JP2011003869A - スピントロニック素子のスピンバルブ構造およびその形成方法、ボトム型スピンバルブ構造、ならびにマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子 - Google Patents

スピントロニック素子のスピンバルブ構造およびその形成方法、ボトム型スピンバルブ構造、ならびにマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子 Download PDF

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Abstract

【課題】スピン消極を引き起こすことなく、また、加熱処理を必要とせずに、[Co/Ni]x積層構造の十分な垂直磁気異方性を確保する。
【解決手段】このスピンバルブ構造は、上部の[Co/Ni]x積層リファレンス層23の垂直磁気異方性を向上させるため、Ta層と、fcc[111]またはhcp[001]構造を有する金属層とを含む複合シード層22を備える。[Co/Ni]x積層リファレンス層23は、CoとNiとの界面の損傷を防止し、これにより垂直磁気異方性を保つため、低いパワーと高圧のアルゴンガスとを用いたプロセスにより成膜する。その結果、薄いシード層を用いることが可能となる。垂直磁気異方性は220℃の温度で10時間にわたって熱処理を行った後であっても維持される。この構造は、CPP−GMR素子やCPP−TMR素子に適用できるほか、スピントランスファー発振器やスピントランスファーMRAMにも適用できる。
【選択図】図3

Description

本発明は、膜面垂直通電型の巨大磁気抵抗(CPP−GMR)素子や磁気トンネル接合(MTJ)素子等の高性能なスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造およびその製造方法、ボトム型スピンバルブ構造、ならびにそのようなスピンバルブ構造を備えたマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子に関する。
シリコンCMOSと磁気トンネル接合技術とを組み合わせた磁気抵抗効果型ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)は、SRAM、DRAMおよびフラッシュメモリ等の現行の半導体メモリに対して大いに競争力を有する主要な新興技術として注目されている。同様に、C. Slonczewskiによる非特許文献1に記載のスピントランスファー(以下、スピントルクまたはSTT(Spin-Transfer Torque)とも称する。)磁化スイッチングは、STT−MRAM等のギガビット規模のスピントロニック素子に応用できる可能性があることから、近年多大な関心を呼び起こしている。最近では、J-G. Zhuらによる非特許文献2において、スピントランスファー発振器と呼ばれる別のスピントロニック素子が発表されている。このスピントランスファー発振器は、スピントランスファー運動量効果(spin transfer momentum effect)を利用することにより、垂直記録構造において媒体保磁力を大幅に下回るヘッド磁界による記録を可能とするものである。
MRAMおよびSTT−MRAMは、いずれも、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)効果に基づく磁気トンネル接合素子(以下、MTJ素子という。)または巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)効果に基づく巨大磁気抵抗効果素子(以下、GMR素子という。)を備えている。MTJ素子は、2つの強磁性層を薄い非磁性誘電体層により分離してなる積層構造を有し、GMR素子は、リファレンス層とフリー層とを金属スペーサ層により分離してなる積層構造を有する。これらの素子は、一般に、第1の導電線等の下部電極と、第2の導電線である上部電極との間の、上部電極と下部電極とが交差する部分に形成されている。
MTJ素子は、例えば、シード層と、反強磁性(AFM:Anti-Ferromagnetic)ピンニング層と、強磁性ピンド層と、薄いトンネルバリア層と、強磁性フリー層と、キャップ層とを下部電極の上に順次形成してなるボトム型のスピンバルブ構造を有する。AFMピンニング層は、ピンド層の磁気モーメントを一定方向に保持している。ピンド層としてのリファレンス層は、例えば、y方向に磁化された隣りのAFMピンニング層との交換結合によってy方向に固定された磁気モーメントを有し、フリー層は、ピンド層の磁気モーメントに対して平行または反平行な磁気モーメントを有している。トンネルバリア層は、導電電子の量子力学的トンネル効果による電流通過が起こるほど薄く形成されている。フリー層の磁気モーメントは外部磁場に応じて変化するようになっており、このフリー層とピンド層との磁気モーメントの相対角度によって、トンネル電流すなわちトンネル接合抵抗が決まる。センス電流が、上部電極から下部電極へとMTJ素子の積層面に対して垂直な方向に流れると、フリー層およびピンド層の磁化方向が互いに平行な状態(「1」記憶状態)の場合には低い抵抗値が検出され、それらの磁化方向が互いに反平行状態(「0」記憶状態)にある場合には高い抵抗値が検出される。
膜面垂直通電(CPP:Current Perpendicular to Plane)構造の場合、MRAMセルに記憶されている情報の読み出しは、そのセルの内部を上から下に流れるセンス電流によってMTJ素子の磁気的状態(抵抗レベル)を検出することにより行われる。MRAMセルへの情報の書き込みは、磁気トンネル接合素子の上下を挟んで交差する二つの導電線としてのビット線およびワード線に電流を流して外部磁場を発生させ、フリー層の磁気的状態をしかるべき状態に変化させることにより行われる。一方の線(ビット線)は、ビットの磁化容易軸に対して平行な磁場を発生させ、他方の線(デジット線)は、その磁場と垂直な(困難軸)成分を発生させる。それらの線の交点には、MTJの反転閾値をちょうど超えるように設計されたピーク磁場が発生する。
高性能なMRAMのMTJ素子は、高いトンネル磁気抵抗(TMR)比dR/Rを有するという特徴をもつ。ここで、RはMTJ素子の最小抵抗値であり、dRはフリー層の磁気的状態を変化させることによる抵抗値の変化である。MRAMを用いた一般的な用途では、TMR比dR/Rおよび抵抗値均一性(Rp_cov)が高く、反転磁界(Hc)および磁歪(λs)の値が低いことが望まれる。スピンMRAM(STT−MRAM)の場合、λsおよびHcの値を高くすることによって異方性を向上させ、これにより高い熱的安定性を得る。また、磁化容易軸に沿った1μm未満の寸法と困難軸に沿った1μm未満の寸法とにより画定される面積をもつMTJ素子では、面積抵抗RAを比較的小さくする必要がある(約4000[Ω・μm2]未満)。さもないと、MTJ素子の最小抵抗値Rが大きくなりすぎてしまい、そのMTJ素子と接続されるトランジスタの抵抗値との整合性に支障をきたすおそれがある。
MRAMセルの大きさが減少するに伴い、導電線を用いて発生させた外部磁界により磁気モーメントの方向を反転させることが困難となりつつある。超高密度なMRAMの製造を可能とするための一つの解決手段としては、半選択によるディスターブ(half-select disturb)の問題を解消し、しっかりした磁化反転構造を得ることが考えられる。このような背景から、スピントランスファー(スピントルク)素子と呼ばれる新型の素子が開発されている。スピントランスファートルクMRAM(STT−MRAM)は、従来のMRAMと比較して、隣接するセル間での半選択の問題および書き込み時のディスターブを防ぐことができるという利点がある。スピントランスファー効果は、強磁性/スペーサ/強磁性を含む多層膜のスピン依存輸送特性によって生じる。スピン分極電流がCPP構造を有する磁性多層膜を貫くとき、強磁性層に入る電子のスピン角運動量は、強磁性層と非磁性スペーサとの間の界面近傍において、その強磁性層の磁気モーメントと相互に作用し合う。この相互作用を通じて、電子はその角運動量の一部を強磁性層に移す。その結果、スピン分極電流の電流密度が十分に高く、かつ多層膜の寸法が小さければ、スピン分極電流が強磁性層の磁化方向を反転させることができる。STT−MRAMと従来のMRAMとの相違点は書き込み動作のみにあり、読み出しのメカニズムは同じである。
図1aは、従来のSTT−MRAM素子のメモリセルを示す断面図である。図1aに示すSTT−MRAM構造1は、P型半導体基板2の上に形成されたゲート5と、ソース3と、ドレイン4と、ワード線(WL:Word Line)6と、下部電極(BE:Bottom Electrode)7と、ビット線(BL:Bit Line)9とを有している。また、STT−MRAM構造1は、ビット線9と下部電極7との間に形成された磁気トンネル接合素子8と、下部電極7をドレイン4に接続するための導電柱10とを有している。
垂直磁気異方性(PMA:Perpendicular Magnetic Anisotropy)を有する材料は、磁気記録用途および光磁気記録用途において特に重要な要素である。垂直磁気異方性を有するスピントロニック素子は、熱的安定性という要求を満たすだけではなくセル形状についてアスペクト比の制限がない点で、面内異方性に基づくMRAM素子と比較して有利である。したがって、垂直磁気異方性に基づくスピンバルブ構造は、将来的なMRAMの用途や他のスピントロニック素子のための主要な課題の一つである高記録密度化に必要なサイズ縮小を可能にするものである。
垂直磁気異方性を示す材料としては、例えばCoPt,CoPt−SiO2,Tb(Fe)Co,およびFePtが挙げられ、多くの文献に記載されている。しかしながら、非特許文献に記載されている材料を含め、これまでの文献に記載の材料は、少なくとも一つの欠点を有している。具体的には、スピンバルブ構造において垂直磁気異方性の特性を得るための要件として、過大な加熱処理は不要であることが好ましい。しかしながら、FePtやTb(Fe)Coの場合、十分に高い垂直磁気異方性を得るには高温による熱処理が必要であり、高温によって特定の構成要素が損傷してしまうため、デバイス集積の観点からふさわしくない。CoPtやその合金(例えば、CoCrPt、CoPt−SiO2)は、PtおよびCrが強力なスピン消極材料であり、スピンバルブ構造に用いた場合にスピントロニック素子の振幅を著しく抑制してしまうので、望ましくない。以上から、例えばCo/X(Xは、Pt,Pd,Au,Ni,Ir等である)を用いた新規な磁性積層構造を用いることが考えられる。上述したように、Pt,PdおよびIrは、強力なスピン消極特性を有しているので、Co/Pt,Co/PdおよびCo/Irは、スピントロニック素子用の優れた垂直磁気異方性材料とはなりえない。また、Co/Pt,Co/PdおよびCo/Irを用いた構造では、シード層として、高価なPt,PdまたはIrを、概して極めて厚く形成する必要がある。さらに、Auは高コストであるとともに、隣接する層に対して容易に相互拡散してしまうことから、垂直磁気異方性を得ることを目的とした場合、Co/Auは非実用的である。一方で、Co/Ni積層構造は、垂直磁気異方性の候補材料としていくつかの利点を有している。具体的には、Co,Ni,およびCoとNiとの界面から非常に高いスピン分極が得られること、Ni層を挿入することによりロバスト性が得られ、安定性が高まること、1テスラという非常に高い飽和磁化、すなわち他のCo/Mの組み合わせ(Mは金属である)を用いた場合と比較して約2倍以上の非常に高い飽和磁化が得られること、安価であること、が利点として挙げられる。
垂直磁気異方性材料は、非特許文献2に記載のマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR:Microwave Assisted Magnetic Recording)への適用も検討されている。非特許文献2は、垂直記録構造において媒体保磁力を大幅に下回るヘッド磁界による記録を行うためのメカニズムを提案するものである。図1bは、非特許文献2に基づき作図した、交流磁界アシスト垂直ヘッド構造を有するMAMR記録ヘッドを示す模式図である。図中、符号19で示す上側の枠部は、マイクロ波周波数領域の局部交流磁界を発生させるための垂直スピントルク駆動型発振器を表している。この垂直スピントルク駆動型発振器は、下部電極11aと、上部電極11bと、膜面と垂直に磁化したリファレンス層(スピントランスファー層)12と、金属スペーサ層13と、発振積層構造14とを有している。発振積層構造14は、磁界生成層14aと、磁化容易軸14cを有する垂直異方性層14bとを含む。なお、図1bの下側では、枠部19で示す垂直スピントルク駆動型発振器を90度回転させて示している。この場合、垂直スピントルク駆動型発振器は、記録磁極17とトレーリングシールド18との間に位置している。MAMR記録ヘッドは、軟磁性下地層15を有する磁気媒体16の表面上を横切るように移動する。リファレンス層12は、注入電流Iのスピン分極をもたらす。磁界生成層14aと垂直異方性層14bとは、互いに強磁性交換結合している。マイクロ波アシスト磁気記録に関する技術が成熟するに伴い、リファレンス層12および発振積層構造14に用いる材料の改善が必要とされている。
これまで、Co/Ni積層構造によって高い垂直磁気異方性を得るために、非特許文献2に記載のいくつかの試みがなされているが、その実例のいずれにおいても、垂直磁気異方性を得るには極めて厚い下地層を用いる必要がある。例えば、非特許文献3および非特許文献4では、膜厚が200nmのAuシード層を用いている。非特許文献5および非特許文献6では、50nmのAu層と、50nmのAg層とを有する複合シード層を用いている。非特許文献7には、100nm厚のCuシード層が記載されている。非特許文献8には、50nm厚のTiまたは50nm厚のCuシード層を用い、150℃まで加熱処理を行うことが記載されている。非特許文献9には、100nm厚のCu層と、20nm厚のPt層と、10nm厚のCu層とを有する複合シード層が記載されている。
C. Slonczewski著、「Current driven excitation of magnetic multilayers」、J. Magn. Magn. Mater.、1996年、第159巻、L1−L7 J-G. Zhu等著、「Microwave Assisted Magnetic Recording」、IEEE Trans. on Magnetics、2008年、第44巻、第1号、p125−131 G. Daalderop等著、「Prediction and Confirmation of Perpendicular Magnetic Anisotropy in Co/Ni Multilayers」、Phys. Rev. Lett.、1992年、第68巻、682 F. den Broeder等著、「Co/Ni multilayers with perpendicular magnetic anisotropy: Kerr effect and thermomagnetic writing」、Appl. Phys. Lett.、1992年、第61巻、1648 V. Naik等著、「Effect of (111) texture on the perpendicular magnetic anisotropy of Co/Ni multilayers」、J. Appl. Phys.、1998年、第84巻、3273 Y. Zhang等著、「Mangetic and magneto-optic properties of sputtered Co/Ni multilayers」、J. Appl. Phys.、1994年、第75巻、6495 Jaeyong Lee等著、「Perpendicular magnetic anisotropy of the epitaxial fcc Co/60-Angstrom-Ni/Cu (001) system」、Phys. Rev. B、1997年、第57巻、R5728 P. Bloemen等著、「Magnetic anisotropies in Co/Ni (111) multilayers」、J. Appl. Phys.、1992年、第72巻、4840 W. Chen等著、「Spin-torque driven ferromagnetic resonance of Co/Ni synthetic layers in spin valves」、Appl. Phys. Lett.、2008年、第92巻、012507
しかしながら、上述したシード層のいずれも、スピントロニック素子における、垂直磁気異方性を得るためのCo/Ni積層構造に用いるには実用的ではない。一般に、最新の素子においては、最適な性能を得るため、スピンバルブの積層面と直交する方向のスペースには制限がある。シード層が約10nmよりも厚い場合、スピンバルブの厚さを最小限に保つためにはスピンバルブ中の他の層の厚さを薄くする必要があり、これによる素子の性能の低下が発生しやすいという不都合がある。
したがって、スピントロニック素子に適合し得るほどに十分に薄く、上部のCo/Ni積層構造において高い垂直磁気異方性を発生させることが可能なシード層が求められている。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、スピン消極を引き起こすことなく、また、素子における他の構成要素を劣化させる加熱処理を必要とせずに、[Co/Ni]x積層構造において十分な垂直磁気異方性を形成することが可能な、スピントロニック素子におけるスピンバルブ構造、ボトム型スピンバルブ構造、ならびにそのようなスピンバルブ構造を備えたマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、[Co/Ni]x積層構造の形成に際して、Co層およびNi層の内部、ならびに、隣接するCo層およびNi層の界面に、fcc[111]超格子([111]配向面心立方超格子)を保つことが可能な、スピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、記録再生ヘッドや、MRAMまたはマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)用のスピントランスファー発振器(STO)等のスピントロニック素子の用途に用いられる以下にあげる各種スピンバルブ構造により達成される。
本発明におけるスピントロニック素子のスピンバルブ構造は、複合シード層と、各Co層の厚さt1よりも各Ni層の厚さt2が大きくなるように形成された[Co/Ni]X積層リファレンス層(X=5ないし70)と、磁性層と、[Co/Ni]X積層リファレンス層と磁性層との間に形成された金属スペーサ層とを備えたものである。ここで、[Co/Ni]Xなる表記は、Co層の上にNi層を積層して得られる2層構造をX回繰り返して積層することを意味する。複合シード層は、基板上に形成された下部Ta層と、この下部Ta層の上に形成され、fcc[111]またはhcp[001]という結晶構造を有する金属層M1とを少なくとも含む。このようなスピンバルブ構造としては、ボトム型のものとトップ型のものとがある。なお、上記の磁性層としては、高いスピン分極と小さい磁気減衰係数(magnetic damping coefficient)とを有する金属磁性層を用いることが好ましい。以下に記載する構造、素子および方法においても同様である。
本発明におけるスピントロニック素子のボトム型スピンバルブ構造は、複合シード層と、各Co層の厚さt1よりも各Ni層の厚さt2が大きくなるように前記複合シード層上に形成された[Co/Ni]X積層リファレンス層(X=5ないし70)と、[Co/Ni]X積層リファレンス層の上に形成されたトンネルバリア層と、トンネルバリア層上に形成された磁性層と、この磁性層の上に形成されたキャップ層とを備えたものである。複合シード層は、基板上に形成された下部Ta層と、この下部Ta層の上に形成され、fcc[111]またはhcp[001]という結晶構造を有する金属層M1とを少なくとも含む。
本発明におけるマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子は、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に形成された積層構造とを備え、この積層構造が、複合シード層と、各Co層の厚さt1よりも各Ni層の厚さt2が大きくなるように形成されスピントランスファー層として機能する[Co(コバルト)/Ni(ニッケル)]X積層リファレンス層(X=5ないし70)と、磁界生成層(オシレータ層)と[Co/Ni]X積層リファレンス層との間に形成された金属スペーサ層と、金属スペーサ層上に形成されて磁界生成層(オシレータ層)として機能する磁性層とを備えたものである。複合シード層は、第1の電極に接する下部Ta層と、下部Ta層上の第1の電極とは反対側に形成されfcc[111]またはhcp[001]という結晶構造を有する金属層M1とを少なくとも含む。
本発明に係るスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の形成方法は、基板上に、下部Ta層と、前記下部Ta層の上に配置されるfcc[111]またはhcp[001]結晶構造を有する金属層M1とを少なくとも含むfcc[111]結晶構造の複合シード層を形成するステップと、複合シード層の上に積層構造を形成するステップとを含むものである。上記の積層構造は、各Co層の厚さt1よりも各Ni層の厚さt2が大きくなるように形成された[Co/Ni]X積層リファレンス層(X=5ないし70)と、所定の大きさのスピントルクが印加されたときに磁化容易軸に沿った磁気モーメントが反対方向に変化するように構成された磁性層と、[Co/Ni]X積層リファレンス層と磁性層との間に形成された金属スペーサ層またはトンネルバリア層とを含むように形成される。
本発明の実施においては、いくつかの態様が考えられる。
その第1の態様として、例えばボトム型のCPP−GMRスピンバルブ構造が可能である。このボトム型スピンバルブ構造は、基板上に順次形成された、複合シード層と、[Co(t1)/Ni(t2)]x積層リファレンス層(x=5ないし70)と、Cu等からなる金属スペーサ層と、フリー層と、キャップ層とを含む積層構造を有する。積層リファレンス層の各Co層の好ましい厚さt1は0.05nm〜0.5nmであり、各Ni層の好ましい厚さt2は0.2nm〜1.0nmである。複合シード層は、[Ta/M1/M2]または[Ta/M1]という積層構造を有することが好ましい。ここで、M1は、fcc[111]結晶構造([111]配向面心立方格子結晶構造)またはhcp[001]結晶構造([001]配向六方最密構造)を有する金属であり、例えば、Ru(ルテニウム)、Cu(銅)またはAu(金)等が使用される。M2は、Cu、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)、W(タングステン)、Rh(ロジウム)、AuまたはAg(銀)である。M2がPd、AuまたはAgの場合には、コスト低減および/またはスピン消極効果を最小限に抑える観点から、M2層の厚さを最小限に保つようにすることが好ましい。複合シード層のTa層とM1層とは、より上側の層における[111]構造を向上させるために重要である。フリー層は、より高いスピン分極とより小さい磁気減衰係数とを有することが好ましく、例えば、FeCo(鉄コバルト)により構成可能であるが、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(シリコン)、Ga(ガリウム)、B(ボロン)、C(炭素)、Se(セレン)およびSn(錫)等のうちの少なくとも1つを含むFeCo合金により構成してもよい。あるいは、フリー層を、Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGeもしくはCo2FeGe等を含むホイスラー(Heusler)合金、またはCoMnSi、CoFeSi、CoMnAlもしくはCoFeGeを含む半ホイスラー合金により構成するようにしてもよい。
第2の態様として、トップ型のCPP−GMRスピンバルブ構造が可能である。このトップ型スピンバルブ構造は、基板上に順次形成された、[Ta/Ru/Cu],[Ta/Ru]または[Ta/Ru/A]等の構造を有する複合シード層(A=Ti,Pd,W,Rh,AuまたはAg)と、フリー層と、Cu等からなる金属スペーサ層と、高い垂直磁気異方性特性を有する[Co(t1)/Ni(t2)]x積層リファレンス層と、キャップ層とを含む積層構造を有する。フリー層およびキャップ層は、例えば第1の態様の場合と同様の組成を有する。
第3の態様として、CCP−CPP−GMRスピンバルブ構造が可能である。このCCP−CPP構造は、金属スペーサ層であるCu層の上部と下部との間に電流制限パス(CCP:Current Confining Path)を有するNOL(Nano-Oxide Layer)層を挿入することにより、上記の各スピンバルブ構造のCuスペーサ層を改変したものである。例えば、2つのCuスペーサ層の間にAlOx等のアモルファス酸化物を形成して得られる[Cu/AlOx/Cu]という構造が可能である。CCP−CPP構造の場合、Cuメタルパスが絶縁テンプレートによって制限されるので、スピンバルブのMR比を大幅に高めることができる。
第4の態様として、ボトム型またはトップ型のCPP−TMRスピンバルブ構造が可能である。このCPP−TMRスピンバルブ構造は、第1または第2の態様のCPP−GMR構造におけるCuスペーサ層を、AlOxまたはMgO等からなるトンネルバリア層に置き換えることによって得ることができる。
第5の態様として、マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)に適用されるスピントランスフ ァー発振器(STO)構造への適用が可能である。このSTO構造は、例えば、2つの電極間に 、複合シード層と、垂直磁気異方性を有する[Co/Ni]x積層リファレンス層と、金属スペ ーサ層と、磁界生成層と、垂直磁気異方性層とを順次含む積層構造を形成してなるものである。 各層の積層面は、垂直磁気記録(PMR)ヘッドの主磁極とトレーリングシールドとの間に、エアベアリング面と直交する方向を向くように配列される。複合シード層と、[Co/Ni]x積 層リファレンス層と、金属スペーサ層とは、例えば、上記第1の態様と同じ材料から構成される 。磁界生成層は、例えばCoFeまたはCoFe合金から構成される。垂直磁気異方性層は、磁 界生成部と強磁性結合し、これによりMAMR構造における発振積層構造を形成する。
以上の各態様では、積層構造を構成するすべての層を成膜したのち、パターニングおよびエッチングを行うことにより、平面形状が例えば楕円形、円形または多角形をなすスピンバルブ構造を形成する。
各態様の重要な特徴のひとつは、[111]配向構造を有する複合シード層を用いることにより、その上部に積層されるCo/Ni積層リファレンス層にも[111]方向の配向性を発生させ、これにより垂直磁気異方性(PMA)を向上させた点にある。
また、他の特徴は、[Co/Ni]x積層リファレンス層における各Co層および各Ni層を、非常に低いRFパワーと高圧の不活性ガスとを用いて成膜することにより、衝突イオンエネルギーを最小限に抑え、あるひとつの層を成膜する際に既存のCo層またはNi層に与える損傷を極力少なくした点にある。したがって、Co層とNi層との間の界面が保たれ、垂直磁気異方性特性が最大限に確保される。さらに、この方法によれば、極めて薄いシード層を用いた場合であっても、[Co/Ni]x積層リファレンス層の垂直磁気異方性を十分確保することが可能となる。
本発明に係る、スピントロニック素子におけるスピンバルブ構造、ボトム型スピンバルブ構造、およびマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子によれば、スピン消極を引き起こすことなく、また、素子における他の構成要素を劣化させる加熱処理を必要とせずに、[Co/Ni]x積層構造において十分な垂直磁気異方性を形成することが可能になる。
また、本発明に係る、スピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の製造方法によれば、[Co/Ni]x積層構造の形成に際して、Co層およびNi層の内部、ならびに、隣接するCo層およびNi層の界面に、fcc[111]超格子を保つことが可能になる。
一般的なSTT−MRAM素子のメモリセルを示す断面図である。 交番磁界アシスト垂直ヘッド構造を有する従来のMAMR記録ヘッドを示す模式図である。 本発明の第1の実施の形態に係るCPP−GMRボトム型スピンバルブ構造を示す断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係るCPP−GMRトップ型スピンバルブ構造を示す断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係るCCP−NOL層を有するCCP−CPP−GMR用ボトム型スピンバルブ構造を示す断面図である。 本発明の第4の実施の形態に係るCPP−TMRボトム型スピンバルブ構造を示す断面図である。 (a)〜(d)は、Cuシード層の厚さがその上側にある[Co/Ni]20積層構造の垂直磁気異方性に及ぼす影響を示す磁化曲線図である。 (a)〜(d)は、Ta/Ru/Cu複合シード層におけるCu層の厚さがその上側にある[Co/Ni]20積層構造の垂直磁気異方性に及ぼす影響を示す磁化曲線図である。 (a)〜(c)は、本発明の一実施の形態において、上部の[Co/Ni]20積層構造の垂直磁気異方性を保ちつつ、Ta/Ru/Cu複合シード層におけるCu層の厚さを如何にして薄くし、または取り除くことができるかを示す磁化曲線図である。 本発明の一実施の形態に基づき形成されたTa3/Ru5/Cu10/[Co(0.2)/Ni(0.5)]20/Ru1/Ta4/Ru3という積層構造の垂直磁気異方性に対する、熱処理の効果を示す磁化曲線図である。 本発明の第1の実施の形態に係るCPP−GMRボトム型スピンバルブ構造の垂直磁気異方性を示す磁化曲線図である。 (a)は、本発明の第2の実施の形態に係るCPP−GMRトップ型スピンバルブ構造の垂直磁気異方性を示す磁化曲線図であり、(b)は、(a)における積層構造の磁性FeCoAlフリー層を非磁性FeCoAl層に置き換えた点を除き(a)と同様の積層構造における垂直磁気異方性を示す磁化曲線図である。 本発明の第5の実施の形態に係るマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)用交番磁界生成器(ボトム型スピントランスファー発振器)の構造を示す断面図である。 上記第5の実施の形態の変形例に係るマイクロ波アシスト磁気記録用交番磁界生成器(トップ型スピントランスファー発振器)の構造を示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係る、主磁極、ライトシールド、およびスピントランスファー発振器(STO)構造を備えたマイクロ波アシスト磁気記録用のトップ型STO記録ヘッドが形成された、一体型記録再生ヘッドを示す断面図である。 本発明の一実施の形態に係る、主磁極、ライトシールド、およびスピントランスファー発振器構造を備えたマイクロ波アシスト磁気記録用のボトム型STO記録ヘッドが形成された、一体型記録再生ヘッドを示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るCPPスピンバルブ構造は、垂直磁気異方性を有する[Co/Ni]x積層リファレンス層を備える。この積層リファレンス層の垂直磁気異方性は、下部Ta層と、fcc[111]結晶構造([111]配向面心立方格子結晶構造)またはhcp[001]結晶構造([001]配向六方最密構造)を有する上部金属層とを含む、薄い複合シード層によって十分なものとなっている。この構造によれば、MAMR素子およびSTT−MRAM素子等のスピントランスファー発振器をもつ素子や、他のスピントロニック素子の性能が向上する。また、本発明は、[Co/Ni]x積層リファレンス層を成膜する方法を含んでいる。この方法によれば、CoとNiとの界面が十分に保たれ、薄いシード層を用いた場合であっても、所望のfcc[111]方向の配向性を形成することができる。なお、図面は一例であり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
原理として、[Co/Ni]x積層構造の磁気異方性は、Co原子およびNi原子が有する3d電子と4s電子とのスピン軌道相互作用により生じる。このスピン軌道相互作用は、[111]方向に配列している結晶軸に対して異方性をもつ軌道モーメントを発生させるとともに、軌道モーメントをもったスピンモーメントの配列をもたらす。[Co/Ni]x積層構造では、垂直磁気異方性を形成するために、fcc[111]超格子を有していることが重要である。上述したように、従来技術に係る構造では、Au,Au/Ag,Ti,CuおよびAu/Cu等からなる完全なfcc構造を有する厚いシード層によるアシスト作用によって、[Co/Ni]x積層構造中に垂直磁気異方性が形成されている。上述の非特許文献3および非特許文献4によると、垂直磁気異方性効果は、最密充填されたCo原子およびNi原子の極薄層間に界面が存在することにより成り立っていると考えられる。CoとNiとは価電子数が1つ違うだけであることから、CoおよびNiの界面が存在することによって大きな磁気異方性が生じることになる。
本発明において、発明者らは、積層されたCo層とNi層との界面を保つことができると共に、それゆえに、より薄いシード層を必要とする、Co層およびNi層の成膜方法を見出した。また、本発明において、実施の形態で説明する[Co/Ni]x構造の積層数(x)が、約5〜70程度の十分な数に達すると、スピントロニック用途の高い垂直磁気異方性を発生させる十分な量のCo価電子およびNi価電子が、スピン軌道相互作用によって生じる。一つの態様においては、Ta/M1(M1は、fcc[111]結晶配向またはhcp[001]結晶配向を有する上部金属層であり、例えばRu,CuまたはAu)と表される複合シード層を用いると、その上側にあるスピンバルブ積層膜における[111]構造が促進され、これにより積層リファレンス層の垂直磁気異方性が最適化されるという追加的な利点が得られる。
以下では、まず、本発明のスピンバルブ構造の各種実施の形態について説明し、次に、CoとNiとの界面を保つことが可能な[Co/Ni]x積層構造の形成方法について説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るボトム型スピンバルブ構造20の断面構造を表すものである。本実施の形態のスピンバルブ構造20は、CPP−GMR構造を有している。基板21は、例えば下部電極層である。基板21の上には、本実施の形態における重要な特徴である複合シード層22(個々の層は図示せず)が設けられている。複合シード層22は、fcc[111]格子をもち、Ta/Ru/Cuという構造を有する。下部Ta層は、0.5nm〜10nmの厚さを有し、基板21に接している。中間Ru層は、Ta層の上に形成され、約1.0nm〜10nmの厚さを有している。上部Cu層は、Ru層の上に形成され、0.1nm〜10nmの厚さを有している。あるいは、例えば上部Cu層を取り除き、Ta/Ruという構造の複合シード層22を用いてもよい。この場合、Ta層は、0.5nm〜10nmの厚さを有し、Ru層は、1.0nm〜10nmの厚さを有している。必要に応じて、例えばRu層を、fcc[111]格子構造またはhcp[001]格子構造を有する金属M1層に置き換えてもよい。
他の例として、上記3層構造を有する複合シード層22における上部Cu層を他の金属M2層に置き換えるようにしてもよい。ここで、金属M2層は、例えばTi(チタン),Pd(パラジウム),W(タングステン),Rh(ロジウム),Au(金),またはAg(銀)を含み、0.1nm〜10nmの厚さを有するものである。この場合、複合シード層22は、Ta/M1/M2という構造(M1とM2とは互いに異なる)をもつことになる。いずれの場合においても、複合シード層22が、下部Ta層と、このTa層の上に形成され、fcc[111]またはhcp[001]という結晶配向を有する少なくとも一つの金属層とを含むことにより、ボトム型スピンバルブ構造20を構成する他の層における[111]結晶構造を向上させ、より上層の[Co/Ni]x積層構造における垂直磁気異方性の大きさを増大させる、ということが重要である。他の例として、複合シード層22が、下部Ta層の他に、例えばNiCr層を含み、さらに、Ta層およびRu層のうち少なくとも一つの層を含むようにしてもよい。
積層リファレンス層23は、複合シード層22の上に形成され、好ましくは[Co/Ni]x積層構造を有している。ここで、xは、Ms×t(飽和磁束密度×厚さ)の要件から定まる約5〜70の自然数である。積層リファレンス層23における各Co層の厚さは、0.05nm〜0.5nmであり、好ましくは0.15nm〜0.3nmである。積層リファレンス層23の各Ni層の厚さは、0.2nm〜1.0nmであり、好ましくは0.35nm〜0.8nmである。Ni層の厚さt2は、好ましくはCo層の厚さt1よりも大きく、より好ましくはt1×2程度の厚さに設定する。隣接するCo層とNi層との間のスピン軌道相互作用を最適化するためである。Co層およびNi層は、このCo層とNi層との間の界面を保つ後述の方法によって成膜される。例えば、Co層の厚さt1が約0.2nm以下である場合、Co層は最密充填層として考えることができ、この場合、必ずしも[111]結晶配向を有しているとは限らない。
金属スペーサ層24は、積層リファレンス層23の上に形成され、1.5nm〜15nmの厚さを有し、好ましくは2nm〜6nmの厚さを有している。金属スペーサ層24は、Cu等の非磁性体から構成され、積層リファレンス層23とフリー層25との間の磁気結合を防止可能なほどの十分な厚さを有していることが好ましい。また、金属スペーサ層24がCuスペーサ層の場合、再生動作または記録動作時に際して電流がボトム型スピンバルブ構造20の各層22〜26に対して垂直な方向に通過することを可能とする優れた導電率を有するので、有利である。
Cuスペーサ層(金属スペーサ層24)の上には、フリー層25が設けられている。このフリー層25は、スピントロニック素子におけるスピントランスファー磁化反転を可能とするために、高いスピン分極および小さい磁気減衰係数(magnetic damping coefficient)を有していることが好ましい。フリー層25は、FeCo(鉄コバルト)より構成され、またはAl(アルミニウム),Ge(ゲルマニウム),Si(シリコン),Ga(ガリウム),B(ボロン),C(炭素),Se(セレン)およびSn(錫)から選ばれる少なくとも一つの原子を含むFeCo合金より構成された、磁性(強磁性)層である。フリー層25は、十分な大きさのスピントルクが印加された際に反対方向に反転する、磁化容易軸方向に沿った磁気モーメントを有している。なお、フリー層25を、例えばCo2MnSi,Co2FeSi,Co2MnAl,Co2FeAl,Co2MnGe,およびCo2FeGe等のホイスラー合金、またはCoMnSi,CoFeSi,CoMnAl,またはCoFeGe等の半ホイスラー合金から構成するようにしてもよい。
後述するマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)のスピントランスファー発振器素子に関する実施の形態(第5の実施の形態)の場合、例えばフリー層25は、オシレータ層に相当し、[Co/Ni]xを有する積層リファレンス層23は、スピント注入層に相当する。
複合キャップ層26は、ボトム型スピンバルブ構造20の最上層として設けられている。キャップ層26は、例えばRu/Ta/Ru構造を有し、上部のRu層は、酸化防止のためと、その上に形成される上部電極(図示せず)に対して優れた導通を図るために用いられる。薄いRu層をキャップ層26として用いた場合、Ru(ルテニウム)の強力なスピン散乱効果に起因して、臨界電流密度(Jc)が著しく低下する。臨界電流密度は、90nm技術ノード(90 nm technology node)以降のスピントランスファー磁化反転に対しても適合するように、約106A/cm2であることが好ましい。臨界電流密度の値がこれよりも高いと、本発明の第4の実施の形態で用いられている、AlOxやMgO等の薄いトンネルバリア層を破壊する可能性もある。Ta層は、例えば、後続の処理工程においてエッチングのストップ層として機能すべく設けられている。必要に応じて、当該技術分野で用いられる他の材料を、キャップ層26に用いてもよい。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るCPP−GMRトップ型スピンバルブ構造30の断面構造を表すものである。本実施の形態のトップ型スピンバルブ構造30は、[Co/Ni]x積層リファレンス層23と、フリー層25との配置位置が入れ替わっている点を除き、上述した第1の実施の形態のボトム型スピンバルブ構造20と同様の複数の層を有している。すなわち、フリー層25は、複合シード層22に接しており、積層リファレンス層23は、Cuスペーサ層(金属スペーサ層24)の上に形成されている。この場合、複合シード層22と積層リファレンス層23とは互いに直接接触していないものの、[111]結晶配向を有する薄い複合シード層22は、その上部のすべての層において[111]格子を形成させることから、この複合シード層22は、積層リファレンス層23の垂直磁気異方性を完全に形成する上で依然として重要である。
図4は、本発明の第3の実施の形態に係るCCP−NOL層を有するCPP−GMRボトム型スピンバルブ構造40の断面構造を表すものである。本実施の形態のボトム型スピンバルブ構造40は、電流パス制限(CCP:Confining Current Path)型のCPP−GMRセンサと呼ばれるCPP−GMR構造を有している。この構造において、Cuスペーサ層を流れる電流は、分離メタルパス(segregating metal path)と酸化物とを有する構造によって制限される。このCCP−CPP構造では、Cuメタルパスが、絶縁テンプレートすなわちナノオキサイド層(NOL:Nano-Oxide Layer)によって制限されるため、MR比を飛躍的に高めることができる。
このように、本実施の形態のボトム型スピンバルブ構造40は、Cuスペーサ層(金属スペーサ層24)が、ナノオキサイド層27によって下部Cu層24aと上部Cu層24bの2つの部分に分離されていること以外は、第1の実施の形態のボトム型スピンバルブ構造20と同様である。ナノオキサイド層27は、例えば、下部Cu層24aの上にAlCu層を成膜したのち、プレ・イオン処理(PIT:Pre-Ion Treatment)およびイオンアシスト酸化(IAO:Ion-Assisted Oxidation)処理を行うことにより、AlCu層を、内部に分離Cu導電路(電流制限パス)を有するAlOxマトリクスへと変化させることにより形成可能である。その後、このナノオキサイド(CCP)層27の上に、上部Cu層24bを成膜する。ボトム型スピンバルブ構造40の他の層22,23,25および26は、上記第1の実施の形態(図2)のボトム型スピンバルブ構造20における各相当部分と同様である。
図5は、本発明の第4の実施の形態に係るCPP−TMRボトム型スピンバルブ構造50の断面構造を表すものである。本実施の形態では、上記第1の実施の形態(図2)におけるCuスペーサ層(金属スペーサ層24)の代わりにトンネルバリア層28が設けられている。トンネルバリア層28は、例えば、AlOx,MgO,TiOx,TiAlOx,MgZnOxもしくはZnOx、または、絶縁体層として一般的に用いられる他の金属酸化物もしくは金属窒化物から構成されている。トンネルバリア層28がMgOの場合、好ましくは、第1のMg層を積層リファレンス層23の上に成膜したのち、自然酸化(NOX:Natural Oxidation)法またはラジカル酸化(ROX:Radical Oxidation)法を用いて第1のMg層を酸化させ、これにより得られたMgO層の上に第2のMg層を成膜することにより形成する。このMgO層の内部の酸素は、後続の熱処理に際して第2のMg層へと拡散し、これにより、ほぼ均一なMgOを有するトンネルバリア層28が形成される。なお、ROX法を用いた場合ではRA値が高くなり易い。そのため、約20[Ω・μm2]未満の目標値のRAが所望とされる場合、ROX法よりもNOX法を用いることが好ましい。NOX処理は、例えば、スパッタ装置の酸素チャンバ内で、1[torr](≒133[Pa])の圧力の酸素雰囲気下、0.1から1.0標準リットル/分(slm:standard liters per minute)の酸素流量により、約100秒から200秒間行い、第1のMg層を酸化させる。ボトム型スピンバルブ構造50の他の層22,23,25および26は、上記第1の実施の形態(図2)のボトム型スピンバルブ構造20における各相当部分と同様である。
図12aは、本発明の第5の実施の形態に係るMAMR構造の要部断面を表すものである。本実施の形態では、例えば、第1電極61の上に、複合シード層22と、[Co/Ni]x積層リファレンス層23と、金属スペーサ層62と、磁界生成層63と、垂直磁気異方性層64とが順次形成され、ボトム型スピントランスファー発振器(STO:Spin Transfer Oscillator)構造60を構成している。第2電極65は、垂直磁気異方性層64の上面に接している。上述したように、積層リファレンス層23は、MAMR素子の場合ではスピントランスファー層として機能する。金属スペーサ層62は、例えば銅(Cu)から構成され、または、当業者に周知の高導電率を有する他の金属もしくは合金から構成される。磁界生成層63は、磁性(強磁性)層であり、上述の実施の形態のフリー層25と同様に、スピントランスファー磁化反転を可能とするため、高いスピン分極および小さい磁気減衰係数を有する、例えばFeCoまたはその合金から構成されている。磁界生成層63は、所定の大きさのスピントルクが印加された際に、磁化容易軸(図示せず)に沿った一方向から反対方向へと磁気モーメントが反転可能なオシレータ層として機能する。垂直磁気異方性層64は、磁界生成層63と強磁性結合している。本発明の実施の形態の重要な特徴は、Ta/M1構造またはTa/M1/M2構造を有する複合シード層22が、積層リファレンス層23の[111]格子構造および垂直磁気異方性を向上させる点にあり、さらに、積層リファレンス層23が、その内部にCo−Ni界面が保たれるように形成される点にある。なお、本実施の形態(図12a)ではボトム型STO構造60の例を示したが、磁界生成層63と積層リファレンス層23の位置を入れ替えて、図12bに示すようなトップ型STO構造70として構成することも可能である。
図13は、本発明の一実施の形態に係るMAMR用スピントロニック素子(STO構造)を備えた一体型記録再生ヘッドの断面構造を表すものである。この一体型記録再生ヘッドは、トップ型STO記録ヘッド80と、再生ヘッド75とを備えている。
再生ヘッド75は、上部シールド74aおよび下部シールド74bと、これらのシールド74a,74b間に設けられたセンサ73とを有している。
トップ型STO記録ヘッド80は、再生ヘッド75と対向する側に位置する主磁極77と、再生ヘッド75とは反対側に位置するトレーリングシールド76と、主磁極77内に磁束を発生させるためのコイル78と、トップ型STO構造70と、このトップ型STO構造70に電流を注入するための配線(図示せず)とを備えている。トップ型STO構造70は、図12bに示したものと同様の構造を有し、第1電極61と第2電極65との間に、複合シード層22と、垂直磁気異方性層64と、磁界生成層63と、金属スペーサ層62と、積層リファレンス層23とを順に備えている。なお、第1電極61として主磁極77を利用し、第2電極62としてトレーリングシールド76を利用してもよい。この場合には、上記した、トップ型STO構造70へ電流を注入するための配線もまた、主磁極77およびトレーリングシールド76が兼ねることとなる。
トップ型STO構造70は、主磁極77とトレーリングシールド76との間に、積層リファレンス層23の磁化方向が媒体基板71の移動方向Mと同じ方向となるように配置されている。オシレータ層としての磁界生成層63は、積層リファレンス層23よりも第1電極側(主磁極77に近い側)に形成され、回転自在な磁化方向を有している。図13では、磁界生成層63を、2つの矢印および円状の点線を有する層として表している。この一体型記録再生ヘッドは、媒体トラックに沿って記録ビット72が形成された媒体基板71の上方に、エアベアリング面を媒体基板71に向けて支持され、矢印Mの方向に移動する媒体基板71に対して相対移動するようになっている。
このような構成のトップ型STO記録ヘッド80では、以下のようにして書き込み動作が行われる。ここでは、トレーリングシールド76および主磁極77が、トップ型STO構造70に紙面向かって右から左に電流を印加するための上下電極(第1電極および第2電極)を兼ねているものとして説明する。媒体基板71に対して記録ビット72を書き込む際には、コイル78に流れる電流によって主磁極77の先端部(エアベアリング面)から書き込み磁界が発せられると同時に、トレーリングシールド76と主磁極77の間に磁界が発生する。このため、上記の印加電流によるスピントルク作用とあいまって、磁界生成層63の磁化の方向が才差運動を起こし、それにより高周波磁界を発生する。この高周波磁界が主磁極77からの書き込み磁界と重畳する。これにより、実効的な書き込み磁界を大きくするアシスト効果を得ることができる。
図14は、本発明の他の実施の形態に係るMAMR用スピントロニック素子(STO構造)を備えた一体型記録再生ヘッドの断面構造を表すものである。この一体型記録再生ヘッドは、ボトム型STO記録ヘッド90と、再生ヘッド75とを備えている。
ボトム型STO記録ヘッド90は、図13におけるトップ型STO構造70の代わりにボトム型STO構造60を備えている。ボトム型STO構造60は、図12aに示したものと同様の構造を有し、複合シード層22と、積層リファレンス層23と、金属スペーサ層62と、磁界生成層63と、垂直磁気異方性層64とを備えている。ボトム型STO構造60は、主磁極77とトレーリングシールド76との間に、積層リファレンス層23の磁化方向が媒体基板71の移動方向Mと同じ方向となるように配置されている。オシレータ層としての磁界生成層63は、積層リファレンス層23よりも第2電極(トレーリングシールド76)に近い側に形成され、回転自在な磁化方向を有している。図14では、磁界生成層63を、2つの矢印および円状の点線を有する層として表している。ボトム型STO構造60の上面は、再生ヘッド75とは反対側のトレーリングシールド76の側面と隣接し、ボトム型STO構造60の底面は、再生ヘッド75に対向する主磁極77の側面と隣接している。なお、主磁極77を、図12aに示した第1電極61として利用し、トレーリングシールド76を第2電極62として利用してもよい。
なお、図14に示したボトム型STO記録ヘッド90の書き込み動作は、紙面に向かって左から右に電流を流すことを除き、図13に示したトップ型STO記録ヘッド80の動作と同じである。
次に、上述したスピンバルブ構造の製造方法について説明する。
CPPスピンバルブ積層構造の各層は、例えばスパッタ成膜装置を用いて成膜する。スパッタ装置としては、各々が5つのターゲットを有する3つの物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)チャンバと、酸素チャンバと、スパッタエッチングチャンバとを有する装置が好ましく、例えばアネルバ社製のC−7100等が利用可能である。複数のPVDチャンバのうちの少なくとも一つは同時スパッタリングが可能であることが好ましい。スパッタ成膜は、例えば、アルゴンスパッタガスを用いて金属または合金からなるターゲットをスパッタして、超真空下で基板上に成膜することにより行う。スパッタ装置を一度にポンプダウンした後に、上述したCPPスピンバルブ積層構造の各層を形成することにより、スループットを向上させるようにしてもよい。
本実施の形態の製造方法は、CPPスピンバルブ構造のすべての層を成膜した後の熱処理工程も含んでいる。上記実施の形態のスピンバルブ構造20,30,40,50,60および70に対して、例えば200℃〜280℃の範囲で0.5時間〜10時間にわたる熱処理を行う。なお、複合シード層22における[111]構造と、積層リファレンス層23におけるCoとNiとのスピン軌道相互作用とに起因して垂直磁気異方性が形成されるため、熱処理に際しては磁場を印加する必要はない。
本発明の実施の形態の重要な特徴は、[Co/Ni]x積層リファレンス層23の成膜方法にある。具体的には、低い高周波(RF)パワーと高圧のAr(アルゴン)ガスとを用いて、各Co層または各Ni層が成膜された基板の損傷を防止することにより、結果として得られるCoとNiとの界面を保ち、その垂直磁気異方性特性を向上させている。すなわち、後続のCo層およびNi層がスパッタ成膜により成膜される際に、直近に成膜されたCo層およびNi層の表面に対して作用するイオンエネルギーを最小限に抑制することにより、スパッタリングの際のイオン衝突による損傷を軽減する。
一実施の形態では、15sccp(標準立方センチメートル毎分)を上回るレートのアルゴンフローの下で、200ワット未満の高周波パワーを用いて、積層リファレンス層23の各Co層および各Ni層を、DCマグネトロンスパッタチャンバ内で成膜する。各Co層および各Ni層の成膜に必要な時間は1分未満であり、[Co/Ni]20構造を形成するために必要な合計時間は、約1時間未満である。
上述した実施の形態のスピンバルブ構造20,30,40,50,60および70のすべての層を形成したのち、周知のフォトレジストパターニングおよび反応性イオンによるエッチング転写を行い、スピンバルブ構造20,30,40,50,60および70を、z軸方向から見て楕円形、円形または他の形状にパターニングする。次に、スピンバルブ構造がパターニングにより除去されて露出した基板21(または第1電極61)の上に絶縁層(図示せず)を成膜したのち、この絶縁層がキャップ層26(または垂直磁気異方性層64)と同一平面となるように、絶縁層を平坦化する。そして、例えば、最上部の垂直磁気異方性層64(またはキャップ層26)の上に、第2電極65等の上部電極を形成する。
次に、本発明の実施の形態に関する実施例について説明する。
スピンバルブ積層構造のシード層の所要厚さを最小限に抑える場合において、[Co/Ni]x積層リファレンス層を形成することによる効果を示すために、以下のような比較実験を行った。
本実施例1では、試料振動型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnometer)を用いて磁化曲線(MH曲線)から垂直磁気異方性の値を得るために、Cuシード層と、[Co/Ni]20積層リファレンス層と、Ru/Ta/Ruキャップ層とを有する部分的なスピンバルブ積層構造を作製した。積層リファレンス層の各Co層の厚さは0.2nmであり、各Ni層の厚さは0.4nmである。また、キャップ層のRu層は1.0nm厚、Ta層は4nm厚、Ru層は3nm厚である。Cuシード層の厚さは、図6(a)では100nm、図6(b)では50nm、図6(c)では20nm、図6(d)では10nmと減少させている。図6(a)〜(d)の各々において、上側のプロットは、各磁界の(積層面に対する)水平成分を表し、下側のプロットは、垂直磁気異方性成分を表している。ここで、図6(a)〜(d)の下側のプロットにおいて、ほぼ垂直に近い部分同士の間隔s1ないしs4は、垂直磁気異方性の大きさに比例している。図6に示すように、Cuシード層の厚さが薄くなるにしたがって垂直磁気異方性はやや低下するものの、10nmほどの薄さのCuシード層を用いた場合であっても、垂直磁気異方性を確保することができることが分かる。また、トルク測定の結果から、10nm厚のCuシード層を有する各[Co/Ni]20積層構造の異方性磁界Hkは、15000[エルステッド(Oe)](=15000×103/4π[A/m])よりも高いものと推定される。
実施例2では、上部のCu層における[111]構造をさらに向上させるため、上述した本発明の実施の形態に基づき、Ta/Ru下地層を挿入することによりTa/Ru/Cuシード層を形成した。下部Ta層は3nm厚であり、中間のRu層は2nm厚である。本実施例の部分的スピンバルブ積層構造における他の層の組成および膜厚は、上記実施例1の場合と同様である。その結果、垂直磁気異方性は、図7(a)〜(d)の磁化曲線で示すように、図6(a)〜(d)の場合と比較してさらに向上した。特に、Cu層の厚さが同じ10nmである場合を比較すると、図7(c)に示す間隔s5は、図6(d)に示す間隔s4よりも大きくなっている。また、図7(a)〜(d)に示す各曲線の傾斜部分は、図6(a)〜(d)に示す傾斜部分と比較してさらに垂直に近くなっており、垂直磁気特性がさらに向上したことを示している。なお、本実施例では、複合シード層の上部Cu層の厚さは、図7(a)では200nm、図7(b)では20nm、図7(c)では10nm、図7(d)では5nmと減少させている。図7(d)に示すように、Cu層の厚さが5nmの場合であっても、厚いCuシード層(100nm)を有する図6(a)の場合よりも垂直磁気異方性が向上している。また、異方性磁場Hkは、Ta30/Ru20/Cu50の構造を有する極めて薄いシード層であるにもかかわらず、15000[Oe](=15000×103/4π[A/m])よりも高いことがトルク測定の結果から確認された。
実施例3では、上記実施例2で説明した複合シード層の上部Cu層を薄くすることによる効果をさらに検討するため、上部Cu層を、図8(a)では5nm、図8(b)では3nmと薄くした。また、図8(c)では、上部Cu層を完全に除去した。なお、本実施例では、結果的にシード層のTa/Ru構造のうち、Ta層が3nm厚、Ru層が5nm厚となっている。また、[Co/Ni]20積層構造の各Ni層の厚さがわずかに増加しており、0.5nm厚となっている。図8(c)に示すように、複合シード層のCu層を取り除いた場合であっても、[Co/Ni]20積層構造において優れた垂直磁気異方性特性が保たれることが分かった。
実施例4では、Ta3/Ru5/Cu10という構成の複合シード層と、中間の[Co/Ni]20積層リファレンス層と、上部のRu1/Ta4/Ru3という構成の複合キャップ層とを有する積層構造を、220℃の温度で2時間にわたって熱処理した。垂直磁気異方性を形成する目的では、熱処理の最中に磁場を印加する必要はない。しかしながら、図9に示すように、垂直磁気異方性自体は熱処理工程を経ることによって大幅に増加する。なお、図9(a)は、熱処理前の平行磁界成分(上側)および垂直磁界成分(下側)の磁化曲線を示し、図9(b)は、熱処理後の平行磁界成分(上側)および垂直磁界成分(下側)の磁化曲線を示している。図9に示す積層構造の各Co層は0.2nmの膜厚を有し、各Ni層は0.5nmの膜厚を有している。実施例4のような熱処理後の積層構造から得られる磁気異方性エネルギーKuは、約5.64×106[erg/cc](=5.64×105[Joule/m3]であり、異方性磁場Hkは、17161[Oe](=17161×103/4π[A/m])である。
実施例5では、上述した本発明の実施の形態に基づき、以下の構造を有するボトム型のCPP−GMRスピンバルブ積層構造を作製した。
Ta3/Ru5/Cu5/[(Co2/Ni4)20]/Cu3/FeCoAl20/Ru1/Ta4/Ru3
なお、各層の後ろの数字は、膜厚(nm)を表している。この構造において、Ta3/Ru5/Cu5は複合シード層を示し、[(Co2/Ni4)20]は積層リファレンス層を示し、Cu3は金属スペーサ層を示す。FeCoAl20はフリー層を示し、その詳細な組成は[Fe50Co5080Al20である。Ru1/Ta4/Ru3は複合キャップ層を表している。図10は、積層面と平行な方向の磁気異方性成分の磁化曲線(上側プロット)と、垂直磁気異方性成分の磁化曲線(下側プロット)とを示している。図10に示すように、[Co/Ni]20積層リファレンス層の垂直磁気異方性が十分に保たれていることが分かる。また、高MR比等の、良好なGMR特性が得られているものと考えられる。なお、垂直磁気異方性を示す磁化曲線(下側プロット)のなだらかな曲線部分(傾斜部分)は、FeCoAl層の磁化に付随したものである。
実施例6では、上述した第2の実施の形態に基づき、以下の構造を有するトップ型のCPP−GMRスピンバルブ積層構造を作製した。
Ta3/Ru5/Cu5/FeCoAl20/Cu5/[(Co2/Ni4)20]/Ru1/Ta4/Ru3
なお、各層の後ろの数字は、膜厚(nm)を表している。この構造においては、磁気特性を測定するために、アルミナからなる基板上に、複合シード層と、FeCoAlフリー層と、Cuスペーサ層と、積層リファレンス層と、キャップ層とを順次形成した。図11(a)は、このトップ型スピンバルブ積層構造における積層面平行成分の磁化曲線(上側プロット)と、垂直磁気異方性成分の磁化曲線(下側プロット)とを示している。また、比較目的から、FeCoAl20という非磁性層を有する同様の積層構造を作製した。図11(b)は、このFeCoAl20非磁性層を有する積層構造における積層面平行成分の磁化曲線(上側プロット)と、垂直磁気異方性成分の磁化曲線(下側プロット)とを示している。図11(a)に示すように、トップ型のスピンバルブ積層構造を用いた場合であっても、Co/Ni積層リファレンス層の垂直磁気異方性が確保されている。これは、CoPt等の他の垂直磁気異方性材料を用いた場合には一般的に非常に困難なことである。また、優れたGMR特性も得られている。
実施例7では、上述した第3の実施の形態に基づき、[Co/Ni]20積層リファレンス層とフリー層との間に電流制限パス(CCP)層を有するボトム型のCPP−GMRスピンバルブ構造を作製した。このスピンバルブ構造は、以下の構造を有する。
Ta3/Ru5/Cu5/[(Co2/Ni4)20]/Cu0.52/AlCu1/PIT/IAO/Cu0.4/FeCoAl20/Ru1/Ta4/Ru3
なお、上述したPIT処理およびIAO処理を行うことにより、AlCu層は、内部に電流制限Cuパスを有するAlOxマトリクスへと変化する。この電流制限パス層は、MR比を増加させるとともに、フリー層のSTO磁化反転を利用したスピントロニック素子において望まれている、臨界電流密度の低下を達成するものと予想される。
実施例8では、上述した第4の実施の形態に基づき、[Co/Ni]20積層リファレンス層とフリー層との間に、AlOxまたはMgOを含むトンネルバリア層を有するボトム型CPP−TMRスピンバルブ構造を作製した。このスピンバルブ構造は、以下の構造を有する。
Ta3/Ru5/Cu5/[(Co2/Ni4)20]/AlOxまたはMgO/FeCoAl20/Ru1/Ta4/Ru3
本実施例では、AlOxまたはMgOを有するトンネルバリア層により、上記実施例5および実施例6で得られる値よりも高いMR比が得られるものと予想される。
以上説明したように、本実施の形態のボトム型スピンバルブ構造およびトップ型スピンバルブ構造によれば、fcc[111]格子構造を有する薄いシード層を形成するようにしたので、後段で熱処理を行うようにした場合においても、より上層にある[Co/Ni]x積層リファレンス層の垂直磁気異方性を向上させることができる。本実施の形態は、例えば、GMRスピンバルブまたはTMRスピンバルブに基づく各種スピントロニック素子に適用することができ、とりわけ、MAMR用のSTOデバイスや、MAMR記録用ヘッドのSTO構造等に適用することもできる。このようにシード層を薄くすることは、CoとNiとの界面を保つことにより垂直磁気異方性の維持を可能とするCo/Ni成膜方法によって可能となるものであり、その結果、高い性能を実現することができる。
本発明をその好適な実施の形態を参照して具体的に示し説明したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形式的な変更および詳細な変更をなし得ることを理解することができる。例えば、マイクロ波アシスト磁気記録用のボトム型STO記録ヘッドとして説明したSTT構造は、STT−MRAM素子のメモリセルにも適用可能である。
20,40,50…ボトム型スピンバルブ構造、21…基板、22…複合シード層、23…積層リファレンス層、24…金属スペーサ層、24a…下部Cu層、24b…上部Cu層、25…フリー層、26…キャップ層、27…ナノオキサイド層、28…トンネルバリア層、30…トップ型スピンバルブ構造、60…MAMR用ボトム型STO構造、61…第1電極、62…金属スペーサ層、63…磁界生成層、64…垂直磁気異方性層、65…第2電極、70…MAMR用トップ型STO構造、71…媒体基板、72…媒体トラック、73…センサ、74a…上部シールド、74b…下部シールド、75…再生ヘッド、76…トレーリングシールド、77…主磁極、78…コイル、80…トップ型STO記録ヘッド、90…ボトム型STO記録ヘッド。

Claims (29)

  1. 基板上に形成された下部Ta層と、前記下部Ta層の上に形成されfcc[111]結晶構造([111]配向面心立方格子結晶構造)またはhcp[001]結晶構造([001]配向六方最密構造)を有する金属層M1とを少なくとも含む複合シード層と、
    各Co層の厚さt1よりも各Ni層の厚さt2が大きくなるように形成された[Co(コバルト)/Ni(ニッケル)]X積層リファレンス層(X=5ないし70)と、
    磁性層と、
    前記[Co/Ni]X積層リファレンス層と前記磁性層との間に形成された金属スペーサ層と
    を備えたスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  2. キャップ層をさらに備え、
    複合シード層、[Co/Ni]X積層リファレンス層、銅スペーサ層、磁性層およびキャップ層を前記基板上に順次形成してなるボトム型スピンバルブ構造を有する
    請求項1に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  3. キャップ層をさらに備え、
    複合シード層、磁性層、銅スペーサ層、[Co/Ni]X積層リファレンス層およびキャップ層を前記基板上に順次形成してなるトップ型スピンバルブ構造を有する
    請求項1に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  4. 前記複合シード層において、
    前記下部Ta層の厚さが0.5nmないし10nmであり、
    前記金属層M1の厚さが1.0nmないし10nmである
    請求項1に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  5. 前記複合シード層において、
    前記金属層M1がRu(ルテニウム)、Cu(銅)またはAu(金)からなり、
    前記複合シード層が[Ta/M1]なる構造を有する
    請求項1に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  6. 前記複合シード層が、Cu、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)、W(タングステン)、Rh(ロジウム)、AuまたはAg(銀)からなり前記金属層M1上に形成された金属層M2をさらに含み
    前記複合シード層が、[Ta/M1/M2]なる構造を有し、
    前記下部Ta層の厚さが0.5nmないし10nmであり、
    前記金属層M1の厚さが1.0nmないし10nmであり、
    前記金属層M2の厚さが0.1nmないし10nmであり、
    前記金属層M1と前記金属層M2とは材料が異なる
    請求項1に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  7. 前記[Co/Ni]X積層リファレンス層において、
    各Co層の厚さt1が0.05nmないし0.5nmであり、
    各Ni層の厚さt2が0.2nmないし1.0nmである
    請求項1に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  8. 前記磁性層が、
    Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(シリコン)、Ga(ガリウム)、B(ボロン)、C(炭素)、Se(セレン)およびSn(錫)のうちの少なくとも1つを含むFeCo(鉄コバルト)合金、
    Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGeもしくはCo2FeGeを含むホイスラー(Heusler)合金、または
    CoMnSi、CoFeSi、CoMnAlもしくはCoFeGeを含む半ホイスラー合金
    により構成されている
    請求項1に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  9. 前記金属スペーサ層は、1.5nmないし15nmの厚さの銅層からなり、
    前記キャップ層は、[Ru/Ta/Ru]なる積層構造を有する
    請求項1に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  10. 前記金属スペーサ層は、
    下側Cuスペーサ部分層と、
    上側Cuスペーサ部分層と、
    前記下側Cuスペーサ部分層と前記上側Cuスペーサ部分層との間に形成され、電流制限パス(current confining paths)を有するNOL(nano-oxide layer)層と
    を含む請求項2に記載のスピントロニック素子のスピンバルブ構造。
  11. 基板上に形成された下部Ta層と、前記下部Ta層の上に形成されfcc[111]結晶構造またはhcp[001]結晶構造を有する金属層M1とを少なくとも含む複合シード層と、
    各Co層の厚さt1よりも各Ni層の厚さt2が大きくなるように前記複合シード層上に形成された[Co/Ni]X積層リファレンス層(X=5ないし70)と、
    前記[Co/Ni]X積層リファレンス層の上に形成されたトンネルバリア層と、
    前記トンネルバリア層上に形成された磁性層と、
    前記磁性層の上に形成されたキャップ層と
    を備えたスピントロニック素子のボトム型スピンバルブ構造。
  12. 前記複合シード層において、
    前記下部Ta層の厚さが0.5nmないし10nmであり、
    前記金属層M1がRu、CuまたはAuからなり、厚さが1.0nmないし10nmである
    請求項11に記載のスピントロニック素子のボトム型スピンバルブ構造。
  13. 前記複合シード層が、Cu、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)、W(タングステン)、Rh(ロジウム)、AuまたはAg(銀)からなり前記金属層M1上に形成された金属層M2をさらに含み、
    前記複合シード層が、[Ta/M1/M2]なる構造を有し、
    前記下部Ta層の厚さが0.5nmないし10nmであり、
    前記金属層M1の厚さが1.0nmないし10nmであり、
    前記金属層M2の厚さが0.1nmないし10nmであり、
    前記金属層M1と前記金属層M2とは材料が異なる
    請求項11に記載のスピントロニック素子のボトム型スピンバルブ構造。
  14. 前記[Co/Ni]X積層リファレンス層において、
    各Co層の厚さt1が0.05nmないし0.5nmであり、
    各Ni層の厚さt2が0.2nmないし1.0nmである
    請求項11に記載のスピントロニック素子のボトム型スピンバルブ構造。
  15. 前記磁性層が、
    Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(シリコン)、Ga(ガリウム)、B(ボロン)、C(炭素)、Se(セレン)およびSn(錫)のうちの少なくとも1つを含むFeCo(鉄コバルト)合金、
    Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGeもしくはCo2FeGeを含むホイスラー(Heusler)合金、または
    CoMnSi、CoFeSi、CoMnAlもしくはCoFeGeを含む半ホイスラー合金
    により構成されている
    請求項11に記載のスピントロニック素子のボトム型スピンバルブ構造。
  16. 前記キャップ層は、[Ru/Ta/Ru]なる積層構造を有し、
    前記トンネルバリア層は、絶縁層として用いられる、AlOx、MgO、TiOx、TiAlOx、MgZnOx、ZnOxもしくはその他の金属酸化物、または金属窒化物からなる
    請求項11に記載のスピントロニック素子のボトム型スピンバルブ構造。
  17. 第1の電極と、
    第2の電極と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に形成された積層構造と
    を備え、
    前記積層構造が、
    前記第1の電極に接する下部Ta層と、前記下部Ta層上の前記第1の電極とは反対側に形成されfcc[111]結晶構造([111]配向面心立方格子結晶構造)またはhcp[001]結晶構造([001]配向六方最密構造)を有する金属層M1とを少なくとも含む複合シード層と、
    各Co層の厚さt1よりも各Ni層の厚さt2が大きくなるように形成され、スピントランスファー層として機能する[Co(コバルト)/Ni(ニッケル)]X積層リファレンス層(X=5ないし70)と、
    磁界生成層(オシレータ層)と前記[Co/Ni]X積層リファレンス層との間に形成された金属スペーサ層と、
    前記金属スペーサ層上に形成されて前記磁界生成層(オシレータ層)として機能する磁性層と
    を備えたマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子。
  18. 前記複合シード層において、
    前記下部Ta層の厚さが0.5nmないし10nmであり、
    前記金属層M1がRu、CuまたはAuからなり、厚さが1.0nmないし10nmである
    請求項17に記載のマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子。
  19. 前記第1の電極が、記録ヘッドにおける主磁極であり、
    前記第2の電極が、前記記録ヘッドにおけるトレーリングシールドである
    請求項17に記載のマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子。
  20. 前記複合シード層が、Cu、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)、W(タングステン)、Rh(ロジウム)、AuまたはAg(銀)からなり前記金属層M1上に形成された金属層M2をさらに含み、
    前記複合シード層が、[Ta/M1/M2]なる構造を有し、
    前記下部Ta層の厚さが0.5nmないし10nmであり、
    前記金属層M1の厚さが1.0nmないし10nmであり、
    前記金属層M2の厚さが0.1nmないし10nmであり、
    前記金属層M1と前記金属層M2とは材料が異なる
    請求項17に記載のマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子。
  21. 前記[Co/Ni]X積層リファレンス層において、
    各Co層の厚さt1が0.05nmないし0.5nmであり、
    各Ni層の厚さt2が0.2nmないし1.0nmである
    請求項17に記載のマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子。
  22. さらに、
    前記磁界生成層の上の、前記金属スペーサ層とは反対側の面に形成され、前記第2の電極に接する垂直磁気異方性(PMA)層
    を備えた請求項17に記載のマイクロ波アシスト磁気記録用スピントロニック素子。
  23. 基板上に、下部Ta層と、前記下部Ta層の上に配置されるfcc[111]結晶構造([111]配向面心立方格子結晶構造)またはhcp[001]結晶構造([001]配向六方最密構造)を有する金属層M1とを少なくとも含むfcc[111]結晶構造の複合シード層を形成するステップと、
    前記複合シード層の上に積層構造を形成するステップと
    を含み、
    前記積層構造が、
    各Co層の厚さt1よりも各Ni層の厚さt2が大きくなるように形成された[Co(コバルト)/Ni(ニッケル)]X積層リファレンス層(X=5ないし70)と、
    所定の大きさのスピントルクが印加されたときに、磁化容易軸に沿った磁気モーメントが反対方向に変化するように構成された磁性層と、
    前記[Co/Ni]X積層リファレンス層と前記磁性層との間に形成された、金属スペーサ層またはトンネルバリア層と
    を含むようにしたスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の形成方法。
  24. さらに、
    200°Cないし280°Cの温度で0.5時間ないし10時間にわたってスピンバルブ構造の熱処理を行うステップ
    を含む請求項23に記載のスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の形成方法。
  25. 前記[Co/Ni]X積層リファレンス層を、15sccpを上回るレートのAr(アルゴン)フローの下で、200ワット未満の高周波(RF)パワーの直流マグネトロンスパッタリングプロセスにより形成する
    請求項23に記載のスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の形成方法。
  26. 前記複合シード層において、
    前記下部Ta層の厚さが0.5nmないし10nmであり、
    前記金属層M1がRu、CuまたはAuからなり、厚さが1.0nmないし10nmである
    請求項23に記載のスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の形成方法。
  27. 前記複合シード層が、Cu、Ti(チタン)、Pd(パラジウム)、W(タングステン)、Rh(ロジウム)、AuまたはAg(銀)からなり前記金属層M1上に形成された金属層M2をさらに含み、
    前記複合シード層が、[Ta/M1/M2]なる構造を有し、
    前記下部Ta層の厚さが0.5nmないし10nmであり、
    前記金属層M1の厚さが1.0nmないし10nmであり、
    前記金属層M2の厚さが0.1nmないし10nmであり、
    前記金属層M1と前記金属層M2とは材料が異なる
    請求項23に記載のスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の形成方法。
  28. 前記[Co/Ni]X積層リファレンス層において、
    各Co層の厚さt1が0.05nmないし0.5nmであり、
    各Ni層の厚さt2が0.2nmないし1.0nmである
    請求項23に記載のスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の形成方法。
  29. 前記磁性層を、
    Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(シリコン)、Ga(ガリウム)、B(ボロン)、C(炭素)、Se(セレン)およびSn(錫)のうちの少なくとも1つを含むFeCo(鉄コバルト)合金、
    Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGeもしくはCo2FeGeを含むホイスラー(Heusler)合金、または
    CoMnSi、CoFeSi、CoMnAlもしくはCoFeGeを含む半ホイスラー合金
    により構成する
    請求項23に記載のスピントロニック素子におけるスピンバルブ構造の形成方法。
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