JP2010520286A - Wnt組成物およびその使用方法 - Google Patents

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Abstract

Wntタンパク質の治療的使用のための方法および組成物が提供され、ここでWntタンパク質は脂質構造物の非水相中に挿入されている。いくつかの態様において、Wntタンパク質はリポソーム外膜またはミセル上にその活性立体構造で提示される。本発明の薬学的組成物は、動物に対して治療目的で投与することができる。本発明のいくつかの態様において、組成物は局所的に、例えば損傷部位における注射により投与される。ある種の状態に対しては、Wnt活性を短期間にわたって与えることが望ましく、有効量は、規定された短期間にわたって投与されると考えられる。

Description

発明の背景
Wntタンパク質は、胚形成の間に細胞間相互作用を調節する、高度に保存された分泌型シグナル伝達分子のファミリーを構成している。Wnt遺伝子およびWntシグナル伝達は癌とも関係づけられている。Wntの作用機序についての洞察が、いくつかの系から浮かび上がってきている:ショウジョウバエ(Drosophila)および線虫セノラブディティス-エレガンス(Caenorhabditis elegans)における遺伝学;細胞培養物における生化学およびアフリカツメガエル(Xenopus)胚における異所性遺伝子発現。マウスでは多くのWnt遺伝子が突然変異を受けて、非常に特異的な発達異常を招いている。現在の理解によれば、Wntタンパク質は細胞表面上のFrizzledファミリーの受容体と結合する。いくつかの細胞質中リレー要素を通じて、このシグナルはβ-カテニンに伝達され、続いてそれが核内に入ってTCFと複合体を形成して、Wnt標的遺伝子の転写を活性化する。
Wnt糖タンパク質は、いくつかの始原的細胞種において活性を有するパラ分泌型または自己分泌型シグナルとして機能すると考えられている。Wnt増殖因子ファミリーには、マウスおよびヒトで同定された19種を超える遺伝子が含まれる。Wnt-1癌原遺伝子(int-1)は元々、ウイルスDNA配列の挿入が原因でマウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)によって誘発される乳腺腫瘍から同定された(Nusse and Varmus (1982) Cell 31:99-109(非特許文献1))。Wntタンパク質の発現は多様であるが、多くの場合は、例えば胚組織および胎児組織における発生過程と関連している。Wntは局所細胞シグナル伝達において役割を果たしている可能性がある。生化学的研究により、分泌型Wntタンパク質の大部分は、媒質中に自由拡散しているのではなく、細胞表面または細胞外マトリックスに付随して認められることが示されている。
Wnt遺伝子における突然変異の研究により、増殖制御および組織パターン形成におけるWntの役割が示されている。ショウジョウバエでは、wingless(wg)がWnt遺伝子をコードしており、wg突然変異は胚性外胚葉、神経発生および成虫原基の成長のパターンを変化させる。セノラブディティス-エレガンスでは、lin-44がWntをコードしており、これは不等細胞分裂のために必要である。マウスにおけるノックアウト突然変異からは、Wntが脳の発生、ならびに腎臓、尾芽および肢芽の胚原基の成長のために必須であることが示されている。乳腺におけるWntの過剰発現は、乳腺過形成および早期肺胞発生をもたらしうる。
Wntシグナル伝達は、幹細胞の増殖および神経冠の特異化を含む、動物発生におけるさまざまなイベントに関与している。このため、Wntタンパク質は、特定の細胞種を増やすこと、およびインビボでの状態の処置において重要な試薬となる可能性がある。このため、薬学的活性のあるwnt組成物は大きな関心の対象である。
刊行物
可溶性winglessタンパク質の生物活性は、Leeuwen et al. (1994) Nature 24:368(6469):342-4(非特許文献2)に記載されている。可溶性で生物活性のある脊椎動物Wntタンパク質を用いたWnt-frizzled相互作用の生化学的特性決定が、Hsieh et al. (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96(7):3546-51(非特許文献3)に記載されている。Bradley et al. (1995) Mol Cell Biol 15(8):4616-22(非特許文献4)は、マイトジェン活性を有する可溶型のwntタンパク質を記載している。
Nusse and Varmus (1982) Cell 31:99-109 Leeuwen et al. (1994) Nature 24:368(6469):342-4 Hsieh et al. (1999) Proc Natl Acad Sci USA 96(7):3546-51 Bradley et al. (1995) Mol Cell Biol 15(8):4616-22
Wntタンパク質の治療的使用のための方法および組成物が提供される。本発明のいくつかの態様においては、Wntタンパク質の治療的有効量を含む、インビボ投与のための薬学的組成物が提供され、ここでWntタンパク質は脂質構造物の非水相中に、例えばリポソーム、ミセル、脂質ラフトなどの表面内、エマルション中などに挿入される。いくつかの態様において、Wntタンパク質はリポソーム外膜またはミセル上にその活性立体構造で提示される。脂質構造物がリポソームである場合には、Wntタンパク質をリポソーム内部に、例えば水相中に封入しないことが望ましい。
本発明のいくつかの態様において、Wntタンパク質は、ヒトWntタンパク質、例えばWnt3Aを非限定的に含む、哺乳動物タンパク質である。Wnt組成物は、幹細胞の維持および増殖、組織再生などを含む、さまざまな治療方法において用途がある。
本発明の薬学的組成物は、動物に対して治療目的で投与することができる。本発明のいくつかの態様において、組成物は局所的に、例えば損傷の部位への注射により投与される。ある種の状態に対しては、Wnt活性を短期間にわたって与えることが望ましく、有効量は、規定された短期間にわたって投与されると考えられる。
本発明のいくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、例えば損傷後、骨疾患の処置などにおいて、骨修復を加速させるために動物に対して投与される。本明細書には、Wnt活性のパルスが、初期Wnt依存性増殖効果を利用しながらも永続的なWnt活性化の有害な帰結は回避することにより、骨再生を有意に加速させることが示されている。また、驚いたことに、水相中にあるWntは、Wntタンパク質が脂質構造物の非水相中に挿入された製剤と比較して有効でないことも見いだされた。骨修復を加速させるための代替的な態様においては、骨損傷または骨疾患に罹患した罹患体(patient)に対する細胞の投与の前に、エクスビボで骨髄細胞をWntと接触させる。この処置は任意で、本発明の薬学的組成物の局所投与と併用される。
無傷骨格および損傷骨格におけるWntシグナル伝達。(a)Wnt3aおよび(b)Dkk2を含む、Wnt経路の構成要素は骨膜(po)および皮質骨(cb)で発現されるが、一方、(c)Wnt2bを含む他の遺伝子は骨膜のみで発現される。これらの発現パターンおよび他のものは表1にまとめられている。(d)ペンタクロム(pentachrome)染色により、何列もの肥大軟骨細胞(hc)および海綿骨骨芽細胞(tb)が血管(bv)と交錯している成長板の構成が図示されている。(e)TOPgal成長板では、レポーター活性が軟骨細胞および骨芽細胞で検出可能である。(f)レポーター活性は皮質骨(cb)の骨細胞でも認められ、(g)骨髄でも極めて低いレベルで認められる。(h)骨格修復におけるWntシグナル伝達の役割について検討するために、一方の皮質を貫通して骨髄(bm)腔の中に入っているが第2の皮質は無傷のままである1.0mmの孔からなる損傷モデルを用いている。(i)淡青色に染まる新たに沈着した類骨マトリックスが、術後第6日までに容易に観察される。(j)RTPCRにより、BATgalマウスではレポーターβ-ガラクトシダーゼが損傷から48時間以内に発現されることが示されている(赤の矢印)。(k)Xgal染色によるβ-ガラクトシダーゼ免疫組織化学検出により、Wnt応答性細胞が損傷72時間後には損傷部位に厳密に限局していることが示されている。(l-n)Wnt経路の構成要素に関するインサイチューハイブリダイゼーションにより、損傷部位全体にわたるそれらの広範な発現が示されている。Wnt3a、Dkk2およびWnt2bは代表的な発現パターンを示した;他の遺伝子発現パターンは表1にまとめられている。スケールバー:100μm。 Dkk1によるWntシグナル伝達の阻害は骨再生を停止させる。この検討にはTOPgalマウスを用い、骨格損傷を脛骨に生じさせ、その直後に対照ウイルスAd-Fcおよび可溶性Wnt阻害因子Dkk1を発現するウイルスの全身投与を行った。(a)Xgal染色により、脛骨(ti)および腓骨(fi)の成長板(gp)におけるβ-ガラクトシダーゼレポーター活性のパターンはAd-Fcの全身送達後に擾乱を受けないことが図示されている。(b)Ad-Dkk1の全身送達は、TOPgalマウスの成長板におけるβ-ガラクトシダーゼ活性をほとんど消失させる。挿入図:複数の動物でのウエスタンブロット(番号を付したレーン)により、アデノウイルス送達から48時間以内に高レベルのFc断片およびDkk1タンパク質が得られることが確かめられている。(c)術後第6日のAd-Fc損傷部位由来の組織切片には、青色に染まる新生骨マトリックスの証拠が認められる(点線は再生体を取り囲んでいる)。(d)Ad-Dkk1損傷部位では、新生骨がごくわずかにみられる(点線)。新生骨の量を組織形態計測的な測定(方法の項を参照)を用いて定量したところ、(e)対照であるAd-Fc損傷部位に比して、(f)Ad-Dkk1損傷部位では骨再生の84%の低下が示された。スケールバー:1mm(a,b)、100μm(c,d)。 骨再生は、骨芽細胞分化のDkk1を介した停止のために休止する。(a)術後第4日に、PECAM免疫陽性内皮細胞がAd-Fc損傷部位(is)に充満しており、これは骨格障害後の典型的な血管新生応答を示している。すべてのパネル中で皮質骨(cb)の縁端は点線によって取り囲まれている。(b)Ad-Dkk1処置はPECAM染色を著しい程度では変化させなかった。(c)Ad-Fc損傷部位では、TUNEL陽性細胞は検出されたとしてもわずかに過ぎない;(d)Ad-Dkk1処置はアポトーシス細胞の識別可能な増加をもたらさない。(e)Ad-Fc損傷部位内の細胞は、runx2の広範な発現によって指し示されるように、骨芽細胞に分化し始める。(f)runx2発現はAd-Dkk1損傷部位では検出不能である。(g)Ad-Fc損傷部位は強いアルカリホスファターゼ活性を示し、これは類骨マトリックスの鉱化の開始を指し示している。(h)Ad-Dkk1処置動物の損傷部位におけるアルカリホスファターゼ活性の証拠はみられなかった;残存性アルカリホスファターゼが皮質骨の障害された端部に認められる。スケールバー:100μm。 恒常的なWnt活性化は細胞増殖を刺激するが骨再生は遅延させる。(a)ペンタクロム染色により、野生型動物において術後第6日に損傷部位(is)で認められる骨再生の量(点線は新生骨を取り囲んでいる)が示されている。(b)LRP5-G171Vマウスにおける同じ損傷では、第6日時点で新生骨は全く認められなかった。(c)PCNA免疫陽性細胞が、損傷部位の近傍の野生型骨膜(po)に存在する;(d)LRP5-G171Vマウスの損傷した骨膜には、より多くのPCNA陽性細胞が存在する。(e)PCNA標識細胞は損傷部位の近傍の野生型骨髄の全体にわたって見いだされる。(f)損傷部位付近のLRP5-G171V骨髄はPCNA陽性細胞の劇的な増加を示す。(g)骨軟骨前駆細胞遺伝子に関するインサイチューハイブリダイゼーションから、野生型損傷部位には中等度レベルのsox9がみられるが、(h)LRP5-G171V損傷では発現が検出不能であることが判明している。(i)runx2も同じく野生型損傷部位では発現されるが、(j)runx2はLRP5-G171V損傷部位ではほとんど検出不能なレベルでしか発現されない。(j)野生型細胞は骨芽細胞マーカーであるオステオカルシンを発現し、一方、(k)LRP5-G171V損傷部位ではオステオカルシン発現は極めてわずかである。スケールバー:100μm。 Wnt3aリポソームは骨再生を強化する。(a)Wnt活性化に応答してルシフェラーゼを発現するSuperTOPflashレポーター細胞を、種々の濃度のWnt3aリポソーム、PBSリポソームまたはWnt3aタンパク質で処置した。16時間のインキュベーション後に、ルシフェラーゼ活性を測定した。Wnt3aリポソームはレポーターを濃度依存的な様式で活性化したが、PBSリポソームはベースラインを上回る活性を示さなかった。(b)PBSリポソームで処置した第6日時点の損傷部位(is)のペンタクロム染色では、非処置対照(例えば、図1iおよび4a)と同様に、比較的少量の骨再生が示されている。(c)Wnt3aリポソームの1回の注射を受けた損傷部位は強い骨再生を呈する。(d)アニリンブルー染色した組織切片を用いて骨形成を定量した;PBSリポソームで処置した損傷部位はごくわずかな新生骨しか示していないが、一方、(e)Wnt3aリポソームで処置した損傷部位は豊富な類骨組織を示している;組織形態計測的な測定により、術後第6日の時点での新生骨形成の350%の増加が判明した。(f)PBSリポソームで処置した損傷部位は中等度のPECAM免疫染色を示す。皮質骨(cb)の縁端は点線によって指し示されている。(g)Wnt3aリポソームで処置した損傷部位は、PECAM陽性細胞の増加を示している。(h)PBSリポソームで処置した損傷部位は、この時点で存在した少量の新生骨マトリックスのために、非常にわずかな量のTRAP活性を示している;(i)Wnt3aリポソームで処置した損傷部位は中等度量のTRAP活性を示し、これはWnt処置が破骨細胞活性を抑制しないことを指し示している。(j)PBSリポソームはTOPgal損傷部位付近の骨髄内でわずかな量のβ-ガラクトシダーゼ活性を誘発する。(k)Wnt3aリポソームは損傷部位付近の骨髄内でβ-ガラクトシダーゼ活性の上方制御を誘導する。(l)PBSリポソームと比較して、(m)Wnt3aリポソームは損傷部位におけるPCNA免疫染色の増加を引き起こす。(n)runx2は第6日時点でPBSリポソーム損傷部位で低レベルで発現されるが、一方、(o)Wnt3aで処置した損傷部位では第6日時点で強いrunx2発現が認められる。(p)sox9発現は、PBSで処置した損傷部位では検出不能であったが、(q)Wnt3aで処置した部位ではsox9が強く発現される。(r)オステオカルシン発現レベルは、PBSで処置した損傷部位では非常に低レベルであるが、(s)Wnt3aで処置した損傷部位では全体にわたってオステオカルシンが強く発現される。スケールバー:100μm。
具体的な態様の説明
Wntタンパク質の治療的使用のための方法および組成物が提供される。本発明のいくつかの態様においては、Wntタンパク質の治療的有効量を含む、インビボ投与のための薬学的組成物が提供され、ここでWntタンパク質は、脂質構造物の非水相中に、例えばリポソーム、ミセル、脂質ラフトなどの表面内、エマルション中などに挿入される。いくつかの態様において、Wntタンパク質はリポソーム外膜またはミセル上にその活性立体構造で提示される。本発明の薬学的組成物は、動物に対して治療目的で投与することができる。本発明のいくつかの態様において、組成物は、例えば損傷部位における注射により、局所的に投与される。
本発明のいくつかの態様において、本発明の薬学的組成物は、例えば損傷後、骨疾患の治療などにおいて、骨修復を加速させるために動物に対して投与される。骨修復を加速させるための代替的な態様においては、骨損傷または骨疾患に罹患した罹患体に対する細胞の投与の前に、エクスビボで骨髄細胞をWntと接触させる。この処置は任意で、本発明の薬学的組成物の局所投与と併用される。
生物活性のあるWnt薬学的組成物は、インビボで投与された場合にネイティブ配列Wntポリペプチドによって直接的または間接的に引き起こされるか遂行されるエフェクター機能を保っている。ネイティブ配列Wntポリペプチドのエフェクター機能には、β-カテニンの安定化、幹細胞自己再生の刺激などが含まれる。Wnt組成物は、幹細胞の維持および増殖、組織再生などを含む、さまざまな治療方法において用途がある。
上記の方法における使用のために、本発明はまた、以下のもの:容器、容器上の表示、および容器内部の活性作用物質を含む組成物、を含む製造品であって、組成物が、インビボで、例えば幹細胞または前駆細胞の増殖および/または維持を強化するのに有効な、脂質構造物の非水相中に挿入された実質的に均一な生物活性のあるWntタンパク質を含み、容器上の表示が、組成物をそのような細胞の増殖および/または維持を強化するために用いうることを指し示している製造品も提供する。
定義
本方法を説明する前に、本発明が、説明される特定の方法には限定されず、それらは当然ながら変更されてもよいことが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用する用語は特定の態様のみを説明することを目的としていて、本発明の範囲を限定することは意図していないことも理解されるべきである。
ある範囲の値が提示される場合、その範囲の上限と下限との間にある各値、およびその指定された範囲にある任意の他の指定された値またはその間にある値は、その文脈で明らかに別の指示がなされない限り、下限の単位の10分の1までが本発明に含まれるものと解釈される。これらのより小さい範囲の上限および下限は別個にその小さい範囲に含まれてもよく、それも本発明に含まれ、指定された範囲に特定の除外される限界があってもよい。
別に定義する場合を除き、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。本発明の実施または検査のために本明細書に記載したものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法および材料は以下に説明するものである。本明細書で言及するすべての刊行物は、その刊行物の引用と関係のある方法および/または材料の開示および記載のために参照により本明細書に組み入れられる。
本明細書および添付する特許請求の範囲において用いる場合、単数形の「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」は、その文脈で明らかに別の指示がなされない限り、複数のものに対する言及も含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つのミクロスフェア」に対する言及には複数のこのようなミクロスフェアが含まれ、「そのステント」に対する言及には1つまたは複数のステントおよび当業者に公知であるその等価物に関する言及が含まれ、その他についても同様である。
Wntタンパク質
Wntタンパク質は、胚形成の間に細胞間相互作用を調節する、高度に保存された分泌型シグナル伝達分子のファミリーを構成している。「Wnt」または「Wnt遺伝子産物」または「Wntポリペプチド」という用語は、本明細書で用いる場合、ネイティブ配列Wntポリペプチド、Wntポリペプチド変異体、Wntポリペプチド断片およびキメラWntポリペプチドを範囲に含む。本発明のいくつかの態様において、Wntタンパク質は、システイン残基と共有結合したパルミチン酸を含む。
「ネイティブ配列」ポリペプチドとは、天然由来のWntポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するもののことである。そのようなネイティブ配列ポリペプチドは、内因性Wntタンパク質を産生する細胞から単離することもでき、または組換え手段もしくは合成手段によって作製することもできる。したがって、ネイティブ配列ポリペプチドは、例えば、天然のヒトポリペプチド、マウス(murine)ポリペプチド、または任意の他の哺乳動物種もしくは非哺乳動物種、例えばショウジョウバエ、C.エレガンスなどに由来するポリペプチドのアミノ酸配列を有しうる。
「ネイティブ配列Wntポリペプチド」という用語には、ヒトおよびマウスのWntポリペプチドが含まれる。ヒトwntタンパク質には以下のものが含まれる:Wnt 1、Genbank参照番号NP_005421.1;Wnt 2、Genbank参照番号NP_003382.1、これは脳、視床、胎児および成体の肺、ならびに胎盤で発現される;Wnt 2Bの2つのアイソフォーム、Genbank参照番号NP_004176.2およびNP_078613.1。アイソフォーム1は成体の心臓、脳、胎盤、肺、前立腺、精巣、卵巣、小腸および結腸で発現される。成体の脳では、これは主として尾状核、視床下核および視床で発現される。同じく胎児の脳、肺および腎臓でも発現される。アイソフォーム2は胎児脳、胎児肺、胎児腎臓、尾状核、精巣および癌細胞株で発現される。Wnt 3およびWnt3Aは、発生中の神経管の形態形成過程における細胞間シグナル伝達において明確な役割を果たし、Genbank参照番号NP_110380.1およびX56842を有する。Wnt3Aは骨髄で発現される。Wnt 4はGenbank参照番号NP_110388.2を有する。Wnt 5AおよびWnt 5BはGenBank参照番号NP_003383.1およびAK013218を有する。Wnt 6はGenBank参照番号NP_006513.1を有する;Wnt 7Aは、胎盤、腎臓、精巣、子宮、胎児肺、ならびに胎児および成体の脳で発現され、GenBank参照番号NP_004616.2を有する。Wnt 7Bは胎児脳において中等度に発現され、胎児の肺および腎臓では弱く発現され、成体の脳、肺および前立腺ではわずかに発現され、GenBank参照番号NP_478679.1を有する。Wnt 8Aには2種類の選択的(alternative)転写物(GenBank参照番号NP_114139.1およびNP 490645.1)がある。Wnt 8Bは前脳で発現され、GenBank参照番号NP_003384.1を有する。Wnt 10AはGenBank参照番号NP_079492.2を有する。Wnt 10Bはほとんどの成体の組織で検出され、心臓および骨格筋で最も高レベルである。これはGenBank参照番号NP_003385.2を有する。Wnt 11は、胎児の肺、腎臓、成体の心臓、肝臓、骨格筋および膵臓で発現され、GenBank参照番号NP_004617.2を有する。Wnt 14はGenBank参照番号NP_003386.1を有する。Wnt 15は胎児腎臓および成体腎臓において中等度に発現され、脳でも見いだされる。これはGenBank参照番号NP_003387.1を有する。Wnt 16には、選択的スプライシングによって生じる2種類のアイソフォームWnt-16aおよびWnt-16bがある。アイソフォームWnt-16Bは、脾臓、虫垂およびリンパ節などの末梢リンパ器官ならびに腎臓で発現されるが、骨髄では発現されない。アイソフォームWnt-16aは膵臓でしか有意な量では発現されない。それらのGenBank参照番号はNP_057171.2およびNP_476509.1である。
「ネイティブ配列Wntタンパク質」という用語には、開始N末端メチオニン(Met)の有無およびネイティブシグナル配列の有無を問わず、いずれのネイティブタンパク質も含まれる。当技術分野で公知であるネイティブ配列のヒトおよびマウスのWntポリペプチドは、プロセシングされていない形態では多様性(特に、保存性の低いアミノ末端およびいくつかの内部部位での)を反映して長さが約348〜約389アミノ酸であり、21個の保存的なシステインを含み、かつ分泌型タンパク質の特徴を有する。Wntポリペプチドの分子量は約38〜42kDである。
「変異体」ポリペプチドとは、ネイティブ配列ポリペプチドに対して100%未満の配列同一性を有する、生物活性のあるポリペプチドのことを意味する。そのような変異体には、1つまたは複数のアミノ酸残基がネイティブ配列のNもしくはC末端に、またはネイティブ配列の内部に付加されたポリペプチド;約1〜40個のアミノ酸残基が欠失し、かつ任意で1つまたは複数のアミノ酸残基によって置換されたもの;および、結果として生じる生成物が非天然アミノ酸を有するようにアミノ酸残基が共有結合的に修飾された上記のポリペプチドの誘導体が含まれる。通常、生物活性のあるWnt変異体は、ネイティブ配列Wntポリペプチドに対して少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有すると考えられる。
「キメラ」Wntポリペプチドとは、異種ポリペプチドと融合または結合したWntポリペプチドまたはその一部分(例えば、1つまたは複数のドメイン)を含むポリペプチドのことである。キメラWntポリペプチドは一般に、ネイティブ配列Wntポリペプチドと共通の少なくとも1つの生物学的特性を共有する。キメラポリペプチドの例には、Wntポリペプチドの一部分を免疫グロブリン配列と組み合わせたイムノアドヘシン、および、「タグポリペプチド」と融合したWntポリペプチドまたはその一部分を含むエピトープタグ付加ポリペプチドが含まれる。タグポリペプチドは、抗体がそれに対して作製されるようなエピトープを与えるのに十分な残基を有するが、Wntポリペプチドの生物活性を妨げない程度には十分に短い。適したタグポリペプチドは一般に、少なくとも6個のアミノ酸残基、通常は約6〜60個のアミノ酸残基を有する。
ネイティブ配列Wntポリペプチドの「機能的誘導体」とは、ネイティブ配列Wntポリペプチドと共通の質的な生物学的特性を有する化合物のことである。「機能的誘導体」には、ネイティブ配列の断片、ならびにネイティブ配列Wntポリペプチドおよびその断片の誘導体が、それらが対応するネイティブ配列Wntポリペプチドと共通の生物活性を有するという条件の下で、非限定的に含まれる。「誘導体」という用語は、Wntポリペプチドのアミノ酸配列変異体およびその共有結合的修飾物の両方を範囲に含む。
生物活性のあるWnt
本発明の方法は、動物、例えば哺乳動物に対してインビボで投与された場合に活性のあるWnt組成物を提供する。組成物中のWntタンパク質の比活性は、例えば骨再生の加速、幹細胞増殖の上方制御などのようなインビボ投与後の機能的アッセイにおいて活性レベルを決定すること、例えば免疫染色、ELISA、クーマシーまたは銀で染色したゲル上での定量などのような非機能的アッセイにおいて存在するWntタンパク質の量を定量すること、およびインビボの生物活性のあるWntとWnt全体との比を決定することによって決定しうる。
脂質構造物
本発明の方法で用いているように、脂質構造物は、インビボ投与後のwntタンパク質の活性を維持する上で重要であることが見いだされている。wntタンパク質はこれらの構造物の水相中に封入されるのではなく脂質膜の中に組み込まれており、図5に示されているように、膜の外膜中に挿入することもできる。そのような構造物は、タンパク質を例えばリポソーム中に存在する形で製剤化する従来の方法からは予想されない。
適した脂質には、脂肪酸、中性脂肪、例えばトリアシルグリセロール、脂肪酸エステルおよび石鹸など、長鎖(脂肪)アルコールおよび蝋状物質、スフィンゴイドおよび他の長鎖塩基、糖脂質、スフィンゴ脂質、カロテン、ポリプレノール、ステロールなど、ならびにテルペンおよびイソプレノイドが含まれる。例えば、ジアセチレンリン脂質などの分子にも用途がある。
含まれるものには、疎水性部分および親水性部分を有していて正味が正電荷であり、それ自体で自然発生的に水中で二重層ベシクルまたはミセルを形成することのできる、脂質、合成脂質および脂質類似体を含むカチオン性分子がある。この用語はまた、リン脂質との組み合わせで脂質ミセルまたは二重層中に安定的に組み入れられて、その疎水性部分がミセルまたは二重層膜の内部の疎水性領域と接触し、その極性頭部部分が膜の外側の極性表面の方を向く、任意の両親媒性分子も含む。
「カチオン性両親媒性分子」という用語は、例えば、第四級アンモニウム塩部分を含む、生理的pHで正に荷電している、とりわけ恒常的に正に荷電している分子を範囲に含むことを意図している。カチオン性両親媒性分子は典型的には、親水性極性頭部および親油性脂肪鎖を含む。同様に、カチオン性極性頭部を有するコレステロール誘導体も有用なことがある。例えば、Farhood et al. (1992) Biochim. Biophys. Acta 1111:239-246;Vigneron et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 93:9682-9686を参照。
関心対象のカチオン性両親媒性分子には、例えば、イミダゾリニウム誘導体(WO 95/14380)、グアニジン誘導体(WO 95/14381)、ホスファチジルコリン誘導体(WO 95/35301)およびピペラジン誘導体(WO 95/14651)が含まれる。本発明において用いうるカチオン性脂質の例には、DOTIM(BODAIとも呼ばれる)(Solodin et al., (1995) Biochem. 34:13537-13544)、DDAB(Rose et al., (1991) BioTechniques 10(4):520-525)、DOTMA(米国特許第5,550,289号)、DOTAP(Eibl and Wooley (1979) Biophys. Chem. 10:261-271)、DMRIE(Felgner et al., (1994) J. Biol. Chem. 269(4):2550-2561)、EDMPC(Avanti Polar Lipids, Alabaster, Alabamaより販売)、DCChol(Gau and Huang (1991) Biochem. Biophys. Res. Comm. 179:280-285)、DOGS(Behr et al., (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:6982-6986)、MBOP(MeBOPとも呼ばれる)(WO 95/14651)、およびWO 97/00241に記載されたものが含まれる。
活性のために必要ではないものの、いくつかの態様において、脂質構造物は標的指向性基(targeting group)、例えば、親水性頭部と共有結合的または非共有結合的に結合した標的指向性部分を含んでもよい。標的指向性部分と結合させるために有用な頭部には、例えば、ビオチン、アミン、シアノ、カルボン酸、イソチオシアネート、チオール、ジスルフィド、α-ハロカルボニル化合物、α,β-不飽和カルボニル化合物、アルキルヒドラジンなどが含まれる。
標的指向性部分を両親媒性分子と連結させるために利用しうる化学基には、当技術分野で公知であるように、カルバミン酸;アミド(アミン+カルボン酸);エステル(アルコール+カルボン酸)、チオエーテル(ハロアルカン+スルフヒドリル;マレイミド+スルフヒドリル)、シッフ塩基(アミン+アルデヒド)、尿素(アミン+イソシアン酸)、チオ尿素(アミン+イソチオシアネート)、スルホンアミド(アミン+スルホニルクロリド)、ジスルフィド;ヒドラゾン、脂質なども含まれる。
例えば、標的指向性分子は、DAGPE、PEG-PDAアミン、DOTAPといった市販の脂質をイソシアネートに変換し、その後にトリエチレングリコールジアミンスペーサーで処理して、標的指向性部分のパラ-イソチオシアノフェニルグリコシドによる処理によって所望の標的指向性糖脂質を生成する、アミン末端を有するチオカルバミン酸脂質を生成させることによって形成することができる。この合成は、ナノ粒子中に組み込まれる両親媒性分子と、細胞表面受容体に結合するリガンドとの間を隔てさせる水溶性の柔軟なリンカー分子をもたらし、これにより、リガンドが細胞表面上のタンパク質受容体に容易に到達することが可能になる。
標的指向性部分とは、本明細書で用いる場合、特定の標的分子と特異的に結合して上記のような結合複合体を形成することのできるすべての分子のことを指す。したがって、リガンドおよびその対応する標的分子は特異的結合対を構成する。
「特異的結合」という用語は、共有結合的な相互作用もしくは非共有結合的な相互作用、または共有結合的な相互作用と非共有結合的な相互作用との組み合わせによって媒介されうる、酵素/基質、受容体/アゴニスト、抗体/抗原およびレクチン/糖質のように対になった種の間での結合のことを指す。2つの種の相互作用が非共有結合的複合体を生じさせる場合には、起こる結合は典型的には静電性であるか、水素結合性であるか、または親油性相互作用の結果である。したがって、「特異的結合」は対になった種の間で起こり、その2つの間には抗体/抗原または酵素/基質相互作用の特徴を有する結合複合体を生じさせる相互作用が存在する。特に、特異的結合は、対の1つのメンバーと、結合メンバーの対応するメンバーが属する化合物のファミリー内の特定の種(その他の種とではない)との結合によって特徴づけられる。したがって、例えば、抗体は単一のエピトープと結合し、タンパク質のファミリー内の他のエピトープとは結合しない。
標的指向性部分の例には、所望の標的細胞と特異的に結合する、抗体、リンホカイン、サイトカイン、受容体タンパク質、例えばCD4およびCD8など、可溶化された受容体タンパク質、例えば可溶性CD4など、ホルモン、増殖因子、ペプチド模倣物、合成リガンドなど、ならびに塩基対相補性を通じて対応する核酸と結合する核酸が非限定的に含まれる。特に関心対象である標的指向性部分には、ペプチド模倣物、ペプチド、抗体および抗体断片(例えばFab'断片)が含まれる。例えば、循環血プールと接触する肝細胞に認められるアログリソプロテイン(aloglysoprotein)(ASG)を標的とさせるために、β-D-ラクトースが表面に結び付けられている。
細胞標的は、関心対象の特定の部位、例えば神経細胞、肝細胞、骨髄細胞、腎細胞、膵細胞、筋細胞などを標的とさせるための組織特異的な細胞表面分子を含む。例えば、造血幹細胞を標的とするナノ粒子は、CD34、c-kitのリガンドなどに対して特異的な標的指向性部分を含みうる。リンパ球細胞を標的とするナノ粒子は、種々の周知であって十分に特徴づけられているマーカー、例えばB220、Thy-1などに対して特異的な標的指向性部分を含みうる。
送達媒体としてのリポソームまたはミセルの使用は、関心対象の1つの方法である。リポソームは、リン脂質二重層で構成される膜を有する球状ベシクルである。リポソームは、混在性脂質鎖を有する天然由来のリン脂質(卵ホスファチジルエタノールアミンのように)で、またはDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)のような純粋な表面活性剤成分で構成させることができる。リポソームは多くの場合、封入された水溶液の入ったコアを含む;一方、水性材料を全く含まない脂質球体はミセルと呼ばれる。wntタンパク質は脂質相に存在し、封入された水相中には存在しないため、本発明の組成物に対してはミセルをリポソームと互換的に用いることができる。脂質は、ホスファチジルコリンなどのカチオン性脂質、またはコレステロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールなどの中性脂質を含む、公知のリポソーム形成性またはミセル形成性脂質の任意の有用な組み合わせであってよい。
別の態様において、ベシクル形成性脂質は、血清中などでの構造物の安定性を制御するために、指定された度合いの流動性または剛性を達成するように選択される。より剛性の高い脂質二重層または液晶二重層を有するリポソームは、比較的剛性の高い脂質、例えば、相転移温度が比較的高い、例えば最高60℃であるような脂質を組み入れることによって達成することができる。剛性の高い、すなわち飽和した脂質は、脂質二重層におけるより大きな膜剛性に寄与する。コレステロールのような他の脂質成分も、脂質二重層構造物における膜剛性に寄与することが知られている。脂質流動性は、比較的流動性の高い脂質、典型的には、液体から液晶への相転移温度が比較的低い、例えば室温またはそれ未満である脂質相を有するものを組み入れることによって達成される。
リポソームは、Szoka, F., Jr., et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:467 (1980)に詳述されたものなどの種々の手法によって調製することができる。典型的には、リポソームは多重層ベシクル(MLV)であり、これは単純な脂質フィルム水和法によって形成させることができる。この手順では、適した有機溶媒中に溶解させた上記に詳述した種類のリポソーム形成性脂質の混合物を容器内で蒸発させて薄膜を形成させ、続いてそれを水性媒質で覆う。脂質フィルムを水和させて、典型的にはサイズが約0.1〜10ミクロンであるMLVを形成させる。
本発明のリポソーム、ミセルなどは、選択されたサイズ範囲内、典型的には約0.01〜0.5ミクロンの間、より好ましくは0.03〜0.40ミクロンの間にある、実質的に均一なサイズを有しうる。REVおよびMLVに関する1つの有効なサイズ選別方法は、リポソームの水性懸濁液を、0.03〜0.2ミクロンの範囲内にある、典型的には0.05、0.08、0.1、または0.2ミクロンの選択された均一な孔径を有する一連のポリカーボネート膜を通して押し出す段階を伴う。膜の孔径は、その膜を通しての押し出しによって生成されるリポソームの最大サイズに概ね対応し、特に調製物が同じ膜を通して2回またはそれ以上の回数押し出される場合にはそうである。ホモジナイゼーション法も、リポソームを100nmまたはそれ未満のサイズに小型化するのに有用である。
種々の温度感受性リポソームも当技術分野で公知である。例えば、40℃〜45℃の温度範囲で薬物を急速に放出する、アニオン性界面活性剤およびリン脂質からなるリポソーム、ならびに、40℃〜44℃の温度範囲で薬物を有効に放出する、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)および1,2-ジアシルグリセロリン脂質からなるリポソームが報告されている(以下を参照:日本公開特許公報(平)06-227966号)。Kono et al.は、25℃〜30℃の温度範囲で薬物を放出し始める温度感受性リポソーム、すなわち、N-イソプロピルアクリルアミド/オクタデシルアクリレートのコポリマーでコーティングされた、レシチンまたはDPPCを含有するリポソームを教示している(以下を参照:K. Kono et al., J. Controlled Release, 30:69-75(1994))。
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される担体も含む。さまざまな薬学的に許容される担体を、本発明の組成物中に用いることができる。一般には、生理食塩水が薬学的に許容される担体として用いられると考えられる。他の適した担体には、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどといった安定性を高めるための糖タンパク質を含む、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどが含まれる。これらの組成物は、従来の周知の滅菌手法によって滅菌することができる。その結果得られた水溶液は、使用のためにパッケージ化してもよく、または無菌条件下で濾過して凍結乾燥させ、凍結乾燥調製物を投与前に無菌水溶液と混ぜ合わせてもよい。組成物は、必要に応じて、生理的条件に近づけるための薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含んでもよい。
担体における脂質構造物の濃度はさまざまであってよい。一般に、濃度は約0.1〜1000mg/ml、通常は約1〜500mg/ml、約5〜100mg/mlであると考えられる。当業者は、異なる脂質成分による処置、または特定の罹患体に対する処置を最適化するために、これらの濃度を変更することができる。
組成物は、wntタンパク質のインビボ治療有効量を含むと考えられ、1つまたは複数のwntタンパク質の混合物(cocktail)を含んでもよい。
治療方法
本方法は、予防および治療の両方の目的に有用である。したがって、本明細書で用いる場合、「処置する」という用語は、疾患の予防および既存の容態の処置の両方を指して用いられる。罹患体の臨床症状を安定化または改善するための、進行中の疾患の処置は、本発明によって提供される特に重要な利点である。そのような処置は、罹患組織における機能喪失の前に行われることが望ましい;その結果として、本発明によって提供される予防的治療上の利点も重要である。治療効果の証拠は、疾患の重症度の何らかの軽減であってよい。治療効果は臨床的アウトカムの点で測定してもよく、または免疫学的もしくは生化学的な検査によって決定することもできる。処置の対象となる罹患体は、哺乳動物、例えばヒトを含む霊長動物であってもよく、特に治療法の評価のためには、ウサギ、ラット、マウスなどの実験動物であってもよく、ウマ、イヌ、ネコ、家畜などであってもよい。
治療用製剤の投与量は、容態の性質、投与の頻度、投与の様式、宿主からの作用物質の排出などに応じて大きく異なると考えられる。初回量を多くし、続いてこれよりも少ない維持量にすることが可能である。投薬は週1回または2週間に1回という低い頻度で行ってもよく、またはより少ない用量に細分して、毎日、週2回もしくは有効量レベルを維持するために必要な他の様式で投与してもよい。
本発明のいくつかの態様において、wnt薬学的製剤の投与は局所投与によって行われる。局所投与とは、本明細書で用いる場合、局部外用(topical)投与のことも指しうるが、より多くの場合は、処置部位における体内への注射または他の導入のことを指す。そのような投与の例には、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射などが含まれる。本発明の脂質構造物は一般に、全身投与した場合は有効性が比較的低く、最も高い活性はそれが最初に導入された部位またはその周辺で認められることが見いだされている。
本発明のいくつかの態様において、製剤は、短期的に、例えば単回の投与で投与されるか、または活性の迅速で大きな増大を得るために、一連の投与が、例えば1日、2日、3日もしくはそれ以上の日数にわたって、最大で1週もしくは2週にわたって行われる。投与される用量のサイズは医師によって決定されなければならず、これは疾患の性質および重大性、罹患体の年齢および健康状態、ならびに罹患体の薬物それ自体に対する認容性といった数多くの要因に依存すると考えられる。
例えば、数多くの容態が組織を再生する能力のなさによって特徴づけられており、この場合には幹細胞活性の上方制御が望ましい。
幹細胞という用語は、本明細書で用いる場合、自己再生する能力および分化した子孫を生じさせる能力の両方を有する哺乳動物細胞のことを指す(Morrison et al. (1997) Cell 88:287-298を参照)。一般に、幹細胞はまた、以下の特性の1つまたは複数も有する:非同調的または対称的な複製を行う能力、すなわち分裂後の2つの娘細胞が異なる表現型をとりうる;高度な自己再生能力;有糸分裂的に静止した形態で存在する能力;およびそれらが存在するすべての組織のクローン再生の能力、例えば造血幹細胞がすべての造血系譜を再構成する能力。「前駆細胞」は、それらが典型的には高度の自己再生能力を有しておらず、多くの場合は、それらの由来となった組織中の系譜サブセットのみを、例えば、造血環境ではリンパ系または赤血球系の系譜のみを再生しうるという点で、幹細胞とは異なる。
幹細胞は、抗体によって同定される特異的エピトープを伴うマーカーの存在、および特異的抗体の結合の欠如によって同定されるようなある種のマーカーの欠如の両方によって特徴づけることができる。また、幹細胞を、インビトロおよびインビボの両方での機能的アッセイ、特に、複数の分化した子孫を生じさせる幹細胞の能力に関するアッセイによって同定することもできる。
関心対象の幹細胞には、筋サテライト細胞;造血幹細胞およびそれに由来する前駆細胞(米国特許第5,061,620号);神経幹細胞(Morrison et al. (1999) Cell 96:737-749);胚性幹細胞;間葉幹細胞;中胚葉幹細胞;肝幹細胞などが含まれる。
関心対象の細胞は典型的には哺乳動物性であり、ここでこの用語は、例えば、ヒト、家畜(domestic and farm animal)ならびに動物園用、競技用および愛玩用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ、マウス、ラット、ウサギなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物のことを指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
多くの臨床的状況では、例えば高齢者、損傷後、骨形成不全症などにおいて、骨形成細胞の活性の低下のために骨治癒条件はあまり理想的ではない。骨髄ストロマの内部には、複数の細胞系譜を生じさせることのできる非造血細胞のサブセットが存在する。間葉幹細胞(MSC)と命名されているこれらの細胞は、骨、軟骨、脂肪、腱、筋肉および骨髄ストロマを含む、間葉組織の系譜に分化する能力を有する。
高齢個体は種々の骨障害および軟骨障害に罹患する。そのような組織は通常、間葉幹細胞によって再生される。そのような容態に含まれるものに変形性関節症がある。変形性関節症は、「消耗(wear-and-tear)」の発現として身体の関節に起こる。このため、運動選手または過体重の個体は、軟骨の損失または障害が原因で、大関節(膝、肩、股関節)に変形性関節症を発症する。骨ばった関節表面を覆うこの硬くて滑らかなクッションは、体内の構造タンパク質であるコラーゲンで主として構成され、これは関節に支えおよび柔軟性を与える編み目を形成する。軟骨が障害を来して損失すると、骨表面が異常な変化を起こす。炎症はある程度みられるものの、他の型の関節炎で認められるほど強くはない。にもかかわらず、変形性関節症は、高齢者においてかなり高度の疼痛および能力障害の原因となる。
間葉組織の修復が低下しているか、または間葉組織に対する大きな損傷がある、高齢者の容態では、組織再生物質の投与によって幹細胞活性を高めることができる。
骨修復を加速させる方法では、本発明の薬学的wnt組成物を、骨に対する障害に罹患している、例えば損傷後の罹患体に対して投与する。製剤は好ましくは、骨再生を必要とする障害の後に、損傷の部位またはその付近に対して投与される。wnt製剤は好ましくは、損傷の部位に存在する骨前駆細胞の数を増加させるのに有効な用量で、短期間にわたって投与される。いくつかの態様において、wntは損傷から約2日のうちに、通常は損傷から約1日のうちに投与され、かつ最長でも約2週間、最長でも約1週間、最長でも約5日間、最長でも約3日間などにわたって与えられる。
代替的な方法においては、骨に対する障害に罹患している罹患体に対して、骨髄細胞を含む組成物、例えば、間葉幹細胞、骨芽細胞へと分化しうる骨髄細胞などを含む組成物を与える。骨髄細胞は、再生を強化するのに十分な用量で1つまたは複数のwntタンパク質を含む薬学的組成物によりエクスビボで処置することができる;または細胞組成物を、本発明のwnt製剤とともに罹患体に対して投与してもよい。
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の成分の1つまたは複数が充填された薬学的パックまたはキットも提供する。そのような容器には、薬剤または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制している政府当局によって定められた形式での注意書きであって、ヒトへの投与を目的とする製造、使用または販売についての当局による承認を反映している注意書きを附属させることができる。
以下の実施例は、本発明の実施および使用の方式に関する完全な開示および説明を当業者に提供するために記載されており、本発明者らが発明とみなしている内容の範囲を限定することを意図したものではなく、以下の実験が実施したすべてまたは唯一の実験であることを表すことを意図したものでもない。使用する数字(例えば、量、温度など)に関して正確であるように努力は払っているが、ある程度の実験的誤差および偏差は許容されるべきである。別に指示する場合を除き、各部分は総重量に占める部分重量であり、分子量は平均分子量であり、温度は℃で示され、圧力は大気圧またはその近傍圧である。
本明細書中に引用したすべての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれるように特定的および個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明を、本発明の好ましい実施様式を含むことが本発明者によって見いだされた、または提唱された特定の態様に関して説明してきた。当業者には、本開示に鑑みて、本発明の意図した範囲を逸脱することなく、例示した特定の態様にさまざまな改変および変更を加えうることが理解されるであると考えられる。生物学的、機能的な等価性の考察により、生物学的作用に種類または量の点で影響を及ぼすことなく、タンパク質構造に変更を加えることができる。そのような改変はすべて、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
実験例
実施例1
Wnt3aリポソームを介した骨再生の強化
いくつかの成体組織は再生する能力を有しており、これらの中でも骨は最も顕著なものの一つである。骨は、損傷後に再形成するという永続的で生涯にわたる能力を有しており、絶え間ない骨再生は骨量および骨密度を維持するための必須条件である。骨再生の擾乱はたとえわずかであっても、骨粗鬆症および骨格修復遅延などの容態によって例示されるように重大な帰結をもたらす。今回、本発明者らの目標は、成体骨形成におけるWntの役割を明らかにし、続いて、この情報を、新規試薬も加味した上で、骨再生を刺激するための治療戦略に利用することであった。TOPgalレポーターマウスを用いて、本発明者らは、骨格に対する障害が、特に損傷の部位でのWntシグナル伝達の誘因になることを見いだした。本発明者らは、Wnt阻害が骨前駆細胞の分化を妨げるか否かを明らかにするために骨格損傷モデルを用いたところ、その結果、損傷により誘導される骨再生は84%低下した。Wnt経路の恒常的活性化は高い骨量をもたらしたが、この同じ点突然変異は、骨前駆細胞が増殖状態に維持されたために骨再生の遅延を引き起こした。骨再生を強化するための治療戦略において、本発明者らは、損傷部位でのWntシグナル伝達を一過性に活性化した。これは、Wnt3aタンパク質を、創傷環境でそのタンパク質の生物活性を保持させるリポソームベシクル内にパッケージングすることによって達成した。本発明者らは、Wnt3aリポソームの単回注射が、対照と比較して骨再生を350%に増加させることを見いだした。これらのデータは、骨再生が望まれる臨床的状態を処置するための有用なアプローチを示している。
今回、本発明者らは、Wntタンパク質によって調節される再生経路を調べた。Wntリガンドは、Frizzledによってコードされる細胞表面受容体および低密度リポタンパク質受容体(LRP)関連タンパク質と結合する、分泌型分子である。ひとたび結合すると、このリガンドは細胞内イベントのカスケードを開始させ、最終的にはβ-カテニンおよびDNA結合タンパク質TCFの核での活性を通じて標的遺伝子の転写を導く。
Wntは、骨形成プログラムと関連のある非常にさまざまな細胞上の決定に関与している。例えば、Wntは、間葉前駆細胞の骨格形成運命への拘束に影響を及ぼすSox9の発現レベルを調節する。Wntは細胞の骨芽細胞または軟骨細胞への分化に影響を及ぼす。また、Wntシグナル伝達が骨量を調節することの証拠もある。例えば、ヒトWnt共受容体LRP5における突然変異は、ファン-ブッヘム病、大理石骨病I型および骨内性骨増殖症または常染色体優性骨硬化症を含むいくつかの高骨量症候群、ならびに低骨量疾患、骨粗鬆症-偽膠腫と関連がある(Cheung et al. (2006) Bone 39, 470-6;Kwee et al. (2005) J Bone Miner Res 20, 1254-60;Henriksen et al. (2005) Am J Pathol 167, 1341-8;Van Wesenbeeck et al. (2003) Am J Hum Genet 72, 763-71)。Wnt阻害因子DKK1の産生の増加は、骨吸収亢進をその鑑別上の特徴の1つとする疾患である多発性骨髄腫と関連がある。Wntシグナル伝達と骨疾患との間のこの関連性にもかかわらず、この経路の擾乱がいかにして異常な骨リモデリングを結果的にもたらすかを同定することは困難であった。
生涯続く骨リモデリングの過程とは異なり、損傷により誘導される骨再生は、圧縮された時間枠の中で厳密な場所で起こる。しかし、細胞的および分子的な機構は、骨リモデリングと骨再生との間で同一である。ある動物が骨格障害を被った場合、それが取り組むべき基本的な課題は、損傷を検出し、続いてその欠陥をできるだけ早く治癒させることである。これは損傷部位への骨格前駆細胞の動員によって達成される;ひとたび十分な量の前駆細胞の集団が生成されると、細胞はその増殖を減速させ、鉱化するマトリックスを分泌する骨芽細胞へと分化する。続いて破骨細胞がそのマトリックスをリモデリングし、そうすることで骨の元の形態を回復させる。マウスのモデルでは、最初の損傷から新生骨形成までのこの過程全体に、1週間未満しか要しない(Colnot et al. (2005) Clin Orthop Relat Res, 69-78)。
本発明者らは、骨再生におけるWntシグナル伝達の機能に関する理解を得るために、骨格損傷モデルの空間的時間的パラメーターを利用した。今回、本発明者らは、骨格に対する障害が、Wntシグナル伝達を特に損傷部位で上方制御し、この内因性Wntシグナルに対する骨髄由来細胞の応答を促すことを報告する。このデータは、Wntシグナル伝達が阻害されると、損傷部位内の骨髄由来細胞が骨芽細胞に分化しなくなり、骨再生が停止することを示している。Wntシグナル伝達が恒常的に活性化されると、損傷部位内の細胞は増殖亢進を示すが、この場合も骨芽細胞には分化せず、骨再生は一時的に遅れる。これらの観察所見に基づき、本発明者らは、初期Wnt依存性増殖効果を利用しながらも永続的なWnt活性化の有害な帰結は回避する、骨再生を加速させるための治療戦略を立てた。本発明者らの戦略は、1つまたは複数のリン脂質層の中に囲い込まれた水性コアからなる球状ナノベシクルであるリポソームの脂質構造物中へのWnt3aタンパク質の挿入を伴った(Banerjee (2001) J Biomater Appl 16, 3-21による総説)。本発明者らは、Wnt3aリポソームが骨髄由来細胞の骨芽細胞への急速な分化を誘発し、骨再生の劇的な強化を結果的にもたらすことを見いだした。
以上を要約すれば、これらのデータは、骨再生の過程におけるWntの機能に関する我々の理解を広げるものである。これらはまた、Wnt経路が、疾患または損傷の後に骨形成を刺激することを目指す治療的介入の有力な標的であることも示している。加えて、本発明者らのデータは、リポソームパッケージングがWntにとって実行可能な送達媒体であることも示しており、このことは非常にさまざまな臨床的用途におけるそれらの使用を提唱するものである。
結果
損傷部位でのWntシグナル伝達を上方制御する、骨格に対する障害
骨再生の過程におけるWntの関与に関してより良い理解を得るために、本発明者らは、Wnt経路の構成要素に関するインサイチューハイブリダイゼーションを基にしたスクリーニングに着手した。本発明者らはまず、無傷の成体骨格における遺伝子発現について検討し、この経路のほとんどの構成要素が成長板および骨膜において低レベルで検出されることを見いだした(例えば、図1a〜c)。例えば、骨細胞はWnt 3a、5a、5b、11、Frizzled 4(Fzd4)およびDickkopf2(Dkk2)を発現したが、一方、骨内膜および骨髄内の細胞はWnt 2b、3a、5a、11、Dkk2およびWnt阻害因子を発現した(図1a〜c、表1にまとめられている)。これらのデータは、成体骨量の維持および種々の骨疾患におけるWntシグナル伝達の役割と合致した。本発明者らはまた、TOPgalおよびBATgalトランスジェニックマウスの無傷骨格についても検討した。これらのマウスは、Tcf/Lef結合部位の多数のコピーの制御下にあるβ-ガラクトシダーゼレポーターを保有している;このため、Xgal染色の空間的時間的パターンはWnt応答性の反映である。成体成長板では、肥大軟骨細胞が列を構成して海綿骨骨芽細胞と隣接しており、それが血管と交錯している(図1d)。TOPgal成長板における肥大軟骨細胞および海綿骨骨芽細胞はいずれもXgal陽性であった(図1e)。骨皮質に組み込まれた骨細胞もXgalに関して染色され(図1f)、骨髄内の細胞のわずかなパーセンテージについても同様であった(図1g)。これらのデータから、Wntシグナル伝達が成体骨格において機能を有することが指し示された。
(表1)無傷骨格および損傷骨格におけるWntシグナル伝達のまとめ
Figure 2010520286
本発明者らの次の目的は、Wntシグナル伝達と骨リモデリングとの関係を明らかにすることであった。本発明者らは、脛骨の一方の皮質を貫通させて開けた1.0mmの孔からなる単純な骨格欠損を作製すると、骨リモデリングを構成する細胞イベントのすべてが生じることを見いだした(図1h)。この種の骨格欠損は、損傷部位への骨格前駆細胞の動員、ならびにそれに続くそれらの骨芽細胞への直接的分化および鉱化マトリックスの沈着によって治癒する。続いて破骨細胞が、脛骨の形状が回復するまで骨性マトリックスをリモデリングさせる。骨再生は専ら膜性骨化によって起こり、新生骨は術後第6日までに損傷部位に容易に検出されるようになる(図1i)。本発明者らは、TOPgalおよびBATgalマウスでこれらの脛骨欠損を作製し、続いてWntレポーター活性の証拠に関して創傷部位を検査した。
初期損傷カルスは主としてフィブリン塊で構成され、その非晶質特性のために組織切片化および組織学的評価は複雑になる。このため、本発明者らは、BATgalマウスから24時間および48時間での損傷カルスのRNAを単離し、β-ガラクトシダーゼレポーターの発現に関してRT-PCRを行った。骨格損傷から24時間以内にβ-ガラクトシダーゼ発現はベースラインを超えて劇的に増加し、48時間での損傷カルスでも高いままであった(図1j)。損傷72時間後までには、カルスがより組織化され、組織切片で評価することが可能になった。本発明者らは、レポーター活性が損傷部位内の骨髄由来細胞に限局していることを見いだした(図1k)。本発明者らは、どのWntがBATgalおよびTOPgalマウスにおいてレポーター活性を誘発する原因であるかを明らかにするためにインサイチューハイブリダイゼーションを用い、複数のWntリガンド、補因子、アンタゴニストおよび受容体が損傷部位全体、近傍の骨膜内および骨内膜表面に沿って発現されていることを見いだした(図1l〜nおよび表1)。
インビボでのWntシグナル伝達の阻害
本発明者らのデータにより、Wntシグナル伝達が骨格に対する障害から24時間以内に上方制御されること;およびWnt応答性細胞が損傷部位に局在することから、Wnt経路の構成要素が骨再生において役割を果たすのに適切な時間および場所で発現されることが示された(図1)。これらのデータを考慮した上で、本発明者らは、Wntシグナル伝達における擾乱が骨格修復プログラムに影響を及ぼすか否かを検証した。
インビボでのWntシグナル伝達を阻害するために、本発明者らは可溶性WntアンタゴニストDkk1を発現するアデノウイルス(Ad-Dkk1)をTOPgalマウスに注射した。この手法は、成体動物においてWntシグナル伝達の条件的な可逆性阻害を生じさせる。マウス免疫グロブリン遺伝子のFc部分を発現するアデノウイルス(Ad-Fc)を対照として利用した。感染直後に骨格欠損を作製し、2日後に、本発明者らは高レベルのDkk1およびFc断片が産生されていることを確かめた(各条件につきn=6;図2a、bの挿入図)。
術後第6日に、Ad-FcおよびAd-Dkk1で処置したTOPgalマウスから損傷した脛骨を採取した。ホールマウントXgal染色により、Ad-Dkk1処置が骨格全体および損傷部位におけるWntシグナル伝達を有効に低下させたことが示された(図2a、b)。本発明者らは組織学的検査(図2c、d)および組織形態計測的な測定(図2e〜g)を用いて骨再生の量を評価し、Ad-Dkk1処置が骨再生を84%低下させたことを見いだした(対照Ad-Fc、n=7;Ad-Dkk1、n=10)。
Ad-Dkk1は修復過程に間接的に影響を及ぼす可能性のある有害な全身作用を有するため、本発明者らは、Ad-Dkk1の局所送達が骨再生を阻止するか否かも検証した。これらの場合には、Ad-Dkk1またはAd-Fcを脛骨周囲の筋系内に注射し、48時間の時点で骨格欠損をこの場所に作製した。組織形態計測的な測定により、局所Ad-Dkk1が、全身性Ad-Dkk1注射と同じく有効に骨再生を阻止したことが確かめられた(図6)。
本発明者らの次の一連の実験は、Dkk-1を介した骨再生停止の基礎をなす機序を明らかにすることを目的とした。以前の研究で、本発明者らは、血管新生の途絶が骨再生を遅延させうることを示している。しかし、本発明者らが損傷部位への内皮細胞浸潤を評価したところ、血小板内皮細胞接着分子(PECAM)免疫染色の程度および分布のいずれに関しても差は検出されなかった(Ad-Fc、n=4;Ad-Dkk1、n=4;図3a、b)。したがって、Ad-Dkk1処置は、損傷により誘導される血管新生を抑えないように思われた。本発明者らはまた、Wnt阻害がプログラム細胞死の増加を招く可能性があるという推論から、Ad-Dkk1損傷部位を評価するためにTUNEL染色も用いた。この場合も、Ad-Dkk1およびAd-Fc脛骨は同等なTUNEL染色を示した(Ad-Fc、n=4;Ad-Dkk1、n=4;図3c、d)。したがって、Ad-Dkk1が損傷部位での細胞死を増加させることによって骨再生を妨げた可能性は低い。
本発明者らは、Ad-Dkk1およびAd-Fc損傷部位内の細胞を骨芽細胞分化の証拠について検査した。術後第4日の時点で、Ad-Fc損傷部位内の細胞は骨形成性遺伝子runx2およびコラーゲンI型を強く発現し、一方、Ad-Dkk1損傷部位では、runx2発現は本質的に検出不能であった(図3e、f)。本発明者らはまた、Ad-Fc損傷部位が強いアルカリホスファターゼ活性を示す一方で、骨芽細胞分化を特徴づけるこの同じ活性がAd-Dkk1損傷部位にはほとんど存在しないことも見いだした(図3g、h)。以上を総合すると、これらのデータは、Dkk1を介したWnt阻害が骨芽細胞分化を阻止し、その結果として、成体骨再生のプログラムを停止させたことを示している。
骨格前駆細胞の増殖を増加させるが、骨再生は遅延させる、恒常的なWnt活性化
Wntシグナル伝達の阻害が骨再生に有害であることが示されたことを受けて、本発明者らは次に、Wntシグナル伝達の活性化が骨治癒のために有益であるか否かを探った。Wnt共受容体Lrp5における機能獲得型突然変異は高骨量表現型と関連があり、このため、本発明者らはこれと同じ突然変異を有するトランスジェニックマウス(すなわち、Lrp5-G171Vマウス)における骨再生を評価した。
骨格欠損を作製し、試料を術後第6日に分析した。本発明者らが見いだした最初でしかも最も明白な表現型は、Lrp5損傷部位における骨再生の欠如であった(野生型、n=6 Lrp5-G171V、n=6;図4a、b)。本発明者らは増殖細胞核抗原(PCNA)の免疫組織化学検出によって細胞増殖を評価し、Lrp5-G171Vマウスでは骨膜、損傷部位および骨髄全体で免疫染色が一貫して増加していることを見いだした(図4c〜f)。加えて、骨形成促進遺伝子sox9、runx2およびオステオカルシンの発現レベルはすべて、野生型同腹仔に比してLrp5損傷部位で低下していた(図4g〜l)。これらのデータにより、恒常的に活性なWntシグナル伝達は、骨格損傷部位における細胞増殖を促進するとともに細胞分化を妨げることが示された。本発明者らがLrp5-G171Vマウスを術後第14日に検査したところ、骨再生の量はLrp5-G171Vと野生型との間で同等であった。このように、Wnt経路の恒常的な活性化は、細胞の骨芽細胞への分化を一時的に阻害することにより、骨再生の遅延を引き起こした。
骨再生を強化するWnt3aのインビボ送達
これらの実験を始めた時の本発明者らの目的は、成体骨形成およびリモデリングにおけるWntシグナル伝達の役割についての洞察を得て、続いてその情報を用いて、骨再生を強化するための処置戦略を開発することであった。本発明者らは、Lrp5-G171VマウスにおけるWnt依存性増殖効果を本発明者らに有利なように利用しうることを認識しており、このため、骨再生に対する外因性Wntタンパク質の効果を検討するための一連の実験に着手した。本発明者らが直面した最も困難な技術的障害は、Wntタンパク質のために適切な送達媒体を考案することであった。本発明者らの最初の試みにおいて、本発明者らは、損傷部位に直接注射されたWnt3aタンパク質は、PBS注射と比較して骨再生に何ら影響を及ぼさないことを見いだした。本発明者らはまた、Wnt3aタンパク質をフィブリン糊に組み入れ、それを損傷部位に移植してもみた。タンパク質の直接注射の場合と同じく、本発明者らは骨再生の開始、速度または程度のいずれに関しても差を検出することができなかった。
本発明者らは、Wntがインビボ活性のために必要なパルミチン酸残基を含むこと、ならびにWntおよび他の脂質修飾型タンパク質が細胞間をシャトル移動する時でさえも膜に付随したままでありうることを知っていた。本発明者らは、脂質付加されたWntをそれらの標的細胞に輸送するための内因性機構に脂質ベシクルまたはラフトとの会合がかかわっているならば、この脂質封入をうまく利用する手法はインビボで特に有用な可能性があると推論した。
リポソームは、1つまたは複数のリン脂質層の中に囲い込まれた水性コアからなる球状ナノベシクルである。リポソームは、化学療法薬の薬物動態および組織分布を改善するための取り組みにおいて開発された。本発明者らは、これらの特性をWnt3aのインビボ送達のために利用することに決め、そのため、Wnt3aがリポソーム中にパッケージングされた場合にもその生物活性を保っている否かを検証した。
本発明者らはWnt3aを含むリポソームベシクルを調製し、それらをインビトロアッセイで検査した。SuperTOPflash細胞は、Tcf/Lef結合部位を含むプロモーターの制御下にあるルシフェラーゼを発現する。本発明者らは、SuperTOPflash細胞を、Wnt3aタンパク質(陽性対照)、Wnt3aリポソームまたはPBSリポソーム(陰性対照)に曝露させた。16〜18時間のインキュベーションの後に、ルシフェラーゼレポーター活性を評価した。本発明者らは、Wnt3aタンパク質およびWnt3aリポソームはいずれもレポーター活性を濃度依存的な様式で刺激することを見いだした(各条件につきn=7;図5a)。PBSリポソームは、PBSのみの場合と同等にベースライン活性のみを誘発した(図5a)。これらの結果により、Wnt3aがリポソーム調製およびパッケージング後に生物活性を保っていることが指し示された。
本発明者らの次の目的は、Wnt3aリポソームのインビボ活性を検査することであった。本発明者らはTOPgalマウスに骨格損傷を作製し、術後第3日の時点でWnt3aリポソームまたは対照(PBS)リポソームを損傷部位に送達した。72時間後に、本発明者らは組織を検査した。対照リポソームで処置した損傷は、非処置(正常)骨格損傷(例えば、図1i)と同様に、比較的少量の骨再生を呈した(n=6;図5b)。対照的に、Wnt3aリポソームの単回注射を受けた損傷部位は成熟骨梁によって完全に満たされていた(n=7;図5c)。リポソームを術後第3日に注射し、組織学的評価を術後第6日に行ったことから、この劇的な効果は72時間で達成された。組織形態計測的分析により、Wnt3aリポソームで処置した損傷部位は対照損傷部位の350%の多さの骨を有したことが示された(Wnt3aで処置した試料における骨を表すピクセル平均数=78146;PBS試料=20615;図5d、e)。
本発明者らは、この骨形成促進効果の基盤を調べた。Wnt3aは内皮細胞増殖および血管新生を誘導しうるため、本発明者らは損傷部位をPECAM免疫染色の証拠に関して検討した。本発明者らは、Wnt3aで処置した部位におけるPECAM陽性細胞数の量的増加を見いだした(対照の図5fとgを比較されたい)。本発明者らは、Wnt3a処置が、ビスホスホネート系薬剤の作用と同様に、破骨細胞活性を阻止することによって骨形成を増加させたのではないかと考えた。本発明者らはTRAP活性を利用して損傷部位内の破骨細胞を同定し、Wnt3aで処置した部位と対照部位で染色の量が同等であることを見いだした(図5h、i)。したがって、Wnt3aリポソームによって誘発される骨再生の強化は、破骨細胞活性の抑制には起因しないと思われた。
本発明者らは、Xgal染色およびインサイチューハイブリダイゼーションを用いて損傷部位を検討することにより、Wnt3aの作用機序に関してさらに洞察を得た。本発明者らは、リポソームWnt3aが、損傷部位の骨髄腔におけるβ-ガラクトシダーゼレポーター活性の劇的かつ持続的な上方制御を誘発することを見いだした(対照の図5jとkを比較されたい)。PCNA免疫染色も増加しており(図5l、m)、このことはリポソームWnt3aが骨髄細胞のサブセットにおける増殖を刺激したことを示唆する。さらに、本発明者らは、損傷部位におけるrunx2、sox9およびオステオカルシンの強い広範な発現も認めたが(図5ns)、このことはWnt3a曝露の結果としてより多くの骨髄細胞が骨形成の運命へと動員されたことを指し示している。
考察
骨格に対する障害は体内での修復応答を誘発し、本発明者らのデータは、その修復応答に関与する1つの経路はWntによって媒介されることを指し示している(図1および表1)。骨格障害に応答して、損傷部位の前駆細胞は増殖し始める。損傷により誘導されるこの増殖に関与する経路のうち少なくとも1つはWntシグナル伝達によって媒介されるという本発明者らのデータ(図4)。ひとたび十分な量の集団が生成されると、骨格前駆細胞は骨芽細胞に分化し始める。本発明者らは、増殖と分化との間のこの推移がいかにして起こったかについての手がかりを得てはいないが、本発明者らのデータは、Wntシグナル伝達が損傷部位における骨芽細胞分化の決定的なメディエーターであることを示している(図3、4)。本発明者らはさらに、新規なリポソームパッケージング法を介して送達された外因性Wnt3aが骨再生の劇的な強化を導くことも示している。これは少なくとも2つの機序を通じて達成される。第1に、Wnt3aリポソームは、骨形成性遺伝子およびアルカリホスファターゼ活性の初期誘導によって示されるように、創傷部位での骨芽細胞分化のプログラムを早める(図5)。第2に、Wnt3aで処置した損傷部位はより多くのPECAM陽性内皮細胞を有していた(図5)。
本発明者らのデータは、リポソームWnt3aの単回注射が非常に短い時間枠の中で骨再生を強化したことを示している。この応答の迅速さは、Wnt応答性細胞が薬物送達の時点で損傷部位に既に存在したことを示唆する。本発明者らは、Wnt3aリポソームの送達のタイミングを骨格障害後の内因性Wnt経路の活性化と一致させたが(図1)、これは本発明者らが、Wntシグナル伝達を担う分子機構がその時点までには完全に機能を有すると推論したためである。
本発明者らが知る限り、本研究は、精製Wntタンパク質の初めてのインビボ使用である。Wnt3aを損傷部位に送達しようとした本発明者らの最初の試みは失敗に終わった;単独での精製タンパク質もフィブリン糊と組み合わせたタンパク質も、創傷環境における識別可能な効果を何ら誘発しなかった。これとは著しく対照的に、Wnt3aリポソームは骨再生の強化に関して非常に有効であった。Wntリポソームの有効性には数多くの要因が寄与しうる。リポソームパッケージングはWnt3aを安定化して損傷部位に濃縮させることができる。Wnt3aはそのインビボ活性のために必須であるパルミチン酸残基によって修飾されている。パルミチン酸部分はそれ自体で著しい脂質親和性を有しており、Wnt3aリポソームの製造時にはパルミチン酸がリポソーム膜と会合することが考えられる。その結果、Wnt3aはリポソームに有効に係留され、そのために損傷部位からのその排除を防ぐことができると考えられる。
リポソームは典型的にはインビボ送達用の分子を封入しているが、本発明者らのデータは、Wntタンパク質が封入されていないことを示している。より正確に言えば、タンパク質はリポソーム外膜上にその活性立体構造で提示されている(図5a)。そうすることにより、リポソームは、Wntを含む多くの脂質修飾型タンパク質が細胞間を通常輸送されるやり方を真似ることができる。例えば、脂質修飾型Wntはそれらが細胞間でシャトル輸送される時でも膜に付随したままであり、ショウジョウバエWgがさまざまな直径の細胞に小さな小胞性構造物として輸送されることを示唆する証拠もある。この小胞輸送機序を裏づけるデータは依然として状況的なものに留まっているが、それらは魅力のある可能性に向けてのヒントとなる:脂質付加Wntおよび他のタンパク質をそれらの標的細胞に輸送するための内因性機構に脂質ベシクルまたはラフトとの会合がかかわっているならば、骨格に対する疾患または障害の処置のためにこのアプローチをうまく利用できる可能性がある。
これらのデータは、Wnt経路が骨格に対する治療的介入の有用な標的であること;およびリポソームがWntを含む脂質修飾型タンパク質の理想的な送達媒体であることを示している。
方法
Wntレポーターマウス
BATgalおよびTOPgalトランスジェニックマウスを、Wnt応答性のインビボレポーターとして用いた。BATgalレポーターマウスは、7つのTCF結合モチーフおよびアフリカツメガエルsiamoisプロモーターを含む導入遺伝子を保有している。TOPgalレポーターカセットは、β-ガラクトシダーゼ遺伝子の発現を推進させる最小c-Fosプロモーター上流に、TCFモチーフCCTTTGATCの3つのコピーを含む。本発明者らは、損傷部位におけるWnt応答細胞を同定するために、この両方の系統を用いた。
骨格損傷の作製
本発明者らは、脛骨の一方の皮質を貫通させて開けた1.0mmの孔からなる単純な経皮質的欠損を作製することにより、骨折治癒を構成するすべての段階が再現されることを見いだした。この欠損における治癒応答は安定化された骨折と同等であり、閉鎖骨折および開放骨折の他のモデルを上回る数多くの利点を有する;第1に、骨格損傷の範囲を限定することによって動物の病的状態がかなり軽減される。第2に、修復カルスがはるかに小さく、空間的により組織化されており、このために組織形態計測的な分析が容易になる。第3に、この骨格組織再生モデルでは、周囲組織に対する外傷および感染症が最小限に抑えられる。手順はすべて、Stanford動物研究委員会(Stanford Committee on Animal Research)による承認を得た。
骨格的に成熟した(10〜12週齡、雄)マウスをすべての試験に用いた。麻酔および鎮痛の後に、右肢を剃毛し、皮膚を清拭した。内側骨幹近位部に切開を入れ、脛骨の内側表面が露出するまで前脛骨筋を分けた;骨膜は保たせた。1.0mmのドリル用ビットを用いて、一方の皮質を貫通する孔を開けた。この領域を洗浄し、非吸収性縫合糸を用いて皮膚を閉鎖した。
麻酔からの回復期間中は、体温を一定に維持するためにすべてのマウスを加熱灯の下に置いた。食餌および水に到達する能力、外科処置部位、活動性、体重、外観ならびに行動をモニターした。治癒における炎症相、硬カルス相、およびリモデリング相に相当する複数の時点でマウスを殺処理した。
分子アッセイおよび細胞アッセイ
RNアーゼ非含有条件下で、脛骨カルス組織を収集し、皮膚および筋外膜を除去して、組織を1×PBS、4℃中で洗浄した後に、4%パラホルムアルデヒド中で固定した。組織の脱灰処理を19% EDTA中で10〜14日間行い、続いてパラフィン包埋用に調製した。パラフィン包埋は本発明者らの標準的なプロトコールに従って行い、8μm厚の切片を作製した。
インサイチューハイブリダイゼーション
該当するジゴキシン標識mRNAアンチセンスプローブを、wnt3a、dkk2、wnt2b、runx2、コラーゲンI型、コラーゲンII型、sox9およびオステオカルシン用のcDNAテンプレートから調製した。切片の脱蝋処理を行い、プロテイナーゼKで処理した上で、リボプローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液中でインキュベートした。プローブはおよそ25μg/mlの濃度で添加した。食塩水クエン酸ナトリウム溶液でのストリンジェンシー洗浄を52℃で行い、さらに1% Tween20を含むマレイン酸緩衝液で洗浄した。続いてスライドを抗ジゴキシゲニン抗体(Roche)で処理した。色の検出のためには、スライドをニトロブルー塩化テトラゾリウムおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(Roche)中でインキュベートした。呈色させた後に、スライドを水性マウント用媒質とともにカバーグラスで覆った。
免疫組織化学
一般に、組織切片は脱蝋処理を行った後にH2O2/PBS中に浸漬し、PBSで洗浄して、フィシン(Zymed)中でインキュベートし、0.1Mグリシンで処理して、さらに洗浄した上で、卵白アルブミン(Worthington)および1%全長ロバIgG(Jackson Immunoresearch)中でブロックした。適切な一次抗体を添加し、4℃で一晩インキュベートした後に、PBSで洗浄した。試料をペルオキシダーゼ結合二次抗体(Jackson Immunoresearch)とともに1時間インキュベートし、DAB基質キット(Vector Laboratories)を用いて呈色反応を起こさせた。いくつかの一般的に用いられる抗体には、増殖細胞核抗原(PCNA)および血小板内皮細胞接着分子1(PECAM-1)が含まれる。DNA鎖切断のターミナルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)染色のためには、切片をプロテイナーゼK緩衝液(20μg/mL、10mM Tris pH 7.5中)中で、続いてTUNEL反応混合物(インサイチュー細胞死検出キット、Roche)中でインキュベートした。スライドを蛍光顕微鏡で観察した。酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)染色のためには、組織切片を脱蝋処理し、続いてTRAP染色キット(Sigma)で処理した。
細胞増殖の定量
PCNA陽性細胞の定量は、NIH Image Jソフトウエアを用いて行った。Ad-FcまたはAd-Dkk1処置の各条件につき動物4匹を用い、各条件につき10個ずつのランダムなPCNA染色組織切片を評価した。
組織学的検査
ペンタクロムおよびアニリンブルー染色を記載の通りに行った。スライドは、一連のエタノールおよびキシレンによる脱水後にPermountにマウントした。
β-ガラクトシダーゼの検出
Wntシグナル伝達に応答する細胞はβ-ガラクトシダーゼを発現し、これをXgal染色によって検出することができる。Xgal染色のためには、組織を0.2%グルタルアルデヒドにより15分間かけて固定し、Xgalにより37℃で一晩かけて染色した。アデノウイルス処置試料におけるXgal陽性細胞を検出するためには、ホールマウントXgal染色組織をパラフィンブロックに加工処理して切片化した。リポソーム処置試料に関しては、組織をOCT中に包埋し、その後に凍結切片を作製した。凍結切片に対するXgal染色はホールマウントと同様の様式で行った。
組織形態計測的な分析
欠損領域における新生骨および軟骨を評価するために、脛骨を術後第4日または第6日に採取した。脛骨をパラフィン中に包埋し、長軸方向に切片化して、アニリンブルーで染色した。各条件(すなわち、Ad-Fc、Ad-Dkk1、PBSリポソームまたはWnt3aリポソーム;詳細については本文参照)につき、合計4〜7匹の動物を用いた。1.0mmの円形の単皮質欠損が、それぞれ8μm厚であるおよそ40個の組織切片にわたって示された。それらの40個の切片のうち、6〜8個の組織切片を組織形態計測的な測定のために用いた。各切片をアニリンブルーを用いて鉱化組織に関して染色した上で、Leicaデジタル画像化システム(対物レンズ5倍)を用いて写真撮影した。これらのデジタル画像をAdobe Photoshop CS2に取り込んだ。関心対象の領域は106個のピクセルを含んでおり、アニリンブルー染色されたピクセルの数を、単盲検下の検査員がmagic wandツール(公差設定;60、ヒストグラムピクセル設定;キャッシュレベル1)を用いて求めた。
Wntシグナル伝達のアデノウイルスを介した阻害
アデノウイルス構築物はすべて、以前の通りに作製した35。可溶性WntアンタゴニストDkk1およびマウスIgG2α Fc断片を発現するアデノウイルス(Ad-Fc)を、T175組織培養フラスコ(7.5×106pfu)内で293細胞にMOI 1で感染させた。2日後に細胞を採取し、溶解させて、遠心分離により沈降させた。上清を凍結/解凍サイクルによって加工処理し、細胞片を遠心分離によって除去した。この上清を35,000rpm、20時間のCsCl勾配遠心分離に供し、アデノウイルスバンドを収集した。スクロース透析の後に、精製アデノウイルスをアリコートに分けて-80℃で保存した。Wnt阻害はAd-Dkk1および対照Ad-Fcの尾静脈または局所への皮下注射によって行い、損傷をその直後(尾静脈注射の場合)または48時間後(局所注射の場合)に作製した。
Wnt3aタンパク質のリポソームパッケージング
Wnt3a-リポソームは、1、2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC);1-ミリストイル-2-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(MPPC);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-65ポリエチレングリコール)2000](DSPE-PEG2000;Avanti Polar Lipids)を90:10:4の比で用いて作製した。1μgの精製Wnt3aタンパク質をリポソーム中にパッケージングした。単層ベシクルは、2枚の100nmポリカーボネート膜を重ねたものを通してWntタンパク質/リポソーム溶液を40回押し出すことによって作り出した。サイズ排除(size extrusion)の後に、28,000rpm、4℃、30分間の超遠心分離によってWnt3aリポソームを沈降させた。Wnt3aリポソームペレットを、10%ウシ胎仔血清(Hyclone)を加えた500μlのDMEM中に再懸濁させた。対照PBSリポソームも同一の条件を用いて作製した。Wnt3aリポソーム調製物の30μlアリコートを、29.5ゲージ針を用いて各部位に注射した。
ウエスタンブロットおよびRT-PCR
術後24時間の時点でカルスを野生型(CD1)およびBATgalマウスから採取し、全RNAを抽出して、1μgのRNAを、β-ガラクトシダーゼプライマーセットを用いるRT-PCRに供した。ウエスタンブロット手順は以前の記載の通りに行った。

Claims (17)

  1. 以下の段階を含む、動物に対するwntポリペプチドの治療的送達のための方法:
    脂質部分を含むwntポリペプチドの有効量を該動物に投与する段階であって、wntタンパク質が脂質構造物の非水相中に挿入されている、段階。
  2. 脂質構造物がリポソームである、請求項1記載の方法。
  3. 脂質構造物がミセルである、請求項1記載の方法。
  4. wntポリペプチドが哺乳動物ポリペプチドである、請求項1記載の方法。
  5. wntポリペプチドが局所的に投与される、請求項1記載の方法。
  6. wntポリペプチドが注射によって投与される、請求項5記載の方法。
  7. 脂質部分を含むwntポリペプチドの有効量であって、wntタンパク質が脂質構造物の非水相中に挿入されている、wntポリペプチドの有効量と、
    薬学的に許容される添加剤と
    を含む、薬学的製剤。
  8. 脂質構造物がリポソームである、請求項7記載の薬学的製剤。
  9. 脂質構造物がミセルである、請求項7記載の薬学的製剤。
  10. wntポリペプチドが哺乳動物ポリペプチドである、請求項7記載の薬学的製剤。
  11. 以下の段階を含む、哺乳動物における骨修復を加速させる方法:
    脂質部分を含むwntポリペプチドの有効量を哺乳動物に投与する段階であって、wntタンパク質が脂質構造物の非水相中に挿入されている、段階。
  12. wntポリペプチドが、哺乳動物における骨損傷の部位に注射される、請求項11記載の方法。
  13. wntポリペプチドがwnt 3Aである、請求項12記載の方法。
  14. wntポリペプチドが損傷から2日のうちに投与される、請求項12記載の方法。
  15. wntポリペプチドが最長2週間にわたって投与される、請求項14記載の方法。
  16. 哺乳動物に外因性骨髄細胞が与えられる、請求項11記載の方法。
  17. 骨髄細胞がエクスビボでwntポリペプチドの有効量により処置される、請求項16記載の方法。
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