JP2010530761A - 固定されたサンプルからの長い断片rnaの分離方法 - Google Patents

固定されたサンプルからの長い断片rnaの分離方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010530761A
JP2010530761A JP2010513488A JP2010513488A JP2010530761A JP 2010530761 A JP2010530761 A JP 2010530761A JP 2010513488 A JP2010513488 A JP 2010513488A JP 2010513488 A JP2010513488 A JP 2010513488A JP 2010530761 A JP2010530761 A JP 2010530761A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rna
expression
ercc1
tissue
gene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2010513488A
Other languages
English (en)
Inventor
ダネンバーグ,キャスリーン
Original Assignee
レスポンス ジェネティクス,インコーポレイティド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by レスポンス ジェネティクス,インコーポレイティド filed Critical レスポンス ジェネティクス,インコーポレイティド
Publication of JP2010530761A publication Critical patent/JP2010530761A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/10Processes for the isolation, preparation or purification of DNA or RNA
    • C12N15/1003Extracting or separating nucleic acids from biological samples, e.g. pure separation or isolation methods; Conditions, buffers or apparatuses therefor
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6806Preparing nucleic acids for analysis, e.g. for polymerase chain reaction [PCR] assay
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12QMEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/68Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
    • C12Q1/6876Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
    • C12Q1/6883Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
    • C12Q1/6886Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material for cancer

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Saccharide Compounds (AREA)

Abstract

本発明は、固定された組織標本からの長い断片RNAの抽出方法に関する。特に、本発明は、オリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーションに基づくアッセイを含めた生物学的応用に使用するための、ホルマリン固定されパラフィン包埋された組織標本からのRNAの抽出方法に関する。

Description

当該出願は、2007年6月22日に出願された仮出願第60/945,785号に対する優先権を主張し、上記出願の全体を本明細書中に援用する。
本発明は、固定された組織サンプルからの高収量、且つ、高品質(長い断片)RNAの抽出及び分離方法の分野に関する。本発明は、固定された、又は固定され、そしてパラフィン包埋された組織中の癌のバイオマーカーなどの遺伝子について遺伝子発現レベルを評価する方法を提供するためのこれらの新規抽出方法の使用に関する。本発明はまた、患者の腫瘍細胞における特定のバイオマーカーのmRNA値を計測し、そして、それを所定の閾値発現レベルと比較することによる化学療法ベースのレジメンの決定方法も提供する。
RNA種の定量的測定は、分子生物学における近代的調査の遂行の柱である。RNA種はまた、例えば、攻撃的腫瘍や非攻撃的腫瘍などの様々な異なった組織タイプを特徴づける遺伝子発現プロフィールの作成において、非常に重要な臨床的意義を持つ(1)。高感度な蛍光ベースのリアルタイムRT-PCR法、及びその他のハイブリダイゼーション依存型の方法の開発を含めた、最近の技術的進歩は、現在、患者の生検標本から得られたものなどの、非常に少量のmRNAの急速で、特異的な定量化の実施を可能にしている。特に、臨床研究へのRNA定量化の適用において、ほとんどの定量方法における最良の結果のための十分な品質のRNAを得る際に、問題が生じる。
メッセンジャーRNA(mRNA)は、新鮮な/凍結組織内である程度安定していて、そしてまた、大部分は完全な形態で分離するのも比較的容易である。しかしながら、新鮮な凍結組織サンプルを採取するために特別な取り組みが行われる小規模な研究を除いて、患者から得られた生検組織サンプルは、通常、ホルマリン固定とパラフィン包埋に供される。これは、病院にて日常的に治療を受けた患者、並びに主な臨床試験の参加者からの組織標本に関して当てはまる。ホルマリン固定、そして、パラフィン包埋(FFPE)が最も一般的に使用される方法である主な理由は、組織の病理学検査における支援のためである。クライオスタットで切片にされた新鮮な凍結組織の形態学的検査は、分子組織病理学的相関を難解にし、顕微解剖による腫瘍又はその他の組織の純化をより困難にするので、次善策である。対照的に、組織サンプルのホルマリン固定とパラフィン包埋は、形態を保存し、そして、病理学検査をはるかに容易にする。FFPEが一般的に使用される第2の理由は、新鮮な凍結組織サンプルの保存が難しく、そして、コスト高だからである。診断的解析と分子アッセイのための十分な組織サンプルの収集と確保にかかわる物流の問題は、克服できないように思える。その結果として、あるとしてもごくわずかな、世界的規模の組織バンクが、さまざまな遺伝的分析に好適な十分な凍結組織サンプルを含むか、又は十分に長期間、患者の追跡調査及び転帰データを保有することになってしまう。その一方、FFPE組織は、現在の病理の実施のための基準であり続けている。長期追跡調査を伴ったアーカイバルな(archival)FFPE組織が、臨床医と研究者の両者にとって容易に入手可能であり、且つ、簡単に利用可能であるので、そういったものが、臨床現場における調査のための遺伝物質の広範な供給源に相当する(2)。
残念ながら、ホルマリン固定の工程は、組織形態を保存するには優れているが、その一方で、組織内のRNAに対しては不利な影響を持っている。RNA分子は、断片化されるようになり、すなわち、より小さい切れ端まで開裂され、並びに、多分、ホルマリンによって架橋される(3〜6)。これらの過程の両方が、遺伝子発現プロフィールの作成などのRNA定量手法におけるFFPE標本からのRNAの使用の難しさを大いに高めている。短鎖長のRNAは、定量的なリアルタイムのRT-PCR用の最適なプライマー‐プローブ・セットの入手をより難しくする一方で、架橋は、分離されたRNA物質の増幅実施の成功に必要なRNA又はDNAの新しい鎖を合成するRNA又はDNAポリメラーゼ酵素の前進を妨げる。FFPE組織からの無作為に断片化されたRNAを使用することはまた、新鮮な凍結組織のものと比較して、増幅されたRNAの収量を大幅に減少させると同時に、短い断片長は、その後のハイブリダイゼーション・ステップの効率と特異性を特に低下させる。ハイブリダイゼーションの特異性は、PCR法における誤った陽性の結果と高いバックグラウンド増幅を避けるために非常に重要である。これらの理由で、できる限り最高の収量で、できる限り最高の品質のRNAを、FFPE組織から分離するための方法を開発することが重要である。
FFPE組織からの完全な高分子量(長い断片)RNAの抽出は、困難で矛盾した工程である。サンプルからRNAを抽出するための様々な技術が、当該技術分野で知られている(7〜17)。これらの抽出技術は、試験されて様々な成功を収めてきた。一部の研究が、アーカイバルなFFPE組織からのDNA及びRNAの抽出を最適化するために新しい手法を提供したが(18〜34)、その一方で、その他の研究は、定量的RT-PCR分析に対する固定の継続期間(通常、研究者が制御していない要因)の影響を調査した(10、12、13、26)。今日までの諸研究は、うまくPCR法にかけることができるFFPEからのRNAの抽出が可能であると同時に、抽出されたRNAの分離収量と品質(長さ)の一貫性に問題がまだあることを示した。200ヌクレオチド(nt)より長い抽出RNAの断片を増幅するためのこれまでの試みは、通常失敗であり、そして、60〜120ntの範囲の断片の増幅だけが、様々な成功の度合いで一般的に達成された(2)。これまでの抽出方法に関するほとんどの研究の注目は、FFPE組織からのRNAの最大収量を得ることに集められていて、必ずしも、高品質の抽出RNAをどのように得るかを発見すること、すなわち、抽出工程中のさらなる分解を回避することによってRNAの断片長を保存することではなかった。これらの2つの目標が常に両立できるわけではない:RNAの最大収量を得るには、より短い鎖長だがより多くのRNAをもたらす、RNAの鎖長をさらに分解する条件を必要とすることがある。
頻度は低いものの認識されており、且つ、以前の研究の大部分で通常扱われない別の要因は、RNA調製物の混入DNAである。DNAはRNAより安定した分子であるので、FFPE抽出物には、RNAに比べて、より多くのDNAがしばしば含まれる。RNAとDNAは化学的に非常に類似した分子なので、DNAの塩基配列は、そのRNAに複製される。よって、ハイブリダイゼーション技術を伴うRNA分析では、ハイブリダイゼーション部位への結合に関してDNAがそのRNA分子と競合することがあるので、多量の混入DNAが、誤った結果をもたらす。例えば、PCR中、プライマーとプローブは、混入DNA、並びにそのRNAから作り出されたcDNAに結合し、そして、増幅することができる。RT-PCR法用のRNA分離物中のDNAの存在は、いわゆるRNA特異的プライマー、すなわち、イントロン‐エクソン連結部を横断するので、そのためDNA内の対応遺伝子配列を増幅しないはずのプライマーを使用することによってしばしば対処される。しかしながら、RNA特異的プライマーを用いたとしても、DNA内の偽遺伝子が増幅される可能性がある。サンプル調製物中の大幅なDNAの欠如の1つの恩恵は、当業者がRT-PCR法を行う際にRNA特異的プライマーに限定されないので、それによって、プライマー結合部位の選択肢が大幅に増えることである。
従って、許容できる低いDNA同時分離/混入と同時に、高収量で高品質(長い断片)RNAの分離方法が求められている。本発明がこの要求に応える。
癌組織における様々なバイオマーカーの発現レベルを測定するためにRNAを分離することは、特定の病態の診断、又は療法の適切なあり方を判断する際に医師を援助するのに有用であり得る。例えば、バイオマーカーは、癌を診断するのに有用であること、並びに疾患を治療する際に、特定の化学療法レジメンが有益であるかどうか予測するのに有用であることが確認されている。多くの疾患バイオマーカーが知られていて、いくつか例を挙げると、例えば、癌バイオマーカーERCC1、TS、DPD、Her2-neu、EGFR、GST-pi、k-ras、及びRRM1が含まれる。
加えて、本明細書中に開示されるRNA分離方法は、どんなFFPE組織からの長い断片RNAの分離にも使用できる。通常、FFPE組織は、あらゆる癌の腫瘍生検からのものである。
ERCC1
除去修復交差相補(ERCC1)遺伝子は、DNA付加物の修復に不可欠である。ヒトERCC1遺伝子はクローンニングされた。Westerveld et al., Nature (London) 310:425 428 (1984);Tanaka et al, Nature 348:73 76 (1990)。この遺伝子に欠損がある突然変異ヒト及びハムスター細胞株を使用したいくつかの研究、並びにヒト腫瘍組織における研究は、ERCC1によってコードされる生成物が、白金製剤‐DNA付加物の除去修復にかかわることを示唆している。Dabholkar et al., J. Natl. Cancer Inst 84:1512 1517 (1992);Dijt et al., Cancer Res. 48:6058 6062 (1988);Hansson et al., Nucleic Acids Res. 18: 35 40 (1990)。
DNA修復不全CHO細胞内に形質移入した場合、ERCC1は、白金製剤‐DNA付加物を修復する能力に加えて、シスプラチンに対して細胞耐性を与える。Hansson et al., Nucleic Acids Res. 18: 35 40 (1990)。現在認められている除去修復モデルは、損傷認識/除去ステップが除去修復過程の律速であることを示唆している。
白金ベースの療法を受けている癌患者からの悪性細胞におけるERCC1などの除去修復遺伝子の発現の相対的レベルが調べられた。Dabholkar et al., J. Natl. Cancer Inst, 84:1512 1517 (1992)。
胃癌患者のERCC1過剰発現は、シスプラチン(DDP)/フルオロウラシルの化学療法レジメンで治療されると、腫瘍反応と最終的な生存に負の影響があると報告された(Metzger, et al., J Clin Oncol 16: 309,1998)。最近の証拠は、ゲムシタビン(Gem)が、ERCC1ヌクレオチド除去修復(NER)活性を調節できることを示唆することもある。よって、ERCC1発現の腫瘍内レベルは、DDP及びGEMが癌患者の有効な治療であるか否かを判定するための主要な予後因子である。
GST-pi
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)ファミリーのタンパク質は、細胞毒性薬の解毒作用にかかわる。GST酵素は、毒性や発癌性の求電子分子と、グルタチオンの結合を触媒することによって、損傷から細胞高分子を保護する(Boyer et al., Preparation, characterization and properties of glutathione S-transferases.:Zakim D, Vessey D (eds.) Biochemical Pharmacology and Toxicology. New York, N.Y.: John Wiley and Sons, 1985に掲載)。これらのタンパク質の特定の異性体であるグルタチオンS-トランスフェラーゼpi(GST-pi、本明細書中で互換的にGSTP1又はGST-piとも呼ばれる)は、ヒト表皮組織で広く発現されいて、そして、数種類の腫瘍で過剰発現されることが実証された(Terrier et al., Am J Pathol 1990; 137: 845 853;Moscow et al., Cancer Res 1989; 49:1422 1428)。正確な機構が不明瞭なままであるが、GST-piレベル上昇は、薬物耐性腫瘍において見られた(Tsuchida et al., Grit Rev Biochem Mol Biol 1992; 27: 337 384)。以前の研究は、(mRNAではなく)GSTタンパク質の低い発現が、白金ベースの化学療法に対する応答に関連することを示唆した(Nishimura et al., Cancer, Clin Cancer Res 1996; 2:1859 1865; Tominaga, et al., Am. J. Gastro. 94:1664 1668, 1999; Kase, et al., Acta Cytologia. 42:1397 1402, 1998)。しかしながら、これらの研究は、半定量的な免疫組織化学的染色法を使用してタンパク質レベルを計測した以外は、遺伝子発現を定量的に計測していなかった。しかしながら、定量的GST-pi遺伝子発現の測定は、非常に効果的な予測を達成するために必要である。
Her2 neu/EGFR
肺癌は、西洋諸国の男性及び女性の両方に共通して癌に関連した死亡の主な原因である。合衆国では、約171,000件の肺癌の新しい症例が診断され、そして、160,000人の人々が毎年、この疾患で死亡する。過去20年間での肺癌の検出と治療の向上にもかかわらず、5年全生存率は、15%未満のままである。Ginsberg, et al.,:DeVita, et al., Cancer: Principles in Practice of Oncology, Ed. 5, pp. 858-910. Philadelphia Lipincott-Raven Publishers, 1997に掲載。非小細胞肺癌(NSCLC)を患っている患者の生存率をさらに改善するために、分子変化に基づく彼らの予後分類が重要である。こうした分類は、より正確で有用な診断手段を提供し、最終的には、より効果的な治療上の選択肢を提供するだろう。
受容体チロシンキナーゼ(RTKs)は、細胞増殖シグナルの伝達に重要である。RTKsは、上皮成長因子(EGF)などの増殖因子のための細胞外リガンド結合ドメイン、及びサイトゾル・タンパク質上のチロシン・アミノ酸残基をリン酸化し、それによって、細胞増殖を媒介するためのキナーゼとして機能する細胞内部分を持つ巨大な膜貫通タンパク質である。様々なクラスの受容体チロシンキナーゼが、異なった受容体チロシンキナーゼに結合する増殖因子のファミリーに基づいたものが知られている(Wilks, Advances in Cancer Research, 1993, 60, 43-73)。
受容体チロシンキナーゼのEGF-RファミリーなどのクラスIキナーゼには、EGF、HER2-neu、erbB、Xmrk、DER、及びIet23受容体が含まれる。これらの受容体は、乳癌(Sainsbury et al., Brit. J. Cancer, 1988, 58,458;Guerin et al., Oncogene Res., 1988, 3, 21)、肺の扁平上皮癌(Hendler et al., Cancer Cells, 1989, 7, 347)、膀胱癌(Keal et al., Lancet, 1985, 366)、食道癌(Mukaida et al, Cancer, 1991, 68, 142)、結腸癌、直腸癌又は胃癌などの消化器癌(Bolen et al., Oncogene Res., 1987, 1, 149)、白血病(Konaka et al., Cell, 1984, 37, 1035)、及び卵巣、気管支又は膵臓の癌(欧州特許明細書番号第0400586号)などの一般的なヒトの癌において高い頻度で存在する。さらにヒト腫瘍組織が受容体チロシンキナーゼのEGFファミリーについて試験される場合、その広範囲にわたる頻発が、甲状腺癌や子宮癌などの他の癌において立証されると予想される。
厳密に言えば、EGFRチロシンキナーゼ活性は、正常細胞において希に検出されるが、それは悪性細胞においてより高い頻度で検出可能である(Hunter, Cell, 1987, 50, 823)。EGFRが、脳、肺扁平上皮細胞、膀胱、胃、乳房、頭頚部、食道、婦人科、及び甲状腺の腫瘍などの多くのヒトの癌において過剰発現されていることが、最近になって示された(W J Gullick, Brit. Med. Bull., 1991, 47, 87)。受容体チロシンキナーゼはまた、乾癬などのその他の細胞増殖疾患においても重要である。EGFR障害は、EGFRを通常発現しない細胞によるEGFR発現、又は不所望な細胞増殖につながるEGFR活性化の増大及び/又は不適当なEGFRレベルの存在を特徴とするものである。EGFRは、リガンドであるEGF、並びに形質転換成長因子α(TGF-α)によって活性化されることが知られている。
Her2-neuタンパク質もまた、クラスI受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーのメンバーである。Yarden and Ullrich, Annu. Rev. Biochem. 57: 443, 1988;Ullrich and Schlessinger, Cell 61: 203, 1990。Her2-neuタンパク質は、EGFRに構造的に関連している。Carraway, et al., Cell 78: 5, 1994;Carraway, et al., J. Biol. Chem. 269: 14303, 1994。これらの受容体は、共通の分子構築を共有し、且つ、それらの細胞質ドメイン内に2つの高システイン領域、及びそれらの細胞質ドメイン内に構造的に関連した酵素領域を含む。
Her2-neuタンパク質のリガンド依存の活性化は、p165(Her2-neu)に直接結合し、そして酵素活性を刺激し得るneu活性化因子(NAF)によって媒介されると考えられている。Dougall et al., Oncogene 9:2109, 1994;Samata et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1711, 1994。Her2-neuタンパク質のリガンド依存のホモ二量体化及びその結果としての受容体の活性化は、Her2-neuタンパク質の過剰発現によって容易になる。活性化したHer2-neu複合体は、ホスホキナーゼとして働き、そして別の細胞質タンパク質をリン酸化する。HER2-neu障害は、HER2-neuの不適当な活性又は過剰な活性がHER2-neuの発現を増大させ、不所望な細胞増殖、例えば癌に至ったことを特徴とする。
受容体チロシンキナーゼEGFR及びHER2-neuの阻害剤は、哺乳動物の癌細胞の増殖の選択的阻害剤として利用される(Yaish et al. Science, 1988, 242, 933)。例えば、エルブスタチンは、EGF受容体チロシンキナーゼであり、これは胸腺欠損ヌードマウスに注射されたEGFRを発現するヒト乳癌細胞の増殖を低下させ、更にEGFRを発現していない腫瘍の増殖には効果がなかった(Toi et al., Eur. J. Cancer Clin. Oncol., 1990, 26, 722)。スチレンの種々の誘導体もまた、チロシンキナーゼ阻害特性を有し(欧州特許出願番号第0211363号、同第0304493号及び同第0322738号)、そして抗腫瘍剤として使用されるものであることが述べられている。2つのそのようなスチレン誘導体は、有効性がヌードマウスに注射されたヒト扁平上皮細胞癌の増殖を弱めることによって証明されたクラスIのRTK阻害剤である(Yoneda et al., Cancer Research, 1991, 51, 4430)。また、欧州特許出願番号第0520722号及び同第0566226号から、ある4-アニリノキナゾリン誘導体が、受容体チロシンキナーゼ阻害剤として有用であることが知られている。これらの化合物によって示された非常に密接な構造‐活性相関は、明確に規定された結合様式を示唆しており、この中で、キナゾリン環はアデニンポケット内で結合し、そしてアニリノ環は隣接した独特の親油性ポケット内で結合する。3つの4-アニリノキナゾリン類似体(2つは可逆的、そして1つは不可逆的な阻害剤である)は、抗癌薬として臨床的に評価されてきた。Denny, Farmaco January-February 2001; 56(1-2): 51-6。近年、米国のFDAが、HER2-neuを過剰発現している転移性乳癌の処置のためのモノクローナル抗体トラスタツマブ(trastazumab)(Herceptin(商標))の使用を認可した。Scheurle, et al., Anticancer Res 20: 2091-2096, 2000。
腫瘍に対する有効な化学療法は、しばしば薬剤の併用を必要とするので、それぞれの単一薬物に対する耐性又は感受性の決定因子の同定及び定量が、個々の併用化学療法を設計するのに重要なツールとなってきている。生存性を有する癌患者由来の悪性細胞におけるEGFR及び/又はHER2-neuの発現の相対レベルを確実に補正するための研究は不成功に終わっている。
EGFRの、そしてNSCLCにおける予後の重要性は、これまでは議論の余地が残されていた。結合アッセイを用いる研究は、EGFR発現の増大を、進行した段階にあるNSCLC及び短縮した全生存率と相関させ、一方、EGFRのmRNA又はタンパク質の発現を測定するための半定量的な技術は、臨床的な結果と一致した相関を示すことに失敗した。Veale et al., Br. J. Cancer 68:162-165, 1993;Fujino et al., Eur. Cancer 32:2070-2074, 1996;Rusch, et al., Cancer Res 53:2379-2385, 1993;Pfeiffer, et al., Br J Cancer 74:86-91, 1996;Pastorino, et al., J Clin Oncol 15:2858-2865, 1997。免疫組織化学的方法を用いるNSCLC腫瘍におけるEGFRの発現研究は、NSCLC腫瘍における32%〜47%のEGFR過剰発現についての頻度を示した。Veale et al., Br. J. Cancer 55:513-516, 1987;Veale et al., Br. J. Cancer 68:162-165, 1993;Fujino et al., Eur. Cancer 32:2070-2074, 1996;Rusch, et al., Cancer Res 53:2379-2385, 1993;Pastorino, et al., J Clin Oncol 15:2858-2865, 1997;Tateishi, et al., Eur J Cancer 27:1372-75, 1991;Rachwal, et al., Br J Cancer 72:56-64, 1995;Rusch, et al., Cancer Res 15:2379-85, 1993;Pfeiffer, et al., Br J Cancer 78:96-9, 1998;Ohsaki, et al., Oncol Rep 7:603-7, 2000。さらに、EGFR発現の有意な違いが、組織学的なサブタイプ間で報告されており、これは通常AC及びLCと比較してSCCのEGFR発現が高いほどみられる。Fujino et al., Eur. Cancer 32:2070-2074, 1996;Veale et al., Br. J. Cancer 55:513-516, 1987;Pastorino, et al., J. Clin. Onc. 15:2858-2865, 1997;Pfeiffer, et al., Br J Cancer 78:96-9, 1998;Ohsaki, et al., Oncol. Rep. &:603-7, 2000。しかしながら、これらの研究では、EGFRの過剰発現と肺癌患者の生存率との一致した相関が報告されなかった。
EGFRの過剰発現と患者の生存率の低下とが相関していると言われるものの観察は、いくつかの決定的な研究においてなされた。Veale et al., 1987;Ohsaki et al., 2000。しかしながら、Vealeらは、わずかに19人のNSCLCの患者群を解析した。Ohsakiらは、EGFRタンパク質発現と、p53を過剰発現しているNSCLCの患者の乏しい予後とを相関させた(P=0.024)。
EGFRと同様に、HER2-neuの、及びNSCLCにおける予後の重要性は、以前は議論の余地が残されていた。HER2-neuタンパク質の過剰発現は、扁平上皮細胞癌、腺癌、及び大細胞癌を含む、NSCLCにおいて立証された。Veale et al., 1987;Schneider, et al., Cancer Res 49:4968-4971, 1989;Kern et al., Cancer Res. 50:5184-5191, 1990;Weiner, et al., Cancer Res. 50:421-425, 1990;Scheurle, et al., Anticancer Res. 20:2091-2096, 2000。タンパク質アッセイを用いた初期の研究は、HER2-neuタンパク質の過剰発現と肺腺癌(AC)における低下した全生存率との関連性を報告した。Kern et al., Cancer Res 50:5184-5191, 1990;Kern et al., J Clin Invest 93:516-20, 1994。しかしながら、正反対の研究が、HER2-neuタンパク質の過剰発現と肺腺癌(AC)における低下した全生存率との相関がないことを報告した。Pfeiffer, et al., Br. J. Cancer 74:86-91, 1996。
別の重要な問題は、癌を予後判定するものとして、HER2-neuとEGFRの同時過剰発現との相互関係を評価することである。Tateishiらは(Eur. J. Cancer 27:1372-75, 1991)、解析したACの13%において、EGFRとHER2-neuタンパク質の同時発現を測定し、そして、これらの2つの遺伝子の同時過剰発現が低下した5年生存率と相関していたことを見いだした。しかしながら、HER2-neuの過剰発現のみの場合と同様に、肺の扁平上皮細胞癌(SCC)及び大細胞癌(LCC)におけるHER2-neuとEGFRの同時発現と生存率との関係は報告されていなかった。
EGFRとHER2-neuの発現レベルの決定のための矛盾した方法論が、これらの遺伝子の発現が癌患者の生存率を予後判定するためにどの程度使用され得るかを決定するという問題の根底に存在していた。NSCLCにおけるHER2-neuとEGFRの発現のこれまでの研究は、EGFRとHER2-neuの発現の両方について陽性の結果を示したNSCLC腫瘍の頻度における莫大な変動性をもたらした。腺癌(AC)における陽性タンパク質染色として定義されるHER2-neuの過剰発現は13〜80%であると報告され、扁平上皮細胞癌(SCC)においては2〜45%、そして大細胞癌(LC)においては0〜20%と報告され、これには光学顕微鏡のスライド上のパラフィン包埋組織及びHER2-neuの抗血清を用いた。Pfeiffer, et al., 1996;Kern et al., 1990;Kern et al., 1994;Tateishi et al., 1991;Shi, et al., Mol Carcing 5:213-8, 1992;Bongiorno, et al., J Thorac Cardiovasc Surg 107:590-5, 1994;Harpole, et al., Clin Cancer Res 1:659-64, 1995;Volm et al., Anticancer Res 12:11-20, 1992。さらに、最近の報告は、HER2-neuの発現レベルを評価するために設計された現在のプロトコールの非特異性を証明している。浸潤性の乳癌におけるHER2-neuの発現の測定のためのHercepTest(登録商標)が、非常に高い偽陽性を有することを示した。Jacobs et al., J Clin Oncol 17:1983-1987, 1999。
EGFRとHER2-neuの発現レベルを決定するための、正確で、誤りのない、且つ一貫した方法が存在する場合、どのような発現レベルが患者の生存率と相関しているか、そして受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法が適切であるか否かを確かめることができる。標準化された方法を用いた、NSCLCにおけるEGFR及び/又はHER2-neuの過剰発現の一貫した実証が、受容体チロシンキナーゼを標的とした現在及び今後の化学療法、例えば、これらの受容体を過剰発現している癌を処置するための化学療法剤、抗体ベースの薬物、についての臨床試験を確立するために望ましい。
DPD
5-フルオロウラシル(5-FU)は、GI管及び乳房の癌などの主要な癌を含めた多くの様々な種類の癌の治療に対してきわめて広範囲に使用される薬剤である(Moertel, C. G. New Engl. J. Med., 330:1136-1142, 1994)。結腸直腸癌に対する標準的な第一次治療法は40年以上の間、5-FU単体の使用であったが、5-FUとCPT-11の併用が「標準的治療」として取って代わった(Saltz et al., Irinotecan Study Group. New England Journal of Medicine, 343:905-14, 2000)。最近は、5-FU及びオキサリプラチンの併用が結腸直腸癌において高い奏功率をもたらした(Raymond et al, Semin. Oncol., 25:4-12, 1998)。したがって、5-FUは依然として最新の化学療法レジメンの中心的構成要素として残るため、これからも長年にわたって癌治療に用いられることになる可能性が高い。加えて、単一薬品の5-FU療法は、CPT-11又はオキサリプラチンとの併用療法が過度の毒性を与えそうな患者に対して使用され続ける。
5-FUは、少数の患者のみがこの療法に対する良好な応答を経験する点でほとんどの抗癌剤によくあるものである。大規模な無作為臨床試験の結果は、転移性の結腸直腸癌を患っている患者に対する単一薬品としての5-FUに関する腫瘍の全奏功率が15〜20%の範囲内にあることを示している(Moertel, C. G. New Engl. J. Med., 330:1136-1142, 1994)。先に言及した他の化学療法と併用した場合、5-FUベースのレジメンに対する腫瘍の奏功率は、ほぼ40%まで増加した。それにもかかわらず、治療された患者の大多数が5-FUベースの化学療法を受けたことによる明確な利益が得られず、かなりの危険性、苦痛、及び費用にさらされる。治療前に個人の腫瘍の応答を予想する信頼性が高い手段がないので、標準的な臨床的実施では、大多数が不満足な結果をこうむることになるのを十分に認識しながら、全ての患者に5-FUベースの治療を受けさせてきた。
この薬剤の抗癌活性の最も重要な生化学的決定因子を特定するために、5-FUの作用機構及び代謝経路が長年にわたって集中的に研究されてきた。その最終的な目標は:a)その細胞内代謝及び生化学を調節すること;及びb)どの患者がこの薬物に最も応答する(又は応答しない)可能性が強いかを予測するために治療前に患者の腫瘍中の応答決定因子を測定することによって5-FUの臨床的効力を改善することであった。これらの研究から2つの主要な決定因子、1)5-FUの標的酵素、すなわちチミジル酸シンターゼ(TS)の正体、及び2)5-FU分解酵素、すなわちジヒドロピリミジン・デヒドロゲナーゼ(DPD)の正体が明らかになった。
5-FUベースの療法に対する腫瘍の応答の予測の分野における最初の研究は、結腸直腸癌における標的酵素TSに集中した。Leichmanら(Leichman et al., J. Clin Oncol., 15:3223-3229, 1997)は、5-FUに対する腫瘍の応答と、結腸直腸癌から得た前処理生検におけるRT-PCR法によって決定されるTS遺伝子の発現とを相互に関係づけるために前向き臨床試験を行った。この研究の結果は:1)これら腫瘍間でTS遺伝子の発現レベルの大きさは50倍の幅があること、及び2)応答する腫瘍と応答しない腫瘍の間でTS遺伝子の発現のレベルが著しく異なることを示した。応答する群のTSのレベルの幅(内部標準を基準にして0.5〜4.1×10-3)は、応答しない群のTSのレベルの幅(内部標準を基準にして1.6〜23.0×10-3)よりも狭かった。同研究者らは、その結果として得られるTS発現の「非応答限界」閾値のレベルを決定し、これを超えると非応答個体のみが存在する。したがって、この「非応答限界」閾値を超えてTSを発現する患者は、療法に先立って非応答個体として明確に識別することができる。この「非応答」分類には、<50%の腫瘍の縮小、>25%の腫瘍増加をもたらす進行性の増殖、並びに<50%の縮小、無変化、又は<25%の増加のいずれかをもつ非進行性腫瘍を含む全ての治療反応が含まれた。これらの腫瘍は最も高いTSのレベルを有した。したがって、高いTSの発現は、特に耐性腫瘍であると認定する。一定の閾値を超えるTS発現レベルは、5-FUに応答しない腫瘍の部分集合と認定し、その一方で、この数値未満のTS発現レベルはかなり高い奏功率を予想したが、特に応答する腫瘍とは認定しなかった。
その後の研究では、TS発現レベルと共に5-FU治療に対する腫瘍の応答決定因子としてのDPD発現レベルの有用性について検討した。DPDは、5-FUの5,6二重結合を還元する分解酵素であり、細胞毒性剤としてそれを不活性にする。以前の研究は、正常組織内のDPDレベルが5-FUの生物学的利用能に影響を及ぼし、それによってその薬物動力学及び抗腫瘍活性を調節する可能性があることを示している(Harris et al, Cancer Res., 50: 197-201, 1990)。加えて、腫瘍中のDPDレベルが5-FUに対する感受性と関連しているという証拠が提示された(Etienne et al, J. Clin. OncoL, 13: 1663-1670, 1995;Beck et al., Eur. J. Cancer, 30: 1517-1522, 1994)。Salongaら(Clin Cancer Res., 6:1322-1327, 2000)は、TSの発現がすでに測定されている一組の腫瘍における5-FU/ロイコボリン処置に対する腫瘍応答決定因子としてDPDの遺伝子発現を調べた。TSと同様に、応答する腫瘍間のDPDの発現の幅(内部標準を基準にして0.6〜2.5×10-3、4.2倍)は、応答しない腫瘍間のDPDの発現の幅(内部標準を基準にして0.2〜16×10-3、80倍)と比べて比較的狭かった。約2.5×10-3の閾値のレベルより大きいDPDの発現を有する応答する腫瘍は存在しなかった。さらに、DPDとTSの発現レベルは、互いに何の相関もないことを示し、それらが独立に制御される遺伝子であることを示唆している。それらの「非応答限界」閾値レベル未満のTS及びDPDの発現レベルをそれぞれ有する腫瘍群の中では92%が5-FU/LVに応答した。したがって、応答する腫瘍は、低い発現レベルのDPD及びTSに基づいて識別することができる。
DPDはまた、5-FU毒性に対する重要なマーカーでもある。5-FUベースの療法を受けるきわめて低いDPDのレベル(DPD欠乏症候群、すなわちチミン・ウラシル尿症の場合など)を有する患者は、生命をおびやかす毒性で苦しむことが観察された(Lyss et al., Cancer Invest., 11: 2390240, 1993)。実際に、5-FU療法におけるDPDレベルの重要性は、5-FUと抗生物質ソリブジンの間の好ましくない薬物相互作用により日本で19人の死者が発生したことによって劇的に例示された(Diasio et al., Br. J. Clin. Pharmacol. 46,1-4, 1998)。その後、ソリブジンの代謝産物がDPDの強力な阻害物質であることが発見された。この治療は、患者にとって5-FUの毒性を増大させるDPD欠乏症候群のようなDPDレベルの低下を招いた(Diasio et al., Br. J. Clin. Pharmacol. 46,1-4, 1998)。
したがって、a)癌治療における5-FUプロトコールの広範な使用;b)5-FUに対する腫瘍の応答を予想する際のDPD発現の重要な役割;及びc)通常の5-FUベースの治療に対するDPD欠乏症候群を有する個体の感受性のため、化学療法に先立ってDPD発現レベルを正確に測定することが癌患者に重要な利益をもたらすことになることは明らかである。
DPDの酵素活性の測定は、活性酵素を含有するかなりの量の新鮮な組織を必要とする。不幸にして、大部分の前処理腫瘍生検は、固定されたパラフィン包埋された(FPE)組織、具体的には活性酵素を含有しないホルマリン固定パラフィン包埋組織としてのみ利用できる。さらに、生検は一般にきわめて少量の異種組織を含有するにすぎない。
RT-PCRプライマー及びプローブの配列は、凍結した組織又は新鮮な組織中でのDPDの発現を分析するために利用できる。しかしながら、これらのプライマーは、固定された組織からRT-PCRによってDPDのmRNAを定量化するには適さない。これまでの既存のプライマーは、何の結果も提供しないか又は不安定な結果を示す。これは:a)DPDのRNAが元々低いレベルであり;b)きわめて少量の組織がパラフィンに包埋されており;そしてc)RNAがパラフィン中で<100bpの短片に分解するせいであると考えられる。その結果、他の研究者達はパラフィン処理された組織でDPD発現のそのような定量化を可能にするオリゴヌクレオチド・プライマーのセットを得るために猛烈に努力したが不成功に終わった。したがって、提案された癌療法に対する早期の予測を提供するために固定された組織からDPDのmRNAを定量化する方法が求められている。DPDの酵素活性と対応するmRNA発現レベルには、良好な相関があることが示されている(Ishikawa et al, Clin. Cancer Res., 5:883-889, 1999;Johnson et al, Analyt Biochem. 278: ITS-184, 2000)ので、FPE標本でのDPDのmRNAの発現の計測は、新鮮な組織で酵素活性を測定することを必要とせずに患者のDPD発現レベルの状況を評価する方法を提供する。さらに、FPE標本は容易に顕微解剖が適用でき、その結果、間質組織が混入してない腫瘍組織においてDPD遺伝子の発現を測定することができる。
TS
チミジル酸シンターゼ(TS)は、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)のデオキシチミジン一リン酸(dTMP)への還元メチル化を触媒して、細胞内のピリミジン・ヌクレオチドのデノボ合成のための唯一の経路を提供するDNAの生合成に不可欠の酵素である(Johnston et al., 1995)。チミジル酸シンターゼは化学療法剤、最も一般的には抗葉酸剤5-フルオロウラシル(5-FU)のための標的である。結腸、頭頚部、及び乳房の癌の治療のための最も有効な単剤として、5-FUの主要な作用は細胞内のチミン・レベルの減少をもたらし、それに続いて細胞死に通じるTS活性を抑制することである。
TS発現におけるかなりの変形形態が原発性腫瘍(Johnston et al., 1995;Lenz et al., 1995)及び転移癌(Farrugia et al., 1997;Leichmann et al., 1997)の両方からの臨床腫瘍標本の間で報告された。結腸直腸癌では、例えば、正常な胃腸の粘膜組織に対する腫瘍組織内のTS発現の比は2〜10の幅がある(Ardalan and Zang, 1996)。
5-FUにさらした後にTSタンパク質の急激な誘導と新生細胞におけるTS酵素レベルの増大を示した研究によって実証されるように、チミジル酸シンターゼはまた、癌抵抗性の発生において臨床上の重要性があることが知られている(Spears et al. 1982;Swain et al. 1989)。腫瘍が5-FUなどの細胞毒性薬に反応してTSを急性に過剰発現する能力はフルオロウラシル耐性の発生に関与することがある。以前の研究は、TSタンパク質のレベルが5-FU療法の有効性と直接相関があり、タンパク質とRNA発現の間に直接相関があり(Jackman et al., 1985)、そしてTS発現が結腸直腸癌及び乳癌において強力な予後マーカであることを示した(Jackman et al., 1985;Horikoshi et al, 1992)。
進行性の転移性疾患では、RT-PCR法で定量化された高いTS mRNAと高いTSタンパク質の発現の両方が、結腸直腸(Johnston et al., 1995, Farrugia et al., 1997, Leichman et al., 1997)、胃(Lenz et al., 1995, Alexander et aL, 1995)、及び頭頚部(Johnston et al., 1997)の癌のためのフルオロピリミジン・ベースの療法に対する乏しい反応性を予測することを示した。応答する患者と応答しない患者の間に相当な重複が低いTSの範疇の中でしばしば存在していたが、中央値を上回るTSレベルをもっている患者は圧倒的に応答しない患者であった。ジヒドロピリミジン・デヒドロゲナーゼ(DPD)及びチミジン・ホスホリラーゼ(TP)発現のレベルや、複製エラーの陽性(RER+)の状況(Kitchens and Berger 1997)や、p53の状況(Lenz et al., 1997)などの他の分子的特徴と組み合わせれば、TS過剰発現の予測的価値をさらに高めることがある。ヒト腫瘍におけるTSの発現を評価した今日までの諸研究は、ヒト腫瘍におけるTS発現に基づく応答と転帰を予測する能力がTS指向型療法の恩恵を最も受けそうな患者を選ぶ機会を将来提供できることを示唆している。
本発明の1つの側面は、固定された組織標本からのRNAの抽出方法を提供することである。本発明はまた、信頼性が高く再現性のよいホルマリンで固定されたパラフィン包埋組織からのRNA分離方法も提供する。
本発明は、固定された組織サンプルからの長い断片RNAの分離方法であって、抽出溶液中で固定された組織サンプルを約44〜約62℃の範囲内の温度にて3時間以上の期間加熱し、ここで、上記抽出溶液は、約0.1mM〜約20mMの濃度にてキレート剤、及びプロテイナーゼK(好ましくは約5μgのプロテイナーゼK/400μL(12.5μgのプロテイナーゼK/mL)の濃度)を含んでなり;そして、混入DNAを取り除き、上記抽出溶液から上述のRNAを分離すること、を含んでなる方法が提供される。
特定の態様において、前記加熱は、約45〜約60℃、約48〜約58℃、約48〜約55℃、約48〜52℃に及ぶ温度、又は約50℃であってもよい。特に好ましい加熱温度は約50〜56℃である。
特定の態様において、前記期間は、4時間より長い、8時間より長い、12時間より長い、14時間より長い又は約16時間である。好ましい態様において、前記期間は約16時間である。
前記キレート剤は、EDTA、EGTA、クエン酸塩、クエン酸、サリチル酸、サリチル酸の塩、フタル酸、2,4-ペンタンジン(2,4-pentanedines)、ヒスチジン、ヒスチジノール二塩酸塩、8-ヒドロキシキノリン類、8-ヒドロキシキノリン、クエン酸又はo-ヒドロキシキノンなどの、あらゆるキレート剤であってよい。好ましい態様において、キレート剤はEDTA又はクエン酸ナトリウムである。
特定の態様において、前記キレート剤は、EDTA又はクエン酸ナトリウムであり、約2.5mM〜約5.0mMの濃度にて存在している。特定の態様において、EDTA又はクエン酸ナトリウムは、約2.5mM〜約5.0mMの濃度にて、約3.0mM〜約4.0mMの濃度にて、約3.25〜約3.75mMの濃度にて存在している。好ましい態様において、EDTA又はクエン酸ナトリウムは、約0.6mM〜約3.6mMの濃度にて存在している。別の好ましい態様において、EDTA又はクエン酸ナトリウムは約3.6mMにて存在している。
混入DNAは、これだけに限定されることなく、最初のPCI抽出、2回目のPCI抽出、若しくはその両方におけるカオトロピック剤の存在下での(DNAse添加あり若しくは添加なしの両方の)2回のフェノール/クロロホルム/イソアミルによるフェノール/クロロホルム/イソアミル(PCI)アルコール抽出、又は市販の精製カラム(すなわち、DNAseを含む若しくは含まないQiagen又はその他の製品)(すなわち、Ambion Turbo非DNAse法)など、当該技術分野で知られている方法によって取り除かれる。いくつかの態様において、これらの方法の混合物を利用してもよい。
前記カオトロピック剤は、尿素、イソチオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、グアニジンHCl、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、テトラクロロ酢酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、テトラクロロ酢酸ルビジウム、ヨウ化カリウム又はトリフルオロ酢酸セシウムなどのいずれの公知のカオトロープであってもよい。特定の態様において、前記カオトロピック剤はイソチオシアン酸グアニジニウムである。
特定の態様において、固定されたホルマリン‐固定されたパラフィン包埋組織サンプルは16年前のものかそれより新しいものである。好ましい態様において、前記組織サンプルは、5年前のものかそれより新しいものであり、そして、好ましい態様において、前記組織サンプルは2年前のものかそれより新しいものである。
特定の態様において、長い断片RNAは200ヌクレオチドより長い長さである。他の態様において、長い断片RNAは300ヌクレオチド以上である。好ましい態様において、長い断片RNAは約300〜約400ヌクレオチドの長さである。
詳細な説明
本発明は、固定された組織標本から長い断片RNAを分離するための方法を提供する。本発明の方法は、さまざまな核酸含有生物学的サンプルに好適である。本発明の方法は、固定された腫瘍組織標本からRNAを分離するのに特に有用である。生物学的サンプルは、(Bouin固定液を含めた)ホルマリン(ホルムアルデヒド)やグルタルアルデヒドなどの固定液を用いてしばしば固定される。アルコール浸漬(Battifora and Kopinski, J. Histochem. Cytochem. (1986) 34:1095)などの他の固定技術を使用して固定された組織サンプルもまた好適である。組織サンプルはまた、パラフィン内に埋め込まれてもよい。最も一般的には、組織サンプルは、ホルマリン固定されパラフィン包埋された(FFPE)サンプルとして保存される。
長い断片RNAは、100ntより長いRNAと本明細書中に規定される。好ましくは、RNAは、約150ntの長さか若しくはそれより長い、より好ましくは約200ntの長さか若しくはそれより長い、そして、最も好ましくは300ntの長さか若しくはそれより長い。特定の態様において、長い断片RNAは約400nt以上である。長い断片RNAはまた、1000nt以上の長いRNA断片を含んでもよい。
全体として、いつかの指定のインキュベーション時間の間の高温が、FFPE標本からのRNAなどの巨大分子を抽出するのに必要である。2つの一般手法:グアニジン塩などのカオトロピック剤の存在下、又はタンパク質を分解し、おそらくタンパク質マトリックスからRNAを遊離させる助けとなる酵素であるプロテイナーゼKの存在下のいずれかでのFFPEサンプルのインキュベーションが、パラフィンからのRNA抽出を達成するために登場した。これらの基本的方法の多くの変形形態が知られている。しかしながら、以前の研究又は方法は、FFPEサンプルからのより長いRNA断片の抽出を特に目指していなかった。温度の上昇、及び高温への暴露時間の延長によりRNA分子が分解するというのは、一般的に抱かれている概念である。しかしながら、温度/時間と、FFPEから抽出された高品質/長い断片RNA物質の最大収量の間の定量的相関は知られていなかったか、又は一般的に認識されていなかった。さらに、熱的効果だけが原因でRNAがはっきりと分解しない閾値温度が存在する可能性があることもまた知られていなかった。
本発明者らは、温度と時間の両方がRNAの品質に対して効果があるが、短い断片RNA(100 nt以下)に対する温度と時間の効果、対、長い断片RNA(300ntの長さの断片などの100ntの長さを越える断片)に対する温度と時間の効果に必ずしも相関関係があるわけではないことを測定した。図1Aと1Bは、FFPEサンプルを様々な温度(92、82、72及び62℃)にて様々な時間(0.5、1、2及び8時間)インキュベートした結果を提供する。Y軸はCt値である。当該Ct値は、PCR産物の量に関連し、そのためPCR反応物中に存在している標的の本来の量に関連する。前記関係は、逆数の関係である、すなわち、より大きいCt数が元々存在したより少ない標的RNAを示す。図1に示された結果は、最短の30分の時点であっても、92℃における収量がより低温に比べて低かったので、300ntのRNAが温度感受性であることを示した。しかしながら、100ntのRNAに関して、30分及び1時間のインキュベーション時間では、収量が92℃ではなく、62℃にて最も低かった。300ntの長さの種は、短いインキュベーション時間であっても、100ntの種に比べてずっと少ない(約6Ctサイクル;26=64倍)。加えて、300ntの種は、同じ条件下の100ntのRNAについての2サイクル(22=4倍の減少)の増大と比較して、82℃にて0.5時間から2時間への変更においてより熱感受性(6のCtサイクルの増加(収量の26=64倍の減少))になる。収量における変化は、全てのインキュベーション時間にわたって62℃にて最少限であり、それより低い温度でRNAが比較的安定している閾値温度の存在を示し、そして、より低温にてより長い時間のインキュベーションがより高分子量のRNAの最適な分離にとって利益を生じるだろうことを示唆する。62℃より高い温度は、経時的にRNAのかなり多くの分解を引き起し、そして、RNAの全収量はより高い温度でいくらか増強されることもある一方で、長い断片RNAの収量は減少する。
図2Aと2Bは、50℃におけるそれぞれの長さのRNA種の回収RNAの量(収量)に対する加熱時間の効果を例示する。これらの図は、全てのサイズのRNAの収量がより長い時間インキュベートした場合に増強されたことを示す。図2で例示されるように、腫瘍組織のFFPEサンプルは、プロテイナーゼKの存在下、50℃にて0.5時間〜16時間で変化する期間、加熱された。例えば、F4 0.5 1×100BPの名称は、サンプルF4が0.5時間加熱されたことを意味し、且つ、100ntの長さの断片である。全てのサイズのRNA断片の収量が、インキュベーション時間の延長に従って増大した。100nt断片の収量は10倍超(約3.5PCRサイクル)増大したが、300nt断片の収量は約26(6PCRサイクルの減少に相当する)又は短いインキュベーション時間から長いインキュベーション時間への変更により約60倍の増大があった。これは400nt断片に関しても同様に見られた。収量の増大のいくらかの減少が、1000nt断片に関して見られ(約10倍)、それは、恐らく長いインキュベーション時間におけるこのサイズのいくらかの分解によって平衡状態にあるので増大した抽出を示す可能性がある。これらのデータは、パラフィン・マトリックスからのRNA抽出のかなりの時間依存性を例示し、また、これらの条件下、(図1に示されているとおり、82℃のそれと対照的に)50℃における全てのRNA断片長の安定性も指摘する。低いインキュベーション温度が、絶対レベルだけでなく相対的レベルでも300nt以上のRNA種の収量を実質的に増大させることは明らかである(すなわち、16時間のインキュベーション時間における100bp種と300bp種の間のCtの違いがたった2倍)。
よって、図1と2を共に考慮すると、そのデータは、RNAが92℃にて熱に不安定であること、及び温度上昇が長い断片RNAに対して特に有害であることを示す。当該図面はまた、低い温度に比べて、高温にてより長いインキュベーション時間がより実質的にRNAを分解することも示す。しかしながら、図2で見られるとおり、温度がより中程度の温度に下げられた場合、当業者がまだ見えると予想するだろう時間依存性の分解は存在しない。
従って、本発明は、FFPE組織などの固定された組織サンプルからの長い断片RNAの分離方法を提供し、ここで上記組織サンプルは、約45〜約62℃の温度範囲にて3時間以上の期間加熱される。他の態様において、固定された組織サンプルは、約44〜約60℃、より好ましい態様において、約48〜約58℃、他の好ましい態様において、約48〜約55℃、他の好ましい態様において、48〜52℃、そして、最も好ましい態様において、約50℃〜約56℃の温度範囲にて加熱される。用語「約」が、熱浴、ヒート・ブロック及びPCR機器において生じることもあるわずかな実体のない温度変動を網羅するために使用され、そして、デバイスごとの若しくは研究室ごとのこうした小さな変動が有害であるか又は正味のプラスの効果をもつこともないので、それが請求項の範囲内に網羅されることを当業者は理解しているだろう。用語「約」は、方法がそれらの用途(すなわち、長い断片RNAを分離すること)のために正常に機能する限り、述べられた温度範囲に近い温度変動を請求項の範囲によって網羅することを示すように意図されることを当業者は理解しているだろう。
組織サンプルは、先に議論された温度にて、2時間又は最大20時間(及びその間のいずれかの時間)のいずれかの期間加熱される。例えば、期間は、2時間〜最大20時間のいずれかの時間の範囲内であってもよく、その範囲内のいずれかの範囲であってもよい。例えば、本発明は、約4時間〜約19時間、約5時間〜約17時間、約6時間〜約17時間、約7時間〜約16.5時間、約8時間〜約16.5時間、約9時間〜16.5時間、約10時間〜約16.25時間等の期間、加熱を提供する。好ましい態様において、前記期間は、約12時間〜17時間であり、そして、より好ましい態様において、前記期間は、約14〜約16時間である。最も好ましい態様において、前記期間は約16時間である。用語「約」は、方法がそれらの用途(すなわち、長い断片RNAを分離すること)のために正常に機能する限り、述べられた時間数に近い時間変動を請求項の範囲によって網羅することを示すように意図されることを当業者は理解しているだろう。
本発明の特に好ましい態様は、約50℃にて約16時間、(FFPEなどの)固定された組織サンプルを加熱することを含んでなり、それが長い断片RNA、特に300nt以上のRNAの収量を最大にする。先に議論し、そして図1及び2に示されているように、RNAがこの温度にて長期間の間安定していて、そして、パラフィンからの巨大分子の抽出が時間依存でもあるので、長い断片RNAの最大収量を達成するために、約16時間のインキュベーション時間が望ましい(且つ、この温度にて可能である)。
当該方法はまた、プロテイナーゼKの存在下で固定された組織サンプルを加熱することを含んでなる。先に議論したように、プロテイナーゼKは最大量のRNAを抽出するのに有用である。しかしながら、過剰なプロテイナーゼKが分離に使用されたなら、それは、マトリックスからのより多くのDNAを遊離し、RNA調製物のより大量の混入DNAをもたらす。図4は、パラフィン・マトリックスからRNAを取り出すためのインキュベーション・ステップにおけるプロテイナーゼKの量の変動の効果を示す。例えば、F4 16 100bp(1×(5μg)の量のプロテイナーゼKと一緒に16時間加熱されたサンプルF4を表す)と標識されたサンプルは、F4 16 100bp(2×=10μg)及びF4 16 100bp(4×=20μg)サンプルに比べてより低いCT値である。これはまた、300bp及び400bpのサイズのRNAでも観察された(そのサイズのRNAに関して最も低いCT閾値を持つことについてサンプルF4 16 300bp及びF4 16 400bpを参照のこと)。従って、5μgのプロテイナーゼK/400μL(12.5μgのプロテイナーゼK/mL)の濃度が好ましい。しかしながら、実施例19に示されているように、他の量のプロテイナーゼKを首尾よく使用することもできる(すなわち、0.5×、1×、2×、4×)。これだけに限定されることなく、Qiagen(登録商標)プロテアーゼ、ブロファシン(brofasin)(ブロメリア・ファスティアサ(Bromelia fastiasa)から抽出された植物プロテイナーゼ)、及びカリカ・カンダマルセンシス(carica candamarcensis)から分離されたシステイン・プロテイナーゼを含めたプロテイナーゼKに対する代替手段もまた使用できる。
2価以上の金属イオンをキレートするために使用されるEDTA(エチレンジアミン四酢酸)は、抽出バッファーの成分としてしばしば加えられる。しかしながら、抽出バッファー中にEDTAを使用する公知の方法の研究は、FFPE抽出手法における幅広いEDTA濃度を示していて、そのことは、他の人が、特定の濃度のEDTAがRNA分子に対する2価金属イオンの効果を妨げるのに存在する又は必要であることを理解していなかったことを示唆している。図3はインキュベーション時間とEDTA濃度の効果に示す。FFPE組織サンプルを、プロテイナーゼKの存在下、異なった温度(50、60及び70℃)にて16時間のインキュベーションにそのサンプルを晒したことを除いて、実施例1に記載の方法に従って処理した。加えて、抽出溶液中の4つの異なった濃度(0.1、0.5、3.6及び20mM)のEDTAが使用された。図3Aは、3.6mMのEDTAの濃度が長い断片RNAのより高い収量を与え、しばしば2倍を超えるまで収量を増加させる。図3はまた、全てのサイズのRNAの最も高い収量が50℃のインキュベーション温度にて得られたことを例示する(60℃よりも約25%多く、そして70℃より約4倍多い)。低濃度のEDTA(0.1mM)はRNAの収量を2〜3倍も減少させ、さらに、20mMの高レベルの使用は、3.6mMの濃度のものと比較して、収量は約25%減少させた。
従って、当該方法は、抽出溶液中のEDTAなどのキレート剤の使用をさらに提供する。キレート剤は、多価金属イオンの複合体を形成する能力がある周知の有機化合物である。そういうものとして、本発明の方法においてEDTA以外の他のキレート剤が利用されてもよい。キレート剤は、一般的に使用されているものから選ぶこともできる。例えば、EDTAs、EGTAs、クエン酸塩(クエン酸ナトリウムなど)、クエン酸、サリチル酸、サリチル酸の塩、フタル酸、2,4-ペンタンジン、ヒスチジン、ヒスチジノール二塩酸塩、8-ヒドロキシキノリン類、8-ヒドロキシキノリン、クエン酸及びo-ヒドロキシキノンは、当該技術分野で知られているキレート剤の代表である。好ましい態様において、EDTA又はクエン酸ナトリウムが利用される。実施例15を参照のこと。
キレート剤は、約0.1mM〜約15mMの濃度にて、及びその範囲内のいずれかの濃度又は範囲にて存在してもよい。好ましい態様は、約2.5mM〜約5.0mMの濃度のキレート剤を含んでなる。好ましい態様は、約3.0mM〜約4.0mMの濃度のキレート剤を含んでなる。より好ましい態様は、約3.25〜約3.75mMの濃度のキレート剤を含んでなる。最も好ましくは、キレート剤が約3.6mMの濃度にて存在し、そして、最も好ましい態様において、キレート剤はEDTA又はクエン酸ナトリウムであり、且つ、約0.6mM〜約3.6mMにて存在し、又は約3.6mMにて存在する。用語「約」は、方法がそれらの用途(すなわち、長い断片RNAを分離すること)のために正常に機能する限り、述べられたmM量に近い変動を請求項の範囲によって網羅することを示すように意図されることを当業者は理解しているだろう。
カオトロピック剤を用いたより高い温度にて短いインキュベーション時間と対照的に、本発明に使用されるような長いインキュベーション時間の不都合は、かなりの量のDNAがRNAと共に同時抽出されるということであり、背景技術の項に記載したRNA分析の潜在的問題点に通じる。混入DNAは、手順の抽出ステップ後にデオキシリボヌクレアーゼ(DNAse)でサンプルを処理することによってしばしば対処されている。この試薬はまた、DNAの量を減少させるという点でも有効であるが同時に、それはまた、4〜8倍まで分離されたRNAの量を減少させることもあり、既に大量ではない組織含量の標本の分析にとって重大な損失になり得る。従って、本発明はまた、DNAseの使用を必要とせず、その代わりに、プロテイナーゼKステップに続いて、2回のフェノール/クロロホルム抽出法を利用する分離方法も提供する。2回のフェノール/クロロホルム抽出は、大量のDNAを特異的に取り除くと同時に、RNAの収量を損なわないようにするカオトロピック剤を使用することを伴う。
好ましい態様において、カオトロピック剤を用いた2回のフェノール/クロロホルム抽出は、10%未満のDNAしか同時分離しない。
2回のフェノール/クロロホルム抽出ステップは、少なくとも1回目と2回目のフェノール/クロロホルム抽出を実施することを含んでなり、ここで上記2回目のフェノール/クロロホルム抽出がカオトロピック剤を含んでなる。どんなカオトロピック剤が使用されてもよい。カオトロピック剤は、ヌクレアーゼ活性を阻害することによって核酸を安定させる。例えば、知られているカオトロピック剤には、これだけに限定されることなく、とりわけ、尿素、イソチオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、グアニジンHCl、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、テトラクロロ酢酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、テトラクロロ酢酸ルビジウム、ヨウ化カリウム又はトリフルオロ酢酸セシウムが含まれる。
これだけに限定されることなく、(DNAseの使用の有無にかかわらず)Qiagen製の精製カラム及びAmbion Turbo非DNAse法などの使用を含めた、混入DNAを取り除くその他の方法を(長い断片RNAを破壊しない限り)利用してもよい。
混入DNAを取り除いた後に、エタノール又はイソプロパノール沈殿などの知られている手法を使用してRNAが分離される。
一般的な考えでは、一度、ホルマリン固定され、そして、パラフィン・マトリックス中に包埋されたRNA分子は、アーカイバルなサンプルの年齢(the age of archival samples)がもう問題でないように、無期限に安定であるように思える。全RNA(全てのサイズ及び断片)が経時的に非常にゆっくりにしか減少しないことは真実であるが、当該発明者らは、これがRNAのより長い断片についての場合ではないことを測定した。300nt以上のRNA断片の存在量は、より古いFFPE標本で劇的に減少する。図10は、1991年(サンプル1、2、3、4及び5)に固定されたサンプルが2005年(D7、D9及びF3)に固定されたサンプルより低い収量及び低い品質のRNAをもたらすことを示す。よって、長い断片RNAが重要である適用のためには、FFPE組織サンプルは5年前かそれより新しいものであるべきである。しかしながら、サンプルが16年前のものである場合にも、長い断片RNAを入手した(データ未掲載)。従って、本発明の1つの態様において、固定された標本の年齢は5年より新しいものである。より好ましい態様において、サンプルは3年前のものより新しいものであり、そして、最も好ましい態様において、サンプルは2年前のものより新しいものである。
本発明の方法によって分離されたRNAは、これだけに限定されることなく:cDNAへの逆転写;DNAチップ、オリゴヌクレオチド・マイクロアレイ等の分析のための放射性、蛍光性又はその他の手段で標識されたcDNA;アクリルアミドによる電気泳動又はアガロースゲル電気泳動法;クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、シリカゲル、逆相、又はサイズ排除クロマトグラフィー)による精製;核酸プローブとのハイブリダイゼーション;並びに機械的、超音波的又は他の手段による断片化を含めた、さまざまな目的及び分子生物学的手法に好適である。
しばしば癌の分野では、バイオマーカーの発現が療法レジメンの診断、並びに測定のための鍵となる。当該方法は、いずれかの所望のバイオマーカーのためのRNAを分離するのに使用され得る。例には、これだけに限定されることなく、Kras、MMR1、ERCC1、DPD、Gst-pi、EGFR、TS及びHER2-neuが含まれる。
従って、本発明は、長い断片RNAを分離する方法を提供するだけではなく、本明細書中に開示した方法によって分離したRNAも提供する。本発明の他の態様は、本発明の分離されたRNAを複製することによって作製したcDNAを提供する。当業者は、cDNAが分離され、そして、精製されたRNAから容易に作製されることを理解しているだろう。さらに、本発明のもう一つの側面は、マイクロアレイ又はDNAチップへの分離されたRNA又は分離されたRNAから作製したcDNAの使用を提供する。本発明はまた、遺伝子発現レベル又は遺伝子コピー数に基づく癌の検出/診断において、及び適当な化学療法レジメンを決定する分野においてしばしば生じるとき、治療又は診断を目的とした遺伝子発現又は遺伝子コピー数の解析における本発明の分離されたRNAの使用を提供する。適切なPCRプライマーを使用することで、あらゆるメッセンジャーRNAの発現レベルが本発明の方法によって測定できる。
定量的RT-PCR技術は、(免疫組織化学によって)パラフィン包埋中のタンパク質発現レベルの、(RT-PCRを使用した)同じサンプル中の遺伝子発現レベルとの比較を可能にする。
ERCC1
本発明の特定の態様は、腫瘍内のERCC1 mRNAの量がDNA白金製剤を用いて治療された患者の生存と相関があるという知見の一部に属する。高レベルのERCC1 mRNAを発現している腫瘍を患っている患者は、白金ベースの(platinum-based)化学療法に耐性であるので、よって低レベルの生存可能性しかない可能性が高いと考えられている。逆に、腫瘍が少量のERCC1 mRNAしか発現していない患者は、白金ベースの化学療法に感受性であるので、より高いレベルの生存可能性がある可能性が高い。患者の腫瘍ERCG1 mRNAの相対的な発現は、それを所定の閾値発現レベルと比較することによって判断される。
従って、本発明の1つの態様は、内部標準遺伝子発現に対する、固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)組織中のERCC1の長い断片mRNA発現の量の定量方法を提供する。当該発明者ら固定されそして包埋された組織中のERCC1発現の正確な評価を可能にするオリゴヌクレオチド・プライマーを開発した。本発明は、オリゴヌクレオチド・プライマー、ERCC1-504F(配列番号1)、ERCC1-574R(配列番号2)、又はそれらと実質的に同一であるオリゴヌクレオチド・プライマーの使用を提供し、好ましくは、それらは、(好ましくは本発明の抽出方法を使用して)固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)腫瘍サンプルから抽出された長い断片RNAと一緒に使用される。このERCC1遺伝子発現の計測は、その後、白金ベースの化学療法の予後診断に使用できる。例えば、本明細書中に援用される米国特許第6,573,052号を参照のこと。
そういうものとして、本発明の1つの態様は、第1に、FPEのサンプルからの長い断片RNAの抽出、そして、第2に、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を実施するための1組のオリゴヌクレオチド・プライマー、好ましくはオリゴヌクレオチド・プライマーの組ERCC1-504F(配列番号1)とERCC1-574R(配列番号2)又はそれに実質的に同一であるオリゴヌクレオチドを使用することによるサンプル中のERCC1 mRNAの含有量の測定に関与する。好ましくは、RNAは、FPE細胞から本明細書中に開示された方法のいずれかによって抽出される。
当該方法は、患者からのあらゆるタイプの組織に適用できる。腫瘍組織の耐性の検査のために、その腫瘍組織を調べることが望ましい。好ましい態様において、腫瘍が得られる患者からの正常組織の一部もまた調べられる。正常組織が白金ベースの化学療法化合物に耐性であると予想される、すなわち、高レベルのERCC1遺伝子発現を示す患者は、腫瘍がこうした化合物に感受性であると予想される、すなわち、低レベルのERCC1遺伝子発現を示す患者は、その後、より多量の化学療法組成物を用いて治療されてもよい。
閾値レベルより低いERCC1遺伝子発現のレベルを示す患者は、閾値レベルより高いERCC1遺伝子発現のレベルを発現する腫瘍を患っている患者に比べて、優れた生存可能性を有することが予想されるので、より多量の化学療法組成物を用いて治療できる。あるいは、臨床医は、閾値レベルより高いERCC1遺伝子発現の腫瘍発現レベルを有する患者が、彼らの低い予測生存可能性をもたらす化学療法からいずれの顕著な恩恵も得られないことがあることを判定してもよい。
本発明の方法は、広範な腫瘍タイプに適用されることができる。これは、個々の「腫瘍発現プロファイル」の作成を可能にし、それによりERCC1の発現レベルが個々の患者サンプルにおいて決定され、そして様々な化学療法剤に対する応答が予測される。好ましくは、ERCC1に関する本発明の方法は、固形腫瘍、最も好ましくは非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍に適用される。特定の腫瘍タイプへの本発明のいくつかの態様の適用に関して、特定のERCC1発現と白金ベースの化学療法に対する臨床的耐性の相関関係を可能にするデータセットを集めることによって、ERCC1遺伝子発現レベルと生存可能性との相関を確認することが望ましい。
本明細書中に規定される、ERCC1に関する「所定の閾値レベル」は、腫瘍が白金ベースの化学療法レジメンに耐性である可能性が高いことがわかっているレベルを上回る、ERCC1腫瘍発現の補正された相対的レベルである。この閾値レベルより低い腫瘍発現レベルは、白金ベースの化学療法レジメンに感受性の腫瘍に見られる可能性が高い。白金ベースの化学療法レジメンに応答する腫瘍に共通する、ERCC1:β-アクチンの比として表されるERCC1の補正された相対的な発現の範囲は、約6.7×10-3未満である。白金ベースの化学療法レジメンに応答しない腫瘍は、約6.7×10-3を上回る相対的な発現のERCC1:β-アクチン比を有する。実施例7を参照のこと。
ERCC1に関する「所定の閾値レベル」は、白金ベースの化学療法レジメンを受ける患者が低い生存可能性を有する可能性が高いレベルを上回る、腫瘍の補正された相対的なERCC1発現レベルとさらに規定される。白金ベースの化学療法レジメンを受ける患者におけるこの閾値レベルより低い腫瘍の補正された相対的なERCC1発現レベルは、高い患者の生存可能性に相関する。ERCC1:β-アクチンの比として表される補正された相対的なERCC1発現の閾値は、約6.7×10-3である。図11、実施例7を参照のこと。しかしながら、本発明は、内部標準遺伝子としてのβ-アクチンの使用に限定されない。
RNAは、本明細書中に議論される当該発明の方法のいずれかによってFPE組織から抽出される。本明細書中に記載の固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)組織サンプルは、保存できるか又はアーカイバルな組織サンプルを指す。RNAは、まず、脱パラフィンされた、アーカイバルな病理サンプル又は生検サンプルから分離できる。代表的な脱パラフィン方法は、例えば、キシレンなどの有機溶剤でパラフィン処理サンプルを洗浄することを伴う。脱パラフィンしたサンプルは、低級アルコールの水性溶液により再水和され得る。好適な低級アルコールには、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールが含まれる。脱パラフィンされたサンプルは、例えば、濃度を下げた低級アルコール溶液による連続した洗浄によって再水和されてもよい。あるいは、前記サンプルは、同時に脱パラフィンされて、そして再水和される。その後、RNAがサンプルから抽出される。
新鮮な、凍結された又は固定されたものからの精製した全mRNAからのERCC1 mRNAの定量は、好ましくは、例えば当該技術分野で一般的な逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用することで実施される。ERCC1 mRNAを定量する他の方法は、例えば、マルチプレックスPCRで有用な分子ビーコン及び他の標識プローブの使用を含む。さらに、本発明は、例えば、Invader(登録商標)アッセイ(Third Wave Technologies, Inc.)のものに類似した蛍光標識プローブを利用する、PCRを含まないシステムの使用によりERCC1 mRNAの定量を構想する。最も好ましくは、ERCC1 cDNA、及び内部標準又はハウスキーピング遺伝子(例えば、β-アクチン)の定量は、蛍光ベースのリアルタイムの検出法(ABI PRISM 7700若しくは7900 Sequence Detection System[TaqMan(登録商標)]、Applied Biosystems, Foster City, Calif.)、又はHeidら(Genome Res 1996; 6:986 994)及びGibsonら(Genome Res 1996; 6:995 1001)によって説明された類似のシステムを用いておこなわれる。ABI7700(TaqMan(登録商標)装置)の出力は、Ct’s又は「サイクル閾値」で表される。TaqMan(登録商標)システムにより、サンプル中でより多数の標的分子を有する高度に発現された遺伝子は、より少ない標的分子しかもたない低い相対的な発現の遺伝子(より高いCt)より少ないPCRサイクルによってシグナルを生じる(より低いCt)。
本明細書中に使用されるとき、「ハウスキーピング」遺伝子又は「内部標準」は、その存在が標的mRNA(これだけに限定されることなくERCC1、TS、DPD、HER2-neu、Gst-pi、RRM1、Krasなど)の評価を可能にするあらゆる構成的又は全体的に発現している遺伝子を含むことを意味する。そのような評価は、遺伝子転写の総合的な構成的レベルの決定及びRNA回収の変動についての対照を含んでなる。「ハウスキーピング」遺伝子又は「内部標準」には、これだけに限定されることなく、シクロフィリン遺伝子、β-アクチン遺伝子、トランスフェリン受容体遺伝子、GAPDH遺伝子等が含まれる。最も好ましくは、内部標準遺伝子は、Eads et al., Cancer Research 1999; 59:2302 2306に記載のとおりβ-アクチン遺伝子である。
RNA回収における変動についての対照は、「較正用RNA」の使用を必要とする。「較正用RNA」は、正確にあらかじめ定量した対照RNAの利用可能な供給源のいずれかであることが意図される。好ましくは、ヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat #735017)が使用される。
本明細書中に使用されるとき、「未補正の遺伝子発現(UGE)」は、TaqMan(登録商標)装置によって作り出された内部標準遺伝子に対する標的遺伝子発現の出力値を指す。ERCC1のUGEの決定に使用される方程式は、実施例6に示され、そして、図12のサンプル計算を用いて例示される。
本願発明のさらなる側面は、非TaqMan(登録商標)技術からもたらされた「既知の相対的な遺伝子発現」値を用いた、TaqMan(登録商標)装置から得られた未補正の遺伝子発現(UGE)値の標準化方法を提供する。好ましくは、既知の非TaqMan(登録商標)が導き出した相対的なERCC1:β-アクチン発現値は、組織サンプルに由来するTaqMan(登録商標)が導き出したERCC1 UGE値を用いて標準化される。
本明細書中で使用されるとき「補正された相対的なERCC1発現」は、UGEをERCC1特有の補正係数(KERCC1)を乗じることにより、内部標準遺伝子と相対的なERCC1発現レベルの既知の範囲と比較可能な値をもたらすことで標準化したERCC1発現を指す。実施例6及び図12は、これらの計算を詳細に例示する。これらの数値は、特定のサンプルの「補正された相対的なERCC1発現」が「所定の閾値」レベルを上回るか下回るかどうかの決定を可能にする。β-アクチン・レベルに対する補正された相対的なERCC1発現の所定の閾値レベルは、約6.7×10-3である。ERCC1、内部標準β-アクチン、及び較正用ヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)に特有なKERCC1は、1.54×10-3である。
「既知の相対的な遺伝子発現」値は、以前に分析した組織サンプルから導き出され、そして、構成的に発現している内部標準遺伝子(例えば、β-アクチン、GAPDHなど)に対する標的遺伝子のRT-PCRシグナルの比に基づく。好ましくは、こうした組織サンプルは、ホルマリン固定されそして、パラフィン包埋された(FPE)のサンプルであり、且つ、RNAは、本明細書中に記載した方法に従ってそれらから抽出される。内部標準に対する遺伝子発現を定量するために、当該技術分野で知られている標準的な定量的RT-PCR技術が使用される。Pre-TaqMan(登録商標)技術PCR反応は、一定のサイクル数(すなわち30)で実施され、そして、終点の値が各サンプルについて報告される。これらの値は、その後、ERCC1発現対β-アクチン発現の比として報告される。Reedらに対する米国特許番号第5,705,336号を参照のこと。
KERCC1は、β-アクチン以外の内部標準遺伝子、及び/又はヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)とは異なる較正用RNAに関して決定されることもある。そのために、当業者は、特定の内部標準遺伝子に対するERCC1発現レベルが既に決定された(すなわち、「既知の相対的な遺伝子発現」)組織サンプルに対し、内部標準遺伝子と較正用RNAの両方を較正しなければならない。好ましくは、こうした組織サンプルは、ホルマリン固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)サンプルであり、且つ、RNAは、本明細書中に開示された方法を使用することで抽出される。そのような決定は、当該技術分野で周知の標準的なpre-TaqMan(登録商標)、定量的RT-PCR技術を使用することでなされ得る。そのような決定により、こうしたサンプルには、実施例6に記載のとおり、新しい内部標準及び/又は較正用RNAに特有の新しいKERCC1の決定に有用なERCC1の「既知の相対的な遺伝子発現」レベルをもつ。
一般的に、ERCC1遺伝子領域に隣接する任意のオリゴヌクレオチド対が、本発明の方法を実施するために使用できる。本発明における使用のための、ストリンジェントな条件下でERCC1遺伝子領域にハイブリダイズするプライマーは、20〜1000塩基対、好ましくは100〜400塩基対、最も好ましくは約200〜400塩基対の産物を増幅するだろう。
本発明は、FPE組織における特に正確なERCC1発現の評価を可能にする特異的なオリゴヌクレオチド・プライマー対、及びそれと実質的に同一であるオリゴヌクレオチド・プライマーを提供する。好ましいオリゴヌクレオチド・プライマーには、ERCC1-504F(配列番号1)及びERCC1-574R(配列番号2)(本明細書中でオリゴヌクレオチド・プライマー対ERCG1とも呼ばれる)、そしてそれと実質的に同一のオリゴヌクレオチド・プライマーが含まれる。オリゴヌクレオチド・プライマー、ERCC1-504F(配列番号1)及びERCC1-574R(配列番号2)は、ストリンジェントな条件下でERCC1遺伝子にハイブリダイズするので、いずれかのmRNA分離方法、特に本明細書中に開示された方法によってFPE細胞から抽出されたRNAを使用し、ERCC1 mRNAレベルを計測するのに特に有効であることが示された。
核酸に関係して本明細書中に使用されるとき、「実質的に同一」は、ストリンジェントな条件下での標的へのハイブリダイゼーションを意味し、そして比較された場合に、核酸のセグメント又はそれらの相補鎖が、適切なヌクレオチド挿入物及び欠失物と、適切に整列されたとき、少なくとも約60%、一般に少なくとも約70%、より一般的には少なくとも約80%、通常少なくとも約90%のヌクレオチドが、より通常少なくとも約95〜98%のヌクレオチドが同じであることも意味する。選択的なハイブリダイゼーションは、そのハイブリダイゼーションが特異性の完全な欠如よりも選択的である場合に存在する。Kanehisa, Nucleic Acids Res., 12:203213(1984)を参照のこと。
本願発明は、ERCC1-504F(配列番号1)、その相補配列、又はERCC1-574R(配列番号2)若しくはその相補配列のオリゴヌクレオチド・プライマー配列の全体又は一部に(本明細書中に規定される)ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする実質的に同一のオリゴヌクレオチドを含む。
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、高度に相補的な、すなわち、実質的に類似する核酸配列のみがハイブリダイズする。好ましくは、こうした条件は、20の隣接ヌクレオチドのうちに4以上のミスマッチをもつ、より好ましくは20の隣接ヌクレオチドのうちに2以上のミスマッチをもつ、最も好ましくは20の隣接ヌクレオチドのうちに1以上のミスマッチをもつ核酸のハイブリダイゼーションを阻止する。
核酸のハイブリダイズする部分は、通常、少なくとも10(例えば15)ヌクレオチドの長さである。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は、本明細書中に提供されたオリゴヌクレオチド・プライマー又はその相補配列の全体又はその一部の配列に少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%同一である。
ストリンジェントな条件下の核酸サンプルへのオリゴヌクレオチド・プライマーのハイブリダイゼーションを以下に規定する。核酸二本鎖又はハイブリッドの安定性は、融解温度(Tm)として表現され、それは、プローブが標的DNAから解離する温度である。この融解温度は、必要なストリンジェンシー条件を規定するのに使用される。配列が、同一であるというよりむしろプローブと実質的に同一であると同定された場合、特定な濃度の塩(例えばSSC又はSSPE)により相同的なハイブリダイゼーションのみ起こる最低温度を最初に確立するのに有用である。次に、1%のミスマッチングがTmの1℃の低下をもたらすと仮定して、ハイブリダイゼーション反応における最終的な洗浄の温度をそれに応じて低下する(例えば、プローブとの>95%の同一性を有する配列が求められる場合、最終的な洗浄温度は5℃低下する)。実際には、Tmの変化は、1%のミスマッチあたり0.5℃〜1.5℃であってもよい。
ストリンジェントな条件は、5×SSC/5×Denhart溶液/1.0%のSDS中、68℃でのハイブリダイズ、0.2×SSC/0.1%のSDS中、室温での洗浄を伴う。中程度にストリンジェントな条件は、3×SSC中、42℃での洗浄を含む。塩濃度及び温度のパラメーターは、プライマーと標的核酸との間の同一性の至適レベルを達成するために変化することがある。こうした条件に関するさらなる手引きは、当該技術分野で容易に入手可能であり、例えば、Sambrook, Fischer and Maniatis, Molecular Cloning, a laboratory manual, (2nd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1989)及びF. M. Ausubel et al eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons (1994)である。
本明細書中に開示されているオリゴヌクレオチド・プライマーは、固定された、又は固定されパラフィン包埋された組織、並びに凍結された、又は新鮮な組織中のERCC1遺伝子発現の正確な評価を可能にすることができる。このことは、FPEサンプルから得られたRNAが、新鮮な、又は凍結の組織のものと比較してさらに断片化されているという事実にもかかわらず起こる。よって、これまで固定された組織を使用したERCC1遺伝子発現のアッセイ方法が存在しなかったが、本発明の方法は、FPE組織中のERCG1発現レベルのアッセイへの使用に好適である。
腫瘍中で発現されるERCC1 mRNAの量の計測から、当業者は、特定の遺伝毒性物質に対する腫瘍の臨床的耐性に関する予後診断、又は特定の遺伝毒性物質を受けた患者の生存可能性をもたらすことができる。代表的な白金ベースの化学療法、又は同じようなタイプのDNA損傷を引き起こす化学療法が、遺伝毒性物質である。
白金ベースの化学療法は、DNAの「かさばった付加物(bulky adduct)」を生じる。ここで、主な効果は、二重らせんの三次元立体構造を歪めることである。こうした化合物は、単独で、又はゲムシタビン(Gem)若しくは5-フルオロウラシル(5-FU)などの他の化学療法剤と一緒に投与されることになっている。
白金ベースの遺伝毒性化学療法剤は、共有結合DNA付加物を形成する重金属配位化合物を含んでなる。一般的に、これらの重金属化合物は、DNAろ共有結合して、適切な部分にcis-1,2-鎖内ジヌクレオチド付加物を形成する。一般的に、このクラスは、cis-ジアミンジクロロ白金(II)(シスプラチン)として表されており、そして、cis-ジアミン-(1,1-シクロブタンジカルボキシラート)白金(II)(カルボプラチン)、cis-ジアミノ-(1,2-シクロヘキシル)ジクロロ白金(II)、及びcis-(1,2-エチレンジアミン)ジクロロ白金(II)が含まれる。白金製剤の第一薬剤には、前述の代表的な化合物の類似体又は誘導体のいずれかが含まれる。
現在までのところ、白金配位化合物で対処することができる腫瘍には、精巣、子宮内膜、子宮頚部、胃、扁平上皮細胞、副腎皮質の腫瘍、並びに髄芽腫及び神経芽細胞腫に伴う小細胞肺癌が含まれる。trans-ジアミンジクロロ白金(II)(trans-DDP)には臨床的に実用性がない。なぜなら、そのDNA付加物が迅速に修復されると考えられるからである。本明細書中で、化学療法剤としてtrans-DDPを使用することにより、非選択細胞における毒性が低く、そして、選択された細胞における毒性が比較的に高い化合物が提供されるだろう。好ましい態様において、白金化合物はシスプラチンである。
多くの化合物が、白金ベースの化学療法剤と共に通常与えられる。例えば、BEP(ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン)が精巣癌に使用され、MVAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチン)が膀胱癌に使用され、MVP(マイトマイシンC、ビンブラスチン、シスプラチン)が非小細胞肺癌治療に使用される。多くの研究により白金含有薬剤との間で相互作用が証明されている。例えば、白金ベースの化学療法中に潜在的に含まれている多くの薬物に関して、治療薬相乗作用が報告されている。このことに関する最近の参考文献の非常に短いリストには、以下の文献:Okamoto et al., Urology 2001; 57:188-192.;Tanaka et al., Anticancer Research 2001; 21:313-315;Slamon et al., Seminars in Oncology 2001; 28:13-19;Lidor et al., Journal of Clinical Investigation 1993; 92:2440-2447;Leopold et al., NCI Monographs 1987; 99-104;Ohta et al., Cancer Letters 2001; 162:39-48;van Moorsel et al., British Journal of Cancer 1999; 80:981-990が含まれる。
他の遺伝毒性物質は、持続的なゲノム病変を形成するものであり、癌の臨床管理における化学療法剤として使用するために好ましいものである。遺伝毒性物質により誘発されたDNA損傷の細胞性の修復の速度、及び細胞分裂周期による細胞増殖の速度は、遺伝毒性物質療法の転帰に影響する。細胞ゲノム中の未修復の病変は、DNA複製を妨げるか、新たに合成されたDNAの複製の忠実度を損なわせるか、又は細胞の生存のために必要とされる遺伝子の発現を妨げる可能性がある。よって、遺伝毒性物質の細胞毒性(細胞死に寄与する傾向)の1つの決定要因は、そこから形成されたゲノム病変の細胞修復に対する抵抗性である。持続的なゲノム病変、例えば細胞が少なくとも細胞周期に入るまでゲノムに残る病変を形成する遺伝毒性物質は、一般的に、一過性で容易に修復されるゲノム病変を形成する作用物質より効果的な細胞毒である。
多くの癌を治療するのに使用され、そして、ERCC1発現レベルに影響を与える遺伝毒性化合物の一般的なクラスは、DNAアルキル化剤とDNAインターカレート剤である。ソラレンは、乾癬、白斑、真菌感染症、及び皮膚T細胞リンパ腫などの皮膚疾患の光化学療法処置に有用であることが知られている遺伝毒性化合物である。Harrison’s Principles of Internal Medicine, Part 2 Cardinal Manifestations of Disease, Ch. 60 (12th ed. 1991)。そのメンバーがDNAのアルキル化又はDNA内にインタカレートし得る、遺伝毒性化合物の別の一般的なクラスには、合成及び天然の供給源由来の抗生物質が含まれる。本明細書中で特に興味深いものは、抗新生物抗生物質であり、それには、これだけに限定されることなく、以下により表される化合物のクラス:アムサクリン、アクチノマイシンA、C、D(あるいはダクチノマイシンとして知られる)又はF(あるいはKS4);アザセリン;ブレオマイシン;カルミノマイシン(カルビシン)、ダウノマイシン(ダウノルビシン)、又は14-ヒドロキシダウノマイシン(アドリアマイシン又はドキソルビシン);マイトマイシンA、B又はC;ミトキサントロン;プリカマイシン(ミトラマイシン)等が含まれる。
一般的に使用され、且つ、DNAをアルキル化する遺伝毒性物質のさらに別の一般的なクラスは、ハロエチルニトロソ尿素、特にクロロエチルニトロソ尿素を含むものである。この広範なクラスの代表的なメンバーには、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、及びストレプトゾトシンが含まれる。ハロエチルニトロソ尿素の第一薬剤には、前記代表的な化合物のいずれかの類似体又は誘導体であり得る。
そのメンバーがDNAをアルキル化する、遺伝毒性物質のさらに別の一般的なクラスには、サルファーマスタード及びナイトロジェンマスタードが含まれる。これらの化合物は、主としてグアニンのN7原子において共有結合付加物を形成することによってDNAに損害を与える。この広範なクラスの代表的なメンバーには、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、メクロロエタミン、ノベンバイシン、トロホスファミド等が含まれる。ゲノム病変の遺伝子座として1つ以上の所定のゲノム標的を選択することが所望であれば、選択された細胞のゲノム内の特定の配列と共有結合的に又は非共有結合的に相互作用するオリゴヌクレオチド又はその類似体もまた、遺伝毒性物質として使用される。そのメンバーがDNAをアルキル化する、作用物質の別のクラスには、エチレンイミンとメチルメラミンが含まれる。これらのクラスには、例えばアルトレタミン(ヘキサメチルメラミン)、トリエチレンホスホルアミド(TEPA)、トリエチレンチオホスホルアミド(ThioTEPA)、及びトリエチレンメラミンが含まれる。
DNAアルキル化剤のさらなるクラスには、ブスルファンに代表されるスルホン酸アルキル;ベンゾデパに代表されるアジニジン(azinidines);及び、例えば、ミトグアゾン、ミトキサントロン、及びプロカルバジンに代理されるその他のものが含まれる。これらのクラスのそれぞれには、それぞれの代表的な化合物の類似体及び誘導体が含まれる。
DPD
当該発明者らは、組織中のDPD発現の正確な評価を可能にするオリゴヌクレオチド・プライマー及びそれと実質的に同一のオリゴヌクレオチド・プライマーを開示する。これらのオリゴヌクレオチド・プライマーDPD3a-51F(配列番号5)及びDPD3a-134R(配列番号6)(本明細書中でオリゴヌクレオチド・プライマー対DPD3Aとも呼ばれる)、並びにオリゴヌクレオチド・プライマーDPD3b-651F(配列番号7)及びDPD3b-736R(配列番号8)(本明細書中でオリゴヌクレオチド・プライマー対DPD3Bとも呼ばれる)(本明細書中に援用される米国特許第7,005,278号を参照のこと)は、固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)腫瘍標本におけるDPD遺伝子発現を計測するのに使用された場合、特に有効である。
本願発明には、(本明細書中に規定される)ストリンジェントな条件下、オリゴヌクレオチド・プライマー配列、DPD3A-51F(配列番号5)、その相補配列、DPD3A-134R(配列番号6)又はその相補配列の全部又は一部にハイブリダイズする実質的に同一のオリゴヌクレオチドが含まれる。さらに、本願発明はまた、(本明細書中に規定される)ストリンジェントな条件下、オリゴヌクレオチド・プライマー配列、DPD3b-651F(配列番号7)、その相補配列、DPD3b-736R(配列番号8)、又はその相補配列の全部又は一部とハイブリダイズする実質的に同一のオリゴヌクレオチドも含まれる。
核酸のハイブリダイズする部分は、通常、少なくとも10(例えば15)ヌクレオチドの長さである。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は、オリゴヌクレオチド・プライマーDPD3A-51F(配列番号5)、その相補配列、DPD3A-134R(配列番号6)又はその相補配列の一部又は全部の配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%同一である。さらに、核酸のハイブリダイズする部分は、通常、少なくとも10(例えば15)ヌクレオチドの長さである。ハイブリダイズする核酸のハイブリダイズする部分は、オリゴヌクレオチド・プライマーDPD3b-651F(配列番号7)、その相補配列、DPD3b-736R(配列番号8)又はその相補配列の一部又は全部の配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%同一である。
本発明のこの側面は、本明細書中に記載した方法を使用した信頼性が高い、FPE標本からのRNA抽出方法を使用すること、そして第2に、逆転写酵素によるポリメラーゼ連鎖反応を行うためのオリゴヌクレオチド・プライマー、すなわちオリゴヌクレオチド・プライマー対、DPD3A(DPD3a-51F(配列番号5)とDPD3a-134R(配列番号6))若しくはそれと実質的に同一であるオリゴヌクレオチド、又はDPD3B(DPD3b-651F(配列番号7)とDPD3b-736R(配列番号8))若しくはそれと実質的に同一であるオリゴヌクレオチドを使用して標本中のDPD mRNA含量を決定することにかかわる。1999年12月20日を出願された米国特許出願第09/469,338号を参照のこと、そして、それを本明細書中に援用する。
DPD mRNAの発現は、5-FUベースの化学療法に対する臨床的耐性と相関する。具体的にはDPD mRNAの高レベルの発現は、5-FUベースの化学療法に対する耐性と相関する。
本発明の方法は、広範な腫瘍タイプに適用される。これは、個々の「腫瘍発現プロファイル」の作成を可能にし、それによりDPD発現レベルが個々の患者サンプルにおいて決定され、そして様々な化学療法剤に対する応答が予測され得る。最も好ましくは、本発明の方法は、気管支肺胞性、小腸、又は結腸の腫瘍に対して適用される。特定の腫瘍タイプへの本発明のいくつかの態様の適用に関して、測定された特定のDPD発現のパラメーターと5-FUベースの化学療法に対する耐性との相関関係のデータセットを集めることによって、計測値と臨床的耐性との相関を確認することが望ましい。
当該方法は、あらゆるタイプの組織に適用されることができる。例えば、腫瘍組織の耐性を検査するために、その腫瘍組織を調べることが好ましい。好ましくは、その腫瘍が得られる患者からの正常組織の一部もまた、調べることが望ましい。正常組織が5-FUベースの化学療法化合物に対して耐性であるが、腫瘍がこうした化合物に対して感受性であると予想される患者は、次に、より多量の化学療法組成物で治療することができる。
本発明の方法には、患者の腫瘍からの細胞サンプルを得るステップが含まれる。固形若しくはリンパ球様の腫瘍、又はその一部が、患者から外科的に摘出される。摘出直後に組織サンプルからRNAを抽出することができない場合は、次に、サンプルは、固定されるか又は凍結されてもよい。その後、それはRNAを得るために使用されるだろう。摘出した組織の凍結した又は新鮮なサンプルから抽出され、そして分離されたRNAは、当該技術分野で知られているいずれかの方法によっても抽出される、例えば、Sambrook, Fischer and Maniatis, Molecular Cloning, a laboratory manual, (2nd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1989)。好ましくは、抽出工程の間、RNAの分解を避けるように注意が払われる。
あるいは、患者から得られた組織は、好ましくは、例えばホルマリン(ホルムアルデヒド)又はグルタルアルデヒド処理によって固定されてもよい。アルコール浸漬によって固定された生物学的サンプルもまた、本発明で構想される。固定された生物学的サンプルは、しばしば脱水され、そして、パラフィン又は当業者に知られている他の固形支持体内に包埋される。こうした固形支持体は、有機溶剤で除去可能であると考えられ、これはその後の保存された組織の再水和を可能にする。本明細書中に記載した固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)組織標本は、保存できるか又はアーカイバルな組織サンプルを指す。RNAは、本明細書中に記載した方法のいずれかによってFPE細胞から抽出される。
新鮮な、凍結された又は固定されたものからの精製した全mRNAからのDPD mRNAの定量は、好ましくは、例えば当該技術分野で一般的な逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用することで実施される。DPD mRNAを定量する他の方法は、例えば、マルチプレックスPCRで有用な分子ビーコン及び他の標識プローブの使用を含む。さらに、本発明は、例えば、Invader(登録商標)アッセイ(Third Wave Technologies, Inc.)のものに類似した蛍光標識プローブを利用する、PCRを含まないシステムの使用によりDPD mRNAの定量を構想する。最も好ましくは、DPD cDNA、及び内部標準又はハウスキーピング遺伝子(例えば、β-アクチン)の定量は、蛍光ベースのリアルタイムの検出法(ABI PRISM 7700若しくは7900 Sequence Detection System[TaqMan(登録商標)]、Applied Biosystems, Foster City, Calif.)、又はHeidら(Genome Res 1996; 6:986 994)及びGibsonら(Genome Res 1996; 6:995 1001)によって説明された類似のシステムを用いておこなわれる。ABI7700(TaqMan(登録商標)装置)の出力は、Ct’s又は「サイクル閾値」で表される。TaqMan(登録商標)システムにより、サンプル中でより多数の標的分子を有する高度に発現された遺伝子は、より少ない標的分子しかもたない低い相対的な発現の遺伝子(より高いCt)より少ないPCRサイクルによってシグナルを生じる(より低いCt)。
本発明の1つの側面は、DPD mRNAの相対量が化学療法剤5-FUに対する耐性と相関するという知見の一部に属する。高レベルのDPD mRNAを発現する腫瘍が5-FUに対して耐性である可能性が高いことが、本明細書中でわかった。逆に、少量のDPD mRNAしか発現しない腫瘍は、5-FUに対して感受性である可能性が高い。患者の腫瘍DPD mRNAの発現は、DPD発現の所定の閾値発現レベルとそれを比較することによって判断される。
本明細書中で使用されるとき、DPDに関連する「未補正の遺伝子発現(UGE)」は、TaqMan(登録商標)装置によって作り出された、内部標準遺伝子に対するDPD発現の出力値を指す。UGEを決定するのに使用される方程式は、実施例8に示され、そして、図15のサンプル計算を用いて例示される。
本願発明のさらなる側面は、非TaqMan(登録商標)技術からもたらされた以前に公表された相対的な遺伝子発現値を用いた、TaqMan(登録商標)装置から得られた未補正の遺伝子発現(UGE)値の標準化方法を提供する。好ましくは、この非TaqMan(登録商標)で得られた、Salonga, et al., Clinical Cancer Research, 6:1322-1327, 2000(その全体を本明細書中に援用する)によって以前に公表された相対的なDPD:β-アクチン発現値は、組織サンプルからのDPD UGEを用いて標準化される。
本明細書中で使用されるとき、「補正された相対的なDPD発現」は、UGEにDPD特有の補正係数(KDPD)を乗じて以前に公表した値の範囲と比較することができる値を得ることによって標準化されたDPD発現を指す。図15にこれらの計算を詳細に例示する。
「以前に公表された」相対的な遺伝子発現の結果は、構成的に発現されている遺伝子(β-アクチン)に対する標的遺伝子のRT-PCRシグナルの比に基づく。pre-TaqMan(登録商標)技術研究において、PCR反応は一定のサイクル数(すなわち30)で実施され、そして、終点値が各サンプルについて報告された。これらの値は、その後、DPD発現対β-アクチン発現の比として報告された。Salonga, et al., Clinical Cancer Research, 6:1322-1327,2000、ここで、その全体を本明細書中に援用する。
本明細書中に規定される、相対的なDPD発現の「所定の閾値」レベルは、腫瘍が5-FUに耐性である可能性が高いことがわかっているレベルを上回るDPD発現レベルである。この閾値レベルより低い発現レベルは、5FUに感受性である腫瘍にみられる可能性が高い。5-FUベースの化学療法レジメンに応答する腫瘍に該当する腫瘍に共通する相対的なDPD発現の範囲は、約0.6×10-3〜約2.5×10-3未満である(約4.2倍の幅)。5-FUベースの化学療法レジメンに応答しない腫瘍は、相対的なDPD発現が約0.2×10-3〜約16×10-3(約80倍の幅)である。相対的なDPD発現が2.0×10-3を超える、好ましくは約2.5×10-3を超える場合、腫瘍は一般的に5-FU治療に応答しない。これらの数値は、特定のサンプルの「補正された相対的なDPD発現」が「所定の閾値」レベルを上回るか又は下回るかの決定を可能にする。補正された相対的なDPD発現レベルの閾値レベルは、約2.0×10-3〜約2.5×10-3である。
本発明の方法は、広範な組織及び腫瘍タイプに適用可能であり、したがって、患者の治療の評価のために、そして乳房、頭頚部、肺、食道、結腸直腸などを含めた範囲の癌の診断又は予後診断ツールとして使用することができる。好ましくは、当該方法は、気管支肺胞性、小腸、又は結腸の癌の予後診断に適用される。
腫瘍で発現するDPD mRNAの量の計測から、当業者は、5-FUベースの化学療法に対する腫瘍の臨床的耐性に関する予後診断をおこなうことができる。「5-FUベースの化学療法」は、5-FU、その誘導体の単独での、あるいはロイコボリンなどの他の化学療法剤との、又はウラシル、5-エチニルウラシル、ブロモビニルウラシル、チミン、ベンジロキシベンジルウラシル(BBU)若しくは5-クロロ-2,4-ジヒドロキシピリジンなどのDPD阻害剤との投与を含んでなる。さらに、式(I)の5’-デオキシ-シチジン誘導体の5-FU若しくはその誘導体との同時投与が、5-FU若しくはその誘導体とDPD阻害剤5-エチニルウラシルとの併用と比べて、腫瘍組織への化学療法剤の選択的デリバリーを顕著に改善し、又はヒトの癌の異種移植モデルにおいて顕著に改善された抗腫瘍活性を示すことがわかっている。
ERCC1/TS
それぞれ、本発明は、TS及びERCC1 mRNAの量が5-FU及びオキサリプラチン薬剤に対する耐性と相関があるという知見の一部に属する。高レベルのTS及びERCC1 mRNAを発現している腫瘍は、白金ベースの化学療法に耐性である可能性があると考えられている。逆に、低量のTS及びERCC1 mRNAしか発現しないそれらの腫瘍は、白金ベースの化学療法に感受性である可能性が高い。患者の腫瘍のTS及びERCC1 mRNA発現特性は、それを所定の閾値発現レベルと比較することによって判断される。
本発明は、内部標準遺伝子発現に対する、固定されたか、又は固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)組織中のTS及びERCC1 mRNA発現の量の定量方法を提供する。先に議論したERCC1プライマーに加えて、当該発明者らは、固定されたか、又は固定されそして包埋された組織中のTS遺伝子発現の正確な評価を可能にするオリゴヌクレオチド・プライマーを開発した。本発明はまた、オリゴヌクレオチド・プライマー、TS-763F(配列番号9)、TS-825R(配列番号10)、又はそれらと実質的に同一であるオリゴヌクレオチド・プライマーを提供し、好ましくは、それらは、固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)腫瘍サンプルから抽出されたRNAと一緒に使用される。本明細書中に援用する米国特許第7,049,059号を参照のこと。TS及びERCC1遺伝子発現のこの計測は、その後、白金ベースの化学療法の予後診断に使用できる。
本発明のこの態様は、第1に、本明細書中に記載した信頼性が高い、FPEサンプルからのRNA抽出方法、そして第2に、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を実施するための、先に記載した1組のERCC1及びTSオリゴヌクレオチド・プライマー又はそれと実質的に同一であるオリゴヌクレオチドを使用することによる、サンプル中のTS及びERCC1 mRNAの含有量の測定に関与する。
当該方法は、患者からのあらゆるタイプの組織に適用できる。腫瘍組織の耐性の検査のために、その腫瘍組織を調べることが望ましい。好ましい態様において、腫瘍が得られる患者からの正常組織の一部もまた調べられる。正常組織が白金ベースの化学療法化合物に耐性であると予想される、すなわち、高いレベルのTS及びERCC1遺伝子発現を示す患者は、腫瘍がこうした化合物に感受性であると予想される、すなわち、低レベルのTS及びERCC1遺伝子発現を示す患者は、その後、より多量の化学療法組成物で治療されてもよい。
本発明の方法は、広範な腫瘍タイプに適用されることができる。これは、個々の「腫瘍発現プロファイル」の調製を可能にし、それにより、TS及び/又はERCC1の発現レベルが個々の患者サンプルにおいて決定され、そして、様々な化学療法剤に対する応答が予測される。好ましくは、本発明の方法は、固形腫瘍、最も好ましくは結腸直腸の腺癌腫瘍に適用される。
本明細書中に規定される、TSに関する「所定の閾値レベル」は、腫瘍が5-FU及び5FUとオキサリプラチン・ベースの化学療法レジメンに対して耐性である可能性が高いことがわかっているレベルを上回るTS発現レベルである。この閾値レベルより低い発現レベルは、5-FU又は5-FU及びオキサリプラチン・ベースの化学療法レジメンに感受性な腫瘍に見られる可能性が高い。5-FU又は5-FU及びオキサリプラチン・ベースの化学療法レジメンに応答する腫瘍に共通する、TS:β-アクチンの比として表現されるTSの相対的な発現の範囲は、約7.5×10-3未満である。5-FU又は5-FU及びオキサリプラチン・ベースの化学療法レジメンに応答しない腫瘍は、約7.5×10-3を上回る相対的な発現のTS:β-アクチン比を有する。
本発明の方法を実施する際に、5-FU及びオキサリプラチン・ベースの化学療法レジメンの有効性を予測するために、ERCC1発現レベルとTS発現レベルが患者の腫瘍サンプルでアッセイされる。そのうえ、本発明の方法において、5-FUベースの化学療法レジメンの有効性を予測するために、TS発現レベルが患者の腫瘍サンプルでアッセイされる。さらに、本発明の方法において、オキサリプラチン・ベースの化学療法レジメンの有効性を予測するために、ERCC1発現レベルが患者の腫瘍サンプルでアッセイされる。あるいは、混成5-FU及びオキサリプラチン・ベースの化学療法レジメンの有効性を予測するために、TS発現レベルだけの発現レベルが患者の腫瘍サンプルでアッセイされる。
本発明のこの態様の方法を実施する際に、好ましくは、腫瘍細胞は患者から分離される。固形若しくはリンパ球様の腫瘍、又はその一部が、患者から外科的に摘出されるか、又は日常的な生検によって得られる。凍結か又は新鮮なサンプルから分離されたRNAは、当該技術分野で代表的な方法、例えば、Sambrook, Fischer and Maniatis, Molecular Cloning, a laboratory manual, (2nd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1989)のいずれかによって細胞から抽出される。好ましくは、抽出工程の間、RNAの分解を避けるように注意が払われる。
RNAは、先に記載の方法のいずれかによってもFPE細胞から抽出される。新鮮な、凍結された又は固定されたものからの精製した全mRNAからのTS及びERCC1 mRNAの定量は、好ましくは、例えば当該技術分野で一般的な逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用することで実施される。TS又はERCC1 mRNAを定量する他の方法は、例えば、マルチプレックスPCRで有用な分子ビーコン及び他の標識プローブの使用を含む。さらに、本発明は、例えば、Invader(登録商標)アッセイが(Third Wave Technologies, Inc.)のものに類似した蛍光標識プローブを利用する、PCRを含まないシステムの使用によりTS及び/又はERCC1 mRNAの定量を構想する。最も好ましくは、TS及び/又はERCC1 cDNA、及び内部標準又はハウスキーピング遺伝子(例えば、β-アクチン)の定量は、蛍光ベースのリアルタイムの検出法(ABI PRISM 7700若しくは7900 Sequence Detection System[TaqMan(登録商標)]、Applied Biosystems, Foster City, Calif.)、又はHeidら(Genome Res 1996; 6:986 994)及びGibsonら(Genome Res 1996; 6:995 1001)によって説明された類似のシステムを用いておこなわれる。ABI7700(TaqMan(登録商標)装置)の出力は、Ct’s又は「サイクル閾値」で表される。TaqMan(登録商標)システムにより、サンプル中でより多数の標的分子を有する高度に発現された遺伝子は、より少ない標的分子しかもたない低い相対的な発現の遺伝子(より高いCt)より少ないPCRサイクルによってシグナルを生じる(より低いCt)。
本明細書中に使用されるとき、「未補正の遺伝子発現(UGE)」は、TaqMan(登録商標)装置によって作り出された内部標準遺伝子に対するTS及び/又はERCC1発現の出力値を指す。UGEの決定に使用される方程式は、実施例10及び11に示され、そして、図23及び24のサンプル計算を用いて例示される。
本明細書中で使用されるとき「補正された相対的なTS発現」は、UGEをTS特有の補正係数(KTS)を乗じることにより、内部標準遺伝子と相対的なTS発現レベルの既知の範囲と比較可能な値をもたらすことで標準化したTS発現を指す。実施例10及び図24は、これらの計算を詳細に例示する。これらの数値は、特定のサンプルの「補正された相対的なTS発現」が「所定の閾値」レベルを上回るか下回るかどうかの決定を可能にする。β-アクチン・レベルに対する補正された相対的なTS発現の所定の閾値レベルは、約7.5×10-3である。TS、内部標準β-アクチン、及び較正用Universal PE RNA;Applied Biosystems製、Cat.#4307281、lot#3617812014に特有なKTSは、12.6×10-3である。
KTSは、β-アクチン以外の内部標準遺伝子、及び/又はUniversal PE RNA;Applied Biosystems製、Cat.#4307281、lot#3617812014とは異なる較正用RNAに関して決定されることもある。そのために、当業者は、特定の内部標準遺伝子に対するTS発現レベルが既に決定された(すなわち、「既知の相対的な遺伝子発現」又は「以前に公表された」)組織サンプルに対し、内部標準遺伝子と較正用RNAの両方を較正しなければならない。好ましくは、こうした組織サンプルは、ホルマリン固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)サンプルであり、且つ、RNAは、本明細書中に記載のプロトコールに従って抽出される。そのような決定は、当該技術分野で周知の標準的なpre-TaqMan(登録商標)、定量的RT-PCR技術を使用することでなされ得る。そのような決定により、こうしたサンプルには、実施例6に記載のとおり、新しい内部標準及び/又は較正用RNAに特有の新しいKTSの決定に有用なTSの「既知の相対的な遺伝子発現」レベルをもつ。
「以前に公表された」相対的な遺伝子発現の結果は、構成的に発現されている遺伝子(β-アクチン)に対する標的遺伝子のRT-PCRシグナルの比に基づく。pre-TaqMan(登録商標)技術研究において、PCR反応は一定のサイクル数(すなわち30)で実施され、そして、終点値が各サンプルについて報告された。これらの値は、その後、ERCC1又はTS発現対β-アクチン発現の比として報告された。Salonga, et al., Clinical Cancer Research, 6:1322-1327,2000、ここで、その全体を本明細書中に援用する。
本発明の方法は、広範な組織及び腫瘍タイプに適用可能であり、したがって、患者の臨床の治療の評価のために、そして、乳房、頭頚部、肺、食道、結腸直腸などを含めた範囲の癌のための診断又は予後診断のツールとして使用されることができる。好ましい態様において、当該方法は、結腸直腸腺癌の予後診断に適用される。
化学療法治療前の腫瘍生検は、一般的に非常に少量の異質な組織を含んでいて、固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)組織としてのみ通常入手可能である。TS及びERCC1遺伝子発現を間質組織が混入していない腫瘍組織で決定できるように、こうしたFPEサンプルは顕微解剖に直ちに耐えられる。さらに、こうしたサンプルはしばしば両方のタイプの組織を含んでいるので、比較は、生検組織サンプル内の間質と腫瘍組織の間でおこなわれ得る。
TS遺伝子領域に隣接する任意のオリゴヌクレオチド対が、本発明の方法を実施するために使用できる。本発明における使用のための、ストリンジェントな条件下でTS遺伝子領域にハイブリダイズするプライマーは、20〜1000塩基対、好ましくは100〜400塩基対、最も好ましくは200〜400塩基対の産物を増幅するだろう。
HER2-neu/EGFR
高レベルのHER2-neu及び/又はEGFR mRNAを発現している腫瘍は、受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法に感受性がある可能性が高いと考えられる。逆に、少量のHER2-neu及びEGFR mRNAしか発現しない腫瘍は、受容体チロシンキナーゼを標的とする化学療法に感受性がない可能性が高い。患者の差次的なHER2-neu及びEGFR mRNA発現状態は、それを所定の閾値発現レベルと比較することによって判断される。
本発明は、内部標準遺伝子発現に対して、新鮮な、凍結された、固定された、又は固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)組織中のHER2-neu及び/又はEGFR mRNA発現の量の定量方法を提供する。当該発明者らは、新鮮な、凍結された、固定された、又は固定されそして包埋された組織中のHER2-neu及びEGFR遺伝子発現の正確な評価を可能にするオリゴヌクレオチド・プライマーを開発した。当該オリゴヌクレオチド・プライマー、EGFR-1753F(配列番号11)、EGFR-1823R(配列番号12)、又はそれらと実質的に同一であるオリゴヌクレオチド・プライマーは、好ましくは、新鮮な、凍結された、固定された、又は固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)腫瘍サンプルから抽出されたRNAと一緒に使用される。本発明はまた、オリゴヌクレオチド・プライマー、HER2-neu 2671F(配列番号13)、HER2-neu 2699R(配列番号14)(本明細書中に援用される米国特許第6,582,919号を参照のこと)、又はそれらと実質的に同一であるオリゴヌクレオチド・プライマーを提供し、これらは、好ましくは、新鮮な、凍結された、固定された、又は固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)腫瘍サンプルから抽出されたRNAと一緒に使用される。HER2-neu及び/又はEGFR遺伝子発現のこの計測は、その後、受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法の予後診断に使用されてもよい。
本発明のこの態様は、新鮮な、凍結された、固定された、又はFPEサンプルからのRNAの信頼性が高い抽出方法、そして、本明細書中に記載した方法を使用し、且つ、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応を実施するための、オリゴヌクレオチド・プライマー対、好ましくはオリゴヌクレオチド・プライマー対、EGFR-1753F(配列番号11)とEGFR-1823R(配列番号12)又はそれらと実質的に同一であるオリゴヌクレオチドを使用することによる上記サンプル中のEGFR mRNA含有量の決定にかかわる。
本発明の他の態様は、新鮮な、凍結された、固定された、又はFPEサンプルからのRNAの信頼性が高い抽出方法、並びに本明細書中に記載の方法を使用し、且つ、1組のオリゴヌクレオチド・プライマー、オリゴヌクレオチド・プライマー、HER2-neu 2671F(配列番号13)、HER2-neu 2699R(配列番号14)、又はそれに実質的に同一であるオリゴヌクレオチド・プライマーを使用することによるサンプル中のHER2-neu mRNAの含有量の決定にかかわる。
本発明の方法は、広範な腫瘍タイプに適用されることができる。このことは、個々の「腫瘍発現プロファイル」の作成を可能にし、それによりHER2-neu及び/又はEGFRの発現レベルが個々の患者サンプルにおいて決定され、そして、様々な化学療法剤に対する応答が予測される。好ましくは、本発明の方法は、固形腫瘍、最も好ましくはNSCLC腫瘍に対して適用される。
本明細書中に規定する「差次的な発現レベル」は、それぞれ、対応する非悪性組織サンプル中のEGFR又はHER2-neuのいずれかの発現レベルに対する、腫瘍中のEGFR又はHER2-neuのいずれかの発現レベルの差異を指す。差次的な発現レベルは、腫瘍サンプルからの特定の遺伝子のUGEを、対応する非悪性組織サンプルからの同じ遺伝子のUGEで割ることによって決定される。
本明細書中に規定されるとき、EGFR発現に関する「所定の閾値レベル」は、腫瘍が受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法レジメンに感受性である可能性が高いレベルを上回る(すなわち高い)差次的なEGFR発現レベルである。高い差次的なEGFRの発現レベルは、より低い患者の生存可能性の予後因子である。この閾値レベルより低い発現レベルを有する腫瘍は、受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法レジメンによって影響を受ける可能性が低い。低い差次的なEGFR発現レベルは、より高い患者の生存可能性の予後因子である。差次的な発現が高かろうとも低かろうとも、「所定の閾値レベル」は、食道の扁平上皮癌を患っている患者から得られた対応する非悪性組織における個々の差次的な腫瘍/標準(T/N)発現比について計算したMafuneらによって使用された方法によって決定される。Mafune et al., Clin Cancer Res 5:4073-4078, 1999。この解析方法は、対応する非悪性組織から得られた個々のバックグラウンド発現に基づいて、各患者についての正確な発現の値を導く。EGFRの差次的な発現は、対応する非悪性組織サンプル中のEGFR:β-アクチンのUGEによって割られた腫瘍サンプル中のEGFR:β-アクチンのUGEが約1.8の所定の閾値を上回る場合、「高い」と考えられ、そしてそれは低い生存可能性を示すものであると考えられる。EGFRの差次的な発現は、対応する非悪性組織サンプル中のEGFR:β-アクチンのUGEによって割られた腫瘍サンプル中のEGFR:β-アクチンのUGEが約1.8の所定の閾値を下回る場合、「低い」と考えられ、そしてそれは高い生存可能性を示すものであると考えられる。
本明細書中に規定されるとき、差次的なHER2-neu発現に関する「所定の閾値レベル」は、腫瘍が受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法レジメンに感受性である可能性が高いレベルを上回る(すなわち高い)HER2-neu発現レベルである。高い差次的なHER2-neu発現レベルは、より低い患者の生存可能性の予後因子である。この閾値レベルより低い発現レベルを有する腫瘍は、受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法レジメンによって影響を受ける可能性が低い。低い差次的なHER2-neu発現レベルは、より高い患者の生存可能性の予後因子である。EGFRの差次的な発現は、対応する非悪性組織サンプル中のHER2-neu:β-アクチンのUGEによって割られた腫瘍サンプル中のHER2-neu:β-アクチンのUGEが約1.8の所定の閾値を上回る場合、「高い」と考えられ、そしてそれは低い生存可能性を示すものであると考えられる。HER2-neuの差次的な発現は、対応する非悪性組織サンプル中のHER2-neu:β-アクチンのUGEによって割られた腫瘍サンプル中のHER2-neu:β-アクチンのUGEが約1.8の所定の閾値を下回る場合、「低い」と考えられ、そしてそれは高い生存可能性を示すものであると考えられる。
HER2-neuの「閾値レベル」は以下の結果及び方法を使用して決定された。HER2-neuとβ-アクチンのPCR産物の間の比として表される補正されたHER2-neu mRNA発現は、正常肺において4.17×10-3(範囲:0.28〜23.86×10-3)であり、そして腫瘍組織において4.35×10-3(範囲:0.21〜68.11×10-3)であった(P=0.019ウィルコクソン検定)。Miller及びSiegmund(Miller et al., Biometrics 38:1011-1016, 1982)並びにHalpern(Biometrics 38:1017-1023, 1982)による最大カイ二乗法は、患者を低い差次的なHER2-neuを発現する者と高い差次的なHER2-neuを発現する者に分けるために、1.8の閾値を決定した。この基準によって、29人(34.9%)の患者が高い差次的なHER2-neu発現を有しており、そして54人(65.1%)が低い差次的なHER2-neu発現を有していた。
EGFRの「閾値レベル」は以下の結果及び方法を使用して決定された。EGFRとβ-アクチンのPCR産物の間の比として表される補正されたEGFR mRNA発現は、正常肺において8.17×10-3(範囲:0.31〜46.26×10-3)であり、そして腫瘍組織において7.22×10-3(範囲:0.27〜97.49×10-3)であった(P=n.s.)。最大カイ二乗法(Miller(1982);Halpern(1982))は、患者を低い差次的なEGFRを発現する者と高い差次的なEGFRを発現する者に分けるために、1.8の閾値を決定した。この基準によって、28人(33.7%)の患者が高い差次的なEGFR発現を有しており、そして55人(66.3%)が低い差次的なEGFR発現を有していた。
本発明の方法を実施する際に、差次的なEGFR発現レベル又は差次的なHER2-neu発現レベルのいずれかが、受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法レジメンの有効性を予測するために、患者においてアッセイされる。そのうえ、本発明の方法において、差次的なHER2-neu発現レベルは、受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法レジメンの有効性を予測するために、患者においてアッセイされる。加えて、本発明の方法において、差次的なEGFR発現レベルは、受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法レジメンの有効性を予測するために、患者においてアッセイされる。あるいは、差次的なEGFR発現レベルと差次的なHER2-neu発現レベルの両方が、受容体チロシンキナーゼを標的とした化学療法レジメンの有効性を予測するために、患者においてアッセイされる。
本明細書中に規定されるとき、「対応する非悪性サンプル」は、差次的なEGFR及び/又は差次的なHER2-neu発現について解析されるべき腫瘍サンプルと同じ個体から得られた非癌組織サンプルを指す。好ましくは、対応する非悪性サンプルは、腫瘍サンプルが得られた臓器と同じ臓器から得られる。最も好ましくは、対応する非悪性腫瘍サンプルは、腫瘍サンプルが得られたものと同じ臓器の組織層から得られる。また、対応する非悪性組織サンプルを、腫瘍サンプルの生検と同時に採取するのが好ましい。好ましい態様において、以下の2つの部位:肺腫瘍と、当該腫瘍から最も離れた非悪性の肺組織、又は結腸腫瘍と、当該腫瘍から現状で可能な限り最も離れた非悪性の結腸組織からの組織が解析される。
本発明のこの態様の方法を実施する際に、腫瘍細胞は、好ましくは患者から分離される。固形若しくはリンパ球様の腫瘍又はそれらの一部は、患者から外科的に摘出されるか、又は日常的な生検によって得られる。凍結された又は新鮮な腫瘍サンプルから分離されたRNAは、当該技術分野で代表的な方法、例えば、Sambrook, Fischer and Maniatis, Molecular Cloning, a laboratory manual, (2nd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (1989)、のいずれかによって細胞から抽出される。好ましくは、抽出工程の間、RNAの分解を避けるために注意が払われる。
しかしながら、生検後に、患者から得られた組織は、通常ホルマリン(ホルムアルデヒド)若しくはグルタルアルデヒドによって、例えば、又はアルコール浸漬によってしばしば固定される。固定された生物学的サンプルは、しばしば脱水され、そして、パラフィン又は当業者に知られている他の固形支持体中に包埋される。Plenat et al., Ann Pathol January 2001;21(1):29-47を参照のこと。包埋されていない、固定された組織、並びに固定されそして包埋された組織もまた、当該方法において使用できる。固定された組織を包理するための固形支持体は、例えば、保存された組織のその後の再水和を可能にするために、有機溶剤で除去可能であることが推定される。
RNAは、パラフィン包埋された(FPE)組織の細胞から本明細書中に記載した方法のいずれかによって抽出される。新鮮な、凍結された又は固定されたものからの精製した全mRNAからのHER2-neu又はEGFR mRNAの定量は、好ましくは、例えば当該技術分野で一般的な逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を使用することで実施される。HER2-neu又はEGFR mRNAを定量する他の方法は、例えば、マルチプレックスPCRで有用な分子ビーコン及び他の標識プローブの使用を含む。さらに、本発明は、例えば、Invader(登録商標)アッセイが(Third Wave Technologies, Inc.)のものに類似した蛍光標識プローブを利用する、PCRを含まないシステムの使用によりHER2-neu及び/又はEGFR mRNAの定量を構想する。最も好ましくは、HER2-neu及び/又はEGFR cDNA、及び内部標準又はハウスキーピング遺伝子(例えば、β-アクチン)の定量は、蛍光ベースのリアルタイムの検出法(ABI PRISM 7700若しくは7900 Sequence Detection System[TaqMan(登録商標)]、Applied Biosystems, Foster City, Calif.)、又はHeidら(Genome Res 1996; 6:986 994)及びGibsonら(Genome Res 1996; 6:995 1001)によって説明された類似のシステムを用いておこなわれる。ABI7700(TaqMan(登録商標)装置)の出力は、Ct’s又は「サイクル閾値」で表される。TaqMan(登録商標)システムにより、サンプル中でより多数の標的分子を有する高度に発現された遺伝子は、より少ない標的分子しかもたない低い相対的な発現の遺伝子(より高いCt)より少ないPCRサイクルによってシグナルを生じる(より低いCt)。
本明細書中で使用されるとき、「未補正の遺伝子発現(UGE)」は、TaqMan(登録商標)装置によって作り出された内部標準遺伝子に対するHER2-neu及び/又はEGFR発現の出力値を指す。UGEを測定するのに使用される方程式は、実施例12及び13に示され、そして、サンプル計算を用いて図25及び26において例示される。
これらの数値は、差次的な遺伝子発現(すなわち、対応する非腫瘍サンプルの「UGE」によって割られた特定の腫瘍サンプルの「UGE」)が、「所定の閾値」レベルを上回るか又は下回るか否かの決定を可能にする。EGFR及びHER2-neuの所定の閾値レベルは、約1.8である。
本願発明のさらなる側面は、非TaqMan(登録商標)技術から得られた「既知の相対的な遺伝子発現」値を用いて、TaqMan(登録商標)装置から得られた未補正の遺伝子発現(UGE)値を標準化する方法を提供する。好ましくは、組織サンプルからの、TaqMan(登録商標)から得られたHER2-neu及び/又EGFR UGE値は、既知の、非TaqMan(登録商標)から得られた相対HER2-neu及び/又はEGFR:β-アクチン発現の値を有するサンプルに対して標準化される。
本明細書中で使用するとき、「補正された相対的なEGFR発現」は、UGEに、EGFR特有の補正係数(KEGFR)を乗じて、内部標準遺伝子と相対的なEGFR発現レベルの既知の範囲と比較可能な値を得ることによって、標準化されたEGFR発現を指す。実施例12及び図25は、これらの計算を詳細に例示する。EGFR、内部標準β-アクチン、及び較正用ヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat #735017)に特有のKEGFRは、26.95×10-3である。これらの数値はまた、対応する非腫瘍サンプルの「補正された相対的な発現」によって割られた特定の腫瘍サンプルの「補正された相対的な発現」(すなわち、差次的な発現)が「所定の閾値」レベルを上回るか下回るか否かの決定も可能にする。HER2-neu又はEGFRの所定の閾値レベルは、約1.8である。腫瘍サンプルにおけるEGFR又はHER2-neuのいずれかの差次的な発現が、対応する非腫瘍サンプルのものとくらべて1.8倍を上回るか否かを決定する際に、UGE値又は補正された相対的な発現値のいずれが使用され得るかは容易に認識される。例えば、腫瘍の補正された相対的な発現レベルを対応する非腫瘍サンプルのそれで割る場合、Kの因子が相殺して、そして、UGE値を使用した場合と同じ比が残る。
「既知の相対的な遺伝子発現」値は、以前に分析した組織サンプルから導き出され、そして、構成的に発現している内部標準遺伝子(例えば、β-アクチン、GAPDHなど)に対する標的遺伝子のRT-PCRシグナルの比に基づく。好ましくは、こうした組織サンプルは、ホルマリン固定されそして、パラフィン包埋された(FPE)のサンプルであり、且つ、RNAは、本明細書中に記載したプロトコールに従ってそれらから抽出される。内部標準に対する遺伝子発現を定量するために、当該技術分野で知られている標準的な定量的RT-PCR技術が使用される。Pre-TaqMan(登録商標)技術PCR反応は、一定のサイクル数(すなわち30)で実施され、そして、終点の値が各サンプルについて報告される。これらの値は、その後、EGFR発現対β-アクチン発現の比として報告される。
KEGFRは、β-アクチン以外の内部標準遺伝子、及び/又はヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)とは異なる較正用RNAに関して決定されることもある。そのために、当業者は、特定の内部標準遺伝子に対するEGFR発現レベルが既に決定された(すなわち、「既知の相対的な遺伝子発現」)組織サンプルに対し、内部標準遺伝子と較正用RNAの両方を較正しなければならない。好ましくは、こうした組織サンプルは、ホルマリン固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)サンプルであり、且つ、RNAは、実施例1に記載のプロトコールに従ってそれらから抽出される。そのような決定は、当該技術分野で周知の標準的なpre-TaqMan(登録商標)、定量的RT-PCR技術を使用することでなされ得る。そのような決定により、こうしたサンプルには、実施例12に記載のとおり、新しい内部標準及び/又は較正用RNAに特有の新しいKEGFRの決定に有用なEGFRの「既知の相対的な遺伝子発現」レベルをもつ。
本明細書中で使用するとき、「補正された相対的なHER2-neu発現」は、UGEに、HER2-neu特有の補正係数(KHER2-neu)を乗じて、内部標準遺伝子と相対的なHER2-neu発現レベルの既知の範囲と比較可能な値を得ることによって、標準化されたEGFR発現を指す。実施例13及び図26は、これらの計算を詳細に例示する。HER2-neu、内部標準β-アクチン、及び較正用ヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat #735017)に特有のKHER2-neuは、13.3×10-3である。
KHER2-neuは、β-アクチン以外の内部標準遺伝子、及び/又はヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)とは異なる較正用RNAに関して決定されることもある。そのために、当業者は、特定の内部標準遺伝子に対するHER2-neu発現レベルが既に決定された(すなわち、「既知の相対的な遺伝子発現」)組織サンプルに対し、内部標準遺伝子と較正用RNAの両方を較正しなければならない。好ましくは、こうした組織サンプルは、ホルマリン固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)サンプルであり、且つ、RNAは、本明細書中に記載のプロトコールに従ってそれらから抽出される。そのような決定は、例えば、当該技術分野で周知の標準的なpre-TaqMan(登録商標)、定量的RT-PCR技術を使用することでなされ得る。そのような決定により、こうしたサンプルには、実施例13に記載のとおり、新しい内部標準及び/又は較正用RNAに特有の新しいKHER2-neuの決定に有用なHER2-neuの「既知の相対的な遺伝子発現」レベルをもつ。
本発明の方法は、広範な組織及び腫瘍タイプに適用可能であり、したがって、患者の臨床的治療の評価のために、そして、乳房、頭頚部、肺、食道、結腸直腸の癌などを含めたさまざまな癌についての診断又は予後診断のためのツールとして使用することができる。好ましい態様において、当該方法は、NSCLC腫瘍の予後診断に適用される。
化学療法治療前の腫瘍生検は、一般的に非常に少量の異質な組織を含んでいて、固定されそしてパラフィン包埋された(FPE)組織としてのみ通常入手可能である。HER2-neu及び/又はEGFR遺伝子発現を間質組織が混入していない腫瘍組織で決定できるように、こうしたFPEサンプルは顕微解剖に直ちに耐えられる。さらに、こうしたサンプルはしばしば両方のタイプの組織を含んでいるので、比較は、生検組織サンプル内の間質と腫瘍組織の間でおこなわれ得る。
一般的に、配列番号10に示すような、EGFR遺伝子領域に隣接する任意のオリゴヌクレオチド対が、本発明の方法を実施するのに使用され得る。本発明における使用のための、ストリンジェントな条件下でEGFR遺伝子領域にハイブリダイズするプライマーは、20〜1000塩基対、好ましくは100〜400塩基対、最も好ましくは200〜400塩基対の産物を増幅するだろう。
さらに、HER2-neu遺伝子領域に隣接する任意のオリゴヌクレオチド対が、本発明の方法を実施するのに使用され得る。本発明における使用のための、ストリンジェントな条件下でHER2-neu遺伝子領域にハイブリダイズするプライマーは、約20〜1000塩基対、好ましくは100〜400塩基対、最も好ましくは200〜400塩基対の産物を増幅するだろう。
HER2-neuの過剰活性は、HER2-neuをコードする遺伝子の増幅又は細胞増殖性障害と関連し得るHER2-neuの活性レベルの産生のいずれかを指す(すなわち、HER2-neuのレベルが増大するにつれ、細胞増殖性障害の1又は複数の症状の重症度が増大する)。
こうして記載してきた本発明の実施は、以下に示す実施例によって例示される。当業者は、説明のための実施例において使用される材料及び方法が種々の方法により修飾されることができることを認識しているだろう。こうした修飾は、本発明の範囲内にあると考えられる。
長い断片RNAの収量に対する温度の効果を示す。これらのデータはより低温にてより長いインキュベーション時間ほどより高い収量で長い断片RNAを分離するであろうことを示している。 長い断片RNAの収量に対する温度の効果を示す。これらのデータはより低温にてより長いインキュベーション時間ほどより高い収量で長い断片RNAを分離するであろうことを示している。 RNAの収量に対する加熱時間の効果を示す。データは、全てのサイズのRNA断片の収量がより長い加熱時間において増加したことを示している。100bpの断片の収量は10倍を超えるまで増加したが(3.5のPCRサイクル)、300bpの断片の収量はほぼ26まで増加し、又は加熱時間が延長されたときには、約600倍まで増加した。400bpの断片の収量も同様に増加した。 RNAの収量に対する加熱時間の効果を示す。データは、全てのサイズのRNA断片の収量がより長い加熱時間において増加したことを示している。100bpの断片の収量は10倍を超えるまで増加したが(3.5のPCRサイクル)、300bpの断片の収量はほぼ26まで増加し、又は加熱時間が延長されたときには、約600倍まで増加した。400bpの断片の収量も同様に増加した。 FFPE組織からのRNAに対するインキュベーション温度と、抽出溶液中のEDTA濃度の効果を示す。これらのデータは好ましい加熱温度として50℃を、及びEDTAの好ましい濃度として3.6mMを示唆している。 FFPE組織からのRNAに対するインキュベーション温度と、抽出溶液中のEDTA濃度の効果を示す。これらのデータは好ましい加熱温度として50℃を、及びEDTAの好ましい濃度として3.6mMを示唆している。 パラフィン・マトリックスからRNAを取り出すための抽出手法におけるプロテイナーゼKの量を変えることの効果を示す。データは、5μg(図中の1×)が最大RNA収量と最少DNA混入の両方に好ましい濃度であることを示している。 5つの抽出方法:1)高温カオトロープ法;2)PK法((プロテイナーゼK、低温、及び長い加熱時間)を含んでなる本発明の方法);3)イソチオシアン酸グアニジン(「GITC」)を用いた単回フェノール抽出を使用するPK法;4)2回目の抽出にGITCを用いた2回のフェノール抽出を使用するPK法;5)GITCの代わりにTrisバッファーを用いた2回のフェノール抽出を使用するPK法、を使用したRNA収量とDNA混入の比較の結果を示す。例えば、図中、名称「F4 1 100bp」は高温カオトロープ法で処理されたサンプルF4を意味し;F4 2 100bpはPK法で処理されたサンプルF4を意味し;F4 3 100bpはGITCを用いた単回フェノール抽出を使用したPK法で処理されたサンプルF4を意味する、など。チャートの左側の最後の5つの棒グラフはNRT(逆転写なし)と呼ばれ、サンプル中のDNAの量を示す。 5つの抽出方法:1)高温カオトロープ法;2)PK法((プロテイナーゼK、低温、及び長い加熱時間)を含んでなる本発明の方法);3)イソチオシアン酸グアニジン(「GITC」)を用いた単回フェノール抽出を使用するPK法;4)2回目の抽出にGITCを用いた2回のフェノール抽出を使用するPK法;5)GITCの代わりにTrisバッファーを用いた2回のフェノール抽出を使用するPK法、を使用したRNA収量とDNA混入の比較の結果を示す。例えば、図中、名称「F4 1 100bp」は高温カオトロープ法で処理されたサンプルF4を意味し;F4 2 100bpはPK法で処理されたサンプルF4を意味し;F4 3 100bpはGITCを用いた単回フェノール抽出を使用したPK法で処理されたサンプルF4を意味する、など。チャートの左側の最後の5つの棒グラフはNRT(逆転写なし)と呼ばれ、サンプル中のDNAの量を示す。 B5、D6及びF5と呼ばれるFFPEのサンプルから分離されたRNAの量と純度の比較を示す。「PK」は本発明の分離法の使用を示し、(「RGI」)は(米国特許第6,248,535号の中で説明される)高温分離法の使用を示し;そして「para」は市販のParadise(登録商標)キットの使用を示す。RNAの純度は280nmの紫外吸収によって計測される。これらのデータは、本発明が試験された3種類のサンプルにおいて、Paradise(登録商標)キットに比べて、より高い収量のRNA及び(混入したDNAと対立するものとして)より純粋なRNAを分離することを示している。前記結果はまた、PK法がRGI法と同じくらい大量のRNAを生み出さないが、より純粋なRNAサンプルを提供することを示している。 各サンプルにおけるβ-アクチンのPCR増幅によって計測されるFFPEサンプルB5、D6及びF5から分離した100、300、400、及び1000bpのRNA断片の量の比較を示す。「PK」は本発明の分離法の使用を示し、(「RGI」)は(米国特許第6,248,535号の中で説明される)高温分離法の使用を示し;そして「para」は市販のParadise(登録商標)キットの使用を示す。データは、PKを使用した好ましい方法が、それぞれの断片長の最適収量、並びに最少DNA混入をもたらすことを示している。棒グラフ下の枠囲みは棒グラフで表した数値データを提供する。 各方法によって分離されたRNA断片のサイズ分布の比較を示す。RNAはサイズ排除カラムによって分画され、そして、280nmのUV吸光度によって定量される。小さい断片は大きい断片に比べてより速くカラムを通過する。D5=サンプル1;F5=サンプル2;D6=サンプル3。「PK」は本発明の分離法の使用を示し、(「RGI」)は(米国特許第6,248,535号の中で説明される)高温分離法の使用を示し;「para」は市販のParadise(登録商標)キットの使用を示し;「凍結」は対応する新鮮な凍結組織から分離されたRNAの画分である。5列目の1つだけのプロットは分子量基準を含む。この図は、PK法がその他の方法に比べてより良質のより長い断片RNAを提供することを示している。 従来の方法を使用して新鮮な凍結組織から分離されたRNAに対する、本発明を使用してFFPE組織から分離されたRNAの(PCR法によって測定される)β-アクチン発現のレベルの比較を示す。これらのデータは、特に本発明の方法を使用して、FFPEから抽出されたRNAを用いて得られた遺伝子発現解析は相関性があり、新鮮な凍結組織における遺伝子発現を信頼性をもって反映することを示している。例えば、新鮮な凍結組織の結果とFFPEの結果との直接的な相関はスロープと1のR2値を示すだろう。R2値が1に近ければ近いほど品質が近い。よって、PK分離に関して、R2値は0.89であり、それは0.81のR2値を得たParadiseキット又は0.84のR2値を得たRGIより優れている。 長い断片RNA種の抽出収量に対するサンプル年齢の効果を例示する。データは、サンプル年齢に対して(RNAの低い収量)Ct値の漸進的増加を示している。よってRNAのサンプル年齢に従って、収量及び品質は低下する(より短い断片RNA)。サンプル1、2、3、4及び5は1991年に固定され;サンプル2は2000年に固定され、そしてサンプルD7、D9及びF3は2005年に固定された。「RNA」と名前の付いた欄は逆転写なし対照、すなわちDNA混入の量を示す。 シスプラチン/Gem治療を受けた患者の全生存対NSCLC中の補正された相対的なERCC1発現を示すグラフである。6.7×10-3の閾値より低い患者の補正された相対的なERCC1発現レベルは、有意に良好な生存と相関があった。しかし一方、6.7×10-3の閾値より高い患者の補正された相対的なERCC1発現レベルは、有意に悪い生存と相関があった。(P=0.009ログランク検定)。 内部標準遺伝子に対する補正された相対的なERCC1発現を、どのように算出するかを例示するチャートである。当該チャートは、2つの試験サンプル(未知1及び2)を用いて得られたデータを含み、そして未補正の遺伝子発現データ(UGE)をどのように決定するかを例示する。当該チャートはまた、pre-TaqMan(登録商標)技術によって決定された既知の相対的なERCC1値を用いた、TaqMan(登録商標)手段によって生成したUGEをどのように標準化するかを例示する。これは、補正係数KERCC1にUGEを乗じることによって達成される。図中の内部標準遺伝子はβ-アクチンであり、そして較正用RNAはヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)である。 研究中の56人の患者の層の詳細、腫瘍の病期及び細胞型を示す表である。与えられた治療サイクルの中央数は3であった(範囲1 6)。14人の患者(25%)がすでに化学療法、ほとんど(9人の患者)が単独又はDDP若しくはカルボプラチンと併用したタキサン療法を受けていた。56人の患者のうちの3人が放射線療法を受け、そして5人の患者が原発性腫瘍の外科的切除をおこなっていた。 閾値を下回る補正されたERCC1発現レベルを有する患者が閾値を超える補正されたERCC1レベルを有する患者の20.4週間(95%のC.I. 6.9、33.9週間)と比較して、61.6週間(95%のC.I. 42.4、80.7週間)の有意に長い生存期間中央値を有することを示す表である。腫瘍の病期に関して調整された、低い若しくは高いERCC1発現と全生存との関連に関するログランク統計値は3.97であり、P値は0.046であった。調整されていないログランクの結果がこの図中に示されている。単変量解析のカプラン・マイヤー生存曲線とログランク検定を使用した全生存と有意に関連した因子もまた示されている。これらは、前処理体重減少の存在とECOGパフォーマンス・ステータスであった。患者の年齢(P=0.18)、性別(P=0.87)、腫瘍の病期(P=0.99)、腫瘍細胞型(P=0.63)、及び胸膜浸出液の存在(P=0.71)は全生存に関して有意な予後因子でなかった。補正された相対的なERCC1発現レベル、ECOGパフォーマンス・ステータス、及び体重減少は、Cox比例ハザード回帰モデルの多変数解析においても有意な予後因子のままであった。腫瘍の病期で層別化されたCox回帰モデルに関するP値は、ERCC1については0.038であり、体重減少については0.017であり、そしてECOGパフォーマンス・ステータス(PS0対1若しくは2)については0.02であった。 内部標準遺伝子に対するDPD発現を、どのように算出するかを例示するチャートである。当該チャートは、2つの試験サンプル(未知1及び2)を用いて得られたデータを含み、そして未補正の遺伝子発現データ(UGE)UCGをどのように決定するかを例示する。当該チャートはまた、以前に公表されたDPD値を用いた、TaqMan手段によって生成したUGEをどのように標準化するかを例示する。これは、補正係数KDPDにUGEを乗じることによって達成される。図中の内部標準遺伝子はβ-アクチンであり、そして較正用RNAはUniversal PE RNA;Applied Biosystems製のCat.#4307281、lot#3617812014である。 それぞれの組織型の標本に関する相対的な補正されたDPD発現レベルの箱ひげ図を示す。箱は、25及び75パーセンタイル(四分位間の)範囲を示す。中央値は水平な棒線として各箱の中に示す。ひげは、25及び75パーセンタイルの外側のレベルを示しているが、著しく範囲外の値を除く。その値は箱の上に示されている。 5-FU及びオキサリプラチン療法レジメンを受けた、高い(β-アクチンの遺伝子発現の約7.5×10-3倍より高い;n=7)及び低い(β-アクチンの遺伝子発現の7.5×10-3倍より低い;n=43)補正されたTS発現レベルをもつ結腸直腸の腺癌腫瘍の患者の生存率及び月ごとの生存率の概算値を示すグラフである。 5-FU及びオキサリプラチン療法レジメンを受けた、高い(β-アクチンの遺伝子発現の約4.9×10-3倍より高い;n=10)及び低い(β-アクチンの遺伝子発現の約4.9×10-3倍より低い;n=40)補正されたERCC1発現レベルをもつ結腸直腸の腺癌腫瘍の患者の生存率及び月ごとの生存率の概算値を示すグラフである。 5-FU及びオキサリプラチン療法レジメンを受けた、高い(β-アクチンの遺伝子発現の約7.5×10-3倍より高いTS発現とβ-アクチンの遺伝子発現の4.9×10-3倍より高いERCC1;n=14)及び低い(β-アクチンの遺伝子発現の約7.5×10-3倍より高いTS発現とβ-アクチンの遺伝子発現の4.9×10-3倍より高いERCC1;n=36)補正されたTS及びERCC1発現レベルをもつ結腸直腸の腺癌腫瘍の患者の生存率及び月ごとの生存率の概算値を示すグラフである。 単変量解析により分析したERCC1及びTS発現に対する、オキサリプラチン/5-FU治療された結腸直腸癌患者の生存を示す表である。 層別解析により分析したERCC1及びTS発現に対する、オキサリプラチン/5-FU治療された結腸直腸癌患者の生存を示す表である。 5-FU及びオキサリプラチン化学療法レジメンにより治療された結腸直腸の腺癌腫瘍を担持する患者の相対的な応答を示すグラフである。患者は、進行性疾患(PD)、部分奏功(PR)及び安定疾患(SD)をもつものに分類された。低レベルのTS及びERCC1発現の両方を有する患者が、最も良い応答を得た。 内部標準遺伝子に対するERCC1発現を、どのように算出するかを例示するチャートである。当該チャートは、2つの試験サンプル(未知1及び2)を用いて得られたデータを含み、そして未補正の遺伝子発現データ(UGE)をどのように決定するかを例示する。当該チャートはまた、pre-TaqMan(登録商標)技術によって決定された既知の相対的なERCC1値を用いた、TaqMan(登録商標)手段によって生成したUGEをどのように標準化するかを例示する。これは、補正係数KERCC1にUGEを乗じることによって達成される。図中の内部標準遺伝子はβ-アクチンであり、そして較正用RNAはヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)である。 内部標準遺伝子に対するTS発現を、どのように算出するかを例示するチャートである。当該チャートは、2つの試験サンプル(未知1及び2)を用いて得られたデータを含み、そして未補正の遺伝子発現データ(UGE)UCGをどのように決定するかを例示する。当該チャートはまた、以前に公表されたTS値を用いた、TaqMan(登録商標)手段によって生成したUGEをどのように標準化するかを例示する。これは、補正係数KTSにUGEを乗じることによって達成される。図中の内部標準遺伝子はβ-アクチンであり、そして較正用RNAはUniversal PE RNA;Applied Biosystems製のCat.#4307281、lot#3617812014である。 内部標準遺伝子に対するEGFR発現を、どのように算出するかを例示するチャートである。当該チャートは、2つの試験サンプル(未知1及び2)を用いて得られたデータを含み、そして未補正の遺伝子発現データ(UGE)をどのように決定するかを例示する。当該チャートはまた、pre-TaqMan(登録商標)技術によって決定された既知の相対的なEGFR値を用いた、TaqMan(登録商標)手段によって生成したUGEをどのように標準化するかを例示する。これは、補正係数KEGFRにUGEを乗じることによって達成される。図中の内部標準遺伝子はβ-アクチンであり、そして較正用RNAはヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)である。 内部標準遺伝子に対するHER2-neu発現を、どのように算出するかを例示するチャートである。当該チャートは、2つの試験サンプル(未知1及び2)を用いて得られたデータを含み、そして未補正の遺伝子発現データ(UGE)をどのように決定するかを例示する。当該チャートはまた、以前に公表されたHER2-neu値を用いた、TaqMan(登録商標)手段によって生成したUGEをどのように標準化するかを例示する。これは、補正係数KHER2-neuにUGEを乗じることによって達成される。図中の内部標準遺伝子はβ-アクチンであり、そして較正用RNAはヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)である。
実施例1:長い断片RNAの抽出手法
I. 組織標本
標準的な実験室手法を使用して、カバースリップなしでガラススライド上にFFPE組織を含むパラフィン・ブロックの10ミクロン切片を乗せる。脱パラフィンし、そしてヌクレアファストレッド(NFR)染色するために、前記スライドを以下のとおり処理する:
前記スライドを、キシレン中で5分間、2回洗浄し、それに続いて、エタノール(「EtoH」)で洗浄する。そのスライドを、標準的な実験室手順を使用してNFRで染色する。
着目の領域(例えば、腫瘍組織又は間質組織)を、(摘出する領域のサイズによって)手作業で又はレーザー捕捉型マイクロディセクターを用いて摘出する。
II. RNA抽出
Tris/HCL、EDTA、SDS及び水を含む抽出溶液を、調製する。腫瘍組織を、遠心分離管中の抽出溶液に加え、そしてプロテイナーゼKを加える。次に、サンプルを、長い断片RNAの最大収量のために適切な温度及び時間にて加熱する。例えば、サンプルを、50℃にて約16時間加熱する。加熱ステップ後に、サンプルをより大きい試験管に移し、そして2Mの酢酸ナトリウム(NaOAC)を加える。フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(PCI)抽出を実施する。上部の水相を、新しい清潔な試験管に移し、そしてグリコーゲンを加える。RNAをイソプロパノール(iPrOH)で沈殿させる。ペレット化したRNAを、カオトロピック剤(0.5%のサルコシン‐イソチオシアン酸グアニジン(GITC)など)と混ぜる。ジチオスレイトール(DTT)もまた試験管に加える。5mMのTrisを加え、そして混合する。次に、2MのNaOAcとPCIを加え、ボルテックス処理し、そしてその試験管を氷上でインキュベートする。その試験管を遠心分離にかけ、そして上部の水相をグリコーゲンの入った新しい試験管に移す。(iPrOHを使用して)RNAを再びペレット化させ、そしてエタノール洗浄する。RNAを5mMのTris中に懸濁する。
III. PCR定量
本発明の方法によって得られた抽出したRNAを使用して、cDNAの調製(35)及びリアルタイムRT-PCR定量を、以前に記載したとおり実施する(36、37)。それぞれの抽出物のPCRを三重反復試験で実施する。データをβ-アクチン遺伝子のCt値として報告する。前記Ct値は、PCR産物の量を示し、そのため、PCR反応物中に存在する標的の元の量に関連する。前記関係は逆数の関係である、すなわち、より大きなCt数は、元々存在する標的cDNAがより少ないことを示す。1サイクルのPCRサイクルは、量における2倍の違いを示す、つまり、例えば、2つPCR反応の間の4サイクルCtの違いは、cDNA含有量の16倍の違いを意味する(24=16)。
実施例2:分離したRNAの長さの分布を測定する方法
FFPE組織から分離した様々なRNA断片長の相対量を測定するために、以下のストラテジーを使用した。本発明及び他の公知の抽出方法を使用してFFPE標本から分離したRNAを、オリゴdTプライマーを使用することでcDNAに変換した。これは、3’オリゴAテールを含むmRNA断片だけが伸長され、そしてcDNAに変換され、それにより、断片長を計測する開始点を提供することを意味する。β-アクチンmRNAのPCR増幅は、mRNAの総集団を表すのに使用された。mRNAの3’末端から100、300、400及び1000bpの位置に相当するβ-アクチン遺伝子の約100〜120bpセグメントを増幅するようにプライマーを選択した(図2)。実際に100、300、400及び1000bpの断片を増幅しようとするのとは対照的に、このストラテジーにより、増幅の長さに依存した効率の点でのあらゆる相違を最小限にするだろう。よって、それぞれのプライマー・セットのPCR産物のCtは、それぞれの断片サイズの量の実際の比率を表すはずである。
Figure 2010530761
実施例3:プロテイナーゼKの効果
この実施例は、RNAの収量及びDNAの混入に対するプロテイナーゼK濃度の効果を明らかにする。50℃にて0.5、2、3、及び16時間のインキュベーション時間において、プロテイナーゼK濃度を4倍の範囲(5〜20μg、図中に1×〜4×と示した)にわたって変動させる。図4に見られるように、1×(5μg)のプロテイナーゼKは、より高い量と比べて約2倍(1Ct)優れたRNA収量をもたらすが、より重要なことには、1×よりもプロテイナーゼK量が多いほど、かなり多くの混入DNAをもたらす(2〜3Ctサイクル)。この実験はまた抽出されたDNAの量に対するインキュベーション時間の影響を明らかにし、より短いインキュベーション時間に比べて、16時間のインキュベーション時間が3〜7Ctサイクル優れている。RNAからcDNAに変換するための逆転写反応を最初におこなうことなくPCRを実施することによって、DNAを抽出中で検出する(「逆転写なし又はNRT対照」)。このように、唯一起こるPCR増幅は同時抽出されたDNAのものであり、それが高過ぎた場合には、RNAのPCR定量化における高いバックグラウンド値を与え、その結果、信頼性がないデータに通じる。
実施例4:DNAの同時抽出を最少に抑える
この実施例は、RNAの最少量の損失でFFPE抽出からDNAを選択的に取り除く手法を例示する。より多くのDNAを取り除くための取り組みにおいて、カオトロープ、GITCを含む2回目のフェノール/クロロホルム抽出手法の有効性を試験するために、実験を実施した。以下の抽出方法を、RNAの収量及びDNAの混入について比較した:
1. 92℃にて30分間のFFPE組織のインキュベーション、そしてフェノール/クロロホルム/イソアミル(「PCI」)抽出(「RGI」法)又は「高温カオトロープ法」とも呼ばれる。これは、遺伝子発現の高速大量処理RT-PCR定量のためにFFPEからRNAを抽出するために以前に開発された急速な短いインキュベーション‐高温法である。(比較目的のためにここで使用される)この方法は、米国特許第6,248,535号に記載されており、PCIを用いた1回の抽出と、それに続く、イソプロパノール(「iPrOH」)沈殿、そしてエタノール(「EtOH」)洗浄を伴う。本発明の1つの態様をRGI法と比較し、且つ、これを「PK」と示す。
2. PK(50℃、プロテイナーゼKと一緒に16時間)+PCI+iPrOH+EtOH(すなわち、1回のフェノール/クロロホルム抽出);
3. PK+GITC及びPCI+iPrOH+EtOH(1回のフェノール/クロロホルム抽出手法にGITCを加える);
4. PK+PCI+iPrOH+EtOH+GITC+PCI+iPrOH+EtOH(GITCが2回目のフェノール/クロロホルムに含まれている2回のフェノール/クロロホルム抽出);
5. PK+PCI+iPrOH+EtOH+Trisの追加+PCI+iPrOH+EtOH(GITCの代わりにTrisを2回目のフェノール/クロロホルムに用いた2回のフェノール/クロロホルム抽出)。
図5はこれらの実験の結果を示す。高温(RGI)法は、短いインキュベーション時間のため、最少の混入DNAをもたらすが、RNA(各シリーズの最初の棒グラフ)の低い収量もまたもたらす。長時間インキュベーションPK法は、より多くのRNAをもたらすが、高い混入DNAがあった(2番目の棒グラフ)。最初の抽出ステップにGITCを加えることの効果は、より少ないDNAをもたらしたが、RNAの収量の減少もまた存在した(3番目の棒グラフ)。2回目のフェノール/クロロホルム抽出ステップにおけるGITCを使用する影響は、1回のフェノール/クロロホルム抽出に比べてわずかに少ないRNA収量にすぎなかった(約1Ctサイクル)(4番目の棒グラフ)。しかしながら、1回のフェノール/クロロホルム抽出と比較して、7CtサイクルのDNAの減少も存在した(NRTシリーズの4番目の棒グラフ)。2回目のフェノール/クロロホルム抽出においてGITCの代わりにTrisを使用した場合、RNAの収量は同じままであったが、DNAが3Ctサイクルだけ減少し(5番目の棒グラフ)、2回目のフェノール/クロロホルム抽出ステップにおけるカオトロープが望ましいことを明らかにした。これらの結果から、カオトロープであるGITCを含む2回目のフェノール/クロロホルム抽出ステップが、RNAの収量及び最も低い混入DNAの観点で最も効果的であると結論づけられる。
実施例5:PK抽出法によって抽出されたRNAの、他の2つの抽出方法で抽出されたRNAとの比較
この実施例は、いくつかの異なった基準によって本発明の方法(「PK」法)によって抽出したRNAを評価する。
図6は、PK法、(先に議論した)RGI法、及び(カラムの精製法を利用するFFPEサンプルからのRNA分離のための市販の方法である)Paradiseキット(Arcturus, Co.、Mountain View, CA)によって腫瘍サンプルB5、D6、及びF5から分離されたRNAの総量の分光学的定量を示す。より高いUV吸光度によって示されているように、PK法は、試験した3種類のサンプルにおいてParadiseキットより高い全RNAの収量をもたらしたが、RGI法と同じくらいの全RNAの収量の高さではなかった。(RNAの純度を示す)260/280吸光度比は、PK法によって分離された2/3のサンプルについて1.8付近であった(純粋なRNAの比は1.8である)。
図7は、腫瘍サンプルF5、D5、及びD6においてPK法、RGI法、及びParadiseキットによって分離した100、300、400、及び1000bpのRNA断片の量を比較する。それぞれの断片の定量的な量を、PCR増幅によって測定した。データは、PK法が、RNA収量及び混入DNAの観点でともに最良の結果をもたらしたことを示している。図7におけるより高いUV吸光度によって示唆されるRGI法からの一見大量のRNA収量と、この実験におけるPCR法によって示された低い収量との見かけ上の矛盾は、おそらく、高温の方法は、260nmの全体的な光学的吸収に寄与する多くの非常に短い断片を生じるが、それらの短い長さのためPCR法のプライマープローブ・セットによって増幅されることができないことで起こる。
図8は、PK法、RGI法、及びParadiseキットによって分離したRNA断片のサイズ分布を比較する。3種類の方法で抽出したRNAを、製造業者の取扱説明書に従ってRNA 6000 Nano Assayを使用し、そして、Agilent 2100 Bioanalyzer Softwareを使用したAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies、Palo Alto, CA)により分析した。この分析器は、より短い長さのRNAがより早く抜け、よって、これらのプロットにおいてy軸のより近くに位置する、サイズ排除カラムの溶出時間によってオリゴ核酸分子を分離する。RGI法は主に短い断片をもたらしたが、その一方で、当該方法(PK方法)によって分離されたRNAは、Paradise法よりも長い断片のさらに高い収量を有する断片サイズの範囲をもたらした。
図9は、当該(PK)方法を使用してFFPE組織から分離したRNA中のβ-アクチン遺伝子の発現と、新鮮な凍結組織の対応するセットからの、従来の酸性チオシアン酸グアニジウム‐フェノール‐クロロホルム(AGPC)法(Chomczynski and Saachi, Anal Biochem (1987) 162:156-159)を使用して分離されたものとの比較を示す。β-アクチン遺伝子発現の素晴らしい相関関係(R=0.89)が、新鮮な凍結標本とFFPE対応標本セットから分離したRNAで得られた。
実施例6:ERCC1に関する未補正の遺伝子発現(UGE)の決定
2組の並行する反応、すなわち「試験」反応及び「較正」反応を実施する。ERCC1増幅反応及びβ-アクチン内部標準の増幅反応は試験反応である。別々のERCC1及びβ-アクチン増幅反応が、較正用RNA鋳型で実施され、そして較正反応とも呼ばれる。TaqMan(登録商標)装置は、4つの異なるサイクル閾値(Ct)値:試験反応からCtERCC1及びCtβ-アクチン、並びに較正反応からのCtERCC1及びCtβ-アクチンをもたらすだろう。2つの反応についてのCt値の違いを、以下の方程式に従って決定する:
ΔCt試験=CtERCC1−Ctβ-アクチン(「試験」反応より)
ΔCt較正用=CtERCC1−Ctβ-アクチン(「較正」反応より)
次のステップは、以下の方程式に従い、数字の2をマイナスΔCt乗することを伴う。
2-ΔCt 試験(「試験」反応より)
2-ΔCt 較正用(「較正」反応より)
次に、TaqMan(登録商標)装置からERCC1についての補正されていない遺伝子発現を得るために、以下の計算を実施する:
ERCC1に関する未補正の遺伝子発現(UGE)=2-ΔCt 試験/2-ΔCt 較正用
既知の相対的なERCC1発現レベルを用いるUGEの標準化
標準化の計算は、ERCC1及び特定の較正用RNAに特有の補正係数(KERCC1)をUGEに乗算する必要がある。補正係数KERCC1を、あらゆる内部標準遺伝子及びあらゆる正確に、先に定量された較正用RNAについて決定することもできる。好ましくは、内部標準遺伝子β-アクチン、及び正確に、先に定量された較正用RNAであるヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)を使用する。特定のこれらの試薬の補正係数KERCC1は1.54×10-3に相当する。
標準化は、TaqMan(登録商標)の製造業者であるApplied BiosystemsがBulletin#2に記載し、そして先に記載したCt法の改良法を使用することで達成される。この手法を実施するために、6つの異なる試験組織のUGEが、先に記載のTaqMan(登録商標)の方法論を使用することでERCC1の発現について分析した。内部標準遺伝子β-アクチン及び較正用RNAであるヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)を使用した。
それぞれのサンプルAG221、AG222、AG252、成人の肺、PC3、AdColの既知の相対的なERCC1発現レベルを、平均していない補正係数Kを算出するために、その対応するTaqMan(登録商標)から導いたUGEで割った。
K平均していない=既知の値/UGE
次に、全てのK値を平均して、ERCC1、較正用RNAからのヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)、及びβ-アクチンに特有なたった1つのKERCC1補正係数を決定する。
従って、pre-TaqMan(登録商標)ERCC1発現研究と一致する規模での未知の組織サンプルにおける補正された相対的なERCC1発現を決定するために、同じ内部標準遺伝子と較正用RNAを使用を前提として、当業者は特定の補正係数KERCC1を、TaqMan(登録商標)装置から導いた未補正の遺伝子発現データ(UGE)に単純に乗じる。
補正された相対的なERCC1発現=UGE×KERCC1
KERCC1は、いずれかの正確にあらかじめ定量された較正用RNA又は内部標準遺伝子を使用して決定され得る。正確にあらかじめ定量されたRNAの今後の供給源は、前記方法に記載のとおり、既知の相対的なERCC1発現レベルを有するサンプルに対して較正され得るか、あるいは先に記載のヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat.#735017)などの先に較正をおこなった較正用RNAに対してここで再び較正されてもよい。
例えば、その後のKERCC1が異なる内部標準遺伝子及び/又は異なる較正用RNAについて決定される場合、当業者は、その特定の内部標準遺伝子に対するERCC1発現レベルが既に決定された組織サンプルに対し、内部標準遺伝子及び較正用RNAの両方を較正しなければならない。こうした決定は、当該技術分野で周知の標準的なpre-TaqMan(登録商標)、定量的RT-PCR技術を使用しておこなわれる。これらのサンプルについての既知の発現レベルは、そのサンプルについてのKを決定するために、それらの相当するUGEレベルによって割られる。続いて、Kの値は、異なる内部標準遺伝子及び/又は較正用RNAに特有な新しいKERCC1を決定するために、既知のサンプルの数に依存して平均される。
実施例7
全ての患者を、プロスペクティブ多施設3治験群無作為化試験のシスプラチン/ゲムシタビン治験群に登録した(GEPC/98-02、進行性NSCLCにおけるシスプラチン/ゲムシタビン(CG)対シスプラチン/ゲムシタビン/ビノレルビン(CGV)対ゲムシタビン/ビノレルビンとそれに続くイホスファミド/ビノレルビン(GV/IV)の連続二剤(sequential doublets)のスペイン肺癌グループのフェーズIII試験)。全ての患者に、3週間ごと、1250mg/m2のGemを1、8日目に、及び100mg/m2のCDDPを1日目に与えた。GEPC/98-02の適格基準は、NSCLCの可測病期IV(無症候性の場合には、脳転移癌適格者を含む)、病期IIIB(悪性胸膜及び/又は心膜浸出液及び/又は鎖骨上リンパ節腫大)、又は米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンス・スコア0 2であった。全ての患者が、試験への参加前に胸部X線写真、及び胸と上腹部のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンを受け、そして、少なくとも6週間ごとに繰り返し評価を受けた。腫瘍反応を、WHO基準に従って、完全奏功、部分奏功、安定疾患、及び進行性疾患と評価した。基準腫瘍計測を定めるのに使用される同じ画像分析法を用いて治療の間、腫瘍を再評価した。
全mRNAを、顕微解剖したFPE前処理腫瘍サンプルから分離し、そして補正された相対的なERCC1発現を定量的RT-PCR法を使用して計測した。こうしたサンプルからのmRNA分離のための方法の1つが、本明細書中、及び1999年12月20日を出願された米国特許出願番号第09/469,338号に記載されている。前記出願を本明細書中に援用する。
統計解析
マンホイットニーU検定を、連続試験変数の補正された相対的なERCC1発現と、二値変数(患者の性別、年齢の中央値より高い又は低い年齢、体重減少の存在、胸膜浸出液の存在、腫瘍の病期)との間に有意な関連がないかどうか試験するために使用した。クラスカル・ウォリス検定を、複数のグループ(ECOGパフォーマンス・ステータス、組織病理学)の中で補正された相対的なERCC1発現に有意差がないかどうか試験するのに使用した。フィッシャーの正確確率検定を、応答、及び二分された補正された相対的なERCC1発現値を含めた断定的な臨床病理値の分析に使用した。
全ての患者を、最初の研究治療から死亡又はデータを打ち切るまで追跡した。カプラン‐マイヤー生存曲線とログランク検定を、生存と無病生存についての単変量分布を分析するために使用した。MillerとSiegmund(Biometrics 1982; 38:1011-1016)及びHalpern(Biometrics 1982; 38:1017-1023)の最大カイ二乗法を、(生存の観点から)芳しくない予後のサブグループと、良好な予後のサブグループとに患者を最もうまく分ける発現値を決定するために、グループ化の強度を計測するのに使用する統計値としてのログランク検定と一緒に採用した。最大カイ二乗分析に基づく関連性の強度の評価基準として解釈されるP値を決定するために、1000のブート・ストラップ様シュミレーションを、関連性がないとの仮説の下、最大カイ二乗統計分布を推定するために使用した(Biometrics 1982; 38:1017-1023)。単変量解析法で有意であった因子のCoxの比例ハザード・モデリングを、どの因子が生存に対して有意な影響を及ぼすか同定するために実施した。SPSSバージョン10.0.5ソフトウェア(SPSS Inc.、Chicago 111.)を、全ての統計解析に使用した。全てのP値が両側P値であった。
補正された相対的なERCC1発現レベル
ERCC1 mRNA発現は、分析した56個のサンプル全てで検出可能であった。内部標準ハウスキーピング遺伝子であるβ-アクチンの発現に対する補正された相対的なERCC1発現の中央値は、6.7×10-3であった(範囲0.8×10-3〜24.6×10-3)。補正された相対的なERCC1発現レベルと、いずれかの要因、年齢(P=0.66)、性別(P=0.18)、無作為化前6ヶ月の体重減少の存在(P=0.74)、腫瘍の病期(IIIB対IV、P=0.39)、又は胸膜浸出液の存在(P=0.25、全てのマンホイットニーU検定)との間には有意な関連がなかった。異なるパフォーマンス・ステート(P=0.48、クラスカル・ウォリス検定)又は異なる腫瘍細胞タイプ(全4つの腫瘍タイプ、P=0.10、クラスカル・ウォリス検定)を有する患者の間の補正された相対的なERCC1発現レベルにも有意差がなかったが、腺癌(中央値5.2×10-3、P=0.015、マンホイットニー検定)と比較してSCC腫瘍(中央値8.6×10-3)において補正された相対的なERCC1発現レベルは有意に高かった。
化学療法に対する応答
評価可能だった47人の患者の全奏功率は44.7%であった。完全奏功及び部分奏功、すなわち「応答する」腫瘍(中央値4.3×10-3、範囲1.2×10-3〜24.6×10-3)における補正された相対的なERCC1発現レベルは、安定疾患及び進行性疾患、すなわち「応答しない」腫瘍(中央値7.85×10-3、範囲0.8×10-3〜24.3×10-3、P=0.31マンホイットニー検定)と有意な違いがなかった。全てのERCC1レベルに比べて高い及び低い補正された相対的なERCC1発現値を有する応答する腫瘍と応答しない腫瘍の比の間にも有意差がなかった(全てフィッシャーの正確確率検定)。
閾値を下回る補正された相対的なERCC1発現を有する腫瘍(「低い」発現、52%の応答する患者)における奏功率は、閾値を上回る補正された相対的なERCC1発現を有する腫瘍(「高い」発現、36.4%の応答する患者、フィッシャーの正確確率検定、P=0.38)より高かった。
患者の全生存と補正された相対的なERCC1発現レベルとの関連性
全生存時間の中央値は、36.6週間(範囲0〜113.4週間)であり、そして進行性のものに対する時間の中央値は、24.4週間(範囲0〜102.9週間)であった。芳しくない予後のサブグループと良好な予後のサブグループに患者を分ける補正された相対的なERCC1発現レベルの閾値を特定するためのログランク検定及び最大カイ二乗統計値の使用は、判別値の範囲が中央値を含んでいたことを示した。そのため、中央値を生存分析についての閾値として使用した。そのため、補正された相対的なERCC1発現値の閾値を、NSCLCに関して6.7×10-3であると決定した。図1は、補正された相対的なERCC1発現レベルの閾値を上回る及び下回る腫瘍内の補正された相対的なERCC1発現レベルを有する患者に関するカプラン‐マイヤー生存曲線を示す。図14に示されているように、閾値を下回る補正された相対的なERCC1発現レベルを有する患者が、閾値を超える補正された相対的なERCC1発現レベルを有する患者の20.4週間(95%のC.I. 6.9、33.9週間)と比較して、61.6週間(95%のC.I. 42.4、80.7週間)の有意に長い生存期間中央値を有する。腫瘍の病期に関して調整された、低い若しくは高い補正された相対的なERCC1発現と全生存との関連に関するログランク統計値は3.97であり、P値は0.046であった。調整されていないログランクの結果が図14に示されている。
この値が胃癌を患っている患者の全生存に関連することが以前の研究において示されたので、5.8×10-3の独特の補正された相対的なERCC1発現閾値を試験した(Metzger et al., J Clin Oncol 1998; 16:309 316)。全生存は、5.8×10-3より低い補正された相対的なERCC1発現レベルを有する、この研究のNSCLC患者の群について、5.8×10-3より低いERCC1レベルを有する患者と比較して、有意に良好であったが(ログランク統計値6.37、P=0.011)、より高い6.7×10-3の補正された相対的なERCC1発現閾値レベルは、より強力な識別値である。
カプラン・マイヤー生存曲線とログランク検定を使用した単変量解析において全生存に有意に関連する他の要素は、前処理体重減少の存在とECOGパフォーマンス・ステータスであった。患者の年齢(P=0.18)、性別(P=0.87)、腫瘍の病期(P=0.99)、腫瘍細胞型(P=0.63)、及び胸膜浸出液の存在(P=0.71)は全生存に関して有意な予後因子でなかった。補正済みの相対的なERCC1発現レベル、ECOGパフォーマンス・ステータス、及び体重減少は、Cox比例ハザード回帰モデルの多変数解析においても有意な予後因子のままであった(図14)。腫瘍の病期で層別化されたCox回帰モデルに関するP値は、ERCC1については0.038であり、体重減少については0.017であり、そしてECOGパフォーマンス・ステータス(PS0対1若しくは2)については0.02であった。
この研究で、より低いERCC1 mRNA発現レベルと、癌を患っている患者のための白金ベースの化学療法剤を用いた治療後の改善された生存との間に関連性を見出した。
実施例8:DPDに関する未補正の遺伝子発現(UGE)の決定
2組の並行する反応を実施する。「試験」反応及び「較正」反応。DPD増幅反応及びβ-アクチン内部標準の増幅反応は試験反応である。別々のβ-アクチン及びDPD増幅反応が較正用RNAで実施され、そして較正反応とも呼ばれる。TaqMan装置は、4つの異なるサイクル閾値(Ct)値:試験反応からCtDPD及びCtβ-アクチン、並びに較正反応からのCtDPD及びCtβ-アクチンをもたらすだろう。2つの反応についてのCt値の違いを、以下の方程式に従って決定する:
ΔCt試験=CtDPD−Ctβ-アクチン(「試験」反応より)
ΔCt較正用=CtDPD−Ctβ-アクチン(「較正」反応より)
次のステップは、以下の方程式に従い、数字の2をマイナスΔCt乗することを伴う。
2-ΔCt 試験(「試験」反応より)
2-ΔCt 較正用(「較正」反応より)
次に、TaqMan装置からDPDについての補正されていない遺伝子発現を得るために、以下の計算を実施する:
DPDに関する未補正の遺伝子発現(UGE)=2-ΔCt 試験/2-ΔCt 較正用
以前に公表された値を用いるUGEの標準化
標準化の計算は、DPD及び特定の較正用RNAに特有の補正係数(KDPD)をUGEに乗算する必要がある。補正係数KDPDを、あらゆる内部標準遺伝子及びあらゆる正確に、先に定量された較正用RNAを使用して決定することができる。好ましくは、内部標準遺伝子β-アクチン、及び正確に、先に定量された較正用RNAであるUniversal PE RNA;Cat.#4307281、lot#3617812014、Applied Biosystems製を使用する。
標準化は、TaqManの製造業者であるApplied BiosystemsがBulletin#2に記載し、そして先に記載したCt法の改良法を使用することで達成される。この手法を実施するために、6つの異なる以前に公表された試験組織のUGEが、先に記載のTaqManの方法論を使用することでDPDの発現について分析された。内部標準遺伝子β-アクチン及び較正用RNAであるUniversal PE RNA;Cat.#4307281、lot#3617812014、Applied Biosystems製を使用した。
Salongaら(その全体を本明細書中に援用する)により以前に記載されたそれぞれのサンプルL7、L91、L121、L150、L220、及びL164の相対的なDPD発現レベル(PV)を、平均していない補正係数Kを算出するために、その対応するTaqManから導いたUGEで割った。
K平均していない=PV/UGE
次に、全てのK値を平均して、DPD、Universal PE RNA;Cat.#4307281、lot#3617812014較正用RNA、及びβ-アクチンに特有なたった1つのKDPD補正係数を決定する。
従って、以前に公表されたpre-TaqMan DPD発現研究と一致する規模での未知の組織サンプルにおける補正された相対的なDPD発現を決定するために、同じ内部標準遺伝子と較正用RNAを使用を前提として、当業者は特定の補正係数KDPDを、TaqMan装置から導いた未補正の遺伝子発現データ(UGE)に単純に乗じる。
補正された相対的なDPD発現=UGE×KDPD
KDPDは、いずれかの正確にあらかじめ定量された較正用RNAを使用して決定され得る。正確にあらかじめ定量されたRNAの今後の供給源は、前記方法に記載のとおり、公表されたサンプルに対して較正され得るか、あるいは先に記載のUniversal PE RNA;Cat.#4307281、lot#3617812014などの先に較正をおこなった較正用RNAに対してここで再び較正されてもよい。
実施例9:FPE結腸直腸サンプルのDPD発現
先に記載の方法を用いて進行性結腸直腸癌を患っている34人の患者から34個の腫瘍サンプルを分析した。全ての患者を、プロスペクティブ多施設の欧州5-FU/CPT11クロスオーバー試験V239の一部として静脈内5-FU/LV併用レジメンを用いて治療した。全ての患者を、連続5日間15分間の点滴で投与される静脈内5-FU 425mg/m2、及び同様に連続5日間にわたる点滴により同時投与されるロイコボリン20mg/m2により治療した。このレジメンを、第一次又は第二次一時療法のいずれかとして与えた。
応答を、完全奏功、部分奏功、及び軽度奏功を含めたあらゆる応答と規定した場合、9人の患者(25.5%)が5-FU/LVに応答した。進行性疾患又は安定疾患を患っている患者を、応答しない患者(25人の患者、73.5%)として分類した。全mRNAを、顕微解剖したFPE前処理腫瘍サンプルから分離し、そして記載のとおり、DPD/β-アクチンの相対的なmRNA発現レベルを定量的PCRを使用して計測した。
応答する及び応答しない患者群のに関する平均した補正DPD:β-アクチン・レベルは、それぞれ0.87×10-3及び2.04×10-3であった。2つの独立したサンプル・セット内での値の順位を比較するマンホイットニーU検定を、応答する患者群と応答しない患者群における補正された相対的なDPD発現レベルを比較するために使用した。相対的なDPDレベルは、応答しない患者と比較して、応答する患者群において有意に低かった(P=0.02)。これらの患者におけるDPD mRNA発現と5-FU/LVに対する応答との関連を図16に示す。これらのデータは、DPD発現が5-FUベースの化学療法に対する応答に関する予後因子であることを示す。
実施例10:TSに関する未補正の遺伝子発現(UGE)の決定
2組の並行する反応を実施する。「試験」反応及び「較正」反応。図24。TS増幅反応及びβ-アクチン内部標準の増幅反応は試験反応である。別々のTS及びβ-アクチン増幅反応が較正用RNA鋳型で実施され、そして較正反応とも呼ばれる。TaqMan(登録商標)装置は、4つの異なるサイクル閾値(Ct)値:試験反応からCtTS及びCtβ-アクチン、並びに較正反応からのCtTS及びCtβ-アクチンをもたらすだろう。2つの反応についてのCt値の違いを、以下の方程式に従って決定する:
ΔCt試験=CtTS−Ctβ-アクチン(「試験」反応より)
ΔCt較正用=CtTS−Ctβ-アクチン(「較正」反応より)
次のステップは、以下の方程式に従い、数字の2をマイナスΔCt乗することを伴う。
2-ΔCt 試験(「試験」反応より)
2-ΔCt 較正用(「較正」反応より)
次に、TaqMan(登録商標)装置からTSについての未補正の遺伝子発現を得るために、以下の計算を実施する:
TSに関する未補正の遺伝子発現(UGE)=2-ΔCt 試験/2-ΔCt 較正用
既知の相対的なTS発現レベルを用いるUGEの標準化
標準化の計算は、TS及び特定の較正用RNAに特有の補正係数(KTS)をUGEに乗算する必要がある。補正係数KTSを、あらゆる内部標準遺伝子及びあらゆる正確に、先に定量された較正用RNAについて決定することができる。好ましくは、内部標準遺伝子β-アクチン、及び正確に、先に定量された較正用RNAであるUniversal PE RNA;Cat.#4307281、lot#3617812014、Applied Biosystems製を使用する。特定のこれらの試薬の補正係数KTSは12.6×10-3に相当する。
標準化は、TaqMan(登録商標)の製造業者であるApplied BiosystemsがBulletin#2に記載し、そして先に記載したCt法の改良法を使用することで達成される。この手法を実施するために、6つの異なる以前に公表された試験組織のUGEが、先に記載のTaqMan(登録商標)の方法論を使用することでTSの発現について分析された。これらの組織サンプルは、Salonga, et al., Clinical Cancer Research, 6:1322 1327, 2000に記載されている。ここで、前記文献の全体を本明細書中に援用する。内部標準遺伝子β-アクチン及び較正用RNAであるUniversal PE RNA;Cat.#4307281、lot#3617812014、Applied Biosystems製を使用した。
それぞれのサンプルL7、L91、L121、L150、L220、L164の以前に公表された相対的なTS発現レベルを、平均していない補正係数Kを算出するために、その対応するTaqMan(登録商標)から導いたUGEで割った。Salonga, et al., Clinical Cancer Research, 6:1322 1327, 2000。ここで、前記文献の全体を本明細書中に援用する。
K平均していない=既知の値/UGE
次に、全てのK値を平均して、TS、Applied BiosystemsのUniversal PE RNA;Cat.#4307281、lot#3617812014較正用RNA、及びβ-アクチンに特有のたった1つのKTS補正係数を決定する。
従って、pre-TaqMan(登録商標)TS発現研究と一致する規模での未知の組織サンプルにおける補正された相対的なTS発現を決定するために、同じ内部標準遺伝子と較正用RNAを使用を前提として、当業者は特定の補正係数KTSを、TaqMan(登録商標)装置から導いた未補正の遺伝子発現データ(UGE)に単純に乗じる。
補正された相対的なTS発現=UGE×KTS
KTSは、いずれかの正確にあらかじめ定量された較正用RNA又は内部標準遺伝子を使用して決定され得る。正確にあらかじめ定量されたRNAの今後の供給源は、前記方法に記載のとおり、既知の相対的なTS発現レベルを有するサンプルに対して較正され得るか、あるいは先に記載のUniversal PE RNA;Cat.#4307281、lot#3617812014、Applied Biosystems製などの先に較正をおこなった較正用RNAに対してここで再び較正されてもよい。
例えば、その後のKTSが異なる内部標準遺伝子及び/又は異なる較正用RNAについて決定される場合、当業者は、その特定の内部標準遺伝子に対するTS発現レベルが既に決定されたか又は公表された組織サンプルに対し、内部標準遺伝子及び較正用RNAの両方を較正しなければならない。こうした決定は、当該技術分野で周知の標準的なpre-TaqMan(登録商標)、定量的RT-PCR技術を使用しておこなわれる。これらのサンプルについての既知の発現レベルは、そのサンプルについてのKを決定するために、それらの相当するUGEレベルによって割られる。続いて、Kの値は、異なる内部標準遺伝子及び/又は較正用RNAに特有な新しいKTSを決定するために、既知のサンプルの数に依存して平均される。
実施例11:患者の選択と化学療法治療
全ての患者は、1998年〜2000年の南カリフォルニア大学メディカルセンターにおいて例外的な(compassionate)プロトコール3C-98-3により登録され、以下のオキサリプラチン/5-FU併用療法レジメンに:130mg/m2のオキサリプラチンに加え、5-FUの連続点滴、を受けた。全ての患者が、5-FUによる前治療の効果がなく、60%(30/50)は、イリノテカン(CPT-11)による追加の第二次治療の効果がなかった。全ての患者が、プロトコール登録時に病期IVの結腸直腸癌の活動性疾患を示した。
臨床評価と応答基準
化学療法中、パフォーマンス・ステータス、体重、腹痛、全血球検査、及び血清クレアチニンと血中尿素窒素レベルについての毎週の評価を記録した。コンピューター断層撮影(CT)を使用して全身腫瘍組織量を計測する。二次元的に計測可能な腫瘍質量を、プロトコール登録時に必要とした。療法に対して応答する患者を、少なくとも6週間で全身腫瘍組織量が50%以上に減少した患者として分類した。応答しない患者は、安定疾患又は癌の進行を有する者を含んだ。生存を、5-FU/オキサリプラチンによる化学療法開始の日からいずれかの原因での死亡までの日数としても計算した。最後の追跡評価まで生きていた患者はその時点で打ち切った。
統計解析
TaqMan(登録商標)分析は、2つの絶対的な測定値(着目の遺伝子:内部標準遺伝子)の間の比として表現されるレベルをもたらす。マン‐ホイットニー検定及びクラスカル‐ウォリス試験を使用し、(連続変数として)TS及びERCC1発現と患者の人口統計との関連を評価した。Zar, Biostatistical Analysis. Prentice-Hall, Inc Englewood Cliffs, N.J. (1974)、それぞれ109〜114ページ及び139〜142ページ。MillerとSigmund(Biometrics 38: 1011-1016, 1982)及びHalpern(Biometrics 38: 1017-1023, 1982)の最大カイ二乗法を、低い及び高いTS及びERCC1発現サブグループ中の患者を最もうまく二分する切り捨て閾値レベルを決定するために適用した。ピアソンのカイ二乗検定を、二分された分子マーカーと化学療法に対する応答の間の関連性を評価するために使用した。Zar, Biostatistical Analysis. Prentice-Hall, Inc Englewood Cliffs, N.J. (1974), pp. 59-68。ハザード比を死亡の相対リスクを計算するために使用した。Schulman, Infection Control & Hospital Epidemiology, 18:65-73, 1997。これらの計算は、観察された事件数、及びログランク検定統計値により計算される予想された事件数の使用を伴う、パイク推定値(Pike estimate)に基づいた(Pike, J R Stat Soc Series A 135: 201-203, 1972)。最大カイ二乗分析に基づく関連性の強度の評価基準として解釈されるP値を決定するために、1000のブート・ストラップ様シュミレーションを、関連性がないとの仮説の下、最大カイ二乗統計分布を推定するために使用した(Haipern, Biometrics 38: 1017 1023,1982)。有意水準をp<0.05に設定した。
人口統計、そして応答及び生存評価に利用可能な患者
14人(28%)の女性と36人(72%)の男性から成り、59歳(最年少:34;最年長:83)の中央値を有する合計50人の患者を、この研究において評価した。この群の人種的背景は、39人の白人、6人のラテンアメリカ人、3人のアジア人、及び2人のアフリカ系アメリカ人を含んでいた。50人の患者全てが、TS発現とERCC1発現レベルを生存ろ関連づけるために評価可能だった。45人(90%)が、この分子パラメータと先に引用した基準による応答の関連性を試験するために評価可能であった。
TS発現レベルとERCC1発現レベル
全mRNAを、顕微解剖したFPE前処理腫瘍サンプルから分離し、ERCC1:β-アクチン又はTS:β-アクチンの相対的なmRNA発現レベルを定量的RT-PCR法を使用して計測した。こうしたサンプルからのmRNAの分離方法は、1999年12月20日を出願された米国特許出願番号第09/469,338号に記載されている。ここで、前記文献の全体を本明細書中に援用する。先に記載したとおり、ERCC1及びβ-アクチンの発現レベルを測定するために、逆転写/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR法)ベースのアッセイ系を使用した。補正された相対的なERCC1及び/又はTS発現を、先に記載したとおり決定した。
TS遺伝子発現は、分析された50個のサンプルの全てで検出可能であった。ハウスキーピング遺伝子に対するβ-アクチンに対する補正されたTS発現の中央値は、3.4×10-3(最小0.18×10-3;最大:11.5×10-3)であった。補正されたERCC1遺伝子発現は、分析した47個(94%)のサンプルで検出可能であった。補正されたERCC1遺伝子発現の中央値は、2.53×10-3(最小:0.00;最大:14.61×10-3)であった。性別、年齢、及び人種的出身により分析した場合、補正されたTS及びERCC1 mRNA発現における有意差は見られなかった。
TS発現と関連した生存
この研究で分析された50人の患者について、10.5ヶ月(95%のC.I.:1.8、21.2)の追跡期間の中央値をもつとき、生存の中央値は、8.4ヶ月(95%のC.I.:6.4、12.3)であった。7.5×10-3のTS閾値を使用したとき、43人(86%)の患者が低い補正されたTS発現レベルをもち、7人(14%)の患者が高い補正されたTS発現レベルをもっていた。補正されたTS遺伝子発現と生存との間の関連性を評価するために、ログランク検定を使用した。それぞれの生存曲線を図17に示す、そして低い補正されたTS発現群において10.2ヶ月の生存の中央値を示し(95%のC.I.:7.4、15.1)、及び高い補正されたTS発現群において1.5ヶ月の生存の中央値を示す(95%のC.I.:1.1、2.1)(P<0.001;ログランク検定)。6ヶ月での生存の確率は、高い発現を有する患者の群についての0.00と比較して、補正されたTS発現≦7.5×10-3を有する患者について0.77であった。補正されたTSレベル>7.5×10-3を有する患者は、単変量解析において、TSレベル≦7.5×10-3の患者と比較して、8.4倍(95%のCI:2.63、27.13)高い死亡の相対リスクを有する(p<0.001、図17)。
ERCC1発現と関連した生存
4.9×10-3の閾値を使用したとき、40人(80%)の患者が低い補正されたERCC1発現をもち、そして、10人(20%)の患者が高い補正されたERCC1発現をもっていた。図22は、生存対補正されたERCC1発現レベルの推定された確率に関するカプラン・マイヤー・プロットを表し、そして、低い発現を有する患者群について10.2ヶ月の生存の中央値を示し(95%のC.I.:7.8、15.1)及び高い発現を有する患者群について1.9ヶ月の生存の中央値を示す(95%のC.I.:1.1、4.9)(P<0.001;ログランク検定)。6ヶ月での生存の確率は、補正されたERCC1発現>4.9×10-3を有する患者についての0.16と比較して、補正されたERCC1発現≦4.9×10-3を有する患者について0.76であった。補正されたERCC1レベル>4.9×10-3を有する患者は、単変量解析法において、補正されたERCC1レベル≦4.9×10-3を有する患者と比較して、4.8倍(95%のCI:2.09、15.88)高い死亡の相対リスクを有する(p<0.001;図20)。
組み合わせたERCC1及びTSの発現と関連した生存
低い補正されたTS及びERCC1発現レベルは、36人(72%)の患者で検出され、そして14人(28%)の患者が高い補正されたTS及び/又はERCC1発現レベルをもっていた。両遺伝子に関して低い発現レベルを有する患者は、有意により長く生存した。生存の中央値は、低い補正されたTS及びERCC1発現を有する者について11.1ヶ月であり(95%のC.I.:8.4、17.5)、そして高い補正されたTS及び/又はERCG1発現を有する者について1.9ヶ月であった(95%のC.I.:1.1、4.9)(P<0.001、ログランク検定;図19)。両遺伝子について低い補正された発現レベルを有する患者は、TS又はERCC1の少なくとも一方の遺伝子について高い補正された発現レベルをもつ患者についての0.10と比較して、0.85の6ヶ月での生存の確率を有する。少なくとも1の遺伝子(TS又はERCC1)の高い補正された発現をもつ患者に関する死亡の相対リスクは、腫瘍において両遺伝子に関して低い発現レベルを示す患者と比較して、7.12倍(95%のC.I.:2.60、19.52)であった(P<0.001;図20)。TS及びERCC1 mRNA発現は、層別解析により明らかなように互いに独立である(図24)。
応答とTS及びERCC1遺伝子発現レベルとの関連性
補正されたTS発現レベルの中央値は、45人の計測可能な患者について3.4×10-3(最小:0.18×10-3;最大:11.50×10-3)であり、50人の患者‐集団全体と同一であった。低い及び高いTS発現を有する患者に腫瘍を分けることによって応答を分析するとき、部分的な応答を有する患者の4人中3人(75%)、安定疾患を患っている患者の27人中26人(96%)、そして進行性疾患を患っている患者の14人中9人(64%)が、低い補正されたTS発現を有した(P=0.02;フィッシャーの正確確率検定)。
補正されたERCC1発現レベルの中央値は、45人の計測可能な患者について2.7×10-3(最小:0.00;最大:14.61×10-3)であり、そして50人の患者‐集団全体と有意な違いはなかった。しかしながら、ERCC1発現レベルは、化学療法に対する応答と統計的に有意な関連性はなかった(p=0.29、フィッシャーの正確確率検定)。
実施例12:EGFRに関する未補正の遺伝子発現(UGE)の決定
2組の並行する反応を実施する。「試験」反応及び「較正」反応。図29。EGFR増幅反応及びβ-アクチン内部標準の増幅反応は試験反応である。別々のEGFR及びβ-アクチン増幅反応が較正用RNA鋳型で実施され、そして較正反応とも呼ばれる。TaqMan(登録商標)装置は、4つの異なるサイクル閾値(Ct)値:試験反応からCtEGFR及びCtβ-アクチン、並びに較正反応からのCtEGFR及びCtβ-アクチンをもたらすだろう。2つの反応についてのCt値の違いを、以下の方程式に従って決定する:
ΔCt試験=CtEGFR−Ctβ-アクチン(「試験」反応より)
ΔCt較正用=CtEGFR−Ctβ-アクチン(「較正」反応より)
次のステップは、以下の方程式に従い、数字の2をマイナスΔCt乗することを伴う。
2-ΔCt 試験(「試験」反応より)
2-ΔCt 較正用(「較正」反応より)
次に、TaqMan(登録商標)装置からEGFRについての補正されていない遺伝子発現を得るために、以下の計算を実施する:
EGFRに関する未補正の遺伝子発現(UGE)=2-ΔCt 試験/2-ΔCt 較正用
既知の相対的なEGFR発現レベルを用いるUGEの標準化
標準化の計算は、EGFR及び特定の較正用RNAに特有の補正係数(KEGFR)をUGEに乗算する必要がある。補正係数KEGFRを、あらゆる内部標準遺伝子及びあらゆる正確に、先に定量された較正用RNAについて決定することができる。好ましくは、内部標準遺伝子であるβ-アクチン、及び正確に、先に定量された較正用RNAであるヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)を使用する。特定のこれらの試薬の補正係数KEGFRは1.54に相当する。
標準化は、TaqMan(登録商標)の製造業者であるApplied BiosystemsがBulletin#2に記載し、そして先に記載したCt法の改良法を使用することで達成される。この手法を実施するために、6つの異なるFPE試験組織のUGEが、先に記載のTaqMan(登録商標)の方法論を使用することでEGFRの発現について分析された。内部標準遺伝子であるβ-アクチン及び較正用RNAであるヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)を使用した。
それぞれのサンプルAG221、AG222、AG252、成人肺、PC3、AdColの既に知られている相対的なEGFR発現レベルを、平均していない補正係数Kを算出するために、その対応するTaqMan(登録商標)から導いたUGEで割った。
K平均していない=既知の値/UGE
次に、全てのK値を平均して、EGFR、較正用RNAからStratageneのヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)、及びβ-アクチンに特有のたった1つのKEGFR補正係数を決定する。
従って、pre-TaqMan(登録商標)EGFR発現研究と一致する規模での未知の組織サンプルにおける補正された相対的なEGFR発現を決定するために、同じ内部標準遺伝子と較正用RNAを使用を前提として、当業者は特定の補正係数KEGFRを、TaqMan(登録商標)装置から導いた未補正の遺伝子発現データ(UGE)に単純に乗じる。
補正された相対的なEGFR発現=UGE×KEGFR
KEGFRは、いずれかの正確にあらかじめ定量された較正用RNA又は内部標準遺伝子を使用して決定され得る。正確にあらかじめ定量されたRNAの今後の供給源は、前記方法に記載のとおり、既知の相対的なEGFR発現レベルを有するサンプルに対して較正され得るか、あるいは先に記載のヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)などの先に較正をおこなった較正用RNAに対してここで再び較正されてもよい。
例えば、その後のKEGFRが異なる内部標準遺伝子及び/又は異なる較正用RNAについて決定される場合、当業者は、その特定の内部標準遺伝子に対するEGFR発現レベルが既に決定された組織サンプルに対し、内部標準遺伝子及び較正用RNAの両方を較正しなければならない。こうした決定は、当該技術分野で周知の標準的なpre-TaqMan(登録商標)、定量的RT-PCR技術を使用しておこなわれる。これらのサンプルについての既知の発現レベルは、そのサンプルについてのKを決定するために、それらの相当するUGEレベルによって割られる。続いて、Kの値は、異なる内部標準遺伝子及び/又は較正用RNAに特有な新しいKEGFRを決定するために、既知のサンプルの数に依存して平均される。
実施例13:HER2-neuに関する未補正の遺伝子発現(UGE)の決定
2組の並行する反応を実施する。「試験」反応及び「較正」反応。図26。HER2-neu増幅反応及びβ-アクチン内部標準の増幅反応は試験反応である。別々のHER2-neu及びβ-アクチン増幅反応が較正用RNA鋳型で実施され、そして較正反応とも呼ばれる。TaqMan(登録商標)装置は、4つの異なるサイクル閾値(Ct)値:試験反応からCtHER2-neu及びCtβ-アクチン、並びに較正反応からのCtHer2-neu及びCtβ-アクチンをもたらすだろう。2つの反応についてのCt値の違いを、以下の方程式に従って決定する:
ΔCt試験=CtHer2-neu−Ctβ-アクチン(「試験」反応より)
ΔCt較正用=CtHer2-neu−Ctβ-アクチン(「較正」反応より)
次のステップは、以下の方程式に従い、数字の2をマイナスΔCt乗することを伴う。
ΔCt試験=CtHer-neu−CTβ-アクチン(「試験」反応より)
ΔCt較正用=CtHer-neu−CTβ-アクチン(「較正」反応より)
次のステップは、以下の方程式に従い、数字の2をマイナスΔCt乗することを伴う。
2-ΔCt 試験(「試験」反応より)
2-ΔCt 較正用(「較正」反応より)
次に、TaqMan(登録商標)装置からHER2-neuについての補正されていない遺伝子発現を得るために、以下の計算を実施する:
Her2-neuに関する未補正の遺伝子発現(UGE)=2-ΔCt 試験/2-ΔCt 較正用
既知の相対的なHER2-neu発現レベルを用いるUGEの標準化
標準化の計算は、HER2-neu及び特定の較正用RNAに特有の補正係数(KHER2-neu)をUGEに乗算する必要がある。補正係数KHER2-neuを、あらゆる内部標準遺伝子及びあらゆる正確に、先に定量された較正用RNAについて決定することができる。好ましくは、内部標準遺伝子であるβ-アクチン、及び正確に、先に定量された較正用RNAであるヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)を使用する。β-アクチン及び正確に、先に定量された較正用RNAであるヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)を使用することにより、補正係数KHER2-neuは12.6×10-3に相当する。
標準化は、TaqMan(登録商標)の製造業者であるApplied BiosystemsがBulletin#2に記載し、そして先に記載したCt法の改良法を使用することで達成される。この手法を実施するために、6つの異なるFPE試験組織のUGEが、先に記載のTaqMan(登録商標)の方法論を使用することでHER2-neuの発現について分析された。内部標準遺伝子であるβ-アクチン及び較正用RNAであるヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)を使用した。
それぞれのサンプルAG221、AG222、AG252、成人肺、PC3、AdColの既に知られている相対的なHER2-neu発現レベルを、平均していない補正係数Kを算出するために、その対応するTaqMan(登録商標)から導いたUGEで割る。
K平均していない=既知の値/UGE
次に、全てのK値を平均して、HER2-neu、ヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)較正用要素、及びβ-アクチンに特有のたった1つのKHER2-neu補正係数を決定する。
従って、pre-TaqMan(登録商標)HER2-neu発現研究と一致する規模での未知の組織サンプルにおける補正された相対的なHER2-neu発現を決定するために、同じ内部標準遺伝子と較正用RNAを使用を前提として、当業者は特定の補正係数KHER2-neuを、TaqMan(登録商標)装置から導いた未補正の遺伝子発現データ(UGE)に単純に乗じる。
補正された相対的なHER2-neu発現=UGE×KHER2-neu
KHER2-neuは、いずれかの正確にあらかじめ定量された較正用RNA又は内部標準遺伝子を使用して決定され得る。正確にあらかじめ定量されたRNAの今後の供給源は、前記方法に記載のとおり、既知の相対的なHER2-neu発現レベルを有するサンプルに対して較正され得るか、あるいは先に記載のヒト肝臓全RNA(Stratagene、Cat#735017)などの先に較正をおこなった較正用RNAに対してここで再び較正されてもよい。
例えば、その後のKHER2-neuが異なる内部標準遺伝子及び/又は異なる較正用RNAについて決定される場合、当業者は、その特定の内部標準遺伝子に対するHER2-neu発現レベルが既に決定された又は公表された組織サンプルに対し、内部標準遺伝子及び較正用RNAの両方を較正する必要がある。こうした決定は、当該技術分野で周知の標準的なpre-TaqMan(登録商標)、定量的RT-PCR技術を使用しておこなわれる。これらのサンプルについての既知の発現レベルは、そのサンプルについてのKを決定するために、それらの相当するUGEレベルによって割られる。続いて、Kの値は、異なる内部標準遺伝子及び/又は較正用RNAに特有な新しいKHER2-neuを決定するために、既知のサンプルの数に依存して平均される。
実施例14:異なるEDTA濃度と異なるインキュベーション温度の試験
実施例1に記載の手法を、抽出溶液中のEDTAの4種類の異なる濃度(0.1mM、0.6mM、3.6mM、及び20mM)及び4種類の異なるインキュベーション温度(44、50、56、及び62℃)を使用して実施した。これらの変動を、2種類の異なるFFPEサンプルを用いて評価した。4種類の異なるプライマー・セットを使用した‐100、300、400、及び1000bpプライマー(プライマーがRNAの3’(ポリA)末端から100、300、400、又は1,000bp離れていることを意味する)。オリゴdT逆転写酵素反応を実施した。抽出工程は、様々な温度にて16時間、(先に記載した)Tris/EDTA/PKバッファーを使用した。1回のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(PCI)抽出を実施して、混入DNAを取り除いた。分離したRNAを50μlのTris中に再懸濁した。
データは、全てのインキュベーション温度で効果があり、そして異なるEDTAの濃度で効果があったが、(最低Ctsによって分かるとおり)長い断片RNAを得るのに好ましいパラメーターが3.6mMのEDTA及び50〜56℃の温度範囲を使用したことを示した。以下の表2を参照のこと。
Figure 2010530761
実施例15:キレート剤としてのEDTAに代わるクエン酸ナトリウム又はEGTAの使用
この実験において、3種類の異なるキレート剤:EDTA、EGTA、及びクエン酸ナトリウム、を試験した。3.6mMのEDTAと共に、EGTA及びクエン酸ナトリウムを0.1、0.6、3.6、及び20mMにて試験した。サンプルを50℃にて16時間インキュベートした。1回のフェノール/クロロホルム・ステップを使用して、混入DNAを取り除いた。分離したRMAを50μlのTris中に再懸濁した。結果は、0.6及び3.6mMのクエン酸ナトリウムが良好なキレート剤であることを示し、そして、それが20mMと同じくらい高い濃度でさえ効果があることを示した。以下の表3を参照のこと。
Figure 2010530761
実施例16:PK濃度とインキュベーション時間
0.5×、1×、2×、及び4×のPK濃度を含むTris/EDTA/PKバッファーを含んでなる抽出溶液を除いて、先に記載したようにRNA抽出を実施した。1×PK濃度=500μg/ml。3、6、12、16、及び20時間のインキュベーション時間を評価し、そして1回のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(PCI)抽出を実施した。RNAを50μlのTris中に再懸濁した。オリゴdT逆転写酵素反応を実施した。結果は、50℃にて、好ましいインキュベーション時間が16時間であったことを示した。PKの異なる濃度の全てで効果があり、そして1×で、高濃度と同じように効果があったように見える。表4を参照のこと。
Figure 2010530761
実施例17:FFPE膵管腺癌(PDA)組織からのmRNA及びgDNAの分離
当該発明の方法を使用して、FFPE膵管腺癌(PDA)組織サンプルからRNAを分離した。全体的なmRNA発現及びgDNAコピー数のデータを、1つの顕微解剖サンプルから得、そして同様のプラットフォームによる別々に処理した組織からのデータと比較した。(gDNA用の)プローブが重複する割合の中央値及び堅調なコピー数/mRNA発現の一致によって証明されるように、mRNA及びgDNAデータが、凍結された、顕微解剖されていない腫瘍組織よりも優れた品質に相当することがわかった。
この後腹膜の臓器からの取得困難な組織、及び得られた核酸の低い品質が主な理由で、膵管腺癌(PDA)原発性腫瘍の発現とコピー数パターンについてはほとんど知られていない。加えて、重度の線維形成が間質混入につながり(Chu, G.C., et al, Stromal biology of pancreatic cancer. J Cell Biochem, 2007.101(4): p. 887-907)、そして臓器の極端な自己分解特性が劣化した核酸品質にしばしばつながる。
腫瘍組織の顕微解剖を、マニュアル又はレーザー解剖手法を使用して実施した。顕微解剖後に、gDNAを、Response Genetics(Los Angeles, CA)における独自の抽出手法によって分離した。全RNAを本発明の方法を用いて分離した。RNA増幅とcDNA調製の2つのラウンドを、先に記載したとおり実施した(Lord, R.V., et al., Telomerase reverse transcriptase expression is increased early in the Barrett's metaplasia, dysplasia, adenocarcinoma sequence. J Gastrointest Surg, 2000. 4(2): p. 135-42)。cRNAを合成し、そしてAffymetrix Hu133Plus2チップにハイブリダイズさせた。同時抽出されたgDNA(70ng)を、記載したとおり、分子反転プローブ(MIP)プラットフォームによる全ゲノム対立遺伝子特異的コピー数分析にかけた(Wang, Y., et al., Analysis of molecular inversion probe performance for allele copy number determination. Genome Biol, 2007. 8(11): p. R246)。
ゲノムDNA及びmRNAを、PDAの1つの顕微解剖したFFPEサンプルから首尾よく、一貫して同時分離することができ、且つ、全ゲノム規模の発現及び対立遺伝子特異的コピー数について分析することができることが分かった。FFPE MIPデータは、顕微解剖されていない、凍結された腫瘍サンプルと遜色がなかった。遺伝子発現は、別々に抽出されたサンプルなどの場合、コピー数を反映する。顕微解剖及び核酸の同時抽出(mRNAとgDNA)のこのアプローチは、アーカイバルなFFPE組織を複合プラットフォームによる全ゲノム分析に利用可能にし、そして、新鮮な材料がめったに入手可能でない遺伝病の研究及び臨床試験に特に関連しているゲノム解析に利用可能な大規模な病理学的アーカイブ内の実在している貴重な患者サンプルからのデータを最大限に生かし始める。
実施例18:先に議論したプライマーの配列:
ERCC1-504F 配列番号1 gggaatttgg cgacgtaatt c
ERCC1-574R 配列番号2 gcggaggctg aggaacag
GST-F 配列番号3 cctgtaccag tccaatacca tcct
GST-R 配列番号4 tcctgctggt ccttcccata
DPD3A 配列番号5 aggacgcaag gagggtttg
DPD3a-13R 配列番号6 gtccgccgag tccttactga
DPD3b-651F 配列番号7 gaagcctatt ctgcaaagat tgc
DPD3b-736R 配列番号8 gagtacccca atcgagccaa a
TS-763F 配列番号9 ggcctcggtg tgccttt
TS-825R 配列番号10 gatgtgcgca atcatgtacg t
EGFR-1753F 配列番号11 tgcgtctctt gccggaat
EGFR-1823R 配列番号12 ggctcaccct ccagaagctt
Her2-neu 2671F 配列番号13 ctgaactggt gtatgcagat tgc
Her2-neu 2699R 配列番号14 ttccgagcggccaagtc
本明細書中に引用した全ての参考文献の全体を、本明細書中に援用する。本明細書を通じて、参考文献は参照番号を用いて参照される。こうした参考文献を以下に提供する。
参考文献
Figure 2010530761
Figure 2010530761
Figure 2010530761
Figure 2010530761
Figure 2010530761

Claims (34)

  1. 固定された組織サンプルからの長い断片RNAの分離方法であって、以下のステップ:
    a)抽出溶液中、約44〜約62℃の範囲内の温度にて3時間以上の期間、上記固定された組織サンプルを加熱し、ここで上記抽出溶液は、約0.1mM〜約20mMの濃度のキレート剤、及びプロテイナーゼKを含んでなり;そして
    b)混入DNAを取り除き;そして
    c)上記抽出溶液から上記RNAを分離する、
    を含んでなる前記方法。
  2. 前記加熱が、約45〜約60℃、約48〜約58℃、約48〜約55℃、約48〜52℃、及び約50℃の温度範囲から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記加熱が、約50〜56℃である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記期間が、4時間より長い、請求項1に記載の方法。
  5. 前記期間が、8時間より長い、請求項4に記載の方法。
  6. 前記期間が、12時間より長い、請求項5に記載の方法。
  7. 前記期間が、14時間より長い、請求項6に記載の方法。
  8. 前記期間が、約16時間である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記期間が、約16時間である、請求項3に記載の方法。
  10. 前記キレート剤が、EDTA、EGTA、クエン酸塩、クエン酸、サリチル酸、サリチル酸の塩、フタル酸、2,4-ペンタンジン、ヒスチジン、ヒスチジノール二塩酸塩、8-ヒドロキシキノリン類、8-ヒドロキシキノリン、クエン酸、及びo-ヒドロキシキノンから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記キレート剤が、EDTAである、請求項1に記載の方法。
  12. 前記キレート剤が、クエン酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
  13. 前記キレート剤が、約0.6mM〜約5.0mMの濃度にて存在する、請求項1に記載の方法。
  14. 前記キレート剤が、約0.6mM〜約3.6mMの濃度にて存在する、請求項1に記載の方法。
  15. 前記キレート剤が、3.6mMの濃度にて存在する、請求項1に記載の方法。
  16. EDTAが、約3.6mMにて存在する、請求項11に記載の方法。
  17. クエン酸ナトリウムが、約0.6mM〜約3.6mMにて存在する、請求項12に記載の方法。
  18. 前記混入DNAを取り除くステップが、1回目と2回目のフェノール抽出を用いて実施され、ここで上記2回目のフェノール抽出がカオトロピック剤を含んでなる、請求項1に記載の方法。
  19. 前記カオトロピック剤が、尿素、イソチオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、グアニジンHCl、塩化グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、テトラクロロ酢酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、テトラクロロ酢酸ルビジウム、ヨウ化カリウム、及びトリフルオロ酢酸セシウムから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
  20. 前記カオトロピック剤が、イソチオシアン酸グアニジニウムである、請求項1に記載の方法。
  21. 前記固定されたサンプルが、ホルマリン固定されパラフィン包埋された組織サンプルである、請求項1に記載の方法。
  22. 前記固定された、ホルマリン固定されパラフィン包埋された組織サンプルが、5年前のもの又はそれより新しいものである、請求項21に記載の方法。
  23. DNAseを利用しない、請求項1に記載の方法。
  24. 固定された組織サンプルからの長い断片RNAの分離方法であって、以下のステップ:
    a)抽出溶液中、約50℃〜約56℃の範囲内の温度にて約16時間の期間、固定された組織サンプルを加熱し、そして
    b)少なくとも1回目及び2回目のフェノール抽出を実施して、上記抽出溶液から上記RNAを分離する、ここで上記2回目のフェノール抽出はカオトロピック剤を含んでなる、
    を含んでなる前記方法。
  25. ホルマリン固定されパラフィン包埋された組織サンプルからの長い断片RNAの分離方法であって、以下のステップ:
    a)抽出溶液中、約45〜約62℃の範囲内の温度にて3時間以上の期間、ホルマリン固定されパラフィン包埋された組織サンプルを加熱し、ここで上記抽出溶液は、2.5mM〜約5.0mMの濃度のキレート剤、及び12.5μgのプロテイナーゼK/mLの濃度のプロテイナーゼKを含んでなり;
    b)少なくとも1回目及び2回目のフェノール抽出を実施して、上記抽出溶液から上記RNAを分離する、ここで上記2回目のフェノール抽出はカオトロピック剤を含んでなる、
    を含んでなる前記方法。
  26. ホルマリン固定されパラフィン包埋された組織からの長い断片RNAの抽出方法であって、以下のステップ:
    a)約3.6mMの濃度のEDTA又はクエン酸ナトリウム、及び12.5μgのプロテイナーゼK/mLの濃度のプロテイナーゼKを含んでなる抽出溶液中、約50℃〜56℃の温度にて約16の期間、固定されパラフィン包埋された組織サンプルを加熱し;そして
    b)少なくとも1回目及び2回目のフェノール抽出を実施して、上記抽出溶液から上記RNAを分離する、ここで上記2回目のフェノール抽出はカオトロピック剤を含んでなる、
    を含んでなる前記方法。
  27. 前記長い断片RNAが、200ヌクレオチドより長い長さである、請求項1に記載の方法。
  28. 前記長い断片RNAが、300ヌクレオチド以上の長さである、請求項1に記載の方法。
  29. 前記抽出方法が、10%未満のDNAしか同時分離しない、請求項1に記載の方法。
  30. 請求項1に記載の方法によって分離した長い断片RNA。
  31. 請求項30に記載の長い断片RNAから作り出されたcDNA。
  32. 遺伝子発現解析における、請求項30に記載のRNAの使用。
  33. 固定されパラフィン包埋された組織サンプル中の標的遺伝子発現レベルの測定方法であって、以下のステップ:
    (a)請求項1に記載の方法によって上記組織サンプルから長い断片RNAを分離し;
    (b)上記mRNAを、標的遺伝子領域を増幅できるオリゴヌクレオチド・プライマー対を使用した増幅にかけて、増幅したmRNAを得;そして
    (c)内部標準遺伝子のmRNAの数量に相対する標的遺伝子mRNAの数量を決定する、
    を含んでなる前記方法。
  34. 前記標的遺伝子が、ERCC1、TS、DPD、Her2neu、Gst-pi、RRM1、又はKrasである、請求項33に記載の方法。
JP2010513488A 2007-06-22 2008-06-23 固定されたサンプルからの長い断片rnaの分離方法 Pending JP2010530761A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US94578507P 2007-06-22 2007-06-22
PCT/US2008/067914 WO2009002937A2 (en) 2007-06-22 2008-06-23 Methods for isolating long fragment rna from fixed samples

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2010530761A true JP2010530761A (ja) 2010-09-16

Family

ID=39951594

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010513488A Pending JP2010530761A (ja) 2007-06-22 2008-06-23 固定されたサンプルからの長い断片rnaの分離方法

Country Status (12)

Country Link
US (1) US20090092979A1 (ja)
EP (1) EP2173874A2 (ja)
JP (1) JP2010530761A (ja)
KR (1) KR20100012056A (ja)
CN (1) CN101784663A (ja)
AR (1) AR067135A1 (ja)
AU (1) AU2008268467A1 (ja)
CA (1) CA2691209A1 (ja)
IL (1) IL202889A0 (ja)
NZ (1) NZ582219A (ja)
TW (1) TW200911988A (ja)
WO (1) WO2009002937A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017506517A (ja) * 2014-02-28 2017-03-09 ジェン−プローブ・インコーポレーテッド ホルムアルデヒドを含有する液体系細胞診用保存剤中検体から核酸を単離する方法

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011082415A2 (en) * 2010-01-04 2011-07-07 Qiagen Gaithersburg, Inc. Methods, compositions, and kits for recovery of nucleic acids or proteins from fixed tissue samples
GB201002717D0 (en) * 2010-02-18 2010-04-07 Rolls Royce Plc An apparatus and a method of determining the quality of a friction weld
CA2790941C (en) * 2010-02-26 2018-10-23 Qiagen Gmbh Method for isolating rna from a rna and dna containing sample
US20130023656A1 (en) * 2010-04-08 2013-01-24 Qiagen Gmbh Method for selective isolation and purification of nucleic acids
JP2013531987A (ja) * 2010-06-14 2013-08-15 キアゲン ゲーエムベーハー 固定生物学的試料から生体分子を抽出するためのターゲット細胞または組織を決定するための方法
TWI425977B (zh) 2010-11-24 2014-02-11 Ind Tech Res Inst 將福馬林固定石蠟包埋之組織進行脫蠟的方法與其套組
EP2744916A4 (en) 2011-07-13 2015-06-17 Primeradx Inc MULTIMODAL METHODS FOR SIMULTANEOUS DETECTION AND QUANTIFICATION OF MULTIPLE NUCLEIC ACIDS IN A SAMPLE
CN105247065B (zh) 2013-03-15 2021-07-09 雅培分子公司 用于核酸提取的组合物和方法
CN103725672B (zh) * 2013-10-29 2016-04-27 厦门艾德生物医药科技股份有限公司 一种从福尔马林固定石蜡包埋组织中共分离dna和rna的试剂盒及方法
US9771572B2 (en) 2014-02-28 2017-09-26 Gen-Probe Incorporated Method of isolating nucleic acid from specimens in liquid-based cytology preservatives containing formaldehyde
US9771571B2 (en) 2014-02-28 2017-09-26 Gen-Probe Incorporated Method of isolating nucleic acid from specimens in liquid-based cytology preservatives containing formaldehyde
US10696994B2 (en) * 2018-09-28 2020-06-30 Bioo Scientific Corporation Size selection of RNA using poly(A) polymerase
EP4127164A1 (en) * 2020-03-31 2023-02-08 QIAGEN GmbH Nucleic acid purification from fixed biological samples

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007500009A (ja) * 2003-07-25 2007-01-11 アンビオン インコーポレーティッド 固定試料からrnaを調製するための方法および組成物

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5705336A (en) 1995-03-07 1998-01-06 The United States Of America As Represented By The Department Of Health And Human Services Assay for sensitivity of tumors to DNA-platinating chemotherapy
US6248535B1 (en) 1999-12-20 2001-06-19 University Of Southern California Method for isolation of RNA from formalin-fixed paraffin-embedded tissue specimens
US7005278B2 (en) 2001-03-02 2006-02-28 Danenberg Kathleen D Method of determining dihydropyrimidine dehydrogenase gene expression
US6582919B2 (en) 2001-06-11 2003-06-24 Response Genetics, Inc. Method of determining epidermal growth factor receptor and HER2-neu gene expression and correlation of levels thereof with survival rates
US6518416B1 (en) 2000-12-01 2003-02-11 Response Genetics, Inc. Method of determining a chemotherapeutic regimen based on ERCC1 expression
US7049059B2 (en) 2000-12-01 2006-05-23 Response Genetics, Inc. Method of determining a chemotherapeutic regimen based on ERCC1 and TS expression
US7544471B2 (en) 2005-07-30 2009-06-09 Agilent Technologies, Inc. Preparing RNA from a wax-embedded tissue specimen

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007500009A (ja) * 2003-07-25 2007-01-11 アンビオン インコーポレーティッド 固定試料からrnaを調製するための方法および組成物

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6013015653; J. Clin. Microbiol. Vol.33, No.4, 1995, pp.821-823 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017506517A (ja) * 2014-02-28 2017-03-09 ジェン−プローブ・インコーポレーテッド ホルムアルデヒドを含有する液体系細胞診用保存剤中検体から核酸を単離する方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2009002937A3 (en) 2009-02-12
AU2008268467A1 (en) 2008-12-31
AR067135A1 (es) 2009-09-30
CA2691209A1 (en) 2008-12-31
EP2173874A2 (en) 2010-04-14
KR20100012056A (ko) 2010-02-04
NZ582219A (en) 2012-03-30
TW200911988A (en) 2009-03-16
IL202889A0 (en) 2011-08-01
CN101784663A (zh) 2010-07-21
US20090092979A1 (en) 2009-04-09
WO2009002937A2 (en) 2008-12-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2010530761A (ja) 固定されたサンプルからの長い断片rnaの分離方法
US8026062B2 (en) Method of determining a chemotherapeutic regimen by assaying gene expression in primary tumors
CA2437044C (en) Method of determining a chemotherapeutic regimen based on ercc1 expression
AU2002249768A1 (en) Method of determining a chemotherapeutic regimen based on ERCC1 expression
KR20030081339A (ko) Ercc1 및 ts 발현을 기초로 한 화학요법 섭생을결정하는 방법
JP2006500946A (ja) 精巣精上皮腫の診断方法
JP2005508603A (ja) ジヒドロピリミジン脱水素酵素遺伝子発現の判定方法
JP4690446B2 (ja) ジヒドロピリミジン脱水素酵素遺伝子発現の判定方法
US20220403474A1 (en) Targeted measure of transcriptional activity related to hormone receptors
JP2008530974A (ja) 乳癌関連遺伝子znfn3a1
KR100918927B1 (ko) 글루타치온-S-트랜스퍼라제 Pi 발현에 기초한화학요법의 결정 방법
US20100267732A1 (en) Prognostic Molecular Markers for ET-743 Treatment
KR101014345B1 (ko) Ercc1 발현에 기초한 화학요법을 결정하는 방법
WO2018095933A1 (en) Method of prognosticating, or for determining the efficiency of a compound for treating cancer
WO2016104794A1 (ja) Braf変異検出によるegfr阻害剤の効果予測
EP2309002A1 (en) Signature for the diagnosis of colorectal cancer aggressiveness
US20120190729A1 (en) Mirna inhibition of six1 expression
WO2002044423A2 (en) Method of determining a chemotherapeutic regimen by assaying gene expression in primary tumors
JP2011062212A (ja) ジヒドロピリミジン脱水素酵素遺伝子発現の判定方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110610

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130402

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20130903