以下、本発明の実施の形態による可変容量型斜板式液圧回転機を、可変容量型の斜板式油圧ポンプに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態で採用した可変容量型の斜板式油圧ポンプ(以下、油圧ポンプ1という)、2は該油圧ポンプ1の外殻を構成するケーシングで、該ケーシング2は、一端側がフロント底部3Aとなった段付筒状のケーシング本体3と、該ケーシング本体3の他端側を閉塞するようにケーシング本体3に設けられたリヤケーシング4とにより構成されている。
また、ケーシング2のケーシング本体3には、図1に示すようにフロント底部3Aから軸線方向に離間した位置にアクチュエータ取付部3Bが設けられ、該アクチュエータ取付部3Bは、ケーシング本体3の径方向外側へと突出している。そして、アクチュエータ取付部3B内には、図1、図3に示すように後述の傾転アクチュエータ16等が設けられている。
また、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bには、後述するレギュレータ24との間に図1、図3に示す如く略四角形状をなした開口部3Cが形成され、該開口部3C内には後述するフィードバックリンク28の回動レバー29が枢軸ピン30を介して回動可能に取付けられている。一方、ケーシング2のリヤケーシング4には、後述の給排通路14,15等が形成され、これらの給排通路14,15は、後述の弁板13を介してシリンダ7内へと作動油(圧油)を給排させるものである。
5はケーシング2内に回転可能に設けられた回転軸で、該回転軸5は、軸線方向の一側がケーシング本体3のフロント底部3A内に軸受等を介して回転可能に取付けられ、他側はリヤケーシング4に軸受等を介して回転可能に取付けられている。そして、ケーシング本体3のフロント底部3Aから軸線方向に突出する回転軸5の一側(突出端側)には、例えば油圧ショベルの原動機が動力伝達機構(図示せず)等を介して連結され、この原動機により回転軸5は回転駆動される。
6はケーシング2内に位置して回転軸5の外周側に設けられたシリンダブロックで、該シリンダブロック6には、周方向に離間して軸線方向に延びる複数(通常は奇数個)のシリンダ7が穿設されている。そして、シリンダブロック6は、回転軸5の外周側にスプライン結合され、回転軸5と一体に回転駆動されるものである。
8はシリンダブロック6の各シリンダ7内に摺動可能に挿嵌された複数(通常は奇数個)のピストンで、該各ピストン8は、シリンダブロック6の回転によってそれぞれのシリンダ7内を往復動し、後述の弁板13側から各シリンダ7内に作動油を吸込みつつ、これを高圧の圧油として吐出させるものである。
この場合、これらのピストン8は、図2に示すように回転軸5の上側となる位置でシリンダ7から大きく突出(伸長)した下死点位置となり、回転軸5の下側となる位置ではシリンダ7内へと縮小した上死点位置となる。そして、シリンダブロック6が1回転する間に、各ピストン8はシリンダ7内を上死点から下死点に向けて摺動変位する吸入行程と、下死点から上死点に向けて摺動変位する吐出行程とを繰返すことになる。
そして、シリンダブロック6の半回転分に相当するピストン8の吸入行程では、後述の給排通路14側からシリンダ7内に作動油を吸込む。また、シリンダブロック6の残りの半回転分に相当するピストン8の吐出行程では、ピストン8が各シリンダ7内の油液を高圧の圧油として後述の給排通路15側から吐出配管(図示せず)内へと吐出させるものである。
9は各ピストン8の突出側端部に揺動可能に設けられた複数のシューで、該各シュー9は、ピストン8からの押付力(油圧力)で後述する斜板11の平滑面11Aに押圧される。そして、各シュー9は、この状態で回転軸5、シリンダブロック6およびピストン8と一緒に回転することにより、リング状軌跡を描くように平滑面11A上を摺動するものである。
10はケーシング本体3のフロント底部3Aに設けられた斜板支持体で、該斜板支持体10は、図1、図2に示す如く回転軸5の周囲に位置して斜板11の裏面側に配置され、ケーシング本体3のフロント底部3Aに固定されている。そして、斜板支持体10には、斜板11を傾転可能に支持する一対の傾転摺動面10Aが凹湾曲面として形成され、該各傾転摺動面10Aは、図1に示すように回転軸5を挟んだ径方向で互いに離間して配置されている。
11はケーシング2内に傾転可能に設けられた斜板で、該斜板11は、ケーシング本体3のフロント底部3A側に斜板支持体10を介して取付けられ、その表面側が摺動面としての平滑面11Aとなっている。また、斜板11には、その中央部に回転軸5が隙間をもって挿通される挿通穴11Bが穿設されている。さらに、斜板11の背面側には、図4に示すように一対の脚部11Cが設けられ、該各脚部11Cは、斜板支持体10の各傾転摺動面10A上に傾転可能に当接されるものである。
ここで、斜板11は、斜板支持体10の各傾転摺動面10Aにより各脚部11Cを介して傾転可能に支持され、この状態で後述の傾転アクチュエータ16により図2〜図4中の矢示A,B方向に傾転駆動される。そして、斜板11は、このときの傾転角に応じて当該油圧ポンプ1の吐出容量を変化させる容量可変部を構成するものである。
12は斜板11の側部に一体形成された傾転レバーで、該傾転レバー12は、図1、図4に示す如く斜板11の側部から後述のサーボピストン18に向けて延設されている。そして、傾転レバー12の先端側には、突出ピン12Aが一体に設けられ、この突出ピン12Aには、後述のサーボピストン18がスライド板21を介して連結されるものである。
13はリヤケーシング4に固定して設けられた弁板で、該弁板13は、シリンダブロック6の端面に摺接する切換弁板を構成している。このため、弁板13には、図1に示すように回転軸5の周囲を眉形状をなして延びる一対の給排ポート13A,13Bが形成されている。そして、これらの給排ポート13A,13Bのうち、例えば給排ポート13Aは低圧側の吸込ポートとなり、給排ポート13Bは高圧側の吐出ポートを構成するものである。
14,15はリヤケーシング4に形成された一対の給排通路で、該給排通路14,15は、作動油の吸込みと吐出に用いられるものである。即ち、給排通路14,15のうち低圧側の給排通路14は、弁板13の給排ポート13Aに連通すると共に、タンク(図示せず)側に接続されるものである。また、高圧側の給排通路15は、弁板13の給排ポート13Bに連通すると共に、例えば油圧ポンプ1用の吐出配管等に接続されるものである。
そして、ケーシング2内で回転軸5を回転駆動すると、シリンダブロック6の回転に伴って各シリンダ7内をピストン8が往復動し、これらのピストン8が給排通路14側からシリンダ7内に作動油を吸込みつつ、給排通路15側に圧油を吐出するものである。
16はケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B内に設けられた傾転アクチュエータで、該傾転アクチュエータ16は、図1、図3に示すようにシリンダブロック6の径方向外側に位置してケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに形成された傾転制御シリンダとしてのシリンダ穴17A,17Bと、該シリンダ穴17A,17B内に摺動可能に挿嵌された後述のサーボピストン18とから大略構成されている。そして、傾転アクチュエータ16は、サーボピストン18により斜板11を矢示A,B方向に傾転駆動するものである。
18は傾転アクチュエータ16の可動部を構成するサーボピストンで、該サーボピストン18は、図3に示す如く大径部18Aと小径部18Bとからなる段付ピストンとして形成されている。そして、サーボピストン18は、大径部18Aがアクチュエータ取付部3Bのシリンダ穴17A内に摺動可能に挿嵌され、小径部18Bがシリンダ穴17B内に摺動可能に挿嵌されている。
また、サーボピストン18の大径部18Aには、その径方向一側に後述の一側嵌合溝22が凹設され、径方向の他側位置には後述の他側嵌合溝23と凹溝33とが凹設されている。さらに、サーボピストン18の大径部18Aには、図4〜図8に示すように、一側嵌合溝22、他側嵌合溝23を避けた位置にシール用の周溝18A1 が複数個互いに離間して形成され、小径部18Bにも、シール用の周溝18B1 が複数個互いに離間して形成されている。
ここで、サーボピストン18の大径部18Aは、図3に示す如くシリンダ穴17A内に大径の液圧室19Aを画成し、この液圧室19Aは、蓋板20Aによりシリンダ穴17Aの外側から閉塞されている。また、サーボピストン18の小径部18Bは、シリンダ穴17B内に小径の液圧室19Bを画成し、この液圧室19Bは、蓋板20Bによりシリンダ穴17Bの外側から閉塞されている。
そして、傾転アクチュエータ16は、液圧室19A,19Bに制御圧管路(図示せず)を介して傾転制御圧が給排されると、このときの傾転制御圧に従ってサーボピストン18をシリンダ穴17A,17Bの軸線方向に摺動変位させる。また、サーボピストン18の軸方向変位は、後述のスライド板21から傾転レバー12を介して斜板11へと伝達され、これにより斜板11は、サーボピストン18に追従して矢示A,B方向に傾転駆動されるものである。
21はサーボピストン18の大径部18Aのうち、その径方向一側に摺動可能に挿嵌して設けられたスライド板で、該スライド板21は、図5に示すように略長方形をなす板体(プレート)として形成され、後述の一側嵌合溝22内でサーボピストン18を横切る方向にスライド(摺動変位)するものである。そして、スライド板21の中心部には、傾転レバー12の突出ピン12Aが回動可能に挿嵌される貫通穴21Aが穿設されている。
即ち、スライド板21は、貫通穴21A内に傾転レバー12の突出ピン12Aを予め挿嵌した状態でサーボピストン18の一側嵌合溝22内に取付けられる。そして、この状態でスライド板21は、サーボピストン18の軸方向変位を傾転レバー12を介して斜板11へと伝達し、これにより斜板11はサーボピストン18に追従して矢示A,B方向に傾転駆動されるものである。
22はサーボピストン18の大径部18Aに設けられた一側嵌合溝で、該一側嵌合溝22は、図3ないし図5、図8に示す如く大径部18Aの外周側を径方向一側から部分的に切欠くことにより断面コ字形状をなす平行溝として形成されている。そして、一側嵌合溝22内には、サーボピストン18の軸方向変位を傾転レバー12を介して斜板11に伝えるため、前述した一側部材としてのスライド板21が摺動可能に挿嵌して取付けられるものである。
ここで、一側嵌合溝22は、図7、図8に示すように軸線O1 −O1 に沿った方向での幅寸法が溝幅寸法aとなるように形成され、後述の他側嵌合溝23、凹溝33と径方向(上,下)で対向する位置に配置されている。そして、一側嵌合溝22は、図3〜図5に示すようにスライド板21に対応する溝深さを有し、後述の他側嵌合溝23、凹溝33よりも大なる溝深さを有している。
23はサーボピストン18の大径部18Aのうち、その径方向他側に設けられた他側嵌合溝で、この他側嵌合溝23は、図3ないし図8に示す如く大径部18Aの外周側を部分的に切欠くことにより形成された断面コ字形状の切欠き溝からなり、大径部18Aの外周面のうち、サーボピストン18の軸線O1 −O1 を挟んで一側嵌合溝22と径方向で対向する径方向の他側位置に配置されている。
ここで、他側嵌合溝23は、図6ないし図8に示す如く、サーボピストン18の軸線O1 −O1 を横切る方向(軸線方向と直交する方向)に延びた平行溝部23Aと、該平行溝部23Aの両端側から大径部18Aの周方向へとテーパ状に拡開して形成された一対のテーパ溝部23Bとにより構成されている。そして、他側嵌合溝23の平行溝部23Aと各テーパ溝部23Bとは、図6、図7に示すように軸線O1 −O1 を中心にして対称な形状をなすように形成されている。また、他側嵌合溝23の平行溝部23Aは、溝幅方向の両側が側壁面23A1 ,23A2 となり、この側壁面23A1 ,23A2 は、サーボピストン18の軸線O1 −O1 を横切る方向で互いに平行に延びている。
また、他側嵌合溝23の平行溝部23Aは溝幅寸法bを有し、この溝幅寸法bは、前述した一側嵌合溝22の溝幅寸法a(a>b)よりも小さく形成されている。そして、この平行溝部23A内には、後述する拡開ばね32の各凸湾曲板部32B,32Cが弾性変形状態で挿嵌され、平行溝部23Aの幅方向両側(側壁面23A1 ,23A2 )は、サーボピストン18の軸方向変位を凸湾曲板部32B,32Cを介して拡開ばね32に伝えるものである。
一方、他側嵌合溝23の各テーパ溝部23Bは、拡開ばね32の凸湾曲板部32B,32Cを平行溝部23A内に向けて大径部18Aの周方向一側または他側から円滑に案内できるようにするため、その平面形状が等脚台形状をなして形成されている。そして、このテーパ溝部23Bは、サーボピストン18が図6に示す如く軸線O1 −O1 に沿って軸線方向に変位するときに、拡開ばね32の途中部位(凸湾曲板部32B,32C以外の部位)が他側嵌合溝23の側壁に接触、干渉するのを防ぐ機能も有している。
24は傾転アクチュエータ16に傾転制御圧を給排するレギュレータで、該レギュレータ24は、図1に示す如くアクチュエータ取付部3Bの側部に着脱可能に設けられた弁ケース25を有し、該弁ケース25は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに設けた開口部3Cを外側から覆っている。そして、レギュレータ24の弁ケース25内には、制御スリーブ26が摺動可能に挿嵌されるスリーブ摺動穴(図示せず)が形成され、制御スリーブ26内にはスプール27が摺動可能に挿嵌されている。
即ち、レギュレータ24は、図1に示すように制御スリーブ26内にスプール27を有した油圧サーボ弁として構成されている。そして、スプール27の一端側には、弁ばね(図示せず)が設けられ、スプール27の他端側には、油圧パイロット部(図示せず)が設けられるものである。
一方、制御スリーブ26には、図4ないし図6に示す如く、軸線方向一側に位置して周方向へと円弧状に延び、後述の係合ピン31が係合される切欠き部26Aと、該切欠き部26Aから軸線方向他側へと離間して制御スリーブ26の径方向に貫通した複数の油穴26B,26C,26D等とが設けられている。そして、制御スリーブ26は、図4、図6に示す軸線O2 −O2 に沿って軸線方向に延び、後述のフィードバックリンク28により軸線方向に変位(フィードバック制御)されるものである。また、制御スリーブ26の軸線O2 −O2 は、サーボピストン18の軸線O1 −O1 に対してほぼ平行に配置されている。
28はレギュレータ24をフィードバック制御するためのフィードバックリンクで、該フィードバックリンク28は、図1、図3ないし図6に示すようにレギュレータ24の制御スリーブ26とサーボピストン18との間に設けられ、斜板11の傾転動作に追従させてレギュレータ24をフィードバック制御するフィードバック機構を構成するものである。
そして、フィードバックリンク28は、図1、図3ないし図6に示す如く後述の回動レバー29、支持ピンとしての枢軸ピン30、係合ピン31および拡開ばね32により構成されている。また、回動レバー29および拡開ばね32等は、図1に示すようにアクチュエータ取付部3Bとレギュレータ24の弁ケース25との間を傾転レバー12とほぼ平行に延びるように配設され、枢軸ピン30を中心にして回動されるものである。
29はフィードバックリンク28の一部を構成する剛性リンク部材としての回動レバーで、該回動レバー29は、鋼材等の剛性材料により図4ないし図6に示す如く段付のレバー体として形成され、その長さ方向一側には、後述する係合ピン31の両端側に向け二又状をなして延びる一対のピン支持部29A,29B(図5参照)が一体に形成されている。そして、該ピン支持部29A,29B内には、係合ピン31の両端側が圧入等の手段を用いて挿入され、ピン支持部29A,29Bは、係合ピン31を両持ち状態で支持するものである。
また、回動レバー29の長さ方向他側には、円柱状のヘッド部29Cが下向きに突出して設けられ、このヘッド部29Cには、後述する拡開ばね32の折曲げ部32Aが巻回状態で固定される。そして、回動レバー29の長さ方向中間部には、枢軸ピン30が上,下に貫通して挿嵌されるピン孔29Dが穿設され、回動レバー29は、図1に示す如くアクチュエータ取付部3Bの開口部3C内に枢軸ピン30を介して回動可能に取付けられるものである。
さらに、回動レバー29には、ヘッド部29Cとピン孔29Dとの間に位置してセンサ取付穴29Eが形成され、このセンサ取付穴29E内には、傾転角センサ(図示せず)等が取付けられる。そして、この傾転角センサは、図1に示すアクチュエータ取付部3Bの壁面等に固定して設けた被検出体(図示せず)との間で回動レバー29の回動角を検知し、これによって斜板11の傾転角を検出するものである。
31は回動レバー29のピン支持部29A,29Bに両端が固定して取付けられる係合ピンで、該係合ピン31は、回動レバー29のピン支持部29A,29Bにより両持ち状態で支持され、軸線方向中間部が制御スリーブ26の切欠き部26Aに径方向から差込むようにして連結(係合)されるものである。
そして、回動レバー29が枢軸ピン30を中心にして回動(揺動)されるときに、係合ピン31は、回動レバー29の動きを制御スリーブ26に伝え、これによって制御スリーブ26を、レギュレータ24の弁ケース25内で軸線方向(例えば、図6に示す軸線O2 −O2 の方向)に摺動変位させるものである。
32は回動レバー29と共にフィードバックリンク28を構成する他側部材としての拡開ばね部材(以下、拡開ばね32という)で、該拡開ばね32は、ばね性を有する細長い金属ばね板を図4ないし図6に示す如く長さ方向中間部で略U字状に折曲げることにより形成され、その基端側が略U字状またはC字状の折曲げ部32Aとなっている。また、拡開ばね32の先端側は、互いに同一の曲率で円弧状に湾曲して形成された一対の凸湾曲板部32B,32Cとなり、これらの凸湾曲板部32B,32Cは、互いに離間する方向に二又状をなして拡開する拡開部を構成している。
そして、拡開ばね32の折曲げ部32Aは、回動レバー29のヘッド部29Cに巻付けるように嵌合した状態で、このヘッド部29Cに止めピン等を用いて固定される。これにより、拡開ばね32は、回動レバー29のヘッド部29Cに廻止め状態で、かつ抜止め状態に保持されるものである。
一方、拡開ばね32の凸湾曲板部32B,32Cは、サーボピストン18の各テーパ溝部23Bのうちいずれか一方のテーパ溝部23B側から他側嵌合溝23内に差し込まれ、この状態で他側嵌合溝23の平行溝部23A内に弾性的な付勢力をもって嵌合(挿嵌)される。そして、サーボピストン18の軸方向変位は、他側嵌合溝23の平行溝部23Aから凸湾曲板部32B,32Cを介して拡開ばね32に伝えられる。これにより、拡開ばね32と一体化された回動レバー29は、サーボピストン18の変位に追従して枢軸ピン30を中心に回動されるものである。
即ち、サーボピストン18が軸線O1 −O1 に沿って図6中の矢示A方向に変位するときには、拡開ばね32の凸湾曲板部32Bが他側嵌合溝23の平行溝部23A(側壁面23A1 )により同方向に押動され、このときの押動力が拡開ばね32の凸湾曲板部32Bから折曲げ部32A、止めピン35を介して回動レバー29に伝えられる。この結果、回動レバー29が枢軸ピン30を中心にして回動されることにより、制御スリーブ26は、軸線O2 −O2 に沿って図6中の矢示C方向に変位するものである。
一方、サーボピストン18が軸線O1 −O1 に沿って図6中の矢示B方向に変位するときには、拡開ばね32の凸湾曲板部32Cが平行溝部23A(側壁面23A2 )により同方向に押動され、このときの押動力が拡開ばね32の凸湾曲板部32Cから折曲げ部32A、止めピン35を介して回動レバー29に伝えられる。この結果、回動レバー29が枢軸ピン30を中心にして回動されることにより、制御スリーブ26は、軸線O2 −O2 に沿って図6中の矢示D方向に変位するものである。
ここで、基準線K−Kを例に挙げて説明すると、この基準線K−Kは、枢軸ピン30の中心を通ってサーボピストン18の軸線O1 −O1 と直交し、制御スリーブ26の軸線O2 −O2 にも直交している。そして、回動レバー29および拡開ばね32等からなるフィードバックリンク28は、サーボピストン18の軸方向変位に追従して基準線K−Kの両側に枢軸ピン30を中心にして揺動される。
この結果、サーボピストン18が図6中の矢示A方向に変位するときには、制御スリーブ26がフィードバックリンク28により矢示C方向に変位される。また、サーボピストン18が矢示B方向に変位するときには、制御スリーブ26がフィードバックリンク28により矢示D方向に変位されるものである。
33はサーボピストン18の大径部18Aのうち、その径方向他側に設けられた肉削ぎ溝としての凹溝で、この凹溝33は、図3ないし図8に示す如く大径部18Aの外周面のうち、サーボピストン18の軸線O1 −O1 を挟んで一側嵌合溝22と径方向で対向する径方向の他側位置に配置され、他側嵌合溝23からは予め決められた寸法分だけ離間している。
ここで、凹溝33は、一側嵌合溝22と他側嵌合溝23との溝幅寸法a,bの差(a−b)を補うように肉削ぎして形成され、その溝幅寸法cは、一側嵌合溝22の溝幅寸法a(a>c)よりも小さくなっている。即ち、凹溝33は、後述の如くサーボピストン18を熱処理したときの熱変形を矯正するために、その溝幅寸法cは、一側嵌合溝22と他側嵌合溝23との寸法差(a−b)に基づいて決められるものである。
そして、この場合の凹溝33は、サーボピストン18の軸線方向とは直交する方向で他側嵌合溝23と並行して延びるように、大径部18Aの外周側を部分的に切欠くことにより断面コ字形状をなす平行溝として形成されている。これにより凹溝33は、その平面形状が図7に示す如く長方形状をなし、断面形状は図8に示す如くコ字状をなしている。
また、凹溝33は、図6、図7に示すように軸線O1 −O1 を中心にして左,右方向(または、上,下方向)で対称な形状をなすように形成されている。そして、この点は、一側嵌合溝22、他側嵌合溝23についても同様であり、軸線O1 −O1 を中心にして対称な形状を有しているものである。なお、凹溝33は、一側嵌合溝22、他側嵌合溝23と同様に、例えば鋳型等の成形型を用いて形成してもよく、あるいは鍛造、切削加工等の手段を用いて形成してもよいものである。
本実施の形態による可変容量型斜板式の油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その容量制御動作について説明する。
まず、外部の指令装置(図示せず)から出力される指令信号がほぼ一定に保たれる間は、レギュレータ24のスプール27が中立位置に保持され、傾転アクチュエータ16により油圧ポンプ1の斜板11は図示の如きほぼ一定の傾転角に保たれる。
次に、この状態で斜板11の傾転角を大とすべき指令信号を前記指令装置から出力したときには、レギュレータ24の油圧パイロット部(図示せず)に供給するパイロット圧が上昇されるために、レギュレータ24のスプール27は、弁ばね(図示せず)に抗して中立位置から切換えられる。これにより、傾転アクチュエータ16は、液圧室19Aの圧油がタンク側に排出され、液圧室19B内には前記制御圧管路から傾転制御圧が供給される。
このため、サーボピストン18は、液圧室19A,19B間の圧力差により矢示A方向に摺動変位し、この変位はスライド板21、傾転レバー12を介して斜板11に伝えられる。これにより、油圧ポンプ1の斜板11は、サーボピストン18に追従して傾転角が大きくなるように傾転駆動される。
また、レギュレータ24の制御スリーブ26は、サーボピストン18の動きがフィードバックリンク28を介して伝えられることにより、枢軸ピン30を中心にして図6中の矢示C方向に変位され、制御スリーブ26をスプール27と同方向に摺動変位させるように、レギュレータ24はフィードバック制御される。
そして、斜板11の傾転角が前記指令信号による大傾転指令に対応した角度となったときには、制御スリーブ26の変位によってレギュレータ24は前述した中立位置に復帰するようになり、油圧ポンプ1による圧油の吐出量は、前記指令信号に対応した大なる吐出量となって容量制御が行われるものである。
一方、斜板11の傾転角を小とすべき指令信号が出力されたときには、傾転アクチュエータ16の液圧室19A,19Bにそれぞれ傾転制御圧が供給され、サーボピストン18は、液圧室19A,19B間の受圧面積差によって矢示B方向に摺動変位する。そして、サーボピストン18の変位は、スライド板21、傾転レバー12を介して斜板11に伝えられることにより、油圧ポンプ1の斜板11は、傾転角が小さくなるように傾転駆動される。
また、レギュレータ24の制御スリーブ26は、サーボピストン18の動きがフィードバックリンク28を介して伝えられることにより、枢軸ピン30を中心にして図6中の矢示D方向に変位され、制御スリーブ26をスプール27と同方向に摺動変位させるように、レギュレータ24はフィードバック制御される。
そして、斜板11の傾転角が前記指令信号による小傾転指令に対応した角度となったときには、制御スリーブ26の変位によりレギュレータ24は、中立位置へと復帰するようになり、油圧ポンプ1による圧油の吐出量は、前記指令信号に対応した小なる吐出量となって容量制御が行われるものである。
ここで、フィードバックリンク28は、サーボピストン18の動きをレギュレータ24の制御スリーブ26に伝えるため、剛性材料からなる回動レバー29と、ばね材からなる拡開ばね32とにより構成されている。そして、サーボピストン18が図6に示す如く矢示A方向に変位するときには、他側嵌合溝23の平行溝部23A(側壁面23A1 )により拡開ばね32の凸湾曲板部32Bを同方向に押動でき、このときの押動力を拡開ばね32の凸湾曲板部32Bから折曲げ部32A、止めピン35を介して回動レバー29に伝えることにより、枢軸ピン30を中心にして回動レバー29を揺動(回動)しつつ、制御スリーブ26を軸線O2 −O2 に沿って矢示C方向に変位させることができる。
この間、拡開ばね32の凸湾曲板部32Bは、その円弧面(凸湾曲面)が平行溝部23Aの側壁面23A1 に当接するため、両者の当たり具合を滑らかにすることができ、サーボピストン18の軸方向変位を、他側嵌合溝23の側壁面23A1 を介した矢示A方向の押動力として拡開ばね32から回動レバー29に安定して取出すことができる。
また、このときに拡開ばね32の凸湾曲板部32Cは、その円弧面(凸湾曲面)が平行溝部23Aの側壁面23A2 に当接し続けることにより、これらの円弧形状をなす凸湾曲板部32B,32Cを、平行溝部23Aの側壁面23A1 ,23A2 に対しそれぞれ弾性的に当接させることができ、両者の間にガタ付きや隙間等が発生するのを抑えることができる。
一方、サーボピストン18が矢示B方向に変位するときには、他側嵌合溝23の平行溝部23A(側壁面23A2 )により拡開ばね32の凸湾曲板部32Cを同方向に押動でき、このときの押動力を拡開ばね32の凸湾曲板部32Cから折曲げ部32A、止めピン35を介して回動レバー29に伝えることにより、枢軸ピン30を中心にして回動レバー29を揺動(回動)しつつ、制御スリーブ26を軸線O2 −O2 に沿って矢示D方向に変位させることができる。
そして、この場合でも、拡開ばね32の凸湾曲板部32Cは、その円弧面(凸湾曲面)が平行溝部23Aの側壁面23A2 に当接するため、両者の当たり具合を滑らかにすることができ、サーボピストン18の軸方向変位を、他側嵌合溝23の側壁面23A2 を介した矢示B方向の押動力として拡開ばね32から回動レバー29に安定して取出すことができる。
また、このときに拡開ばね32の凸湾曲板部32Bは、その円弧面(凸湾曲面)が平行溝部23Aの側壁面23A1 に当接し続けることにより、これらの円弧形状をなす凸湾曲板部32B,32Cを、平行溝部23Aの側壁面23A1 ,23A2 に対しそれぞれ弾性的に当接させることができ、両者の間にガタ付きや隙間等が発生するのを抑えることができる。
また、サーボピストン18の動きをレギュレータ24の制御スリーブ26に伝えるフィードバックリンク28を、剛性材料からなる回動レバー29と、ばね材からなる拡開ばね32とにより構成しているので、サーボピストン18からの高周波振動を、ばね性をもった拡開ばね32により減衰でき、剛性材料からなる回動レバー29が微小振動を繰返すのを抑えることができる。
ところで、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18は、シリンダ穴17A,17B内に摺動可能に挿嵌され、斜板11を傾転駆動するときにシリンダ穴17A,17B内で往復動を繰り返す部材である。また、大径部18Aの外周側に凹設した一側嵌合溝22内には、スライド板21が摺動可能に挿嵌され、他側嵌合溝23内には拡開ばね32の凸湾曲板部32B,32Cが弾性変形状態で挿嵌されている。
このため、サーボピストン18を製造するときには摩耗対策が必要となり、大径部18A,小径部18Bの外周面および各嵌合溝22,23の周壁面等を熱処理により硬化させて、耐摩耗性を高めるようにしている。しかし、熱処理を施したサーボピストン18は、その外周側に非対称に配置された一側嵌合溝22と他側嵌合溝23とに影響されて熱変形することがある。
即ち、図11に示す比較例のように、サーボピストン18′の大径部18A側に一側嵌合溝22′と他側嵌合溝23′とを設け、両者の位置を軸線O1 −O1 を挟んで非対称となる位置関係に配設した場合に、このようなサーボピストン18′に熱処理を施すと、図11中に示す仮想曲線34に沿ってサーボピストン18′全体が曲がるように熱変形してしまう。そして、このときの変形量が大きくなると、傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17A,17B内にサーボピストン18′を挿嵌するのが難しくなる。
そこで、本実施の形態では、サーボピストン18の軸線O1 −O1 を挟んで径方向の一側には溝幅寸法aの一側嵌合溝22を設け、これと対向する径方向他側の位置には、溝幅寸法aよりも小さい溝幅寸法bの他側嵌合溝23と、他側嵌合溝23から離間して配置され一側嵌合溝22と他側嵌合溝23との溝幅寸法a,bの差(a−b)を補うように肉削ぎして形成された凹溝33とを設ける構成としている。
即ち、サーボピストン18の径方向一側には溝幅寸法aの一側嵌合溝22を設け、径方向他側の位置に溝幅寸法bの他側嵌合溝23を設けた場合には、サーボピストン18の径方向一側と径方向他側とで、その外形状が大きく異なって非対称な形状となってしまう。しかし、サーボピストン18の径方向他側には、他側嵌合溝23に隣接して凹溝33を設けることにより、外形状のアンバランスを矯正することができる。
そして、サーボピストン18の外形状を凹溝33で矯正することにより、サーボピストン18を熱処理したときの熱変形を小さく抑えることができる。この結果、熱処理後のサーボピストン18を傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17A,17B内に円滑に挿嵌することが可能となるので、製品の歩留りを向上することができる。
しかも、サーボピストン18の熱処理により、大径部18A,小径部18Bの外周面および各嵌合溝22,23の周壁面等を熱硬化させ、耐摩耗性を高めることができるので、サーボピストン18の耐久性、寿命等を確実に高めることができ、その信頼性も向上することができる。
また、他側嵌合溝23は、平行溝部23Aと一対のテーパ溝部23Bとにより構成しているので、拡開ばね32の先端側(二又状の凸湾曲板部32B,32C)を、一対のテーパ溝部23Bのいずれか一方側から平行溝部23A内へと案内するように組付けることができ、拡開ばね32の先端側をサーボピストン18の他側嵌合溝23(平行溝部23A)内に撓み変形状態で安定して嵌合させることができる。そして、このときの組付け方向を一対のテーパ溝部23Bにより自由に選択することができ、汎用性を高めることができる。
さらに、拡開ばね32の先端側をサーボピストン18の他側嵌合溝23(平行溝部23A)内に組付けた状態では、例えばサーボピストン18の変位方向が矢示A方向と矢示B方向とのいずれに切換るときにも、拡開ばね32の凸湾曲板部32B,32Cを、平行溝部23Aの側壁面23A1 ,23A2 に対しそれぞれ弾性的に当接させることができ、両者の間にガタ付きや隙間等が発生するのを抑えることができる。
次に、図9および図10は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、肉削ぎ溝を、サーボピストンの軸線方向とは直交する方向で他側嵌合溝と並行して延びる複数の凹溝により構成したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、41は本実施の形態で採用した複数の凹溝で、該各凹溝41は、第1の実施の形態で述べた凹溝33とほぼ同様に肉削ぎ溝として構成され、一側嵌合溝22と他側嵌合溝23との溝幅寸法a,bの差(a−b)を補うように肉削ぎして形成される。しかし、この場合の凹溝41は、大径部18Aの外周面のうち、サーボピストン18の軸線O1 −O1 を挟んで一側嵌合溝22と径方向で対向する他側位置に複数(例えば、2個)設けている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
かくして、このように構成される第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができ、肉削ぎ溝としての凹溝41を設けることにより、サーボピストン18の熱変形を小さく抑えて低減することができる。
特に、第2の実施の形態では、肉削ぎ溝をサーボピストン18の外周側で軸線方向と直交する方向に延びる複数の凹溝41により構成でき、これらの凹溝41の個数、溝幅寸法を適宜に選択することによって、一側嵌合溝22と他側嵌合溝23との溝幅寸法a,bの差を容易に補うことができる。これにより、サーボピストン18の外形状が径方向一側と径方向他側とで非対称な形状となるのを矯正することができ、サーボピストン18の熱変形を小さく抑えることができる。
なお、前記第1の実施の形態では、フィードバックリンク28を、剛性材料からなる回動レバー29と、ばね材からなる拡開ばね32とにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばフィードバックリンク全体を剛性材料、または弾性変形可能な材料を用いて構成し、その一方または他方側の端部を他側部材として他側嵌合溝内に嵌合させる構成としてもよいものである。
また、前記各実施の形態では、可変容量型斜板式液圧回転機として斜板式油圧ポンプを用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば可変容量型の斜板式油圧モータに適用してもよいものである。