以下、本発明の実施の形態による可変容量型斜板式液圧回転機の傾転アクチュエータを、可変容量型の斜板式油圧ポンプに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
まず、図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、本実施の形態に採用されている可変容量型の斜板式油圧ポンプ1(以下、油圧ポンプ1という)は、その外殻を構成するケーシング2を有している。このケーシング2は、軸方向の一端側がフロント底部3Aとなった段付筒状のケーシング本体3と、ケーシング本体3の他端側を閉塞するようにケーシング本体3に設けられたリヤケーシング4とにより構成されている。ケーシング2のリヤケーシング4には、後述の給排通路13A,13B等が形成されている。
ケーシング2のケーシング本体3には、フロント底部3Aの近傍位置に径方向の外側に突出してアクチュエータ取付部3Bが設けられている。アクチュエータ取付部3Bには、後述の傾転アクチュエータ21が設けられている。アクチュエータ取付部3Bの近傍には、例えば後述の容量制御弁37(図4参照)が配設されている。
ケーシング2内には、回転軸5が回転可能に設けられている。この回転軸5は、軸方向の一側がケーシング本体3のフロント底部3Aの内径側に軸受を介して回転可能に取付けられ、他側がリヤケーシング4の中央位置に軸受を介して回転可能に取付けられている。ケーシング本体3のフロント底部3Aから軸方向に突出した回転軸5の一側(突出端側)には、例えば建設機械の原動機が動力伝達機構(いずれも図示せず)を介して連結され、回転軸5は、前記原動機により回転駆動される。
シリンダブロック6は、ケーシング2内に位置して回転軸5の外周側に設けられた円筒体として形成されている。シリンダブロック6の内周側は、回転軸5の外周側にスプライン結合され、回転軸5と一体に回転駆動される。シリンダブロック6には、その周方向に離間して軸方向に延びる複数(通常は奇数個)のシリンダ7が穿設されている。シリンダブロック6の各シリンダ7内には、それぞれピストン8が摺動可能に挿嵌されている。各ピストン8は、シリンダブロック6の回転によってそれぞれのシリンダ7内を往復動し、後述の弁板12側から各シリンダ7内に油液としての作動油を吸込みつつ、これを高圧の圧油として吐出するものである。
この場合、各ピストン8は、シリンダ7から軸方向に最も突出(伸長)した下死点位置と、シリンダ7内に最も進入(縮小)した上死点位置との間で往復動される。シリンダブロック6が1回転する間に、各ピストン8はシリンダ7内を上死点位置から下死点位置に向けて摺動変位する吸込行程と、下死点位置から上死点位置に向けて摺動変位する吐出行程とを繰返すことになる。
シリンダブロック6の半回転分に相当するピストン8の吸込行程では、後述の給排通路13A,13Bの一方側からシリンダ7内に作動油が吸込まれる。また、シリンダブロック6の残りの半回転分に相当するピストン8の吐出行程では、ピストン8が各シリンダ7内の作動油を高圧の圧油として給排通路13A,13Bの他方側から吐出させる。
ここで、油圧ポンプ1は、その容量可変部(後述の斜板11を含む)が傾転角零の中立位置から一方向と他方向との両方向に傾転駆動可能な両傾転タイプの油圧ポンプである。このような油圧ポンプ1は、例えばHST(Hydro Static Transmission)等の油圧閉回路に用いる場合、油圧モータとの間が一対の主管路(いずれも図示せず)を介して接続される。両傾転タイプの油圧ポンプ1は、斜板11が傾転角零の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転されることにより、圧油の吐出方向(または、圧油の給排方向)を反転させるように適宜に切換えることができる。
各ピストン8の突出側端部には、それぞれシュー9が揺動可能に取付けられている。これらのシュー9は、それぞれピストン8からの押付力(油圧力)で後述する斜板11の平滑面11Aに押付けられる。各シュー9は、この状態で回転軸5、シリンダブロック6および各ピストン8と一緒に回転することにより、リング状の軌跡を描くように斜板11の平滑面11A上を摺動するものである。
ケーシング本体3のフロント底部3Aには、斜板支持体10が固定して設けられている。この斜板支持体10は、回転軸5の周囲に位置して斜板11の裏面側(一面側)に配置されている。斜板支持体10は、斜板11を傾転可能に支持する凹湾曲面状の一対の傾転摺動面10Aが形成されている。一対の傾転摺動面10Aは、回転軸5の径方向で互いに離間して配置されている。
斜板11は、ケーシング2内に傾転可能に設けられている。斜板11は、ケーシング本体3のフロント底部3A側に斜板支持体10を介して取付けられ、その表面側(他面側)が摺動面としての平滑面11Aとなっている。斜板11には、その中央部に回転軸5が隙間をもって挿通される挿通孔11Bが設けられている。
また、斜板11には、挿通孔11Bを挟んで当該挿通孔11Bの径方向の外側に突出して一対の脚部11Cが設けられている。各脚部11Cは、斜板支持体10の各傾転摺動面10A上に傾転可能(摺動可能)に当接されている。
さらに、斜板11には、各脚部11Cのうち、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B側の脚部11Cから突出して連結突起11Dが設けられている。この連結突起11Dは、例えば、段付円柱状に形成され、後述する傾転アクチュエータ21の連結部材26に挿着されている。これにより、連結突起11Dは、連結部材26を介して後述のサーボピストン25に連結されている。
ここで、斜板11は、斜板支持体10の各傾転摺動面10Aにより各脚部11Cを介して傾転可能に支持され、この状態で傾転アクチュエータ21により傾転駆動される。斜板11は、このときの傾転角に応じて油圧ポンプ1の吐出容量を変化させる容量可変部を構成している。これにより、傾転アクチュエータ21は、斜板11を傾転角零の位置から一方向と他方向との両方向(図3に示す矢示A,B方向)に傾転し、油圧ポンプ1による圧油の吐出容量と吐出方向(即ち、油圧モータの回転速度と回転方向)を適宜に切換えることができる。
弁板12は、リヤケーシング4に固定して設けられている。弁板12は、シリンダブロック6の端面に摺接する切換弁板を構成している。弁板12には、回転軸5の周囲を眉形状に延びる一対の給排ポート12A,12Bが形成されている。これらの給排ポート12A,12Bは、斜板11の傾転方向に応じて吸込ポートと吐出ポートとの何れかに切換えられる。例えば、給排ポート12Aが低圧側の吸込ポートになったときには、給排ポート12Bが高圧側の吐出ポートになる。一方、傾転角零の中立位置から斜板11の傾転方向が反転されたときには、例えば給排ポート12Aが高圧側の吐出ポートになり、給排ポート12Bが低圧側の吸込ポートになる。
一対の給排通路13A,13Bは、リヤケーシング4に形成され、作動油の吸込みと吐出とを行う通路である。これらの給排通路13A,13Bは、弁板12を介してシリンダ7内へと作動油(圧油)を給排させる。油圧ポンプ1の給排通路13A,13Bは、前述したように、油圧モータに一対の主管路を介して接続される。ここで、ケーシング2内で回転軸5を回転駆動すると、シリンダブロック6の回転に伴って各シリンダ7内をピストン8が往復動し、これらのピストン8が給排通路13A,13Bの一方側からシリンダ7内に作動油を吸込みつつ、給排通路13A,13Bの他方側に圧油を吐出するものである。
次に、本発明の特徴部分となる斜板式油圧ポンプ1の傾転アクチュエータ21の構成について説明する。
傾転アクチュエータ21は、斜板11等の容量可変部を傾転駆動するものである。傾転アクチュエータ21は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B内に設けられている。傾転アクチュエータ21は、後述の傾転制御シリンダ22とサーボピストン25と連結部材26とを含んで構成されている。
傾転制御シリンダ22は、傾転制御圧が給排されるものである。この傾転制御シリンダ22は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに回転軸5の軸線と直交する方向に延びて形成されている。図2に示すように、傾転制御シリンダ22は、長さ方向で離間した位置に一対のシリンダ孔22A,22Bを有している。この傾転制御シリンダ22(シリンダ孔22A,22B)には、後述のサーボピストン25が摺動可能に挿嵌される。
傾転制御シリンダ22のシリンダ孔22A,22Bは、軸方向外側の端部が蓋板23A,23Bにより外側から閉塞されている。シリンダ孔22A内には、蓋板23Aとサーボピストン25との間に第1の油室24Aが画成されている。シリンダ孔22B内には、蓋板23Bとサーボピストン25との間に第2の油室24Bが画成されている。
サーボピストン25は、傾転アクチュエータ21の可動部を構成するもので、傾転制御シリンダ22内に当該傾転制御シリンダ22の軸方向に摺動可能に挿嵌されている。サーボピストン25は、長さ方向の中間が中実な円柱部25Aとなり、この円柱部25Aの両側に第1の油室24Aと第2の油室24Bとが形成されている。
サーボピストン25は、円柱部25Aの軸方向の両側に、外径寸法が円柱部25Aと同等な筒部25B,25Cを有している。筒部25Bの奥所は底面25Dとなり、筒部25Cの奥所は底面25Eとなっている。筒部25B内は、第1の油室24Aの一部を構成し、筒部25C内は、第2の油室24Bの一部を構成している。
円柱部25Aには、後述のロッド31が挿通される段付孔27が設けられている。また、円柱部25Aの外周側には、後述の連結部材26が係合する連結部材係合部28が設けられている。さらに、円柱部25Aには、段付孔27を通じて第2の油室24Bと連結部材係合部28とを連通した後述する第1の油通路29と、段付孔27を通じて第1の油室24Aと連結部材係合部28とを連通した後述する第2の油通路30とが設けられている。
図4に示すように、サーボピストン25は、各油室24A,24Bに後述の給排通路38A,38B、給排口34A,34Bを介して傾転制御圧が給排されると、このときの傾転制御圧に従って傾転制御シリンダ22の軸方向に摺動変位する。このサーボピストン25の軸方向変位は、後述の連結部材26を介して斜板11へと伝達され、これにより、斜板11は、サーボピストン25に追従して図3中の矢示A,B方向に傾転駆動される。
連結部材26は、サーボピストン25に設けられた後述の連結部材係合部28内に摺動可能に係合している。図3に示すように、連結部材26は、扁平な直方体状のブロックとして形成され、その中心部には、斜板11の連結突起11Dが回動可能に挿着される挿着孔26Aが板厚方向に設けられている。また、連結部材26は、連結部材係合部28の当接面28Aに当接する当接面26Bと、連結部材係合部28の当接面28Bに当接する当接面26Cとが設けられている。各当接面26B,26Cは、板厚方向の中央部が突出した凸円弧状に形成されている。
連結部材26は、挿着孔26A内に斜板11の連結突起11Dを予め挿着した状態で、サーボピストン25の連結部材係合部28に取付けられる。これにより、連結部材26は、連結部材係合部28に対して摺接しつつ、サーボピストン25の軸方向の変位(矢示C,D方向)を斜板11へと伝達することができる。
次に、傾転アクチュエータ21に設けられた本発明の特徴部分となる段付孔27、連結部材係合部28、第1の油通路29、第2の油通路30、ロッド31、第1のポペット32、第2のポペット33の構成について詳細に述べる。
段付孔27は、貫通孔を形成するもので、サーボピストン25の円柱部25Aを軸方向に貫通して設けられている。段付孔27は、軸方向の中間部に位置する小径孔部27Aと、小径孔部27Aよりも大きな孔径を有し、小径孔部27Aと第1の油室24Aとの間に位置する第1の大径孔部27Bと、小径孔部27Aよりも大きな孔径を有し、小径孔部27Aと第2の油室24Bとの間に位置する第2の大径孔部27Cとを有する段付孔として形成されている。
また、段付孔27の第1の大径孔部27Bには、第1の油室24Aに開口する第1の開口部27B1が設けられ、第2の大径孔部27Cには、第2の油室24Bに開口する第2の開口部27C1が設けられている。さらに、段付孔27の小径孔部27Aは、ロッド31を摺動可能に支持する支持孔を構成している。
連結部材係合部28は、連結部材26が係合するもので、サーボピストン25の円柱部25Aに設けられている。図3に示すように、連結部材係合部28は、サーボピストン25の軸線と直交する方向に延びるように円柱部25Aの外周側を凹溝状に切欠くことにより形成されている。連結部材係合部28は、サーボピストン25の軸方向で対面すると共に、平行に配置された第1の油室24A側の当接面28Aと第2の油室24B側の当接面28Bとを有している。連結部材係合部28の当接面28Aは、連結部材26の当接面26Bと当接し、当接面28Bは、連結部材26の当接面26Cと当接する。即ち、サーボピストン25が矢示C方向に変位したときには、連結部材係合部28の当接面28Aに連結部材26の当接面26Bが押付けられる。一方、サーボピストン25が矢示D方向に変位したときには、連結部材係合部28の当接面28Bに連結部材26の当接面26Cが押付けられる。
第1の油通路29は、サーボピストン25の円柱部25Aに設けられている。第1の油通路29は、例えばクランク状に折れ曲がり、その一端が段付孔27の第2の大径孔部27Cに開口し、他端が連結部材係合部28の当接面28Aに開口している。ここで、第1の油通路29は、第2の油室24Bの作動油が後述の給排口34B、給排通路38Bを通じて作動油タンク36に戻されるときの圧力損失(流路抵抗)よりも小さな圧力損失となるように、流路面積(通路の内径寸法)、長さ寸法、通路形状(クランク形状)等が設定されている。
従って、第1の油通路29は、後述する第2のポペット33が開弁したときに、第2の油室24Bに連通し、この第2の油室24B内の作動油を連結部材係合部28の当接面28A、即ち、連結部材係合部28の当接面28Aと連結部材26の当接面26Bとの摺接部位に供給することができる。
これにより、第1の油通路29は、サーボピストン25を矢示C方向に変位させるために、第1の油室24Aが昇圧されたときには、斜板11の傾転駆動に寄与している第1の油室24A内の圧油を使用することなく、後述の作動油タンク36に戻される第2の油室24B側の作動油を、サーボピストン25を変位させるための押圧力が作用している各当接面26B,28A間の摺接部位に供給することができる。
第2の油通路30は、サーボピストン25の円柱部25Aに第1の油通路29と並行して設けられている(点線で図示)。第2の油通路30は、第1の油通路29と左,右方向で対称となるようにクランク状に折れ曲がっている。第2の油通路30は、一端が段付孔27の第1の大径孔部27Bに開口し、他端が連結部材係合部28の当接面28Bに開口している。ここで、第2の油通路30は、第1の油通路29と同様に、第1の油室24Aの作動油が後述の給排口34A、給排通路38Aを通じて作動油タンク36に戻されるときの圧力損失(流路抵抗)よりも小さな圧力損失となるように、流路面積(通路の内径寸法)、長さ寸法、通路形状(クランク形状)等が設定されている。
従って、第2の油通路30は、後述する第1のポペット32が開弁したときに、第1の油室24Aに連通し、この第1の油室24A内の作動油を連結部材係合部28の当接面28B、即ち、連結部材係合部28の当接面28Bと連結部材26の当接面26Cとの摺接部位に供給することができる。
これにより、第2の油通路30は、サーボピストン25を矢示D方向に変位させるために、第2の油室24Bが昇圧されたときには、斜板11の傾転駆動に寄与している第2の油室24B内の圧油を使用することなく、作動油タンク36に戻される第1の油室24A側の作動油を、サーボピストン25を変位させるための押圧力が作用している各当接面26C,28B間の摺接部位に供給することができる。
ロッド31は、軸方向に延びて段付孔27内に摺動可能に挿嵌されている。ロッド31は、サーボピストン25の円柱部25A(段付孔27)の軸方向寸法よりも大きな長さ寸法をもった大径軸部31Aと、大径軸部31Aの両端部を縮径して軸方向の外側に延びた小径軸部31B,31Cとにより構成されている。
第1のポペット32は、第1の弁体を構成するもので、ロッド31の第1の油室24A側となる一端側に設けられている。この第1のポペット32は、第1の油室24Aに傾転制御圧が供給されると共に、第2の油室24Bが後述の作動油タンク36に接続されたときに、段付孔27の第1の大径孔部27Bに設けられた第1の開口部27B1を閉塞するものである。
第1のポペット32は、ロッド31の軸方向の一側に設けられた円筒体により構成されている。具体的には、第1のポペット32は、ロッド31の軸方向の一側に位置する小径軸部31Bに抜止め状態で取付けられ、段付孔27の第1の大径孔部27Bよりも大径に形成されている。
第2のポペット33は、第2の弁体を構成するもので、ロッド31の軸方向の他側に設けられた第2のポペットにより構成されている。具体的には、第2のポペット33は、第1のポペット32と同様に、ロッド31の軸方向の他側に位置する小径軸部31Cに抜止め状態で取付けられ、段付孔27の第2の大径孔部27Cよりも大径な円筒体として形成されている。
ここで、図2、図4に示すように、第1のポペット32が第1の大径孔部27Bの第1の開口部27B1を閉塞(閉弁)したときには、第2のポペット33が第2の大径孔部27Cの第2の開口部27C1を開放(開弁)する。これにより、第2の油室24B内の作動油の一部が第1の油通路29を通じて連結部材係合部28に供給される。
一方、第2のポペット33が第2の大径孔部27Cの第2の開口部27C1を閉塞(閉弁)したときには、第1のポペット32が第1の大径孔部27Bの第1の開口部27B1を開放(開弁)する。これにより、第1の油室24A内の作動油の一部が第2の油通路30を通じて連結部材係合部28に供給される。
図4に示すように、ケーシング本体3には、第1の油室24Aに連通する給排口34Aと、第2の油室24Bに連通する給排口34Bとが設けられている。油圧ポンプ35は、例えば小型のパイロットポンプにより構成されている。油圧ポンプ35は、タンクとしての作動油タンク36内に貯留された作動油を吸込みつつ、これを傾転制御圧(圧油)として容量制御弁37を介して傾転アクチュエータ21へと供給する。傾転アクチュエータ21の傾転制御シリンダ22と容量制御弁37との間には、傾転制御圧の給排通路38A,38Bが設けられている。
容量制御弁37は、例えば4ポート3位置の電磁式方向制御弁によって構成され、切換位置(a)と切換位置(b)と中立位置(c)とを有している。容量制御弁37は、給電を停止して消磁状態にあるときに中立位置(c)となって傾転アクチュエータ21に対する傾転制御圧の供給を停止する。容量制御弁37は、制御装置としてのコントローラ(図示せず)からの制御信号で励磁されると、中立位置(c)から切換位置(a),(b)のいずれか一方に切換わる。
傾転制御圧の給排通路38A,38Bは、給排通路38Aがシリンダ孔22A側の給排口34Aに接続され、給排通路38Bがシリンダ孔22B側の給排口34Bに接続されている。
前述したコントーラは、例えばマイクロコンピュータ等により構成され、その入力側が傾転角センサ(図示せず)等に接続されている。この傾転角センサは、斜板11が傾転角零の中立位置から矢示A,B方向に傾転されるときに、斜板11の傾転方向と傾転角とをそれぞれ検出し、その検出信号をコントローラに出力する。そして、コントローラは、斜板11の実傾転角(センサの検出角度)が指令信号等による目標傾転角とほぼ一致するように、容量制御弁37を制御信号により中立位置(c)から切換位置(a)または切換位置(b)に切換え、傾転アクチュエータ21のサーボピストン25を矢示C,D方向に変位させる。即ち、コントローラは、斜板11の傾転動作に追従させて容量制御弁37の切換制御を行うことにより、斜板11の傾転角を目標傾転角に近付けるようにフィードバック制御するものである。
第1の実施の形態による可変容量型の斜板式油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、次に、容量可変部となる斜板11を傾転角零の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転駆動する傾転アクチュエータ21の動作について説明する。
まず、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角零の中立位置から図3中の矢示A方向に傾転駆動する場合について述べる。図4に示すように、容量制御弁37を中立位置(c)から切換位置(a)に切換えることにより、油圧ポンプ35からの圧油(傾転制御圧)は、容量制御弁37、給排通路38Aおよび給排口34Aを通じて傾転アクチュエータ21の第1の油室24Aに供給される。一方、傾転アクチュエータ21の第2の油室24Bの作動油は、給排口34B、給排通路38Bおよび容量制御弁37を通じて作動油タンク36に戻される。
これにより、サーボピストン25は、筒部25Bの端面および底面25Dが第1の油室24A内の傾転制御圧を受圧して矢示C方向に押動される。このときに、サーボピストン25の連結部材係合部28には、連結部材26(斜板11の連結突起11D)が摺動可能に係合している。従って、サーボピストン25が矢示C方向に押動されると、連結部材係合部28の当接面28Aが連結部材26の当接面26Bに押付けられるから、斜板11は矢示A方向に傾転駆動することができる。
次に、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角零の中立位置から図3中の矢示B方向に傾転駆動する場合について述べる。容量制御弁37を中立位置(c)から切換位置(b)に切換えることにより、油圧ポンプ35からの圧油(傾転制御圧)は、容量制御弁37、給排通路38Bおよび給排口34Bを通じて傾転アクチュエータ21の第2の油室24Bに供給される。一方、傾転アクチュエータ21の第1の油室24Aの作動油は、給排口34A、給排通路38Aおよび容量制御弁37を通じて作動油タンク36に戻される。
これにより、サーボピストン25は、筒部25Cの端面および底面25Eが第2の油室24B内の傾転制御圧を受圧して矢示D方向に押動される。従って、サーボピストン25が矢示D方向に押動されると、連結部材係合部28の当接面28Bが連結部材26の当接面26Cに押付けられるから、斜板11は、矢示B方向に傾転駆動することができる。
ここで、サーボピストン25が矢示C方向に押動されたときには、連結部材係合部28の当接面28Aが連結部材26の当接面26Bに押圧状態で摺動する。一方、サーボピストン25が矢示D方向に押動されたときには、連結部材係合部28の当接面28Bが連結部材26の当接面26Cに押圧状態で摺動する。従って、これらの摺動部位には、潤滑用の作動油を供給する必要がある。
そこで、サーボピストン25の連結部材係合部28と斜板11側の連結部材26との間の摺動部位に潤滑用の作動油を供給する場合について説明する。
まず、サーボピストン25を矢示C方向に変位させた場合における連結部材係合部28と連結部材26との間の摺動部位の潤滑について述べる。サーボピストン25が矢示C方向に変位したときの摺動部位は、連結部材係合部28の当接面28Aと連結部材26の当接面26Bとの間となる。
サーボピストン25を矢示C方向に変位させるために、第1の油室24A内に圧油が供給されると、ロッド31および第1のポペット32が第1の油室24A内の圧力を受け、段付孔27に対して矢示C方向に変位する。これにより、段付孔27の第1の大径孔部27Bの第1の開口部27B1が第1のポペット32によって閉塞(閉弁)される。一方、第2の油室24B側では、第2のポペット33が段付孔27の第2の大径孔部27Cの第2の開口部27C1から離間し、この第2の開口部27C1を開放(開弁)する。
ここで、前述したように第1の油通路29を作動油が流通するときの圧力損失は、第2の油室24Bの作動油が給排口34B、給排通路38Bを通じて作動油タンク36に戻されるときの圧力損失よりも小さな値に設定されている。
従って、段付孔27の第2の大径孔部27Cが開放されると、第2の油室24Bの作動油は、第2の大径孔部27Cと第1の油通路29を通じて連結部材係合部28の当接面28A、即ち、摺接部位である連結部材係合部28の当接面28Aと連結部材26の当接面26Bとの間に供給することができる。また、連結部材係合部28の当接面28Aと連結部材26の当接面26Bとの間に潤滑用の油膜が形成されると、第1の油通路29の圧力損失が第2の油室24Bの作動油を作動油タンク36に戻すときの圧力損失よりも大きくなるから、第2の油室24Bの作動油は、給排口34B、給排通路38Bを通じて作動油タンク36に戻すことができる。
次に、サーボピストン25を矢示D方向に変位させた場合における連結部材係合部28と連結部材26との間の摺動部位の潤滑について述べる。この場合、サーボピストン25を矢示C方向に変位させるための動作を大きく変わるところがないため簡略化して説明する。まず、サーボピストン25が矢示D方向に変位したときの摺動部位は、連結部材係合部28の当接面28Bと連結部材26の当接面26Cとの間となる。
サーボピストン25を矢示D方向に変位させるために、第2の油室24B内に圧油が供給されると、ロッド31が段付孔27に対して矢示D方向に変位する。これにより、第1のポペット32が開弁して、段付孔27の第1の大径孔部27Bの第1の開口部27B1が開放される。このように、段付孔27の第1の大径孔部27Bが開放されると、第1の油室24Aの作動油は、第1の大径孔部27Bと第2の油通路30を通じ、摺接部位である連結部材係合部28の当接面28Bと連結部材26の当接面26Cとの間に供給することができる。また、各当接面28B,26C間に潤滑用の油膜が形成されると、第1の油室24Aの作動油は、給排口34A、給排通路38Aを通じて作動油タンク36に戻すことができる。
かくして、第1の実施の形態によれば、サーボピストン25には、円柱部25Aを軸方向に貫通し第1の油室24Aに開口する第1の開口部27B1と第2の油室24Bに開口する第2の開口部27C1とを有する段付孔27と、連結部材26が係合する連結部材係合部28と、一端が段付孔27を通じて第2の油室24Bに連通し他端が連結部材係合部28に開口した第1の油通路29と、一端が段付孔27を通じて第1の油室24Aに連通し他端が連結部材係合部28に開口した第2の油通路30とが設けられている。
段付孔27には、軸方向に延びて段付孔27内に摺動可能に挿嵌されたロッド31が設けられている。このロッド31の第1の油室24A側には、第1の油室24Aに傾転制御圧が供給されると共に第2の油室24Bが作動油タンク36に接続されたときに第1の開口部27B1を閉塞する第1のポペット32が設けられている。また、ロッド31の第2の油室24B側には、第2の油室24Bに傾転制御圧が供給されると共に第1の油室24Aが作動油タンク36に接続されたときに第2の開口部27C1を閉塞する第2のポペット33が設けられている。
この上で、第1のポペット32が第1の開口部27B1を閉塞したときには、第2のポペット33が第2の開口部27C1を開放することにより、第2の油室24B内の作動油の一部が第1の油通路29を通じて連結部材係合部28に供給される。さらに、第2のポペット33が第2の開口部27C1を閉塞したときには、第1のポペット32が第1の開口部27B1を開放することにより第1の油室24A内の作動油の一部が第2の油通路30を通じて連結部材係合部28に供給される。
従って、サーボピストン25を矢示C方向に変位させるために、第1の油室24Aに圧油を供給している場合には、斜板11の傾転駆動に寄与している第1の油室24A内の圧油を使用することなく、作動油タンク36に戻される第2の油室24B側の作動油を、第1の油通路29を通じて、連結部材係合部28の当接面28Aと連結部材26の当接面26Bとの間の摺接部位に供給することができる。
また、サーボピストン25を矢示D方向に変位させるために、第2の油室24Bに圧油を供給している場合には、作動油タンク36に戻される第1の油室24A側の作動油を、第2の油通路30を通じて連結部材係合部28の当接面28Bと連結部材26の当接面26Cとの間の摺接部位に供給することができる。
これにより、サーボピストン25を駆動するための圧油ではなく、作動油タンク36に戻される作動油を、連結部材係合部28に潤滑油として供給することができる。この結果、油圧ポンプ1の吐出性能、脈動の抑制等の性能に影響を与えることなく、連結部材係合部28と連結部材26との間を潤滑することができる。
貫通孔は、軸方向の中間部に位置する小径孔部27Aと、小径孔部27Aよりも大きな孔径を有し小径孔部27Aと第1の油室24Aとの間に位置する第1の大径孔部27Bと、小径孔部27Aよりも大きな孔径を有し小径孔部27Aと第2の油室24Bとの間に位置する第2の大径孔部27Cとを有する段付孔27として形成されている。また、第1の油通路29の一端は、第2の大径孔部27Cに開口し、第2の油通路30の一端は第1の大径孔部27Bに開口する構成としている。さらに、第1の弁体は、ロッド31の軸方向の一側に設けられた第1のポペット32により構成され、第2の弁体は、ロッド31の軸方向の他側に設けられた第2のポペット33により構成されている。
従って、各油室24A,24Bのうちいずれか一方の油室に圧油が供給されたときには、他方の油室側で弁体を開弁させることができる。これにより、斜板11の傾転駆動に寄与しない作動油を、油通路を介して連結部材係合部28に供給することができる。
次に、図5は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、貫通孔は、第1の開口部から第2の開口部に亘って等しい孔径を有するスプール摺動孔として形成され、ロッドは、スプール摺動孔に摺動可能に挿嵌されたスプールにより構成され、第1の弁体は、スプールの軸方向の一側に環状の油溝を介して設けられ第1の油室と第1の開口部との間を連通または遮断する第1のランドにより構成され、第2の弁体は、ロッドの軸方向の他側に環状の油溝を介して設けられ第2の油室と第2の開口部との間を連通または遮断する第2のランドにより構成されていることにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図5において、傾転アクチュエータ41のスプール摺動孔42は、貫通孔を構成するものである。スプール摺動孔42は、第1の油室24A側となる第1の開口部42Aから第2の油室24B側となる第2の開口部42Bに亘って等しい孔径を有する直線孔として形成されている。
また、スプール43は、ロッドを構成するもので、スプール摺動孔42に摺動可能に挿嵌されたている。第1のランド44は、第1の弁体を構成している。この第1のランド44は、スプール43の軸方向の一側に環状の油溝45を介して設けられ、第1の油室24Aと第1の開口部42Aとの間を連通または遮断するものである。さらに、第2のランド46は、第2の弁体を構成している。この第2のランド46は、スプール43の軸方向の他側に環状の油溝47を介して設けられ、第2の油室24Bと第2の開口部42Bとの間を連通または遮断するものである。
第1の油通路29の一端は、第2の開口部42Bの近傍に位置してスプール摺動孔42に開口している。一方、第2の油通路30の一端は、第1の開口部42Aの近傍に位置してスプール摺動孔42に開口している。
次に、第2の実施の形態による傾転アクチュエータ41において、連結部材係合部28と連結部材26との間の摺接部位に潤滑用の作動油を供給する場合について述べる。
サーボピストン25を矢示C方向に変位させた場合における連結部材係合部28の潤滑について述べる。
図5に示すように、サーボピストン25を矢示C方向に変位させるために、第1の油室24A内に圧油が供給されると、スプール43および第1のランド44が第1の油室24A内の圧力を受け、スプール摺動孔42に対して矢示C方向に変位し、第2のランド46の端部が蓋板23Bに当接した位置で固定される。これにより、スプール摺動孔42の第1の開口部42Aが第1のランド44によって閉塞(閉弁)される。一方、第2の油室24B側では、第2のランド46が第2の開口部42Bから離間し、この第2の開口部42Bを開放(開弁)する。
このように、スプール摺動孔42の第2の開口部42Bが開放されると、第2の油室24Bの作動油は、油溝47と第1の油通路29を通じて連結部材係合部28の当接面28Aに供給することができる。
一方、サーボピストン25を矢示D方向に変位させるために、第2の油室24B内に圧油が供給されると、スプール43がスプール摺動孔42に対して矢示D方向に変位する。これにより、第1のランド44が開弁して、スプール摺動孔42の第1の開口部42Aが開放される。このように、スプール摺動孔42の第1の開口部42Aが開放されると、第1の油室24Aの作動油は、油溝45と第2の油通路30を通じて連結部材係合部28の当接面28Bに供給することができる。
かくして、このように構成される第2の実施の形態においても、サーボピストン25を駆動するための圧油ではなく、作動油タンク36に戻される作動油を、連結部材係合部28に潤滑油として供給することができる。
なお、第1の実施の形態では、容量可変部(斜板11)の傾転角をセンサを用いて検出し、その検出結果に基づいて容量制御弁37の切換制御を行う場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば制御スリーブ内にスプールを有したサーボ弁からなるレギュレータを容量制御弁として用いてもよい。この場合には、制御スリーブとサーボピストンとの間にフィードバックリンクを設け、容量可変部の傾転角を目標傾転角に近付けるように傾転アクチュエータをフィードバック制御する構成とすればよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用できるものである。
各実施の形態では、可変容量型斜板式液圧回転機の傾転アクチュエータとして、斜板式油圧ポンプ1の傾転アクチュエータ21,41を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば可変容量型の斜板式油圧モータの傾転アクチュエータに適用してもよいものである。
第1の実施の形態では、サーボピストン25の円柱部25Aにクランク状に折り曲げて形成された第1の油通路29と第2の油通路30とは、簡略化した状態で図示している。しかし、第1の油通路29と第2の油通路30とは、円柱部25Aに対して径方向および軸方向に穿孔加工を施した後に、通路として不要な部分を栓体によって閉塞する構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用できるものである。
第1の実施の形態では、貫通孔を、小径孔部27A、第1の大径孔部27Bおよび第2の大径孔部27Cからなる段付孔27として形成することにより、各大径孔部27B,27Cとロッド31の大径軸部31Aとの間に作動油が流通する隙間を確保した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、貫通孔は、等しい孔径を有する直線孔として形成し、ロッドには、大径軸部と大径軸部の両端に位置する小径軸部との間に、それぞれ中径軸部を形成する構成としてもよい。この場合には、貫通孔とロッドの中径軸部との間に作動油が流通する隙間を確保することができる。
第1の実施の形態では、連結部材26は、扁平な直方体状のブロックとして形成し、その中心部に斜板11の連結突起11Dが回動可能に挿着される挿着孔26Aを設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、連結部材には、斜板に向けて突出した突起部を設け、この突起部を斜板側に形成した穴部に挿着する構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用できるものである。