JP2010517992A - 子宮内膜症の治療用の薬剤 - Google Patents

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Abstract

子宮内膜症の治療又は予防のための薬剤の製造におけるドパミンアゴニストの使用。

Description

本発明は、子宮内膜症の治療用の薬剤に関する。
子宮内膜症は、良性で慢性的な婦人科の疾病である。子宮内膜症は、子宮内膜組織の存在として定義することができ、これは子宮腔外の腺上皮細胞及び間質細胞の両方を含む。これは良性の婦人科疾患であって、女性の患者の亜母集団において、侵攻性疾患へと進展し得る。子宮内膜症は、月経困難症、性交疼痛、骨盤痛及び低受精率などの種々の苦痛を伴う症状に関連する。
血管新生(新しい血管が洗在する管から形成される方法)が、子宮内膜症の発達に重要である場合があり、血管透過因子/血管内皮細胞増殖因子(VP/VEGF)が、血管の発生及び生理的かつ病理的血管新生に役割を有することが知られている。子宮内膜症を治療するための抗血管新生治療の潜在的有効性は、免疫機能が低下したヌードマウスに移植されたヒト子宮内膜組織を用いて検討されている。子宮内膜移移植片を移植した後、4つの異なる抗血管新生剤を3週間投与した(Nap et al., 2004)。4つの全ての阻害剤は、確立した移植片の寸法を減少することができ、新たな血管の形成を停止した。しかしながら、公知の抗血管新生剤は、極めて毒性が高く、ヒトの医療環境で導入することは、むしろ困難である。
予想外に、子宮内膜症を治療するためにドパミンアゴニストを含む組成物を使用し得ることが発見された。
したがって、本発明は、子宮内膜症の治療及び/又は予防用の医薬の製造におけるドパミンアゴニストの使用を提供する。また、本発明は、子宮内膜症の治療及び/又は予防におけるドパミンアゴニストの使用を提供する。
図1はコントロール群、並びに低用量(0.05mg/kg/日)及び高用量(0.1mg/kg/日)群のカベルゴリンに関する、後述の動物実験の後の活性な損傷部位の百分率を示す。図1aは設けられた3つの群における腺/間質の比率を示す[低用量及び高用量のカベルゴリン(“Cb2”)の両方の群は、コントロールと比較して、より多くの間質及び少ない腺を有する(p<0.05)]。 図2はコントロール並びに低用量及び高用量の群における血管(mm)を示す。 図3はコントロール並びに低用量及び高用量の群における「成熟」及び「新規に形成された」血管の百分率を示す。 図4はコントロール並びに低用量及び高用量の群に関する増殖指数を示す。 図5はコントロール並びに低用量及び高用量の群に関するVEGF、VEGFR−2(KDR)、Notch−4、Ang1及びWnt−1の相対発現を示す。 図6aは設けられた3つの群(コントロール並びに低用量及び高用量の群)における動物の子宮内膜移植片におけるドパミン受容体2(Dp−r2)及びVEGFの存在を示す。 図6bは子宮内膜症の損傷部位(左カラム)及び子宮内膜(右カラム)におけるVEGF、VEGFR−2(KDR)及びD2Rの相対発現を示す。
本明細書において、用語「子宮内膜症の治療」とは、子宮腔の外側に存在する子宮内膜組織の量を減少(又は除去)(例えば、子宮内膜の損傷部位の減少又は除去)させる治療、及び/又は子宮内膜症に関連する1つ以上の症状を減少及び/又は改善させる治療(例えば、月経困難症の症状を改善及び/又は減少させる治療;性交疼痛の症状を改善及び/又は減少させる治療;及び/又は骨盤の疼痛を改善及び/又は減少させる治療)を含む。用語「子宮内膜症の治療」とは、子宮腔の外部に存在する子宮内膜組織の数を減少させる治療及び/又はその寸法を減少(例えば、子宮内膜の損傷部位の数及び/又は寸法を減少)させる治療を含む。用語「子宮内膜症の治療」とは、子宮内膜腺の数を減少させる治療を含む。用語「子宮内膜症の治療」とは、活性な子宮内膜の損傷部位の割合が有意に減少すること;子宮内膜の損傷部位における萎縮性又は分解性組織の細胞性及び組織性の顕在性特徴の有意な欠損;及び子宮内膜の損傷部位における新しい血管の数の有意な減少の1つ以上の結果をもたらす治療を含む。用語「子宮内膜症の治療」とは、卵巣、子宮円蓋、子宮仙骨靭帯、子宮後面、子宮広靭帯、残りの骨盤腹膜、腸管、尿路(例えば、膀胱、及び/又は尿管を含む)の1つ以上における子宮内膜の損傷部位の数及び/又は寸法を減少させる治療を含む。
用語「子宮内膜症」とは、例えば、腹膜の子宮内膜症、卵巣の子宮内膜症及び深部子宮内膜症を含む。
本明細書において、用語「ドパミンアゴニスト」は、例えば、ドパミン作用を擬似するドパミン受容体と相互作用(例えば、特異的に結合)する薬物などの、ドパミンに類似する作用を行う化合物を意味する。これは、もっぱらドパミン作動性物質である化合物、つまり、異なる作用機序を介してドパミンレベルを増加させる化合物を含まない。用語「ドパミンアゴニスト」は、米国特許第6359130号明細書に開示の架橋されたインデノピロロカルバゾールを含まない。
ドパミンアゴニストは、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の治療又は予防に有用であることが先に見出されている(国際公開第2006/117608号パンフレット)。これは、毛細血管が血管透過性を有意に増加させる状態である。ドパミンアゴニストは、この作用を逆行させ得ることが見出されている。しかしながら、子宮内膜症の状態及び子宮内膜症を治療するための抗血管新生の潜在的有効性は、ここに開示されていない。
本発明の範囲内のドパミンアゴニストとしては、限定されないが、アマンタジン、ブロモクリプチン、カベルゴリン、キナゴリド、リスリド、ペルゴリド、ロピニオール及びプラミペキソールが挙げられる。本発明に使用するのに好適なドパミンアゴニストは、カベルゴリンである。本発明に使用するのに好適なドパミンアゴニストは、キナゴリドである。本発明によれば、いわゆる「部分ドパミンアゴニスト」(例えば、テルゴリド)を使用してもよい。しかしながら、ドパミンアゴニストの使用が好ましい。
好ましくは、単一のドパミンアゴニストを使用する。
ドパミンアゴニストは、1日当たり25μgから80mg/日、好ましくは1日当たり50μgから5mg/日、さらに好ましくは1日当たり300μgから1mg/日の投与量(例えば、ヒトの患者に対する経口投与量)で投与することができる;当業者に明らかであるように、この範囲内での適当な投与量は、使用されるべきドパミンアゴニストに依存する。
好適な態様においては、ドパミンアゴニストは、カベルゴリンである。好ましくは、カベルゴリンは、0.01から12.5mg/週、好ましくは0.1から10mg/週、さらに好ましくは0.5から5mg/週、さらに好ましくは3.5から4mg/週の投与量(例えば、ヒトの患者に対する経口投与量)で投与される。ドパミンアゴニストは、例えば、毎日1回の服用(例えば、0.1mg/日から5mg/日、0.2mg/日から1mg/日、例えば、0.5mg/日)で投与されてもよい;又は毎日の服用は、24時間以上の異なる時間に投与されるべき2つ以上の準投与に分けられてもよい。ドパミンアゴニスト(カベルゴリン)は、上記のレベルで毎日1回の服用で投与されてもよく;又は同様の投与量として、1週間当たり、1週間に2回、又は2日に1回で投与されてもよい。1つの型において、ドパミンアゴニスト(例えば、カベルゴリン)は、1週間当たり3.5から12.5mg(例えば、1週間当たり4mg、1週間当たり7mg、1週間当たり10mg)の総投与量で投与されてもよい。
別の態様においては、ドパミンアゴニストは、キナゴリドである。好ましくは、キナゴリドは、25から1000μg/日、好ましくは25から500μg/日、さらに好ましくは25から300μg/日の投与量(例えば、ヒトの患者に対する経口投与量)で投与される。ドパミンアゴニストは、例えば、毎日1回の服用で投与されてもよい;又は毎日の服用は、24時間以上の異なる時間に投与されるべき2つ以上の準投与に分けられてもよい。ドパミンアゴニスト(キナゴリド)は、上記のレベルで毎日1回の服用で投与されてもよく;又は同様の投与量として、例えば、1週間当たり、1週間に2回、又は2日に1回で投与されてもよい。
別の態様においては、ドパミンアゴニストは、ブロモクリプチンである。好ましくは、ブロモクリプチンは、10から80μg/日、好ましくは10から40mg/日の投与量(例えば、ヒトの患者に対する経口投与量)で投与される。
1つの態様においては、ドパミンアゴニストは、子宮内膜症の唯一の薬物療法として使用される。言い換えれば、ドパミンアゴニストは、他の薬物療法又は外科的処置をすることなく[例えば、ドナゾールを用いることなく]使用されてもよい。
さらに別の態様においては、ドパミンアゴニストの投与は、子宮内膜症用の他の薬物療法又は外科的処置[例えば、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)及び/またはホルモン処置(ダナゾール、OCs、酢酸メドロキシプロゲステロン、他のプロゲスチン類、GnRHアゴニスト及びアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤など)]と組み合わされてもよい。さらに別の態様においては、外科的処置又は薬物療法は、ドパミンアゴニストを用いた治療の前、治療の間、又は治療の後に用いられてもよい。これらの態様は、下記の実施例に若干詳細に記載されている。
また、必要とする患者へのドパミンアゴニストの投与は、例えば、活性な子宮内膜症の損傷部位の割合を有意に減少させ;子宮内膜症の損傷部位における萎縮性又は変性組織の細胞学的及び組織的顕在性特徴を有意に欠損させ、子宮内膜症の損傷部位における新規の血管の数を有意に減少させる、などの実質的に臨床的利点を提供し得ることも見いだされた。
ドパミンアゴニストに基づく薬剤は、高い耐性用量という利点をも有しており、これは安全かつ十分に文書化された臨床的使用記録を有する。
さらに、ドパミンアゴニスト(例えば、カベルゴリン)は、長期間(例えば、1〜3週間(例えば、1〜21日間、1〜14日)、1日〜3ヶ月、1日〜6ヶ月、1日〜12ヶ月、1日〜2年、又はそれ以上)投与されてもよく、薬効を有し且つ副作用のリスクが小さいことが見出されている。投与は、毎日又は週毎の投与など連続的であってもよく、又は1回以上、たとえば、数週間(1〜3週間)又は数ヶ月(1〜3ヶ月)で中断されてもよい。ドパミンアゴニストは、疼痛(又はその他の症状)が継続する限り、投与されてもよい。
ドパミンアゴニスト(例えば、カベルゴリン、キナゴリド)は、妊婦に投与されてもよい。
子宮内膜症の治療又は予防は、子宮内膜腺の数の減少を伴っていてもよい。
本発明の一例において、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、子宮内膜症の発達において一因子として、ドパミンアゴニストによって標的化されてもよい。異性体であるVEGF121及びVEGF165は、血管新生の過程に主として関連するようである(Watkins,R.H.ら著、Am.J.Physiol.,1999年、276巻、p.858−67)。VEGFに対する2つの特異的な内皮細胞膜受容体、すなわちVEGF受容体1(VEGFR−1;Flt−1)及びVEGFR−2(Flk−1/KDR)が同定されている。VEGFR−2は、血管新生及び脈管形成の制御に主として関連するようである。
VEGFR−2(KDR)は、このように、子宮内膜症の発達の一因子として、ドパミンアゴニストによって標的化されてもよい。Notch−4は、子宮内膜症の発達の一因子として、ドパミンアゴニストによって標的化されてもよい。VEGF、VEGFR−2及びNotch−4は、子宮内膜症の発達の一因子として、ドパミンアゴニストによって標的化されてもよい。ドパミンアゴニストのその他の作用機序は、本発明の範囲内である。
ドパミンアゴニストは、医薬的に許容な製剤として投与される。製剤は、医薬的に許容な塩、緩衝剤、保存剤、賦形剤を任意に有していてもよい、本発明による医薬的に許容な組成物で投与されてもよい。活性剤としてドパミンアゴニストを含む製剤は、本技術分野において周知であり、市販されている。例えば、カベルゴリンは、登録商標Cabaser and Sogilen/Dostinexとして利用可能である。斯かる市販のドパミンアゴニスト製剤を子宮内膜症の治療に使用することは、本発明にしたがうものである。
選択される投与の形態は、治療される状態の進行度及び重篤度並びに必要とされる用量に依存する。許容できない副作用なく所望の治療効果を生じる種々の投与形態は、本発明の実施に関連する。斯かる投与形態は、経口、経直腸、局所、経皮、舌下、筋内、非経口、静脈、腔内、膣内、及び手術中に使用されるべき接着マトリックスを含んでもよい。本発明ににおいて使用するための組成物を処方する種々の手法は、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、American Pharmaceutical Association,USA and Pharmaceutical Press UK(2000)及びChurchill LivingstonのPharmaceutics−The Science of Dosage Form Design(1988)に記載されている。
好適な態様においては、投与は、経口である。経口投与に適した組成物は、カプセル剤、カプセル(cachets)、錠剤、シロップ、エリキシル又はトローチ剤を含む。
本発明の別の観点においては、必要とする患者にドパミンアゴニストを投与するステップを有する、子宮内膜症の治療又は予防の方法を提供する。
好ましくは、ドパミンアゴニストは、活性成分として1つ以上のドパミンアゴニストを含む製剤の形態で投与される。
ドパミンアゴニストは、25μg/日から80mg/日、好ましくは50μg/日から5mg/日、より好ましくは300μg/日から1mg/日の投与量(例えば、ヒトの患者に対する経口投与)で、投与されてもよく、この範囲内の適切な用量は、当業者に明らかなように、使用されるべきドパミンアゴニストに依存する。
好適な態様においては、ドパミンアゴニストは、カベルゴリンである。好ましくは、カベルゴリンは、0.01mg/週から12.5mg/週、好ましくは0.1mg/週から10mg/週、より好ましくは0.5mg/週から5mg/週、より好ましくは3.5mg/週から4mg/週の投与量(例えば、ヒトの患者に対する経口投与)で、投与される。ドパミンアゴニストは、例えば、毎日1回の服用(例えば、0.1mg/日から5mg/日、好ましくは0.2mg/日から1mg/日、例えば、0.5mg/日)で投与されてもよい;又は毎日の服用は、24時間以上の異なる時間に投与されるべき2つ以上の準投与に分けられてもよい。ドパミンアゴニスト(カベルゴリン)は、上記のレベルで毎日1回の服用で投与されてもよく;又は同様の投与量として、1週間当たり、1週間に2回、又は2日に1回で投与されてもよい。この形態において、ドパミンアゴニスト(例えば、カベルゴリン)は、3.5から12.5mg/週(例えば、4mg/週、7mg/週、10mg/週)の総投与量で投与されてもよい。
別の態様においては、ドパミンアゴニストは、キナゴリドである。好ましくは、キナゴリドは、25から1000μg/日、好ましくは25から500μg/日、さらに好ましくは25から300μg/日の投与量(例えば、ヒトの患者に対する経口投与量)で投与される。ドパミンアゴニストは、例えば、毎日1回の服用で投与されてもよい;又は毎日の服用は、24時間以上の異なる時間に投与されるべき2つ以上の準投与に分けられてもよい。ドパミンアゴニスト(キナゴリド)は、上記のレベルで毎日1回の服用で投与されてもよく;又は同様の投与量として、例えば、1週間当たり、1週間に2回、又は2日に1回で投与されてもよい。
別の態様においては、ドパミンアゴニストは、ブロモクリプチンである。好ましくは、ブロモクリプチンは、10から80mg/日、好ましくは10から40mg/日の投与量(例えば、ヒトの患者に対する経口投与量)で投与される。
ドパミンアゴニストの投与は、子宮内膜症用の他の薬物療法又は外科的処置[例えば、NSAIDs、及び/又はホルモン処理(ダナゾール、OCs、酢酸メドロキシプロゲステロン、他のプロゲスチン類、GnRHアゴニスト及びアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤など)]と組み合わされてもよい。さらに別の態様においては、外科的処置又は薬物療法は、ドパミンアゴニストを用いた治療の前、治療の間、又は治療の後に用いられてもよい。
本願出願人が見出したように、ドパミンアゴニスト(例えば、カベルゴリン)は、長期間(例えば、1〜3週間(例えば、1〜21日間、1〜14日)、1日〜3ヶ月、1日〜6ヶ月、1日〜12ヶ月、1日〜2年、又はそれ以上)投与することができ、薬効を有し且つ副作用のリスクが小さい。投与は、毎日又は週毎の投与など連続的であってもよく、又は1回以上、たとえば、数週間(1〜3週間)又は数ヶ月(1〜3ヶ月)で中断されてもよい。ドパミンアゴニストは、疼痛(又はその他の症状)が継続する限り、投与されてもよい。
患者は、妊婦であってもよい。
子宮内膜症の治療又は予防は、子宮内膜腺の減少と関連していてもよい。
実施例及び添付の図面を参照して本発明をさらに説明する。
実施例1
ヒトの子宮内膜断片をヌードマウスに挿入することにより、子宮内膜症の実験動物モデルを開発した。メスのマウス(Hsd:Athimic Nude−nu、Harlan Iberica S.L.、バルセロナ、スペイン)を、層流のフィルター化されたフードにおいてオートクレーブしたケージ及び床に個々に収容した。動物の部屋は、12時間の光照射と12時間の暗状態とのサイクルで26℃で保持され、マウスに、オートクレーブした実験動物用の食事及び酸性水を自由に給餌した。全ての取り扱いは、層流のフィルター化されたフードで行った。ケタミン/メデトミジン(75μg/g ケタミン及び1μg/g メデトミジン)(Ketolar(登録商標)、Parke−Davis、エスパーニャ;Domtor(登録商標)、ファイザー、スペイン)の静注用の混合物を浸襲処置の前にマウスを麻酔するのに使用し、浸襲処置の後に麻酔効果を回復させるのに、滅菌器具を用いて、アチパメゾール(Antisedan(登録商標)、SmithKline Beecham、スペイン)1μg/gの静注用を使用した。
5週齢において、18mgの17βエストラジオール(Innovation Research of America、Sarasota、FL)を含有する滅菌60日放出カプセルを、各マウスの首の皮下に載置した。製造者の情報によると、カプセルは、発情期のマウスの生理的レベルの範囲内で、150〜250ピコモル/Lの血清濃度で持続的なホルモンの放出を提供する。このエストロゲンの安定な生理的レベルは、移植したヒトの子宮内膜の成長を惹起し、発情期の種々のステージに関連するマウス間の差を回避する。
エストロゲンペレットを挿入した後4日目において、卵採取したドナーからの新鮮なヒト子宮内膜を挿入するため、下腹部の正中線における腹腔に入り口を形成した。これらの断片を、腹腔に接着剤(Vetabond(登録商標)、3M Animal Care products、米国)で固定した。この手法は、子宮内膜症の女性に発生する逆行性月経の病的状態を模倣するものである。
移植の後3週間、各動物を3つの群に分割した。第1の群は、コントロール群、第2の群は、0.05mg/kg/日の経口投与量でカベルゴリンで処理した低投与量の群、第3の群は、0.1mg/kg/日の経口投与量でカベルゴリンで処理した高投与量の群とした。処置2週間後、動物を屠殺し、サンプリングされ分析される子宮内膜の損傷部位を下記の通り設定した。結果を図1、図1a、図2〜図6bに示す。
ドパミンアゴニストの抗血管新生効果は、血管内皮細胞及び血管平滑筋細胞(モノクローナルIgG2 α−SMA−FITCコンジュゲート体、Sigma、St Louis、米国)に存在するVon Willebrand因子(vWFモノクローナルIgG1、Dako社、デンマーク)に対する共焦点顕微鏡に用いられる抗体を用いた免疫蛍光法により、検討した。新たに形成されたものではない血管は、これらに対する成熟度を参照する平滑筋層により周囲を取り囲まれる。血管内皮細胞の同定は、vWFを使用して行われ、一方、成熟血管は、α−SMA正染色により、同定された。したがって、vWF+/αSMA−血管は、新たなもの又は未成熟なものと考えられ、一方、vWF+/αSMA+血管は、古いもの又は成熟した血管と分類した。
移植片の領域及び細胞密度を測定するために、形態計測的研究を行った。移植片の増殖活性を検討するため、Ki−67(モノクローナルIgG1、Dako社製、デンマーク)抗体を用いた免疫組織化学的検討を行った。光学顕微鏡(OM)、透過型電子顕微鏡(TEM)及び組織化学染色を用いて、組織病態及び細胞内超微形態的の変化を検出した。子宮内膜腺及び間質の存在を究明するため、並びに細胞内微形態的変化、移植片の領域及び細胞密度を検討するため、光学顕微鏡(OM)、透過型電子顕微鏡(TEM)及び形態計測を行った。
血管新生を惹起する3つの異なるマーカー(VEGF、VEGFR−2、Notch−4);存在する血管の増大化及び漏洩に対する耐性を惹起する抗血管新生因子であるアンジオポエチン−1(Ang−1);及びWnt−1の遺伝子発現プロファイルを分析するため、TaqManのリアルタイムPCR及び2−ΔΔCt法を用いた。TaqManのリアルタイムPCR及び2−ΔΔCt法を用いて、実験的移植片、ヒト腹膜の子宮内膜損傷部位及び子宮内膜におけるVEGFの存在及びドパミンタイプ2受容体(Dp−r2)の発現を調べた(図6a、図6b)。同様に、この方法を用いて、ヒト腹膜子宮内膜損傷部位及び子宮内膜におけるVEGFR−2発現の存在を調べた(図6b)。
GraphPad Instat3.0版(GraphPad Software、サンジエゴ、CA、米国)を用いて、統計学的分析を行った。この検討は、処置群及びコントロール群の間で分析された異なるマーカーにおける差異を検出するように設計した。分類別のデータは、数及び百分率として表現し、数値データは特に記す場合を除き、平均±平均の標準誤差(SEM)として、表現した。有意性は、p<0.05とした。統計学的分析に、一元配置分散分析を用いた。
毒性
カベルゴリンを投与した後に試験中に死亡したマウスはなかった。カベルゴリンは、マウスの全寿命を変化させることはないようである。これは、異なる処理群におけるマウスの体重が、有意に異ならなかったためである(データ不示)。
結果
図1は、コントロール群、カベルゴリンの低用量(0.05mg/kg/日)で処理した群及び高用量(0.1mg/kg/日)で処理した群についての上記の動物実験を行った後の活性損傷部位の百分率を示す。低用量(58.6±9.7%)及び高用量(60.4±8.4%)で処理した動物は、コントロール(89.6±5.7%)と比較して、活性損傷部位が有意に低下する(p=0.0169)。カベルゴリン(低用量及び高用量の両方の群)で処理した動物は、コントロール群と比較すると、活性損傷部位は、有意に低くなる。言い換えれば、カベルゴリンの処理により、このモデルにおける活性な子宮内膜の損傷部位の数は減少するようである。OM及びTEMの検討から、コントロール群において、典型的なヒトの子宮内膜の損傷部位で見出され得るように、高い細胞性間質と、完全な再生及び構造の組織学的態様とが示された。しかしながら、処置された損傷部位(高用量及び低用量のカベルゴリン)では、細胞性及び組織性の消失した弛緩した間質が観察され、これは、萎縮性又は変性組織の特徴である。腺領域を取り巻くヒトの子宮内膜の間質は、筋接合性のマウス組織から簡単に分化された。
これらの組織学的結果は、形態学的分析により、確認した(図1a)。細胞密度については、各群の間で統計学的差異はなかったが、図1aから明らかなように、腺/間質の割合については、各群のなかで有意な差異があった(p=0.0093);低用量及び高用量の両方のカベルゴリンの用量では、コントロールと比較して、多くの間質と少ない腺とを有した(p<0.05)。このことが示すように、カベルゴリンの処理は、子宮内膜腺の量の減少又は減弱に関連する。
図2は、コントロール、並びに低用量及び高用量の群について、「成熟」した血管及び「新規に形成された」血管に分割された、血管(mm)を示す。コントロール群は、新規に形成された血管の割合が多く(有意な血管新生を示す)、一方、低用量及び高用量の群は、成熟した血管の割合が有意に高く、このことは、血管新生が有意に減少していることを示唆するものである。また、このことは、組織学的にも示された(結果示さず)。これらの結果が示すように、カベルゴリンは、このモデルにおいて新規の血管形成(血管新生)が有意に低下する。
図3は、コントロール、並びに低用量及び高用量の群における血管の百分率を示す。コントロール群は、新規に形成された血管として全血管の約74%であり、このことは、有意な血管新生を示す。他方、低用量及び高用量の群は、成熟した血管として、全血管の約85%から89%を有し、このことは、血管新生が有意ではないことを示す。この結果が示すように、カベルゴリンは、このモデルにおいて、新規の血管形成(血管新生)が有意に低い。
図4は、増殖の検討結果を示す。本技術分野において公知の方法を用いた移植片の増殖活性を評価するため、Ki−67抗体を用いた免疫細胞化学的検討(Ki−67に対する抗体を使用する細胞性増殖の度合いの分析)を使用した。画像計数ソフトウェアを用いて、Ki−67に正の細胞をカウントし、各群における増殖指数を算出した。コントロールと比較して、カベルゴリンで処理した動物(低用量及び高用量の群の両方)の損傷部位において、増殖の点で有意な低下(p<0.001)が観察された。
新規の血管(vWF+/αSMA−)及び古い血管(vWF+/αSMA+)を同定するため、抗体を用いた免疫蛍光法及び共焦点顕微鏡(Leica Confocal Software)を使用して、損傷部位の血管新生の状態を分析した。Cb2の血管新生の作用を検討するため、血管内皮細胞及び血管平滑筋細胞(α−SMA)に存在するVon Willebrand因子(vWF)に対する抗体を使用した免疫蛍光法を使用し得る。新規に形成されたものではない血管は、血管に対する成熟度を参照する平滑筋層により取り囲まれる。血管内皮細胞の同定は、vWFを用いて行い、成熟血管は、α−SMAの正染色により、同定された。したがって、vWF+/αSMA−の血管は、新規なもの又は成熟のものと考えられた一方、vWF+/αSMA+の血管は、古い血管又は成熟した血管と分類された。
移植片は、より高い細胞性間質と、コントロール群における子宮内膜の損傷部位で典型的に見られる完全な再構築及び構造の組織化学的態様とを示す一方、低用量及び高用量に含まれるマウスにおける移植片では、萎縮性/変性組織の特徴である緩い細胞性及び組織性を伴った弛緩した間質を示す。形態計測が示すように、各群のうち、細胞密度及び間質/腺の領域に差異がない。
血管新生を惹起する3つの異なるマーカー(VEGF、VEGFR−2、Notch−4)、存在する血管の肥大化及び漏洩に対する耐性を惹起する抗血管新生マーカーであるアンジオポエチン−1(Ang−1);及びWnt−1の遺伝子発現プロファイルを分析するため、TaqManのリアルタイムPCR及び2−ΔΔCt法を使用した。標的である遺伝子のCt値の標準化は、常在性18SrRNAを使用した。各群のCt値は、2−ΔΔCt法により表現した相対発現を計算して、コントロール群のCt値(校正)に相対として表現した。肉腫180腫瘍細胞(S−180)及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)から得たcDNAを、VEGF及びVEGFR−2の遺伝子発現に関する負及び正コントロールとしてそれぞれ使用した。Ang−1及びWnt−1に関する正コントロールとして膵臓を使用し、Notch−4の正コントロールとして肺を使用した。
表1は、後血管新生マーカー(VEGF、VEGFR−2及びNotch−4)の遺伝子発現プロファイルが、コントロールと比較して低用量及び高用量のカベルゴリン(“Cb2”)で処理した移植片において下方制御されたことを示す。Ang−1及びWnt−1は、抗血管新生マーカーであると考えられる;その発現プロファイルは、コントロールと比較して低用量及び高用量のCb2で処理したマウスの移植片において上方制御され、これは、カベルゴリンの処理が、血管新生の阻害に関連することを示す。テーブルからの相対的な発現データは、図5に図示される通りである。
手術中(腹腔鏡検査法)の女性におけるヒト子宮内膜組織及び子宮内膜移植片のドパミン2型受容体の存在を検討した。TaqManのリアルタイムPCR及び2−ΔΔCt法は、移植片だけでなく10人の腹腔鏡検査法での女性から得た腹腔の子宮内膜損傷部位におけるドパミン受容体2(Dp−r2、D2R)及びVEGFの存在を究明するのに使用された(図6b−VEGFR−2のデータをも含む)。Dp−r2に関する正及び負のコントロールは、それぞれ、HUVEC及びS−180のcDNA細胞であった。マウスにおいて、コントロールのCt値は、校正として使用し、ヒトの腹腔損傷部位において、HUVECのCt値は、2−ΔΔCt法による相対的な発現を算出するのに校正として用いた。
図6aは、3つの構築された群において動物の子宮内膜の移植片におけるVEGF及びDp−r2の存在を示す。動物は、カベルゴリンの用量を増加させて処置するにつれて、Dp−r2の発現が増加する傾向にあった。動物は、カベルゴリンの用量を増加させて処置するにつれて、VEGFの発現が減少する傾向にあった。
図6bは、子宮内膜の損傷部位の異なるタイプにおけるVEGF、VEGFR−2(KDR)及びD2R(Dp−r2)の相対発現を示す(左側);赤、白及び黒のカラム。損傷部位の種類によって、VEGF、VEGFR−2及びDp−r2の発現に明確な差異がある。
図6bは、子宮内膜におけるVEGF、VEGFR−2(KDR)及びD2R(Dp−r2)の相対発現を示す(右側)。子宮内膜症を有する対象の子宮内膜におけるVEGF及びVEGFR−2の相対発現は、子宮内膜症のないものと比較して高い;子宮内膜症を有する対象の子宮内膜におけるDp−r2の相対発現は、ないものと比較して低い。
これらの結果は、下記の表2に示す。
この結果は、0.05及び0.1mg/kg/日の投与量で投与したドパミンアゴニストであるカベルゴリンが:
(a)活性な子宮内膜の損傷部位の数を有意に低下させ得ること;
(b)子宮内膜の移植片における萎縮性又は変性組織の特徴を示す細胞性及び組織性の欠損を生じ得ること;
(c)子宮内膜の移植片における新規の血管の数が有意に減少し得ること;
(d)血管新生及び細胞増殖のマーカーの発現が有意に減少し得ること;並びに
(e)組織変性を増加させ、子宮内膜の移植片を減少させ得ること;
を示す。
上記のげっ歯類のモデルにおいて示した活性がヒトのモデルにも適用可能であることを示す、ヒト及びげっ歯類のVEGF系間に高い相同性がある。上記の結果は、ドパミンアゴニストが、血管新生に対する作用に可能に関係する、子宮内膜症に対する有意な効果を有する。上記の結果は、同所性及び異所性の子宮内皮細胞におけるドパミンアゴニスト受容体の存在に関連し得る可能性がある。
実施例2
経口用の錠剤としての処方は、0.5mgのカベルゴリン(Dostinex(登録商標)、ファイザー、スペイン)である。
さらなる実施例
例A:慢性的な骨盤痛にみまわれた後であって、子宮内膜症のIII型と診断された診断的な腹腔鏡検査法を行った患者。同じ腹腔鏡検査法において、患者には、利用可能な損傷部位の切除などの外科的手術を進行させる。
例B:前に子宮内膜症と診断された患者は、骨盤痛及び月経困難症の症状を呈する。カベルゴリンの投与は、外科手術がなくても開始される。
例C:患者が、GnRHのアゴニスト(又はダナゾール若しくはアロマターゼ阻害剤)を用いた処理を行う子宮内膜症と診断され、カベルゴリンの投与が一定期間開始される(GnRHアゴニストを継続して使用)。治療なくさらに3〜6月後、患者は、さらなる期間の間、カベルゴリンを再開する。

Claims (17)

  1. 子宮内膜症の治療又は予防のための薬剤の製造におけるドパミンアゴニストの使用。
  2. 子宮内膜症の治療又は予防に使用するためのドパミンアゴニスト。
  3. 前記ドパミンアゴニストは、アマンタジン、ブロモクリプチン、カベルゴリン、キナゴリド、リスリド、ペルゴリド、ロピニロール及びプラミペキソールのいずれかである請求項1又は2に記載の使用。
  4. 前記ドパミンアゴニストは、0.01〜12.5mg/週の投与量で投与されるカベルゴリンである請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
  5. 前記ドパミンアゴニストは、25〜1,000μg/日の投与量で投与されるキナゴリドである請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
  6. 前記ドパミンアゴニストは、10〜80mg/日の投与量で投与されるブロモクリプチンである請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
  7. 前記ドパミンアゴニストは、1日から2年の期間投与される請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
  8. 前記ドパミンアゴニストは、子宮内膜症の他の外科的又は薬物療法と組み合わせて投与される請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
  9. 前記ドパミンアゴニストは、妊婦における子宮内膜症の治療又は予防に使用される請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
  10. 血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を標的とする請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
  11. VEGFR−2を標的とする請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
  12. Notch−4を標的とする請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
  13. 子宮内膜症の治療又は予防は、子宮内膜腺の量の減少をともなう請求項1から12のいずれか一項に記載の使用。
  14. 子宮内膜症の治療又は予防は、子宮腔の外部に存在する子宮内膜組織の量の減少又は除去;及び/又は子宮内膜症に関連する1つ以上の症状を減弱及び/又は改善するための治療に関連する請求項1から13のいずれか一項に記載の使用。
  15. 前記投与は経口であり、カプセル、カプセル剤、錠剤、シロップ、エリキシル剤又はトローチ剤としての組成物の形態である請求項1から14のいずれか一項に記載の使用。
  16. 必要とする患者にドパミンアゴニストを投与するステップを含む子宮内膜症を治療又は予防する方法。
  17. 子宮内膜症の治療又は予防は、子宮腔の外部に存在する子宮内膜組織の量の減弱及び/又は除去;及び/又は子宮内膜症の1つ以上の症状を減弱及び/又は改善するための治療に関連する請求項16に記載の方法。

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