JP2010533692A - ヒトのアタマジラミを駆除する方法 - Google Patents

Abstract

【課題】
【解決手段】
本発明は、外骨格を有する多細胞外部寄生虫、特にアタマジラミによる外寄生に対抗することを目的としたヒト対象者の治療法を提供するものであり、本発明の治療法は、前記対象者に対して、カルバミン酸エステルまたは有機リン酸エステルの殺シラミ剤である第１の殺シラミ剤と、ピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤である第２の殺シラミ剤を局所的に適用することを含み、前記第１の殺シラミ剤を適用してから１５分から１２時間後に前記第２の殺シラミ剤を使用することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、外骨格を備えた多細胞外部寄生虫、特にPhthiraptera目（シラミ）、Acarina目（ダニ）およびSiphonaptera目（ノミ）の外部寄生虫、より具体的にはPediculus humanus capitis（ヒトアタマジラミ）を駆除するための、生きているヒト対象者(living human subject)の局所治療法および該治療法で使用される薬剤キットに関する。

ヒトが、上記のようなマダニ、ノミ、ダニおよびシラミといった多細胞外部寄生虫、とりわけダニおよびシラミ、例えばアタマジラミ（Pediculus humanus capitis）、コロモジラミ（Pediculus humanus humanus）、ケジラミ（Pthirus pubis）およびヒゼンダニ（Sarcoptes scabiei）に外寄生されることは多い。なかでもアタマジラミは、ヒト、とりわけ学童によくみられる問題である。効果的に駆除するには、迅速かつ正確に発見し、目の細かい櫛を使用し、また、アタマジラミを殺す薬品を適用する。

殺シラミ剤は、疥癬の原因となるダニ等の他の外部寄生虫にとっても有毒であることが多く、それ故に殺虫剤または殺疥癬虫剤等とみなされる場合もある。

殺シラミ剤は現在、大きく３種類に分類される。すなわち、有機リン酸エステル類(organophosphates)（マラチオン等）、カルバミン酸エステル類(carbamates)（カルバリル等）およびピレスロイド類（ペルメトリン等）である。

しかしながら、これらの殺シラミ剤は毒性を有する。特に有機リン酸エステルの毒性については、例えば農業従事者との相関から長年にわたり懸念が表明されてきた。有機リン酸エステル中毒は、経口摂取によるものとは限らず、経皮吸収でも中毒の症状が出ることがあり得る。有機リン酸エステル中毒の症例としては、唾液分泌過多、発汗、鼻漏、筋肉の攣縮、虚弱、振せん、協調不能、頭痛、眩暈感、悪心、嘔吐、腹部の痙攣(abdominal cramps)、下痢、呼吸機能低下、喘鳴、かすみ目等が挙げられる。カルバミン酸エステル類は発汗、かすみ目、協調不能や痙攣(convulsions)といった副作用を引き起こす場合がある。同様にピレスロイド類は、皮膚に塗布しただけでも、刺激性神経毒(excitory neurotoxicity)、変性ドーパミン摂取(altered dopamine uptake)、および皮膚炎といった副作用を引き起こす場合がある。

アタマジラミの外寄生は学童に特有の問題であるため、ピレスロイド類や有機リン酸エステル類の塗布量(exposure)を抑えつつアタマジラミの治療を行う必要がある。ＦＲ−Ａ−２７９３１１２（Mazars）が既に、ピレスロイドと有機リン酸エステルの併用を提案している。Mazarsは、有機リン酸エステル（マラチオン等）を含有する第１の溶液とピレスロイド（ペルメトリン等）を含有する第２の溶液から同時に噴霧剤を生成するデバイスを記載している。しかしながら我々は、有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルのいずれかとピレスロイドとを好ましくはこの順序で時間差を設けて適用することにより、効果を損なうことなくこれらの殺シラミ剤の皮膚への塗布量を減少させうることを見出した。よって、本発明にしたがって時間差を設けて処方することは、外部寄生虫が殺シラミ剤に対し耐性を持たないようにするというよりむしろ、毒性を有し得る化学物質のヒト対象者への塗布量を減少させることを意図するものである。

したがって一様態によれば本発明は、外骨格を備えた多細胞外部寄生虫、特にアタマジラミの外寄生に対抗する（闘う、combat)ためのヒト対象者の治療法を提供するものであり、この治療法では、前記対象者に対して、カルバミン酸エステルまたは有機リン酸エステルの殺シラミ剤である第１の殺シラミ剤と、ピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤である第２の殺シラミ剤を局所的に適用する工程を含み、前記第１の殺シラミ剤の適用から１５分から１２時間後に前記第２の殺シラミ剤を適用することを特徴とする。

また別の様態によれば本発明は、本発明の方法によるヒトの治療用途でピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤を提供するものである。さらに別の様態によれば本発明は、本発明の方法によるヒトの治療用途で有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの殺シラミ剤を提供するものである。

さらに別の様態によれば本発明は、カルバミン酸エステルまたは有機リン酸エステルの殺シラミ剤を含有する第１の局所用殺シラミ剤組成物およびピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤を含有する第２の局所用殺シラミ剤組成物、ならびに好ましくは、本発明の治療法における前記組成物の使用説明書をも、別々の容器に入った状態で含むキットを提供する。

別の様態によれば本発明はさらに、外骨格を備えた多細胞外部寄生虫による外寄生に対抗する目的でヒト対象者に対し時間差を設けて局所的に適用される局所用殺シラミ剤組成物の製造に用いられる、カルバミン酸エステルまたは有機リン酸エステルの殺シラミ剤およびピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤の使用法を提供する。

２種類の殺シラミ剤を適用する間隔は、好ましくは２０分から４時間、より好ましくは３０分から３時間、特に好ましいのは約２時間である。

本発明によるアタマジラミの治療法は、毛髪中に存在するシラミを殺すこと、または、毛髪中に存在し得ると考えられるあらゆるシラミを殺すことであって、目の細かい櫛、例えば「ニトコーム(nit comb)」で毛髪を梳かすことと組み合わせるのが好ましい。そのような櫛は以前から一般に入手可能であったが、本発明の好ましい実施態様においては、その櫛が本発明のキットに含まれている。本発明のキットはそのような櫛、２種類の殺シラミ剤組成物および説明書を含むパッケージになっており、説明書がパッケージ表面に印刷されているか、別紙としてパッケージ内に同封されているのが好ましい。本発明の治療法の実施前、実施中または実施後に、好ましくは実施後、および、好ましくは繰り返し、髪を梳かすのも効果があると思われる。毛髪が湿っているとき、特に、コンディショナーで毛髪を整えた状態で梳かすのが最も効果的である。

それら２種類の殺シラミ剤組成物は、局所適用に便利な形態であれば、例えば溶液、クリーム、ジェル、クリームリンス、分散液、パウダー、ローション、スプレー、軟膏等、どのような適用形態であってもよい。しかしながら、それらの組成物のうち少なくとも一方がシャンプーすなわち界面活性剤を含有する組成物、またはクリームリンスであることが好ましい。後から適用される組成物がシャンプーまたはクリームリンスであることが特に好ましい。

とりわけ好ましい実施態様では、先に適用される組成物は、有機リン酸エステルを含有するジェルまたは溶液（例えばイソプロパノールのようなアルコールを含有するもの）、もしくは生理学的に許容されるカルバミン酸エステル製剤（例えばローション）であって、後から適用される組成物が、ピレスロイドを含有するシャンプーまたはクリームリンスである。ペルメトリンシャンプーは、実際にはクリームリンス（コンディショナー）であることが多い。

本発明で用いられる有機リン酸エステルの殺シラミ剤は、皮膚への適用の際に生理学的に許容されるものであり、外部寄生虫を殺す効果を備えていれば、いかなる有機リン酸エステルであってもよい。そのような化合物の例としては、マラチオン、パラチオン、ジクロルボス、クロルピリホス、クロルチオン、トリクロルホン、メチルパラチオン、およびフェンクロルホスが挙げられる。しかしながら、マラチオンの使用が好ましい。カルバミン酸エステルの殺シラミ剤を用いる場合、皮膚への塗布の際に生理学的に許容されるものであり、外部寄生虫を殺す効果を備えていればいかなるカルバミン酸エステルであってもよい。そのような化合物の一例はカルバリルである。しかしながら、有機リン酸エステルの使用が好ましい。

特にアタマジラミの治療では、殺シラミ剤中に存在する有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの濃度が０．０２〜０．４重量％であることが好ましく、より好ましくは０．０４〜０．２重量％であって、濃度が約０．１重量％であるのが特に好ましい。組成物の他の成分としては、局所用組成物に用いられる通常の成分が通常の量だけ存在していてもよい。そのような成分は例えば、水、アルコール類、ゲル化剤、界面活性剤、香料(fragrances)等である。

本発明で使用されるピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤としては、皮膚への塗布の際に生理学的に許容され、外部寄生虫を殺す効果を備えていればいかなるピレスロイドまたはピレトリンであってもよい。通常はピレスロイド化合物がピレトリン類よりも好ましく、そのようなピレスロイド化合物の例としては、ペルメトリン、フェノトリン、シペルメトリン、ピレトリンおよびデルタメトリンが挙げられる。しかしながら、ペルメトリンが好んで用いられる。ピレトリン類を使用する場合は、例えば、キク科の植物等の天然原料から抽出されるものであってもよい。しかしながら、ピレトリン類を用いる場合、以下に説明するような相乗剤を一緒に用いるのが好ましい。

特にアタマジラミの治療には、ピレスロイドまたはピレトリンがその殺シラミ剤組成物中に、好ましくは０．２〜３重量％の濃度、より好ましくは０．５〜２重量％の濃度、特に好ましくは約１％の濃度で存在しているのが好ましい。組成物中の他の成分としては、局所用組成物に用いられる通常の成分が通常の量だけ存在していてもよい。そのような成分は例えば、水、アルコール、ゲル化剤、界面活性剤、香料等である。

他の外部寄生虫の治療用として、その組成物の殺シラミ剤の含有量を適宜調節してもよい。したがってたとえば、疥癬の治療（通常そのような組成物はクリーム、ジェル、またはローションの形態、とりわけクリームの形態で適用される）では、その殺シラミ剤の含有量を、アタマジラミに対する上記の好ましい分量の５倍まで増やしてもよい。

殺シラミ剤組成物の一方または両方、特にピレスロイドまたはピレトリンの組成物に、ピレスロイド／ピレトリンの相乗剤として、例えばピペロニルブトキシドのようなモノオキシゲナーゼ阻害剤を含有させると特に好ましい。また、外部寄生虫の外骨格を粉砕しやすくするために、これらの殺シラミ剤組成物の一方または両方に研磨剤、例えばシリケートや珪藻類を含有させると好ましい。

本発明の治療法では、それらの殺シラミ剤を体表面のいずれの個所に適用してもよく、とりわけ体毛が生えている個所、および頭部に適用するのが好ましい。本発の適用前、同時、または適用後に、洗浄および／またはすすぎを行ってもよい。後の組成物を適用してからすすぎを行うのが特に好ましい。有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの組成物を１５分から１２時間の間、毛髪に接触した状態で放置するのが望ましい。接触時間が２０分から４時間、さらには３０分から３時間であるとさらに好ましく、約２時間であるのが最も好ましい。ピレスロイド組成物は、使用される製剤の性質にもよるが、皮膚と毛髪に接触した状態で５分から数時間、例えば１５〜３０分間放置されるのが好ましい。クリーム製剤であれば通常、最長１２時間、皮膚と毛髪に接触した状態で放置してから洗浄されるであろう。一方、シャンプーであれば通常は、約１０分間洗髪するという形で使用した後、水を用いてすすぎが行われる。本発明の治療法は、必要に応じて、例えば７日から１０日後に再度実施されてもよい。しかし単純な外寄生であれば、通常はこの方法を１度実施しただけで十分であろう。

本発明の方法で用いられる有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの組成物は、通常、アタマジラミの治療に従来から用いられているものよりも低濃度の有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの成分を含有しており、それにより本発明のさらに別の様態が構成される。よって、このさらなる様態についていえば、本発明は、生理学的に許容される担体および０．０２〜０．４重量％、好ましくは０．０４〜０．２重量％、特に好ましくは約０．１重量％の有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの殺シラミ剤を含み、好ましくはジェル、クリーム、シャンプーまたは溶液の形態である局所用の殺シラミ剤組成物を提供する。

マラチオンおよびイソプロパノール等のアルコールを含有する組成物が特に好ましい。

殺シラミ剤組成物の一方または両方がさらに、例えばクロルニコチニル（イミダクロプリド等）、フェニルピラゾール（フィプロニル等）、オキサジアジン（インドキサカルブ等）、ピラゾール（クロルフェナピル等）、または有機塩素（リンデン等）の類から選ばれたさらなる殺シラミ剤を含有しているのも有益である。

上記殺シラミ剤組成物は、プラスチックチューブ、使いきり用の袋、またはガラスバイアルに入っているのが好ましい。

本発明の方法及びキットを、他の外部寄生虫、例えばノミ類、マダニ類、別のシラミ類（例えばPediculus humanus humanusおよびPhtirus pubis）およびダニ類の治療に用いることもできる。特に、ダニの一種であるSarcoptes scabieiの外寄生によって引き起こされる疥癬は、治療可能な症状の１つである。

例えば疥癬のような外部寄生虫の外寄生が皮膚の無毛領域と関係がある場合、局所的な適用は、患部および、任意に外寄生の恐れがあるとみなされる領域に対して実施されることになろう。無論これは、本発明に関する全ての治療法についていえることである。

本発明の方法では、有機リン酸エステル／カルバミン酸エステルの後にピレスロイド／ピレトリンを投与することが最も好ましいが、逆の順序で投与しても有効であり、これにより、好ましさは劣るが、本発明の別の様態が構成される。

以下、本発明について、実施例を参照しながらさらに説明する。それらの実施例は本発明を限定するものではない。

［実施例１］
［有機リン酸エステルジェル組成物］
イソプロパノール中のマラチオンの濃縮溶液を、市販のヘアジェル、例えばブーツ社製のエッセンシャルズ・ヘア・ジェル(Essentials Hair Gel)に０．１重量％添加する。

［実施例２］
［ピレスロイドシャンプー組成物］
ペルメトリンを市販のシャンプー、例えばプロクター＆ギャンブル製のヘッド＆ショルダーズ(Head & Shoulders)またはクリームリンス／コンディショナーに、１重量％添加する。

［実施例３］
［アタマジラミ治療キット］
紙製のボックス、実施例１の組成物を３０ｍＬ含有するバイアル、実施例２の組成物を３０ｍＬ含有するバイアル、および同封の使用説明書を含むキットを準備する。

［実施例４］
［頭皮治療］
シラミに外寄生された学童の毛髪と頭皮に、実施例１のジェルを約２５ｍｌもみ込む。３０分後、毛髪をすすぐ。さらに９０分後、毛髪を湿らせて実施例２のシャンプーを約２５ｍｌ擦り込み泡立てる。１０分後に毛髪をすすぐ。翌日、ニトコームを用いて、湿った状態の毛髪を梳かす。

［実施例５］
［治験］
アタマジラミを駆除する目的で、４ヶ月間にわたりあらかじめ１０歳の女児に対してマラチオンの０．５％溶液（ムンディファルマ製プリオダーム（商標）ローション）を使用していたが、著しい臨床的効果はなかった。この対象者はその後、１％マラチオンシャンプー（ムンディファルマ製プリオダーム(商標)シャンプー）を３０分間使用し、水で毛髪を洗い、その後１％ペルメトリンシャンプー（ＡＣＯ・ＨＵＤ製ニックス(Nix)（商標）シャンプー（実際には厳密な意味でのシャンプーというよりもむしろクリームリンス））を１０分間使用した。この治療を７日後に再度実施したところ、アタマジラミの外寄生は治癒された。

Claims (8)

1. 外骨格を備えた多細胞外部寄生虫による外寄生に対抗するためのヒト対象者の治療法であり、
   前記対象者に対し、カルバミン酸エステルまたは有機リン酸エステルの殺シラミ剤である第１の殺シラミ剤と、ピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤である第２の殺シラミ剤を局所的に適用する工程を含む治療法であって、
   前記第１の殺シラミ剤を適用してから１５分後から１２時間後に前記第２の殺シラミ剤を適用することを特徴とする治療法。
2. 前記外部寄生虫がアタマジラミである請求項１に記載の治療法。
3. 前記第１の殺シラミ剤がマラチオンで、前記第２の殺シラミ剤がペルメトリンである、請求項１および２のいずれかに記載の治療法。
4. 先行する請求項のいずれかひとつに記載の治療法において、カルバミン酸エステルまたは有機リン酸エステルの殺シラミ剤を含有する第１の局所用殺シラミ剤組成物と、ピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤を含有する第２の局所用殺シラミ剤組成物、さらに好ましくは、前記組成物についての使用説明書を、別々の容器に入った状態で含むキット。
5. 外骨格を備えた多細胞外部寄生虫による外寄生に対抗する目的でヒト対象者に対し時間差を設けて局所に適用される局所用殺シラミ剤組成物を製造するための、ピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤および有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの殺シラミ剤の使用。
6. 請求項１〜３のいずれか１つに記載の治療法によるヒトの治療で使用されるピレスロイドまたはピレトリンの殺シラミ剤。
7. 請求項１〜３のいずれか１つに記載の治療法によるヒトの治療で使用される有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの殺シラミ剤。
8. 生理学的に許容される担体および０．０２〜０．４重量％の有機リン酸エステルまたはカルバミン酸エステルの殺シラミ剤を、好ましくはジェル、クリーム、シャンプーまたは溶液の形態の組成物として含む局所用殺シラミ剤組成物。