスが検知電極2Aに到達してアンモニア濃度の測定へ影響を与えるのを防止する。
選択反応層8は、AxMyOzで表される酸化物(Aは1種以上の金属であり;Mはバナジウム、タングステン又はモリブデンであり;x、y、zは原子比である)を含むことが好ましい。選択反応層8が上記酸化物を含むと、選択反応層8の触媒性が各ガスに対して異なるため、CO、HCは選択反応層8の表面で酸化物と燃焼(反応)するのに対して、NH3は選択反応層8で燃焼せずに通過し、電極と固体電解質体との界面で反応するため、アンモニアのみを検知できる。
Aとしては、ビスマス、ランタン、ストロンチウム、カルシウム、銅、ガドリニウム、ネオジム、イットリウム、サマリウム及びマグネシウムの群から選ばれる1種以上が例示される。
AxMyOzとして具体的には、V2O5、Cu2(VO3)2、WO3、MoO3、BiVO4が例示できる。例えば、BiVO4を含む選択反応層8は、酸化バナジウム(V2O5)及び酸化ビスマス(Bi2O3)粉末を1:1(モル比)で混合してペーストとし、焼成等することにより得られる。
選択反応層8は、AxMyOzを主成分とすればよく、AxMyOzの含有割合が多ければ多いほうが良く、AxMyOzのみで形成されていても良い。なお、本発明において「主成分」とは、含有率が50%以上のことを指す。選択反応層8はNH3ガスを通過させる必要があるため、多孔質体である必要があるが、本実施形態では、AxMyOz酸化物を焼成して多孔質体にしている。
Aとしては、ビスマス、ランタン、ストロンチウム、カルシウム、銅、ガドリニウム、ネオジム、イットリウム、サマリウム及びマグネシウムの群から選ばれる1種以上が例示される。
AxMyOzとして具体的には、V2O5、Cu2(VO3)2、WO3、MoO3、BiVO4が例示できる。例えば、BiVO4を含む選択反応層8は、酸化バナジウム(V2O5)及び酸化ビスマス(Bi2O3)粉末を1:1(モル比)で混合してペーストとし、焼成等することにより得られる。
選択反応層8は、AxMyOzを主成分とすればよく、AxMyOzの含有割合が多ければ多いほうが良く、AxMyOzのみで形成されていても良い。なお、本発明において「主成分」とは、含有率が50%以上のことを指す。選択反応層8はNH3ガスを通過させる必要があるため、多孔質体である必要があるが、本実施形態では、AxMyOz酸化物を焼成して多孔質体にしている。
又、センサの耐久性や耐被毒性を向上させるため、検知電極上に絶縁性の保護層や被毒防止層を設けてもよい。
次に、図3を参照し、本発明の特徴部分である検知電極2Aの形成位置について説明する。図3は、図1と同じ方向から切断したガスセンサ素子10A先端の断面図である。
図3において、ヒータ7で加熱した時の固体電解質層4の最高温度をTM℃とした場合、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−40(℃)の領域を高温均熱領域HRとする。この実施形態においては、固体電解質層4の内面のうち、ヒータ7の先端が接している部分の近傍位置RMで温度がTM℃となり、固体電解質層4の先端R1に向かって温度が低下している。同様に固体電解質層4の後端に向かって温度が低下し、RMより後端の位置R2の温度がTM−40(℃)になっている。なお、R2は、選択反応層8の後端より更に後端側にあって、固体電解質層4が表出する部分に位置している。
従って、高温均熱領域HRは、固体電解質層4の軸方向に向かってR1とR2とで挟まれる固体電解質層4の外表面となる。高温均熱領域HRでは、固体電解質層4がTM〜TM−40(℃)の温度範囲に維持され、温度分布の広がりが小さくなるため、被測定ガスの流速等が変動しても固体電解質層4の温度変化が小さく、センサ感度の温度依存性を低減することができる。
図3において、ヒータ7で加熱した時の固体電解質層4の最高温度をTM℃とした場合、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−40(℃)の領域を高温均熱領域HRとする。この実施形態においては、固体電解質層4の内面のうち、ヒータ7の先端が接している部分の近傍位置RMで温度がTM℃となり、固体電解質層4の先端R1に向かって温度が低下している。同様に固体電解質層4の後端に向かって温度が低下し、RMより後端の位置R2の温度がTM−40(℃)になっている。なお、R2は、選択反応層8の後端より更に後端側にあって、固体電解質層4が表出する部分に位置している。
従って、高温均熱領域HRは、固体電解質層4の軸方向に向かってR1とR2とで挟まれる固体電解質層4の外表面となる。高温均熱領域HRでは、固体電解質層4がTM〜TM−40(℃)の温度範囲に維持され、温度分布の広がりが小さくなるため、被測定ガスの流速等が変動しても固体電解質層4の温度変化が小さく、センサ感度の温度依存性を低減することができる。
高温均熱領域HRは、赤外線放射エネルギーを検出して温度分布を表示する赤外線サーモグラフィを用い、ガスセンサ素子10Aの先端部分を撮影することで決定することができる。ここで、ガスセンサ素子10Aの検知電極2Aを選択反応層8が覆っているが、選択反応層8を除去せずにガスセンサ素子10A表面の赤外線放射エネルギーを測定する。これは、選択反応層8を除去して測定すると、固体電解質層4の保温状態(断熱作用)が実際のガスセンサ素子10Aと異なるためである。選択反応層8をさらに保護層等で覆った場合も、同様に保護層を残したまま測定を行う。
又、選択反応層8(又はその上の保護層)表面の温度分布を測定し、該表面における最高温度をTM(℃)とし、選択反応層8(又はその上の保護層)表面においてTM−40(℃)以内となる位置をR1,R2とする。そして、この位置R1やR2が固体電解質層4表面に存在するものとみなす。但し、この実施形態においては、選択反応層8の先端の位置R1に対応する位置が固体電解質層4表面には存在しないため、固体電解質層4の先端を位置R1とみなす。
なお、この実施形態においては、位置RMは先端R1に近いため、先端R1の温度はTM−40(℃)より高い(TM−20(℃)程度)。
又、選択反応層8(又はその上の保護層)表面の温度分布を測定し、該表面における最高温度をTM(℃)とし、選択反応層8(又はその上の保護層)表面においてTM−40(℃)以内となる位置をR1,R2とする。そして、この位置R1やR2が固体電解質層4表面に存在するものとみなす。但し、この実施形態においては、選択反応層8の先端の位置R1に対応する位置が固体電解質層4表面には存在しないため、固体電解質層4の先端を位置R1とみなす。
なお、この実施形態においては、位置RMは先端R1に近いため、先端R1の温度はTM−40(℃)より高い(TM−20(℃)程度)。
本発明においては、検知電極2Aの面積が高温均熱領域HRの面積の10%以上であることが必要である。
上記したように、固体電解質層4の温度分布の広がりが小さい高温均熱領域HR内に検知電極2Aを形成することで、固体電解質層4の温度変化を小さくすることができる。そして、高温均熱領域HR内で検知電極2Aの面積を小さくすると、固体電解質層4の温度分布の広がりがさらに小さくなる。
しかしながら検知電極2Aの面積を小さくし過ぎ、HRの面積の10%未満になると、アンモニアガスセンサの測定精度や耐久性が劣化する。このようなことから、高温均熱領域HR内にあって、検知電極2A(図3の符号EAで表される領域)の面積を高温均熱領域HRの面積の10%以上とする。
ここで、検知電極2Aの先端D1と後端D2とで挟まれる領域がEAである。
上記したように、固体電解質層4の温度分布の広がりが小さい高温均熱領域HR内に検知電極2Aを形成することで、固体電解質層4の温度変化を小さくすることができる。そして、高温均熱領域HR内で検知電極2Aの面積を小さくすると、固体電解質層4の温度分布の広がりがさらに小さくなる。
しかしながら検知電極2Aの面積を小さくし過ぎ、HRの面積の10%未満になると、アンモニアガスセンサの測定精度や耐久性が劣化する。このようなことから、高温均熱領域HR内にあって、検知電極2A(図3の符号EAで表される領域)の面積を高温均熱領域HRの面積の10%以上とする。
ここで、検知電極2Aの先端D1と後端D2とで挟まれる領域がEAである。
検知電極2Aの面積は、検知電極2Aの外表面の面積を採用する。又、高温均熱領域HRの面積は、固体電解質層4の軸方向に向かってR1とR2とで挟まれる固体電解質層4の外表面の面積を採用する。
なお、検知電極2Aには厚みがあるため、理論上は、固体電解質層4の先端R1から位置R2までを完全に検知電極2Aで覆った場合、検知電極2Aの外表面の面積が高温均熱領域HRの面積より若干大きくなる(HRの面積の100%を若干超える)。しかしながら、R1からR2までの長さに比べ、検知電極2Aの厚みは無視できるほど小さいため、高温均熱領域HRをすべて検知電極2Aで覆った場合を検知電極2Aの面積の最大値(HRの面積の100%)とする。
なお、検知電極2Aには厚みがあるため、理論上は、固体電解質層4の先端R1から位置R2までを完全に検知電極2Aで覆った場合、検知電極2Aの外表面の面積が高温均熱領域HRの面積より若干大きくなる(HRの面積の100%を若干超える)。しかしながら、R1からR2までの長さに比べ、検知電極2Aの厚みは無視できるほど小さいため、高温均熱領域HRをすべて検知電極2Aで覆った場合を検知電極2Aの面積の最大値(HRの面積の100%)とする。
次に、アンモニアガスセンサ100の動作の一例について説明する。まず、ヒータ7の加熱によって固体電解質層4を活性化させた後、センサを被測定ガスに曝すと、被測定ガスが選択反応層8に透過して可燃性ガス(CO、HC等)が燃焼し、これらの可燃性ガスが除去されたアンモニアガスが検知電極2Aに到達する。
検知電極2Aは固体電解質層4を介して基準電極6と対向し、基準電極6はグロメット500(図1)のフィルタ840を介して外気(基準大気)に曝されている。従って、被測定ガス中のアンモニア濃度に応じて、検知電極2Aと基準電極6との間に生じる起電力(電位差)からセンサ出力が得られ、アンモニア濃度を検出することができる。
検知電極2Aは固体電解質層4を介して基準電極6と対向し、基準電極6はグロメット500(図1)のフィルタ840を介して外気(基準大気)に曝されている。従って、被測定ガス中のアンモニア濃度に応じて、検知電極2Aと基準電極6との間に生じる起電力(電位差)からセンサ出力が得られ、アンモニア濃度を検出することができる。
次に、アンモニアガスセンサ100におけるガスセンサ素子10Aの製造方法の一例について説明する。まず、固体電解質層の材料(例えば4.5モル%のY2O3を含む部分安定化ジルコニア)粉末を充填し、この粉末を有底筒状に加圧成形して焼成(例えば1490℃程度)し、固体電解質層4を得る。
次に、固体電解質層4の内面に無電解Ptめっきを施し、基準電極6となるPt層を形成する。一方、Au粉末、ジルコニア粉末、有機溶剤及び分散剤を分散混合した後、バインダ、粘度調整剤を所定量添加し、更に湿式混合を行ってペーストを作製する。そして、このペーストを、固体電解質層4の外面における検知電極2A及びリードとなる部分に印刷して乾燥後、全体を焼成(例えば1000℃で1時間)して検知電極2A及びリードを形成する。
次に、固体電解質層4の内面に無電解Ptめっきを施し、基準電極6となるPt層を形成する。一方、Au粉末、ジルコニア粉末、有機溶剤及び分散剤を分散混合した後、バインダ、粘度調整剤を所定量添加し、更に湿式混合を行ってペーストを作製する。そして、このペーストを、固体電解質層4の外面における検知電極2A及びリードとなる部分に印刷して乾燥後、全体を焼成(例えば1000℃で1時間)して検知電極2A及びリードを形成する。
さらに、1:1(モル比)で用意した酸化バナジウム(V2O5)粉末及び酸化ビスマス(Bi2O3)粉末、有機溶剤並びに分散剤を分散混合した後、バインダ、粘度調整剤を所定量添加し、更に湿式混合を行ってペーストを作製する。そして、このペーストを、検知電極2Aを覆うように印刷して乾燥し、選択反応層前駆体を形成する。
そして、全体を焼成(例えば750℃で10分間)して選択反応層8を形成し、ガスセンサ素子10Aを製造する。得られたガスセンサ素子10Aは、上述したようにしてアンモニアガスセンサ100として組み付ける。
なお、AxMyOzを含む層(第1の実施形態では選択反応層及び保護層)をペースト印刷後に焼成して形成する場合、焼成温度は650〜1000℃の間で調整することが好ましい。
なお、AxMyOzを含む層(第1の実施形態では選択反応層及び保護層)をペースト印刷後に焼成して形成する場合、焼成温度は650〜1000℃の間で調整することが好ましい。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るアンモニアガスセンサについて図4を用いて説明する。第2の実施形態に係るアンモニアガスセンサは、検知電極2Bの形状(及び面積)が異なること以外は第1の実施形態に係るアンモニアガスセンサと同一であるので、同一部分について同一符号を付して説明を省略する。図4は、ガスセンサ素子10B先端の側面図である。
図4において、検知電極2Bは、高温均熱領域HR内にあって略矩形状に形成され、高温均熱領域HRの面積よりかなり小さい面積を有している。つまり、検知電極2Bの先端D1は固体電解質層4の先端よりも後端側に位置し、検知電極2Bは固体電解質層4の全周に形成されず、固体電解質層4の周方向の一部分に形成されている。但し、第2の実施形態においても、検知電極2Bの面積が高温均熱領域HRの面積の10%以上を維持している。
このように、高温均熱領域HR内の固体電解質層4表面の一部に、比較的小面積の検知電極2Bを設けるようにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態に係るアンモニアガスセンサについて図4を用いて説明する。第2の実施形態に係るアンモニアガスセンサは、検知電極2Bの形状(及び面積)が異なること以外は第1の実施形態に係るアンモニアガスセンサと同一であるので、同一部分について同一符号を付して説明を省略する。図4は、ガスセンサ素子10B先端の側面図である。
図4において、検知電極2Bは、高温均熱領域HR内にあって略矩形状に形成され、高温均熱領域HRの面積よりかなり小さい面積を有している。つまり、検知電極2Bの先端D1は固体電解質層4の先端よりも後端側に位置し、検知電極2Bは固体電解質層4の全周に形成されず、固体電解質層4の周方向の一部分に形成されている。但し、第2の実施形態においても、検知電極2Bの面積が高温均熱領域HRの面積の10%以上を維持している。
このように、高温均熱領域HR内の固体電解質層4表面の一部に、比較的小面積の検知電極2Bを設けるようにしてもよい。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係るアンモニアガスセンサについて図5を用いて説明する。第3の実施形態に係るアンモニアガスセンサは、検知電極2Cの形状(及び面積)が異なること以外は第1の実施形態に係るアンモニアガスセンサと同一であるので、同一部分について同一符号を付して説明を省略する。図5は、ガスセンサ素子10C先端の側面図である。
図5において、検知電極2Cは、高温均熱領域HR内にあって、ガスセンサ素子10Cの軸方向の領域EAに形成されている。又、検知電極2Cの先端D1は固体電解質層4の先端よりも後端側に位置し、固体電解質層4の外面の先端球状部には形成されていない。但し、検知電極2Cは、固体電解質層4の外表面の全周にわたってリング状に形成されている。従って、検知電極2Cの面積は高温均熱領域HRの面積より小さいが、第2の実施形態における検知電極2Bの面積より大きい。
このように、高温均熱領域HR内の固体電解質層4表面にリング状に検知電極2Cを設けるようにしてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態に係るアンモニアガスセンサについて図5を用いて説明する。第3の実施形態に係るアンモニアガスセンサは、検知電極2Cの形状(及び面積)が異なること以外は第1の実施形態に係るアンモニアガスセンサと同一であるので、同一部分について同一符号を付して説明を省略する。図5は、ガスセンサ素子10C先端の側面図である。
図5において、検知電極2Cは、高温均熱領域HR内にあって、ガスセンサ素子10Cの軸方向の領域EAに形成されている。又、検知電極2Cの先端D1は固体電解質層4の先端よりも後端側に位置し、固体電解質層4の外面の先端球状部には形成されていない。但し、検知電極2Cは、固体電解質層4の外表面の全周にわたってリング状に形成されている。従って、検知電極2Cの面積は高温均熱領域HRの面積より小さいが、第2の実施形態における検知電極2Bの面積より大きい。
このように、高温均熱領域HR内の固体電解質層4表面にリング状に検知電極2Cを設けるようにしてもよい。
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、検知電極が高温均熱領域HR内にのみ形成され、かつ検知電極の面積が高温均熱領域HRの面積の10%以上である限り、検知電極の形状は限定されない。
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらの例に限定されるものではない。
上記第1の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサを作製した。
まず、固体電解質層の材料(4.5モル%のY2O3を含む部分安定化ジルコニア)粉末を充填し、この粉末を有底筒状に加圧成形して焼成(例えば1490℃程度)し、固体電解質層4を得た。次に、固体電解質層4の内面に無電解Ptめっきを施し、基準電極6となるPt層を形成した。そして、Au粉末、ジルコニア粉末、有機溶剤及び分散剤を乳鉢に入れ、らいかい機で4時間分散混合した後、バインダ、粘度調整剤を所定量添加し、更に4時間湿式混合を行ってAu系ペーストを作製した。なお、Au系ペースト中、Au粉末100重量%に対して、ジルコニア粉末を10重量%含有させた。このAu系ペーストを、固体電解質層4の外面における検知電極2A及びリードとなる部分に印刷して乾燥後、全体を焼成(1000℃で1時間)して検知電極2A及びリードを形成した。
まず、固体電解質層の材料(4.5モル%のY2O3を含む部分安定化ジルコニア)粉末を充填し、この粉末を有底筒状に加圧成形して焼成(例えば1490℃程度)し、固体電解質層4を得た。次に、固体電解質層4の内面に無電解Ptめっきを施し、基準電極6となるPt層を形成した。そして、Au粉末、ジルコニア粉末、有機溶剤及び分散剤を乳鉢に入れ、らいかい機で4時間分散混合した後、バインダ、粘度調整剤を所定量添加し、更に4時間湿式混合を行ってAu系ペーストを作製した。なお、Au系ペースト中、Au粉末100重量%に対して、ジルコニア粉末を10重量%含有させた。このAu系ペーストを、固体電解質層4の外面における検知電極2A及びリードとなる部分に印刷して乾燥後、全体を焼成(1000℃で1時間)して検知電極2A及びリードを形成した。
次に、選択反応材料を含むペーストを、検知電極2Aを覆うように印刷して乾燥し、選択反応層前駆体を形成した。選択反応材料を含むペーストは、1:1(モル比)で用意した酸化バナジウム(V2O5)粉末及び酸化ビスマス(Bi2O3)粉末、有機溶剤並びに分散剤をらいかい機で4時間分散混合した後、バインダ、粘度調整剤を所定量添加し、更に4時間湿式混合を行って作製した。
全体を焼成(750℃で10分間)し、ガスセンサ素子10Aを得た。さらにガスセンサ素子10Aをアンモニアガスセンサ100に組み付けた。但し、ガスセンサ素子10A先端の温度分布を測定するため、外側プロテクタ130および内側プロテクタ140は取り付けなかった。
全体を焼成(750℃で10分間)し、ガスセンサ素子10Aを得た。さらにガスセンサ素子10Aをアンモニアガスセンサ100に組み付けた。但し、ガスセンサ素子10A先端の温度分布を測定するため、外側プロテクタ130および内側プロテクタ140は取り付けなかった。
得られたアンモニアガスセンサ100について、ヒータ7に通電してガスセンサ素子10A先端を大気中で650℃に加熱し、その表面の温度分布を赤外線サーモグラフィを用いて測定した。赤外線サーモグラフィとして、高機能形熱画像計測装置(型番CPA8200、CHINO社製)を用いた。赤外線サーモグラフィによる画像を図6に示す。
図6の画像から、ヒータ7の先端の近傍位置で温度がTM℃となり、選択反応層8の先端で温度が約TM−20(℃)まで低下したことがわかった。同様に固体電解質層4の後端に向かって温度が低下し、位置R2(図3参照)の温度がTM−40(℃)になっていることがわかった。
従って、高温均熱領域HRを、固体電解質層4の軸方向に向かってR1とR2とで挟まれる固体電解質層4の外表面とみなし、この表面積を計算した。なお、選択反応層8の先端の温度がTM−40(℃)以内であったことから、固体電解質層4の先端をR1とみなした。
図6の画像から、ヒータ7の先端の近傍位置で温度がTM℃となり、選択反応層8の先端で温度が約TM−20(℃)まで低下したことがわかった。同様に固体電解質層4の後端に向かって温度が低下し、位置R2(図3参照)の温度がTM−40(℃)になっていることがわかった。
従って、高温均熱領域HRを、固体電解質層4の軸方向に向かってR1とR2とで挟まれる固体電解質層4の外表面とみなし、この表面積を計算した。なお、選択反応層8の先端の温度がTM−40(℃)以内であったことから、固体電解質層4の先端をR1とみなした。
一方、検知電極2Aの後端D2は位置R2より先端側に位置し、検知電極2Aの先端D1は位置R1より後端側に位置していた。そして、検知電極2Aの外表面の面積を計算し、高温均熱領域HRの面積で除したところ、検知電極2Aの面積は高温均熱領域HRの面積の80%と算出された。
又、検知電極2Aの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−30(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Aは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−30(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
又、検知電極2Aの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−30(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Aは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−30(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
検知電極2Aの後端D2の位置が、実施例1の場合より後端側となり、かつ位置R2より先端側になるように、検知電極2を形成したこと以外は実施例1と同様にして第1の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサを作製した。
検知電極2Aの面積は高温均熱領域HRの面積の90%と算出された。又、検知電極2Aの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−38(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Aは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−38(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
検知電極2Aの面積は高温均熱領域HRの面積の90%と算出された。又、検知電極2Aの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−38(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Aは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−38(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
上記第2の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサを作製した。検知電極2Bを矩形状とし、検知電極2Bの後端D2の位置を、実施例2の場合と同一とした。又、検知電極2Bの先端D1の位置を、ほぼ固体電解質層4の先端までとした。
検知電極2Bの面積は高温均熱領域HRの面積の15%と算出された。又、検知電極2Bの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−38(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Bは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−38(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
検知電極2Bの面積は高温均熱領域HRの面積の15%と算出された。又、検知電極2Bの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−38(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Bは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−38(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
検知電極2Bの後端D2の位置が実施例3の場合より先端側となり、かつ検知電極2Bの先端D1の位置が実施例3の場合より後端側になるようにし、さらに実施例3の場合より幅広になるよう検知電極2Bを形成したこと以外は実施例1と同様にして第2の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサを作製した。
検知電極2Bの面積は高温均熱領域HRの面積の15%と算出された。又、検知電極2Bの後端D2及び先端D1の温度(実際には、D2及びD1に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりそれぞれTM−20(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Bは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−20(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
検知電極2Bの面積は高温均熱領域HRの面積の15%と算出された。又、検知電極2Bの後端D2及び先端D1の温度(実際には、D2及びD1に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりそれぞれTM−20(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Bは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−20(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
上記第3の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサを作製した。検知電極2Cをリング状とし、検知電極2Cの後端D2及び先端D1の位置を、それぞれ実施例4の場合と同一とした。
検知電極2Cの面積は高温均熱領域HRの面積の40%と算出された。又、検知電極2Cの後端D2及び先端D1の温度(実際には、D2及びD1に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりそれぞれTM−20(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Cは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−20(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
検知電極2Cの面積は高温均熱領域HRの面積の40%と算出された。又、検知電極2Cの後端D2及び先端D1の温度(実際には、D2及びD1に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりそれぞれTM−20(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Cは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−20(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
<比較例1>
上記第1の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサにおいて、検知電極2Aの後端D2の位置がR2より後端側になるように、検知電極2Aを形成したこと以外は実施例1と同様にして起電力式アンモニアガスセンサを作製した。
検知電極2Aの面積は高温均熱領域HRの面積の120%と算出された。又、検知電極2Aの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−45(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Aは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−45(℃)の高温均熱領域に形成されていることになる。
上記第1の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサにおいて、検知電極2Aの後端D2の位置がR2より後端側になるように、検知電極2Aを形成したこと以外は実施例1と同様にして起電力式アンモニアガスセンサを作製した。
検知電極2Aの面積は高温均熱領域HRの面積の120%と算出された。又、検知電極2Aの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−45(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Aは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−45(℃)の高温均熱領域に形成されていることになる。
<比較例2>
上記第2の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサにおいて、検知電極2Bの幅を実施例3の検知電極に比べて狭くしたこと以外は実施例3と同様にして起電力式アンモニアガスセンサを作製した。
検知電極2Bの面積は高温均熱領域HRの面積の8%と算出された。又、検知電極2Bの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−38(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Bは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−38(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
上記第2の実施形態に係る起電力式アンモニアガスセンサにおいて、検知電極2Bの幅を実施例3の検知電極に比べて狭くしたこと以外は実施例3と同様にして起電力式アンモニアガスセンサを作製した。
検知電極2Bの面積は高温均熱領域HRの面積の8%と算出された。又、検知電極2Bの後端D2の温度(実際には、D2に相当する位置の選択反応層8表面の温度)は、上記サーモグラフィによりTM−38(℃)になっていることがわかった。つまり、検知電極2Bは、固体電解質層4の温度分布がTM〜TM−38(℃)の高温均熱領域内に形成されていることになる。
<評価>
センサ特性(感度)評価
1.センサの初期感度
モデルガス発生装置のガス流中に各実施例及び比較例のアンモニアガスセンサ(外側プロテクタ130および内側プロテクタ140を装着したもの)を取り付け、センサの初期感度の評価を行った。モデルガスのガス温度280℃、素子制御温度(ヒータ加熱)650℃とし、ガス組成をO2=10% CO2=5% H2O=5% N2=bal.とした。モデルガス発生装置から上記ガスを流したとき、検知電極と基準電極の間の電位差を測定し、ベース起電力とした。その後、モデルガスにNH3=100ppmを加えてガスを流したときの検知電極と基準電極の間の電位差を測定し、測定時の起電力とした。そして、測定時の起電力−ベース起電力(被測定ガスに曝されない時の起電力)でセンサの初期感度を定義した。
2.実機試験
各実施例及び比較例のアンモニアガスセンサを実機エンジンに取り付け、実際にエンジンを稼働させてセンサ特性を評価した。エンジンは排気量3.0Lディーゼルエンジンを用い、アンモニアガスセンサをエンジンのDOC(Diesel Oxidation Catalyst)マフラー及びDPF(黒煙除去装置)の後流に取付けた。
エンジンを10分間アイドル後、3000rpmで30分稼働する工程を1サイクルとし、このサイクルを500時間繰り返して実機試験を行った。
実機試験終了後、センサを実機エンジンから取り外し、上記したモデルガス発生装置のガス流中にセンサを再度取り付け、上記モデルガスを流して検知電極と基準電極の間の電位差を測定し、実機試験後のセンサの感度とした。センサの感度は、測定時の起電力−ベース起電力(被測定ガスに曝されない時の起電力)で定義した。
センサ特性(感度)評価
1.センサの初期感度
モデルガス発生装置のガス流中に各実施例及び比較例のアンモニアガスセンサ(外側プロテクタ130および内側プロテクタ140を装着したもの)を取り付け、センサの初期感度の評価を行った。モデルガスのガス温度280℃、素子制御温度(ヒータ加熱)650℃とし、ガス組成をO2=10% CO2=5% H2O=5% N2=bal.とした。モデルガス発生装置から上記ガスを流したとき、検知電極と基準電極の間の電位差を測定し、ベース起電力とした。その後、モデルガスにNH3=100ppmを加えてガスを流したときの検知電極と基準電極の間の電位差を測定し、測定時の起電力とした。そして、測定時の起電力−ベース起電力(被測定ガスに曝されない時の起電力)でセンサの初期感度を定義した。
2.実機試験
各実施例及び比較例のアンモニアガスセンサを実機エンジンに取り付け、実際にエンジンを稼働させてセンサ特性を評価した。エンジンは排気量3.0Lディーゼルエンジンを用い、アンモニアガスセンサをエンジンのDOC(Diesel Oxidation Catalyst)マフラー及びDPF(黒煙除去装置)の後流に取付けた。
エンジンを10分間アイドル後、3000rpmで30分稼働する工程を1サイクルとし、このサイクルを500時間繰り返して実機試験を行った。
実機試験終了後、センサを実機エンジンから取り外し、上記したモデルガス発生装置のガス流中にセンサを再度取り付け、上記モデルガスを流して検知電極と基準電極の間の電位差を測定し、実機試験後のセンサの感度とした。センサの感度は、測定時の起電力−ベース起電力(被測定ガスに曝されない時の起電力)で定義した。
モデルガスの流速をそれぞれ6m/s、20m/sとしたときの(初期)感度特性を図7に示す。
図7から明らかなように、各実施例の場合、モデルガスの流速が変化してもセンサ特性(感度)の変動は小さく、センサの感度が安定していることがわかった。
一方、固体電解質層の温度分布がTM〜TM−40(℃)の高温均熱領域からはみ出して検知電極を形成した比較例1の場合、ガスの流速が20m/sと高くなると、センサ感度が大きく変動した。これは、ガス流速が変化するのに伴い、高温均熱領域からはみ出した位置ではセンサ素子表面温度(固体電解質層の温度)が大幅に変化するためと考えられる。
以上より、固体電解質層の温度分布がTM〜TM−40(℃)の高温均熱領域内にのみ検知電極を形成すると、センサの感度が安定することがわかる。
図7から明らかなように、各実施例の場合、モデルガスの流速が変化してもセンサ特性(感度)の変動は小さく、センサの感度が安定していることがわかった。
一方、固体電解質層の温度分布がTM〜TM−40(℃)の高温均熱領域からはみ出して検知電極を形成した比較例1の場合、ガスの流速が20m/sと高くなると、センサ感度が大きく変動した。これは、ガス流速が変化するのに伴い、高温均熱領域からはみ出した位置ではセンサ素子表面温度(固体電解質層の温度)が大幅に変化するためと考えられる。
以上より、固体電解質層の温度分布がTM〜TM−40(℃)の高温均熱領域内にのみ検知電極を形成すると、センサの感度が安定することがわかる。
次に、実機による耐久試験前後の感度特性を図8に示す。
図8から明らかなように、各実施例の場合、耐久試験前後のセンサ特性(感度)の変動は小さく、耐久性に優れることがわかった。
一方、検知電極の面積が高温均熱領域の面積の10%未満である比較例2の場合、耐久試験後にセンサ特性(感度)が大幅に劣化した。これは、検知電極の面積が小さいと、耐久試験に伴う電極の変化や、電極への被毒物の付着等の影響が顕著になるためと考えられる。
以上より、検知電極の面積を高温均熱領域の面積の10%以上とすると、耐久性(長期安定性)に優れることがわかる。
なお、図7、図8の結果を表1にまとめた。
図8から明らかなように、各実施例の場合、耐久試験前後のセンサ特性(感度)の変動は小さく、耐久性に優れることがわかった。
一方、検知電極の面積が高温均熱領域の面積の10%未満である比較例2の場合、耐久試験後にセンサ特性(感度)が大幅に劣化した。これは、検知電極の面積が小さいと、耐久試験に伴う電極の変化や、電極への被毒物の付着等の影響が顕著になるためと考えられる。
以上より、検知電極の面積を高温均熱領域の面積の10%以上とすると、耐久性(長期安定性)に優れることがわかる。
なお、図7、図8の結果を表1にまとめた。
2A〜2C 検知電極
4 固体電解質層
6 基準電極
7 ヒータ
8 選択反応層
10A〜10C ガスセンサ素子
100 アンモニアガスセンサ
HR 高温均熱領域
EA 検知電極の形成領域
D1 検知電極の先端
D2 検知電極の後端
R1 高温均熱領域の先端
R2 高温均熱領域の後端
RM 最高温度TMとなる位置
4 固体電解質層
6 基準電極
7 ヒータ
8 選択反応層
10A〜10C ガスセンサ素子
100 アンモニアガスセンサ
HR 高温均熱領域
EA 検知電極の形成領域
D1 検知電極の先端
D2 検知電極の後端
R1 高温均熱領域の先端
R2 高温均熱領域の後端
RM 最高温度TMとなる位置
Claims (3)
- 有底筒状をなす酸素イオン伝導性の固体電解質層と、前記固体電解質層の外面に設けられる検知電極と、前記検知電極を覆う選択反応層と、前記固体電解質層の内面に設けられる基準電極と、前記固体電解質層の内側に収容されて該固体電解質層を加熱するヒータとを有し、
前記ヒータで加熱した時の前記固体電解質層の最高温度をTM℃とした場合、前記固体電解質層の温度分布がTM〜TM−40(℃)の高温均熱領域内にのみ前記検知電極が形成され、かつ前記検知電極の面積が前記高温均熱領域の面積の10%以上であるアンモニアガスセンサ。 - 前記固体電解質層を前記ヒータで加熱した時、前記検知電極が形成された部分の前記固体電解質層の最高温度がTM℃となる請求項1に記載のアンモニアガスセンサ。
- 前記選択反応層は、AxMyOzで表される酸化物(Aは1種以上の金属であり;Mはバナジウム、タングステン又はモリブデンであり;x、y、zは原子比である)を含む請求項1又は2に記載のアンモニアガスセンサ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009159515A JP2011013169A (ja) | 2009-07-06 | 2009-07-06 | アンモニアガスセンサ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009159515A JP2011013169A (ja) | 2009-07-06 | 2009-07-06 | アンモニアガスセンサ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011013169A true JP2011013169A (ja) | 2011-01-20 |
Family
ID=43592213
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2009159515A Withdrawn JP2011013169A (ja) | 2009-07-06 | 2009-07-06 | アンモニアガスセンサ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2011013169A (ja) |
-
2009
- 2009-07-06 JP JP2009159515A patent/JP2011013169A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20121002 |