JP2010535158A - S−アリルシステインまたはそのアナローグの使用およびそれらの医薬組成物 - Google Patents

S−アリルシステインまたはそのアナローグの使用およびそれらの医薬組成物 Download PDF

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Abstract

心筋障害を予防および/または治療するための医薬の製造におけるS−アリルシステインまたはそのアナローグの使用およびその調製方法、ならびに該化合物を含む医薬組成物が開示されている。
【選択図】図1

Description

本発明は医学および医薬技術の分野に属する。本発明は、心筋障害を予防および/または治療するための医薬の製造におけるS−アリルシステイン化合物またはそのアナローグの新規な医学および製薬学的使用、低酸素症および低血糖症により障害を受けた心筋細胞の細胞生存率を向上させ、内在性H2Sを産生し、LDHの漏出(LDHの放出)率を低減させ、SODおよび/またはカタラーゼの活性ならびに組織がヒドロキシルフリーラジカルの産生を阻害する能力を増大させ、脂質の過酸化を阻害し、かつ/または心筋細胞のアポトーシスを阻害することができる医薬の調製におけるS−アリルシステインまたはそのアナローグの使用、心筋梗塞の大きさを減少させることにより、乳酸脱水素酵素およびクレアチンキナーゼの放出を低減させ、スーパーオキシドジスムターゼの活性を増大させ、マロンジアルデヒドの濃度を低下させ、内在的にH2Sを産生させ、かつ/またはアポトーシスを阻害することができる医薬の調製におけるS−プロパルギルシステイン、その医薬として許容される塩またはその溶媒和物の使用、ならびに心筋障害を予防および/または治療するための医薬組成物に関する。
S−アリルシステイン(SAC)はニンニクに含まれる天然の有機硫黄化合物であり、熟成ニンニクエキス中の主要な活性成分である。SACには、抗酸化活性、神経保護活性、過剰な酸素フリーラジカルに起因する脂質の過酸化の阻害活性等があることが文献で報告されている。
文献で報告されているように、SACのアリル構造とその神経保護効果との間には、ある種の構造−活性相関が存在する。SACの既知のアナローグに関しては、S−エチルシステイン(SEC)、S−プロピルシステイン(SPC)およびS−アリルメルカプトシステイン(SAMC)もニンニクに含まれる天然硫黄化合物であり、同様にある種の抗酸化活性を有することが文献で報告されており、S−ブチルシステイン(SBC)およびS−ペンチルシステイン(SPC)は、前記2つの化合物に対し炭素が、それぞれ1つおよび2つ延長されており、同様な抗酸化活性を有すると推定されており、化合物S−プロパルギルシステインは、その構造がプロパルギルグリシンのそれと同様であり、酵素CSEとの相互作用についてより高い選択性を有すると予想されている。
しかし、低酸素症または低血糖症により障害を受けた心筋細胞および心筋障害に対するSACの効果については、現在までのところ報告されていない。
発明の詳細な説明
本発明の理解を容易にするために、複数の用語を下記のとおり定義する。ここで定義された用語は、本発明と関連する技術分野における通常の能力を有する者に理解された通常の意味を有する。
特に断らない限り、本発明において「S−アリルシステイン」は、下記の構造を有しており、SACと略称され、分子式はC6112NSであり、下記の構造式で表される。
特に断らない限り、本発明において「S−アリルシステインおよびそのアナローグ」とは、下記の式Iで表される化合物を意味する。
式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基である。S−アリルシステインアナローグおよびS−アリルシステインが共通の中心構造を有しているため、S−アリルシステインアナローグは、S−アリルシステインと同様の性質を有する。ここで、好ましいS−アリルシステインアナローグとしては、S−エチルシステイン(SEC)、S−プロピルシステイン(SPC)、S−アリルメルカプトシステイン(SAMC)、S−ブチルシステイン(SBC)、S−ペンチルシステイン(SPEC)およびS−プロパルギルシステイン(SPRC)が挙げられ、その分子式および構造は、それぞれ下記のとおりである。
SECの分子式はC5112NSであり、下記の構造式で表される。
SPCの分子式はC6132NSであり、下記の構造式で表される。
SBCの分子式はC7152NSであり、下記の構造式で表される。
SPECの分子式はC8172NSであり、下記の構造式で表される。
SAMCの分子式はC6112NS2であり、下記の構造式で表される。
SPRCの分子式はC692NSであり、下記の構造式で表される。
特に断らない限り、本発明において「SOD」という用語は、スーパーオキシドジスムターゼを意味する。
特に断らない限り、本発明において「カタラーゼ」という用語は、スカベンジャー酵素を意味する。
特に断らない限り、本発明において「LDH」という用語は、乳酸脱水素酵素を意味する。
特に断らない限り、本発明において「CK」という用語は、クレアチンキナーゼを意味する。
特に断らない限り、本発明において「MDA」という用語は、過酸化脂質マロンジアルデヒドを意味する。
特に断らない限り、「活性成分の量」とは、S−アリルシステインまたはその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物の重量を意味する。
特に断らない限り、本発明において「医薬として許容される塩」という用語は、生理学的に許容される塩、特に人間および/または哺乳動物に医薬として投与した場合に許容される塩であると理解される。
特に断らない限り、本発明において「医薬として許容される担体」という用語は、丸剤、錠剤、カプセル等において充填剤または担体として用いられている公知の物質を意味する。これらの物質は、このような目的について医療分野の専門家により認識されており、通常医薬の非活性成分として用いられている。医薬として許容される担体および賦形剤に関する資料としては、「Handbook of Pharmaceutical excipients」(第2版、A. Wade およびP.J. Weller編、米国薬剤師協会(ワシントン)、The Pharmaceutical Press(ロンドン)、1994年)および他の参考文献がある。
本発明の目的の一つは、心筋障害を予防および/または治療するための医薬の製造におけるS−アリルシステインまたはそのアナローグの新規な医学的および製薬学的用途を提供することである。本発明の他の目的は、低酸素症および低血糖症により障害を受けた心筋細胞の細胞生存率を向上させ、内在性H2Sを産生し、LDHの漏出を低減させ、SODおよび/またはカタラーゼの活性ならびに組織がヒドロキシルフリーラジカルの産生を阻害する能力を増大させ、脂質の過酸化を阻害し、かつ/または心筋細胞のアポトーシスを阻害することができる医薬の調製におけるS−アリルシステインまたはそのアナローグの使用を提供することである。本発明のさらに別の目的は、心筋梗塞の大きさを減少させ、乳酸脱水素酵素およびクレアチンキナーゼの放出を低減させ、スーパーオキシドジスムターゼの活性を増大させ、マロンジアルデヒドの濃度を低下させ、内在的にH2Sを産生させ、かつ/またはアポトーシスを阻害することができる医薬の調製におけるS−プロパルギルシステイン、その医薬として許容される塩またはその溶媒和物の使用を提供することである。本発明のさらに別の目的は、心筋障害を予防および/または治療するための医薬組成物を提供することである。
上述の発明の目的に照らし、本発明において提供される技術的解決手段は下記のとおりである。
一つの態様において、本発明は、心筋障害を予防および/または治療するための医薬組成物の調製における、下記の式Iで表される化合物の使用を提供する。
式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基であり、前記式Iで表される化合物は、化合物それ自体の形態、その医薬として許容される塩または溶媒和物として存在する。
好ましくは、前記心筋障害に起因する心疾患は、低酸素症および低血糖症に起因するものである。
さらなる態様において、本発明は、低酸素症および低血糖症により障害を受けた心筋細胞の細胞生存率を向上させ、内在性H2Sを産生し、LDHの漏出を低減させ、SODおよび/またはカタラーゼの活性ならびに組織がヒドロキシルフリーラジカルの産生を阻害する能力を増大させ、脂質の過酸化を阻害し、かつ/または心筋細胞のアポトーシスを阻害することができる医薬の調製における、下記の式Iで表される化合物の使用を提供する。
式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基であり、前記式Iで表される化合物は、化合物それ自体の形態、その医薬として許容される塩または溶媒和物として存在する。
さらに別の態様において、本発明は、心筋梗塞の大きさを減少させ、乳酸脱水素酵素およびクレアチンキナーゼの放出を低減させ、スーパーオキシドジスムターゼの活性を増大させ、マロンジアルデヒドの濃度を低下させ、内在的にH2Sを産生させ、かつ/またはアポトーシスを阻害することができる医薬の調製における、下記の式Iで表される化合物、その医薬として許容される塩またはその溶媒和物の使用を提供する。
式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基である。
好ましくは、上述の本発明の使用において、前記式Iで表される化合物は、S−アリルシステイン、S−エチルシステイン、S−プロピルシステイン、S−アリルメルカプトシステイン、S−ブチルシステイン、S−ペンチルシステインおよびS−プロパルギルシステイン、より好ましくはS−アリルシステインおよびS−プロパルギルシステイン、最も好ましくはS−アリルシステインからなる群より選択される。
好ましくは、上述の本発明の使用において、前記医薬の投与形態は、経口製剤、非経口投与製剤、および局所投与製剤、吸入投与製剤および経皮投与製剤からなる群より選択される。
さらに別の態様において、本発明は、下記の式Iで表される化合物、その医薬として許容される塩またはその溶媒和物を活性成分として含むと共に、医薬として許容される1または複数の担体を含む、心筋障害を予防および/または治療するための医薬組成物を提供する。
式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基である。
好ましくは、本発明の医薬組成物において、前記式Iで表される化合物の溶媒和物は水和物である。
好ましくは、本発明の医薬組成物において、前記式Iで表される化合物は、S−アリルシステイン、S−エチルシステイン、S−プロピルシステイン、S−アリルメルカプトシステイン、S−ブチルシステイン、S−ペンチルシステインおよびS−プロパルギルシステイン、より好ましくはS−アリルシステインおよびS−プロパルギルシステイン、最も好ましくはS−アリルシステインからなる群より選択される。
好ましくは、本発明の医薬組成物において、前記医薬組成物は、経口製剤、注射剤等の非経口投与製剤、および局所投与製剤、吸入投与製剤、および経皮投与製剤からなる群より選択される。
好ましくは、本発明の医薬組成物において、前記医薬組成物は、錠剤、カプセル、顆粒剤、丸剤、滴剤、ジュースまたはシロップ剤の経口投与製剤からなる群より選択され、好ましくは、前記医薬として許容される担体は、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、充填剤、溶剤、香料、甘味料、抗酸化剤、界面活性剤、保存料、矯味剤、および色素からなる群より選択される。
さらに別の態様において、本発明は、下記の式Iで表される化合物の調製方法を提供する。
式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基であり、
該方法は、下記の工程を含んでいる。
予め冷却したNH4OH溶液にL−システイン塩酸塩を溶解し、該溶液にBr−R(式中、Rは上述のとおり定義される。)を添加し;混合溶液を0〜5℃で1〜5時間撹拌し、ろ過後、ろ液を減圧蒸留し、濃縮後、再度ろ過する。固体の分離物をエタノールで繰り返し洗浄し、減圧下乾燥後、体積比1:3〜3:1の水/エタノールで再結晶する。
以下、本発明に関連するいくつかの好ましい実施形態を参照しながら、本発明の技術的解決手段について詳細に説明する。
本発明の一つの好ましい実施形態によると、心筋障害を予防および/または治療するための医薬の製造におけるS−アリルシステインまたはそのアナローグの使用が提供され、S−アリルシステインまたはそのアナローグが化合物それ自体、その医薬として許容される塩または溶媒和物として存在する。
好ましくは、本発明の使用において、心筋障害に起因する心疾患は、低酸素症および低血糖症に起因するものである。
本発明の一つの好ましい実施形態によると、S−アリルシステインまたはそのアナローグが化合物それ自体、その医薬として許容される塩または溶媒和物として存在し、低酸素症および低血糖症により障害を受けた心筋細胞の細胞生存率を向上させ、内在性H2Sを産生し、LDHの漏出を低減させ、SODおよび/またはカタラーゼの活性ならびに組織がヒドロキシルフリーラジカルの産生を阻害する能力を増大させ、脂質の過酸化を阻害し、かつ/または心筋細胞のアポトーシスを阻害することができる医薬の調製におけるS−アリルシステインまたはそのアナローグの使用が提供される。
好ましくは、本発明の使用において、前記S−アリルシステインまたはそのアナローグは、S−エチルシステイン、S−プロピルシステイン、S−アリルメルカプトシステイン、S−ブチルシステイン、S−ペンチルシステインおよびS−プロパルギルシステインからなる群より選択される。
本発明の一つの好ましい実施形態によると、心筋梗塞の大きさを減少させ、乳酸脱水素酵素およびクレアチンキナーゼの放出を低減させ、スーパーオキシドジスムターゼの活性を増大させ、マロンジアルデヒドの濃度を低下させ、内在的にH2Sを産生させ、かつ/またはアポトーシスを阻害することができる医薬の調製におけるS−アリルシステインまたはその医薬として許容される塩または溶媒和物の使用が提供される。
好ましくは、本発明の使用において、前記医薬の投与形態は、経口製剤、非経口投与製剤、局所投与、吸入投与、または経皮投与のための製剤からなる群より選択される。
本発明の一つの好ましい実施形態によると、S−アリルシステインまたはそのアナローグを活性成分として含むと共に、医薬として許容される1または複数の担体を含む、心筋障害を予防および/または治療するための医薬組成物が提供され、S−アリルシステインまたはそのアナローグが化合物それ自体、その医薬として許容される塩または溶媒和物として存在する。
好ましくは、本発明の医薬組成物において、前記S−アリルシステインまたはそのアナローグの溶媒和物は水和物である。
好ましくは、本発明の医薬組成物において、前記S−アリルシステインまたはそのアナローグは、S−エチルシステイン、S−プロピルシステイン、S−アリルメルカプトシステイン、S−ブチルシステイン、S−ペンチルシステインおよびS−プロパルギルシステインからなる群より選択される。
さらに好ましくは、本発明の医薬組成物において、医薬組成物は、経口製剤、注射剤等の非経口投与製剤、局所投与、吸入投与、または経皮投与のための製剤からなる群より選択される。
好ましくは、本発明の医薬組成物において、前記医薬組成物は、錠剤、カプセル、顆粒剤、丸剤、滴剤、ジュースまたはシロップ剤の経口投与製剤からなる群より選択され、好ましくは、前記医薬として許容される担体は、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、充填剤、溶剤、香料、甘味料、抗酸化剤、界面活性剤、保存料、矯味剤、および色素からなる群より選択される。
本発明の一つの好ましい実施形態によると、本発明は、下記の工程を含むことを特徴とするS−アリルシステインのアナローグの1つであるS−プロパルギルシステインの調製方法を提供する。
予め冷却したNH4OH溶液にL−システイン塩酸塩を溶解し、該溶液に臭化3−プロパルギルを添加し;混合溶液を0℃で2時間撹拌し、ろ過後、ろ液を減圧蒸留し、濃縮後、再度ろ過する。固体の分離物をエタノールで繰り返し洗浄し、減圧下乾燥後、体積比2:3の水/エタノールで再結晶し、白色針状の結晶を得る。
S−アリルシステインのアナローグのうち、前記S−プロパルギルシステイン(SPRC)は、下記の合成経路にしたがって合成される。
予め冷却したNH4OH溶液(2M、240ml)にL−システイン塩酸塩を溶解し、該溶液に臭化3−プロパルギル(14.5g、0.124mol)を添加し;混合溶液を0℃で2時間撹拌し、ろ過後、ろ液を減圧蒸留(<40℃)し、濃縮後、再度ろ過する。固体の分離物をエタノールで繰り返し洗浄し、減圧下乾燥後、体積比2:3の水/エタノールで再結晶し、白色針状の結晶を得る。1H核磁気共鳴分光法を用いてNMR構造を検出することにより同定を行う。
本発明者は、上述のS−アリルシステイン化合物について、in vivoおよびin vitroで以下の実験を行い、本発明の医学的および製薬学的用途の利用可能性について十分な検証を行った。
低酸素症および低血糖症の心筋細胞を用いた実験により、本発明者は、SACおよびそのアナローグで処理した低酸素症および低血糖症の心筋細胞の上清を検出したところ、その結果はH2Sの濃度の顕著な増大を示していたが、このことは、SACおよびそのアナローグが、in vivoにおいて内在性のH2Sを産生できることを示している。
心筋細胞のin vitroでの培養実験により、本発明者は、SACおよびそのアナローグが、低酸素症および低血糖症により障害を受けた心筋細胞の細胞生存率を向上させ、内在性H2Sを産生し、LDHの漏出を低減させ、SODおよび/またはカタラーゼの活性ならびに組織がヒドロキシルフリーラジカルの産生を阻害する能力を増大させ、脂質の過酸化を阻害し、かつ/または心筋細胞のアポトーシスを阻害することを検証したが、このことは、前記S−アリルシステインおよびそのアナローグが、心筋障害の治療、特に低酸素症および低酸素症により誘発される心筋障害に起因する心疾患の治療用の治療薬に用いることができることを示している。
本発明において、組成物、好ましくは剤形の調製には公知の方法を適用することができる。このような方法は、活性成分を、1または複数の補助成分からなる担体と混合する工程を含んでいる。このような補助成分としては、充填剤、結合剤、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香味料および保湿剤等の、当技術分野で通常用いられる1または複数の補助成分が挙げられる。
経口投与に適した製剤は、所定量の活性成分を含む丸剤、錠剤、またはカプセル等の調剤単位として製剤することができ、粉末剤または顆粒剤、液剤または懸濁液剤として製剤される。活性成分は、大丸剤またはペースト剤として製剤してもよく、あるいはリポソーム中に封入してもよい。
直腸投与用に、製剤を座剤または浣腸剤として調剤してもよい。
非経口投与に好適な製剤としては、水系および非水系の無菌注射剤(活性成分の純度90%以上)が挙げられる。このような製剤は、単位投与形態、または密封バイアルおよびアンプル等の多数投与用容器として調製することができ、このような製剤は、使用前に水等の無菌液の添加のみが必要な凍結乾燥条件下で保存できる。
径鼻吸入による投与に好適な製剤としては、計量された用量の微粉末、または圧縮エアロゾル、噴霧器および吸入器により生成されるスプレーが挙げられる。
錠剤等の用量単位を調製するために考慮されるのは、充填剤、着色料、重合性の結合剤等の通常の添加剤の適用である。一般に、医薬として許容され、活性成分の機能を阻害しない任意の添加剤を用いることができる。
本発明に好適な添加剤および/または担体は、薬草製剤を得るために用いられ、先行技術より当業者に公知の任意の物質である。これらの担体の選択および量は、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、筋肉投与、径鼻投与、口腔内投与、または局所投与のいずれで薬剤を投与するかに依存する。錠剤、チュアブル錠剤、コート錠剤、カプセル剤、顆粒剤、滴剤、ジュースまたはシロップ剤が経口投与に好適であり、一方、液剤、懸濁液剤、再構成の容易な乾燥製剤およびスプレー剤が、非経口投与、局所投与、吸入投与に好適である。直腸投与用に座剤を用いてもよい。担体膜またはパッチを、必要に応じて皮膚への浸透を促進する他の薬剤とともに溶液状態で保存および投与してもよく、これは経皮製剤に好適な典型例である。
経口投与用製剤における担体および添加剤の例としては、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、充填剤が挙げられ、必要に応じて、溶剤、香料、香味料を含んでいてもよく、特に担体物質、希釈剤、色素、抗酸化剤が挙げられる。座剤用には、ロウおよび脂肪酸ロウを用いることができる。非経口投与の成分としては、担体物質、保存料、懸濁化剤等を用いることができる。患者に投与する活性成分の量は、患者の体重、投与パターンおよび疾患の程度によって定まる機能的関係に応じて変動する。経口投与、直腸投与または経皮投与において、本発明の化合物の製剤投与形態からの放出を遅延させることができる。連続放出製剤、特にそれぞれの日に1回のみ投与すればよい「一日一回」の投与形態が、本発明の適応に特に好適である。
本発明の経口投与用製剤の担体は、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパントリオール(グリセリン)、グリコール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グルコース、フルクトース、ラクトース、サッカロース、シロップ、デンプン、化工デンプン、グルチン、ソルビトール、イノシトール、マンニトール、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、シェラック、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン、パラフィンロウ、ロウ、天然ゴムおよび合成ゴム、アラビアゴム、アルギン酸、デキストラン、飽和脂肪酸および不飽和合成脂肪酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸ナトリウム、食用油、ゴマ油、ココナッツ油、落花生油、大豆油、レシチン、乳酸ナトリウム、脂肪酸ポリオキシエチレンエステルおよび脂肪酸ポリオキシプロピレンエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ソルビン酸、安息香酸、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、二酸化チタン、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、タルク、白土、コロイド、クロスポビドン、寒天およびベントナイトであってよい。
本発明の医薬および薬用成分は、公知の高度な手段、装置、方法および手順等の医薬製剤手法を用いて調製することができる。例えば、錠剤等の固体製剤については、活性成分、すなわち、S−アリルシステイン、その医薬として許容される塩または溶媒和物を、例えば、コーンパウダー、ラクトース、スクロース、ソルビルアルコール、タルク、ステアリン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、または医薬として許容されるコロイド等の錠剤の通常の成分等の医薬用担体と共に粉砕し、均一に分布したS−アリルシステインまたはその医薬として許容される塩もしくは溶媒和物を含む単一の固体成分を得ることができる。
本発明において「均一に分布した」とは、活性成分(S−アリルシステイン、その医薬として許容される塩または溶媒和物)が、全成分中に均一に分散しており、同一の活性を有する錠剤、丸剤、カプセル等の単位投与形態に容易に分割できることとして理解されうる。固体成分はその後分割され、単位投与形態とされる。本発明の医薬または医薬組成物の錠剤または丸剤は、他の成分によりコーティングされ、または他の成分と混合され、徐放製剤を形成していてもよい。好適なコーティング成分は、ポリ酸、およびポリ酸の混合物、およびポリ酸とシェラック、セチルアルコールおよび/または酢酸セルロース等の他の物質との混合物である。
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル、顆粒剤、経口液剤、経皮投与製剤、座剤等の臨床上許容される投与形態に調製することができる。錠剤、顆粒剤またはカプセル等の経口製剤は、適量の担体を加えることにより調製できる。これらの投与形態は、当業者に周知の方法により調製することができる。錠剤、顆粒剤、カプセル等の成型工程用の担体は共通の助剤であり、例えば、デンプン、グルチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール等である。さらに、界面活性剤、滑沢剤、崩壊剤、保存料、矯味剤および色素等も用いることができる。
後述する本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞の生存率に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示す。 グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞のH2Sの放出に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示す。 グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞のLDHの漏出に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示し、「#」はSACおよびそのアナローグ被投与群とPAG(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)被投与群との比較(p<0.05)であることを示す。 グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞の全SOD活性に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示し、「#」はSACおよびそのアナローグ被投与群とPAG(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)被投与群との比較(p<0.05)であることを示す。 グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞のCu−ZnSOD活性に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示し、「#」はSACおよびそのアナローグ被投与群とPAG(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)被投与群との比較(p<0.05)であることを示す。 グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞のMnSOD活性に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示し、「#」はSACおよびそのアナローグ被投与群とPAG(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)被投与群との比較(p<0.05)であることを示す。 グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞のカタラーゼ活性に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示す。 グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞のヒドロキシルフリーラジカル阻害率に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示し、「#」はSACおよびそのアナローグ被投与群とPAG(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)被投与群との比較(p<0.05)であることを示す。 グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を3時間再供給することにより障害を受けた心筋細胞中のMDAに及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「ビヒクル群」はモデル群であり、「a」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.05)であることを示し、「*」はSACおよびそのアナローグ被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示し、「#」はSACおよびそのアナローグ被投与群とPAG(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)被投与群との比較(p<0.05)であることを示す。 低酸素症および低血糖症により障害を受けた心筋細胞のアポトーシスに及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を示す電子顕微鏡染色像であり、矢印で示しているのは、核濃縮を起こし強く染色を受けたアポトーシス細胞の核である。 SPRCの合成経路および1H核磁気共鳴分光法により決定されたその構造を示す図である。 心筋梗塞を発症したラットにおける梗塞の大きさに及ぼすSPRCおよびSACの効果を示す図であり、「ビヒクル群」はMI(心筋梗塞)モデル群であり、「*」はMIモデル群との比較(p<0.01)であることを示す。 心筋梗塞を発症したラットの心電図に及ぼすSPRCおよびSACの効果を示す図であり、「疑似手術」は疑似手術群であり、「疑似手術+SPRC」は疑似手術+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「疑似手術+SAC」は疑似手術+SAC(50mg/kg)被投与群であり、「MI」は心筋梗塞モデル群であり、「MI+SPRC」はモデル+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「MI+SAC」はモデル+SAC(50mg/kg)被投与群である。 心筋梗塞を発症したラットにおける血漿中のLDH、CK、MDAおよびSODに及ぼすSPRCおよびSACの効果を示す図であり、「疑似手術」は疑似手術群であり、「疑似手術+SPRC」は疑似手術+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「疑似手術+SAC」は疑似手術+SAC(50mg/kg)被投与群であり、「MI」は心筋梗塞モデル群であり、「MI+SPRC」はモデル+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「MI+SAC」はモデル+SAC(50mg/kg)被投与群であり、「*」はMIモデル群との比較(p<0.01)であることを示し、「#」はMIモデル群と疑似手術群との比較(p<0.01)であることを示す。 心筋梗塞を発症したラットにおける血漿中の血漿中のH2S濃度および心臓組織のCSE活性に及ぼすSPRCおよびSACの効果を示すヒストグラムであり、「疑似手術」は疑似手術群であり、「疑似手術+SPRC」は疑似手術+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「疑似手術+SAC」は疑似手術+SAC(50mg/kg)被投与群であり、「MI」は心筋梗塞モデル群であり、「MI+SPRC」はモデル+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「MI+SAC」はモデル+SAC(50mg/kg)被投与群であり、「*」はMIモデル群との比較(p<0.01)であることを示し、「#」はMIモデル群と疑似手術群との比較(p<0.01)であることを示す。 心筋梗塞を発症したラットの左心室におけるBcl−2、BaxおよびCSEのタンパク質発現に及ぼすSPRCおよびSACの効果を示すタンパク質電気泳動図であり、「疑似手術」は疑似手術群であり、「疑似手術+SPRC」は疑似手術+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「疑似手術+SAC」は疑似手術+SAC(50mg/kg)被投与群であり、「MI」は心筋梗塞モデル群であり、「MI+SPRC」はモデル+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「MI+SAC」はモデル+SAC(50mg/kg)被投与群である。 心筋梗塞を発症したラットの左心室におけるBcl−2、BaxおよびCSEの遺伝子発現に及ぼすSPRCおよびSACの効果を示すタンパク質電気泳動図であり、「疑似手術」は疑似手術群であり、「疑似手術+SPRC」は疑似手術+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「疑似手術+SAC」は疑似手術+SAC(50mg/kg)被投与群であり、「MI」は心筋梗塞モデル群であり、「MI+SPRC」はモデル+SPRC(50mg/kg)被投与群であり、「MI+SAC」はモデル+SAC(50mg/kg)被投与群である。 22により障害を受けたH9c2細胞の細胞生存率および障害の程度に種々の用量のSPRCが及ぼす効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「モデル群」はモデル群であり、「PAG」(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)はPAG10-4mol/L被投与群を示し、「SPRC 1E−7」はSPRC10-7mol/L被投与群を示し、「SPRC 1E−6」はSPRC10-6mol/L被投与群を示し、「SPRC 1E−5」はSPRC10-5mol/L被投与群を示し、「SPRC+PAG」はSPRC10-5mol/L+PAG10-4mol/L被投与群を示し、「#」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.01)であることを示し、「*」は種々の用量のSPRC被投与群とモデル群との比較であることを示し、「&」はSPRC+PAG被投与群とSPRC高容量被投与群との比較(p<0.05)であることを示す。 22により障害を受けたH9c2心筋細胞のMn−SOD活性およびMDA含有量に種々の用量のSPRCが及ぼす効果を示すヒストグラムであり、「対照群」は正常対照群であり、「モデル群」はモデル群であり、「PAG」(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)はPAG10-4mol/L被投与群を示し、「SPRC 1E−7」はSPRC10-7mol/L被投与群を示し、「SPRC 1E−6」はSPRC10-6mol/L被投与群を示し、「SPRC 1E−5」はSPRC10-5mol/L被投与群を示し、「SPRC+PAG」はSPRC10-5mol/L+PAG10-4mol/L被投与群を示し、「#」はモデル群と正常対照群との比較(p<0.01)であることを示し、「*」は種々の用量のSPRC被投与群とモデル群との比較(p<0.05)であることを示し、「&」はSPRC+PAG被投与群とSPRC高容量被投与群との比較(p<0.05)であることを示す。 22により障害を受けた心筋細胞H9c2のアポトーシスにSPRCが及ぼす効果を示す電子顕微鏡像であり、「対照群」は正常対照群であり、「モデル群」はモデル群であり、「PAG」(プロパルギルグリシン、上海英技術有限公司より市販)はPAG10-4mol/L被投与群を示し、「SPRC」はSPRC10-5mol/L被投与群を示し、「SPRC+PAG」はSPRC10-5mol/L+PAG10-4mol/Lの投与を受けることを示す。
発明を実施するための最良の形態
具体的な実施例を参照しながら本発明についてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明の説明のためにのみ用いられ、本発明の範囲を限定するためのものではない。具体的な実験条件の記載のない実験方法は、通常、一般的な条件または製造業者により提案されている条件にしたがう。
実施例1:細胞生存率および内在性のH2S産生量の増大に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を検証するための実験
生後3日のSD系ラット新生児の心標本の初代培養を、常法を用いて無菌条件下で採取した。心標本をPBS中で洗浄し、処理後、0.08%トリプシンを含む溶液を含むフラスコ中に入れ、37℃の温度で10分間消化した。消化工程を8回繰り返し、その間溶液を常にマグネチックスターラーで撹拌した。それぞれの消化物の上清を集め、血清を加えて消化を停止させた。上清を2000rpmで5分間遠心し、細胞沈殿を回収した。細胞密度を10-6に調節し、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地中で培養し、3日目に実験で使用した。
上述の培養細胞を、以下の群にランダムに分割した。
正常対照群:薬剤の介在なし、グルコースおよび酸素の遮断なし、
モデル群:薬剤の介在なし、グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を再供給、
SACおよびそのアナローグ被投与群:10-5mol/Lの各薬剤被投与、グルコースおよび酸素を遮断/グルコースおよび酸素を再供給。
細胞生存率は、MTT法を用いて評価した。図1に示すように、結果は、モデル群における生存率は54.35%と、明らかに正常対照群におけるそれよりも低いが、SACおよびそのアナローグは、一元配置分散分析(p<0.05)の結果、明らかに細胞生存率を増大させることができることを示している。
それぞれの群より500μlの細胞上清液を採取し、250μlの酢酸亜鉛、133μlのN,N−ジメチルフェニレンジアミン塩酸塩20mM溶液および133μlのFeCl3を加えた。系を激しく振とう後、室温で10分間反応させた。反応後、10%トリクロロ酢酸を加え、タンパク質を沈殿させた。系を10,000gで10分間遠心し、各系の吸光度を670nmで測定した。図2に示すように、結果は、モデル群におけるH2S濃度が、一元配置分散分析(p<0.05)の結果、正常対照群におけるそれと比較して明らかに減少しており、SACおよびそのアナローグは両者とも上清液中のH2S濃度を明らかに増大できることを示している(p<0.05)。
実施例2:低酸素症および低血糖症により障害を受けた心筋細胞からのLDHの漏出の低減に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を検証するための実験
本実施例については図3を参照。
ラット新生児の心筋細胞を初代培養した。グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を再供給することによりモデルを確立した。実施例1と同様に、細胞を、正常対照群、モデル群、およびSACおよびそのアナローグ被投与群に分割した。
各群の各試料(n=4)から106個の細胞を観察した。その後、細胞を完全に溶解させ、そのLDH含有量をピルビン酸法により分析した。正常対照群のLDH含有量を100%とした。正常対照群と、各薬剤被投与群およびモデル群の細胞中のLDH量の差がLDH漏出率であり、反応系内で産生される1μmolのピルビン酸を1単位として、タンパク質1mgあたりの単位数(U/mgタンパク質)として計算した。H2Sの産生を阻止するために、各薬剤被投与群に、H2S産生抑制剤であるPAGを併せて投与した。図3に示すように、結果は、各薬剤被投与群におけるLDH漏出率が、モデル群と比較して明らかに低減しており、PAGがSACおよびそのアナローグの保護を顕著に抑制できることを示しており、このことは、SACおよびそのアナローグの心臓および血管に対する保護効果の一部が内在性のH2Sの産生と相関があることを示している。
実施例3:SODおよびカタラーゼの活性の増大ならびに組織のヒドロキシルフリーラジカル産生抑止能の増大に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を検証するための実験
本実施例については図4〜8を参照。
ラット新生児の心筋細胞を初代培養した。グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を再供給することによりモデルを確立した。実施例1と同様に、細胞を、正常対照群、モデル群、およびSACおよびそのアナローグ被投与群に分割した。
SODはヒドロキシルアミン法により測定し、ここでSODの活性の1単位(U)とは、1ミリリットルの反応溶液中に含まれる各組織タンパク質1マイクログラムによりSODの活性が元の活性の50%まで阻害されるときに反応に使用されるSODの量である。結果(図4)は、全SOD活性を全てのSACおよびそのアナローグによって明らかに増大させることができ、モデル群におけるそれと比較して有意に(p<0.05)増加したことを示している。SODのサブタイプの試験によって、飽和炭素鎖を有するSPC、SBCおよびSPECは、主に細胞質中のCu−ZnSODの活性を向上させ(図5)、PAGによって阻害されうるのに対し、新規化合物であるSPRCおよびSECは、主にミトコンドリア中のMnSODの活性を向上させ(図6)、同様にPAGによって阻害されうることが明らかになったが、このことはSACおよびそのアナローグがSODの活性を明らかに増大させることができ、その効果の一部が内在性のH2Sの産生と相関があることを示している。
カタラーゼによる触媒反応を受けずに残った過剰な過酸化水素は、カタラーゼの触媒反応と共に発色物質を酸化し、520nmに吸収極大を有する赤色の生成物(N−(4−アンチピリル)−3−クロロ−5−スルホナト−p−ベンゾキノンモノイミン)を生成させることができる。1活性単位(U)の酵素は、1μmolの過酸化水素の分解反応を触媒し、25℃、pH7.0の条件下1分以内で完結させることができる。結果(図7)は、モデル群におけるカタラーゼ活性が、正常対照群におけるそれと比較して有意に(p<0.05)低下していることを示しており、このことは全てのSACおよびそのアナローグが、モデル群よりもカタラーゼ活性を向上させることができる(p<0.05)ことを示している。
OHの量はフェントン反応により検出した。H22の量は、フェントン反応により生成されるOHの量に比例する。H22が電子受容体であることは既知であり、gress試薬と反応しで赤色の物質を生成し、波長500nmで検出された。結果(図8)は、SACおよびそのアナローグ被投与群におけるヒドロキシルフリーラジカル阻害率は有意に(p<0.05)増大しており、このことから、SACおよびそのアナローグがOHの産生を有意に阻害しうることが検証された。ヒドロキシルフリーラジカルに対するSACおよびそのアナローグの阻害効果は、PAGによって阻害することができない。
実施例4:脂質の過酸化の阻害に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を検証するための実験
本実施例については図9を参照。
ラット新生児の心筋細胞を初代培養した。グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を再供給することによりモデルを確立した。実施例1と同様に、細胞を、正常対照群、モデル群、およびSACおよびそのアナローグ被投与群に分割した。
酸素フリーラジカルは、生体膜中の多価不飽和脂肪酸を攻撃し、脂質の過酸化を起こし、それにより過酸化脂質マロンジアルデヒド(MDA)を産生する。MDAはチオバルビツール酸(TBA)と縮合し、532nmに最大吸収ピークを有する赤色の生成物を形成することができる。結果(図9)は、モデル群におけるMDA含有量が正常対照群におけるそれと比較して有意に(p<0.05)増大していたことを示している。SEC、SPCおよびSPRC被投与群の全てにおけるMDA含有量は、モデル群におけるそれと比較して有意に低下しており、このことより、SEC、SPCおよびSPRCが活性酸素によって引き起こされる脂質の過酸化を阻害し、これらの効果はPAGによって阻害することができ、脂質の過酸化の阻止に及ぼすSPRCの効果の方がより顕著であったことが検証された。
実施例5:心筋細胞のアポトーシスの阻害に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果を検証するための実験
本実施例については図10を参照。
ラット新生児の心筋細胞を初代培養した。グルコースおよび酸素を6時間遮断/グルコースおよび酸素を再供給することによりモデルを確立した。実施例1と同様に、細胞を、正常対照群、モデル群、およびSACおよびそのアナローグ被投与群に分割した。
ヘキスト染色により、アポトーシスの阻害に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果が予備的に検証された(図10)。アポトーシスは、心臓の構造および機能に重大なダメージを与え、心不全の主な原因の1つとなっている。実験結果は、心筋細胞のアポトーシスの阻害に及ぼすSACおよびそのアナローグの効果、ならびにSACおよびそのアナローグが心疾患の治療に大きな価値を有することを示している。
実施例6:SPRCの合成
本実施例については図11を参照。
予め冷却したNH4OH溶液(2M、240ml)にL−システイン塩酸塩を溶解し、該溶液に臭化3−プロパルギル(14.5g、0.124mol)を添加した。混合溶液を0℃で2時間撹拌し、ろ過後、ろ液を減圧蒸留(<40℃)し、濃縮後、再度ろ過した。固体の分離物をエタノールで繰り返し洗浄し、減圧下乾燥後、体積比2:3の水/エタノールで再結晶し、白色針状の結晶を得た。1H核磁気共鳴分光法を用いてNMR構造を検出することにより同定を行った(図11)。
実施例7:心筋梗塞の大きさに及ぼすSPRCの効果を検証するための実験
本実施例については図12および図13を参照。
SPRCを生理食塩水に溶解した。体重が200〜250gの範囲内のSD雄性ラットを、下記の群にランダムに割り当てた。
疑似手術群(疑似手術、生理食塩水、腹腔内投与、n=4)、
疑似手術+SPRC被投与群(疑似手術+SPRC、50mg/kg/日、n=4)、
疑似手術+SAC被投与群(疑似手術+SAC、50mg/kg/日、n=4)、モデル群(MI、生理食塩水、腹腔内投与、n=8)、
モデル+SPRC被投与群(MI+SPRC、50mg/kg/日、n=8)、
モデル+SAC被投与群(MI+SAC、50mg/kg/日、n=8)。
ラットに薬剤の予備投与(腹腔内投与)を7日間行った。8日目に7%抱水クロラール(5mg/Kg)を腹腔内注射することによりラットを麻酔し、仰臥位にし、胸部を剃毛することにより術前処置を行った。左開胸を行い、第三肋間間隙を露出させた。左心耳と肺動脈円錐との間の、起始部から約2〜3mmの位置で6−0シルク製縫合糸を用いて左冠動脈前下行枝を永久結紮した。血液が供給された心筋が蒼白になり、標準肢誘導第2誘導の心電図においてST部分が上昇した場合に、モデルが無事に確立されたものとした。速やかに閉胸し、皮膚を縫合した。ラットを保温し、麻酔から覚醒後は水と普通の食餌を与え、別々のケージで飼育した。疑似手術群のラットに対しては、左冠動脈前下行枝を結紮しない以外は同様に処置した。ラットには、さらに2日間薬剤を連続投与した。手術後48時間、心電図の変化を記録した。腹部大動脈より血液サンプルを採取後、ラットを屠殺し、心臓を速やかに摘出し、pH7.4の0.1%TTC溶液に浸漬後、37℃で15分間インキュベートした。染色後、心筋梗塞の大きさを測定した。
モデル群と比較して、SPRCおよびSACは、明らかに心筋梗塞の大きさを減少させることができる(p<0.01)(図12)。48時間後、ST部分の上昇は若干回復する(図13)。SACおよびSPRCは同様の効果を有している(p<0.05)。
心筋梗塞の大きさに及ぼすSPRCの効果を表1に示す。
実施例8:LDH漏出率および血漿中のCK濃度、MDAおよびSODに及ぼすSPRCおよびそのアナローグの効果を検証するための実験
本実施例については図14を参照。
左冠動脈結紮モデルラットを、実施例7と同様に、疑似手術群、疑似手術+SPRC被投与群、疑似手術+SAC被投与群、モデル群、モデル+SPRC被投与群、モデル+SAC被投与群(MI+SAC、50mg/kg/日、n=8)にランダムに割り当てた。
上述の実験から、モデル群の血漿中のLDH、CK活性およびMDA含有量は明らかに増大しているが、SOD活性は低下していることが観測された。心臓組織が梗塞により障害を受けると、酸素フリーラジカルが大量に産生され、LDHは、その後LDHおよびCKの漏出を招く心筋膜の完全性の損傷を示し、MDAは、その後過酸化物の血液中への侵入を招く心筋膜中の脂質の過酸化を示している。そのため、SODの測定は、身体が酸素フリーラジカルを除去する能力を間接的に示すことができる。結果は、SPRCおよびSACの両者は、共に心筋梗塞後のLDHおよびCKの漏出を明らかに減少させ、MDAの増大を阻害し、SOD活性を効果的に保護できることを示しており、このことは、これらの化合物が虚血により引き起こされる脂質の過酸化を抑止する能力および酸素フリーラジカルを除去する比較的高い能力を示している(図14)。
SPRCおよびSACは、LDH漏出率を低減することができ、CK濃度を減少させることができ、血漿中のMDAの産生を阻害することができると共に、血漿中のSOD濃度を増大させることができる。
血漿中のLDH、CK活性、MDA含有量およびSOD活性に及ぼすSPRCの効果を表2に示す。
実施例9:血漿中のH2Sおよび心臓組織中の酵素CSEに及ぼすSPRCの効果を検証するための実験
本実施例については図15を参照。
左冠動脈結紮モデルラットを、実施例7と同様に、疑似手術群、疑似手術+SPRC被投与群、疑似手術+SAC被投与群、モデル群、モデル+SPRC被投与群、モデル+SAC被投与群(MI+SAC、50mg/kg/日、n=8)にランダムに割り当てた。
SPRC被投与群におけるH2S濃度は、モデル群におけるそれと比較して有意に増大しており(図15A)、このことは、内在性のH2Sの産生を示している。心臓組織におけるCSE活性の変化は、血漿中のH2S濃度の変化と同様の傾向を示しており、SPRC被投与群におけるCSE活性は、モデル群におけるそれと比較して有意に(p<0.01)増大していると共に、SAC被投与群におけるそれよりも有意差を伴って高い(p<0.05)(図15Bを参照されたい。)。
文献報告によると、H2Sは活性酸素を除去する効果を有しており、SPRCおよびSACによる心筋梗塞後の心臓組織の保護は、内在的に産生されたH2Sによるものであると推定される。
血漿中のH2Sおよび心臓組織中の酵素CSEに及ぼすSPRCの効果について表3に示す。
実施例10:タンパク質レベルでのBcl−2およびCSEの発現の増大およびタンパク質レベルでのBaxの発現の低下に及ぼすSPRCの効果を検証するための実験
本実施例については図16を参照。
左冠動脈結紮モデルラットを、実施例7と同様に、疑似手術群、疑似手術+SPRC被投与群、疑似手術+SAC被投与群、モデル群、モデル+SPRC被投与群、モデル+SAC被投与群(MI+SAC、50mg/kg/日、n=8)にランダムに割り当てた。
疑似手術群におけるBaxのタンパク質の発現レベルは比較的低く、BaxおよびBcl−2については疑似手術群と疑似手術+SPRC被投与群と疑似手術+SAC被投与群との間には有意差が存在せず、左冠動脈を結紮することにより、MI群と比較して、有意差(p<0.05)を伴って、左心室におけるBaxタンパク質が増大すると共にBcl−2の発現が減少し、SPRC被投与群およびSAC被投与群において、Bcl−2タンパク質の発現は有意に増大し、Baxタンパク質の発現は有意に減少する(p<0.05)。MI群と比較すると、SPRC被投与群およびSAC被投与群においてCSEタンパク質の発現は有意に増大し、SPRCはCSEに対し顕著な効果を有していた(p<0.01、p<0.05)。SPRCは、アポトーシス関連因子であるBaxの発現をタンパク質レベルで低減させ、抗アポトーシス関連因子であるBcl−2およびCSEの発現をタンパク質レベルで増大させた(図16を参照されたい。)。
実施例11:SPRCが、Baxの発現を遺伝子レベルで低減させ、CSEの発現を遺伝子レベルで増大させることができるが、Bcl−2の遺伝子発現には明らかな効果を有しないことを検証するための実験
本実施例については図17を参照。
左冠動脈結紮モデルラットを、実施例7と同様に、疑似手術群、疑似手術+SPRC被投与群、疑似手術+SAC被投与群、モデル群、モデル+SPRC被投与群、モデル+SAC被投与群(MI+SAC、50mg/kg/日、n=8)にランダムに割り当てた。
SPRC被投与群およびSAC被投与群を疑似手術群およびMI群と比較した場合、Bcl−2の遺伝子発現については有意差(p<0.01)が存在せず、MI群におけるBaxの遺伝子発現は、疑似手術群におけるそれと比較して有意に増大しており(p<0.01)、SPRC被投与群およびSAC被投与群におけるBaxの遺伝子発現は、MI群におけるそれと比較して明らかに低下しており(p<0.05)、MI群と比較すると、SPRC被投与群におけるCSE遺伝子発現は有意に増大しており(p<0.01)、SAC被投与群において、CSEの遺伝子発現も明らかな増大を示していたが、CSEに対するSPRCの効果(p<0.05)ほど顕著ではなく、このことは、SPRCはアポトーシス関連遺伝子であるBaxの発現を分子レベルで下方制御し、CSEの発現を遺伝子レベルで上方制御していることを示している(図17)。
実施例12:SPRCが、H22により障害を受けた心筋細胞系列H9c2の細胞生存率を増大させ、H22により障害を受けた心筋細胞系列H9c2のLDH漏出率を低減できることを検証するための実験
本実施例については図18を参照。
10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地中、37℃の5%CO2インキュベータ中でH9c2を培養した。単層上のコンフルエンスが90%に達したときに、細胞を継代した。細胞の密度を5×10-4/ウェルに調節し、96ウェルプレート上に細胞を接種した。細胞を下記の群に分割した。
正常対照群(対照):薬剤の介在なし、グルコースおよび酸素の遮断なし、
モデル群(モデル):薬剤の介在なし、200μmol/L H22中で2時間、
PAG被投与群(PAG):PAG 10-4mol/L、
種々の用量のSPRC被投与群:「SPRC 1E−7」、「SPRC 1E−6」、「SPRC 1E−5」は、それぞれ、10-7mol/L、10-6mol/L、10-5mol/LのSPRCの投与を受けた。「SPRC+PAG」はSPRC10-5mol/L+PAG10-4mol/Lの投与を受けた。
細胞生存率は、MTT法を用いて評価した。結果(図18A)は、モデル群における生存率は、正常対照群におけるそれよりも有意に低いが、中用量SPRC被投与群および高用量被投与群は、生存率を有意に(p<0.05)増大させることができる。PAGは、SPRCの効果を阻害することが可能であった。
各群の各試料(n=4)から106個の細胞を観察した。その後、細胞を完全に溶解させ、そのLDH含有量をピルビン酸法により分析した。図18Bに示すように、結果は、種々の用量のSPRC被投与群におけるLDH漏出率が、モデル群と比較して明らかに低減しており、PAGがSPRCの保護効果を顕著に阻害できることを示しており、このことは、SPRCの心臓および血管に対する保護効果の少なくとも一部が内在性のH2Sの産生と相関があることを示している。
SPRCが、H22により障害を受けた心筋細胞系列H9c2の細胞生存率を増大させ、H22により障害を受けた心筋細胞系列H9c2のLDH漏出率を低減できるという結果を表4に示す。
実施例13:SPRCがSODの活性を増大させることができると共に脂質過酸化生成物MDAの産生を阻害できることを検証するための実験
本実施例については図19を参照。
実施例12と同様に、H22により障害を受けた心筋細胞系列H9c2を、正常対照群(対照群)、モデル群(モデル)、PAG被投与群(PAG)、SPRC低用量、中用量および高用量被投与群にランダムに分割した。
結果(図19A)は、SPRC中用量および高用量被投与群が、共にMnSODの活性を明らかに向上させ、モデル群におけるそれと比較して有意に(p<0.05)増大していることを示している。この効果はPAGによって阻害することが可能であったが、このことはSPRCがMnSODの活性を明らかに増大させることができる効果の少なくとも一部がH2Sの産生と相関があることを示している。
モデル群におけるMDA含有量は、正常対照群のそれと比較して有意に増大しており(図19B)(p<0.05)、SPRC低用量、中用量および高用量被投与群において、モデル群におけるそれと比較して明らかに減少していたが、このことは、SPRCが活性酸素に起因する脂質過酸化を阻害でき、その効果はPAGによって阻害されうることを示している。
SOD活性の増大および脂質過酸化生成物MDAの産生の阻害に関するSPRCの結果を表5に示す。
実施例14:心筋細胞のアポトーシスの阻害に及ぼすSPRCの効果を検証するための実験
本実施例については図20を参照。
実施例12と同様に、H22により障害を受けた心筋細胞系列H9c2を、正常対照群(対照群)、モデル群(モデル)、PAG被投与群(PAG)、SPRC低用量、中用量および高用量被投与群にランダムに分割した。
ヘキスト染色およびPI染色の二重染色により、アポトーシスに対するSPRCの阻害効果が検証された(図20)。アポトーシスは、心臓の構造および機能に重大なダメージを与え、心不全の主な原因の1つとなっている。本実験により、全動物モデルにおける、遺伝子およびタンパク質レベルの両者に由来するSPRCの抗アポトーシス効果が検証され、ヘキスト染色およびPI染色の二重染色により、H22に起因するH9c2心筋細胞のアポトーシスに対する、他の因子による介在のないSPRCの効果が細胞レベルで実証されたが、このことにより、心疾患の治療への使用におけるSPRCの大きな価値が実証された。

Claims (12)

  1. 心筋障害を予防および/または治療するための医薬組成物の調製における、下記の式Iで表される化合物の使用。
    式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基であり、前記式Iで表される化合物は、化合物それ自体の形態、その医薬として許容される塩または溶媒和物として存在する。
  2. 前記心筋障害に起因する心疾患が、低酸素症および低血糖症に起因するものである請求項1記載の使用。
  3. 低酸素症および低血糖症により障害を受けた心筋細胞の細胞生存率を向上させ、内在性H2Sを産生し、LDHの漏出を低減させ、SODおよび/またはカタラーゼの活性ならびに組織がヒドロキシルフリーラジカルの産生を阻害する能力を増大させ、脂質の過酸化を阻害し、かつ/または心筋細胞のアポトーシスを阻害することができる医薬の調製における、下記の式Iで表される化合物の使用。
    式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基であり、前記式Iで表される化合物は、化合物それ自体の形態、その医薬として許容される塩または溶媒和物として存在する。
  4. 心筋梗塞の大きさを減少させ、乳酸脱水素酵素およびクレアチンキナーゼの放出を低減させ、スーパーオキシドジスムターゼの活性を増大させ、マロンジアルデヒドの濃度を低下させ、内在的にH2Sを産生させ、かつ/またはアポトーシスを阻害する効果を有する医薬の調製における、下記の式Iで表される化合物、その医薬として許容される塩またはその溶媒和物の使用。
    式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基である。
  5. 前記式Iで表される化合物が、S−アリルシステイン、S−エチルシステイン、S−プロピルシステイン、S−アリルメルカプトシステイン、S−ブチルシステイン、S−ペンチルシステインおよびS−プロパルギルシステイン、より好ましくはS−アリルシステインおよびS−プロパルギルシステイン、最も好ましくはS−アリルシステインからなる群より選択される請求項1から4のいずれか1項記載の使用。
  6. 前記医薬の投与形態が、経口製剤、非経口投与製剤、局所投与製剤、吸入投与製剤および経皮投与製剤からなる群より選択される請求項1から5のいずれか1項記載の使用。
  7. 活性成分としての下記の式Iで表される化合物、その医薬として許容される塩またはその溶媒和物と、医薬として許容される1または複数の担体とを含む、心筋障害を予防および/または治療するための医薬組成物。
    式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基である。
  8. 前記式Iで表される化合物の溶媒和物が水和物である請求項7記載の医薬組成物。
  9. 前記式Iで表される化合物が、S−アリルシステイン、S−エチルシステイン、S−プロピルシステイン、S−アリルメルカプトシステイン、S−ブチルシステイン、S−ペンチルシステインおよびS−プロパルギルシステイン、好ましくはS−アリルシステインおよびS−プロパルギルシステイン、最も好ましくはS−アリルシステインからなる群より選択される請求項7または8記載の医薬組成物。
  10. 前記医薬組成物が、経口製剤、注射剤等の非経口投与製剤、局所投与製剤、吸入投与製剤、および経皮投与製剤からなる群より選択される請求項7から9のいずれか1項記載の医薬組成物。
  11. 前記医薬組成物は、錠剤、カプセル、顆粒剤、丸剤、滴剤、ジュースまたはシロップ剤の経口投与製剤からなる群より選択され、好ましくは、前記医薬として許容される担体は、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、充填剤、溶剤、香料、甘味料、抗酸化剤、界面活性剤、保存料、矯味剤、および色素からなる群より選択される請求項10記載の医薬組成物。
  12. 予め冷却したNH4OH溶液にL−システイン塩酸塩を溶解し、該溶液にBr−R(式中、置換基Rは下記のとおり定義される。)を添加し;混合溶液を0〜5℃で1〜5時間撹拌し、ろ過後、ろ液を減圧蒸留し、濃縮後、再度ろ過し;固体の分離物をエタノールで繰り返し洗浄し、減圧下乾燥後、体積比1:3〜3:1の水/エタノールで再結晶する工程を含む下記の式Iで表される化合物の調製方法。
    式中、RはC1〜C5の直鎖または分岐鎖アルキル基、C1〜C5のアルケニルおよびアルキニル基、ならびに好ましくは末端オレフィンおよび末端アルキンからなる群より選択される基である。
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