以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
[第1形態]
図1(a)は第1形態に係る媒体温度調整システム1の模式図であって、媒体温度調整システム1は、塗装工場に設置されており、塗装を施す前にワークの洗浄を行うための温媒体としての洗浄液(前処理液の一種)が入った洗浄槽(前処理槽の一種)2と、当該洗浄槽2内の洗浄液を加温する空冷ヒートポンプ4と、塗装後の焼付け乾燥後にワークを冷却するための冷却炉6と、冷却炉6を冷却するための冷凍機8とを備えている。なお、前処理槽としては、洗浄槽の他、湯洗槽、脱脂槽、予備脱脂槽、下地皮膜形成等のための化成槽等あるいはこれらの組合せを挙げることができ、温媒体(前処理液)としては、これらの槽に係る液とすることができる。
媒体温度調整システム1は、ここではアルミホイールの粉体塗装工場に設置されている。アルミホイールの粉体塗装は例えば図1(b)に示すような諸工程を経ることで実施され、洗浄槽2は洗浄工程に配置され、冷却炉6は粉体塗装工程・カラー塗装工程・クリヤ塗装工程の少なくとも何れかの工程の後の冷却工程に配置される。なお、洗浄槽2あるいは空冷ヒートポンプ4と、冷却炉6あるいは冷凍機8は、別の工場に属しても良い。又、媒体温度調整システム1は、他の対象物を粉体塗装する工場や、他の塗装工場、あるいは他の工場に配置されても良い。
空冷ヒートポンプ4には、洗浄液を加温するため洗浄槽2に加熱媒体としての温水を供給する供給パイプ12が接続されていると共に、当該温水を洗浄槽2から空冷ヒートポンプ4へ戻す戻りパイプ14が接続されている。空冷ヒートポンプ4は、外気Aを図示しない空気熱交換機に取り込み、外気Aの熱を当該空気熱交換機により取り出して温水に適用し、温水を加温する。空冷ヒートポンプ4に取り込まれた外気Aは、熱交換により熱を奪われ、例えば摂氏3度(以下同様)ないし8度程冷えて排気(排風)Bとして排出される。一般に、空冷ヒートポンプは、空気吸い込み温度が低い程、あるいは温水供給温度が高い程、能力とCOPが低下する特性を持つ。
なお、各パイプには、図示しない熱交換機やタンク、温水に係る流量調節弁等の熱量調節手段や熱量調節のための温水に関する温度センサが介装されることがあり、又熱量調節を制御する自動制御手段が設けられることがある。又、パイプを分岐させる等、パイプの配置を適宜変更して良い。更に、空冷ヒートポンプ4は、温水につき、直接加熱しても良いし、あるいは自身の内部に配された内部媒体(冷媒)を加熱し、当該内部媒体と温水とが熱交換されることで温水の加温がなされるようにしても良い。加えて、温水以外の加熱媒体を採用しても良い。
又、冷却炉6には図示しない外気取り込み口が設けられており、冷媒体としての外気Cを当該外気取り込み口から取り込むことで、炉内のワークを冷却する。この外気取り込み口に取り込まれる外気Cは、冷凍機8により冷却される。即ち、冷凍機8には、冷水供給パイプ16及び冷水戻りパイプ18を介して熱交換機20が接続されており、冷凍機8が冷却した冷却媒体としての冷水を熱交換機20に対し冷水供給パイプ16を供給する一方、冷却炉6内に取り込まれる外気Cが熱交換機20に通される。熱交換機20に導入された冷水は、冷水戻りパイプ18を通じて冷凍機8に戻される。なお、熱交換機20は複数設けて良く、この場合冷水回路において直列あるいは並列に配置して良い。又、空冷ヒートポンプ4あるいは冷凍機8を複数台設けて良く、洗浄槽2や冷却炉6を複数設置しても良い。
そして、媒体温度調整システム1では、空冷ヒートポンプ4が、熱交換機20に導入される前の外気Cに排気Bを混合可能であるように配置されている。排気Bは、外気Cに対して図示しないダクトやファンにより案内されるが、ファンやダクトを設けず、空冷ヒートポンプ4の図示しない排気口に外気Cを隣接させ、外気Cの通過路に届くようにされても良い。又、外気Cも図示しないダクトやファンにより冷却炉6の外気吸い込み口に案内されるが、ファンやダクトを設けずそのまま吸い込むものとして良い。なお、排気Bのみを熱交換機20へ導入して外気Cとは混合せず、排気Bのみを冷却炉6の外気取り込み口に吸わせても良い。あるいは、熱交換機20から出た(熱交換機20により冷却された)外気Cの温度が排気Bの温度以上である等の場合には、熱交換機20から出た外気Cに排気Bを合わせても良い。
このような媒体温度調整システム1は、次に説明するように動作する。
例えば、媒体温度調整システム1にあって、洗浄槽2の洗浄液を60度に保温するための加温負荷が73kW(キロワット)であり(温水70度)、空冷ヒートポンプ4が35度の外気Aを空気熱交換機に吸い込んで28.8度に温度低下した排気Bを1分当たり370立方メートル放出する。そして、この排気Bが熱交換機20に通された後に冷却炉6の外気取り込み口に吸われるところ、排気Bは、外気Cがそのまま吸われる場合に比較して、(35−28.8)度の温度差と370立方メートルとの積に相当する46kW分(1分当たり)だけ既に冷えている。よって、35度の外気Cを全て冷凍機8(熱交換機20)で冷却して冷却炉6に吸わせる場合と比較して、1分当たり46kWだけ冷凍機8の冷房負荷が削減される。この削減は、冷凍機8のCOP(Coefficient of Performance、効率)を3.3とすると、14kW分の消費電力削減に相当する。
以上の媒体温度調整システム1は、粉体塗装工場で用いられる洗浄液を加温する温水を加温する空冷ヒートポンプ4と、粉体塗装工場で用いられる外気Cを冷却する冷水を冷却する冷凍機8とを備えており、外気Cとして、空冷ヒートポンプ4の排気Bの少なくとも一部が用いられるように、空冷ヒートポンプ4や冷凍機8を配置している。
従って、空冷ヒートポンプ4の温度低下した排気Bを利用して、冷凍機8で冷却する外気Cにつき予め冷却しておくことができ、冷凍機8における冷却負荷が削減され、エネルギー効率が極めて良好となる。
[第2形態]
図2(a)は第2形態に係る媒体温度調整システム21の模式図であって、媒体温度調整システム21は、冷凍機8の種類や空冷ヒートポンプ4の排気B以外は第1形態と変更例も含め同様である。
媒体温度調整システム21では、冷凍機8は空冷式であり、空冷ヒートポンプ4の排気Bが冷凍機8の図示しない空気熱交換機に導入されるように、空冷ヒートポンプ4が配置されている。
このような媒体温度調整システム21は、例えば次のように動作する。
即ち、媒体温度調整システム21にあって、洗浄槽2の洗浄液を60度に保温するための加温負荷が73kWであり(温水70度)、空冷ヒートポンプ4が35度の外気Aを空気熱交換機に吸い込んで28.8度に温度低下した排気Bを放出する。そして、この排気Bが冷凍機8の空気熱交換機に吸われる。よって、35度の外気Cをそのまま冷凍機8の空気熱交換機に吸わせる場合と比較して、冷凍機8のCOPが3.3から3.6に上昇する。
以上の媒体温度調整システム21は、粉体塗装工場で用いられる洗浄液を加温する温水を加温する空冷ヒートポンプ4と、粉体塗装工場で用いられる外気Cを冷却する冷水を冷却する冷凍機8とを備えており、空冷ヒートポンプ4の排気Bの少なくとも一部が冷凍機8の空気熱交換機に導入されるように、空冷ヒートポンプ4あるいは冷凍機8を配置している。
従って、空冷ヒートポンプ4の温度低下した排気Bを有効利用して冷凍機8における効率を上げることができ、冷凍機8の消費電力を低減して省エネルギー化を図ることができる。
なお、第2形態の変更例として、図2(b)に示す媒体温度調整システム21aを挙げることができる。媒体温度調整システム21aでは、冷凍機の代わりに空気圧縮機22が設けられている。空気圧縮機22は、ここでは3台設置されるが、2台以下としても良いし、4台以上設置しても良い。空冷ヒートポンプ4の排気Bは、空気圧縮機22の図示しない空気吸い込み口に導かれ、吸い込み空気として用いられる。
このような媒体温度調整システム21aでは、例えば洗浄液を60度に保温するための加温負荷が73kWであり(温水70度)、空冷ヒートポンプ4が35度の外気Aを空気熱交換機に吸い込んで28.8度に温度低下した排気Bを放出する(370立方メートル毎分、46kW)。そして、この排気Bが3台の空気圧縮機22に吸われる。各空気圧縮機22が117立方メートル毎分の空気吸い込み量である場合、35度の外気Aをそのまま吸わせると空気圧縮機22の1台当たりの消費電力は600kWとなるが、冷却された排気Bを吸わせると空気圧縮機22の1台当たりの消費電力は588kWに低下する。よって、媒体温度調整システム21aでは、外気Aをそのまま吸わせる場合に比べて、消費電力をおよそ2%削減することができる。なお、洗浄液の加温に代えて、蒸気ボイラーの給水を空冷ヒートポンプで補助的に加温し、その排気(冷風)を空気圧縮機22の空気吸い込み口に導いても良い。
[第3形態]
図3(a)は第3形態に係る媒体温度調整システム31の模式図であって、媒体温度調整システム31は、冷凍機8や冷水供給パイプ16・冷水戻りパイプ18・熱交換機20が省かれる他は、第1形態と変更例も含め同様である。ここで、冷却炉6へは、冷却用気体としての外気Dが冷却ファン32により導入され、冷却炉6からは、ワークWの冷却時に外気Dが加温されて発生する排気Eの一部が排気ファン34により排出される。冷却炉6には、ワークWが搬入されており、冷却ファン32ないし排気ファン34の作動により生成される空気の流れにより、ワークWが冷却される。なお、工場において冷凍機8等は設置されているがこれらを作動させない場合も、本形態と同様である。
そして、媒体温度調整システム31では、冷却炉6の排気Eが空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導入されるように、空冷ヒートポンプ4あるいは冷却炉6が配置されている。なお、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に所定温度以上の空気を吸わせると、空冷ヒートポンプ4内の冷媒が異常に高圧となることを防止するための保護装置が作動して空冷ヒートポンプ4の運転が停止してしまうところ、このような運転停止を防止するため、排気Eの熱量を調整する熱量調節手段を設け、熱量調節手段により排気Eの温度を前記所定温度あるいは当該所定温度より低い特定温度まで下げるようにしても良い。熱量調節手段としては、インバーター制御やダンパー制御(自動制御や手動調整)に係るものを用いることができる。又、熱量調節手段として、排気Eが通過可能である散水装置を採用し、あるいは当該散水装置をインバーター制御やダンパー制御に付加したものを採用しても良い。
このような媒体温度調整システム31は、例えば次のように動作する。
即ち、媒体温度調整システム31にあって、洗浄槽2の洗浄液を60度に保温するための加温負荷が73kWであり(温水70度)、外気Dが5度であるとする。このとき、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に同様に5度の外気Dを吸わせるとすると、空冷ヒートポンプ4のCOPは2.1となり、49kW程度までしか加熱することができない。一方、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に35度の排気Eを吸わせると、空冷ヒートポンプ4のCOPは2.7となり、73kWの加熱が可能となる。
又、熱量調節手段や図示しない各種の温度センサを備えた場合の動作につき、主に図4に基づき説明する。なお、熱量調節手段は、図示しない自動制御装置によりインバーター制御される冷却炉6の排気ファン34である。
自動制御装置は、空冷ヒートポンプ4の起動指令があると(ステップS1)、空冷ヒートポンプ4の運転を開始する(ステップS2)。更に、自動制御手段は、外気温度が25度未満でないと(ステップS3でNO)、冷却炉6の排気ファン34を停止すると共に(ステップS4)、空冷ヒートポンプ4の停止指令を監視し(ステップS5)、当該停止指令がONである場合、排気ファン34の運転を停止して処理を終了する(ステップS6)。一方、当該停止指令がONでない場合には、ステップS3からの処理を繰り返す。
又、自動制御装置は、外気温度が25度未満であると(ステップS3でYES)、冷却炉6の排気Eの温度が外気Dの温度より5度を超えて高いか否かを判断する(ステップS7)。判断が否であれば、排気ファン34を停止して(ステップS4)、空冷ヒートポンプ4の停止指令がない(ステップS5でNO)限りステップS3に戻る。
一方、自動制御装置は、ステップS7でYESであれば、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機における空気吸い込み温度(外気Dの温度)が25度以下であるか否かを判断する(ステップS9)。ステップS9でNOであれば、後述のステップS13に移行し、YESであれば、ループ1(ステップS10〜S12)を実行する。
ループ1において、自動制御装置は、空気熱交換機の空気吸い込み温度を30度以上とするため(ステップS10)、排気ファン34の風量をインバーター制御により増加させ(ステップS11)、ステップS10の条件を満たすまでこれを繰り返す(ステップS12)。ループ1完了後、自動制御装置は、前述のステップS5に移行する。
他方、自動制御装置は、ステップS13において、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機における空気吸い込み温度が35度以上であるか否かを判断する。35度以上でなければ、ステップS5に移行する。
一方、35度以上であれば、自動制御装置は、ループ2(ステップS14〜S16)を実行する。自動制御装置は、ループ2において、空気熱交換機の空気吸い込み温度を35度以下とするため(ステップS14)、排気ファン34の風量をインバーター制御により減少させ(ステップS15)、ステップS14の条件を満たすまでこれを繰り返す(ステップS16)。ループ2完了後、自動制御装置は、前述のステップS5に移行する。
このように、自動制御装置によるステップS7〜S12(ないしステップS3)の実行により、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に十分に暖かい排気Eを案内することができるし、S13〜S16の実行により、空冷ヒートポンプ4の保護装置が作動して運転が停止される事態を防止して、空冷ヒートポンプ4の運転が継続される。
以上の媒体温度調整システム31は、粉体塗装工場で用いられる洗浄液を加温する温水を加温する空冷ヒートポンプ4を備えており、粉体塗装工場で用いられる冷却炉6に係る外気Dが冷却時に加温されることで排出される排気Eの少なくとも一部が、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導入されるように、空冷ヒートポンプ4を配置している。
従って、冷却炉6の排気Eを有効利用して空冷ヒートポンプ4の効率を上げることができ、空冷ヒートポンプ4の消費電力を低減して省エネルギー化を図ることができ、又最大加熱能力を向上して、比較的に少ない能力(台数)の空冷ヒートポンプ4にて低コストの状態で加温負荷に対応することができる。
又、図3(b)に示すように、媒体温度調整システム31に散水装置35を付加した媒体温度調整システム31aを構成することができる。
散水装置35は、散水により気体を冷却するものであり、空冷ヒートポンプ4と排気ファン34の間に設置されている。散水装置35には、水38の流量(熱量)を調節可能な調節器としての散水弁36を備えた水供給器37が接続されていると共に、水38を排出する図示しない排水ピットが接続されている。水供給器37は、図示しない水道配管・工業用水配管・タンク等にある水38を散水装置35に供給する。散水装置35は、ここでは間接散水冷却装置となっており、即ちマット状の本体に水供給器37からの水38を伝わせて流下させるものであって、当該本体に乾燥炉Dからの排気Eの一部が通るようにして排気Eを水38の気化熱等により冷却するものである。冷却を施した排気Eは、空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み口において吸引され、空気熱交換機に当てられる。なお、散水弁36は図示しない自動制御装置に接続されて良い。
媒体温度調整システム31aでは、排気Eの温度が空冷ヒートポンプ4の空気吸い込み温度として高すぎる場合には、排気Eを散水装置35に通すことで空冷ヒートポンプ4の保護装置が働かない状態まで冷却することができ、空冷ヒートポンプ4による効率の良好な洗浄槽2の加温を夏季等において継続することができる。又、排気Eに係る熱量調節手段を間接散水冷却装置としているため、冷却のための水38(冷媒)が工場内に飛散する事態を防止することができ、水38を無駄なく利用して効率の良い熱量調整を実行することができる。なお、空冷ヒートポンプを屋外設置し、直接散水冷却装置を設置しても良い。
[第4形態]
図5は第4形態に係る媒体温度調整システム41の模式図であって、媒体温度調整システム41は、変更例も含め第1形態と同様に成るが、冷却炉6の代わりに粉体塗装に係る塗装ブースTが設けられており、塗装ブースT内に空冷ヒートポンプ4や冷凍機8の熱交換機20が配置される点で異なる。なお、空冷ヒートポンプは防爆型が好ましい。
塗装ブースTでは、粉体塗装を行うために内部の空気Fを一定温度以下に保持される必要があり、内部の空気が一定温度を超える場合に当該空気Fを冷却するため、冷凍機8や熱交換機20等が設けられる。洗浄液を加熱する空冷ヒートポンプ4は、塗装ブースT内の空気Fを取り込んで温水との熱交換により熱を奪い、例えば3〜8度程度温度の低下した排気Gとして放出される。この排気Gは、塗装ブースT内の空気Fに混合される。空冷ヒートポンプ4は、粉体を吸い込まないよう、図示しない空気吸い込み口(空気熱交換機の手前)に図示しないフィルターが装着されている。又、空冷ヒートポンプ4においては、当該フィルターの装着による吸い込み量の若干の低下に対応するため、図示しない送風ファンの強度を向上している。
このような媒体温度調整システム41は、例えば次のように動作する。
即ち、媒体温度調整システム41にあって、洗浄槽2の洗浄液を60度に保温するための加温負荷が73kWであり(温水70度)、塗装ブースT内の空気Fが27度に保持されるとする(アルミホイール塗装等の場合)。このとき、空冷ヒートポンプ4は、27度の空気Fを吸い込み、20.8度の排気Gを塗装ブースT内に放出する。この排気Gの放出は46kWの冷却に相当し、冷凍機8における冷却負荷がその分削減される。
以上の媒体温度調整システム41では、空冷ヒートポンプ4は塗装ブースT内に設けられており、空冷ヒートポンプ4の排気Gが、冷却対象である塗装ブースT内の空気と混合される。よって、洗浄液の加熱と塗装ブースTの空調(冷房)とを、極めてエネルギー効率の良好な状態で実施することができる。なお、塗装ブースTに代えて、他のブース(仕切られた空間)としても良く、例えば空調を行っている検査室や、塗料供給装置室・塗料保管室・冷却炉内、あるいは電子機器を設置している部屋とすることができる。
[第5形態]
図6は第5形態に係る媒体温度調整システム51の模式図であって、媒体温度調整システム51は、冷却炉6が塗装ブースTとなることを除き、第2形態と変更例も含め同様である。媒体温度調整システム51では、冷凍機8は塗装ブースT内の空気Fを冷却する。
媒体温度調整システム51は、第2形態と同様に動作する。例えば、加温負荷73kW(洗浄液60度、温水70度)に対応するため、空冷ヒートポンプ4が35度の外気Aを吸って28.8度の排気Bを出し、冷凍機8の空気熱交換機に排気Bが適用されて、COPが排気Bを適用しない場合の3.3から3.6へ上昇する。よって、冷凍機8は効率の良好な状態で塗装ブースT内の空気Fを27度に保持する。
媒体温度調整システム51においても、第2形態と同様、粉体塗装工場で用いられる洗浄液を加温する温水を加温する空冷ヒートポンプ4と、塗装ブースT内の空気Fを冷却する冷水を冷却する冷凍機8とを備えており、空冷ヒートポンプ4の排気Bの少なくとも一部が冷凍機8の空気熱交換機に導入されるように、空冷ヒートポンプ4あるいは冷凍機8を配置している。よって、空冷ヒートポンプ4の温度低下した排気Bを有効利用して冷凍機8における効率を上げることができ、冷凍機8の消費電力を低減して省エネルギー化を図ることができる。
[第6形態]
図7は第6形態に係る媒体温度調整システム61の模式図であって、媒体温度調整システム61は、第5形態と変更例も含め同様である。媒体温度調整システム61では、空冷ヒートポンプ4は冷凍機8に隣接して配置される。空冷ヒートポンプ4の図示しない排気口と、冷凍機8の空気熱交換機手前の空気吸い込み口とを隣接配置することで、空冷ヒートポンプ4の排気Bが直接冷凍機8の空気熱交換機に導入される。
媒体温度調整システム61は、第5形態と同様に動作する。例えば、加温負荷73kW(洗浄液60度、温水70度)に対応するため、空冷ヒートポンプ4が35度の外気Aを吸って28.8度の排気Bを出し、冷凍機8の空気熱交換機に排気Bが適用されて、COPが排気Bを適用しない場合の3.3から3.6へ上昇する。
媒体温度調整システム51においても、第5形態と同様、空冷ヒートポンプ4の温度低下した排気Bを有効利用して冷凍機8における効率を上げることができ、冷凍機8の消費電力を低減して省エネルギー化を図ることができる。又、空冷ヒートポンプ4と冷凍機8が隣接しているため、簡易な構成で低負担で効率の良好な媒体温度調整システム51を構成することができる。
[第7形態]
図8は第7形態に係る媒体温度調整システム71の模式図であって、媒体温度調整システム71は、部品工場における洗浄工程に配置され、空冷ヒートポンプ4が部品洗浄のための洗浄液の入った洗浄槽2を加温する他は、第3形態と同様に成る。
即ち、媒体温度調整システム71では、部品工場に属する冷却炉6からの排気Eが空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に適用され、空冷ヒートポンプ4は、供給パイプ12や戻りパイプ14を介して温水を循環させることにより洗浄槽2を加温する。
このような媒体温度調整システム71は、例えば洗浄液を60度に保持するため空冷ヒートポンプ4から70度の温水を供給する一方、5度の外気Dから生じた冷却炉6内でのワークW(300度)冷却後の35度の排気Eを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせる場合、図9の表における「第7形態」の欄に示すような動作を行い、後述する「従来方式」や「屋外設置方式」と比較して効率の良い動作を行う。なお、空気熱交換機吸い込み温度が35度となるように熱量調節手段が作動する。
即ち、洗浄槽2を60度に保持するための加温負荷を夏季(6〜9月)15kW/時(kW/h)、中間季(4,5,10,11月)30kW/h、冬季(12〜3月)60kW/hとする。又、都市ガスで加温する蒸気ボイラのみで洗浄槽2を加温する方式を従来方式とし、単に屋外設置した空冷ヒートポンプ4で洗浄槽2を加温し、加温能力不足時に都市ガスで加温する蒸気ボイラを併用する方式を屋外設置方式とする。更に、屋外設置方式の空冷ヒートポンプや第7形態の空冷ヒートポンプ4の加熱能力(加温能力)やCOPは、最高出湯温度が70度程度である高温出湯型ヒートポンプ給湯器に係るものとしている。加えて、当該蒸気ボイラーの効率を85%とし、CO2排出係数は、都市ガスについて、地球温暖化対策の推進に関する法律施行令及び特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令を基に環境省が作成した「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」からの計算値(11000キロカロリー毎ノルマル立方メートル(kcal/Nm3),2.3300キログラム(CO2)毎ノルマル立方メートル(kg−CO2/Nm3))を用い、電気について、中部電力株式会社の08年度実績値(860キロカロリー毎キロワット時(kcal/kWh),0.4550kg−CO2/kWh)を用いる。
そして、夏季の1時間内で、従来方式では蒸気ボイラの運転のため1.4Nm3の都市ガスを使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が35度となるのでCOPが2.7となり5.6kWhの電力を消費し、第7形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入せずとも空気吸い込み温度が35度であるため屋外設置方式と同様になる。
又、中間季の1時間内で、従来方式では蒸気ボイラの運転のため2.8Nm3の都市ガスを使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が15度となるのでCOPが2.4となり12.5kWhの電力を消費し、第7形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入して空気吸い込み温度を15度から35度へ昇温してCOPが2.7となり、消費電力量が11.1kWhとなる。又、第7形態では、排気ファン34の運転により0.8kWhの電力が消費される。
加えて、冬季の1時間内で、従来方式では、蒸気ボイラの運転のため5.5Nm3の都市ガスを使用し、屋外設置方式では、空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が5度となるのでCOPが2.1となり23.3kWhの電力を消費すると共に、空冷ヒートポンプのみでは全ての加熱負荷を賄えないため蒸気ボイラーを運転して1.0Nm3の都市ガスを使用し、第7形態では、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入して空気吸い込み温度を5度から35度へ昇温してCOPが2.7となり、消費電力は22.2kWh(及び排気ファン34の0.8kWh)となって、1台の空冷ヒートポンプ4で全ての加熱負荷が賄える。
更に、1日当たりの運転時間や季節毎の運転日数を考慮して季節毎にエネルギー使用量やCO2排出量を通算すると、夏季では従来方式でガスが1788Nm3・CO2が4.2トン(ton)、屋外設置方式及び第7形態で電気が7200kWh・CO2が3.3トン、中間季では従来方式でガスが3664Nm3・CO2が8.5トン、屋外設置方式で電気が16600kWh・CO2が7.6トン、第7形態で電気が空冷ヒートポンプ4の14756kWh及び排気ファン34の1009kWh・CO2が合計7.2トン、冬季では従来方式でガスが7064Nm3・CO2が16.5トン、屋外設置方式でガスが1295Nm3・電気が29867kWh・CO2が電気の13.6トン及びガスの3.0トンを合わせて16.6トン、第7形態で電気が空冷ヒートポンプ4の28444kWh及び排気ファン34の973kWh・CO2が合計13.4トンとなる。
そして、各季を合計して年間のエネルギー使用量やCO2排出量を割り出すと、CO2排出量は従来方式の29.2トンと比較して屋外設置方式で6%削減され(27.4トン)、本発明の第7形態で18%削減される(23.8トン)。又、エネルギー使用量は従来方式の都市ガス12516Nm3(原油換算14.9キロリットル)と原油換算量で比較して屋外設置方式では3%増加してしまうが(電気53667kWh・ガス1295Nm3・原油換算合計15.3キロリットル)、第7形態で9%削減される(電気52382kWh・原油換算13.5キロリットル)。
このように、第7形態に係る媒体温度調整システム71にあっても、第3形態と同様、適宜排気Eを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導入することで、空冷ヒートポンプ4のCOPを良好なものとし、加熱能力の高い状態で運転することができ、エネルギー使用量が比較的に少ない状態で多大な加温を施すことができる。しかも、部品工場における洗浄工程において洗浄液を加温することに用いることができる。更に、屋外設置方式のように単に空冷ヒートポンプを屋外設置する場合と異なり、蒸気ボイラーを併用する必要が殆どないし、蒸気ボイラーの代わりに2台目の空冷ヒートポンプを設ける必要もなく、初期コストを抑えることができる。
[第8形態]
図10は第8形態に係る媒体温度調整システム81の模式図であって、媒体温度調整システム81は、塗装工場に配置され、洗浄槽の代わりに脱脂液の入った脱脂槽82及び化成液の入った化成槽84を備え、空冷ヒートポンプ4が脱脂槽82及び化成槽84を加温する他は、第1形態と同様に成る。媒体温度調整システム81では、供給パイプ12や戻りパイプ14が、分岐等により脱脂槽82と化成槽84に接続されている。
このような媒体温度調整システム81は、例えば脱脂液ないし化成液を45度(ないし前後2度以内)に保持するため空冷ヒートポンプ4から55度の温水を供給する一方、5度の外気Aから生じた冷却炉6内でのワークW(300度)冷却後の35度の排気Eを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせる場合、図11の表における「第8形態」の欄に示すような動作を行い、第7形態と同様の「従来方式」や「屋外設置方式」と比較して効率の良い動作を行う。
即ち、脱脂槽82及び化成槽84を45度に保持するための加温負荷を夏季45kW/h・中間季90kW/h・冬季180kW/hとし、屋外設置方式の空冷ヒートポンプや第8形態の空冷ヒートポンプ4の加熱能力やCOPを高外気温度仕様空冷ヒートポンプチラーに係るものとする他は、第7形態と同様にそれぞれの動作を考えることができる。
そして、夏季の1時間で、従来方式ではガス4.1Nm3を使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が35度となるのでCOPが3.7となり12.2kWhの電力を消費し、第8形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入せずとも空気吸い込み温度が35度であるため屋外設置方式と同様になる。
又、中間季の1時間で、従来方式ではガス8.3Nm3を使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が15度となるのでCOPが3.7となり24.3kWhの電力を消費し、第8形態でも空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入しないこととして、空気吸い込み温度は屋外設置方式における15度と変わらず、又COPは屋外設置方式における3.7と変わらず、消費電力量も同等となる。
加えて、冬季の1時間で、従来方式ではガス16.6Nm3を使用し、屋外設置方式では空気吸い込み温度が5度でCOPが2.9となり50.7kWhの電力を消費すると共に蒸気ボイラーで3.0Nm3の都市ガスを使用し、第8形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入し空気吸い込み温度を5度から35度へ昇温してCOPが3.7となり、消費電力は48.6kWh(及び排気ファン34の3.6kWh)となって、1台の空冷ヒートポンプ4で全ての加熱負荷が賄える。
更に、1日当たりの運転時間や季節毎の運転日数を考慮して季節毎にエネルギー使用量やCO2排出量を通算すると、夏季では従来方式でガスが5364Nm3・CO2が12.5トン、屋外設置方式及び第8形態で電気が15762kWh・CO2が7.2トン、中間季では従来方式でガスが10993Nm3・CO2が25.6トン、屋外設置方式及び第8形態で電気が32303kWh・CO2が14.7トン、冬季では従来方式でガスが21192Nm3・CO2が49.4トン、屋外設置方式でガスが3885Nm3・電気が64883kWh・CO2が電気の29.5トン及びガスの9.1トンを合わせて38.6トン、第8形態で電気が62270kWh(及び4608kWh)・CO2が合計30.4トンとなる。
そして、各季を合計して年間のエネルギー使用量やCO2排出量を割り出すと、CO2排出量は従来方式の87.5トンと比較して屋外設置方式で31%削減され(60.4トン)、本発明の第8形態で40%削減される(52.3トン)。又、エネルギー使用量は従来方式の都市ガス37549Nm3(原油換算44.7キロリットル)と原油換算量で比較して屋外設置方式で25%削減され(電気112948kWh・ガス3885Nm3・原油換算合計33.7キロリットル)、第8形態で34%削減される(電気合計114943kWh・原油換算29.6キロリットル)。
このように、第8形態に係る媒体温度調整システム81にあっても、第3形態と同様、適宜排気Eを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導入することで、空冷ヒートポンプ4のCOPを良好なものとし、加熱能力の高い状態で運転することができ、エネルギー使用量が比較的に少ない状態で多大な加熱を施すことができ、特にCO2排出量は従来方式を基準としておよそ4割減され、エネルギー使用量は34%も削減される。又、第7形態と同様に、蒸気ボイラーを併用する必要が殆どないし、蒸気ボイラーの代わりに2台目の空冷ヒートポンプを設ける必要もなく、初期コストを抑えることができる。
[第9形態]
第9形態に係る媒体温度調整システムは、図1に示す第1形態に係る構成と、図8に示す第7形態に係る構成を有する。なお、空冷ヒートポンプ4は共通である。
このような媒体温度調整システムは、例えば洗浄液を60度に保持するため空冷ヒートポンプ4から70度の温水を供給する一方、主に中間季ないし冬季において、5度の外気Aから生じた冷却炉6内でのワークW(300度)冷却後の35度の排気Eを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせると共に、主に夏季において、空冷ヒートポンプ4の32.5度の排気B(185立方メートル毎分、外気Aは35度)を冷却炉6の冷却ファン32に吸わせる(冷凍機8の冷水は7度)場合、図12の表における「第9形態」の欄に示すような動作を行い、上述(第7形態参照)の「従来方式」や「屋外設置方式」と比較して効率の良い動作を行う。なお、夏季等に関し、従来方式や屋外設置方式では単に冷凍機8と同等の冷凍機で冷却炉6内を空調する。又、第9形態では、排気Eの温度が35度となるように熱量調節手段が作動する。
即ち、夏季の1時間内で、従来方式では蒸気ボイラの運転のため1.4Nm3の都市ガスを使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が35度となるのでCOPが2.7となり5.6kWhの電力を消費し、第9形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入せずとも空気吸い込み温度が35度であるため空冷ヒートポンプ4については屋外設置方式と同様になる。又、第9形態では、冷却炉6に導入する外気Cに対し空冷ヒートポンプ4の排気Bを導入することで、冷凍機8の冷却負荷が軽くなり、冷凍機8の消費電力が2.9kWh削減される。
又、中間季の1時間内で、従来方式では蒸気ボイラの運転のため2.8Nm3の都市ガスを使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が15度となるのでCOPが2.4となり12.5kWhの電力を消費し、第9形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入して空気吸い込み温度を15度から35度へ昇温してCOPが2.7となり、消費電力量が11.1kWhとなる。又、第9形態では、排気ファン34の運転により0.8kWhの電力が消費される。
加えて、冬季の1時間内で、従来方式では、蒸気ボイラの運転のため5.5Nm3の都市ガスを使用し、屋外設置方式では、空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が5度となるのでCOPが2.1となり23.3kWhの電力を消費すると共に、空冷ヒートポンプのみでは全ての加熱負荷を賄えないため蒸気ボイラーを運転して1.0Nm3の都市ガスを使用し、第9形態では、空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入して空気吸い込み温度を5度から35度へ昇温してCOPが2.7となり、消費電力は22.2kWh(及び排気ファン34の0.8kWh)となって、1台の空冷ヒートポンプ4で全ての加熱負荷が賄える。
更に、1日当たりの運転時間や季節毎の運転日数を考慮して季節毎にエネルギー使用量やCO2排出量を通算すると、夏季では従来方式でガスが1788Nm3・CO2が4.2トン、屋外設置方式で電気が7200kWh・CO2が3.3トン、第9形態で電気が空冷ヒートポンプ4の7200kWhから冷凍機8の3709kWhの削減・CO2が削減分を考慮して1.6トン、中間季では従来方式でガスが3664Nm3・CO2が8.5トン、屋外設置方式で電気が16600kWh・CO2が7.6トン、第9形態で電気が空冷ヒートポンプ4の14756kWh及び排気ファン34の1009kWh・CO2が合計7.2トン、冬季では従来方式でガスが7064Nm3・CO2が16.5トン、屋外設置方式でガスが1295Nm3・電気が29867kWh・CO2が電気の13.6トン及びガスの3.0トンを合わせて16.6トン、第9形態で電気が空冷ヒートポンプ4の28444kWh及び排気ファン34の973kWh・CO2が合計13.4トンとなる。
そして、各季を合計して年間のエネルギー使用量やCO2排出量を割り出すと、CO2排出量は従来方式の29.2トンと比較して屋外設置方式で6%削減され(27.4トン)、本発明の第9形態で24%削減される(22.1トン)。又、エネルギー使用量は従来方式の都市ガス12516Nm3(原油換算14.9キロリットル)と原油換算量で比較して屋外設置方式では3%増加してしまうが(電気53667kWh・ガス1295Nm3・原油換算合計15.3キロリットル)、第9形態で16%削減される(電気48673kWh・原油換算12.5キロリットル)。
このように、第9形態に係る媒体温度調整システムにあっても、第1形態や第3形態と同様、適宜冷却炉6の排気Eを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導入すると共に、空冷ヒートポンプ4の排気Bを冷凍機8の空気熱交換機に導入することで、空冷ヒートポンプ4や冷凍機8のCOPないし省エネルギー性を良好なものとし、能力の高い状態で運転することができ、エネルギー使用量(従来方式比16%減)やCO2排出量(従来方式比24%減)が比較的に少ない状態で温度調整を的確に施すことができる。
[第10形態]
図13は第10形態に係る媒体温度調整システム101の一部模式図であって、媒体温度調整システム101は、図10に示す第8形態に係る構成を有すると共に、洗浄槽2に代えて脱脂槽82及び化成槽84を配置した他は第1形態と同様に成る、図13に示した構成を備えている。なお、空冷ヒートポンプ4は共通している。
このような媒体温度調整システム101は、例えば脱脂液ないし化成液を45度に保持するため空冷ヒートポンプ4から55度の温水を供給する一方、主に中間季ないし冬季において、5度の外気Aから生じた冷却炉6内でのワークW(300度)冷却後の35度の排気Eを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に吸わせると共に、主に夏季において、空冷ヒートポンプ4の32.6度の排気B(691立方メートル毎分、外気Aは35度)を冷却炉6の冷却ファン32に吸わせる(冷凍機8の冷水は7度)場合、図14の表における「第10形態」の欄に示すような動作を行い、第9形態と同様の「従来方式」や「屋外設置方式」と比較して効率の良い動作を行う。
即ち、夏季の1時間で、従来方式ではガス4.1Nm3を使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が35度となるのでCOPが3.7となり12.2kWhの電力を消費し、第10形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入せずとも空気吸い込み温度が35度であるため空冷ヒートポンプ4については屋外設置方式と同様になる。又、第10形態では、冷却炉6に導入する外気Cに対し空冷ヒートポンプ4の排気Bを導入することで、冷凍機8の冷却負荷が軽くなり、冷凍機8の消費電力が10.0kWh削減される。
又、中間季の1時間で、従来方式ではガス8.3Nm3を使用し、屋外設置方式では空冷ヒートポンプの空気熱交換機における空気吸い込み温度が15度となるのでCOPが3.7となり24.3kWhの電力を消費し、第10形態でも空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入しないこととして、空気吸い込み温度は屋外設置方式における15度と変わらず、又COPは屋外設置方式における3.7と変わらず、消費電力量も同等となる。
加えて、冬季の1時間で、従来方式ではガス16.6Nm3を使用し、屋外設置方式では空気吸い込み温度が5度でCOPが2.9となり50.7kWhの電力を消費すると共に蒸気ボイラーで3.0Nm3の都市ガスを使用し、第10形態では空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に排気Eを導入し空気吸い込み温度を5度から35度へ昇温してCOPが3.7となり、消費電力は48.6kWh(及び排気ファン34の3.6kWh)となって、1台の空冷ヒートポンプ4で全ての加熱負荷が賄える。
更に、1日当たりの運転時間や季節毎の運転日数を考慮して季節毎にエネルギー使用量やCO2排出量を通算すると、夏季では従来方式でガスが5364Nm3・CO2が12.5トン、屋外設置方式で電気が15762kWh・CO2が7.2トン、第10形態で電気が空冷ヒートポンプ4の15762kWhから冷凍機8の12896kWhの削減・CO2が削減分を考慮して1.3トン、中間季では従来方式でガスが10993Nm3・CO2が25.6トン、屋外設置方式及び第10形態で電気が32303kWh・CO2が14.7トン、冬季では従来方式でガスが21192Nm3・CO2が49.4トン、屋外設置方式でガスが3885Nm3・電気が64883kWh・CO2が電気の29.5トン及びガスの9.1トンを合わせて38.6トン、第10形態で電気が62270kWh(及び4608kWh)・CO2が合計30.4トンとなる。
そして、各季を合計して年間のエネルギー使用量やCO2排出量を割り出すと、CO2排出量は従来方式の87.5トンと比較して屋外設置方式で31%削減され(60.4トン)、本発明の第10形態で47%削減される(46.4トン)。又、エネルギー使用量は従来方式の都市ガス37549Nm3(原油換算44.7キロリットル)と原油換算量で比較して屋外設置方式で25%削減され(電気112948kWh・ガス3885Nm3・原油換算合計33.7キロリットル)、第10形態で41%削減される(電気合計102047kWh・原油換算26.2キロリットル)。
このように、第10形態に係る媒体温度調整システム101にあっても、第1形態や第3形態と同様、適宜冷却炉6の排気Eを空冷ヒートポンプ4の空気熱交換機に導入すると共に、空冷ヒートポンプ4の排気Bを冷凍機8の空気熱交換機に導入することで、空冷ヒートポンプ4や冷凍機8のCOPないし省エネルギー性を良好なものとし、能力の高い状態で運転することができ、エネルギー使用量(従来方式比41%減)やCO2排出量(従来方式比31%減)が比較的に少ない状態で温度調整を的確に施すことができる。
[第11形態]
図15(a)は第11形態に係る媒体温度調整システム111の模式図であって、媒体温度調整システム111は、タンク112と、タンク112内の媒体の温度を熱交換により調整する熱交換機113と、熱交換機113に調整された温度の水を送るための温水タンク114及び冷水タンク115と、これらにそれぞれ接続されて温水あるいは冷水を加熱又は冷却可能な空冷ヒートポンプ4a,4bを備えている。タンク112内の媒体は飲料や各種原料等特に限定されないが、ここではウレタンの原料である。
又、媒体温度調整システム111は、タンク112の熱交換機113へ温水タンク114の温水及び冷水タンク115の冷水を供給するための配管116と、配管116に介装された温水と冷水を各量調整のうえ混合する混合弁117と、熱交換機113から温水タンク114及び冷水タンク115へ水を戻すための配管118を有する。更に、空冷ヒートポンプ4aから温水タンク114への供給パイプ12aと、温水タンク114から空冷ヒートポンプ4aへの戻りパイプ14aと、戻りパイプ14aに介装されるインバーターポンプ14cが設けられ、又空冷ヒートポンプ4bから冷水タンク115への供給パイプ12bと、冷水タンク115から空冷ヒートポンプ4bへの戻りパイプ14bと、戻りパイプ14bに介装されるインバーターポンプ14dが設けられる。加えて、配管116にも、インバーターポンプ116aが介装される。なお、空冷ヒートポンプ4a,4bや混合弁117、あるいは適宜配置された図示しない温度センサには、自動制御装置が接続されている。
このような媒体温度調整システム111にあっても、温水加熱用の空冷ヒートポンプ4aが発する排冷風Lを冷水冷却用の空冷ヒートポンプ4bの空気熱交換機に吸わせることで、空冷ヒートポンプ4bの効率を向上することが可能である。なお、空冷ヒートポンプ4bが発する排気B(排温風)を空冷ヒートポンプ4aの空気熱交換機に吸わせることで、空冷ヒートポンプ4aの効率を向上しても良い。
即ち、媒体温度調整システム111では、例えば、空冷ヒートポンプ4aが温水温度32度となるように調整し、空冷ヒートポンプ4bが冷水温度14度となるように調整し(往き冷水9度・戻り冷水14度)、混合弁117が温水と冷水の混合により22度に調整された水を生成し、インバーターポンプ116aによりタンク112の熱交換機113に送る。水は熱交換機113を介したタンク112内の原料温度の所定温度(22度±1度)における維持に用いられた後、配管118を通じて温水タンク114や冷水タンク115へ戻される。このとき、暖房運転される空冷ヒートポンプ4aは30度の排冷風Lを発生し、これが冷房運転中の空冷ヒートポンプ4bの空気熱交換機に当たって暖房運転の効率が向上する(COP4.0)。
効率向上を明らかにするため、従来例を図15(b)に挙げてその効率と比較する。従来例のシステム111aは、図15(a)の媒体温度調整システム111とほぼ同様であるが、空冷ヒートポンプ4a,4bがそれぞれ独立している点で相違する。そして、同様の温度設定ないし運転状況において、空冷ヒートポンプ4bのCOPは3.5である(外気温35度の場合)。
[第12形態]
図16は第12形態に係る媒体温度調整システム121の模式図であって、媒体温度調整システム121は、第11形態と同様、加熱,冷却用の空冷ヒートポンプ4a,4bを備えている一方、乾燥炉122aと冷却炉122bを備えている。媒体温度調整システム121は、乾燥及び冷却を要する工場等であればどのような箇所でも設置することが可能であるが、ここでは自動車のボディー塗装に関する温風による乾燥と、次工程のための乾燥後の冷却に用いるために自動車工場に設置している。
空冷ヒートポンプ4aは、ブース空調Rからの基エアを加熱して温風を生成するための熱交換機123aと、供給パイプ12a及び戻りパイプ14aを介して温水供給回路に接続されている。一方、空冷ヒートポンプ4bは、ブース空調Rからの基エアを加熱して冷風を生成するための熱交換機123bと、供給パイプ12b及び戻りパイプ14bを介して温水供給可能に接続されている。なお、熱交換機123aの他に、温風温度調整用の他熱源としてのボイラーIないし熱交換機123cが、熱交換機123cへの熱量を弁I2で調整可能とされた状態で設置されている。又、他熱源として、都市ガスボイラーを始めとするボイラーの他、ヒートポンプ等を用いても良い。
乾燥炉122aへは、熱交換機123a,123cを通過して温風となったブース空調Rの基エアが導入され、又乾燥炉122a内の温風の一部は、循環のためブロワ124aにより熱交換機123a,123cの間に戻され、他の一部はブロワ125aにより大気Qへ排気される。一方、冷却炉122bへは、熱交換機123bを通過して冷風となったブース空調Rの基エアが導入され、又冷却炉122b内の冷風の一部は、循環のためブロワ124bにより熱交換機123bの手前に戻され、他の一部はブロワ125bにより大気Qへ排気される。
媒体温度調整システム121にあっても、空冷ヒートポンプ4bが発する排気B(排温風)を空冷ヒートポンプ4aの空気熱交換機に吸わせることで、空冷ヒートポンプ4aの効率を向上することが可能である。なお、温水加熱用の空冷ヒートポンプ4aが発する排冷風Lを冷水冷却用の空冷ヒートポンプ4bの空気熱交換機に吸わせることで、空冷ヒートポンプ4bの効率を向上しても良い。
例えば、特開平5−31417に開示された条件に鑑み、熱交換機123aに対してブース空調Rから20度の基エアを65m3/分で導入し、50度に加熱する。このときの空冷ヒートポンプ4aの加熱負荷は501kcal/分(0.58kW/分)であり、排冷風Lは362kcal/分(0.42kW/分)で排出される。
50度の温風は70度の循環温風(575m3/分)との混合により68度(640m3/分)となり、更に熱交換機123cを通過して80度となり、乾燥炉122aに導入される(ボイラーIの加熱負荷1830kcal/分(2.13kW/分))。一方、65m3/分で70度の排気が大気Qに対してなされる。
他方、熱交換機123bに対してブース空調Rから20度の基エアを28m3/分で導入し、30度で575m3/分の循環冷風と混合して29.5度で640m3/分のエアを熱交換機123bへ導入して、20度の冷風を640m3/分で冷却炉122bへ導く。このときの空冷ヒートポンプ4bの冷却負荷は1758kcal/分(2.04kW/分)であり、排気Bは2109kcal/分(2.45kW/分)・外気10度を吸い込み15度で排出され、COPは5.0となり、消費電力は0.41kW/分となる。一方、65m3/分の排気が大気Qに対してなされる。
加熱用の空冷ヒートポンプ4aは、外気温度10度の場合、そのまま運転するとCOP3.3,消費電力0.18kW/分となるところ、冷却用の空冷ヒートポンプ4bからの15度の排気B(排温風)を吸わせることで、COP3.6,消費電力0.16kW/分に改善することができる。又、適宜他熱源(ボイラーI)を設置することで、冷却負荷対応時に生ずる冷却側の空冷ヒートポンプ4bからの排気Bの熱量を加熱側の空冷ヒートポンプ4aの排冷風Lの熱量より大きくすることができ、よって排気Bの熱量が不足する事態が防止され、継続して排気Bを空冷ヒートポンプ4aの空気熱交換機に当てることが可能となる。
[第13形態]
図17は第13形態に係る媒体温度調整システム131の模式図であって、媒体温度調整システム131は、第11形態と同様、タンク112及び熱交換機113、並びに配管116,118を備えている一方、複数(ここでは5台であるが適宜増減可能である)の空冷ヒートポンプ4a〜4eが配管116,118間において並列に設置されている。なお、配管118には、空冷ヒートポンプ4a〜4eにそれぞれ対応するインバーターポンプ132a〜132eが配置されている。
媒体温度調整システム131では、各空冷ヒートポンプ4a〜4eについて、暖房モード若しくは冷房モードで運転し、又は運転を停止することで、タンク112内を所定温度に維持するために配管116を通じて熱交換機113へ供給する媒体の温度を調整する。
例えば、図18に示すように、自動制御装置は、運転指令があった場合(ステップS21でYes)、空冷ヒートポンプ4a〜4eの内2台以上が冷房モードで運転中であるか否かを確認する(ステップS22)。なお、運転指令がない場合(ステップS21でNo)、空冷ヒートポンプ4a〜4eの全台数を停止し(ステップS23)、処理を終了する。
又、自動制御装置は、運転指令が存在する間、別途空冷ヒートポンプ4a〜4eの運転台数の増減を制御する。例えば、他の空冷ヒートポンプ4a等が冷房モードで運転中である場合、冷房モードで運転される空冷ヒートポンプ4a等を追加する条件として、その空冷ヒートポンプ4a等の冷媒温度が出口設定温度(22度)を所定値(0.5度)以上超えたときとし、他の空冷ヒートポンプ4a等が暖房モードで運転中である場合、暖房モードで運転される空冷ヒートポンプ4a等を追加する条件として、その空冷ヒートポンプ4a等の冷媒温度が出口設定温度(22度)を特定値(所定値と同じでも異なっても良く、ここでは所定値と同じ0.5度)以下に下回ったときとする。このような制御は、例えば各空冷ヒートポンプ4a〜4eに運転開始温度を設定しておくことで行える。
自動制御装置は、ステップS22がYesである場合、更に全台が冷房モードである(冷房モードにおける運転状態あるいは自動待機状態である)かを判断し(ステップS24)、そうでない場合(No)のみ待機中(運転待機状態)の暖房モード機を冷房モードに係る待機状態へ切替えて(ステップS25)、ステップS21に戻り処理を続行する。なお、媒体温度調整システム131では、モード切換に際し、冷温水系統も切替可能となっている。
一方、ステップS22がNoである場合、自動制御装置は1台のみ冷房モードで運転中であるか否かを判断し(ステップS26)、Yesであれば更に待機中の空冷ヒートポンプ4a等の内何れか1台が暖房モード待機中で残りが冷房モード待機中となっているか否かを確認し(ステップS27)、Noである場合のみ、そのような1台だけ暖房モード待機中となる状態に切替え(ステップS28)、処理の最初に戻る。
他方、ステップS26がNoである場合、自動制御装置は2台以上が暖房モード(運転状態又は自動待機状態)か否かを判断し(ステップS29)、Yesであれば更に全台が暖房モードで運転中であるか否かを確認し(ステップS30)、Noである場合のみ、冷房モード待機中の1台を暖房モード待機に切替え(ステップS31)、処理の最初に戻る。
又、ステップS29がNoである場合、自動制御装置は1台のみ暖房モードで運転中であるか否かを判断し(ステップS32)、Yesであれば更に待機中の空冷ヒートポンプ4a等の内何れか1台が冷房モード待機中で残りが暖房モード待機中となっているか否かを確認し(ステップS33)、Noである場合のみ、そのような1台だけ冷房モード待機中となる状態に切替え(ステップS34)、処理の最初に戻る。
更に、ステップS32がNoである場合、自動制御装置は待機中の1台を暖房モードとし(ステップS35)、別の1台を冷房モードとして(ステップS36)、処理の最初に戻る。
媒体温度調整システム131では、タンク112内温度を(22度±1度の目標温度に)維持するための媒体の温度(設定値22度)につき、高すぎる場合はその度合に応じた台数において空冷ヒートポンプ4a等の一部又は全部を冷房モードで運転することができる一方、低すぎる場合はその度合に応じた台数において空冷ヒートポンプ4a等の一部又は全部を暖房モードで運転することができるため、ダンク112内の原料等の量や周囲温度等が変動しても、媒体温度を自動的に適切に調整してタンク112内温度を目標温度内に維持することができる。しかも、空冷ヒートポンプ4a等は必要な台数のみ運転され、省エネルギー性が良好である。更に、運転中の空冷ヒートポンプ4a等のモードや台数に応じて待機中の空冷ヒートポンプ4a等のモードを移行するため、台数追加時の空冷ヒートポンプ4a等の起動を速やかに行うことが可能となる。