JP2011011948A - 圧電/電歪セラミックス焼結体及びそれを用いた圧電/電歪素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】特性向上の要因となりうる熱膨張係数、キュリー点等、新たな指標ないし項目を見出し、それらに基づいて、電気的特性を向上させた圧電/電歪セラミックス焼結体を提供する。
【解決手段】マトリックスとフィラーが、それぞれ、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素をAサイト構成元素として含むとともに、NbをBサイト構成元素として含むペロブスカイト型酸化物を主結晶相とする、多数の粒子が相互に結合した第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料及び第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されており、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の熱膨張係数が、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料に比して低く、マトリックスとフィラーの合計に対する、フィラーの体積分率が、0.5体積%以上、45体積%以下である圧電/電歪セラミックス焼結体である。
【選択図】なし
【解決手段】マトリックスとフィラーが、それぞれ、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素をAサイト構成元素として含むとともに、NbをBサイト構成元素として含むペロブスカイト型酸化物を主結晶相とする、多数の粒子が相互に結合した第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料及び第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されており、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の熱膨張係数が、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料に比して低く、マトリックスとフィラーの合計に対する、フィラーの体積分率が、0.5体積%以上、45体積%以下である圧電/電歪セラミックス焼結体である。
【選択図】なし
Description
本発明は、アクチュエータやセンサーに用いられるニオブ酸アルカリ系の圧電/電歪セラミックス焼結体と、それを用いた圧電/電歪素子に関する。
圧電アクチュエータは、サブミクロンのオーダーで変位を精密に制御することが出来るという利点を有する。特に、圧電/電歪セラミックス焼結体を圧電/電歪体(圧電/電歪素子)として用いた圧電アクチュエータは、上記変位を精密に制御することに加えて、電気機械変換効率が高く、発生力が大きく、応答速度が速く、耐久性が高く、消費電力が少ない、という利点も有することから、これらの利点を生かして、インクジェットプリンタのヘッドやディーゼルエンジンのインジェクタ等に採用されている。
このような圧電アクチュエータ用の圧電/電歪セラミックス焼結体としては、従来、チタン酸ジルコン酸鉛{Pb(Zr,Ti)O3、PZT}系の材料が用いられていたが、焼結体からの鉛の溶質が地球環境に与える影響が強く懸念されるようになってからは、ニオブ酸アルカリ系のものも検討されている(例えば、特許文献1、非特許文献1〜4を参照)。
代表的な圧電/電歪セラミックス焼結体であるPZT系材料では、相境界で圧電特性が高くなることが知られている。相境界とは、組成は同じであるが結晶系が異なる2つ以上の結晶相が混在している状態のことである。例えば、Zr=Ti=0.5近傍において、正方晶と菱面体晶が共存する状態(相境界)となり、圧電特性が高くなる。
これに対し、ニオブ酸アルカリ系の圧電/電歪セラミックス焼結体では、正方晶と斜方晶の相境界で特性が高くなるといわれている。AサイトにKとNaのみを含む場合は、正方晶と斜方晶の相境界温度が200℃以上となるため、室温近傍での特性は低いが、LiをAサイトに置換することによって相境界温度を下げ、室温近傍の特性を高くした研究(非特許文献3を参照)が報告されてからは、Liを含む組成が主流となっている。X線回折法を用いた解析では、ニオブ酸アルカリ系の圧電/電歪セラミックス焼結体の主結晶相であるペロブスカイト型酸化物の結晶系は、正方晶、又は斜方晶、又は正方晶と斜方晶の混晶、と報告されている。
そして、このような技術の流れを背景として、従来から、電気的特性を向上させるために、緻密化度向上(例えば、非特許文献1を参照)、元素置換(例えば、非特許文献3を参照)、配向構造(例えば、非特許文献4を参照)といった試みがなされている。
M.Matsubara et.al.,Jpn.J.Appl.Phys. 44(2005)pp.6136−6142.
E.Hollenstein et.al.,Appl.Phys.Lett. 87(2005)182905.
Y.Guo et.al.,App.Phys.Lett.85 (2004)4121
Y.Saito et.al.,Nature 432,84−87(2004)
K.Kakimoto et.al.,Jpn.J.Appl.Phys.Vol.44 No.9B(2005)7064
A.Suchocki et.al.,Appl.Phys.Lett. 89(2006)261908
しかしながら、これまでのニオブ酸アルカリ系の圧電/電歪セラミックス焼結体では、例えば電界誘起歪S4000は必ずしも十分ではなく、この電界誘起歪等の電気的特性を、更に向上させたニオブ酸アルカリ系の圧電/電歪セラミックス焼結体が望まれている。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、特性向上の要因となりうる新たな指標ないし項目を見出し、それに基づいて電気的特性を向上させたニオブ酸アルカリ系の圧電/電歪セラミックス焼結体を提供することである。
研究が重ねられた結果、圧電/電歪セラミックス焼結体をコンポジット化した材料(複合材料、又はコンポジット焼結体)とするとともに、コンポジット焼結体を構成する材料に熱膨張差をもたせて粒界及び粒内の応力を制御することによって電気的特性を向上させ得ることを見出し、以下に示す本発明が完成した。
即ち、本発明によれば、マトリックスとフィラーを含むとともに、マトリックスとフィラーがコンポジット化した構造を有する焼結体である圧電/電歪セラミックス焼結体が提供される。本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体は、マトリックスとフィラーが、それぞれ、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素をAサイト構成元素として含むとともに、NbをBサイト構成元素として含むペロブスカイト型酸化物を主結晶相とする、多数の粒子が相互に結合した第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料及び第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されている。
そして、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の熱膨張係数が、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料に比して低いものである。更には、マトリックスとフィラーの合計に対する、フィラーの体積分率が、0.5体積%以上、45体積%以下である。なお、圧電/電歪セラミックス焼結体が気孔部を有するものである場合、この気孔部の容積は「マトリックスとフィラーの合計」から除外するものとする。
本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体においては、フィラーの体積分率が、0.5体積%以上、45体積%以下であり、2体積%以上、35体積%以下であることが好ましく、4体積%以上、25体積%以下であることが更に好ましい。
また、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体においては、マトリックスについてラマン分光分析を行ったときに得られる第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のν1伸縮モードのラマン・スペクトルにおいて、粒界に比して粒内の方が、スペクトル波数が3cm−1を超えて高波側にシフトしていることが好ましい。本明細書にいう「スペクトル波数」とは、ラマン・スペクトルの強度が最も高くなるピーク・トップの波数を意味する。
本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体においては、粒界に比して、スペクトル波数が3cm−1を超えて高波側にシフトしている粒内の領域が、面積基準で、10%以上、50%以下存在することが好ましく、15%以上、50%以下存在することが更に好ましく、20%以上、50%以下存在することが特に好ましい。
圧電/電歪セラミックス焼結体のマトリックスは、組成式:ABO3(Aは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素を示し、Bは、Nbを示す)で表されるペロブスカイト型酸化物を主結晶相とする、多数の粒子が相互に結合した第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されている。換言すれば、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体のマトリックスは、AサイトにLi、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素、BサイトにNbを含む第一のペロブスカイト型酸化物で構成されている。
また、圧電/電歪セラミックス焼結体のフィラーは、組成式:ABO3(Aは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素を示し、Bは、Nbを示す)で表されるペロブスカイト型酸化物を主結晶相とする、多数の粒子が相互に結合した第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されている。換言すれば、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体のフィラーは、AサイトにLi、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素、BサイトにNbを含む第二のペロブスカイト型酸化物で構成されている。
フィラーを構成する第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のキュリー点(Tc2)は、マトリックスを構成する第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のキュリー点(Tc1)に比して高いことが、圧電/電歪セラミックス焼結体の電気的特性が更に向上するために好ましい。換言すれば、本発明の圧電/電歪セラミックス焼結体は、「Tc2>Tc1」の要件を満たすものであることが好ましい。
上述のように、「Tc2>Tc1」の要件を満たすためには、具体的には、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のc/a比の値を、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のc/a比の値に比して大きくすることが好ましい。また、同様の観点から、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成するペロブスカイト型酸化物のAサイト構成元素とBサイト構成元素の構成比(A/B比)を、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成するペロブスカイト型酸化物のAサイト構成元素とBサイト構成元素の構成比(A/B比)に比して小さくすることが好ましい。
電気的特性向上の観点からは、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料と第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のそれぞれを構成するペロブスカイト型酸化物は、いずれも、Bサイト構成元素としてTaとSbの少なくともいずれかを更に含むものであることが好ましい。
ペロブスカイト型酸化物が、Bサイト構成元素としてTaを含むものである場合において、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成するペロブスカイト型酸化物に含まれるTaの割合が、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成するペロブスカイト型酸化物に含まれるTaの割合に比して少ないことが、前述の「Tc2>Tc1」の要件を満たし易くなるために好ましい。
同様に、ペロブスカイト型酸化物が、Bサイト構成元素としてSbを含むものである場合において、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成するペロブスカイト型酸化物に含まれるSbの割合が、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成するペロブスカイト型酸化物に含まれるSbの割合に比して少ないことが、前述の「Tc2>Tc1」の要件を満たし易くなるために好ましい。
圧電/電歪セラミックス焼結体を構成するマトリックスとフィラーの少なくともいずれかには、微量添加元素が含有されていることが好ましい。微量添加元素の具体例としては、Bi、Ba、Sr、Ca、La、Ce、Nd、及びSmからなる群より選択される少なくとも一種の元素を挙げることができる。これらの微量添加元素が含有されると、マトリックスやフィラーの単体での歪率が向上するとともに、コンポジット焼結体である圧電/電歪セラミックス焼結体全体の歪率も向上する傾向にある。なお、微量添加元素は、通常はペロブスカイト型酸化物中に固溶するが、一部は異相中に取り込まれる場合もある。
次に、本発明によれば、上述のいずれかの圧電/電歪セラミックス焼結体からなる膜状の圧電/電歪体と、圧電/電歪体を挟んで配設される一対の電極と、一対の電極のいずれかの面に接合される基板と、を備える圧電/電歪素子が提供される。
本発明に係る圧電/電歪素子においては、基板の材料が、酸化ジルコニウム(ジルコニア)又は金属であることが好ましい。
耐熱性、化学的安定性、及び絶縁性の点から、酸化ジルコニウムは、安定化されたものであることが好ましい。基板の材料として、他に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、及びガラスからなる群より選択される少なくとも一種のセラミックスを挙げることが出来る。
電極の材料としては、Pt、Pd、Rh、Au、Ag、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属を挙げることが出来る。中でも、圧電/電歪体を焼成する際の耐熱性が高い点で、白金、又は白金を主成分とする合金が好ましい。又、より低い焼成温度で圧電/電歪体が形成され得ることからみれば、Ag−Pd等の合金も好適に用いることが可能である。
本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体は、マトリックスとフィラーがコンポジット化した構造を有する焼結体であり、マトリックスが第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されているとともに、この第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料に比して熱膨張係数が低い第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料(低熱膨張材料)でフィラーが構成されているものである。このため、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体は、マトリックスを構成する粒子の内部(粒内)に圧縮応力が導入されており、高い電気的特性(電界誘起歪、比誘電率、圧電定数、誘電損失等)を示すものである。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
先ず、本発明に係るニオブ酸アルカリ系の圧電/電歪セラミックス焼結体の詳細について説明する。本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体は、マトリックスとフィラーからなるコンポジット焼結体であり、マトリックスが第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されているとともに、フィラーが、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料よりも熱膨張係数が低い第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料(低熱膨張材料)で構成されているものである。
例えば、マトリックス原料として、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を用いるとともに、この第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料よりも熱膨張係数が低い第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料(低熱膨張材料)をフィラー原料として用いる。これらのマトリックス原料とフィラー原料を所定の体積比で混合したものを焼成してコンポジット化すれば、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体を製造することができる。
圧電/電歪セラミックス焼結体のマトリックスを構成する第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料からなる多数の粒子の粒内には、圧縮応力が導入される。その結果、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のν1伸縮モードのラマン・スペクトルにおいては、粒界に比して粒内の方が、スペクトル波数が3cm−1を超えて高波側にシフトしている状態となる。
このように、マトリックスを構成する第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料からなる多数の粒子の粒内に圧縮応力が導入されていると、極めて高い電気的特性を発現する圧電/電歪セラミックス焼結体となり得る。従って、ラマン分光分析法により測定されるラマン・スペクトルのν1伸縮モードのスペクトル波数は、高い電気的特性を有する圧電/電歪セラミックス焼結体を得るための重要な指標ないし項目ということが出来る。
フィラーを構成する低熱膨張材料である第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料は、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料と同様に、ペロブスカイト型酸化物を主結晶相とするものである。即ち、フィラーは圧電/電歪材料によって形成されているため、フィラー自体もマトリックスと同様、圧電/電歪特性を発揮しうる構成部分である。
なお、マトリックスを構成する第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の主結晶相であるペロブスカイト型酸化物と、フィラーを構成する第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の主結晶相であるペロブスカイト型酸化物とは、(1)構成元素の種類及び/又は(2)構成元素の組成比が異なるものである。このように、構成元素の種類や組成比を異なるものとすることによって、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の熱膨張係数を、第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の熱膨張係数に比して低くすることができる。
上述のように、マトリックスとフィラーは、それぞれを構成するニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の主結晶相であるペロブスカイト型酸化物の構成元素の種類、或いは構成元素の組成比が異なっている。このため、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)によって元素分析することにより、マトリックスとフィラーをそれぞれ認識することができる。
次に、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体を製造する方法の一例について説明する。先ず、マトリックス原料粉末とフィラー原料粉末をそれぞれ調製する。
マトリックス原料粉末は、ニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物を主結晶相として含む仮焼/粉砕粉である。マトリックス原料粉末を調製するには、先ず、ペロブスカイト型酸化物の組成中のそれぞれの金属元素の割合(モル比)を満たすように、それぞれの金属元素を含有する化合物を秤量し、ボールミル等の混合方法によりエタノール等の溶剤と混合して混合スラリーを得る。それぞれの金属元素を含有する化合物としては、各金属元素の酸化物、炭酸塩、又は酒石酸塩等が好適に用いられる。具体的には、炭酸リチウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、酸化ニオブ、酸化タンタルを用いることが出来る。
次いで、得られた混合スラリーを、乾燥器の使用、又は濾過等の操作によって乾燥した後、仮焼し、粉砕すれば、マトリックス原料粉末(仮焼/粉砕粉)を得ることができる。粉砕はボールミル等の方法により行えばよい。仮焼し、粉砕して得られるマトリックス原料粉末の平均粒径は、0.1μm以上、1μm以下とすることが好ましい。なお、本明細書にいう「平均粒径」とは、累積分布における50%径(メジアン径)を意味する。
フィラー原料粉末は、上述したマトリックス原料粉末を調製する方法に準じて調製することが出来る。高い圧電特性を示す圧電/電歪セラミックス焼結体を製造するためには、マトリックス原料粉末を焼成して得られる焼結体に比して、フィラー原料粉末を焼成して得られる焼結体の熱膨張係数が低くなることが必要である。
なお、仮焼、粉砕後のフィラー原料粉末は、950℃以上で焼成して粒成長させた後に粉砕し、更に分級器を用いて分級して、平均粒径を0.5μm以上、10μm以下とすることが好ましく、1μm以上、5μm以下とすることが更に好ましい。フィラー原料粉末の平均粒径が0.5μm未満であると、フィラー原料粉末とマトリックス原料粉末が反応(固溶)し易くなり、得られる圧電/電歪セラミックス焼結体の結晶相や組成が均一又は均一に近い状態になってしまう(即ち、コンポジット構造にならない)場合がある。一方、フィラー原料粉末の平均粒径が10μm超であると、焼成が困難になる場合があり、得られる圧電/電歪セラミックス焼結体の密度が低下するとともに、歪特性の変動が大きく安定した歪特性を得ることが困難になる傾向にある。なお、フィラー原料粉末の平均粒径は、マトリックス原料粉末の平均粒径よりも大きいことが好ましい。
マトリックスとフィラーをコンポジット化した焼結体(圧電/電歪セラミックス焼結体)のフィラーの体積分率が、0.5体積%以上、45体積%以下となるようにフィラー原料粉末をマトリックス原料粉末に加えて混合した後、ペレット状に成形し、焼成する。
焼成は、高温で焼成(保持)する第一工程と、第一工程に比して低温で焼成(保持)する第二工程を有する二段階焼成方法によって、酸素雰囲気下で実施することが好ましい。このような二段階焼成方法で焼成を行うと、相対密度が高く、十分に緻密な圧電/電歪セラミックス焼結体を得ることができる。
第一工程は、昇温速度:≧300℃/時間、保持温度:1000〜1200℃、保持時間:0.1〜5分とすることが好ましく、昇温速度:≧500℃/時間、保持温度:1000〜1100℃、保持時間:0.5〜2分とすることが更に好ましい。また、第二工程は、第一工程に引き続き、降温速度:300〜2000℃/時間、保持温度:700〜1000℃、保持時間:0.5〜30時間とすることが好ましく、降温速度:≧600℃/時間、保持温度:800〜990℃、保持時間:1〜15時間とすることが更に好ましい。
焼成後、必要に応じて適当な形状(例えば、短冊状)に加工し、更に分極処理を行うことにより、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体を得ることが出来る。なお、分極処理は、通常、5kV/mm程度の電圧を15分以上印加して行えばよい。
次に、本発明に係る圧電/電歪素子の詳細について、図面を参照しつつ説明する。図3は、本発明の圧電/電歪素子の一実施形態を模式的に示す断面図である。図3に示すように、本実施形態の圧電/電歪素子10は、例えばジルコニアからなる基板1と、膜状の圧電/電歪体2と、この圧電/電歪体2を挟んで設けられた一対の膜状の電極4,5と、が積層されてなるものである。本実施形態の圧電/電歪素子10の圧電/電歪体2は、前述の圧電/電歪セラミックス焼結体からなるものである。なお、図3においては一層の圧電/電歪体2を備えた圧電/電歪素子10が示されているが、圧電/電歪体は一層に限定されることはなく、多層にすることも好ましい。
圧電/電歪体2は、電極4を介在させた状態で基板1上に固着されている。圧電/電歪体2と基板1は、接着剤等を用いることなく、圧電/電歪体2と基板1の固相反応による緊密一体化によって固着されていることが好ましい。
圧電/電歪素子10を構成する圧電/電歪体2の厚さは、0.5〜50μmであることが好ましく、0.8〜40μmであることが更に好ましく、1.0〜30μmであることが特に好ましい。圧電/電歪体2の厚さが0.5μm未満であると、圧電/電歪体2の緻密化が不十分となる場合がある。一方、圧電/電歪体2の厚さが50μm超であると、焼成時の圧電/電歪体2の収縮応力が大きくなり、基板1が破壊されるのを防止するために基板1を厚くする必要があり、圧電/電歪素子を小型化することが困難になる場合がある。
基板1の厚さは、1μm〜1mmであることが好ましく、1.5〜500μmであることが更に好ましく、2〜200μmであることが特に好ましい。基板1の厚さが1μm未満であると、圧電/電歪素子10の機械的強度が低下する場合がある。一方、基板1の厚さが1mm超であると、圧電/電歪体2に電界を印加した場合に、発生する収縮応力に対する基板1の剛性が大きくなり、圧電/電歪体2の屈曲変位が小さくなってしまうおそれがある。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[ラマン分光分析]
以下に示す実施例で行ったラマン分光分析について説明する。ラマン分光分析を行うに際しては、励起波長532nmのレーザーを搭載したラマン分光分析装置を用いた。電気的特性を評価するために短冊状に加工した試料を分析対象とした。加えて、応力フリー時のデータを得るために、焼結体粉砕粉も分析対象とした。焼結体粉砕粉の場合、粉砕時の応力を除去するため、分析前に大気中において600〜900℃で1時間熱処理を実施した。短冊状に加工した試料では、加工歪を除去するため、分析前に試料の断面を、Arイオンを用いたCP法(Cross−Section Polishing)により研磨した。また、ラマン分光分析装置のレーザー径を約0.4μmとし、スペクトル波数のマッピング分析(XY走査ステップ幅:0.4μm)を行った。なお、測定温度は室温とした。
以下に示す実施例で行ったラマン分光分析について説明する。ラマン分光分析を行うに際しては、励起波長532nmのレーザーを搭載したラマン分光分析装置を用いた。電気的特性を評価するために短冊状に加工した試料を分析対象とした。加えて、応力フリー時のデータを得るために、焼結体粉砕粉も分析対象とした。焼結体粉砕粉の場合、粉砕時の応力を除去するため、分析前に大気中において600〜900℃で1時間熱処理を実施した。短冊状に加工した試料では、加工歪を除去するため、分析前に試料の断面を、Arイオンを用いたCP法(Cross−Section Polishing)により研磨した。また、ラマン分光分析装置のレーザー径を約0.4μmとし、スペクトル波数のマッピング分析(XY走査ステップ幅:0.4μm)を行った。なお、測定温度は室温とした。
[キュリー点の測定方法]
キュリー点測定装置を使用し、昇温過程におけるニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の誘電率を測定した。誘電率が最大となる温度を「キュリー点(キュリー温度)」とした。
キュリー点測定装置を使用し、昇温過程におけるニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の誘電率を測定した。誘電率が最大となる温度を「キュリー点(キュリー温度)」とした。
[c/a比の算出方法]
対象試料のX線回折プロファイルを測定し、半値幅中点法、又はピーク・トップ法により、c軸とa軸との比である「c/a比」(正方晶性)を算出した。
対象試料のX線回折プロファイルを測定し、半値幅中点法、又はピーク・トップ法により、c軸とa軸との比である「c/a比」(正方晶性)を算出した。
(参考例1)
[{Liy(Na1−xKx)1−y}1‐tBit]a(Nb1−zTaz)O3(x=0.450、y=0.060、z=0.082、a=1.01、t=0.0005)+0.05mol%MnO2の組成からなる仮焼/粉砕粉(粒径0.2〜0.5μm、粒形状は球状)をペレット状に成形し、複数のペレット状試料を得た。これらペレット状試料を、大気中で200℃/時間の速度で焼成温度970℃まで昇温した。970℃で3時間保持した後、200℃/時間の速度で室温まで冷却し、圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた圧電/電歪セラミックス焼結体の相対密度は94〜95%、熱膨張係数は7×10−6(1/K)、キュリー点(Tc1(℃))は420℃、及びc/a比は1.020であった。
[{Liy(Na1−xKx)1−y}1‐tBit]a(Nb1−zTaz)O3(x=0.450、y=0.060、z=0.082、a=1.01、t=0.0005)+0.05mol%MnO2の組成からなる仮焼/粉砕粉(粒径0.2〜0.5μm、粒形状は球状)をペレット状に成形し、複数のペレット状試料を得た。これらペレット状試料を、大気中で200℃/時間の速度で焼成温度970℃まで昇温した。970℃で3時間保持した後、200℃/時間の速度で室温まで冷却し、圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた圧電/電歪セラミックス焼結体の相対密度は94〜95%、熱膨張係数は7×10−6(1/K)、キュリー点(Tc1(℃))は420℃、及びc/a比は1.020であった。
得られた圧電/電歪セラミックス焼結体の一部を粉砕して得られた焼結体粉砕粉を熱処理し、粉砕時の応力を除去した。応力除去後の焼結体粉砕粉についてラマン分光分析を行い、ラマン・スペクトルを得た。
図1は、参考例1で調製した焼結体粉砕粉のラマン・スペクトルである。非特許文献5と同様に、主に4つのスペクトルが観察され、Li+転位・回転モード(144cm−1付近)、ν5変角モード(266cm−1付近)、ν1伸縮モード(624cm−1付近)、ν1+ν5結合モード(863cm−1付近)と分類された。Li+転位・回転モードとν5変角モードはスペクトルの重なりが大きく、ν1+ν5結合モードは元々2つのモードが重なったスペクトルであった。それに対し、ν1伸縮モードは、ほぼ単独のスペクトルであった。従って、ν1伸縮モードを用い、スペクトルシフト最大値と高波数領域を求めた。
得られた圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を、大気中、600〜900℃で1時間熱処理して加工応力を除去した。その後、25℃に保持したシリコンオイル中で5kV/mmの電圧で15分間分極処理を行い、電界誘起歪S4000を測定した。電界誘起歪S4000とは、4kV/mmの電界を加えたときの31方向(電界印加方向に対して垂直方向)の歪量である。
電界誘起歪S4000を測定した後の短冊状試料を切断し、断面をCP法により研磨して研磨面を形成した。研磨面についてラマン分光分析を行い、ν1伸縮モードのスペクトル波数のマッピングを得た。そのマッピングに基づいてν1伸縮モードにおけるスペクトルシフト最大値と高波数領域を求めた。結果を、電界誘起歪S4000とともに表1に示す。
[スペクトルシフト最大値]
表中の「スペクトルシフト最大値」とは、マトリックス部(第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料)の粒界部分と粒内部分のスペクトル波数の差の最大値を意味する。
表中の「スペクトルシフト最大値」とは、マトリックス部(第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料)の粒界部分と粒内部分のスペクトル波数の差の最大値を意味する。
[高波数領域]
表中の「高波数領域」とは、短冊状試料のマトリックス部のスペクトル波数が、焼結体粉砕粉(ペロブスカイト型酸化物)のスペクトル波数より、3cm−1を超えて高波数側にシフトしている領域のマトリックス全体に対する面積比率を意味する。
表中の「高波数領域」とは、短冊状試料のマトリックス部のスペクトル波数が、焼結体粉砕粉(ペロブスカイト型酸化物)のスペクトル波数より、3cm−1を超えて高波数側にシフトしている領域のマトリックス全体に対する面積比率を意味する。
(比較例1)
表2に示す組成(マトリックス)としたこと以外は、前述の参考例1と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた圧電/電歪セラミックス焼結体の相対密度は94〜95%、熱膨張係数は6.0×10−6(1/K)、キュリー点(Tc1(℃))は330℃、及びc/a比は1.015であった。次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。スペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表2に示す。
表2に示す組成(マトリックス)としたこと以外は、前述の参考例1と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた圧電/電歪セラミックス焼結体の相対密度は94〜95%、熱膨張係数は6.0×10−6(1/K)、キュリー点(Tc1(℃))は330℃、及びc/a比は1.015であった。次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。スペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表2に示す。
(実施例1〜3及び比較例2)
[{Li0.06(K0.45Na0.55)0.94}0.9995Bi0.0005]1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.05mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、[{Li0.06(K0.45Na0.55)0.94}0.9995Bi0.0005]1.00(Nb0.918Ta0.082)O3+0.05mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ用意した。マトリックスとフィラーをコンポジット化した焼結体(圧電/電歪セラミックス焼結体)の全体(正し、気孔部を除く)に対する、フィラーの体積分率が、0.5体積%(実施例1)、20体積%(実施例2)、45体積%(実施例3)、及び50体積%(比較例2)となるようにマトリックス原料粉末とフィラー原料粉末を混合した後、ペレット状に成形し、複数のペレット状試料を得た。これらのペレット状試料を大気中、500〜1000℃/時間の速度で1000〜1100℃まで昇温し、1〜2分間保持した後、300〜2000℃/時間の速度で850〜990℃まで冷却し、更に1〜15時間保持した後、室温まで冷却して圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
[{Li0.06(K0.45Na0.55)0.94}0.9995Bi0.0005]1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.05mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、[{Li0.06(K0.45Na0.55)0.94}0.9995Bi0.0005]1.00(Nb0.918Ta0.082)O3+0.05mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ用意した。マトリックスとフィラーをコンポジット化した焼結体(圧電/電歪セラミックス焼結体)の全体(正し、気孔部を除く)に対する、フィラーの体積分率が、0.5体積%(実施例1)、20体積%(実施例2)、45体積%(実施例3)、及び50体積%(比較例2)となるようにマトリックス原料粉末とフィラー原料粉末を混合した後、ペレット状に成形し、複数のペレット状試料を得た。これらのペレット状試料を大気中、500〜1000℃/時間の速度で1000〜1100℃まで昇温し、1〜2分間保持した後、300〜2000℃/時間の速度で850〜990℃まで冷却し、更に1〜15時間保持した後、室温まで冷却して圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。フィラーとマトリックスのそれぞれの熱膨張係数、キュリー点、及びc/a比の測定結果、並びにスペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表2に示す。
なお、本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体を断面の状態を示す模式図を図2に示す。図2においては、マトリックス20と、低熱膨張材料で構成されたフィラー30とからなる圧電/電歪セラミックス焼結体50(コンポジット焼結体)が模式的に示されている。
(比較例3)
表3に示す組成(マトリックス)としたこと以外は、前述の参考例1と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた圧電/電歪セラミックス焼結体の相対密度は94〜95%であった。また、熱膨張係数、キュリー点、及びc/a比の測定結果を表3〜6に示す。次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。スペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表3〜6に示す。
表3に示す組成(マトリックス)としたこと以外は、前述の参考例1と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた圧電/電歪セラミックス焼結体の相対密度は94〜95%であった。また、熱膨張係数、キュリー点、及びc/a比の測定結果を表3〜6に示す。次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。スペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表3〜6に示す。
(実施例4〜6及び比較例4)
{Li0.07(K0.36Na0.64)0.93}1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、{Li0.07(K0.45Na0.55)0.93}0.95(Nb0.938Ta0.022Sb0.040)O3+0.05mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1〜3及び比較例2と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
{Li0.07(K0.36Na0.64)0.93}1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、{Li0.07(K0.45Na0.55)0.93}0.95(Nb0.938Ta0.022Sb0.040)O3+0.05mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1〜3及び比較例2と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。フィラーとマトリックスのそれぞれの熱膨張係数、キュリー点、及びc/a比の測定結果、並びにスペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表3に示す。
(実施例7〜9及び比較例5)
{Li0.07(K0.36Na0.64)0.93}1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、{Li0.07(K0.45Na0.55)0.93}1.01(Nb0.977Ta0.022Sb0.001)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1〜3及び比較例2と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
{Li0.07(K0.36Na0.64)0.93}1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、{Li0.07(K0.45Na0.55)0.93}1.01(Nb0.977Ta0.022Sb0.001)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1〜3及び比較例2と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。フィラーとマトリックスのそれぞれの熱膨張係数、キュリー点、及びc/a比の測定結果、並びにスペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表4に示す。
(実施例10〜12及び比較例6)
{Li0.07(K0.36Na0.64)0.93}1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、{Li0.07(K0.45Na0.55)0.93}1.01(Nb0.938Ta0.022Sb0.040)O3+0.05mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1〜3及び比較例2と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
{Li0.07(K0.36Na0.64)0.93}1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、{Li0.07(K0.45Na0.55)0.93}1.01(Nb0.938Ta0.022Sb0.040)O3+0.05mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1〜3及び比較例2と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。フィラーとマトリックスのそれぞれの熱膨張係数、キュリー点、及びc/a比の測定結果、並びにスペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表5に示す。
(実施例13〜15及び比較例7)
{Li0.07(K0.36Na0.64)0.93}1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、{Li0.08(K0.45Na0.55)0.92}1.01(Nb0.938Ta0.016Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1〜3及び比較例2と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
{Li0.07(K0.36Na0.64)0.93}1.01(Nb0.878Ta0.082Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなる仮焼/粉砕粉(マトリックス原料粉末、粒径:0.2〜0.5μm)と、{Li0.08(K0.45Na0.55)0.92}1.01(Nb0.938Ta0.016Sb0.040)O3+0.10mol%Sr+0.02mol%Mnの組成からなるフィラー原料粉末(粒径:1〜5μm)をそれぞれ使用したこと以外は、前述の実施例1〜3及び比較例2と同様にして圧電/電歪セラミックス焼結体を得た。得られた焼結体の相対密度は94〜95%であった。
次いで、参考例1と同様にして、圧電/電歪セラミックス焼結体から焼結体粉砕粉を得て、熱処理を施し、粉砕時の応力を除去した。また、圧電/電歪セラミックス焼結体を加工して得た短冊状試料を熱処理、分極処理を施した後、電界誘起歪S4000を測定した。また、参考例1と同様にしてスペクトルシフト最大値及び高波数領域を求めた。フィラーとマトリックスのそれぞれの熱膨張係数、キュリー点、及びc/a比の測定結果、並びにスペクトルシフト最大値、高波数領域、及び電界誘起歪S4000の測定結果を表6に示す。
(考察)
実施例1〜15及び比較例1〜7の結果より、コンポジット焼結体である圧電/電歪セラミックス焼結体について以下のことが分かる。熱膨張係数の低い第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料をフィラーとして用いたコンポジット焼結体である圧電/電歪セラミックス焼結体(実施例1〜15)は、コンポジット化していない圧電/電歪セラミックス焼結体(比較例1及び3)に比して、電気的特性が向上していた。これは、低熱膨張材料である第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料をフィラーとして用いた場合、焼成後の降温過程において、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料に比して熱膨張係数の高い第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されたマトリックスの粒内に圧縮応力が導入されたためであると推測される。
実施例1〜15及び比較例1〜7の結果より、コンポジット焼結体である圧電/電歪セラミックス焼結体について以下のことが分かる。熱膨張係数の低い第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料をフィラーとして用いたコンポジット焼結体である圧電/電歪セラミックス焼結体(実施例1〜15)は、コンポジット化していない圧電/電歪セラミックス焼結体(比較例1及び3)に比して、電気的特性が向上していた。これは、低熱膨張材料である第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料をフィラーとして用いた場合、焼成後の降温過程において、第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料に比して熱膨張係数の高い第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されたマトリックスの粒内に圧縮応力が導入されたためであると推測される。
なお、スペクトルシフト最大値が大きく、高波数領域が大きい、即ち、より圧縮応力が導入された圧電/電歪セラミックス焼結体であるほど、電気的特性が高いことが確認された。但し、フィラーの体積分率が45体積%を超えると(比較例2及び4〜7)、圧縮応力は導入されるものの、電気的特性は低下していることが判明した。これは、実質的な圧電特性を発現するマトリックスを構成するニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の相対的な含有率が低下するためであると推測される。
本発明に係る圧電/電歪セラミックス焼結体は、優れた電界誘起歪を示すものであり、アクチュエータ、センサー等を構成する圧電/電歪素子(圧電/電歪体)の材料として好適に利用される。
1:基板、2:圧電/電歪体、4,5:電極、10:圧電/電歪素子、20:マトリックス、30:フィラー、50:圧電/電歪セラミックス焼結体
Claims (12)
- マトリックスとフィラーを含むとともに、前記マトリックスと前記フィラーがコンポジット化した構造を有する焼結体であり、
前記マトリックスと前記フィラーが、それぞれ、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素をAサイト構成元素として含むとともに、NbをBサイト構成元素として含むペロブスカイト型酸化物を主結晶相とする、多数の粒子が相互に結合した第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料及び第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料で構成されており、
前記第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料の熱膨張係数が、前記第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料に比して低く、
前記マトリックスと前記フィラーの合計に対する、前記フィラーの体積分率が、0.5体積%以上、45体積%以下である圧電/電歪セラミックス焼結体。 - 前記マトリックスについてラマン分光分析を行ったときに得られる前記第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のν1伸縮モードのラマン・スペクトルにおいて、粒界に比して粒内の方が、スペクトル波数が3cm−1を超えて高波側にシフトしている請求項1に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。
- 前記粒界に比して、スペクトル波数が3cm−1を超えて高波側にシフトしている前記粒内の領域が、面積基準で、10%以上、50%以下存在する請求項2に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。
- 前記第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のキュリー点(Tc2)が、前記第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のキュリー点(Tc1)に比して高い請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。
- 前記第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のc/a比の値が、前記第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料のc/a比の値に比して大きい請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。
- 前記第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成する前記ペロブスカイト型酸化物のAサイト構成元素とBサイト構成元素の構成比(A/B比)が、
前記第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成する前記ペロブスカイト型酸化物のAサイト構成元素とBサイト構成元素の構成比(A/B比)に比して小さい請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。 - 前記ペロブスカイト型酸化物が、Bサイト構成元素としてTaとSbの少なくともいずれかを更に含むものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。
- 前記第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成する前記ペロブスカイト型酸化物に含まれるTaの割合が、
前記第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成する前記ペロブスカイト型酸化物に含まれるTaの割合に比して少ない請求項7に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。 - 前記第二のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成する前記ペロブスカイト型酸化物に含まれるSbの割合が、
前記第一のニオブ酸アルカリ系圧電/電歪材料を構成する前記ペロブスカイト型酸化物に含まれるSbの割合に比して少ない請求項7又は8に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。 - 微量添加元素として、Bi、Ba、Sr、Ca、La、Ce、Nd、及びSmからなる群より選択される少なくとも一種の元素が、前記マトリックスと前記フィラーの少なくともいずれかに含有されている請求項1〜9のいずれか一項に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の圧電/電歪セラミックス焼結体からなる膜状の圧電/電歪体と、
前記圧電/電歪体を挟んで配設される一対の電極と、
前記一対の電極のいずれかの面に接合される基板と、
を備える圧電/電歪素子。 - 前記基板の材料が、酸化ジルコニウム又は金属である請求項11に記載の圧電/電歪素子。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2009
- 2009-07-02 JP JP2009157807A patent/JP2011011948A/ja not_active Withdrawn
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