JP2011004243A - スイッチ回路 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い周波数においても大電力を扱う用途に適用できるスイッチ回路を提供する。
【解決手段】スイッチング素子である電界効果トランジスタに並列に接続されており、夫々炭化珪素(SiC)及び窒化ガリウム(GaN)からなる2つのショットキバリアダイオード(SBD)について、順方向に導通し始めるオン電圧の高低に応じて、順方向の電圧に対する電流の変化率が大小となるようにする。これにより、オン電圧が低い方のGaNからなるSBDから環流電流を先に導通させ、順方向の電圧の上昇と共に、オン電圧が高い方のSiCからなるSBDへより多くの環流電流を分流させるように導通させて、環流電流による導通損失を各SBDに分散させる。
【選択図】図3

Description

本発明は、1個又は直列接続された複数個のダイオードからなる環流用ダイオード装置をスイッチング素子に複数個並列に接続したスイッチ回路に関する。
近年、DC−DCコンバータ、インバータ等の電力変換器の用途が大電力の領域に拡大しており、装置の小型化に向けた課題として電力変換器の高周波化への要望が高まっている。電力変換器のスイッチ回路には、主にシリコンを半導体材料とする電界効果トランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子が用いられており、これらのスイッチング素子には、負荷から環流する電流をバイパスするための環流用ダイオードが並列に接続されることが多い。
環流用ダイオードを順方向に流れる電流が遮断される場合、環流用ダイオード中に蓄積されていたキャリアに起因するリカバリ電流が逆方向に流れて熱損失となる。このようなリカバリ電流は、電力変換器の変換周期ごとに発生し、電力変換器が扱う電力(電圧及び電流)の増大と共にリカバリ電流による熱損失も増加する。このため、高い周波数で大電力を扱う電力変換器において損失を低減するには、リカバリ電流が流れるリカバリ時間(逆回復時間)の短い環流用ダイオードを用いる必要がある。
環流用ダイオードにPN接合ダイオード又はPiN接合ダイオードを用いた場合、少数キャリアの蓄積によるリカバリ時間が多少なりとも発生するが、金属と半導体との接合によって生じるショットキ障壁を利用したショットキバリアダイオードでは、少数キャリアの蓄積がないため、リカバリ時間が極めて短いものとなる。但し、ショットキバリアダイオードは、同じ半導体材料からなるPN接合ダイオード又はPiN接合ダイオードと比較して逆方向耐電圧(以下、逆耐圧という)を高めるのが困難であるため、高電圧を扱う用途には不向きである。
昨今、シリコンに代わる半導体材料として、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等のワイドバンドギャップ半導体が注目されている。ワイドバンドギャップ半導体は、絶縁破壊電界強度がシリコンを1桁上回り、シリコンより高い熱伝導率及び大きな飽和電子速度を有することなどから、半導体素子に用いた場合、高逆耐圧化、高耐熱化、及び高周波化が図られ、特にスイッチング素子に用いたときは、低いオン抵抗に由来して低損失化が可能となる。また、ワイドバンドギャップ半導体をPN接合ダイオード又はPiN接合ダイオードに用いたときは、リカバリ時間が短縮化される一方で、バンドギャップの大きさ故に順方向に導通し始める電圧(以下、オン電圧という)が高くなるが、ショットキバリアダイオードに用いたときは、高逆耐圧化を実現しつつリカバリ時間を極めて短くし、且つオン電圧を低くすることが可能である。
より具体的には、炭化珪素からなるショットキバリアダイオードでは、シリコンからなるPN接合ダイオードよりオン電圧が大きくなるが、窒化ガリウムからなるショットキバリアダイオードでは、シリコンからなるPN接合ダイオードとオン電圧を同等にすることができる。但し、窒化ガリウムからなるショットキバリアダイオードは、現状では大電流に対応する素子が開発途上にある。
上述したワイドバンドギャップ半導体からなる半導体素子の特性に着目した環流用ダイオードに係る発明として、特許文献1では、炭化珪素からなる第1の環流用ダイオードと、シリコンからなり第1の環流用ダイオードよりオン電圧が低い第2の環流用ダイオードとをスイッチング素子に並列に接続してリカバリ電流を穏やかに減少させることにより、リカバリ電流に起因する損失を低減しつつ高速化を図る技術が開示されている。また、特許文献2では、ワイドバンドギャップ半導体からなるショットキバリアダイオードと、シリコンからなりオン電圧が前記ショットキバリアダイオードと略等しいPiN接合ダイオードとをスイッチング素子に並列に接続して両方のダイオードを並列的に動作させることにより、リカバリ電流に起因する損失を低減する技術が開示されている。
特開2009−32769号公報 特開2008−271207号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示された技術は、何れも、リカバリ時間の短い環流用ダイオードとリカバリ時間がやや長い環流用ダイオードとを並列に接続してリカバリ電流の減少率を小さくすることにより、回路内の容量及びインダクタンス成分の共振によるスイッチングノイズ(スイッチング素子の両端電圧の振動)を低減するものであり、リカバリ時間が短縮化されたダイオードの特徴を損なうことなく大電力の用途に適用できるようにするものではなかった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い周波数においても大電力を扱う用途に適用できるスイッチ回路を提供することにある。
本発明に係るスイッチ回路は、1個又は直列接続された複数個のダイオードを環流用ダイオード装置とし、順方向に導通し始めるオン電圧が相異なる複数の環流用ダイオード装置をスイッチング素子に並列に接続したスイッチ回路において、前記環流用ダイオード装置は、シリコンより大きいバンドギャップを有する半導体材料からなり、オン電圧の高低に応じて導通後の電圧に対する電流の変化率が大小となるようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、ワイドバンドギャップ半導体からなる複数の環流用ダイオード装置は、順方向に導通し始めるオン電圧が高いほど順方向の電圧に対する電流の変化率が大きくなるようにしてある。
これにより、オン電圧が最も低い環流用ダイオード装置から環流電流が先に導通し始め、順方向の電圧の上昇と共に、オン電圧がより高い環流用ダイオード装置へより多くの環流電流が分流するように導通するため、環流電流による導通損失が各環流用ダイオード装置に分散される。また、環流用ダイオード装置が単一である場合と比較して順方向の電圧が全体的に低下するため、環流電流による導通損失の合計値が低減される。更にまた、各環流用ダイオード装置が高逆耐圧であることから高電圧のスイッチングが可能であり、リカバリ時間が短いために高い周波数領域までスイッチング損失が低減される。
本発明に係るスイッチ回路は、前記複数の環流用ダイオード装置の少なくとも1つは、ショットキバリアダイオードで構成されることを特徴とする。
本発明にあっては、オン電圧が低くリカバリ時間が極めて短いショットキバリアダイオードからなる環流用ダイオード装置に環流電流が分流するため、環流電流による導通損失及びリカバリ電流によるスイッチング損失が低減される。また、2つ以上のショットキバリアダイオードを直列に接続して1つの環流用ダイオード装置にすることとした場合は、1つのショットキバリアダイオードの導通後の電圧が、他の環流用ダイオード装置のオン電圧より低いときであっても、ショットキバリアダイオードからなる環流用ダイオード装置と他の環流用ダイオード装置とで環流電流が分流されるようになる。
本発明に係るスイッチ回路は、前記複数の環流用ダイオード装置は、相異なる半導体材料からなるショットキバリアダイオードで構成されることを特徴とする。
本発明にあっては、ショットキバリアダイオードからなる各環流用ダイオード装置のオン電圧が低くリカバリ時間が極めて短いため、環流電流による導通損失及びリカバリ電流によるスイッチング損失が大幅に低減される。また、ショットキバリアダイオードの半導体材料が相異なるため、各環流用ダイオード装置を構成するダイオードが1個であったとしても、オン電圧に差が生じて各環流用ダイオード装置間で環流電流が効果的に分流される。
本発明に係るスイッチ回路は、前記相異なる半導体材料には、炭化珪素及び窒化ガリウムが含まれることを特徴とする。
本発明にあっては、窒化ガリウム(以下、GaNという)からなるショットキバリアダイオードのオン電圧が、炭化珪素(以下、SiCという)からなるショットキバリアダイオード(以下、SBDという)のオン電圧より明らかに低いため、夫々の環流用ダイオード装置間で環流電流がより効果的に分流される。
また、GaNからなる小電力用に適したSBDが先に環流電流を導通させ、SiCからなる大電力用のSBDが後に環流電流の大半を導通させ得るため、半導体材料の違いによるSBDの特性に合わせた応用が可能となる。
本発明に係るスイッチ回路は、前記スイッチング素子は、炭化珪素を半導体材料とする電界効果トランジスタであることを特徴とする。
本発明にあっては、スイッチング素子がSiCからなるため、ワイドバンドギャップ半導体からなる環流用ダイオード装置と相まって、大電力を高周波でスイッチングする電力変換器に適用することができる。
本発明によれば、オン電圧が最も低い環流用ダイオード装置から環流電流が先に導通し始め、順方向の電圧の上昇と共に、オン電圧がより高い環流用ダイオード装置へより多くの環流電流が分流するように導通するため、環流電流による導通損失が各環流用ダイオード装置に分散される。また、環流用ダイオード装置が単一である場合と比較して順方向の電圧が全体的に低下するため、環流電流による導通損失の合計値が低減される。更にまた、各環流用ダイオード装置が高逆耐圧であることから高電圧のスイッチングが可能であり、リカバリ時間が短いために高い周波数領域までスイッチング損失が低減される。
従って、高い周波数においても大電力を扱う用途に適用することが可能となる。
本発明の実施の形態1に係るインバータの構成を示す回路図である。 本発明の実施の形態1に係るインバータの構成を示す回路図である。 SiC及びGaNを半導体材料とするSBDの順方向特性の例を示す特性図である。 SiC及びGaNを半導体材料とするSBDの順方向特性の例を示す特性図である。 環流用ダイオード装置の順方向電流に対する電圧の特性を模式的に示す特性図である。 インバータの各スイッチ回路の損失をスイッチング素子の導通損失とその他の損失とに分けて示す説明図である。 SiCを半導体材料とするSBD、及びGaNを半導体材料とするPN接合ダイオードの順方向特性の例を示す特性図である。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係るインバータの構成を示す回路図である。図中電界効果トランジスタFET1,FET2,FET3,FET4の夫々はスイッチング素子である。また、電界効果トランジスタFET1及びダイオードD11,D12、電界効果トランジスタFET2及びダイオードD21,D22、電界効果トランジスタFET3及びダイオードD31,D32、並びに電界効果トランジスタFET4及びダイオードD11,D12の夫々はスイッチ回路であり、これらがいわゆるフルブリッジを構成するように接続されている。ダイオードD11,D12、D21,22、D31,D32、及びD41,D42の夫々は、電界効果トランジスタFET1、FET2、FET3、及びFET4に対し環流用ダイオード装置(いわゆる環流用ダイオード)として機能するものである。
より具体的には、抵抗負荷R1及び容量負荷C1の並列回路と誘導負荷L1とが直列に接続された直並列回路からなる負荷LD1の一端子に、電界効果トランジスタFET1のソース及びダイオードD11,D12のアノードと、電界効果トランジスタFET2のドレイン及びダイオードD21,D22のカソードとが接続されている。また、負荷LD1の他端子には、電界効果トランジスタFET3のソース及びダイオードD31,D32のアノードと、電界効果トランジスタFET4のドレイン及びダイオードD41,D42のカソードとが接続されている。
電界効果トランジスタFET1,FET2のドレインとダイオードD11,D12,D31,D32のカソードとは直流電源の電源ライン+Bに接続されており、電界効果トランジスタFET2,FET4のソースとダイオードD21,D22,D41,D42のアノードとは、接地電位に接続されている。電界効果トランジスタFET1,FET2,FET3,FET4夫々のゲートG1,G2,G3,G4には、図示しないインバータの駆動回路からゲート制御信号が与えられ、電界効果トランジスタFET1,FET4と、電界効果トランジスタFET3,FET2とが交互にオン/オフを繰り返すことによって、負荷LD1が交流で駆動されるようになっている。
尚、上述したインバータでは、電界効果トランジスタFET1,FET2、又は電界効果トランジスタFET3,FET4が同時にオンして電源ライン+Bから接地電位へ短絡電流が導通することがないように、電界効果トランジスタFET1,FET2,FET3,FET4が全てオフとなる期間(いわゆるデッドタイム)を設けるようにしてある。以下、図1及び図2を用いて、夫々デッドタイム中及びデッドタイム直後のインバータの動作について説明する。
図1において、電界効果トランジスタFET1,FET2,FET3,FET4が全てオフとなった場合、デッドタイムに至る前に負荷LD1の誘導負荷L1に蓄えられていたエネルギーにより、負荷LD1には環流電流が流れ続ける。例えば、図1に矢印で示した向きに負荷電流が流れていたときは、接地電位からダイオードD21,D22、負荷LD1、及びダイオードD31,D32を通じて電源ライン+Bへ電流が流入する。このとき、ダイオードD11,D12,D41,D42には、電源ライン+Bの電圧に略等しい逆電圧が印加されるため、ダイオードD11,D12,D41,D42の逆耐圧は、電源ライン+Bの電圧値に耐えるだけのものにしてある。
次に、図2において電界効果トランジスタFET1,FET4がオンした場合、電源ライン+Bから電界効果トランジスタFET1、負荷LD1、及び電界効果トランジスタFET4を通じて、図2に矢印で示した向きに接地電位へ負荷電流が流れる。この場合、ダイオードD21,D22のカソードの電圧は、ほぼ電源ライン+Bの電圧まで引き上げられ、ダイオードD21,D22のアノードの電圧は、略接地電位に引き下げられるため、ダイオードD21,D22、D31,D32には電源ライン+Bの電圧値に相当する逆電圧が印加される。従って、ダイオードD21,D22,D31,D32の逆耐圧は、電源ライン+Bの電圧値に耐えるだけのものにしてある。
ここで、ダイオードD21,D22、D31,D32にリカバリ時間の長いダイオードを用いた場合は、リカバリ電流が流れている時間だけ電界効果トランジスタFET1からダイオードD21,D22へ、及びダイオードD31,D32からFET4へ、夫々リカバリ電流が流れてインバータの損失となるが、本実施の形態1では、ダイオードD21,D22、D31,D32にリカバリ時間の短いダイオードを用いて上述した損失を低減している。
以下では、上述したインバータの各スイッチ回路に用いた環流用ダイオード装置について説明する。
図3及び図4は、SiC及びGaNを半導体材料とするSBDの順方向特性の例を示す特性図である。各図の横軸は順方向電圧(V)を表し、縦軸は電流(A)を表す。また、各図中の実線及び破線は、夫々SiCのSBD及びGaNのSBDの特性を示す。これらのSBDは、何れもリカバリ時間が極めて短く、逆耐圧が500Vを越えるものである。
図3において、SiCのSBD及びGaNのSBDは、順方向に電流が導通し始めるオン電圧が何れも0.9V以下であり、オン電圧が比較的低いために先に導通し初めるGaNのSBDは、オン電圧が比較的高いために後から導通し始めるSiCのSBDよりも、導通後の電圧に対する電流の変化率が小さくなるようにしてある。これにより、SiCのSBD及びGaNのSBDを夫々環流用ダイオード装置として並列に接続した場合、順方向電圧が約1Vより小さいときはオン電圧が低いGaNのSBDにより多くの電流が流れ、順方向電圧が約1Vより大きいときはオン電圧が高いSiCのSBDにより多くの電流が流れる。また、順方向電圧が1Vのときの電流は夫々約3.5Aであるため、環流電流が7A(3.5A×2)より大きくなる領域では、大電流を流せるSiCのSBDにより多くの環流電流を分流させるようにして各SBDに導通損失を分散させることができる。
図4において、SiCのSBD及びGaNのSBDが順方向に導通し始めるオン電圧を夫々VnSiC及びVnGaNとする。また、環流用ダイオード装置としてSiCのSBD又はGaNのSBDを単独で使用した場合、環流電流(Ir)が流れたときの順方向電圧を夫々VrSiC及びVrGaNとする。本実施の形態1では、順方向電圧に対してSiCのSBD及びGaNのSBDに流れる電流が略等しくなるときの電流値の約2倍の環流電流が、インバータの各環流用ダイオード装置に流れるものとして説明するが、これより大きい環流電流が流れる用途に適用してもよいことは言うまでもない。
図5は、環流用ダイオード装置の順方向電流に対する電圧の特性を模式的に示す特性図である。図5は、図4の縦軸と横軸とを逆にした図に基づいて模式化したものである。図5の横軸は順方向電流(A)を表し、縦軸は電圧(V)を表す。また、図中の実線及び破線は、夫々SiCのSBD及びGaNのSBDを環流用ダイオード装置として用いた場合の順方向電流−電圧特性を示し、一点鎖線は、SiCのSBD及びGaNのSBDを夫々環流用ダイオード装置として並列に接続した場合の順方向電流−電圧特性を示す。一点鎖線の特性図は、同一の電圧に対して実線及び破線が夫々示す順方向電流値を横軸方向に加算して作図したものである。本実施の形態1では、実線及び破線が直線で近似されるものであるため、一点鎖線も直線で描かれるものとなる。
図5において、実線及び破線が夫々示すSiCのSBD及びGaNのSBDの特性は、右肩上がりで交差する直線であり、縦軸の切片は夫々VnSiC及びVnGaNとなっている。これらの特性によって示される環流用ダイオード装置に環流電流(Ir)を流した場合、SiCのSBD又はGaNのSBDを単独で環流用ダイオード装置に用いたときの電圧は、夫々VrSiC及びVrGaNとなるのに対し、SiCのSBD及びGaNのSBDを夫々環流用ダイオード装置として並列に接続したときの電圧は、VrSiC及びVrGaNの何れよりも小さいVr[SiC+GaN]となる。
以上のことから、SiCのSBD及びGaNのSBDを夫々環流用ダイオード装置として並列に接続した場合は、SiCのSBD又はGaNのSBDを単独で環流用ダイオード装置に用いた場合と比較して、同じ環流電流を流したとしても順方向の電圧が低下するため、環流用ダイオード装置全体として導通損失を低減できることがわかる。またこの場合、SiCのSBD及びGaNのSBDには、Vr[SiC+GaN]の電圧に対応する順方向電流しか流れないため、各SBDに環流電流が分流されることが図5から読み取れる。
図6は、インバータの各スイッチ回路の損失をスイッチング素子の導通損失とその他の損失とに分けて示す説明図である。図6の横軸はスイッチングの周波数(Hz)を表し、縦軸はスイッチ回路がスイッチングする電力に対するスイッチ回路の損失(%)を表す。図中の破線は、スイッチング素子(電界効果トランジスタFET1〜FET4)の導通損失を示すものである。また、実線及び一点鎖線は、スイッチング素子のスイッチング損失と、環流用ダイオード装置の全損失(導通損失及びスイッチング損失)との和について、夫々環流用ダイオード装置がSiCのSBDである場合と、SiCのSBD及びGaNのSBDを夫々環流用ダイオード装置として並列に接続したものである場合とについて示すものである。
尚、ここでのスイッチ回路がスイッチングする電力は、約2kW(200V×10A)である。
図6において、破線で示されるスイッチング素子の導通損失は、負荷LD1に供給される電流がスイッチング素子を導通する際の損失に相当するため、スイッチングの周波数に依存しない横方向に延びる直線で表される。これに対し、実線及び一点鎖線で示されるその他の損失には、スイッチングの都度発生する環流電流が環流用ダイオード装置を導通する際の導通損失と、スイッチング素子及び環流用ダイオード装置のスイッチングの際に過渡的に発生する損失とが含まれているため、スイッチングの周波数の増大と共に増加する傾向にある。この場合においても、SiCのSBD及びGaNのSBDを夫々環流用ダイオードとして並列に接続したときは、SiCのSBDを単独で環流用ダイオード装置に用いたときと比較して、環流電流による導通損が少ないため、図の一点鎖線で示されるように損失が低減される。
以上のように本実施の形態1によれば、夫々SiC及びGaNからなり電界効果トランジスタに対して並列に接続された2つの環流用ダイオード装置は、順方向に導通し始めるオン電圧が高いほど順方向の電圧に対する電流の変化率が大きくなるようにしてある。
これにより、オン電圧が低い方のGaNからなる環流用ダイオード装置から環流電流が先に導通し始め、順方向の電圧の上昇と共に、オン電圧が高い方のSiCからなる環流用ダイオード装置へより多くの環流電流が分流するように導通するため、環流電流による導通損失が各環流用ダイオード装置に分散される。また、環流用ダイオード装置がSiC又はGaNからなる単一のダイオードである場合と比較して順方向の電圧が全体的に低下するため、環流電流による導通損失の合計値が低減される。更にまた、各環流用ダイオード装置が高逆耐圧であることから、200Vを越える高電圧のスイッチングが可能であり、リカバリ時間が短いため高い周波数領域までスイッチング損失が低減される。
従って、高い周波数においても大電力を扱う用途に適用することができる。
また、オン電圧が低くリカバリ時間が極めて短いSBDからなる2つの環流用ダイオード装置に環流電流が分流するため、環流電流による導通損失及びリカバリ電流によるスイッチング損失を大幅に低減することができる。
更にまた、SBDからなる2つの環流用ダイオード装置の半導体材料が相異なるため、各環流用ダイオード装置のオン電圧の差を利用して各環流用ダイオード装置間で環流電流を効果的に分流させることができる。
更にまた、GaNのSBDのオン電圧が、SiCのSBDのオン電圧より明らかに低いため、夫々の環流用ダイオード装置間で環流電流をより効果的に分流させることができる。そして、小電力に適したGaNのSBDが先に環流電流を導通させ、大電力用のSiCのSBDが後に環流電流の大半を導通させ得るため、半導体材料の違いによるSBDの特性に合わせた応用が可能となる。
更にまた、スイッチング素子がSiCからなる電界効果トランジスタであるため、ワイドバンドギャップ半導体であるSiC及びGaNからなる環流用ダイオード装置と相まって、大電力を高周波でスイッチングする電力変換器に適用することができる。
尚、本実施の形態1にあっては、ワイドバンドギャップ半導体としてSiC及びGaNを用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、ダイヤモンド、窒化アルミニウム等の他のワイドバンドギャップ半導体を用いてもよい。
また、1つのスイッチング素子に2つの環流用ダイオード装置を並列に接続したが、3つ以上の環流用ダイオード装置を並列に接続してもよい。
更にまた、スイッチング素子としてSiCからなる電界効果トランジスタを用いたが、これに限定されるものではなく、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよい。
(実施の形態2)
実施の形態1は、1つのスイッチング素子に並列に接続される2つの環流用ダイオード装置の夫々が1つのダイオードで構成される形態であるのに対し、実施の形態2は、1つのスイッチング素子に並列に接続される2つの環流用ダイオード装置の一方が複数のダイオードで構成される形態である。
図7は、SiCを半導体材料とするSBD、及びGaNを半導体材料とするPN接合ダイオードの順方向特性の例を示す特性図である。図7の横軸は順方向電圧(V)を表し、縦軸は電流(A)を表す。また、図中の実線、一点鎖線、及び破線は、夫々SiCのSBD、SiCのSBDを3個直列に接続したもの、及びGaNのPN接合ダイオードの特性を示す。
図7において、破線で示されるGaNのPN接合ダイオードが順方向に導通し始めるオン電圧は約3.8Vであり、実線で示されるSiCのSBDとは特性図が交わることがないため、これらのダイオードを並列に接続したとしても全ての環流電流がSiCのSBDに流れる結果となる。そこで本実施の形態2では、SiCのSBDを3個直列に接続した環流用ダイオード装置とGaNのPN接合ダイオードからなる環流用ダイオード装置とを並列に接続する。このように接続することにより、図7の一点鎖線及び破線で示すように、2つの環流用ダイオード装置の特性図を交わらせて環流電流を各環流用ダイオード装置に適切に分流させることができる。
その他、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
以上のように本実施の形態2によれば、SiCのSBDを3個直列に接続して1つの環流用ダイオード装置にしてあるため、SiCのSBDが導通した後の電圧が、GaNのPN接合ダイオードのオン電圧より低いにも関わらず、SiCのSBDとGaNのPN接合ダイオードとで環流電流が分流されるようにすることができる。
尚、本実施の形態2にあっては、3個直列に接続したSBDとGaNのPN接合ダイオードとを並列に接続したが、これに限定されるものではなく、図7に示すような特性図が交わるような領域で使用する限り、1個又は2個直列のSBDとPN接合ダイオードとを並列に接続するようにしてもよい。
D11、D12、D21、D22、D31、D32、D41、D42 環流用ダイオード装置
FET1、FET2、FET3、FET4 電界効果トランジスタ(スイッチング素子)
G1、G2、G3、G4 ゲート
LD1 負荷
L1 誘導負荷
C1 容量負荷
R1 抵抗負荷

Claims (5)

  1. 1個又は直列接続された複数個のダイオードを環流用ダイオード装置とし、順方向に導通し始めるオン電圧が相異なる複数の環流用ダイオード装置をスイッチング素子に並列に接続したスイッチ回路において、
    前記環流用ダイオード装置は、シリコンより大きいバンドギャップを有する半導体材料からなり、オン電圧の高低に応じて導通後の電圧に対する電流の変化率が大小となるようにしてあること
    を特徴とするスイッチ回路。
  2. 前記複数の環流用ダイオード装置の少なくとも1つは、ショットキバリアダイオードで構成されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ回路。
  3. 前記複数の環流用ダイオード装置は、相異なる半導体材料からなるショットキバリアダイオードで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ回路。
  4. 前記相異なる半導体材料には、炭化珪素及び窒化ガリウムが含まれることを特徴とする請求項3に記載のスイッチ回路。
  5. 前記スイッチング素子は、炭化珪素を半導体材料とする電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載のスイッチ回路。
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