JP2011012203A - ポリマーアロイとその製造方法および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂が本来有する、優れた機械的性質や耐薬品性を損なうことなく、耐衝撃性を著しく改良したポリマーアロイを提供すること。
【解決手段】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂が、優れた規則性を有し、その構造が微細且つ均一に分散したポリマーアロイであり、このようなポリマーアロイは、少なくとも1カ所以上もしくは一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域もしくは時間が存在する条件下、または、亜臨界液体または超臨界流体の存在下で溶融混練することにより製造することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、機械的性質や耐薬品性に優れ、特に耐衝撃性に優れ、ノッチ付きIzod衝撃強度ではポリカーボネート樹脂の衝撃強度以上となる特性を活かして構造材料として有用に用いることができる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は機械的性質や耐熱性に優れることから、射出成形材料として電気・電子機器部品、自動車部品および機械機構部品などの用途に対して広く展開されている。また、フィルム用材料としても耐熱性や耐油性、耐薬品性、ガスバリア性に優れた食品包装材料としての展開が行われている。
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂は結晶特性が良いため、衝撃強度に代表される靭性が不十分である課題を有している。
これらの課題を解決するためにポリマーアロイの研究が従来から行われており、その中でも、衝撃強度に優れたポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイが古くから検討されている。
特許文献1にはポリカーボネート樹脂と、ポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドし、エステル交換反応率を3%以上とすることで、耐衝撃強度に優れた樹脂組成物が得られるとの記載がある。しかしながら、特許文献1に記載された2軸押出機による混練で製造したポリマーアロイは耐衝撃性が不十分であり、ポリカーボネート樹脂のノッチ付きIzod衝撃強度よりも低い値のものしか得られていない。
特許文献2にはポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂を含むポリマーアロイであって構造周期 0.01〜1μmの両相連続構造を有することを特徴とするポリマーアロイが記載されており、該ポリマーアロイが優れた機械特性を有していることが記載されている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献2に記載の製造方法で得られるポリマーアロイのノッチ付きIzod衝撃強度は構造材料として用いるには不十分であり、ポリカーボネート樹脂のノッチ付きIzod衝撃強度以上のものは得られていない。
特開平10−87973号公報(第2頁、第11頁) 特開2005−336408号公報(第2頁、第9頁)
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂が本来有する、優れた機械的性質や耐薬品性を損なうことなく、耐衝撃性に優れ、特にノッチ付きIzod衝撃強度が著しく優れたポリマーアロイを提供することをその課題とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
(1)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂からなり、構造周期が10nm〜500nmの両相連続構造であるポリマーアロイにおいて、構造周期が10nm以上100nm未満の場合は小角X線散乱測定において、構造周期が100nm以上500nm以下の場合は光散乱測定において、散乱光の波数に対して散乱強度をプロットしたスペクトルにおけるピーク半値幅(a)、該ピークの極大波数(b)とするとき0<(a)/(b)≦1.2であることを特徴とするポリマーアロイ。
(2)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相と(B)ポリカーボネート樹脂相の界面積密度が10nm−1以上であることを特徴とする(1)に記載のポリマーアロイ。
(3)前記ポリマーアロイが溶融混練を経て得られたものであることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のポリマーアロイ。
(4)前記溶融混練を少なくとも1カ所以上もしくは一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域もしくは時間が存在する条件下で行うことにより得られたものである(3)に記載のポリマーアロイ。
(5)前記溶融混練を超臨界流体または亜臨界液体の存在下で行うことにより得られたものである(3)に記載のポリマーアロイ。
(6)前記超臨界流体または亜臨界液体が二酸化炭素、または窒素から選ばれた1種以上を含有することを特徴とする(5)に記載のポリマーアロイ。
(7)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂に、さらに(C)テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなり、そのエチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)のモル比[(I)/(II)]が1より小さい非晶ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のポリマーアロイ。
(8)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂を少なくとも1カ所以上もしくは一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域もしくは時間が存在する条件下で溶融混練することを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
(9)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂を超臨界流体または亜臨界液体の存在下で溶融混練することを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
(10)前記超臨界流体または亜臨界液体が二酸化炭素、または窒素から選ばれた1種以上を含有することを特徴とする(9)に記載の製造方法。
(11)(1)〜(7)のいずれかに記載のポリマーアロイからなる成形品。
(12)成形品が射出成形品、フィルムまたはシートである(11)に記載の成形品。
本発明のポリマーアロイは、ポリブチレンテレフタレート樹脂の本来有する、優れた機械的性質や耐薬品性を損なうことなく、耐衝撃性に優れた成形品を得ることができるため、これらの特性を活かした各種成形品として有用に用いることができる。例えば、本発明のポリマーアロイを成形し、ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性(ノッチ付きIzod衝撃強度)を評価すると、衝撃強度が1000J/m以上となり、耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂以上の衝撃強度を有する成形品を得ることができ、耐衝撃性が必要な用途に好適に使用することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とし重縮合反応によって得られる重合体であって、特性を損なわない範囲において共重合成分を含んでも良く、共重合成分の共重合量は全単量体に対して20モル%以下であることが好ましい。
これら重合体および共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられ、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。
またこれら重合体および共重合体は、成形性、機械的特性の観点からo−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60、特に0.52〜1.25の範囲にあるものが好適であり、さらには0.6〜1.0の範囲にあるものが最も好ましい。
本発明で用いる(B)ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA、つまり2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上のジヒドロキシ化合物を主原料とするものが好ましく挙げられる。なかでもビスフェノールA、つまり2,2'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料として製造されたものが好ましい。具体的には、上記ビスフェノールAなどをジヒドロキシ成分として用い、エステル交換法あるいはホスゲン法により得られたポリカーボネートが好ましい。さらに、上記ビスフェノールAは、これと共重合可能なその他のジヒドロキシ化合物、例えば4,4'−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどと併用することも可能であり、その他のジヒドロキシ化合物の使用量は、ジヒドロキシ化合物の総量に対し、10モル%以下であることが好ましい。
また上記ポリカーボネート樹脂は、優れた耐衝撃性と成形性の観点から、ポリカーボネート樹脂0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定したときの比粘度が0.1〜2.0、特に0.5〜1.5の範囲にあるものが好適であり、さらには0.8〜1.5の範囲にあるものが最も好ましい。
また、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂との重量比(A)/(B)が、機械特性、耐薬品性、耐衝撃性の点から、90/10〜10/90であることが好ましく、さらに70/30〜20/80であることが好ましく、特に70/30〜30/70であることが好ましい。
本発明における、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物は、特定の均一な構造周期を有する両相連続構造を有するものである。
ポリマーアロイは、各々の原料となる樹脂の長所を引き出し、短所を補い合うことで、単一の樹脂に比べて優れた特性を発現する。このとき重要となるのが、ポリマーアロイの両相連続構造における構造周期のサイズと均一性である。サイズが大きすぎると、各々の原料の物性が発現するのみで、短所を補い合うことが困難となる。また、サイズが小さすぎると、原料樹脂の特性が失われるため好ましくない。したがって、両相連続構造における構造周期のサイズは、10〜500nmが好ましく、10〜400nmがより好ましく、10〜300nmがさらに好ましい。
上記の両相連続構造は、スピノーダル分解による相分離を用いることにより得ることができる。
一般に、2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、これらの組成に対して、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する相溶系や、逆に全領域で非相溶となる非相溶系や、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態となる、部分相溶系があり、さらにこの部分相溶系には、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離するものと、核生成と成長によって相分離するものがある。
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂ΔGmix/∂φ)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂ΔGmix/∂φ<0の不安定状態であり、外側では∂ΔGmix/∂φ>0である。
またかかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速に変化させた場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]−1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで本発明でいうところの両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行するが、本発明においては、最終的に巨視的な2相に分離する前の所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。
両相連続構造を確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが重要である。これは例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、小角X線散乱装置または光散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることの確認が必要である。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λmは、両相連続構造の場合構造周期に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θmを用いて次式
Λm=(λ/2)/sin(θm/2)
により計算することができる。
また、両相連続構造における構造周期のサイズが10〜500nmの範囲にあっても、一部構造的に粗大な部分などがあると、例えば衝撃を受けた際、そこを起点として破壊が進行するなど、本来のポリマーアロイの特性が得られないことがある。したがって、ポリマーアロイの両相連続構造における構造周期の均一性が重要となる。ここで、小角X線散乱測定および光散乱測定は両相連続構造における構造周期のサイズに加え、その分布に関する情報が得られる。具体的には、それら測定で得られるスペクトルにおける散乱極大のピーク位置、すなわち散乱角θmが両相連続構造における構造周期のサイズに対応し、そのピークの拡がり形が、構造の均一性に対応する。本発明では、均一性の指標として、小角X線散乱測定または光散乱測定において、散乱光の波数に対して散乱強度をプロットしたスペクトルの散乱極大ピーク半値幅に着目した。ただし、ピークの半値幅はピーク極大波数の増加に伴い増大する傾向にあるので、ピークの半値幅(a)、ピーク極大波数(b)とから計算される(a)/(b)の値を構造均一性の指標とした。優れた機械特性などの物理特性を発現するためには、構造均一性が高い方が好ましく、前記(a)/(b)の値においては1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。また、ポリマーアロイの構造は均一である程良いので、(a)/(b)の下限値は特に限定されない。
この均一性は、構造周期が10nm以上100nm未満のポリマーアロイの場合は小角X線散乱測定により、構造周期が100nm以上500nm以下のポリマーアロイの場合は光散乱測定により評価することが可能である。小角X線散乱と光散乱は、分析可能な相分離構造サイズが異なるので、分析するポリマーアロイの相分離構造サイズに応じて適宜使い分けする必要がある。
光散乱測定、小角X線回折測定において、サンプルは薄膜状とする必要がある。薄膜化はミクロトーム等による切片切り出しや、加熱プレスにより可能である。光散乱装置の場合は、厚さ0.1mm程度のカバーガラスにポリマーアロイを挟み込み、加熱プレスすることで簡便に薄膜状試料を得ることが可能である。小角X線回折の場合、カバーガラスによるX線吸収があるため注意が必要である。加熱プレスの場合、熱を加え過ぎたり、プレス時間が長いと、サンプルによっては構造が粗大化する場合があるので、プレス条件の決定は慎重に行う必要がある。また、結晶性樹脂の場合、結晶化によりアロイ構造が変化する可能性があるため加熱プレス後は速やかに急冷し、構造を固定化する必要がある。
薄膜状に調製したサンプルは、中心部分を測定する。サンプルが測定装置の試料ホルダーサイズに対して大きすぎる場合は、サンプルを中心部分から切り出し測定する。サンプルの厚さは、可能な限り大きなシグナル強度が得られるように複数のサンプルを重ねて最適な厚さに調節する。シグナル強度はサンプル厚さに比例して増加するが、測定光の吸収もLanbert-Beerの法則に従い試料厚さに対して指数関数的に増加し、その分シグナル強度が減少するので、両者のバランスに応じて試料厚さを決定する必要がある。
また、屈折率差が小さいポリマーの組み合わせからなるポリマーアロイは、シグナル強度が小さいため測定が困難である。そのような場合、必要に応じてヨウ素、RuO、OsO等の染色試薬で処理することも有効である。ポリマー組成が等比ではない場合など、各ポリマー成分の構造周期または粒子間距離といった構造サイズが異なることがあり、各々のポリマー成分の構造サイズに応じたピークが複数観測されることがある。その際は、散乱光の散乱体内での波長λの常用対数に対して散乱強度Iをプロットし、各々のピークにおける近似二次曲線からピークの半値幅を導出する。このように複数のピークが存在する場合、そのうち少なくとも一つのピークにおいて、前記(a)/(b)の値においては1.2以下であることが好ましく、1.1以下であることがより好ましく、1.0以下であることがさらに好ましい。本発明におけるピークの半値幅とはピークの頂点(点A)からグラフ縦軸に平行な直線を引き、該直線とスペクトルのベースラインとの交点(点B)としたとき、(点A)と(点B)を結ぶ線分の中点(点C)におけるピークの幅である。なお、ここで言うピークの幅とは、ベースラインに平行で、かつ(点C)を通る直線上の幅のことである。
また、本発明のポリマーアロイの構造は、ポリブチレンテレフタレート樹脂相とポリカーボネート樹脂相が互いにより入り組んでいる、すなわち界面積密度が大きいことが好ましい。界面積密度が大きいと、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂が本来有する、優れた特性を最大限に発揮し、より優れた特性を得ることが可能となる。界面積密度の値は、10.0nm−1以上であることが好ましく、10.5nm−1以上であることがより好ましい。
本発明における界面積密度Σ(t)は、上記小角X線散乱測定または光散乱測定により得られたピーク位置の2倍の波数(q)より広角側(Porod領域)の散乱関数により求めることができる。
Porod領域の散乱関数は
I(q)=χ<η>Σq−4exp(−2πt
と書き表され、ln[qI(q)]対qのプロットにおいて、縦切片より界面積密度(Σ)を求めることができる。
ここで、I(q)は散乱関数、χは比例乗数、qは波数、tは界面厚みである。
かかる構造を有するポリマーアロイを得る好ましい方法としては、そのような組成物が得られる限りにおいて特に制限はないが、共通溶媒に溶解後、この溶液から噴霧乾燥、凍結乾燥、非溶媒物質中の凝固、溶媒蒸発によるフィルム生成等の方法により得られる溶媒キャスト法や、溶融混練法、ポリマーの重合過程でスピノーダル分解を誘発する重合時形成法などが挙げられる。中でも溶媒を用いないドライプロセスである溶融混練法が、実用上好ましく用いられる。
しかし、従来の溶媒キャスト法、溶融混練法、重合時形成法では、エステル交換反応の進行やポリマー分解、混練性が不均一となることで、このような均一で、界面積密度が大きい構造を有するポリマーアロイを得ることは困難であった。溶融混練を少なくとも1カ所以上もしくは一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域もしくは時間が存在する条件下で行うことで、均一に混練可能となり、特異的にノッチ付きIzod衝撃強度が向上し、優れた特性を持つポリマーアロイを得ることができる。また、亜臨界液体または超臨界流体の存在下で溶融混練を行うことにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂の粘度差を狭め、均一に混練可能となり、特異的にノッチ付きIzod衝撃強度が向上し、優れた特性を持つポリマーアロイを得ることができる。
上記溶融混練時の樹脂圧力とは、溶融混練装置に取り付けた樹脂圧力計で測定した値であり、ゲージ圧を樹脂圧力とする。
樹脂圧力が2.0MPa以上であれば機械的性能が許す限り特に制限はないが、好ましくは2.0〜30.0MPaの範囲で用いられ、さらには2.0〜25.0MPaの範囲がより好ましく、特に3.0〜20.0MPaの範囲であれば、両相連続構造がより安定して得られやすいため好ましく用いられる。
溶融混練時の樹脂圧力を調整する方法としては、特に制限はないが、例えば(イ)溶融混練温度の低下による樹脂粘度の向上、(ロ)目的の樹脂圧力になるような分子量のポリマーを選択する、(ハ)逆フルフライト、ニーディングブロック、シールリング導入などのスクリューアレンジ変更による樹脂滞留、(ニ)バレル内のポリマー充満率を上げる、(ホ)スクリュー回転数を上げる、(へ)任意の添加剤を混合することによる樹脂粘度の向上などが挙げられる。
上記樹脂圧力は、例えば、押出機を用いて溶融混練する際には、フルフライト部、ニーディングブロック部、吐出口手前部など任意のバレル部分に設けられた樹脂圧力計のゲージ圧で示される値である。本発明では、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂を溶融混練する際に少なくとも1カ所以上樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域が存在すればよい。溶融混練装置の中で逆フルフライトやニーディングブロックによる樹脂滞留箇所が、樹脂圧力が高くなる傾向があるため、これらの樹脂滞留箇所における樹脂圧力を測定し、樹脂圧力が2.0MPa以上となるような条件で溶融混練すればよい。また、本発明では、溶融混練する際に一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる時間が存在すればよい。ここで、樹脂圧力が2.0MPa以上となる時間は1秒以上であることが好ましく、逆フルフライトやニーディングブロックによる樹脂滞留箇所に樹脂が1秒以上滞留することで、一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上になる時間が存在することになる。樹脂圧力が2.0MPa以上になる時間は、さらに好ましくは、5秒から10分程度である。
本発明のポリマーアロイを溶融混練する際は、樹脂圧力が2.0MPa以上、好ましくは2.0〜30.0MPaの範囲となるように、バレル温度、スクリュー回転数、原料供給速度(充満率)、樹脂温度とのバランスを見ながら調整することにより製造することが好ましい。
上記亜臨界液体とは、圧力が臨界圧力以上でありかつ温度が臨界温度未満である液体状態の化合物、または圧力が臨界圧未満でありかつ温度が臨界温度以上である液体状態の化合物、又は、温度及び圧力が共に臨界点未満ではあるがこれに近い状態のものをいう。また、超臨界液体とは、圧力が臨界圧力以上であり、かつ温度が臨界温度以上である状態の化合物をいう。
亜臨界液体又は超臨界流体としては、二酸化炭素、アルコール類、水、不活性ガス等を使用できるが、中でも二酸化炭素、または窒素から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
かかる亜臨界液体又は超臨界流体を供給された条件下での溶融混練方法としては、ポリマーアロイの各成分を予め上述の押出機等を用いて溶融混練したペレットを、撹拌可能なオートクレーブ中で再溶融させ、さらに該オートクレーブ中に亜臨界液体又は超臨界流体を混合する方法や、ポリマーアロイの各成分を、上述の押出機を用いて、供給されるホッパーとヘッド間に、亜臨界液体又は超臨界流体が送液ポンプにより供給される供給口を設ける方法によってできる。かかる亜臨界液体又は超臨界流体の存在下で溶融混練する溶融混練ゾーンは、亜臨界液体又は超臨界流体供給口の上流側および当該ゾーンの下流側にシール板等を設けることにより、溶融混練ゾーンでの圧力を維持できるようにする。また、溶融混練ゾーンにおいては、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂との分散性を向上させるため、高剪断をかけることが好ましく、そのスクリューアレンジはニーディングゾーンを少なくとも1箇所以上設けることが好ましい。押出機としてはニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または2軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または2軸押出機の使用が好ましく、最も好ましくは、2軸押出機の使用である。
また、本発明のポリマーアロイに、さらに(C)テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなり、そのエチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)のモル比[(I)/(II)]が1より小さい非晶ポリエステル樹脂を添加することは、本発明の均一な構造周期を有する両相連続構造をより精密に制御できるため好ましく用いられる。
上記(C)テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなり、そのエチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)のモル比[(I)/(II)]が1より小さい非晶ポリエステルを用いる場合の上記モル比[(I)/(II)]の下限に特に制限はないが、1/99以上であることが好ましい。
(C)テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなり、そのエチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)のモル比[(I)/(II)]が1より小さい非晶ポリエステル樹脂の配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂成分と(B)ポリカーボネート樹脂成分の合計が100重量部に対し、1〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜15重量部、更に好ましくは3〜15重量部である。
本発明で用いる熱可塑性樹脂組成物には、さらに熱硬化性樹脂を本発明の構造を損なわない範囲で含有させることもできる。これらの熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でさらに各種の添加剤を含有させることもできる。これらの添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、ケイ砂、ワラステナイト、ガラスビーズなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、エステル交換反応抑制剤、無機系結晶核剤(タルクなど)、有機系結晶核剤(ソルビトール誘導体、脂肪族カルボン酸アミドなど)、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
本発明における好ましい成形方法としては、任意の方法が可能であり、好ましくは射出成形法、フィルム成形法、シート成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法等により、特に好ましくは射出成形法、フィルム成形法、シート成形法により、射出成形品、フィルム、シート等にすることができる。また、フィルムまたはシートの積層や、波板状の加工や、表面コートなどの後加工を施すことにより得られる成形品であることも好ましい。
本発明の成形品は、耐衝撃性に著しく優れることから、自動車部品、電気電子部品、包装材料など各種用途に好適に使用することができる。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1、2]
表1記載の組成からなる原料を、スクリュー回転数を200rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(尚ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、溶融混練時の樹脂圧力が表1記載の値となるように、ポリマー溶融部以降のバレル温度を165℃〜250℃の間で調整した。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。
該ペレットをヨウ素染色法によりポリカーボネート樹脂を染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して構造の状態を観察した。透過型電子顕微鏡写真では黒色に染色されたポリカーボネート相と、白色のポリブチレンテレフタレート相が、互いに連続相を形成している両相連続構造が観察された。
上記ペレットを260℃、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。該スペクトルにおける、ピークの半値幅(a)、ピーク極大波数(b)、(a)/(b)および構造周期、界面積密度の値を表1に記載した。
また、該ペレットを、ホッパ下から先端に向かって、250℃−255℃−260℃−260℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度30℃とし、保圧10秒、冷却時間15秒の成形サイクルでそれぞれの試験片を成形した。得られた成形品について以下の通り評価し、その結果を表1に記載した。
耐衝撃性:ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性を評価した。7本測定した平均の値とする。
[実施例3、4]
表1記載の組成からなる原料を、混練ゾーンの樹脂供給口よりの部分にガス添加口および混練ゾーンの吐出口よりの部分にベント口を有し、スクリュー回転数を200rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(なおここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、さらに押出機バレルに設けられたガス添加口に液化二酸化炭素ボンベを高圧ポンプを介してつなぎ込み、組成物に対して約5重量%の二酸化炭素を臨界圧力以上の圧力を保ちながら導入し、さらにベント口を減圧状態にし、脱気を行いながら溶融混練を行った。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。
該ペレットをヨウ素染色法によりポリカーボネート樹脂を染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して構造の状態を観察した。透過型電子顕微鏡写真では黒色に染色されたポリカーボネート相と、白色のポリブチレンテレフタレート相が、互いに連続相を形成している両相連続構造が観察された。
上記ペレットを260℃、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。該スペクトルにおける、ピークの半値幅(a)、ピーク極大波数(b)、(a)/(b)および構造周期、界面積密度の値を表1に記載した。
また、該ペレットを、ホッパ下から先端に向かって、250℃−255℃−260℃−260℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度30℃とし、保圧10秒、冷却時間15秒の成形サイクルでそれぞれの試験片を成形した。得られた成形品について以下の通り評価し、その結果を表1に記載した。
耐衝撃性:ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性(ノッチ付きIzod衝撃強度)を評価した。7本測定した平均の値を耐衝撃性とした。
[比較例1]
ポリカーボネート樹脂単体のペレットを、ホッパ下から先端に向かって、280℃−285℃−290℃−290℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度80℃とし、保圧10秒、冷却時間15秒の成形サイクルでそれぞれの試験片を成形した。得られた成形品について以下の通り評価し、その結果を表1に記載した。
耐衝撃性:ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性を評価した。7本測定した平均の値とする。
[比較例2、3]
表1記載の組成からなる原料を、スクリュー回転数を100rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(尚ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、溶融混練時の樹脂圧力が表1記載の値となるように、ポリマー溶融部以降のバレル温度を250℃〜260℃の間で調整した。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。
該ペレットをヨウ素染色法によりポリカーボネート樹脂を染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して構造の状態を観察した。透過型電子顕微鏡写真ではポリカーボネート樹脂からなる平均分散粒径が1.0μm超の分散粒子がポリブチレンテレフタレート樹脂中に分散した相構造を有するものであった。
また、該ペレットを、ホッパ下から先端に向かって、250℃−255℃−260℃−260℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度30℃とし、保圧10秒、冷却時間15秒の成形サイクルでそれぞれの試験片を成形した。得られた成形品について以下の通り評価し、その結果を表1に記載した。
[比較例4、5]
表1記載の組成からなる原料を、スクリュー回転数を300rpmとした2軸スクリュー押出機(JSW社製TEX30XSSST)(L/D=45.5(尚ここでのLは原料供給口から吐出口までの長さである。))に供給し、溶融混練時の樹脂圧力が表1記載の値となるように、ポリマー溶融部以降のバレル温度を250℃〜260℃の間で調整した。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後ストランドカッターでペレタイズしペレットを得た。
該ペレットをヨウ素染色法によりポリカーボネート樹脂を染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して構造の状態を観察した。比較例4は、透過型電子顕微鏡写真では黒色に染色されたポリカーボネート相と、白色のポリブチレンテレフタレート相が、互いに連続相を形成している両相連続構造が観察された。比較例5は、透過型電子顕微鏡写真では1nm以上の構造物がみられず相溶化していることを確認した。
得られた比較例4のペレットを260℃、10s、1.5MPaで加熱プレスを行い、シート(厚み0.1mm)を作製し光散乱スペクトルを測定した。該スペクトルにおける、ピークの半値幅(a)、ピーク極大波数(b)、(a)/(b)および構造周期、界面積密度の値を表1に記載した。
また、比較例4、5のペレットを、ホッパ下から先端に向かって、250℃−255℃−260℃−260℃に設定した住友重機械工業(株)製射出成形機(SG−75H−MIV)で、金型温度30℃とし、保圧10秒、冷却時間15秒の成形サイクルでそれぞれの試験片を成形した。得られた成形品について以下の通り評価し、その結果を表1に記載した。
耐衝撃性:ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性(ノッチ付きIzod衝撃強度)を評価した。7本測定した平均の値を耐衝撃性とした。
Figure 2011012203
以上の結果から、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂を少なくとも1カ所以上もしくは一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域もしくは時間が存在する条件下、または、亜臨界液体または超臨界流体の存在下で溶融混練を行うことで、ピーク半値幅(a)、ピーク極大波数(b)から計算される(a)/(b)の数値が1.2以下となり、構造の均一性が高いポリマーアロイが得られ、これらのポリマーアロイは、ポリカーボネート樹脂単体及び従来の混練方法により得られたポリマーアロイと比較して、ノッチ付きIzod衝撃強度に優れていることがわかる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂に、さらにテレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなり、そのエチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)のモル比[(I)/(II)]が1より小さい非晶ポリエステル樹脂を配合することで、より構造の均一性が高いポリマーアロイが得られ、さらにノッチ付きIzod衝撃強度の点で優れていることがわかる。
なお、使用した樹脂、添加剤は、以下のとおりである。
PBT−1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ(株)製、“トレコン”1050M)
PC−1:ポリカーボネート樹脂(出光興産(株)製、“タフロン”A−2200)
PCTG−1:非晶ポリエステル樹脂 ;テレフタル酸単位とエチレングリコール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位からなるポリエステルであって、かつエチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)のモル比(I)/(II)が、約35/65であるポリエステル(イーストマン・ケミカル社製、“イースター”DN003)
添加剤−1:NaOH(和光順薬(株)製)
添加剤−2:亜燐酸(和光順薬(株)製)
本発明のポリマーアロイおよびその製造方法は、構造を微細に制御することが可能であり、かつ、その構造を均一に分散させることが可能となり、その結果、優れた機械的性質や耐薬品性を損なうことなく、耐衝撃性に優れ、特にノッチ付きIzod衝撃強度が著しく優れたポリマーアロイが得られる。本ポリマーアロイは、これらの特性を活かして構造材料として有用に用いることができる。

Claims (12)

  1. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂からなり、構造周期が10nm〜500nmの両相連続構造であるポリマーアロイにおいて、構造周期が10nm以上100nm未満の場合は小角X線散乱測定において、構造周期が100nm以上500nm以下の場合は光散乱測定において、散乱光の波数に対して散乱強度をプロットしたスペクトルにおけるピーク半値幅(a)、該ピークの極大波数(b)とするとき0<(a)/(b)≦1.2であることを特徴とするポリマーアロイ。
  2. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相と(B)ポリカーボネート樹脂相の、界面積密度が10nm−1以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーアロイ。
  3. 前記ポリマーアロイが溶融混練を経て得られたものであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリマーアロイ。
  4. 前記溶融混練を少なくとも1カ所以上もしくは一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域もしくは時間が存在する条件下で行うことにより得られたものである請求項3に記載のポリマーアロイ。
  5. 前記溶融混練を超臨界流体または亜臨界液体の存在下で行うことにより得られたものである請求項3に記載のポリマーアロイ。
  6. 前記超臨界流体または亜臨界液体が二酸化炭素、または窒素から選ばれた1種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載のポリマーアロイ。
  7. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂に、さらに(C)テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を主とするグリコール単位からなり、そのエチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)のモル比[(I)/(II)]が1より小さい非晶ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリマーアロイ。
  8. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂を少なくとも1カ所以上もしくは一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域もしくは時間が存在する条件下で溶融混練することを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
  9. (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂を超臨界流体または亜臨界液体の存在下で溶融混練することを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
  10. 前記超臨界流体または亜臨界液体が二酸化炭素、または窒素から選ばれた1種以上を含有することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリマーアロイからなる成形品。
  12. 成形品が射出成形品、フィルムまたはシートである請求項11に記載の成形品。
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