JP2010524433A - ヒト腫瘍細胞に結合するヒト抗cd166抗体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、腫瘍特異的結合タンパク質および該タンパク質のあらゆる使用に関する。特に、本発明は、癌細胞上の抗原もしくは分子(CD166)に特異的な抗体または抗体断片およびそれらの使用方法に関する。特異的な重鎖および軽鎖CDRを含む結合タンパク質が開示されており、該結合タンパク質は、乳癌株化細胞MDA−MB231に対して、測定可能にまたは有意に結合するが、顆粒球もしくは末梢血リンパ球(PBL)に対しては、有意なまたは測定可能な結合を示さない。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は、腫瘍特異的結合タンパク質および該タンパク質のあらゆる使用に関する。特に、本発明は、癌細胞上の抗原もしくは分子に特異的な抗体または抗体断片、およびそれらの使用方法に関する。該抗原は、好ましくはCD166である。
2000年において、世界中でおよそ2200万人が癌に苦しみ、620万人がこの部類の疾病により亡くなった。毎年、1000万以上の症例が新たに発見され、このような見積もりは今後15年以上にわたって50%まで増えるものと予想されている(世界保健機構(WHO)の世界がん報告。バーナード W.スチュアートおよびパウル・クラウフス編集,IARCプレス社,リヨン,2003年)。
乳房の上皮性悪性腫瘍は、乳房組織の上皮性悪性腫瘍である。世界中で、その乳房組織の上皮性悪性腫瘍は女性の癌のうち最も多いものであり、(欧米諸国において)すべての女性の約10%が彼女たちの人生のある段階で罹患する。早期発見および効果的な治療を実現させようとするが著しい努力の甲斐むなしく、乳癌を患うすべての女性の約20%が未だにこの疾病により亡くなっている。乳房の上皮性悪性腫瘍は、女性の癌による死因のうち2番目に多い。
現在の癌治療は、侵襲的手術,放射線療法および化学療法に限定され、これらすべてが、重度の副作用、非特異的毒性、および/または精神的外傷を受けるほどの身体イメージおよび/またはクオリティ・オブ・ライフの変化のうちいずれかの原因となる可能性がある。癌は化学療法に対して難治性となることがあり、治療法の選択肢が減り成功確率を下げる。乳癌などのような、相対的に高い治療成功率を誇るいくつかの癌もまた、極めて高い罹患率を有するため、依然として深刻な死因であることに変わりはない。
例えば、WHOによると、毎年世界中で、120万以上の乳癌の症例が新たに発見されている。乳癌が局在化している場合、該腫瘍の治療の中心は外科手術(腫瘍摘出手術および乳房切除)であり、可能ならば術後補助ホルモン療法(古典的にはタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤を使用する)を用いる。外科手術を援助するためか、または播種性疾病の場合に、化学療法および放射線治療が用いられる。近年、HER−2/neu特異的ヒト化モノクローナル抗体であるハーセプチンを使用することによって、有望な結果が得られている。
乳癌に関連する予後因子がいくつか存在する。限局した病変,リンパ節の状態および転移癌の存在を考慮すると、ステージは、乳癌においてただ一つの最も重要な予後因子である。診断の時点で該ステージが高いほど、予後は悪くなる。乳癌細胞におけるエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の存在が、その他の重要で古典的な予後因子となっている。さらに、ホルモン受容体陰性乳癌と比較してホルモン受容体陽性乳癌は通常、より良い予後に関連している。また、さらに近年では、HER−2/neuの状態が予後因子として記述されている。局在化した疾病に対する予後は、5年生存率が約50%と比較的良いが、乳癌がいったん転移すると、平均約2年の存命という不治の病となる。治療成功率が上がったにもかかわらず、毎年40万近い女性たちが乳癌によって亡くなり、肺癌による死を上回り、女性の癌による死亡数がもっとも多い。短期生存者および長期生存者のうち、その多くが侵襲によるトラウマによって生涯苦しみ、外科治療によって外観を損なったことに気を病む。
現在の治療は、その効果が不足しているためか、および/または、高い死亡率と重度の副作用とを有するためか、患者のニーズに合わないという癌の例が多い。しかしながら、これらの選定された統計および事実によって、安全性および有効性についてよりふさわしい統計データに基づく癌治療のニーズが充分に明らかにされている。
現在の癌治療が不充分である理由の一つは、罹患した組織および細胞に対する選択性に欠けている点である。外科的切除は、死亡率および合併症の危険性を高める可能性を有する「安全域」としての正常に見える組織の除去を常に含む。また、外科的切除は、腫瘍細胞が散りばめられているかもしれない健常組織および罹患した臓器もしくは組織の機能を保持または取り戻す可能性のある健常組織のうちの一部も常に除去する。放射線照射および化学療法は、これらの非特異的な作用機序によって多くの正常組織を殺傷または損傷する。非特異的な作用機序によって、以後の人生で二次癌を発症する危険性を高めるのとともに、重度の吐き気,体重減少,持久力の低下,脱毛などのような重篤な副作用がもたらされることがある。癌細胞に対する選択性に優れた治療は、正常細胞を無傷のまま残存するため、治療結果,副作用プロフィールおよびクオリティ・オブ・ライフを向上させる。
癌細胞上のみもしくは大部分が癌細胞上に存在する分子または癌細胞上に高いレベルで存在するかもしくは癌細胞内に過剰発現している分子に特異的な抗体を使用することによって、癌治療の選択性を向上することができる。免疫系を調節するために、そして患者自身の免疫系によって癌に対する認識・破壊を促進するために、このような抗体を使用することができる。現在まで試験された多くの抗体は、マウスモノクローナル抗体、時には分子工学によって「ヒト化」した抗体の形で、公知の癌マーカーに対する抗体として取り上げられている。残念ながら、これら抗体の標的も、部分集合した正常細胞上にかなりの量で存在することがあり、したがって非特異的な毒作用の危険性をつり上げる。さらに、これら抗体は、ヒト患者の免疫系によって外来のタンパク質としてみなされるマウスタンパク質である。後に続く免疫系および抗体反応によって、有効性の損失または副作用がもたらされることがある。
本発明者らは、癌治療、特に乳癌治療のための抗体の開発において、異なるアプローチを用いた。癌細胞または単離された癌細胞マーカーを有する実験動物に免疫する代わりに、本発明者らは、ヒト免疫系によって充分に異物であると認識されるこれらマーカーのみを同定し、該マーカーに対する特異的な抗体が見出されることを見越して模索した。これは、該マーカーまたは抗原が、正常細胞上にほとんどないか、またはまったくないため、非特異的な毒性の危険性が一層低下することを暗示している。このようにして、正常細胞に対する選択性より、癌細胞/腫瘍細胞、特に乳癌細胞に対する高い選択性を示す抗体を同定した。このような選択的な抗体が、この特許出願の主題である。選択的であることに加えて、好ましくはこのような抗体は、完全にヒトタンパク質であるおかげで患者の免疫系と完全に適合する。本発明の抗体は、(特に癌、とりわけ乳癌に対する)診断用途もしくは治療用途、または標的抗原に対する他の結合タンパク質を設計するための土台として用いることができる。また、該抗体は、それが結合する分子を単離し同定するためにも用いることができる。その際に、癌における該抗原の役割が研究され、該抗体は他の癌治療を開発するために用いられる。本発明者らは、本発明の抗体が結合する抗原の同一性を決定した。
上記抗原はCD166であり、ALCAM(活性化白血球細胞接着分子),MEMD,SB−10,KG−CAMおよびニューロリン[neurolin]としても知られている。CD166は、5つの細胞外免疫グロブリン様ドメインを有する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである、105KDaの膜貫通型糖タンパク質である。CD166は、短い細胞質側末端を有し、その細胞外部分は、5つのIgドメイン:3つの定常(C)タイプIgドメインが続く2つのアミノ末端可変(V)タイプIgドメイン(V1V2C1C2C3)を含む。本発明の抗体の好ましいエピトープは、CD166抗原の細胞外ドメイン内に位置する。
上述の通り、CD166は細胞表面タンパク質である。CD166は、活性化白血球,
皮質の線維芽細胞および胸腺髄質[medullary thymic]の線維芽細胞,神経細胞のいくつかのサブセットおよび上皮細胞のいくつかのサブセットの細胞上に見出される。一般に、ALCAMは、遊走している細胞上および/または動態的に増殖している細胞上に頻繁に見出される。
皮質の線維芽細胞および胸腺髄質[medullary thymic]の線維芽細胞,神経細胞のいくつかのサブセットおよび上皮細胞のいくつかのサブセットの細胞上に見出される。一般に、ALCAMは、遊走している細胞上および/または動態的に増殖している細胞上に頻繁に見出される。
CD166は、当初CD6のリガンドとして同定されたが、CD166同種相互作用の調節も行なう。CD166は、全3種の胚系列細胞の発生において発現されるが、その発現は、成人の組織の多くでは細胞のサブセットに限定されるものと思われる。CD166は、上皮の細胞間接着部位に位置すると考えられ、組織の構築を持続させる接着複合体の一部であると思われる。CD166は、細胞移動,癌発生,癌の進行および転移に関連する。CD166の異常な発現は、黒色腫,前立腺癌,乳癌,結腸直腸癌,膀胱癌,卵巣癌,膵臓癌,肺癌および食道扁平上皮癌を含むいくつかのヒト腫瘍に関わっている。
本発明の発明者らは、癌細胞、特に乳房腫瘍細胞に結合するヒト腫瘍特異的抗体を調製した。重要なことには、該抗体は、する正常細胞にさほど結合しないため、腫瘍治療、好ましくは乳癌治療および診断のための好適な候補となる。他の好ましい癌は、本明細書中の他の部分に記載されている。
本発明者らは、上記抗体をクローン化し、その配列を解析し、相補性決定領域(CDR)1,2および3を含む、該抗体の軽鎖および重鎖の可変領域の配列を決定した。
したがって、本発明は、腫瘍特異的結合タンパク質、例えば、抗体分子を提供する。好ましい態様において、本発明は、これらの特性を有するヒト結合タンパク質、例えば、抗体分子を提供する。
したがって、本発明は、腫瘍特異的結合タンパク質、例えば、抗体分子を提供する。好ましい態様において、本発明は、これらの特性を有するヒト結合タンパク質、例えば、抗体分子を提供する。
「正常細胞」という用語は、非癌細胞に言及するために本明細書中に用いられる。この用語は、ヒトの体内中に本来存在する健常細胞、特に末梢赤血球または顆粒球を包含する。したがって、好ましくは上記結合タンパク質は、末梢血リンパ球(PBL)に顕著に結合せず、および/または顆粒球に顕著に結合しない。好ましい態様において、該結合タンパク質は、乳癌株化細胞MDA−MB231に対して測定可能なまたは有意な結合を示すが、顆粒球または末梢血リンパ球(PBL)に対して測定不能なまたは有意でない結合を示す。
「正常細胞に顕著に結合しない」という用語は、上記結合タンパク質が正常細胞に対して結合することによって、治療目的または診断目的のための該結合タンパク質の使用が妨げられることがないというように理解されるべきである。よって、正常細胞への「顕著ではない」結合とは、好ましくは該結合タンパク質の正常細胞への結合が1以上の腫瘍細胞への結合より弱いことを意味する。治療目的の場合に、主に考慮すべきことは、該結合タンパク質が、治療の適用期間中に該結合タンパク質が接触する任意の健常細胞(または1以上の腫瘍細胞に対応する健常細胞)より1以上のタイプの腫瘍細胞に強く結合しなければならないこと、または正常細胞への任意の結合およびこの結合に起因する潜在的なマイナス効果に対して、上記抗体の癌細胞への結合によって達成される癌治療におけるプラス効果の方が上回ることである。
診断目的の場合に主に考慮すべきことは、上記結合タンパク質(好ましくは抗体)の腫瘍細胞への結合がその癌を診断できるのに充分なほどの明瞭な合図を出すことである。
「腫瘍特異的」という用語は、上記結合タンパク質の上記腫瘍細胞への結合が、治療目的または診断目的のために該結合タンパク質を使用できるのに充分特異的であるというように解釈されるべきである。標的腫瘍細胞に対する結合力を1以上のタイプの正常細胞、例えば、末梢赤血球または顆粒球に対する結合力と比較することによって、任意の結合タンパク質が腫瘍特異的であるか、当業者は容易に決定できる。本明細書中の「腫瘍」または「癌」へのいかなる言及は、「乳房腫瘍」および「乳癌」への言及,「前立腺腫瘍」および「前立腺癌」への言及,「卵巣腫瘍」および「卵巣癌」への言及,「結腸腫瘍」および「結腸癌」への言及,「肺腫瘍」および「肺癌」への言及,「腎臓腫瘍」および「腎癌」への言及および/または「脳腫瘍」および「脳癌」への言及、好ましくは「乳房腫瘍」および「乳癌」への言及を含むものと理解されるべきである。
「腫瘍特異的」という用語は、上記結合タンパク質の上記腫瘍細胞への結合が、治療目的または診断目的のために該結合タンパク質を使用できるのに充分特異的であるというように解釈されるべきである。標的腫瘍細胞に対する結合力を1以上のタイプの正常細胞、例えば、末梢赤血球または顆粒球に対する結合力と比較することによって、任意の結合タンパク質が腫瘍特異的であるか、当業者は容易に決定できる。本明細書中の「腫瘍」または「癌」へのいかなる言及は、「乳房腫瘍」および「乳癌」への言及,「前立腺腫瘍」および「前立腺癌」への言及,「卵巣腫瘍」および「卵巣癌」への言及,「結腸腫瘍」および「結腸癌」への言及,「肺腫瘍」および「肺癌」への言及,「腎臓腫瘍」および「腎癌」への言及および/または「脳腫瘍」および「脳癌」への言及、好ましくは「乳房腫瘍」および「乳癌」への言及を含むものと理解されるべきである。
本発明の結合タンパク質は、該結合タンパク質が1以上のタイプの腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞に結合するが、1以上のタイプの正常細胞への結合が診断または治療への適用のために顕著でないかまたは禁制ではないことにおいて、腫瘍特異的である。例えば、該結合タンパク質は、本発明の結合タンパク質と決して接触しない正常組織(例えば、脳の中の正常組織)に結合する可能性はあり、該結合タンパク質を脳に投与しなければ、該結合タンパク質は血液脳関門を通過できないから、該結合タンパク質は脳の中の正常組織に到達しない。ある態様において、該結合タンパク質は、いくつかのタイプの正常細胞、すなわち健常細胞に顕著に結合するかもしれないが、正常細胞は、治療されるべき患者において絶対不可欠でもなく存在しないもの(女性患者を治療する場合、または前立腺摘出後に前立腺癌の転移のための男性患者を治療する場合における前立腺細胞など)でもあり、および/またはすぐに再生できるもの(小腸の上皮細胞など)でもあるが、他のタイプの正常細胞への結合は顕著ではない。これらの態様において、該結合タンパク質は腫瘍細胞に結合するが、多くのまたはすべての必須な正常細胞は、実質的に該結合タンパク質から影響を受けないことから、治療に適用するために使用することができる。
好ましくは、上記結合タンパク質は、診断目的または治療目的のために効果的である方法でまたはそのレベル(例えば、1以上のタイプの腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞に対して顕著な、測定可能な結合を示す)で、1以上のタイプの腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞に結合する。
好ましくは、上記結合タンパク質は、1以上のタイプの癌細胞に対して結合親和性を有し、該結合親和性は1μM未満、より好ましくは500,400または300nM未満、さらに好ましくは200,190,180,170,160,150,140,130,120,110または100nM未満、もっとも好ましくは90,80,70,60,50,45,40,35,30,25,20,15,10,5または1nM未満のKmに相当する。例えば、該結合親和性は、1.7×10-7M以下、または3×10-8M以下、または2.9×10-8M以下、または2.1×10-8M以下、または1×10-8M以下であってもよい。結合親和性は、Kdの観点からも言及することができ、この場合、同様な数値が適切である。結合親和性は、本発明の結合タンパク質の任意の適切な形式[format]を用いて測定することができる。該結合タンパク質が抗体または抗体断片である場合には、好ましい形式は抗体全体(例えば、IgG),scFvまたはFabである。KmまたはKdを決定する適切な方法はいずれを用いてもよい。しかしながら、好ましくは、Kmまたは該Kdは、例えば、ラインウィーバー−バーク法またはビアコア装置と、ビアコア3000エヴァリュエーション・ソフトウェア[BiaCore 3000 Evaluation software]の1:1結合モデルなどのような適切なソフトウェアとを使用して、標的細胞(または標的抗原)の固定数に対する該結合タンパク質の様々な濃度をインビトロで試験することにより決定される。例示を目的として、好適なアッセイを実施例3に記載する。
結合親和性が比較できる条件下で、特に各アッセイにおいて上記結合タンパク質と細胞とを同量用いてアッセイする場合、該結合タンパク質は好ましくは、1以上のタイプの腫瘍細胞のKmまたはKdは、1以上のタイプの非癌細胞または正常細胞(例えば、PBL細胞または顆粒球)の該Kmまたは該Kdに対して、少なくとも50%少ない、、より好ましくは少なくとも1,2,3,4または5桁小さい。
本発明の結合タンパク質は、好ましくはCD166もしくはCD166断片、特にCD166の細胞外ドメインを含む断片か該ドメインからなる断片、またはCD166もしくはCD166断片を含む実体[entity]に結合することができるか、あるいはCD166の機能を阻害もしくは顕著に低減することができるか、またはCD166とその天然リガンドとの相互作用を防止することができる。よって、本発明は、CD6またはCD166の修飾因子として作用することができる結合タンパク質、例えば、抗体分子をさらに提供する。このような修飾因子は、拮抗薬(アンタゴニスト)であってもよい。また、本発明は、CD6またはCD166の作動薬(アゴニスト)として作用する結合タンパク質、例えば、抗体分子をさらに提供することができる。
本発明の好ましい結合タンパク質は、ヒトCD166(またはその断片)に結合でき、好ましくはマウスCD166(またはその断片)にも結合できる。本発明の抗体のCD166に対する典型的かつ好ましい結合親和性は、上述のように、腫瘍細胞に対する結合親和性である。
腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞に特異的に結合でき、そして好ましくはCD166に結合できる抗体分子のアミノ酸配列および/またはDNA配列、相補性決定領域(CDR)を含むそのVHドメインおよびVLドメインは、本明細書中に一覧表にされた様々な配列番号に記載されている。
本発明は、その1つの態様において、配列番号5のアミノ酸配列または該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR3ドメインを含む結合タンパク質を提供する。
これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR2ドメインを含む。
これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR2ドメインを含む。
これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR1ドメインを含む。
これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR1ドメインを含む。
これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR2ドメインを含む。
これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR1ドメインを含む。
これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR2ドメインを含む。
これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、配列番号8のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR3ドメインを含む。
よって、本発明の結合タンパク質は、以下の1以上のものをどのような組み合わせで含んでいてもよい:配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1ドメイン;配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2ドメイン;配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン;配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1ドメイン;配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2ドメイン;および/または配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、あるいは上述の任意の配列番号の配列と実質的に相同の配列。
よって、本発明の結合タンパク質は、以下の1以上のものをどのような組み合わせで含んでいてもよい:配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1ドメイン;配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2ドメイン;配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメイン;配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1ドメイン;配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2ドメイン;および/または配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメイン、あるいは上述の任意の配列番号の配列と実質的に相同の配列。
好ましくは、上記結合タンパク質は、上述の重鎖CDR3および軽鎖CDR3のいずれも含む。さらに好ましくは、上述した1以上のCDR1ドメインおよびCDR2ドメインも存在する。
1つの好ましい態様において、配列番号3のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR1、配列番号4のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR2および配列番号5のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR3、または上述の配列番号のいずれか1つの配列と実質的に相同の配列は、個々にまたは組み合わせて存在する。
もう1つの他の好ましい態様において、配列番号6のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR1、配列番号7のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR2および配列番号8のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR3、または上述の配列番号のいずれか1つの配列と実質的に相同の配列は、個々にまたは組み合わせて存在する。
別の見方をすると、本発明は、上述した重鎖CDR3ドメインおよび/または軽鎖CDR3ドメインを含む結合タンパク質を提供する。該結合タンパク質は、任意に、上述した重鎖CDR2ドメインおよび/または軽鎖CDR2ドメインをさらに含み、および/または上述した重鎖CDR1ドメインおよび/または軽鎖CDR1ドメインをさらに含む。
さらに別の見方をすると、本発明は、上述した重鎖CDR1ドメインおよび/または軽鎖CDR1ドメインを含む結合タンパク質を提供する。該結合タンパク質は、任意に、上述した重鎖CDR3ドメインおよび/または軽鎖CDR3ドメインをさらに含み、および/または上述した重鎖CDR2ドメインおよび/または軽鎖CDR2ドメインをさらに含む。
さらに別の見方をすると、本発明は、上述した重鎖CDR2ドメインおよび/または軽鎖CDR1ドメインを含む結合タンパク質を提供する。該結合タンパク質は、任意に、上述した重鎖CDR3ドメインおよび/または軽鎖CDR3ドメインをさらに含み、および/または上述した重鎖CDR1ドメインおよび/または軽鎖CDR1ドメインをさらに含む。
本発明のさらなる態様は、本明細書において上述したように、本発明の1以上のCDRまたはその配列と実質的に相同の配列を含有する結合タンパク質を提供する。好ましい結合タンパク質は、配列番号3,4,5,6,7および8または上述の配列番号のいずれか1つの配列と実質的に相同な配列からなる群から選択された1以上のCDRを含む。
よって、好ましい態様において、上記結合タンパク質は、アミノ酸配列RASQDISSYFA(配列番号6)、もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR1を含み;および/またはアミノ酸配列AASTLRS(配列番号7)、もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR2を含み;またはアミノ酸配列QQSYSTPRIT(配列番号8)、もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR3を含む。
好ましい結合タンパク質は、上述したような、本発明の2以上の軽鎖CDRまたはその配列と実質的に相同な配列を含む。特に好ましい結合分子は、上述したような、本発明の3つの軽鎖CDRまたはその配列と実質的に相同な配列(すなわち、それぞれ軽鎖CDR1およびCDR2およびCDR3の1つ)を含む。
他の好ましい結合タンパク質は、本発明の2以上の重鎖CDRまたは上述したその配列と実質的に相同の配列を含む。特に好ましい結合タンパク質は、本発明の3つの重鎖CDRまたは上述したその配列と実質的に相同の配列(すなわち、それぞれ重鎖CDR1およびCDR2およびCDR3の1つ)を含む。もっとも好ましい結合タンパク質は、本発明の3つの軽鎖CDRまたは上述したその配列と実質的に相同の配列と、本発明の3つの重鎖CDRまたは上述したその配列と実質的に相同の配列とを含む。
特に好ましい結合タンパク質は、配列番号3の重鎖CDR1ドメイン,配列番号4の重鎖CDR2ドメイン,および配列番号5の重鎖CDR3ドメイン,もしくはそれらの配列と実質的に相同の配列;および/または配列番号6の軽鎖CDR1ドメイン,配列番号7の軽鎖CDR2ドメイン,および配列番号8の軽鎖CDR3ドメイン,もしくはそれら配列と実質的に相同の配列を含む。
さらに好ましい態様は、本発明の1以上の重鎖CDRもしくはその配列と実質的に相同の配列を含むVHドメイン、および/または上述したような本発明の1以上の軽鎖CDRもしくはその配列と実質的に相同の配列を含むVLドメインを含む結合タンパク質を提供する。
好ましい軽鎖可変領域(VLドメイン)は、上述したような、本発明の2以上の軽鎖CDRまたはその配列と実質的に相同の配列を含む。特に好ましいVLドメインは、上述したような、本発明の3つの軽鎖CDRまたはその配列と実質的に相同の配列(すなわち、それぞれCDR1およびCDR2およびCDR3の1つ)を含む。好ましい重鎖可変領域(VHドメイン)は、上述したような、本発明の2以上の重鎖CDRまたはその配列と実質的に相同の配列を含む。特に好ましいVHドメインは、上述したような、本発明の3つの重鎖CDRまたはその配列と実質的に相同の配列(すなわち、それぞれCDR1およびCDR2およびCDR3の1つ)を含む。もっとも好ましい結合タンパク質は、上述したような本発明の3つの軽鎖CDRまたはそれら配列と実質的に相同の配列と、上述したような本発明の3つの重鎖CDRまたはそれら配列と実質的に相同の配列とを含む。
上記VHドメインまたは上記VLドメインを含む好ましいCDRドメインおよびそれらの組み合わせは、本明細書の他の部分に記載されている。しかしながら、特に好ましいVHドメイン(または結合タンパク質)は、GGGVVEF(配列番号5)の上記CDR3またはその配列と実質的に相同の配列を含み、そして特に好ましいVLドメイン(または結合タンパク質)は、QQSYSTPRIT(配列番号8)の上記CDR3またはその配列と実質的に相同の配列を含む。
さらなる態様において、上記VLドメイン(または結合タンパク質)は、RASQDISSYFA(CDR1)(配列番号6)および/またはAASTLRS(CDR2)(配列番号7)および/またはQQSYSTPRIT(CDR3)(配列番号8)の上記CDR領域、あるいはそれら配列と実質的に相同の配列を含む。
さらなる態様において、上記VHドメイン(または結合タンパク質)は、SYAMS(CDR1)(配列番号3)および/またはAISGSGGSTYYADSVKG(CDR2)(配列番号4)および/またはGGGVVEF(CDR3)(配列番号5)の上記CDR領域、あるいは上記配列のいずれかと実質的に相同の配列を含む。
上述のVLドメインおよびVHドメインの任意の組み合わせは本発明の結合タンパク質中に存在し得るものである。
本発明の好ましい態様は、配列番号9のアミノ酸配列もしくはその配列と実質的に相同の配列を有するVHドメインおよび/または配列番号10のアミノ酸配列もしくはその配列と実質的に相同の配列を有するVLドメインを含む結合タンパク質を提供する。
本発明の好ましい態様は、配列番号9のアミノ酸配列もしくはその配列と実質的に相同の配列を有するVHドメインおよび/または配列番号10のアミノ酸配列もしくはその配列と実質的に相同の配列を有するVLドメインを含む結合タンパク質を提供する。
さらなる態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列(EJ212/007−Cl2−5,scFvのクローンとしても本明細書中に言及している)を含むかもしくはその断片またはそれら配列と実質的に相同の配列を含む結合タンパク質を提供する。
本発明のさらなる態様は、IgG型の形態のEJ212/007−Cl2−5のを提供し、その重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列またはその配列と実質的に相同の配列を含む重鎖可変領域および重鎖定常領域を含み、その軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列またはその配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含む。
本発明のさらなる態様は、IgG型の形態のEJ212/007−Cl2−5のを提供し、その重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列またはその配列と実質的に相同の配列を含む重鎖可変領域および配列番号12のアミノ酸配列またはその配列と実質的に相同の配列を含む定常領域を含み、その軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列またはその配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖可変領域および配列番号13のアミノ酸配列またはその配列と実質的に相同の配列を含む定常領域を含む。
本明細書中に用いられる「結合タンパク質」という用語は、もう1つの他の物質に特異的に結合するタンパク質について言及する。特に、本発明の結合タンパク質は、好ましくはCD166もしくはCD166断片,特にCD166の細胞外ドメインを含むか該ドメインからなる断片,またはCD166もしくはCD166断片を含む実体に特異的に結合できるか、あるいはCD166の機能を阻害するかもしくは顕著に低下させるか、あるいはCD166がその天然リガンドと相互作用するのを防止できる。好ましい態様において、結合タンパク質は、ヒトタンパク質である。さらに好ましい態様において、結合タンパク質は、抗体もしくは抗体断片であるか、または抗体もしくは抗体断片を含む。ヒト抗体またはヒト抗体断片が特に好ましい。
本発明の好ましい抗体は、3つのCDRを含む重鎖可変領域のうち少なくとも1つおよび3つのCDRを含む軽鎖可変領域のうち少なくとも1つを含む。3つのCDRの、典型的かつ好ましい配列は、本明細書中に記載されている。本発明の好ましい結合タンパク質は本発明に係るCDRを含むが、注目すべきは、上述のような本発明の結合タンパク質の上記腫瘍特異的な特性、好ましくはCD166結合特性が依然存在するという条件で、本発明の結合タンパク質は、本発明ではない他のCDRを組み合わせて本発明の1以上のCDRも含むことができるという点である。
しかしながら、抗体の軽鎖可変ドメインに3つのCDRが存在し、かつ重鎖可変ドメインに3つのCDRが存在することは、抗原が結合するために必須ではないことも、当該分野において充分に文書化されている。
例えば、ラクダ科動物の抗体(ハマーズ−カスターマンら,1993年,Nature,363巻(6428号):446〜448頁;アルバビ・ガールディら,1997年,FEBS Lett.,414巻:521〜526頁)は、広範な抗原結合レパートリーを有するが、軽鎖を欠いている。また、VHドメイン単独を含む(ワードら,1989年,Nature,341巻(6242号):544〜546頁;デービスおよびリーヒマン,1995年,Biotechnology(NY),13巻:475〜479頁)またはVLドメイン単独を含む(ファン・デン・ボイケンら,2001年,J.Mol.Biol.,310巻:591〜601頁)単一ドメイン抗体から得られた結果は、これらのドメインが、満足するほどの高い親和性を有する抗原と結合できることを示している。したがって、3つのCDRは、効率的に抗原と結合できる。
単一のCDRまたは2つのCDRが効率的に抗原に結合できることも知られている。GFPなどの異種タンパク質に挿入されたVHのCDR3領域は該異種タンパク質に抗原結合能を付与することが示された(キッスら,2006年,Nucleic Acid Research,34巻(19号):e132頁;ニケースら,2004年,Protein Sci.,13巻:1882〜1891頁)ことからも、第一の例として、単一のCDRは異種タンパク質に挿入され、該異種タンパク質に抗原結合能を付与することができる。
2つのCDRは効率的に抗原に結合できること、および2つのCDRは元の抗体に所有されるより優れた特性を付与することすらできることもさらに知られている。例えば、元の抗体から得られた2つのCDR(VHのCDR1領域およびVLのCDR3領域)は、元の抗体の抗原認識特性を保持しつつも、腫瘍に侵入する能力に優れていることが示されている(キウら,2007年,Nature Biotechnology,25巻(8号):921〜929頁)。未変性の元の抗体と類似する様式で該CDRを適応させるために、適切なリンカー配列(例えば、VHのFR2由来)でこれらCDRドメインを繋ぐことによって、より良い抗原認識が生み出された。したがって、元の抗体に見出された高次構造を維持するために適切なフレームワーク領域を用いて適応させた2つのCDRドメイン(好ましくはVHドメイン由来の1つおよびVLドメイン由来の1つであり、より好ましくはCDR3ドメインである2つのCDRドメインのうちの1つとともにである)を含む抗原結合抗体模倣薬を構築することが可能であることは、当該分野において公知である。
よって、本発明の好ましい抗体は6つのCDR領域(軽鎖由来の3つおよび重鎖由来の3つ)を含むが、CDR領域が6つより少ない抗体、およびCDR領域が1つまたは2つである抗体も本発明に包含される。さらに、重鎖のみまたは軽鎖のみ由来のCDRを有する抗体もまた考慮される。
診断または治療への応用の点で、本発明の結合タンパク質は好ましくは、1以上のタイプの腫瘍細胞または検体に結合するが、1以上のタイプの正常細胞への結合が顕著ではないかまたは禁制ではないことにおいて、腫瘍特異的である。例えば、1以上のタイプの腫瘍細胞への結合は、1以上のタイプの正常細胞への結合より強くてもよい。これに代えて/これに加えて、該結合タンパク質は、本発明の結合タンパク質が決して接触することのない正常組織(例えば、該結合タンパク質は脳血液関門を通過することができないから、脳に投与しなければ到達することがない脳内の正常組織など)に結合してもよい。好ましくは、該結合タンパク質は、診断目的または治療目的にとって効率的な方法でまたは効率的なレベルで、1以上のタイプの腫瘍細胞または検体、好ましくは1以上のタイプの乳癌細胞または検体に結合する(例えば、1以上のタイプの腫瘍細胞または検体、好ましくは乳癌細胞への顕著であり測定可能な結合を示すが、1以上のタイプの正常細胞または検体への弱い結合、好ましくは顕著ではない結合を示す)。本発明の結合タンパク質を腫瘍治療または診断に用いることが望まれている場合、腫瘍への特異性は特に望ましい。
例えば、FACSまたは免疫組織化学的プロファイリングのように、このような腫瘍特異性を評価する適切な方法は周知であり、当該分野において記載されている。それらの方法においては、一般的に、結合タンパク質の1もしくはいくつかの腫瘍株化細胞または検体への結合が、該タンパク質の1もしくはいくつかの正常株化細胞または検体への結合と比較され、そして腫瘍細胞への結合vs正常細胞への結合における、測定可能なまたは顕著な差異(増加)の発見は、腫瘍特異性を示す。用いることができる典型的な正常細胞および腫瘍株化細胞または検体は公知であり、当該分野において記載されており、それらのうちいくつかは本実施例に記載されている(例えば、適切な腫瘍株化細胞は、乳癌株化細胞MDA−MB231(ATCC:HTB−26)または肺上皮性悪性腫瘍株化細胞SW900(ATCC:HTB−59)であり、適切な正常細胞は血球細胞、例えば、PBLまたは顆粒球である)。例えば、本発明の好ましい結合タンパク質は、MDA−MB231などのような乳癌株化細胞に結合(例えば、測定可能なまたは顕著な結合を示す)できるが、顆粒球またはPBL(末梢血リンパ球)に対して顕著でないかまたは測定不可能な結合を示す。換言すれば、このような結合タンパク質は、MDA−MB231細胞などの乳癌細胞またはSW900細胞などの肺癌細胞に対する結合において、顆粒球またはPBLなどの正常細胞と比較して、測定可能な(好ましくは顕著な)増加を示す。
好ましくは、結合における上記顕著な差異は統計学的に有意であり、好ましくはP値が0.1未満、好ましくは0.05未満、さらに好ましくは0.01未満である。統計学的な有意差を決定する適切な方法は周知であり、当該分野において記載されており、これらのうち任意の方法を用いてもよい。
腫瘍特異性を評価する代替例としての免疫組織化学的プロファイリングは、例えば、本実施例に記載されているように、正常組織検体または腫瘍組織検体において実施できる。好ましい結合タンパク質は、腫瘍組織検体(例えば、乳癌検体,卵巣癌検体,前立腺癌検体,腎癌検体または脳癌検体)に結合(例えば、測定可能なまたは顕著な結合を示す)できるが、正常組織に対して弱い結合、好ましくは顕著ではないかまたは測定不可能な結合を示す。他の好ましい結合タンパク質は、黒色腫,前立腺癌,乳癌,結腸直腸癌,膀胱癌,卵巣癌,膵臓癌,肺癌または食道扁平上皮癌に結合することができる。一般的に、好ましい結合タンパク質は、上記CD166抗原を発現する癌細胞タイプに結合することができる。
免疫組織化学手法は、例えば、本実施例4および表3に記載されているように、結合タンパク質が細胞または検体に結合することを評価するために用いることができる。好ましい結合タンパク質は、低いまたは高い免疫組織化学的評価、好ましくは高い免疫組織化学的評価を示す。
抗体分子および結合タンパク質に関連して本明細書中に用いられる「ヒト」という用語は、可変抗体領域(例えば、VH,VL,CDRもしくはFR領域)および/またはヒト(例えば、ヒト生殖細胞系列もしくは体細胞)で発見された配列に由来もしくは対応する定常抗体領域を有する結合タンパク質に言及する。本発明の「ヒト」結合タンパク質は、ヒトの配列にコードされていないアミノ酸残基をさらに含み、例えば、インビトロでランダム突然変異または部位特異的突然変異によって導入された突然変異体(特に、上記結合タンパク質の少数の残基において、例えば、該結合タンパク質の残基の1,2,3,4または5つにおいて、好ましくは、例えば、該結合タンパク質の1以上のCDRを構成する残基の1,2,3,4または5において、保存的な置換または変異を含む突然変異体)が挙げられる。したがって、本発明の「ヒト」抗体は、ヒトで発見された配列に由来し関連している配列を含むが、インビボにおいてヒト抗体生殖細胞系列レパートリーの中には天然に存在しないものであってもよい。さらに、本発明のヒト結合タンパク質は、ヒトの配列から同定されたヒトのコンセンサス配列またはヒトの配列と実質的に相同の配列を含むタンパク質を含む。
さらに、本発明の上記ヒト結合タンパク質は、ヒト抗体分子においては組み合わせで発見されたものであるが、VH,VL,CDRまたはFR領域の組み合わせに限定されない。したがって、本発明の該ヒト結合タンパク質は、ヒトにおいて必ずしも天然に存在しないこのような領域の組み合わせを含むことができるか、または一致してもよい。
好ましい態様において、上記ヒト抗体は、完全なるヒト抗体である。本明細書に用いられる「完全なるヒト」抗体は、上述したように「ヒト」可変領域ドメインおよび/またはCDRを含む抗体であり、非ヒト抗体の配列を実質的に有さないか、いかなる非ヒト抗体の配列も有さない。例えば、ヒト可変領域ドメインおよび/または「非ヒト抗体の配列を実質的に有さない」CDRを含む抗体は、約5,4,3,2または1個のみのアミノ酸がヒト抗体の配列にコードされていないアミノ酸である抗体,ドメインおよび/またはCDRである。したがって、「完全なるヒト」抗体は「ヒト化」抗体と区別され、該「ヒト化」抗体は、実質的に非ヒト可変領域ドメインに基づき(例えば、マウス可変領域ドメイン)、あるアミノ酸が、典型的にはヒト抗体に存在するアミノ酸に良く対応するよう変えられたものである。
本発明の「完全なるヒト」抗体は、一本鎖抗体などの、他のいかなる実質的な抗体の配列を有さないヒト可変領域ドメインおよび/または、CDRであってもよい。代わりに、本発明の「完全なるヒト」抗体は、1以上のヒト抗体定常領域に一体となったまたは動作可能に付着した、ヒト可変領域ドメインおよび/またはCDRであってもよい。特定の好ましい完全なるヒト抗体は、IgG定常領域に完全に相補的なIgG抗体である。
他の態様において、本発明の「ヒト」抗体は、部分的にヒトのキメラである。本明細書中に用いられる「部分的なヒトキメラ」抗体は、非ヒト(例えば、ラットやマウス)の定常領域に動作可能に付着もしくは接合した、「ヒト」可変領域ドメインおよび/またはCDRを含む抗体である。このような部分的なヒトキメラ抗体は、例えば、前臨床研究において用いられてもよく、該定常領域が、前臨床試験に用いられる動物と同一種の動物であることが好ましい。これら部分的にヒトキメラ抗体は、例えば、エックスビボの診断においても使用されてもよく、非ヒトの定常領域が抗体検出にさらなる選択肢を提供することができる。
本明細書中に用いられる「抗体」または「抗体分子」という用語は、免疫グロブリン分子または抗原結合ドメインを含む他の分子に言及する。
よって、本明細書中に用いられる「抗体」または「抗体分子」という用語は、抗体全体(例えば、IgG,IgA,IgE,IgM,またはIgD、好ましくはIgGまたはIgM),モノクローナル抗体,ポリクローナル抗体,ヒト化抗体およびキメラ抗体を含むことを意味する。抗原結合ドメインを含む抗体断片も含まれる。本明細書中に用いられる「抗体断片」という用語は、抗原結合機能(好ましくはCD166結合機能)を表示する任意の適切な抗体断片、例えば、Fab,Fab’,F(ab’)2,scFv,Fv,dsFv,ds−scFv,Fd,dAbs,TandAbs二量体,minibody,二重特異性抗体断片,およびそれらの多量体ならびに二重特異性抗体断片を含む。抗体は、従来技術を用いて断片化することができる。例えば、F(ab’)2断片は、該抗体にペプシンを処理することによって作ることができる。得られた該F(ab’)2断片は、ジスルフィド・ブリッジを還元するように処理し、Fab’断片を生成することができる。パパイン消化は、Fab断片の形成をもたらす。Fab,Fab’およびF(ab’)2,scFv,Fv,dsFv,Fd,dAbs,TandAbs,ds−scFv,二量体,minibody,二重特異性抗体断片および他の断片も組換え技術によって合成することができ、または化学的に合成することができる。抗体断片を生成する技術は周知であり、当該分野において記載されている。本発明は、本明細書中に記載の結合特性を有するscFv,FabおよびIgG抗体を特に調製する。
よって、本明細書中に用いられる「抗体」または「抗体分子」という用語は、抗体全体(例えば、IgG,IgA,IgE,IgM,またはIgD、好ましくはIgGまたはIgM),モノクローナル抗体,ポリクローナル抗体,ヒト化抗体およびキメラ抗体を含むことを意味する。抗原結合ドメインを含む抗体断片も含まれる。本明細書中に用いられる「抗体断片」という用語は、抗原結合機能(好ましくはCD166結合機能)を表示する任意の適切な抗体断片、例えば、Fab,Fab’,F(ab’)2,scFv,Fv,dsFv,ds−scFv,Fd,dAbs,TandAbs二量体,minibody,二重特異性抗体断片,およびそれらの多量体ならびに二重特異性抗体断片を含む。抗体は、従来技術を用いて断片化することができる。例えば、F(ab’)2断片は、該抗体にペプシンを処理することによって作ることができる。得られた該F(ab’)2断片は、ジスルフィド・ブリッジを還元するように処理し、Fab’断片を生成することができる。パパイン消化は、Fab断片の形成をもたらす。Fab,Fab’およびF(ab’)2,scFv,Fv,dsFv,Fd,dAbs,TandAbs,ds−scFv,二量体,minibody,二重特異性抗体断片および他の断片も組換え技術によって合成することができ、または化学的に合成することができる。抗体断片を生成する技術は周知であり、当該分野において記載されている。本発明は、本明細書中に記載の結合特性を有するscFv,FabおよびIgG抗体を特に調製する。
上記の抗体または抗体断片は、自然に生産されることあり、または全体的にもしくは部分的に合成して生成することもできる。したがって、該抗体は、任意の適切な供給源から得られてもよく、例えば、組換え供給源および/またはトランスジェニック動物もしくはトランスジェニック植物から生成される。よって、該抗体分子は、インビトロまたはインビボで生成することができる。
好ましくは、上記の抗体および抗体断片は、一般的に上記抗原結合部位を含む抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含む。ある態様において、該抗体または抗体断片は、IgG1,IgG2,IgG3,IgG4,IgA1,IgA2,IgE,IgMまたはIgDの定常領域などのような、全部または一部の重鎖定常領域を含む。好ましくは、該重鎖定常領域はIgG1重鎖定常領域またはその一部である。さらに、該抗体または抗体断片は、全部もしくは一部のκ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域あるいはそれらの一部を含むことができる。好ましくは、該軽鎖定常領域は、κ軽鎖定常領域またはその一部である。全部または一部のこのような定常領域は、天然に生産されたものであっても、全体的にもしくは部分的に合成されたものであってもよい。このような定常領域の適切な配列は周知であり、当該分野において文書化されている。
本明細書に用いられる「断片」という用語は、生物学的に関連性を有する断片、例えば、抗原結合に寄与することができ(例えば、抗原結合部位の一部を形成する)、または該抗原の機能の阻害もしくは低減に寄与することができ、あるいは該抗原がその天然リガンドに相互作用することを防止することに寄与することができる断片に言及する。よって、好ましい断片は、本発明の上記抗体の重鎖可変領域(VHドメイン)および/または軽鎖可変領域(VLドメイン)を含む。好ましい断片は、本明細書の他の部分に記載したように、腫瘍細胞に対する結合能、好ましくは上記CD166抗原に対する結合能を保持する(すなわち、抗原結合断片である)。他の好ましい断片は、本発明の抗体(もしくは本発明のVHドメイン)の1以上の重鎖の相補性決定領域(CDR)または本発明の抗体(もしくは本発明のVLドメイン)の1以上の軽鎖の相補性決定領域(CDR)を含む。よって、好ましい断片は、少なくとも5アミノ酸の長さであるか、少なくとも1つのCDR領域、好ましくはCDR3領域、より好ましくは重鎖CDR3領域を含む。
本発明の結合タンパク質が、任意の定義された配列の断片を含む(例えば、配列番号2の断片を含む態様)、例えば、本発明のVHおよび/またはVLドメインを含む結合タンパク質であるか、あるいは本発明の1以上のCDRを含む結合タンパク質である態様において、それぞれの領域/ドメインがその生物学的機能を果たすことができるようにするため、および抗原結合への寄与が保持されるようにするために、これらの領域/ドメインは一般的に結合タンパク質内で分けられる。したがって、該VHドメインおよびVLドメインは、適切な骨格配列/リンカー配列によって分けられてもよく、該CDRは、天然に存在する抗体において発見されたもののような適切なフレームワーク領域によって分けられてもよい。したがって、本発明のVH,VLおよび個々のCDR配列は、抗原結合を可能にする適切なフレームワークもしくは骨格の中に提供されるか組み込まれることができる。このようなフレームワーク配列または領域は、適切な骨格を形成するのに適切なように、天然に存在するフレームワーク領域であるFR1,FR2,FR3および/またはFR4に対応できるか、あるいは例えば天然に存在する様々なフレームワーク領域を比較することによって同定されるコンセンサスフレームワーク領域に対応できる。代わりに、非抗体骨格またはフレームワーク、例えば、T細胞受容体フレームワークを用いることができる。
フレームワーク領域に用いることができる適切な配列は周知であり当該分野において文書化されており、これらのうち任意の配列を用いてもよい。フレームワーク領域にとって好ましい配列は、本発明のVHドメインおよび/またはVLドメインを構成する1以上の上記フレームワーク領域、すなわち、配列番号2もしくは表2に開示されている1以上の該フレームワーク領域またはこれらと実質的に相同であるフレームワーク領域であり、特に抗原特異性を維持できるフレームワーク領域、例えば、該結合タンパク質の3D構造と同一もしくは実質的に同一であるフレームワーク領域である。好ましい態様において、配列番号2(表2にも示す)の4つすべてのFR領域またはこれらに実質的に相同のFR領域は、本発明の該結合タンパク質において発見されたものである。
さらに、本発明の好ましい結合タンパク質は本発明に係るVH,VLまたはCDRから構成されているが、上述したような本発明の結合タンパク質の上記腫瘍特異的特性、好ましくは上記CD166結合特性が依然存在しているという条件で、本発明の結合タンパク質は、本発明ではない他のVH,VLまたはCDRと組み合わされた本発明の1以上のVH,VLまたはCDRも包含する。
本明細書中に用いられる「重鎖相補性決定領域」という用語は、抗体分子の重鎖可変領域(VHドメイン)内の高頻度可変性の領域に言及する。重鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へかけて重鎖相補性決定領域1,重鎖相補性決定領域2および重鎖相補性決定領域3と呼ばれる3つの相補性決定領域を有する。重鎖可変領域は4つのフレームワーク領域(アミノ末端からカルボキシ末端へかけてFR1,FR2,FR3およびFR4)も有する。これらの領域によってCDRが分けられる。
本明細書中に用いられる「重鎖可変領域」(VHドメイン)という用語は、抗体分子の重鎖の可変領域に言及する。
本明細書中に用いられる「軽鎖相補性決定領域」という用語は、抗体分子の軽鎖可変領域(VLドメイン)内の高頻度可変性の領域に言及する。軽鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へかけて軽鎖相補性決定領域1,軽鎖相補性決定領域2および軽鎖相補性決定領域3と呼ばれる3つの相補性決定領域を有する。軽鎖可変領域は4つのフレームワーク領域(アミノ末端からカルボキシ末端へかけてFR1,FR2,FR3およびFR4)も有する。これらの領域によってCDRが分けられる。
本明細書中に用いられる「軽鎖相補性決定領域」という用語は、抗体分子の軽鎖可変領域(VLドメイン)内の高頻度可変性の領域に言及する。軽鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へかけて軽鎖相補性決定領域1,軽鎖相補性決定領域2および軽鎖相補性決定領域3と呼ばれる3つの相補性決定領域を有する。軽鎖可変領域は4つのフレームワーク領域(アミノ末端からカルボキシ末端へかけてFR1,FR2,FR3およびFR4)も有する。これらの領域によってCDRが分けられる。
本明細書中に用いられる「軽鎖可変領域」(VLドメイン)という用語は、抗体分子の軽鎖の可変領域に言及する。
本明細書中において、必要ならば、CDRの位置決めを定義するために、カバットの術語体系に従うことに注目すべきである(カバット,E.A.,ウー,T.T.,ペリー,H.M.,ゴッテスマン,K.S.,およびフォーラー,C.(1991年)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,第5版,国立衛生研究所公衆衛生局編集,ベセスダ,MD)
上述のような本発明の結合タンパク質をコードする配列を含む核酸分子、またはそれらと実質的に相同の核酸分子は、本発明のさらなる態様を形成する。好ましい核酸分子は、配列番号1に定義されたものまたはそれと実質的に相同の核酸分子である。他の好ましい核酸分子は配列番号2のアミノ酸配列をコードする配列またはそれらと実質的に相同の核酸分子を含む。
本明細書中において、必要ならば、CDRの位置決めを定義するために、カバットの術語体系に従うことに注目すべきである(カバット,E.A.,ウー,T.T.,ペリー,H.M.,ゴッテスマン,K.S.,およびフォーラー,C.(1991年)「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,第5版,国立衛生研究所公衆衛生局編集,ベセスダ,MD)
上述のような本発明の結合タンパク質をコードする配列を含む核酸分子、またはそれらと実質的に相同の核酸分子は、本発明のさらなる態様を形成する。好ましい核酸分子は、配列番号1に定義されたものまたはそれと実質的に相同の核酸分子である。他の好ましい核酸分子は配列番号2のアミノ酸配列をコードする配列またはそれらと実質的に相同の核酸分子を含む。
上述のような本発明の結合タンパク質の断片またはそれらと実質的に相同の配列は、本発明のさらなる態様を形成する。
したがって、本発明は、上述の本発明のVLドメインもしくはそれらと実質的に相同の配列からなるかまたはこれら配列を含むポリペプチド、あるいは上述の本発明のVHドメインもしくはそれらと実質的に相同の配列からなるかまたはこれら配列を含むポリペプチドを提供する。
したがって、本発明は、上述の本発明のVLドメインもしくはそれらと実質的に相同の配列からなるかまたはこれら配列を含むポリペプチド、あるいは上述の本発明のVHドメインもしくはそれらと実質的に相同の配列からなるかまたはこれら配列を含むポリペプチドを提供する。
よって、本発明は、上述のような本発明の1以上のCDR領域もしくはそれらと実質的に相同の配列からなるかまたはこれら配列を含むポリペプチドをさらに提供する。
1以上のCDR領域が存在する場合、好ましい組み合わせも上述されている。
1以上のCDR領域が存在する場合、好ましい組み合わせも上述されている。
本発明の結合タンパク質のこのような断片をコードする配列を含む核酸分子またはそれら配列と実質的に相同の核酸分子は、本発明のさらなる態様を形成する。このような断片(例えば、VHドメイン,VLドメインおよび個々のCDR)をコードする好ましい核酸分子は、配列番号1に見出すことができる。よって、好ましい核酸分子は、図1に示すVHドメインをコードする配列番号14もしくはその配列と実質的に相同の核酸分子および/または図1に示すVLドメインをコードする配列番号15をもしくはその配列と実質的に相同の核酸分子を含む。
他の好ましい核酸分子は、本発明の結合タンパク質のVHもしくはVLドメインをコードする配列であり、例えば、配列番号9もしくは配列番号10、またはそれら配列と実質的に相同の配列をコードする配列である。
アミノ酸配列または核酸配列に関連して、本明細書中に用いられる「実質的に相同の」という用語は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、もっとも好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%,95%,96%,97%,98%もしくは99%の、アミノ酸配列または核酸配列に対する配列相同性を有する配列を含む。本発明の実質的に相同の配列は、よって、本発明の配列に対して単数もしくは複数の塩基変化またはアミノ酸変化(付加,置換,挿入または欠失)を含む。本発明の配列を構成する1以上のフレームワーク領域および/または1以上のCDRにおいて、アミノ酸レベルでは、好ましい実質的に相同の配列は、ほんの1,2,3,4もしくは5個、好ましくは1,2もしくは3個、より好ましくは1もしくは2個変化したアミノ酸を含む。このような変化は、好ましくは、保存的なアミノ酸の置換である。
上記の実質的に相同の核酸配列は、少なくとも中程度にストリンジェント[moderately stringent]なハイブリダイゼーションの条件下で、開示された該核酸配列(もしくはそれらと相補的な配列)、例えば、本発明の1以上の軽鎖CDRまたは重鎖CDR,本発明の軽鎖可変領域もしくは重鎖可変領域,または本発明の結合タンパク質(もしくはこれらの相補的な配列)とハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列も含む。
「実質的に相同の」という用語は、本発明のタンパク質または核酸分子と実質的に同様の機能を実質的に同様に果たす、本発明のアミノ酸およびヌクレオチド配列を修飾したものもしくは化学的に等価のものも含む。例えば、任意の実質的に相同の結合タンパク質(またはそれをコードする実質的に相同の核酸)は、癌細胞、好ましくは乳癌細胞に特異的に結合する能力を保持すべきである。好ましくは、任意の実質的に相同の結合タンパク質は、問題としている該結合タンパク質によって認識されるものと同じ抗原、すなわちCD166抗原(および好ましくはその抗原と同じエピトープ)、例えば、本明細書中に記載されたものと同じである(本発明のCDRドメインまたは本発明のVHおよびVLドメインによって認識される)エピトープもしくは抗原に特異的に結合する能力を保持すべきである。同じエピトープ/抗原に結合することは、周知であり当該分野において記載されている方法によって、例えば、結合アッセイを用いて、例えば、競合アッセイを用いて、容易に試験することができる。よって、当業者は、結合アッセイが、本発明の抗体および抗体断片と同じ結合特異性を有する他の抗体や抗体断片を発見するために用いることができることをよく理解している。下記に例示されるように、競合結合アッセイは、そのような他の抗体を発見するために用いることができる。下記の方法は、好適な競合アッセイのの例のたった一つに過ぎない。当業者は、他の好適な方法およびバリエーションを知っている。
フローサイトメトリーを用いて競合アッセイを実施する前に、腫瘍細胞、例えば、乳癌細胞の固定数に対して最大限に結合する本発明の抗体(Ab1)の最小濃度を決定する。合計106個の細胞を対数増殖期の培養から回収し、様々な抗体濃度で1時間,4℃で培養する。該細胞を洗浄し、さらに1時間,4℃で好適な検出抗体とともに培養する。洗浄後、該細胞をフローサイトメトリーで解析する。それぞれの試験抗体ごとに、抗体濃度に対して蛍光の平均値をプロットすることによって飽和曲線がそのデータから得られる。
上記競合アッセイにおいて、例えば、乳癌細胞などの腫瘍細胞は、上述したように調製し、抗体(Ab1)の固定濃度で繰り返して処理する。固定濃度は、上述の腫瘍細胞の固定数に対して最大限に結合させるための抗体の最小濃度である。Ab1添加直後に、阻害する可能性を有する抗体(Ab2)を様々な濃度でそれぞれのチューブに加え、得られた混合物を4℃で1時間培養する。蛍光の最大平均値を超えた阻害割合および変化のいずれも各試験チューブ(Ab1+Ab2)の蛍光測定値の平均値から蛍光のバックグランド(PBS−5% FCS)を引き算することによって算出する。次に、得られた結果を、該バックグランドをマイナスしたAb1単独(最大限の結合)の蛍光の平均値で割る(下記参照)。阻害の割合の結果は100を掛けることによって得られる。反復の平均値(それぞれの標準誤差とともに)を抗体濃度に対してプロットする。以下の式を、阻害割合を算出するために用いる:
PI=[(MF(Ab1+Ab2)−MFBgd)/(MFAb1−MFBgd)]×100
式中、PI=阻害割合[percent inhibition];MF(Ab1+Ab2)=Ab1+Ab2混合の蛍光測定値の平均値;およびMFBgd=PBS−5% FCSの蛍光のバックグランド平均値、である。
PI=[(MF(Ab1+Ab2)−MFBgd)/(MFAb1−MFBgd)]×100
式中、PI=阻害割合[percent inhibition];MF(Ab1+Ab2)=Ab1+Ab2混合の蛍光測定値の平均値;およびMFBgd=PBS−5% FCSの蛍光のバックグランド平均値、である。
したがって、本発明は腫瘍細胞上、好ましくは乳癌細胞上の抗原に結合することができる結合タンパク質を提供するものであって、該結合タンパク質は、以下を含む方法によって同定できる:
(1)最小濃度の本発明の結合タンパク質(好ましくは、固定数の腫瘍細胞に対して最大限に結合する抗体または抗体断片(Ab1))とともに、固定数の腫瘍細胞(好ましくは乳癌細胞)を培養し、Ab1(MFAb1)の蛍光の平均値を測定すること;
(2)Ab1および腫瘍細胞にAb2を添加することによって2以上の濃度の試験結合タンパク質(Ab2)を試験し、蛍光の平均値(MF(Ab1+Ab2))を測定すること;
(3)蛍光のバックグランド平均値(MFBgd)を測定すること;
(4)下記式で表されるPIを計算することこと
PI=[(MF(Ab1+Ab2)−MFBgd)/(MFAb1−MFBgd)]×100;および
(5)該PIを対照PI値と比較すること;
該対照PI値と統計的に有意に異なるPIは、該試験結合タンパク質が該腫瘍細胞上の上記抗原に結合できることを示す。好ましくは、統計学的に有意な差異はP値が0.05未満である。統計学的な有意性を決定する適切な方法は周知であり当該分野において文書化されており、これらのうち任意の方法を用いてもよい。
(1)最小濃度の本発明の結合タンパク質(好ましくは、固定数の腫瘍細胞に対して最大限に結合する抗体または抗体断片(Ab1))とともに、固定数の腫瘍細胞(好ましくは乳癌細胞)を培養し、Ab1(MFAb1)の蛍光の平均値を測定すること;
(2)Ab1および腫瘍細胞にAb2を添加することによって2以上の濃度の試験結合タンパク質(Ab2)を試験し、蛍光の平均値(MF(Ab1+Ab2))を測定すること;
(3)蛍光のバックグランド平均値(MFBgd)を測定すること;
(4)下記式で表されるPIを計算することこと
PI=[(MF(Ab1+Ab2)−MFBgd)/(MFAb1−MFBgd)]×100;および
(5)該PIを対照PI値と比較すること;
該対照PI値と統計的に有意に異なるPIは、該試験結合タンパク質が該腫瘍細胞上の上記抗原に結合できることを示す。好ましくは、統計学的に有意な差異はP値が0.05未満である。統計学的な有意性を決定する適切な方法は周知であり当該分野において文書化されており、これらのうち任意の方法を用いてもよい。
実質的に相同の任意の結合タンパク質は、本明細書の他の部分で記載したように、好ましくは腫瘍特異性を保持すべきであり、例えば、正常組織には顕著に結合することなく、腫瘍組織に対する結合能を保持すべきである。さらに好ましくは、該結合タンパク質はCD166に特異的に結合する能力を保持すべきである。
本発明のタンパク質の、実質的に相同の配列は、限定されずに、保存的なアミノ酸置換、すなわち、該結合タンパク質のVH,VLもしくはCDRドメインをもたらさない変化などを含み、例えば、異なるリンカー配列を用いたscFv抗体、または、タグ配列もしくは他の成分が添加された場合、抗原の結合に寄与しない結合タンパク質、あるいは抗体分子もしくは断片の1種もしくは1形式を、抗体分子もしくは断片の他のもう1種もしくは1形式に変形させる変化(例えば、FabからscFvへの変形、逆もまた同様)、あるいは抗体分子を、抗体分子の特定のクラスもしくはサブクラスへ変形させること(例えば、抗体分子をIgGまたはそのサブクラス(例えば、IgG1またはIgG3など)へ変形させること)を含む。
本明細書中に用いられる「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸残基を類似した側鎖を有するもう1つのアミノ酸残基に取り替える置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン,アルギニン,ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸,グルタミン酸)、電荷を有さない極性側鎖(例えば、グリシン,アスパラギン,グルタミン,セリン,スレオニン,チロシン,システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,プロリン,フェニルアラニン,メチオニン,トリプトファン)、β−分岐の側鎖(例えば、スレオニン,バリン,イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン,フェニルアラニン,トリプトファン,ヒスチジン)が挙げられる。
相同性は、任意の従来法によって評価されてもよい。しかしながら、配列間の相同度合いを決定するためには、複数の配列比較を実行するコンピュータ・プログラムが有効であり、例えば、クラスタルW(トンプソン,J.D.,D.G.ヒギンスら(1994年),「CLUSTAL W:配列の重み付け[sequence weighting],位置特異的ギャップ・ペナルティおよびウェイト・マトリックスの選択によって進行する複数の配列比較の感度向上」,Nucleic Acids Res 22巻:4673〜4680頁)が挙げられる。2つの配列の間でもっとも高い順の一致が得られる(該配列1つの全長の少なくとも50%がアライメントに含まれる)ように、必要に応じて、クラスタルWのアルゴリズムは、BLOSUM 62のスコア・マトリックス[scoring matrix](ヘニコフ S.およびヘニコフ J.G.,1992年,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89巻:10915〜10919頁)を選択し、ギャップ・オープニング・ペナルティを10とし、ギャップ・エクステンション・ペナルティを0.1として用いることができる。
2つの配列間でもっとも高い順の一致が得られ、2つの配列間でアミノ酸の同一数が決定できるように、配列をアライメントするために用いてもよい他の方法として、後にスミスおよびウォーターマンによって改訂されている(Adv.Appl.Math.,1981年,2巻:482頁)が、ニードルマンおよびブンシュのアライメント法(J.Mol.Biol.,1970年,48巻:443頁)が挙げられる。2つのアミノ酸配列間で同一の割合を計算する他の方法は、一般的に当該分野において認識され、例えば、カリロおよびリプトンによる記載(SIAM J.Applied Math.,1988年,48巻:1073頁)、「Computational Molecular Biology」,レスク,オックスフォード大学出版局編集,ニューヨーク,1988年,「Biocomputing:Informatics and Genomics Projects」の記載などが挙げられる。
一般的に、コンピュータのプログラムは、そのような計算を行なう際に用いる。ALIGN(E.マイアズおよびW.ミラー,「線形空間における光学的配列」,CABIOS(1988年)4巻:11〜17頁)、FASTA(W.R.ピアースンおよびD.J.リップマン(1988年),「生物学的配列解析のための改良されたツール」,PNAS 85巻:2444〜2448頁、ならびにW.R.ピアースン(1990年),「FASTPおよびFASTAによる、速く敏感な配列比較」,Methods in Enzymology,183巻:63〜98頁)およびギャップドBLAST(アルトシュル,S.F.,T.L.マッデンら(1997年),「ギャップドBLASTおよびPSI−BLAST:タンパク質データベース検索プログラムの新しい世代」,Nucleic Acids Res.,25巻:3389〜3402頁)、BLASTP、BLASTN、またはGCG(デベローら,Nucleic Acids Res.,1984年,12巻:387頁)などのような、対の配列を比較し整列させるプログラムもまた、この目的にとって有用である。さらに、欧州バイオインフォマティクス研究所のサーバであるダリはタンパク質配列の構造に基づくアライメントを提供する(ホルム,J.of Mol. Biology,1993年,233巻:123〜128頁;ホルム,Trends in Biochemical Sciences,1995年,20巻:478〜480頁;ホルム,Nucleic Acids Research,1998年,26巻:316〜319頁)。
2つの配列間でもっとも高い順の一致が得られ、2つの配列間でアミノ酸の同一数が決定できるように、配列をアライメントするために用いてもよい他の方法として、後にスミスおよびウォーターマンによって改訂されている(Adv.Appl.Math.,1981年,2巻:482頁)が、ニードルマンおよびブンシュのアライメント法(J.Mol.Biol.,1970年,48巻:443頁)が挙げられる。2つのアミノ酸配列間で同一の割合を計算する他の方法は、一般的に当該分野において認識され、例えば、カリロおよびリプトンによる記載(SIAM J.Applied Math.,1988年,48巻:1073頁)、「Computational Molecular Biology」,レスク,オックスフォード大学出版局編集,ニューヨーク,1988年,「Biocomputing:Informatics and Genomics Projects」の記載などが挙げられる。
一般的に、コンピュータのプログラムは、そのような計算を行なう際に用いる。ALIGN(E.マイアズおよびW.ミラー,「線形空間における光学的配列」,CABIOS(1988年)4巻:11〜17頁)、FASTA(W.R.ピアースンおよびD.J.リップマン(1988年),「生物学的配列解析のための改良されたツール」,PNAS 85巻:2444〜2448頁、ならびにW.R.ピアースン(1990年),「FASTPおよびFASTAによる、速く敏感な配列比較」,Methods in Enzymology,183巻:63〜98頁)およびギャップドBLAST(アルトシュル,S.F.,T.L.マッデンら(1997年),「ギャップドBLASTおよびPSI−BLAST:タンパク質データベース検索プログラムの新しい世代」,Nucleic Acids Res.,25巻:3389〜3402頁)、BLASTP、BLASTN、またはGCG(デベローら,Nucleic Acids Res.,1984年,12巻:387頁)などのような、対の配列を比較し整列させるプログラムもまた、この目的にとって有用である。さらに、欧州バイオインフォマティクス研究所のサーバであるダリはタンパク質配列の構造に基づくアライメントを提供する(ホルム,J.of Mol. Biology,1993年,233巻:123〜128頁;ホルム,Trends in Biochemical Sciences,1995年,20巻:478〜480頁;ホルム,Nucleic Acids Research,1998年,26巻:316〜319頁)。
基準点[reference point]を提供する目的で、50%,60%,70%,80%,90%,95%などの相同性等を有する本発明による配列は、デフォルトのパラメータでのALIGNプログラムを用いて決定してもよい(例えば、インターネット上のGENESTREAMネットワークサーバ(IGH,モンペリエ,フランス)を利用できる)。
「少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件」とは、溶液中、2つの相補的な核酸分子間の選択的なハイブリダイゼーションを促進する条件を選択することを意味する。ハイブリダイゼーションは、全部または一部の核酸配列分子に起こってもよい。ハイブリダイゼーションする部分は、典型的に少なくとも15(例えば、20,25,30,40または50)ヌクレオチドの長さである。当業者は、二本鎖の核酸または核酸ハイブリッドの安定性が、Tm(ナトリウムを含む緩衝液において、ナトリウムイオン濃度および温度の関数である(Tm=81.5℃−16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)−600/l)))または類似の式によって決定されることを認識している。したがって、ハイブリッドの安定性を決定する洗浄条件におけるパラメータはナトリウムイオン濃度および温度である。公知の核酸分子と類似しているが同一ではない分子を同定するために、1%の不一致が、Tmにおいて約1℃の減少に起因すると仮定できる。例えば、核酸分子が95%以上の同一性を有するものとして検出される場合、最終の洗浄温度は約5℃下げる。これらの考察に基づき、当業者は、ハイブリダイゼーションの好適な条件を容易に選択できる。好ましい態様において、ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件を選択する。例として、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成するために以下の条件を採用する:上記式に基き、Tm−5℃で、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハート液/1.0% SDSでのハイブリダイゼーション後、60℃で、0.2×SSC/0.1% SDSで洗浄する。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、42℃で3×SSCでの洗浄段階を含む。
さらなる例として、「ハイブリダイゼーションする」配列は、ストリンジェントではない条件下(例えば、室温で、6×SSC,50%ホルムアルデヒド)で結合させ(ハイブリダイゼーションさせ)、低度にストリンジェントな条件(例えば、室温で2×SSC、より好ましくは42℃で2×SSC)下またはより高度にストリンジェントな条件(例えば、65℃で2×SSC)下で洗浄される配列である(ここで、SSC=0.15M NaCl,0.015M クエン酸ナトリウム,pH7.2)。
しかしながら、同等にストリンジェントな条件を、代わりの緩衝液,塩および温度を用いて達成できることは理解されている。ハイブリダイゼーションの条件に関してさらなる助言は、以下から見出される:Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,ニューヨーク,1989年,6.3.1〜6.3.6およびサムブルックら,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory出版,1989年,3巻。
一般的に言えば、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションする配列が好ましく、コードの縮重を別にして、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションしたままの配列である。
ヒトの体もしくは動物の体またはヒトの体もしくは動物の体に由来する組織検体の中にインシチューで存在しない限りにおいて、本発明のポリペプチド,結合タンパク質および核酸分子は、一般的に単離された分子または精製された分子である。とは言え、該配列は、ヒトの体または動物の体で見出されたような配列に対応するかまたは実質的に相同であってもよい。したがって、核酸分子もしくは配列およびタンパク質もしくはポリペプチドに関して、本明細書中で用いられる「単離された」または「精製された」という用語は、自然環境から単離された、または精製された、または実質的に遊離した分子、例えば、ヒトの体もしくは動物の体から単離された分子に言及するか(実際にそれらが天然に存在しているならば)、または技術的プロセスによって製造された分子、すなわち組換え体および合成的に製造された分子に言及する。
したがって、核酸分子と関連して用いる際、このような用語は、天然において附随している他の核酸/遺伝子またはポリペプチドなどのような物質から実質的に遊離している核酸に言及してもよい。この用語は、組換えDNA技術によって製造された場合は細胞物質もしくは培地から実質的に遊離した核酸にも言及し、また化学合成された場合は化学的前駆体または他の化学薬品から実質的に遊離した核酸にも言及する。単離された核酸または精製された核酸はまた、天然において該核酸に隣接した、該核酸が由来する配列(すなわち、該核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)または、例えば遺伝子工学によって、該核酸の端に並べさせられた配列(例えば、タグ配列または治療上の価値のない他の配列)から実質的に遊離していてもよい。
したがって、軽鎖相補性領域1,2および3、重鎖相補性領域1,2および3、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、ならびに本発明の結合タンパク質などのようなタンパク質またはポリペプチド分子に関連して用いられる場合、「単離された」または「精製された」という用語は、細胞物質または該タンパク質が由来する供給源からの他のタンパク質から実質的に遊離したタンパク質に言及してもよい。いくつかの態様において、特に該タンパク質がヒトまたは動物に投与される場合、このような単離されたまたは精製されたタンパク質は、組換え技術から製造された場合は培地から、また化学的に合成された場合は化学的前駆体または化学薬品から実質的に遊離している。このように単離されたまたは精製されたタンパク質は、単離された核酸分子について上述したような隣接した配列からも遊離していてもよい。
本明細書中で用いられる「核酸配列」または「核酸分子」という用語は、天然に存在する塩基,糖および糖と糖との間(バックボーン)の結合からなる、ヌクレオシドモノマーまたはヌクレオチドモノマーの配列に言及する。該用語は、天然には存在しないモノマーまたはその部分を含む修飾された配列または置換された配列も含む。本発明の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であってもよく、アデニン,グアニン,シトシン,チミジンおよびウラシルを含む天然に存在する塩基を包含してもよい。該配列は、修飾された塩基も包含してもよい。このような修飾された塩基の例として、アザならびにデアザのアデニン,グアニン,シトシン,チミジンおよびウラシル;キサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。該核酸分子は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。該核酸分子は、全部または一部が合成または組換えであってもよい。
当業者は、軽鎖および重鎖の相補性決定領域,軽鎖および重鎖の可変領域,結合タンパク質,抗体および抗体断片,ならびに免疫接合体などの、本発明のタンパク質およびポリペプチドは、周知であり当該分野において記載されている様々な方法の中から任意の方法で調製してもよいが、組換え法を用いて調製されることがもっとも好ましいことを理解する。
よって、本発明の核酸分子は、任意の好適な方法によってクローン化されても合成されてもよく、本発明のタンパク質を良く発現する好適な発現ベクターの中に公知の方法で取り込まれてもよい。該ベクターが、用いる宿主細胞に適合性がある限り、可能な発現ベクターとしては、以下に限定されないが、コスミド,プラスミドまたは修飾されたウイルス(例えば、複製欠損レトロウイルス,アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。該発現ベクターは、「宿主細胞の形質転換に好適」であり、これは、該発現ベクターが、本発明の核酸分子と、発現させるために用いられる宿主細胞に基づいて選択される、核酸分子と動作可能に結合している調節配列とを含むことを意味する。動作可能に結合されているとは、該核酸を発現することができる方法で、該核酸が調節配列と結合していることを指すことを意図している。
したがって、本発明は、本発明の核酸分子を含む組換え発現ベクター、および本発明の核酸分子にコードされているタンパク質の配列の転写および翻訳のための必要な調節配列またはその断片を意図している。
好適な調節配列は、様々な供給源に由来してもよく、細菌遺伝子,真菌遺伝子,ウイルス遺伝子,哺乳類遺伝子,または昆虫遺伝子(例えば、ゴッデル,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,アカデミックプレス社,サンディエゴ,CA(1990年)に記載の調節配列を参照のこと。)が挙げられる。好適な調節配列の選択は、後述するように選択された宿主細胞に依存しており、当業者によって容易に達成される。このような調節配列の例として、転写のプロモーターおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列,リボソーム結合配列が挙げられ、翻訳開始シグナルも含む。さらに、選択された宿主細胞および使用されたベクターに依存するが、他の配列(複製開始点,付加的なDNA制限酵素部位,エンハンサー,および転写の誘導を与える配列など)も、該発現ベクターに包含される。
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の組換え分子を形質転換または形質移入した宿主細胞の選択を容易にする選択的マーカー遺伝子も含んでもよい。選択的マーカー遺伝子の例は、特定の薬剤に対する耐性を付与するネオマイシンおよびハイグロマイシン,β−ガラクトシダーゼ,クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ,ホタルルシフェラーゼ,または免疫グロブリンもしくはその一部(免疫グロブリン、好ましくはIgGのFcの一部)などのタンパク質をコードする遺伝子である。選択的マーカー遺伝子の転写は、β−ガラクトシダーゼ,クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼなどの選択的マーカータンパク質またはホタルルシフェラーゼの濃度変化によって観測される。選択的マーカー遺伝子が、ネオマイシン耐性などの抗生物質耐性を付与するタンパク質をコードする場合、形質転換細胞としてG418を選択することができる。該選択的マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存し、一方他の細胞は死滅する。これによって、本発明の組換え発現ベクターの発現を可視化しアッセイすることが可能になり、特に発現による突然変異および表現型への効果を決定することができる。選択的マーカーが、興味のある核酸とは別のベクターに導入することができることは充分に理解される。
上記組換え発現ベクターは、組換えタンパク質の発現増加;組換えタンパク質の溶解度上昇;および親和性精製におけるリガンドとして作用することによって標的組換えタンパク質を精製する際の補助(例えば、精製および/または同定を可能にする好適な「タグ」が存在していてもよい、例えば、ヒスチジンタグまたはmycタグ)を提供する、融合成分をコードする遺伝子も含んでもよい。例えば、融合タンパク質の精製後、融合成分から組換えタンパク質の分離を可能にするために、タンパク質切断部位を標的組換えタンパク質に追加してもよい。典型的な融合発現ベクターは、グルタチオンS−転移酵素(GST),マルトースE結合タンパク質,またはプロテインAをそれぞれ組換えタンパク質に融合するpGEX(Amrad Corp.,メルボルン,オーストラリア),pMal(New England Biolabs,ビバリー,MA)およびpRIT5(Pharmacia,ピスカタウェイ,NJ)が挙げられる。
組換え発現ベクターは形質転換宿主細胞を製造するために宿主細胞に導入することができる。「〜を用いて形質転換される」,「〜を用いて形質移入[transfect]される」,「形質転換」および「形質移入」という用語は、当該分野において公知の多くの可能な技術のうち1つを用いて、細胞に核酸(例えば、ベクター)を導入することを包含することを意図する。本明細書中に用いられる「形質転換された宿主細胞」という用語は、本発明の組換え発現ベクターを用いて形質転換された、糖鎖付加が可能な細胞を包含することも意図する。
原核細胞は、例えば、電気穿孔または塩化カルシウムを介した形質転換によって核酸を用いて形質転換することができる。例えば、核酸は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウムの共沈殿,DEAE−デキストランを介した形質移入,リポフェクチン,電気穿孔または微量注入などの従来法によって哺乳類細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換および形質移入する好適な方法は、サムブルックら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory出版局(1989年))、および他の実験室用教科書に見出すことができる。
好適な宿主細胞は、さまざまな真核生物の宿主細胞および原核細胞を含む。例えば、本発明のタンパク質は酵母細胞中または哺乳類細胞中に発現させてもよい。他の好適な宿主細胞は、ゴッデル,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,アカデミックプレス社,サンディエゴ,CA(1991年)に見出される。さらに、本発明のタンパク質は、エシェリキア・コリ(チャンら,Science,303巻(5656号):371〜373頁(2004年))などの原核細胞中に発現させてもよい。
本発明を実施するのに好適な酵母および真菌の宿主細胞として、出芽酵母[Saccharomyces cerevisiae],ピキア属またはクリベロマイセス属、およびアスペルギルス属の様々な種が挙げられるが、これらに限定されない。出芽酵母における発現ベクターの例として、pYepSec1(バルダリら,EMBO J.6巻:229〜234頁(1987年)),pMFa(カージャンおよびハースコビッツ,Cell 30巻:933〜943頁(1982年)),pJRY88(シュルツら,Gene 54巻:113〜123頁(1987年)),およびpYES2(インビトロジェン(株),サンディエゴ,CA)が挙げられる。酵母および真菌の形質転換のためのプロトコールは当業者にとって周知である(ヒンネンら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75巻:1929頁(1978年);イトウら,J.Bacteriology 153巻:163頁(1983年),およびカレンら,BiolTechnology 5巻:369頁(1987年)を参照のこと)。
本発明を実施するのに好適な哺乳類細胞として、特にCOS(例えば、ATCC No.CRL1650または1651),BHK(例えば、ATCC No.CRL6281),CHO(ATCC No.CCL61),HeLa(例えば、ATCC No.CCL2),293(ATCC No.1573)およびNS−1細胞が挙げられる。哺乳類細胞において発現に向かわせる好適な発現ベクターは、一般的に、(例えば、ポリオーマ,アデノウイルス2,サイトメガロウイルスおよびシミアン・ウイルス40などのウイルス性物質に由来する)プロモーターおよび他の転写調節配列,翻訳調節配列も挙げられる。哺乳類発現ベクターの例として、pCDM8(シード,B.,Nature 329巻:840頁(1987年))およびpMT2PC(カウフマンら,EMBO J.6巻:187〜195頁(1987年))が挙げられる。
本明細書中に提供された教示を前提として、プロモーター,ターミネーター,および適切なタイプの発現ベクターを植物,トリおよび昆虫の細胞に導入する方法も容易に達成することができる。例えば、1つの態様において、本発明のタンパク質は、植物細胞から発現されてもよい(シンカーら,J.Biosci(バンガロール)11巻:47〜58頁(1987年)を参照のこと。これはアグロバクテリウム・リゾゲネスベクターの使用について概説している;ザンブリスキら,Genetic Engineering,Principles and Methods,ホレンダーおよびセットロウ編集,VI巻,253〜278頁,プレナム・プレス社,ニューヨーク(1984年)も参照のこと。これは、とりわけPAPS2022,PAPS2023およびPAPS2034を含む、植物細胞用発現ベクターの使用について記載している)。
本発明を実施するのに好適な昆虫細胞として、カイコガ属,トリコプルシア属またはスポドプテラ属の種に由来する細胞および株化細胞が挙げられる。培養された昆虫細胞(SF9細胞)におけるタンパク質の発現に使用されるバキュロウイルスベクターとして、pAcシリーズ(スミスら,Mol.Cell Biol.3巻:2156〜2165頁(1983年))およびpVLシリーズ(ラックロウ,V.A.およびサマーズ,M.D.,Virology 170巻:31〜39頁(1989年))が挙げられる。本発明の組換えタンパク質の発現に好適ないくつかのバキュロウイルス−昆虫細胞発現系は、PCT/US/02442に記載されている。
代わりに、本発明のタンパク質は、ラット,ウサギ,ヒツジおよびブタなどのヒト以外のトランスジェニック動物においても発現してもよい(ハマーら,Nature 315巻:680〜683頁(1985年);パルミターら,Science 222巻:809〜814頁(1983年);ブリンスターら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82巻:4438〜4442頁(1985年);パルミターおよびブリンスター Cell 41巻:343〜345頁(1985年)および米国特許第4,736,866号)。
本発明のタンパク質は、固相合成(メリフィールド,J.Am.Chem.Assoc.85巻:2149〜2154頁(1964年);フリッシェら,J.Pept.Sci.2巻(4号):212〜222頁(1996年))または同種の溶液中における合成(Houbenweyl,Methods of Organic Chemistry,E.ワンシュ編集,15巻 IおよびII,ティーメ,シュトゥットガルト(1987年))などの、タンパク質の化学において周知である技術を用いた化学合成によっても調製してもよい。
タンパク質などの他の分子と接合した本発明のタンパク質を含む、N末端またはC末端融合タンパク質は、組換え技術を介して融合することによって調製してもよい。その結果得られた融合タンパク質は、本明細書中に記載したような選択されたタンパク質もしくはマーカータンパク質またはタグタンパク質に融合した本発明のタンパク質を含む。本発明のタンパク質は、公知技術によって得られる他のタンパク質と接合してもよい。例えば、該タンパク質は、国際公開第90/10457号パンフレットに記載のヘテロ二機能性チオール含有リンカー,N−サクシニミジル−3−(2−ピリミジルジチオ−プロピオン酸)またはN−サクシニミジル−5チオアセテートを用いて連結してもよい。融合タンパク質または接合体を調製するために用いることのできるタンパク質の例として、免疫グロブリン,ホルモン,増殖因子,レクチン,インスリン,低密度リポタンパク質,グルカゴン,エンドルフィン,トランスフェリン,ボンベシン,アシアロ糖タンパク質,グルタチオン−S−転移酵素(GST),赤血球凝集素(HA),および切り詰められたmycなどのような細胞結合タンパク質が挙げられる。
したがって、本発明は、1以上の本発明の核酸配列または(軽鎖および重鎖の相補性決定領域,軽鎖および重鎖の可変領域,または抗体および抗体断片などの結合タンパク質などの)本発明のタンパク質をコードする1以上の核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。
さらに、本発明は、1以上の組換え発現ベクターもしくは1以上の本発明の核酸配列を含む宿主細胞、または(軽鎖および重鎖の相補性決定領域,軽鎖および重鎖の可変領域,または抗体および抗体断片などの結合タンパク質などの)1以上の本発明のタンパク質を発現する宿主細胞を提供する。
本発明のさらなる態様は、本発明の宿主細胞を培養する段階を含む本発明のタンパク質を製造する方法を提供する。好ましい方法は、(i)該タンパク質の発現に好適な条件下で1以上の組換え発現ベクターまたは1以上の本発明の核酸配列を含む宿主細胞を培養する段階;および任意で(ii)宿主細胞から、または増殖培地/上清から該タンパク質を単離する段階を含む。このような製造方法は、タンパク質産物の精製、および/または該産物を少なくとも1つの追加成分(薬学的に許容し得る担体もしくは賦形剤など)を含む組成物に処方する段階も含む。
本発明のタンパク質が1より多いポリペプチド鎖(例えば、Fab断片などのある断片)から構成される場合の態様においては、例えば、本発明の結合タンパク質などの完全なタンパク質が宿主細胞中で会合でき、それらから単離できるように、すべてのポリペプチドが同じかまたは異なった発現ベクターから宿主細胞中に発現されることが好ましい。
本発明の結合タンパク質は、腫瘍細胞、とりわけ乳房上皮性悪性腫瘍細胞に特異的である。よって、本発明の結合タンパク質は、腫瘍細胞、好ましくは乳房上皮性悪性腫瘍細胞をインビボまたはインビトロで検出または診断するために用いることができる。よって、本発明の結合タンパク質は、腫瘍細胞、好ましくは乳房上皮性悪性腫瘍細胞が存在する身体部位を標的にでき、すぐに該結合タンパク質が標的部位(例えば、標的組織,器官または細胞)に作用することができる。
本発明の結合タンパク質は、好ましくはCD166抗原に特異性を有する。よって、本発明の結合タンパク質は、CD166をインビボまたはインビトロで検出または診断するために用いることができる。よって、本発明の結合タンパク質は、CD166を発現する身体部位を標的にでき、すぐに該結合タンパク質が標的部位(例えば、標的組織,器官または細胞)に作用できる。
本発明の結合タンパク質は、腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞,肺癌細胞および/または前立腺癌細胞の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することができる。インビトロにおけるADCCの好適な試験は、実施例5に記載されている。よって、本発明の結合タンパク質は、例えば、インビトロで少なくとも1%,3%または5%の腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞,肺癌細胞および/または前立腺癌細胞を殺傷してもよく、好ましくはインビトロで少なくとも約10%,15%または20%の腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞,肺癌細胞および/または前立腺癌細胞を殺傷してもよい。このような効果は、本発明の結合タンパク質が、腫瘍細胞に対抗するために患者の免疫系を補充するために用いられてもよい(すなわち、追加の活性薬剤を必要とせずに治療に有用である可能性を有する)ことを示す。これは明確に有利な特性である。
好ましくは、本発明の結合タンパク質は、腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞の増殖を阻害することができる。該阻害は、インビトロまたはインビボで示してもよい。インビトロの増殖阻害の好適な試験は、実施例6に記載され、固定量の染料で標識した細胞の蛍光を測定することを含む。細胞分裂は、染料が娘細胞間で分割されるため蛍光の低下を引き起こし、細胞分裂が阻害される場合、蛍光の低下は見られない。したがって、異なった試験集団の蛍光は、対象である結合タンパク質の増殖阻害効果を評価するために比較することができる。
インビトロで7日間を超えて試験した場合、好ましくは、結合タンパク質は、少なくとも5%または10%、より好ましくは15,20または25%まで細胞増殖を阻害する。
細胞増殖のインビボの好適な試験は実施例9に記載されている。
細胞増殖のインビボの好適な試験は実施例9に記載されている。
好ましくは、本発明の結合タンパク質は、追加のアポトーシス促進剤と任意に組み合わせて、腫瘍細胞、好ましくは乳癌細胞のアポトーシスを誘導することができる。
適切な対照条件と比較した場合、好ましくは、上記の増殖阻害能は、測定可能なまたは顕著なレベル、より好ましくは統計学的に有意なレベルで観察される。適切な顕著なレベルは本明細書中に他の部分に考察されている。
適切な対照条件と比較した場合、好ましくは、上記の増殖阻害能は、測定可能なまたは顕著なレベル、より好ましくは統計学的に有意なレベルで観察される。適切な顕著なレベルは本明細書中に他の部分に考察されている。
さらに、本発明の結合タンパク質は、他の実体と接合することができ、腫瘍細胞、好ましくは乳房上皮性悪性腫瘍細胞および/またはCD166を発現する細胞が存在する身体部位のこれら他の実体を標的にするために用いることができる。(結合タンパク質が抗体分子である場合、このような接合体も免疫接合体として言及される。)このような他の実体は、標識または他の検出可能成分であってもよく、その場合、これら接合体分子は身体部位(とりわけ癌に苦しめられる身体部位)のインビボまたはインビトロでの診断または画像化に有用だろう。
適切な標識および検出可能な成分は、本明細書中の他の部分で考察されている。代わりに、本発明の結合タンパク質は、毒素,酵素,薬剤,プレドラッグ[pre drug],プロドラッグもしくは他の低分子化合物,または核酸分子(例えば、アンチセンス分子)などの、生物学的に活性を有する分子あるいは医学的に関連のある薬剤と接合することができ、その場合、例えば、上皮性悪性腫瘍細胞が存在する細胞または身体部位に対して、薬剤,毒素または酵素などを標的にすることによって、これらの接合体分子は標的療法に有用だろう。
したがって、結合タンパク質の接合体は、好ましくは本発明の結合タンパク質である。接合体に用いられるべき好ましい結合タンパク質は、全長(完全)抗体,F(ab’)2,FabまたはscFvである。
このような他の実体を本発明の結合タンパク質に接合させる方法は、周知であり、当該分野において記載されており、適切な方法は、該結合タンパク質および接合されるべき他の実体の性質に応じて容易に選択することができる。よって、他の実体は、本発明の結合タンパク質に直接にまたは適切なリンカーなどの媒介物を用いて接合することができる。接合は、例えば、共有結合性であっても非共有結合性であってもよい(例えば、他の実体は、結合タンパク質との複合体の形成によって、またはより従来的には化学基もしくはペプチドタグなどの媒介物を連結している実体との複合体の形成によって、結合タンパク質に接合することができる)。複合体のような結合は、例えば、多くの放射性同位体にとって適切である。
このような態様において、結合タンパク質(例えば、抗体または抗体断片)は、接合された実体とともに、人工膜に含まれるかまたは取り込まれ、ミセル,リポソームまたはナノ粒子などの人工粒子を形成する。これら粒子は、結合タンパク質に基づき標的とする身体部位に導かれ、標的部位の細胞と融合し(または内在化する−下記を参照のこと)、それにより、人工粒子の内側から標的細胞(例えば、腫瘍細胞)内に、接合された実体、例えば、生物学的に活性を有する分子または医学的に関連のある薬剤を放出する。この場合も先と同様に、分子をこのような人口膜に取り込ませる方法は周知であり、当該分野において記載されている。
いくつかの結合タンパク質(例えば、抗体または抗体断片)は、これらが結合する細胞の中に内在化することができる。よって、本発明の一態様において、本発明の結合タンパク質は、内在化することができる。この特性は、生物学的に活性を有する分子または医学的に関連のある薬剤が抗体分子とともに内在化すべきであるという態様において、接合体、例えば、上述の接合体に用いることにとりわけ有利である。一般的に、結合タンパク質の内在化は、抗原と、該抗原が細胞膜および細胞質の間で再循環する速度とによって決まる。よって、該抗原が内在化する前に結合タンパク質が抗原(CD166)から解離しない程度に、結合タンパク質が充分な親和性でもってその抗原(CD166)と相互作用する場合、結合タンパク質も内在化する。これは、ある態様において明確に有利であるが、他の態様では、低い内在化速度を示すのみの結合タンパク質が有利である。
内在化速度は、よって、本発明の異なる結合タンパク質間で変わり、いくつかの結合タンパク質について、内在化速度は、典型的には細胞表面分子に結合する抗体が標的細胞によって交換する(例えば、約10%の結合タンパク質が2時間以内に内在化する)基本的な速度に本来対応するが、他の結合タンパク質については、例えば、30分以内に少なくとも10,20,または30%が内在化するように、内在化速度はより高くてもよい。当業者は、内在化をアッセイする好適な方法を知っており、例えば、フローサイトメトリーまたは共焦点顕微鏡での温度−微分蛍光標識[temperature-differential fluorescence labeling]を用いる。好適なアッセイの例は、実施例7に記載されており、実施例7では、pH感受性色素(CypHer5E)(該色素は、細胞外で見出されるような塩基性pHでは最小の蛍光を発し、細胞内で見出されるような酸性pHでは最大の蛍光を発する)で標識した二次抗体を用いる。
このように、本発明のまた別の態様は、治療、診断、画像化[imaging]における用途のための、本明細書で規定された、本発明の結合タンパク質(例えば、結合タンパク質接合体)またはその他のタンパク質を提供することが分かる。
さらに、本発明は、1以上の薬理学的に許容し得る賦形剤、担体、希釈剤、緩衝剤または安定剤とともに、抗体や抗体断片のような本発明の結合タンパク質を含む組成物を提供する。
このような組成物は、本明細書にて記載の、結合タンパク質が用いられる任意の態様において使用され得る。例えば、上記組成物は、本明細書にて記載されたような方法、用途、キットにおいて使用され得る。
本発明のさらなる態様は、治療,イメージング,診断に用いるための組成物または薬剤の製造方法において、本明細書にて規定の、本発明の結合タンパク質(例えば、結合タンパク質接合体)またはその他のタンパク質の使用を提供する。
本明細書にて規定の、本発明の結合タンパク質(例えば、結合タンパク質接合体)またはその他のタンパク質の有効量を、対象または対象から除去され、後に対象に戻される検体(例えば、血液検体)に投与することを含む、対象の治療方法を、さらなる本発明の態様は提供する。
本明細書に記載のインビボでの方法は、一般的に哺乳動物において実施される。どの哺乳類も治療され得るが、例えば、ヒトおよびいかなる家畜類[livestock]、家畜動物または実験動物[domestic or laboratory animal]でもよい。この具体例は、マウス,ラット,ブタ,ネコ,イヌ,ヒツジ,ウサギ,ウシ,およびサルを含む。しかしながら、好ましくは、上記哺乳動物はヒトである。
ここで使用される「治療[therapy]」または「処置[treatment]」という用語は、予防方法を包含し、結果として疾病を予防することになるものであってもよい。「治療」または「処置」という用語は、疾病への対抗や疾病の治癒を含むが、疾病またはそれに関連する1以上の症状の制御、低減または緩和も包含する。本発明の抗体は、例えば、CD166レベルが変化する疾病に対する予後的使用[prognostic applications]にて使用される。このように、本発明の抗体は、癌の予後に使用され得る。例えば、より進行している癌においては、CD166は、血流に流出するとの報告がある。本発明の抗体を使用して、血流中のCD166濃度の上昇を検出することは、浸襲性の強い癌、例えば、転移性ガンの予知に有用である。
本明細書にて使用される「有効量[effective amount]」とは、処置行為の性質に依存する、治療上有効な量あるいは予防上有効な量を指す。治療上の有効量は、所望の治療結果を達成するために必要な量(適切な服用および投与の形態における)であることが考慮され得る。また、予防上の有効量は、所望の予防結果を達成するために必要な量(適切な服用および投与の形態における)であることが考慮され得る。以下に示すように、これらの量は、患者の体重、年齢、性別、疾病の重篤さ、および個体中で所望の応答を引き起こす結合タンパク質の結合能力に応じて、変更され得る。
本発明の組成物は、本技術分野で知られ、または広く文献に記載された任意の従来の方法によって、処方することができる。このように、活性成分(つまり、上記結合タンパク質)を、任意に、組成物の特定用途に適し、かつ投与に適した、あるいは適切にさせる一般的な製剤を生じさせる、その他の活性成分(以下に説明される例)や1種類以上の従来の薬理学的に許容し得る担体、希釈剤および/または賦形剤等と組み合わせてもよい。これらは、液体状、半固体状、固体状、例えば、液体溶液、分散体、懸濁体、タブレット、丸薬、粉体、サチェット、カプセル、エリキシル剤、エマルション、シロップ、軟膏、リポソーム、坐薬などとして処方されてもよい。この好適な形態は、意図された投与形態および治療上の適用に依存する。好ましくは、本発明の結合タンパク質を含む組成物は、注射または注入できる溶液の形態で調製される。
好ましい投与形態は、非経口であり、例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内、腔内または経皮性の投与であるが、その他の適切な態様、例えば経口投与も適用できる。静脈内の注射または注入が特に好ましい。投与にはどの部位も使用できる。例えば、上記組成物は、作用が求められる部位に部分的かつ直接的に投与されてもよいし、体内において適切な場所への標的化を促す実体に付着[attach]するか、あるいは、随伴[associate]、例えば接合[conjugate]していてもよい。
生理学的適合性を有する、担体,賦形剤,希釈剤,緩衝剤,または安定剤は、本発明の組成物において使用され得る。適当な、担体、賦形剤、希釈剤、緩衝剤および安定剤は、1種類以上の、水,生理食塩水,リン酸緩衝生理食塩液,デキストロース,グリセロールおよびエタノール等、ならびにこれらの組み合わせも包含する。一部の場合においては、等張剤に、例えば、砂糖,ポリアルコール(例えば、マンニトール,ソルビトール)または塩化ナトリウムが含まれていてもよい。上記組成物は、追加的に、滑沢剤,湿潤剤,乳化剤,懸濁剤,保存剤,甘味料,香味剤等を含んでもよい。本発明の組成物は、当該分野で周知の手順を用いて、対象への投与後における活性成分の放出性を、即効的,持続的または遅効的になるように、処方されてもよい。上述のように、好ましくは、上記組成物は注射に適した形態であり、適切な担体が、適当な濃度で存在している。例えば、この濃度は1%〜20%であり、好ましくは5%〜10%である。
治療用組成物は、一般的には、無菌されたものであり、製造および保存の条件下でも安定性を有するものでなければならない。このような無菌性および安定性を達成する適切な方法は、本技術分野においては周知であり、文献に記載されている。
本発明の結合タンパク質に加えて、上記組成物は、さらに、1以上のその他の活性成分を含んでいてもよい。例えば、このようなその他の活性成分は、癌、特に乳癌の治療に有用な成分、あるいは、CD166に関連するかCD166活性が有害である疾病を治療するための成分である。
哺乳動物の治療において使用される組成物において、含有される適当な追加の活性成分は、当業者に知られている。これは、上記組成物で治療されるべき疾病の性質に応じて選択され得る。適当な追加の活性成分は、その他の標的に結合する抗体,サイトカイン,代謝拮抗物質,アルキル化剤,プリン類似体およびその関連阻害剤,ピリミジン類似体,葉酸類似体,ビンカアルカロイド,エピポドフィロトキシン,抗生物質,L−アスパラギナーゼ,エストロゲン,抗エストロゲン,アンドロゲン,抗アンドロゲン,副腎皮質ステロイド類,プロゲスチン,副腎皮質の抑制剤,生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体,インターフェロン,トポイソメラーゼ阻害剤,アントラセンジオン置換尿素,メチルヒドラジン誘導体,白金配位錯体もしくは白金系化学薬品,または副作用を制御する薬剤を含む。乳癌治療にとって適当な追加薬剤としては、ハーセプチン,ドキシル(ドキソルブシン),アバスチンまたはタキソテールが挙げられるだろう。
適切な追加薬剤は、本明細書で「アポトーシス促進剤」と称される、アポトーシス誘導性の薬剤から選択されてもよい。アポトーシス促進剤は、アポトーシスを誘導できる適当ないかなる薬剤であってもよく、例えば、アルキル化剤,架橋剤,インターカレート剤,ヌクレオチド類似体,紡錘体の形成阻害剤,および/またはトポイソメラーゼIおよび/またはIIの阻害剤であってもよい。
当業者においては、適切なアポトーシス促進剤が知られているが、本明細書では例として、スタウロスポリンが言及される。
有利な点としては、本発明の結合タンパク質は、他の治療薬とともに相乗効果的に作用する。「相乗効果」とは、上記結合タンパク質とその他の薬剤とを組み合わせて投与した場合における効果が、上記結合タンパク質およびその他の薬剤を単一の薬剤として単独で投与した場合における上記結合タンパク質およびその他の薬剤の相加的な効果と比べて、大きいことを意味する。この相乗効果は、細胞増殖の阻害,アポトーシスの誘導,または細胞毒性,あるいは前述のいずれかの組み合わせに関与するものであってもよい。上記相乗効果はアポトーシスの誘導に関与することが好ましい。本発明の結合タンパク質とスタウロスポリンとの間における相乗効果は、実施例8にて証明されている。
有利な点としては、本発明の結合タンパク質は、他の治療薬とともに相乗効果的に作用する。「相乗効果」とは、上記結合タンパク質とその他の薬剤とを組み合わせて投与した場合における効果が、上記結合タンパク質およびその他の薬剤を単一の薬剤として単独で投与した場合における上記結合タンパク質およびその他の薬剤の相加的な効果と比べて、大きいことを意味する。この相乗効果は、細胞増殖の阻害,アポトーシスの誘導,または細胞毒性,あるいは前述のいずれかの組み合わせに関与するものであってもよい。上記相乗効果はアポトーシスの誘導に関与することが好ましい。本発明の結合タンパク質とスタウロスポリンとの間における相乗効果は、実施例8にて証明されている。
上記相乗効果は、結果として、改善された治療結果を得ることができる。いくつかの態様においては、上記結合タンパク質および/またはその他の薬剤を少量で、例えば、上記結合タンパク質またはその他の薬剤を単独で使用した場合では治療効果を上げるのに足らない量で、使用することが可能になる。
別の視点からみると、上記結合タンパク質は、癌細胞を感知して、薬剤誘導性のアポトーシスを引き起こすことができることが好ましい。
したがって、本発明の一態様は、本発明の結合タンパク質が、アポトーシス促進剤とともに使用される混合療法[combination therapy]である。結合タンパク質およびアポトーシス促進剤は、同時に[simultaneously],順次に[sequentially],または個別に[separately]使用されてもよい。
したがって、本発明の一態様は、本発明の結合タンパク質が、アポトーシス促進剤とともに使用される混合療法[combination therapy]である。結合タンパク質およびアポトーシス促進剤は、同時に[simultaneously],順次に[sequentially],または個別に[separately]使用されてもよい。
さらなる本発明の態様においては、患者の必要に応じて、本発明の結合タンパク質の投与およびアポトーシス促進剤の個別投与,同時投与または順次投与を含む癌治療方法が提供される。
別の視点からみると、処置、例えば癌の処置において、アポトーシス促進剤と組み合わせての使用するための、本明細書にて規定の結合タンパク質が提供される。
このように、疾病、例えば癌の処置において、アポトーシス促進剤と組み合わせて用いるための薬剤の製造における、本発明の結合タンパク質の使用が提供される。
このように、疾病、例えば癌の処置において、アポトーシス促進剤と組み合わせて用いるための薬剤の製造における、本発明の結合タンパク質の使用が提供される。
また、一つの実施態様において、上記薬剤は、さらにアポトーシス促進剤を含む。
上記薬剤は、本発明の結合タンパク質およびアポトーシス促進剤を両方含む単一の組成物[single composition]の形態であってもよく、あるいは、個別投与のための、これらを含むキットまたは製品の形態であってもよい。
上記薬剤は、本発明の結合タンパク質およびアポトーシス促進剤を両方含む単一の組成物[single composition]の形態であってもよく、あるいは、個別投与のための、これらを含むキットまたは製品の形態であってもよい。
別の態様としては、本発明は、混合調剤として治療、例えば癌治療における個別使用,同時使用または連続使用のための、アポトーシス促進剤とともに本発明の結合タンパク質を含む製品を提供する。
上記のように、本明細書にて規定の結合タンパク質が、アポトーシス促進剤をとともに使用されると、同一の医薬成物中には、2つの異なる薬剤が存在し得るか、あるいは、それらが個別に投与され得る。個別投与には、実質的に同時での投与であるが、異なる投与経路を介しての投与または異なる部位での投与、も包含され得る。個別投与は、異なる時間、例えば、別個に、最大1,2,3,4,5,6または12時間離れた時間での投与を含んでもよい。
本発明の結合タンパク質およびその他の活性成分(含む場合)の適切な用量は、患者ごとに異なり、特定の疾病の性状にも依存する。好ましくは、上記用量は、関係する処置の性質に応じた、治療上有効な量または予防上有効な量になる。適切な用量は、患者の体重、年齢および性別や疾病の重篤性に基づいて、当業者や医師によって決定され得る。上記結合タンパク質が個体内で所望の応答を引き起こす特性も重要な要素になる。典型的な一日量は、0.1〜250mg/kg、好ましくは、0.1〜200または100mg/kg、より好ましくは1〜50または1〜10mg/kgの活性成分の量である。この用量は、1回単位の投与量として、または一日当たり1回より多い回数で投与される複数回単位の投与量として、投与されることができる。しかしながら、最適な用量等は患者に応じて変更され得るし、特定の対象にとっては、具体的な服用形態は患者の個々の必要性に応じて徐々に変更されるべきである。このように、本明細書にて示される服用範囲は一例としてみなされるべきであり、特許請求の範囲にて記載された組成物の範囲およびその実施を制限することが意図されているものではない。
さらなる態様は、本明細書で規定の本発明の結合タンパク質(例えば、結合タンパク質接合体)またはその他のタンパク質を適当な量で投与すること、および対象中における、本発明の結合タンパク質またはその他のタンパク質の存在および/または量および/または位置を検知することを含む、対象の診断またはイメージング方法である。
上記の使用や方法に基づく、治療、イメージングまたは診断されるのに適した疾病は、本発明のタンパク質によって認識される分子が関与する疾病(例えば、CD166が関与する疾病またはそれが一因となっている疾病)を包含する。この疾病は、特に癌(CD166を発現または異常発現した癌)、好ましくは乳癌、またはCD166が関与する疾病もしくはそれが一因となっている疾病、例えば、CD166の存在または過剰発現が関与する疾病、あるいはCD166活性の阻害が有利である疾病を包含する。
本発明の結合タンパク質は、選択的に癌細胞、好ましくは乳癌細胞に結合し、正常細胞には顕著には結合しない。それゆえ、結合タンパク質は癌、特に乳癌細胞の診断,イメージングまたは治療に使用できる。上述のように、本発明者らは、本発明の結合タンパク質がCD166に結合することを証明した。このような腫瘍抗原に対する結合タンパク質の特異性は、癌の診断,イメージングまたは治療において有用である。
本発明の一態様においては、上記癌は、限定されることなく、1種類以上の子宮首癌,子宮癌,卵巣癌,肝臓癌,膵臓癌,腎癌,胆嚢癌,頭頚部癌,扁平上皮癌,消化器癌,乳癌(例えば上皮性悪性腫瘍や乳管,小葉,乳頭における癌),前立腺癌,精巣癌,肺癌,非小細胞肺癌,非ホジキンスリンパ腫,多発性骨髄腫,白血病(例えば、急性リンパ性白血病,慢性リンパ性白血病,急性骨髄性白血病,慢性骨髄性白血病),脳癌(例えば、星状細胞腫,グリア芽腫,髄芽腫),神経芽腫,非上皮性悪性腫瘍,結腸癌,直腸癌,胃癌,肛門癌,膀胱癌,膵臓癌,子宮内膜癌,再質細胞腫,リンパ腫,網膜芽腫,ウィルムス腫瘍,ユーイング肉腫,黒色腫およびその他の皮膚癌を包含する。好ましい癌としては、黒色腫,前立腺癌,乳癌,結腸直腸癌,膀胱癌,卵巣癌,膵臓癌,肺癌,脳癌および食道扁平上皮癌の1種類以上を含んだ、CD166の異常発現を示すものである。好ましい癌は、乳癌,前立腺癌,肺癌,卵巣癌,直腸癌,腎癌および脳癌(特にグリア芽腫)の1種類以上である。特に好ましい癌は、乳癌,前立腺癌,肺癌および腎癌の1種類以上である。特に好ましい乳癌は、乳癌上皮性悪性腫瘍[breast cancer carcinoma]、乳管癌,小葉乳癌および乳頭癌であり、さらに乳房上皮性悪性腫瘍[breast carcinoma]がもっとも好ましい。
ここで「癌[cancer]」または「腫瘍[tumor]」との用語はいずれも、上記に列挙された癌種、特に乳癌のいずれも含むことと理解されるべきである。
好ましい一態様においては、上記結合タンパク質は、本発明の抗体または抗体断片であり、scFvもしくはFabまたはIgGの形態が特に好ましい。
好ましい一態様においては、上記結合タンパク質は、本発明の抗体または抗体断片であり、scFvもしくはFabまたはIgGの形態が特に好ましい。
加えて、例えば、対象由来の癌細胞の検体を得て、検体中の癌細胞の、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体断片に結合する能力を測定することによって、癌細胞を評価して、本発明の処置方法に対する感受性を究明してもよい。
したがって、本発明は、抗原を発現し、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体断片に結合できる癌細胞、好ましくは乳癌細胞が存在しているか否かを究明するために、それ自身で使用できるか、本発明の治療方法の使用前、使用中、使用後に使用できる、診断上の方法、薬剤またはキットを含む。
一実施態様においては、本発明は、哺乳動物における疾病の、好ましくは癌の診断方法であって、
(1)上記哺乳動物から採取された試験検体を、1種類以上の本発明の結合タンパク質に接触させる工程
を含む診断方法を提供する。
(1)上記哺乳動物から採取された試験検体を、1種類以上の本発明の結合タンパク質に接触させる工程
を含む診断方法を提供する。
さらなる実施態様においては、本発明は、哺乳動物における疾病の、好ましくは癌の診断方法であって、
(1)上記哺乳動物から採取された試験検体を、1種類以上の本発明の結合タンパク質に接触させる工程、
(2)上記試験検体における上記結合タンパク質‐抗原複合体の存在および/または量および/または位置を検出する工程、および任意で
(3)上記試験検体における上記結合タンパク質−抗原複合体の存在および/または量を対照と比較する工程
を含む診断方法を提供する。
(1)上記哺乳動物から採取された試験検体を、1種類以上の本発明の結合タンパク質に接触させる工程、
(2)上記試験検体における上記結合タンパク質‐抗原複合体の存在および/または量および/または位置を検出する工程、および任意で
(3)上記試験検体における上記結合タンパク質−抗原複合体の存在および/または量を対照と比較する工程
を含む診断方法を提供する。
一実施形態において、上記抗原はCD166である。
上記方法において、上記の接触工程は、結合タンパク質−抗原複合体の形成され得る条件下で実施される。適切な条件は、適宜、当業者によって決定されることができる。
上記方法において、上記の接触工程は、結合タンパク質−抗原複合体の形成され得る条件下で実施される。適切な条件は、適宜、当業者によって決定されることができる。
上記方法においては、例えば、癌により影響を受けていることが疑われる生検細胞、組織もしくは器官や、組織学的切片、または血液といった、いかなる試験検体も使用してよい。
上記方法において、ある量の結合タンパク質−抗原複合体が試験検体中に存在することは、癌細胞が存在することを示しているだろう。確定診断[positive diagnosis]とするためには、一般的には、試験検体における結合タンパク質−抗原複合体の量は、適当な対照検体にて見られる結合タンパク質−抗原複合体の量よりも、大きく、好ましくは顕著に大きい。より好ましくは、顕著に大きいことの水準は、統計学的に有意であることを指し、好ましくは0.05未満のP値を伴う。統計学的な有意差を決定する適当な方法は、周知であり、本技術分野においては文書化されており、どのようなものを使用してもよい。
適切な対照検体は、当業者によって適宜選択され得るものである。たとえば、特定の疾病を診断する場合、適切な対照は上記疾病を有していない対象に由来する検体である。
診断またはイメージングで使用するためには、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体断片は、放射線不透過性[radio-opaque]または3H,14C,32P,35S,123I,125Iのような放射線同位体;放射性エミッター(例えば、α,β,またはγエミッター);フルオロセインイソチオシアナート,ローダミンやルシフェリンなどの蛍光体(蛍光団)化合物または化学発光体(発光団)化合物;アルカリフォスファターゼ,ベータガラクトシダーゼ,ホースラディシュペルオキシターゼなどの酵素;造影剤;金属イオン;ビオチンのような、特定の同種の検出可能な構造(例えば標識化アビジン/ストレプトアビジン)に結合することで検出される化学構造といった、検出可能なマーカーで標識化されてもよい。上述のように、例えば、抗体または抗体断片のような結合タンパク質に標識を結合させる方法は、本技術分野では公知である。このような検出可能なマーカーは、試験検体中の結合タンパク質−抗原複合体の存在、量または位置を調べることを可能にする。
診断またはイメージングで使用するためには、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体断片は、放射線不透過性[radio-opaque]または3H,14C,32P,35S,123I,125Iのような放射線同位体;放射性エミッター(例えば、α,β,またはγエミッター);フルオロセインイソチオシアナート,ローダミンやルシフェリンなどの蛍光体(蛍光団)化合物または化学発光体(発光団)化合物;アルカリフォスファターゼ,ベータガラクトシダーゼ,ホースラディシュペルオキシターゼなどの酵素;造影剤;金属イオン;ビオチンのような、特定の同種の検出可能な構造(例えば標識化アビジン/ストレプトアビジン)に結合することで検出される化学構造といった、検出可能なマーカーで標識化されてもよい。上述のように、例えば、抗体または抗体断片のような結合タンパク質に標識を結合させる方法は、本技術分野では公知である。このような検出可能なマーカーは、試験検体中の結合タンパク質−抗原複合体の存在、量または位置を調べることを可能にする。
本発明の別の態様は、哺乳動物における疾病の、好ましくは癌の診断方法であって、
(1)上記哺乳動物から採取された試験検体における上記結合タンパク質−抗原複合体の存在および/または量を検出する工程、および任意で
(2)上記試験検体における上記結合タンパク質−抗原複合体の存在および/または量を対照と比較する工程
を含む診断方法である。
(1)上記哺乳動物から採取された試験検体における上記結合タンパク質−抗原複合体の存在および/または量を検出する工程、および任意で
(2)上記試験検体における上記結合タンパク質−抗原複合体の存在および/または量を対照と比較する工程
を含む診断方法である。
一実施態様において、本発明の抗体の量は、試験検体中の本発明の抗体量を、例えば抗原としてCD166を使用する、例えばELISAを用いた測定手段により、測定することができる。他の実施態様において、本発明の抗体の量は、試験検体中の本発明の抗体をコードする核酸の発現レベルを、例えばRT−PCRを用いた測定手段により、測定することができる。
本発明は、検出可能なシグナルを生み出す標識に直接的にまたは間接的に結合した本発明の結合タンパク質(例えば、抗体または抗体断片)を含む、診断剤または造影剤も包含する。適切な標識は、本明細書の他の部分に記載されている。
本発明は、さらに、1種類以上の本発明の結合タンパク質もしくは組成物、1種類以上の本発明の結合タンパク質をコードする核酸分子、または1種類以上の本発明の核酸配列を含む組換え型発現ベクター、あるいは1種類以上の本発明の組換え型発現ベクターまたは核酸分子配列を有する宿主細胞を含む、キットも包含する。好ましくは、上記キットは、本明細書にて記載の法や用途、例えば本明細書にて記載の治療的、診断的またはイメージングの方法において使用するためのものか、本明細書にて記載のインビトロのアッセイまたは方法において使用するためのものである。このようなキットにおける上記結合性タンパク質は、好ましくは、本明細書の他の部分に記載された結合タンパク質接合体であってもよく、例えば、検出可能な構造に結合されたものであってもよい。上記キットには、キット構成物の、例えば診断に使用するための説明書が含まれていることが好ましい。好ましくは、上記キットは癌を診断するためのものであり、任意で、キット構成物を癌の診断に使用するための説明書が含まれる。
本発明は、さらに、1種類以上の本発明の結合タンパク質と、任意で、それらを癌の診断に使用するための説明書とを含んだ、癌の診断用のキットを包含する。本発明は、結合タンパク質、好ましくは本明細書にて記載の抗体または抗体断片、もっとも好ましくはCD166に結合する抗体または抗体断片と、任意で、それらを癌の診断に使用するための説明書とを含んだ、癌を診断用のキットも包含する。
本明細書にて規定された結合タンパク質は、インビトロまたはインビボにおける適用や分析のための分子ツールとしても使用されてもよい。上記結合タンパク質は、抗原結合部位を有するので、特定の結合ペアの構成体として機能することができる。さらに、これらの分子は、特定の結合ペアの構成体が求められる分析において使用され得る。例えば、上記結合タンパク質がCD166などの特定の抗原に結合できる抗体または抗体断片である態様において、これらの分子は、その特定の抗原に対する特異性を有する抗体が求められる分析、例えばCD166が求められるまたは望まれる分析において使用され得る。
よって、本発明のさらなる態様において、本明細書で規定される結合タンパク質を含む試薬、ならびに、そのような結合タンパク質の、例えばインビトロまたはインビボの分析における、例えばCD166を検出するためのインビトロまたはインビボの分析における、分子ツールとしての使用が提供される。本発明のまた別の態様において、CD166(またはCD166を含む分子もしくはその断片)を含む組成物を、本発明の結合タンパク質またはその接合体に接触させることを含む、CD166を結合する方法が提供される。本発明はさらに、CD166/結合タンパク質の複合体の形成が可能である条件下においてCD166分子を含むことが疑われる組成物を、本発明の結合組成物またはその接合体に接触させること、および上記のように形成された複合体を検出することを含む、CD166(またはCD166を含む分子もしくはその断片)の検出方法を提供する。
CD166は、細胞の遊走および発生や癌の進行と関連づけられてきた。また、CD166の異常発現は、黒色腫,前立腺癌,乳癌,結腸直腸癌,膀胱癌,卵巣癌,膵臓癌,肺癌,脳癌および食道扁平上皮癌を含む、種々のヒトの腫瘍と結びつけられてきた。
この機構を問わず、本発明の結合タンパク質は、細胞遊走、癌の発生および癌の進行に関係があるCD166のシグナリングを調整するために使用され得る。
したがって、本発明は、CD166の活性を調節するための、本発明の結合タンパク質の使用を含む。例えば、本発明の結合タンパク質はCD166の活性を妨げるまたは阻害するために使用され得る。本発明の結合タンパク質は、CD166の活性を向上させるために使用されてもよい。
したがって、本発明は、CD166の活性を調節するための、本発明の結合タンパク質の使用を含む。例えば、本発明の結合タンパク質はCD166の活性を妨げるまたは阻害するために使用され得る。本発明の結合タンパク質は、CD166の活性を向上させるために使用されてもよい。
一例として、実施例8にて例示されるように、結合タンパク質は細胞のアポトーシスを誘導するために使用されてもよい。このアポトーシスの誘導は、実施例8で記載されるように、アネキシンVを使用して分析されてもよい。
本発明の結合タンパク質を使用して、腫瘍細胞、例えば乳癌細胞に、またはCD166に特異性を有する、また別の結合タンパク質を生産してもよい。このような使用は、例えば、元の結合タンパク質のアミノ酸配列における1以上の付加,欠失,置換または挿入により新規の結合タンパク質を形成すること(ここで、上記元の結合タンパク質は本明細書の他の部分に記載された本発明の結合タンパク質の一つである。)、そして、得られた新規の結合タンパク質を試験することで、腫瘍細胞またはCD166に特異的な結合タンパク質であることを同定することに関する。このような方法は、腫瘍細胞またはCD166に結合する能力を全て検証できる、多数の新規結合タンパク質を形成するために使用され得る。1以上のアミノ酸の付加,欠失,置換または挿入は、1以上のCDRドメインにおいて生じるものであることが好ましい。
このような、元の結合タンパク質の修飾または変異は、本技術分野で周知または文書化された技術を用いた適切な方法で、例えば、ランダム変異誘発法または特異的変異誘発法を行うことで、実施され得る。特異的変異が用いられる場合、変異させる適切な残基を同定するための一つの戦略は、結合タンパク質−抗原複合体の、例えばAb−Ag複合体の、結晶構造の回析を利用し、抗原への結合に関与する鍵となる残基を同定することである(デービス D.R.,コーヘン G.H.1996年.抗体と蛋白抗原の相互作用.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.93巻,7〜12頁)。次いで、これらの残基を変異させ、相互作用を向上させることができる。代わりに、1以上のアミノ酸残基を単に特異的変異の標的として、腫瘍細胞またはCD166への結合における効果を評価することもできる。
ランダム変異は、例えば、エラープローンPCR[error-prone PCR]、チェーンシャッフリング[chain shuffling]、変異性大腸菌株[mutator E.coli strain]などの適切な方法によって実施できる。
本発明の1以上のVHドメインを、適切な供給源に由来する単独のVLドメインまたはVLドメインのレパートリーと組み合わせることもでき、得られた新規の結合タンパク質を試験して、腫瘍細胞またはCD166に特異的な結合タンパク質であることを同定することができる。逆に、本発明の1以上のVLドメインを、適切な供給源に由来する単独のVHドメインまたはVHドメインのレパートリーと組み合わせることもでき、得られた新規の結合タンパク質を試験して、腫瘍細胞またはCD166に特異的な結合タンパク質であることを同定することができる。
同様に、本発明のVHドメインおよび/またはVLドメインの、1以上、好ましくは3つすべてのCDRを、任意で、単独のVHドメインおよび/またはVLドメイン、あるいはVHドメインおよび/またはVLドメインのレパートリーにグラフトすることができ、得られた新規の結合タンパク質を試験して、腫瘍細胞またはCD166に特異的な結合タンパク質であることを同定することができる。
CDR、特に軽鎖および/または重鎖のCDR3の特異的変異は、抗体親和性を向上させるための効果的な技術であることが示されており、好ましいものである。好ましくは、CDR3の3〜4のアミノ酸のブロック、または「ホットスポット」と称される特定領域が変異誘発の標的とされる。
「ホットスポット」は、体細胞超変異[somatic hypermutation]がインビボで生じる配列である(ニューベルガー M.Sおよびミルステイン C.1995年.体細胞超変異.Curr.Opin.Immunol.7巻,248〜254頁)。ホットスポット配列は、特定のコドンにおけるコンセンサスヌクレオチド配列として定義されることができる。コンセンサス配列はテトラヌクレオチド、RGYWである。ここで、RはAまたはGの一方であり、YはCまたはTであり、WはAまたはTの一方である(ニューベルガー M.Sおよびミルステイン C.1995年.体細胞超変異.Curr.Opin.Immunol.7巻, 248〜254頁)。さらに、ヌクレオチドAGYでコードされるセリン残基は、潜在的なホットスポット配列に相当するTCNでコードされる残基に対して優先的に、可変ドメインのCDR領域内に存在する(ニューベルガー M.Sおよびミルステイン C.1995年.体細胞超変異.Curr.Opin.Immunol.7巻,248〜254頁)。
よって、本発明の各抗体の重鎖および軽鎖のCDRのヌクレオチド配列で、ホットスポット配列およびAGYコドンの存在を探索することができる。任意で、重鎖および軽鎖のCDR領域の同定されたホットスポットを、International ImMunoGen Ticsのデータベース(IMGT,http://imgt.cines.fr/textes/vquest/)を用いて、重鎖および軽鎖の生殖細胞の配列と比較することができる)(デービス D.R.,パドラン E.Aおよびシェリフ S 1990年.抗体−抗原複合体[antibody-antigen complexes].Annu.Rev.Biochem.59巻,439〜473頁)。生殖系列に一致する配列は、体細胞変異が生じなかったことを示唆している。そのため、ランダム変異が、インビボで生じる体細胞の現象を擬態した状態で導入され得るか、その代わりに部位特異的変異が、例えば、ホットスポットおよび/またはAGYコドン内において、実施され得る。一方で、異なる配列は一部の体細胞変異が既に生じていることを示す。インビボにおける体細胞変異が最適なものであるかは、確定されていはいない。
変異されるのに好ましいホットスポットは、露出したアミノ酸をコードするもの、より好ましくは、抗原結合部位の一部を形成するアミノ酸をコードするものである。変異されるのに、その他の好ましいホットスポットは、非保存アミノ酸をコードするものである。CDR中における埋没したアミノ酸または保存アミノ酸をコードするホットスポットは、変異させられないことが好ましい。これらの残基は、通常、全体構造に必須であり、それらの残基は埋没しているので、抗原と相互作用する可能性は低い。
アミノ酸およびタンパク質のドメインに上記操作を実施する方法は、当業者にとっては周知である。例えば、上記操作は、得られる発現タンパク質のアミノ酸配列が引き続き適切な方法で改変されるように、適当な結合タンパク質およびそのドメインをコードする核酸分子を改変する、核酸レベルでの遺伝子工学によって都合のよいように実施される。
1以上の新規の結合タンパク質の、腫瘍細胞またはCD166に特異的に結合する能力の試験は、本技術分野において周知であり、文書化されている適当な方法によって、実施することができる。腫瘍細胞、例えば乳癌株化細胞は、広く入手可能であり(実施例参照)、これらの細胞、または例えばR&Dシステムから市販されているCD166は、例えばELISA、アフィニティークロマトグラフィー等の従来の方法によって結合性を分析するために、容易に使用され得る。
これらの方法によって産生された新規の結合タンパク質は、好ましくは、元の結合タンパク質のように、腫瘍細胞またはCD166に対して、より高い、すなわち、より向上された親和性(さもなくば、少なくとも同等の親和性)を有し、本明細書の他の場所に記載された本発明の結合タンパク質と同様に扱われ、使用され得る(例えば、治療,診断,組成物等に)。
産生された、得られた、または得られうる新規の結合タンパク質は本発明のさらなる態様を構築する。
本発明のその他の特徴および利点は、以上の詳細な説明から明確になろうが、その詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲の内における様々な変更または改変が、当業者には明確なことである。そのため、以上の詳細な説明および以下の具体的な実施例は、本発明の好適な実施態様を示しているが、説明のためだけに与えられたものであることが理解されるべきである。
本発明のその他の特徴および利点は、以上の詳細な説明から明確になろうが、その詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲の内における様々な変更または改変が、当業者には明確なことである。そのため、以上の詳細な説明および以下の具体的な実施例は、本発明の好適な実施態様を示しているが、説明のためだけに与えられたものであることが理解されるべきである。
以下、表および図を参照しながら、非原的な実施例において本発明をより詳細に説明する。
表1は、本明細書で開示された配列の一部を列挙する。
表1は、本明細書で開示された配列の一部を列挙する。
表2は、クローンEJ212/007−Cl2−5(scFv)のフレームワーク領域を示す(カバットによる)。
表3は、ヒト組織検体に使用されたIHCスコアリングの方法を示す。
表3は、ヒト組織検体に使用されたIHCスコアリングの方法を示す。
表4は、クローンEJ212/007−Cl2−5(scFv)のIHCデータを示す
表5は、いくつかのヒト正常細胞とそれに相当する腫瘍組織における、クローンEJ212/007−Cl2−5 IgGのIHCデータを示す。
表5は、いくつかのヒト正常細胞とそれに相当する腫瘍組織における、クローンEJ212/007−Cl2−5 IgGのIHCデータを示す。
表6は、CD166タンパク質に一致した、マスフィンガープリンティングに使用されたペプチドの実施例10のリストを示す。
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示するものである。
実施例1:新規抗体
腫瘍特異的抗体の必要性を考慮して、乳房上皮性悪性腫瘍PM−1腫瘍細胞細胞(腫瘍生物学部(DNR)より提供)に対しては陽性であるとともに、PBL(末梢血リンパ球)および顆粒球に対しては陰性であるヒト抗体を同定した。この抗体は、特異的にCD166に結合できる。該抗体の単鎖型を、c−mycおよび6×Hisタグエピトープを有するpHOG21プラスミドにおいて(Nco1およびNot1制限部位において)クローン化した。次いで、E.coli、XL−1 buleを形質転換し、アンピシリンプレート上で選択し、IPTG誘導によりscFvを発現させた。精製されたscFvの、PBLおよび顆粒球に対するPM−1への選択的な生物活性について、細胞ELISAを用いて評価した。この選択的な生物活性を、さらに、同様の細胞型および他の乳癌株化細胞でのフローサイトメトリーにより確認した。
実施例1:新規抗体
腫瘍特異的抗体の必要性を考慮して、乳房上皮性悪性腫瘍PM−1腫瘍細胞細胞(腫瘍生物学部(DNR)より提供)に対しては陽性であるとともに、PBL(末梢血リンパ球)および顆粒球に対しては陰性であるヒト抗体を同定した。この抗体は、特異的にCD166に結合できる。該抗体の単鎖型を、c−mycおよび6×Hisタグエピトープを有するpHOG21プラスミドにおいて(Nco1およびNot1制限部位において)クローン化した。次いで、E.coli、XL−1 buleを形質転換し、アンピシリンプレート上で選択し、IPTG誘導によりscFvを発現させた。精製されたscFvの、PBLおよび顆粒球に対するPM−1への選択的な生物活性について、細胞ELISAを用いて評価した。この選択的な生物活性を、さらに、同様の細胞型および他の乳癌株化細胞でのフローサイトメトリーにより確認した。
配列決定
クローンを産生する上記抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチド配列を決定した。かかる抗体をEJ212/007−Cl2−5(scFv)と命名した。EJ212/007−Cl2−5(scFv)の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を図1に示す。EJ212/007−Cl2−5(scFv)の軽鎖および重鎖のCDR領域を、表1に示す。
クローンを産生する上記抗体の重鎖および軽鎖のヌクレオチド配列を決定した。かかる抗体をEJ212/007−Cl2−5(scFv)と命名した。EJ212/007−Cl2−5(scFv)の軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を図1に示す。EJ212/007−Cl2−5(scFv)の軽鎖および重鎖のCDR領域を、表1に示す。
この抗体のIgG型も作製した。このIgG型は、IgG1アイソタイプであり、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む。各重鎖は、配列番号9のVHドメインおよびIgG1定常領域を含む。また、各軽鎖は、配列番号10のVLドメインおよびκ軽鎖定常領域を含む。上記抗体のIgG型のコンポーネントをLars Norderhaugら、JIM204(1997年)77〜87頁により出版公開されたベクターに基づいたベクターに、当該文献に記載の方法によりクローンニングした。このベクターは、標準的なCMVプロモーターを有する。IgGリーダー配列(mgwsciilflvatatgvhs)を各ベクターに導入した。VHドメイン、VLドメインを、PCRでそれぞれ、Bsmlサイト、BSiWlサイトにおいて導入されたヒトIgG遺伝子、κ遺伝子のゲノムコピー(イントロン+エクソン)を含む、別個のベクターに、クローニングした。IgG1ベクターは、ネオマイシン耐性遺伝子を有し、一方で、κベクターはハイグロマイシン耐性遺伝子を有する。
さらに、CD166に特異的に結合するscFv抗も産生した。
実施例2:フローサイトメトリー(FACSおよびGuava Easy Cyte)によるEJ212/007−Cl2−5の特異性
上記抗体の腫瘍特異性を明らかにするために、PBLおよび顆粒球、ならびに乳房上皮性悪性腫瘍細胞株化細胞MDA−MBに31(ATCC:HTB−に6)について、フローサイトメトリー(FACS,B&DおよびGuava EasyCyte,Guava Technologies社)によりEJ212/007−Cl2−5の結合性を試験した。簡潔に言うと、1.2×105細胞/100μlを、10μg/mlの精製されたEJ212/007−Cl2−5 scFv、またはPBSとともにインキュベートした。結合したscFvを、抗c−mycタグのマウスモノクローン抗体(インビトロジェン社)、さらにFITCラベル化抗マウスIgG(DAKO社)で検出した。
実施例2:フローサイトメトリー(FACSおよびGuava Easy Cyte)によるEJ212/007−Cl2−5の特異性
上記抗体の腫瘍特異性を明らかにするために、PBLおよび顆粒球、ならびに乳房上皮性悪性腫瘍細胞株化細胞MDA−MBに31(ATCC:HTB−に6)について、フローサイトメトリー(FACS,B&DおよびGuava EasyCyte,Guava Technologies社)によりEJ212/007−Cl2−5の結合性を試験した。簡潔に言うと、1.2×105細胞/100μlを、10μg/mlの精製されたEJ212/007−Cl2−5 scFv、またはPBSとともにインキュベートした。結合したscFvを、抗c−mycタグのマウスモノクローン抗体(インビトロジェン社)、さらにFITCラベル化抗マウスIgG(DAKO社)で検出した。
フローサイトメトリーの結果は、EJ212/007−Cl2−5のMDA−MB231への強力な結合性を示した(図2A)が、PBLまたは顆粒球では結合性が見られないか、顕著な結合性は見られなかった(それぞれ、図2B、C)。
肺上皮性悪性腫瘍株化細胞AW900(ATCC:HTB−59)も試験に供した。図2Dは、EJ212/007−Cl2−5のSW900細胞への結合性を示す。
実施例3:EJ212/007−Cl2−5の結合親和性
抗体EJ212/007−Cl2−5の腫瘍細胞に対する結合親和性を評価するために、フローサイトメトリーを使用した。scFv濃度を増加させながら、一定数のSW900(ATCC:HTB−59)細胞すなわちヒト肺癌株化細胞に対して試験をして、飽和曲線を形成した。結合したscFvを上述のように検出した。Kmとして表わされる結合親和性を、抗体モル濃度の逆数の関数として、蛍光強度の平均値の逆数をプロットすることにより、ラインウェバー・バーグ法により算出した。このKmは、以下の方程式により決定される。
実施例3:EJ212/007−Cl2−5の結合親和性
抗体EJ212/007−Cl2−5の腫瘍細胞に対する結合親和性を評価するために、フローサイトメトリーを使用した。scFv濃度を増加させながら、一定数のSW900(ATCC:HTB−59)細胞すなわちヒト肺癌株化細胞に対して試験をして、飽和曲線を形成した。結合したscFvを上述のように検出した。Kmとして表わされる結合親和性を、抗体モル濃度の逆数の関数として、蛍光強度の平均値の逆数をプロットすることにより、ラインウェバー・バーグ法により算出した。このKmは、以下の方程式により決定される。
Km=Fmax *a
ここで、aは上記曲線の傾きであり、Fmax=1/bはプロット(y=ax+b)により算出される。
ここで、aは上記曲線の傾きであり、Fmax=1/bはプロット(y=ax+b)により算出される。
結合曲線およびラインウェバー・バーグプロットを、図3AおよびBに示し、Kmは、EJ212/007−Cl2−5抗体について、2.1×10-8と算出された。
CD166抗原に対するEJ212/007−Cl2−5 Fab断片の結合親和性は、ビアコア分析により測定された。組換え型のALCAM/Fc(250RU)をアミンカップリングによりCM5チップに固定化した。Fab抗体を、3.9〜125nM(ナノモーラー)の濃度範囲で、チップ上を移動させた。結合曲線を図3Cに示す。Kdで示される結合親和性を、Biacore T100 Evaluation ソフトウェアのHeterogenリガンド結合モデルを用いて算出した。EJ212/007−Cl2−5 Fabについて得られたKd値は2.9×10-8Mであった。
CD166抗原に対するEJ212/007−Cl2−5 Fab断片の結合親和性は、ビアコア分析により測定された。組換え型のALCAM/Fc(250RU)をアミンカップリングによりCM5チップに固定化した。Fab抗体を、3.9〜125nM(ナノモーラー)の濃度範囲で、チップ上を移動させた。結合曲線を図3Cに示す。Kdで示される結合親和性を、Biacore T100 Evaluation ソフトウェアのHeterogenリガンド結合モデルを用いて算出した。EJ212/007−Cl2−5 Fabについて得られたKd値は2.9×10-8Mであった。
実施例4:ヒトの組織切片におけるEJ212/007−Cl2−5の選択性および特異性
EJ212/007−Cl2−5 scFv抗体の選択性を、免疫組織化学染色法を用いて、ヒト腫瘍組織に対する結合性によって検証した。最初に、該抗体を、凍結SW900株化細胞のペレットに対して試験し、染色の最適条件を決定した。次いで、上記抗体を11〜14の異なるドナーに由来する胸部、前立腺および腎臓を含むヒト腫瘍組織の高密度アレイにて試験した。膜染色の強度を、4段階のスケール(0,1,2,3)での外観検査にて測定した。さらに、腫瘍細胞染色陽性の画分を計測した、最終的なIHCスコアを、表3のように、2つのパラメータから構築した。
EJ212/007−Cl2−5 scFv抗体の選択性を、免疫組織化学染色法を用いて、ヒト腫瘍組織に対する結合性によって検証した。最初に、該抗体を、凍結SW900株化細胞のペレットに対して試験し、染色の最適条件を決定した。次いで、上記抗体を11〜14の異なるドナーに由来する胸部、前立腺および腎臓を含むヒト腫瘍組織の高密度アレイにて試験した。膜染色の強度を、4段階のスケール(0,1,2,3)での外観検査にて測定した。さらに、腫瘍細胞染色陽性の画分を計測した、最終的なIHCスコアを、表3のように、2つのパラメータから構築した。
結果を表4に概要にて示す。EJ212/007−Cl2−5の陽性は、20個(51%)の腫瘍で見られた。
最も強い結合性は、これらに限定されるものではないが、胸部、腎臓、前立腺で観察され、最高値は2+であり、陽性の細胞は全体の50%より多かった。すべての場合において、細胞質の染色は1+の値で観察された。
最も強い結合性は、これらに限定されるものではないが、胸部、腎臓、前立腺で観察され、最高値は2+であり、陽性の細胞は全体の50%より多かった。すべての場合において、細胞質の染色は1+の値で観察された。
EJ212/007−Cl2−5 scFv抗体の特異性を、免疫組織化学染色を用いて、13種類のヒト乳房腫瘍組織の組織マイクロアレイと、4種類の正常乳房組織の組織マイクロアレイとの結合性を比較することにより検証した。選択性の試験のための染色方法は、上述のように実施した。
EJ212/007−Cl2−5 scFv抗体は、6/13の腫瘍組織では明確かつ特異的な膜染色を示した一方、正常なヒト乳房組織では特異的な膜染色は見られなかった。
EJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の特異性を、ヒトの4種類の正常な脳および4種類の卵巣組織の大組織切片、ならびに6種類のヒト脳腫瘍(グリアブラストーマ)および6種類のヒト卵巣腫瘍組織の大組織片で試験した。選択性の試験のための染色方法は、上述のように実施した。scFv型と比べて、抗体のIgG型は、明確かつ特異的な腫瘍乳組織および正常乳組織の膜染色を示した。EJ212/007−Cl2−5 IgGの結果を、表5に概要にて示す。
EJ212/007−Cl2−5 IgG抗体は、1/3の脳腫瘍組織および6/6の卵巣腫瘍組織では明確かつ特異的な膜染色が見られた一方で、正常脳組織および正常卵巣組織では特異的な膜染色は見られなかった。
このIgG抗体を、マウス組織との交叉反応性についても試験した。マウスの肺,前立腺,胃の正常組織では、交叉反応性を示したが、正常なマウスの、脳,直腸,心臓,精巣,肝臓および卵巣では、特異的な膜染色は見られなかった。
実施例5:抗体依存性細胞傷害(ADCC)
ADCCを誘導するEJ212/007−Cl2−5の特性を調べるために、この抗体をIgGフォーマットにクローニングし、新規に精製したヒト末梢血リンパ球(PBL)の存在下でヒト腫瘍細胞とともにインキュベートした。ヒト腫瘍細胞を、乳房腫瘍細胞(PM−1,MDA−MB231およびBT474),肺腫瘍細胞(AW900およびA−549),または前立腺腫瘍細胞(DU−145)から選択した。本試験の目的は、単独のIgGとして抗体を使用する治療法のための、抗体の候補の有用性を検証することである。
ADCCを誘導するEJ212/007−Cl2−5の特性を調べるために、この抗体をIgGフォーマットにクローニングし、新規に精製したヒト末梢血リンパ球(PBL)の存在下でヒト腫瘍細胞とともにインキュベートした。ヒト腫瘍細胞を、乳房腫瘍細胞(PM−1,MDA−MB231およびBT474),肺腫瘍細胞(AW900およびA−549),または前立腺腫瘍細胞(DU−145)から選択した。本試験の目的は、単独のIgGとして抗体を使用する治療法のための、抗体の候補の有用性を検証することである。
概略として、PM−1,MDA−MB 231,BTB474,SW900,A−549またはDU−145を、トリプシン/EDTAを用いて回収した。この細胞をRPMI/10%FCSで1回、無血清のRPMIで1回洗浄した後、腫瘍細胞をカルセイン(カルセイン−アセトメチルエステル、インビトロジェン社)で標識化した。標識化された腫瘍細胞1.5×104個を、新規に単離されたPBL3×105、および1μg/mlのIgG抗体と混合した。本分析では、標的細胞(PM−1,MDA−MB231,BT474,SW900,A−549またはDU‐145)に対するエフェクター細胞(PBL)の比率を20:1とし、すべての検体を試験に4回供した。最大放出検体[maximum release sample]には、TritonX−100を最大0.8%まで添加した。全検体を、5%CO2の湿式インキュベーター内で、4時間、37℃でインキュベートした。上清100μlを蛍光プレートリーダー(励起波長:485nm、発光波長:535nm)で分析した。
図4は、腫瘍細胞/PBL混合体へのEJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の添加は、結果して、約20%の腫瘍細胞(PM−1乳腫瘍細胞)を殺傷したことを示す。
ネガティブコントロールであるIgG抗体を添加しても、殺傷性は示されず、EJ212/007−Cl2−5 IgGに誘導される殺傷性が特異的であることを証明している。バックグラウンドの蛍光(IgG抗体を添加しない、エフェクター細胞および標的細胞のインキュベート)を除いて、上記数値は算出されて、TritonX−100の添加により見られる最大放出検体における蛍光の低減(約20%)で補正された。
ネガティブコントロールであるIgG抗体を添加しても、殺傷性は示されず、EJ212/007−Cl2−5 IgGに誘導される殺傷性が特異的であることを証明している。バックグラウンドの蛍光(IgG抗体を添加しない、エフェクター細胞および標的細胞のインキュベート)を除いて、上記数値は算出されて、TritonX−100の添加により見られる最大放出検体における蛍光の低減(約20%)で補正された。
その他の腫瘍株化細胞を用いたADCC試験は、肺腫瘍細胞では(約10%SW900およびA−549)、乳癌細胞では約5%、約30%(それぞれMDA−MB231,BT474)前立腺腫瘍細胞(DU−145)の約3%の、殺傷性が示された。殺傷性の効率は、各PBLの提供者によって変化する。
実施例6:増殖阻害
CFSE標識化MDA−MB453(ATCC:HTB−131)乳房上皮性悪性腫瘍株化細胞における増殖阻害能力について、EJ212/007−Cl2−5 scFv抗体を試験に供した。CFSEは、高輝度の蛍光を有し、分裂ごとに娘細胞間で均等に分配される。このことは、細胞集団の分染[differential staining]を可能にする。つまり、細胞分裂が阻害された集団は、自由に分裂し得た集団とくらべて、高い蛍光強度を示す。すなわち、細胞分裂の阻害は、蛍光において、さほど顕著な低下を引き起こさない。
CFSE標識化MDA−MB453(ATCC:HTB−131)乳房上皮性悪性腫瘍株化細胞における増殖阻害能力について、EJ212/007−Cl2−5 scFv抗体を試験に供した。CFSEは、高輝度の蛍光を有し、分裂ごとに娘細胞間で均等に分配される。このことは、細胞集団の分染[differential staining]を可能にする。つまり、細胞分裂が阻害された集団は、自由に分裂し得た集団とくらべて、高い蛍光強度を示す。すなわち、細胞分裂の阻害は、蛍光において、さほど顕著な低下を引き起こさない。
2×106細胞を、37℃、15分間で、0.625μM FSEで標識化した。洗浄後、細胞を6つのT75細胞培養フラスコに分注し、10μg/mlのEJ212/007−Cl2−5 IgGの存在下で、37℃、5%CO2でインキュベートした。いずれの抗体も含まないでインキュベートしたものをコントロールとして使用した。細胞培養培地を、一日おきに、新しい培地および抗体で交換した。培養7日後、トリプシン−EDTAで細胞を回収して、洗浄し、96穴プレートへ移送した。ヨウ化プロピジウムの添加の後に、細胞の蛍光強度を、Gauva EasyCyteを用いて測定した。
図6は、培養7日後における平均の蛍光強度を示す。抗体の非存在下で培養された細胞(CFSE453細胞)は、EJ212/007−Cl2−5 IgG抗体とともに培養した細胞と比べて、低い蛍光強度を示した。このことは、EJ212/007−Cl2−5抗体の存在下では、細胞はあまり分裂せず、本抗体は増殖阻害効果を有することを示している。
実施例7:内在化
PM−1細胞における内在化について、CypHer5E標識化二次抗体を用いてEJ212/007−Cl2−5 scFv抗体を試験に供した。
PM−1細胞における内在化について、CypHer5E標識化二次抗体を用いてEJ212/007−Cl2−5 scFv抗体を試験に供した。
CypHer5E(登録商標)は、赤色励起型で、pH感受性のシアニンダイ系誘導体であり、塩基性pHでは最小の蛍光であり、酸性pHでは最大の蛍光を示す。そのために、アゴニストによる刺激で、レセプターが細胞表面から酸性であるエンドソームへ移動したことを表示することに理想的に適している。内在化分析のために、黒い壁面を有する96穴プレート(Applied Biosystem社)の1穴につき、2×105細胞を添加した。Cypher5E標識化した抗c−myc IgG(9E10,Diatec)2.5μg/mlを添加した後、細胞を、EJ212/007−Cl2−5 scFv 5μg/mlの存在下で、37℃、30分間で培養した。コントロールとして、細胞を、内在化することが知られたポジティブコントロール抗体で培養した。3分間、100gで遠心分離した後、細胞内部の蛍光を、8200 Cellular Detection System(Applied Biosystems社)で測定した。
CypHer5E標識化二次抗体が、EJ212/007−Cl2−5 scFvの存在下で培養した後に検出され、このことはEJ212/007−Cl2−5 scFvの一部が内在化したことを示している(図7A参照)。図7Bは、ポジティブコントロール抗体の存在下での染色を示す。
実施例8:アポトーシス
アポトーシス誘導剤としてのEJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の活性を評価する目的で、BT474(ATCC HTB−20)乳癌株化細胞における上記効果を研究した。この目的のために、単独、または公知のプロテインキナーゼ阻害剤および強力なアポトーシス誘導剤であるスタウロスポリンとの組み合わせで、上記活性を検証した(アネキシンV染色−アネキシンVはFITCで標識化されている)。これらの薬剤を添加する24時間前に、2×105細胞を6穴プレートにプレートした。薬剤とともに細胞を24時間培養して、細胞の回収およびアネキシンV染色(100,000細胞)の後に、効果をFACS分析(EasyCyte)により測定した。
アポトーシス誘導剤としてのEJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の活性を評価する目的で、BT474(ATCC HTB−20)乳癌株化細胞における上記効果を研究した。この目的のために、単独、または公知のプロテインキナーゼ阻害剤および強力なアポトーシス誘導剤であるスタウロスポリンとの組み合わせで、上記活性を検証した(アネキシンV染色−アネキシンVはFITCで標識化されている)。これらの薬剤を添加する24時間前に、2×105細胞を6穴プレートにプレートした。薬剤とともに細胞を24時間培養して、細胞の回収およびアネキシンV染色(100,000細胞)の後に、効果をFACS分析(EasyCyte)により測定した。
EJ212/007−Cl2−5 IgG抗体を、0.1μMのスタウロスポリンとともに30,25,20,10,5μg/mlの濃度で、および最大濃度(30μg/ml)のEJ212/007−Cl2−5 IgG抗体単独で、試験した。内部コントロールとしては、0.1μMのスタウロスポリンまたはDMSO(0.005%)を使用した。薬剤とともに培養した後の細胞生存性を評価するために、アネキシンV染色の最終段階で、ヨウ化プロピジウム(1:4000;死細胞を染色する)を添加した。
図8Bは、EJ212/007−Cl2−5 IgG抗体単独およびスタウロスポリン単独で若干のアポトーシス誘導があったことを示している。スタウロスポリンとの組み合わせでのEJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の効果は、それぞれ個々の薬剤の効果を加算したものよりも大きく、相乗効果であることを示している。図8Aで示される細胞生存性は、予想されたように、アポトーシス誘導に対して反比例している。
実施例9:インビボでの有効性
インビボでの腫瘍細胞の増殖性に対するEJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の効果を試験するために、30個体の雌ヌードマウス(無胸腺 nu/nu)の皮下部にMDA−MB231腫瘍断片を移植し、2つの治療群に無作為に分けた。各群を、尾部を介して静脈内に、賦形剤[vehicle]コントロール(PBS;7日間につき3注射)か、EJ212/007−Cl2−5 IgG(100mg/kg体重;7日間につき3注射)で処理した。
インビボでの腫瘍細胞の増殖性に対するEJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の効果を試験するために、30個体の雌ヌードマウス(無胸腺 nu/nu)の皮下部にMDA−MB231腫瘍断片を移植し、2つの治療群に無作為に分けた。各群を、尾部を介して静脈内に、賦形剤[vehicle]コントロール(PBS;7日間につき3注射)か、EJ212/007−Cl2−5 IgG(100mg/kg体重;7日間につき3注射)で処理した。
腫瘍を1週間につき3回測定した。腫瘍が、4グラム(4000mm3と等しい)の所定の終了基準値に達した際に、各マウスを殺処した。
図9は、PBSまたはEJ212/007−Cl2−5 IgGの注入後の、4グラム未満の腫瘍を有するマウスの比率を示す。EJ212/007−Cl2−5 IgGで処理された生体群は、PBSで処理された群に比べて、腫瘍増殖の低減を示している。EJ212/007−Cl2−5 IgG処理群では、PBSで処理された群よりも、20から35日間の4グラム未満の腫瘍を有するマウスの比率が高かった。
図9は、PBSまたはEJ212/007−Cl2−5 IgGの注入後の、4グラム未満の腫瘍を有するマウスの比率を示す。EJ212/007−Cl2−5 IgGで処理された生体群は、PBSで処理された群に比べて、腫瘍増殖の低減を示している。EJ212/007−Cl2−5 IgG処理群では、PBSで処理された群よりも、20から35日間の4グラム未満の腫瘍を有するマウスの比率が高かった。
実施例10:EJ212/007−Cl2−5抗原の特性評価
2つの異なる方法、免疫沈降法および交叉結合法を用いて、EJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の抗原の特性評価を行った。
2つの異なる方法、免疫沈降法および交叉結合法を用いて、EJ212/007−Cl2−5 IgG抗体の抗原の特性評価を行った。
方法1:免疫沈降法
2種類のEJ212/007−Cl2−5抗原陽性株化細胞(PM−1およびDU−145:FACS分析により測定)から膜タンパク質を単離し、超遠心分離で濃縮した。該膜を界面活性剤(CHAPS/DOC)に再度懸濁し、その界面活性剤は、カラム態様のDetergent Removing Resin(Pierce社)を用いて検体から除去した。検体濃縮の前あるいは後における精製された膜タンパク質、細胞質画分を得、次いで、非還元性条件下におけるSDS−PAGE/ウェスタン法にて分析した。得られたブロットを、EJ212/007−Cl2−5 IgGと、それに対する二次抗体であるHRP結合型抗ヒトIgGでプローブして、化学蛍光によりタンパク質を可視化した。
2種類のEJ212/007−Cl2−5抗原陽性株化細胞(PM−1およびDU−145:FACS分析により測定)から膜タンパク質を単離し、超遠心分離で濃縮した。該膜を界面活性剤(CHAPS/DOC)に再度懸濁し、その界面活性剤は、カラム態様のDetergent Removing Resin(Pierce社)を用いて検体から除去した。検体濃縮の前あるいは後における精製された膜タンパク質、細胞質画分を得、次いで、非還元性条件下におけるSDS−PAGE/ウェスタン法にて分析した。得られたブロットを、EJ212/007−Cl2−5 IgGと、それに対する二次抗体であるHRP結合型抗ヒトIgGでプローブして、化学蛍光によりタンパク質を可視化した。
図10の明瞭なバンド(>62KDa)は、EJ212/007−Cl2−5抗原が精製された膜検体に存在していることを示す。
免疫沈降法によって抗原を捕捉した。EJ212/007−Cl2−5 IgGを、Fcドメイン上の糖鎖[sugar group]を介して、CarboLink(登録商標)ビーズ(Pierce社)に共有結合させるた。抗原結合部位を遮らないようにしつつ、ポジティブコントロールとして、公知の抗原に対するIgGを、上記ビーズの別の検体に結合させた。抽出された膜タンパク質を、カラム態様中のビーズに流入させ、抗体に結合した抗原を溶出させ、非還元性条件下でSDS−PAGE/ウェスタン法により分析した。
免疫沈降法によって抗原を捕捉した。EJ212/007−Cl2−5 IgGを、Fcドメイン上の糖鎖[sugar group]を介して、CarboLink(登録商標)ビーズ(Pierce社)に共有結合させるた。抗原結合部位を遮らないようにしつつ、ポジティブコントロールとして、公知の抗原に対するIgGを、上記ビーズの別の検体に結合させた。抽出された膜タンパク質を、カラム態様中のビーズに流入させ、抗体に結合した抗原を溶出させ、非還元性条件下でSDS−PAGE/ウェスタン法により分析した。
図11中、最初の2つのレーンは、補足されたポジティブコントロールの抗体のバンドを示す。レーン3は、EJ212/007−Cl2−5に結合したビーズから溶出された物質の83KDaから175KDaの間のバンドを示す。このバンドを、SyproRubyで染色後、非還元性のSDS−PAGEゲルから切り取り、後の、マススペクトロメトリ−による抽出されたペプチドの分析のためにトリプシンで消化した。
回収され、正確な量に再構成された全ペプチドを、直接ペプチドマスフィンガープリンティング工程において使用して、タンパク質のIDを得た。同定のために使用されたペプチドと、ALCAM(活性化白血球細胞接着分子;CD166)と同一であるMEMD(gi|3183975)の配列に関するそれらマップ上の位置のリストを図12に示す。
方法2:交叉試験
68位にて点変異により導入されたシステインを有する(カバット,RFCIS)EJ212/007−Cl2−5 scFv(Hisタグ化)を、E.coli TG1にて発現させ、1mMジチオトレイトールの存在下で精製した。得られたscFv EJ212/007−Cl2−5 T68Cを、過剰量の、リンカーであるMts−Atf−LC−ビオチン(Pierce社, 製品番号 33083)とともにインキュベートした。このリンカーは、各アーム部分に以下の官能基を有する3つのアームを有する:ビオチン(還元剤によって開裂するアーム上)、光反応性の非特異的な反応基、およびアミノ反応性基。リンカ−を有するscFvを脱塩して、PBS中に保存した。
68位にて点変異により導入されたシステインを有する(カバット,RFCIS)EJ212/007−Cl2−5 scFv(Hisタグ化)を、E.coli TG1にて発現させ、1mMジチオトレイトールの存在下で精製した。得られたscFv EJ212/007−Cl2−5 T68Cを、過剰量の、リンカーであるMts−Atf−LC−ビオチン(Pierce社, 製品番号 33083)とともにインキュベートした。このリンカーは、各アーム部分に以下の官能基を有する3つのアームを有する:ビオチン(還元剤によって開裂するアーム上)、光反応性の非特異的な反応基、およびアミノ反応性基。リンカ−を有するscFvを脱塩して、PBS中に保存した。
PM−1細胞(2×106)を、上記リンカーと結合されたscFv 25μgのとともに培養した。PBSで洗浄した後、細胞を302nmのUV光に暴露した。この細胞を、DNAseIの存在下で、NP−40により細胞溶解に供した。氷上でのインキュベーション後、SDSを添加し、検体をHisカラムにロードした。該カラムをNP−40およびSDSの存在下で洗浄して、目的のタンパク質を、同様の界面活性剤中で、5mMDTTで溶出した。溶出された検体をストレプトアビジンビーズとともに混合し、当該ビーズをSDSの存在下で洗浄した。SDS濃度を上げて、90℃、5分間、当該ビーズをインキュベートした。上清を7%SDS−PAGEに供し、PVDF膜に転写させ、ストレプトアビジン−HRPで検出した。
図13は、EJ212/007−Cl2−5抗原を示す75kD超の明瞭なバンドを表す。67×106の細胞およびリンカ−を有するscFv 75μgで、同様の実験を繰り返した。上記ビーズから溶出された検体の3分の1を、7%SDS−PAGEに供し、上述のようにPVDF膜にブロッティングした(図14)。残りの検体を、7%SDS−PAGEに供して、SyproRubyで染色した。図14に示された目的のバンドをゲルから切除して、マススペクトログラフィー分析に供した(表6)。マススペクトログラフィーの結果にて同定された関連ペプチドは、ALCAM(CD166)に帰属された。
実施例11:同定された抗原へのEJ212/007−Cl2−5の結合
CD16抗原におけるドメイン1〜3(CD166 d1〜3/Fc)あるいはドメイン1〜5(CD166 d1〜5/Fc)のいずれか一方からなる2つの構築物をpLNO−Fc−Hyg−IgGベクターにクローニングした。各構築物を、トランスフェクションによりHEK細胞にて発現した。発現4日後、培地を回収して、アフィニティークロマトグラフィー、プロテインAで、CD166d1〜3/FcおよびCD166d1〜5/Fcを精製して、一昼夜、PBSで透析した。
CD16抗原におけるドメイン1〜3(CD166 d1〜3/Fc)あるいはドメイン1〜5(CD166 d1〜5/Fc)のいずれか一方からなる2つの構築物をpLNO−Fc−Hyg−IgGベクターにクローニングした。各構築物を、トランスフェクションによりHEK細胞にて発現した。発現4日後、培地を回収して、アフィニティークロマトグラフィー、プロテインAで、CD166d1〜3/FcおよびCD166d1〜5/Fcを精製して、一昼夜、PBSで透析した。
CD166抗原へのEJ212/007−Cl2−5 IgGの結合性を、ELEISAにて評価した。ELISAプレートを一昼夜、10μg/mlの、市販の組換え型CD166−Fc抗原(R&Dシステム社)、CD166d1〜5/FcまたはCD166d1〜3/Fcでコーティングした。無関係の結合性を有するIgGをELISAにネガティブコントロールとして添加した。PBS/0.05%Tweenで洗浄した後、プレートを1時間、10〜0.16μg/mlの一連の希釈されたEJ212/007−Cl2−5 IgGとともにインキュベートした。結合されたIgGを、1μg/mlの抗κ−HRPとともに1時間、さらに1−step ABTS基質(Pierce社)とともに15分間インキュベートすることで、検出した。吸光率を405nmで測定した。
図15は、組換型CD166−Fc、CD166d1〜5/FcおよびCD166d1〜3/FcへのEJ212/007−Cl2−5 IgGの結合性を表しており、EJ212/007−Cl2−5scFvのエピトープは、CD166抗原の1〜3ドメインに位置していることを示している。
マウス組換え型CD166−Fc(R&Dシステム社)へのEJ212/007−Cl2−5 IgGの結合性を、上述したヒトCD166−Fcにおける場合と類似のELISAにより示した。
Claims (65)
- (i)下記(a)〜(c)からなる群から選択される1以上の重鎖CDRドメイン:
(a)配列番号5のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR3ドメイン;
(b)配列番号4のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR2ドメイン;および
(c)配列番号3のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR1ドメイン;および/または
(ii)下記(d)〜(f)からなる群から選択される1以上の軽鎖CDRドメイン:
(d)配列番号8のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR3ドメイン;
(e)配列番号7のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR2ドメイン;および
(f)配列番号6のアミノ酸配列もしくは該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR1ドメイン
を含むことを特徴とする結合タンパク質。 - (i)配列番号5のアミノ酸配列または該配列と実質的に相同の配列を含む重鎖CDR3ドメイン;および
(ii)配列番号8のアミノ酸配列または該配列と実質的に相同の配列を含む軽鎖CDR3ドメイン
を含む請求項1に記載の結合タンパク質。 - 重鎖CDRドメイン(a),(b)および(c)のうちいずれか1つ、および/または軽鎖CDRドメイン(d),(e)および(f)のうちいずれか1つを含む請求項1に記載の結合タンパク質。
- (i)請求項1で規定した1以上の重鎖CDRドメイン(a),(b)もしくは(c)を含むVHドメイン;および/または
(ii)請求項1で規定した1以上の軽鎖CDRドメイン(d),(e)もしくは(f)を含むVLドメイン
を含む結合タンパク質。 - 上記の実質的に相同の配列が、上記CDRドメインにおいて5,4,3,2または1個までのアミノ酸置換を含む配列である請求項1〜4のいずれかに記載の結合タンパク質。
- 上記の実質的に相同の配列が、上記CDRドメインにおいて5,4,3,2または1個までの保存されたアミノ酸置換を含む配列である請求項1〜4のいずれかに記載の結合タンパク質。
- (i)配列番号9のアミノ酸配列または該配列と実質的に相同の配列を含むVHドメイン;および/または
(ii)配列番号10のアミノ酸配列または該配列と実質的に相同の配列を含むVLドメイン
を含む請求項4に記載の結合タンパク質。 - 上記の実質的に相同の配列が:
(i)配列番号9と少なくとも50,60,70,80,90もしくは95%の同一性を有するVHドメイン;および/または(ii)配列番号10と少なくとも50,60,70,80,90もしくは95%の同一性を有するVLドメイン
である請求項7に記載の結合タンパク質。 - 配列番号2のアミノ酸配列を含む結合タンパク質もしくはその断片、またはそれらと実質的に相同のアミノ酸配列を含むことを特徴とする結合タンパク質。
- 上記の実質的に相同の配列が、配列番号2と少なくとも50,60,70,80,90または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む請求項9に記載の結合タンパク質。
- 上記結合タンパク質が抗体もしくは抗体断片であるか、または上記結合タンパク質が抗体もしくは抗体の断片を含む上記請求項のうちいずれか1つに記載の結合タンパク質。
- 上記抗体が、抗体全体,モノクローナル抗体,ポリクローナル抗体,ヒト化抗体またはキメラ抗体である請求項11に記載の結合タンパク質。
- 上記抗体全体が、IgG抗体である請求項12に記載の結合タンパク質。
- 上記抗体断片が、Fab,Fab’,F(ab’)2,scFv,Fv,dsFv,ds−scFv,Fd,dAbs,TandAbs二量体,直鎖状抗体,minibody,もしくはそれらの多量体,または二重特異性抗体断片である請求項11に記載の結合タンパク質。
- 上記抗体または抗体断片が、重鎖定常領域の全部もしくは一部、および/または軽鎖定常領域のκもしくはλの全部もしくは一部を含む請求項11〜14のいずれかに記載の結合タンパク質。
- 腫瘍特異的である上記請求項のいずれかに記載の結合タンパク質。
- 上記結合タンパク質が、黒色腫,前立腺癌,乳癌,結腸直腸癌,膀胱癌,卵巣癌,膵臓癌,肺癌,食道扁平上皮癌,脳癌および/または腎癌の組織に結合する請求項16に記載の結合タンパク質。
- 上記結合タンパク質が、末梢血リンパ球(PBL)に著しく結合しない、および/または顆粒球に著しく結合しない請求項16または17に記載の結合タンパク質。
- 結合タンパク質が、乳癌の株化細胞MDA−MB231に測定可能にまたは著しく結合するが、顆粒球または末梢血リンパ球(PBL)にわずかにまたは測定不能な程度にしか結合しない請求項16〜18のいずれかに記載の結合タンパク質。
- CD166に結合できる上記請求項のいずれかに記載の結合タンパク質。
- 上記結合タンパク質が1以上のタイプの癌細胞またはCD166に対する結合親和性を有し、該結合親和性が500,400,300,200,190,180,170,160,150,140,130,120,110,100,90,80,70,60,50,40,30,20,10,5もしくは1nM未満のKmまたはKdに相当する上記請求項のいずれかに記載の結合タンパク質。
- 上記結合タンパク質が、2.9×10-8M以下、または2.1×10-8M以下の結合親和性を有する請求項21に記載の結合タンパク質。
- 上記結合タンパク質が、1以上のタイプの癌細胞に対するKmまたはKdを有し、上記結合親和性が比較できる条件の下で測定されたとき、該Kmが、1以上のタイプの非癌細胞または正常細胞より、少なくとも1桁、さらに好ましくは少なくとも2,3,4または5桁小さい上記請求項のいずれかに記載の結合タンパク質。
- 上記癌細胞が、黒色腫,前立腺癌,乳癌,結腸直腸癌,膀胱癌,卵巣癌,膵臓癌,肺癌,食道扁平上皮癌,脳癌および/または腎癌の細胞である請求項21〜23のいずれかに記載の結合タンパク質。
- 結合タンパク質が、下記(1)〜(5)を含む方法によって同定され得る、腫瘍細胞上の抗原に結合できる結合タンパク質:
(1)請求項1〜24のいずれかに記載の結合タンパク質、好ましくは固定数の腫瘍細胞に対して最大限に結合する抗体または抗体断片(Ab1)の最小濃度で該固定数の腫瘍細胞を培養し、Ab1の蛍光の平均値(MFAb1)を測定すること;
(2)2種以上の濃度の試験結合タンパク質(Ab2)を、該Ab1および腫瘍細胞にAb2を添加することによって試験し、蛍光の平均値(MF(Ab1+Ab2))を測定すること、
(3)蛍光のバックグランド平均値(MFBgd)を測定すること;
(4)下記式で表されるPIを計算すること
PI=[(MF(Ab1+Ab2)−MFBgd)/(MFAb1−MFBgd)]×100;および
(5)該PIを対照PI値と比較すること;
該対照PI値と統計的に有意に異なるPIは、該試験結合タンパク質が該腫瘍細胞上の上記抗原に結合できることを意味する。 - 上記腫瘍細胞が、乳癌細胞である請求項25に記載の結合タンパク質。
- 上記結合タンパク質が、ヒトタンパク質である上記請求項のいずれかに記載の結合タンパク質。
- 免疫グロブリン,ホルモン,増殖因子,レクチン,インスリン,低密度リポタンパク質,グルカゴン,エンドルフィン,トランスフェリン,ボンベシン,アシアロ糖タンパク質,グルタチオンS−転移酵素(GST),赤血球凝集素(HA)または切り詰められたmycなどのような細胞結合タンパク質または治療薬もしくは診断薬に融合または接合した上記請求項のいずれかに記載の結合タンパク質を含む融合タンパク質または接合体。
- 1以上の放射線治療剤,抗血管新生剤,アポトーシス誘導剤,チューブリン阻害薬,抗細胞剤/細胞毒性剤または凝固剤に付着した請求項1〜27のいずれかに記載の結合タンパク質または請求項28に記載の融合タンパク質もしくは接合体。
- 検出可能なマーカーで標識されている請求項1〜27のいずれかに記載の結合タンパク質または請求項28に記載の融合タンパク質もしくは接合体を含む診断薬あるいは造影剤。
- 請求項1〜28のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質もしくは接合体をコードしたヌクレオチド配列を含む核酸分子または該核酸分子と実質的に相同の核酸分子。
- 配列番号1に規定されたヌクレオチド配列を含む請求項31に記載の核酸分子または該核酸分子と実質的に相同の核酸分子。
- 上記の実質的に相同の配列が、少なくとも50,60,70,80,90または95%の同一性を有する配列を含む請求項31または32に記載の核酸分子。
- 請求項31〜33のいずれかに記載の核酸分子を含むベクター。
- 請求項34に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 請求項1〜29のいずれかに記載の1以上の結合タンパク質,融合タンパク質または接合体を発現している宿主細胞。
- 請求項31〜33のいずれかに記載の核酸分子または請求項34に記載のベクターを含む、ヒト以外のトランスジェニック動物。
- さらに、薬学的に許容し得る1以上の賦形剤,担体,希釈剤,緩衝剤または安定剤を任意に含む、請求項1〜29のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質もしくは接合体または請求項30に記載の診断薬もしくは造影剤を含む組成物。
- 下記(i)〜(iv)を含むキット。
(i)請求項1〜29のいずれかに記載の1以上の結合タンパク質,融合タンパク質もしくは接合体、および/または
(ii)請求項30に記載の診断薬もしくは造影剤、および/または
(iii)請求項31〜33のいずれかに記載の1以上の核酸分子、および/または
(iv)請求項34に記載の1以上のベクター、および/または
(v)請求項34もしくは35に記載の1以上の宿主細胞、および/または
(vi)請求項38に記載の組成物。 - 治療、診断または画像化に用いられる請求項39に記載のキット。
- 癌の診断に用いられる請求項40に記載のキット。
- 治療、診断または画像化に用いられる請求項1〜29のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質または接合体。
- 癌の治療に用いられる請求項1〜29のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質または接合体。
- 診断に用いられる請求項30に記載の診断薬または造影剤。
- 癌の治療、診断または画像化に用いられる医薬品の製造における、請求項1〜29のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質または接合体の使用。
- 癌の診断に用いられる組成物の製造における、請求項30に記載の診断薬または造影剤の使用。
- 請求項1〜29のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質もしくは接合体を対象に有効量で投与すること、または該対象から取り出し、その後該対象に戻す検体に該結合タンパク質,該融合タンパク質もしくは該接合体の有効量を添加することを含む、該対象を治療する方法。
- 上記対象が、哺乳動物、好ましくはヒトである請求項47に記載の方法。
- 上記対象が、癌を有する請求項47または48に記載の方法。
- 請求項1〜29のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質もしくは接合体または請求項30に記載の診断薬もしくは造影剤を対象に適当量で投与すること、および
該対象において該結合タンパク質,該融合タンパク質もしくは該接合体の存在および/または量および/または位置を検出すること
を含む、該対象の疾病または疾患を診断する方法。 - 上記の疾病または疾患が、癌である請求項50に記載の方法。
- 下記段階:
(1)請求項1〜29のいずれかに記載の1以上の結合タンパク質,融合タンパク質もしくは接合体を哺乳動物から取り出した試験検体と接触させること
を含む、哺乳動物の疾病を診断する方法。 - さらに、下記段階:
(2)上記試験検体において、上記結合タンパク質,上記融合タンパク質もしくは上記接合体と抗原とで形成した複合体の存在および/または量および/または位置を測定すること;および、任意で
(3)該試験検体中の結合タンパク質−抗原複合体,融合タンパク質−抗原複合体もしくは接合体−抗原複合体の存在および/または量を対照と比較すること
を含む請求項52に記載の方法。 - 請求項1〜29のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質もしくは接合体または請求項30に記載の診断薬もしくは造影剤の適当量を対象に投与すること、および
該対象において該結合タンパク質,該融合タンパク質もしくは該接合体または該診断薬もしくは該造影剤の存在および/または量および/または位置を検出すること
を含む、該対象を画像化する方法。 - 上記疾病が、黒色腫,前立腺癌,乳癌,結腸直腸癌,膀胱癌,卵巣癌,膵臓癌,肺癌,食道扁平上皮癌,脳癌および/または腎癌である請求項41に記載のキット、請求項43に記載の結合タンパク質、請求項45もしくは46に記載の使用または請求項49,51,52もしくは54に記載の方法。
- 請求項35または36に記載の宿主細胞を培養する段階を含む、請求項1〜29のいずれかに記載の結合タンパク質,融合タンパク質または接合体を生産する方法。
- 上記結合タンパク質,上記融合タンパク質もしくは上記接合体を単離または精製する段階、および/または
得られた産物から、薬学的に許容し得る担体,希釈剤または賦形剤などのような、少なくとも1種の追加成分を含む組成物を処方する段階
をさらに含む請求項56に記載の方法。 - CD166を含む組成物を、請求項1〜27のいずれかに記載の結合タンパク質またはそれらの接合体に接触させることを含む、CD166を結合させる方法。
- CD166分子を含むと疑われる組成物を、請求項1〜27のいずれかに記載の結合タンパク質またはそれらの接合体に、CD166/結合タンパク質複合体を形成するのに有効な条件下で、接触させること、および
そのように形成された該複合体を検出すること
を含む、CD166を検出する方法。 - さらに、上記組成物が、追加の活性薬剤を含む請求項38に記載の組成物。
- 上記の追加の活性薬剤が、アポトーシス促進剤である請求項60に記載の組成物。
- 上記の追加の活性薬剤が、他の標的と結合する抗体,サイトカイン,代謝拮抗剤,アルキル化剤,プリン類似体および関連する阻害剤,ピリミジン類似体,葉酸類似体,ビンカアルカロイド,エピポドフィロトキシン,抗生物質,L−アスパラギナーゼ,エストロゲン,抗エストロゲン剤,アンドロゲン,抗アンドロゲン剤,副腎皮質ステロイド,プロゲスチン,副腎皮質の抑制剤,生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体,インターフェロン,トポイソメラーゼ阻害剤,アントラセンジオン置換尿素,メチルヒドラジン誘導体,白金配位錯体もしくは化学薬品,および副作用を抑制する薬剤からなる群から選択された1種以上である請求項60に記載の組成物。
- 治療においてアポトーシス促進剤と組み合わせて用いる請求項1〜27のいずれかに記載の結合タンパク質またはそれらの接合体。
- アポトーシス促進剤とともに、請求項1〜27のいずれかに記載の結合タンパク質またはそれらの接合体を含む、治療において、別個に、同時にまたは順次用いられる組み合わせ製剤としての製品。
- 上記アポトーシス促進剤が、スタウロスポリンである請求項61,63または64に記載の結合タンパク質,製品または組成物。
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