JP2010516876A - 防食、木材及びコンクリート用の水性コーティングバインダ - Google Patents

防食、木材及びコンクリート用の水性コーティングバインダ Download PDF

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Abstract

本発明は、70%〜98%の質量分率の鎖延長エポキシアミン付加物Aと、最大15%の質量分率で限定量の芳香族成分を含有し且つ4mg/g〜50mg/gの酸価を有する、2%〜30%の質量分率のカルボキシ官能性ポリエステルBとを含むバインダ混合物、これらのバインダ混合物を製造する方法、及び金属、木材、厚紙、石膏及びコンクリート用のコーティングにおけるこれらの使用方法に関する。

Description

本発明は、防食、木材及びコンクリート用の水性コーティングバインダに関する。
カチオン安定化したエポキシアミン付加物をベースとした水性バインダは、特許文献1に記載されているように陰極電着塗装における用途で知られている。水性バインダは通常、キャップされた二官能性又は多官能性イソシアネートと共にそれらの混合物を加熱することによって硬化する。中和後に水中に分散されるエポキシアミン付加物は、さらなるエポキシ樹脂により鎖延長され、付加的な硬化剤を必要としないが、金属及びコンクリート等の基体上で乾燥すると凝集塗膜を形成する高モル質量の生成物をもたらす。これが優れた粘着性を示し、且つ良好な防食をもたらす。かかる系は特許文献2から知られている。
欧州特許出願公開第0,249,850号明細書 欧州特許第1,207,187号明細書
かかる系の高温及び高湿度条件(30℃を超える温度、50%を超える相対湿度)下における耐食性の改善が必要とされる。
限定量の芳香族成分を0%〜15%の質量分率で含有し且つ4mg/g〜50mg/gの酸価を有するカルボキシ官能性ポリエステルの混和により、上記鎖延長エポキシアミン付加物を含む系の耐食性を著しく改善することができ、また驚くべきことに、かかるバインダを用いて木材用の封止剤を配合することができ、且つこのように改質されたバインダを用いてグリーンコンクリートをコーティングすることも可能であることを見出した。
したがって、本発明の目的は、70%〜98%の質量分率の鎖延長エポキシアミン付加物Aと、最大15%の質量分率で限定量の芳香族成分を含有し且つ4mg/g〜50mg/gの酸価を有する、2%〜30%の質量分率のカルボキシ官能性ポリエステルBとを含むバインダ混合物である。
本発明の別の目的は、70%〜98%の質量分率の鎖延長エポキシアミン付加物Aと、0%〜15%の質量分率で限定量の芳香族成分を含有し且つ4mg/g〜50mg/gの酸価を有する、2%〜30%の質量分率のカルボキシ官能性ポリエステルBとを含むバインダ混合物を製造する方法であり、該方法は、
1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂A1と、1分子当たり少なくとも1つの第一級アミノ基又は第二級アミノ基を有する脂肪族アミンA2とを反応させてエポキシアミン付加物A12を形成し、このエポキシアミン付加物A12を酸の添加によって少なくとも部分的に中和させ、中和されたエポキシアミン付加物A12nを攪拌しながら水性相に移行し、この水性混合物を加熱し、且つそこに1分子当たり少なくとも2つのエポキシ基を有するさらなるエポキシ樹脂A3を添加し、A3の量は、A12中の反応性ヒドロキシル基及び反応性アミノ基の数が、A3中のエポキシ基の数と等しいか、又はそれよりも大きくなるように選択される工程と、
1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する直鎖状、分枝状及び環状脂肪族化合物からなる群より選択されるヒドロキシ官能性成分B1と、少なくとも1つの脂肪族酸B21と少なくとも1つの芳香族酸B22とを含む、カルボン酸基を有する酸官能性成分B2との共縮合により、4mg/g〜50mg/gの酸価を有するカルボキシ官能性ポリエステルBを調製する工程であって、ヒドロキシ官能性成分B1及び酸官能性成分B2の質量の合計中の芳香族酸B22の質量分率が最大15%である工程と、
上記ポリエステルBを鎖延長エポキシアミン付加物Aと混和させる工程と、
AとBとの上記の混合物を水中に分散させる工程とを含む。
本発明のさらなる目的は、基体上に塗膜を形成する、鎖延長エポキシアミン付加物Aとカルボキシ官能性ポリエステルBとのバインダ混合物の使用方法であり、該方法は、バインダ混合物を、任意に顔料又は充填剤と共に混合及び均質化し、コーティング組成物を形成すること、上記コーティング組成物を基体に塗布すること、及び硬化剤を添加せずに上記コーティング組成物を乾燥させることを含む。
エポキシ樹脂A1は、1分子当たり少なくとも1つの、好ましくは2つの1,2−エポキシ基を有し、芳香族性又は脂肪族性である。一価脂肪族又は混合脂肪族−芳香族アルコールのグリシジルエーテル、又は脂肪族又は芳香族モノカルボン酸のグリシジルエステルが、モノエポキシドとして好ましい。アルコールは好ましくは、2−エチルヘキサノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール及びベンジルアルコールからなる群より選択される。酸は好ましくは、5個〜11個の炭素原子を有する分枝状脂肪族モノカルボン酸、特にグリシジルネオペンタノエート、グリシジル2−エチルヘキサノエート、グリシジルネオデカノエート、及び商品名(登録商標)Versatic acidsの名で市販されているような酸の混合物からなる群より選択される。このようなエーテル及びエステルの混合物も同様に使用することができる。他の脂肪族エポキシドは、ヘキセン−1,1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン等のオレフィン又はジオレフィンのエポキシ化によって、又はエピクロロヒドリンと、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール又はオリゴマーエチレン及びプロピレングリコール等の二価アルコールとの反応によって形成することができる。芳香族ジエポキシドは、エピクロロヒドリンと、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホン又はジヒドロキシベンゾフェノン等のジヒドロキシ芳香族化合物との反応によって形成され得る。特に好ましくは、エピクロロヒドリンと、ビスフェノールA(2,2−bis−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)及びビスフェノールF(bis−(4−ヒドロキシフェニル)メタン)との反応生成物である。言及されるこれらのジエポキシドに加えて、三価又は多価アルコールのグリシジルエーテル、例えば、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン及びジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール、並びに上記アルコールのエトキシル化又はプロポキシル化生成物を用いてもよく、上記アルコールのヒドロキシル基1つ当たりに平均して2〜20のオキシアルキレン基を有するものが好ましい。二塩基性又は多塩基性有機酸のグリシジルエステルを用いることもでき、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸のものがより好ましい。0.5mol/kg〜8mol/kg、特に好ましくは1mol/kg〜6mol/kgの特定のエポキシ基含量(e=n/m、樹脂の質量mで除した樹脂中のエポキシ基の物質量n(EP))を有するようなエポキシ樹脂A1を使用することが好ましい。
アミンA2としては、2個〜40個の炭素原子を有する脂肪族直鎖状、分枝状又は環状アミンが好ましい。これらのアミンA2は、少なくとも1つの第一級アミノ基、及び任意に1つ又は複数のさらなる非第一級アミノ基を有するアミンA21、並びに少なくとも1つの第二級アミノ基、及び任意に1つ又は複数のヒドロキシル基を有するアミンA22からなる群より選択され得る。
少なくとも1つの第一級アミノ基に加えて、アミンA21は、第二級アミノ基及び第三級アミノ基からなる群より選択される1つ又は複数のさらなるアミノ基を有し得る。特に好ましくは、エチレンジアミン、1,2−及び1,3−プロピレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、並びに1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の2つの第一級アミノ基を有するジアミン、トリアミン及びテトラアミンである。また、オリゴマージアミノエチレンイミンを使用することも可能である。さらなる第三級アミノ基を有する第一級モノ及びジアミンのうち、少なくとも1つの第一級アミノ基及び少なくとも1つの第三級アミノ基、並びに4個〜20個の炭素原子、1個〜4個の炭素原子を有する第三級アミノ基と結合するアルキル残基、即ち、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec.−ブチル、イソブチル及びtert.−ブチル基を有するものがより好ましい。このようなアミンは、3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピルアミン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−プロピルアミン、N−(2−アミノエチル)−モルホリン、N,N’−bis−(2−アミノエチル)−ピペラジンである。好適なトリアミンについては、tris−2−アミノエチル−アミンが言及される。特に好ましくは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及び1,4−ジアミノブタン、並びに3−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピルアミン及び3−(N,N−ジエチルアミノ)−プロピルアミンである。
アミンA22は、少なくとも1つの第二級アミノ基と、任意に、1つ又は複数のヒドロキシル基とを有し、これらの例はジ−n−ブチルアミン、並びにその異性体であるジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、n−ヒドロキシエチルピペラジン、及び2−メチルアミノエタノールである。
A21とA22との混合物を使用する場合には、A22中のアミンの水素原子の数が、A21中のアミンの水素原子の数の50%〜150%、特に好ましくは75%〜125%となるような量を選択することが好ましい。
ギ酸、酢酸、乳酸又は酒石酸等の有機一塩基酸を使用して、付加物A12を中和することが好ましい。ホウ酸、リン酸又はそれらの部分エステル等の無機多塩基酸を用いてもよい。
エポキシ樹脂A3は、少なくとも2つの1,2−エポキシ基を有し、脂肪族又は芳香族であってもよい。脂肪族ジエポキシドは、1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン等のジオレフィンのエポキシ化によって、又はエピクロロヒドリンと、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール又はオリゴマーエチレン及びプロピレングリコール等の二価アルコールとの反応によって形成され得る。芳香族ジエポキシドは、エピクロロヒドリンと、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホン又はジヒドロキシベンゾフェノン等のジヒドロキシ芳香族化合物との反応によって形成され得る。特に好ましくは、エピクロロヒドリンと、ビスフェノールA(2,2−bis−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)及びビスフェノールF(bis−(4−ヒドロキシフェニル)メタン)との反応生成物である。言及されるこれらのジエポキシドに加えて、三価又は多価アルコールのグリシジルエーテル、例えば、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン及びジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール、並びに上記アルコールのエトキシル化生成物又はプロポキシル化生成物を使用してもよく、上記アルコールのヒドロキシル基1つ当たりに平均して2〜20のオキシアルキレン基を有するものが好ましい。二塩基性又は多塩基性有機酸のグリシジルエステルを用いることもでき、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸のものがより好ましい。e=0.6mol/kg〜e=10mol/kg、特に好ましくはe=1.2mol/kg〜e=6mol/kgの特定のエポキシ基含量(樹脂の質量mで除した樹脂中のエポキシ基の物質量n(EP))を有するようなエポキシ樹脂A3を使用することが好ましい。エポキシ樹脂A1のものよりも大きく、詳細にはe(A3):e(A1)比が1.2〜5、特に好ましくは1.5〜4であるような特定のエポキシ基含量e(A3)を有するようなエポキシ樹脂A3を選択することがさらに好ましい。
エポキシアミン付加物Aは好ましくは、40mg/g〜150mg/gのアミン価、及び30mg/g〜150mg/gの水酸基価を有し、これはいずれの場合も固体樹脂の質量に関するものである。それらのシュタウディンガー指数(Staudinger index)は好ましくは、室温(23℃)でN−メチルピロリドン溶液において測定される場合、30cm/g〜100cm/gである。
これまで「極限粘度数」と称されてきた数量は、DIN 1342のパート2.4により「シュタウディンガー指数」Jとも呼ばれ、濃度及びせん断応力を下げながら測定したシュタウディンガー関数Jの極限値である(式中、Jは、溶質Bの質量濃度β=m/V(溶液体積V中の溶質の質量m)で徐した、粘度の相対変化η−1の比率であり、J=(η−1)/βで表される)。ηr−1は、η−1=(η−η)/ηより粘度の相対変化を示す。相対粘度ηは、対象溶液の動粘度ηと、純溶媒の動粘度ηとの比率である。シュタウディンガー指数の物理的意味は、無限に希釈させたときの静止状態における溶媒和ポリマーコイルの流体力学的な比体積である。Jに従来用いられる単位は「cm/g」、以前は「dl/g」でもある。
酸価は、対象試料を中和させるのに必要な水酸化カリウムの質量mKOHと、試料の質量m(溶液又は分散体の場合には資料中の固形分質量)との比率として、DIN EN ISO 3682により定義されており、その従来単位は「mg/g」である。
アミン価は、対象試料と同量の酸を消費する水酸化カリウムの質量mKOHと、上記試料の質量m(溶液又は分散体の場合には試料中の固形分質量)との比率であるとして、DIN 53 176により定義されており、その従来単位は「mg/g」である。
水酸基価は、対象試料と同数のヒドロキシル基を有する水酸化カリウムの質量mKOHと、試料の質量m(溶液又は分散体の場合には試料中の固形分質量)との比率として、DIN EN ISO 4629により定義されており、その従来単位は「mg/g」である。
水中における付加物Aの分散体は通常、20%〜60%の固形分質量分率を有する。
これらの分散体から単独で調製されるコーティングの防食性能は、特に、30℃以上の温度及び50%を超える相対湿度における「熱帯条件」と称される条件下で、カルボキシ官能性ポリエステルBを添加することによってさらに改善され得ることが本発明において見出された。
ポリエステルBは、限定量の芳香族成分を特徴とする。ここで、芳香族成分の質量分率、即ち、全てのヒドロキシ官能性成分及び酸官能性成分の質量の合計m(B1)+m(B2)に対する芳香族酸B22の質量m(B22)の比率は、最大15%、好ましくは1%〜12.5%、及び特に2%〜10%である。
ポリエステルは、ヒドロキシ官能性成分B1と酸官能性成分B2との縮合生成物である。B1及びB2の少なくとも1つは、3つ以上の官能基を有する化合物、即ち、三価若しくは多価アルコール又は三塩基酸若しくは多塩基酸のいずれか、又は両方を含む。この状況で、「多」とは4つ以上の官能基を指す。好ましくは、少なくとも酸成分B2が3つ以上の官能基を有する化合物を含む。
また、成分B1と成分B2との混合物の反応において、酸基の量に対するヒドロキシル基の物質量の比率は0.8mol/mol〜1.7mol/molであることが好ましく、特に好ましくは0.9mol/mol〜1.6mol/molである。ポリエステルBの酸価は好ましくは4mg/g〜50mg/gの範囲であり、その水酸基価は、好ましくは80mg/g〜280mg/g、特に好ましくは100mg/g〜270mg/gである。溶液(ジメチルホルムアミド)中23℃で測定したポリエステルのシュタウディンガー指数は、好ましくは10cm/g〜25cm/gであり、特に好ましくは12cm/g〜20cm/gであり、且つ特に好ましくは15cm/g〜18cm/gである。
ヒドロキシ官能性成分B1は、少なくとも2つの第一級ヒドロキシル基を有する脂肪族直鎖状、分枝状又は環状化合物である。ポリエステルBの合成に用いられる、ヒドロキシ官能性成分B1中の少なくとも1つの直鎖状二官能性ヒドロキシ化合物B11及び少なくとも1つのさらなるヒドロキシ化合物B12を有することが好ましく、ここで、化合物B12は、少なくとも1つの三官能性若しくは多官能性ヒドロキシ化合物B121又は少なくとも1つの分枝状二官能性ヒドロキシ化合物B122を含む。
別の好ましい実施の形態において、ポリカプロラクトンジオール又はトリオール等のヒドロキシ官能性ポリラクトンを添加することが可能であり、これにより、得られるポリエステルのガラス温度が下がり、それゆえ基体に対する接着性を改善することができる。
化合物B11は、好ましくは2個〜40個の炭素原子、特に好ましくは4個〜12個の炭素原子を有する直鎖状二官能性脂肪族アルコールである。好適な化合物は、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,12−ドデカンジオール、並びにジエチレングリコール又はトリエチレングリコール等のエーテルジオールである。
三官能性アルコールB121は、少なくとも2つの第一級ヒドロキシル基、及び第一級又は第二級であってもよい少なくとももう1つのヒドロキシル基を有する。それらは好ましくは3個〜12個の炭素原子を有する。好適な化合物としては、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール及びソルビトールが挙げられる。
分枝状二官能性アルコールB122は、少なくとも1つの第三級又は少なくとも1つの第四級炭素原子、及び3個〜10個の炭素原子を有する。好適な化合物は、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール及び2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールである。
化合物B11の物質量に対する化合物B12の物質量の比率が3%〜25%、特に好ましくは5%〜20%であることが好ましい。
酸B2は、少なくとも1つの脂肪族酸B21と、少なくとも1つの芳香族酸B22とを含む。好ましくは、芳香族酸B22の質量の少なくとも80%が、三官能性若しくは多官能性酸により構成され、重ねて多官能性とは4つ以上の官能基を有する酸を指す。好適な酸B22は、二官能性、三官能性及び多官能性芳香族酸、例えば、フタル酸異性体、スルホイソフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸、並びにその無水物を含む。脂肪族酸B21は好ましくは直鎖状であり、4個〜40個の炭素原子を有する。好適な化合物は、コハク酸、スルホコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカンジオール酸、及び好ましくは直鎖状の二量体脂肪酸である。
本発明のバインダ混合物は、付加的な架橋剤を用いることなく例外的に良好な防食を金属にもたらす。金属コーティング組成物は通常、脱泡剤、チキソトロピー剤、増粘剤、また使用される顔料及び充填剤用の分散剤(通常、酸化鉄顔料、リン酸亜鉛顔料である)、任意にカオリン若しくはタルクをベースとしたもの等の充填剤、又はそれらの混合物と共に配合される。また、本発明のバインダ混合物は、木材用の封止剤として特に有用であることが見出された。このようなコーティング組成物は、充填剤なしで(クリアコートとして)配合されても、又はカオリン若しくはタルク等の充填剤と共に配合されても、驚くべき顕著な封止効果をもたらし得る。これらのバインダ混合物をベースとしたコーティング組成物はまた、紙、厚紙、石膏及びコンクリートをコーティングする際に良好な結果を伴って使用することができる。
また、反応では、上記遊離体、即ち出発成分である、エポキシ樹脂A1、脂肪族アミンA2及びさらなるエポキシ樹脂A3、さらなる成分として少なくとも1つの脂肪酸A4に対してエポキシアミン付加物Aを誘導することを含むことによってさらにこれらのエポキシアミン付加物Aを改良することが可能である。この脂肪酸A4は好ましくは不飽和であり、少なくとも1つのオレフィン系不飽和を有し、且つ6個〜30個、好ましくは8個〜26個、及び特に好ましくは16個〜22個の炭素原子を有する。好ましい脂肪酸A4は、パルモレイン酸、オレイン酸及びエルカ酸、リノール酸、リノレイン酸、エラステアリン酸、アラキドン酸及びクルパノドン酸並びに天然油から得られる脂肪酸、例えば亜麻仁油脂肪酸、ダイズ油脂肪酸、トール油脂肪酸、綿実油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸異性体、ナタネ油脂肪酸、並びに脱水ヒマシ油に由来する脂肪酸混合物である。初めにA1とA2とを反応させた後に、この反応による生成物をA4と反応させるか、又は初めにA1とA4とを反応させた後に、この反応による生成物をA2と反応させるか、又はA1をA4及びA2と同時に反応させるというように、エポキシ樹脂A3とのさらなる反応の前に、脂肪酸A4はエポキシ樹脂A1及びアミンA2といずれの順序でも反応し得る。
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。これらの実施例において、並びに本明細書全体において、「%」単位で測定される量は全て、特に記述のない限りcg/g又はg/hgで測定される質量分率又は質量比に関する。
実施例1
エポキシアミン付加物の合成
2.1mol/kgの特定含量のエポキシ基(475g/molの「エポキシ当量」)を有するビスフェノールAをベースとした1900gのエポキシ樹脂を、129gのジメチルアミノプロパノールアミン、及び208gのジエタノールアミンと共にメトキシプロパノール中に溶解し、70%濃度の溶液を形成する。混合物を110℃に加熱し、攪拌しながらエポキシ基が完全に消費されるまで反応させた。
実施例2
ポリエステルの調製
攪拌器及び還流凝縮器を備えた三つ口容器に、531g(4.5mol)のヘキサンジオール−1,6,67g(0.5mol)のトリメチロールプロパン、438g(3.0mol)のアジピン酸、及び58g(0.3mol)の無水トリメリット酸を充填した。充填物を攪拌しながら窒素ブランケット下で10K/hで200℃に加熱した。縮合反応において形成した水を分離し、酸価が25mg/g未満に下がるまで反応を続けた。23℃においてジメチルホルムアミド溶液中で測定したポリエステル(A1)のシュタウディンガー指数は16.5cm/gであった。209mg/gの水酸基価を試料について求めた。最後に、さらなるメトキシプロパノールを添加することによりポリエステルA1を80%の固形分質量分率に希釈した。
さらなるポリエステルA2〜A7を、他の構成成分を用いて上記手順に従って生成した。
表1 ポリエステルの組成
Figure 2010516876

Figure 2010516876
実施例3
エポキシアミン付加物とポリエステルとの混合物の調製
実施例1のエポキシアミン付加物溶液を、150℃に加熱し、溶媒を蒸留によって減圧下で除去した。実施例2の147gのポリエステル溶液を添加し、混合物をさらに1時間150℃で攪拌した後、混合物を110℃に冷却させた。固体樹脂100g当たり60mmolの氷酢酸を添加し、中和させた樹脂混合物を完全に脱塩させた水の添加によって40%の固形分(=不揮発性物質)質量分率に希釈した。さらに1時間以内に、130gのビスフェノールAジグリシジルエーテルを90℃のこの水溶液に添加し、得られた混合物を攪拌しながらエポキシ基が完全に消費されるまでこの温度に維持した。さらに、溶液を38%の固形分質量分率に調節するように水を添加した。
実施例4
プライマー
実施例3の溶液を用いて、カチオン性プライマーを配合した。88gの完全に脱塩させた水と22gの商業用分散剤((登録商標)Additol VXW 6208(Cytec Surface Specialties Austria GmbH))との混合物中に、3gの商業用脱泡剤((登録商標)Surfynol SE−F(E. I. DuPont de Nemours Company))、6gのチキソトロピー剤((登録商標)Luwothix HT(Lehmann & Voss))、及び3gのアクリレート増粘剤((登録商標)Acrysol RM 8/12(Rohm & Haas Company))、62gの酸化鉄顔料((登録商標)Bayferrox(Lanxess AG))、106gの変性リン酸亜鉛顔料(Heucophos ZPO(Heubach GmbH))、55gのカオリン充填剤((登録商標)ASP 600(Engelhardt GmbH))、及び55gのタルク充填剤((登録商標)Talkum AT1(Norwegian Talc AS))を分散させた。480gの実施例3のバインダ溶液を、3%濃度の水溶液として3gのコバルト乾燥剤及びさらに117gの脱塩水と共に添加した。このようにして得たプライマー組成物の流出時間はおよそ30秒であり、これはDIN EN ISO 2431又はDIN 53 211に従い4mmカップ内で測定した。
比較例
プライマー5、6及び7
酸化乾燥エポキシ樹脂エステルの水性エマルジョンをベースとした商業用プライマー(プライマー5、((登録商標)Duroxyn VEF 4380(Cytec Surface Specialties Austria GmbH))、及び中粘度油であるロジン変性アルキド樹脂をベースとした従来の溶媒系プライマー(プライマー6、(登録商標)Vialkyd AM 404(Cytec Surface Specialties Austria GmbH))を比較用に用いた。(登録商標)AMP 90は、アミン中和剤(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(The DOW Chemical Company、以前はAngus Chemicals))である。表2に製剤を記載する。特許文献2の実施例2に記載のさらなるバインダをプライマー7として試験した。
表2:プライマー組成物
Figure 2010516876
実施例8
腐食試験結果
4mmカップからの約30秒の流出時間を全て有する表2のプライマー及びプライマー7を、噴霧することによっておよそ30μmの乾燥膜厚で未処理鋼板に塗布した。10日間室温で乾燥させた後、腐食試験をDIN 50 021に従って実施した。得られた結果を表3に挙げる。
表3 腐食試験結果
Figure 2010516876
見て分かるように、本発明のプライマー組成物の防食は、最先端技術のプライマーにより達成されるものよりも良好である。
実施例9
ポリエステルの影響
実施例3を繰り返し、エポキシアミン付加物に混和されるポリエステルの種類及び量の影響を以下の表4に示した。
表4 ポリエステルの添加の影響
Figure 2010516876
見て分かるように、バインダ混合物中のポリエステルの質量分率の最適範囲は5%〜15%である。バインダ混合物の特性温度、ガラス転移温度T又は最小成膜温度TMFFのいずれに対しても直接的な相関はないと思われる。実施例9.7は、欧州特許第1,233,034号明細書のプライマー2に対応する。木材コーティングにおける封止剤としての効率に関しても同様の効果が見られ、添加されるポリエステルの最適範囲は3%〜25%であった。

Claims (9)

  1. 70%〜98%の質量分率の鎖延長エポキシアミン付加物(A)と、最大15%の質量分率で限定量の芳香族成分を含有し且つ4mg/g〜50mg/gの酸価を有する、2%〜30%のカルボキシ官能性ポリエステル(B)とを含むバインダ混合物。
  2. 前記エポキシアミン付加物(A)が、1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A1)と、1分子当たり少なくとも1つの第一級アミノ基又は第二級アミノ基を有する脂肪族アミン(A2)とを反応させてエポキシアミン付加物(A12)を形成すること、このエポキシアミン付加物(A12)を酸の添加によって少なくとも部分的に中和させること、中和されたエポキシアミン付加物(A12n)を攪拌しながら水性相に移行すること、この水性混合物を加熱すること、及びそこに1分子当たり少なくとも2つのエポキシ基を有するさらなるエポキシ樹脂(A3)を添加することによって得ることが可能であり、該エポキシ樹脂(A3)の量は、前記エポキシアミン付加物(A12)中の反応性ヒドロキシル基及びアミノ基の数が、前記エポキシ樹脂(A3)中のエポキシ基の数と等しいか、又はそれよりも大きくなるように選択される、請求項1に記載のバインダ混合物。
  3. 脂肪酸(A4)が、前記エポキシ樹脂(A3)とのさらなる反応前に、前記エポキシ樹脂(A1)及び前記脂肪族アミン(A2)と反応する、請求項2に記載のバインダ混合物。
  4. 4mg/g〜50mg/gの酸価を有する前記カルボキシ官能性ポリエステル(B)が、1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する直鎖状、分枝状及び環状脂肪族化合物からなる群より選択されるヒドロキシ官能性成分(B1)と、少なくとも1つの脂肪族酸(B21)と少なくとも1つの芳香族酸(B22)とを含む、カルボン酸基を有する酸官能性成分(B2)との共縮合によって得ることが可能であり、前記ヒドロキシ官能性成分(B1)及び前記酸官能性成分(B2)の質量の合計中の前記芳香族酸(B22)の質量分率が最大15%である、請求項1に記載のバインダ混合物。
  5. 請求項1に記載のバインダ混合物を製造する方法であって、
    1分子当たり少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A1)と、1分子当たり少なくとも1つの第一級アミノ基又は第二級アミノ基を有する脂肪族アミン(A2)とを反応させてエポキシアミン付加物(A12)を形成し、このエポキシアミン付加物(A12)を酸の添加によって少なくとも部分的に中和させ、中和されたエポキシアミン付加物(A12n)を攪拌しながら水性相に移行し、この水性混合物を加熱し、且つそこに1分子当たり少なくとも2つのエポキシ基を有するさらなるエポキシ樹脂(A3)を添加し、該エポキシ樹脂(A3)の量は、前記エポキシアミン付加物(A12)中の反応性ヒドロキシル基及び反応性アミノ基の数が、前記エポキシ樹脂(A3)中のエポキシ基の数と等しいか、又はそれよりも大きくなるように選択される工程と、
    1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有する直鎖状、分枝状及び環状脂肪族化合物からなる群より選択されるヒドロキシ官能性成分(B1)と、少なくとも1つの脂肪族酸(B21)と少なくとも1つの芳香族酸(B22)とを含む、カルボン酸基を有する酸官能性成分(B2)との共縮合により、4mg/g〜50mg/gの酸価を有するカルボキシ官能性ポリエステル(B)を調製する工程であって、前記ヒドロキシ官能性成分(B1)及び前記酸官能性成分(B2)の質量の合計中の前記芳香族酸(B22)の質量分率が最大15%である工程と、
    前記ポリエステル(B)を前記鎖延長エポキシアミン付加物(A)に混和させる工程と、
    AとBとの前記混合物を水中に分散させる工程と、
    を含む、請求項1に記載のバインダ混合物を製造する方法。
  6. 前記エポキシ樹脂(A3)とのさらなる反応前に、脂肪酸(A4)を前記エポキシ樹脂(A1)及び前記脂肪族アミン(A2)と反応させる、請求項5に記載の方法。
  7. 第1の工程において、前記脂肪族アミン(A2)及び前記エポキシ樹脂(A3)とのさらなる反応前に、脂肪酸(A4)を前記エポキシ樹脂(A1)と反応させる、請求項6に記載の方法。
  8. 脂肪酸(A4)を並発反応において前記エポキシ樹脂(A1)及び前記脂肪族アミン(A2)と反応させる、請求項6に記載の方法。
  9. 請求項1に記載のバインダ混合物の使用方法であって、前記バインダ混合物に、脱泡剤、増粘剤、分散剤、充填剤及び顔料の少なくとも1つを混和させてコーティング組成物を形成すること、及び前記コーティング組成物を、卑金属、木材、厚紙、石膏及びコンクリートからなる群より選択される基体に塗布すること、
    を含む、請求項1に記載のバインダ混合物の使用方法。
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