ディジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置では、撮像素子としてCMOS撮像素子、CCD撮像素子等の固体撮像素子が広く利用されている。これら撮像素子は、多画素化が進み、個々の画素サイズが小さくなって光信号も小さくなっている。
また、多画素化のためには画素の縮小化のみならず、ノイズ配線幅の縮小化が必要となるため、配線のインピーダンスが増加し、微小な電気信号変動(例えば電源変動)等の影響を受けやすくなってしまう。
この状況を図9〜12に基づいて説明する。図9はCMOS撮像素子全体の概略構成を示している。図9において、51は水平オプティカルブラック(以下、HOBと称する)、52は垂直オプティカルブラック(以下、VOBと称する)であり、これらの領域は、画素が遮光されている基準画素領域である。53は遮光されていない通常の有効画素領域である。
図10は、CMOS撮像素子の単位画素(1画素分)60の回路例を示している。図10において、61はフォトダイオード(以下、PDと称する)であり、不図示の撮影レンズによって結像された光画像を光電変換して電荷を発生し、蓄積する。62は転送スイッチ(以下TXと称する)であり、MOSトランジスタで構成されている。64はフローティングディフージョン(以下、FDと称する)であり、コンデンサになっている。
PD61で光電変換された電荷は、TX62によりFD64に転送されて電圧に変換される。この電圧信号は、アンプ65を介して、ソースフォロワで画素信号として出力される。66は行選択スイッチであり、当該行の画素信号を垂直出力線67に出力するタイミングを決定するものである。63はリセットスイッチであり、FD64、及びPD61の電位をリセットするものである。
図11は、CMOS撮像素子における全体のレイアウト例を示している。図11に示したように、図10に示した構成の単位画素がマトリックス状に多数〔画素60(1−1)乃至60(n−m)〕配置されている。各画素における電荷蓄積制御は、垂直走査回路77から出力される転送スイッチ62制御信号φTX、リセットスイッチ63制御信号φRES、及び選択スイッチ66制御信号φSELにより行なわれる。
また、垂直出力線67〔67(1)乃至67(m)〕は、各画素を垂直方向に接続する形態で各画素に共通で接続されると共に、信号成分Sとノイズ成分Nとの差分を出力するS−N回路75〔75(1)乃至75(m)〕に、1ライン毎に接続されている。ただし、垂直出力線67は、1ライン毎に交互に奇数列の画素に係るS−N回路75a〔75(1)乃至75(m−1)〕、又は偶数列の画素に係るS−N回路75b〔75(2)乃至75(m)〕に接続されている。
S−N回路75a〔75(1)乃至75(m−1)〕の出力選択等の制御は、水平走査回路76aにより行なわれ、S−N回路75b〔75(2)乃至75(m)〕の出力選択等の制御は、水平走査回路76bにより行なわれる。S−N回路75a〔75(1)乃至75(m−1)〕の出力信号は、出力アンプ74a〔74(1),(3)〕を介して後段の処理回路(AFE等)へ出力される。S−N回路75b〔75(2)乃至75(m)〕の出力信号は、出力アンプ74b〔74(2),(4)〕を介して後段の処理回路(AFE等)へ出力される。
このCMOS撮像素子においては、高速処理等に対応するために、4個の出力アンプ74を備え、水平方向の4行の画素信号を並行して出力するように構成されている。さらに、この構成を効率的にレイアウトするために、上記の奇数列の画素に係るS−N回路75a〔75(1)乃至75(m−1)〕は上側に配置し、偶数列の画素に係るS−N回路75b〔75(2)乃至75(m)〕は下側に配置している。
S−N回路75a,75bは、CMOS撮像素子に固有のノイズを除去するものであり、例えば、ノイズ成分Nと、信号成分Sにノイズ成分Sが重畳された画素信号(S+N)を入力・保持し、その差分信号をノイズの無い画素信号Sとして出力するものである。これにより、CCD撮像素子と同等のS/N比とすることができる。
具体的には、行選択スイッチ66で選択された行の画素信号に対して、それぞれ信号成分Sとノイズ成分Nを保持し、出力アンプ74a,74bにより各画素の画素信号(S+N)からノイズ成分Nを減算して、ノイズの無い画素信号Sが出力される。
ノイズ成分Nは、TX62をオフした状態で、リセットスイッチ63によりFD64をリセットし、そのFD64の信号をアンプ65、行選択スイッチ66、及び垂直出力線67を介してS−N回路75に保持したものである。このノイズ成分Nには、FD64のリセットノイズ、アンプ65のゲートソース間電圧の画素間ばらつき等がある。
信号成分Sは、TX62をオンにすることにより、PD64の電荷をFD64により電圧に変換し、S−N回路75に保持したものである。この場合、信号成分Sには、上記のFD64をリセットしたときのノイズ成分Nが加算されるが、このノイズ成分Nは、画素信号の読み出し時に、アンプ74により除去される。
ところで、ノイズには画素毎、即ち画像位置(画素位置)毎に変化するランダム状のノイズと、電源等の変動によって時間的に徐々に変動するノイズがある。時間的に変動するノイズは、画像では、画素の行間で変化する縞状のノイズとなって現れる。
この縞状のノイズの周波数は、S−N回路75上のノイズが加わる位置に依存する。例えば、S−N回路75の前段の垂直出力線にノイズが乗った場合、ノイズ成分Nと、信号成分S+ノイズ成分(S+N)が短時間に変動したとする。この場合、Nのみをサンプリングする際のノイズ量と、S+Nをサンプリングする際のノイズ量に差が生じるため、前述の差分では十分にノイズ成分を除去することができず、素子の垂直方向に見ると、比較的短い周期(高周波)の縞状ノイズとなる。
一方、電源系の変動に起因して、S−N回路75の後段(例えば、S−N回路75と出力アンプ74の間)でノイズが加わったとする。この場合、電源は、通常、コンデンサ等により高周波成分のノイズを除去する対策が施されており、長い周期で変動するため、長い周期(低周波)の縞状ノイズとなる。
これら高周波、低周波の縞状ノイズについては、画像にする場合は、通常、高周波成分はフィルタリング処理で除去されるので、低周波成分のノイズが目立ってくる。
縞状ノイズの低減化に関しては、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1では、縞状ノイズを低減させるため、遮光された画素の出力からオフセットを求め、このオフセットに係数をかけて補正することが提案されている。
また、特許文献2では、撮像素子の構成により信号出力経路を複数備えた撮像装置においては、出力経路毎に複数の補正値を持たせ、構成の違いにより発生する補正残りに対しての改善を行なうことが提案されている。
これら特許文献1、特許文献2の補正概要を図12(a),(b)に基づいて説明する。図12(a)は、補正前の垂直方向の各画素位置(画像位置)における垂直シェーディングを示している。図12(a)では、基準画素領域である水平OB領域と、左右の有効画素領域(a),(b)の垂直シェーディング、すなわち縞状ノイズの強度は、ほぼ同じレベルとなっている。
図12(b)は、補正後の垂直方向の各画素位置(画像位置)における垂直シェーディングを示している。図12(b)では、補正前の水平OB領域のシェーディングデータに基づいて補正値を求め、その補正値を減算する等の補正を行なうことで、有効画素領域(a),(b)共に、垂直シェーディングが低減されている。
しかしながら、特許文献1,2では、撮像素子の有効画素領域の4辺のうち、1辺に隣接して設けられた基準画素領域(水平OB領域)は、各行の始めに読み出される箇所に配置されている。従って、特許文献1,2では、有効画素領域の画素信号に先んじて読み出した水平OB領域の画素信号のみを記憶し、水平OB領域の画素信号の読出しが完了した時点で、後段の信号処理回路においてオフセット補正量の演算が行われる。
このような撮像素子の有効画素領域の4辺のうち、1辺に隣接して設けられた基準画素領域(水平OB領域)だけに基づいて行うオフセット補正では、当該水平B領域付近では良好な補正効果が得られる、当該水平B領域から離れた場所では補正効果が低減する。
この問題を図12(c),(d)に基づいて説明する。
図12(c)は、補正前の垂直方向の各画素位置(画像位置)における垂直シェーディングを示している。図12(c)では、基準画素領域である水平OB領域と、有効画素領域(a)との間では垂直シェーディング、すなわち縞状ノイズの強度の差は小さくなっている。しかしながら、有効画素領域(a)と有効画素領域(b)との間では、縞状ノイズの強度の差が大きくなっている。
図12(d)は、補正後の垂直方向の各画素位置(画像位置)における垂直シェーディングを示している。図12(d)では、補正前の水平OB領域のシェーディングデータに基づいて補正値を求め、その補正値を減算する等の補正を行なうことで、有効画素領域(a)では充分に縞状ノイズが低減されている。しかしながら、有効画素領域(b)では、縞状ノイズの強度が大きいので、縞状ノイズを完全には除去(補正)することができず、縞状ノイズが残存することとなる。
このような、1つの読出し方向においてノイズのレベル差が生じている場合の補正方法として、特許文献3に係る方法が提案されている。この特許文献3では、CCD撮像素子について、有効画素領域の上方と下方にOB領域を配し、上下のOB領域の信号に基づいて有効画素領域のノイズ成分を推定演算し、そのノイズ成分を画像信号から減算している。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る撮像装置に搭載された撮像素子の画素領域を示す図である。図1に示したように撮像素子1は、左水平OB領域51HL(第1の基準画素領域)、右水平OB領域51HR(第2の基準画素領域)、及び垂直OB領域52VからなるOB領域と、有効画素領域53を有している。
左水平OB領域51HLと右水平OB領域51HRは、有効画素領域53の左右の対向する2辺に隣接して形成され、垂直OB領域52Vは、有効画素領域53の上辺に隣接して形成されている。これらOB領域は、オプティカルブラック部と呼ばれる領域であり、有効画素領域53の画素信号に対する基準信号を得るために形成され、何れも画素の前面をアルミニウム等により遮光された複数の画素で構成されている。
左水平OB領域51HLと右水平OB領域51HRは、有効画素領域53の垂直方向のシェーディング成分を水平ライン毎に補正するために用いられる。この水平ライン毎に行う垂直方向のシェーディング成分の補正処理については、後で詳細に説明する。
垂直OB領域52Vは、黒レベルを検出して、暗電流、温度変動による画素信号のオフセット変動を補正するために利用される。有効画素領域53は、有効な画素信号を取り出すための領域であり、遮光されていない複数の有効画素で構成されている。
図2は、図1の撮像素子1を搭載した撮像装置の概略構成を示すブロック図である。撮像素子1は、CMOS撮像素子として構成されている。撮像素子1から出力された画素信号は、アナログフロントエンド(AFE)2に入力される。AFE2は、ゲインコントロールアンプを備え、水平OBクランプを行なうことにより、各ラインのOB出力と黒レベルとのオフセットに係数をかけて徐々に追随させる機能を備えている。このAFE2は、出力時にアナログデジタル変換(A/D変換)を行なう。
デジタルフロントエンド(DFE)3は、AFE2から出力された各画素のデジタル出力を受けて、演算処理、補正処理、判定処理等を行なう。AFE2、DFE3の出力信号は、メモリ4により保持される。また、DFE3の出力信号は画像処理部5に入力されて、補正処理、現像処理等の各種の画像処理が施される。なお、撮像素子1、AFE2,DFE3は、制御部6の制御の下に、タイミング信号発生部10により発生される駆動タイミング信号に基づいて駆動制御される。
制御部6は、操作部7からの操作信号に基づいて、画像処理装置5等の各ブロックの動作等を制御する。操作部7は、撮影開始スイッチ、電源スイッチ、各種モード(AFモード、ストロボモード、連写モード等)の切替スイッチ等を有している。画像処理装置5により現像処理等の画像処理が施された画像データは、表示部8に表示されると共に記録部9により記憶媒体に記録される。
次に、図2の撮像装置での第1の実施の形態における撮像動作の概要を、図3、図4に基づいて説明する。図4は、図3のS104〜S109の処理を詳細に説明するための概念図である。なお、図3のフローチャートでは、撮像動作で通常行なわれる測光処理、測距処理、及び上記の垂直OB領域52Vの出力に基づく画素信号のオフセット変動補正等の処理動作に係る処理ステップは、割愛している。
制御部6は、タイミング信号発生部10を介して、撮像素子1での信号電荷の蓄積動作を開始させる(S101)。この蓄積動作では、制御部6は、まず、不図示のメカニカルシャッタを開き、撮像素子1を画像光で露光させることで有効画素領域53、及び基準画素領域51HL,51HR,52Vに信号電荷を蓄積させる(S102)。そして、制御部6は、メカニカルシャッタを閉じると共に、撮像素子103での信号蓄積動作を終了させる(S103)。
次に、制御部6は、撮像素子1からの画素信号の読み出しを開始し、後段のAFE2等へ出力させる(S104)。
この画素信号の読み出しにおいては、有効画素領域53の画素信号だけでなく、基準画素領域(左水平OB領域51HL、右水平OB領域51HR、及び垂直OB領域52V)の画素信号、即ち、光学的黒画素の画素信号も読み出される。また、S104での画素信号の読み出し動作は、1行(1水平ライン)単位で行われる。例えば、図4(a)に示した注目行の左水平OB領域51HLの各画素の画素信号(第1の基準画素信号)、有効画素領域53の各画素の画素信号(有効画素信号)、右水平OB領域51HRの各画素の画素信号(第2の基準画素信号)の順に読み出される。また、AFE2は、水平OBのクランプ動作、A/D変換等を行ない、後段のDFE3に出力する。
次に、制御部6は、DFE3により、撮像素子1の水平ラインにおける左水平OB領域51HLの画素信号L1sをメモリ4の領域L1に一時記憶させる(S105)。実際の動作においては、撮像素子1からの画素信号の読み出し中に、DFE3は、AFE2から出力された1水平ライン分の画素信号をメモリ4に格納し続ける。この場合、DFE3は、左水平OB領域51HLからの画素信号の読み出し時には、図4(c)に示すDFE3内のスイッチSW1をONして、左水平OB領域51HLの画素信号をメモリ4の領域L1に格納する。
次に、制御部6は、DFE3により、左水平OB領域51HLの画素信号の読み出しが終了する際に、図4(c)に示すスイッチSW1をOFFすることで、有効画素領域53の画素信号M1sをメモリ4の領域M1に一時記憶させる(S106)。
次に、制御部6は、DFE3により、有効画素領域53の画素信号の読み出しが終了し、右水平OB領域51HRの画素信号の読み出しが開始されると、図4(c)に示すスイッチSW2をONする。これにより、撮像素子1の1水平ラインにおける右水平OB領域51HRの画素信号R1sをメモリ4の領域R1に一時記憶する(S107)。
すなわち、S105〜S107では、図4(b)に示すように、左水平OB領域51HLの画素信号L1s、有効画素領域53の画素信号M1s、右水平OB領域51HRの画素信号R1sが、順次、メモリ4の領域L1,M1,R1に一時記憶される。
そして、制御部6は、DFE3により、メモリ4内の左水平OB領域51HLの画素信号L1sの平均値と、右水平OB領域51HRの画素信号R1sの平均値を算出させ、それら平均値に基づいて、当該水平ラインにおける傾き補正値Xを算出させる(S108)。
具体的には、DFE3は、右水平OB領域51HRの画素信号の読み出しが終了する際に、図4(c)に示すスイッチSW2をOFFすると同時に、スイッチSW3,SW4をONする。このスイッチSW3,SW4のONにより、メモリ4の領域L1,R1の左右のOB領域に係る画素信号がDFE3内の演算用メモリL1M,R1Mに転送される。
この転送が終了すると、DFE3は、スイッチSW3,SW4をOFFし、演算用メモリL1M,R1Mに転送された左右OB領域の画素信号の平均値L1s,R1sを算出し、その平均値L1s,R1sに基づいて、当該水平ラインの傾き補正値Xを算出する。
次に、制御部6は、DFE3により、当該水平ラインにおける傾き補正値Xを用いて、有効画素領域53の画素信号M1sに対する傾き補正が行われる(S109)。すなわち、DFE3は、当該注目行の有効画素領域53の画素信号M1sをメモリ4のメモリ領域M1から順次出力し、その有効画素領域53の画素信号M1sを傾き補正値Xに基づいて補正する。この傾き補正により、注目行のシェーディングが補正される。その補正に係る有効画素領域53の画素信号を撮像信号として画像処理装置5へ出力させる。
制御部6は、S104〜S109の処理を最終行まで実行するように制御する(S110)。そして、制御部6は、画像処理装置5により、全行に亘って傾き補正がなされた撮像信号に対する欠陥画素の補間処理、現像処理等の各種の画像処理を行なわせ、映像信号として出力させる(S111)。
このように第1の実施の形態では、左水平OB領域51HL、有効画素領域53、右水平OB領域51HRの順に各領域から画素信号を読み出し、有効画素領域53の画素信号M1sの傾き補正処理は、同一水平ライン上のOB領域の画素信号を用いて行っている。
次に、図3のS109における傾き補正による垂直シェーディング補正処理を、図5に基づいて説明する。図5(b)は、図5(a)に示した左水平OB領域51HL、有効画素領域53(53a,53b)、右水平OB領域51HRの補正前の垂直シェーディングを示し、図5(c)は、当該各領域の補正後の垂直シェーディングを示している。
図5(b)に示した傾き補正前の垂直シェーディングは、左水平OB領域51HL≒有効画素領域53a<有効画素領域53b≒右水平OB領域51HRとなっている。これに対し、図5(c)に示した傾き補正後の垂直シェーディングは、左水平OB領域51HL≒有効画素領域53a≒有効画素領域53b≒右水平OB領域51HRとなっている。
すなわち、傾き補正による垂直シェーディング補正処理により、全ての画素領域において垂直シェーディングが補正されると共に、左右の画素領域でのノイズ差も低減され、好適に補正された状態となる。
換言すれば、有効画素領域の画素信号のオフセット強度が水平方向で異なる場合においても、注目行で良好な傾き補正が行なわれ、その傾き補正を各行で順次行なうことにより、垂直方向のノイズ量(縞状ノイズ)も左右均等に低減されていく。
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、左水平OB領域51HL、有効画素領域53、右水平OB領域51HRの順に、各領域から画素信号を読み出し、有効画素領域53の画素信号M1sの傾き補正処理は、同一行の各OB領域の画素信号の平均値を用いて行っていた。このため、第1の実施の形態では、傾き補正を行うために、1行分の全領域の画素信号を蓄積するだけのメモリ領域L1,M1,R1をメモリ4に確保する必要があり、ある程度大きなメモリ容量を要するため、スペース及びコストの面で改善する余地があった。
一方、本発明で改善したい縞状ノイズは、電源変動等に起因する緩やかな周期であり、隣接する行間での縞状ノイズの変化は、無視できるほど小さい。そこで、第2の実施の形態では、補正対象となる注目行よりも前の行(ライン上)の右水平OB領域51HRの画素信号の平均値と、当該注目行の左水平OB領域51HLの画素信号の平均値を用いて、傾き補正値Xを算出することとしている。
次に、第2の実施の形態における撮像動作の概要を、図6、図7に基づいて説明する。図7は、図6のS204〜S211の処理を詳細に説明するための概念図である。なお、図6のフローチャートでは、撮像動作で通常行なわれる測光処理、測距処理、及び上記の垂直OB領域52Vの出力に基づく画素信号のオフセット変動補正等の処理動作に係る処理ステップは、割愛している。
制御部6は、タイミング信号発生部10を介して、撮像素子1での信号電荷の蓄積動作を開始させる(S201)。この蓄積動作では、制御部6は、まず、不図示のメカニカルシャッタを開き、撮像素子1を画像光で露光させることで有効画素領域53、及び基準画素領域51HL,51HR,52Vに信号電荷を蓄積させる(S202)。そして、制御部6は、メカニカルシャッタを閉じると共に、撮像素子103での蓄積動作を終了させる(S203)。
次に、制御部6は、撮像素子1から画素信号の読み出しを開始する(S204)。この場合、制御部6は、まず、図7(a)に示すように、注目行(ここでは、2行目)の直前の行(補正前行)、すなわち先頭行V0の左水平OB領域51HLの各画素、有効画素領域53の各画素、右水平OB領域51HRの各画素の順に、各領域から画素信号を読み出す(S204)。
そして、制御部6は、DFE3により、読み出した直前の行の左水平OB領域51HLの画素信号L0sをメモリ4の領域L0(図7(b)参照)に一時記憶させる(S205)。次に、制御部6は、DFE3により、読み出した直前の行の右水平OB領域51HRの画素信号R0sをメモリ4の領域R0に一時記憶させる(S206)。
次に、制御部6は、DFE3により、メモリ4に記憶した注目行の直前の行の左水平OB領域51HLの画素信号L0sの平均値と、注目行の直前の行の右水平OB領域51HRの画素信号R0sの平均値を算出させる(S207)。そして、制御部6は、DFE3により、それら平均値に基づいて、注目行の直前の行の傾き補正値Xを算出させる(S207)。
次に、制御部6は、注目行の左水平OB領域51HLの各画素の画素信号(第1の基準画素信号)、有効画素領域53の各画素の画素信号(有効画素信号)、右水平OB領域51HRの各画素の画素信号(第2の基準画素信号)の順に、各領域から画素信号を読み出す処理を開始する(S208)。
そして、制御部6は、DFE3により、次の傾き補正値Xの算出に備えて注目行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sをメモリ4の領域L0(図7(b)参照)に一時記憶する(S209)。この場合、DFE3は、メモリ4の領域L0に現在記憶されている注目行の直前の行の左水平OB領域51HLの画素信号L0sの上に上書きする形態で、注目行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sを当該領域L0に書き込む。
次に、制御部6は、DFE3により、注目行の直前の行の傾きX0と、注目行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sとに基づいて、注目行の有効画素領域53の水平方向の位置に応じた水平方向の傾き・オフセットの補正値を算出する(S210)。
そして、制御部6は、DFE3により、図7(c)に示す減算処理部3aに順次入力される当該注目行の有効画素領域53の各画素信号M1sについて、注目行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sを基準として、線形補正及びオフセット補正、すなわち傾き・オフセットの補正を行う(S211)。この傾き・オフセットの補正により、第1の実施の形態と同様に、注目行のシェーディングが補正される。
実際の動作においては、図7(c)に示すように、撮像素子1からの画素信号の読み出し中に、DFE3は、AFE2から出力された1水平ライン分の画素信号を、減算処理部3aに出力し続ける。この場合、DFE3は、補正前行の左水平OB領域51HLからの画素信号の読み出し時には、DFE3内のスイッチSW21をONして、左水平OB領域51HLの画素信号L0sをメモリ4の領域L0に格納する。
そして、DFE3は、左水平OB領域51HLからの画素信号の読み出しが終了する際に、スイッチSW21をOFFする。次に、DFE3は、補正前行の右水平OB領域51HRからの画素信号の読み出し時には、DFE3内のスイッチSW22をONして、右水平OB領域51HRの画素信号R0sをメモリ4の領域R0に格納する。
そして、DFE3は、当該補正前行の右水平OB領域51HRからの画素信号の読み出しが終了する際に、スイッチSW22をOFFすると同時に、スイッチSW23,SW24をONする。このスイッチSW23,SW24のONにより、メモリ4の領域L0,R0に記憶されている補正前行の左右のOB領域に係る画素信号L0s、R0sがDFE3内の演算用メモリL0M,R0Mに転送される。
この場合、DEE3では、補正前行の画素信号L0s、R0sが転送されてくると、直ちに、前述の傾きX0を算出しておくのが望ましい。なお、DFE3は、画素信号L0s、R0sの転送が終了すると、スイッチSW23,SW24をOFFする。
次に、DFE3は、次の行である補正行の左水平OB領域51HLからの画素信号の読み出しが開始されると、スイッチSW21,SW25をONする。このスイッチSW21のONにより、補正行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sが、次の行での補正処理に備えてメモリ4の領域L0に上書きされる。また、スイッチSW25のONにより、メモリ4の領域L1に、補正行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sが記憶される。そして、この上書き、転送が終了すると、DFE3は、スイッチSW21,SW25をOFFする。
次に、DFE3は、先に算出しておいた補正前行の傾きX0と、補正行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sとに基づいて、補正行の有効画素領域53の水平方向の位置に応じた水平方向の傾き・オフセットの補正値を算出する。
そして、DFE3は、補正行の有効画素領域53の各画素の素信号M1sが減算処理部3aに入力されるのに同期して、対応する画素の傾き・オフセットの補正値を減算処理部3aに出力する。
この傾き・オフセットの補正は、図7(c)に示した減算処理部3aに注目行の有効画素領域53の各画素信号M1sが入力される時にはすでに算出されているため、各画素信号M1sをメモリに保存することなく、読み出しながら減算処理を行うことができる。すなわち、注目行の有効画素領域53の各画素信号M1sは、当該減算処理部3aに入力しながら、各画素信号M1sの傾き・オフセットの補正を行うことができる。
制御部6は、S206〜S211の処理を最終行まで行っていない場合は(S212)、S206に戻る。これにより、S206では、S221で傾き・オフセットを補正した注目行の有効画素領域53の右隣の右水平OB領域51HRの画素信号R1sが、メモリ4の領域R0に記憶される。
制御部6は、S206〜S211の処理を最終行まで行った後は、画像処理装置5により、全行に亘って傾き・オフセットの補正がなされた撮像信号に対する欠陥画素の補間処理、現像処理等の各種の画像処理を行わせ、映像信号として出力させる(S213)。
このように、第2の実施の形態では、有効画素領域53の画素信号M1sの傾き・オフセットの補正処理は、補正対象行の直前の行のOB領域の画素信号を用いて行っている。これにより、メモリ4には直前の行の左右のOB領域の画素信号L0s,R0sと、補正対象行の左の水平OB領域の画素信号L1sを記憶するだけで済み、データ量が多い有効画素領域52の1行分の画素信号を記憶する必要がなくなる。従って、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比べてメモリ容量を低減し、コストダウンを図ることができる。
[第3の実施の形態]
第2の実施の形態では、補正対象行より1行前の行(水平ラインV0)の左右のOB領域の画素信号L0s,R0sに基づいて当該1行前の傾きX0を求め、その傾きX0が補正対象行の傾きであるものと見做して、補正対象行の傾き・オフセットを補正していた。その際、次の行の傾き・オフセットの補正に備えて、メモリ4には、1行前の行の左右のOB領域の画素信号L0s,R0sを記憶する領域L0,R0の他に、領域L1を確保していた。
これに対し、第3の実施の形態では、より一層、メモリ領域を削減するために、図8のように構成している。すなわち、第3の実施の形態では、図8に示すように、補正対象行の1行前の行(水平ラインV0)の右水平OB領域51HRの画素信号R0sと、補正対象行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sを用いて傾きを求めている。要するに、第3の実施の形態では、1つのラインの画素信号の傾きを求める場合、異なるライン上にある右水平OB領域と左水平OB領域の基準画素信号を1つずつ用いている。
実際の動作においては、DFE3は、補正対象行の1行前の行の右水平OB領域51HRの信号電荷を読み出し時には、スイッチSW31をONし、メモリ4の領域R0に当該1行前の行の右水平OB領域51HRの画素信号R0sを記憶する。
次に、DFE3は、補正対象行の左水平OB領域51HLから画素信号が読み出され始めると、スイッチ32をONし、当該補正対象行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sをメモリ4の領域L1に記憶する。この補正対象行の左水平OB領域51HLから画素信号の読み出しが終了する際に、DFE3は、スイッチSW32をOFFし、それとほぼ同時に、スイッチSW33、SW34をONする。
これにより、メモリ4の領域R0,L1の記憶データである1行前の右水平OB領域51HRの画素信号R0sと、補正対象行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sが、それぞれ、DFE3内の演算用メモリR0M,L1Mに転送される。
この転送が終了すると、DFE3は、スイッチSW33,SW34をOFFし、転送された画素信号R0s,L1sに基づいて傾き補正値X0を算出する。
この傾き補正値X0の算出が終了すると、DFE3は、左水平OB領域51HLの画素信号L1sを基準として、傾き補正値X0に基づく傾き補正を開始する。この場合の傾き補正の対象は、補正対象行である水平ラインV1の有効画素領域M1から得られる各画素信号M1sである。
従って、補正対象行である水平ラインV1の有効画素領域M1の各画素信号M1sは、その読み出し開始時点から順次補正することが可能であるため、有効画素領域M1の画素信号M1sをメモリ4で保持する必要はなく、メモリ容量を低減することができる。すなわち、第3の実施の形態では、補正対象行の左水平OB領域51HLの画素信号L1sを記憶するための領域L1が不要であり、この分だけ第2の実施の形態よりも一層、メモリ容量を低減することができる。
なお、本発明は、上記の第1〜第3の実施の形態に限定されることなく、種々、応用変形することが可能である。例えば、第1の実施の形態のように、補正対象行の直前の1行(1水平ライン)の左右のOB領域の画素信号に基づいて傾きを算出するのではなく、補正対象行の直前の複数行(水平ライン上)の左右のOB領域の画素信号に基づいて傾きを算出することも可能である。
また、有効画素領域の画素信号の傾き補正は、必ずしも、左水平OB領域の画素信号、左右の水平OB領域の画素信号の強度差、すなわち傾きだけを用いて行う必要はない。例えば、有効画素領域とOB領域の容量差(画素数の差)に起因する信号レベルの差やゲインの差を補正する係数を加味して、有効画素領域の画素信号の傾き補正を行ってもよい。