以下、本発明の実施の形態による可変容量型斜板式液圧回転機を、例えば油圧ポンプ(可変容量型斜板式油圧ポンプ)として用いる場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1において、可変容量型斜板式油圧ポンプ1(以下、油圧ポンプ1という)は、ケーシング2、回転軸4、シリンダブロック5、複数のシリンダ6、複数のピストン7、複数のシュー8、リテーナ9、弁板12、斜板13、クレードル14、傾転アクチュエータ15を含んで構成されている。油圧ポンプ1は、例えば油圧ショベルの原動機(駆動源となるエンジンや電動モータ)によって回転駆動され、タンク内から吸込んだ作動油を高圧の圧油として吐出する。
ケーシング2は、中空に形成され、油圧ポンプ1の外殻を構成している。ケーシング2は、図1に示すように、有底筒状のケーシング本体2Aと、ケーシング本体2Aの開口を閉塞したフロントケーシング2Bとから構成されている。
ケーシング2の一側に位置するフロントケーシング2Bには、後述のクレードル14が斜板13の裏面側に対向して設けられている。また、ケーシング本体2Aの他側には、図1中に破線で示すように、一対の給排通路3A,3Bが設けられている。給排通路3A,3Bのうち一方の給排通路3Aは、低圧側の吸込通路となってタンク(図示せず)に接続され、他方の給排通路3Bは、吐出通路となって高圧側の吐出配管(図示せず)に接続される。
回転軸4は、ケーシング2に回転可能に設けられている。即ち、回転軸4は、ケーシング2内を軸方向に延び、ケーシング本体2Aとフロントケーシング2Bとにそれぞれ軸受を介して回転可能に支持されている。回転軸4の一端側は、フロントケーシング2Bから軸方向に突出する突出端4Aとなり、この突出端4Aにはエンジン等の原動機が動力伝達機構(いずれも図示せず)等を介して連結される。
シリンダブロック5は、回転軸4と一体的に回転するようにケーシング2内に設けられている。シリンダブロック5には、その周方向に離間して軸方向に延びる複数のシリンダ6を有している。シリンダブロック5の各シリンダ6には、後述する弁板12の給排ポート12A,12Bと間欠的に連通するシリンダポート6Aが形成されている。
複数のピストン7は、シリンダブロック5の各シリンダ6内にそれぞれ往復動可能(摺動可能)に挿嵌されている。ピストン7は、シリンダブロック5の回転に伴ってシリンダ6内を往復動し、吸入行程と吐出行程とを繰返す。このため、後述の斜板13には、高圧側の給排ポート12Bに連通している各シリンダ6内の圧力がピストン7を介して作用する。
複数のシュー8は、各シリンダ6から突出する各ピストン7の突出端側に、それぞれ揺動可能に装着されている。シュー8は、後述する斜板13の平滑面13Dに対しピストン7からの押付力(油圧力)により押付けられ、この状態でリテーナ9等を介して保持される。各シュー8は、この状態で回転軸4、シリンダブロック5およびピストン7と一緒に回転することにより、リング状の円軌跡を描くように後述の平滑面13D上を摺動変位する。
リテーナ9は、環状に形成され、各シュー8を斜板13に対して保持している。即ち、図1に示すように、リテーナ9は、斜板13の平滑面13Dに向けてシュー8をそれぞれ押圧、保持し、斜板13の平滑面13D上で各シュー8が環状軌跡を描くように摺動変位するのを補償する。この場合、リテーナ9は、スプリング10により球状ガイド11を介して斜板13(平滑面13D)に向けて付勢されている。
弁板12は、ケーシング2内に位置してケーシング本体2Aの他側に固定して設けられている。即ち、弁板12は、ケーシング本体2Aとシリンダブロック5との間に設けられている。弁板12は、回転軸4と一体に回転するシリンダブロック5を、ケーシング本体2Aと一緒に回転可能に支持している。この状態で、弁板12は、シリンダブロック5の端面に摺接している。
弁板12には、眉形状をなす一対の給排ポート12A,12Bが形成されている。給排ポート12A,12Bは、ケーシング本体2Aの給排通路3A,3Bと連通している。弁板12の給排ポート12A,12Bは、シリンダブロック5の回転時に各シリンダ6のシリンダポート6Aと間欠的に連通する。このとき、各シリンダ6内を往復するピストン7は、その吸入行程で一方の給排通路3A側から給排ポート12Aを介して各シリンダ6内に作動油を吸込み、吐出行程では各シリンダ6内で高圧状態となった圧油を給排ポート12Bを介して他方の給排通路3Bから吐出させる。
斜板13は、ケーシング2内に後述のクレードル14を介して傾転可能に設けられている。斜板13は、図1中に示す矢示A,B方向に、後述の傾転アクチュエータ15(傾転ピストン15C)を用いて傾転駆動される。油圧ポンプ1の吐出容量(圧油の吐出流量)は、斜板13の傾転角に応じて可変に制御される。
図3に示すように、斜板13は、回転軸4が挿通される挿通孔13Aが設けられた本体部13Bと、本体部13Bの両側(例えば、左,右方向の両側、または、上,下方向の両側)に設けられた一対の脚部13Cとを有している。挿通孔13Aは、斜板13の本体部13Bの板厚方向に貫通して延びている。挿通孔13A内には、一対の脚部13C間に位置して回転軸4が隙間をもって挿通される。
図4に示すように、斜板13の表面側は、各シュー8を摺動可能に案内する平滑面13Dとなっている。これに対して、斜板13の裏面側は、クレードル14に傾転可能に支持される。このために、図3に示すように、斜板13の一対の脚部13Cは、クレードル14の各傾転支持部14Bに向けてそれぞれ凸湾曲状に突出した凸湾曲面13C1を有している。一対の凸湾曲面13C1は、斜板摺動面とも呼ばれ、回転軸4を挟んで離間して配置されている。凸湾曲面13C1は、クレードル14の各凹湾曲面14B1に対し摺動可能に嵌合される。
クレードル14は、回転軸4の周囲に位置してケーシング2(より具体的には、フロントケーシング2B)に固定して設けられている。クレードル14は、斜板支持体とも呼ばれ、ケーシング2の斜板支持部となるものである。図1および図2に示すように、クレードル14は、全体として円環状に形成されている。即ち、クレードル14は、中央位置に貫通孔として設けられた軸挿通孔14Aと、軸挿通孔14Aを挟んで離間して配置された一対の傾転支持部14Bとを備えている。
軸挿通孔14Aには、回転軸4が隙間をもって挿通される。傾転支持部14Bは、斜板13の脚部13Cに対応して互いに平行に設けられている。この場合、傾転支持部14Bは、斜板13の脚部13Cに向けてそれぞれ凹湾曲状に凹んだ凹湾曲面14B1を有している。即ち、クレードル14は、斜板13の一対の脚部13Cの凸湾曲面13C1に対応して凹湾曲状に形成された凹湾曲面14B1を有している。一対の凹湾曲面14B1は、クレードル摺動面とも呼ばれ、各脚部13C(の凸湾曲面13C1)を介して斜板13を図1中の矢示A,B方向に傾転(摺動)可能に支持する。
傾転アクチュエータ15は、斜板13を傾転駆動するものである。図1に示すように、傾転アクチュエータ15は、ケーシング2に設けられている。この場合、傾転アクチュエータ15は、シリンダブロック5の径方向外側に位置してケーシング本体2Aに形成されたシリンダ穴15Aと、該シリンダ穴15A内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ穴15Aとの間に液圧室15Bを画成した傾転ピストン15Cとを含んで構成されている。そして、傾転アクチュエータ15は、ケーシング本体2Aに対しシリンダブロック5の径向で互いに対向する位置に配設されている。
傾転アクチュエータ15は、傾転ピストン15Cによって斜板13を矢示A,B方向に傾転駆動する。即ち、傾転アクチュエータ15の液圧室15Bには、外部から傾転制御圧が給排される。この傾転制御圧により、例えば、一方(例えば、図1の下方)の傾転アクチュエータ15の傾転ピストン15Cがシリンダ穴15A内から伸長し、他方(例えば、図1の上方)の傾転アクチュエータ15の傾転ピストン15Cがシリンダ穴15A内に縮小するときには、斜板13が矢示A方向(即ち、傾転角が大きくなる正方向)に傾転駆動される。
これに対して、他方(例えば、図1の上方)の傾転アクチュエータ15の傾転ピストン15Cがシリンダ穴15A内から伸長し、一方(例えば、図1の下方)の傾転アクチュエータ15の傾転ピストン15Cがシリンダ穴15A内へと縮小するときには、斜板13が矢示B方向(即ち、傾転角が小さくなる逆方向)に傾転駆動される。
ところで、斜板13には、シュー8を摺動可能に案内すると同時に、シリンダ6が吐出管路側(高圧側)の給排通路3Bに接続されたときに、その吐出圧力によりピストン7の断面積に応じた荷重がシュー8を介して作用する(加わる)。この荷重の合力の作用点は、図5において、一対の凸湾曲面13C1の間となり、この荷重の合力は、一対の凸湾曲面13C1の間に鉛直下向き、即ち、クレードル14側に作用する。
これにより、斜板13には、一対の凸湾曲面13C1を支持点として下向きに凸となるようにたわみが発生する。そして、このたわみ(変形)に伴って、一対の凸湾曲面13C1のうち挿通孔13Aに近い側が、クレードル14の凹湾曲面14B1に押付けられる傾向となり、局所的な高面圧が発生するおそれがある。
そこで、本実施の形態では、斜板13の凸湾曲面13C1の形状とクレードル14の凹湾曲面14B1の形状とを、次のように規制している。
図5は、図4中の矢示V−V方向の断面である傾転軸方向断面、即ち、斜板13の傾転中心軸線K−Kを含む仮想平面で切断した断面図である。この図5において、斜板13の凸湾曲面13C1の半径をRs1とし、クレードル14の凹湾曲面14B1の半径をRc1とすると、斜板13の凸湾曲面13C1の曲率はKs1=1/Rs1となり、クレードル14の凹湾曲面14B1の曲率はKc1=1/Rc1となる。
ここで、斜板13の凸湾曲面13C1の曲率Ks1がクレードル14の凹湾曲面14B1の曲率Kc1よりも小さい、即ち、Ks1<Kc1の場合を考える。この場合は、図5における凹湾曲面14B1の曲がりが、凸湾曲面13C1の曲がりよりも大きくなる(急になる)。
この場合には、クレードル14の凹湾曲面14B1のそれぞれの端縁(両側のエッジ)14B11,14B11に、斜板13の凸湾曲面13C1が乗り上げて、これらの接触が線接触となることにより、局所的な高面圧が発生するおそれがある。そこで、本実施の形態では、図5において、斜板13の凸湾曲面13C1の曲率Ks1を、クレードル14の凹湾曲面14B1の曲率Kc1よりも大きくしている。即ち、Ks1>Kc1としている。
次に、斜板13の凸湾曲面13C1の曲率Ks1とクレードル14の凹湾曲面14B1の曲率Kc1との差である曲率差Kd1=Ks1−Kc1を考える。この曲率差Kd1を大きくすれば、クレードル14の凹湾曲面14B1の両端側での凹湾曲面14B1と斜板13の凸湾曲面13C1との隙間を大きくすることができる。即ち、斜板13のたわみ(変形)に基づいて発生する局所的な高面圧を抑制するためには、曲率差Kd1を大きくすることが考えられる。
だたし、曲率差Kd1を大きくすると、斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1との接触面積が小さくなり、その分、面圧が増大する傾向となる。このため、部品の寸法、面圧等の使用条件に応じた曲率差とする必要がある。
そこで、曲率差が大きくなると接触面積が小さくなり面圧が増大することを考慮して、接触面積を確保するために、図6に示す断面について考える。図6は、図4中の矢示VI−VI方向の断面である傾転方向断面、即ち、斜板13の傾転中心軸線K−Kに直交する仮想平面で切断した断面図である。この図6において、斜板13の凸湾曲面13C1の半径をRs2とし、クレードル14の凹湾曲面14B1の半径をRc2とすると、斜板13の凸湾曲面13C1の曲率はKs2=1/Rs2となり、クレードル14の凹湾曲面14B1の曲率はKc2=1/Rc2となる。
ここで、図6の断面(傾転中心軸線K−Kと直交する断面)においても、図5の断面(傾転中心軸線K−Kを含む断面)のときと同様に、斜板13の凸湾曲面13C1の曲率Ks2がクレードル14の凹湾曲面14B1の曲率Kc2よりも小さい、即ち、Ks2<Kc2の場合を考える。この場合は、図6において、凹湾曲面14B1の曲がりが、凸湾曲面13C1の曲がりよりも大きくなる(急になる)。
この場合も、クレードル14の凹湾曲面14B1のそれぞれの端縁(両側のエッジ)14B12,14B12に、斜板13の凸湾曲面13C1が乗り上げて、これらの接触が線接触となることにより、局所的な高面圧が発生するおそれがある。このため、実施の形態では、図6においても、斜板13の凸湾曲面13C1の曲率Ks2を、クレードル14の凹湾曲面14B1の曲率Kc2よりも大きくしている。即ち、Ks2>Kc2としている。
そして、図6の断面(傾転中心軸線K−Kと直交する断面)側は、図5の断面(傾転中心軸線K−Kを含む断面)側に比べ、斜板13のたわみ(変形)による影響が小さいことから、図6の断面での曲率差Kd2=Ks2−Kc2を小さくする。即ち、図6における斜板13の凸湾曲面13C1の曲率Ks2とクレードル14の凹湾曲面14B1の曲率Kc2との差である曲率差Kd2=Ks2−Kc2を、図5における曲率差Kd1=Ks1−Kc1よりも小さくする(Kd1>Kd2)。これにより、図6における斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1との接触面積を大きくすることができ、摺動面の最高面圧を低下させることができる。
要するに、実施の形態では、曲率Ks1,Ks2,Kc1,Kc2を、次のように規制している。
即ち、斜板13の凸湾曲面13C1は、図5での曲率、即ち、斜板13の傾転中心軸線K−Kを含む仮想平面で切断したときの曲率をKs1とし、図6での曲率、即ち、斜板13の傾転中心軸線K−Kに直交する仮想平面で切断したときの曲率をKs2とする。また、クレードル14の凹湾曲面14B1は、図5での曲率、即ち、斜板13の傾転中心軸線K−Kを含む仮想平面で切断したときの曲率をKc1とし、図6での曲率、即ち、斜板13の傾転中心軸線K−Kに直交する仮想平面で切断したときの曲率をKc2とする。この場合に、Ks1>Kc1、かつ、Ks2>Kc2に設定されている。
これにより、図5および図6の両方の断面で、凸湾曲面13C1の曲率Ks1,Ks2を、凹湾曲面14B1の曲率Kc1,Kc2よりも大きくできる。即ち、凸湾曲面13C1の曲がりが大きくなり(急になり)、凹湾曲面14B1の端縁14B11,14B11,14B12,14B12での線接触による高面圧(即ち、斜板13のたわみ(変形)に基づいて発生する局所的な高面圧)を抑制することができる。
さらに、実施の形態では、曲率差Kd1,Kd2、を、次のように規制している。即ち、図5での曲率差、即ち、斜板13の傾転中心軸線K−Kを含む仮想平面で切断したときの曲率Ks1とKc1との曲率差をKd1=Ks1−Kc1とする。また、図6での曲率差、即ち、斜板13の傾転中心軸線K−Kに直交する仮想平面で切断したときの曲率Ks2とKc2との曲率差をKd2=Ks2−Kc2とする。この場合に、Kd1>Kd2に設定されている。
これにより、図6での曲率差Kd2を、図5での曲率差Kd1よりも小さくできる。即ち、図6での凸湾曲面13C1と凹湾曲面14B1との接触範囲(長さ)を大きくできる。このため、接触面積を大きくでき、面圧の低減を図ることができる。そして、面圧を低減できることにより、油圧ポンプ1の小型化を図ることができる(同じ大きさでより高圧に耐えることができる)。
実施の形態による油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
油圧ポンプ1の吐出容量を増大させるときには、一方の傾転アクチュエータ15の傾転ピストン15Cを伸長させ、他方の傾転アクチュエータ15の傾転ピストン15Cを縮小させる。これにより、斜板13は、傾転角が大きくなるように図1中の矢示A方向に傾転駆動される。一方、油圧ポンプ1の吐出容量を減少させるときには、他方の傾転アクチュエータ15の傾転ピストン15Cを伸長させ、一方の傾転アクチュエータ15の傾転ピストン15Cを縮小させる。これにより、斜板13は、傾転角が小さくなるように図1中の矢示B方向に傾転駆動される。
ここで、可変容量型斜板式の油圧ポンプ1では、シリンダ6から高圧側の給排通路3Bに吐出される圧油の圧力を油圧反力として受圧したピストン7が、シュー8を介して斜板13をクレードル14側に押圧する。このとき、各ピストン7が斜板13を押圧する力(油圧力)により、斜板13は、一対の凸湾曲面13C1を支持点としてこれら凸湾曲面13C1の間がクレードル14側に近付くようにたわむ傾向となる。これにより、一対の凸湾曲面13C1のうち挿通孔13Aに近い側が、クレードル14の凹湾曲面14B1に押付けられる傾向となる可能性がある。
これに対して、実施の形態では、上述のように斜板13がたわむ(変形する)傾向となっても、斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1との局所的な高面圧を抑制することができる。
即ち、実施の形態では、Ks1>Kc1、かつ、Ks2>Kc2に設定されている。このため、斜板13の傾転中心軸線K−Kを含む仮想平面で切断したときの斜板13の凸湾曲面13C1およびクレードル14の凹湾曲面14B1の曲率Ks1,Kc1と、斜板13の傾転中心軸線K−Kに直交する仮想平面で切断したときの斜板13の凸湾曲面13C1および14B1の凹湾曲面14B1の曲率Ks2,Kc2を、それぞれ独立に設定することができる。
そして、いずれの切断方向でも、斜板13側の凸湾曲面13C1の曲率Ks1,Ks2を、クレードル14の凹湾曲面14B1の曲率Kc1,Kc2よりも大きくしている。このため、斜板13の凸湾曲面13C1をクレードル14の凹湾曲面14B1の端縁(両側のエッジ)14B11,14B11,14B12,14B12に乗り上げにくくできる。これにより、斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1の端縁(エッジ)14B11,14B11,14B12,14B12とが局所的に接触することによる高面圧を抑制することができる。
また、実施の形態では、Kd1>Kd2に設定されている。即ち、斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1との曲率差Kd1,Kd2は、斜板13の傾転中心軸線K−Kを含む仮想平面で切断したときの曲率差Kd1(=Ks1−Kc1)を、斜板13の傾転中心軸線K−Kに直交する仮想平面で切断したときの曲率差Kd2(=Ks2−Kc2)よりも大きくしている。
これにより、斜板13の傾転中心軸線K−Kを含む仮想平面で切断したときの斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1との曲率差Kd1を大きくすることができ、この切断方向での斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1との両端側の隙間を確保することができる。このため、この面からも、斜板13の凸湾曲面13C1をクレードル14の凹湾曲面14B1の端縁(エッジ)14B11,14B11に乗り上げにくくでき、局所的な高面圧を抑制することができる。
一方、斜板13の傾転中心軸線K−Kに直交する仮想平面で切断したときの曲率差Kd2を小さくすることができ、この切断方向での斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1との接触範囲を大きくすることができる。これにより、斜板13の凸湾曲面13C1とクレードル14の凹湾曲面14B1との接触面積を確保し、最高面圧を低減することができる。この結果、局所的な高面圧の抑制と面圧の低減とを両立することができる。
なお、上述した実施の形態では、図5において、一方(左側)の凸湾曲面13C1の半径Rs1と他方(右側)の凸湾曲面13C1の半径Rs1とを同じとし、一方(左側)の凹湾曲面14B1の半径Rc1と他方(右側)の凹湾曲面14B1の半径Rc1とを同じとした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、一方の凸湾曲面の半径と他方の凸湾曲面の半径とを異ならせてもよい。また、一方の凹湾曲面の半径と他方の凹湾曲面の半径とを異ならせてもよい。
例えば、油圧力が大きくなる側(高圧の給排ポートに近い側、即ち、油圧ポンプであれば吐出ポートに近い側)の凸湾曲面と凹湾曲面との隙間が大きく(曲率差が大きく)なり、かつ、油圧力が小さくなる側(低圧の給排ポートに近い側、即ち、油圧ポンプであれば吸込ポートに近い側)の凸湾曲面と凹湾曲面との隙間が小さく(曲率差が大きく)なるように、一方と他方の凸湾曲面の半径と一方と他方の凹湾曲面の半径とを別々に設定することができる。この場合は、開回路(一方向)の油圧ポンプ等、常に一方の給排ポートが吐出ポートとなり他方の給排ポートが吸込ポートとなる液圧回転機に用いることで、局所的な高面圧の抑制と面圧の低減とをより高い次元で両立することができる。
上述した実施の形態では、2個の傾転アクチュエータ15により、斜板13を傾転動作させる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば1個の傾転アクチュエータにより傾転レバーを介して斜板を傾転動作させる構成としてもよい。
上述した実施の形態では、斜板13が一方に傾く片傾転の斜板式油圧ポンプ1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、斜板が傾転角0を挟んで両方に傾く両傾転の斜板式油圧ポンプに用いてもよい。
上述した実施の形態では、液圧回転機として油圧ポンプ1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、油圧モータ等、他の液圧回転機として用いてもよいものである。
上述した実施の形態では、油圧ポンプ1を油圧ショベルに適用する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、油圧クレーン、ホイールローダ等の油圧ショベル以外の建設機械に適用してもよいものである。さらに、建設機械に限定されず、産業機械や一般機械に組み込まれる油圧ポンプ、油圧モータ等、各種機械に用いられる可変容量型斜板式液圧回転機として広く適用できるものである。