まず図1から図3を参照すると、本開示は、概して、複数のライン追従牽引車両1が中央コンピュータ44により無線制御されていてもよい製造ムービングラインシステム40(図3)に関する。以下に説明するように、各牽引車両1は、製造ムービングラインシステム40において複数の製造作業ステーション42の間で1つ以上の部品36(図2)を搬送する(図2に示されており、かつ、図3において想像線で示されている)アセンブリ固定具カート30を牽引するよう構成されていてもよい。1つ以上の部品36は、製造プロセスまたは組立てプロセスの一部として改修されるかまたは組立てられてもよい。単一の製造ムービングライン41において任意の数の牽引車両1を設けることができ、かつ、牽引車両1が中央制御コンピュータ44と通信するようにこれら牽引車両1をシステムに関連付けることができる。牽引車両1はまた、互いに通信するよう構成されていてもよい。牽引車両1は、互いに独立して、かつ、製造ムービングラインシステム40の輸送要件に応じてさまざまな速度で移動することができる。万一1台の牽引車両1が故障した場合、残りの牽引車両1は、製造ムービングライン41において中断されずに輸送を続けることができる。
図1に示すように、製造ムービングラインシステム40の実施に適していてもよい牽引車両1の一例が、略ブロック図の形態で示されている。牽引車両1は、牽引車両1の機能的構成要素を完全にまたは部分的に取り囲んでいてもよい(想像線で示されている)車両筐体24を含んでいてもよい。車両筐体24は、コンパクト設計であってもよい。牽引車両1は、牽引車両1のさまざまな機能を制御し、かつ、連携させる制御回路2を含んでいてもよい。牽引車両1のさまざまな機能的構成要素は、例えば、配線や直接電気接点であってもよいがこれらに限定されない電気的接続8により、制御回路2と電気的に接続されていてもよい。
制御回路2は、データを保存するよう構成されたメモリ12を有していてもよい。データ入力/出力装置18は、メモリ12へのデータの入力およびメモリ12からのデータの取り出しを容易にするために、制御回路2と接続されていてもよい。少なくとも1つの電池10やその他の電源が制御回路2に接続されていて、制御回路2および牽引車両1のその他の機能的構成要素に電力を供給している。少なくとも1つの電池10は、該少なくとも1つの電池10に接続されている追加のツールおよびアクセサリ(図示せず)に電力供給するのに十分な蓄電容量を有していてもよい。電池再充電システム11は、該少なくとも1つの電池10に接続されていてもよい。電池再充電システム11は、以下に説明する牽引車両1の動作中、該少なくとも1つの電池10の飛行中の電気再充電を容易にするよう構成されていてもよい。
無線送受信装置16は、制御回路2に接続されていてもよい。無線送受信装置16は、製造ムービングラインシステム40において牽引車両1と中央制御コンピュータ44(図3)との間の無線通信(データの受信および送信)を容易にするよう構成されていてもよい。無線送受信装置16はまた、製造ムービングライン41において牽引車両1と他の牽引車両1との間の無線通信を容易にするよう構成されていてもよい。
駆動モータ3は、制御回路2に接続されていてもよい。車両の1つ以上の車輪5は、目的にかなう機械的結合6により駆動モータ3と駆動的に係合していてもよい。駆動モータ3は、限定されないが例えば可変速電気駆動モータであってもよく、かつ、限定されないが例えば500ポンド以上の重量のアセンブリ固定具カート30を毎分1インチから毎分3000インチの精密速度で牽引可能であってもよい。
ステアリング機構4は、制御回路2に接続され、かつ、機械的結合7により車両車輪5に結合されていてもよく、これにより、ステアリング機構4が車両車輪5を任意の方向に向けることができる。軌道検知機構14は、制御回路2に接続されていてもよい。軌道検知機構14は、金属製の床に据え付けられた誘導ストリップ46(図3)を追従し、かつ、制御回路2にデータ入力するよう構成されていてもよく、これにより、ステアリング機構4が製造ムービングラインシステム41の誘導ストリップ46に沿って車両車輪5を任意の方向に向けることができる。軌道検知機構14はまた、制御回路2にデータ入力するよう構成されていてもよく、これにより、牽引車両1が意図せずに誘導ストリップ46から外れてしまった場合に、制御回路2が駆動モータ3の動作を終了させることにより、1つ以上の車輪5の回転を終了させることができる。制御回路2は、例えば、無線送受信装置16からの入力を介して、製造ムービングライン41内を移動している他の牽引車両1に対する牽引車両1の位置を監視するよう構成されていてもよい。
ユーザインターフェースペンダント20は、例えば、ペンダントコード21を介して制御回路2に結線接続されていてもよい。ユーザインターフェースペンダント20は、無線送受信装置16を介して中央制御コンピュータ44から制御回路2へ送信されるコマンドを手動で無効にするよう構成されていてもよい。
製造ムービングラインシステム40の誘導ストリップ46は、(電源に接続されていない)金属製受動素子誘導ストリップであってもよく、その場合、各牽引車両1の軌道検知機構14は、誘導ストリップ46の金属特性を検知するよう構成されていてもよい。図3に示すように、誘導ストリップ46は、製造または組立て設備における床38に取り付けられていてもよい。誘導ストリップ46は、例えば金属シートの帯状片であってもよく、かつ、テープおよび/または糊のような接着剤を用いて床38に取り付けられていてもよく、かつ/または、締結具を用いて床38に取り付けられていてもよい。図3に示す製造ムービングラインシステム40の実施例において、誘導ストリップ46は、概して第1製造作業ステーション42a、第2製造作業ステーション42b、第3製造作業ステーション42cおよび第4製造作業ステーション42dの間およびこれらに隣接して延在しているループを形成するよう構成されている。誘導ストリップ46は、誘導ストリップ46の(想像線で示されている)代替経路46a、46bにより示されているように、容易に再形成したり、延長したり、短縮したりまたは移動させたりすることができる。
中央制御コンピュータ44は、無線通信回線48を介して各牽引車両1の無線送受信装置16(図1)と通信することができる。中央制御コンピュータ44は、製造ムービングライン41におけるすべての牽引車両1に関連して製造ムービングラインシステム40を同期させておくために、各牽引車両1の速度を制御および調整するようプログラムされていてもよい。牽引車両1の無線送受信装置16は、無線通信回線50を介して互いに通信することができる。したがって、各牽引車両1の速度は、牽引車両1の位置検知機構99(図1)の動作に応答して、製造ムービングライン41上での各牽引車両1の次の牽引車両1に対する近接性に応じて追加調整してもよい。
製造ムービングラインシステム40の実施において、各牽引車両1は、1つの部品36または複数の部品36(図2)が支持されていてもよい(図3において想像線で示されている)アセンブリ固定具カート30を牽引するよう構成されていてもよい。アセンブリ固定具カート30の一例は、図2に示されており、かつ、複数のカート車輪32を有するカート台31を含んでいてもよい。カート車輪32は、例えばキャスタ式の車輪であってもよいがこれに限定されない。カート台31からカート枠33が延在していてもよい。カートプラットフォーム34は、カート枠33上に設けられていてもよい。輸送されることとなる部品36は、カートプラットフォーム34により支持することができる。牽引車両1は、アセンブリ固定具カート30のカート台31と製造または組立て設備の床38との間に位置していてもよい。牽引車両1の車両筐体24は、例えば限定されないがクランプのような適切な結合機構26を用いてカート台31に結合されていてもよい。
誘導ストリップ46は、製造または組立て設備の床38に取り付けられ、かつ、任意の所望の構成で設けられていてもよい。製造作業ステーション42が、例えば限定されないが各アセンブリ固定具カート30上の1つ以上の部品36を改修および/または組み立てることにより製造または組立てプロセスを順に実施する順序に沿って、誘導ストリップ46は、製造作業ステーション42の間またはそれに隣接して延在していてもよい。それぞれがアセンブリ固定具カート30に結合されていてもよい複数の牽引車両1は、誘導ストリップ46上に配置されていてもよい。各アセンブリ固定具カート30のカート車輪32(図2)と各牽引車両1の車両車輪5(図2)とが、誘導ストリップ46の対向する両側において床38に載っていてもよい。少なくとも1つの部品36(図2)が、各アセンブリ固定具カート30上に配置されていてもよい。
製造作業ステーション42の間を部品36が順に輸送されている間、牽引車両1は一貫して、図3における矢印で示されている方向へ製造ムービングライン41の誘導ストリップ46を追従するよう動作されてもよい。したがって、牽引車両1により牽引される各アセンブリ固定具カート30は、それぞれ第1製造作業ステーション42a、第2製造作業ステーション42b、第3製造作業ステーション42cおよび第4製造作業ステーション42dへ順に各部品36を輸送してもよい。特定の1つ以上の部品36を有するアセンブリ固定具カート30を牽引する牽引車両1が、各製造作業ステーション42に到達すると、中央制御コンピュータ44からのコマンドに応答して、牽引車両1は、停止して、アセンブリ固定具カート30から部品36を取り出しやすくしてもよい。製造作業ステーション42において、部品36は、製造または組立てプロセス全体にわたって、徐々に改修および/または組立てられてもよい。各製造作業ステーション42における改修および/または組立て後、アセンブリ固定具カート30上で部品36を交換してもよい。次いで、牽引車両1は、アセンブリ固定具カート30およびこれに搬送されている部品36を製造または組立て順序における次の製造作業ステーション42へと牽引してもよい。各牽引車両1が誘導ストリップ46に沿って進む際、電池再充電システム11(図1)は、上記少なくとも1つの電池10を連続的に再充電していてもよい。
中央制御コンピュータ44は、無線通信回線48を介して無線コマンドを各牽引車両1へと送信してもよい。これら無線コマンドは、各製造作業ステーション42におけるまたは複数の製造作業ステーション42の間での牽引車両1の発進および停止、ならびに、牽引車両1の速度に関していてもよい。コマンドは、例えば1台以上の牽引車両1が誘導ストリップ46を切り替えるコマンドに限定されないがこれを含んでいてもよい。中央制御コンピュータ44から各牽引車両1へと送信される無線コマンドにより、製造ムービングラインシステム40が、同期を保ち、かつ、制御された製造または組立て速度を維持可能となっていてもよい。
位置検知機構99(図1)は、誘導ストリップ46に沿って各牽引車両1の位置を連続的に検知し、牽引車両1のこの位置を制御回路2へ中継することができる。無線送受信装置16および無線通信回線48を介して、制御回路2が今度は、位置指定データを中央制御コンピュータ44へ送信することができる。そして次に、誘導ストリップ46に沿った牽引車両1の位置に基づいて、中央制御コンピュータ44は、連続する牽引車両1間の距離を求めることができ、かつ、無線通信回線48を介して各牽引車両1の駆動モータ3(図1)の動作速度を制御することによりこの距離を制御または調整することができる。これに加えて、または、代わりに、各牽引車両1の制御回路2は、無線通信回線50を介して該牽引車両1と隣接する前または後ろの牽引車両1との距離を求めてもよい。次いで、牽引車両1の制御回路2は、無線通信回線48を介してこのデータを中央制御コンピュータ44へ中継してもよく、これにより、連続する牽引車両1間の所望の距離を達成するためにこれに応じて牽引車両1の速度を調整してもよい。牽引車両1が意図せずに誘導ストリップ46から外れてしまった場合に、軌道検知機構14が制御回路2に通知してもよく、次いで制御回路2が牽引車両1の駆動モータ3の動作を終了させてもよい。
無線通信回線48を介した中央制御コンピュータ44の動作による各牽引車両1の制御に加えて、牽引車両1は、手持ち型のユーザインターフェースペンダント20(図1および図3)を用いて手動で制御することもできる。これにより、例えば製造ムービングライン41にアセンブリ固定具カート30を付加するか、または、製造ムービングライン41からこれを削除したり、生産速度のために製造ムービングライン41を再構成したり、異なる位置に製造ムービングライン41を移動させたりすることに限定されないがこのような変更を製造ムービングライン41に施すために、牽引車両1を誘導ストリップ46から外しやすくすることができる。
次に図4を参照すると、製造ムービングライン方法の一例を示す工程系統図400が示されている。ブロック402において、少なくとも1本の金属製誘導ストリップを設ける。ブロック404において、無線送受信装置を有する少なくとも1台の牽引車両を該誘導ストリップに誘導接触させて設ける。ブロック406において、該牽引車両にアセンブリ固定具カートを結合する。ブロック408において、該アセンブリ固定具カート上に少なくとも1つの部品を載置する。ブロック410において、中央制御コンピュータを設ける。ブロック412において、中央制御コンピュータと牽引車両の無線送受信装置との間に無線通信回線を設ける。ブロック414において、誘導ストリップに沿って牽引車両を移動させる。
次に図5および図6を参照すると、図5に示されているような航空機の製造および保守方法78ならびに図6に示されているような航空機94に関連して、本開示の実施形態を用いることができる。本生産の前で、方法78の一例は、航空機94の仕様および設計80ならびに材料調達82を含んでいてもよい。生産の際は、航空機94の構成部品および部分組立品の製造84ならびにシステム統合86が行われる。その後、航空機94は、認証および納品88を経て、運航90されてもよい。顧客による運航中、航空機94は、(改修、再構成、修繕などをも含むかもしれない)定常的整備および保守92を受けることとなる。
方法78の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者および/または操作者(例えば、顧客)により行われるかまたは実施されてもよい。本件の説明のため、システムインテグレータは、任意の数の航空機製造者および主要なシステム下請け業者に限定されないがこれらを含んでもよい。第三者は、任意の数の取り扱い業者、下請け業者および供給業者に限定されないがこれらを含んでもよい。操作者は、航空会社、リース会社、軍隊、保守組織などであってもよい。
図6に示すように、方法78の一例により製造される航空機94は、複数のシステム96および内装100とともに機体98を含んでいてもよい。高レベルシステム96の例としては、推進システム102、電気システム104、油圧システム106および環境システム108のうちの1つ以上が挙げられる。任意の数の他のシステムを含んでもよい。航空宇宙の例が示されているが、本発明の原理は、自動車産業といった他の産業に適用することもできる。
ここで実施されている装置は、製造および保守方法78のいずれか1つまたはそれ以上の段階中に使用してもよい。例えば、製造プロセス84に対応する構成部品や部分組立品は、航空機94が運航されている間に製造される構成部品や部分組立品と同様に組立てまたは製造されてもよい。例えば、航空機94の組立てを大幅に早めるか、または、航空機94のコストを削減することにより、製造段階84および86中に、一以上の装置の実施形態を利用してもよい。同様に、航空機94の運航中から例えば限定されないが整備および保守92までの間、一以上の装置の実施形態を利用してもよい。
ある例示的実施形態に関して本開示の実施形態を説明したが、当業者は他の変形例に想到するであろうから、特定の実施形態は、例示目的であって限定するものではないことは理解されるだろう。