JP2010529623A - 電池のためのリチウム遷移金属ポリアニオン粉末の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、リチウムイオン電池の正極のための改良された粉末の製造方法に関し、該粉末は、リチウム、バナジウム及びホスフェートを含む。該方法は、高い沸騰温度の溶媒を用いて該前駆物質の懸濁液を形成すること、及び、該懸濁液を250℃〜400℃の反応温度に加熱して、該前駆物質を所望の固体生成物に転換することを含む。該固体生成物は、該懸濁液から分離され、該生成物を結晶化するために高温に加熱される。得られた生成物は、小さい粒子サイズを維持し、従って、該生成物を電池に適した粒子サイズに減少させるための製粉又は他の処理の必要性が回避される。
【選択図】図1

Description

本願は、リチウムイオン電池の正極において用いられる材料及びそのような材料の製造方法に関する。
リチウムイオン電池は、高い効率、エネルギー密度、高セル電圧及び長寿命が認められ、評価されており、1990年代初期から商業的に使用されているが、常に、より少ないコストでより良い電池を製造することが要求されている。
現在のリチウムイオン電池の鍵となる成分は、正極の金属プレート上に活物質として提供されるリチウム遷移金属ポリアニオン塩粉末である。鉄、コバルト、マンガン、及びニッケル粉末が用いられており、そして、他の遷移金属が検討されている。コバルトは高性能であるが、再充電の間に破裂の可能性があるために安全でないことが証明されている。鉄は低コストであるために魅力的であるが、LiCoO2及びLiNiO2などのような他の遷移金属化合物の比エネルギー密度が提供されない。バナジウムは提案されているものの、まだ商業的に用いられていない。これは恐らく、費用が高いためと他のより開発された系を超える利点を得ることがわずかしか成功していないためである。
種々のリチウム遷移金属ポリアニオン塩粉末を合成するために多くの方法が研究されている。それらの方法は、固相状態反応、炭素熱還元(carbon thermal reduction)、及び水素還元法を含む。しかしながら、それらの方法はそれぞれ、幾つかの問題を有している。主な問題は、a) 粒子の凝集、b) 不完全な反応、c) 出発原料中における望まない化合物の存在(existence)又は実在(presence)及び最終生成物中におけるそれらの引き続いての存在、d) 得られた材料の乏しい電気化学的性質、及びe) 高価な前駆物質及び/又は複雑なプロセスを必要とすること。
リチウム遷移金属ポリアニオン塩粉末は、最も典型的には固体反応を用いて合成される。固体粒子の形態にある前駆物質は、混合されて粒子の密接な(intimate)混合物を生じる。反応に影響させるため熱を加えた場合、固体粒子は、該混合物中の種々の粒子の中及び外への反応物質の拡散を伴う種々の表面反応を介して互いに反応する。この理由のため、所望の生成物の収率を高くするために、まず所望の粒子サイズの粒子を提供し、次いで、それらの粒子を混合してすみずみまで高度に分散した前駆物質との混合物を作り、前駆物質の間の高度な接触を得ることが好ましい。これを達成するため、粒子混合物は典型的に、ボールミル及び/又は物理的混合のような方法で調製される。活物質の粒子が比較的大きいか及び/又はサイズが不均一であるという理由で、粒子間の表面接触のための表面の最適な状態が良好に達成されないことが多い。
それら上記の理由のために、リチウム遷移金属ポリアニオン塩粉末を合成するためのよりよい方法を提供することが望まれている。
Goodenoughらに対する米国特許第5,910,382(以降、「Goodenough」)は、再充電可能なリチウム電池のためのカソード物質の改良及び特に(PO4)3-のような酸化物ポリアニオンの封入を開示している。Goodenoughは、マンガン、鉄、コバルト及びニッケルを好むように思われるが、一方、Goodenoughは、バナジウムが既に開発されたコバルト、ニッケル及びマンガンを用いる系よりも安価で、また有毒な遷移金属が少ないと述べている。
Barkerらに対する米国特許第5,871,866(以降、「Barker」)は、リチウムイオン電池のカソードにおいて使用するための多くのリチウム遷移金属酸化物配合物を開示している。リチウムバナジウムホスフェート[Li3V2(PO4)3又は「LVP」]は、特に検討された例の一つである。
Barker及びGoodenoughは、それぞれ、前駆物質が混ぜ合わされて本質的に同種の粉末混合物を形成する、上記の固体反応を含む、カソード粉末を生成する方法を開示している。それぞれ、粒子接触がよい粒子を得るために、粉末の前駆物質をプレスしてペレットにすること、及び該物質の合成の間の幾つかの断続的な製粉工程を記載している。
Stokerらに対する米国特許第6,913,855(以降「Stoker」)もまた、LVPを含むリチウムイオン電池のカソードにおいて使用するためのリチウム遷移金属酸化物配合物のアレイを開示している。Stokerは、いくつかの前駆物質が溶媒中で部分的に溶解する溶媒を含むスラリー中で前駆物質を混ぜている。該スラリーは、明らかに、高度に分散した前駆物質を作り、これは次いで、所望の生成物を生成する反応を開始する前にスプレードライされる。Barkerのように、所望の生成物の収率を高くするために必要な、高度の接触を得るための一つの選択肢は、反応の開始の前にスプレードライされた粉末をタブレットに圧縮することである。
本発明は、電池の技術の状態及び電池の製造において有用である材料を改良する。より具体的には、本発明は、リチウムバナジウムホスフェート[Li3V2(PO4)3]粉末の製造のための改良された方法を提供する。
図1は、LVP粉末を作るための本発明の方法の第1態様を示すブロック図である。 図2は、LVP粉末を作るための本発明の方法の第2態様を示すブロック図である。 図3は、炭素コーティングしたLVP(CVLP)粉末を作るための本発明の方法の第3態様を示すブロック図である。 図4は、本発明に従って作られたLVP及びCLVP粉末の放電容量を比較したグラフである。 図5aは、本発明に従って作られたLVP及びCLVP粉末についての第1サイクルにおける電極電位プロフィールを比較したグラフである。 図5bは、本発明に従って作られたLVP及びCLVP粉末についての第10サイクルにおける電極電位プロフィールを比較したグラフである。 図6aは、本発明に従って作られた異なるレベルのピッチコーティングを有するCLVPの第1サイクルの間の電極電位プロフィールを比較したグラフである。 図6bは、本発明に従って作られた異なるレベルのピッチコーティングを有するCLVPの第10サイクルの間の電極電位プロフィールを比較したグラフである。 図7は、本発明に従って作られた異なるレベルのピッチコーティングを有するCLVPの異なるサイクル数における放電容量を比較したグラフである。 図8は、本発明に従ったCLVP粉末の走査型電子顕微鏡写真である。
発明の詳細な説明
本発明は、そのさらなる利点とともに、明細書と図面の組み合わせを参照してよく理解されるであろう。
本発明は、幾つかの面又は側面を含む。本発明は電池の種々のパラメーター及び質に関するため、議論及び理解のために、本発明の材料と従来の材料又は従来方法からの材料との比較のために幾つかの定義が提供される。
ここでは、以下の用語は当該分野におけるそれらの通常の意味を有し、また、以下の定義を特に含むよう意図される。
「セル」は、電気的エネルギーを発生又は貯蔵するために用いられる基礎的な電気化学的ユニットである。
「電池」は、必要とされる作動電圧及び電流レベルを提供するための適切な連続/平行配列で電気的に相互接続された二以上の電気化学的セルである。通常の使用では、「電池」という用語は、単一のセルデバイスにも適用される。
「カソード」は、電気化学的セルにおいて還元が生じる場所の電極である。放電の間、セルの陽極はカソードである。充電の間、状況は逆転し、セルの陰極がカソードである。
「容量」(mAh/g)は、ある定義された電極の電位窓の中で、単位重量当たり、与えられた電極材料に貯蔵可能及び該材料から放出可能な電気的電荷の量である。
「容量劣化(Capacity Fade)」又は「フェージング(Fading)」は、サイクルによる再充電可能な電池の容量の漸進的な損失である。「容量損失」と同義である。
「クーロン効率(%)」は、電極材料から放電された電気的充電の量と、放電前の状態の電極を充電するために用いられた電気的充電の量の比である。
「電極電位」は、関心のある電極と他の電極(参照電極)の間の電気的な電圧である。
「安定化」は、炭素-残留物-形成物質(CRFM)の粒子を不溶解性にする方法であり、そのようなCRFM粒子の表面は、その後の熱処理の温度が安定化CRFMの即時融点を超過しない限り、その後の熱処理の間、軟化又は融解せず、隣接するCRFM粒子と融合しない。
「炭化(Carbonization)」は、炭素含有化合物を「実質的に炭素」であると特徴づけられる材料に転換する熱的方法である。「実質的に炭素」は、ここでは、該材料の少なくとも95重量%が炭素であることを示す。
「炭素-残留物-形成物質」(CRFM)は、不活性雰囲気中で熱的に分解されて、600℃の炭化温度又はそれ以上の温度にされたときに、「実質的な炭素」である残留物を形成する任意の材料である。
より具体的な本発明に転換すると、本発明は、微細なLi3V2(PO4)3 (LVP)粉末、即ち、小さい粒子サイズを有する粉末を作るための方法に関する。微細なLVP粉末は、特に、高電力のリチウムイオン電池の正極のための材料として有用である。本発明において、それらの粉末の好ましい態様は、我々がCLVPと記載している炭素コーティングを用いて生成される。CLVP粉末は他のカソード粉末と比較して改善された効率、容量及び安定性を有すると思われる。さらに、本発明のCLVPを用いて製造されたリチウムイオン電池は、他のカソード粉末で作られたリチウムイオン電池と比較して改良された性能を有すると思われる。
LVPを生成するための本発明は、高沸騰温度溶媒を用いた前駆物質の懸濁液を形成するための方法、及び液体溶液中で所望のLVP生成物を形成するための反応を推進するための方法を含む。反応は、約50℃から約400℃までの温度で生じるが、約300℃未満の最高温度が好ましく、約250℃未満の最高温度がより好ましい。LVP形成の際、それは溶液から沈殿する。適切な溶媒は、反応前駆物質が確実な溶解性を有し、所望の温度範囲内で熱的に安定である、任意の極性有機化合物又は極性有機化合物の混合物である。適切な溶媒の例は、種々のアルコール、酸、ニトリル、アミン、アミド、キノリン、及びピロリドンなど、及び、それらの溶媒の混合物を含む。具体的な例は、1-ヘプタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチレントリアミン、及びNMP(n-メチル-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、又は1-メチル-2-ピロリドン)、及びそれらの溶媒の任意の組合せを含む。該溶媒の沸点は、少なくとも20℃であることが好ましく、より好ましくは約100℃である。最も好ましい溶媒は、水より大きい沸点を有し、また、前駆物質と非反応性の極性溶媒である。また、好ましい溶媒は、水と混和性である。沸点が202℃であるNMPのような極性溶媒が好ましい。
図1は、本発明の第1態様に従った方法のフロー図を示す。懸濁液は、三酸化バナジウム及び溶媒で作られる。第1溶液は、ホスフェート又は他のポリアニオン、リチウム塩及び水により作られる。三酸化バナジウム懸濁液及び第1溶液は、第2懸濁液を形成するために組み合わされる。第2懸濁液は、第1の温度T1にまで加熱されながら連続的に撹拌されて、LVP沈殿を形成する反応を推進される。
好ましい前駆物質は、バナジウム源として三価の三酸化バナジウム(V2O3)粉末、リチウム源として炭酸リチウム(Li2CO3)又は水酸化リチウム(LiOH)、及びホスフェート源としてリン酸(H3PO4)である。アンモニウム水和物ホスフェート((NH4)2HPO4)又はアンモニウムホスフェートNH4H2PO4 は、ホスフェート又はポリアニオン源として用いられることもできる。当該分野における通常の技術者は、最終リチウムバナジウムポリアニオン生成物において要求されるポリアニオン源として用いられることができるポリアニオン含有化合物が非常に多くあることを認めるであろう。バナジウム酸化物粉末の粒子サイズについて任意の特異的な要求はないが、三酸化バナジウム粉末前駆物質は、反応速度を上昇させるために、30マイクロメーター未満の平均粒子サイズに製粉されることが好ましく、より望ましくは20マイクロメーター未満に製粉される。リチウム前駆物質は、典型的には、溶媒/水の溶液に溶解する。
前駆物質及び溶媒を混合した後、得られた懸濁液を、該混合物を撹拌しながら、窒素、ヘリウム、一酸化炭素、又は二酸化炭素ガスなどのような不活性雰囲気中で加熱する。この懸濁液を400℃程度に高い温度(T1)、好ましくは300℃より低く、より好ましくは250℃より低い温度に、加熱する。加熱により、前駆物質の反応と所望の化合物Li3V2(PO4)3の形成が生じ、これは形成の際に溶液から沈殿する。本発明の方法の重要な特徴は、極性溶媒の存在が、Li3V2(PO4)3 の粒子が大きなサイズに成長することを防ぎ、及び、粒子の凝集を防ぎ、また、Li3V2(PO4)3 が緩い(loose)(流動可能な(flowable))粉末として残り、続いて溶液から分離されることである。
例えば、遠心分離又は濾過のような、固液分離のための任意の従来の方法を、LVPを溶液から分離するために用いることができる。前駆物質材料が、高品質であり、最終生成物に有害で有り得る不純物を殆ど含まないか全く含まない場合、分離は、引き続いての結晶化工程の間に溶媒を単に蒸発させることによって達成できる。
図1を参照すると、LVPは次いで、所望の結晶構造を形成するために高温T2に供される。結晶化工程は、不活性雰囲気中で、400℃より高い温度で、反応生成物を加熱することを含む。加熱温度は、400〜1000℃であり、好ましくは500〜900℃であり、より好ましくは500〜850℃である。得られた生成物は、少なくとも99%のLi3V2(PO4)3で構成される緩い(流動可能な)粉末として残る。
図2は、本発明の第2態様を示す。第2態様において、全ての前駆物質(三酸化バナジウム、リチウム塩及びホスフェート)は、溶媒及び必要であれば水と合わされ、単一の懸濁液を作る。得られた懸濁液は、第1の温度T1に加熱されながら連続的に撹拌され、LVP沈殿物を形成する反応を推進される。懸濁液から分離された後、Li3V2(PO4)3 は、粉末として残る。次いで、LVPは、高温T2に供されてLVPを結晶化する。LVPを懸濁液から分離する方法と第2態様に従って調製されたLVPを結晶化する方法は、第1態様に従って調製されたLVPを分離及び結晶化する方法と同じである。
LVPを作るためのそれらの新しい方法は、従来文献に記載された固体合成方法によって製造されたLVPとは相違し且つより良いLVPを製造する。第1に、本発明の方法は懸濁液中で行われて固体反応とは異なるために、LVP粒子のサイズを容易に且つ経済的に、商業的電池製造のために望ましい小さく均一なサイズで製造できる。高電力電池において使用するためのLVPの望ましい粒子サイズは、10μm未満であり、好ましくは1μm未満である。固体反応方法において、ペレット又はタブレットは、商業的電池製造者によって使用するのに適した適度に均一なサイズの粒子を製造するために、固体反応の完了後に、大規模に製粉されるか又は加工される必要がある。さらなる製粉又は処理の工程は、製造の総費用を考慮したとき、時間及び費用を上昇させる。反応物の濃度が反応速度、得られる固体の粒子サイズ、及び得られた粒子の凝集に影響するため、本発明は、追加の製粉工程又はさらなる処理工程なしで、1μmより小さいLVP粒子を自然に生成することができる。
LVPを製造するための本発明の方法の他の重要な利点は、混入物、不純物又は望ましくない材料が最終生成物中に存在する可能性がほとんどないということである。ほとんどの望ましくない材料は、不純物のほとんどが溶液中に溶解して残るために、中間固体生成物を溶媒から分離する際に分離される。固体反応では、前駆物質中に含まれるか又は該反応の副産物として生成される混入物、不純物又は望ましくない材料は、最終生成物の中に保有される可能性が高い。
本発明の他の利点は、より低い費用の前駆物質が、LVPの製造において用いることができるということである。特に、好ましい前駆物質は、炭酸リチウム(Li2CO3)、リン酸(H3PO4)及び三酸化バナジウム(V2O3)を含む。炭酸リチウム及びリン酸は、最も小さいコストのリチウム及びホスフェート源であり、三酸化バナジウムは高バナジウム含量を有し、また、バナジウム源として適切な他のほとんどのバナジウム化合物と比較して低コスト材料である。ほとんどすべての前駆物質が最終生成物に転換されることを考慮すると、本発明の方法は、それらの化合物を製造するための既知の技術と比較して低コストでLVP及び他のカソード粉末生成物を提供する。
上記のように、本発明のさらなる側面は、LVPが炭素でコーティングされたCLVPである。このコーティングは、リチウムイオン電池の陽極側におけるリチウム挿入プロセスのために必要である、増強された電気伝導率を提供する。多くの従来技術のリチウムイオン電池は、必要な電気伝導率を提供するために、カーボンブラック又はグラファイトのような他の炭質粉末を、リチウム遷移金属粉末と物理的に混合している。LVPを炭素でコーティングすることは、カソード材料の重量及び容積のほとんどがLVPにあり、それが該粉末に固有の部分であるように、極めて薄いコーティングを有するように最適化できるように見えることにおいて幾つかの利点を有する。CLVPをコーティングする炭素の好ましい添加(loading)は、少なくとも0.1重量%から約10重量%であり、好ましくは約0.5重量%から約5重量%であり、より好ましくは約0.5重量%から約3重量%であり、さらにより好ましくは約1重量%から約2.5重量%である。
LVPを製造するための他の方法は、良好な性能のために必要な電気伝導率のレベルを提供するために、カーボンブラック又は他の炭素質物がLVPと混合されることを必要とする。これは、電池の容積及び重量の両方を増加させ、CLVPから製造された同様の性能を有する電池と比較して、電池をより大きく、重くする。
図3は、本発明の本態様に従った方法のフロー図を示す。該方法は、上記及び図1及び2で記載したようなLVPを製造するために説明された工程からなるが、幾つかの追加の工程が続く。
追加の工程は、上記結晶化工程から反応したLVP粒子を炭素-残留物-形成物質(CRFM)でコーティングすることを含む、LVPを炭素コーティング又はピッチコーティング工程に供することを含む。CRFMの後、コーティングは表面に沈積し、コーティングされた粉末は溶媒から分離され、溶媒中に残ったCRFMは乾燥される。乾燥されたコーティングされたLVP粉末は、約500℃〜約1000℃、好ましくは約700℃〜約900℃、より好ましくは約800℃〜約900℃の温度に加熱され、CRFMを炭素に転換される。得られた粉末は、炭素コーティングされたLVP又はCLVPである。本態様において、T2での結晶化工程は任意であり省略可能である。それ故、T4での加熱工程は、CRFMの炭素への転換とLVPの結晶化の両方を達成する。T4での最終的な加熱処理の前に、任意のT3での加熱処理工程(以降は安定化と称する)を、コーティングされたCRFMの融解又は融合を防ぐために行ってもよい。
LVP粉末は、任意の適切な方法によってCRFMでコーティングされることができる。非限定的な例として、LVP粉末をコーティングするための有用な技術は、融解又は適切な溶媒とともに溶液を形成することのような方法によってCRFMを液化する工程を、液化した炭素質物をLVP粒子上にスプレーするようなコーティング工程か、又は液化したCRFM中にLVP粒子を浸漬し、続いて任意の溶媒から乾燥させることと組合せることを含む。CRFMはまた、コーティングされたLVP粉末を形成する任意の適切な方法によって、LVP粉末上に沈殿されてもよい。一つの態様において、コーティングされたLVP粉末は、LVP粉末を懸濁液液体中に分散させてLVP粉末懸濁液を形成することによって形成されることもできる。次いで、CRFMを含む溶液がLVP粉末懸濁液に加えられ、CRFMの一部がCRFM-LVP混合物中でLVP粒子上に沈殿し得るように混合される。CRFM溶液は、溶媒中で炭素質物を溶解することによって調製することができる。
好ましい態様において、LVPをCRFMでコーティングするために、石油ピッチ又はコールタールピッチ及び一以上の溶媒を用いる溶液相沈殿プロセスが用いられる。
CRFMの均一なコーティングを形成するために特に有用な方法は、LVP粒子の表面上に部分的に又は選択的にCRFMを沈殿させることである。適切な溶媒中のCRFMの濃縮溶液は、CRFMの全て又は実質的大部分を溶解するために、CRFMを溶媒又は溶媒の組み合わせに配合することによって形成される。石油又はコールタールのピッチがCRFMとして用いられる場合、好ましい溶媒は、選択されたピッチに依存して、トルエン、キシレン、キノリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロナフタレン(DupontによりTetralinの商標で販売されている)、又はナフタレンのような、環状化合物及び芳香族化合物である。溶液中におけるCRFMに対する溶媒の割合及び溶液の温度は、CRFMが溶媒に完全に又はほぼ完全に溶解するように調整する。典型的には、溶媒対CRFM比は、2未満であり、及び好ましくは約1以下であり、CRFMは、溶媒の沸点未満の温度で該溶媒に溶解される。
溶媒対溶質比が2:1未満である濃縮溶液は、一般に、フラックス溶液として知られている。多くのピッチタイプの材料は、該ピッチが0.5:2.0の溶媒対ピッチ比で溶媒と混合されたときに高溶解性である場合、濃縮されたフラックス溶液を形成する。それらのフラックス混合物を同じ溶媒又はCRFMが殆ど溶解しない溶媒で希釈することは、CRFMの部分的沈殿をもたらす。LVP粒子の懸濁液の存在下でこの希釈及び沈殿が生じたとき、該粒子は、沈殿のための成核サイトとして作用する。その結果、粒子上で特に均一なCRFMのコーティングが得られる。
LVP粒子のコーティング層は、該粒子をCRFMの溶液に直接混合することによって適用されることができる。LVP粒子がCRFMの溶液に直接加えられる場合、追加の溶媒は、通常、得られた混合物に加えられて、CRFMの部分的沈殿をもたらす。追加の溶媒は、CRFMの溶液を調製するために用いられた溶媒と同じであってもよく、或いは相違してもよい。
上記の沈殿方法に代わる方法において、LVP粒子の懸濁液は、粒子を、CRFMの溶液を形成するために用いられる同じ溶媒、溶媒の組合せ中、又は、異なる溶媒中で、所望の温度で、好ましくは該溶媒の沸点未満で、中で均一に混合することによって調製される。次いで、LVP粒子の懸濁液は、CRFMの溶液と合わされ、CRFMのある部分をLVP粒子の表面に実質的に均一に沈着させる。
LVP粒子の表面に沈殿するCRFMの総量及び化学的組成は、溶液から沈殿するCRFMの部分に依存し、その結果として初期の溶液及び最終的な溶液におけるCRFMの溶解性の相違に依存する。CRFMがピッチである場合、典型的には広い範囲の分子量種が存在する。当該分野における技術者は、そのような材料の部分的沈殿物を沈殿物が相対的に高い分子量であり高い融点を有する材料に分別し、残存溶解物(solubles)を相対的に低い分子量であり最初のピッチと比較して低い融点を有することを認めるであろう。
与えられた溶媒又は溶媒混合物中でのCRFMの溶解性は、例えば、濃度、温度、及び圧力を含む種々の要因に依存する。以前に述べたように、濃縮フラックス溶液の希釈は、CRFMの溶解性の減少を引き起こす。コーティングの沈殿は、上昇した温度でプロセスを開始し、コーティングプロセスの間、温度を徐々に低下させることによってさらに増強される。CRFMは、環境又は減少した圧力の何れかで、及び、約-5℃〜約400℃の温度で、沈積されることができる。溶媒のCRFMに対する総割合及び該溶液温度を調整することにより、LVP粒子上に沈殿されるCRFMの総量及び化学組成を制御することができる。
液相選択的な沈殿技術を用いることによって、合計量、化学組成、及びLVP粉末上にコーティングされたCRFMの物理的性質は、CRFMの選択によって、CRFMを最初に溶解するために用いる溶媒を変えることによって、CRFMを最初に溶解するために用いられる溶媒の量を変えることによって、及び、CRFM-LVP混合物中の溶媒の量を変えることによって、制御され得る。用いられる溶媒の量は、所望のコーティングを提供するのに適切な任意の量であってよい。ある態様においては、溶媒に対するCRFMの重量比は、約0.1〜約2であり、或いは約0.05〜約0.3であり、又はより具体的には約0.1〜約0.2であってよい。
LVPのためのコーティングとして提供されたCRFMは、任意の材料であってよく、これは、不活性雰囲気中で600℃又はより高い温度の炭化温度に熱的分解されたとき「実質的に炭素」である残留物を形成することが理解される。「実質的に炭素」が、残留物が少なくとも95重量%の炭素であることを示すことは理解される。コーティング材料として好ましく使用されるものは、酸化剤と反応されることができるCRFMである。好ましい化合物は、高い融点と熱的分解後に高い炭素収率を有するものを含む。これに限定されないが、CRFMの例は、石油ピッチ及び化学的プロセスピッチ、コールタールピッチ、パルプ工業からのリグニン;及びフェノール樹脂又はそれらの組み合わせを含む。他の態様において、CRFMはアクリロニトリル及びポリアクリロニトリル;アクリル化合物;ビニル化合物;セルロース化合物;及び糖のような炭水化物材料のような有機化合物の組合せを含み得る。コーティング材料として使用されるのに特に好ましいものは、石油及びコールタールのピッチ、及び、容易に利用できCRFMとして有効であることが観察されているリグニンである。
任意の適切な溶媒が、炭素質物を溶解するために用いられ得る。これに限定されないが、適切な溶媒の例は、キシレン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロナフタレン(Tetralinの商標の下、Dupontにより販売される)、デカリン、ピリジン、キノリン、テトラヒドロフラン、ナフタレン、アセトン、シクロヘキサン、エーテル、水、n-メチル-ピロリドン(NMP)、二硫化炭素、又はそれらの組合せを含む。溶媒は、LVP粉末懸濁液を形成するために用いられた懸濁液液体と同じであってもよく、或いは異なってもよい。これに限定されないが、LVP粉末の懸濁液のために適切な液体の例は、キシレン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロナフタレン、デカリン、ピリジン、キノリン、テトラヒドロフラン、ナフタレン、アセトン、シクロヘキサン、エーテル、水、n-メチル-ピロリドン(NMP)、二硫化炭素、又はそれらの組合せを含む。
さらなる態様は、LVP粉末懸濁液との混合の前に、CRFM溶液の温度を上昇させることを含む。CRFM溶液は、約25℃から約400℃の温度に加熱されてよく、或いは、約70℃から約300℃の温度に加熱されてよい。理論によって限定されることなく、温度は、CRFMの溶解性を改善するために上昇されてよい。一つの態様において、LVP粉末懸濁液及び/又はCRFM溶液は、互いに混合される前に加熱され得る。LVP粉末懸濁液及びCRFM溶液は、同じ温度又は異なる温度に加熱され得る。LVP粉末懸濁液は、約25℃から約400℃、或いは約70℃から約300℃の温度に加熱され得る。他の態様において、LVP粉末懸濁液及びCRFM溶液は互いに混合され、CRFM-LVP混合物が加熱される。CRFM-LVP混合物は、約25℃から約400℃、或いは約70℃から約300℃の温度に加熱され得る。CRFM-LVP混合物の温度は、CRFMの一部がLVP粉末上に沈殿してCRFMのコーティングを形成するように減少され得る。特定の態様において、CRFM-LVP混合物は、約0℃〜約100℃、或いは約20℃〜約60℃の温度に冷却され得る。
一度コーティングされたら、コーティングされたLVP粉末は、任意の適切な方法によって、CRFM-LVP混合物から分離され得る。適切な方法の例は、濾過、遠心分離、沈降、及び/又は清澄が含まれる。
ある態様において、コーティングされたLVP粉末は、コーティングされた粒子上の残留溶媒を除去するために乾燥され得る。コーティングされたLVP粉末は、任意の適切な方法を用いて乾燥され得る。これに限定されないが、乾燥方法の例は、減圧乾燥、オーブン乾燥、風乾、加熱又はそれらの組合せを含む。
幾つかの態様において、コーティングされたLVP粉末は、CRFM-LVP混合物からの分離後に、安定化される。安定化は、ほとんど不活性な(0.5%未満の酸素を含む)環境において、所定の時間の間、コーティングされたLVP粉末を加熱することを含む。一つの態様において、コーティングされたLVP粉末は、温度を約20℃〜400℃、或いは約250℃〜400℃に上昇させ、約20℃〜400℃、或いは約250℃〜約400℃の温度に、1ミリ秒〜24時間、或いは約5分〜約5時間、或いは約15分〜約2時間の間維持することによって安定化されることができる。安定化温度は、炭素質物の即時融点を越えてはならない。安定化に必要な正確な時間は、温度とCRFMコーティングの性質に依存する。
好ましい態様において、コーティングされたLVP粉末は、酸化剤の存在下で加熱される。固体酸化剤、液体酸化剤、及び/又はガス酸化剤のような任意の適切な酸化剤が用いられ得る。例えば、酸素及び/又は空気が酸化剤として用いられ得る。
コーティングされたLVP粉末は、次いで、炭化される。炭化は、任意の適切な方法によって達成され得る。一つの態様において、コーティングされたLVP粉末は、不活性環境中で、適切な条件下で炭化されて、CRFMのコーティングを炭素に転換し得る。これに限定されないが、適切な条件は、温度を約600℃〜約1,100℃、或いは約700℃〜約900℃、及び或いは約800℃〜約900℃に上昇することを含む。不活性環境は、これに限定されないが、アルゴン、窒素、ヘリウム、二酸化炭素又はそれらの組合せを含む任意の適切な不活性ガスを含む。一旦、炭化されたら、炭素コーティングされたLVP(CLVP)粉末は、リチウムイオン電池における正極のための又は任意の他の適切な使用のための材料として用いられ得る。
上記のコーティング方法の種々の態様が、LVP粉末の電池特性を上昇させるために用いられ得る。特に、上昇又は改善され得る電池特性は、容量及びLVP粉末のクーロン効率を含む。一つの態様において、LVP粉末の容量は、少なくとも約10%上昇され、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約20%上昇される。他の態様において、LVP粉末のクーロン効率は、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約12%、より好ましくは少なくとも約15%上昇される。
本発明の種々の態様を更に説明するため、以下の実施例が提供される。
[実施例1]
30.68グラムの三酸化バナジウム粉末(V2O3, 95%)及び100 mlのNMP (1-メチル-2-ピロリジノン)を、製粉バイアル中に置き、約1/4ポンドのステンレススチールボールで約30分間ボールミルすることにより、本発明に従うLVP粉末を作製した。ガラスビーカー中で、59.575グラムの酢酸リチウム二水和物(LiC2H3O2・2H2O, 99.9%)及び78.61グラムのアンモニウムハイドレートホスフェート((NH4)2HPO4, 98%)を、100 mlの水に溶解した。V2O3 懸濁液及びLiC2H3O2・2H2O/(NH4)2HPO4/水の溶液を、ガラスフラスコに混合し、さらに500 mlのNMPを該懸濁液に加えた。該懸濁液を、全ての溶媒(NMP及び水)が完全に蒸発するまで、窒素ガスをフラッシングすることによって定常的に撹拌しながら沸点まで加熱した。得られた生成物は流動可能(flowable)な粉末であった。
LVP粉末をアルミナボート中に置き、管状炉中で、窒素雰囲気中で、以下の順序で加熱した:350℃で3時間、450℃で5時間、及び650℃で5時間。得られた粉末を、1/8ステンレススチールボールを有するプラスチックボトル中に置き、振盪した。続いて、該粉末を窒素ガス雰囲気中で650℃に15時間加熱した。
[実施例2]
実施例2は、実施例1に記載された方法によって生成されたLVP粉末を用い、それを前駆物質として石油ピッチを用いて2.6 wt%のピッチでコーティングした。2グラムの石油ピッチを約4グラムのキシレンに溶解し、90℃に加熱した。200グラムのキシレン中、7.6グラムのLVP粉末からなる懸濁液を、140℃に加熱した。該ピッチ/キシレン溶液を、該粉末/キシレン懸濁液に加え、10分間の定常的な撹拌に供した。続いて、加熱器を除き、該懸濁液を室温まで冷却させた。得られた固体粉末を、濾過によって分離し、100℃で、減圧下で乾燥させた。得られた粉末は8グラムであった。ピッチコーティングは、約2.6重量%を含んだ。ピッチでコーティングされた粉末を、管状炉に置き、窒素ガス雰囲気中で、1℃/分の速度で、300℃まで徐々に加熱し、300℃で6時間維持した。炉を環境温度まで冷却し、粉末を取り除き、プラスチックボトル中で混合した。続いて、該粉末を炉に戻し、窒素雰囲気中で以下の順序に従って加熱した:350℃で2時間、450℃で2時間、及び850℃で5時間。得られた生成物は、さらなる製粉を必要としない緩い(loose)(流動可能な)粉末であった。
[実施例3]
実施例3は、実施例1で記載された方法によって生成されたLVP粉末を用い、実施例2のように前駆物質として同じピッチを用い、2.3 wt%のピッチでコーティングした。7グラムのピッチを、約7グラムのキシレンに溶解し、90℃に加熱した。200グラムのキシレン中、30グラムのLVP粉末からなる懸濁液を140℃に加熱した。ピッチ/キシレン溶液を、該粉末/キシレン懸濁液に加え、10分間の定常的な撹拌に供した。続いて、加熱器を除き、該懸濁液を室温まで冷却させた。得られた固体粉末を、ろ過によって分離し、100℃で、減圧下で乾燥させた。得られた粉末は30.8グラムの重量であった。該ピッチコーティングは、約2.6重量%を含んだ。ピッチでコーティングされた粉末を、管状炉に置き、窒素ガス雰囲気中、1℃/分の速度で300℃まで徐々に加熱し、300℃で6時間維持した。炉を環境温度に冷却し、該粉末を取り除き、プラスチックボトル中で混合した。続いて、該粉末を炉に戻し、以下の順序に従って、窒素雰囲気中で加熱した:350℃で2時間、450℃で2時間、及び850℃で5時間。得られた生成物は、さらなる製粉を必要としない緩い(流動可能な)粉末であった。
[実施例4]
実施例4は、ピッチコーティングの量が1.6重量%である以外は、実施例3と同様の方法で調製した。これは、30グラムの実施例1のLVP粉末をコーティングするために、4グラムのピッチを4グラムのキシレンに溶解することによって達成した。
実施例1〜4において作製された粉末を、リチウムイオン電池の正極のための材料として評価した。まず、以下に記載したように、該粉末を電極に組み立て、コインセルで試験した。
所望の量の粉末を、アセチレンカーボンブラック、微細なグラファイト(<8μm)、及び、NMPに溶解したポリビニリデンフルオリド(PVDF)の溶液と混合し、スラリーを作製した。該スラリーを、20μmのアルミニウムホイル上に落とし、ホットプレート上で乾燥した。乾燥した固体フィルムは、2 wt%のカーボンブラック、4 wt%のグラファイト、4 wt%のPVDF、及び90 wt%の試験される粉末を含んだ。該フィルムを5 cm片に裁ち、該固体フィルムが約2.1 g/ccの密度になるように、水力式ローリングプレスによって押した。固体フィルムの厚さ又はマスローディング(mass loading)は、約9 mg/cm2に制御された。実施例1の粉末が導電性ではないため、該電極組成は、78 wt%の粉末、2 wt%のカーボンブラック、15 wt%のグラファイト、及び5%のPVDFであった。
直径1.41 cmに計測されたディスクを、プレスされたフィルムから打ち抜き、リチウム金属を負極として備える標準コインセル(サイズCR2025)における正極として用いた。コインセルに用いたセパレーターは、ガラスマット(glass matt)(Watman(登録商標)ガラスマイクロファイバーフィルター、GF/B)であり、電解質は混合溶媒中1 M LiPF6 (40% のエチレンカーボネート、30%のメチルカーボネート、及び30%のジエチルカーボネート)であった。
セルは、以下の手順に従って試験した。それぞれのセルを、セル電圧が4.2ボルトに達するまで、0.5 mA(〜35 mA/g)の定電流で充電し、4.2ボルトで、1時間又は電流が0.03 mA以下に低下するまで、さらに充電した。次いで、セルを、セル電圧が3.0ボルトに達するまで、0.5 mAの定電流で放電した。サイクルの間の材料の安定性を測定するため、充電/放電サイクルを繰返した。材料の容量は、放電の間に通過した電気的チャージに基づいて算出し、一方、クーロン効率は、セルから放電された電気的チャージの量と、放電前のセルの充電に用いた電気的チャージの量との比に基づいて算出した。全ての試験は、室温(〜23℃)で、電気化学的試験装置(Arbin Model BT-2043)を用いて行った。
実施例1〜4で作製された粉末について、第1サイクルと第10サイクルの容量とクーロン効率の比較を表1に示す。
[実施例5]
実施例5は、実施例1で用いられたものより高価でない化学物質を前駆物質として用いた。この実施例において、27.46グラムの炭酸リチウム(Li2CO3, 99%)及び83.84グラムのリン酸(H3PO4,86%)を、50 mlsの水及び50 mlsのNMPからなる溶液に溶解した。実施例1と同様に、38.71グラムの三酸化バナジウム粉末(V2O3, 95%)を、100 mlのNMP中で、研究室のボールミルで粉砕した。得られたLi含有溶液及びV2O3懸濁液を合わせ、500 mlsのNMPを加え、該懸濁液を上記実施例1で記載したように処理した。最終生成物は、さらなる製粉を必要としない、緩い(流動可能な)粉末であった。実施例5の粉末は、導電性ではなく、実施例1の粉末と同様の方法で評価した。即ち、電極組成は78 wt%の粉末、2 wt%のカーボンブラック、15 wt%のグラファイト、及び5%のPVDFであった。
[実施例6〜9]
実施例6〜9は、本発明の方法に従って製造されたLVP粉末の性能における、充電反応温度T2の影響を説明する。
実施例5で製造された粉末のサンプル20グラムを、700℃(実施例6)、750℃(実施例7)、800℃(実施例8)、又は900℃(実施例9)に10時間加熱した。実施例6〜9の粉末は導電性ではなく、実施例1の粉末と同様の方法で評価した。即ち、電極組成は78 wt%の粉末、2 wt%のカーボンブラック、15 wt%のグラファイト、及び5%のPVDFであった。
[実施例10及び11]
実施例10及び11は、LVP粉末の性能における、ピッチコーティングとその後の炭化の影響を説明する。実施例4及び実施例7で製造した粉末のサンプル15グラムを、それぞれ、約1.5%のピッチでコーティングし、続いて、実施例2で記載された方法を用いて、それぞれ800℃及び850℃で加熱処理した。得られたコーティングLVP粉末は導電性であるため、該粉末は実施例2と同様の方法で評価した。即ち、電極組成は2 wt%のカーボンブラック、4 wt%のグラファイト、4 wt%のPVDF、及び90 wt%の試験される粉末であった。
実施例5〜11で作製された粉末についての、第1サイクルと第10サイクルの容量とクーロン効率の比較を表2に示す。
表1のデータは、実施例1の非コーティングLi3V2(PO4)3粉末が、実施例2及び3の炭素でコーティングされた粉末(CLVP)と比較して、より劣る性質(容量及び初期クーロン効率で測定したとき)を有することを明らかに示している。1.3 wt%のピッチのコーティングを有するCLVP粉末(実施例4)は、2.6 wt%又は2.3 wt%のピッチのコーティングを有するCLVP粉末(実施例2及び3)よりもよい容量を示した。しかしながら、全てのLVP粉末(コーティングされた、及び、非コーティングの)が、10サイクル以内で無視できる容量損失を示した。
[実施例12]
実施例12は、懸濁液からの固体粉末の分離が、液体の蒸発の代わりにろ過によって行われたこと以外は、実施例5と同様である。9.68グラムの三酸化バナジウム粉末(V2O3, 95%)、21.08グラムのリン酸(85.5%)、及び7.00グラムの炭酸リチウム(99.0%)を、100 mlの1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)に分散し、溶解した。得られた懸濁液を、圧力容器に移し、懸濁液を継続的に撹拌しながら250℃で2時間加熱した。加熱を除き懸濁液を環境温度に冷却した後、懸濁液を漏斗に移し、減圧下でろ過して固体粉末を得た。得られた粉末を100℃の減圧下で乾燥した。乾燥した緩い粉末は26グラムの重量であり、Li3V2(PO4)3粉末の色と同様にわずかに緑色であった。この粉末を、実施例2で記載された方法と同様に、ピッチでコーティングし、加熱処理に供することにより、さらに処理した。最終的な粉末を、上記のように電気化学的性質について評価し、結果を表2に示した。
表2のデータは、実施例5〜9の非コーティングLVP材料が、反応温度T2が上昇したときより良い容量を示すことを実証したが、しかし、クーロン効率の改善は、最大レベルに達した後、反応温度T2が最大効率を与える温度を超えて上昇したときに低下するようにみえる。しかしながら、実施例10〜12でコーティングされたLVP粉末は、実施例5〜9の非コーティングLVP粉末よりも、高い容量と高いクーロン効率の何れをも示した。
Figure 2010529623
Figure 2010529623
表2には、実施例5〜12で作製されたLVP及びCLVP粉末についての、第1サイクルと第10サイクルにおける、容量及びクーロン効率を要約した。実施例5〜9の非コーティングLVP粉末は、実施例10及び11のコーティングされたLVP粉末より低い容量を示し、また、コーティングされたサンプルよりも、第1サイクルと第10サイクルでより低いクーロン効率を有した。さらに、実施例5〜9の非コーティングLVP粉末の比容量は、第1サイクルから第10サイクルまでにわずかに低下し、一方、実施例10〜12の炭素コーティングされたLVP粉末は、わずかに上昇した。実施例10〜12の炭素コーティングされたLVP粉末における比容量の上昇は、炭素コーティングの有益な効果を支持する証拠を提供する。
表1における容量データもまた、該サンプルの容量が10サイクル後もほとんど変化しないことを示している。図1は、実施例1及び2のLVP及びCLVPについて、異なるサイクルにおける容量の図による比較を提供する。明らかに、試験されたサイクル数が上がっても、何れのサンプルも、極めて安定な容量を示し、即ち、サイクルの間に明らかな容量損失は何らもなかった。
しかしながら、図5(a)及び(b)に示したように、該材料の電位プロフィールは、実施例1及び2で作製された粒子が異なる材料で構成されていることを示している。実施例1のLVPは、3.4〜3.8ボルトの間で3つのプラトーを示しており、一方、実施例2のCLVP粉末は、同じ電位窓内で二つのプラトーしか有していない。実施例2のCLVP粉末の電位プロフィールは、Li3V2(PO4)3のものと一致している。それ故、実施例1のLVP粉末はLi3V2(PO4)3の純粋な相ではなく、サイクルの間に極めて安定である電気化学的活物質であると思われる。それらの結果に基づいて、650℃の結晶化温度T2は、本発明の方法において純粋な相の結晶Li3V2(PO4)3の形成に十分に高くない可能性がある。
図6(a)及び(b)は、実施例3及び4のCLVPについて最初のサイクルと第10サイクルにおける電位プロフィールの比較を示す。電位プロフィールのパターンは、サンプル間で正確に同じであり、Li3V2(PO4)3のものと一致するが、しかしながら、実施例4のCLVP粉末は、実施例3のCLVP粉末よりもわずかに長い電位プラトーを示し、実施例4の方法が、実施例3の方法よりも、グラム当たりより多くの活物質を含む生成物を与えることが示唆される。実施例3と4の間の唯一の相違が、ピッチコーティングのレベル(2.3%対1.3%)であり、この結果は、過剰量の炭素の存在が、CLVP粉末の容量において有害な影響を有し得ることを示唆している。
実施例3及び4で作製された炭素コーティングLVP粉末のサイクリングデータを図7に要約した。該材料の容量は、最初の5サイクル以内でわずかに上昇し、次いで、ほとんど一定を維持する。80〜100サイクルの範囲で試験された全てのサイクルの後、材料の容量は、ごくわずかに0.3 mAh/g未満で衰えた。サイクル条件は、試験された材料の総容量の100%深さであることは留意されるべきである。それらが、正常な使用の間の状況で、それらの総容量よりも低いレベルでサイクルされたとき、該材料が完全に安定であると予期される。
従って、プレーン(非コーティング)及び炭素コーティングされたLi3V2(PO4)3粉末は、何れも、本発明に従って安価な前駆物質を用いて容易に作製できることが説明された。該方法の有用性は、該方法を通して緩い(流動可能な)粉末に示されているのみでなく、製造された材料の優れた機能性にも示されている。
従って、保護の範囲は、上記の記載によって限定されず、請求項によってのみ限定され、その範囲は、請求項の構成要件の全ての等価物を含む。それぞれの請求項は、本発明の態様として明細書中に組み込まれる。よって、請求項は、さらなる記載であり、本発明の好ましい態様の付記である。いずれの参照文献の議論も、特に本願の優先日後に公開されたいずれの参照文献の議論も、それが本発明の従来技術であることを認めるものではない。

Claims (20)

  1. 以下の工程を含む、リチウム遷移金属ポリアニオン粉末を製造する方法:
    a)リチウム、遷移金属及びポリアニオン前駆物質を液体中に分散及び溶解して、懸濁液を形成すること;
    b)前記懸濁液を第1の反応温度(T1)に加熱して、溶解していない前駆物質を溶解させ、前記前駆物質を反応させてリチウム遷移金属ホスフェート生成物の粒子を形成させ、及び、該固体粒子を同時に沈殿させること;及び、
    c)前記固体粒子を前記懸濁液溶液から分離し、該沈殿物を乾燥し、第1の粒状粉末を生成すること。
  2. 請求項1に記載の方法であって、さらに、前記第1の粉末を前記第1の温度(T1)より高い第2の温度(T2)に加熱して、結晶性の粉末を形成することを含み、ここで、該結晶性の粉末は純粋な相の結晶性LixMy(PO4)zの粒子で構成され、ここで、Mは遷移金属であり、x及びyは0より大きいことを特徴とする方法。
  3. 請求項2に記載の方法であって、前記第1の粉末を第2の温度に加熱する工程が、不活性環境中で行われる方法。
  4. 請求項2に記載の方法であって、前記第2の温度が500℃から1000℃の間である方法。
  5. 請求項1に記載の方法であって、前記懸濁液中の前記前駆物質の濃度が、形成された前記沈殿物が50ミクロン未満の平均粒子サイズを有するような濃度である方法。
  6. 請求項1に記載の方法であって、前記溶液から固体粒子を分離する工程が、濾過、重力分離及び遠心分離の少なくとも一つを含む方法。
  7. 請求項1に記載の方法であって、前記粉末を炭素-残留物-形成物質でコーティングする工程をさらに含む方法。
  8. 請求項7に記載の方法であって、前記粉末を炭素-残留物-形成物質でコーティングする工程が、選択的沈殿方法を含み、ここにおいて、溶液から沈殿し前記粒子をコーティングする、前記炭素-残留物-形成物質の量、分子量及び融点は、炭素-残留物-形成物質、該炭素-残留物-形成物質を溶解するために用いられる溶媒、該炭素-残留物-形成物質を溶解するために用いられる溶媒の量及び該炭素-残留物-形成物質の懸濁液中の溶媒の量及びコーティングされていない粒子の選択によって制御される方法。
  9. 請求項7に記載の方法であって、コーティングされた粒子が、該コーティングされた粒子を酸化剤の存在下で第3の温度(T3)に加熱することによって安定化される方法。
  10. 請求項7に記載の方法であって、前記コーティングされた粒子を第4の温度(T4)に加熱する工程をさらに含み、前記第4の温度は、該粒子をコーティングしている炭素-残留物-形成物質を炭化するのに及び該粒子を結晶化するのに十分に高く、ここで、該粉末は、炭素でコーティングされた結晶性LixMy(PO4)z粒子で構成され、ここでMは遷移金属であり、x及びyは0より大きいことを特徴とする方法。
  11. 請求項1に記載の方法であって、前記炭素コーティングは、前記固体粒子の約1〜約10重量パーセントである方法。
  12. 請求項11に記載の方法であって、前記炭素コーティングは、前記固体粒子の約1〜約3重量パーセントである方法。
  13. 請求項1に記載の方法であって、前記液体は、水及びアルコール、酸、ニトリル、アミン、アミド、キノリン及びピロリジノンを含む液体極性有機化合物、及びそれらの混合物から選択される方法。
  14. 請求項1に記載の方法であって、前記リチウム前駆物質が、炭酸リチウム(Li2CO3)及び水酸化リチウム(LiOH)及びそれらの組合せからなる群から選択される方法。
  15. 請求項1に記載の方法であって、前記リチウム前駆物質を前記懸濁液に与える工程は、三酸化バナジウム(V2O3)と液体溶媒を併用することを含む方法。
  16. 請求項1に記載の方法であって、前記遷移金属前駆物質が、三酸化バナジウム(V2O3)を含み、前記三酸化バナジウムが、工程a)の前に30マイクロメーターより小さい平均粒子サイズに製粉される方法。
  17. 請求項1に記載の方法であって、工程a)がさらに、溶媒に遷移金属前駆物質を分散及び溶解させて分散液を形成すること、溶媒にリチウム前駆物質及びポリアニオン前駆物質を溶解して溶液を形成すること、及び、前記分散液を前記溶液と組合せて工程a)の懸濁液を形成することを含む方法。
  18. 請求項1に記載の方法であって、前記第1の温度が、少なくとも50℃であり、且つ、約400℃以下である方法。
  19. 以下の工程を含む、電池のための完成されたカソード粉末を製造する方法:
    a)リチウム塩、三酸化バナジウム(V2O3)及びリン酸前駆物質を液体中に分散及び溶解して懸濁液を形成すること;
    b)前記懸濁液を第1の反応温度(T1)に加熱して、溶解していない前駆物質を溶解させ、前記前駆物質を反応させてリチウム遷移金属ホスフェート生成物の粒子を形成させ、及び、該固体粒子を同時に沈殿させること;及び、
    c)前記固体粒子を前記懸濁液溶液から分離し、該沈殿物を乾燥し、第1の粒状粉末を生成すること。
  20. 以下の工程を含む、電池のための完成されたカソード粉末を製造する方法
    a)リチウム塩、三酸化バナジウム(V2O3)及びリン酸前駆物質を液体中に分散及び溶解して懸濁液を形成すること;
    b)前記懸濁液を第1の反応温度(T1)に加熱して、溶解していない前駆物質を溶解させ、前記前駆物質を反応させてリチウム遷移金属ホスフェート生成物の粒子を形成させ、及び、該固体粒子を同時に沈殿させること;
    c)前記固体粒子を前記懸濁液溶液から分離し、該沈殿物を乾燥し、第1の粒状粉末を生成すること;
    d)前記固体粒子を、炭素-残留物-形成物質でコーティングすること;
    e)コーティングされた粒子を、該コーティングされた粒子を酸化剤の存在下で第2の温度(T2)に加熱することにより安定化すること;及び
    f)前記コーティングされた粒子を第3の温度(T3)に加熱すること、前記第4の温度は、前記粒子をコーティングしている炭素-残留物-形成物質の炭化及び該粒子の結晶化に十分に高く、ここで、前記粉末は、炭素でコーティングされた結晶性リチウムバナジウムホスフェート(Li3V2(PO4)3)粒子で構成されることを特徴とする方法。
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