JP2010516239A - 細胞の産生に対する新規方法および試薬 - Google Patents

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Abstract

本発明は、幹細胞を、幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより、幹細胞を調節し、および増殖させるための方法および材料を提供する。調節は形態学的変化、分化状態の変化、生物学的状態または接着であってよい。本発明において提供される材料はこのような結合物質および結合剤をスクリーニングするためにも有用である。
【選択図】なし

Description

本発明は幹細胞のグリカン構造に対する特異的結合剤のための試薬および方法ならびに細胞の培養と関連したこれらの使用を記載するものである。さらに本発明は、幹細胞の表面の特定のグリカンエピトープに対するさらなる結合剤のスクリーニングに関する。グリカン構造の好ましい結合剤としては、酵素、レクチンおよび抗体等のタンパク質などが挙げられる。
幹細胞
幹細胞は一連の成熟した機能細胞を生じうる未分化の細胞である。例えば、造血幹細胞は任意の各種の最終分化した血液細胞を生じ得る。胚性幹(ES)細胞は胚に由来し、多能性であり、そのため任意の器官または組織に、または、少なくとも潜在的に、完全な胚へと発生する能力を有する。
幹細胞の存在を示す最初の証拠は、生殖細胞由来の腫瘍である奇形腫の未分化幹細胞、胚性癌腫(EC)細胞の研究によってもたらされた。これらの細胞は多能性であって不死化しているが、限定的な発生能しか有しておらず、異常な核型を示していることが明らかになった(Rossant and Papaioannou,Cell Differ 15,155−161,1984)。一方、ES細胞は奇形腫環境による選択圧を受けずに正常な胚細胞に由来したものであるため、より高い発生能を保持していると考えられる。
多能性胚幹細胞は従来、主に2種類の供給源より得られてきた。1つは着床前胚の内部細胞塊の細胞の培養で単離することができ、胚性幹(ES)細胞と呼ばれる(Evans and Kaufman,Nature 292,154−156,1981;米国特許第6,200,806号)。多能性幹細胞の第2の種類は、胚の腸間膜または生殖隆起中の始原生殖細胞(PGCS)から単離することができ、胚性生殖細胞(EG)と名付けられた(米国特許第5,453,357号、米国特許第6,245,566号)。ヒトESおよびEG細胞は多能性である。これはin vitroで細胞を分化させることにより、また免疫不全(SCUM)マウスにヒト細胞を注射し、それによって生じた奇形腫を分析することにより(米国特許第6,200,806号)、示された。本明細書で用いられる「幹細胞」という語は、胚幹細胞または胚性幹細胞、およびより組織特異的な幹細胞に分化したその幹細胞;間葉系幹細胞等の成体幹細胞;ならびに骨髄または臍帯血より得られる幹細胞等の血液幹細胞;等を含む幹細胞を意味する。
本発明は特に、胚性および成体幹細胞であってこれらの細胞が造血幹細胞ではない場合の細胞のための、新規マーカーおよび標的構造、ならびにこれらに対する結合剤を提供する。造血CD34+細胞からは、NeuNAcα3Galβ4GlcNAc(Magnani J.US6362010)等の末端シアル化2型N−アセチルラクトサミンなどの特定の末端構造が示唆されており、Slex型構造NeuNAcα3Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Xia L et al Blood(2004)104(10)3091−6)の低発現の徴候が存在する。本発明は、特定の特徴的O−グリカンおよびN−グリカンとは別にNeuNAcα3Galβ4GlcNAc非ポリラクトサミンバリアントにも関する。本発明はさらに、本発明によるCD133+細胞のための新規マーカーおよび新規造血幹細胞マーカーを提供し、特に該構造はNeuNAcα3Galβ4(Fucα3)0−1GlcNAcを含まない。好ましくは、前記造血幹細胞構造は本発明による非シアル化、フコシル化構造Galβ1−3−構造、より好ましくは1型N−アセチルラクトサミン構造Galβ3GlcNAcまたは別に好ましいGalβ3GalNAc基盤の構造である。
ヒトES、EGおよびEC細胞、ならびに霊長類ES細胞は、アルカリホスファターゼ、時期特異的胚抗原SSEA−3およびSSEA−4、ならびにTRA−1−60およびTRA−1−81抗体により認識される表面プロテオグリカンを発現する。典型的にはこれらのマーカーは全てこれらの細胞を染色するが、幹細胞に完全に特異的ではなく、そのため器官または末梢血から幹細胞を単離するのに用いることはできない。
SSEA−3およびSSEA−4構造はガラクトシルグロボシドおよびシアリルガラクトシルグロボシドとして知られており、胚幹細胞の数少ない示唆されている構造のうちの一部であるが、これらの構造の性質は不明確ではない。K21と呼ばれる抗体が胚性癌腫細胞上の硫酸化多糖を結合することが示唆された(Badcock G et al Cancer Res(1999)4715−19)。グリコシル化の細胞型、種、組織および他の特異性の様相によると(Furukawa,K.,and Kobata,A.(1992)Curr.Opin.Struct.Biol.3,554−559,Gagneux,and Varki,A.(1999)Glycobiology 9,747−755;Gawlitzek,M.et al.(1995),J.Biotechnol.42,117−131;Goelz,S.,Kumar,R.,Potvin,B.,Sundaram,S.,Brickelmaier,M.,and Stanley,P.(1994)J.Biol.Chem.269,1033−1040;Kobata,A(1992)Eur.J.Biochem.209(2)483−501)。この結果は天然の胚幹細胞上の構造の存在を示すものではない。本発明はヒト幹細胞を対象とする。
一部の低特異性植物レクチン試薬が、胚幹細胞様材料の結合において報告されている。Venable et al 2005,(Dev.Biol.5:15)は、胚幹細胞のSSEA−4抗体陽性亜集団のレクチン結合を測定した。このアプローチには明白な問題がある。抗体非選択胚幹細胞における構造の発現が示されないのである。SSEA−4は特に多能性幹細胞を選択するために選ばれた。同じBresagen社の科学者はさらに、特定の幹細胞株のSSEA−4の実際の役割は多能性と関連しないことを明らかにした。
この研究は:1)レクチンに結合する分子の実際の量または2)細胞選別または実験上の問題、例えば細胞のトリプシン処理、により引き起こされた欠陥による任意の分子の存在。細胞がトリプシン処理され、これがタンパク質を除去し、次いで有り得る糖脂質結合SSEA4抗体および二次抗マウス抗体により濃縮され、パラホルムアルデヒドにより抗体が除去されることなく固定され、レクチンおよび同一の抗体によって同時に標識され、そして観察されるグリカンプロファイルが同一の科学者による抗体グリコシル化に対するレクチン分析で明らかになるものと同様である(M.Pierce US2005)ことは極めて注意が必要である;または3)レクチンにより結合される実際の構造;を明らかにしていない。細胞への有り得る残留する結合を明らかにするためには用いられた抗体のグリコシル化の分析が必要である(供給源およびロットが示されていない)。SSEA−4陽性細胞の純度は98〜99%と報告されており、これは異常に高い。結合の定量は明らかでなく、図3は、hESC−細胞に結合しないレクチンLTLおよびDBAによる約10%の結合を示している 3頁目、2列目、第2段落および免疫細胞化学4頁最終行による。
当業者はVenable et alの結果を、レクチンの抗SSEA−4抗体への結合によるSSEA−4およびレクチン結合のこのような好都合な共存と考えるであろう。より希な結合は、抗体分子あたりの末端エピトープの低い割合によって生じた、標識可能な抗体の低い密度を反映すると思われる。また、動物由来材料を用いた管理されない細胞培養過程は、精製および純度の分析に用いられる、二次抗体として用いられる抗マウス抗体(どの種類の抗マウスかは明示されていない)により認識され得るN−グリコリル−ノイラミン酸による細胞の混入をもたらすことがあり、これは好都合に高い細胞純度をもたらし得ると考えられる。この研究はSSEA−4標識と関連する「多能性」胚幹細胞のみに関するものであり、本発明のようにその分化したバリアントに関するものではない。結果は、特定の潜在的な単糖エピトープ(6頁目、表1、、および列2)、例えばRCA(リシン、Galまたはラクトースにより阻害され得る)に関してはGalおよびガラクトサミン、TL(トマトレクチン)に関してはGlcNAc、ConAに関してはManまたはGlc、SNAに関してはシアル酸/シアル酸α6GalNAc、HHLに関してはManα;SSEA−4と関連しない部分的結合を有するレクチン:GalNAc/GalNAcβ4Gal(本文中)WFA、PNAに関してはGal、SNAに関してはシアル酸/シアル酸α6GalNAc、への有り得る(恐らく抗体上の)結合を示唆し;および、SSEA−4細胞に部分的に関連するレクチンはPHA−LおよびPHA−EによりGalを、VVAによりGalNAcを、およびUEAによりFucを、およびMAA(ラクトースにより阻害される)によりGalを結合することが示された。UEA結合は内皮マーカーおよびタンパク質上のSer(Thr)に直接結合するO−結合フコースと関連して議論された。背景は、内皮UEA受容体に対するH2型特異性を示唆した。レクチンの特異性はやや異常であるが、レクチンの製品コードまたはイソレクチン番号/名は示されず(PHA−EおよびPHA−L以外)、および、植物は各種特異性を有する多数のイソレクチンを有していることが知られる。
Wearne KA et al Glycobiology(2006)16(10)981−990は植物レクチンによる胚幹細胞の染色も研究した。低特異性試薬を用いたデータは正確なグリカン構造、および特に本発明によりヒト胚幹細胞に対して記載される特異的グリカンコア構造上の伸長構造も末端エピトープの特異的認識のための有用な抗体試薬特異性も示さない。その著者らは、本発明により明らかになったものとは少なくとも部分的に異なるように思われる、レクチン結合に基づくいくつかの結合/非結合構造を推定しており、有り得る技術的問題が示唆される。この研究は他の細胞/細胞材料を対象とした方法におけるレクチンの他の形式の有用性は何も意味してはおらず、本発明の間葉系または他の細胞型に関して何も示唆していない。
本発明は、質量分析プロファイリング、NMR分光法、およびグリカン修飾酵素等の結合試薬により特異的構造を明らかにした。レクチンは一般に低特異性の分子である。本発明は、これまでに記載された単糖エピトープよりも大きな結合エピトープを明らかにした。このより大きなエピトープにより、少なくとも二糖類に対して典型的な結合特異性を有するより特異的な結合物質を設計することができた。本発明は、天然胚幹細胞の分析のための有用な特異性により特定されたレクチン試薬も、管理されないマーカーに対する選択および/または異なる種からの1または2種類の抗体を用いたコーティングを用いることなく明らかにした。MMAによる結合は細胞のほとんどに明らかであったことから、明らかに天然胚幹細胞に対する結合は異なっており、細胞株間の相違が存在し、RCA、LTAおよびUEAは明らかにHESC細胞株を結合していたが他は結合しなかった。
幹細胞の分離および使用のための方法は当該分野において公知である。
造血幹細胞の分析および単離は米国特許第5,061,620号に報告されている。造血CD34マーカーは、血液幹細胞を特異的に同定することが知られる最も一般的なマーカーであり、CD34抗体は幹細胞を血液から移植目的で単離するために用いられる。しかし、CD34+細胞は血液細胞だけに、または主に血液細胞に、分化することができ、各種体細胞へと発生する能力を有する胚幹細胞とは異なる。さらに、CD34+細胞の増殖は不死である胚幹細胞と比べ限定的である。米国特許第5,677,136号はヒト造血幹細胞を、CD59幹細胞マーカーに特異的な抗体を用いて幹細胞から濃縮することによって得るための方法を開示している。CD59エピトープは幹細胞上で高度に利用しやすく、成熟した細胞上ではより利用しにくいか、または存在しない。米国特許第6,127,135号は幹細胞上に発現する固有の細胞マーカー(EM10)に対する特異的な抗体、および造血細胞の試料内の造血幹細胞含有量を測定する方法を提供している。これらの開示は造血細胞に特異的であり、選択に用いられるマーカーはより成熟した細胞上に絶対的に存在しない訳ではない。
造血幹細胞よりも初期の分化段階の多能性(pluripotent)または多分化能(multipotent)幹細胞を実質的に純粋なまたは純粋な形で診断、置換療法、および遺伝子治療の目的において単離するため、多くの試みが為されてきた。幹細胞は遺伝子治療の重要な標的であり、挿入遺伝子は幹細胞が移植された個体の健康を促進するように意図されている。さらに、幹細胞を単離できればそれがリンパ腫および白血病、ならびに他の癌疾患の治療に役立つ場合があり、この際、幹細胞は骨髄または末梢血中の腫瘍細胞から精製され、骨髄抑制化学療法または骨髄破壊的化学療法後の患者に再注入される。
様々な成体幹細胞集団が各種の成体組織から発見されている。造血幹細胞に加え、神経幹細胞が成体の哺乳類の中枢神経系において同定された(Ourednik et al.Clin.Genet.56,267,1999)。成体幹細胞は上皮組織および脂肪組織からも同定されている(Zuk et al.Tissue Engineering 7,211,2001)。間葉系幹細胞(MSC)は肝臓や膵臓等の多くの供給源から培養されている(Hu et al.J.Lab Clin Med.141,342−349,2003)。近年の研究では、一部の体性幹細胞が完全に異なる系統の細胞へと分化する能力を有するようであることが示された(Pfendler KC and Kawase E,Obstet Gynecol Surv 58,197−208,2003)。ある程度の多分化能を有する単球由来(Zhao et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA100,2426−2431,2003)および中胚葉由来(Schwartz et al.J.Clin.Invest109,1291−1301,2002)細胞が同定された。血液中の多分化能「胚様」前駆細胞(“embryonic−like”progenitor cell)の存在も骨髄移植後のin vivo実験によって示唆された(Zhao et al.Brain Res Protoc 11,38−45,2003)。しかし、このような多分化能「胚様」幹細胞は公知のマーカーを用いて同定および単離することができない。
胎児細胞を母体循環系から回収できる可能性は、胎児異常の診断における、胎児に対し非侵襲的なあり得る手段としての興味をもたらした(Simpson and Elias,J.Am.Med.Assoc.270,2357−2361,1993)。出生前診断は世界中の病院において広く行われている。ダウン症等の染色体異常、および嚢胞性線維症等の単一遺伝子欠陥の診断のための、胎児、肝臓または絨毛生検といった従来の方法は非常に侵襲的であり、胎児に対してかなりのリスクがある。例えば羊水穿刺は、子宮に針を挿入して胎児組織または羊水から細胞を回収することを伴う。ダウン症および他の染色体異常を検出し得るこの検査には、1%と見積もられる流産のリスクがある。胎児治療は極めて初期段階であり、広範な障害のための早期検査の可能性は、この領域における研究のペースを間違いなく大幅に速めることになるであろう。そのため、出生前診断の比較的非侵襲的な方法は、非常に侵襲的な従来の方法に対する魅力的な代替手段である。母体血液を基盤とした方法は、より早期かつより容易な診断を妊娠第1期(first trimester)においてより広く利用可能にし、親および産科医の選択肢を増やし、結果として特定の胎児治療の進歩を可能にするであろう。
本発明は、診断、治療および組織工学のための、胚性幹(ES)細胞の特徴を有する幹細胞を、同定、分析および分離する方法を提供する。特に、本発明は、胚幹細胞または胎児細胞を母体血液から同定、選択および分離する方法、ならびに出生前診断および組織工学に用いるための試薬を提供する。本発明は組織および器官からの貴重な幹細胞の同定、分離および分析のために用いられ得る特異的マーカー/結合剤(binder)/結合物質(binding agent)を初めて提供し、胚幹細胞を得るための現在利用可能な方法における倫理上およびロジスティック(logistical)な困難を克服する。
本発明は、分化した体性母親細胞型と反応しない、非常に特異的な種類のマーカー/結合剤構造を開示することにより、胚性または胎児幹細胞の同定および分離のための公知の結合剤/マーカーの限界を克服する。本発明の他の局面においては、フィーダー細胞上では反応しない(すなわち発現しない)、特異的な結合剤/マーカー/結合物質が提供され、それによりフィーダー細胞のポジティブセレクションおよび幹細胞のネガティブセレクションが可能となる。
以下、例示により、式(I)に対する結合剤が、各種細胞系統へと分化する能力を有する胚幹細胞等の多能性または多分化能幹細胞の同定、選択および単離に対して有用なものとして開示される。
本発明の一局面により、末梢血および他の器官における多能性または多分化能幹細胞を同定するための新規方法が開示される。この局面により、胚幹細胞結合剤/マーカーが、幹細胞および/または生殖幹細胞におけるその選択的発現、ならびに分化した体細胞および/またはフィーダー細胞におけるその非存在に基づいて選択される。従って、幹細胞に発現するグリカン構造は、本発明により、血液、組織および器官からの多能性または多分化能幹細胞の単離のための選択的結合剤/マーカーとして用いられる。好ましくは、前記血液細胞および組織試料は哺乳類起源、より好ましくはヒト起源のものである。
特定の一態様によると、本発明は:
i.幹細胞内/上で特異的発現を示し、フィーダー細胞および/または分化した体細胞内/上に発現が存在しないグリカン構造を選択すること;
ii.ならびに、幹細胞内/上の該グリカン構造に対する結合剤の結合を確認すること;
を含む、式(I)のグリカン構造に対する選択的幹細胞結合剤を同定するための方法:
の工程を含む、選択的胚幹細胞結合剤/マーカーを同定するための方法を提供する。
限定されない実施例により、前記結合剤を用いて選択された成体、間葉系、胚性、または造血幹細胞は、任意の種類の幹細胞が欠損した宿主の造血または他の組織系を再生するのに用いることができる。疾患を有する宿主は、幹細胞の再移植を行う前に、骨髄の除去、幹細胞の単離、および薬剤または放射線照射を用いた治療を行うことにより治療され得る。本発明の新規マーカーは各種幹細胞の同定および単離;幹細胞自己再生に関わる増殖因子の検出および評価;幹細胞系統の発生;および幹細胞の発生と関連した因子のアッセイ;に用いることができる。
UEAは赤芽球前駆細胞と関連する内容のWO9425571との関連で示されており、本発明は非赤血球細胞および幹細胞ならびに新規の有効な試薬および複合体の産生にも関する。特定のレクチン(PSA、PNA)が神経幹細胞調製物に対するネガティブ細胞選択に対して示唆されておりJP2003189847(Kainosu Muramatsu et al.):ならびに、(PHA−E、WGA、LACAおよびAAlが肝臓幹細胞調製物に対して示唆されている JP2004344031(Takara Bio,Hidemoto et al)。グリコシル化の細胞型および種特異性のため、これらは本発明とは関連しない。
Con A/Pha Eが動物間葉系幹細胞培養物に対して、特に骨化または軟骨化に対して、関連があるとされており、グリコシル化の種特異性および細胞型特異性のため、データは本発明とは関連しない。さらに、前記レクチンは本発明の最も好ましい末端構造と異なる構造を認識し、本複合体は開示されなかった。JP20040377953;JP2006204200;Exp Cell Res(2004)295(1)119−27。レクチンCon AおよびPha−Eの使用を含む前記方法がウサギおよびマウスの間葉系細胞を含む特定の動物細胞に対して報告されている。グリコシル化は種特異的であり、そのためそのデータはヒトとは関連しないと考えられる。これは、ヒト細胞株のみが前記動物細胞よりもずっと弱く活性化された、同じ発明の図によっても示されている。
発明はさらに、2つの他のレクチンWGAおよび が活性を有しなかったことを示した。従って、
a.ヒト幹細胞との関連においていずれかが用いられるべきである場合、どのレクチンであるかに関する教示が無い
b.示されない場合、本発明の好ましい末端グリカンエピトープ、しかし、活性レクチンConAは極めて非特異的にN−グリカンコア構造、特に複合型および他の型の構造を含むマンノース含有N−グリカンを認識し、Pha−EはN−グリカンコア構造の中央における二つに分かれるGlcNAc分岐を特異的に認識した。不活性レクチンWGAの特異性は、各種グリカンの中央におけるGlcNAc含有構造、およびシアル酸の非特異的認識を含む
c.レクチンの効果は細胞の増殖の減少であった。
d.レクチンの固定化、および特異的な、好ましくは共有結合性の固定化は示されなかった。
グリコシル化およびグリカン認識の種および細胞/組織型特異性を考慮すると、動物間葉系幹細胞からの推測は任意のヒト細胞に対しては、ましてや血液由来幹細胞等の異なる細胞型に対しては、一般化することができない。
本発明は、細胞の末端エピトープグリカンを認識する結合剤の存在下で造血幹細胞を培養することが有用であろうことを明らかにした。好ましい末端エピトープとしては、グリカンの末端還元末端エピトープおよび非還元末端エピトープ等が挙げられる。末端エピトープは、認識のための構造の入手の容易さの点で特に好ましい。
特定のガラクトース結合レクチンが、骨髄移植片からのリンパ球の除去と関連づけられており、WO8000058,EP0015’6790(Sharon N Reisner Y)、これはネガティブセレクションであり、使用は特に骨髄細胞に対してであり、発明の好ましい臍帯血細胞とは異なる。
FRILと名付けられたレクチンおよび関連する材料が、ある種のマンノース結合活性および幹細胞の維持と関連した活性または他の関連性を有すると報告されている:WO2007066352(Dolichos lab lab;ニンニクレクチン(GL)、Musa paradise(BL)、Arthrocarpus integrifolia(AL);Wo9825457、US2003049339、WO0149851:Phaseolus vulgaris Pha−E、D.lab lab、Sphellostylis stenocarpa。本発明は、多くのレクチンがスクリーニングされたと思われる場合の新規レクチン、およびマンノース結合レクチンのための新規の好ましい最適な特異性を明らかにし、本発明はさらに新規材料が結合し得ることに関する。
7つの臍帯血単核球試料(並行する列)の、FITC標識レクチンによるFACS分析。百分率はレクチンに結合する細胞の割合を表す。FITC標識レクチンの略号は本文を参照のこと。 マウスフィーダー細胞層上で増殖させたhESCコロニーのレクチン染色。(A)α2,3−シアル化グリカンを認識するMaackia amuriensis凝集素(MAA)および(B)α−マンノシル化グリカンを認識するPisum sativum凝集素(PSA)を用いた。hESCへのレクチン結合はMAAおよびPSAに対するそれぞれα3’−シアリルラクトースおよびD−マンノースにより阻害され、PSAはhESCのみを細胞透過化処理後に認識した(データ不掲載)。マウス線維芽細胞は両レクチンに対して補完的な染色パターンを有しており、その表面グリカンがhESCとは異なっていたことが示唆された。C.結果は、マンノシル化N−グリカンはhESCの細胞内区画に局在し、一方、α2,3−シアル化グリカンは細胞表面に生ずることを示す。 hESCフコース転移酵素遺伝子発現プロファイルの意味。A.hESCは3つのフコース転移酵素遺伝子:FUT1、FUT4、およびFUT8を発現する。B.FUT1およびFUT4の発現量はhESCにおいてEBに比べ増加し、これは潜在的により複雑なフコシル化をhESCにもたらす。公知のフコース転移酵素グリカン産物を示す。矢印はグリカン鎖の伸長の位置を表す。Asnは糖タンパク質への結合を表す。 hESC N−グライコームのポートレート。4つのhESC株FES21、22、29、および30(黒いカラム)、4つのEB試料(灰色のカラム)、および、前記4つのhESC株から得られた4つのst.3分化細胞試料(白いカラム)それぞれの、最も豊富な50種の中性N−グリカン(A.)および50種のシアル化N−グリカン(B.)のMALDI−TOF質量分析プロファイリング。カラムは各グリカンシグナルの平均存在量を表す(全グリカンシグナルの%)。中性およびシアル化N−グリカン画分に対する[M+Na]+または[M−H]−イオンに対して観察されたm/z値を、それぞれ、x軸上に示す。 構造特異的試薬によるhESCグリカンの検出。検出されたグリカン成分のhESCにおける局在を分析するため、マウスフィーダー細胞層上で増殖させた幹細胞コロニーを、分析結果に基づいて選択された蛍光化グリカン特異的試薬により標識した。A.hESC表面がMaackia amurensis凝集素(MAA)により染色され、α2,3−シアル化グリカンがhESC上で豊富であるがフィーダー細胞(MEF、マウスフィーダー細胞)上では豊富でないことが示唆された。B.一方、hESC細胞表面は、マウスフィーダー細胞を認識したPisum sativum凝集素(PSA)によっては染色されず、α−マンノシル化グリカンがhESC表面上に豊富ではないがマウスフィーダー細胞上には存在することが示唆された。C.3’−シアリルラクトースの添加はMAA結合をブロックし、D.D−マンノースの添加はPSA結合をブロックする。 分析されたhESC、EB、およびst.3試料の50個の最も豊富なシアル化N−グリカンシグナルから選択されたhESC−関連グリカンシグナル(図4.Bから選ばれたデータ)。 分析されたhESC、EB、およびst.3試料の50個の最も豊富なシアル化N−グリカンシグナルから選択された、分化した細胞と関連するグリカンシグナル(図4.Bから選ばれたデータ)。 分化中のN−グリカンの変化の模式図(詳細は必ずしも実際の構造を表さない)。フィンランド人hESC株FES21、22、29、および30の分析によると、hESCの分化はhESC表面分子の大きな変化をもたらす。St.3はEBステージの後の分化ステージを意味する。 本発明を記載するのに用いられる幹細胞の名称。 単離されたヒト幹細胞中性スフィンゴ糖脂質グリカンのMALDI−TOF質量分析プロファイル。x軸:表中に記載された[M+Na]イオンのm/z概算値。y軸:プロファイル中の各グリカン成分の相対モル存在量。hESC、BM MSC、CB MSC、CB MNC:本文中に記載された幹細胞試料。 単離されたヒト幹細胞酸性スフィンゴ糖脂質グリカンのMALDI−TOF質量分析プロファイル。x軸:表中に記載された[M−H]イオンのm/z概算値。y軸:プロファイル中の各グリカン成分の相対モル存在量。hESC、BM MSC、CB MSC、CB MNC:本文中に記載された幹細胞試料。 ヒト胚幹細胞および分化した細胞のN−グリカンの質量分析プロファイリング。前記4つのhESC株(白いカラム)、FES29およびFES30 hESC株由来の胚様体(EB、淡色のカラム)、ならびにFES29由来のステージ3分化細胞(st.3、黒いカラム)の、a 中性N−グリカン、およびb 50種の最も豊富な酸性N−グリカン。カラムは各グリカンシグナルの平均存在量を表す(検出された全グリカンシグナルの%)。エラーバーは検出されたシグナル強度の範囲を表す。提案された単糖組成をx軸上に示す。H:ヘキソース、N:アセチルヘキソサミン、F:デオキシヘキソース、S:N−アセチルノイラミン酸、G:N−グリコリルノイラミン酸、P:硫酸/リン酸エステル。 A)マウス線維芽細胞フィーダー細胞のヒヒポリクローナル抗Galα3Gal抗体染色(左)。hESCコロニーにおける染色の非存在(右)を示す。B)ステージ3ヒト胚幹細胞のUEA(Ulex Europaeus)レクチン染色。FES 30株。 A)FES22ヒト胚幹細胞(多能性、未分化)のUEAレクチン染色。B)FES30ヒト胚幹細胞(多能性、未分化)のUEA染色。 A)FES22ヒト胚幹細胞(多能性、未分化)のRCAレクチン染色。B)FES30ヒト胚幹細胞(多能性、未分化)のWFAレクチン染色。 A)FES30ヒト胚幹細胞(多能性、未分化)のPWAレクチン染色。B)FES30ヒト胚幹細胞(多能性、未分化)のPNAレクチン染色。 A)FES30ヒト胚幹細胞株のGF284免疫染色。免疫染色が初期分化の細胞においてコロニーの端部に認められる(10x倍率)。マウスフィーダー細胞は染色されない。B)GF284の細部を40x倍率で見たもの。この抗体はhESC系統の一部を検出するのに適している。 A)FES30ヒト胚幹細胞株のGF287免疫染色。免疫染色がコロニー全体に認められる(10x倍率)。マウスフィーダー細胞は染色されない。B)GF287の細部を40x倍率で見たもの。この抗体は未分化の多能性幹細胞を検出するのに適している。 A)FES30ヒト胚幹細胞のGF288免疫染色。免疫染色の大部分が初期分化の細胞においてコロニーの端部に認められる(10x倍率)。マウスフィーダー細胞は染色されない。B)GF288の細部を40x倍率で見たもの。この抗体はhESC系統の一部を検出するのに適している。 MSCおよび骨原性に分化した(osteogenically differentiated)細胞におけるCA15−3の免疫染色(MUC−1におけるシアル化炭水化物エピトープ、=GF275)。MSCにおいては点状染色が認められ、骨原性に分化した細胞(分化6週目、集密(confluent)培養)においてはより細胞膜に局在化した染色パターンが認められる。FACS分析においてはGF275免疫染色されるMSCの割合を示す。骨原性に分化した細胞の大部分(80−90%超)がGF275を発現している。 MSCおよび骨原性に分化した細胞の免疫染色。血液型H1(0)抗原、Lewis d(BG4=GF303)。MSCにおいては明瞭な染色は認められないが、骨原性に分化した細胞においては明瞭な免疫染色が70−90%超の細胞において認められる。 MSCおよび骨原性に分化したMSCのHタイプ2血液型抗原(= GF302)免疫染色。MSCの免疫染色が両細胞型の約20〜75%に認められる。 MSCおよび骨原性に分化したMSCのLewis x(SSEA−1 = GF305)免疫染色。MSCにおいては10%未満という極めて少数の細胞しかGF305で染色されない。骨原性に分化したMSCは免疫染色を示さないか、または極めてわずかの免疫染色しか示さない。MSCおよび骨原性に分化したMSCのシアリルLewis x(= GF307)免疫染色。シアリルLewis x免疫染色は、MSCが骨原性方向に分化すると減少する。 MSCおよび骨原性に分化したMSCのCD77(グロボトリオース(GB3)、pk−血液型 = GF298)免疫染色。MSCおよび骨原性方向に分化したMSC(のサブポピュレーション)はCD77を発現している。MSCおよび骨原性に分化したMSCのグロボシドGB4(=GF297)免疫染色。骨原性に分化した細胞と比べ、より断続的なGB4の染色がMSCにおいて認められる。 MSCおよび骨原性に分化したMSCのSSEA−3(= GF353)およびSSEA−4(= GF354)免疫染色。SSEA−3免疫染色はMSCが骨原性方向に分化すると減少する。SSEA−4(= GF354)免疫染色はMSCが骨原性方向に分化すると減少する。 MSCおよび骨原性に分化したMSCのTn(CD175 = GF278)免疫染色。骨原性方向に分化した細胞と比べて少数(5−45%)のMSCがCD175を発現している。 MSCおよび骨原性に分化したMSCのシアリルTn(sCD175 = GF277)免疫染色。5−45%という少数のMSCがシアリルTnを発現している。骨原性に分化した細胞はより多くの、または主にこのエピトープを発現している。 MSCおよび骨原性に分化したMSCの腫瘍胎児抗原(TAG−72 = GF276)免疫染色。TAG72免疫染色はMSCが骨原性方向に分化すると増加するか、またはアップレギュレートされる。 PSAコーティング上で増殖する細胞は、それが網状単層を形成する様式において形態学的に他と異なる。MAAおよびPSA上の細胞はまた、より強固に表面に接着しており、トリプシンによるそれらの剥離は不可能であり、それらの細胞は機械的に掻き取る必要があった。 ECAおよびマトリゲルコーティングにおいて増殖させたhESC。胚幹細胞はECA被覆上において、Matrigel(登録商標)被覆プレート上におけるよりも均一に増殖し、増殖密度の明瞭なバッチ間変異を示さなかった。それらは小さなコロニーを形成し、これはMatrigelとは異なっていた。コロニーはフィーダー細胞上で増殖させたhESCにより形成されるものよりも小さかった。 ECAおよびMatrigel上で増殖させたhESCに対する幹細胞および分化マーカー。図は、幹細胞マーカーOct−4が、2および4回の継代後に、マウスフィーダー細胞上ではアップレギュレートされているがECA被覆プレート上ではアップレギュレートされていないことを示す。分化マーカーの中でもグースコイドは継代2の後に短いアップレギュレーションを示すが、継代4までに、matrigelで増殖させたhESCと同じまたはそれよりも低い水準に減少する。他の分化マーカーSox7は、hESCをECA被覆プレート上で増殖させた際には変化しない。 A.継代P4およびP6。B、4回の継代後のFACS分析 Tra−1−60 32% およびSSEA3 83%。Matrigel 49%および79%。C、継代p5。 D、ECA上での培養のためのマーカーおよびhESC(FES29 p36)のFACS分析。E、Matrigel p4 vs.Matrigel p2+ECAのFACS分析。 A、FES29 p38、Matrigel p3、およびレクチンp1。FACS:Tra−1−60 70% およびSSEA3 89%。B、レクチン上で増殖させた細胞の継代4の像。UEA、DSAおよびガレクチン。 各種レクチン上で増殖させたMSC細胞。PSAレクチン、細胞はCD105陽性、CD73陽性、CD45陰性であり、HLA−DRは21.6%である。 HHA上のMSCはCD105陽性、CD73陽性、CD45陰性を示し、HLA−DRは27.4%である。 各種レクチン上で増殖させたMSC細胞。LcHAレクチン、細胞はCD105陽性、CD73陽性、CD45陰性であり、HLA−DRは27.3%である。 ECAレクチン、細胞はCD105陽性、CD73陽性、CD45陰性であり、HLA−DRは26%である。 各種レクチン上で増殖させたMSC細胞。ConAレクチン、細胞はCD105陽性、CD73陽性、CD45陰性であり、HLA−DRは19.6%である。 MAAレクチン、細胞はCD105陽性、CD73陽性、CD45陰性であり、HLA−DRはR 28.2%である。 各種レクチン上で増殖させたMSC細胞。SNAレクチン、細胞はCD105陽性、CD73陽性、CD45陰性であり、HLA−DRは18.3%である。 ガレクチン−1レクチン、細胞はCD105陽性、CD73陽性、CD45陰性であり、HLA−DRは23.8%である。プラスチック上HLA−DRは56.5%である。 Erythrina cristagalliレクチンの部分アミノ酸配列をコードする合成遺伝子(遺伝子配列番号899)。実施例24参照。 Erythrina cristagalliレクチンの部分アミノ酸配列をコードする合成遺伝子(遺伝子配列番号899)。実施例24参照。 Erythrina cristagalliレクチンの非グリコシル化部分アミノ酸配列をコードする合成遺伝子(遺伝子配列番号900)であって、配列番号899と比較した際にヌクレオチド部位368(A>C)および370(C>A)に点突然変異を有する。実施例24参照。 Erythrina cristagalliレクチンの非グリコシル化部分アミノ酸配列をコードする合成遺伝子(遺伝子配列番号900)であって、配列番号899と比較した際にヌクレオチド部位368(A>C)および370(C>A)に点突然変異を有する。実施例24参照。 非グリコシル化ngECA精製工程のSDS−PAGE分析。レーン1:Lac−アガロース工程の未結合物質(フロースルー)。レーン2:洗浄中の溶出物質。レーン3:親和性精製され、透析されたngECA(左から1番目のレーン上の分子量標準に基づくとc.30kDa)であって、有意な不純物を示さない。実施例24参照。
本発明の一局面において、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより、幹細胞の状態の調節のための方法が提供される。
他の態様において、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより、幹細胞の未分化状態の支持のための方法が提供される。
他の態様において、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより、細胞の形態学的状態および分化と関連した状態を含むがそれらに限定されない生物学的状態の変化のための方法が提供される。
他の態様において、少なくとも1個の幹細胞または幹細胞群を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより、接着状態の変化のための方法が提供される。
他の態様において、少なくとも1個の幹細胞または幹細胞群を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより、幹細胞の増殖速度を変化させるための方法が提供される。
方法の一態様において、表面はそこに付着した結合剤を有し、前記結合剤分子は幹細胞の生物学的状態を調節する。関連する態様において、表面は生体適合性、天然もしくは合成であってよく、またはポリマーを含む。特定の態様において、該ポリマーはポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリ酢酸ビニル、ブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリウレタンから選択される。さらに他の態様において、ポリマーは乳酸または共重合体を含んでいてよい。さらになお他の態様において、ポリマーは共重合体であってよい。このような共重合体は各種の公知の共重合体であってよく、乳酸および/またはグリコール酸(PLGA)を含んでいてよい。
生体適合性表面に関しては、このような表面は生分解性または非生分解性であってよい。関連する態様において、非生分解性表面はポリ(ジメチルシロキサン)および/またはポリ(エチレン−酢酸ビニル)を含んでいてよいがそれらに限定されない。さらに、生体適合性表面としてはコラーゲン、金属、ヒドロキシアパタイト、ガラス、アルミン酸塩、バイオセラミック材料、ヒアルロン酸ポリマー、アルギン酸塩、アクリル酸エステルポリマー、乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマー、乳酸/グリコール酸ポリマー、精製タンパク質、精製ペプチド、および/または細胞外マトリクス組成物等が挙げられるが限定されない。
さらなる態様において、生体適合性表面は埋め込み型装置と関連してもよい。埋め込み型装置は使用が望まれる任意のものであってよく、ステント、カテーテル、ファイバー、中空糸、パッチ、または縫合糸等であってよい。関連する態様において、表面はガラス、シリカ、シリコン、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、ヒドロゲル、PTFE、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、またはポリアクリルアミドであってよい。さらなる態様として、表面が脂質、プレート、バッグ、ロッド、ペレット、ファイバー、またはメッシュを含む場合等が挙げられる。他の態様としては、表面が粒子である場合、およびさらに該粒子がビーズ、ミクロスフィア、ナノ粒子、またはコロイド粒子を含む場合等が挙げられる。粒子およびビーズのサイズも選択することができ、ビーズが直径約5ナノメートル〜約500ミクロンである場合等、各種のサイズを有していてよい。
好ましい態様において、前記結合剤はレクチンである。他の好ましい態様において、該結合剤は抗体である。他の好ましい態様において、該結合剤はグリコシダーゼであって、これは活性部位を突然変異させたものであってよい。
幹細胞は、例えば、間葉系幹細胞、または胎性幹細胞であり得る。幹細胞は臍帯、例えば、臍帯血等に由来するものであり得る。幹細胞はCD34+細胞マーカーを発現する臍帯に由来するものであり得る。臍帯幹細胞は、例えば、ヒト等の哺乳動物に由来するものであり得る。増殖培地は所望により、増殖因子、増殖因子の組み合わせ、または幹細胞の生存能力を増加させ得る実質的な栄養分も含んでいてよい。
本発明の一部の態様において、少なくとも1個の幹細胞を結合剤と接触させることにより、幹細胞の拡張または増殖のための方法が提供される。幹細胞は、a)胚幹細胞、胚体外幹細胞、クローニングされた幹細胞、単為生殖由来細胞等の全能性細胞;b)造血幹細胞、脂肪由来幹細胞、間葉系幹細胞、臍帯血幹細胞、胎盤由来幹細胞、脱離歯(exfoliated tooth)由来幹細胞、毛包幹細胞もしくは神経幹細胞等の多能性細胞;またはc)神経、肝臓、脂質生成、骨芽、破骨、心臓、腸、または内皮系統の前駆細胞等の組織特異的前駆細胞であってよい。
本発明の他の一態様は、幹細胞を結合剤と接触させることであり、ここで前記結合剤は、LFA−3、ICAM−1、PECAM−1、P−セレクチン、L−セレクチン、CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD61、CD18、CD29、6−19、トロンボモジュリン、テロメラーゼ、CD10、CD13、STRO−1、STRO−2、VCAM−1、CD146、THY−1等のマーカーで特徴付けられる間葉系幹細胞等の多能性幹細胞の増殖を刺激する。結合剤は単独で、例えば表面に固定化された増殖の刺激剤として、または前記細胞の培養に有用であることが知られる培地への添加剤として用いることができる。
本発明の一部の態様において、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより、実質的に分化を誘導しない幹細胞の拡張または増殖のための方法が提供される。前記の少なくとも1個の幹細胞は、例えば、身体の全組織型の細胞へ分化することができる、全能性であり得る。全能性幹細胞は、例えば、胚幹細胞、胚体外幹細胞、クローニングされた幹細胞、単為生殖由来細胞から選択され得る。胚幹細胞は、例えば、1または複数種の次のマーカー:ステージ特異的胚抗原(SSEA)3、SSEA 4、Tra−1−60およびTra−1−81、Oct−3/4、Cripto、ガストリン放出ペプチド(GRP)受容体、ポドカリキシン様タンパク質(PODXL)、またはヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)を発現することができる。造血幹細胞は、例えば、1または複数種の次のマーカー:CD34、c−kit、および多剤耐性輸送タンパク質(ABCG2)を発現することができる。脂肪由来幹細胞は、例えば、1または複数種の次のマーカー:CD13、CD29、CD44、CD63、CD73、CD90、CD166、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)、およびABCG2を発現することができる。間葉系幹細胞は、例えば、1または複数種の次のマーカー:STRO−1、CD105、CD54、CD106、HLA−Iマーカー、ビメンチン、ASMA、コラーゲン−1、およびフィブロネクチンを発現することができるが、HLA−DR、CD117、および造血性細胞マーカーは発現できない。臍帯血幹細胞は、例えば、1または複数種の次のマーカー:CD34、c−kit、およびCXCR−4を発現することができる。胎盤幹細胞は、例えば、1または複数種の次のマーカー:Oct−4、Rex−1、CD9、CD13、CD29、CD44、CD166、CD90、CD105、SH−3、SH−4、TRA−1−60、TRA−1−81、SSEA−4およびSox−2を発現することができる。神経幹細胞は、例えば、RC−2、3CB2、BLB、Sox−2hh、GLAST、Pax 6、nesting、Muashi−1、およびプロミニンの発現により特徴付けることができる。前記の少なくとも1個の幹細胞は、身体の多数の細胞に分化し得るが全てには分化し得ない多能性であってよい。多能性幹細胞は、造血幹細胞、脂肪幹細胞、間葉系幹細胞、臍帯血幹細胞、胎盤幹細胞または神経幹細胞から選択され得る。前記の少なくとも1個の幹細胞は、限られた組織型に分化し得る前駆細胞であり得る。前駆幹細胞(progenitor stem cell)は、例えば、神経、肝臓、脂質生成、骨芽、破骨、肺胞、心臓、腸、内皮前駆細胞から選択され得る。
本発明の一部の態様において、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより、実質的に分化を誘導しない幹細胞の拡張または増殖のための方法が提供される。細胞培養液は、例えば、単一または複数の増殖因子を添加され得る。増殖因子は、例えば、WNTシグナル伝達アゴニスト、TGF−b、bFGF、IL−6、SCF、BMP−2、トロンボポエチン、EPO、IGF−1、IL−11、IL−5、Flt−3/Flk−2リガンド、フィブロネクチン、LIF、HGF、NFG、アンギオポイエチン様2および3、G−CSF、GM−CSF、Tpo、Shh、Wnt−3a、Kirre、またはそれらの混合物から選択することができる。培地は、例えば、Roswell Park Memorial Institute(RPMI−1640)、ダルベッコ修飾必須培地(DMEM)、イーグル修飾必須培地(EMEM)、Optimem、およびIscove培地から選択することができる。血清のソース(source)を培地に添加してよい。培地中の血清の濃度は約0.1〜25%の間であってよい。培地中の血清の濃度は約10%であってよい。血清はヒト成人血清、ヒト胎児血清、ウシ胎児血清および臍帯血血清から選択され得る。
本発明のさらなる態様において、増殖能力が維持されているが分化状態における阻害(block)を有する幹細胞が提供され、これは幹細胞を結合剤と接触させて培養することにより誘導され得る。
幹細胞は、例えば、全能性幹細胞、多能性幹細胞、および前駆幹細胞から選択され得る。幹細胞は結合剤との接触の下、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100回の継代の期間維持してよい。幹細胞は最初に結合剤との接触の下である期間培養し、これに続き、異なる結合剤ならびに同一のまたは各種のサイトカインまたは増殖因子の混合物を含んだ第2の培地中で培養してよい。幹細胞は最初に結合剤および増殖因子との接触の下で例えば20回の継代の間培養してよい。幹細胞は、WNTシグナル伝達アゴニスト、TGF−b、bFGF、IL−6、SCF、BMP−2、トロンボポエチン、EPO、IGF−1、IL−11、IL−5、Flt−3/Flk−2リガンド、フィブロネクチン、LIF、HGF、NFG、アンギオポイエチン様2および3、G−CSF、GM−CSF、Tpo、Shh、Wnt−3a、Kirre、およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の増殖因子を添加し得る細胞培地中で維持してよい。幹細胞は、次の増殖因子を含んだ増殖培地中、DMEM培地中でも維持してもよい:IL−3(約20ng/ml)、IL−6(約250ng/ml)、SCF(約10ng/ml)、TPO(約250ng/ml)、flt−3L(約100 ng/ml)。幹細胞は次のうち1または複数より選択される薬剤の存在下で維持されてよい:GSK−3の阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素活性の阻害剤、およびDNAメチル基転移酵素活性の阻害剤。
本開示の一態様は多能性ヒトES細胞の精製された調製物に関するものであり、該細胞は:(i)内胚葉、中胚葉、および外胚葉組織の派生物に分化する能力、(ii)正常な核型、(iii)少なくとも約10回の継代の間、in vitro培養において増殖する能力を有し、ならびに(iv)前記細胞の本発明の結合剤との接触で得られる。
好ましい一態様において、結合剤はレクチン、抗体またはグリコシダーゼである。
本明細書において用いられる「多能性ヒトES細胞の精製された調製物」という語は、精製された調製物内の実質的に全てのヒトES細胞が記載される特徴を有することを意味する。従って、多能性ヒトES細胞の精製された調製物は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%が調製物中においてヒトES細胞の一般的な集団の特徴、例えば内胚葉、中胚葉、および外胚葉組織の派生物に分化する能力、正常な核型、ならびに少なくとも約10回または20回の継代の間、in vitro培養において増殖する能力、を有する細胞を含み得る。
本明細書において用いられる「薬剤」または「結合剤」または「結合物質」の語は、幹細胞上の末端グリカン構造に結合するおよび/またはそれを認識する分子のことを指す。結合剤は、任意の細胞表面部分、または、例えば受容体、抗原決定基、もしくは標的細胞集団上に存在する他の結合部位等の末端グリカン構造を有する細胞表面部分に結合し得る。結合剤はタンパク質、ペプチド、抗体およびその抗体断片、レクチン、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェリン酵素等であってよい。本明細書内において、および幹細胞調節との関連において、レクチンおよび抗体がこのような結合剤の典型例として用いられる。
本明細書において用いられる「表面」とは、そこに付着する薬剤を有し得る任意の表面のことを指し、金属、ガラス、プラスチック、共重合体、コロイド、脂質、細胞表面等が挙げられるが限定されない。本質的に、そこに結合または付着した薬剤を保持しうる任意の表面。
例えば、本開示のヒトES細胞は(1)10、20、40または60回超の継代の間、in vitro培養において増殖し得る;(2)結合剤、例えばレクチン、抗体またはグリコシダーゼの存在下で培養された際に分化が阻害される;(3)SSEA−3およびSSEA−4マーカーに対して陽性である;(4)TRA−1−60およびTRA−1−81マーカーに対して陽性である;(5)Oct−4マーカーに対して陽性である;または(6)浮遊培養にかけた際、または免疫無防備状態の動物、好ましくはマウスに移植した際、胚様体を形成し得る。好ましくは、本開示の多能性ヒトES細胞の調製物は動物生成抗体および血清に対して曝露されなかった。
好ましい態様において、前記調製物は培養における約10回の継代後、より好ましくは培養における約20回の継代後、さらに好ましくは培養における約40回の継代後、さらになお好ましくは培養における約60回の継代後、最も好ましくは培養における100回の継代後に実質的に未分化のままである。調製物中の未分化ES細胞のコロニーは周囲の分化した細胞に近接していてもよいが、該調製物はそれにもかかわらず、結合剤の存在下、適当な条件の下で培養または継代された際に実質的に未分化のままであり、個々の未分化ES細胞は細胞集団の実質的な割合を構成する。実質的に未分化の調製物は少なくとも約20%の未分化ES細胞を含み、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、または90%のES細胞を含んでいてよい。
本発明は、特異的結合剤(結合)分子による、幹細胞試料からの広範なグリカン混合物の分析に関する。
本発明は特に、式I:
Hexβz{Rn1HexNAcXyR (I)
[式中、Xは無であるかグリコシド結合した二糖エピトープβ4(Fucα6)GNであり、ここでnは0または1であり;
HexはGalまたはManまたはGlcAであり;
HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり;
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβ、または誘導体化アノマー炭素からの結合であり、
zは結合位置3または4であり、ただしzが4である場合にはHexNAcはGlcNAcであり、HexはManであるか、またはHexはGalであるか、またはHexはGlcAであり、zが3である場合には、HexはGlcAまたはGalであり、HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり;
はコア構造に結合した1〜4個の天然型炭化水素置換基を表し;
は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、あるいは、タンパク質由来のアスパラギン、N−グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含む天然アスパラギン結合N−グリコシド誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギン、N−グリコシドアミノ酸および/またはペプチドを含む天然セリンまたはスレオニン結合O−グリコシド誘導体であり;
HexNAcがGalNAcである場合、R3は無であるか、もしくはGlcNAcβ6を示す分岐構造であるか、もしくはそのGalNAcに結合する還元末端にGlcNAcβ6を有するオリゴ糖であり、または、HexがGal、HexNAcがGlcNAc、およびzが3である場合、R3は無もしくはFucα4であり、または、zが4である場合、R3は無もしくはFucα3である]
のグリカンマス成分(glycan mass components)のそれぞれに対する単糖組成を有するグリカン材料を含む、本発明の幹細胞のグライコームに関する。
典型的なグライコームはN−グリカン、O−グリカン、糖脂質グリカン、ならびに中性および酸性サブグライコーム(subglycome)等のグリカンの亜群を含む。
本発明は試料中に存在するグリカンの分析に基づく幹細胞試料の臨床状態の診断に関する。本発明は特に、癌および癌の臨床状態の診断、優先的には幹細胞と癌性細胞との区別、ならびに幹細胞株および調製物における癌化の検出に関する。
本発明はさらに幹細胞試料中に存在するグリカン混合物の構造的分析にも関する。
発明の記載
本発明は幹細胞の状態の調節のための方法に関するものであり、ここで少なくとも1個の幹細胞が、本明細書において結合剤とも呼ばれるグリカン結合タンパク質と接触させられる。好ましい一態様において、結合剤は幹細胞の表面上の少なくとも1個のグリカン構造に結合し得る。より好ましくは結合剤は幹細胞の末端グリカン構造を認識する。
本発明は非造血幹細胞の調節または培養に関するものであり:(i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;および(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、グリカン構造を結合する1または複数種の結合剤と接触させることを含む。本発明はさらに、工程(iii)前記細胞を、所望の刺激、状態変化または増殖に十分な期間インキュベートすること、またはiii)幹細胞の増殖が実質的に分化を伴わずに起こる場合に幹細胞を培養すること、を含む。
本発明の一局面において、幹細胞の状態の調節のための方法が、少なくとも1個の幹細胞を結合剤と接触させることにより提供される。該結合剤は好ましくは幹細胞の末端グリカン構造を認識する。
本発明の一局面において、前記結合剤はグリカン結合タンパク質の複合体、好ましくは多価の複合体である。好ましい一態様において、本発明は幹細胞を結合剤の存在下で調節する方法に関するものであり、該結合剤は固定化される。好ましい固定化は非共有結合性相互作用による固定化および共有結合性の固定化である。
他の態様において、幹細胞の未分化状態の支持のための方法が、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより提供される。本発明は幹細胞の培養に関するものであり、幹細胞の増殖は実質的に分化を誘導することなく生ずる。
本発明は好ましい一態様において本発明の非造血幹細胞、最も好ましくは胚性または間葉系幹細胞に関する。
本発明はさらに、造血幹細胞の調節または培養のための結合剤を選択するための方法に関するものであり:(i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;および(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、グリカン構造を結合する1または複数種の結合剤と接触させること、を含み、該結合剤はManα結合レクチンFRIL群レクチンもしくは同様な特異性を有するレクチンまたは造血幹細胞の培養のために用いられる他のレクチンではなく、または前記結合剤は共有結合的に表面に付着する。
造血幹細胞の培養のための好ましい結合剤は本発明により明らかになった造血幹細胞のグリカンに結合するための特異性を有する。
本発明はさらに、造血幹細胞等の幹細胞の調節に関するものであり、該調節は細胞の分化を伴う。
他の態様において、細胞の形態学的状態および分化関連状態等であるが限定されない生物学的状態の変化のための方法が、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより提供される。
他の態様において、接着状態の変化のための方法が、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより提供される。
他の態様において、幹細胞の増殖速度を変えるための方法が、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより提供される。
好ましい一態様において、前記結合剤はレクチンである。ヒト胚幹細胞のための最も好ましいレクチンは、ECA(E. cristacalli)である。好ましい一態様において、hESCはECA被覆表面上で増殖させられ、本質的にフィーダー細胞を含まない。好ましくは、ECA被覆表面はhESCを実質的に未分化の状態で維持する。他の好ましい態様において、hESC培地は馴化培地、好ましくはmEFまたはhEF馴化のものを含む。好ましくはhESCはマウスフィーダー細胞上で増殖させられ、ECA被覆プレート上に移されて増殖させられる。より好ましい一態様において、hESCは胚盤胞から得られ、ECA被覆表面上に直接被覆される。hESCはコラゲナーゼ処理を用いて増殖させることができる。好ましくは、hESCはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて増殖/継代することができ、これは、反復的なプロテアーゼへの曝露により引き起こされる、あり得る細胞の損傷を減少させると考えられる。
他の好ましい態様において、前記結合剤はグリコシダーゼであり、これは活性部位が突然変異していてもよい。
本発明は、幹細胞の未分化状態を支持するための方法を、少なくとも1個の幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤と接触させることにより提供する。好ましくは、該方法は、幹細胞を表面上に固定化された結合剤と接触させることを伴う。好ましくは該表面は培養皿またはシャーレの底部である。
さらに、幹細胞増殖の速度を増加させ、それに加えて幹細胞を未分化状態で維持する薬剤に対する需要が存在する。さらに、幹細胞増殖の速度を減少させ、および/または幹細胞を未分化の状態で維持する薬剤に対する需要が存在する。さらに、幹細胞の接着状態、形態、増殖速度および/または分化状態を変化させる薬剤に対する需要が存在する。
これは、一般に、幹細胞は固有の生理学的ニッチ内に存在しており、このようなニッチの模倣物中で細胞の増殖を行っても、この幹細胞ニッチの模倣物は臨床の場において利用不可能であることが多いということを考えた場合に特に明らかである。その一例は、胚幹細胞の最適な増殖が未だ主としてマウスフィーダーを用いて達成されるという事実である。本発明は本質的にフィーダー細胞および潜在的な混入源無しに条件を再現するための方法および組成物を教示する。
従って、幹細胞集団が成体または胚性供給源のいずれに由来しても、幹細胞を培地中で増殖させて異種の細胞の混合物の集団または精製された細胞集団を増加させることができる。細胞増殖は、しかし、遅い場合があり、培養期間中に細胞が望ましくない細胞型に分化する場合がある。従って、幹細胞一般、および特に定義された幹細胞集団の増殖速度を向上させる方法は幹細胞の臨床用途を促進させるために有用であろう。従って、求められているのは培養液中で増殖させた際に幹細胞の拡張または増殖の速度を増加させる新規方法である。さらに、求められているのは、培養液中で増殖させた際に幹細胞の接着状態、形態、増殖速度および/または分化状態または増殖といった生物学的特徴を調節する新規方法である。
細胞集団を細胞表面部分に結合する結合剤(レクチン等)と接触させることにより、該細胞集団を刺激/調節することができる。結合剤は溶液中であってよく、しかし表面に付着していてもよい。結合剤の細胞表面部分/グリカン構造上への結合は、一般にシグナル伝達経路の活性化を誘導する。
本発明は、幹細胞の末端グリカン構造を認識する、特異的結合構造、結合剤を明らかにした。本発明は特に、幹細胞の調節のための結合剤の使用に関する。さらに本発明は特に、幹細胞結合分子の新規複合体に関する。結合した幹細胞結合分子は多価の形態、特に固定化された形態の幹細胞の調節に対して特に好ましい。結合分子は好ましくは表面上に固定化される。
グライコーム−幹細胞からの新規グリカン混合物
本発明は幹細胞から各種サイズの新規グリカンを明らかにした。幹細胞は小さなオリゴ糖から大きな複合構造にまでわたる範囲のグリカンを含んでいる。本分析は多数の成分と構造タイプとを相当量有する組成を明らかにする。これまで、これらの希少材料からの全グライコームは入手できず、幹細胞の遊離可能なグリカンの混合物、すなわちグライコームの性質は未知であった。
本発明は細胞表面のグリカン構造が初期のヒト細胞の各種集団、すなわち本発明の好ましい標的細胞集団、の間で異なることを明らかにした。該細胞集団は特異的に増加した「レポーター構造」を有していることが明らかになった。
細胞表面のグリカン構造は一般に多数の生物学的役割を有することが知られている。そのため、細胞表面からの正確なグリカン混合物についての知識は、細胞の状態に関する知識のために重要である。本発明は、複数の条件が細胞に影響し、そのグライコームに変化をもたらすことを明らかにした。本発明は、ヒト幹細胞から新規グライコーム成分および構造を明らかにした。本発明は特に、特異的結合剤分子によって分析することができる、特異的な末端グリカンエピトープを明らかにした。
好ましい末端エピトープは、実施例の広範な構造データから得られた構造表内の本発明の式に示されている。本発明は、好ましくは結合剤により、好ましくは他の担体構造上の同一の末端構造を効果的に認識しない高特異性結合剤により、認識される新規の伸長結合剤標的エピトープを明らかにした。本発明は特に、間葉系または胚幹細胞の濃縮および/または培養のための特異的結合剤の使用に関する、本発明はさらに、末端エピトープの識別に関するものであり、ここで末端N−グリカンエピトープはマンノースにβ2結合し、O−グリカンN−アセチルラクトサミン基盤エピトープはGalNAcにβ6結合し、糖脂質N−アセチルラクトサミン基盤エピトープはGalにβ3結合する。
フコシル化構造
i)α3−フコシル化構造、
好ましいα3−フコシル化構造は特にLewis x、より好ましくはシアリルLewis xを含む。本発明は好ましい一態様において、特異的結合試薬による細胞表面上のα3−フコシル化構造への結合によって濃縮された幹細胞集団に関する。
本発明はさらに、特に細胞培養の使用のための、α3−フコース特異的結合試薬と幹細胞との複合体に関する。
特異的シアリルLewis x構造は効果的に間葉系または胚幹細胞特異的であり、細胞の結合および操作のために有用であることが明らかになった。
sLexのための好ましい結合試薬としてGF526、およびGF307等が挙げられる。
好ましい一態様において、シアリルLewis x特異的試薬は特にコアII sLex[SAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6(R1Galβ3)GalNAcαSer/Thr[式中、R1すなわちシアル酸(SAα3)または無]を抗体GF526と同様に結合する。本発明は、特に幹細胞の培養のための、特にsLexおよびコアIIsLEx陽性細胞の、特異的結合試薬による、幹細胞を含んだ材料からの選択に関する。好ましい一態様において、細胞選別システムはFACSまたは結合剤を含んだ固相である。
幹細胞を増殖させるための好ましいレクチン試薬
本発明は幹細胞を増殖させることとの関連において有用な新規レクチン試薬を明らかにした。
組み替えレクチン
レクチンの好ましい型は、非哺乳類、好ましくは非動物細胞培養において産生された組み替えタンパク質である。このようなタンパク質は特に低い混入のリスクを有すると考えられる。好ましい産生宿主としては細菌、昆虫、イースト、菌類または植物細胞等が挙げられ、イーストまたは菌類が、アレルゲン性植物材料または潜在的エンドトキシン含有細菌産生と比べ、潜在的に有害な成分の量が最も少ないことから好ましい。実施例24にhESC細胞の培養に特に有用な新規組み替えレクチンを示す。
グリカン改造レクチン
好ましい一態様において、本発明は生物活性グリコシル化を減少させるために改造された天然グリコシル化レクチンの使用に関する。動物グリコシル化、および非動物グリコシル化さえも、生物活性、抗原性または免疫原性構造を含んでおり、これは治療用幹細胞調製物とともに患者に移された場合に有害であり得るか、または動物モデルにおける誤った研究をもたらすか、または培養された細胞に天然グリカン結合受容体を介して変化を引き起こす。
グリカンは好ましくは
a)グリカン/グリコシル化部位の除去または
b)グリカンの不活性化
により改造される。
非グリコシル化レクチン
植物レクチン等の天然グリコシル化レクチンの非グリコシル化型は、複数の糖型を有するグリコシル化タンパク質と比べ、タンパク質が均質であることから、生物工学的方法に対して有用であり得ると考えられる。非グリコシル化レクチンは大腸菌によるもの等の原核細胞系において産生されてよく、例えばECAレクチンは細菌中で産生されている。糖アフィニティーカラムと反応性の細菌内毒素および潜在的細菌レクチンまたはグリコシダーゼのため、菌類のイーストの発現が好ましい。
グリカン不活性化レクチン
本発明はさらに、レクチンのグリカンを不活性型に修飾することに関する。好ましい一態様において、グリカンは酸化により、好ましくはperjodate酸化により、修飾され、さらに不活性型に派生し、またはグリカンが細胞による認識に対して立体的に有効でないように固相へのグリカンから(に対して)結合させられる。
グリカン結合レクチン
グリカン不活性化レクチンのグリカン結合型は、受動的にまたは非特異的に化学的に固相に接着したレクチンと比べ、他の利点を有する。何故ならこれらの方法は少なくとも部分的にレクチンの結合部位の妨げとなる場合があるためである。さらに、グリカン結合レクチンは表面に均一に接着され得る。本発明は、タンパク質に対するビオチン化等の標準的な結合手段がタンパク質の生物活性を減少させ得ることを明らかにした。実施例において
グリコシル化部位変異組み替えECAレクチン
本発明は、好ましい一態様において、組み替え非グリコシル化(aglycosylated)ECAタンパク質であって該タンパク質のNグリコシル化部位が変異したものに関する。
ECAレクチンの好ましい変異型の一つは部位113のアミノ酸残基NがQとなった変異を含み、グリコシル化部位NNSが変化してQNSを形成する。Q残基は天然アミノ酸残基の最も近い模倣物として好ましい。アスパラギン残基はいくつかの他の残基に変化させ得ると考えられ、レクチンの活性を維持することが可能である。さらに、NNSグリコシル化部位はセリン残基等の他の残基を、例えばアラニンに変化させることにより、または長いもしくはプラリン(praline)残基をNとSとの間に導入することにより、不活性型に変異させることができ、このようなアプローチによりタンパク質の性質を部分的に変化させることができる。
本発明はさらに、表面に結合した組み替え非グリコシル化ECAタンパク質に関する。該タンパク質は受動的に表面に吸着させられるか、またはクローニングされ、結合可能なアミノ酸残基を有し、または天然に入手可能な残基から結合され、特異的にまたは非特異的にレクチンの炭水化物結合活性を維持し得ると考えられる。本発明は、ECAの組み替え型がECA調製物と比べ、細胞培養において、平均すると等しくまたはより効果的であったことを明らかにした。
本発明は、組み替え非グリコシル化N−グリコシル化部位変異ECAタンパク質またはその機能断片をコードするアミノ酸配列に関する。
さらに、いくつかのアミノ酸残基の相違のみを有する、機能的に同等な、変異ECAレクチンの相同バリアントが存在すると考えられる。本発明は、1〜6、より好ましくは1〜4アミノ酸残基の相違、または97%超の相同性、またはより好ましくは98%、および最も好ましくは99%の相同性を有する、ECAレクチンと事実上同一なレクチンに関する。本発明は、タンパク質配列が少なくとも50%、より好ましくは65%、さらに好ましくは75%、さらになお好ましくは85%、および最も好ましくは95%相同な相同レクチンに関するものであり、該レクチンは効果的にN−アセチルラクトサミンに結合し、ECAと類似のオリゴ糖特異性を有する。
本発明はさらに、非グリコシル化ECAタンパク質またはその機能的ホモログもしくは機能断片をコードする核酸配列に関する。本発明はさらに、前記核を含む宿主細胞に関する。
レクチン上で増殖させた胚幹細胞
本発明は、各種レクチン上でHESC細胞を増殖させることが可能であることを明らかにした。本発明は管理された条件において効果的に胚幹細胞を産生するための方法を提供する。現在の不均質な、および動物由来の材料、例えば線維芽細胞フィーダー細胞またはマトリゲルは、再現性、動物由来の有害な分子、例えばN−グリコリルノイラミン酸(NeuGc)等の抗原性構造によるあり得る混入、ウイルス、プリオンおよび他の感染性病原体のリスクに関して深刻な問題を含むと考えられる。レクチンタンパク質は 等の許容される動物供給源から入手可能である。本発明は細胞培養槽を被覆する単一の純粋なタンパク質を含んだ、細胞を支持するマトリクスを提供する。
レクチンの細胞の培養中に幹細胞マーカーの発現の量および形態の変化があった。しかし、これらは培養中に可逆的であるか、または細胞がレクチンからマトリゲルに移された場合に従来に変化するようである。
レクチンは細胞の接着および増殖を補助する。増殖中の細胞は、matrigel上でまたは従来の支持体とともに形成された幹細胞コロニーと比べ、通常と異なる小細胞塊の形態および細胞の形状を有する。細胞はマトリクス上で一時的に特性の変化を伴って増殖する。
継代
レクチン上における幹細胞の増殖の新規方法は、さらなる利点を示した。細胞に有害であり得る酵素または掻き取りを用いることなく、穏やかに振とうする形式の動作により細胞を剥離することが可能であろう。
レクチン活性の阻害による細胞遊離の制御
本願発明者らは、細胞を細胞培養槽または容器から剥離するために阻害剤レクチンの使用が可能であろうとさらに考えた。
好ましいレクチン型
本発明は、ヒト胚幹細胞が、好ましくはECA、ガレクチン、DSAおよびUEA−1の群から選択される(Fucα2)Galβ4GlcNAc[式中、nは0または1]認識レクチンとの接触において、特に効果的に培養されることを明らかにした。Galβ4GlcNAc特異的なレクチンECA、ガレクチン、DSAは初期の接着および増殖のために好ましく、Fucα2Galβ4GlcNAcは実質的に後の段階での細胞収率のために好ましい。ECA型レクチンは幹細胞マーカーのより良好な保存のため、ガレクチンまたはDSA型レクチンよりも好ましい。実施例27参照。
炭水化物阻害による細胞からの結合剤の遊離
本発明は好ましい一態様において、結合剤からのグリカンの遊離に関する。これは:
a)結合剤を伴う方法による細胞の濃縮または単離後の、可溶性結合剤からの細胞の遊離
b)細胞の濃縮もしくは単離後の、または細胞培養中の、例えば細胞の継代のための、固相に結合した結合剤からの遊離
等のいくつかの方法のために好ましい
阻害炭水化物はレクチンの結合エピトープまたはその一部に対応するように選択される。好ましい炭水化物としてはオリゴ糖、単糖およびその複合体等が挙げられる。炭水化物の好ましい濃度としては、1mM〜500mM、より好ましくは10mM〜250mM、およびさらに好ましくは10〜100mMの細胞が耐性を有する濃度が挙げられ、より高い濃度が単糖、および固相に結合した結合剤を用いる方法にとって好ましい。オリゴ糖および還元末端複合体を含む好ましいオリゴ糖配列としては、Galβ4Glc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、ならびに表15および本発明の式に記載されるこれらのシアル化およびフコシル化バリアント等が挙げられる。
複合体中の好ましい還元末端構造は、
AR[式中、Aはアノマー構造であって好ましくはGalβ4Glc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAcに対するベータ、およびGalβ3GalNAcに対するアルファであり、Rは糖にグリコシド結合する有機残基であり、好ましくは方法、エチルもしくはプロピル等のアルキル、またはシクロヘキシルもしくは芳香環構造等の環構造であって、任意にさらなる官能基により修飾される]
である。
好ましい単糖としては、Fuc、Gal、GalNAc、GlcNAc、Man等の結合エピトープの末端のまたは2個もしくは3個の末端の単糖などが挙げられ、好ましくはアノマー複合体:例えばFucαR、GalβR、GalNAcβR、GalNAcαR GlcNAcβR、ManαRとしてのものである。例えばPNAレクチンは好ましくはGalβ3GalNAcまたはラクトースまたはGalにより阻害され、STAはGalβ4Glc、Galβ4GlcNAまたはその由来するオリゴマーもしくはポリ−LacNAcエピトープにより阻害され、およびLTAはフコシララクトースGalβ4(Fucα3)Glc、Galβ4(Fucα3)GlcNAcまたはFucもしくはFucαRにより阻害される。一価の阻害条件の例はVenable A. et al. (2005) BMC Developmental biologyに示されており、細胞が多価で固相に結合する場合の阻害については、より大きなエピトープおよび/または濃度またはマルチ/ポリバレント複合体が好ましい。
本発明はさらに、CD34+磁性ビーズからの細胞の遊離に対して知られるものと同様な、プロテアーゼ消化による結合剤の遊離の方法に関する。
固定化結合剤、好ましくは結合剤タンパク質タンパク質
本発明は、幹細胞の培養のための、またはそれに関連する、特異的結合剤の使用に関するものであり、ここで該結合剤は固定化される。
前記固定化には、非共有結合的固定化、および共有結合を伴う固定化法、ならびにさらに部位特異的固定化および非特異的固定化が含まれる。
好ましい非共有結合的固定化法は受動的吸着法を含む。好ましい一つの方法においては、細胞培養皿またはウェルのプラスチック表面等の表面に結合剤を受動的に吸収させる。好ましい方法としては溶媒中または湿潤状態の結合剤タンパク質の前記表面への吸収、好ましくは該表面への均一な吸収、などが挙げられる。好ましい均一な分布は、好ましくは形成10分間〜3日間、より好ましくは1時間〜1日間、および最も好ましくは8〜20時間の一晩の吸収時間の間、弱い振とうを用いて生成される。固定化の洗浄工程は、レクチンの脱落を回避するために、好ましくは低速の液体の流れを用いて穏やかに行われる。
特異的固定化
特異的固定化は、結合剤の結合部位がそのリガンドグリカンド、例えば本発明の幹細胞の特異的細胞表面グリカンに結合するのを妨げないタンパク質領域からの固定化を目的とする。
好ましい特異的固定化法としては、結合剤タンパク質/ペプチドの表面からの特異的アミノ酸残基からの化学的結合などが挙げられる。好ましい一つの方法においては、システイン等の特定のアミノ酸残基が固定化の部位にクローン化され、システインから結合が行われる。他の好ましい方法においては、N−末端システインが過ヨウ素酸により酸化され、アミノ−オキシ−メチルヒドロキシルアミンまたはヒドラジン構造等のアルデヒド反応性試薬に結合される。さらに好ましい化学としてはInvitrogenにより販売される「click」化学ならびにPierceおよびMolecular probesにより販売されるアミノ酸特異的カップリング試薬などが挙げられる。
好ましくはグリカンが結合部位に近接していない、またはより長いspecarが用いられる場合に、好ましい特異的固定化は結合剤のO−またはN−グリカン等のタンパク質結合炭水化物から起こる。
グリカン固定化結合剤タンパク質
好ましいグリカン固定化はグリカンの反応性化学選択的連結基(reactive chemoselective ligation group)R1を介して起こり、ここで該化学基は第二の化学選択的連結基R2に特異的に、結合剤のタンパク質部分に大きなまたは結合破壊性の変化をもたらすことなく、結合され得る。アルデヒドおよびケトンと反応する化学選択的基としてはアミノ−オキシ−メチルヒドロキシルアミンまたはヒドラジン構造等が挙げられる。好ましいR1基の一つはタンパク質の表面上に化学的に合成されたアルデヒドまたはケトン等のカルボニルである。他の好ましい化学選択的基としては、マレイミドおよびチオール;ならびにアジドおよびそれに対する反応性基を含んだ「Click」試薬等が挙げられる。。
好ましい合成工程は
a)炭水化物選択的酸化化学による、好ましくは過ヨウ素酸による、化学酸化、または
b)ガラクトース酸化酵素等の、非還元末端の末端単糖酸化酵素による、または、修飾単糖残基のグリカンの末端単糖への転移による、酵素的酸化
を含む。
酸化酵素または過ヨウ素酸の使用は当該分野に公知であり、Kabi−Frensenius(WO2005EP02637、WO2004EP08821、WO2004EP08820、WO2003EP08829、WO2003EP08858、WO2005092391、WO2005014024;参照により全体が組み込まれたものとする)およびドイツの研究機関によるHES−多糖の組み替えタンパク質への結合に関する特許出願に記載されている。
末端単糖残基の転移のための好ましい方法としては、本願発明者らの一部による特許出願US2005014718(参照により全体が組み込まれたものとする)もしくはQasbaおよびRamakrishmanほかによるUS2007258986(参照により全体が組み込まれたものとする)に記載されるような、またはNeoseの糖ペグ化(glycopegylation)特許(US2004132640;参照により全体が組み込まれたものとする)に記される方法を用いることによる、変異ガラクトシルトランスフェラーゼの使用などが挙げられる。
高特異性化学タグを含む複合体
好ましい一態様において、結合剤はリガンドLによって特異的に認識され得るタグ(Tと呼ぶ)に特異的にまたは非特異的に結合する。タグの例としてはビオチン結合リガンド(ストレプト)アビジン、または他のフルオロカルボニルに結合するフルオロカルボニル、またはペプチド/抗原および該ペプチド/抗原に対する特異的抗体等が挙げられる。
好ましい複合体構造
タグ複合体構造
好ましい複合体構造は
式CONJ
B−(G−)R1−R2−(S1−)T−、
[式中、Bは結合剤であり、Gはグリカン(前記結合剤がグリカンを結合する場合)であり、
R1およびR2は化学選択的連結基であり、Tはタグ、好ましくはビオチンであり、Lはタグに特異的に結合するリガンドであり;S1は任意のスペーサー基、好ましくは炭素数1〜10のアルキルであり、mおよびnは独立に0または1のいずれかの整数である]
によるものである。
スペーサー構造連結基または(ストレプト)アビジン等のリガンドを固相に化学的に付着させる方法は当該分野において公知である。
複合構造
好ましい複合構造は
式COMP
B−(G−)R1−R2−(S1−)(T−)(L−)r−(S2)−SOL
[式中、Bは結合剤であり、SOLは固相またはマトリクスまたは表面であり、Gはグリカン(前記結合剤がグリカンを結合する場合)であり、
R1およびR2は化学選択的連結基であり、Tはタグ、好ましくはビオチンであり、Lはタグに特異的に結合するリガンドであり;S1およびS2は任意のスペーサー基、好ましくは炭素数1〜10のアルキルであり、m、n、p、rおよびはs独立に0または1のいずれかの整数である]
によるものである。
スペーサー構造を固相に化学的に付着させる方法は当該分野において公知である。
本発明は好ましい一態様において、
1.幹細胞の培養のための、幹細胞および/または関連する細胞を認識する特異的結合構造の試験および選択
2.幹細胞、特に間葉系または胚幹細胞の培養中または培養前の細胞の選択のための、好ましくは2種類の方法:
a)可溶性結合剤分子による、好ましくはFACS等の標識細胞を識別する物理的方法による、細胞の選択、および/または
b)固相に結合した結合剤分子、例えば
b1)プレートまたは容器等の細胞培養槽に結合した結合剤、および/または
b2)細胞培養に有用な高分子またはゲル形成材料等のポリマー材料に結合した結合剤
b3)ビーズ、特に磁性ビーズ等の微小粒子に結合した結合剤
による細胞の選択
における、特異的結合剤の使用
3.細胞培養中の可溶性のもしくは表面に結合した形態の幹細胞または混入/関連細胞集団を認識する特異的結合剤構造の使用
に関する。
グライコーム材料由来の構造の、および細胞表面上の構造の、結合法による識別
本発明は、NMRおよび/または質量分析による物理化学的分析に加え、いくつかの方法が前記構造の分析に有用であることを明らかにした。本発明は特に、方法:
i)結合剤と呼ばれる、グリカンを結合する分子による識別
これらの分子はグリカンを結合し、結合剤に連結した標識等の、結合の観察を可能にする特性を有する。好ましい結合剤としては、
a)抗体、レクチンおよび酵素等のタンパク質
b)タンパク質の結合ドメインおよび部位等のペプチド、ならびにファージディスプレイペプチド等の合成ライブラリー由来類似体
c)ペプチド材料を模倣する他のポリマーまたは有機骨格分子(organic scaffold molecule)等が挙げられる
に関する。
ペプチドおよびタンパク質は、好ましくは組み替えタンパク質またはそれに由来する対応する炭水化物認識ドメインであり、該タンパク質はモノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチンまたはそれらのペプチド模倣物から選択され、結合剤は検出可能な標識構造を有していてよい。
炭水化物識別における酵素の属(genus)はレクチン(酵素活性を有しない炭水化物結合タンパク質)の属に対して連続的である.
a)天然グリコシルトランスフェラーゼ(Rauvala et al.(1983)PNAS(USA)3991−3995)およびグリコシダーゼ(Rauvala and Hakomori(1981)J.Cell Biol.88,149−159)はレクチン活性を有する。
b)炭水化物結合酵素は触媒アミノ酸残基を変異させることによりレクチンに改変することができる(WO9842864;Aalto J.et al.Glycoconjugate J.(2001),18(10);751−8;Mega and Hase(1994)BBA1200(3)331−3を参照)。
c)グリコシダーゼに構造的に相同な天然レクチンも知られており、酵素属およびレクチン属の連続性を示唆している(Sun,Y−J.et al.J.Biol.Chem.(2001)276(20)17507−14)。
酵素活性を有しない炭水化物結合タンパク質としての抗体の属もレクチンの概念に非常に近いが、抗体は通常レクチンとしては分類されない。
ペプチド概念の明白性および炭水化物結合タンパク質概念との連続性
タンパク質はペプチド鎖を有しており、そのためペプチドによる炭水化物の認識は明白であるとさらに考えられる。例えば、炭水化物結合タンパク質の活性部位由来のペプチドは炭水化物を認識し得ることが当業者に公知である(例えばGeng J−G.et al(1992)J.Biol.Chem.19846−53)。
上記の通り、抗体断片は記載に含まれ、結合タンパク質の遺伝子組み替えバリアントである。明白な遺伝子組み替えバリアントは酵素、抗体およびレクチンの、短くなった、または断片のペプチドを含みうる。
細胞または分化および構造の個々の特異的末端バリアントの解明
本発明は、特定の分化段階のマーカーとしてのオン・オフ変化またはグライコームの定量的比較に基づく量的相違によって、構造的特徴を明らかにするための、グライコミクスプロファイリング法の使用に関する。個々の特異的バリアントは、グリコシルトランスフェラーゼの遺伝的変異、および/または、個々の特異的構造の合成を妨げる、または引き起こすグリコシル化機構の他の要素に基づくものである。
構造的末端エピトープ
本願発明者らはこれまでにヒトグライコームのグライコーム組成を明らかにしており、本明細書において本願発明者らは、幹細胞グライコームの、特に特異的結合剤による、分析に有用な構造的末端エピトープを提供する。
変化する特徴的な末端構造の例としては、主要な相同コアGalβエピトープの修飾として生成された競合的(competing)末端エピトープの発現等が挙げられ、該修飾は結合位置Galβ3GlcNAcが異なる同一の単糖のいずれかによるもの;および結合位置Galβ4GlcNAcが異なる同一の単糖のいずれかを有する類似体;または同一の結合であるが4位のエピマー主鎖(epimeric backbone)Galβ3GalNAcによるものである。これらは構造の生物学的認識および機能を修飾する特異的コア構造により提示され得る。他の共通の特徴は、同様なGalβ構造が、タンパク質結合物(O−およびN−グリカン)および脂質結合物(糖脂質構造)の両者として発現されることである。α2フコシル化の代わりに、末端GalはNAc基をフコースと同じ2位上に有していてよい。これは相同エピトープGalNAcβ4GlcNAc、およびさらに関連するGalNAcβ3Gal構造を本発明の特徴的な特別な糖脂質上に生ずる。
本発明はヒト幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞または成体幹細胞からの新規の末端二糖および誘導体エピトープに関するものであり、これらが好ましくは間葉系幹細胞である造血幹細胞ではない場合のものである。グリコシル化は種、細胞および組織特異的であり、通常、癌細胞からの結果は正常な細胞のものとは顕著に異なっており、そのため、ヒト胚性癌腫から得られた膨大かつ様々なグリコシル化のデータは、ヒト胚幹細胞に実際に関連性のある、または明らかなものではない(ただし偶然の類似を除く)と考えられるべきである。さらに、奇形腫の正確な分化程度は知ることができず、そのため特異的修飾機構下の末端エピトープの比較は知ることができない。グリコシダーゼおよび抗体等の特異的結合分子による末端構造、および該構造の化学的分析。
本発明は、特異的フコシル化/NAc修飾による類似の修飾、および末端二糖エピトープの対応する位置上のシアル化を有する、末端Gal(NAc)β1−3/4Hex(NAc)構造の群を明らかにする。末端構造は遺伝的に調節されたフコース転移酵素およびシアリルトランスフェラーゼの相同なファミリーにより制御されると考えられる。この制御により、細胞間の伝達のための、および細胞の分析に用いられる他の特異的結合剤による認識のための、特徴的な構造パターンが生成する。主要エピトープを表28に示す。データは各型の細胞の末端エピトープの特徴的パターン、例えばhESC細胞上での1型ラクトサミン(Galβ3GlcNAc)上のFucα2−構造等の一般に多量のFucα−構造の発現、同様にβ3−結合したコアI Galβ3GlcNAcα、および特定の型の糖脂質上に存在する4型構造、およびα3−フコシル化構造の発現を明らかにするが、II型N−アセチララクトサミン上のα6−シアルは胚様体およびst3胚幹細胞のN−グリカン上に現れる。例えば末端型ラクトサミンおよびポリラクトサミンは間葉系幹細胞を他の型から区別する。末端Galb−情報は好ましくは に関する情報と組み合わせられる。
本発明は特に、構造の識別のための、モノクローナル抗体等の高特異性結合分子に関する。
該構造は式T1により表すことができる。この式では第1の単糖残基が左側に記され、これはβ−D−ガラクトピラノシル構造であって、RがOHの場合はα−またはβ−D−(2−デオキシ−2−アセトアミド)ガラクトピラノシル構造の、RがO−を有する場合はβ−D−(2−デオキシ−2−アセトアミド)グルコピラノシルの、3または4位いずれかに結合する。式T1およびT2において、還元末端の特定されない立体化学はさらに(請求の範囲において)曲線で示される。シアル酸残基はGalの3もしくは6位、またはGlcNAcの6位に結合してよく、フコース残基はGalの2位、またはGlcNAcの3もしくは4位、またはGlcの3位に結合してよい。
本発明は、新規末端エピトープFucα2Galβ3GalNAcβとして明らかになった末端Fucα2を含むガラクトシル−グロボシド型構造、または胚性細胞から明らかになったGalβ3GalNAcβGalα3含有イソグロボ構造に関する。
式T1
Figure 2010516239

式中、Xは結合位置であり、
、RおよびRはOHまたはグリコシド結合した単糖残基シアル酸、好ましくはNeu5Acα2またはNeu5Gcα2、最も好ましくはNeu5Acα2であり、または
はOHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L−フコース)またはN−アセチル(N−アセトアミド、NCOCH)であり;
はH、OHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L−フコース)であり、
がHである場合、RはOHであり、RがHでない場合、RはHであり、
はN−アセチルまたはOHであり、
Xは細胞由来の天然オリゴ糖主鎖構造、好ましくはN−グリカン、O−グリカンもしくは糖脂質構造であり、またはnが0である場合、Xは無であり、
Yはリンカー基(linker group)、好ましくはO−グリカンおよびO−結合末端オリゴ糖および糖脂質のための酸素、ならびにN−グリカンのためのN、またはnが0である場合、無であり、
Zは担体構造、好ましくは細胞により産生された天然担体であり、例えばタンパク質または脂質であって、好ましくは担体上のセラミドもしくは分岐グリカンコア構造、またはHであり、
アーチはガラクトピラノシルからの結合が左側の残基の3位または4位いずれかに対するものであること、およびR構造が他の4または3位にあることを表し、
nは0または1の整数であり、mは1〜1000、好ましくは1〜100、および最も好ましくは1〜10の整数(担体上のグリカンの数)であり、
ただしRおよびRのうち1つはOHまたはRはN−アセチルであり、
左側の第1の残基が右側の残基の4位に結合する場合、RはOHであり、
XはGalα4Galβ4Glcではなく、(SSEA−3または4のコア構造)またはRはフコシルであり、
は左側の第1の残基が右側の残基の3位に結合している場合、好ましくはN−アセチルである。
好ましい末端β3結合亜群は、左側の第1の残基が主鎖構造Gal(NAc)β3Gal/GlcNAcと3位で結合する場合の状態を示す、式T2により表される。
式T2
Figure 2010516239

式中、R〜R等の変数は、T1に対して記載される通りである。
好ましい末端β4−結合亜群は式T3により表される。
式T3
Figure 2010516239

式中、R〜RおよびRを含む変数はT1に対して記載される通りであり、ただしRはOHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L−フコース)である。
あるいは、末端構造のエピトープは式T4およびT5で表される。
コアGalβエピトープ式T4:
Galβ1−xHex(NAc)
xは結合位置3または4であり、
および、HexはGalまたはGlcであり、
ただし、pは0または1であり、
xが結合位置3である場合、pは1であり、HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり、
xが結合位置4である場合、HexはGlcである。
コアGalβ1−3/4エピトープは、好ましくはGal結合SAα3またはSAα6またはFucα2、およびGlc結合Fucα3またはGlcNAc結合Fucα3/4の群より選択される、1または2個の構造SAαまたはFucαにより、任意に水酸基に置換される。
式T5
[Mα]Galβ1−x[Nα]Hex(NAc)
式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
HexはGalまたはGlcであり、
Xは結合位置であり、
MおよびNは単糖残基であって、
独立に無(前記位置の遊離水酸基)ならびに/または、
Galの3位もしくは/およびHexNAcの6位に結合したシアル酸であるSA、ならびに/または
Galの2位;および/もしくは、Galが他の位置(4または3)に結合し、HexNAcがGlcNAcである場合、HexNAcの3もしくは4位;または、Galが他の位置(3)に結合する場合、Glcの3位;に結合したFuc(L−フコース)残基であり、
ただし、mおよびnの合計は2であり
好ましくはmおよびnは独立に0または1である。
正確な構造の詳細は、細胞の分析および/または操作のために設計された特異的結合分子による最適な認識にとって重要である。末端主要Galβエピトープは同一の修飾単糖NeuX(Xはシアル酸の5位修飾AcもしくはGc)またはFucにより、同一の結合型アルファで修飾される(両構造の同一の水酸基位置の修飾)。
全てのエピトープの末端Galβ上のNeuXα3、Fucα2、および
Galβ4GlcNAcの末端Galβを修飾するNeuXα6、または結合が6競合である場合はHexNAc
またはGlcNAcに残存する遊離アキシャル位(axial)第1級水酸基を修飾するFucα(GalNAc残基に遊離アキシャル位水酸基が存在しない)。
好ましい構造は、T2と同様に、好ましいGalβ1−3構造に分類することができ、
式T6:
[Mα]mGalβ1−3[Nα]HexNAc
式中、変数はT5に対して記載される通りである。
好ましい構造は、T4と同様に、好ましいGalβ1−4構造に分類することができ、
式T7:
[Mα]Galβ1−4[Nα]Glc(NAc)
式中、変数はT5に対して記載される通りである。
これらは好ましいII型N−アセチルラクトサミン構造および関連するラクトシル誘導体であり、好ましい一態様において、pは1であり、構造は2型N−アセチルラクトサミンのみを含む。本発明はこれらが幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞もしくは胚性幹細胞またはその分化したバリアント(組織型特異的に分化した間葉系幹細胞または各種ステージの胚幹細胞)の特定の亜型の識別に非常に有用であることを明らかにした。各種フコシルおよび/またはシアル酸修飾が幹細胞型に特徴的なパターンを生成したことは注目に値する。
好ましいI型およびII型N−アセチルラクトサミン構造
好ましい構造は、T4と同様に、オリゴ糖コア配列Galβ1−3/4GlcNAc構造を有する好ましい1(I)型および2(II)型N−アセチルラクトサミン構造に分類することができ、
式T8:
[Mα]Galβ1−3/4[Nα]GIcNAc
式中、変数はT5に対して記載される通りである。
好ましい構造は、T8と同様に、好ましいGalβ1−3構造に分類することができ、
式T9:
[Mα]Galβ1−3[Nα]GlcNAc
式中、変数はT5に対して記載される通りである。
これらは好ましいI型N−アセチルラクトサミン構造である。本発明は、これらが幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞もしくは胚性幹細胞またはその分化したバリアント(組織型特異的に分化した間葉系幹細胞または各種ステージの胚幹細胞)の特定の亜型の識別に非常に有用であることを明らかにした。各種フコシルまたはシアル酸修飾が細胞または幹細胞型に特徴的なパターンを生成したことは注目に値する。
好ましい構造は、T8と同様に、好ましいGalβ1−4GlcNAcコア配列含有構造に分類することができ、
式T10:
[Mα]Galβ1−4[Nα]GlcNAc
式中、変数はT5に対して記載される通りである。
これらは好ましいII型N−アセチルラクトサミン構造である。本発明は、これらが幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞もしくは胚性幹細胞またはその分化したバリアント(組織型特異的に分化した間葉系幹細胞または各種ステージの胚幹細胞)の特定の亜型の識別に非常に有用であることを明らかにした。
各種フコシルおよび/またはシアル酸修飾N−アセチルラクトサミン構造が幹細胞型に特に特徴的なパターンを生成することは注目に値する。本発明はさらに、少なくとも1個のフコシル化またはシアル化バリアント、およびより好ましくは少なくとも2個のフコシル化バリアントまたは2個のシアル化バリアントを含む、少なくとも2個の異なるI型およびII型アセチルラクトサミンを認識する結合試薬の組み合わせの使用に関する。
末端Fucα2/3/4構造を有する好ましい構造
本発明はさらに、各種幹細胞、特に胚および間葉系幹細胞ならびにその分化したバリアントの:
a)I型およびII型アセチルラクトサミンおよびそれらのフコシル化バリアント、ならびに好ましい一態様において
b)非シアル化フコシル化、ならびにより好ましくは
c)好ましくはFucα2末端および/またはFucα3/4分岐構造を有する、フコシル化I型およびII型N−アセチルラクトサミン構造、ならびにさらに好ましくは
d)好ましくはFucα2末端を有する、フコシル化I型およびII型N−アセチルラクトサミン構造
を認識する、本発明の方法のための結合試薬の組み合わせの使用に関する。
好ましいFucα2構造の亜群としては、モノフコシル化H型およびHII型構造、ならびにジフコシル化Lewis bおよびLewis y構造等が挙げられる。
好ましいFucα3/4構造の亜群としては、モノフコシル化Lewis aおよびLewis x構造、シアル化シアリル−Lewis aおよびシアリル−Lewis x構造、ならびにジフコシル化Lewis bおよびLewis y構造等が挙げられる。
Fucα3構造の好ましいII型N−アセチルラクトサミン亜群としては、モノフコシル化Lewis x構造、ならびにシアリル−Lewis x構造およびLewis y構造等が挙げられる。
Fucα4構造の好ましいI型N−アセチルラクトサミン亜群としては、モノフコシル化Lewis a シアリル−Lewis aおよびジフコシル化Lewis b構造等が挙げられる。
本発明はさらに、好ましくは、モノフコシル化または少なくとも2個のジフコシル化、または少なくとも1個のモノフコシル化および1個のジフコシル化構造の群から選択される、少なくとも2個の異なってフコシル化された1型および/または2型N−アセチルラクトサミン構造の使用に関する。
本発明はさらに、フコシル化I型およびII型N−アセチルラクトサミン構造を認識する結合試薬と、Fucα2/3/4含有構造を有する他の末端構造、好ましくはFucα2末端構造であって、好ましくはFucα2Galβ3GalNAc末端、より好ましくはFucα2Galβ3GalNAcα/βを有する構造、を認識する結合剤、および特に好ましい態様において、好ましくはグロボまたはイソグロボ型構造の末端構造中のFucα2Galβ3GalNAcβを認識する抗体との組み合わせの使用に関する。
好ましいグロボおよびガングリオコア型構造
本発明はさらに、式:
式T11
[M]Galβ1−x[Nα]Hex(NAc)
[式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
HexはGalまたはGlcであり、Xは結合位置であり;
MおよびNは単糖残基であって
独立に無(前記位置の遊離水酸基)
ならびに/または
Galの3位もしくは/およびHexNAcの6位に結合したシアル酸であるSAα
Galの3もしくは4位に結合したGalα、または
Galの4位に結合するGalNAcβ、ならびに/または
Galの2位;および/もしくは、Galが他の位置(4または3)に結合し、HexNAcがGlcNAcである場合、HexNAcの3もしくは4位;または、Galが他の位置(3)に結合する場合、Glcの3位;に結合したFuc(L−フコース)残基
であり、
ただし、mおよびnの合計は2であり
好ましくはmおよびnは独立に0または1であり、ならびに
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在せず、
ならびに
nは0であり、xは好ましくは4であり、
MがGalNAcβである場合、Galβ1にα6結合するシアル酸は存在せず、nは0であり、xは4である]
の、グロボおよびガングリオ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
本発明はさらに、式
式T12
[M][SAα3]Galβ1−4Glc(NAc)
[式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
MはGalの3もしくは4位に結合したGalα、またはGalの4位に結合したGalNAcβであり、および/またはSAαはGalの3位に結合したシアル酸分岐であり、
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在しない(nは0である)]
の、グロボおよびガングリオ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
本発明はさらに、式
式T13
[M][SAα]Galβ1−4Glc
[式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
MはGalの3もしくは4位に結合したGalα、または
Galの4位に結合したGalNAcβ
および/または
Galの3位に結合したシアル酸であるSAαであり
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在しない(nは0である)]
の、グロボおよびガングリオ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
本発明はさらに、式
式T14
Galα3/4Galβ1−4Glc
の、グロボ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
好ましいグロボ型構造としては、Galα3/4Galβ1−4Glc、GalNAcβ3Galα3/4Galβ4Glc、Galα4Galβ4Glc(グロボトリオース、Gb3)、Galα3Galβ4Glc(イソグロボトリオース)、GalNAcβ3Galα4Galβ4Glc(グロボテトラオース、Gb4(またはGl4))、およびFucα2Galβ3GalNAcβ3Galα3/4Galβ4Glc等が挙げられる。または、前記結合剤が 未分化胚性もしくは間葉系幹細胞に関して使用されない、もしくは前記結合剤が本発明の他の好ましい結合剤と一緒に使用される場合、好ましい結合剤標的に対する他のグロボ型結合剤として、好ましくはさらにGalβ3GalNAcβ3Galα4Galβ4Glc(SSEA−3抗原)および/またはNeuAcα3Galβ3GalNAcβ3Galα4Galβ4Glc(SSEA−4抗原)またはその末端の非還元末端二もしくは三糖エピトープ等が挙げられる。
好ましいグロボテトラオシルセラミド(globotetraosylceramide)抗体はGalNAcβ3Galα4Galβ4Glcの非還元末端伸長バリアントを認識しない。実施例中の抗体は のような特異性を有する。
本発明はさらに、好ましくは、糖脂質に結合しない場合のNeuAcα3Galβ3GalNAc、NeuAcα3Galβ3GalNAcβ、NeuAcα3Galβ3GalNAcβ3Galα4Gal;ならびに新規フコシル化標的構造:Fucα2Galβ3GalNAcβ3Galα3/4Gal、Fucα2Galβ3GalNAcβ3Galα、Fucα2Galβ3GalNAcβ3Gal、Fucα2Galβ3GalNAcβ3、およびFucα2Galβ3GaINAc;等の、より長いオリゴ糖配列の特異的エピトープのための結合剤に関する。
本発明はさらに、式
式T15
[GalNAcβ4][SAα]Galβ1−4Glc
[式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり
Galの4位に結合したGalNAcβ、および/またはGalの3位に結合したシアル酸分岐であるSAα]
の、グロボおよびガングリオ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
好ましいガングリオ型構造としては、GalNAcβ4Galβ1−4Glc、GalNAcβ4[SAα3]Galβ1−4Glc、およびGalβ3GalNAcβ4[SAα3]Galβ1−4Glc等が挙げられる。好ましい結合剤標的構造としては、さらに、好ましいオリゴ糖配列の糖脂質および可能な糖タンパク質複合体等が挙げられる。好ましい結合剤は好ましくは少なくとも二および三糖エピトープを特異的に認識する
GalNAcα構造
本発明はさらに、式T16:[SAα6]GalNAcα[Ser/Thr]−[Peptide]
[式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
式中、SAは好ましくはNeuAcであるシアル酸であり、Ser/Thrはセリンまたはスレオニン残基を表す]
のペプチド/タンパク質結合GalNAcα構造の識別に関する。Peptideは結合残基に近いペプチド配列の部分を表し、ただしmまたはnのいずれかは1である。
Ser/Thrおよび/またはPeptideは、任意に、少なくとも部分的に、結合剤による結合のための認識に必要である。Peptideが特異性に含まれる場合、抗体はタンパク質構造の一部を伴う高い特異性を有すると考えられる。シアリル−Tnの好ましい抗原配列:SAα6GalNAcα、SAα6GalNAcαSer/Thr、およびSAα6GalNAcαSer/Thr−Peptide、ならびにTn−抗原:GalNAcαSer/Thr、およびGalNAcαSer/Thr−Peptide。本発明はさらに、GalNAcα構造の組み合わせ、ならびに少なくとも1個のGalNAcα構造と他の好ましい構造との組み合わせの使用に関する。
好ましい結合基の組み合わせ
本発明は特に、少なくとも、a)フコシル化、好ましくはα2/3/4フコシル化構造、および/またはb)グロボ型構造、および/またはc)GalNAcα型構造の組み合わせにおける使用に関する。異なる生合成を伴い、そのため幹細胞集団に対して特徴的な結合プロファイルを有する構造を認識する結合剤の組み合わせの使用が考えられる。より好ましくは、フコシル化構造およびグロボ構造、またはフコシル化構造およびGalNAcα型構造のための少なくとも1種の結合剤が用いられ、最も好ましくはフコシル化構造およびグロボ構造のためのものが用いられる。
フコシル化および非修飾構造
本発明はさらに、コア二糖エピトープ構造であって該構造がシアル酸により修飾されていないものに関する(式T1〜T3のR基または式T4〜T7のMもしくはNがいずれもシアル酸ではない)。
本発明は好ましい一態様において、少なくとも1個の本発明のフコース残基を有する構造に関する。これらの構造は新規特異的フコシル化末端エピトープであり、本発明の幹細胞の分析に有用である。好ましくは天然幹細胞が分析される。
好ましいフコシル化構造としては、(SAα3)0または1Galβ3/4(Fucα4/3)GlcNAc、例えばLewis xおよびそのシアル化バリアント等の、ヒト幹細胞の新規α3/4フコシル化マーカーなどが挙げられる。
末端Fucα1−2を有する構造の中で、本発明はFucα2Galβ3GalNAcα/βおよびFucα2Galβ3(Fucα4)0または1GlcNAcβを有する特に有用な新規マーカー構造を明らかにし、これらは胚幹細胞の研究に有用であることが見出された。この群の中で特に好ましい抗体/結合剤群はFucα2Galβ3GlcNAcβに特異的な抗体であり、高い幹細胞特異性のために好ましい。他の好ましい構造群としては、特異的構造群を形成することが明らかな糖脂質を有するFucα2Gal等が挙げられ、特に興味深い構造はグロボ−H型構造および末端Fucα2Galβ3GalNAcβを有する糖脂質であり、初期の推測される幹細胞マーカーと興味深い生合成上の関連を有するため好ましい。
Fucα2Galβ4GlcNAcβを認識する抗体の中で、結合における実質的な相違は担体構造に基づくものであるらしいことが明らかになった。本発明は特に、この種類の構造を認識する抗体に関するものであって、該抗体の特異性が実施例14にフコース認識抗体とともに示す胚幹細胞に結合するものと類似している場合のものに関する。本発明は好ましくは、末端エピトープ表28中に共通構造型として示されるN−グリカン上のFucα2Galβ4GlcNAcβを認識する抗体に関する。別の一態様において、非結合クローンの抗体はフィーダー細胞の認識を対象とする。
好ましい非修飾構造としては、Galβ4Glc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAcβ、Galβ3GalNAcβ/α、およびGalβ4GlcNAcβ等が挙げられる。これらは各種幹細胞に特徴的な好ましい新規コアマーカーである。構造Galβ3GlcNAcは特にhESC細胞において観察できる新規マーカーとして好ましい。好ましくは該構造を本発明の糖脂質コア構造が有しており、またはそれはO−グリカン上に存在する。非修飾マーカーは、細胞状態の分析のための少なくとも1種のフコシル化または/およびシアル化構造との組み合わせにおける使用において好ましい。
さらなる好ましい非修飾構造としては、GalNAcβ構造等が挙げられ、末端LacdiNAc、GalNAcβ4GlcNAc、好ましくはN−グリカン上、およびグロボ系列糖脂質内にグロボテトラオース構造の末端として存在するGalNAcβ3GalGalNAcβ3Gal等が挙げられる。
これらのうち、Gal(NAc)β3含有Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、Galβ3GlcNAcβ、Galβ3GalNAcβ/α、およびGalNAcβ3GalGalNAcβ3Galの特徴的亜群、ならびにGal(NAc)β4含有Galβ4Glc、Galβ4GlcNAc、およびGalβ4GlcNAcの特徴的亜群が別々に好ましい。
好ましいシアル化構造
好ましいシアル化構造としては、特徴的SAα3Galβ構造であるSAα3Galβ4Glc、SAα3Galβ3GlcNAc、SAα3Galβ3GalNAc、SAα3Galβ4GlcNAc、SAα3Galβ3GlcNAcβ、SAα3Galβ3GalNAcβ/α、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ;ならびに生合成的に部分的に競合するSAα6Galβ構造であるSAα6Galβ4Glc、SAα6Galβ4Glcβ;SAα6Galβ4GlcNAc、およびSAα6Galβ4GlcNAcβ;ならびにジシアロ構造であるSAα3Galβ3(SAα6)GalNAcβ/α等が挙げられる。
本発明は好ましくは、Gal(NAc)β3含有SAα3Galβ3GlcNAc、SAα3Galβ3GalNAc、SAα3Galβ4GlcNAc、SAα3Galβ3GlcNAcβ、SAα3Galβ3GalNAcβ/α、およびSAα3Galβ3(SAα6)GalNAcβ/αの特異的亜群、ならびにGal(NAc)β4含有シアル化構造に関する。SAα3Galβ4Glc、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ;およびSAα6Galβ4Glc、SAα6Galβ4Glcβ;SAα6Galβ4GlcNAcおよびSAα6Galβ4GlcNAcβ
これらは各種幹細胞に対して特徴的な好ましい新規調節マーカー(regulated marker)である。
末端ManαManα構造との併用
末端非修飾または修飾エピトープは好ましい態様において少なくとも1種のManαMan構造と併用される。これは、該構造が他のエピトープとは異なるN−グリカンまたはグリカン亜群中に存在するため好ましい。
造血幹細胞のための好ましい構造群
本発明は、特に胚性および成体幹細胞のための、新規マーカーおよび標的構造ならびにこれらに対する結合剤を提供するものであり、これらの細胞は造血幹細胞ではない。造血CD34+細胞から、NeuNAcα3Galβ4GlcNAc(Magnani J.US6362010)等の末端シアル化2型N−アセチルラクトサミンなどの特定の末端構造が示唆されており、Slex型構造NeuNAcα3Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Xia L et al Blood(2004)104(10)3091−6)の低発現に対する徴候が存在する。本発明は、特異的な特徴的O−グリカンおよびN−グリカンとは別に、NeuNAcα3Galβ4GlcNAc非ポリラクトサミンバリアントにも関する。本発明はさらに、本発明によるCD133+細胞に対する新規マーカーおよび新規造血幹細胞マーカーを提供し、特に前記構造はNeuNAcα3Galβ4(Fucα3)0−1GlcNAcを含まない。好ましくは前記造血幹細胞構造は本発明による非シアル化、フコシル化構造Galβ1−3構造、およびより好ましくは1型N−アセチルラクトサミン構造Galβ3GlcNAc、または別に好ましいGalβ3GalNAcを基盤とした構造である。
末端エピトープのコア構造
前記標的エピトープ構造は、特異的N−グリカン、O−グリカン上で、または糖脂質コア構造上で、最も効果的に認識されると考えられる。
伸長エピトープ−エピトープの還元末端上の隣接する単糖/構造
本発明は特に、最適化された結合剤およびその生産に関するものであり、該結合剤の結合エピトープは隣接する結合構造、および、より好ましくは標的エピトープの還元側上に隣接する構造(O−グリカンについては単糖もしくはアミノ酸、または糖脂質についてはセラミド)の少なくとも一部を含む。本発明は実施例に示すような、および表28にまとめたもののような末端エピトープのためのコア構造を明らかにした。
より長い結合エピトープを有する抗体はより高い特異性を有しており、そのため所望の細胞または細胞由来成分をより効果的に認識すると考えられる。好ましい一態様において、伸長したエピトープに対する前記抗体が胚性幹細胞の効果的な分析のために選択される。
本発明は特に、抗体の選択の方法、および任意に、さらに、本発明の伸長エピトープを用いた、新規抗体または他の結合剤の精製の方法に関する。好ましい選択はグリカン構造(特異的配列を有する、合成、または分離された天然のグリカン)を血清または抗体またはファージディスプレイライブラリー等の抗体ライブラリーに接触させることにより行われる。これらの方法に関するデータは当業者に周知であり、例えばpubmed−医学文献データベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)、または特許、例えばespacenet(fi.espacenet.com)を検索することによりインターネットから入手できる。特異的抗体は、実施例に示すような、および表28にまとめたもののようなグリカン型特異的末端構造の最適化された認識の使用に対して特に好ましい。
本発明の実施例に示す抗体の一部は、伸長エピトープに対する特異性を有するとさらに考えられる。本願発明者らは、例えばLewis xエピトープはN−グリカン上において、特定の末端Lewis x特異的抗体により認識され得るが、ポリ−N−アセチルラクトサミンまたはネオラクト系列糖脂質上に存在するLewis xβ1−3Galを認識する抗体によってはそれほど効果的には、あるいは全く、認識されないことを発見した。
N−グリカン
本発明は特に、二分岐N−グリカン上の末端N−グリカンエピトープの識別に関する。N−グリカンのための好ましい非還元末端単糖エピトープとしてはβ2Manおよびその還元末端がさらに伸長したバリアント
β2Man、β2Manα、β2Manα3、およびβ2Manα6
等が挙げられる。
本発明は特に、Ajit Varkiほか Glycobiology (2006) Glycobiology society meeting 2006 Los Angelesの要旨に本発明によるこの種類の抗体と関連しない(放棄される)神経細胞に関与する可能性とともに記載されたN−グリカンLewis x特異的抗体による、N−グリカン上のlewis xの識別に関する。
発明はさらに、Ozawa H et al(1997)Arch Biochem Biophys 342,48−57に記載される、2型N−アセチルラクトサミンβ2Manを認識する、二分岐N−グリカンを対象とする抗体の特異性を有する抗体に関する。
O−グリカン、還元末端伸長エピトープ
本発明は特に、末端コアIエピトープとしての、ならびにコアIおよびコアII O−グリカンの伸長バリアントとしての、末端O−グリカンエピトープの識別に関する。O−グリカンのための好ましい非還元末端単糖エピトープとしては:
a)αSer/Thr−[Peptide]0−1に結合したコアIエピトープ[式中、Peptideは存在するまたは存在しないペプチドを表す]
本発明は好ましくは
b)好ましいコアII型エピトープ
R1β6[R2β3Galβ3]GalNAcαSer/Thr
[式中、nは=または1であって、該構造の有りうる分岐を表し、R1およびR2は末端エピトープの好ましい位置であり、R1がより好ましい]
c)伸長コアIエピトープ
[β3Galおよびその還元末端がさらに伸長したバリアントβ3Galβ3GalNAcα、β3Galβ3GalNAcαSer/Thr]
等が挙げられる。
O−グリカンコアI特異的およびガングリオ/グロボ型コア還元末端エピトープが、Saito S et al. J Biol Chem(1994)269、5644−52において記載されており、本発明は好ましくは本発明のエピトープの同様な特異的認識に関する。
O−グリカンコアIIシアリル−Lewis x特異的抗体がWalcheck B et al. Blood (2002) 99, 4063−69に記載されている。
O−グリカンの識別のためのペプチド特異性を有する抗体としては、さらにGalNAcアルファ(Tn)またはGalb3GalNAcアルファ(T/TF)構造を認識するムチン特異的抗体(Hanisch F−G et al (1995) cancer Res. 55、4036−40; Karsten U et al. Glycobiology (2004) 14, 681−92)等が挙げられる。
糖脂質コア構造
本発明はさらに、脂質構造上の構造の識別に関する。好ましい脂質コア構造としては、
a)Galβ4Glcに対するβCer(セラミド)およびそのフコシルまたはシアリル誘導体
b)ラクトシルCer−糖脂質上のI型およびII型N−アセチルラクトサミンに対するβ3/6Galであって、好ましい伸長バリアントとしてβ3/6[Rβ6/3]Galβ、β3/6[Rβ6/3]Galβ4およびβ3/6[Rβ6/3]Galβ4Glcが挙げられ、これはさらに、部分的により大きなエピトープとして認識され得る他のラクトサミン残基により分岐していてよく、nは0または1であって分岐を表し、R1およびR2は末端エピトープの好ましい位置である。好ましい直鎖(非分岐)共通構造としてはβ3Gal、β3Galβ、β3Galβ4およびβ3Galβ4Glc等が挙げられる
c)グロボ系列エピトープに対するα3/4Gal、および伸長バリアントα3/4Galβ、α3/4Galβ4Glcであって、好ましいグロボエピトープは伸長エピトープα4Gal、α4Galβ、α4Galβ4Glcを有し、好ましいイソグロボエピトープは伸長エピトープα3Gal、α3Galβ、α3Galβ4Glcを有する
d)ガングリオ系列エピトープ含有に対するβ4Galであって、好ましい伸長バリアントとしてβ4Galβ、およびβ4Galβ4Glcが挙げられる
等が挙げられる。
O−グリカンコア特異的およびガングリオ/グロボ型コア還元末端エピトープが、Saito S et al. J Biol Chem(1994)269、5644−52に記載されており、本発明は好ましくは本発明のエピトープの同様な特異的認識に関する。
ポリ−N−アセチルラクトサミン
O−グリカン、N−グリカン、または糖脂質上のポリ−N−アセチルラクトサミン主鎖構造はI型(ラクト系列)およびII型(ネオラクト)糖脂質上のラクトシル(cer)コア構造に類似した特徴的構造を有するが、末端エピトープは他のI型またはII型N−アセチルラクトサミンに結合しており、これは分岐構造からのものでありうる。好ましい伸長エピトープとしては:
I型およびII型N−アセチルラクトサミンエピトープに対するβ3/6Gal等が挙げられ、好ましい伸長バリアントとしてR1β3/6[R2β6/3]Galβ、R1β3/6[R2β6/3]Galβ3/4およびR1β3/6[R2β6/3]Galβ3/4GlcNAc等が挙げられ、これはさらに、部分的により大きなエピトープとして認識され得る他のラクトサミン残基により分岐していてよく、nは0または1であって分岐を表し、R1およびR2は末端エピトープの好ましい位置である。好ましい直鎖(非分岐)共通構造としてはβ3Gal、β3Galβ、β3Galβ4およびβ3Galβ4GlcNAc等が挙げられる。
数多くの抗体が直鎖(i−抗原)および分岐ポリ−N−アセチルラクトサミン(I−抗原)に対して知られており、本発明はさらに、I−抗原の識別のためのレクチンPWAの使用に関する。本願発明者らは、ポリ−N−アセチルラクトサミンが特定の型のヒト幹細胞に対して特徴的な構造であることを明らかにした。他の好ましい結合試薬、酵素エンド−ベータ−ガラクトシダーゼを用いて幹細胞の糖脂質上および糖タンパク質上のポリ−N−アセチルラクトサミンの分析を行った。この酵素はさらに、特定の型の幹細胞上の、本発明のフコシル化および/またはシアル化等の特異的末端修飾を有する直鎖および分岐鎖両者のポリ−N−アセチルラクトサミンの特徴的発現を明らかにした。
伸長コアエピトープの組み合わせ
同一の末端エピトープが主要な担体型であるO−グリカン、N−グリカンおよび糖脂質の2種または3種上に存在する標的構造に結合する抗体に認識される場合、より強い標識が得られうると考えられる。さらに、このような使用に関して、末端エピトープは、有りうる混入細胞または混入細胞材料上に存在するエピトープと比べて十分に特異的である必要があると考えられる。さらに、高度に末端特異的な(terminally specific)抗体が存在し、これはいくつかの伸長構造上への結合を可能にすると考えられる。
本発明は、幹細胞に関して有用なそれぞれの伸長結合剤型(elongated binder type)を明らかにした。従って本発明は、1または複数種の本発明の伸長構造上の末端構造を認識する結合剤に関する。
単糖伸長構造の好ましい群
本発明は伸長特異性(elongated specificity)を有する結合剤の使用に関するものであり、該結合剤は式
AxHex(NAc)
[式中、Aはアノマー構造アルファまたはベータであり、Xは結合位置2、3、4または6であり、
ならびに、Hexはヘキソピラノシル残基Gal、またはManであり、nは0または1の整数であり、nが1である場合、AxHexNAcはβ4GalNAcまたはβ6GalNAcであり、HexがManである場合、AxHexはβ2Manであり、および、HexがGalである場合、AxHexはβ3Galまたはβ6Galである]
の少なくとも1種の還元末端伸長単糖エピトープを認識するか、またはそこに結合することができる。
単糖伸長構造以外に、αSer/Thrが還元末端GalNAc含有O−グリカンのための好ましい還元末端伸長構造であり、βCerがラクトシル含有糖脂質エピトープのために好ましい。
伸長構造の好ましい亜群としては、i)O−グリカン、ポリラクトサミンおよび糖脂質コア上に存在する類似する構造エピトープ:β3/6Galまたはβ6GalNAc;好ましいさらなる亜群は、ia)β6GalNAc/β6Gal、およびib)β3Gal;ii)N−グリカン型エピトープβ2Man;ならびにiii)グロボ系列エピトープα3Galまたはα4Gal等が挙げられる。前記の群は、群内の有り得る交差反応における構造的類似性のために好ましく、背景となる材料が伸長構造型を欠くように制御されている場合に標識強度を高めるために用いることができる。
有用な結合剤特異性を有するレクチンおよび伸長抗体エピトープは、Debaray and Montreuil(1991) Adv.Lectin Res 4、51−96; “The molecular immunology of complex carbohydrates” Adv Exp Med Biol(2001) 491(ed Albert M Wu) Kluwer Academic/Plenum publishers、New York; “Lectins” second Edition(2003)(eds Sharon、Nathan and Lis、Halina) Kluwer Academic publishers Dordrecht、The Neatherlands等の総説およびモノグラフ、および、pubmed/espacenet等のインターネットデータベース、またはwww.glvco.is.ritsumei.ac.jp/epitope/等のモノクローナル抗体グリカン特異性を列挙した抗体データベースから入手可能である。
好ましい結合剤分子
本発明は、本発明の細胞、より具体的には本発明の好ましい細胞群および細胞型の分析に有用な各種の型の結合剤分子を明らかにした。好ましい結合剤分子は、細胞表面の炭水化物上の特異的な構造または構造的特徴に関する結合特異性に基づいて分類される。好ましい結合剤は特異的に複数の単糖残基を認識する。
現在の結合剤分子のほとんど、例えば植物レクチンの全てまたはほとんどは、その特異性において最適ではなく、通常、各種結合を有する1種または数種の単糖を大まかに認識すると考えられる。さらに、該レクチンの特異性は、通常、ヒト型の数種のグリカンによって十分に分析されていない。
好ましい高特異性結合剤は、
A)少なくとも1種の単糖残基、およびそれらと他の単糖隣接単糖残基(monosaccharides next monosaccharide residue)との間の特異的結合構造を認識し、MS1B1結合剤と称される、
B)より好ましくは少なくとも第2の単糖残基の一部を認識し、MS2B1結合剤と称される、
C)さらに好ましくは第2の結合構造および/または第3の単糖残基の少なくとも一部を認識し、MS3B2結合剤と称され、好ましくはMS3B2は特異的な完全な三糖構造を認識する、
D)最も好ましくは前記結合構造は3個の結合構造を有する四糖を少なくとも部分的に認識し、MS4B3と称され、好ましくは該結合剤は完全な四糖配列を認識する。
好ましい結合剤としては、天然のヒトおよび/または動物の、またはグリカンの特異的識別のために開発された他のタンパク質等が挙げられる。好ましい高特異性結合剤タンパク質は特異的抗体、好ましくはモノクローナル抗体;レクチン、好ましくは哺乳動物または動物レクチン;または、特異的糖転移酵素、より好ましくはグリコシダーゼ型酵素、グリコシルトランスフェラーゼもしくはトランスグリコシル化酵素である。
結合剤による細胞の調節
本発明は細胞型と関連する特異的結合剤を細胞の調節に用いることができることを明らかにした。好ましい一態様においては、(幹)細胞が炭水化物媒介相互作用に関して調節される。本発明は、グリカンの構造を変え、それにより受容体の構造および該グリカンの機能を変える特異的結合剤を明らかにした。これらは特にグリコシダーゼ、ならびにグリコシルトランスフェラーゼおよび/またはトランスグリコシル化酵素等の糖転移酵素である。非酵素結合剤の結合それ自体が細胞を選択および/または操作するとさらに考えられる。操作は典型的には、グリカン受容体のクラスタリング;またはグリカン受容体の、細胞と関連する生物学的系またはモデルに存在するレクチン等のカウンターレセプターとの相互作用の影響に依存する。本発明はさらに、細胞培養における結合剤による調節は細胞の増殖速度に関する効果を有することを明らかにした。
幹細胞の調節
幹細胞の好ましい調節は次を含む
1)次の調節型のうちの1つまたはいくつかを含む細胞の状態の調節
1.1.幹細胞の未分化状態の支持
1.2.幹細胞の生物学状態、例えば
1.2.1.形態学的状態
および/または
1.2.2.細胞の分化関連状態
の変化
1.3.細胞の接着状態の変化、例えば
1.3.1.均質な細胞集団の接着の変化
または
1.3.2.不均質な細胞集団の接着状態の変化
前記調節は、幹細胞の量を増加させることを目的とする場合に、幹細胞の未分化状態を維持するのに有用である。
前記の生物学的細胞状態の変化は、有用な幹細胞由来細胞調製物の産生、および幹細胞の研究のための新規細胞集団の検証、および幹細胞集団の最適化のために有用である。
本方法は特に、幹細胞の形態学的状態に影響をあたえるのに有用である。本発明は細胞表面に作用し、従って形態学的な細胞状態を変えるのに有用な、新規の特異的結合分子を提供する。細胞表面分子およびそれらの細胞外接触(extracellular contacts)は形態を制御することから、本発明は特に、形態の変化に有用な、ポリバレントに示された結合剤分子を提供する。幹細胞の各種形態学的状態は、分化状態の潜在的な変化を反映すると考えられる。従って、各種形態学的状態の幹細胞調製物を生成することは、各種の有用な分化した形態の幹細胞を探索するために有用である。
幹細胞の接着状態を変えることはさらに有用であると考えられる。均質な細胞集団の接着状態の変化は有用であり、本発明の好ましい態様において、特に固体表面上のポリバレントな複合体によって形態細胞に影響を与えるために用いられる。増加した接着性は、細胞を固定し、これらを層として増殖させるために有用である。
不均質な細胞集団の接着状態の変化は、接着性および非接着性細胞集団を分離するために有用である。細胞培養は、好ましい方法において、接着性および/または非接着性細胞集団を支持するように行われ、より好ましくは細胞培養条件は接着性細胞集団を支持するように選択される。
2)幹細胞の増殖速度の変化
2.1.幹細胞の増殖速度の増加
または
2.2.幹細胞の増殖速度の減少
細胞の増殖を増加させると、特定の期間内により多くの細胞が産生され得ると考えられる。これは方法の費用対効果を高め、試薬およびエネルギーの節約を可能にする。
増殖速度の減少のための方法は、生きた細胞を特定の生物学的および/または科学的利用のために準備のできた状態に維持するのに有用である。本発明の好ましい一態様において、この維持はさらに細胞の生物学的または接着状態を維持するか、または変化させるためのものである。
調節は、好ましい細胞集団を得るための、1)細胞の状態の調節、および2)細胞の増殖速度の変化、の両者を含み得る。
本発明は、レクチンおよび結合剤が特に幹細胞の培養に有用であることを明らかにした。
レクチンの標的構造特異性は共通のエピトープを共有しており、レクチンは異なる構造も結合し得るが、その特異性に相同な一般構造テーマが存在すると考えられる。
本発明は末端Gal、GalNAc、Fuc、GlcNAc Manを認識する結合剤、好ましくは末端Galβ、GalNAcβ、GlcNAcβを認識する結合剤を明らかにしたものであり、または
1)式Hex(NAc)のβ結合D−ヘキソピラノシドであって、式中、nは0または1であり、HexはGalまたはGlcであり、ただしnが1である場合、HexはGlcである場合:末端Galβ、GalNAcβ、GlcNAcβを含むもの、ならびに
2)α結合ピラノシド残基Manα Fucα、oρ シアル酸α、好ましくはNeu5AcまたはNeu5Gc、Manα、およびFucα含有グリカン構造が幹細胞の増殖の調節のために有用である。
レクチンの標的構造特異性はII型、N−アセチルラクトサミン構造含有コアエピトープGlc/Gal(NAc)0または1β4GlcNAcと関連する共通の構造的特徴を共有し、ここで還元末端GlcNAcはFuc残基により誘導体化されることができ、非還元末端残基はさらに好ましくはシアル酸またはN−グリカンコアオリゴ糖により伸長され得る。
本発明は特に、式CC0
[SA]Hex(NAc)β4[FucαX]GlcNAcβR、
[式中、n、m、およびpは独立に0または1であり
Xは3または6のいずれかの結合位置であり、
HexはGalまたはGlcであり
SAは伸長する単−またはオリゴ糖構造、
好ましくはシアル酸であり、これは好ましくはSAα3、もしくはSAα6であって、好ましいシアル酸型はNeu5AcまたはNeu5Gcであり、
または、N−グリカンコア構造Manα3[Manα6]Manβ4であって、ここでManα残基はさらに1つまたはいくつかのGlcNAcβ2またはLacNAcβ2等の複合型末端構造により伸長されていてよく、
Rは任意の伸長単糖残基構造であって、好ましくはN−アセチルラクトサミンの/ラクトシル−セラミド等の糖脂質の/O−グリカンの/3/6Gal(NAc)、またはN−グリカンの2Man、または、Hex(NAc)がGlcNAcである場合の潜在的な結合コアタンパク質/ペプチドを表すAsn−(ペプチド)0または1であり、
ただし、mが1であり、Xが6である場合、nは1であり、およびHexはGlcであり、およびSAはN−グリカンコア構造Manα3[Manα6]Manβまたはその伸長バリアントであり、
nが1であり、HexがGalである場合、pは0である]
の少なくとも1つの構造を認識する結合剤に関する。
好ましい標的構造は
Galβ4GlcNAc、Neu5Acα3Galβ4GlcNAc、Neu5Acα6Galβ4GlcNAc、Fucα2Galβ4GlcNAc GalNAcβ4GlcNAc、およびGlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc
である。
標的構造を認識する最も好ましい結合剤レクチンは、Galβ4GlcNAcを認識するECA、PWA、およびWFA(より弱い結合)、Neu5Acα3Galβ4GlcNAcを特に認識するMAA、Neu5Acα6Galβ4GlcNAcを認識するSNA、GalNAcβ4GlcNAcを認識するWFA、Fucα2Galβ4GlcNAcを認識するUEA、Galβ4(Fucα3)GlcNAcを認識するLTA、およびGlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc構造を認識するPSAである。
本発明はさらに、短縮された末端エピトープGlcNAcβまたはManαを認識する植物レクチン群、好ましくはGSAIIもしくはNPA、または同様な特異性を有する他のレクチンに関する。
本発明は特に、式CC1
[SA]Hex(NAc)β4[Fucα6]GlcNAcβR
[式中、n、m、およびpは独立に0または1であり
HexはGalまたはGlcであり
SAは伸長する単−またはオリゴ糖構造、
好ましくはシアル酸であり、これは好ましくはSAα3であって、好ましいシアル酸型はNeu5AcまたはNeu5Gcであり、
または、N−グリカンコア構造Manα3[Manα6]Manβ4であって、ここでManα残基はさらに1つまたはいくつかのGlcNAcβ2またはLacNAcβ2等の複合型末端構造により伸長されていてよく、
Rは任意の伸長単糖残基構造であって、好ましくはN−アセチルラクトサミンの/ラクトシル−セラミド等の糖脂質の/O−グリカンの/3/6Gal(NAc)、またはN−グリカンの2Man、または、Hex(NAc)がGlcNAcである場合の潜在的な結合コアタンパク質/ペプチドを表すAsn−(ペプチド)0または1であり、
ただし、mが1である場合、nは1であり、およびHexはGlcであり、およびSAはN−グリカンコア構造Manα3[Manα6]Manβまたはその伸長バリアントであり、
nが1であり、HexがGalである場合、pは0である]
の少なくとも1つの構造を認識する結合剤に関する。
好ましい標的構造は
Galβ4GlcNAc、Neu5Acα3Galβ4GlcNAc、GalNAcβ4GlcNAc、およびGlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc
である。
標的構造を認識する最も好ましい結合剤レクチンは、Galβ4GlcNAcを認識するECA、PWA、およびWFA(より弱い結合)、Neu5Acα3Galβ4GlcNAcを特に認識するMAA、GalNAcβ4GlcNAcを認識するWFA、およびGlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc構造を認識するPSAである。
好ましい標的構造亜群は:
式CC2
[SA]Gal(NAc)β4GlcNAcβR
[式中、残っており
pおよびnは独立に0または1であり
SAはシアル酸SAα3であり、好ましいシアル酸型はNeu5AcまたはNeu5Gc、より好ましくはNeu5Acであり、
nが1であり、HexがGalの場合、pは0である]
の構造を含む。
CC2の好ましい標的構造エピトープは:Galβ4GlcNAc、Neu5Acα3Galβ4GlcNAc、およびGalNAcβ4GlcNAcを含む。
好ましい標的構造亜群は:
式CC3
Manα3[Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβR
[式中、Manα残基はさらに1つまたはいくつかのGlcNAcβ2、またはLacNAcβ2、またはLacNAcの末端シアル化バリアント、好ましくはGalβ4GlcNAc、等の複合型末端構造により伸長されてよく
Rは任意にAsn−(ペプチド)0または1であり、潜在的な結合コアタンパク質/ペプチドを示す]
の構造を含む。
CC3の好ましい標的構造エピトープは:
GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc、GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβAsn、Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc、Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβR
Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβAsn
Manα3[Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ
Manα3[GlcNAcβ2Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ
GlcNAcβ2Manα3[Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ
GlcNAcβ2Manα3[GlcNAcβ2Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ
を含む
幹細胞、特に間葉系幹細胞の増殖率の好ましい効果
表24に、炭水化物特異性が異なる各種結合剤上の間葉系幹細胞の増殖速度を示す。データは、各種レクチン上でいくつかの細胞を培養することが可能であり、該タンパク質が本実験のプラスチック表面と比較して細胞の増殖速度を調節することを明らかにした。受動的に固定化された形態のレクチンRCAは細胞にある程度の毒性を示す場合があり、本発明は特に、リシン等の細胞毒性レクチンの非毒性のバリアントまたは共有結合的に結合した形態に関する。本発明は、各種条件下での、好ましい一態様においては、実施例におけるように2週間以内等のより短い培養期間の下での、増殖速度の調節に関する。
好ましく増殖を増加させるためのレクチン
最高の増殖速度は、末端N−アセチルグルコサミン残基に対して特に特異的なGSAII−レクチンで得られた。好ましい一態様において、本発明はGSAIIと類似の特異性を有するレクチンの存在下での幹細胞の培養に関する。この培養法は特に細胞の増殖速度を変化させるものである。好ましくはGSAIIと共に増殖させる幹細胞調製物はGSAIIに結合するグリカン、より好ましくは末端GlcNAc含有グリカン、さらに好ましくは末端GlcNAcβ含有グリカンを含む。
比較的高い増殖速度が、末端N−アセチルラクトサミン残基に対して特に特異的なECAレクチンで得られた。好ましい一態様において、本発明はECAと類似の特異性を有するレクチンの存在下での幹細胞の培養に関する。この培養法は特に細胞の増殖速度を変化させるものである。好ましくはECAと共に増殖させる幹細胞調製物はECAに結合するグリカン、より好ましくは末端N−アセチルラクトサミン含有グリカン、さらに好ましくは末端N−アセチルラクトサミンβ含有グリカンを含む。
増加した増殖速度が、末端N−アセチルラクトサミン残基に対して特に特異的なPWAレクチンで得られた。好ましい一態様において、本発明は、PWAと類似の特異性を有するレクチンの存在下での幹細胞の培養に関する。この培養法は特に細胞の増殖速度を変化させるものである。好ましくはPWAと共に増殖させる幹細胞調製物はPWAに結合するグリカン、より好ましくは末端N−アセチルラクトサミン含有グリカン、さらに好ましくは末端N−アセチルラクトサミンβ含有グリカンを含む。
増殖速度のある程度の増加が、好ましくは末端Lewis x構造内のフコースに対して特に特異的なLTAレクチンで得られた。好ましい一態様において、本発明は、LTAと類似の特異性を有するレクチンの存在下での幹細胞の培養に関する。この培養法は特に細胞の増殖速度を変化させるものである。好ましくはLTAと共に増殖させる幹細胞調製物はLTAに結合するグリカン、より好ましくはフコース残基含有グリカン、さらに好ましくは末端Lewis xのフコースを含有するグリカンを含む。
増殖速度のある程度の増加が、コアフコースおよび/またはマンノース残基、好ましくは複合型N−グリカンのコアフコースに特に特異的なPSAレクチンでも得られた。好ましい一態様において、本発明はPSAと類似の特異性を有するレクチンの存在下での幹細胞の培養に関する。この培養法は特に細胞の増殖速度を変化させるものである。好ましくはPSAと共に増殖させる幹細胞調製物はPSAに結合するグリカン、より好ましくはコアフコースおよび/またはマンノース残基を含有するグリカン、さらに好ましくは複合型N−グリカンのフコースを含有するグリカンを含む。
好ましく初期増殖を維持する、または減少させるためのレクチン
本発明は、特異的α6−結合シアル酸であるレクチンSNAレクチンおよび特異的α3−結合シアル酸残基に対して特異的なレクチンMAAと同様の、またはやや減少した増殖活性を有するレクチン表面も明らかにした。好ましい一態様において本発明はSNAまたはMAAと同様な特異性を有するレクチンの存在下での幹細胞の培養に関する。この培養法は特に、細胞の増殖速度および/または本発明による他の好ましい特性を変化させるものである。好ましくはSNAまたはMAAと共に増殖させる幹細胞調製物はそれぞれSNAまたはMAAに結合するグリカン、より好ましくはレクチンMAAに対するα3−結合シアル酸、およびSNAに対するα6−結合シアル酸を含む。好ましい態様においては、末端標的グリカンエピトープを有し、本発明により記載される特異的N−グリカン、O−グリカンまたは糖脂質構造を含む幹細胞が選択される。好ましい共通の特異性は式SAα3/6Galβ4GlcNAc[式中、SAはシアル酸、好ましくはN−アセチルラクトサミンにα3またはα6−結合するNeu5Acである]によるものである。
本発明はさらに、マンノース特異的レクチンNPAが、いくらか減少した増殖速度で細胞の増殖を支持することを明らかにした。NPAレクチンは特にα−結合Man、好ましくはManα3/6構造に対して特異的である。好ましい一態様において、本発明は、NPAと類似の特異性を有するレクチンの存在下での幹細胞の培養に関する。この培養法は特に細胞の増殖速度を変化させるものである。好ましくはNPAと共に増殖させる幹細胞調製物はNPAに結合するグリカン、より好ましくはManα、さらに好ましくはManα3/6含有グリカンを含む。好ましい態様においては、末端標的グリカンエピトープを有し、本発明により記載される特異的N−グリカン構造を含む幹細胞が、NPAとの培養のために選択される。
調製物の幹細胞特性を保つために、培養中に幹細胞の増殖を遅延させることも有用であると考えられる。増殖速度を減少させるための好ましいレクチンとしては、GalNAc構造、特にlacdiNacGalNAcβ4GlcNAc、およびN−アセチルラクトサミン構造を結合する、WFA;N−アセチルラクトサミン、特に直鎖ポリ−N−アセチルラクトサミンを結合する、STA;ならびにフコシル化構造、特にFucα2Gal型構造、例えばFucα2Galβ4GlcNAcを結合する、UEA等が挙げられる。好ましい一態様において、本発明はWFA、STAまたはUEAと類似の特異性を有するレクチンの存在下での幹細胞の培養に関する。この培養法は特に、細胞の増殖速度および/または本発明による他の好ましい特性を変化、好ましくは減少させるものである。好ましくは、前記レクチンと共に増殖させる幹細胞調製物は、該レクチンの標的グリカン、好ましくは上記のものの1つまたはいくつかを含む。好ましい態様においては、末端標的グリカンエピトープを有し、本発明により記載される特異的N−グリカン、O−グリカンまたは糖脂質構造を含む幹細胞が選択される。
本発明は、この特異性を有するレクチンの特異的標的構造群を明らかにしたものであり、還元末端伸長ポリ−Nアセチルラクトサミン(STAのように)、またはWFAおよびUEAに対する、それぞれLacdiNAcおよびFucα2Gal−の2−修飾Gal含有構造を含む。本発明は、幹細胞の増殖の調節のためのこれらのN−アセチルラクトサミン型特異性を有するレクチンの群に関する。好ましい共通の特異性は式[R2]Galβ4GlcNAc[β3Galβ] [式中、nおよびmは0または1であり、R2はN−アセチル基(NAc)であり、ガラクトピラノシルの2位の水酸基またはグリコシド結合した2位のFucα−残基を置換する]によるものである。
細胞に対する他の調節効果
実施例10に、より長い培養実験における細胞培養の効果をさらに記載する。細胞は恐らく、プラスチックまたは他の種類の表面と比較して、MAAおよびECA上で最も効果的に増殖した。全てのウェルが1週間以内にコンフルエントになった。WFAおよびPWA上で培養した細胞は5週間の期間中にその増殖能力を失うようであり、WFAコーティング上ではいくらかの形態学的に異なる細胞が存在していた。レクチンMAAおよびECAは特に、長期増殖効果のために好ましい。レクチンWFAは細胞の形態に影響を与えるために好ましい。
細胞形態および接着効果。本発明は特に、レクチン等の結合剤による細胞の形態および/または接着強度の変化に関する。形態学的に、PSAコーティング上で増殖させた細胞は、網状単層を形成する様式において他とは異なった。MAAおよびPSA上の細胞はまた、より強固に表面に接着しており、トリプシンによるそれらの剥離は不可能であり、それらの細胞は機械的に掻き取る必要があった。PSAレクチン、および特にフコースおよび/またはマンノース構造に関して同様な特異性を有するレクチンは、細胞の形態に影響を与える活性、および/または、増加した結合、好ましくはプロテアーゼ耐性結合をもたらすその活性のために好ましい。MAAレクチン、および特にα3−結合シアル酸構造に関して同様な特異性を有するレクチンは、増加した結合、好ましくはプロテアーゼ耐性結合をもたらすその活性のために好ましい。
好ましい結合剤の組み合わせ
本発明は、細胞の状態の分析のための、特異的末端構造の有用な組み合わせを明らかにした。好ましい一態様において、本発明は、本発明の2種の異なる末端構造の水準を、好ましくは特異的結合分子により、好ましくは少なくとも2種の異なる結合剤により、測定することに関する。好ましい一態様において、該結合分子は、末端受容体グリカン構造の修飾を示す構造を対象とし、好ましくは該構造は連続的な(基質構造およびその修飾、例えば末端Gal構造および対応するシアル化構造)または競合的な生合成段階(例えば、末端Galβ、または末端Galβ3GlcNAcおよびGalβ4GlcNAcの、フコシル化およびシアル化)を示す。他の態様において、前記結合剤は連続的または競合的な段階、例えば末端Gal構造および対応するシアル化構造、および対応するシアル化構造を示す3種の異なる構造を対象とする。
本発明はさらに、本発明の非修飾(非シアル化または非フコシル化)Gal(NAc)β3/4−コア構造、本発明の好ましいフコシル化構造および好ましいシアル化構造の群から選択される本発明の少なくとも2種の異なる構造の識別に関する。さらに、好ましくは、好ましい一構造群内に含まれる、3種、より好ましくは4種、およびさらに好ましくは5種の、異なる構造を識別することが有用であると考えられる。
特異的結合剤の標的構造、および結合分子の例
末端構造の、特異的グリカンコア構造との組み合わせ
構造要素の一部は特異的に特定のグリカンコア構造と関連していると考えられる。特定のコア構造に結合する末端構造の識別は特に好ましく、このような高特異性試薬は本発明の物理化学的分析の水準にまでほとんど完全な個々のグリカンを識別する能力を有する。例えば本発明の多くの特異的マンノース構造は一般に本発明のN−グリカングライコームに極めて特徴的である。本発明は特に識別末端エピトープに関する。
いくつかのグリカンコア構造上の共通末端構造
本発明は、いくつかのグリカン型上に特定の共通構造の特徴が存在すること、および、前記試薬の特異性が末端に限定され、コア構造に対する特異性を有していない場合、異なるグリカン構造上の特定の共通エピトープを特異的試薬により識別することが可能であることを明らかにした。本発明は特に、本発明の特定の細胞型の特徴的末端特性を明らかにした。本発明において、共通エピトープが識別の効果を高めることが認められた。この共通末端構造は、該共通末端構造を実質的な量含んでいない、有り得る他の細胞型または材料との関連において、識別に特に有用である。
本発明はN−グリカン、O−グリカンおよび/または糖脂質等の特定のコア構造上の末端構造の存在を明らかにした。本発明は好ましくは特定のグリカンコア型の識別を含む、前記構造のための特異的結合剤の選択に関する。
本発明はさらに、N−グリカンおよびO−グリカン等のタンパク質結合グライコームならびに糖脂質のグライコーム組成に関するものであり、各組成は特異的な量のグリカン亜群を含む。本発明はさらに、特定の量の所定の末端構造を有する場合の前記組成に関する。
特異的な好ましい構造群
本発明は、任意にさらに特異的コア構造を含んだ、特異的末端単糖型を有するオリゴ糖配列の識別に関する。好ましいオリゴ糖配列は、好ましい一態様において、末端単糖構造に基づき分類される。本発明はさらに、末端(非還元末端の末端)二糖エピトープのファミリーを、β結合ガラクトピラノシル構造に基づき明らかにしたものであり、これはさらに、末端Gal残基をGalNAcに変える、フコースおよび/もしくはシアル酸残基により、またはN−アセチル基により修飾されていてよい。このような構造はN−グリカン、O−グリカンおよび糖脂質サブグライコーム(subglycome)中に存在する。さらに、本発明は末端ManαManを有するN−グリカンの末端二糖エピトープに関する。
前記構造は質量分析および任意にNMR分析により、および本発明の高特異性結合剤により得られ、糖脂質構造の分析に対してはパーメチル化(permethylation)およびフラグメンテーション質量分析を用いた。N−グリカン、O−グリカンおよび糖脂質への公知の生合成経路を含む生合成分析を、グリカン組成の分析およびさらなる裏付けのためにさらに用いたが、それはSkottman, H. et al. (2005)幹細胞の遺伝子発現プロファイリングデータ、および、臍帯血細胞のmRNAプロファイリングから得られ、Jaatinen T et al.StemCells(2006)24(3)631−41のデータを用いた生合成分析を支持するために用いられた同様なデータから得られたために、mRNA後の各種調節レベルによる直接的な証拠ではない。
末端マンノース単糖を有する構造
好ましいマンノース型標的構造が本発明により特異的に分類された。これらは本発明の各種の高および低マンノース構造ならびにハイブリッド型構造を含む。
好ましい末端Manα−標的構造エピトープ
本発明は低マンノースN−グリカンおよび高マンノースN−グリカン上のManαの存在を明らかにした。生合成の知識に基づき、ならびに生合成酵素のmRNAの分析による、およびNMR分析による、この見解の支持に基づき、
前記構造および末端エピトープは、
Manα2Man、Manα3Man、Manα6ManおよびManα3(Manα6)Man
[式中、還元末端Manは好ましくはαまたはβ結合グリコシド、およびManα2Manの場合はα結合グリコシドである]
であると明らかにすることができた。
末端Manα構造の一般構造は、
Manαx(Manαy)Manα/β
[式中、xは結合位置2、3または6であり、yは結合位置3または6であり、
zは0または1の整数であり、分岐の存在または非存在を表し、
ただしxおよびyは同一の位置ではなく、および
xが2の場合、zは0であり、還元末端Manは好ましくはα結合する]
である。
低マンノース構造は好ましくは他のマンノース残基に結合するα3および/またはα6マンノースを有する構造
Manαx(Manαy)Manα/β
[式中、xおよびyは3または6の結合位置であり、
zは0または1の整数であって分岐の存在または非存在を表す]
を有する非還元末端の末端エピトープを含む。
高マンノース構造は末端α2結合マンノース:Manα2Man(α)、ならびに任意に上記のα3および/またはα6マンノース構造のonまたはいくつかを含む。
末端Manα構造の存在は幹細胞において制御されており、末端Manα2構造を有する高Man構造の、Manα3/6を有する低Man構造に対する、
および/またはGal主鎖エピトープを有する複合型N−グリカンに対する割合は、細胞型特異的に相違する。
データは、特異的末端Manα2Manおよび/またはManα3/6Manを明らかにする結合剤が幹細胞の分析において非常に有用であることを示した。これまでの科学ではエピトープは細胞型または状態の特異的シグナルとして分析されなかった。
本発明は特に、好ましくは2つの構造型、Manα2Man構造およびManα3/6Man構造を同一試料から定量することにより、低Manおよび高Man構造両者の量を測定することに関する。
本発明は特に、本発明の好ましい幹細胞からの、より好ましくは分化した胚性細胞、より好ましくはステージ3の分化した細胞等の、胚様体を超えて分化したものからの、末端Manα構造の識別のための酵素またはモノクローナル抗体等の高特異性結合剤に関するものであり、最も好ましくは前記構造はステージ3の分化した細胞から識別される。本発明は特に、好ましくは、成体幹細胞、より好ましくは間葉系幹細胞からの、特に間葉系幹細胞の表面からの、および別の態様においては血液由来幹細胞、また別の好ましい群として臍帯血および骨髄幹細胞からの、構造の検出に関する。好ましい一態様において、前記臍帯血および/または末梢血幹細胞は造血幹細胞ではない。
低特異性または未分析の特異性の結合剤
末端マンノース構造の識別に好ましいものとしてマンノース単糖結合植物レクチン等が挙げられる。本発明は好ましい態様において、胚性幹細胞等の幹細胞の、レクチンPSA等のManα認識レクチンによる識別に関する。好ましい一態様において、前記識別は透過性細胞中の細胞内グリカンを対象とする。他の一態様において、Manα結合レクチンは、対応する実施例3に示すように、線維芽細胞型細胞またはフィーダー細胞等の混入細胞集団から末端Manαを識別するために、無傷の非透過性細胞に対して用いられる。
好ましい高特異性の高特異性結合剤
i)特異的マンノース残基遊離酵素(releasing enzyme)、例えば結合特異的マンノシダーゼ、より好ましくはα−マンノシダーゼまたはβ−マンノシダーゼ。
好ましいα−マンノシダーゼとしては、好ましくは非還元末端の末端を開裂するα−マンノシダーゼ等の結合特異的α−マンノシダーゼなどが挙げられ、好ましいマンノシダーゼの一例はタチナタマメα−マンノシダーゼ(Canavalia ensiformis; Sigma, USA)および相同なαマンノシダーゼ
特異的にもしくは他の結合よりも効果的にα2結合マンノース残基を、より好ましくは特異的にManα2構造を開裂するもの;または
特異的にもしくは他の結合よりも効果的にα3結合マンノース残基を、より好ましくは特異的にManα3構造を開裂するもの;または
特異的にもしくは他の結合よりも効果的にα6結合マンノース残基を、より好ましくは特異的にManα6構造を開裂するもの;
である。
好ましいβ−マンノシダーゼとしては、β4結合マンノースをN−グリカンコアManβ4GlcNAc構造の非還元末端の末端から開裂することができ、グライコーム中の他のβ結合した単糖を開裂しないβ−マンノシダーゼ等が挙げられる。
ii)本発明の好ましいマンノース構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬として抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質等が挙げられる。本発明はMS2B1およびより好ましくはMS3B2構造を認識する抗体に関する。
中性N−グリカンのマンノシダーゼ分析
α−マンノシダーゼ結合剤によるマンノシル化の検出ならびに実施例1におけるグリカン臍帯血および末梢血間葉系細胞の;実施例15における臍帯血細胞のための、実施例7におけるhESC EBおよびステージ3細胞、実施例17および2においては胚幹細胞および分化した細胞のための;質量分析プロファイリングの例、ならびに本発明によって記載されるMan1−4GlcNAcβ4(Fucα6)0−1GlcNAc含有低マンノースグリカンのManβ4、Manα3/6末端構造の全ての種類の存在を示す。
レクチン結合
α結合マンノースは実施例4においてヒト間葉系細胞に対してレクチンHippeastrum hybrid(HHA)により示され、Pisum sativum(PSA)レクチンは、それらがN−グリカン等のその表面複合糖質上にマンノース、より具体的にはα結合マンノース残基を発現していることを示唆している。有り得るα−マンノース結合としてはα1→2、α1→3、およびα1→6等が挙げられる。Galanthus nivalis(GNA)レクチンの低結合は、細胞表面上の一部のα−マンノース結合が他と比べて優勢であることを示唆している。末端Manα認識低親和性試薬の組み合わせは有用であり、マンノシダーゼスクリーニングにより得られた結果;NMRおよび質量分析の結果に対応すると思われる。臍帯血細胞のレクチン結合を実施例5に示す。PSAはコアFuca6−エピトープを有する複合型N−グリカンに対する特異性を有する。
マンノース結合レクチン標識
実施例2における間葉系細胞の標識は、蛍光標識に結合したヒト血清マンノース結合レクチン(MBL)でも検出された。これは、この先天性免疫系成分のためのリガンドがin vitro培養されたBM MSC細胞表面上で発現され得ることを示唆している。
本発明は特に、細胞表面上の末端Manαの分析に関するものであり、それは該構造がMBLおよび先天性免疫の他のレクチンに対するリガンドであるためである。さらに、末端Manα構造は、血液循環中で細胞を肝臓のKupfer細胞等のマンノース受容体含有組織に導くと考えられる。本発明は特に、末端Manα構造を認識する結合剤の結合による、前記構造の量の制御に関する。
好ましい一態様において、本発明は、幹細胞へのレクチン(精製または好ましくは組み替え型のレクチン、好ましくは標識された形態)の結合の試験により、ヒトに存在するレクチン、例えば先天性免疫のレクチンおよび/または組織もしくは白血球のレクチンの、幹細胞上のリガンドの存在を試験することに関する。このようなレクチンとして、特にManαおよびGalβ/GalNAcβ構造を結合するレクチン等が挙げられると考えられる(本発明の末端の非還元末端またはα6シアル化型も)。
マンノース結合抗体
高マンノース結合抗体は例えばWang LX et al(2004)11(1)127−34に記載されている。トリマンノシルコア構造等の短いマンノシル化構造に対する特異的抗体も公開されている。
末端Gal単糖を有する構造
好ましいガラクトース型標的構造が特に本発明により分類された。これらは本発明の各種のN−アセチルラクトサミン構造を含む。
末端Galのための、低特異性または未分析の特異性の結合剤
末端ガラクトース構造の識別に好ましいものとして、リシンレクチン(トウゴマ(ricinus communis)凝集素RCA)、ピーナッツレクチン(/凝集素PNA)等の植物レクチンなどが挙げられる。低分解能結合剤(low resolution binder)は様々な広範な特異性を有する。
好ましい高特異性の高特異性結合剤としては
i)特異的ガラクトース残基遊離酵素、例えば結合特異的ガラクトシダーゼ、より好ましくはα−ガラクトシダーゼまたはβ−ガラクトシダーゼ。
好ましいα−ガラクトシダーゼとしては、特定の細胞調製物から明らかになったGalα3Gal構造を開裂し得る結合ガラクトシダーゼ(linkage galactosidase)等が挙げられる。
好ましいβ−ガラクトシダーゼとしては、
β4結合ガラクトースを非還元末端の末端Galβ4GlcNAc構造から開裂することができ、グライコーム中の他のβ結合単糖は開裂しない、および
β3結合ガラクトースを非還元末端の末端Galβ3GlcNAc構造から開裂することができ、グライコーム中の他のβ結合単糖は開裂しない
β−ガラクトシダーゼなどが挙げられる。
ii)本発明の好ましいガラクトース構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬としては抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質およびガレクチン等の動物レクチンなどが挙げられる。
特異的結合剤実験およびGalβ構造に対する実施例
前記構造の特異的エキソグリコシダーゼおよび糖転移酵素分析が、胚幹細胞および分化した細胞に対しては実施例17および2に、実施例1間葉系細胞、臍帯血細胞については実施例15に、ならびに細胞表面に対する実施例16に、ならびに糖転移酵素を含んで、糖脂質に対しては実施例11に含まれる。末端Galβおよびシアル酸発現に関連するシアル化度分析を実施例6に示す。
本発明のGalβエピトープの結合のために好ましい酵素結合剤としては、β1,4−ガラクトシダーゼ、例えばS.pneumoniaeからのもの(大腸菌における組み替え体、Calbiochem、USA)、β1,3−ガラクトシダーゼ(大腸菌における組み替え体、Calbiochem、等);グリコシルトランスフェラーゼ:α2,3−(N)−シアリルトランスフェラーゼ(ラット、S.frugiperdaにおける組み替え体、Calbiochem)、特異的N−アセチルラクトサミンエピトープFuc−TVI、特にGalβ4GlcNAcを認識することが知られるα1、3−フコシルトランスフェラーゼVI(ヒト、S.frugiperdaにおける組み替え体、Calbiochem)等が挙げられる。
植物低特異性レクチン、例えばRCA、PNA、ECA、STA、および
PWA、データはhESCに対しては実施例3に、MSCに対しては実施例4に、臍帯血に対しては実施例5に、細胞増殖のためのレクチン結合剤の効果は実施例10に、臍帯血細胞の選択は実施例12に示す。
各種ガレクチン発現によるヒトレクチン分析は臍帯血および胚細胞からの実施例13である。
実施例14に、特にフコシル化およびガラクトシル化された構造の抗体標識を示す。
ポリ−N−アセチルラクトサミン配列
アメリカヤマゴボウ(pokeweed)(PWA)による細胞の標識、およびSolanum tuberosum(STA)レクチンによる、より弱い細胞の標識は、細胞が、N−および/またはO−グリカンおよび/または糖脂質等のそれらの表面複合糖質上に、ポリ−N−アセチルラクトサミン配列を発現することを示唆する。結果はさらに、細胞表面ポリ−N−アセチルラクトサミン鎖が直鎖および分岐鎖配列の両者を有することを示唆する。
末端GalNAc−単糖を有する構造
好ましいGalNAc型標的構造が特に本発明により明らかにされた。これらは特に、本発明のLacdiNAc、GalNAcβGlcNAc型構造を含む。
末端GalNAcのための、低特異性または未分析の特異性の結合剤
いくつかの植物レクチンが末端GalNAcの認識に関して報告されている。一部のGalNAc認識レクチンは好ましいLacdiNAc構造の低特異性認識のために選択されてよいと理解される。
β−結合N−アセチルガラクトサミン
Wisteria floribundaレクチン(WFA)によるhESCの豊富な標識は、hESCが、β−結合非還元末端N−アセチルガラクトサミン残基を、N−および/またはO−グリカン等のそれらの表面複合糖質上に発現していることを示唆する。WFAのmEFに対する特異的結合が存在しないことは、レクチンリガンドエピトープが、mEFにおいて、より少ないということを示唆する。
Wisteria floribunda凝集素およびLotus tetragonolobus凝集素等の低特異性結合剤植物レクチンは、オリゴ糖配列に結合する(Srivatsan J.et al.Glycobiology(1992)2(5)445−52:Do、KY et al.Glycobiology(1997)7(2)183−94;Yan、L.,et al(1997)Glycoconjugate J.14(1)45−55)。論文は、前記レクチンが、細胞が該レクチンに認識される他の構造を有していないと確認される場合に、構造の識別に有用であることも示している。
好ましい一態様において、低特異性レアクチン(leactin)試薬が、結合を確認する他の試薬と組み合わせて用いられる。
好ましい高特異性の高特異性結合剤として
i)本発明は、β結合GalNAcが、β−N−アセチルヘキソサミニダーゼ酵素と組み合わせた特異的β−N−アセチルヘキソサミニダーゼ酵素によって認識され得ることを明らかにした。
この組み合わせは、末端単糖および少なくとも結合構造の一部を示す。
好ましいβ−N−アセチルヘキソサミニダーゼとしては、非還元末端の末端GalNAcβ4/3構造からβ結合GalNAcを開裂することができるがグライコーム中のα結合したHexNAcは開裂しない酵素等が挙げられる。好ましいN−アセチルグルコサミニダーゼとしては、β結合したGlcNAcは開裂し得るがGalNAcは開裂しない酵素等が挙げられる。
本発明の構造である、好ましいGalNAcβ4、より好ましくはGalNAcβ4GlcNAcを認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬としては抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質等が挙げられる。
LacdiNAc構造を認識する抗体の例として、Nyame A.K.et al.(1999)Glycobiology 9(10)1029−35;van Remoortere A.et al(2000)Glycobiology 10(6)601−609;および、van Remoortere A.et al(2001)Infect.Immun.69(4)2396−2401の文献が挙げられる。前記抗体はマウスおよびヒトの寄生虫(Shistosoma)との関連で分析されたが、本発明によると、これらの抗体は幹細胞のスクリーニングにおいても用いることができる。本発明は特に、本発明のN−グライコーム中に存在するサブグライコームおよびグリカン構造に特異的なLacdiNac認識抗体の特異的クローンの選択に関する。
前記論文は、本発明と類似した抗体結合特異性およびこのような抗体を生産する方法を開示しており、そのため、前記抗体結合剤は当業者にとって明白である。特定のLacdiNAc構造の免疫原性はヒトおよびマウスにおいて示される。
グリコシダーゼを前記構造の識別に用いることは本発明におけると同様に従来技術において公知であり、例えばSrivatsan J.et al.(1992)2(5)445−52が挙げられる。
末端GlcNAc単糖を有する構造
好ましいGlcNAc型標的構造が本発明により具体的に明らかになった。これらは特に本発明のGlcNAcβ−型構造を含む。
末端GlcNAcに対する低特異性または未分析の特異性の結合剤
いくつかの植物レクチンでは末端GlcNAcの認識が報告されている。一部のGlcNAc認識レクチンは好ましいGlcNAc構造の低特異性認識のために選択され得ると考えられる。
好ましい高度に特異的な高特異性結合剤として
i)本発明は、β結合GlcNAcが特異的β−N−アセチルグルコサミニダーゼ酵素により認識され得ることを明らかにした。
好ましいβ−N−アセチルグルコサミニダーゼとしては、非還元末端の末端GlcNAcβ2/3/6構造からβ結合GlcNAcを開裂することができるが、グライコーム中のβ結合GalNAcまたはα結合HexNAcは開裂しない酵素等が挙げられる;
ii)本発明の構造である、好ましいGlcNAcβ2/3/6、より好ましくはGlcNAcβ2Manαを認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬としては抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質等が挙げられる。
特異的結合剤実験および末端HexNAc(GalNAc/GlcNAcおよびGlcNAc構造)に対する実施例
前記構造のための特異的エキソグリコシダーゼ分析が胚幹細胞および分化した細胞のための実施例17および2に、間葉系細胞のための実施例1に、臍帯血細胞に対しては実施例15に、ならびに糖脂質に対しては実施例11に含まれる。
WFAおよびGNAII等の植物性低特異性レクチン、およびデータは、hESCに対する実施例3に、MSCに対する実施例4に、臍帯血に対する実施例5に示し、該レクチン結合剤の細胞増殖に対する効果は実施例10に示し、臍帯血細胞選択は実施例12に示す。
前記構造の識別のために好ましい酵素としては、一般的なヘキソサミニダーゼであるタチナタマメからのβ−ヘキソサミニダーゼ(C. ensiformis、Sigma、USA)、およびS.pneumoniaeからのβ−グルコサミニダーゼ(大腸菌における組み替え体、Calbiochem、USA)等の特異的N−アセチルグルコサミニダーゼまたはN−アセチルガラクトサミニダーゼ等が挙げられる。これらの組み合わせによりLacdiNAcの決定が可能となる。
本発明はさらに、Holmes and Greene(1991)288(1)87−96に記載されるような末端GlcNAcβ構造を認識し、いくつかの末端GlcNAc構造に対する特異性を有する特異的モノクローナル抗体による、前記構造の分析に関する。本発明は特に、前記構造に対する抗体の選択および生産のための、本発明の末端構造の使用に関する。
標的構造の確認は、糖脂質構造のための質量分析およびパーメチル化/フラグメンテーション分析を含む。
末端フコース−単糖を有する構造
好ましいフコース型標的構造が本発明により特異的に分類された。これらは本発明の各種のN−アセチルラクトサミン構造を含む。本発明はさらに、N−グリカンコア、GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcのラクトサミン類似α6−フコシル化エピトープに対する識別および他の方法に関する。本発明は、レクチンPSA(Kornfeld(1981)J Biol Chem 256、6633−6640;Cummings and Kornfeld(1982)J Biol Chem 257、11235−40)によって認識され得るこのような構造が例えば胚幹細胞および間葉系幹細胞中に存在することを明らかにした。
末端Fucのための、低特異性または未分析の特異性の結合剤
末端フコース構造の識別に好ましいものとして、フコース単糖結合植物レクチンが挙げられる。Ulex europeausおよびLotus tetragonolobusのレクチンは、例えば末端フコースを認識し、それぞれα2結合構造および分岐α3フコースに対するある程度の特異性結合(specificity binding)を有することが報告されている。データをhESCに対する実施例3に、MSCに対する実施例4に、臍帯血に対する実施例5に示し、および細胞増殖に対するレクチン結合剤の効果を実施例10に示し、臍帯血細胞選択を実施例12に示す。
好ましい高特異性の高特異性結合剤として
i)特異的フコース残基遊離酵素、例えば結合フコシダーゼ(linkage fucosidase)、より好ましくはα−フコシダーゼ。
好ましいα−フコシダーゼとしては、特定の細胞調製物から明らかになったFucα2GalおよびGalβ4/3(Fucα3/4)GlcNAc構造を開裂することができる結合フコシダーゼ等が挙げられる。
特異的エキソグリコシダーゼおよび前記構造に対しては、胚幹細胞および分化した細胞のための実施例17および2に、間葉系細胞のための実施例1に、臍帯血細胞に対しては実施例15に、ならびに細胞表面に対する実施例16に、糖脂質に対しては実施例11に含まれる。好ましいフコシダーゼとしてはα1,3/4−フコシダーゼ、例えばXanthomonas sp.由来のα1,3/4−フコシダーゼ(Calbiochem、USA)、およびα1,2−フコシダーゼ、例えばX. manihotis由来のα1,2−フコシダーゼ(Glyko)等が挙げられる。
ii)本発明の好ましいフコース構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬としては抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質、ならびに、Lewis xであるGalβ4(Fucα3)GlcNAc、およびシアリルLewis xであるSAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAc等のLewis型構造を特に認識する、セレクチン等の動物レクチンなどが挙げられる。
好ましい抗体としては、特異的にLewis x、およびシアリル−Lewis x等のLewis型構造を認識する抗体が挙げられる。より好ましくは前記Lewis x抗体は典型的なSSEA−1抗体ではないが、該抗体は、N−グリカンコアに結合したGalβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Manα等の特異的タンパク質結合Lewis x構造を認識する。
iii)本発明はさらに、N−グリカンコア、GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcのα6フコシル化エピトープの識別に関する。本発明はレクチンPSAまたはレンズ豆(lentil)レクチン(Kornfeld (1981) J Biol Chem 256、6633−6640)による構造による、または特異的モノクローナル抗体(例えばSrikrishna G. et al (1997) J Biol Chem272、25743−52)による、このような構造の識別に関する。本発明はさらに、グリカンエピトープを含む細胞グリカン成分の単離、および、さらなる分析のための対照画分としての、レクチンに結合していない幹細胞N−グリカンの単離の方法に関する。
末端シアル酸−単糖を有する構造
好ましいシアル酸型標的構造が本発明により特異的に分類された。
末端シアル酸のための、低特異性または未分析の特異性の結合剤
末端シアル酸構造の識別に好ましいものとして、シアル酸単糖結合植物レクチンが挙げられる。
好ましい高度に特異的な高特異性結合剤として
i)特異的シアル酸残基遊離酵素、例えば結合シアリダーゼ、より好ましくはα−シアリダーゼ。
好ましいα−シアリダーゼとしては、本発明の特定の細胞調製物から明らかになった、SAα3GalおよびSAα6Gal構造を開裂し得る結合シアリダーゼ等が挙げられる。
結合特異性を有する好ましい低特異性レクチンとしては、SAα3Gal構造に特異的なレクチン、好ましくはMaackia amurensisレクチン、および/またはSAα6Gal構造に特異的なレクチン、好ましくはSambucus nigra凝集素等が挙げられる。
ii)本発明の好ましいシアル酸オリゴ糖配列構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬として抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質、ならびに、シアリルLewis xであるSAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAc等のLewis型構造を特に認識するセレクチンまたはシアル酸を認識するシグレック(Siglec)タンパク質などの動物レクチン等が挙げられる。好ましい抗体としては特異的にシアリル−N−アセチルラクトサミンおよびシアリル−Lewis xを認識する抗体などが挙げられる。
NeuGc構造のための好ましい抗体としては、構造NeuGcα3Galβ4Glc(NAc)0または1および/またはGalNAcβ4[NeuGcα3]Galβ4Glc(NAc)0または1を認識する抗体等が挙げられ、式中、[]は構造中の分岐を表し、()0または1は存在するまたは存在しない構造を表す。好ましい一態様において、本発明は抗体による、好ましくはモノクローナル抗体またはヒト/ヒト化モノクローナル抗体による、N−グリコリル−ノイラミン酸構造の識別に関する。好ましい抗体はP3抗体の可変領域を含む。
特異的結合剤実験およびα3/6シアル化構造に対する実施例
前記構造に対する特異的エキソグリコシダーゼ分析が、胚幹細胞および分化した細胞のための実施例17および2に、間葉系細胞のための実施例1に、臍帯血細胞に対しては実施例15に、ならびに細胞表面に対する実施例16に、ならびに糖転移酵素を含んで、糖脂質に対しては実施例11に含まれる。末端Galβおよびシアル酸発現と関連したシアル化水準の分析を実施例6に示す。
本発明のシアル酸エピトープの結合のために好ましい酵素結合剤としては、A.ureafaciens由来の一般的シアリダーゼα2,3/6/8/9シアリダーゼ(Glyko)、S.pneumoniae由来のα2,3−シアリダーゼ等のα2,3−シアリダーゼ(Calbiochem、USA)などの、シアリダーゼなどが挙げられる。他の有用なシアリダーゼは大腸菌およびコレラ菌から知られている。
特異的N−アセチルラクトサミンエピトープ、特にSAα3Galβ4GlcNAcを有するFuc−TVIを認識することが知られるα1,3−フコシルトランスフェラーゼVI(ヒト、S.frugiperdaにおける組み替え体、Calbiochem)。
MAAおよびSNA等の植物低特異性レクチン、およびデータは、hESCのための実施例3に、MSCのための実施例4に、臍帯血のための実施例5に示し、細胞増殖に対するレクチン結合剤の効果は実施例10に示し、臍帯血細胞選択は実施例12に示す。
実施例14においては、シアリル構造の抗体標識を示す。
幹細胞型特異的ガレクチンおよび/またはガレクチンリガンドのための好ましい使用
実施例に記載されるように、本願発明者らは各種幹細胞が異なったガレクチン発現プロファイルおよび異なったガレクチン(グリカン)リガンド発現プロファイルを有することも見出した。本発明はさらに、ガラクトース結合試薬、優先的にはガラクトース結合レクチン、より優先的には特異的ガレクチンを幹細胞型特異的な様式で用い、記載の使用に対して本発明に記載されるように特定の幹細胞を調節する、またはそれに結合させることに関する。さらに好ましい一態様において、本発明は、ガレクチンリガンド構造、その誘導体、またはリガンド模倣試薬を、本発明に記載される使用に対して幹細胞型特異的様式で用いることに関する。好ましいガレクチンを実施例13に列挙する。
本発明は好ましい一態様において、Galβ4GlcNAcおよびGalβ3GlcNAc構造の識別のための、上記のようなガレクチンによる、細胞からの末端N−アセチルラクトサミンの識別に関する。結果は、CB CD34+/CD133+幹細胞集団およびhESCの両者が、興味深い異なったガレクチン発現プロファイルを有し、異なったガレクチンリガンド親和性プロファイルを生成する(Hirabayashi et al.,2002)ことを示した。結果はさらに、これら幹細胞における豊富なガレクチンリガンドの発現、特に非還元末端β−GalおよびII型LacNAc、ポリLacNAc、β1,6−分岐ポリLacNAcならびに複合型N−グリカンの発現を示すグリカン分析の結果と相関している。
幹細胞グライコーム分析の特定の技術的局面
グリカンおよびグリカン画分の単離
本発明のグリカンは当該分野で公知の方法により単離することができる。好ましいグリカン調製法は次の工程からなる:
1° グリカン含有画分を試料から単離し、
2° 任意に前記画分をグライコーム分析に有用な純度に精製する。
好ましい単離法は分析されるべき所望のグリカン画分に応じて選ばれる。単離法は次の方法:
1° 水または他の親水性溶媒による抽出であって、水溶性グリカンまたは遊離オリゴ糖もしくは糖ペプチド等の複合糖質を生成するもの、
2° 疎水性溶媒による抽出であって、糖脂質等の疎水性複合糖質を生ずるもの、
3° N−グリコシダーゼ処理、特にFlavobacterium meningosepticum N−グリコシダーゼF処理であって、N−グリカンを生ずるもの、
4° ホウ化水素等の還元剤を用いた、または用いない、アルカリ処理、例えば弱い(0.1M等)水酸化ナトリウムまたは濃アンモニア処理であって、前者の場合、炭酸塩等の保護剤の存在下で処理が行われ、O−グリカン等のβ脱離産物(β−elimination product)および/もしくはN−グリカン等の他の脱離産物を生ずるもの、
5° エンドグリコシダーゼ処理、例えばエンド−β−ガラクトシダーゼ処理、特にEscherichia freundiiエンド−β−ガラクトシダーゼ処理であって、ポリ−N−アセチルラクトサミングリカン鎖もしくは酵素特異性に応じて類似の産物からの断片を生ずるもの、ならびに/または
6° プロテアーゼ処理、例えば広範囲のまたは特異的なプロテアーゼ処理、特にトリプシン処理であって、糖ペプチド等のタンパク質分解断片を生ずるもの、
の1つまたは組み合わせ、またはもとの試料の画分を生ずる他の分画法であってよい。
遊離したグリカンは任意にシアル化および非シアル化亜画分(subfraction)に分けられ、別々に分析される。本発明によると、これは中性グリカン成分の改善された検出のために、特にそれらが分析対象の試料中で希な場合に、および/または試料の量が少ないもしくは質が低い場合に、好ましい。好ましくは、このグリカン分画はグラファイトクロマトグラフィー(graphite chromatography)により達成される。
本発明によると、シアル化グリカンは任意に、上記の非シアル化グリカン特異的単離手順において非シアル化グリカン画分とともに単離されるような様式で修飾され、非シアル化およびシアル化グリカン成分の両者に対して同時に改善された検出がもたらされる。好ましくは、この修飾は非シアル化グリカン特異的単離手順の前に行われる。好ましい修飾方法としてはノイラミニダーゼ処理およびシアル酸カルボキシル基の誘導体化等が挙げられ、好ましい誘導体化法として該カルボキシル基のアミド化およびエステル化等が挙げられる。
グリカン遊離法
好ましいグリカン遊離法としては次の方法:
遊離グリカン − 遊離グリカンの、例えば水または適した水−溶媒混合物による抽出。
O−およびN−結合グリカン等のタンパク質結合グリカン − タンパク質結合グリカンのアルカリ脱離(alkaline elimination)、次いで任意に遊離したグリカンの還元を行う。
ムチン型および他のSer/Thr O−結合グリカン − グリカンのアルカリβ脱離(alkaline β−elimination)、次いで任意に遊離したグリカンの還元を行う。
N−グリカン − 酵素的遊離(enzymatic liberation)、任意に、例えばC. meningosepticum由来のN−グリコシダーゼF、Streptomyces由来のエンドグリコシダーゼH、またはアーモンド由来のN−グリコシダーゼA等のN−グリコシダーゼ酵素を用いる。
スフィンゴ糖脂質等の脂質結合グリカン − エンドグリコセラミダーゼ酵素を用いた酵素的遊離;化学的遊離;オゾン分解遊離。
グリコサミノグリカン − グリコサミノグリカンを開裂するエンドグリコシダーゼ、例えばコンドロイナーゼ(chondroinase)、コンドロイチンリアーゼ、ヒアルロンダーゼ(hyalurondase)、ヘパラナーゼ、ヘパラチナーゼ、もしくはケラタナーゼ/エンド−ベータ−ガラクトシダーゼを用いた処理;またはO−グリコシドグリコサミノグリカンに対するO−グリカン遊離法の使用;またはN−グリコシドグリコサミノグリカンに対するN−グリカン遊離法もしくは特異的グリコサミノグリカンコア構造を開裂する酵素の使用;または特異的化学的亜硝酸開裂法、特にアミン/N−硫酸エステル含有グリコサミノグリカンに対するもの
グリカン断片 − 特異的エキソまたはエンドグリコシダーゼ酵素、例えばケラタナーゼ、エンド−β−ガラクトシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、シアリダーゼ、または他のエキソおよびエンドグリコシダーゼ酵素;化学的開裂法;物理的方法
等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の分析のための好ましい標的細胞集団および型
初期ヒト細胞集団
ヒト幹細胞および多分化能細胞
最も広い態様において、本発明は全ての型のヒト幹細胞に関するものであり、これは新鮮な、かつ培養されたヒト幹細胞を意味する。本発明の幹細胞は、天然の細胞に似た分化を示し得るが典型的には染色体の変化またはウイルス感染による非天然の発生を示す、従来の癌細胞株は含まない。幹細胞には、他の細胞型に分化することができる全ての型の良性多分化能細胞が含まれる。幹細胞は細胞分裂後に幹細胞のまま存在できる特別な能力、自己複製能を有する。
ヒト幹細胞に対する最も広い態様において、本発明は、新規の特別なグリカンプロファイル、および該グリカンプロファイルを対象とした新規の分析論、試薬および他の方法を記載する。本発明は、ヒト幹細胞の新規グリカンプロファイルに関して、細胞集団における特有の相違を示す。
本発明はさらに、本発明の好ましい細胞集団に関する新規構造および関連した発明に関する。本発明はさらに、特定の好ましい細胞集団に関連する特異的グリカン構造、特に末端エピトープに関するものであり、該細胞集団に対して該構造は新しいものである。
初期ヒト細胞の好ましい型
本発明は細胞の組織起源(tissue origin)および/またはその分化状態に基づく、初期ヒト細胞の特異的な型に関する。
本発明は特に、ドナー個体の年齢、ならびに細胞が由来する組織の種類、例えば年上の個体または成人からの好ましい臍帯血および骨髄、などの細胞の由来に基づく、初期ヒト細胞集団、すなわち多分化能細胞およびそれに由来する細胞集団に関する。
分化状態を基盤とした好ましい分類は、好ましくは「固形組織前駆」細胞、より好ましくは「間葉系幹細胞」、または固形組織に分化する細胞、もしくは外胚葉、中胚葉、もしくは内胚葉、より優先的には間葉系幹細胞に分化し得る細胞を含む。
本発明はさらに、細胞培養に関連する状態に基づく初期ヒト細胞の分類および2つの主要な種類の細胞材料に関する。本発明は好ましくは、新鮮な、冷凍の、および培養の細胞を含む初期ヒト細胞の2つの主要な細胞材料型に関する。
臍帯血細胞、胚性細胞および骨髄細胞
本発明は特に、ドナー個体の年齢および細胞が由来する組織の種類などの細胞の由来に基づく、初期ヒト細胞集団、すなわち多分化能細胞およびそれに由来する細胞集団に関する。
a)1)ヒト新生児、好ましくは臍帯血および関連する材料に関するもの、および2)胚細胞型材料、などの若齢(early age cell)細胞から
b)年上の個体(非新生児、好ましくは成人)由来の幹および前駆細胞から、好ましくはヒト「血液関連組織」由来の、好ましくは骨髄細胞を含むものから。
固形組織、好ましくは間葉系幹細胞に分化する細胞
本発明は特に、好ましい一態様の下で、「固形組織前駆細胞」と称する非造血組織に分化することができる細胞、すなわち血液細胞以外の細胞に分化する細胞に関する。より好ましくは、固形組織に分化するために産生される前記細胞集団は「間葉系細胞」であり、これは中胚葉起源の細胞、より好ましくは間葉系幹細胞に効果的に分化し得る多分化能細胞である。
従来技術のほとんどは本発明の間葉系細胞および間葉系幹細胞と極めて異なる特徴を有する造血細胞に関するものである。
本発明の好ましい固形組織前駆細胞としては、臍帯血の選択された多分化能細胞集団、臍帯血から培養された間葉系幹細胞、骨髄から培養された/得られた間葉系幹細胞、および胚性細胞等が挙げられる。より具体的な一態様において、好ましい固形組織前駆細胞は間葉系幹細胞、より好ましくは「血液関連間葉系細胞」、さらに好ましくは骨髄または臍帯血に由来する間葉系幹細胞である。
具体的一態様の下で、臍帯血のさらなる造血幹細胞型としてのCD34+細胞またはCD34+細胞一般は、前記固形組織前駆細胞から除外される。
初期血液細胞(early blood cell)集団および対応する間葉系幹細胞
臍帯血
前記初期血液細胞集団は多分化能細胞に富んだ血液細胞材料を含む。好ましい初期血液細胞集団としては、多分化能細胞に富む末梢血細胞、骨髄血細胞および臍帯血細胞等が挙げられる。好ましい一態様において、本発明は初期血液または初期血液由来細胞集団に由来する間葉系幹細胞、好ましくは該細胞集団の分析に関する。
骨髄
初期血液細胞の他の別に好ましい群は骨髄血細胞である。これらの細胞も多分化能細胞を含む。好ましい一態様において、本発明は骨髄細胞集団に由来する間葉系幹細胞、好ましくは該細胞集団の分析に関する。
初期ヒト血液細胞の好ましい亜集団
本発明は特に、初期ヒト細胞の亜集団に関する。好ましい一態様において、該亜集団は抗体による選択によって産生され、他の態様においては特定の細胞型に有利な細胞培養により産生される。好ましい一態様において、前記細胞は抗体選択法により、好ましくは初期血液細胞から産生される。好ましくは、前記初期ヒト血液細胞は臍帯血細胞である。
CD34陽性細胞集団は比較的大きく不均質である。これは特異的細胞産物を産生する目的のいくつかの用途に対して最適ではない。本発明は好ましくは特異的に選択された非CD34集団、すなわちCD34マーカーに対する結合に対して選択されない細胞であって均質細胞集団と呼ばれるものに関する。均質な細胞集団はより小さいサイズの、例えばCD133+細胞集団に相当する、および特異的に選択されたCD34+細胞集団よりも小さいサイズを有する、単核球集団のものであり得る。さらに、初期ヒト細胞の好ましい均質亜集団はCD34+細胞集団よりも大きくてよいと考えられる。
均質細胞集団はCD34+細胞集団の亜集団であってよく、好ましい態様においてこれは具体的にCD133+細胞集団またはCD133型細胞集団である。本発明の「CD133型細胞集団」は、CD133+細胞集団と類似しているが、好ましくはCD133以外の他のマーカーに関して選択される。該マーカーは好ましくはCD133共発現マーカーである。好ましい一態様において、本発明はCD133+細胞集団、またはCD133型細胞集団としてのCD133+亜集団に関する。好ましい均質細胞集団はさらに、特別なCD133型細胞として定義され得るもの以外の他の細胞集団を含むと考えられる。
好ましくは、均質な細胞集団は該細胞集団の細胞表面マーカーに対する特異的結合剤の結合により選択される。好ましい一態様において、均質な細胞は、CD34マーカーとより低い相関を有し、細胞表面上のCD133とより高い相関を有する細胞表面マーカーにより選択される。好ましい細胞表面マーカーとしては、CD133型細胞に豊富な本発明のα3−シアル化構造等が挙げられる。純粋な、好ましくは完全な、CD133+細胞集団が、本発明の分析のために好ましい。
本発明は、純粋な臍帯血由来材料からの細胞集団の分析または識別を可能にするであろう本質的なmRNA発現マーカーに関する。本発明は特に、初期ヒト臍帯血細胞上に特異的に発現するマーカーに関する。
本発明は、好ましい一態様において、天然細胞、すなわち遺伝的に改変されていない細胞に関する。遺伝的改変は細胞および改変された細胞からの背景を変えることが知られている。本発明はさらに、好ましい一態様において、新鮮な非培養細胞に関する。
本発明は、特別な分化能の細胞、好ましくはヒト血液細胞、またはより好ましくはヒト臍帯血細胞の分析のためのマーカーの使用に関する。
ヒト臍帯血由来の再現可能に高度に精製された単核完全細胞(mononuclear complete cell)集団の好ましい純度
本発明は特に、ヒト臍帯血由来の精製された細胞集団の産生に関する。上記の通り、ヒト臍帯血由来の高度に精製された完全細胞(complete cell)調製物の産生は当該分野において問題であった。最も広い態様において、本発明は本発明のヒト臍帯血の生物学的等価物に関するものであり、これらは同様なマーカーを有し、本発明のCD133+細胞集団および等価物と同様に分離された際に同様な細胞集団を生ずるか、または臍帯血と等価な細胞が、さらに他の細胞型も含む試料に含まれる。臍帯血と同様の特性は少なくとも部分的にヒトの出生前に存在し得ると考えられる。本願発明者らは、高度に精製された細胞集団を、シアル化グリカンおよび関連するマーカーの正確な分析に有用な純度で初期ヒト細胞から生成することが可能であることを見出した。
好ましい骨髄細胞
本発明はヒト骨髄由来の多分化能細胞集団または初期ヒト血液細胞に関する。もっとも好ましいのは骨髄由来間葉系幹細胞である。好ましい一態様において、本発明は、骨および/または軟骨等の、構造的な支持機能を有する細胞に分化する間葉系幹細胞に関する。
これまでに言及されている各種因子が幹細胞の生き残り、複製、および分化の能力に影響する。例えば、栄養に関しては、アミノ酸タウリンは特定の条件下で齧歯類骨髄細胞が破骨細胞を形成するのを優先的に阻害し(Koide、et al.,1999,Arch Oral Biol 44:711−719)、アミノ酸L−アルギニンは赤血球の分化および赤血球前駆細胞の増殖を刺激し(Shima,et al.,2006,Blood 107:1352−1356)、P2Y受容体を介して作用する細胞外ATPは造血および非造血幹細胞の両者に対して多種多様な変化を媒介し(Lee,et al.,2003,Genes Dev 17:1592−1604)、多孔質高分子足場(porous polymer scaffold)に付着したアルギニン−グリシン−アスパラギン酸は骨芽細胞前駆体の分化および生き残りを促進する(Hu、et al.,2003,J Biomed Mater Res A 64:583−590):これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられたものとする。従って、各種栄養を特定の型の幹細胞および/またはその子孫の分化の誘導または生存能力の維持のために用いることは当業者にとって公知であろう。
胚性細胞集団
本発明は特に、胚性細胞集団を対象とした方法に関するものであり、好ましくは前記使用はヒト胚の商業的または産業的使用も、ヒト胚の破壊も伴わない場合のものである。本発明は特定の一態様の下で、法律上許容される任意の時と場合における、胚細胞、および胚幹細胞等の胚由来材料の使用に関する。法律は国や地域によって異なることが理解される。
本発明はさらに、胚関連の、廃棄された、または自然に損傷を受けた材料であって、ヒト胚として生存能力が無く、ヒト胚とは見なされ得ない材料の使用に関する。さらに他の態様において、本発明は、偶然損傷を受けた胚材料であってヒト胚として生存能力が無く、ヒト胚とは見なされ得ない材料の使用に関する。
さらに、出生および正常分娩過程の臍帯の除去後のヒト臍帯または胎盤に由来する初期ヒト血液は倫理的に議論の対象とならない廃棄物であり、ヒトの部分を形成しないと理解される。
本発明はさらに、本発明の細胞材料と等価な細胞材料に関する。さらに、機能的におよび生物学的にも類似した細胞がクローニング技術等の人為的な方法により得ることができると理解される。
間葉系多分化能細胞
本発明はさらに、本発明の好ましい細胞集団としての間葉系幹細胞または多分化能細胞に関する。好ましい間葉系幹細胞としては初期ヒト細胞、好ましくはヒト臍帯血またはヒト骨髄から得られた細胞等が挙げられる。好ましい一態様において、本発明は、骨および/もしくは軟骨等の構造的な支持機能を有する細胞または脂肪組織等の軟組織を形成する細胞に分化する間葉系幹細胞に関する。
細胞状態の制御およびグリコシル化分析による潜在的混入
細胞状態の制御
原料細胞集団の制御
本発明は治療において用いるための細胞集団のグリコシル化の制御に関する。
本発明は特に、細胞材料のグリコシル化の制御に関するものであり、好ましくはここで、
1)細胞材料の由来と移植材料の潜在的レシピエントとの間に相違がある。好ましい一態様においては、潜在的な個体間の特異性の相違が細胞材料のドナーと該細胞材料のレシピエントとの間に存在する。好ましい一態様においては、本発明は動物またはヒト、より好ましくはヒトに特異的、個体特異的なグリコシル化の相違に関する。個体特異的な相違は好ましくは初期ヒト細胞、初期ヒト血液細胞および胚性細胞の単核細胞集団中に存在する。本発明は好ましくは公知の個体特異的相違、例えば赤血球上の血液型抗原の変化の観察に関するものではない。
2)材料中の疾患特異的変異による変異の可能性がある。本発明は特に、感染性疾患、炎症性疾患または悪性疾患と関連する本発明の初期細胞集団中のグリコシル化の相違の探索に関する。本願発明者らの一部は多数の癌および腫瘍を分析し、初期細胞中の特定のグリコシル化型と類似した型のグリコシル化を観察した。
3)細胞が得られた動物、好ましくはヒトにおける特異的な個体間の生物学的相違の可能性がある。例えば細胞材料における、種、系統、集団、隔離集団、または品種特異的相違。
4)特定の細胞集団が細胞治療用途に用いられ得ることが証明された場合、グリカン分析は、該細胞集団を臨床の場において有用であることが知られている細胞集団と同一の特徴を有するように制御するために用いることができる。
細胞培養中の時間依存的変化
さらに、細胞の長期培養において、自然突然変異が培養細胞材料中に生ずる場合がある。培養細胞株中の突然変異はグリコシル化度に対して有害な欠陥を生じさせることが多いことに留意されたい。
さらに留意すべきは、細胞の培養はグリコシル化の変化を引き起こす場合があるということである。各種の生物学的、有機および無機分子の質や濃度、温度、細胞密度または撹拌の度合い等の任意の物理的条件などの細胞培養の任意のパラメータにおけるわずかな変化が、細胞材料およびグリコシル化における相違を引き起こす場合がある。本発明は、細胞に影響を与える任意の細胞培養パラメータによって引き起こされる細胞状態の変化を観察するために、本発明のグリコシル化変化をモニタリングすることに関する。
本発明は好ましい一態様において、細胞の密度が変化した場合のグリコシル化変化の分析に関する。本願発明者らは、これが細胞培養においてグリコシル化の大きな影響を有することに気付いた。
細胞の遺伝的または分化安定性に制限がある場合、これらはグリカン構造の変化の可能性を高めることがさらに理解される。分化の初期段階の細胞集団は異なった細胞集団を産生する能力を有している。本願発明者らは、初期ヒト細胞集団におけるグリコシル化変化を発見することができた。
細胞株の分化
本発明は特に、細胞株の分化が観察される場合に本発明のグリコシル化変化を観察することに関する。好ましい一態様において、本発明は、本発明の初期ヒト細胞または他の好ましい細胞型から、中胚葉性の幹細胞への分化の観察のための方法に関する。
細胞材料に不均一性が存在する場合、グリコシル化において観察し得る変化または有害な効果が引き起こされる場合がある。
さらに、糖鎖構造における変化は、それが有害でなくとも、または機能的に未知であっても、細胞の正確な遺伝的状態に関する情報を得るのに用いることができる。
本発明は特に、細胞培養中の細胞状態の変化を観察するための、グリコシル化の変化、好ましくはグリカンプロファイル、個々のグリカンシグナル、および/または個々のグリカンもしくはグリカン群の相対存在量における変化の分析に関する。
支持/フィーダー細胞株の分析
本発明は特に、幹細胞および初期ヒト細胞または他の好ましい細胞型の培養において用いられる支持/フィーダー細胞上の本発明のグリコシル化の相違を観察することに関する。一部の細胞は他の細胞よりも支持/フィーダー細胞として作用する優れた活性を有することが当該分野において知られている。好ましい一態様において、本発明はこれらの支持/フィーダー細胞上のグリコシル化の相違の観察のための方法に関する。この情報は幹細胞および初期ヒト細胞または他の好ましい細胞型の増殖を補助するための新規試薬の設計において用いることができる。
作業条件による混入または細胞の変化
細胞操作中に細胞に対して有害なグリコシル化または有害なグリコシル化関連作用を誘発する条件および試薬
本願発明者らはさらに、混入グリカンと同一の関連する問題を伴う、有害なグリカンが細胞により発現されるように誘導する条件および試薬を明らかにした。本願発明者らは、通常の細胞精製過程において用いられるいくつかの試薬が初期ヒト細胞材料において変化を引き起こすことを見出した。
細胞の操作中の前記物質は細胞材料のグリコシル化に影響する場合があると考えられる。これは作業下の細胞における前記構造の付着、吸収、または代謝的蓄積に基づくものであり得る。
好ましい一態様において、前記細胞操作試薬は、抗原性の、または有害な構造であるグリカン成分、例えば細胞表面NeuGc、Neu−O−Acまたはマンノース構造の存在に関して試験される。この試験は特にヒト初期細胞集団およびその好ましい亜集団に対して好ましい。
本願発明者らは、糖鎖構造の吸収または代謝的移送(metabolic transfer)が行われなかった場合の、細胞により発現されているグリカンに対する細胞培養中の各種エフェクター分子の効果に注目する。エフェクターは典型的には、例えば細胞表面受容体の結合により、細胞へシグナルを媒介する。
前記エフェクター分子としては各種サイトカイン、増殖因子、ならびにそれらのシグナリング分子およびコレセプター等が挙げられる。エフェクター分子は炭水化物またはレクチン等の炭水化物結合タンパク質であってもよい。
有害なグリカンの混入またはグライコームレベルでの他の改変を回避するための制御された細胞単離/精製および培養条件
細胞の操作により引き起こされるストレス
単離/精製等の細胞の操作ならびに細胞貯蔵および細胞培養過程と関連する操作は細胞にとって自然な条件ではなく、物理的および化学的ストレスを細胞に対して引き起こすと考えられる。本発明は該ストレスによって引き起こされる潜在的な変化の制御を可能にする。この制御は常法と組み合わせられてよく、他の手法による、細胞の生存能力または細胞構造が無傷であることの通常の確認と組み合わせられてもよい。
細胞操作工程における物理的および/または化学的ストレスの例
細胞の洗浄および遠心分離は物理的ストレスを引き起こし、細胞膜構造を破壊または損傷する場合がある。非生理的流れ(non−physiological flow)条件下での細胞の精製および分離または分析も、細胞を特定の非生理的なストレスに曝露する。低温での細胞貯蔵過程および細胞保存および操作は膜構造に影響を与える。培地または他の溶液、特に細胞周囲の洗浄溶液、の組成の変化を伴う全ての操作工程は、例えば変化した水と塩とのバランスにより、または細胞の生化学的および生理学的調節に影響する他の分子の濃度を変えることにより、細胞に影響を与える。
細胞操作工程におけるストレスによるグライコーム変化の観察および制御
本願発明者らは、本発明の方法が、本発明により観察されるグライコームの少なくとも一部を通常効果的に改変する、細胞膜における変化を観察するのに有用であることを明らかにした。これは正確な構成および無傷構造細胞膜ならびに該構成の一部の特異的グリカン構造に関連すると理解される。
本発明は特に、全グライコームおよび/または細胞表面グライコームの観察に関するものであり、これらの方法はさらに、特に細胞に対してストレスが大きい条件との関連において、特に細胞が物理的および/または化学的ストレスに曝露される場合に、細胞が無傷であるか分析するのに用いられることを目的とする。それぞれの新しい細胞操作工程および/または細胞操作工程のための新しい条件は、本発明の方法により制御されることに対して有用であると理解される。さらに、グライコームの分析は、特に炭水化物結合タンパク質(炭水化物結合活性を有する、レクチン、抗体、酵素および改変タンパク質)等の特異的炭水化物結合物質による結合などの他の方法による分析のための、もっとも効果的に変わるグリカン構造の探索のために有用であると考えられる。
試薬に関して制御された細胞調製(単離または精製)
本願発明者らは一般的な細胞調製法の処理工程を分析した。動物材料による潜在的混入の複数の発生源が発見された。
本発明は特に、細胞調製過程の制御のための炭水化物分析法に関する。本発明は特に、該過程の各種工程における、動物性グリカン、好ましくはN−グリコリルノイラミン酸による潜在的な混入を制御する方法に関する。
本発明はさらに、細胞の単離において用いる特異的グリカン管理試薬(glycan controlled reagent)に関する。
前記グリカン管理試薬は3つのレベル:
1.観察可能な量の有害なグリカン構造、好ましくはN−グリコリルノイラミン酸またはそれに関連した構造を含まないように管理された試薬
2.観察可能な量の、細胞調製に用いられるものと類似したグリカン構造を含まないように管理された試薬
3.観察可能な量の任意のグリカン構造を含まないように管理された試薬
において制御されてよい。
管理レベル2および3は特に細胞状態がグリカン分析および/またはプロファイリング法により制御される場合に有用である。細胞調製における試薬が示されたグリカン構造を含んでいる場合、この制御がより困難になるか、または妨げられるであろう。さらに、前記グリカン構造は細胞状態を変える生物学的活性を示す場合があることに留意されたい。
グリカン管理試薬を含む細胞調製法
本発明はさらに、グリカン管理試薬を含む特異的細胞精製法に関する。
好ましい制御された細胞精製過程
結合剤が細胞の精製または他の方法のために用いられ、その後該結合剤のグリカンが生物学的作用を有し得る方法において細胞が用いられる場合、該結合剤は好ましくはグリカン管理またはグリカン中和(glycan neutralized)タンパク質である。
本発明は特に、1または複数の以下の工程を含む、ヒト初期細胞の制御された産生に関する。次の方法における通常の試薬を用いた各工程においては、外来グリカン材料による混入のリスクがあると考えられた。該方法は本発明の制御された試薬および材料の、該方法の工程内における使用に関する。
細胞の好ましい精製は、少なくとも1つの、管理された試薬の使用を含む工程を含み、より好ましくは少なくとも2つの工程が含まれ、より好ましくは少なくとも3つの工程、および最も好ましくは少なくとも工程1、2、3、4、および6が含まれる。
1.細胞材料を管理された試薬で洗浄する。
2.抗体を基盤とした方法が用いられる場合、細胞材料は、好ましい一態様において、管理されたFc受容体ブロッキング試薬によりブロックされる。さらに、グリコシル化の一部が抗体の調製において必要とされる場合があり、より好ましい一態様においては末端除去(terminally depleted)グリカンが用いられると理解される。
3.細胞を、管理されたブロッキング材料と管理された細胞結合剤材料とを有する固定化された細胞結合剤材料に接触させる。より好ましい一態様において、該細胞結合剤材料は本発明の磁性ビーズと管理されたゼラチン材料とを有する。好ましい一態様において、細胞結合剤材料は管理されており、好ましくは細胞結合剤抗体材料は管理されている。さもなくば、特に該抗体がN−グリコリルノイラミン酸を産生して産物を汚染する細胞株により産生される場合に、該細胞結合剤抗体はN−グリコリルノイラミン酸を含む場合もある。
4.固定化された細胞を管理されたタンパク質製剤または非タンパク質製剤で洗浄する。好ましい方法において磁性ビーズは管理されたタンパク質製剤、より好ましくは管理されたアルブミン製剤で洗浄される。
5.固定化からの細胞の任意の解放。
6.精製された細胞の、管理されたタンパク質製剤または非タンパク質製剤による洗浄。
好ましい一態様において、好ましい方法は、初期ヒト細胞の精製、好ましくは臍帯血細胞の精製のための、免疫磁性ビーズを用いる方法である。
本発明はさらに、細胞精製キット、好ましくは少なくとも1つの管理された試薬、より好ましくは少なくとも2個の管理された試薬、さらに好ましくは3つの管理された試薬、さらになお好ましくは4つの試薬を含む免疫磁性細胞精製キットに関するものであり、最も好ましくは好ましい管理された試薬は、アルブミン、ゼラチン、細胞精製のための抗体、および抗体であってもよいFc受容体ブロッキング試薬の群から選択される。
抗原性動物性グリカン等の有害なグリカンの混入
いくつかのグリカン構造混入細胞産物は産物の生物学的活性を弱める場合がある。
有害なグリカンは細胞の操作中の生存能力、または細胞の治療的使用における生存能力および/または所望の生物活性および/または安全性に影響する場合がある。
有害なグリカン構造はin vitroまたはin vivoにおける細胞の生存能力を、有害なレクチンまたは抗体の細胞への結合を引き起こしたり増加させたりすることによって低下させる場合がある。このようなタンパク質材料は、例えば細胞操作材料において用いられるタンパク質製剤中に含まれる場合がある。炭水化物標的レクチンはヒト組織および細胞上、特に血液中および内皮表面にも存在する。ヒト血中の炭水化物結合抗体は補体を活性化し、他の免疫反応をin vivoで引き起こす場合がある。さらに、血中の免疫防御レクチンまたは白血球は通常と異なるグリカン構造に対する免疫防御を引き起こす場合がある。
さらに有害なグリカンはin vivoまたはin vitroで細胞の有害な凝集を引き起こす場合がある。該グリカンは凝集および/または細胞表面レクチンに媒介される生物学的制御の変化によって細胞の発生状態における望ましくない変化を引き起こす場合がある。
さらなる問題としては、有害なグリカンのアレルゲン性、および内皮/細胞の炭水化物受容体によるin vivoでの細胞の誤ったターゲッティング等が挙げられる。
全グライコームの共通構造の特徴および好ましい共通の準特徴(subfeature)
本発明は幹細胞のための有用なグリカンマーカーおよびその組み合わせ、ならびに特異的な量の主要グリカン構造を有するグライコーム組成を明らかにする。本発明はさらに、特異的末端およびコア構造ならびにその組み合わせに関する。
本発明の細胞由来の好ましいグライコームグリカン構造および/またはグライコームは、
式C0:
Hexβz{Rn1Hex(NAc)n2XyR
[式中、Xはグリコシド結合した二糖エピトープβ4(Fucα6)GNであり、ここでnは0または1であり、またはXは無であり、そして
HexはGalまたはManまたはGlcAであり、
HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり、
yはアノマー結合構造αおよび/またはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、
zは結合位置3または4であり、ただしzが4の場合、HexNAcはGlcNAcであり、およびその場合HexはManであるか、または
HexはGalであるか、またはHexはGlcAであり、ならびに
zが3である場合、HexはGlcAまたはGalであり、HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり、
n1は0または1であってR3の存在または非存在を表し、
n2は0または1であってNAcの存在または非存在を表し、ただしn2はHexβzがGalβ4である場合にのみ0であってよく、およびn2は好ましくは0であり、n2構造は好ましくは糖脂質に由来するものであり、
はコア結合に結合する1−4、好ましくは1−3、天然型炭水化物置換基、または無であり、
は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、またはタンパク質由来のアスパラギンN−グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN−グリコシド等の天然アスパラギンN−グリコシド誘導体、またはタンパク質由来のアスパラギンN−グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むセリンもしくはスレオニン結合O−グリコシド等の天然セリンもしくはスレオニン結合O−グリコシド誘導体であり、または、n2が1である場合、Rは無もしくはセラミド構造もしくはセラミド構造の誘導体、例えばリゾ脂質およびそのアミド誘導体であり、
は無であるか、または、GlcNAcβ6、もしくはGalNAc(HexNAcがGalNAcである場合)に結合するその還元末端にGlcNAcβ6を有するオリゴ糖、を示す分岐構造であり、またはHexがGalであり、HexNAcがGlcNAcである場合、およびzが3である場合、RはFucα4もしくは無であり、およびzが4である場合、RはFucα3または無である]
の構造を有する。
本発明のグリカン構造およびグライコームにおいて好ましい二糖エピトープとしては構造Galβ4GlcNAc、Manβ4GlcNAc、GlcAβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、GlcAβ3GlcNAc、GlcAβ3GalNAc、およびGalβ4Glc等が挙げられ、これはさらに還元末端炭素原子および非還元単糖残基から誘導体化されてよく、別の一態様においては還元末端残基から分岐してもよい。好ましい分岐エピトープとしてはGalβ4(Fucα3)GlcNAc、Galβ3(Fucα4)GlcNAc、およびGalβ3(GlcNAcβ6)GalNAc等が挙げられ、これはさらに還元末端炭素原子および非還元単糖残基から誘導体化されてよい。
本発明の方法のための好ましいエピトープ
N−アセチルラクトサミンGalβ3/4GlcNAc末端エピトープ
2つのN−アセチルラクトサミンエピトープGalβ4GlcNAcおよび/またはGalβ3GlcNAcは、好ましい末端エピトープであって、幹細胞上またはこの好ましい末端エピトープの主鎖構造上に存在するものを表し、例えばさらに本発明のシアル酸またはフコース誘導体化を有する。好ましい一態様において、本発明はフコシル化および/または非置換グリカン非還元末端型の末端エピトープ、より好ましくはフコシル化および非置換型に関する。本発明は特に、ヒト幹細胞グライコームからの非還元末端の末端(非置換)天然Galβ4GlcNAcおよび/またはGalβ3GlcNAc構造に関する。本発明は特定の態様においてヒト幹細胞グライコームからの非還元末端の末端フコシル化天然Galβ4GlcNAcおよび/またはGalβ3GlcNAc構造に関する。
好ましいフコシル化N−アセチルラクトサミン
好ましいフコシル化エピトープは式TF:
(Fucα2)n1Galβ3/4(Fucα4/3)n2GlcNAcβ−R
[式中、n1は0または1であってFucα2の存在または非存在を表し、
n2は0または1であってFucα4/3(分岐)の存在または非存在を表し、
RはN−グリカン、O−グリカンおよび/または糖脂質の還元末端コア構造である]
によるものである。
好ましい構造としては、従って、1型ラクトサミン(Galβ3GlcNAc基盤):
Galβ3(Fucα4)GlcNAc(Lewis a)、Fucα2Galβ3GlcNAc H−1型、構造、および、
Fucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc (Lewis b)および、
2型ラクトサミン(Galβ4GlcNAc基盤):
Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Lewis x)、Fucα2Galβ4GlcNAc H−2型、構造、および、
Fucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis y)
等が挙げられる。
2型ラクトサミン(フコシル化および/または末端非置換)は、成体幹細胞およびこれらに直接由来する分化した細胞に関して特に好ましい群を形成する。1型ラクトサミン(Galβ3GlcNAc構造)は、胚性幹細胞に関して特に好ましい。
ラクトサミンGalβ3/4GlcNAc、およびラクトース構造(Galβ4Glc)を有する糖脂質構造
ラクトサミンはラクトース基盤の糖脂質とともに好ましい構造群を形成する。これらの構造はβ3/4Gal転移酵素の産物としての類似した特徴を共有する。β3/4ガラクトース基盤の構造はタンパク質結合および糖脂質グライコームの特徴的な特性を生ずることが観察された。
本発明はさらに、Galβ3/4GlcNAc構造が、各種幹細胞型の糖脂質上の、分化と関連する構造の主要な特徴であることを明らかにした。このような糖脂質は2つの本発明の好ましい構造エピトープを有する。最も好ましい糖脂質型としては、従って、ラクトシルセラミド基盤のスフィンゴ糖脂質および特にラクト−(Galβ3GlcNAc)、例えばラクトテトラオシルセラミドGalβ3GlcNAcβ3Galβ4GlcβCerが挙げられ、好ましい構造はさらに:Galβ3(Fucα4)GlcNAc(Lewis a)、Fucα2Galβ3GlcNAc(H−1型)、構造、およびFucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc(Lewis b)またはシアル化構造SAα3Galβ3GlcNAcもしくはSAα3Galβ3(Fucα4)GlcNAc[式中、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acであって好ましくはラクトテトラオシルセラミドのGalβ3GlcNAcを置換する]の群から選択される非還元末端構造を有し、
ならびに好ましくは式:
(Sacα3)n5(Fucα2)n1Galβ3(Fucα4)n3GlcNAcβ3[Galβ3/4(Fucα4/3)n2GlcNAcβ3]n4Galβ4GlcβCer
[式中、n1は0または1であってFucα2の存在または非存在を表し、
n2は0または1であってFucα4/3(分岐)の存在または非存在を表し、
n3は0または1であってFucα4(分岐)の存在または非存在を表し、
n4は0または1であって(フコシル化)N−アセチルラクトサミン伸長の存在または非存在を表し、
n5は0または1であってSacα3伸長の存在または非存在を表し、
Sacは末端構造、好ましくはα3結合を有するシアル酸であって、ただしSacが存在する場合、n5は1であり、その場合n1は0である]
などのそのフコシル化および/または伸長バリアント
ならびに、ネオラクト(Galβ4GlcNAc)含有糖脂質、例えばネオラクトテトラオシルセラミドGalβ4GlcNAcβ3Galβ4GlcβCerであって、好ましい構造はさらにその非還元末端のGalβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis x)、Fucα2Galβ4GlcNAc H−2型、構造、および、Fucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Lewis y)を有するもの
ならびに、好ましくは、
(Sacα3/6)n5(Fucα2)n1Galβ4(Fucα3)n3GlcNAcβ3[Galβ4(Fucα3)n2GlcNAcβ3]n4Galβ4GlcβCer
[n1は0または1であってFucα2の存在または非存在を表し、
n2は0または1であってFucα3(分岐)の存在または非存在を表し、
n3は0または1であってFucα3(分岐)の存在または非存在を表し
n4は0または1であって(フコシル化)N−アセチルラクトサミン伸長の存在または非存在を表し、
n5は0または1であってSacα3/6伸長の存在または非存在を表し、
Sacは末端構造、好ましくはα3結合を有するシアル酸(SA)、またはα6結合を有するシアル酸であって、ただしSacが存在する場合、n5は1であり、その場合n1は0であり、およびシアル酸がα6結合により結合する場合、好ましくはn3も0である]
などのそのフコシル化および/または伸長バリアント等が挙げられる。
好ましい幹細胞スフィンゴ糖脂質グリカンプロファイル、組成、およびマーカー構造
本願発明者らは幹細胞糖脂質グライコームを、遊離させた遊離グリカンの質量分析プロファイリングにより記載し、約80個のグリカンシグナルを各種幹細胞型から明らかにすることができた。中性グリカンの提案された単糖組成は2−7Hex、0−5HexNAc、および0−4dHexからなっていた。酸性グリカンシグナルの提案された単糖組成は0−2NeuAc、2−9Hex、0−6HexNAc、0−3dHex、および/または0−1硫酸もしくはリン酸エステルからなっていた。本発明は特に、このような幹細胞グリカンプロファイルならびに/または本発明において幹細胞に関して記載される使用のための構造の、分析およびターゲッティングに関する。
本発明はさらに、特に、実施例に記載されるような幹細胞型に特異的なスフィンゴ糖脂質グリカンシグナルに関する。好ましい一態様において、hESCに典型的なグリカンシグナル、優先的には876および892等がそれらの分析において用いられ、より優先的にはFucHexHexNAcLacであって、ここでα1,2−Fucはα1,3/4−Fuc、およびHexHexNAcLacに対して、ならびにより優先的にはGalβ3[HexHexNAc]Lacに対して、優先的である。他の好ましい態様において、MSC、特にCB MSCに典型的なグリカンシグナル、優先的には1460および1298等、ならびに大型中性糖脂質、特にHex2−3HexNAcLac、より優先的にはポリ−N−アセチルラクトサミン鎖、さらに優先的にはβ1,6−分岐、および優先的には上記のII型LacNAcエピトープを末端とするものが、本発明に記載される使用のMSCとの関連で使用される。
本実験で幹細胞スフィンゴ糖脂質グリカンにおいて示された末端グリカンエピトープは、幹細胞の識別またはグリカンを介した幹細胞に対する特異的結合、および本発明の他の使用において有用であり、Gal、Galβ4Glc(Lac)、Galβ4GlcNAc(LacNAc 2型)、Galβ3、非還元末端HexNAc、Fuc、α1,2−Fuc、α1,3−Fuc、Fucα2Gal、Fucα2Galβ4GlcNAc(H 2型)、Fucα2Galβ4Glc(2’−フコシルラクトース)、Fucα3GlcNAc、Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Lex)、Fucα3Glc、
Galβ4(Fucα3)Glc(3−フコシルラクトース)、Neu5Ac、Neu5Acα2,3、およびNeu5Acα2,6の末端エピトープ等が挙げられる。本発明はさらに、全幹細胞スフィンゴ糖脂質グライコームおよび/またはグライコーム内の全末端エピトーププロファイルに関する。
本願発明者らはさらに、hESCにおいて、SSEA−3およびSSEA−4発生関連抗原に対応するグリカンシグナル、および幹細胞グライコーム中におけるそのモル比を分析することができた。本発明はさらに、全グライコームまたはサブグライコーム中のこのような幹細胞エピトープの定量的分析に関するものであり、これは表面抗原のみを認識する抗体のより効果的な代替として有用である。さらなる一態様において、本発明は、マウスES細胞におけるSSEA−1発現と対比した、hESCにおけるα1,2−フコシル化抗原の発現に関する実施例において示されるように、全グリカンプロファイルの研究によって全グライコームプロファイル中の隠れた発生および/または幹細胞抗原の発現を発見および分析することに関する。
本発明は、本発明の各種細胞材料中の両者の構造型の特徴的変異(同様な対照細胞または混入細胞等と比較して上昇または低下した発現)を明らかにした。該構造は3つの異なるグライコーム型:N−グリカン、O−グリカン、および糖脂質、内の特徴的かつ相違する発現により明らかにされた。本発明は、グリカン構造が幹細胞の特徴的な特性であり、本発明の各種分析に有用であることを明らかにした。これらの量ならびにエピトープおよび/または誘導体の相対量は、細胞株間で、または増殖中、貯蔵中、もしくはサイトカインおよび/もしくはホルモン等のエフェクター分子による誘導中に異なった条件に曝露された細胞間において、相違する。
細胞培養のための好ましい結合剤分子
細胞培養法のための好ましい結合剤分子としては、レクチン、抗体、およびグリカン修飾酵素等が挙げられる。
レクチン
特定のレクチン分子は、細胞培養下の細胞を維持するための好ましい分子の群であると考えられる。より好ましい群のレクチンとしては本発明の末端グリカンエピトープを対象とする植物レクチンおよび動物レクチン等が挙げられる。
a)植物レクチン。植物レクチンは、これらが非哺乳動物の細胞培養物または生物学的材料由来である場合に特に好ましい。
b)好ましい動物レクチンとしてはガレクチンおよびセレクチン等が挙げられる。
レクチンは特に、これらが非動物供給源、例えば植物または非哺乳動物または非動物細胞培養物に由来する場合に好ましい。好ましい細胞培養物としては微生物細胞培養物、例えば細菌または菌類またはイースト細胞培養物または植物細胞培養物が挙げられる。
レクチンはタンパク質または糖タンパク質であり、一般に植物または海生動物(細菌、ウイルス、および哺乳動物からのレクチンも周知である)から得られ、特定の糖または糖類、通常は単または二糖構造に対して結合特異性を有する。例えば、Concanvalin A(Con A)は.アルファ.−D−Glcおよび.アルファ.−D−Manを結合する。抗原に対する抗体結合のようなレクチン結合は、非共有結合性であり、可逆的である(典型的には十分な濃度の糖リガンドによる。従って、例えば、グルコースまたはマンノース(または.アルファ.−メチルマンノシド−)の溶液は、細胞に、または固定化糖タンパク質に結合したCon Aを遊離させる。植物レクチンの詳細な記載については、例えば、EJM Van Damme et al.,Handbook of Plant Lectins:Properties and Biomedical Applications John Wiley&Sons,New York,1998を参照のこと;市販のレクチンについてはウェブサイトhttp ://www.plab.ku.dk/tcbh/及びhttp://www.vectorlabs.com/Lecti−ns/Lindex.htmlも参照のこと。他の有用な総説としてはGoldstein,I J et al.,1978,Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.35:127−340;D.Mirelman(ed.),Microbial Lectins and Agglutinins:Properties and Biological Activity,Wiley,N.Y.(1986);Goldstein I J,Indian J Biochem Biophys,1990,27:368−369等が挙げられる。
レクチンは直接表面上に(受動的に)固定化することができ、または、抗体のように、サンドイッチ様式で用いることができ、この場合第1のレクチン結合タンパク質はレクチンに対する結合特異性および親和性を有し(例えば抗レクチン抗体または、レクチンがビオチン化されている場合はストレプトアビジン)、該レクチンは結合剤として働き、第1のレクチン結合タンパク質に非共有結合的に結合する。該レクチンは捕捉剤として作用し、その特異的標的、好ましくは特定のグリカン構造を細胞表面上に提示する細胞を結合する。典型的には、このようなグリカン構造は糖タンパク質または糖脂質上の炭水化物鎖の形態である。
下記の表Aに、多数の有用なレクチンおよびそれらの糖結合特異性を列挙する。
さらに本発明においてレクチンとして含められるのは、共有結合的に結合されたレクチン−抗体またはレクチン−抗原複合体である(例えばChu、米国特許第4,493,793号を参照のこと)。
本発明におけるさらに他の種類の結合剤は、細胞膜の脂質二重層に対して親和性を有する塩基性分子、例えばプロタミンおよびハチ毒ペプチド、メリチンの膜結合部分である。これらの標的構造は正式に「リガンド」ではないかもしれないが、概念は同じである−固体表面に固定化されたこの結合剤に結合する細胞の親和性捕捉。
表A レクチンおよびそれらの結合特異性
Figure 2010516239
幹細胞の結合剤との接触
調製された幹細胞を結合剤と接触させることができる。これは、例えば、単純に結合剤を幹細胞調製物の培養物と混合することにより行うことができる。混合は幹細胞の生存能力を維持することができる多くの適した容器内で行うことができる。前記容器としては組織培養フラスコ、コニカルチューブ、培養バッグ(culture bag)、バイオリアクター、または連続的に混合される培養液(cultures)等が挙げられるがこれらに限定されない。幹細胞/LPCM混合物は次いで所望のように増殖させられる。
調製された幹細胞を表面上の結合剤と接触させることができる。これは、例えば、結合剤を培養皿上にコーティングすることにより行うことができる。コーティングは幹細胞の生存能力を維持することができる多くの適した容器内で行うことができる。前記容器としては組織培養フラスコ、コニカルチューブ、培養バッグ(culture bag)、バイオリアクター、または培養液(cultures)等が挙げられるがこれらに限定されない。幹細胞集団は次いで所望のように増殖させられる。幹細胞の増殖および結合剤との接触の例を実施例10および22に示す。細胞培養ウェルのコーティング処理を実施例10に示す。
幹細胞の生存能力を維持するのに適した培養皿および容器をコーティングする方法は当業者に公知である。典型的には、試薬、例えば、本発明の結合剤をバッファー中で培養皿の表面上に塗布し、一晩接着させ、洗浄して、幹細胞をウェル上にプレーティングして増殖させる。本発明の結合剤を表面上にコーティングおよび共有結合的に連結するためのさらなるプロトコル、および幹細胞培養物の利用については、当業者は、例えばPierce Instruction Book (www.piercenet.com/)を参考にすることができる。
上記に示す通り、本発明の方法は好ましくは表面に結合した結合剤を用いる。該表面はそこに結合した、または組み込まれた結合剤を保つことができ、生体適合性、すなわち刺激されるべき標的細胞に対して実質的に非毒性の任意の表面であってよい。生体適合性表面は生分解性または非生分解性であってよい。該表面は天然または合成であってよく、合成表面はポリマーであってよい。他のポリマーとしてはポリエステル、ポリエーテル、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリ酢酸ビニル、ブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリウレタン等が挙げられる。前記ポリマーは乳酸または共重合体であってよい。共重合体は乳酸およびグリコール酸(PLGA)を含んでいてよい。非生分解性表面はポリ(ジメチルシロキサン)およびポリ(エチレン−酢酸ビニル)等のポリマーを含んでいてよい。生体適合性表面としては例えば、ガラス、(例えばバイオガラス)、コラーゲン、金属、ヒドロキシアパタイト、アルミン酸塩、バイオセラミック材料、ヒアルロン酸ポリマー、アルギン酸塩、アクリル酸エステルポリマー、乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマー、乳酸/グリコール酸ポリマー、精製タンパク質、精製ペプチド、または細胞外マトリクス組成物等が挙げられる。表面を有する他のポリマーは、ガラス、シリカ、シリコン、ヒドロキシアパタイト、ヒドロゲル、コラーゲン、アクロレイン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、または任意の数のプラスチックまたは合成有機ポリマー等を含んでいてよい。前記表面は生物学的構造、例えばリポソームを含んでいてよい。前記表面は脂質、プレート、バッグ、ペレット、ファイバー、メッシュ、または粒子の形態であってよい。粒子はコロイド粒子、ミクロスフィア、ナノ粒子、ビーズ等を含んでいてよい。各種態様において、市販の表面、例えばビーズまたは他の粒子は有用である(例えば、Miltenyi Particles,Miltenyi Biotec,Germany;Sepharose beads,Pharmacia Fine Chemicals,Sweden;DYNABEADS.TM.,Dynal Inc.,New York;PURABEADS.TM.,Prometic Biosciences)。
ビーズが用いられる場合、該ビーズは標的細胞の刺激を達成する任意の径のものであってよい。一態様において、ビーズは好ましくは約5ナノメートル〜約500umの径である。従って、ビーズ径の選択はビーズが役割を果たすであろう具体的な使用によって異なる。例えば、濾過によるビーズの分離が望まれる場合、50.mu.m以上のビーズ径が典型的に用いられる。さらに、常磁性ビーズが用いられる場合、ビーズは典型的には約2.8.mu.m〜約500.mu.m、およびより好ましくは約2.8.mu.m〜約50.mu.mの径の範囲である。最後に、約10nmという小ささであり得る超常磁性ナノ粒子を用いることを選択することができる。従って、上記考察から容易に明らかであるように、事実上任意の粒径を利用することができる。
結合剤は表面に、当該分野において公知で利用可能な各種の方法により、付着させて、結合させて、または組み込んでよい。付着は共有結合性または非共有結合性、静電気的、または疎水性であってよく、化学的、機械的、酵素的、または他の手段等の各種の付着手段により達成することができ、それにより結合剤が細胞を刺激/調節することができる。例えば、まず抗体を表面に付着させ、またはアビジンもしくはストレプトアビジンを表面に付着させ、ビオチン化結合剤/抗体に結合させてよい。抗体は表面に抗イディオタイプ抗体を介して付着させてよい。他の例としては、抗体を結合する表面に付着させたプロテインAまたはプロテインG、または他の非特異的抗体結合分子の使用等が挙げられる。あるいは、結合剤は表面に化学的手段により、例えば市販の架橋剤(Pierce,Rockford,Ill.)を用いた表面への架橋を使用し、または他の手段により、付着させてよい。特定の態様において、結合剤は表面に共有結合的に結合させられる。さらに、一態様においては、市販のトシル活性化DYNABEADS.TM.またはエポキシ表面反応性基を有するDYNABEAS.TM.を、目的とするポリペプチド結合剤とともに製品の使用説明書に従いインキュベートする。簡単に述べると、このような条件は典型的にはpH4〜pH9.5のリン酸緩衝液中における、4〜37℃の範囲の温度でのインキュベートを伴う。
共有結合
結合剤で被覆された表面は上記および実施例に記載される。結合剤、例えばレクチンおよび抗体によるコーティングは、2つの反応性アルデヒド基の生成を伴う一連の化学的カップリング反応によって行うことができ、この方法は当業者に公知である。例えば、どのような特定の理論にも拘束されるものではないが、アルデヒド部分(RCHO)が1級アミン(R’NH.sub.2)と反応すると、比較的不安定なイミン部分(R’N CHR)である反応産物と平衡に達する。カップリング反応は酸化に対するものと同一の、糖タンパク質を損傷から保護するように考案された条件下で行うことができる。糖タンパク質および生体材料表面の間の結合を安定化するために、それに続くイミン部分の還元的アルキル化が、例えば水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ほう素ナトリウム、およびアミンボラン等の還元剤(すなわち安定化剤)を用いて行われ、2級アミン(R’NH−−CH.sub.2R)が形成される。この反応も酸化に対するものと同一の条件下で行われ得る。典型的には、しかし、カップリングおよび安定化反応は中性またはやや塩基性の溶液中において、約0〜50度Cの温度で行われる。好ましくは、カップリングおよび安定化反応に対して、pHは約6〜10であり、温度は約4〜37度Cである。これらの反応(カップリングおよび安定化)は、ほんの数分間または何時間もの間行われる。一般に、反応は24時間以内に完了する(すなわちカップリングおよび安定化)。
一局面において、特定のレクチン等の結合剤は単一起源または複数起源であってよく、抗体またはその断片であってよい。これらの結合剤は表面と、上記で考察される各種の付着手段のいずれかにより表面に結合される。
表面と結合されるレクチンECA分子は、例えばそれを発現する植物細胞から単離され得る。hESCを結合し、それを未分化状態で維持する能力を保持するECAレクチン分子の断片、変異体、またはバリアントも用いることができる。さらに、当業者は幹細胞のサブセットの増殖(proliferation)/接着/形態/成長(growth)状態の活性化/調節において有用な任意の結合剤もビーズまたは培養槽表面または任意の表面上に固定化することができることを認識するであろう。さらに、表面への結合剤の共有結合は1つの好ましい方法論であるが、二次モノクローナル抗体による吸着または捕捉も用いてよい。表面に付着する特定の結合剤の量は、表面がビーズのものである場合はフローサイトメトリー(FACS)分析により容易に測定することができ、表面が例えば組織培養皿、メッシュ、ファイバー、バッグである場合は酵素結合免疫吸着(immunosorbant)法(ELISA)により測定することができる。
一部の状況においては、細胞を最初に結合剤との接触の下で増殖させ、次いで、例えば細胞を分化させる際に、他の培養条件下で増殖させる、組み合わせ培養系を用いることが望ましいであろう。例えば、幹細胞を結合剤との接触の下で継代し、次いでサイトカインおよび/または増殖因子を添加して幹細胞の分化および/または生物学的特徴の調節を行うことができる。
サイトカインはIL−3、IL−6、SCF、TPO、およびflt−3Lであり得る。
例えば表面上に固定化した結合剤の濃度は当業者により決定されうる。
結合剤の濃度は様々であり得、例えば温度、インキュベート時間、幹細胞の数、幹細胞において求められる所望の活性、幹細胞の種類、幹細胞の純度等によって異なる。幹細胞をその本来の供給源から単離し、フィーダー層の存在下で増殖させ、結合剤と接触させることができ、または幹細胞をその供給源から単離し、結合剤と接触させることができる。好ましくは、hESCを胚盤胞より得て結合剤で被覆した培養皿上で培養する。
本発明は、レクチンによる表面の幹細胞増殖促進および/または調節被覆密度、すなわち、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の増殖および/または調節を促進する被覆密度に関する。正確な有効密度は表面の形状および材質により異なると考えられる。実施例に記載の通り、本願発明者らは、レクチンによる増殖支持表面の有効な被覆を得ることができた。レクチンタンパク質/表面領域の適した被覆密度を得るために多量の被覆分子が必要な場合があり、当業者は本発明による好ましい被覆効率、好ましくは1ng〜1000ngタンパク質/cm表面領域、より好ましくは10ng〜1000ng/cm、さらに好ましくは100ng〜900ng/cm、または最も好ましくは200ng〜800ng/cmを得ることができる。表面形状に基づく有効な被覆密度は当業者に公知であり、文献、例えばNuncマイクロタイターウェルプレートの製造者から入手可能なNunc Bulletin No.6“Principles in adsorption to polystyrene”に記載されている。
さらに、特定の型の細胞の増殖または分化を促進する条件を培養中に用いることができる。これらの条件としては、温度の変化;酸素/二酸化炭素含有量の変化;前記培地の濁度の変化;または、細胞培養の小分子調節剤、例えば栄養素、特定の酵素の阻害剤、特定の酵素の刺激剤、バルプロ酸(Bug,et al.,2005,Cancer Res 65:2537−2541)、トリコスタチン−A(Young,et al.,2004,Cytotherapy 6:328−336)、トラポキシンA(Kijima,et al.,1993,J Biol Chem 268:22429−22435)またはデプシペプチド(Gagnon,et al.,2003,Anticancer Drugs 14:193−202;Fujieda,et al.,2005, Int J Oncol 27:743−748)等のヒストン脱アセチル化活性の阻害剤(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられたものとする)、5−アザシチジン等のDNAメチル基転移酵素活性の阻害剤、酵素GSK−3の阻害剤(Trowbridge, et al.,2006,Nat Med 12:89−98、参照によりその全体が本明細書に組み入れられたものとする)などへの曝露;等が挙げられるが、これらに限定されない。
先に述べられた各種因子が幹細胞の生存、複製、および分化のための能力に影響する。例えば、栄養素に関しては、アミノ酸タウリンは特定の条件下で優先的にマウス骨髄細胞の破骨細胞形成を阻害し(Koide,et al.,1999,Arch Oral Biol 44:711−719)、アミノ酸L−アルギニンは赤血球分化および赤血球前駆細胞の増殖を刺激し(Shima,et al.,2006,Blood 107:1352−1356)、P2Y受容体を介して作用する細胞外ATPは造血および非造血幹細胞の両者に広範な変化を媒介し(Lee,et al.,2003,Genes Dev17:1592−1604)、多孔質高分子足場に付着したアルギニン−グリシン−アスパラギン酸は骨芽細胞前駆体の分化および生存を増加させる(Hu,et al.,2003,J Biomed Mater Res A 64:583−590)(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられたものとする)。従って、当業者にとって、特定の型の幹細胞および/またはその前駆体の分化の誘導または生存能力の維持のために各種の栄養素を用いることは公知であろう。
細胞集団の刺激
本発明の方法は末端グリカン構造に結合する結合剤を接触させることによる幹細胞の刺激に関する。結合剤の細胞への結合はシグナル伝達経路の引き金となり、特定の表現型上のまたは生物学的な変化を細胞において活性化する。細胞の活性化は、異常な細胞において、正常な細胞機能を増進し、または正常な細胞機能を開始させ得る。
結合剤の導入により、細胞の刺激を増大させることができ、または特定の細胞的事象(cellular event)を刺激することができる。この方法を、細胞表面末端グリカン構造の連結がシグナル伝達事象をもたらす任意の幹細胞に適用してよい。本発明はさらに、刺激された/調節された幹細胞を選択または培養するための方法を提供する。
記載される典型例は間葉系幹細胞の刺激である(実施例参照であるが、当業者は前記方法を他の幹細胞型に適用することができると容易に理解するであろう)。例えば、刺激または選択され得る細胞型としては造血幹細胞および造血前駆細胞(CD34+細胞)、多能性幹細胞、および多分化能幹細胞等が挙げられる。従って、本発明はこの方法論から生ずる細胞の集団、および特定の表現型上の特徴を有する間葉系幹細胞などの異なった表現型上の特徴を有する細胞集団も提供する。
以下に2つの例を示し、このような細胞表面グリカン構造の結合がどのように実際上の利益をもたらし得るか説明する。
一例において、結合剤(実施例のレクチンを参照のこと)による正常な間葉系幹細胞の活性化は、例えば形態学的変化および接着における変化をもたらす。本明細書に記載されるもののような人為的アプローチを用いることにより、特に促進された、調節された、および空間的に方向性のある、グリカンを有するタンパク質の連結を介して、「正常な」in vivo活性化の非存在下で上記の機能を促進し、向上させ、またはそれに影響を与えることができる。利益は、治療用途のための、より多数の注入可能かつより強固な細胞を生ずるin vitroにおける向上した細胞の拡張であってよい。他の利益は表面への向上した細胞接着であってよい。
拡張に先だって、幹細胞の供給源が被検者から得られる。「被検者」という語は、免疫反応を誘発させることができる生物(例えば哺乳類)を含むことが意図される。被検者の例としてはヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種(transgenic species)等が挙げられる。
本発明の方法論を用いて幹細胞の集団の長期の刺激/調節を維持することが有利であり得る。特に好ましいのは、数回の継代の間未分化状態で維持することができ、その表現型上の特徴を維持するヒト胚幹細胞である。
好ましい一態様において、培養フラスコの表面は結合剤、例えばECAレクチン(中間層を有するまたは有しない)で被覆され、ヒト胚幹細胞の集団が該表面に添加され、接着させられる。
本発明の表面は、任意のパターンまたは配列、例えばポリマー表面上のあらかじめ選択されたパターンで並ぶ点のマイクロアレイパターンで分布する結合剤を用いて調製され得る。従って、例えば、1または複数種の異なる型の結合剤、例えばレクチンまたは抗体のマイクロアレイを、本明細書に記載される表面に固定化してよい。増殖または結合または調節または無傷細胞に加え、本明細書に記載の、例えば抗体および/またはレクチンマイクロアレイの形態の被覆表面は、幹細胞の増殖、接着、もしくは形態、または幹細胞、幹細胞ライセートもしくは他の細胞内調製物上の任意の多数の対応する抗原もしくはエピトープを、検出または定量または調節するのに用いられる。従って、本発明は、幹細胞の調節および/または分析のための抗体またはレクチン等の本発明の結合剤の高密度アレイを含んだ装置を製造するための方法を提供する。このような装置は幹細胞集団、たとえばin vitroにおいて選択的な様式で分化または他の細胞活性を誘導するように処理された細胞における、特異的グリカン構造の発現量を定量するための方法において有用であり得る。これらの装置および方法は薬物等の検査薬で処理された(もしくは処理されない)または分化するように誘導された幹細胞のハイスループットな分析に容易に適合させることができる。例えば、幹細胞を結合剤と接触させ、好ましくは結合剤被覆アレイ上で増殖させ、各種薬物で処理し、その後溶解してライセートを回収し、または培養上清を回収し、分析することができる。
hESC
本開示の多能性ES細胞は系統非拘束(uncommitted)(すなわち、それらは内胚葉、中胚葉および外胚葉等の特定の胚系統(germ lineage)に拘束されない)である。多能性ヒトES細胞も、in vitroおよびin vivoの両者において、高い自己複製能を有する場合があり、分化能を有する。あるいは、細胞、組織、または器官内で、休眠または静止したままでいることができる。ヒトES細胞が単離される、単離された胚盤胞は、体外受精、卵細胞質内精子注入法、および卵細胞質移植等の当業者に周知の多くの方法により生成することができる。特定の態様においては、単離されたヒトES細胞を、マウス胚性線維芽細胞、ヒト胚性線維芽細胞、または成体ヒト組織から得られた線維芽細胞様細胞等であるが限定されない胚性線維芽細胞上で増殖させる。好ましい一態様においては、ヒトES細胞を結合剤の存在下で増殖させる。
好ましい態様に記載される胚盤胞から得られたヒトES細胞の集団は、Oct−4、Nanog、Rex1、Sox−2、FGF4、Utf1、Thy1、Criptol、ABCG2、Dppa5、hTERT、Connexin−43、Connexin−45等であるが限定されないES細胞の特異的マーカーを発現する。ヒトES細胞は分化した細胞の特徴的なマーカー、Keratin 5、Keratin 15、Keratin 18、Sox−1、NFH(外胚葉);brachyury、Msx1、MyoD、HAND1、心臓アクチン(中胚葉);GATA4、AFP、HNF−4a、HNF−30、アルブミン、およびPDX 1(内胚葉)を発現しない。ヒトES細胞はステージ特異的胚抗原3(SSEA−3)、SSEA−4、腫瘍認識抗原1−60(TRA−1−60)、TRA−1−81、Oct−4、E−カドヘリン、コネキシン−43、およびアルカリホスファターゼ等の細胞表面マーカーも発現する。発現量は免疫細胞化学により検出され得る。本開示のヒトES細胞株の大規模な分子特性解析は、初期胚発生に対する極めて重要な知見を提供し得るものである。
本開示の特定の態様においては、単離されたヒトES細胞を好ましくは増殖因子を含む栄養培地中で培養し、手作業での継代によって維持する。本明細書で用いられる「増殖因子」という語は、細胞表面受容体に結合し、主な結果として、細胞増殖の活性化、およびシグナル伝達経路の活性化による分化を伴うタンパク質のことを指す。増殖因子/添加物の大部分は極めて汎用性が高く、多数の異なる細胞型において細胞分裂を刺激することができるが、一部の増殖因子の特異性は特定の細胞型に限定される。多能性ES細胞に特異的な増殖因子を使用し、ニューロン、肝細胞、心筋細胞、ベータ島、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞等の各種系統に分化するようにそれらを誘導することができる。ES細胞培地の一例は、80% DMEM/F−12、15% ES試験済FBS、5% 血清代替物、1% 非必須アミノ酸溶液、1mM グルタミン(GIBCO)、0.1% ベータメルカプトエタノール、4ng/ml ヒトbFGFおよび10ng/ml ヒト白血病抑制因子(LIF)を含む。細胞を手作業で継代する方法が、一般的に用いられる酵素処理による継代の方法よりも有利であり、これは細胞株の遺伝的安定性を維持する手助けとなるためである。細胞株の正常な核型の維持はその治療目的における利用のために重要である。
胚幹細胞の分析のために特に好ましいエピトープおよび抗体結合剤
胚幹細胞を用いた抗体標識実験表19は、非修飾二糖Galβ3GlcNAc(Le c、Lewis c)およびフコシル化誘導体H型およびLewis bを認識する、1型N−アセチルラクトサミン抗原認識抗体の特異性を明らかにした。前記抗体は幹細胞の培養に用いられるマウスフィーダー細胞mEFと比べ、hESC細胞集団の認識において有効であった。
特異的な各種のH2型認識抗体は胚幹細胞の各種亜集団を認識することが示され、そのため細胞の亜集団の定義に対する有用性が明らかになった。本発明はさらに、胚幹細胞上の特異的Lewis xおよびシアリルLewis x構造を明らかにした(本発明の図を参照のこと)。
hESCのための好ましいエピトープおよびレクチン結合剤(本発明の図を参照のこと)
他の好ましい結合剤および/またはレクチンは、ECA(Erythrina cristacalli)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、前記レクチンはXXXXエピトープに結合する。より好ましいレクチンはレクチンECAを含む。このエピトープは幹細胞の増殖または幹細胞もしくは幹細胞のサブセットの状態の調節に有用である。より好ましい態様において、幹細胞はヒト胚幹細胞を含む。ECA被覆表面、好ましくは培養皿は、本発明の好ましい一態様である。好ましい一態様においては、hESCはECA被覆表面上で増殖させられ、本質的にフィーダー細胞を含まない。好ましくは、ECA被覆表面はhESCを実質的に未分化の状態で維持する。好ましい一態様においては、hESCはマウスフィーダー細胞に曝露されることなく、直接胚盤胞から得られる。他の好ましい態様においては、hESC培地は馴化培地、好ましくはmEFまたはhEF馴化のものを含む。好ましくは、hESCはマウスフィーダー細胞上で増殖させられ、ECA被覆プレート上に移されて増殖させられる。より好ましい一態様において、hESCは胚盤胞から得られ、ECA被覆表面上で増殖させられる。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF287(H1型)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ3GlcNAエピトープに結合する。より好ましい抗体は、Abcamによるクローン17−206(ab3355)の抗体を含む。このエピトープは幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体は幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するのに用いることができる。結合剤およびそれに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF279(Lewis c、Galβ3GlcNAc)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体は複合糖質中、より好ましくは糖タンパク質およびラクトテトラオシルセラミド等の糖脂質中のGalβ3GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体は、AbcamによるクローンK21(ab3352)の抗体を含む。このエピトープは幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体は幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するのに用いることができる。結合剤およびそれに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF288(Globo H)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ3GalNAcβエピトープ、より好ましくはFucα2Galβ3GalNAcβ3GalαLacCerエピトープに結合する。より好ましい抗体は、GlycotopeによるクローンA69−A/E8(MAB−S206)の抗体を含む。このエピトープは幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体は幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するのに用いることができる。結合剤およびそれに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF284(H2型)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ4GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体は、AcrisによるクローンB393(DM3015)の抗体を含む。このエピトープは幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体は幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するのに用いることができる。結合剤およびそれに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF283(Lewis b)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体は、Acrisによるクローン2−25LE(DM3122)の抗体を含む。このエピトープは幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体は幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するのに用いることができる。結合剤およびそれに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF286(H2型)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ4GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体は、AcrisによるクローンB393(BM258P)の抗体を含む。このエピトープは幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体は幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するのに用いることができる。結合剤およびそれに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF290(H2型)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ4GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体は、GlycotopeによるクローンA51−B/A6(MAB−S204)の抗体を含む。このエピトープは幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体は幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するのに用いることができる。結合剤およびそれに認識されるエピトープも幹細胞の増殖において有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
フィーダー細胞、好ましくはマウスフィーダー細胞に結合する他の結合剤は、GF285(H2型)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ4GlcNAc、Fucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc、Fucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体は、AcrisによるクローンB389(DM3014)の抗体を含む。このエピトープはフィーダー細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を含む培養液中のマウスフィーダー細胞を検出、単離および評価するのに適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体はフィーダー細胞、好ましくはマウス胚フィーダー細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮する(ネガティブに幹細胞を選択する)ために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF289(Lewis y)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体は、GlycotopeによるクローンA70−C/C8(MAB−S201)の抗体を含む。このエピトープは幹細胞、好ましくはフィーダー細胞を含む培養液中のヒト幹細胞を検出、単離および評価するのに適しており、用いることができる。前記検出はin vitroにおいて、FACS用途および/または細胞系統特異的用途のために行われ得る。この抗体は幹細胞、好ましくはヒト幹細胞を、フィーダーおよび幹細胞を含んだ細胞の混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮する(ネガティブにフィーダー細胞を選択する)ために用いることができる。結合剤およびそれに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
染色された幹細胞の染色強度および細胞数、すなわち幹細胞上の本発明のグリカン構造は、単離および分化マーカーのための結合剤の適合性および有用性を表す。例えば、グリカン構造発現細胞の数が比較的少ないことは系統特異性、およびそのコロニーから選択/単離され、培養される場合のサブセットの選択に対する有用性を表す場合がある。少ない発現数とは、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、30%未満、または40%未満である。さらに、発現量が1〜10%、10%〜20%、15〜25%、20〜40%、25〜35%、または35〜50%である場合には少ない発現数と考えられる。典型的には、FACS分析を行って、グリカン構造を発現する細胞のサブセットを濃縮、単離および/または選択することができる。
グリカン発現細胞の数が多いことは、多能性/多分化能マーカーにおける有用性、および結合剤が哺乳動物細胞の集団内の多能性または多分化能幹細胞を同定、分析、選択または単離するのに有用であることを表す場合がある。多い発現数とは50%超、より好ましくは60%超、さらに好ましくは70%超、および最も好ましくは80%、90または95%超である。さらに、発現量が50〜60、55%〜65%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜100%、または95〜100%である場合には多い発現数と考えられる。典型的には、FACS分析を行って、グリカン構造を発現する細胞のサブセットを濃縮、単離および/または選択することができる。
結合剤GF279、GF287、およびGF289に認識されるエピトープおよび該結合剤は、培養液中の幹細胞の多能性および多分化能を分析するのに特に有用である。結合剤GF283、GF284、GF286、GF288、およびGF290に認識されるエピトープおよび該結合剤は、幹細胞のサブセットを選択または単離するために特に有用である。これらのサブセットまたは亜集団をさらに増殖させ、in vitroでそれらの分化能を、および分化した細胞または特定の分化経路に拘束された細胞を、研究することができる。
本明細書で用いられる百分率は、分析または実験にかけられた全細胞に対してどれだけ多くの細胞がグリカン構造を発現しているかの平均割合を意味する。例えば、幹細胞コロニー内でグリカン構造を発現する20%の幹細胞は、視覚的に評価された際に、結合剤、例えば抗体染色が約20%の細胞において観察され得ることを意味する。
コロニー内において、グリカン構造を有する細胞は特定の一領域に分布する場合があり、またはそれらは小パッチ状のコロニー内に分散している場合がある。パッチ状の観察された幹細胞は細胞系統特異的な研究、単離および分離のために有用である。パッチ状特性はGF283、GF284、GF286、GF288、およびGF290で観察された。
フィーダー細胞、好ましくはマウスフィーダー細胞、最も好ましくは胚線維芽細胞のポジティブセレクションのためには、GF285が有用である。この抗体は低い特異性を有しており、例えばmEF細胞においても観察されたLewis yへの結合を有し得る。これはほぼ全てのフィーダー細胞を染色するが、幹細胞においては、あったとしても非常にわずかな染色しか見出されない。該抗体はしかし、最適化された条件下では、胚様体(embryonal bodies)の薄表面(thin layer)に結合することが明らかになり、これは胚様体のコアに対するLewis y抗体に対して補完的であった。発現の全割合については表19を参照のこと。
間葉系幹細胞およびそれに由来する分化した組織型幹細胞
間葉系幹細胞の分化状態の評価のために有用な抗体
実施例14および表19(下部)に、間葉系幹細胞および分化した間葉系幹細胞の標識を示す。
本発明は、抗体GF303、好ましくはFucα2Galβ3GlcNAc、およびGF276により認識される構造が、間葉系幹細胞が骨原性に分化した幹細胞へと分化する際に現れることを明らかにした。さらに、Tn抗原に対応するGalNAcα基構造GF278、およびGF277、シアリル−Tnが同時に増加することも明らかにした。
本発明はさらに、間葉系幹細胞(特に骨髄由来)および骨原性に分化した間葉系幹細胞の両者に特徴的ないくつかの標的構造に対する結合剤のための本発明による好ましい使用に関する。好ましい標的構造は抗体GF275により認識され得る1つのGalNAcα基構造を含み、該抗体の抗原は好ましくは該抗体に対して公知のシアル化O−グリカン糖ペプチドエピトープである。間葉系および骨原性に分化した幹細胞の両者に発現するエピトープはさらに2つの特徴的グロボ型抗原構造:結合がグロボトリオース(Gb3)型抗原に対応するGF298の抗原、およびグロボテトラオース(Gb4)型抗原に対応するGF297の抗原を含む。本発明はさらに、末端2型ラクトサミンエピトープが特に両型の間葉系幹細胞に発現していることを明らかにしたものであり、これは、実施例14表19において、両細胞をHII型抗原を認識する抗体で染色することにより例示された。
本発明はさらに、間葉系幹細胞(特に骨髄由来)がより分化した、好ましくは骨原性間葉系幹細胞に分化する際に、実質的に減少する、または事実上観察できない程度にまで低下/減少するいくつかの標的構造に対する結合剤のための、本発明の好ましい使用に関する。これらの標的構造は2つのグロボ系列構造を含み、これらは好ましくは、抗原SSEA−3として認識されるガラクトシル−グロボシド型構造、抗原SSEA−4として認識されるシアリル−ガラクトシルグロボシド型構造である。好ましい減少する標的構造はさらに、2つの2型N−アセチルラクトサミン標的構造、Lewis xおよびシアリル−Lewis xを含む。グロボシド型スフィンゴ糖脂質構造が、本願発明者らにより、MSCにおいて、直接的な構造分析、より具体的にはSSEA−3およびSSEA−4グリカン抗原単糖組成に対応するグリカンシグナルによって、hESCと比較して少量、しかし有意な量検出された。これらの抗原はMSCにおいてモノクローナル抗体によっても検出された。本発明は従って、特に、本発明に記載の使用における、MSCおよびそれらから得られた細胞と関連したこれらのグロボシド構造に関する。
本発明の好ましい一態様において、GF275、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF305、GF307、GF353、またはGF354と同一のエピトープに結合する抗体または結合剤は、好ましくは骨髄由来の、間葉系幹細胞の検出/識別に有用である(該抗体に認識される対応するエピトープを実施例3 14に列挙する)。これらのエピトープは、培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。これらの抗体は、他の骨髄由来細胞を含んだ細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF275(MUC−1糖タンパク質のシアル化炭水化物エピトープ)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンBM3359の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。これらの抗体または結合剤は、他の骨髄由来細胞を含んだ細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の、または骨原性方向に分化した幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF305(lewis x)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はChemiconによるクローンCBL144の抗体を含む。このエピトープは、培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF307(シアリルlewis x)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はChemiconによるクローンMAB2096の抗体を含む。このエピトープは、培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
好ましい一態様において、GF305、GF307、GF353またはGF354と同一のエピトープに結合する抗体または結合剤は間葉系幹細胞のポジティブセレクションおよび/または濃縮に有用である(該抗体により認識される対応するエピトープを実施例14に列挙する)。
本発明の他の好ましい態様において、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF307またはGF353と同一のエピトープに結合する抗体または結合剤は、分化した、好ましくは骨髄由来の、および/または骨原性方向に分化した、間葉系幹細胞を検出/識別するのに有用である(該抗体により認識される対応するエピトープを実施例14に列挙する)。これらのエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。これらの抗体は、他の骨髄由来細胞を含んだ細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF297(グロボシドGL4)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAbcamによるクローンab23949の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の未分化(間葉系)幹細胞、および好ましくは骨原性方向に分化したものの検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF298(ヒトCD77;GB3)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンSM1160の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の未分化(間葉系)幹細胞、および好ましくは骨原性方向に分化したものの検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF302(H2型血液抗原)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ4GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体はAcrisによるクローンDM3015の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の未分化(間葉系)幹細胞、および好ましくは骨原性方向に分化したものの検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
本発明の好ましい一態様において、GF276、GF277、GF278、GF303、GF305、GF307、GF353、またはGF354と同一のエピトープに結合する抗体または結合剤は、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向に分化した、間葉系幹細胞を検出/識別するのに有用である(該抗体により認識される対応するエピトープを実施例14に列挙する)。これらのエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。これらの抗体は、他の骨髄由来細胞を含んだ細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/もしくは骨髄由来の、または骨原性方向に分化した、幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
さらに、GF276もしくはGF303と同一のエピトープに結合する結合剤、または抗体GF276および/もしくはGF303は、培養における、またはin vivoにおける、骨原性に分化した幹細胞の検出、単離および評価に特に有用である(該抗体により認識される対応するエピトープを実施例14に列挙する)。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF276(癌胎児性抗原)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンDM288の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向の、分化した(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF277(ヒトシアロシル−Tn抗原;STn、sCD175)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンDM3197の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向の、分化した(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF278(ヒトシアロシル−Tn抗原;STn、sCD175 B1.1)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンDM3218の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向の、分化した(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF303(血液型H1抗原、BG4)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ3GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体はAbcamによるクローンab3355の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向の、分化した(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。結合剤およびそれ/それらに認識されるエピトープは幹細胞の増殖においても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。結合剤は表面上での幹細胞の増殖のための結合剤のスクリーニングにおいても有用であり、幹細胞または幹細胞のサブセットの状態の調節、接着状態の変化、分化関連状態、増殖速度の変化が、幹細胞を幹細胞の末端グリカン構造を認識する結合剤に接触させることにより提供される。
さらに、前記抗体または結合剤は骨原性系統(osteogenic lineage)のための幹細胞を単離および濃縮するのに有用である。これは、例えば抗体GF276、GF277、GF278、およびGF303を用いた、ポジティブセレクションにより行うことができる(該抗体に認識される対応するエピトープを実施例3、14に列挙する)。ネガティブディプリーション(negative depletion)については、好ましいエピトープは抗体GF305、GF307、GF353、またはGF354で認識されるものと同じである。ネガティブディプリーションについては、好ましいエピトープは抗体GF354(SSEA−4)またはGF307(シアリルLewis x)で認識されるものと同じである。
各種幹細胞型間の比較
本データは、1型および2型N−アセチルラクトサミンの群の比較が、間葉系幹細胞および胚幹細胞等の幹細胞の分析のために、および/または線維芽細胞様フィーダー細胞等の混入細胞集団からの細胞の分離のために、有用な方法であることを明らかにした。未分化間葉系細胞はhESC細胞から明らかになったI型N−アセチルラクトサミン抗原を欠いていたが、両細胞型および潜在的混入線維芽細胞はII型N−アセチルラクトサミン認識抗体による一様でない標識を有している。
「主に」という語は好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、および最も好ましくは少なくとも90%を表す。幹細胞との関連において、「主に」という語は、グリカン構造を発現し、哺乳動物細胞の集団中の多能性または多分化能幹細胞を同定、分析、選択または単離するのに有用な、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、および最も好ましくは少なくとも90%の細胞を表す。
細胞成分およびその混合物の単離のための結合剤の使用
本発明は、新規結合試薬が好ましい一態様において新規標的/マーカー構造を有する幹細胞からの細胞成分の単離に用いられることを明らかにした。単離された細胞は好ましくは遊離グリカン、またはタンパク質もしくは脂質もしくはその断片に結合したグリカンである。
本発明は特に、構造が1つまたはいくつかの型のグリカン材料sele
a)幹細胞材料から遊離した遊離グリカンならびに/または
b)グリカン複合体材料、例えば
b1)糖アミノ酸材料、例えば
b1a)糖タンパク質
b1b)糖オリゴペプチドおよび糖ポリペプチド等の糖ペプチド
および/もしくは
b2)本発明により明らかになった好ましい炭水化物構造を有する脂質結合材料
を含む場合の、前記構造を含む細胞成分の単離に関する。
標的構造を有する細胞成分の単離のための一般的方法
本発明の細胞成分の単離とは、特異的結合剤によって結合されるグリカン構造である対応する標的構造に本発明の結合剤分子を結合させる工程を含む方法において、本発明の標的構造を有する増加した(または濃縮された)量のグリカンを含んだ分子画分を産生することを意味する。
前記画分の単離の過程は、本発明の結合剤分子を幹細胞由来の対応する標的構造と接触させることと、濃縮された標的構造組成物を単離することとを伴う。
細胞成分を単離するための好ましい方法は次の工程
1)幹細胞試料を提供すること
2)本発明の結合剤分子を対応する標的構造と接触させること
3)前記結合剤と標的構造との複合体を少なくとも細胞材料の一部から単離すること
を含む。
前記成分は一般に細胞構造の特定の画分、例えば原形質膜を含む細胞膜画分;およびオルガネラ画分;および可溶性タンパク質、脂質または遊離グリカン画分等の可溶性グリカン含有画分;において豊富に存在すると理解される。前記結合剤は全細胞画分に対して用いることができると理解される。
好ましい一態様において、標的構造は、プロテアーゼにより遊離する細胞表面タンパク質または界面活性剤可溶性膜タンパク質等の、細胞タンパク質の画分内に豊富に存在する。
好ましい標的構造組成物は、幹細胞において、または幹細胞に特徴的な割合で、特異的に発現する、結合剤構造に対応するグリカン構造を有する糖タンパク質または糖ペプチド、およびペプチドまたはタンパク質エピトープを含む。
より好ましくは、本発明は、前記単離工程における標的構造画分の精製に関する。精製は本発明の好ましい一態様において、少なくとも部分的精製である。好ましくは、標的グリカン含有材料は、好ましくはそれが発現される細胞画分の成分の中で、少なくとも2倍に精製される。より好ましい精製水準としては5倍および10倍精製、より好ましくは100、さらに好ましくは1000倍精製等が挙げられる。好ましくは、精製された画分は少なくとも10%の標的グリカン含有分子を含み、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらになお好ましくは少なくとも70%の純粋、および最も好ましくは少なくとも90%の純粋を含む。好ましくは前記%値は他の標的グリカン非含有複合糖質分子に対するモルパーセントであり、より好ましくは前記材料は本質的に他の主要な有機混入分子を含まない。
好ましい精製標的グリカン組成物および標的グリカン−結合剤複合体
本発明は単離または精製された標的グリカン−結合剤複合体および単離された標的グリカン分子組成物に関するものであり、ここで該標的グリカンは本発明の特異的標的構造に富む。
好ましくは、精製された標的グリカン−結合剤複合体組成物は少なくとも10%の、結合剤と複合した標的グリカン含有分子、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらになお好ましくは少なくとも70%の純粋な、および最も好ましくは少なくとも90%の純粋な、結合剤と複合した標的グリカン含有分子を含む。
好ましくは、精製された標的グリカン組成物は少なくとも10%の標的グリカン含有分子、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらになお好ましくは少なくとも70%の純粋な、および最も好ましくは少なくとも90%の純粋な、標的グリカン含有分子を含む。
本発明はさらに、本発明の結合剤分子を幹細胞由来の対応する標的構造に接触させて濃縮された標的構造を単離する工程を伴う画分の単離の方法によって産生された、濃縮された標的グリカン組成物に関する。
標的グリカンの精製のための結合剤技術
細胞の糖タンパク質、糖ペプチド、遊離オリゴ糖および他のグリカン複合体の親和性精製のための方法は、当該分野において周知である。好ましい方法としては、アフィニティークロマトグラフィー等の固相を用いる結合剤技術、免疫沈降等の沈降、免疫磁性ビーズ法等の結合剤−磁性法などが挙げられる。アフィニティークロマトグラフィーは、レクチン(Wang Y et al(2006)Glycobiology16(6)514−23)を用いた、もしくは抗体による、糖ペプチドの精製に対して、または、抗体(例えばPrat M et al cancer Res(1989)49,1415−21;Kim YD et al et al Cancer Res(1989)49、2379)および/もしくはレクチン(例えばCumming and Kornfeld(1982)J Biol Chem 257、11235−40; Yae E et al.(1991)1078(3)369−76;Shibuya N et al(1988)267(2)676−80;Gonchoroff DG et al.1989、35、29−32;Hentges and Bause(1997)Biol Chem 378(9)1031−8)を用いた糖タンパク質/ペプチドの精製に対して、記載されている。遊離オリゴ糖の識別も対象とする弱く結合する抗体のための具体的な方法が例えば(Ohlson S et al.J Chromatogr A (1997)758(2)199−208)、Ohlson S et al.Anal Biochem (1988)169(1)204−8)に記載のように開発されている。該方法は例えば(Cummings and Kornfeld(1982)J Biol Chem 257、11235−40)に示されるように異なった特異性の結合剤による複数の工程を伴っている場合がある。オリゴ糖混合物のための抗体またはタンパク質(レクチン)結合剤アフィニティークロマトグラフィーも、例えば(Kitagawa H et al.(1991)J Biochem110(49 598−604;Kitagawa H et al.(1989)Biochemistry 28(22)8891−7;Dakour J et al Arch Biochem Biophys(1988)264,203− 13)、糖脂質のためのものが、例えば(Bouhours D et al(1990)Arch Biochem Biophys 282(1)141−6)に記載されている。グリカンを対象とするアフィニティークロマトグラフィーおよび/または有用なレクチンおよび抗体特異性のさらなる情報は、(Debaray and Montreuil(1991)Adv.Lectin Res 4、51−96;“The molecular immunology of complex carbohydrates”Adv Exp Med Biol(2001)491(ed Albert M Wu)Kluwer Academic/Plenum publishers,New York;“Lectins”second Edition(2003)(eds Sharon、Nathan and Lis、Halina)Kluwer Academic publishers Dordrecht,The Neatherlands)等の総説およびモノグラフから入手可能である。
前記方法は常圧またはHPLCクロマトグラフィーを用い、従来のクロマトグラフィー法または他のタンパク質およびペプチド精製法を用いるさらなる工程を含んでいてよいく、好ましいさらなる単離法は、特に低Mwグリカンおよび複合体、好ましくは糖ペプチドの単離のためのゲル濾過(サイズ排除)クロマトグラフィーである。
さらに、単離されたタンパク質およびペプチドは質量分析法、例えば(Wang Y et al(2006)Glycobiology 16(6)514−23)により識別され得ることが知られている。本発明は特に、質量分析、ペプチドシーケンシング、化学的分析、アレイ分析等の方法または他の当該分野に公知の方法によるグリカンおよび/またはその複合体の精製、および単離された成分の識別のための、本発明の結合剤の使用に関する。
トリプシン感受性型グリカン標的の存在の解明
本発明は実施例20において本グリカン結合剤、特にモノクローナル抗体、の標的構造の一部が、トリプシン感受性であることを明らかにした。細胞がトリプシンにより処理(培養から解放)されると、細胞表面抗原のFACS分析において、抗原構造は本質的に観察されないか、またはこれらは少ない量で観察されるが、Versene処理(PBS中の0.02%EDTA)後には観察可能である。これは例えば、SSEA−4抗原に結合することが示されている抗体GF354による間葉系幹細胞の標識において観察された。この標的抗原構造は従来、シアリル−ガラクトシルグロボシド糖脂質と考えられてきたが、明らかに抗体はグリカン配列の非還元末端のエピトープのみを認識する。本発明はそこで特に、SSEA−4抗体によって結合・濃縮される、間葉系幹細胞糖ペプチド結合グリカン構造の単離および分析の方法、および対応する糖ペプチドおよび糖タンパク質の分析に関する。本発明はさらに、幹細胞、特に間葉系幹細胞および胚幹細胞由来のトリプシン非感受性グリカン材料の分析に関する。
本発明はまた、ab GF275のシアリルムチン型標的の大部分はトリプシン感受性であり、少数は非トリプシン感受性であることも明らかにした。本発明は、トリプシン感受性およびトリプシン非感受性の両者のグリカン画分、好ましくは糖タンパク質および糖ペプチドの、本発明の方法による単離に関する。本発明はさらに、好ましくは材料が間葉系幹細胞から単離された場合の、抗体GF302によって結合されるタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)感受性様糖ペプチドおよび糖タンパク質の単離および分析に関する。
本明細書において、「結合剤」、「結合物質」および「マーカー」は互換的に用いられる。
抗体
本発明の有用なレクチンおよび有用な抗体特異性、および還元末端伸長抗体エピトープに関する情報は、(Debaray and Montreuil(1991)Adv.Lectin Res 4,51−96;“The molecular immunology of complex carbohydrates”Adv Exp Med Biol(2001)491(ed Albert M Wu)Kluwer Academic/Plenum publishers,New York;“Lectins”second Edition(2003)(eds Sharon,Nathan and Lis,Halina)Kluwer Academic publishers Dordrecht、The Neatherlands等の総説およびモノグラフならびにpubmed/espacenet等のインターネットデータベース、またはモノクローナル抗体特異性を列挙するwww.glyco.is.ritsumei.ac.jp/epitope/等の抗体データベース)から入手可能である。
当該分野で公知の各種方法を用いて、ペプチドモチーフおよびその領域または断片に対するポリクローナル抗体を産生することができる。抗体の産生においては、任意の適した宿主動物(ウサギ、マウス、ラット、またはハムスター等であるが限定されない)がペプチド(免疫原性断片)の注射により免疫される。宿主動物種により、各種アジュバントを用いて免疫反応を高めることができ、例えばフロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル(mineral gel)、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および、BCG{Bacille Calmette−Guerin)およびCorγnebacterium parvum等の潜在的に有用なヒトアジュバント等が挙げられるがこれらに限定されない。
ペプチドモチーフに対するモノクローナル抗体は、培養における連続細胞系による抗体分子の産生のために提供される任意の手法を用いて調製してよい。これらとしては、Kδhler et al,(Nature、256:495−497,1975)により最初に記載されたハイブリドーマ技術、およびより最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al.,Immunology Today,4:72、1983)およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R Liss,Inc.,pp.77−96、1985)等が挙げられるがこれらに限定されない。これらは全て参照により具体的に本明細書に組み込まれる。抗体はクローン化された免疫グロブリンcDNAから細菌内で産生することもできる。組み替えファージ抗体系の使用により、細菌培養物中の抗体を速やかに産生および選択することができ、また遺伝的にその構造を操作することができる場合がある。
ハイブリドーマ技術が用いられる場合、ミエローマ細胞株を用いてよい。このようなハイブリドーマ産生融合法において用いるために適した細胞株は、好ましくは抗体非産生性であり、高い融合効率を有し、また、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を補助する特定の選択的培地においてそれらを増殖できなくする酵素欠損を示す。例えば、免疫した動物がマウスである場合、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Agl4、FO、NSO/U、MPC−I1、MPC11−X45−GTG 1.7およびS194/5XX0 BuIを使用してよく;ラットである場合、R210.RCY3、Y3−Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210を使用してよく;ならびにU−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6は全て細胞融合において有用である。
モノクローナル抗体の産生に加え、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術、すなわちマウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子につないで適当な抗原特異性および生物活性を有する分子を得る技術を用いることができる(Morrison et al,Proc Natl Acad Sd 81:6851−6855,1984;Neuberger et al,Nature 312:604−608,1984;Takeda et al,Nature 314:452−454;1985)。あるいは、一本鎖抗体の産生のために記載された技術(米国特許第4,946,778号)を適合させ、インフルエンザ特異的一本鎖抗体を産生することができる。
前記分子のイディオタイプを有する抗体断片は、公知の手法により生成することができる。例えば、このような断片として、抗体分子のペプシン消化により生成し得るF(ab’)2フラグメント、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成し得るFab’フラグメント、ならびに抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することにより生成し得る2つのFabフラグメント等が挙げられるが、これらに限定されない。
非ヒト抗体は当該分野で公知の任意の手法を用いてヒト化することができる。好ましい「ヒト化抗体」は、ヒト定常領域を有するが、該抗体の可変領域、または少なくとも相補性決定領域(CDR)は非ヒト動物由来である。ヒト軽鎖定常領域はκまたはλ軽鎖のいずれからのものであってもよく、一方ヒト重鎖定常領域はIgM、IgG(IgGl、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgD、IgA、またはIgE免疫グロブリンのいずれからのものであってもよい。
非ヒト抗体のヒト化のための方法は、当該分野で周知である(米国特許第5,585,089号、および5,693,762号を参照)。一般に、ヒト化抗体は、そのフレームワーク領域に導入された、非ヒト供給源からの1または複数個のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば、Jones et al.(Nature 321:522−525,1986)、Riechmann et al.(Nature,332:323−327,1988)およびVerhoeyen et al.(Science 239:1534−1536,1988)に記載される方法を用い、齧歯類相補性決定領域(CDR)の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に対して置換することにより行うことができる。改変抗体の調製のための数多くの手法が、例えばOwens and Young,J.Immunol.Meth.,168:149−165,1994において、記載されている。そして、さらなる変化を抗体フレームワークに導入し、親和性または免疫原性を調節することができる。
同様に、CDRを単離するための当該分野に公知の手法を用いて、CDRを含んだ組成物が生成される。相補性決定領域は6個のポリペプチドループ、重鎖または軽鎖の可変領域のそれぞれに対する3個のループを特徴とする。CDRおよびフレームワーク領域におけるアミノ酸部位はKabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”U.S.Department of Health and Human Services、(1983)に記述されており、これは参照により本明細書に組み込まれたものとする。例えば、ヒト抗体の超可変領域はおおまかには重鎖および軽鎖可変領域の残基28〜35、残基49〜59、および残基92〜103にあると定義される(Janeway and Travers, Immunobiology,2nd Edition,Garland Publishing,New York、1996)。任意の所定の抗体におけるCDR領域は、上述のこれらのおおよその残基のうちのいくつかのアミノ酸の内部に存在し得る。免疫グロブリン可変領域もCDRを囲む「フレームワーク」領域を有する。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域配列は種内で高度に保存されており、ヒトおよびマウスの配列間でも保存されている。
モノクローナル抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の1、2、および/または3個のCDRを有する組成物が生成される。ハイブリドーマから分泌されるモノクローナル抗体の1、2、3、4、5および/または6個の相補性決定領域を含むポリペプチド組成物も考えられる。CDRを囲む保存されたフレームワーク配列を用いて、これらのコンセンサス配列に相補的なPCRプライマーが生成され、プライマー領域間に位置するCDR配列が増幅される。ヌクレオチドおよびポリペプチド配列のクローニングおよび発現のための手法は当該分野において確立されている(例えばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,New York (1989)を参照)。増幅されたCDR配列は適当なプラスミドに連結される。1、2、3、4、5および/または6個のクローニングされたCDRを有するプラスミドは任意に、該CDRに連結されたさらなるポリペプチドコード領域を有する。
好ましくは、前記抗体は式(I)のグリカン構造またはその断片に対して特異的な任意の抗体である。本発明で用いられる該抗体は、幹細胞の指標である、式(I)のグリカン構造に特異的に結合するのに十分な特異性を保持した、天然または組み替えの、合成または天然由来の、モノクローナルまたはポリクローナルの、任意の抗体またはその断片を含む。本明細書で用いられる「抗体(antibody)」または「抗体群(antibodies)」という用語は、抗体全体、およびその機能的部分を含んだ抗体断片を包含する。「抗体」という用語は、抗体全体が結合特異性を有するエピトープに結合を達成するのに十分な軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域の部分を有する、任意の単一特異性または二重特異性化合物を包含する。前記断片は少なくとも1個の重鎖または軽鎖免疫グロブリンポリペプチドの可変領域を含むことができ、ならびにFabフラグメント、F(ab’).sub.2フラグメント、およびFvフラグメントを含むことができるがこれらに限定されない。
前記抗体は、酵素、磁性ビーズ、コロイド磁性ビーズ(colloidal magnetic beads)、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、放射性化合物、クロマトグラフィー樹脂、固相または薬物等ではあるが限定されない他の適した分子および化合物に結合させることができる。前記抗体に結合させることができる前記酵素としてはアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼおよびベータ−ガラクトシダーゼ等が挙げられるがこれらに限定されない。前記抗体に結合させることができる前記蛍光色素としてはフルオレッセインイソチオシアネート、イソチオシアン酸テトラメチルローダミン、フィコエリトリン、アロフィコシアニンおよびテキサスレッド等が挙げられるがこれらに限定されない。抗体に結合させることができるさらなる蛍光色素についてはHaugland、R.P.Molecular Probes:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(1992−1994)を参照のこと。前記抗体に結合させることができる前記金属化合物としてはフェリチン、金コロイド、および特に、コロイド超磁性ビーズ(colloidal superparamagnetic beads)等が挙げられるがこれらに限定されない。前記抗体に結合させることができる前記ハプテンとしては、ビオチン、ジゴキシゲニン、オキサザロン、およびニトロフェノール等が挙げられるがこれらに限定されない。前記抗体に結合させるまたは組み込むことができる前記放射性化合物は当該分野において公知であり、テクネチウム99m、.sup.125 I、ならびに、.sup.14 C、.sup.3 H、および.sup.35 S等の限定されない任意の放射性核種を有するアミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
式(I)のグリカン構造に対する抗体は任意の供給源から入手してよい。これらは市販されている場合がある。事実上、幹細胞上のグリカン構造の存在を検出する任意の手段が本発明に含まれる。このような抗体の一例はAbcamからのH1型(クローン17−206;GF287)抗体である。
HSC
本明細書に概要を述べる方法は特にHSCまたはその子孫を細胞の集団から同定するために有用である。しかし、さらなるマーカーを、一般的なHSC、または幹細胞、集団内の亜集団をさらに区別するために用いてもよい。
幹細胞上の式(I)のグリカン構造への結合剤のレベルにより各種亜集団を区別することができる。これは本明細書に概要を述べる方法により検出することができる幹細胞表面上に(またはフィーダー細胞特異的結合剤が用いられる場合はフィーダー細胞上に)現れ得る。しかし、本発明は、CD34.sup.+、CD38.sup.−、CD90.sup.+(thy1)およびLin.sup.−細胞等であるが限定されない幹細胞またはHSC集団の各種表現型を区別するために用いてもよい。好ましくは、同定される細胞は、CD34.sup.+、CD38.sup.−、CD90+(thy 1)、またはLin.sup.−を含むが限定されない群から選択される。
本発明は従って、幹および/もしくはHSCまたはその子孫のための、集団を濃縮する方法を包含する。本方法は、HSCまたはその子孫の混合物を、幹細胞上の式(I)のグリカン構造を認識してそこに結合する抗体またはマーカーまたは結合タンパク質/物質または結合剤と、該抗体またはマーカーまたは結合剤が幹細胞上の式(I)のグリカン構造に結合することを可能にする条件の下で混合し、該抗体またはマーカーにより認識される細胞を分離して幹細胞またはその子孫が実質的に濃縮された集団を得ることを伴う。前記方法は、試料中の多くのHSCまたはその子孫に対する診断アッセイ(diagnostic assay)として用いることができる。細胞および抗体またはマーカーは、抗体またはマーカーが幹細胞上の式(I)のグリカン構造に特異的に結合することを可能にするのに十分な条件の下で混合され、次いで定量が行われる。HSCもしくは幹細胞またはその子孫を、単離し、またはさらに精製することができる。
上記に考察されるように、前記細胞集団は、幹細胞もしくはHCSまたはその子孫の任意の供給源、例えば上記に考察されるそれらの試料から得ることができる。
幹細胞上の式(I)のグリカン構造の存在の検出は、幹細胞上の式(I)のグリカン構造を同定するための任意の方法により行われてよい。好ましくは、この検出は幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対するマーカーまたは結合タンパク質の使用によるものである。幹細胞上の式(I)のグリカン構造のための該結合剤/マーカーは上記で議論されるマーカーのいずれのものであってもよい。しかし、幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する抗体または結合タンパク質が特に幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対するマーカーとして有用である。
最初に特化した系統(dedicated lineage)の細胞を取り出すことによって細胞を分離または濃縮するために、各種手法を用いることができる。モノクローナル抗体、結合タンパク質およびレクチンが、細胞系統および/または分化の段階を同定するために特に有用である。抗体を固相に結合し、粗分離を可能にすることができる。用いる分離手法は回収される画分の生存能力の保持を最大限にするものであるべきである。効果の異なる各種手法を用いて「比較的粗精製の」分離物を得ることができる。用いられる個々の手法は分離の効率、関連する細胞毒性、簡便性および実施スピード、ならびに高度な器具および/または技術的手腕の必要性によって異なる。
分離および濃縮の手順としては、抗体被覆磁性ビーズを用いた磁気分離;アフィニティークロマトグラフィー;モノクローナル抗体に結合した、またはモノクローナル抗体と併せて用いられる、細胞毒性薬、例えば補体および細胞毒等が挙げられるが限定されないもの;ならびに、プレート等の固体マトリクスに結合した抗体による「パンニング」;エルトリエーション(elutriation);または任意の他の好都合な手法;などが挙げられるがこれらに限定されない。
分離または濃縮手法の使用としては、物理的な(密度勾配遠心および対流遠心エルトリエーション(counter−flow centrifugal elutriation))、細胞表面の(レクチンおよび抗体親和性)、および生体染色特性の(ミトコンドリア結合色素rho123およびDNA結合色素Hoescht 33342)相違に基づくもの等が挙げられるがこれらに限定されない。
正確な分離を提供する手法としては、複数のカラーチャネル、低角度および鈍角の光散乱検出チャネル、インピーデンスチャネル等、様々な程度の精巧さを有し得るFACSなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞を幹細胞上の式(I)のグリカン構造の発現量によって単離および識別できる任意の方法を用いることができる。
最初の分離においては、典型的には約1.times.10.sup.10、好ましくは約5.times.10.sup.8−9細胞で開始し、幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する抗体または結合タンパク質またはレクチンは少なくとも1種の蛍光色素で標識することができ、一方、各種の特化した系統に対する抗体または結合タンパク質は少なくとも1種の異なる蛍光色素に結合することができる。それぞれの系統は別々の工程で分離することができるが、望ましくはこれらの系統は、幹細胞マーカー上の式(I)のグリカン構造に対するポジティブセレクションを行っている際に同時に分離される。死細胞と関連する色素(ヨウ化プロピジウム(PI)等が挙げられるがこれに限定されない)を用いることにより、前記細胞から死細胞を選択的に除くことができる。
さらに任意の細胞集団を濃縮するため、それらの細胞集団に対する特異的マーカーを用いることができる。例えば、リンパ、骨髄、または赤血球系統等の特異的細胞系統に対する特異的マーカーを用いて、これらの細胞を濃縮し、または減らすことができる。これらのマーカーは、間葉系またはケラチノサイト幹細胞を除去または選び出すことによってHSCまたはその子孫を濃縮するために用いることができる。
上記方法はさらに、他の幹細胞特異的マーカーに対するポジティブセレクションにより細胞をさらに濃縮する工程を含むことができる。適したポジティブな幹細胞マーカーとしては、SSEA−3、SSEA−4、Tra 1−60、CD34.sup.+、Thy−1.sup.+、およびc−kit.sup.+等が挙げられるがこれらに限定されない。個々の要素による適当な選択、HSCまたはその子孫の自己再生を可能にするバイオアッセイの開発、およびHSCまたはその子孫のそのマーカーに関するスクリーニングにより、生存能力のあるHSCまたはその子孫を多く含む組成物を各種目的のために生成することができる。
幹細胞またはHSCまたはその子孫の集団が単離されると、さらなる単離技術を用いて該HSCまたはその子孫内部の亜集団を単離することができる。細胞系統に対するFACS等の細胞選択システムなどの特異的マーカーを用いて、各種細胞系統を同定および単離することができる。
本発明のさらに他の局面において、幹細胞もしくはHSCまたはその子孫の含有量を測定する方法が提供され、該方法は:
幹細胞またはその子孫を含んだ細胞集団を得ること;
前記細胞集団を、その幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する結合タンパク質または結合剤と結合させること;
その幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する前記結合タンパク質または結合剤により同定されるそれらの細胞を選択すること;および
選択された細胞の量を、結合タンパク質による選択前の細胞集団内の細胞の量との比較において定量すること;
を含む。
結合剤−標識複合体
本発明は特に、前記結合剤が「標識構造」と結合させられる場合の、本発明の構造の結合に関する。この標識構造とは、アッセイにおいて観察可能な分子、例えば蛍光分子、放射性分子、西洋わさびペルオキシダーゼ等の検出可能な酵素またはビオチン/ストレプトアビジン/アビジンを意味する。標識された結合分子を本発明の細胞に接触させると、細胞を細胞表面上の標識の存在に基づいてモニタリング、観察および/または選別することができる。モニタリングおよび観察は標識を観察するための常法、例えば蛍光測定装置、顕微鏡、シンチレーションカウンターおよび他の放射能を測定するための装置により行うことができる。
細胞選別のための、結合剤および標識結合剤複合体の使用
本発明は特に、他の細胞型を含んだ細胞材料等の生体材料または試料からのヒト幹細胞の選別または選択のための、結合剤およびその標識された複合体の使用に関する。好ましい細胞型としては、臍帯血、末梢血、および胚幹細胞、ならびに関連した細胞などが挙げられる。標識は本発明の細胞型を他の類似した細胞から選別するために用いることができる。他の態様において、前記細胞は、血液細胞;または培養細胞については好ましくはフィーダー細胞、例えば胚幹細胞についてはヒトまたはマウスフィーダー細胞等の対応するフィーダー細胞;等の各種細胞型から選別される。好ましい細胞選別法はFACS選別である。他の選別法では固定化した結合剤構造が用いられ、結合および未結合細胞の分離のために未結合細胞が除去される。
固定化した結合剤構造の使用
好ましい一態様において、前記結合剤構造は固相に結合される。細胞が固相と接触させられ、材料の一部が表面に結合する。この方法は細胞の分離および細胞表面構造の分析、または固定化による細胞の細胞生物学的変化の研究に用いることができる。分析を伴う方法において、細胞は好ましくは試薬によってタグをつけられ、または標識され、固相上の結合剤構造を介して固相に結合した細胞が検出される。この方法は好ましくはさらに1または複数個の、未結合細胞除去のための洗浄の工程を含むことができる。
好ましい固相としては、細胞を接触させるのに用いる、細胞に適したプラスチック材料、例えば細胞培養瓶、シャーレおよびマイクロタイターウェル、発酵槽表面材料等が挙げられる。
好ましい幹細胞と混入細胞との間の特異的識別
本発明はさらに、幹細胞を、フィーダー細胞等の分化した細胞、好ましくは動物フィーダー細胞およびより好ましくはマウスフィーダー細胞から識別する方法に関する。さらに、本試薬は特異的結合試薬を用いた任意の分別法による幹細胞の精製のために用いることができると理解される。
好ましい分別法としては、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、アフィニティークロマトグラフィー法、および磁性ビーズ法等のビーズ法などが挙げられる。
好ましい細胞、好ましくは胚性細胞と、混入細胞、例えばフィーダー細胞、最も好ましくはマウスフィーダー細胞とを識別するための好ましい試薬としては、表23による試薬、より好ましくはレクチンPSA、MAA、およびPNAと類似の特異性を有するタンパク質等が挙げられる。
本発明はさらに、幹細胞集団への特異的結合を示すが混入細胞集団には示さない、ポジティブセレクション法に関する。本発明はさらに、混入細胞集団への特異的結合を示すが幹細胞集団には示さない、ネガティブセレクション法に関する。幹細胞の識別のさらに他の態様においては、幹細胞集団はフィーダー細胞集団等の均質な細胞集団とともに識別され、好ましくはこれは他の材料の分離が必要な場合に行われる。ポジティブセレクションのための試薬は、本発明における幹細胞に結合し、混入細胞集団には結合しないように選択することができ、ネガティブセレクションのための試薬は、反対の特異性を示すように選択することができると理解される。本発明の細胞の1つの集団が本発明で研究されていない新規細胞集団から選択される必要がある場合、本発明の結合分子は、該新規細胞集団に対して適した特異性(結合または非結合)を有すると確認されれば用いることができる。本発明は特に、本発明の新規結合または選択法の開発のための、このような結合特異性の分析に関する。
本発明の好ましい特異性としては、
i)マンノース型構造、特にレクチンPSAのようにアルファ−Man構造であって、好ましくは混入細胞の表面上のもの
ii)MAAレクチンによるものと同様に、α3−シアル化構造であって、好ましくは胚性幹細胞の識別のためのもの
iii)Gal/GalNAc結合特異性、好ましくはGal1−3/GalNAc1−3結合特異性、より好ましくはPNAと類似のGalβ1−3/GalNAcβ1−3結合特異性であって、好ましくは胚性幹細胞の識別のためのもの
の認識等が挙げられる。
結合剤による細胞の操作
本発明は特に、特異的結合タンパク質による細胞の操作に関する。記載されたグリカンは細胞間の相互作用において重要な役割を担っており、従って結合剤または結合分子を細胞の特定の生物学的操作のために用いることができると考えられる。この操作は遊離または固定化結合剤により行われ得る。好ましい一態様において、細胞は、該細胞の増殖速度に影響する細胞培養条件下で細胞の操作のために用いられる。
幹細胞の命名
本発明は全ての幹細胞型、好ましくはヒト幹細胞の分析に関する。幹細胞の一般的な命名を図9に記す。本発明の別の命名基準は、図9に示すように、好ましい一態様において成体幹細胞(臍帯血型材料等)の同等物である、初期ヒト細胞を記載する。骨髄および血液中の成体幹細胞は「血液関連組織」由来の幹細胞に対する同等物である。
特に細胞培養条件下での幹細胞の操作のためのレクチン
本発明は特に、幹細胞の状態の分析のための、および/または幹細胞の操作のための、特異的結合タンパク質としてのレクチンの使用に関する。
本発明は特に、レクチンの存在下で幹細胞を増殖させる細胞培養条件下での幹細胞の操作に関する。操作は好ましくは細胞培養槽の表面上の固定化されたレクチンにより行われる。本発明は特に、表24に示すようなレクチンの存在下で細胞を増殖させることによる幹細胞の増殖速度の操作に関する。
本発明は、好ましい一態様において、細胞表面からの本発明の特異的グリカンマーカー構造を認識する特異的レクチンによる、幹細胞の操作に関する。本発明は、好ましい一態様における、ECAレクチン等のGal認識レクチン;または細胞表面から同定されるガレクチンリガンドグリカンの識別のためのガレクチン等の類似のヒトレクチン;の使用に関する。さらに、幹細胞中のゲノムレベルでのガレクチン発現の特異的変異が、特にガレクチン−1、−3および−8について、存在すると考えられた。本発明は特に、胚性幹細胞の、ならびに骨髄および血液中の成体幹細胞およびその分化派生物に対する、増殖速度の操作のための、これらレクチンの試験の方法に関する。
特異的レクチンによる幹細胞の選別
本発明は、特にFACS法による、幹細胞の選別のための、本発明の細胞表面グリカンエピトープを認識する特異的レクチン型の使用を明らかにした。最も好ましい選別される細胞型として血液および骨髄中の成体幹細胞、特に臍帯血細胞などが挙げられる。臍帯血細胞の選別のための好ましいレクチンとしては、GNA、STA、GS−II、PWA、HHA、PSA、RCAおよび実施例12に示される他のものなどが挙げられる。特定の幹細胞集団の単離のためのレクチンの妥当性は、実施例12に示すように公知の幹細胞マーカーを用いた二重標識により示された。
幹細胞のO−グリカングライコームの好ましい構造
本発明は特に、幹細胞の次のO−グリカンマーカー構造に関する:
マーカー組成NeuAcHexHexNAcに従うコア1型O−グリカン構造、好ましくは構造SAα3Galβ3GaINAcおよび/またはSAα3Galβ3(Saα6)GalNAcを含む;
ならびに、マーカー組成NeuAc0−2HexHexNAcdHex0−1に従うコア2型O−グリカン構造、より優先的にはさらにグリカン系列NeuAc0−2Hex2+nHexNAc2+ndHex0−1[式中、nは1、2または3であり、より優先的にはnは1または2であり、さらに優先的にはnは1である]を含む;
より具体的に好ましくはRGalβ4(R)GlcNAcβ6(RGalβ3)GalNAc
[式中、RおよびRは独立に無またはシアル酸残基、好ましくはα2,3−結合シアル酸残基、またはHexHexNAcによる伸長であって、ここでnは独立に少なくとも1、好ましくは1〜3、最も好ましくは1〜2、最も好ましくは1、の整数であり、前記伸長はシアル酸残基、好ましくはα2,3−結合シアル酸残基で終結してよく;そして
は独立に無またはフコース残基、好ましくはα1,3−結合フコース残基である]を含む。
これらの構造はコア2構造を合成するβ6GlcNAc転移酵素の発現と相関していると考えられる。
好ましい分岐N−アセチルラクトサミン型スフィンゴ糖脂質
本発明はさらに、分岐した、I型の、2個の末端Galβ4残基を有するポリ−N−アセチルラクトサミンを、ヒト幹細胞の糖脂質から明らかにした。この構造は、ポリ−N−アセチルラクトサミンを分岐させることができるβ6GlcNAc転移酵素の発現と、またさらに分岐ポリ−N−アセチルラクトサミンに特異的なレクチンの結合と、相関している。さらに、PWAレクチンは幹細胞の操作、特にその増殖速度における作用を有していることが注目された。
幹細胞の好ましい定性的および定量的完全N−グライコーム
幹細胞選別および単離のための好ましい結合剤
実施例に記載されるように、本願発明者らは、特にマンノース特異的および特にα1,3−結合マンノース結合レクチンGNAがCB MNCからのCD34+幹細胞のネガティブセレクション濃縮のために適していたことを見出した。さらに、ポリ−LacNAc特異的レクチンSTA、ならびにフコース特異的および特にα1,2−結合フコース特異的レクチンUEAがCB MNCからのCD34+幹細胞のポジティブセレクション濃縮のために適していた。
本発明は特に、幹細胞結合試薬、優先的にはタンパク質、優先的にはマンノース結合またはα1,3結合マンノース結合、ポリ−LacNAc結合、LacNAc結合、および/またはフコースもしくは優先的にはα1,2−結合フコース結合のもの;好ましい一態様においては幹細胞結合もしくは非結合のレクチン、より優先的にはGNA、STA、および/またはUEA;ならびに、さらに好ましい一態様においてはそれらの組み合わせ;に関するものであり、また、選択的に幹細胞に結合するまたは結合しないグリカン結合試薬を利用した本発明に記載される使用に関するものである。
幹細胞型特異的ガレクチンおよび/またはガレクチンリガンドのための好ましい使用
実施例に記載されるように、本願発明者らは、異なる幹細胞が異なったガレクチン発現プロファイル、および異なったガレクチン(グリカン)リガンド発現プロファイルを有していることも見出した。本発明はさらに、ガラクトース結合試薬、優先的にはガラクトース結合レクチン、より優先的には特異的ガレクチンを;幹細胞型特異的様式で、記載の前記使用に対して本発明に記載される特定の幹細胞を調節するために、またはそれに結合するために、使用することに関する。さらに好ましい一態様において、本発明は、ガレクチンリガンド構造、その誘導体、またはリガンド模倣試薬を、幹細胞型特異的様式で、本発明に記載される使用に対して使用することに関する。
実施例
実施例1
臍帯血由来および骨髄由来間葉系幹細胞株のMALDI−TOF質量分析によるN−グリカンプロファイリング、グリコシダーゼおよびレクチンプロファイリング
細胞試料生成の例
臍帯血由来間葉系幹細胞株
臍帯血の採取
ヒト出産臍帯血(UCB)ユニットを母親のインフォームドコンセントを得て出産後に採取し、該UCBを採取後24時間以内に処理した。該UCBをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1:1で希釈し、Ficoll−Paque Plus(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)密度勾配遠心(400g/40分間)を行って、単核球(MNC)を各UCBユニットから単離した。単核球フラグメントをグラジエントから回収し、PBSで2回洗浄した。
臍帯血細胞の単離および培養
CD45/グリコホリンA(GlyA)陰性細胞選択を、免疫標識磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて行った。MNCをCD45およびGlyA磁性マイクロビーズの両者と同時に30分間インキュベートし、LDカラムを用いて製品の使用説明書に従って(Miltenyi Biotec)ネガティブに選択した。CD45/GlyA陰性溶出画分および陽性画分の両者を回収し、培地中に懸濁して計数した。CD45/GlyA陽性細胞はフィブロネクチン(FN)被覆6ウェルプレート上に1x10/cmの密度でプレーティングした。CD45/GlyA陰性細胞はFN被覆96ウェルプレート(Nunc)上に約1x10細胞/ウェルでプレーティングした。翌日培地を交換したため、非接着細胞のほとんどが除去された。残った非接着細胞はそれに続く週2回の培地交換で除去した。
細胞は最初に56%DMEM低グルコース(DMEM−LG、Gibco、http://www.invitrogen.com)40% MCDB−201(Sigma−Aldrich)2%ウシ胎児血清(FCS)、1xペニシリン−ストレプトマイシン(両型ともGibco)、1xITS液体培地サプリメント(インシュリン−トランスフェリン−セレン)、1xリノール酸−BSA、5x10−8M デキサメタゾン、0.1mM L−アスコルビン酸−2−リン酸(3者とも全てSigma−Aldrich)、10nM PDGF(R&D systems、http://www.RnDSystems.com)および10nM EGF(Sigma−Aldrich)からなる培地中で培養した。後の継代(継代7の後)において、細胞はFCS濃度を10%に増やした以外は同一の増殖培地中でも培養した。
プレートをコロニーに対してスクリーニングし、コロニー中の細胞が80−90%コンフルエントである場合に細胞を継代培養した。最初の継代において、細胞数がまだ少ない場合は、細胞を最小量のトリプシン/EDTA(0.25%/1mM、Gibco)を用いて室温で剥がし、トリプシンをFCSで抑制した。細胞を無血清培地で洗い、血清濃度を2%に調整した通常の培地中に懸濁した。細胞を約2000〜3000/cmでプレーティングした。後の継代において、細胞をトリプシン/EDTAを用いて、特定の領域で、特定の時点で剥がし、血球計数器を用いてカウントし、2000〜3000細胞/cmの密度で再プレーティングした。
骨髄由来間葉系幹細胞株
骨髄由来幹細胞の単離および培養
骨髄(BM)由来MSCを、Leskela et al.(2003)による記載のように得た。簡単に述べると、整形外科手術中に得られた骨髄を、20mM HEPES、10% FCS、1xペニシリン−ストレプトマイシンおよび2mM L−グルタミン(全てGibcoから)を添加した最小必須アルファ培地(α−MEM)中で培養した。2日間の細胞接着期の後、細胞をCa2+およびMg2+不含PBS(Gibco)で洗浄し、さらに同一培地中に2000〜3000細胞/cm2の密度でプレーティングし、週2回、半分の培地を除去し、新鮮な培地に置き換えることにより、ほぼコンフルエントになるまで継代培養した。
実験手順
間葉系幹細胞表現型のフローサイトメトリー分析
UBCおよびBMの両者に由来する間葉系幹細胞をフローサイトメトリー(FACSCalibur, Becton Dickinson)によって表現型分析した。CD13、CD14、CD29、CD34、CD44、CD45、CD49e、CD73およびHLA−ABC(全てBD Biosciences、San Jose, CA, http://www.bdbiosciences.comから)、CD105(Abcam Ltd., Cambridge, UK, http://www.abcam.com)ならびにCD133(Miltenyi Biotec)に対するフルオレセインイソチシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)結合抗体を用いて直接標識を行った。適当なFITCおよびPE結合アイソタイプコントロール(BD Biosciences)を用いた。CD90およびHLA−DR(両者ともBD Biosciencesから)に対する非結合抗体を用いて間接標識を行った。間接標識のため、FITC結合ヤギ抗マウスIgG抗体(Sigma−aldrich)を二次抗体として用いた。
UBC由来細胞は造血マーカーCD34、CD45、CD14およびCD133に対して陰性であった。該細胞はCD13(アミノペプチダーゼN)、CD29(β1−インテグリン)、CD44(ヒアルロン酸受容体)、CD73(SH3)、CD90(Thy1)、CD105(SH2/エンドグリン)およびCD49eに対して陽性に染色された。細胞はHLA−ABCに対しても陽性に染色されたが、HLA−DRに対しては陰性であった。BM由来細胞は類似の表現型を有することが示された。これらはCD14、CD34、CD45およびHLA−DRに対して陰性であり、CD13、CD29、CD44、CD90、CD105およびHLA−ABCに対して陽性であった。
脂質生成の相違
UCB由来MSCの脂質生成能力を評価するために、細胞を3x10/cmの密度で24ウェルプレート(Nunc)中に3ウェルずつの重複で播種した。UCB由来MSCを、試料がグライコーム分析のために調製される前に、5週間、DMEM低グルコース、2% FCS(両者ともGibcoから)、10μg/ml インシュリン、0.1mM インドメタシン、0.1μM デキサメタゾン(Sigma−Aldrich)およびペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco)からなる脂質生成誘導培地中で培養した。培地は週に2回、分化培養中に交換した。
骨原性分化
BM由来MSCの骨原性分化を誘導するため、細胞をそれらの通常の増殖培地に3x10/cmの密度で24ウェルプレート(Nunc)上に播種した。翌日、培地を、10% FBS(Gibco)、0.1μM デキサメタゾン、10mM β−グリセロリン酸、0.05mM L−アスコルビン酸−2−リン酸(Sigma−Aldrich)およびペニシリンーストレプトマイシン(Gibco)を添加したα−MEM(Gibco)からなる骨原性誘導培地に交換した。BM由来MSCを、グライコーム分析のための試料を調製する前に、3週間、週2回の培地交換を行いながら培養した。
グライコーム分析のための細胞収穫
1mlの細胞培養液をグライコーム分析のために確保し、残りの培地を吸引により除去した。細胞培養プレートをPBS緩衝液pH7.2で洗浄した。PBSを吸引し、細胞を掻き取り、5mlのPBSで回収した(2回反復した)。この時点で少量の細胞画分(10μl)を細胞計数のために採取し、残りの試料を5分間400gで遠心分離した。上清を吸引し、ペレットをPBS中でさらに2回洗浄した。
細胞を1.5mlのPBSで回収し、50mlチューブから1.5ml回収チューブ内に移し、7分間5400rpmで遠心分離した。上清を吸引し、もう1回洗浄を繰り返した。細胞ペレットを−70℃で貯蔵し、グライコーム分析のために用いた。
レクチン染色
FITC標識したMaackia amurensis凝集素(MAA)をEY Laboratories(USA)より購入し、FITC標識したSambucus nigra凝集素(SNA)をVector Laboratories(UK)より購入した。骨随由来間葉系幹細胞株を上記のように培養した。培養後、細胞を5回PBS(10mM リン酸ナトリウム、pH7.2、140mM NaCl)で洗浄し、4% PBS緩衝パラホルムアルデヒドpH7.2で室温(RT)において10分間固定した。固定後、細胞を3回PBSで洗浄し、非特異的結合部位を3% HSA−PBS(FRC Blood Service、Finland)または3% BSA−PBS(純度>99%のBSA、Sigma)で30分間、RTでブロックした。レクチンインキュベーションの前に、製品の使用説明書記載の方法により、細胞をPBS、TBS(20mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl、10mM CaCl)またはHEPES緩衝液(10mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl)で2回洗浄した。FITC標識したレクチンをバッファー中の1% HSAまたは1% BSA中で希釈し、細胞とともに60分間、RTで暗所においてインキュベートした。さらに、細胞を3回、10分間、PBS/TBS/HEPESで洗浄し、DAPI染色剤を含有するVectashield封入剤(Vector Laboratories、UK)中に封入した。レクチン染色を、Zeiss Axioskop 2 plus蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Vision GmbH、ドイツ)を用いて、FITCおよびDAPIフィルターとともに観察した。像をZeiss AxioCam MRcカメラを用いて、AxioVision Software 3.1/4.0(Carl Zeiss)を使用し、400Xの倍率で撮影した。
結果
間葉系幹細胞集団からのグリカンの単離
本結果は2つの臍帯血由来間葉系幹細胞株および脂質生成方向に分化するように誘導された細胞、ならびに2つの骨髄由来間葉系幹細胞株および骨原性方向に分化するように誘導された細胞から生成される。細胞株およびそれらに由来する分化した細胞の分析は上記の通りである。N−グリカンを試料から単離し、グリカンプロファイルを、先の例に記載されるように単離された中性およびシアル化N−グリカン画分のMALDI−TOFF質量分析データから生成した。
臍帯血由来間葉系幹細胞(CB MSC)株
中性N−グリカンの構造的特徴
2つのCB MSC株に対して提案された中性N−グリカンのグルーピングは互いによく類似しており、それらの中性N−グリカンの構造的特徴に大きな相違は無いことを示している。しかし、CB MSCはCB単核球集団と異なり、それらはプロファイルにおいて、例えば他の構造群と比較して比較的多量の中性複合型N−グリカンおよびハイブリッド型または単分岐中性N−グリカンを有している。
可溶性グリカン成分の同定
CB単核球集団と同様に、本分析において、グリカン群Hex2−12HexNAcからの成分を含む提案された単糖組成に基づいて可溶性グリカンと同定された中性グリカン成分が全ての細胞型において同定された(図参照)。これらのグリカン成分の存在量は、互いに対して、また他のグリカンシグナルに対して、個々の試料および細胞型間で異なる。
シアル化N−グリカンプロファイル
2つのCB MSC株から得られたシアル化N−グリカンプロファイルは、そのシアル化N−グリカンプロファイル全体に関して互いによく類似している。しかし、プロファイル間で小さな相違が観察され、一部のグリカンシグナルは1つの細胞株においてのみ観察することができ、この2つの細胞株が違いに異なるグリカン構造を有することを示している。分析は、各細胞型において、酸性N−グリカン成分に割り当てられる約50〜70個のグリカンシグナルの相対的な割合を明らかにした。典型的には、グリカンプロファイルにおける細胞集団間の有意な相違は複数の実験を通じて一貫性がある。
グリカンプロファイルの分化と関連した変化
CB MSCの中性N−グリカンプロファイルは脂質生成細胞培養液中での分化の際に変化する。本結果は、いくつかの個々のグリカンシグナルおよびグリカンシグナル群の相対存在量が分化培地内での細胞培養により変化することを示す。分化と関連したグリカン構造群の主要な変化は中性複合型N−グリカン、例えばHexHexNAcおよびHexHexNAcdHex単糖組成にそれぞれ対応するm/z 1663およびm/z 1809におけるシグナルの量の増加などである。変化はシアル化グリカンプロファイルでも観察された。
中性N−グリカンのグリコシダーゼ分析
特異的エキソグリコシダーゼ消化を、実施例に記載のように、CB MSC株から単離した中性N−グリカン画分に対して行った。α−マンノシダーゼ分析の結果は、CB MSC株の中性N−グリカンプロファイルにおけるどのN−グリカンシグナルがαマンノシダーゼ消化に感受性であるかを詳細に示し、非還元末端α−マンノース残基の、対応するグリカン構造における存在を示す。例えば、提案された単糖組成Hex5−9HexNAcによって予備的に高マンノース型N−グリカンに割り当てられたm/z 1257、1419、1581、1743、および1905の主要な中性N−グリカンシグナルは、末端α−マンノース残基を含んでいることが示され、従って前記の予備的な割当てが確認された。結果は、対応するグリカン構造における非還元末端β1,4−ガラクトース残基の存在を示す。例えば、m/z 1663およびm/z 1809における主要な中性複合型N−グリカンシグナルは末端β1,4−結合ガラクトース残基を含むことが示された。
骨髄由来間葉系幹細胞(BM MSC)株
中性N−グリカンプロファイル、およびグリカンプロファイルにおける分化と関連した変化
増殖培地中および骨原性培地中で増殖させたBM MSC株から得られた中性N−グリカンプロファイルは、その中性N−グリカンプロファイル全体がCB MSC株と類似している。しかし、2つの供給源に由来する細胞株間の相違が観察され、一部のグリカンシグナルは1つの細胞株においてのみ観察することができ、これらの細胞株が違いに異なるグリカン構造を有することを示している。BM MSCの主要な特徴的構造特性は、CB MSC株と比べてさらに豊富な中性複合型N−グリカンである。CB MSCと同様、これらのグリカンもBM MSCの分化の際の主要な増加したグリカンシグナル群であった。分析は、各細胞型において、非シアル化N−グリカン成分に割り当てられる約50〜70個のグリカンシグナルの相対的な割合を明らかにした。典型的には、グリカンプロファイルの細胞集団間の有意な相違は複数の実験を通じて一貫性がある。
シアル化N−グリカンプロファイル
増殖培地中および骨原性培地中で増殖させたBM MSC株から得られたシアル化N−グリカンプロファイル。未分化のおよび分化した細胞はそのシアル化N−グリカンプロファイル全体が互いによく類似している。しかし、プロファイル間の小さな相違が観察され、一部のグリカンシグナルは1つの細胞株においてのみ観察することができ、2つの細胞型が違いに異なるグリカン構造を有することを示している。分析は、各細胞型において、酸性N−グリカン成分に割り当てられた約50個のグリカンシグナルの相対的な割合を明らかにした。典型的には、グリカンプロファイルの細胞集団間の有意な相違は複数の実験を通して一貫性がある。
シアリダーゼ分析
BM MSCから単離されたシアル化N−グリカン画分を先の実施例に記載のように広範なシアリダーゼで消化した。反応後、MALDI−TOF質量分析により、シアル化N−グリカンの大部分が脱シアル化され、対応する中性N−グリカンに変換されたことが観察され、それらが、提案された単糖組成により示唆されるように、シアル酸残基(NeuAcおよび/またはNeuGc)を有していたことが示された。増殖培地中および骨原性培地中で増殖させたBM MSCの中性および脱シアル化(元シアル化)N−グリカン画分の組み合わせのグリカンプロファイルは、(脱シアル化型の)細胞試料から単離された全N−グリカンプロファイルに対応する。未分化BM MSC(骨原性培地中で増殖)においては、およそ53%のN−グリカンシグナルが高マンノース型N−グリカン単糖組成、8%が低マンノース型N−グリカン、31%が複合型N−グリカン、および7%がハイブリッド型または単分岐N−グリカン単糖組成に対応すると算出される。分化したBM MSC(骨原性培地中で増殖)においては、およそ28%のN−グリカンシグナルが高マンノース型N−グリカン単糖組成、9%が低マンノース型N−グリカン、50%が複合型N−グリカン、および11%がハイブリッド型または単分岐N−グリカン単糖組成に対応すると算出される。
間葉系幹細胞のレクチン結合分析
実験手順の下で記載されるように、骨髄由来間葉系幹細胞を、それらの表面上のα2,3−結合シアル酸特異的(MAA)およびα2,6−結合シアル酸特異的(SNA)レクチンのリガンドの存在に関して分析した。MAAは強く細胞と結合したのに対し、SNAは弱く結合したことが明らかになり、細胞培養条件において細胞が、α2,6−結合シアル酸よりも有意に多いα2,3−結合シアル酸をその表面複合糖質上に有していたことが示された。本結果はレクチン染色を異なる細胞型の識別のためのさらなる手段として用いることができ、それが質量分析プロファイリングの結果を補完することを示唆する。
細胞培養試薬からの潜在的グリカン混入の検出
MSC株のシアル化N−グリカンプロファイルにおいて、異常なシアル酸残基による間葉系幹細胞複合糖質の汚染を示す特異的N−グリカンシグナルが観察された。まず、細胞を、ウマ血清のウシ等の添加動物血清とともに細胞培地中で培養した際、N−グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)による潜在的混入が検出された。NeuGcHexHexNAcの[M−H]イオンに対応するm/z 1946、ならびにNeuGcNeuAcHexHexNAcおよびNeuGcHexHexNAcの[M−H]イオンにそれぞれ対応するm/z 2237およびm/z 2253におけるグリカンシグナルは、Neu5Gc、すなわちN−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)よりも16Da大きい質量を有するシアル酸残基の存在を示した。さらに、細胞がウマ血清を添加した細胞培養液中で培養された際、O−アセチル化シアル酸による潜在的な混入が検出された。O−アセチル化シアル酸含有シアル化N−グリカンの検出のために用いられた特徴的シグナルには、算出されたm/z 1972.7、2263.8および2305.8における、それぞれ、AcNeuAcHexHexNAc、AcNeuAcHexHexNAc、およびAcNeuAcHeXHeXNAcの[M−H]イオンが含まれた。
結論
グリカンプロファイリング法の使用
本結果は、本グリカンプロファイリング法がCB MSC株およびBM MSC株を互いに、また臍帯血単核球集団等の他の細胞型から、識別するのに用いることができることを示している。分化に誘導された変化、および細胞培養液等からの潜在的グリカン混入もグリカンプロファイルにおいて検出することができ、細胞状態の変化が本方法により検出され得ることを示している。本方法は、以下で議論されるものを含むMSC特異的グリコシル化特性の検出にも用いることができる。
培養細胞および天然ヒト細胞間におけるグリコシル化の相違
本結果は、BM MSC株が、臍帯血から単離された単核球よりも、他のNーグリカン構造群と比較して多くの高マンノース型N−グリカンおよび少ない低マンノース型N−グリカンを有することを示す。以下の実施例で培養ヒト胚幹細胞から得られた結果と併せて考えると、これは、天然の単離された幹細胞との比較における、培養された幹細胞の一般的傾向であることが示唆される。しかし、BM MSCの骨原性培地中での分化は有意な複合型N−グリカンの量の増加および高マンノース型N−グリカンの量の減少をもたらす。
間葉系幹細胞株特異的なグリコシル化特性
本結果は、間葉系幹細胞株がそのグリコシル化の特異的特性:
1)CB MSC株およびBM MSC株の両者が固有の中性およびシアル化N−グリカンプロファイルを有する;
2)CBおよびBM MSC株の主要な特徴的構造特性は豊富な中性複合型N−グリカンである;
3)さらなる特徴的な特性は複合型N−グリカンの低シアル化水準である;
等に関して、本研究で研究された他の細胞型と異なることを示唆する。
実施例2
ヒト胚幹細胞株のMALDI−TOF質量分析によるN−グリカンプロファイリング
細胞材料生成の例
ヒト胚幹細胞株(hESC)
未分化hESC
胚盤胞期の体外受精過剰ヒト胚からのhESC株の生成の方法は先に記載されている(例えばThomson et al.,1998)。本研究における分析された細胞株のうち2つは、最初に得られ、マウス胚線維芽細胞フィーダー(MEF;ICR系の交尾後12〜13の胎児)上で、2つはヒト包皮線維芽フィーダー細胞(HFF;CRL−2429 ATCC,Mananas,USA)上で培養された。本研究のため、全ての株をマイトマイシン−C(1μg/ml;Sigma−Aldrich)で処理したHFFフィーダー細胞に移し、2mM L−グルタミン/ペニシリンストレプトマイシン(Sigma−Aldrich)、20% Knockout Serum Replacement(Gibco)、1 X 非必須アミノ酸(Gibco)、0.1mM β−メルカプトエタノール(Gibco)、1 X ITSF(Sigma−Aldrich)および4ng/ml bFGF(Sigma/Invitrogen)を添加した無血清培地(Knockout(商標) D−MEM; Gibco(登録商標) Cell culture systems, Invitrogen, Paisley, UK)中で培養した。
ステージ2の分化したhESC(胚様体)
胚様体(EB)の形成を誘導するため、hESCのコロニーを最初に10〜14日間増殖させ、その後該コロニーを小片に切断し、非接着性シャーレ上に移して浮遊培養を形成した。形成されたEBを次の10日間、bFGFを含まない標準培地(上記参照)中で浮遊培養した。
ステージ3の分化したhESC
さらなる分化のため、EBを、ITS、フィブロネクチン(Sigma)、L−グルタミンおよび抗生物質を添加したDMEM/F12混合物(Gibco)からなる培地中の、ゼラチン被覆(Sigma−Aldrich)接着性培養皿上に移した。接着した細胞を10日間培養し、その後それらを回収した。
試料調製
細胞を機械的に回収し、洗浄し、グリカン分析の前に凍結保存した。
結果
中性N−グリカンプロファイル − 分化状態の影響
ヒト胚幹細胞(hESC)株、その胚様体(EB)分化型、およびそのステージ3(st.3)分化型から得られた中性N−グリカンプロファイル。細胞型は主要な中性N−グリカンシグナルに関しては互いに類似するが、2つの分化した細胞型の中性N−グリカンプロファイルは未分化hESCのプロファイルとは有意に異なる。実際、細胞型の分化が進むほど、その中性N−グリカンプロファイルは未分化hESCのプロファイルとより大きく異なってくる。プロファイル間の多数の相違が観察され、多くのグリカンシグナルは3つの細胞型のうち1つまたは2つにおいてのみ観察することができ、分化が新たなグリカン型の出現を誘導することが示唆される。分析は、各細胞型において、非シアル化N−グリカン成分に割り当てられた約40〜55個のグリカンシグナルの相対的割合を明らかにした。典型的には、グリカンプロファイルにおける細胞集団間の有意な相違は複数の実験を通して一貫している。
中性N−グリカンプロファイル − hESC株の比較
4つのhESC株から得られた中性N−グリカンプロファイルは互いによく似ている。個々のプロファイルの特徴および細胞株特異的グリカンシグナルはグリカンプロファイル中に存在するが、hESC株はそれらの中性N−グリカンプロファイルに関して互いにより類似しており、分化したEBおよびst.3細胞型とは異なっていると結論される。hESC株3および4は兄弟胚(sigling embryo)由来であり、それらの中性N−グリカンプロファイルは互いにより類似しており、2つの他の細胞株とは異なっていた:すなわち、それらは共通のグリカンシグナルを有していた。分析は、各細胞型において、非シアル化N−グリカン成分に割り当てられた約40〜55個のグリカンシグナルの相対的割合を明らかにした。典型的には、グリカンプロファイルにおける細胞集団間の有意な相違は複数の実験を通して一貫している。
中性N−グリカンの構造的特徴
分析された細胞型に対して提案された中性N−グリカンの分類を表6に示す。ここでも、分析された3つの主要な細胞型、すなわち未分化hESC、分化細胞、およびヒト線維芽細胞フィーダー細胞は、互いに有意に異なる。各細胞型内では、しかし、個々の細胞株間で小さな相違が存在する。さらに、分化と関連した中性N−グリカンの構造的特徴はst.3の分化した細胞において、EB細胞におけるよりも強く発現している。細胞型特異的グリコシル化特性を、以下、結論において考察する。
中性N−グリカン画分のグリコシダーゼ分析
特異的エキソグリコシダーゼ消化を、先の実施例に記載されるhESC株から単離された中性N−グリカン画分に対して行った。α−マンノシダーゼ分析においては、いくつかの中性グリカンシグナルがα−マンノシダーゼ消化に対して感受性が高いことが示され、対応するグリカン構造における非還元末端α−マンノース残基の潜在的な存在が示唆された。hESCおよびEB細胞においては、これらのシグナルはm/z 917、1079、1095、1241、1257、1378、1393、1403、1444、1555、1540、1565、1581、1606、1622、1688、1743、1768、1905、1996、2041、2067、2158、および2320を含んでいた。β1,4−ガラクトシダーゼ分析においては、いくつかの中性グリカンシグナルがβ1,4−ガラクトシダーゼ消化に対して感受性が高いことが示され、対応するグリカン構造における非還元末端β1,4−ガラクトース残基の潜在的な存在が示唆された。hESCおよびEB細胞においては、これらのシグナルはm/z 609、771、892、917、1241、1378、1393、1555、1565、1606、1622、1647、1663、1704、1809、1850、1866、1955、1971、1996、2012、2028、2041、2142、2174、および2320を含んでいた。α1,3/4−フコシダーゼ分析においては、いくつかの中性グリカンシグナルがα1,3/4−フコシダーゼ消化に対して感受性が高いことが示され、対応するグリカン構造における非還元末端α1,3−および/またはα1,4−フコース残基の潜在的な存在が示唆された。hESCおよびEB細胞においては、これらのシグナルはm/z 1120、1590、1784、1793、1955、1996、2101、2117、2142、2158、2190、2215、2247、2263、2304、2320、2393、および2466を含んでいた。
可溶性グリカン成分の同定
先の実施例に記載された細胞型と同様に、本分析において、中性グリカン成分であって、グリカン群Hex2−12HexNAcからの成分を含むそれらの提案された単糖組成に基づき可溶性グリカンに割り当てられたものが、全ての細胞型において同定された(図参照)。これらのグリカン成分の互いに対する、および他のグリカンシグナルに対する、存在量は、個々の試料および細胞型間で異なる。
シアル化N−グリカンプロファイル − 分化状態の影響
ヒト胚幹細胞(hESC)株、その胚様体(EB)分化型、およびそのステージ3(st.3)分化型から得られたシアル化N−グリカンプロファイル。細胞型は主要なシアル化N−グリカンシグナルに関しては互いに類似するが、2つの分化した細胞型のシアル化N−グリカンプロファイルは未分化hESCのプロファイルとは有意に異なる。実際、細胞型の分化が進むほど、そのシアル化N−グリカンプロファイルは未分化hESCのプロファイルとより大きく異なってくる。プロファイル間の多数の相違が観察され、多くのグリカンシグナルは3つの細胞型のうち1つまたは2つにおいてのみ観察することができ、分化が新たなグリカン型の出現および幹細胞特異的グリカン型の量の減少を誘導することが示唆される。例えば、m/z 1946および2222における、それぞれ単糖組成NeuGcHexHexNAcおよびNeuAcHexHexNAcdHexに対応するグリカンシグナルの相対量の、分化と関連した有意な減少が存在する。分析は、各細胞型において、酸性N−グリカン成分に割り当てられた約50〜70個のグリカンシグナルの相対的割合を明らかにした。典型的には、グリカンプロファイルにおける細胞集団間の有意な相違は複数の実験を通して一貫している。
シアル化N−グリカンプロファイル − hESC株の比較
4つのhESC株から得られたシアル化N−グリカンプロファイルは互いによく似ている。個々のプロファイルの特徴および細胞株特異的グリカンシグナルはグリカンプロファイル中に存在するが、hESC株はそれらのシアル化N−グリカンプロファイルに関して互いにより類似しており、分化したEBおよびst.3細胞型とは異なっていると結論される。分析は、各細胞型において、酸性N−グリカン成分に割り当てられた約50〜70個のグリカンシグナルの相対的割合を明らかにした。典型的には、グリカンプロファイルにおける細胞集団間の有意な相違は複数の実験を通して一貫している。
ヒト線維芽細胞フィーダー細胞株
ヒト線維芽細胞フィーダー細胞株から得られたシアル化N−グリカンプロファイルはhESC、EB、およびst.3分化細胞とは異なっており、hESC細胞と別々におよび一緒に増殖させたそのフィーダー細胞は互いに異なっている。
シアル化N−グリカンの構造的特徴
分析された細胞型に対して提案されたシアル化N−グリカンの分類を表7に示す。ここでも、分析された3つの主要な細胞型、すなわち未分化hESC、分化細胞、およびヒト線維芽細胞フィーダー細胞は、互いに有意に異なる。各細胞型内では、しかし、個々の細胞株間で小さな相違が存在する。さらに、分化と関連したシアル化N−グリカンの構造的特徴はst.3の分化した細胞において、EB細胞におけるよりも強く発現している。細胞型特異的グリコシル化特性を、以下、結論において考察する。
結論
グリカンプロファイルの比較
細胞型間のグリカンプロファイルの相違は複数の試料および実験を通じて一貫しており、グリカンプロファイリングの本方法、および本グリカンプロファイルにおける相違を、hESCもしくはそこから分化した細胞またはフィーダー細胞等の他の細胞を同定するために、またはそれらの純度を測定するために、または試料中に存在する細胞型を同定するために、用いることができると示唆された。本方法および本結果は、細胞型特異的グリカンの構造的特徴または細胞型特異的グリカンプロファイルを同定するために用いることもできる。該方法は、hESC、EB、およびst.3分化細胞間での分析結果の比較により示されたように、特に分化段階の決定において有用であることが分かった。さらに、hESCは固有のグリコシル化プロファイルを有することが示され、これは分化した細胞型から、およびMSC等の他の幹細胞型から、識別することが可能であり、幹細胞一般および特定の幹細胞型も本方法により同定することができることが示唆された。本方法は、兄弟胚由来のhESC株に共通のグリカン構造も検出することができ、本方法によって、異なる細胞株において関連する構造的特徴を同定し得ること、またはそれらの類似性を評価し得ることが示唆された。
中性N−グリカンの構造的特徴の比較
分析された細胞型間のグリコシル化プロファイルの相違を、提案された構造的特徴に基づき同定し、これを細胞型特異的グリカンの構造的特徴の同定のために用いることができる。同定された中性N−グリカンプロファイルの細胞型特異的特徴は以下のように結論される。
HESC株:
1)増加した量のフコシル化中性N−グリカン、特に鎖あたり2つ以上ののデオキシヘキソース残基を有するグリカン。α1,2−、α1,3−、またはα1,4−結合フコース残基を有する中性N−グリカンの増加した発現を表す;そして
2)増加した量の、より大型の中性N−グリカン。
EBおよびst.3分化細胞(st.3細胞は特徴をより強く発現する):
1)より少ない量の、鎖あたり2つ以上のデオキシヘキソース残基を有する中性N−グリカン。α1,2−、α1,3−、またはα1,4−結合フコース残基を有する中性N−グリカンの減少した発現を表す;
2)増加した量のハイブリッド型、単分岐、および複合型中性N−グリカン。
3)増加した量の末端HexNAc残基;そして
4)潜在的に増加した量の二分岐GlcNAc構造。
ヒト線維芽細胞フィーダー細胞
1)増加した量の、より大型の中性N−グリカン;
2)より少ない量の、鎖あたり2つ以上のデオキシヘキソース残基を有する中性N−グリカン。α1,2−、α1,3−、またはα1,4−結合フコース残基を有する中性N−グリカンの減少した発現を表す;
3)増加した量の末端HexNAc残基;そして
4)潜在的に二分岐GlcNAc構造を有しない。
シアル化N−グリカンの構造的特徴の比較
分析された細胞型間のグリコシル化プロファイルの相違を提案された構造的特徴に基づき同定し、これを細胞型特異的グリカンの構造的特徴を同定するために用いることができる。シアル化N−グリカンプロファイルの同定された細胞型特異的な特徴は以下のように結論された。
HESC株:
1)増加した量のフコシル化シアル化N−グリカン、特に鎖あたり2つ以上ののデオキシヘキソース残基を有するグリカン。α1,2−、α1,3−、またはα1,4−結合フコース残基を有するシアル化N−グリカンの増加した発現を表す;
2)増加した量の末端HexNAc残基;そして
3)増加した量のNeu5Gc含有シアル化N−グリカン。
EBおよびst.3分化細胞(st.3細胞は特徴をより強く発現する):
1)より少ない量の、鎖あたり2つ以上のデオキシヘキソース残基を有するシアル化N−グリカン。α1,2−、α1,3−、またはα1,4−結合フコース残基を有するシアル化N−グリカンの減少した発現を表す;
2)増加した量のハイブリッド型または単分岐シアル化中性N−グリカン;そして
3)潜在的に増加した量の二分岐GlcNAc構造。
ヒト線維芽細胞フィーダー細胞:
1)増加した量の、より大型のシアル化N−グリカン;
2)より少ない量の末端HexNAc残基;そして
3)潜在的に、より少ない量の二分岐GlcNAc構造。
実施例3
ヒト胚幹細胞のレクチンおよび抗体プロファイリング
実験手順
細胞試料
ヒト胚幹細胞(hESC)株FES22およびFES30(Family Federation of Finland)を、上記のように、マウスフィーダー細胞(mEF)層上で増殖させた。
FITC標識レクチン
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識レクチンをいくつかの製造者から購入した:FITC−GNA、−HHA、−MAA、−PWA、−STAおよび−LTAはEY Laboratories (USA)から;FITC−PSAおよび−UEAならびにビオチン標識WFAはSigma(USA)から;およびFITC−RCA、−PNAおよび−SNAはVector Laboratories (UK)から。
蛍光顕微鏡標識実験を本質的に先の実施例に記載されるように行った。ビオチン標識をフルオレセイン結合ストレプトアビジンにより可視化した。
結果
表19に、試験したFITC標識レクチンおよび抗体、それらの標的単糖配列の例、ならびに、顕微鏡スライド上の増殖させた固定細胞の蛍光顕微鏡検査における、表の説明文中に記載されるようにグレード分けされたレクチン結合強度を示す。用いたレクチンの複数の結合特異性が当該分野において記載されており、一般に本実験におけるレクチンの結合は細胞がその表面上にレクチンに対する特異的リガンドを発現していることを意味するが、該レクチンによって認識される他のリガンドの存在も排除しない。GF抗体の特異性については実施例14を参照のこと。
α−結合マンノースおよびコアFuca6−エピトープ
Pisum sativum (PSA)レクチンによるmEFの多量の標識は、それらがマンノース、より具体的にはN−グリカン等のそれらの表面(または細胞内)複合糖質上のα結合マンノース残基およびコアFucα6エピトープを発現することを示唆する。結果はさらに、両者hESC株がこれらのリガンドをそれらの表面上にmEFほど高い濃度では発現しないことを示唆する。
β−結合ガラクトース
hESCの、ピーナッツレクチン(PNA)による、多量の標識、およびRicinus communisレクチンI(RCA−I)による、より弱い標識は、hESCがβ結合非還元末端ガラクトース残基をN−および/またはO−グリカン等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。より具体的には、RCA−Iの結合は、細胞が多量の非置換Galβエピトープをその表面上に有していることを示唆する。PNAの結合は、非置換Galβの存在を示唆し、mEFに対するPNAの特異的結合が無いことは、このレクチンの結合エピトープが、mEFにおいて、より少ないことを示唆する。
シアル酸
Maackia amurensis(MAA)およびSambucus nigra(SNA)レクチンの両者によるhESCの特異的標識は、細胞がシアル酸残基を、N−および/もしくはO−グリカンならびに/または糖脂質等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。より具体的には、hESCの特異的なMAAの結合は、該細胞が多量のα2,3−結合シアル酸残基を有していることを示唆する。一方、結果は、これらのエピトープがmEFにおいてはより少ないことを示唆する。両細胞型におけるSNAの結合は、細胞表面上のシアル酸残基におけるα2,6−結合の存在も示唆する。
ポリ−N−アセチルラクトサミン配列
アメリカヤマゴボウ(PWA)レクチンによる、細胞の標識、およびSolanum tuberosum(STA)レクチンによる、より弱い標識は、細胞がポリ−N−アセチルラクトサミン配列をN−および/もしくはO−グリカンならびに/または糖脂質等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。結果はさらに、細胞表面ポリ−N−アセチルラクトサミン鎖が直鎖および分岐鎖配列の両者を含んでいることを示唆する。
β−結合N−アセチルガラクトサミン
Wisteria floribundaレクチン(WFA)によるhESCの多量の標識は、hESCがβ−結合非還元末端N−アセチルガラクトサミン残基を、N−および/またはO−グリカン等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。mEFに対するWFAの特異的結合が無いことは、前記レクチンリガンドエピトープが、mEFにおいて、より少ないことを示唆する。
フコシル化
Ulex europaeus(UEA)による、細胞の標識、およびLotus tetragonolobus(LTA)レクチンによる、より弱い標識は、細胞がフコース残基をN−および/もしくはO−グリカンならびに/または糖脂質等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。より具体的には、UEAの結合は、細胞がα1,2−結合フコース残基等のα結合フコース残基を有していることを示唆する。LTAの結合は、α1,3−またはα1,4−結合フコース残基等のα−結合フコース残基の細胞表面上における存在を示唆する。
特異的抗体抗Lexおよび抗sLex抗体の結合の結果は、hESCの試料が、それぞれGalβ4(Fucα3)GlcNAcβおよびSAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ炭水化物エピトープをそれらの表面上に有することを示す。
まとめると、本実験において、レクチンPNA、MAA、およびWFA、ならびに抗体抗Lexおよび抗sLexは、特異的にhESCに結合し、しかしmEFには結合しなかった。一方、レクチンPSAは特異的にmEFに結合し、しかしhESCには結合しなかった。これは、これらの試薬が認識するグリカンエピトープがhESCまたはmEF特異的発現様式を有することを示唆する。一方、試験した試薬パネルにおける他の試薬は
前記の2つのhESC株FES22およびFES30に異なって結合し、hESC細胞表面の細胞株特異的グリコシル化が示唆された(表19)。
考察
Venable, A. et al.(2005 BMC Dev. Biol.)は、マウスフィーダー細胞上で増殖させたSSEA−4を多く含むヒト胚幹細胞(hESC)のレクチン結合プロファイルを先に記載した。用いたレクチンは、Lycopersicon esculentum(LEA、TL)、RCA、Concanavalin A(ConA)、WFA、PNA、SNA、Hippeastrum hybrid(HHA、HHL)、Vicia villosa(VVA)、UEA、Phaseolus vulgaris(PHA−LおよびPHA−E)、MAA、LTA(LTL)、およびDolichos biflorus(DBA)レクチンであった。FACSおよび細胞化学分析においては、4種のレクチンがSSEA−4と同様な結合割合を有する(LEA、RCA、ConA、およびWFA)ことが見出され、さらに2種のレクチンも高い結合割合を有していた(PNAおよびSNA)。2種のレクチンはhESCに結合しなかった(DBAおよびLTA)。6種のレクチンは部分的にhESCに結合することが見出された(PHA−E、VVA、UEA、PHA−L、MAA、およびHHA)。著者らは、前記の相違するレクチン結合特異性を、炭水化物提示に基づくhESCおよび分化したhESC型の識別に用いることができることを示唆した。
Venable et al.(2005)は、多能性SSEA−4 hESCの表面上に高発現を有すると主張されるいくつかの炭水化物構造(Venableほかによる対応するレクチンを括弧内に示す):α−Man(ConA、HHA)、Glc(ConA)、Galβ3GalNAcβ(PNA)、非還元末端Gal(RCA)、非還元末端β−GalNAc(RCA)、GalNAcβ4Gal(WFA)、GlcNAc(LEA)、およびSAα6GalNAc(SNA)について考察している。さらに、Venableほかは、ある割合の多能性SSEA−4 hESCの表面上に発現を有すると主張されるいくつかの炭水化物構造(Venableほかによる対応するレクチンを括弧内に示す):Gal(PHA−L、PHA−E、MAA)、GalNAc(VVA)およびFuc(UEA)について考察している。しかし、前記単糖特異性に基づいて標的上のオリゴ糖特異性を知ることはできない。例えば、ConAはGlcまたはMan−構造に対して特異的な任意のものに容易に割り当てられず、さらに我々のMAAはGal残基に特異性を有しないが、SAα3−構造には有する;植物種の、多数である場合が多いイソレクチン間には大きな相違が存在すると考えられ、Venableは用いた正確なレクチンを開示しなかった。正確な解釈を避ける技術的な問題は背景の節である。
本実験において、RCAの結合はhESC株FES22およびmEFの両者に観察されたが、FES30には観察されなかった。これは、hESCにおけるRCAの結合特異性が細胞株同士で異なることを示唆する。本実験は、2つのhESC株のうち1つのみで発現する他のレクチンも示し(表19)、一部のレクチンの結合において個別の変異が存在することが示唆された。
Venableほか(2005)は、その実験の中で、LTAがhESCに結合しないことに基づき、hESC表面上にはGlcNAcにα−結合した非修飾フコース残基は存在しないことを示唆する。しかし、本実験において、LTAならびに抗Lexおよび抗sLexモノクローナル抗体が、hESC株FES22に結合することが見出された。この抗体結合の結果は、FucαGlcNAcエピトープ、特にGalβ4(Fucα3)GlcNAc配列が、hESC表面上に存在することを示す。
Venableほか(2005)は、そのhESC試料において、PNAが特異的にGalβ3GalNAc構造を認識し、ここで該GalNAc残基はβ−結合していることを記載する。本実験において、PNAは、β−結合ガラクトース残基を有する炭水化物構造一般を、GalNAc残基に対するβ−結合を必要とすることなく、識別するために用いられた。
Venableほか(2005)は、そのhESC試料において、SNAが特異的にSAα6GalNAc構造を認識することを記載する。本実験において、SNAは、α2,6−結合シアル酸一般を識別するために用いられ、そのリガンドはmEF上にも見出された。
Venableほか(2005)により記載された実験における、200mM ラクトースによるMAAの結合の阻害は、彼らのMAAのシアル酸に対する非特異的結合を示唆する。本実験によると、我々のMAAはhESC表面上のα2,3−結合シアル酸残基を認識し、hESCとmEFとを区別することができる。
実施例4
ヒト間葉系幹細胞のレクチンおよび抗体プロファイリング
実験手順
細胞サンプル
骨髄由来ヒト間葉系幹細胞株(MSC)を生成し、上記のように増殖培地中で培養した。
FITC標識レクチン
フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識レクチンをいくつかの製造者から購入した:FITC−GNA、−HHA、−MAA、−PWA、−STAおよび−LTAはEY Laboratories(USA)から;FITC−PSAおよび−UEAはSigma(USA)から;およびFITC−RCA、−PNAおよび−SNAはVector Laboratories(UK)から。レクチンはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ヒト血清アルブミン(HSA;FRC Blood Service、Finland)中において5μg/10細胞に希釈して用いた。
フローサイトメトリー
レクチン結合のフローサイトメトリー分析を用いてMSCの細胞表面炭水化物発現を分析した。継代9〜11における90%コンフルエントのMSC層をPBSで洗浄し、0.25%トリプシン−1mM EDTA溶液(Gibco)により回収し、単細胞懸濁液にした。トリプシン処理は穏やかに行うようにしたが、抗体による実験と比較して、認識される構造の一部は部分的に失われるか、または減少する場合があると考えられる。剥がされた細胞を600gで5分間室温にて遠心分離した。細胞ペレットを2回1% HSA−PBSで洗浄し、600gで遠心分離し、1% HSA−PBS中に再懸濁した。細胞を、コニカルチューブ中に70000〜83000細胞ずつに小分けにして入れた。小分けした細胞をFITC標識レクチンの一つとともに20分間室温にてインキュベートした。インキュベート後、細胞を1% HSA−PBSで洗浄し、遠心分離し、1% HSA−PBS中に再懸濁した。非処理細胞を対照として用いた。レクチン結合はフローサイトメトリー(FACSCalibur, Becton Dickinson)により検出した。データ分析はWindows(登録商標) Multi Document Interface for Flow Cytometry (WinMDI 2.8)を用いて行った。2回の独立した実験を行った。
蛍光顕微鏡標識実験を先の実施例において記載されるように行った。
結果および考察
表20に、試験したFITC標識レクチン、その標的単糖配列の例、および穏やかなトリプシン処理後のFACS分析における陽性レクチン結合を示す細胞の量(%)を示す。表21に、試験したFITC標識レクチン、その標的単糖配列の例、および、顕微鏡スライド上の増殖させた固定細胞の蛍光顕微鏡検査における、表の説明文中に記載されるようにグレード分けされたレクチン結合強度を示す。用いたレクチンの結合特異性は当該分野において記載されており、一般に本実験におけるレクチンの結合は細胞がその表面上にレクチンに対する特異的リガンドを発現していることを意味する。以下に議論される特異性の一部および表中に記されるものの例は、従って事実上非排他的である。
α結合マンノース
Hippeastrum hybrid(HHA)およびPisum sativum(PSA)レクチン両者による細胞の多量の標識は、それらがマンノース、より具体的にはN−グリカン等のそれらの表面複合糖質上のα結合マンノース残基を発現することを示唆する。有り得るα−マンノース結合としては、α1→2、α1→3、およびα1→6等が挙げられる。Galanthus nivalis(GNA)レクチンの低結合は、細胞表面上の一部のα−マンノース結合が他よりも優勢であることを示唆する。
β結合ガラクトース
Ricinus communisレクチンI(RCA−I)による細胞の多量の標識およびピーナッツレクチン(PNA)によるより弱い標識は、細胞がβ結合非還元末端ガラクトース残基をN−および/またはO−グリカン等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。より具体的には、強いRCA−I結合は、細胞が多量の非置換Galβエピトープをその表面上に有していることを示唆する。RCA−Iの結合はレクチン結合前の細胞のシアリダーゼ処理により増加し、MSC上のRCA−Iのリガンドが本来部分的にシアル酸残基に被覆されていたことを示唆している。PNA結合は、コア1 O−グリカンエピトープ等の他の型の非置換Galβエピトープの細胞表面上における存在を示唆する。PNAの結合もレクチン結合前の細胞のシアリダーゼ処理により増加し、MSC上のPNAのリガンドが本来ほとんどシアル酸残基により被覆されていたことを示唆する。これらの結果は、RCA−IおよびPNAの両者を、BM MSCの細胞表面上のそれらの特異的リガンドの量を評価するために、それらの特異的エピトープのシアル化水準を評価するためのシアリダーゼ処理と併せて、または併せずに、用いることができることを示唆する。
シアル酸
Maackia amurensis(MAA)による細胞の多量の標識、およびSambucus nigra(SNA)レクチンによるより弱い標識は、細胞がシアル酸残基を、N−および/もしくはO−グリカンならびに/または糖脂質等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。より具体的には、強いMAA結合は、細胞が多量のα2,3−結合シアル酸残基をその表面上に有していることを示唆する。SNA結合は、α2,6−結合シアル酸残基が細胞表面上に存在するが、しかしα2,3−結合シアル酸よりも少量であることを示唆する。これら両者のレクチン結合活性はシアリダーゼ処理により減少する可能性があり、BM MSCにおけるレクチンの特異性がほぼシアル酸を標的としていることを示唆している。
ポリ−N−アセチルラクトサミン配列
Solanum tuberosum(STA)による細胞の標識およびアメリカヤマゴボウ(PWA)レクチンによるより弱い標識は、細胞がポリ−N−アセチルラクトサミン配列をN−および/もしくはO−グリカンならびに/または糖脂質等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。STAによる、PWAによるよりも強い標識は、細胞表面ポリ−N−アセチルラクトサミン配列のほとんどが直鎖であり、分岐または置換された鎖ではないことを示唆する。
フコシル化
Ulex europaeus(UEA)による細胞の標識およびLotus tetragonolobus(LTA)レクチンによるより弱い標識は、細胞がフコース残基をN−および/もしくはO−グリカンならびに/または糖脂質等のその表面複合糖質上に発現していることを示唆する。より具体的には、UEAの結合は、細胞がα1,2−結合フコース残基等のα結合フコース残基をその表面上に有していることを示唆する。LTAの結合は、α1,3−結合フコース残基等のα結合フコース残基が細胞表面上に存在するが、しかしUEAリガンドフコース残基よりも少量であることを示唆する。
マンノース結合レクチン標識
弱い標識強度が、フルオレセイン標識に結合したヒト血清マンノース結合レクチン(MBL)でも検出され、この先天性免疫系成分に対するリガンドがin vitro培養したBM MSC細胞表面上に発現している場合があることを示唆している。
NeuGc高分子プローブ(Lectinity Ltd., Russia)の非固定hESCへの結合は、NeuGc特異的レクチンの細胞表面上における存在を示唆する。一方、高分子NeuAcプローブは本実験において同一の強度で細胞に結合しなかった。
特異的抗体のhESCへの結合は、Lexおよびシアリル−Lewis xエピトープのその表面上における存在を示唆しており、NeuGc特異的抗体のhESCへの結合はNeuGcエピトープのその表面上における存在を示唆している。
実施例5
ヒト臍帯血細胞集団のレクチンおよび抗体プロファイリング
結果および考察
図1に、7つの個々の臍帯血単核球(CB MNC)調製物に結合するFITC標識レクチンのFACS分析の結果を示す(実験は上記の通り行った)。GNA、HHA、PSA、MAA、STA、およびUEA FITC標識されたレクチンによる強い結合が全ての試料で観察され、それらの特異的リガンド構造のCB MNC細胞表面上における存在が示唆される。中程度(mediocre)の結合(PWA)、CB試料間で異なる結合(PNA)、および弱い結合(LTA)も観察され、これらレクチンに対するリガンドはCB MNC細胞表面上において上記レクチンのように様々であるかまたはより希であることが示唆される。
実施例6
ヒト幹細胞および細胞集団の全N−グライコームの分析
実験手順
細胞およびグリカン試料を先の実施例のように調製した。
先の実施例に記載のように、A.ureafaciensシアリダーゼを用いて、単離された酸性グリカン画分を脱シアル化し、次いで脱シアル化グリカンを同一試料から単離された中性グリカンと組み合わせることにより、中性および酸性N−グリカン画分の相対的な割合を分析した。次に、組み合わせられたグリカン画分を陽イオンモードMALDI−TOFF質量分析により、先の実施例に記載されるように分析した。組み合わせられたN−グリカンのシアル化N−グリカンの割合は、組み合わせられたN−グリカン画分の中性N−グリカンの、本来の中性N−グリカン画分との比較における、相対強度のパーセント減少の算出により、式:
Figure 2010516239
[式中、IneutralおよびIcombinedは、中性および併せられたN−グリカン画分それぞれにおける、m/z 1257、1419、1581、1743および1905における5つの高マンノース型N−グリカンの[M+Na]イオンシグナルの相対強度の合計に相当する]
に従って計算された。
結果および考察
分析された幹細胞型における酸性N−グリカン画分の相対的割合は次の通りであった:ヒト胚幹細胞(hESC)においては約35%(シアル化および中性N−グリカンの割合は約1:2)、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM MSC)においては約19%(シアル化および中性N−グリカンの割合は約1:4)、骨芽細胞に分化したBM MSCにおいては約28%(シアル化および中性N−グリカンの割合は約1:3)、およびヒト臍帯血(CB)CD133+細胞においては約38%(シアル化および中性N−グリカンの割合は約2:3)。
結論として、BM MSCは、それらが中性N−グリカンと比べ有意に少ない量のシアル化N−グリカンを有するという点において、hESCおよびCB CD133+細胞とは異なる。しかし、BM MSCの骨芽細胞分化後、シアル化N−グリカンの割合は増加する。
実施例7
ヒト胚幹細胞N−グライコームの分析
実験手順
ヒト胚幹細胞株(hESC)
4つのフィンランド人hESC株、FES21、FES22、FES29、およびFES30が本研究で用いられた。該株の生成は記載されている(Skottman et al.,2005、およびM.M.,C.O.,T.T.,and T.O.,投稿中)。本研究において分析された細胞株のうち2つは、最初に得られ、マウス胚線維芽細胞フィーダー上で、および2つはヒト包皮線維芽フィーダー細胞上で培養された。質量分析法のため、全ての株をマイトマイシン−C(1μg/ml;Sigma−Aldrich, USA)で処理したHFFフィーダー細胞上に移し、2mM L−グルタミン/ペニシリンストレプトマイシン(Sigma−Aldrich)、20% Knockout Serum Replacement(Gibco)、1 X 非必須アミノ酸(Gibco)、0.1mM β−メルカプトエタノール(Gibco)、1 X ITS(Sigma−Aldrich)および4ng/ml bFGF(Sigma/Invitrogen)を添加した無血清培地(Knockout(商標) D−MEM; Gibco(登録商標) Cell culture systems, Invitrogen, UK)中で培養した。胚様体(EB)の形成を誘導するため、hESCのコロニーを最初に10〜14日間増殖させ、その後該コロニーを小片に切断し、非接着性シャーレ上に移して浮遊培養を形成した。形成されたEBを次の10日間、bFGFを含まない標準培地(上記参照)中で浮遊培養した。さらなる分化(ステージ3分化細胞へ)のため、EBを、ITS、フィブロネクチン(Sigma)、L−グルタミンおよび抗生物質を添加したDMEM/F12混合物(Gibco)からなる培地中の、ゼラチン被覆(Sigma−Aldrich)接着性培養皿上に移した。接着した細胞を10日間培養し、その後それらを回収した。グリカン分析のため、細胞を機械的に回収し、洗浄し、分析まで凍結保存した。FACS分析において、機械的に単離したhESCコロニーからの70〜90%の細胞が典型的にはTra1−60およびTra1−81陽性であった(不掲載)。胚様体(EB)に分化した細胞、およびEBから単層として増殖したさらに分化した細胞(ステージ3分化)を、hESCに対する比較のために用いた。分化のプロトコルは神経上皮細胞の発生に有利であるが、異なる最終分化細胞型への分化は導かない(Okabe et al., 1996)。ステージ3の培養物は、線維芽細胞様およびニューロンの形態が優位を占める、細胞の不均質な集団からなっていた。
グリカンの単離
アスパラギン結合グリカンを、基本的に記載(Nyman et al., 1998)の通りに、F.meningosepticum N−グリコシダーゼF消化(Calbiochem、USA)によって細胞糖タンパク質から遊離させた。遊離したグリカンを、シアル酸残基の負電荷に基づき、シアル化および非シアル化画分に分けた。細胞の混入を、基本的に先の記載(Verostek et al.,2000)のように、グリカンの80−90%(v/v)含水アセトンを用いた−20℃における沈殿および60%(v/v)氷冷メタノールを用いたそれらの抽出により除去した。次いでグリカンを水中でC18シリカ樹脂(BondElut、Varian、USA)に通し、先の方法(Davies et al.,1993)に基づき多孔質グラファイトカーボン(Carbograph、Alltech、USA)に吸着させた。カーボンカラムを水で洗浄し、次いで中性グリカンを水中の25%(v/v)アセトニトリルで溶出し、シアル化グリカンを水中の25%アセトニトリル(v/v)中の0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸で溶出した。両グリカン画分をさらに水中で強陽イオン交換樹脂(Bio−Rad,USA)およびC18シリカ樹脂(ZipTip, Millipore,USA)に通した。シアル化グリカンをさらに、それらをn−ブタノール:エタノール:水(10:1:2、v/v)中で微結晶性セルロースに吸着させ、同一の溶媒で洗浄し、50%エタノール:水(v/v)で溶出することにより、精製した。上記の全ての工程は小型クロマトグラフィーカラム上で行い、少ない溶出および処理容量を用いた。グリカン分析法はヒト細胞試料を5人の異なる個人による分析にかけることで確実なものとした。結果は、特に個々のグリカンシグナルおよびその相対シグナル強度の検出に関して、高度に類似しており、本方法の信頼性が異なる細胞型からの分析結果の比較に適したものであることが示された。
質量分析およびデータ分析
MALDI−TOF質量分析を、Bruker Ultraflex TOF/TOF装置(Bruker、Germany)を用いて、基本的に記載(Saarinen et al.,1999)のように行った。中性およびシアル化グリカン成分の相対モル存在量は、質量スペクトル中のそれらの相対シグナル強度に基づき正確に付与され得る(Naven and Harvey, 1996; Papac et al.,1996; Saarinen et al., 1999; Harvey,1993)。質量分析法の各工程は合成グリカンの混合物またはヒト細胞から抽出されたグリカン混合物によってその再現性を管理した。質量分析の粗データを、同位体パターン重複、複数のアルカリ金属付加物(alkali metal adduct)のシグナル、還元オリゴ糖からの水の除去産物、および、試料の本来のグリカンから生じたものではない他の干渉する質量分析シグナルの影響を注意深く排除することにより、本グリカンプロファイルに変換した。示されたグリカンプロファイル中に生じたグリカンシグナルは試料間の比較を可能にするために100%に対して標準化した。2つのグリカンプロファイル間の量的相違(%)は式:
Figure 2010516239

[式中、pはプロファイルaまたはbにおけるグリカンシグナルiの相対存在量(%)であり、nはグリカンシグナルの総数である]
により算出した。
グリコシダーゼ分析
中性N−グリカン画分を、タチナタマメα−マンノシダーゼ(Canavalia ensiformis; Sigma, USA)を用いて、基本的に記載(Saarinen et al., 1999)に従い、消化にかけた。酵素の特異性はヒト組織から単離されたグリカンおよび精製されたオリゴ糖を用いて制御した。
NMR法
NMR分析のため、多量のhESCをマウスフィーダー細胞(MEF)層上で増殖させた。回収されたhESC試料の純度(約70%)はHFF上で増殖させた質量分析試料におけるよりも低かった。しかし、同一のH5−9グリカンがMEFおよびhESCの両者において主要な中性N−グリカンシグナルであった。単離されたグリカンを、さらにゲル濾過高圧液体クロマトグラフィーにより、Superdex peptide HR 10/30(Amersham)中で、水(中性グリカン)または50mM NHHCO(シアル化グリカン)を溶出液として用いて、1ml/分の溶出速度で、分析のために精製した。溶出液を214nmで測定し、オリゴ糖を外部標準に対して定量した。NMR分析におけるN−グリカンの量は5ナノモル未満であった。
統計学的手法
3種類全ての分化ステージ(hESC、EB、およびst.3)のグリカンスコア分布を、クラスカル・ワリス検定により分析した。対比較を、ウェルチの近似を用いた両側スチューデントt検定および両側マンホイットニーU検定により行った。0.05未満のp値を有意とみなした。
レクチン染色
フルオレセイン標識レクチンはEY Laboratories(USA)からのものであり、染色は基本的に製品の説明書に従って行った。染色の特異性は、特異的オリゴおよび単糖によるレクチンの結合の阻害による並行実験において制御した。
結果
hESC N−グライコームの質量分析プロファイリング
hESC、胚様体(embryonic bodies)、およびさらに分化した細胞のグリカンプロファイルを生成するため、MALDI−TOF質量分析を基盤とした分析を行った。我々は、タンパク質の最も一般的な種類の翻訳後修飾、アスパラギン結合グリカン(N−グリカン)を細胞糖タンパク質から酵素的に遊離したものに焦点を当てた。グリカンの単離および精製の過程で、全N−グリカンプールを、イオン交換工程によって中性N−グリカンおよびシアル化N−グリカンに分離した。次いで、これら2つのグリカン画分を別々に質量分析プロファイリングにより分析し(図12)、これにより試料のN−グリカンのレパートリーの全体像を生成した。観察されたグリカンシグナルの相対存在量をそれらの相対シグナル強度に基づいて決定し(Naven and Harvey, 1996; Papac et al., 1996; Saarinen et al., 1999)、これにより試料間のグライコームの相違の定量的な比較が可能となった。100個超のN−グリカンシグナルが各細胞型から検出された。
図12における個々のシグナルの、検出された質量に対応する提案された単糖組成は、文字記号により示されている。しかし、本分析における質量分析シグナルの多くは複数の異性体構造を含むと考えるのが重要であり、100個の最も多量なシグナルは数百種の異なる分子を表している可能性が極めて高い。例えば、ヒトN−グリカンに生ずる一般的なヘキソース(H)はD−マンノース、D−ガラクトース、およびD−グルコース(全て162.05Daの残基質量(residue mass)を有する)を含み、一般的なN−アセチルヘキソサミン(N)はN−アセチル−D−グルコサミンおよびN−アセチル−D−ガラクトサミン(203.08Da)の両者を含み;デオキシヘキソース(F)は典型的にはL−フコース残基(146.06Da)である。
他の哺乳動物組織のグライコームの先の研究のほとんどにおいて、単離されたグリカンは質量分析プロファイリング(Sutton−Smith et al.,2002;Dell and Morris,2001;Consortium for Functional Glycomics,http://www.functionalglycomics.org)またはクロマトグラフィー分離(Callewaert et al.,2004)に先立って誘導体化(パーメチル化)された。しかし、本研究において、我々はピコモル量の非修飾グリカンを直接分析することを選択し、誘導体化およびその後のさらなる精製工程を省くことにより増加した感度が実現した。さらに、グリカンシグナルを1回に1つずつ分析する代わりに、我々は核磁気共鳴分光学(NMR)および特異的グリコシダーゼ酵素により非修飾グライコーム中に存在する全てのグリカンを同時に分析することができた。本データは、質量分析プロファイリングが全グライコームの定量的分析において、特に関連する試料間の主要なグリコシル化の相違を特定するために、用いられ得ることを示した。
hESC N−グライコームの概要:中性N−グリカン
中性N−グリカンは中性およびシアル化N−グリカンを組み合わせたプールのうち約3分の2を構成していた。hESC株の50個の最も多量な中性N−グリカンシグナルを図12a(灰色のカラム)に示す。グリカンシグナルの変異が少ないことにより示されるプロファイルの類似性は、4つの細胞株が互いによく似ていることを示唆する。例えば、20個の最も多量なグリカンシグナルのうちの15個は、全てのhESC株において同一であった。5つの最も多量のシグナルがhESCの中性N−グリカンのうちの76%を構成しており、プロファイルにおいて優勢であった。
シアル化N−グリカン
シアル化N−グリカン画分における全てのN−グリカンシグナル(図12b、灰色のカラム)はシアル酸残基(S:N−アセチル−D−ノイラミン酸、またはG:N−グリコリル−D−ノイラミン酸)を含む。4つのhESC株における50個の最も多量なシアル化N−グリカンは、中性N−グリカンよりも個々の細胞株間で大きな変異を示していた。しかし、4つの細胞株はこの場合も互いに類似していた。5つの最も多量なシアル化N−グリカンシグナルは全ての細胞株において同一であった:S、S、S、S、およびS(略号については図12参照)。シアル化グリカンシグナルの大部分(61%、8つのシグナルにおける)はHコア組成を含み、シアル酸(SまたはG)およびデオキシヘキソース(F)残基の量の相違によってのみ異なっていた。同様に、他の一般的なコア構造はH(12%、7つのシグナルにおける)であった。これは、細胞におけるスペクトルの全領域のN−グリカン構造をもたらす生合成機構を浮き彫りにする:N−グリカンは典型的には各種エピトープの付加によって修飾された一般的コア構造からなる。
重要なことに、我々はhESC試料においてN−グリコリルノイラミン酸(G)を有するN−グリカン、例えばグリカンG、G、およびGを検出することができた。N−グリコリルノイラミン酸はhESCにおいて動物由来材料を含んだ培地から移行した抗原として先に報告されている(Martin et al.,2005)。それに応じて、本実験に用いた血清代替培地はウシ血清タンパク質を含んでいた。
個々の細胞株間の変異
4つのhESC株は同一の全体のN−グリカンプロファイルを共有していたが、プロフィール内に細胞株特異的な変異が存在した。各細胞株に固有の個々のグリカンシグナルが検出され、全ての細胞株が、それらが合成した約100個の最も多量なN−グリカン構造に関して、互いにわずかに異なっていたことが示唆された。
一般に、各hESC株における30個の最も一般的なN−グリカンシグナルは検出された全てのN−グリカンの約85%の割合を占め、hESC N−グライコームの有用な近似を表す。言い換えると、6個のうち5個超の糖タンパク質分子は、本hESC株のいずれから単離したものであっても、このようなN−グリカン構造を有するであろう。
hESCの分化中におけるN−グライコームの変化
本研究の主要な目的は幹細胞または分化した細胞のいずれかに特異的であり、従って分化段階のマーカーとして役立ち得るグリカン構造を同定することであった。hESCのN−グライコームが分化中に変化を受けるか決定するため、hESC、EB、およびステージ3分化細胞から得たN−グリカンプロファイルを比較した(図12)。分化した細胞型(EBおよびst.3)のプロファイルは未分化hESCのプロファイルとは有意に異なっており、これは多くのグリカンシグナルにおける重ならない分布バー(distribution bar)により示された。さらに、hESCおよびEBの両者に存在するがステージ3分化細胞では検出されない多数のシグナルが存在した。全体で、hESCに存在するグリカンシグナルの10%がステージ3分化細胞において消失していた。同時に多数の新規シグナルがEBおよびステージ3分化細胞に出現した。EBおよびステージ3分化細胞におけるそれらの割合はそれぞれ14%および16%であった。hESCに特徴的であったグリカンシグナルは典型的にはEBにおいて減少し、ステージ3分化細胞ではさらに減少したかまたは完全に消失した。しかし、最も一般的であった100個のグリカンシグナルのうち、hESCのシグナルであってEBで発現されていなかったものは存在せず、EBのN−グライコームがhESCとステージ3分化細胞との中間物であることが示唆された。
まとめると、分化は新規N−グリカン型の出現を誘導し、一方で、より初期のグリカン型が消失した。さらに、我々は、主要なhESC特異的N−グリコシル化特性が個別のグリカンシグナルとして発現されておらず、しかし、代わりに、特異的な単糖組成の特徴(下記参照)によって特徴付けられたグリカンシグナル群として発現されていたことを見出した。言い換えると、hESCのEBへの分化は1つだけでなく、複数の、hESCと関連した特徴を有するグリカンシグナルの消失、および同時に、分化した細胞型と関連する他の特徴を有するグリカンシグナル群の出現も誘導した。
分化した細胞のN−グリカンプロファイルは、未分化hESCプロファイルと量的にも異なっていた。個々のグリカンプロファイル間の相違を定量する実用的方法は、2つの細胞プロファイル間のシグナル強度の相違の合計を算出することである(方法を参照)。この方法によると、EBの中性およびシアル化N−グリカンプロファイルはhESCプロファイルからそれぞれ14%および29%の量的な変化を受けていた。同様に、ステージ3分化細胞の中性およびシアル化N−グリカンプロファイルはhESCプロファイルからそれぞれ15%および43%変化していた。これは、hESCのステージ3分化細胞への分化の際に細胞に存在する全シアル化N−グリカンの半分近くが異なる分子構造に変換され、一方で有意に少ない割合の中性N−グリカン分子が分化過程で変化したことを表す。hESCにおけるシアル化N−グリカンの中性N−グリカンに対する割合が約1:2であったことを考慮すると、hESCからステージ3分化細胞への遷移中において全N−グライコームの変化は約25%であった。この場合も、EBのN−グリカンプロファイルはhESCとステージ3分化細胞との間に位置する。
データは、hESCのN−グライコームが、hESCの分化中の変化の傾向に関して、2つの別個の部分 − 約75%の一定の部分および約25%の変化する部分からなっていたことを示した。関連するN−グリカン構造を分析するため、ならびにN−グライコームの一定のおよび変化する部分の潜在的な生物学的役割を同定するため、単離されたhESCのN−グリカン試料の構造分析を行った。
主要なhESCのN−グリカンの構造分析:単糖組成に基づく予備的な構造割当て
ヒトN−グリカンは高マンノース型、ハイブリッド型、および複合型N−グリカンの主要な生合成群(biosynthetic groups)に分けることができる。これらN−グリカン群のhESCおよびその子孫における存在を決定するため、ヒトN−グリカンの生合成の確立した経路(Kornfeld and Kornfeld,1985; Schachter,1991)を利用し、各シグナルの単糖組成に一致する確からしい構造の割当てを行った。ここでは、検出されたN−グリカンシグナルを、NおよびH残基の数によって4つのN−グリカン群:提案された単糖組成における2個のN残基(N=2)によって両者とも特徴付けられる1)高マンノース型および2)低マンノース型N−グリカン、3)3個のN残基(N=3)によって特徴付けられるハイブリッド型または単分岐N−グリカン、ならびに4)4個以上のN残基(N≧4)によって特徴付けられる複合型N−グリカン、に分類した。これは近似であり:例えば、複合型N−グリカンに加え、ハイブリッド型および単分岐型N−グリカンも3個を超えるN残基を有する場合がある。
データは、全N−グライコームにおける各構造群に属するグリカンシグナルの割合を算出することにより定量的に分析された(表22、列A〜EおよびJ〜L)。構造群の量的な変化は各細胞型における異なる生合成経路の相対的な活性を反映する。例えば、ハイブリッド型または単分岐型N−グリカンの割合はhESCがEBに分化する際に増加した。一般に、ほとんどのグリカン構造クラスの相対的割合はhESCの分化過程を通じてほぼ一定のままであり、これはhESCおよび分化した細胞型の両者に同等に高度に複雑なN−グリコシル化の能力があることを示した。全ての分析された細胞型における、低マンノースN−グリカンとして分類されるN−グリカンの高い割合は、ヒトのN−グリコシル化に関する以前の公表された研究と照らし合わせると、いくらか驚くべきものであった。しかし、従来の研究は生細胞の全N−グリカンプロファイルは調査していなかった。我々は、他のヒト細胞および組織においても低マンノースN−グリカンの有意な量を検出し、これらはhESCに特異的ではなかった(T.S.、A.H.、M.B.、A.O.、J.H.、J.N、J.S. et al.、未発表結果)。
酵素分解および核磁気共鳴分光法による、構造の割当ての確認
検出された質量および確からしい単糖組成に基づき行われたグリカン構造の割当ての妥当性を検証するため、選択された中性およびシアル化N−グリカンの酵素分解およびプロトン核磁気共鳴分析(H−NMR)を行った。
中性N−グリカンの検証のため、単糖組成において5〜9個のヘキソース(H)および2個のN−アセチルヘキソサミン(N)残基を有するグリカン(H、H、H、H、およびH)を選んだ。これらは分析された全ての細胞型の中で最も多量なN−グリカンであった(図12a)。単糖組成は、これらのグリカンが高マンノース型N−グリカンであったことを示唆した(Kornfeld and Kornfeld,1985)。この仮説を試験するため、幹細胞および分化した細胞の試料からの中性N−グリカンをα−マンノシダーゼで処理し、酵素処理の前後で分析した(データ不掲載)。問題のグリカンは分解され、対応するシグナルは質量スペクトルから消失し、それらがα−結合マンノース残基を有していたことが示唆された。
中性N−グリカン画分をさらにナノスケールプロトン核磁気共鳴分光分析(H−NMR)により分析した。得られたhESCのH−NMRスペクトルにおいて、高マンノース型N−グリカンと一致する中性N−グリカンシグナルが検出され、それらが試料中の主要なグリカン成分であるという結論が支持された。
α−マンノシダーゼおよびNMR実験の両者は、H5−9グリカンシグナルが高マンノース型N−グリカンに対応することを示した。図12aのデータから、それらはhESCにおいて全ての検出された糖タンパク質N−グリカンの半分を構成していたと見積もることができた。これはヒト細胞における高マンノース型N−グリカンの確立された役割と一致している(Helenius and Aebi,2001,2004)。このような構造的に発現されたN−グリカンの存在は、なぜ中性N−グリカンプロファイルが分化中にシアル化N−グリカンプロファイルと同じ程度変化しなかったのかも説明した。
シアル化N−グリカン間の構造の割当ての検証のため、hESCから単離されたシアル化N−グリカンシグナルの大部分が、それらが複合型N−グリカンであることを示唆するN≧4の単糖組成により特徴付けられた(図12a)ことに注目した。H−NMR分析においては、二分岐複合型N−グリカンと一致するN−グリカン主鎖シグナルが主要な検出されたシグナルであり、実験から得た単糖組成に基づいて行われた割当てと一致していた。本結果は、全N−グライコームデータ内のグリカンシグナルの分類を用いてN−グライコーム全体の近似を構築することができることを示した。しかし、このような分類は単一のN−グリカンシグナルの分析に適用されるべきではない。
分化段階と関連した構造的グリコシル化特性
上記のグリカンシグナルの分類は、N−グリカンのコア配列の変化を示唆した。本データは、N−グリカンコア構造に付加された各種エピトープ、すなわち多くの個々のグリカンシグナル中に存在するグリカン特性、の相違も示唆した。このようなグリカンの構造特性を定量するため、N−グライコームのデータを、類似した特徴をその提案された単糖組成において共有するグリカンシグナル群にさらに分類した(表22、列F〜IおよびM〜P)。その結果、EBおよびステージ3分化細胞試料における分化と関連したグリカンシグナルの大部分がhESC特異的グリカンとは異なる群に分類された。複雑なフコシル化を有するグリカンシグナル(表22、列N)は未分化hESCと関連しており、一方、潜在的な末端N−アセチルヘキソサミン(表22、列HおよびP)を有するグリカンシグナルは分化した細胞と関連していた。
N−グリカンの複雑なフコシル化はhESCに特徴的である
シアル化N−グリカンプロファイルにおける分化段階と関連した変化は、中性N−グリカン画分におけるよりもより激しく、5つの最も多量なシアル化N−グリカンシグナルの群が全ての分化段階において異なっていた(図12b)。特に、グリカンSおよびS、ならびに、提案された単糖組成において少なくとも2つのデオキシヘキソース残基を有していた(F≧2)他のグリカンシグナルの相対量の、分化と関連した有意な減少があった。一方、Fを含まなかったS等のグリカンシグナルは分化した細胞型において増加した。結果は、未分化のhESCにおけるシアル化N−グリカンが、分化した細胞型におけるよりも複雑なフコシル化を受けやすいことを示唆した(表22、列N)。
ヒトN−グリカンにおける最も一般的なフコシル化型はN−グリカンコア構造のα1,6−フコシル化である。hESCのシアル化N−グリカン画分のNMR分析も、N−グリカンコアのα1,6−フコシル化をフコシル化の最も多量な型として示した。1個を上回るフコース残基を有するN−グリカンにおいては、α1,6−結合に加え、他のフコース結合が存在したはずである(Staudacher et al.,1999)。F≧2の構造特性は細胞が分化するに従い減少し、複雑なフコシル化が未分化hESCの特徴であったことが示唆された。
末端N−アセチルヘキソサミン残基を有するN−グリカンは分化とともにより一般的になる
分化中に増加したN−グリカンシグナルの群は、等しい量のN−アセチルヘキソサミンおよびヘキソース残基(N=H)をそれらの単糖組成、例えばS中に含んでいた。これは非還元末端N−アセチルヘキソサミン残基を有する構造と一致した。通常、N−グリカンコア構造はN−アセチルヘキソサミン残基よりも多くのヘキソースを有する。しかし、複合型N−グリカンがヘキソースによってキャップされていない末端N−アセチルヘキソサミン残基を有する場合、それらの単糖組成はN=HまたはN>Hのいずれかに変化する。EBおよびステージ3分化細胞は増加した量の潜在的末端N−アセチルヘキソサミン構造を示し、分化中にそのN=H構造特性は中性およびシアル化両者のN−グリカンプールにおいて増加した(表22、列IおよびP)が、N>H構造特性は中性N−グリカンプールにおいて上昇し、しかしシアル化N−グリカンプールにおいて減少した(表22、列HおよびO)。
グライコームプロファイリングはhESCの分化段階を同定し得る
グライコームプロファイルの分析は、分析したhESC株および分化した細胞が分化段階特異的N−グリカン特性を有していたことを示唆した。しかし、データは、個々のhESC株のN−グリカンプロファイルが互いに相違しており、特にhESC株FES22は他の3つの幹細胞株から異なっていたことも示した(表22、列CおよびI)。得られたN−グリカンプロファイルが、細胞株特異的変異を考慮した際においても、hESCと分化した細胞との間を判別するであろうアルゴリズムを生成するために使用できるかを試験するため、表22のデータを用いて分析を行った。hESC株FES29およびそれに由来する胚様体(EB29)を計算のためのトレーニンググループ(training group)として選択した。アルゴリズム、グリカンスコア(式1)を、FES29においてEB29におけるよりも少なくとも2倍大きかったそれらの構造特性の合計と定義し(表22における列N)、そこからEB29においてFES29におけるよりも少なくとも2倍大きかった構造特性の割合の合計を引いた(表22における列C、I、JおよびP):
グリカンスコア=N−(C+I+J+P) (1)
[式中、文字は表22の列の番号を表す]。
同定されたhESCグリカンは細胞表面上で標的になり得る
実用的観点から、幹細胞の研究には細胞表面上の標的構造の同定が最も役立つであろう。同定した個々のグリカン構造が細胞表面上でそれらを標的とする試薬にとって到達可能であるか調査するため、2つの候補となる構造型のレクチン標識を行った。レクチンはグリカンを認識するタンパク質であり、hESCにおいても特定のグリカン構造に対する特異性を有する(Venable et al.,2005)。hESCにおけるグリカン成分の局在を分析するため、マウスフィーダー細胞層上で増殖させた幹細胞コロニーを、フルオレセイン標識したレクチンによりin vitroで標識した(図2)。hESC細胞表面は、α2,3−結合シアル化を有する構造を認識するMaackia amurensis凝集素(MAA)により明瞭に標識され、シアル化グリカンがhESC細胞表面上に豊富であることが示唆された(図2a)。このようなグリカンは、従って、抗体等のより特異的なグリカン認識試薬による識別のために利用可能であろう。一方、細胞表面はα−マンノシル化グリカンを認識するPisum sativum凝集素(PSA)によっては標識されなかった(図2b)。しかし、PSAは透過処理(permeabilization)後の細胞は標識し(データ不掲載)、hESCにおけるマンノシル化N−グリカンは小胞体(ER)またはゴルジ複合体等の細胞内区画に局在していたことが示唆された。興味深いことに、マウス線維芽細胞は相補的な染色様式を示し、これらのレクチン試薬が効果的にhESCとフィーダー細胞とを識別したことが示唆された。まとめると、結果は、同定されたグリカン構造がhESCを標的とする特異的試薬の設計に利用できることを示唆した。
N−グライコームの比較分析
4つのhESC株のN−グリカンプロファイルは類似した全体的なプロファイル形状を共有するが、細胞株特異的変異がN−グリカンプロファイル中に存在した。各細胞株に固有の個々のグリカンシグナルが見出され、全ての細胞株が、それらが合成する約100個の最も多量なグリカン構造に関して、互いにわずかに異なっていたことが示唆された。これを、中性および酸性N−グリカン画分の両者からの全ての検出されたグリカンシグナルを合わせたベン図として、34aに示す。FES29およびFES30は兄弟胚に由来するが、それらのN−グリカンプロファイルは、互いに、それらがベン図においてFES21に類似するほどにはよく似ていなかった。さらに、核型XXを有するFES30は、3つのXY hESC株とは有意に異なっていなかった。
分化中にhESCのN−グライコームが変化を受けるか決定するため、hESC、EB、およびステージ3分化細胞から得たN−グリカンプロファイルを比較した(図12)。分化した細胞型(EBおよびst.3)のN−グリカンプロファイルは未分化hESCのプロファイルとは有意に異なっており、これは多くのグリカンシグナルにおける重ならない分布バー(distribution bar)により示された。hESCおよびEBの間で共通しており、ステージ3分化細胞では消失した多くのシグナルが存在した。全体で、hESCに存在するグリカンシグナルの17%がEBにおいて消失しており、ステージ3分化細胞においては本来のN−グリカンシグナルの58%が消失していた。同時に多数の新規シグナルがEBおよびステージ3分化細胞において出現した。EBおよびステージ3分化細胞におけるそれらの割合はそれぞれ24%および10%であった。これは、分化が新規N−グリカン型の出現を誘導し、一方で初期のグリカン型が消失したことを示す。
同定された主要なhESC特異的グリコシル化特性はN−グリカンにおける1個を超えるデオキシヘキソース残基の存在であり、複雑なフコシル化が示唆された。フコシル化は細胞接着およびシグナル伝達事象において重要であることが知られ(Becker and Lowe,2003)、ならびに胚発生にとって不可欠である。N−グリカンコアα1,6−フコース転移酵素遺伝子FUT8のノックアウトはマウスにおいて出生後の致死性をもたらし(Wang et al.,2005)、フコシル化グリカン生合成が完全に欠損したマウスは初期胚発生よりも先まで生存しない(Smith et al.,2002)。ヒトにおけるフコシル化欠損は白血球接着不全(LAD;Luhn et al.,2001)として知られる疾患を引き起こす。
SSEA−1抗原等のフコシル化グリカンは、先に、マウス胚幹細胞(mESC)およびおよびヒト胚性癌腫細胞(EC; Muramatsu and Muramatsu,2004)の両者と関連づけられているが、hESCとは関連づけられていない。さらに、構造的に関連するLeオリゴ糖は胚細胞緊密化(embryonic compaction)を阻害する(Fenderson et al.,1984)ことができ、フコシル化グリカンが胚発生の過程で細胞同士の接触に直接関与することが示唆される。胚性LeおよびSSEA−1抗原の合成において示唆されたα1,3−フコース転移酵素遺伝子は、FUT4およびFUT9である(Nakayama et al.,2001;Kudo et al.,2004)。興味深いことに、本明細書で分析されたものと同一のhESC株に対して発表された遺伝子発現プロファイル(Skottman et al.,2005)は、3種のヒトフコース転移酵素遺伝子、FUT1、FUT4、およびFUT8がhESCにおいて発現していること、ならびにFUT1およびFUT4がhESCにおいてEBと比べ過剰発現していることを示した。これらのフコース転移酵素の公知の特異性(Mollicone et al.,1995)は、我々が見出したEBにおける単純なフコシル化およびhESCにおける複雑なフコシル化(図3)と相関する。まとめると、hESCはSSEA−1抗体に認識される特異的糖脂質抗原を発現しないが、それらは複合フコシル化の特徴的な特性をmESCと共有しており、フコシル化グリカンエピトープの生物学的機能を保存している可能性がある。
新規N−グリカン型がEBおよびステージ3分化細胞において出現した。これらの構造特性は、潜在的に新規N−グリカン末端エピトープをもたらす、さらなるN−アセチルヘキソサミン残基を含んでいた。他の分化と関連した特徴は、ハイブリッド型または単分岐N−グリカンのモル比の増加であった。ハイブリッド型および複合型N−グリカンの生合成は、マウスにおける胚および出生後の発生に対して生物学的に重要であることが示されている(Ioffe and Stanley,1994 PNAS; Metzler et al.,1994 EMBO J; Wang et al.,2001 Glycobiology; Akama et al.,2006 PNAS)。hESCにおける複合型N−グリカンの優先的な発現、およびその後の、分化するEBにおける、より多くのハイブリッド型または単分岐N−グリカンを発現するようになる変化は、従って、幹細胞の分化の過程にとって重要であると考えられる。
結論として、hESCは固有のグライコームを有し、これは細胞が分化する際に大きな変化を受ける。特定のグライコームに関する情報を用いてこれらの細胞およびそれらの子孫を標的とする試薬を開発することができる。観察されたグリカンプロファイルをもたらす発生学的および分子的調節過程を調査する将来の研究は、ヒトの発生およびグリコシル化の調節の機構に重要な知見を提供するであろう。
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実施例8
ヒトおよびマウス線維芽細胞フィーダー細胞の分析
マウス(mEF)およびヒト(hEF)線維芽細胞フィーダー細胞を調製し、それらのN−グリカン画分を先の実施例に記載するように分析した。
結果および考察
結果は、mEFおよびhEF細胞N−グリカン画分は互いに有意に相違することを示した。この相違としては、該細胞試料から得られた、異なったグリカン群の割合、主要なグリカンシグナル、およびグリカンプロファイル等が挙げられる。さらに、主要な相違は、本発明の先の実施例で考察された、mEF細胞におけるGalα3Galエピトープの存在である。
実施例9
ヒト胚幹細胞のグライコームはそれらの分化段階を反映する
本発明において、我々はhESC、EB、およびステージ3分化細胞のN−グライコームプロファイルを分析した(図4)。
4つのhESC株の群内におけるN−グリカンプロファイルの類似性は、得られたN−グリカンプロファイルがhESCの特徴的N−グライコームの記載であることを示唆した。全体で、hESCに存在する100個の最も多量なN−グリカンシグナルのうち10%がst.3分化細胞において消失し、st.3分化細胞の最も多量なシグナルのうち16%がhESCおいて存在しなかった。これは分化が新規N−グリカン型の出現を誘導し、一方で初期のグリカン型が消失したことを示唆する。定量的観点からは、hESC、EB、およびst.3分化細胞のグリカンプロファイル間の相違は、hESC対EB 19%、hESC対st.3 24%、およびEB対st.3 12%であった。
グライコームプロファイルデータを用いてhESCのためのグリカン特異的標識試薬を設計することができた。最も興味深いグリカン型を選び、それらの発現プロファイルを、hESC細胞に結合するα2,3−シアル化(MAAレクチン、図5A)またはフィーダー細胞(MEF)の表面に結合するα−マンノシル化グリカン(PSAレクチン、図5B)のいずれかを認識するレクチンに対して図5に例示されるようにレクチン組織化学により分析した。レクチン試薬の結合は、それぞれ特異的炭水化物阻害剤、シアリルα2−ラクトースおよびマンノースにより阻害された(図5Cおよび5D)。結果を表23にまとめる。
表23にさらに、2つの他のレクチンである、特に末端Galβ構造、特にGalβ4Glc(NAc)型構造を認識することが知られるRicinus communis凝集素(RCA、リシンレクチン)、およびGal/GalNAc構造を認識するピーナッツ凝集素(PNA)による、フィーダーおよび幹細胞の異なった認識を示す。hESC細胞上の、2つの他のレクチンRCAおよびPNAに対するリガンドの、しかしフィーダー細胞のRCAリガンドのみの、細胞表面発現。
本結果は、hESCグリカンが幹細胞特異的試薬による認識の潜在的な標的であることを示し、本発明はそれに関するものである。本発明はさらに、hESCおよびフィーダー細胞等の分化した細胞の、レクチン等のグリカン構造特異的試薬による特異的識別および/または分離の方法に関する。ヒト胚幹細胞はそれらの分化段階を反映する固有のグライコームを有する。本発明は特に、分化段階に関する本発明による細胞の分析に関する。
結論
本データは、hESCのグライコームプロファイリングを示す:
・hESCは100超のグリカン成分からなる固有のN−グライコームを有する
・分化は、hESCのN−グライコームおよび細胞表面の分子環境の大きな変化を誘導する
hESCグライコームデータの利用:
・例えば抗体開発のための、新規幹細胞マーカーの同定
・幹細胞製品の品質管理
・hESC分化段階の同定
・hESC株間の変異の管理
・hESCの状態に対する外的要因および培養条件の影響
多能性hESCに特徴的な特異的細胞表面マーカーの同定のためのhESCグライコームの使用。本発明は今回のおよび類似したグライコームデータのさらなる分析および生成と、新規幹細胞特異的グリコシル化特性のさらなる同定のための方法の使用とに関するものであり、hESC糖鎖生物学の研究およびその結果として生ずる本発明による用途のための基礎を形成する。
実施例10
幹細胞増殖速度に対するレクチンの影響
実験手順
リン酸緩衝生理食塩水中での一晩のインキュベートにより、レクチン(EY laboratories、USA)を受動的に48ウェルプレート(Nunclon surface、catalog No 150687、Nunc、Denmark)上に吸着させた。
12ウェルプレート:
レクチン(EY laboratories、USA)をリン酸緩衝生理食塩水中に溶解した(140μg/1ml)。レクチンの希釈物を、Millex−GVシリンジ駆動フィルターユニット(0.22μm、SLGV 013 SL, Millipore,Ireland)を用いて滅菌濾過し、リン酸緩衝生理食塩水中での+4℃における一晩のインキュベートによりレクチンを受動的に12ウェルプレート(Costar 3513,Corning Inc.,USA)上に吸着させた。インキュベート後、ウェルをリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、幹細胞をそれらの上にプレーティングした。
48ウェルプレート:
レクチン(EY laboratories、USA)をリン酸緩衝生理食塩水中に溶解した(100μg/1ml)。レクチンの希釈物を、Millex−GVシリンジ駆動フィルターユニット(0.22μm、SLGV 004 SL,Millipore,Ireland)を用いて滅菌濾過し、リン酸緩衝生理食塩水中での+4℃における一晩のインキュベートによりレクチンを受動的に48ウェルプレート(Nunclon surface,カタログ番号150687 Nunc,Denmark)上に吸着させた。インキュベート後、ウェルをリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、幹細胞をそれらの上にプレーティングした。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM MSC)を、20mM HEPES、10% FCS、ペニシリン−ストレプトマイシン、および2mM L−グルタミン(全てGibcoから)を添加した最小必須α−培地(α−MEM)中で、各種レクチンで被覆した48ウェルプレート上において培養した。細胞をCell IQ(ChipMan Technologies、Tampere、Finland)中で、+37℃において、5%COとともに培養した。15分間毎に画像を撮影した。データをCell IQ Analyzerソフトウェアを用いて、Ulla Impola博士(Finnish Red Cross Blood Service、Helsinki、Finland)によって構築されたアナライザプロトコルにより分析した。
結果および考察
BM MSCの増殖速度は各種レクチン被覆表面において、互いに、および非被覆プラスチック表面との比較において、異なっており(表24)、幹細胞表面グリカンに結合する異なるグリカン結合特異性を有するタンパク質は特異的にその増殖速度に影響することが示唆された。
BM MSC増殖速度を高める効果を有するレクチンは、相対的な効果の順に:
GS II(β−GlcNAc)>ECA(LacNAc/β−Gal)>PWA(I−分岐ポリ−LacNAc)>LTA(α1,3−Fuc)>PSA(α−Man)、
を含んでおり、式中、レクチンの好ましいオリゴ糖特異性を括弧内に示す。しかし、PSAは本実験においてほぼプラスチックに等しかった。
BM MSCの増殖速度に阻害的な効果を有するレクチンは、相対的な効果の順に:
RCA(β−Gal/LacNAc)>>UEA(α1,2−Fuc)>WFA(β−GalNAc)>STA(直鎖ポリ−LacNAc)>NPA(α−Man)>SNA(α2,6−結合シアル酸)=MAA(α2,3−結合シアル酸/α3’−シアリルLacNAc)、
を含んでおり、式中、レクチンの好ましいオリゴ糖特異性を括弧内に示す。しかし、NPA、SNA、およびMAAは本実験においてほぼプラスチックに等しかった。
結果
細胞増殖
プラスチックまたは他の型の表面と比べると、細胞は恐らくMAAおよびECA上で最も効果的に増殖した。全てのウェルが1週間以内にコンフルエントに達した。WFAおよびPWA上で培養した細胞はそれらの増殖能を5週間の期間の間に緩めるようであり、WFAコーティング上では形態学的に異なる細胞がいくらか存在した。
細胞の形態および接着
形態学的に、PSAコーティング上で増殖させた細胞はそれらが網状単層を形成する様式において他と異なっていた。MAAおよびPSA上の細胞はまた、より強固に表面に接着しており、トリプシンによるそれらの剥離は不可能であり、それらの細胞は機械的に掻き取る必要があった。
実施例11
ヒト幹細胞のスフィンゴ糖脂質グリカン
実験手順
マウス線維芽細胞フィーダー細胞上で増殖させたMSC、CB MNC、およびhESCからの試料を、先の実施例に記載のように生成した。中性および酸性スフィンゴ糖脂質画分を細胞から、基本的に記載(Miller−Podraza et al, 2000)されるように単離した。グリカンをMacrobdella decoraエンドグリコセラミダーゼ消化(Calbiochem, USA)により、基本的に製品の説明書に従って遊離し、試料からの全グリカンオリゴ糖画分を生成した。オリゴ糖を精製し、タンパク質結合オリゴ糖画分のための先の実施例に記載のようにMALDI−TOF質量分析によって分析した。
結果および考察
ヒト胚幹細胞(hESC)
hESC中性脂質グリカン
hESCのスフィンゴ糖脂質中性グリカン画分の分析された質量分析プロファイルを図10に示す。
主要な中性脂質グリカンの構造分析
全部で全グリカンシグナル強度の90%超を構成していた6つの主要なグリカンシグナルは、単糖組成HexHexNAc(730)、HexHexNAcdHex(876)、HexHexNAc(568)、HexHexNAc(933)、HexHexNAc(892)、およびHexHexNAc(1095)に対応した。
β1,4−ガラクトシダーゼ消化において、1095および730の相対シグナル強度は、それぞれ約30%および10%減少した。これは、730および1095が非還元末端β1,4−Galエピトープ、好ましくは構造Galβ4GlcNAcLacおよびGalβ4GlcNAc[HexHexNAc]Lac等を有する少ない成分を含むことを示唆する。他の主要な成分は従って、他の末端エピトープを含むことが示された。さらに、グリカンシグナルHexHexNAc(1460)は消化されてHexHexNAc(1136)となり、本来のシグナルが2つのβ1,4−Galを有するグリカン構造を含んでいたことが示された。
主要なグリカンシグナルはα−ガラクトシダーゼ消化に対して感受性ではなかった。
α1,3/4−フコシダーゼ消化において、876のシグナル強度は約10%減少し、α1,3−またはα1,4−結合フコース残基を有するグリカンに対応するグリカンシグナルの割合が少ししかないことが示唆された。全プロファイル中の影響を受けた主要なシグナルはHexHexNAcdHex(1022)であり、それがα1,3−Fucまたはα1,4−Fucのいずれかを有するグリカンを含んでいたことが示唆された。511は約30%減少し、このシグナルがα1,2−Fuc、優先的にはFucα2Galβ4Glc(Fucα2’Lac、2’−フコシルラクトース)等の少ない成分を含んでいたことが示唆された。
α1,3/4−フコシダーゼ反応産物がさらにα1,2−フコシダーゼにより消化された際、876は完全に消化されて730となり、シグナル強度の大部分の構造が非還元末端α1,2−Fuc、好ましくは構造Fucα2[HexHexNAc]Lac等、より好ましくはFucα2GalHexNAcLac等を含んでいたことが示唆された。他の部分的に消化されたグリカンシグナルはHexHexNAcdHex(1241)であり、これは従ってα1,2−Fuc、好ましくは構造Fucα2[HexHexNAc]Lac等、より好ましくはFucα2Gal[HexHexNAc]Lac等を含むことが示唆された。511は完全に消化され、本来のシグナルがα1,3/4−Fuc、優先的にはGalβ4(Fucα3)Glc(3−フコシルラクトース)等を有する主要な成分を含んでいたことが示唆された。
α1,3/4−フコシダーゼおよびα1,2−フコシダーゼ反応産物がβ1,4−ガラクトシダーゼによりさらに消化された際、新たに形成された730の大部分は消化されなかった、すなわち568の相対的な割合は、先にフコシダーゼ処理を行わなかったβ1,4−ガラクトシダーゼ消化と比べて増加しなかった。これは、876の大部分がFucの次端部のβ1,4−Galを含まなかったことを示唆した。さらに、892は消化されず、それが非還元末端β1,4−Galを含まなかったことが示唆された。
α1,3/4−フコシダーゼ、α1,2−フコシダーゼ、およびβ1,4−ガラクトシダーゼ反応産物がβ1,3−ガラクトシダーゼによりさらに消化された際、892のシグナル強度が減少し、それが末端β1,3−Galを有するグリカンを含んでいたことが示唆された。568のシグナル強度が730と比べ増加し、730も末端β1,3−Galを有するグリカンを含んでいたことが示唆された。
hESCの主要なスフィンゴ糖脂質中性グリカンシグナルの実験に基づく構造がこのように決定された(‘>’はhESCの脂質グリカン構造の中で好ましい順を表し;‘[]’は、括弧内のオリゴ糖配列が分岐または非分岐のいずれであってもよいことを表し;‘()’は構造内の分岐を表す):
730 HexHexNAc > HexHexNAcLac > Galβ4GlcNAcLac
876 HexHexNAcdHex > Fucα2[HexHecNAc]Lac > Fucα2Galβ4GlcNAcLac > Fucα3/4[HexHecNAc]Lac
568 HexHexNAc > HecNAcLac
933 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac
892 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ3[HexHecNAc]Lac
1095 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ3HexNAc[HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc[HexHecNAc]Lac
1460 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc(Galβ4GlcNAc)[HexHecNAc]Lac
酸性脂質グリカン
hESCのスフィンゴ糖脂質シアル化グリカン画分の分析された質量分析プロファイリングを図11に示す。4つの主要なグリカンシグナルが、合わせて全グリカンシグナル強度の96%超を構成しており、単糖組成NeuAcHexHexNAc(997)、NeuAcHexHexNAc(835)、NeuAcHexHexNAc(1159)、およびNeuAcHexHexNAc(1288)に対応した。
酸性グリカン画分をα2,3−シアリダーゼ消化にかけ、生じた中性および酸性グリカン画分を別々に精製および分析した。酸性画分においては、シグナル1159および1288が消化され、835が部分的に消化された。中性画分においては、シグナル730および892が主要な出現したシグナルであった。これらの結果は:1159は主にα2,3−NeuAcを有するグリカンからなり、1288は少なくとも1個のα2,3−NeuAcを含み、835におけるグリカンの大部分はα2,3−NeuAcを含み、および、本来の試料においてはNeuAc1−2HexHexNAcの大部分がα2,3−結合NeuAcのみを含んでいたことを示唆した。
ヒト間葉系幹細胞(MSC)
骨髄由来(BM)MSC中性脂質グリカン
BM MSCスフィンゴ糖脂質中性グリカン画分の分析された質量分析プロファイルを図10に示す。6つの主要なグリカンシグナルが合わせて全グリカンシグナル強度の94%超を構成しており、単糖組成HexHexNAc(730)、HexHexNAc(568)、HexdHex(511)、HexHexNAcdHex(1063)、HexHexNAcdHex(1225)、およびHexHexNAcdHex(1079)に対応した。4つの最も多量なシグナル(730、568、511、および1063)は合わせて全強度の75%超を含んでいた。
臍帯血由来(CB)MSC中性脂質グリカン
CB MSCスフィンゴ糖脂質中性グリカン画分の分析された質量分析プロファイルを図10に示す。10個の主要なグリカンシグナルが合わせて全グリカンシグナル強度の92%超を構成しており、単糖組成HexHexNAc(568)、HexHexNAc(730)、HexHexNAc(1095)、HexHexNAc(1460)、HexHexNAc(933)、HexdHex(511)、HexHexNAcdHex(1063)、HexHexNAc(1298)、HexHexNAcdHex(1225)、およびHexHexNAc(771)に対応した。5つの最も多量なシグナル(568、730、1095、1460、および933)は合わせて全強度の82%超を含んでいた。
β1,4−ガラクトシダーゼ消化においては、1095、1460、および730の相対シグナル強度がそれぞれ約90%、95%、および20%減少した。これは、CB MSCが、好ましくは構造Galβ4GlcNAcβ[HexHexNAc]Lac、Galβ4GlcNAc[HexHexNAc]Lac、およびGalβ4GlcNAcLac等の非還元末端β1,4−Galエピトープを有する主要グリカン成分を有していたことを示唆する。さらに、グリカンシグナルHexHexNAc(1460)は消化されてHexHexNAc(1298)に、および多くはHexHexNAc(1136)になり、本来のシグナルが1または2個のβ1,4−Galを有するグリカン構造を含んでいたこと、および本来のグリカンの大部分が2個のβ1,4−Gal、優先的には構造Galβ4GlcNAc(Galβ4GlcNAc)[HexHexNAc]Lac等を有していたことが示唆された。同様に、1095は消化されて、933に加え、HexHexNAc(771)になり、本来のシグナルが1または2個のβ1,4−Galを有するグリカン構造を含んでいたこと、および本来のグリカンの少数が2個のβ1,4−Gal、優先的には構造Galβ4GlcNAc(Galβ4GlcNAc)Lac等を有していたことが示唆された。
主要CB MSCスフィンゴ糖脂質中性グリカンシグナルの実験に基づく構造はこのように決定された(‘>’はhESCの脂質グリカン構造の中で好ましい順を表し;‘[]’は括弧内のオリゴ糖配列が分岐または非分岐のいずれであってもよいことを表し;‘()’は構造内の分岐を表す):
568 HexHexNAc > HecNAcLac
730 HexHexNAc > HexHexNAcLac > Galβ4GlcNAcLac
1095 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc [HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc(Galβ4GlcNAc)Lac
1460 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc[HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc(Galβ4GlcNAc)[HexHecNAc]Lac
933 HexHexNAc > HexHexNAcLac
シアル化脂質グリカン
hESCスフィンゴ糖脂質シアル化グリカン画分の分析された質量分析プロファイルを図11に示す。BM MSCの5個の主要なグリカンシグナルが合わせて全グリカンシグナル強度の96%超を構成しており、単糖組成NeuAcHexHexNAc(835)、NeuAcHexHexNAcdHex(819)、NeuAcHexHexNAc(997)、NeuAcHexHexNAcdHex(1143)、およびNeuAcHexHexNAcdHex(1313)に対応した。CB MSCの6つの主要なシグナルが合わせて全グリカンシグナル強度の92%超を構成しており、単糖組成NeuAcHexHexNAc(835)、NeuAcHexHexNAc(997)、NeuAcHex(905)、NeuAcHexHexNAc(1362)、NeuAcHexHexNAc(1727)、およびNeuAcHexHexNAc(1126)に対応した。
ヒト臍帯血単核球(CB MNC)
CB MNC中性脂質グリカン
CB MNCスフィンゴ糖脂質中性グリカン画分の分析された質量分析プロファイルを図10に示す。5つの主要なグリカンシグナルが全グリカンシグナル強度の合わせて91%超を含んでおり、単糖組成HexHexNAc(730)、HexHexNAc(568)、HexHexNAcdHex(876)、HexHexNAc(1095)、およびHexHexNAcdHex(1241)に対応した。
β1,4−ガラクトシダーゼ消化においては、730および1095の相対シグナル強度がそれぞれ約50%および90%減少した。これは、該シグナルが、好ましくは構造Galβ4GlcNAcβLacおよびGalβ4GlcNAcβ[HexHexNAc]Lac等の非還元末端β1,4−Galエピトープを有する主要成分を有していたことを示唆する。さらに、グリカンシグナルHexHexNAc(1460)は消化されてHexHexNAc(1298)およびHexHexNAc(1136)になり、本来のシグナルが1または2個のβ1,4−Galを有するグリカン構造を含んでいたことが示唆された。
主要CB MSCスフィンゴ糖脂質中性グリカンシグナルの実験に基づく構造はこのように決定された(‘>’はhESCの脂質グリカン構造の中で好ましい順を表し;‘[]’は括弧内のオリゴ糖配列が分岐または非分岐のいずれであってもよいことを表し;‘()’は構造内の分岐を表す):
730 HexHexNAc > HexHexNAcLac > Galβ4GlcNAcLac
568 HexHexNAc > HecNAcLac
876 HexHexNAcdHex > [HexHecNAcdHex]Lac > Fuc[HexHecNAc]Lac
1095 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc [HexHecNAc]Lac
1241 HexHexNAcdHex > [HexHecNAcdHex]Lac > Fuc[HexHecNAc]Lac
1460 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc[HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc(Galβ4GlcNAc)[HexHecNAc]Lac
シアル化脂質グリカン
CB MNCスフィンゴ糖脂質シアル化グリカン画分の分析された質量分析プロファイルを図11に示す。CB MNCの3個の主要なグリカンシグナルが合わせて全グリカンシグナル強度の96%超を構成しており、単糖組成NeuAcHexHexNAc(997)、NeuAcHexHexNAc(1362)、およびNeuAcHexHexNAc(1727)に対応した。
ヒト幹細胞のスフィンゴ糖脂質グリカンプロファイルの概要
全ての本試料型の中性グリカン画分は合わせて45個のグリカンシグナルを含んでいた。シグナルの提案された単糖組成は2−7Hex、0−5HexNAc、および0−4dHexからなっていた。グリカンシグナルは511〜2263の間のモノアイソトピックm/z値で検出された([M+Na]イオンに対して)。
全試料型に共通の主要な中性グリカンシグナルは730、568、1095、および933であり、グリカン構造群Hex0−1HexNAcLac(568または730)およびHex1−2HexNAcLac(933または1095)に対応し、前者のグリカンはより多く、後者はより少なかった。これらの共通のグリカンの一般式はHexHexNAcLacであり、式中、mはnまたはn−1のいずれかであり、nは1または2のいずれかである。
ヒト幹細胞型の中性糖脂質プロファイル
hESCに典型的なグリカンシグナルは優先的には(特にMSCと比べて)876および892を含み;前者は優先的にはFucHexHexNAcLacに対応し、ここでα1,2−Fucはα1,3/4−Fucに対して優先的であり、後者は優先的にはHexHexNAcLac、より優先的にはGalβ3[HexHexNAc]Lacに対応し;フコシル化、およびより優先的にはα1,2−結合フコシル化に加え、グリカンコア組成HexHexNAcは他のヒト幹細胞型と比べてhESCに特に特徴的であった。
CBおよびBM MSCの両者に典型的なグリカンシグナルは優先的には771、1063、1225を含んでおり;より優先的には組成dHex0/2Hex0−1HexNAcLacを含む。
特にBM MSCに典型的なグリカンシグナルは優先的には511およびフコシル化構造、優先的には多フコシル化構造を含む。
特にCB MSCに典型的なグリカンシグナルは優先的には1460および1298ならびに大型中性糖脂質、特にHex2−3HexNAcLacを含む。さらに、末端β1,4−Galの低フコシル化および/または高発現が特にCB MSCに典型的であった。
CB MNCに典型的なグリカンシグナルは優先的には組成dHex0−1[HexHexNAc]1−2Lac、より優先的には他のシグナルと比較して高い相対量の730;およびフコシル化構造;および他の幹細胞型よりもばらつきおよび/または複雑さの程度が低いグリカンプロファイルを有していた。
本試料型全ての酸性グリカン画分は全体で38個のグリカンシグナルを含んでいた。該シグナルの提案された単糖組成は0−2NeuAc、2−9Hex、0−6HexNAc、0−3dHex、および/または0−1硫酸またはリン酸エステルからなっていた。グリカンシグナルは786〜2781の間のモノアイソトピックm/z値で検出された([M−H]イオンに対して)。
CB MNCの酸性スフィンゴ糖脂質グリカンは主にNeuAcHexn+2HexNAcからなっており、式中、1≦n≦3であり、その構造がNeuAc[HexHexNAc]1−3Lacであることが示唆された。
幹細胞スフィンゴ糖脂質グリカンにおける本実験において示された末端グリカンエピトープとしては:
Gal
Galβ4Glc(Lac)
Galβ4GlcNAc(LacNAc2型)
Galβ3
非還元末端HexNAc
Fuc
α1,2−Fuc
α1,3−Fuc
Fucα2Gal
Fucα2Galβ4GlcNAc(H2型)
Fucα2Galβ4Glc(2’−フコシルラクトース)
Fucα3GlcNAc
Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Lex)
Fucα3Glc
Galβ4(Fucα3)Glc(3−フコシルラクトース)
Neu5Ac
Neu5Acα2,3
Neu5Acα2,6
等が挙げられる。
発生関連グリカンエピトープの発現
本発明によると、スフィンゴ糖脂質グリカン組成HexHexNAcは優先的には(イソ)グロボ構造に対応する。SSEA−3糖脂質抗原のグリカン配列はGalβ3GalNAcβ3Galα4Galβ4Glcと同定され、本実験においてhESCに検出されたグリカンシグナルHexHexNAc(892)に対応する。同様に、SSEA−4糖脂質抗原のグリカン配列はNeuAcα3Galβ3GalNAcβ3Galα4Galβ4Glcと決定され、これは本実験においてhESCで検出されたグリカンシグナルNeuAcHexHexNAc(1159)に対応する。本グリカン構造分析と一致して、hESC試料は先の実施例に記載されるモノクローナル抗体染色によりSSEA−3およびSSEA−4陽性と決定された。高解像度分析において、グリカンシグナル HexHexNAcおよびNeuAcHexHexNAcがMSCにおいても少量検出され、MSCにおいてはグロボシド型スフィンゴ糖脂質が比較的希ではあるが有意な構造であることが示唆された(表29)。マウスES細胞とは対照的に、hESCはSSEA−1抗原を発現しない。これと一致して、α1,3/4−フコシル化中性糖脂質グリカンは低水準の発現しか見出されなかった。一方、hESCスフィンゴ糖脂質グリカンの主要なフコシル化構造はα1,2−Fucを有するということを示すことができた。これはSSEA−1反応性におけるマウス−ヒト間の相違に対する分子レベルでの説明となる。
実施例12
CB MNC細胞集団のレクチンに基づく選択
フルオレセイン標識レクチンおよびCB MNCを用いたFACS実験を、本質的に実施例4と同様に行った。二重染色を、CD34特異的モノクローナル抗体(Jaatinen et al.,2006)を相補的な蛍光色素とともに用いて行った。CB MNC画分からの赤芽球減少(erythroblast depletion)を、抗グリコホリンA(GlyA)モノクローナル抗体ネガティブセレクションにより行った。
結果および考察
CB MNC画分と比べ、GlyA減少(GlyA depleted)CB MNCは、次のレクチンを用いたFACSにおいて減少した染色を示し(減少を%で括弧内に示す):PWA(48%)、LTA(59%)、UEA(34%)、STA、MAA、およびPNA(最後の3つは全て23%未満);GlyA減少が細胞選別におけるレクチンの分解能を増加させたことが示唆された。
フルオレセイン標識レクチンおよび抗CD34抗体の両者を用いたFACS二重染色において、次のレクチンがCD34+細胞と共存していた:STA(3/3試料)、HHA(3/3試料)、PSA(3/3試料)、RCA(3/3試料)、および部分的にNPA(2/3試料)。一方、次のレクチンはCD34+細胞と共存していなかった:GNA(3/3試料)およびPWA(3/3試料)、ならびに部分的にLTA(2/3試料)、WFA(2/3試料)、およびGS−II(2/3試料)。
実施例5の結果と総合すると、本結果は、レクチンがCB MNCからCD34+細胞をネガティブおよびポジティブ選択により濃縮することができることを示す。例えば、
1)GNAは、CD34+細胞の単離におけるCB MNCのネガティブセレクションにおいて、CB MNCの約70%に結合するがCD34+細胞には結合せず、約3Xの濃縮をもたらす。
2)STAは、CD34+細胞の単離におけるCB MNCのポジティブセレクションにおいて、CB MNCの約50%およびCD34+細胞にも結合し、約2Xの濃縮をもたらす。
3)UEAは、CD34+細胞の単離におけるCB MNCのポジティブセレクションにおいて、CB MNCの約50%およびCD34+細胞にも結合し、約2Xの濃縮をもたらす。
実施例13
幹細胞のガレクチン遺伝子発現プロファイル
実験手順
CB CD133+細胞の遺伝子発現分析は記載されており(Jaatinen et al.,2006)、本分析は本質的に同様に行った。遺伝子発現プロファイルが分析されたガレクチンとしては(対応するアフィメトリクスの記号を括弧内に記す):ガレクチン−1(201105_at)、ガレクチン−2(208450_at)、ガレクチン−3(208949_s_at)、ガレクチン−4(204272_at)、ガレクチン−6(200923_at)、ガレクチン−7(206400_at)、ガレクチン−8(208933_s_at)、ガレクチン−9(203236_s_at)、ガレクチン−10(206207_at)、ガレクチン−13(220158_at)が含まれた。
結果および考察
CB CD133+対CD133−、およびCD34+対CD34− CB MNC細胞においては、ガレクチン遺伝子発現プロファイルは次の通りであった:全体として、ガレクチン1、2、3、6、8、9、および10はCD34+/CD133+細胞において遺伝子発現を示した。ガレクチン1、2、および3は、CD34+/CD133+の両者細胞において、CD34−/CD133−細胞よりも下方制御されており、さらにガレクチン10は、CD133+細胞において、CD133−細胞よりも下方制御されていた。一方、CD34+/CD133+の両者細胞において、ガレクチン8は、CD34−/CD133−細胞よりも上方制御されていた。
hESC対EB試料において、ガレクチン遺伝子発現プロファイルは次の通りであった:全体として、ガレクチン1、3、6、8、および13はhESCにおいて遺伝子発現を示した。ガレクチン3は明らかにEBよりも下方制御されており、さらにガレクチン13は4つのうち2つのhESC株において下方制御されていた。一方、ガレクチン1は明らかに全てのhESC株において上方制御されていた。
結果は、CB CD34+/CD133+の両者幹細胞集団およびhESCが興味深い異なったガレクチン発現プロファイルを有しており、異なったガレクチンリガンド親和性プロファイル(Hirabayashi et al.,2002)をもたらすことを示唆する。結果はさらに、これらの幹細胞における多量のガレクチンリガンドの発現、特に非還元末端β−GalおよびII型LacNAc、ポリ−LacNAc、β1,6−分岐ポリ−LacNAc、および複合型N−グリカンの発現を示したグリカン分析の結果と相関している。
実施例14
幹細胞の免疫組織化学染色
(培養中の)胚幹細胞の免疫組織化学染色による研究(GF系列の染色)
hESC細胞を実施例に記載のように培養した。細胞を固定し、PBSでリンスした後、幹細胞培養物/切片をPBS中の3%の高純度に精製されたBSA中で30分間、室温でインキュベートし、非特異的結合部位をブロックした。一次抗体(GF279、288、287、284、285、283,286,290および289)を、1% BSA−PBSを含むPBS中で希釈(1:10)し、1時間、室温でインキュベートした。PBSで3回リンスした後、切片を、PBS中のビオチン化ウサギ抗マウス、二次抗体(Zymed Laboratories, San Francisco, CA, USA)とともに30分間室温でインキュベートし、PBS中でリンスし、PBS中に希釈されたペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Zymed Laboratories)とともにインキュベートした。切片を最後にAEC基質(3−アミノ−9−エチルカルバゾール; Lab Vision Corporation, Fremont, CA, USA)で現像した。水でリンス後、対比染色をMayerのヘマラム溶液で行った。
免疫染色で用いた抗体、それらの抗原/エピトープおよび記号。結果については表19も参照のこと。
Figure 2010516239
特異的抗体による幹細胞試料における細胞表面上の炭水化物構造の検出
材料および方法
細胞試料
骨髄からの間葉系幹細胞(MSC)を生成し、増殖培地中で上記のように培養した。MSCを分化培地(4ng/ml デキサメタゾン、10mmol/L β−グリセロリン酸、および50μmol/L アスコルビン酸を含む増殖培地)中で6週間培養し、骨原性分化を誘導した。分化培地は分化期間を通じて週2回新しいものに換えた。
抗体
免疫染色
継代9〜12における骨髄由来間葉系幹細胞を、0.01% ポリ−L−リジン(Sigma、USA)で被覆したガラス8チャンバースライド(Lab−TekII、Nalge Nunc、Denmark)上で、37℃、5%COの下、2〜4日間増殖させた。骨原性細胞を同一の8チャンバースライドを用いて分化培地中で6週間培養した。培養後、細胞を5回PBS(10mM リン酸ナトリウム、pH7.2、140mM NaCl)で洗浄し、4% PBS緩衝パラホルムアルデヒドpH7.2で室温(RT)において10〜15分間固定し、次いでPBSで3回5分間洗浄した。非特異的結合部位を3% HSA−PBS(FRC Blood Service、Finland)で30分間、RTでブロックした。一次抗体を1% HSA−PBS(1:10〜1:200)中で希釈し、60分間RTでインキュベートし、次いでPBSで3回10分間洗浄した。1% HSA−PBS中の二次抗体、Alexa Fluor 488ヤギ抗マウスIgG(H+L;1:1000)(Invitrogen)、Alexa Fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(H+L;1:1000)(Invitrogen)、またはFITC−結合ウサギ抗ラットIgG(1:320)(Sigma)を60分間RTで暗所においてインキュベートした。さらに、細胞をPBSで3回10分間洗浄し、DAPI染色剤を含有するVectashield封入剤(Vector Laboratories、UK)に封入した。免疫染色を、Zeiss Axioskop 2 plus蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Vision GmbH、ドイツ)を用いて、FITCおよびDAPIフィルターとともに観察した。像をZeiss AxioCam MRcカメラを用いて、AxioVision Software 3.1/4.0(Carl Zeiss)を使用し、400Xの倍率で撮影した。
蛍光活性化細胞選別(FACS)分析
継代12における増殖中MSCを、0.02% Versene溶液(pH7.4)、45分間、37℃により、培養プレートから遊離させた。抗体標識の前に、細胞を2回、0.3% HSA−PBS溶液で洗浄した。一次抗体を30分間RTでインキュベート(4μl/100μl 細胞懸濁液/50000細胞)し、1回0.3% HSA−PBSで洗浄した後、Alexa Fluor 488ヤギ抗マウス(1:500)による二次抗体検出を30分間RTで暗所中において行った。ネガティブコントロールとして、細胞を一次抗体無しでインキュベートした以外は標識細胞と同様に処理した。細胞をBD FACSAria(Becton Dickinson)により、波長488のFITC検出器を用いて分析した。結果をBD FACSDivaソフトウェア バージョン5.0.1(Becton Dickinson)により分析した。
免疫染色で用いた抗体、それらの抗原/エピトープおよび記号。結果については表19も参照のこと。
Figure 2010516239
実施例15
臍帯血単核球N−グリカンのグリコシダーゼプロファイリング
実験手順
エキソグリコシダーゼ消化
中性N−グリカン画分を上記のように臍帯血単核球集団から単離した。エキソグリコシダーゼ反応を本質的に製品の使用説明書に従い、および(Saarinen et al.,1999)に記載されるように行った。各種反応は;α−Man:タチナタマメからのα−マンノシダーゼ(C.ensiformis;Sigma,USA);β1,4−Gal:S.pneumoniaeからのβ1,4−ガラクトシダーゼ(大腸菌における組み替え体;Calbiochem,USA);β1,3−Gal:組み替えβ1,3−ガラクトシダーゼ(Calbiochem,USA);β−GlcNAc:S. pneumoniaeからのβ−グルコサミニダーゼ(Calbiochem,USA);α2,3−SA:S.pneumoniaeからのα2,3−シアリダーゼ(Calbiochem,USA);であった。分析のための反応は、特異性に関して、並行したコントロール反応において合成オリゴ糖を用い、それをMALDI−TOF質量分析により分析して注意深く制御された。α2,3−SAのシアル酸結合特異性は、並行したコントロール反応において合成オリゴ糖を用いて制御され、反応条件下で酵素がα2,3−結合シアル酸を加水分解したがα2,6−結合シアル酸を加水分解しなかったことが確認された。分析は先の実施例に記載のようにMALDI−TOF質量分析により行った。消化の結果を、反応前後のグリカンプロファイルの比較により分析した。
結果
中性N−グリカンのグリコシダーゼプロファイリング
臍帯血単核球からのアフィニティー精製されたCD34+、CD34−、CD133+、CD133−、Lin+、およびLin−細胞試料からの中性N−グリカン画分を上記のように単離した。グリカン試料を、実験手順に記載されるように並行したグリコシダーゼ消化にかけた。プロファイリングの結果を表2(CD34+およびCD34−細胞)、表3(CD133+およびCD133−細胞)、および表4(Lin−およびLin+細胞)にまとめる。本結果は、いくつかの中性N−グリカンシグナルが個々に全てのエキソグリコシダーゼに対して感受性であることを示し、全ての細胞型においていくつかの中性N−グリカンがそれらの非還元末端に特異的基質グリカン構造を有することが示唆された。結果は、前述の表中に詳細に述べたように、個々のグリカンシグナルの各酵素に対する感受性、およびさらにはプロファイル全体にわたる細胞型間の相違、の両者における、細胞型間の明瞭な違いも示す。
シアル化N−グリカンのグリコシダーゼプロファイリング
臍帯血単核球からのアフィニティー精製されたCD133+およびCD133−細胞試料からのシアル化N−グリカン画分を上記のように単離した。グリカン試料を、実験手順に記載されるように並行したグリコシダーゼ消化にかけた。a2,3−シアリダーゼによるプロファイリングの結果を表5に示す。結果は、反応中に生ずるシアル化および中性グリカン画分における、分析された細胞型のグリカンプロファイル間の有意な相違を示す。本結果は、プロファイル全体にわたる様式で複数のシグナルにおいて相違が認められることを示す。上で考察されるように、個々のシグナルも細胞型間で相違する。
臍帯血CD133およびCD133細胞のN−グリカンは異なってα2,3−シアル化されている
実験手順に記載のように、臍帯血CD133およびCD133細胞からのシアル化N−グリカンをα2,3−シアリダーゼで処理し、その後生じたグリカンをシアル化および非シアル化画分に分けた。α2,3−シアリダーゼ抵抗性および感受性の両者のシアル化N−グリカンが観察された。すなわち、シアリダーゼ処理後、シアル化グリカンがシアル化N−グリカン画分で観察され、脱シアル化グリカンが中性N−グリカン画分で観察された。結果は、臍帯血CD133およびCD133細胞が異なってα2,3−シアル化されていることを示す。例えば、α2,3−シアリダーゼ処理後、NeuAcHexHexNAcdHexの[M−H]イオンに対応するm/z 2076におけるモノシアル化(SA)グリカンシグナルと、NeuAcHexHexNAcdHexの[M−H]イオンに対応するm/z 2367におけるジシアル化(SA)グリカンシグナルとの相対的な割合は、α2,3−シアリダーゼ抵抗性ジシアル化N−グリカンが、α2,3−シアリダーゼ抵抗性モノシアル化N−グリカンと比較した際に、CD133細胞において、CD133細胞におけるよりも相対的に多量であることを示す。N−グリカンのα2,3−シアル化は、特にα2,6−シアル化等の他のシアル酸結合と比べ、臍帯血CD133細胞において、CD133細胞におけるよりも、多量であると結論される。
臍帯血CD133細胞においては、α2,3−シアリダーゼ処理に抵抗性のいくつかのシアル化N−グリカンが観察された。すなわち、本来のシアル化グリカンの脱シアル化型に対応するであろう中性グリカンは観察されなかった。臍帯血CD133およびCD133細胞間の個々のN−グリカン構造の異なったα2,3−シアル化を明らかにする結果を表5に示す。本結果は、N−グリカンのα2,3−シアル化が、他のシアル酸結合と比べ、臍帯血CD133+細胞において、CD133−細胞におけるよりも多量であるということを示す。
シアリダーゼ分析
臍帯血単核球集団(CB MNC)から単離されたシアル化N−グリカン画分を、先の実施例に記載される広範なシアリダーゼで消化した。反応後、シアル化N−グリカンの圧倒的多数が脱シアル化され、対応する中性N−グリカンに変換されたことがMALDI−TOF質量分析によって観察され、それらが、提案された単糖組成によって示唆されたように、シアル酸残基(NeuAcおよび/またはNeuGc)を有していたことが示された。CB MNC集団の中性および脱シアル化(本来はシアル化)N−グリカン画分の組み合わせグリカンプロファイルを生成した。プロファイルは細胞試料から単離された全N−グリカンプロファイル(脱シアル化型のもの)に対応する。N−グリカンシグナルの約25%が高マンノース型N−グリカンの単糖組成に、28%が低マンノース型N−グリカンの、34%が複合型N−グリカンの、そして13%がハイブリッド型または単分岐N−グリカンの単糖組成に対応すると計算される。
結論
本結果は、1)グリコシダーゼプロファイリング法を用いて個々のグリカンシグナルの構造的特徴、および個々のグリカンの細胞型間での相違を分析することができること、2)異なる細胞型は互いにグリコシダーゼに対する個々のグリカンシグナルおよびグリカンプロファイルの両者の感受性に関して異なっていること、そして3)グリコシダーゼプロファイリングは各種細胞型を区別するためのさらなる手段として用いることができ、このような場合、比較のためのパラメーターは個々のシグナルおよびプロファイル全体にわたる相違の両者であること、を示唆する。
実施例16
細胞表面グリカン構造の酵素修飾
実験手順
酵素修飾
シアル酸転移酵素反応:ヒト臍帯血単核球(3x10細胞)を、全量100μlの50mM 3−モルフォリノプロパンスルホン酸ナトリウム(MOPS)バッファー pH7.4、150mM NaCl中の、60mU α2,3−(N)−シアル酸転移酵素(ラット、S.frugiperdaにおける組み替え体、Calbiochem)、1.6μモル CMP−Neu5Acを用いて、12時間まで修飾した。フコース転移酵素反応:ヒト臍帯血単核球(3x10細胞)を、全量100μlの50mM MOPSバッファー pH7.2、150mM Nacl中の、4mU α1,3−フコース転移酵素VI(ヒト、S.frugiperdaにおける組み替え体、Calbiochem)、1μモル GDP−Fucを用いて、3時間まで修飾した。広範なシアリダーゼ反応:ヒト臍帯血単核球(3x10細胞)を、全量100μlの50mM 酢酸ナトリウムバッファー pH5.5、150mM NaCl中の、5mU シアリダーゼ(A.ureafaciens, Glyko, UK)を用いて、12時間まで修飾した。α2,3−特異的シアリダーゼ反応:細胞を、全量100μlの50mM 酢酸ナトリウムバッファー pH5.5、150mM NaCl中の、α2,3−シアリダーゼ(S.pneumoniae、大腸菌における組み替え体)を用いて修飾した。α−マンノシダーゼ反応:α−マンノシダーゼはタチナタマメからのものであり、反応は本質的に上記の他の酵素と同様に行った。逐次的酵素修飾:逐次反応の間に、細胞を遠心分離で沈殿させ、上清を捨て、その後、適当なバッファー中の次の修飾酵素および基質溶液を上記のように細胞に加えた。洗浄手順:修飾後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。
グリカン分析
細胞を洗浄後、全細胞糖タンパク質をN−グリコシダーゼ消化にかけ、シアル化および中性N−グリカンを単離して上記のように質量分析により分析した。O−グリカンの分析のため、糖タンパク質を、本質的に先の記載(Nyman et al.,1998)の通りに還元アルカリβ脱離(reducing alkaline β−elimination)にかけ、その後シアル化および中性グリカンアルジトール画分を単離し、上記のように質量分析で分析した。
結果
シアリダーゼ消化
広範なシアリダーゼに触媒された生きた臍帯血単核球の脱シアル化の際、シアル化N−グリカン構造およびO−グリカン構造(データ不掲載)が、対応する中性N−グリカン構造、例えばHexHexNAc、HexHexNAcdHex0−2、およびHexHexNAcdHex0−1単糖組成の相対量の増加で示されるように、脱シアル化された(表9)。一般に、グリコシル化プロファイルの、シアル酸残基がより少ないグリカン構造への変化が、シアル化N−グリカンの分析において広範なシアリダーゼ処理の際に観察された。反応の際の細胞のグリカンプロファイルの変化は、反応結果を特徴付けるための効果的な手段として役立った。生じた修飾された細胞は、より少ないシアル酸残基とより多くの末端ガラクトース残基とをそれらの表面に反応後に有していたと結論される。
α2,3−特異的シアリダーゼ消化
同様に、α2,3−特異的シアリダーゼに触媒された生きた単核球の脱シアル化の際、対応する中性N−グリカン構造の相対量の増加で示されるように、シアル化N−グリカン構造が脱シアル化された(データ不掲載)。一般に、グリコシル化プロファイルの、シアル酸残基がより少ないグリカン構造への変化が、シアル化N−グリカンの分析においてα2,3−特異的シアリダーゼ処理の際に観察された。反応の際の細胞のグリカンプロファイルの変化は、反応結果を特徴付けるための効果的な手段として役立った。生じた修飾された細胞は、より少ないα2,3−結合シアル酸残基とより多くの末端ガラクトース残基とをそれらの表面に反応後に有していたと結論される。
シアル酸転移酵素反応
α2,3−シアル酸転移酵素に触媒された生きた臍帯血単核球のシアル化の際、中性N−グリカン構造(表9におけるHexHexNAcdHex0−3およびHexHexNAcdHex0−2単糖組成)の相対量の減少および対応するシアル化構造(例えば表8のNeuAcHexHexNAcdHexグリカン)の増加により示されるように、多数の中性(表9)およびシアル化N−グリカン(表8)構造ならびにO−グリカン構造(データ不掲載)がシアル化された。一般に、グリコシル化プロファイルの、シアル酸残基がより多いグリカン構造への変化が、N−グリカンおよびO−グリカン両者の分析において観察された。生じた修飾された細胞は、より多くのα2,3−結合シアル酸残基とより少ない末端ガラクトース残基とをそれらの表面に反応後に有していたと結論される。
フコース転移酵素反応
α1,3−フコース転移酵素に触媒された生きた臍帯血単核球のフコシル化の際、非フコシル化グリカン構造(提案された単糖組成においてdHexを有しない)の相対量の減少および対応するフコシル化構造(提案された単糖組成においてndHex>0を有する)の増加により示されるように、多数の中性(表9)およびシアル化N−グリカン構造ならびにO−グリカン構造(下記参照)がフコシル化された。例えば、フコシル化前には、HexHexNAcアルジトールの[M+Na]イオンに対応するm/z 773の、およびHexHexNAcdHexアルジトールの[M+Na]イオンに対応するm/z 919の、O−グリカンアルジトールシグナルが、それぞれ約9:1の相対的割合で観察された(データ不掲載)。フコシル化後、前記シグナルのおおよその相対的割合は3:1であり、中性O−グリカンの有意なフコシル化が起こったことが示唆された。本来の細胞に観察されなかったいくつかのフコシル化N−グリカン構造、例えば提案された構造HexHexNAcdHexおよびHexHexNAcdHexを有する中性N−グリカン(表9)さえも反応後において観察され、α1,3−フコース転移酵素反応において、生細胞の細胞表面が、増加した量または通常と異なる構造型のフコシル化グリカン、特にタンパク質結合N−グリカンにおける、およびO−グリカンにおける、末端Lewis xエピトープで修飾され得ることが示唆された。
シアリダーゼ消化とその後のシアル酸転移酵素反応
実験手順に記載されるように、臍帯血単核球を広範なシアリダーゼ反応にかけ、その後α2,3−シアル酸転移酵素およびCMP−Neu5Acを同一の反応物に添加した。この反応順序の効果はN−グリカンプロファイル上で観察可能であった。シアル化N−グリカンプロファイルも反応工程間で分析され、結果は、シアル酸がまずシアル化N−グリカンから除去され(例えば増加した量の中性N−グリカンの出現により示される)、次いでα2,3−結合シアル酸残基に置き換わった(例えば前記の新規に形成された中性N−グリカンの消失により示される;データ不掲載)ことを明瞭に示した。生じた修飾された細胞は反応後により多くのα2,3−結合シアル酸残基を有していたと結論される。
シアル酸転移酵素反応とその後のフコース転移酵素反応
実験手順に記載されるように、臍帯血単核球をα2,3−シアル酸転移酵素反応にかけ、その後α1,3−フコース転移酵素およびGDP−フコースを同一の反応物に添加した。この反応順序の効果はシアル化N−グリカンプロファイル上で観察可能であった。結果はグリカンシグナルの主要な部分(表8および9における例)がそれらの相対強度に変化を受け、細胞に存在するシアル化N−グリカンの主要な部分が前記酵素の基質であったことが示唆された。前記酵素反応工程の組み合わせは、どちらか一方のみの反応工程とは異なる結果を生じたことも明らかであった。
上述のα1,3−フコース転移酵素反応とは異なり、フコシル化前のシアル化は、臍帯血単核球表面上に存在する中性フコース転移酵素受容グリカン構造をシアル化し、単独でのα1,3−フコース転移酵素反応後に生じた中性フコシル化N−グリカン構造の検出可能な形成(上記で考察される;表9)をもたらさなかった。
α−マンノシダーゼ反応
全細胞のα−マンノシダーゼ反応は、先の実施例でα−マンノース残基を有することが示されたものを含むグリカンシグナルの軽微な減少を示した。
糖転移酵素由来グリカン構造
修飾反応において、グリコシル化された糖転移酵素が細胞に混入し得ることが検出された。例えば、細胞がS.frugiperda細胞で産生された組み替えフコース転移酵素またはシアル酸転移酵素とともにインキュベートされた際に、細胞および/または細胞関連糖タンパク質のN−グリコシダーゼおよび質量分析は、HexHexNAcdHexグリカン成分の[M+Na]イオンに対応するm/z 1079における多量の中性N−グリカンシグナルの検出をもたらした(計算値 m/z 1079.38)。典型的には、組み替え糖転移酵素で処理された細胞において、このグリカンシグナルはその細胞自身のグリカンシグナルよりも多量であるかまたは少なくとも同程度であり、昆虫由来の複合糖質が、昆虫細胞内で産生された、組み替え体の、グリカン修飾された酵素と関連した非常に有力な混入物であることが示唆された。さらに、このグリカンの混入は細胞の洗浄後にも持続し、糖転移酵素に対応するまたは関連する昆虫型複合糖質が細胞に対して親和性を有するか、または細胞からの洗浄に対して抵抗性である傾向を有することが示唆された。前記グリカンシグナルの由来を確認するため、我々は市販の組み替えフコース転移酵素およびシアル酸転移酵素の調製物のグリカン含有物を分析し、m/z 1079グリカンシグナルがこれらの酵素と関連した主要なN−グリカンシグナルであることを見出した。対応するN−グリカン構造、例えばManα3(Manα6)Manβ4GlcNAc(Fucα3/6)GlcNAc(β−N−Asn)は、S.frugiperda細胞において産生される糖タンパク質から先に記載されている(Staudacher et al.,1992; Kretzchmar et al.,1994;Kubelka et al.,1994;Altmann et al.,1999)。文献に記載されるように、これらのグリカン構造、および組み替え体のまたは精製された酵素で処理された細胞に潜在的に混入する他のグリカン構造、特に昆虫由来産物は、潜在的にヒトにおいて免疫原性であり、および/または、そうでなければ修飾された細胞の使用に対して有害である。グリカン修飾酵素はヒト細胞の、特に臨床用途のための、修飾のために、免疫原性のグリカンエピトープ、非ヒトグリカン構造、および/または潜在的に望ましくない生物学的効果を有する他のグリカン構造を含まないように注意深く選択されるべきであると結論される。
実施例17
ヒト胚幹細胞のエキソグリコシダーゼ分析
実験手順
hESCおよび分化した細胞試料
ヒト胚幹細胞(hESC)および胚様体(EB)試料をhESC株FES29(Skottman et al.,2005)から本質的に先の実施例に記載されるように調製したが、本実施例においてはhESCはマウス線維芽細胞フィーダー細胞(mEF)上で増殖させ、hESC試料はある程度のmEF細胞を含んだ。
エキソグリコシダーゼ消化を本質的に記載(Saarinen et al.,1999)のように、および先の実施例に記載されるように行った。用いた酵素はタチナタマメからのα−マンノシダーゼおよびβ−ヘキソサミニダーゼ(C.ensiformis,Sigma,USA)、S.pneumoniaeからのβ−グルコサミニダーゼおよびβ1,4−ガラクトシダーゼ(大腸菌における組み替え体、Calbiochem,USA)、S.pneumoniaeからのα2,3−シアリダーゼ(Glyko,UK)、Xanthomonas sp.からのα1,3/4−フコシダーゼ(Calbiochem,USA)、X.manihotisからのα1,2−フコシダーゼ(Glyko)、β1,3−ガラクトシダーゼ(大腸菌における組み替え体、Calbiochem)、およびA.ureafaciensからのα2,3/6/8/9−シアリダーゼ(Glyko)であった。酵素の特異的活性は精製したオリゴ糖またはオリゴ糖混合物を用いた並行的な反応において制御され、前記分析反応と同様に分析された。エキソグリコシダーゼ消化結果表における変化は、記録された質量スペクトルにおける相対的な変化であり、それらはグリコシダーゼ処理から生じたグリカンプロファイルの絶対的な変化を反映するものではない。
結果および考察
hESC
中性および酸性N−グリカン画分を、マウスおよびヒト両者の線維芽細胞フィーダー細胞上で先の実施例に記載のように増殖させたhESCから単離した。中性(表10および11)および酸性(表12)グリカン画分の並行的なエキソグリコシダーゼ消化の結果を以下に考察する。以下の章においては、グリカンシグナルは、本発明の表の、その提案された単糖組成によって参照され、対応するm/z値を表から読み取ることができる。
α−マンノシダーゼ感受性構造
中性N−グリカン画分のαマンノシダーゼ消化の際に減少を示した全てのグリカンシグナル(表10および11)は、末端α−マンノース残基を有するグリカンに対応することが示唆される。本結果は、hESCの中性N−グリカンの大部分が末端α−マンノース残基を有することを示す。一方、増加したシグナルはそれらの反応産物に対応する。中性N−グリカン画分中のα−マンノシル化グリカンの系列および個々のα−マンノシル化グリカンを形成する構造群を以下に詳細に考察する。
Hex1−9HexNAcグリカン系列は、Hex3−9HexNAcが消化されてHexHexNAcに変換されるように消化され(データ不掲載)、それらが末端α−マンノース残基を有していたことが示唆された。それらがHexHexNAcに変換されたことから、それらの実験に基づく構造は(Manα)1−8HexHexNAcであった。
Hex1−12HexNAcグリカン系列は、Hex3−12HexNAcが消化されてHex1−7HexNAcに、および特に、反応前には存在しておらず、主要な反応産物であったHexHexNAcに変換されるように消化された。これは、1)グリカンHex3−12HexNAcが末端α−マンノース残基を有するグリカンを含むこと、2)グリカンHex1−7HexNAcがより大型のα−マンノシル化グリカンから形成され得ること、および3)グリカンHex3−12HexNAcの大部分が新規に形成されたHexHexNAcに変換され、そのため実験に基づく構造(Manα)HexHexNAc[式中、n≧1]を有していたことを示す。α−マンノシダーゼ反応が多くのシグナルに対して部分的にしか完了しなかったという事実は、他のグリカン成分もHex1−12HexNAcグリカン系列中に含まれることを示唆する。特に、Hex10−12HexNAc成分は最も大型の典型的な哺乳類高マンノース型N−グリカンよりも1〜3個多いヘキソース残基を有しており、それらが(Glcα)1−3HexHexNAc等のグルコシル化構造、優先的にはα2−および/またはα3−結合Glcを含み、ならびにより優先的にはグルコシル化N−グリカンGlcα3→ManGlcNAc、Glcα2Glcα3→ManGlcNAc、および/またはGlcα2Glcα2Glcα3→ManGlcNAcに存在することが示唆される。対応するグルコシル化断片がα−マンノシダーゼ消化後に観察され、優先的にはGlc1−3ManGlcNAc(Hex5−7HexNAc)に対応した。
Hex1−6HexNAcdHexグリカン系列は、Hex3−9HexNAcdHexが消化されてHexHexNAcdHexに変換されるように消化され、それらが末端α−マンノース残基を有し、それらの実験に基づく構造が(Manα)2−5HexHexNAcdHexであったことが示唆された。HexHexNAcdHexが新規シグナルとして出現し、構造(Manα)HexHexNAcdHex[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことが示唆された。
Hex2−7HexNAcグリカン系列は、Hex5−7HexNAcが消化されて系列内の他のグリカンに変換されるように消化され、それらが末端α−マンノース残基を有していたことが示唆された。HexHexNAcが新規シグナルとして出現し、構造(Manα)HexHexNAc[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことが示唆された。
Hex2−7HexNAcdHexグリカン系列は、Hex5−7HexNAcdHexが消化されて系列内の他のグリカンに変換されるように消化され、それらが末端α−マンノース残基を有していたことが示唆された。HexHexNAcdHexが有意に増加し、構造(Manα)HexHexNAcdHex[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことが示唆された。
HexHexNAcdHexが新規シグナルとして出現し、構造(Manα)HexHexNAcdHex[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことが示唆された。
β−グルコサミニダーゼ感受性構造
HexHexNAc2−5およびHexHexNAc2−5dHexグリカン系列は、Hex3−5HexNAcdHex0−1が消化されてHexHexNAcdHex0−1に変換されるように消化され、それらが末端β−GlcNAc残基を有し、それらの実験に基づく構造がそれぞれ(GlcNAcβ→)1−3HexHexNAcおよび(GlcNAcβ→)1−3HexHexNAcdHexであったことが示唆された。
HexHexNAc、HexHexNAcdHex、HexHexNAcdHex、およびHexHexNAcdHexも消化され、それらがそれぞれ、(GlcNAcβ→)HexHexNAc、(GlcNAcβ→)HexHexNAcdHex、(GlcNAcβ→)HexHexNAcdHex、および(GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexを含む構造を有していたことが示唆された。
HexHexNAcdHexおよびHexHexNAcdHexはβ−グルコサミニダーゼにより消化され、2個のβ−GlcNAc残基をそれぞれ含むことが示された。一方、HexHexNAcはβ−グルコサミニダーゼによって消化されなかった。
β−ヘキソサミニダーゼ感受性構造
HexHexNAcグリカンシグナルはβ−ヘキソサミニダーゼに対して感受性であったが、β−グルコサミニダーゼには感受性ではなく、それがβ−GlcNAc以外の末端β−N−アセチルヘキソサミン残基、優先的にはβ−GalNacを有するグリカン構造に対応したことが示唆された。β−ヘキソサミニダーゼ消化の際、シグナルはHexHexNAcに変換され、酵素が2個のHexNAc残基を対応するグルカン構造から遊離させたことが示唆された。
β1,4−ガラクトシダーゼ感受性構造
β1,4−ガラクトシダーゼに対して感受性であったグリカンシグナルはhESCグリカンの主要な部分を構成しており、β1,4−結合ガラクトースがhESCの中性N−グリカンにおいて一般的な末端エピトープでることが示唆された。
HexHexNAcおよびHexHexNAcdHexは消化されてHexHexNAcおよびHexHexNAcdHexとなり、それらがそれぞれ構造(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcおよび(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexを有していたことが示唆された。一方、HexHexNAcdHexは消化されてHexHexNAcdHexとなり、それが構造(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexを有していたことが示唆され、HexHexNAcdHexは全く消化されなかった。まとめると、hESCにおいて、ヘキソース残基はN−グリカン構造においてβ1,4−ガラクトシダーゼの作用からデオキシヘキソース残基によって保護されている。β1,4−結合ガラクトースを有するこのようなdHex−保護構造としてはGalβ4(Fucα3)GlcNAcおよびFucα2Galβ4GlcNAc等が挙げられる。
β−ヘキソサミニダーゼ感受性成分も有していたHexHexNAcはβ1,4−ガラクトシダーゼによって消化された。まとめると、結果は、HexHexNAcグリカンシグナルがGalβ4GlcNAc(GalNAcβHexNAcβ)HexHexNAc等のグリカン構造を含むことを示唆する。
β1,3−ガラクトシダーゼ感受性構造
hESCの中性N−グリカン画分における少数の構造のみがβ1,3−ガラクトシダーゼの作用に対して感受性であったことから、末端ガラクトース残基の大部分はβ1,4−結合しているようである。
グリコシダーゼ抵抗性構造
本実験において、HexHexNAc、HexHexNAcdHex、およびHexHexNAcは試験したエキソグリコシダーゼに対して抵抗性であった。2番目の単糖組成は1個を上回るデオキシヘキソース残基を有しており、それが、優先的にはFucα2Gal、Fucα3GlcNAc、および/またはFucα4GlcNAcエピトープに存在する、α2−、α3−、またはα4−結合フコース残基等のdHex残基によってグリコシダーゼ消化から保護されていることが示唆される。
hESCのエキソグリコシダーゼ消化に基づいてまとめられた中性N−グリカン画分のグリカン構造を表13に示す。
酸性N−グリカン画分
mEF細胞層上で増殖させたhESCの酸性N−グリカン画分を、並行したα2,3−シアリダーゼおよびA.ureafaciensシアリダーゼ処理ならびにα1,3/4−フコシダーゼおよびα1,2−フコシダーゼを用いた逐次消化によって分析した。これらの反応からの結果をMALDI−TOF質量分析によって分析したものを表12に記載する。結果は、hESC試料中の複数のN−グリカン成分がこれらの酵素に対する特異的グリカン基質、すなわちα2,3−結合および他のシアル酸残基ならびにα1,2−およびα1,3/4−結合フコース残基を含むことを示唆した。一部のグリカンシグナルは多数のこれらのエピトープの存在を示し、例えばm/z 2222におけるグリカンシグナル(NeuAcHexHexNAcdHexに対応)はこれらのエピトープの全てを、優先的には複数のグリカン構造に含むことが示唆された。hESCのエキソグリコシダーゼ消化に基づきまとめられた酸性N−グリカン画分のグリカン構造を表25に示す。
EB
表10に記載するように、胚様体(EB;表10におけるFES29 st 2)とhESC(表10におけるFES29 st 1)との間の分化特異的変化がそれらの中性N−グリカン画分エキソグリコシダーゼ消化プロファイル中に反映されていた。異なったエキソグリコシダーゼ消化結果が、各種中性N−グリカン画分グリカンプロファイルに対応するm/z 1688、1704、1793、1866、1955、1971、2012、2028、2142、2158、および2320等のグリカンシグナルにおいて観察された。
mEF
表26および表10の比較により、マウスフィーダー細胞(mEF)特異的中性N−グリカン画分グリカン成分が同定され、それらを表27に列挙する。これらのグリカン成分は本発明のhESCまたはhEF特異的構造と比べ、さらなるヘキソース残基によって特徴付けられる。エキソグリコシダーゼ実験はβ1,4−結合ガラクトースエピトープが前記単糖組成中の任意のさらなるヘキソース残基によってβ1,4−ガラクトシダーゼ消化から保護されていることも示唆する。本発明のNMR分析結果と総合すると、表27に記載されるように、前記のさらなるヘキソース残基は、α−結合したガラクトース残基、より具体的にはN−グリカン分岐中のGalα3Galエピトープを含むと示唆される。
実施例18
ヒト間葉系幹細胞のエキソグリコシダーゼ分析
エキソグリコシダーゼ消化結果表における変化は、記録された質量スペクトルにおける相対的な変化であり、それらはグリコシダーゼ処理の結果生じたグリカンプロファイルの絶対的な変化を反映するものではない。実験手順は先の実施例に記載される。
結果
未分化BM MSC
中性および酸性N−グリカン画分を、記載のようにBM MSCから単離した。中性(表14)および酸性(データ不掲載)グリカン画分の並行的なエキソグリコシダーゼ消化の結果を以下に考察する。以下の章においては、グリカンシグナルは、本発明の表の、それらの提案された単糖組成によって参照され、対応するm/z値を表から読み取ることができる。
α−マンノシダーゼ感受性構造
中性N−グリカン画分のαマンノシダーゼ消化の際に減少を示した全てのグリカンシグナル(表14)は、末端α−マンノース残基を有するグリカンに対応することが示唆される。本結果は、BM MSCの中性N−グリカンの大部分が末端α−マンノース残基を有することを示している。一方、増大したシグナルはその反応産物に対応する。中性N−グリカン画分中の一連のα−マンノシル化グリカンを形成する構造群および個々のα−マンノシル化グリカンについて以下に詳細に考察する。
Hex1−9HexNAcグリカン系列は、Hex3−9HexNAcが消化されてHexHexNAcに変換されるように消化され(データ不掲載)、それらが末端α−マンノース残基を有していたことが示唆される。これらはHexHexNAcに変換されたことから、それらの実験に基づく構造は(Manα)1−8HexHexNAcであった。
Hex1−10HexNAcグリカン系列は、Hex4−10HexNAcが消化されてHex1−4HexNAcに、および、特に、反応前は存在しておらず、主要な反応産物であったHexHexNAcに、変換されるように消化された。これは、1)グリカンHex4−10HexNAcが末端α−マンノース残基を有するグリカンを含む、2)グリカンHex1−4HexNAcがより大型のα−マンノシル化グリカンから形成され得る、および、3)グリカンHex4−10HexNAcの大部分が新たに形成されたHexHexNAcに変換され、そのため実験に基づく構造(Manα)HexHexNAc[式中、n≧1]を有する、ということを示す。α−マンノシダーゼ反応が多くのシグナルに対して部分的にしか完了しなかったとう事実は、他のグリカン成分もHex1−10HexNAcグリカン系列中に含まれるということを示唆している。特に、Hex10HexNAc成分は1個のヘキソース残基を最大の典型的哺乳動物高マンノース型N−グリカンよりも多く有しており、それが(Glcα→)HexHexNAc等のグルコシル化構造、優先的にはα3−結合Glcを含み、および、より優先的にはグルコシル化N−グリカン(Glcα3→)ManGlcNAcに存在することが示唆される。
Hex1−6HexNAcdHexグリカン系列は、Hex3−9HexNAcdHexが消化されてHexHexNAcdHexに変換されるように消化され、それらが末端α−マンノース残基を有しており、その実験に基づく構造は(Manα)2−5HexHexNAcdHexであったことが示唆された。HexHexNAcdHexは新たなシグナルとして現れ、構造(Manα)HexHexNAcdHex[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことをが示唆された。
Hex2−7HexNAcグリカン系列は、Hex6−7HexNAcが消化されて該系列の他のグリカンに変換されるように消化され、それが末端α−マンノース残基を有していたことが示唆された。HexHexNAcは新たなシグナルとして現れ、構造(Manα)HexHexNAc[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことをが示唆された。
Hex2−7HexNAcdHexグリカン系列は、Hex6−7HexNAcdHexが消化されて該系列の他のグリカンに変換されるように消化され、それが末端α−マンノース残基を有していたことが示唆された。HexHexNAcdHexは新たなシグナルとして現れ、構造(Manα)HexHexNAcdHex[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことをが示唆された。
HexHexNAcdHexおよびHexHexNAcは新たなシグナルとして現れ、それぞれ構造(Manα)HexHexNAcdHexおよび(Manα)HexHexNAc[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことをが示唆された。
β−グルコサミニダーゼ感受性構造
HexHexNAc2−5dHexグリカン系列は、Hex3−9HexNAcdHexが消化されてHexHexNAcdHexに変換されるように消化され、それが末端α−マンノース残基を有していたことが示唆され、その実験に基づく構造が(Manα)2−5HexHexNAcdHexであったことが示唆された。HexHexNAcdHexは新たなシグナルとして現れ、構造(Manα)HexHexNAcdHex[式中、n≧1]を有するグリカンが試料中に存在していたことをが示唆された。しかし、HexHexNAcdHexは消化されず、それがβ結合GlcNAc残基以外の末端HexNAc残基を有していたことが示唆された。
HexHexNAcおよびHexHexNAcdHexは消化されてHexHexNAcおよびHexHexNAcdHexとなり、それらがそれぞれ構造(GlcNAcβ→)HexHexNAcおよび(GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexを有していたことが示唆された。
HexHexNAcdHex、HexHexNAcdHex、HexHexNAcdHex、およびHexHexNAcdHexも消化され、それらがそれぞれ、(GlcNAcβ→)HexHexNAcdHex、(GlcNAcβ→)HexHexNAcdHex、(GlcNAcβ→)HexHexNAcdHex、および(GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexを有していたことが示唆された。
β1,4−ガラクトシダーゼ感受性構造
β1,4−ガラクトシダーゼに感受性だったグリカンシグナルは、BM MSCグリカンの大きな割合を構成しており、β1,4−結合ガラクトースがBM MSC中性N−グリカンにおける一般的な末端エピトープであることが示唆された。
HexHexNAcおよびHexHexNAcdHexは消化されてHexHexNAcおよび HexHexNAcdHexとなり、それらがそれぞれ構造(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcおよび(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexを有していたことが示唆された。一方、HexHexNAcdHexは消化されてHexHexNAcdHexとなり、それがそれぞれ構造(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexを有していたことが示唆され、HexHexNAcdHexは全く消化されなかった。まとめると、BM MSCにおいて、n−1ヘキソース残基は、N−グリカン構造HexHexNAcdHex[式中、0≦n≦3]中において、デオキシヘキソース残基により、β1,4−ガラクトシダーゼの作用から保護されている。β1,4−結合ガラクトースを有するこのようなdHex保護構造としては、Galβ4(Fucα3)GlcNAcおよびFucα2Galβ4GlcNAc等が挙げられる。
同様に、HexHexNAc、HexHexNAcdHex、HexHexNAc、およびHexHexNAcdHexが消化されてHexHexNAc、HexHexNAcdHex、およびHexHexNAcdHexとなり、それらがそれぞれ構造(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAc、(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcdHex、および(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexを有することが示唆された。一方、HexHexNAcdHex、HexHexNAcdHex、HexHexNAcdHex、およびHexHexNAcdHexは消化されず、これらの構造中のヘキソース残基がデオキシヘキソース残基により保護されていたことが示唆された。β1,4−結合ガラクトースを有するこのようなdHex保護構造としては、Galβ4(Fucα3)GlcNAcおよびFucα2Galβ4GlcNAc等が挙げられる。しかし、HexHexNAcdHexは消化され、それが1または複数個の末端β1,4−結合ガラクトース残基を有していたことが示唆された。
HexHexNAc、HexHexNAcdHex、HexHexNAc、およびHexHexNAcdHexは消化されてHexHexNAcおよびHexHexNAcdHex等の産物となり、それらがそれぞれ構造(Galβ4GlcNAcβ→)Hex5−6HexNAcおよび(Galβ4GlcNAcβ→)Hex4−5HexNAcdHexを有することが示唆された。HexHexNAc、およびHexHexNAcdHexの相対量が増加し、それらがそれぞれ、(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcおよび(Galβ4GlcNAcβ→)HexHexNAcdHexの産物であったことが示唆された。
β1,3−ガラクトシダーゼ感受性構造
BM MSC中性N−グリカン画分中の少数の構造のみがβ1,3−ガラクトシダーゼの作用に対し感受性であることから、末端ガラクトース残基の大部分はβ1,4−結合しているようである。β1,3−ガラクトシダーゼ感受性グリカンに対応するグリカンシグナルとしてはHexHexNAcdHexおよびHexHexNAcdHex等が挙げられる。
グリコシダーゼ抵抗性構造
本実験において、HexHexNAcdHex、HexHexNAcdHex、およびHex11HexNAcは試験したエキソグリコシダーゼに対し抵抗性であった。最初の2つの提案された単糖組成は2つ以上のデオキシヘキソース残基を有しており、それらが、優先的にはFucα2Gal、Fucα3GlcNAc、および/またはFucα4GlcNAcエピトープに存在する、α2−、α3−、またはα4−結合フコース残基等の第2のdHex残基によりグリコシダーゼ消化から保護されていることが示唆される。最後の提案された単糖組成は、2個のヘキソース残基を最大の典型的哺乳動物高マンノース型N−グリカンよりも多く有しており、それが(Glcα→)HexHexNAc等のグルコシル化構造を、より優先的にはジグルコシル化N−グリカン(GlcαGlcα→)ManGlcNAc中に存在するものを有していることが示唆される。
BM MSCのエキソグリコシダーゼ消化に基づいてまとめられた中性N−グリカン画分グリカン構造を表15に示す。
骨芽細胞分化BM MSC
骨芽細胞分化BM MSCの分析を、CB MSCにおける分化特異的変化の比較ができるように表16に示す。BM MSCおよび骨芽細胞分化BM MSCに対して生成されたエキソグリコシダーゼプロファイルはこれら2つの細胞型に特徴的である。例えば、m/z 1339、1784、および2466のシグナルはこの2つの実験において異なって消化される。特に、骨芽細胞分化BM MSCにおけるβ1,3−ガラクトシダーゼ感受性中性N−グリカンシグナルは、分化した細胞が未分化細胞よりも多くのβ1,3−結合ガラクトース残基を有することを示唆する。
BM MSCの酸性N−グリカン画分に対して行われたシアリダーゼ分析は、該酸性N−グリカン画分中のシアル化(NeuAcまたはNeuGc含有)N−グリカンに基づき、提案された単糖組成を支持した。
エキソグリコシダーゼによるCB MSC中性グリカンの分析
β1,4−ガラクトシダーゼおよびβ−グルコサミニダーゼによる分析の結果を表17に示す。結果は、CB MSCにおいても、非還元末端β1,4−結合ガラクトース残基を有する中性N−グリカンが豊富であり、それらは、観察されたグリカンシグナルのほとんどに対して特徴的非還元末端エピトープの存在を示唆する。BM MSCに対して上記に記載されたものと同様に、脂肪細胞分化CB MSCの分析を、CB MSCにおける分化特異的変化の比較ができるように表18に示す。
CB MSCの酸性N−グリカン画分に対して行われたシアリダーゼ分析は、該酸性N−グリカン画分中のシアル化(NeuAcまたはNeuGc含有)N−グリカンに基づき、提案された単糖組成を支持した。
実施例19
ヒト胚幹細胞上で式(I)のグリカン構造を発現するサブセットの単離
細胞の培養および継代
正常な核型を有するFES hESC株を得て、Mikkola et al.(2006;Distinct differentiation characteristics of individual human embryonic stem cell lines,BMC Dev Biol.2006;6:40)に記載されるように増殖させた。
ヒトESCを、有糸分裂を不活性化した一次マウス胚線維芽細胞(MEF)フィーダー層上で、ルーチン維持(routine maintenance)のために維持する。細胞を組織培養処理ディッシュ(Corning Incorporated)内で増殖させる。細胞を、10mg/ml コラゲナーゼ5分間による前処理、または炎で伸ばした(fire pulled)パスツールピペットを用いた手作業での剥離のいずれかを用い、6日ごとに継代する。
免疫細胞化学をルーチン維持された接着性hESCコロニーに対して行い、本発明の抗体、レクチンまたはグリコシダーゼに対して染色されたルーチン維持されたhESCコロニーを用いてフローサイトメトリーを行う。
式(I)のグリカン構造を発現する幹細胞の濃縮
FACS分析を、本質的にVenable et al.(2005)の記載のように行うが、代わりに生細胞およびFACSAria(商標)セルソーター(BD)を用いる。
コラゲナーゼおよび細胞解離液(Sigma)を用いてヒトESCを回収し、単細胞懸濁液とする。次いで、細胞を、滅菌されたチューブにそれぞれ10細胞ずつに分けて入れ、1:100溶液のGF抗体の1つを用いて染色する。細胞をPBSで3回洗浄し、次いで二次抗体(抗ヤギマウスIgGまたはIgM FITC結合)で染色する。染色されないFESをコントロールとして用いる。FITC陽性細胞を細胞培地中に回収する(+4℃において)(BDの説明書に従う)。
次に、細胞をMEFまたはHHFフィーダー層上に置き、クローンまたは細胞系統に対してモニターする。未分化ステージを確認するため、選別された細胞の遺伝子発現をリアルタイムPCRで分析する。
または、FACSで濃縮された細胞をゼラチン上で自発的に分化させる。免疫組織化学を各種組織特異的抗体を用いてMikkola et al.(2006)に記載されるように行うか、またはPCRによって分析する。
実施例20
プロテアーゼ感受性および非感受性抗体標的構造の解明
上記実施例中に記載された骨髄間葉系幹細胞をFACS分析により分析した。細胞がトリプシンにより処理(培養から解放)されると、細胞表面抗原のFACS分析において、いくつかの抗原構造は本質的に観察されないか、またはこれらは減少した量で観察されるが、Versene処理(PBS中の0.02%EDTA)後には観察可能である。これは例えば、大部分のトリプシンに感受性の標的構造である抗体GF354およびGF275による、ならびに標的構造が事実上完全にトリプシン感受性である抗体GF302による、間葉系幹細胞の標識により観察された。
実施例21
特異的結合剤標的構造を有するプロテアーゼ遊離糖ペプチドの単離および分析
糖ペプチドをトリプシン等のプロテアーゼによる幹細胞の処理によって遊離させる。糖ペプチドをクロマトグラフ的に単離し、好ましい方法はSuperdex(Amersham Pharmacia(GE))カラム(Superdex peptideまたはsuperdex 75)におけるゲル濾過クロマトグラフィーを使用し、ペプチドは、該ペプチドを特異的標識でタギングすることにより、または該ペプチド(またはグリカン)の紫外吸光度により、クロマトグラフィー内で観察することができる。前記方法のための好ましい試料としては比較的多量(数百万細胞)の間葉系幹細胞等が挙げられ、本実施例で用いられる好ましい抗体としては、抗体GF354、GF275もしくはGF302、または同様の特異性を有する抗体もしくはレクチン等の他の結合剤が挙げられる。
次に、単離された糖ペプチドを固定化抗体(例えばAmersham Pharmaciaのシアンプロミド(cyanogens promide)活性化カラムに固定化した抗体(GE healthcare divisionまたはPierceカタログに記載のように固定化された抗体)のカラムに通す。結合する、および/または、弱く結合し、クロマトグラフ的に遅延する画分を、標的ペプチド画分として回収する。高親和性結合の場合、グリカンを、抗体の標的エピトープに対応する100〜1000mMの単糖または単糖群を用いて、または単糖もしくはオリゴ糖の混合物により、および/または500〜1000mM NaCl等の高塩濃度を用いて、溶出する。糖ペプチドをグライコプロテオミクス法により、分子量を得るために質量分析を用いて、ならびに好ましくは糖ペプチドのペプチドおよび/またはグリカンをシーケンシングするためにフラグメンテーション質量分析も用いて、分析する。
別の方法においては、糖ペプチドを結合剤アフィニティークロマトグラフィーによる単一のアフィニティークロマトグラフィー工程により単離し、質量分析により分析する。これはWang Y et al.(2006) Glycobiology 16(6)514−23等の記載と本質的に同様に行うが、しかし、レクチンアフィニティークロマトグラフィーは、固定化抗体、例えばこの実施例における上記の好ましい抗体または結合剤によるアフィニティークロマトグラフィーで置き換えられる。
実施例22
レクチン被覆培養プレート上でのヒト胚幹細胞の増殖
FES30 hESC株を用いた。hESCをmEFからマトリゲル(商標)に移し、Geron Corporationのウェブサイト:http://www.geron.com/showpage.asp?code=prodstprotに見出されるプロトコルに従い培養した。
全ての継代はコラゲナーゼを用いて行った。継代はコラゲナーゼ処理無しにPBSを用いても行った。
細胞をECA被覆12ウェルプレート(Corning)に移し、mEF馴化培地中で5〜11日間培養し、その後それらを1:2または3:4に分けた。RNA試料を2回または3回の継代ごとに抽出し、幹細胞および分化マーカーの発現を分析した(図31)。
結果
細胞は、ECA被覆およびマトリゲル(商標)被覆プレート上で、同様の効率で、顕微鏡観察された際に同様の形態を伴って、増殖した。分析された幹細胞および分化マーカーの発現プロファイルは類似していた(図31参照)。
細胞はECA被覆プレート上で、マトリゲル(商標)被覆プレート上におけるよりも均一に増殖し、増殖密度の明瞭なバッチ間変異は見られなかった。それらは小さなコロニーを形成し、これはマトリゲルとは異なっていた。コロニーはフィーダー細胞上で増殖したhESCによって形成されるものよりも小さかった。
実施例23
hESC(FES29細胞、継代(p)36)を、プラスチック上で、またはECA、UEA1、DSA、またはガレクチン−1の存在下で、図32および33に示す期間の間、ならびに実施例22に記載されるように、増殖させた。
ECA(EY Laboratories,USA;L−5901−5)コーティングを、12ウェルプレートに対して次の通り行った。ECAレクチンは1mg/mlのストック溶液として凍結保存した。これを氷上で溶かし、層フード(laminar hood)内でフィルター滅菌(Millex−GV,SLGV 013 SL,0.22μm)された100μlレクチンストック +600μl PBSとして希釈した。この溶液、すなわち100μg/700μl PBS溶液を各ウェルに加え、一晩、+4Cでインキュベートした。翌日、レクチン溶液を除去し、ウェルを3x1ml滅菌PBSで洗浄した。
材料および方法
ヒト胚幹細胞(hESC)
2つのフィンランド人ヒト胚幹細胞(hESC)株、FES29およびFES30を用いて、レクチン被覆ウェル(Mikkola M.et al.BMC Dev.Biol.6:40,2006に記載される)上で培養中のhESCを分析した。
hESCを、レクチン上へのプレーティングの前にマトリゲル(BD Biosciences,Bedford,MA,USA)上でフィーダー細胞無しに少なくとも2回の継代の間培養した。マトリゲル培養をレクチン培養と並行して比較のために継続した。細胞は、実験全体にわたる間、マウスフィーダー細胞上で24時間馴化した、20% Knockout(商標)血清代替物および8ng/mlの組み替え塩基性FGFを含む標準Knockout(商標)DMEM培地(全てGibco/Invitrogen,Paisley,UKから;Mikkola M.et al.BMC Dev.Biol.6:40,2006)中で培養した。細胞は分割時にコラゲナーゼIVで剥離した。
レクチンコーティング
レクチンをPBS中に希釈し、Nunclon細胞培養プレート(Nunc, Roskilde,Denmark)上に加える前にフィルター滅菌した。レクチンの量は27μg/cmであり、プレートは一晩、+4℃でインキュベートした。細胞をレクチン上に分割する前に、ウェルを3回PBSで洗浄した。
結果および考察
ECAレクチン上での培養
FES30 hESCをマトリゲルからECA、MAA、WFAおよびPWAレクチン上に分割した。ECA上でのみ細胞が増殖し、さらに分割することができた。FES30細胞は全部で23回の継代の間ECA上で培養された。ECA培養は、他のhESC株FES29を用いて6回の継代の間確認した。
ECA上で培養したhESCは形態学的に変化しており、分化しているように見え、典型的なhESCのコロニーを形成していなかった。ECA培養は「フィーダー様」細胞に有利なようであり、多能性マーカー、Tra−1−60およびSSEA−3の発現も減少した。FES29細胞をECA上での5回の継代後にマトリゲルに分けて戻し、マトリゲル上で5〜6回継代した後で、細胞は典型的なhESCコロニーを再び形成し始めた。従って、hESCはECA上で20回超の継代の間維持することができ、それらは典型的なhESC培養とは異なって見えても典型的な未分化hESCとして増殖する能力を失っていない。
他のレクチン上での培養
FES29 hESCは、マウスフィーダー細胞馴化培地中のUEA−1、DSAおよびウシガレクチン−1上でも7回の継代の間維持された。hESCは形態学的に、これらのレクチン上で、ECA上と同様に見えた。7回の継代後、これら3種のレクチンの中ではガレクチン−1培養の細胞がTra−1−60およびSSEA−3の最も多い発現量を有していたが、その発現量は少なかった(それぞれ21.6%および32.3%)。
実施例24
イーストにおける、組み替えErythrina cristagalli凝集素(ECA)およびその非グリコシル化型の発現および精製
Pichia pastorisのコドン選択で最適化された合成ヌクレオチド配列を、ジーンバンクアクセッション番号AY158072(Erythrina cristacalli凝集素遺伝子の部分コード配列)に従って構築した。天然アミノ酸配列(図38;遺伝子配列番号899)および非グリコシル化型(図39;遺伝子配列番号900)の両者をコードする遺伝子を構築した。DNA合成および遺伝子構築はGeneArt AGからの商業サービスとして得た。
組み替えECA(rECA)および非グリコシル化組み替えECA(ngECA)のための合成配列を、標準的なクローニング手順により、Pichia pastoris発現ベクターpBLURA−SX(Lin Cereghino et al.2001,Gene 263:159−169)に、単一クローニング工程で、制限エンドヌクレアーゼPstI/KpnIで切断した断片としてクローニングした。配列はAOX1プロモーターおよびAOX1 3’UTR領域の調節下に置き、合成されたタンパク質の標的を増殖培地とするMATa分泌シグナルとともに正確な読み枠に配列を合わせた。標準的な手順により、相同組み替えによって発現ベクターをPichia pastorisに移した。組み替えタンパク質の発現を、同様に、一般的に知られる標準的な手順に従って行った。イースト細胞を、グリセロール含有培地上で、+30℃を超えない適当な温度下で対数期まで培養し、回収し、光学濃度A600=1で誘導培地に入れた。誘導をメタノールの添加により達成した。
rECAおよびngECAの両者を、濃縮したタンパク質発現培養上清から、次の工程により精製した:1.硫安沈殿(30〜60%沈殿、Iglesias et al.1982,Eur.J.Biochem.123,247−252から採用)、2.結合バッファー(150mM NaCl、20mM Tris−HCl pH8、1mM MnCl、1mM CaCl;Stancombe et al. 2003,Protein Expr Purif.30,283−292から採用)への透析、3.ラクトースアフィニティークロマトグラフィー(下記参照)、4.水への透析、5.凍結乾燥。ラクトースラクトースアフィニティークロマトグラフィーはStancombe et al.(2003)から採用し、変更を加えた。Lac−アガロースを親和性マトリクス(Sigma−Aldrich)として用い、洗浄を結合バッファーで行い、結合したECAを結合バッファー中の0.3Mラクトースで溶出した。SDS−PAGE(図40)により検出されたECAを含む画分をプールし、透析および凍結乾燥した。精製したタンパク質は、ラクトースアガロースに対する親和性により活性があると決定され、SDSーPAGE(図40、レーン3)により本質的に純粋であると決定された。
実施例25
ECAのグリカンの酸化およびビオチン化
ECA、Erythrina cristagalliレクチンをPBS中に溶解した。ECA試料の濃度は、0,7%の試料をSuperdex 200 10/300 GLカラム上でサイズ排除クロマトグラフィーにかけて測定した。ECA試料の濃度は0,7%のECA試料のUV吸光度をBSA標準に対して比較することにより0,31μg/μlと決定された。
ECA試料のグリカンを、メタ過ヨウ素酸ナトリウムを最終反応濃度8mMで添加することにより酸化した。反応混合物を+4℃で暗所下、一晩インキュベートした。反応を、最終反応濃度8mMのエチレングリコールを用いて2時間で未反応過ヨウ素酸塩を破壊することにより停止した。反応混合物をPD−10脱塩カラム上で精製した。修飾されたECAを3,5mlのPBSで溶出した。
ECAの酸化したグリカンを、ビオチン−アミドヘキサン酸ヒドラジン(Sigma、Mw=371,5g/mol)を最終反応濃度0,28mMで添加することによりビオチン化した。反応混合物を室温で一晩インキュベートした。試料溶液をPD−10脱塩カラムにかけた。修飾されたECAを3,5mlのPBSで溶出した。2,5%の試料をSuperdex 200 10/300 GLカラム上でサイズ排除クロマトグラフィーにかけ、修飾されたECAの存在および量を決定した。修飾されたECAは天然ECA二量体と同じ画分中に溶出した。酸化−ビオチン化反応の収率は70%超であった。修飾されたECAのMALDI−TOF質量スペクトルはm/z 29236を中心とする分子イオン[M+Na]を示したが、天然ECAはm/z 27545を中心とする分子イオン[M+Na]を示し、4〜5個のビオチン/ECA分子の付加が示唆された。分析において分解産物は検出されなかった。
各種ECA型を用いた細胞培養
先の実施例に記載のように、ヒト胚性幹細胞(hESC)を増殖させ、マトリゲル(BD Biosciences)およびKnockout血清代替細胞培養培地(Invitrogen)に移し、馴化させ、その後それらを、並行した実験において、各種の型のECA:天然ECA(EY Laboratories; Sigma−Aldrich)、タンパク質ビオチン化ECA(EY Laboratories)、またはグリカンビオチン化ECA(上記参照)、で吸着被覆された細胞培養プレート(マトリゲル表面を置換)上に移した。細胞増殖の水準、幹細胞マーカーの発現および幹細胞特異的な形態学的特徴を何回かの継代の間追跡することにより、グリカンビオチン化ECAは、hESC培養を支持することに関して、天然ECA(++)またはタンパク質ビオチン化ECA(++)よりも優れている(+++)と結論された。増殖支持能力は括弧内の−、+、++、または+++(増殖無し=−から、優れた増殖=+++まで)により評価された。
実施例26
MSC
細胞試料
間葉系幹細胞試料
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)をLeskela et al. (Leskela H, Risteli J, Niskanen S, et al. Osteoblast recruitment from stem cells does not decrease at late adulthood; Biochemical and Biophysical Research Communications 311:1008−1013,2003)に記載のように生成した。簡単に述べると、整形外科手術中に得られた骨髄を、20mM HEPES、10% FCS、1xペニシリン−ストレプトマイシンおよび2mM L−グルタミン(全てGibcoから)を添加した最小必須アルファ培地(α−MEM)中で培養した。2日間の細胞接着期の後、細胞をCa2+およびMg2+不含PBS(Gibco)で洗浄し、レクチン分子で被覆された24ウェルチャンバースライド上の同一の培地内で2000〜3000細胞/cmの密度で継代培養した。細胞を37℃で5% COの下、クラウンであり、新鮮な培地を週2回、ほぼコンフルエントになるまで交換した。MSCをレクチン被覆ウェルプレート上で5回の継代にわたり培養した。継代5〜10のMSCを実験に用いた。
MSC培養アッセイに用いた分子
Figure 2010516239
フローサイトメトリー
継代5の増殖しているMSCを各種レクチン上で5日間増殖させた。細胞をPBSで洗浄し、Versene溶液により回収して単細胞懸濁液とした。剥離した細胞を600 x gで5分間、室温において遠心分離した。細胞ペレットを2回、0.3% BSA−PBSで洗浄し、600 x gで遠心分離し、0.3% BSA−PBS中に再懸濁した。細胞を50000細胞ずつに分けてコニカルチューブに入れた。分割した細胞を、抗体と共に、2μl/10細胞の希釈で、30分間、4℃で、暗所にてインキュベートした。インキュベート後、細胞を0.3% BSA−PBSで洗浄し、遠心分離し、0.3% BSA−PBS中に再懸濁した。
未標識細胞およびプラスチックで増殖した細胞をコントロールとして用いた。抗体結合をフローサイトメトリー(FACSAria, Becton Dickinson)で検出した。データ分析はFACSDiva(商標) Flow Cytometry Software Version 5.02を用いて行った。
表.MSCの分析に用いた抗体およびそれらの蛍光標識
Figure 2010516239
RNA精製および定量的逆転写(RT)−ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
選択されたレクチン上で5回の継代にわたり増殖させたBM由来間葉系幹細胞からの全細胞RNAを、RNeasy miniprep−kit(Qiagen,Chatsworth,CA)を用いて、製品の使用説明書に従って抽出した。次に、High Capacity cDNA Reverse Transcription試薬(Applied Biosystems)を用い、製品の使用説明書に従ってRNAをcDNAに逆転写し、TaqMan(登録商標) PCR反応の鋳型として用いた。
TaqMan(登録商標) PCR反応を用いて幹細胞分化マーカーの量的な水準を推定した。TaqMan(登録商標) PCR反応は標準的な条件の下、TaqMan(登録商標) Universal Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems)およびPre−developed Inventored Gene Expression Assays for FABP4(Hs00609791_m1)およびRUNX2(Hs00231692_m1)(Applied Biosystems)を用いて行った。
リアルタイム定量PCR反応を、標準的な条件でABI PRISM 7000 Sequence Detector System (Applied Biosystem)を用いて行った。PCR増幅は、1μlのcDNA試料を含む全量50μlで行った。TaqMan(登録商標) Universal Gene Expression Master Mix(Applied Biosystems)を全ての実験に用いた。Pre−developed Inventored Gene Expression Assays for FABP4(Hs00609791_m1)およびRUNX2(Hs00231692_m1)(Applied Biosystems)を用いて幹細胞分化マーカーの量的な水準を推定した。VICレポーター色素で標識された内在性コントロールヒトTATAボックス結合遺伝子のためのPre−developed TaqMan(登録商標)アッセイ試薬(Hs 999999_m19)をコントロール遺伝子の増幅のために用いた。
PCRは2分間50℃から開始し、最初の10分間の変性温度は94℃であり、その後15秒間の変性ならびに1分間のアニーリングおよび伸長(60℃)を全部で40サイクル行った。
結果
各種レクチン上で増殖させたMSC細胞の相対的遺伝子発現量
我々の結果は、レクチン上で増殖させたMSCが、骨原性分化マーカーRUNX2を、プラスチック上で増殖させた同一の細胞よりも少なく発現することを示す。しかし、これらの細胞は、以下に示すように、脂質生成マーカー脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)を、プラスチック上で増殖させた細胞と比べてやや多く発現する。
Figure 2010516239
データは、レクチンが細胞の未分化状態を大部分維持することを示している。シアル化構造、特にNeuNAcα3Galβ4GlcNAcに対するMAAの特異性を有するレクチン、およびN−アセチルラクトサミンGalβ4GlcNAc結合を示すガレクチン−1/ECAが、espeであり、脂肪細胞方向への一部の分化の誘導に対して好ましいが、N−グリカンコア特異的レクチンCon Aは未分化状態の維持に対して最も好ましい。本発明は、末端マンノース特異的HHAレクチンも細胞の分化していない状態を支持する能力を有することを示す。本結果は、細胞を分化させる必要がある場合においてCon Aが動物間葉系幹細胞の培養に特に有用であろうことを示す他の結果とは対照的であると考えられる。
他の実験において、間葉系幹細胞の分化に対するHLA−DRマーカーが測定され、MAAとともにCon Aも最低値を示した。この研究は、2つの還元末端の末端フコースエピトープを認識するレクチンPSAおよびLcHA/LCAを含み、これらもConAとは明瞭な相違、またはいくらか増加したHLA−DR値を示す。データは、グリカン中央部(midglycan)を認識するconAがヒト間葉系幹細胞の活性化において異なっていることを示す。好ましい一態様において、本発明は、細胞の未分化状態の維持のための、表面上に固定化されたcon A N−グリカン認識型レクチン;および、分化を誘導する条件における、または条件のための、末端エピトープ認識レクチン;を用いた、ヒト間葉系幹細胞の培養に関する。
実施例27
レクチンのhESC細胞の培養
図32に、A 継代p4およびp6のhESC細胞を、それぞれECAレクチンまたはマトリゲル上で増殖させたものを示す。4回の継代後、FAS分析は、ECA培養細胞に対する胚幹細胞マーカーTra−1−60 32%およびSSEA3 83%を示し、一方マトリゲル上での値は49%および79%であった。C、継代p5。D、ECA上での培養のためのマーカーおよびhESC(FES29 p36)のFACS分析。E、マトリゲルp4対マトリゲルp2+ECAのFACS分析。
図33に、マトリゲルp3およびレクチンp1上で増殖させたFES29 p38細胞を示す。FACS:Tra−1−60 70%およびSSEA3 89%。B、レクチン上で増殖させた細胞の継代4の像。UEA、DSAおよびガレクチン。
各種レクチンおよびその誘導体上におけるhESC細胞の培養
本実施例は、N−グリコシル化部位変異組み替えECAが細胞培養条件下で効果的に機能することを明らかにする。他のN−アセチルラクトサミン認識レクチンDSA ja ガレクチン−1も効果的であり、同様にFucα2Galb4GlcNAc認識UEAレクチンとして、UEA−1は最初はLacNAc特異的レクチンほど効果的ではなかった。初期の細胞接着および増殖は、末端を認識しないがN−グリカンコアエピトープを認識するレクチンPHA−Eに対しては弱かった。可溶性ガレクチンは細胞増殖を支持することができず、可溶性ECAもプラスチックコントロールより悪かったため、レクチンの固定化は非常に重要である。他の特異性を有するレクチン(MAA、WFAおよびPWA)は効果的ではなかった。
Figure 2010516239
ECA型および複合体の比較
データは、グリカンビオチン化ECAが、ランダムにタンパク質をビオチン化したレクチンよりも効果的であることを示す。初期接着のアッセイは、接着だけでは効果的な細胞培養に対して十分ではないことを示す。
Figure 2010516239
UEA−1、DSAおよびガレクチン−1培養細胞の幹細胞マーカー水準
データは、これらのレクチン上においては、初期低下後にMatgel培養に匹敵する値を生ずるECAレクチンと比べ、マーカーが減少することを示した。
Figure 2010516239
表1
臍帯血細胞集団、臍帯血単核球(CB MNC)、および末梢血単核球(PB MNC)の中性N−グリカンの分類。
Figure 2010516239
表2 臍帯血CD34+およびCD34−細胞の中性N−グリカン画分のエキソグリコシダーゼプロファイリング。α−Man、β1,4−Gal、β1,3−Gal、およびβ−GlcNAcは、本文中に記載される特異的エキソグリコシダーゼ酵素を示す。プロファイリング結果の記号は、反応前のプロファイルと比較した際のものであり;+++:新規シグナルの出現;++:シグナルの有意な増加;+:シグナルの増加;−:シグナルの減少;−−:シグナルの有意な減少;−−−:シグナルの消失;空白:変化無し。
Figure 2010516239
表3 臍帯血CD133+およびCD133−細胞の中性N−グリカン画分のエキソグリコシダーゼプロファイリング。α−Man、β1,4−Gal、β1,3−Gal、およびβ−GlcNAcは、本文中に記載される特異的エキソグリコシダーゼ酵素を示す。プロファイリング結果の記号は、反応前のプロファイルと比較した際のものであり;+++:新規シグナルの出現;++:シグナルの有意な増加;+:シグナルの増加;−:シグナルの減少;−−:シグナルの有意な減少;−−−:シグナルの消失;空白:変化無し。
Figure 2010516239
表4 臍帯血Lin+およびLin−細胞の中性N−グリカン画分のエキソグリコシダーゼプロファイリング。
Figure 2010516239
表5
臍帯血CD133およびCD133細胞から単離されたシアル化N−グリカンに対するα2,3−シアリダーゼ処理の異なる影響。中性N−グリカンの列は、列挙されるシアル化N−グリカンに対応する中性N−グリカンがCD133細胞N−グリカンの分析では出現するがCD133細胞N−グリカンでは出現しないことを示す。括弧外の提案されたグリカン組成は、CD133細胞のシアル化N−グリカンのα2,3−シアリダーゼ消化後の中性N−グリカン画分において認められる。
Figure 2010516239
表6
試料の提案された中性N−グリカンの分類;hESC、ヒト胚幹細胞株、株1〜4、EB、hESC株3および4由来の胚様体、st.3 3、hESC株3からのステージ3分化細胞、HEF フィーダー細胞として用いたヒト線維芽細胞。
Figure 2010516239
表7
試料の提案されたシアル化N−グリカンの分類;hESC、ヒト胚幹細胞株、株2〜4、EB、hESC株3由来の胚様体、st.3 3、hESC株3からのステージ3分化細胞、HEF フィーダー細胞として用いたヒト線維芽細胞。
Figure 2010516239
表8
ヒト臍帯血単核球の逐次酵素修飾工程における、単糖組成NeuAc1−2HexHexNAcdHex0−3を有するシアル化N−グリカンの質量分析の結果。列は、修飾反応前の(MNC)、α2,3−シアル酸転移酵素反応後の(α2,3SAT)、および逐次的α2,3−シアル酸転移酵素およびα1,3−フコース転移酵素反応後の(α2,3SAT+α1,3FucT)相対グリカンシグナル強度(表中のシグナルの%)を示す。明瞭性のため、各列におけるグリカンシグナル強度の合計を100%に対して標準化した。
Figure 2010516239
表9
ヒト臍帯血単核球の酵素修飾工程における、選択された中性N−グリカンの質量分析の結果。列は、修飾反応前の(MNC)、広範なシアリダーゼ反応後の(SA’se)、α2,3−シアル酸転移酵素反応後の(α2,3SAT)、α1,3−フコース転移酵素反応後の(α1,3FucT)、および逐次的α2,3−シアル酸転移酵素およびα1,3−フコース転移酵素反応後の(α2,3SAT+α1,3FucT)相対グリカンシグナル強度(全グリカンシグナルの%)を示す。
Figure 2010516239
表10
mEF上で増殖させたhESC株FES29のエキソグリコシダーゼ分析の結果。
Figure 2010516239
表11
hEFおよび胚様体(EB、st 2)上で増殖させたhESC株FES29(st 1)のエキソグリコシダーゼ分析の結果。
Figure 2010516239
表12
Figure 2010516239

Figure 2010516239

Figure 2010516239

1)記号:+++ 出現した新規シグナル、++ 高度に増加した相対シグナル強度、++ 増加した相対シグナル強度、− 減少した相対シグナル強度、−− 大きく減少した相対シグナル強度、−−− 消失したシグナル、空白:変化無し。
表13
Figure 2010516239

Figure 2010516239

[M+Na]イオン、第1の同位体。
§“→”は、残りの構造内の単糖への結合を表す;“[]”は、構造内の分岐を表す。
本発明による単糖組成に基づく好ましい構造群。HI、高マンノース;LO、低マンノース;S、可溶性マンノシル化;HF、フコシル化高マンノース;G、グルコシル化高マンノース;HY、ハイブリッド型または単分岐;CO、複合型;F、フコシル化;FC、複雑なフコシル化;N=H、末端HexNAc(HexNAc=Hex);N>H、末端HexNAc(HexNAc>Hex)。
表14
Figure 2010516239
表15
Figure 2010516239

Figure 2010516239

[M+Na]イオン、第1の同位体。
§“→”は、残りの構造内の単糖への結合を表す;“[]”は、構造内の分岐を表す。
本発明による単糖組成に基づく好ましい構造群。HI、高マンノース;LO、低マンノース;S、可溶性マンノシル化;HF、フコシル化高マンノース;G、グルコシル化高マンノース;HY、ハイブリッド型または単分岐;CO、複合型;F、フコシル化;FC、複雑なフコシル化;N=H、末端HexNAc(HexNAc=Hex);N>H、末端HexNAc(HexNAc>Hex)。
表16
Figure 2010516239
表17
Figure 2010516239
表18
Figure 2010516239
表19
実施例14も参照。
Figure 2010516239

Figure 2010516239

+=陽性、(+)=弱陽性、(+/−)=単一の陽性細胞、−=陰性;NT=試験されず;=結果がFACS分析によって確認された、**=特定の細胞バッチにおいてより高い結合または結合細胞が観察され、本発明においてはこれらのマーカーに関する。
表20
Figure 2010516239
表21
Figure 2010516239

1)染色/標識の等級付け:+++ 非常に強い、++ 強い、+ 低い、+/− ほとんど検出されない、− 標識されない。
表22
4つのhESC株FES21、FES22、FES29、およびFES30の提案された単糖組成に基づくN−グリカンの構造的特徴の分析。数字は、中性(A〜E)もしくは酸性(J〜L)N−グリカンプールのいずれかからの、またはハイブリッド/単分岐および複合型N−グリカンの亜画分(N≧3、F〜IおよびM〜P)からの、パーセンテージを示す。EB29およびEB30:それぞれhESC株FES29およびFES30由来の胚様体;st.3 29:hESC株FES29由来のステージ3分化細胞。H:ヘキソース;N:N−アセチルヘキソサミン;F:デオキシヘキソース。
Figure 2010516239
表23 hESCおよびMEFにおけるレクチンリガンドプロファイルの比較
Figure 2010516239
+ 細胞表面に存在
− 細胞表面に存在しない
表24
各種固定化レクチン表面上で増殖させたBM MSCの結果のまとめ。増殖率=3日目の細胞の数/1日目の細胞の数。3重反復を計算に用いた。プラスチックと対比した効果:‘n.g.’=増殖無し;‘−’=遅い増殖速度;‘+’=プラスチック上よりも速い増殖速度;‘()’ プラスチックとほぼ等しい。
Figure 2010516239
表25
Figure 2010516239

Figure 2010516239

Figure 2010516239

Figure 2010516239

[M+H]イオン、第1の同位体。
本発明による単糖組成に基づく好ましい構造群。HY、ハイブリッド型または単分岐;CO、複合型;F、フコシル化;FC、複雑なフコシル化;N=H、末端HexNAc(HexNAc=Hex);N>H、末端HexNAc(HexNAc>Hex);SP、硫酸および/またはリン酸エステル;“()”はグリカンシグナルが他の構造型も含むことを示す。
表26
hESCから検出された酸性O−グリカンシグナル。
Figure 2010516239
表27
Figure 2010516239

[M+Na]イオン、第1の同位体。
§“→”は、残りの構造内の単糖への結合を表す;“[]”は、構造内の分岐を表す。
本発明による単糖組成に基づく好ましい構造群。HI、高マンノース;LO、低マンノース;S、可溶性マンノシル化;HF、フコシル化高マンノース;G、グルコシル化高マンノース;HY、ハイブリッド型または単分岐;CO、複合型;F、フコシル化;FC、複雑なフコシル化;N=H、末端HexNAc(HexNAc=Hex);N>H、末端HexNAc(HexNAc>Hex)。
表28
Figure 2010516239

1)幹細胞および分化した細胞型は本文書の他の部分におけるように省略される;st.3はステージ3に分化した、優先的にはニューロン型に分化した細胞を示す;脂肪/骨はMSCから脂肪細胞または骨芽細胞方向に分化した細胞を示す。
2)複合糖質における、ならびに/または特にN−グリカン(N)、O−グリカン(O)、および/もしくはスフィンゴ糖脂質(L)における、末端エピトープの存在。記号:q、定性的データ;+/−、低発現;+、一般的;++、多量。
表29
Figure 2010516239
a)本定量分析中に含まれない。
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Claims (113)

  1. 非造血幹細胞の調節または培養のための方法であって:(i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;ならびに(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、非還元末端の末端および還元末端の末端グリカン構造から選択される末端グリカン構造を結合する1または複数種の結合剤と接触させること;を含む方法。
  2. さらに(iii)前記細胞を、所望の刺激、状態変化または増殖を達成するに十分な期間インキュベートすること、またはiii)幹細胞の増殖が実質的に分化を伴わずに起こる場合に幹細胞を培養すること、を含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記結合剤がタンパク質またはポリペプチド結合剤であり、末端単糖エピトープGalβ、GalNAcβ、GlcNAcβ、ManαまたはFucαまたはシアル酸α、好ましくはNeu5AcαまたはNeu5Gcαの群から選択される1または複数種の末端グリカン構造を認識する、請求項1記載の方法。
  4. 前記の1または複数種の結合剤が1または数種の末端β−結合Hex(NAc)を認識し、式中、nは0または1であり、HexはGalまたはGlcであり、ただしHexがGlcである場合、nは1であり:末端Galβ、GalNAcβ、またはGlcNAcβを含む、請求項1記載の方法。
  5. 前記の1または複数種の結合剤が1または数種の末端非還元末端α−結合ピラノシド残基Manα Fucα、またはシアル酸α、好ましくはNeu5AcまたはNeu5Gcを認識する、請求項1記載の方法。
  6. 前記の1または複数種の結合剤が幹細胞または幹細胞群上の末端グリカン構造を認識する、請求項1記載の方法。
  7. 前記の1または複数種の結合剤が表面に付着する、請求項1記載の方法。
  8. 幹細胞がヒト胚幹細胞であり、本質的にフィーダー細胞を含まず、または幹細胞はヒト間葉系幹細胞である、請求項1記載の方法。
  9. ヒト胚幹細胞が、好ましくはECA、ガレクチン、DSAおよびUEA−1の群から選択される、(Fucα2)Galβ4GlcNAc[式中、nは0または1である]を認識するレクチンとの接触の下で培養される、請求項8記載の方法。
  10. 前記細胞が未分化状態で20回の継代の間維持される、請求項9記載の方法。
  11. 幹細胞がヒト間葉系幹細胞である、請求項1記載の方法。
  12. 幹細胞の状態の変化の調節が、接着、形態、増殖速度または分化を含む、請求項1または2に記載の方法。
  13. 前記結合剤が、抗体、レクチン、グリコシダーゼ、糖転移酵素およびそれらの断片からなる群より選択されるポリペプチドである、請求項1記載の方法。
  14. 前記結合剤がレクチン、好ましくは植物レクチンである、請求項1記載の方法。
  15. 前記グリカン構造が式CC0
    [SA]Hex(NAc)β4[FucαX]GlcNAcβR
    [式中、n、m、およびpは独立に0または1であり
    Xは3または6のいずれかの結合位置であり、
    HexはGalまたはGlcであり
    SAは伸長する単一またはオリゴ糖構造、
    好ましくはシアル酸であり、これは好ましくはSAα3、もしくはSAα6であって、好ましいシアル酸型はNeu5AcまたはNeu5Gcであり、または、N−グリカンコア構造Manα3[Manα6]Manβ4であって、ここでManα残基はさらに1つまたはいくつかのGlcNAcβ2またはLacNAcβ2等の複合型末端構造により伸長されていてよく、Rは任意の伸長単糖残基構造であって、好ましくはN−アセチルラクトサミンの/ラクトシル−セラミド等の糖脂質の/O−グリカンの/3/6Gal(NAc)、またはN−グリカンの2Man、または、Hex(NAc)がGlcNAcである場合の潜在的な結合コアタンパク質/ペプチドを表すAsn−(ペプチド)0または1であり、ただしmが1であり、Xが6である場合、nは1であり、およびHexはGlcであり、およびSAはN−グリカンコア構造Manα3[Manα6]Manβまたはその伸長バリアントであり、nが1であり、HexがGalである場合、pは0である]
    によるものである、請求項1記載の方法。
  16. 前記末端構造がGalβ4GlcNAc、GalNAcβ4GlcNAc、Neu5Acα3Galβ4GlcNAc、Neu5Acα6Galβ4GlcNAc、Fucα2Galβ4GlcNAc、Galβ4(Fucα3)GlcNAc、およびGlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcからなる群より選択される、請求項15記載の方法。
  17. 前記結合剤がECA、PWA、WFA、MAA、SNA、UEA、LTAおよびPSAからなる植物レクチン群から選択される、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  18. 前記幹細胞がヒト間葉系幹細胞である、請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
  19. 前記間葉系幹細胞が本質的に未分化の形態で維持される、請求項18記載の方法。
  20. 前記結合剤が短縮された末端エピトープGlcNAcβまたはManα、好ましくはGSAIIまたはNPAを認識する植物レクチン群から選択される、請求項1記載の方法。
  21. 前記グリカン構造が式CC1:
    [SA]Hex(NAc)β4[Fucα6]GlcNAcβR
    [式中、n、m、およびpは独立に0または1であり、HexはGalまたはGlcであり、
    SAは伸長する単−またはオリゴ糖構造、
    好ましくはシアル酸であり、これは好ましくはSAα3であって、好ましいシアル酸型はNeu5AcまたはNeu5GcまたはN−グリカンコア構造Manα3[Manα6]Manβ4であって、ここで前記Manα残基はさらに1つまたはいくつかのGlcNAcβ2またはLacNAcβ2等の複合型末端構造により伸長されていてよく、Rは任意の伸長単糖残基構造であって、好ましくはN−アセチルラクトサミンの/ラクトシル−セラミド等の糖脂質の/O−グリカンの/3/6Gal(NAc)、または、N−グリカンの2Man、またはHex(NAc)がGlcNAcである場合の潜在的な結合コアタンパク質/ペプチドを表すAsn−(ペプチド)0または1であり、
    ただし、mが1である場合、nは1であり、およびHexはGlcであり、およびSAはN−グリカンコア構造Manα3[Manα6]Manβまたはその伸長バリアントであり、
    nが1であり、HexがGalである場合、pは0である]
    によるものである、請求項1記載の方法。
  22. 前記構造がGalβ4GlcNAc、Neu5Acα3Galβ4GlcNAc、GalNAcβ4GlcNAc、およびGlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcからなる群より選択される、請求項21記載の方法。
  23. 前記結合剤がECA、PSA、PWA、MAA、およびWFAからなる植物レクチン群より選択される、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
  24. 前記グリカン構造が式CC2:
    [SA]Gal(NAc)β4GlcNAcβR、
    [式中、残っており
    pおよびnは独立に0または1であり
    SAはシアル酸SAα3であり、好ましいシアル酸型はNeu5AcまたはNeu5Gc、より好ましくはNeu5Acであり、nが1であり、HexがGalである場合、pは0である]
    によるものである、請求項1記載の方法。
  25. 前記構造がGalβ4GlcNAc、Neu5Acα3Galβ4GlcNAc、およびGalNAcβ4GlcNAcからなる群より選択される、請求項24記載の方法。
  26. 前記グリカン構造が式CC3
    Manα3[Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβR
    [式中、Manα残基はさらに1つまたはいくつかのGlcNAcβ2、またはLacNAcβ2、またはLacNAcの末端シアル化バリアント、好ましくはGalβ4GlcNAc、等の複合型末端構造により伸長されてよく、Rは任意にAsn−(ペプチド)0または1であり、潜在的な結合コアタンパク質/ペプチドを示す]
    によるものである、請求項1記載の方法。
  27. 前記構造が、
    GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc、GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ
    GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβAsn、Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc、Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβR、
    Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβAsn、
    Manα3[Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ、
    Manα3[GlcNAcβ2Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ、
    GlcNAcβ2Manα3[Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ、および
    GlcNAcβ2Manα3[GlcNAcβ2Manα6]Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcβ
    からなる群より選択される、請求項26記載の方法。
  28. 前記結合物質がレクチンGS IIまたはLTAと同一のエピトープに結合する、請求項1記載の方法。
  29. 前記レクチンがECA、PSA、PWA、MAA、WFA、GS IIおよびLTAからなる群より選択される、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  30. 前記の少なくとも1個の幹細胞が:身体の全ての組織型の細胞へと分化することができる、全能性;身体の多数の細胞へと分化することができるが全てではない、多能性;の群より選択される特徴を有するか、またはそれは限られた組織型へと分化することができる前駆細胞である、請求項1記載の方法。
  31. 前記幹細胞が;全能性幹細胞は胚幹細胞、非胚幹細胞(extraembryonic stem cell)、クローン化された幹細胞、および単為生殖由来細胞からなる群より選択される;多能性幹細胞は造血幹細胞、脂肪幹細胞、間葉系幹細胞、臍帯血幹細胞、および胎盤幹細胞からなる群より選択される;前駆幹細胞は神経、肝臓、腎形成、脂質生成、骨芽、破骨、肺胞、心臓、腸、および内皮前駆細胞からなる群より選択される;群より選択される、請求項30記載の方法。
  32. 前記胚幹細胞が、ステージ特異的胚抗原(SSEA)3、SSEA4、Tra−1−60およびTra−1−81、Oct−3/4、Cripto、ガストリン放出ペプチド(GRP)受容体、ポドカリキシン様タンパク質(PODXL)、ならびにヒトテロメラーゼ逆転写酵素からなる群より選択される少なくとも1種のマーカーを発現する、請求項31記載の方法。
  33. 前記細胞が請求項9または10に従って増殖させられる、請求項32記載の方法。
  34. 前記間葉系幹細胞がSTRO−1、CD105、CD54、CD106、HLA−Iマーカー、ビメンチン、ASMA、コラーゲン−1、およびフィブロネクチンからなるがHLA−DR、CD117、および造血細胞ではないマーカーの群より選択される少なくとも1種のマーカーを発現するか、またはRUNX orの少ない発現量を有する、請求項30記載の方法。
  35. 前記細胞が請求項18または19に従って増殖させられる、請求項34記載の方法。
  36. さらに細胞培養培地、少なくとも1種の増殖因子を添加した細胞培養培地、または馴化培地を含む、請求項1記載の方法。
  37. 前記の少なくとも1種の増殖因子が、WNTシグナル伝達アゴニスト、TGF−b、bFGF、IL−6、SCF、BMP−2、トロンボポエチン、EPO、IGF−1、IL−11、IL−5、Flt−3/Flk−2リガンド、フィブロネクチン、LIF、HGF、NFG、アンギオポイエチン様2および3、G−CSF、GM−CSF、Tpo、Shh、Wnt−3a、Kirre、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項36記載の方法。
  38. 前記馴化培地が、マウスフィーダー細胞馴化培地およびヒトフィーダー細胞馴化培地からなる群より選択される、請求項36記載の方法。
  39. 前記培地が、Roswell Park Memorial Institute (RPMI−1640)、ダルベッコ修飾必須培地(DMEM)、イーグル修飾必須培地(EMEM)、Optimem、およびIscove培地からなる群より選択される、請求項36記載の方法。
  40. 前記表面が、プレート、ディッシュ、バッグ、ロッド、ペレット、ファイバー、粒子およびメッシュからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  41. 前記粒子が、ビーズ、ミクロスフィア、ナノ粒子、およびコロイド粒子からなる群より選択される、請求項40記載の方法。
  42. 前記表面が、ガラス、シリカ、シリコン、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、ヒドロゲル、PTFE、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、デキストラン、およびポリアクリルアミドからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  43. 前記表面が生体適合性、天然、合成であるか、またはポリマーを含む、請求項1記載の方法。
  44. 前記ポリマーが、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリ酢酸ビニル、ブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリウレタンからなる群より選択される、請求項43記載の方法。
  45. 前記生体適合性表面が、コラーゲン、金属、ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、バイオセラミック材料、ヒアルロン酸ポリマー、アルギン酸塩、アクリル酸エステルポリマー、乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマー、乳酸/グリコール酸ポリマー、精製タンパク質、精製ペプチド、および細胞外マトリクス組成物からなる群より選択される、請求項43記載の方法。
  46. 前記結合剤が前記表面に共有結合的に、非共有結合的に、静電的に、または疎水的に付着する、請求項1記載の方法。
  47. 少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団が、培養において、20、40、または100回の継代後に実質的に未分化のままである、請求項2記載の方法。
  48. 結合剤と接触させられる前記の少なくとも1個の幹細胞が、薬剤を用いて分化するように誘導される、請求項47記載の方法。
  49. 少なくとも1個の幹細胞の拡張を誘導することができる前記薬剤が、TPO、SCF、IL−1、IL−3、IL−7、flt−3L、G−CSF、GM−CSF、Epo、FGF−1、FGF−2、FGF−4、FGF−20、VEGF、アクチビン−A、IGF、EGF、NGF、LIF、PDGF、および骨形成タンパク質ファミリーのメンバーからなる群より選択される、請求項48記載の方法。
  50. 多分化能または多能性ヒト胚幹細胞の精製された調製物であって、前記細胞が:(i)内胚葉、中胚葉、および外胚葉組織の派生物に分化する能力、(ii)正常な核型、(iii)少なくとも約10回の継代の間、in vitro培養において増殖する能力を有し、ならびに(iv)請求項1記載の方法から得られる、調製物。
  51. 前記細胞が、結合剤と接触した際、本質的に分化を阻害される、請求項50記載の調製物。
  52. 前記結合剤が、抗体、抗体断片、レクチン、およびグリコシダーゼからなる群より選択される、請求項50記載の調製物。
  53. 前記結合剤がレクチンである、請求項22記載の調製物。
  54. 前記レクチンがECA、PSA、PWA、MAA、WFA、GS IIおよびLTAからなる群より選択される、請求項53記載の調製物。
  55. 前記調製物が、培養において、20、40、または100回の継代後に実質的に未分化のままである、請求項50記載の調製物。
  56. 前記調製物が動物で生成された抗体または血清に曝露されていない、請求項50記載の調製物。
  57. 前記細胞がSSEA−3およびSSEA−4マーカーに対して陽性である、請求項50記載の調製物。
  58. 前記細胞がTRA−1−60およびTRA−1−81マーカーに対して陽性である、請求項50記載の調製物。
  59. 前記細胞が、懸濁培養にかけられたか、または免疫無防備状態の動物に移植された際に、胚様体を形成することができる、請求項50記載の調製物。
  60. 請求項1に従って得ることができる、幹細胞の集団または少なくとも1個の幹細胞。
  61. 前記細胞または細胞群が幹細胞マーカーを少なくとも20回の継代の間維持する、請求項50記載の幹細胞の集団または少なくとも1個の幹細胞。
  62. 式T1
    Figure 2010516239

    [式中、Xは結合位置であり R、R、およびRはOHもしくはグリコシド結合した単糖残基シアル酸、好ましくはNeu5Acα2もしくはNeu5Gc α2、最も好ましくはNeu5Acα2であり、またはR、はOHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L−フコース)またはN−アセチル(N−アセトアミド、NCOCH)であり;R、はH、OHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L−フコース)であり、RがHである場合、RはOHであり、RがHではない場合、RはHであり;R7はN−アセチルまたはOHであり、Xは前記細胞からの天然オリゴ糖主鎖構造、好ましくはN−グリカン、O−グリカンもしくは糖脂質構造であり;またはnが0である場合、Xは無であり、Yはリンカー基、好ましくはO−グリカンおよびO−結合末端オリゴ糖および糖脂質のための酸素、ならびにN−グリカンのためのN、またはnが0である場合、無であり;Zは担体構造、好ましくは細胞により産生された天然担体であり、例えばタンパク質または脂質であって、好ましくは担体上のセラミドもしくは分岐グリカンコア構造、またはHであり;アーチはガラクトピラノシルからの結合が左側の残基の3位または4位いずれかに対するものであること、およびR4構造が他の4または3位にあることを表し;nは0または1の整数であり、mは1〜1000、好ましくは1〜100、および最も好ましくは1〜10の整数(担体上のグリカンの数)であり、ただしR2およびR3のうち1つはOHまたはR3はN−アセチルであり、左側の第1の残基が右側の残基の4位に結合する場合、R6はOHであり:XはGalα4Galβ4Glcではなく、(SSEA−3または4のコア構造)またはR3はフコシルである]
    の幹細胞上のグリカン構造を認識することができる結合剤の群より選択される結合剤を選択する工程を含む方法。
  63. 前記グリカン構造が式T2
    Figure 2010516239

    [式中、R〜Rを含む変数は式T1に対して記載されるものと同様である]
    によるものである、請求項62記載の方法。
  64. 前記グリカン構造が式T3
    Figure 2010516239

    [式中、R〜Rを含む変数は式T1に対して記載されるものと同様である]
    によるものである、請求項62記載の方法。
  65. 前記グリカン構造が式T4:
    Galβ1−xHex(NAc)、 (T4)
    [xは結合位置3または4であり、
    および、HexはGalまたはGlcであり
    ただしpは0または1であり、xが結合位置3である場合、pは1であり、HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり、および、xが結合位置4である場合、HexはGlcである。コアGalβ1−3/4エピトープは、1または2個の構造SAαまたはFucαにより、任意に水酸基に置換され、ここでSAはシアル酸である]
    のグリカン構造である、請求項62記載の方法。
  66. 前記細胞調製物が胚性幹細胞または非造血成体幹細胞調製物である、請求項62記載の方法。
  67. (i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;および(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、グリカン構造を結合する1または複数種の結合剤と接触させること、を含み、前記結合剤はManα結合レクチンFRIL群レクチンもしくは同様な特異性を有するレクチンまたは造血幹細胞の培養のために用いられる他のレクチンではなく、または前記結合剤は共有結合的に表面に付着する、造血幹細胞の調節または培養のための方法。
  68. 前記結合剤が上記請求項のうちいずれかに記載される特異性を有する、請求項64記載の方法。
  69. 前記調節が前記細胞の分化を伴う、請求項67および68のいずれかに記載の方法。
  70. 前記結合物質がGF287、GF279、GF288、GF284、GF283、GF286、GF290、GF289、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF305、GF307、GF353、およびGF354からなる群より選択される抗体と同一のエピトープに結合する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  71. 前記結合物質がGF287、GF279、GF288、GF284、GF283、GF286、GF290、およびGF289、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF305、GF307、GF353、およびGF354からなる群より選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  72. 前記タンパク質が、少なくとも部分的に2つの単糖構造および前記単糖残基間の結合構造を認識する高特異性結合剤である、請求項13記載の方法。
  73. 保存された増殖する能力を有するが、本発明の幹細胞を本発明の結合剤との接触の下で培養することを含む、分化状態における阻害を有し、ここで任意に前記結合剤は表面に付着する、幹細胞。
  74. 前記細胞が全能性幹細胞、多能性幹細胞、および前駆幹細胞からなる群より選択される、請求項73記載の方法。
  75. 最初にある期間結合剤との接触の下で培養され、次いで第2の/異なる結合剤を含んだ第2の培養液中およびサイトカインまたは増殖因子の同一のまたは各種の混合物中で培養される、請求項73記載の細胞。
  76. 任意に少なくとも1種の、幹細胞を支持するまたはその分化を誘導することが知られる、WNTシグナル伝達アゴニスト、TGF−b、bFGF、IL−6、SCF、BMP−2、トロンボポエチン、EPO、IGF−1、IL−11、IL−5、Flt−3/Flk−2リガンド、フィブロネクチン、LIF、HGF、NFG、アンギオポイエチン様2および3、G−CSF、GM−CSF、Tpo、Shh、Wnt−3a、Kirre、およびそれらの混合物からなる群より選択される増殖因子を添加した細胞培養液または増殖培地中で前記細胞が維持される、請求項73記載の細胞。
  77. IL−3(約20ng/ml)、IL−6(約250ng/ml)、SCF(約10ng/ml)、TPO(約250ng/ml)、flt−3L(約100ng/ml)からなる群より選択される増殖因子を添加した、請求項76記載の培地。
  78. 前記細胞が、GSK−3の阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素活性の阻害剤、およびDNAメチル基転移酵素活性の阻害剤、のうちの1または複数種から選択される薬剤の存在下で維持される、請求項73または76に記載の細胞。
  79. 前記結合剤がレクチン、抗体またはグリコシダーゼである、請求項73〜76のうちいずれか1項に記載の細胞。
  80. 前記表面が、金属、ガラス、プラスチック、共重合体、コロイド、脂質、細胞表面等からなる群より選択される、上記請求項のうちいずれかに記載される方法または細胞。
  81. 前記結合剤がグリカン結合タンパク質の複合体であって、好ましくは前記結合剤タンパク質のグリカンから結合する、好ましくはポリバレントな複合体である、請求項1記載の方法。
  82. 前記結合剤が固定化される、請求項1または81記載の方法。
  83. 固定化が非共有結合的な相互作用または共有結合的な固定化を含む、請求項82記載の方法。
  84. (i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;ならびに(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、1または複数種の、グリカン構造を結合する結合剤または幹細胞の培養に用いられる他のレクチンと接触させ、または前記結合剤は特異的にもしくは共有結合的に表面に付着し、および任意に、ここで前記結合剤は図のいずれかに記載の結合剤を含むこと;を含む、幹細胞の調節または培養のための結合剤を選択するための方法。
  85. 幹細胞上の前記グリカン構造が請求項または明細書内の上記グリカン構造の式のうちいずれかを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
  86. (i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;および(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、1または複数種の結合剤に接触させること;を含み、ここで、任意に、前記結合剤は上記請求項のうちいずれかに記載のグリカン構造に結合し、およびここで幹細胞の増殖の速度が増加し、前記幹細胞の未分化状態が維持される、結合剤の選択または最適化のための方法。
  87. (i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;および(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、1または複数種の結合剤に接触させること;を含み、ここで、任意に、前記結合剤は上記請求項のうちいずれかに記載のグリカン構造に結合し、およびここで幹細胞の増殖の速度が減少し、前記幹細胞の未分化状態が維持される、結合剤の選択のための方法。
  88. (i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;および(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、1または複数種の結合剤に接触させること;を含み、ここで、任意に、前記結合剤は上記請求項のうちいずれかに記載のグリカン構造に結合し、およびここで幹細胞の増殖の速度が減少し、前記幹細胞の未分化状態が維持される、結合剤の選択のための方法。
  89. (i)少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を提供すること;および(ii)前記の少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団を、1または複数種の結合剤に接触させること;を含み、ここで、任意に、前記結合剤は上記請求項のうちいずれかに記載のグリカン構造に結合し、ならびにここで幹細胞の接着状態、形態、増殖速度および/または分化状態が変化する、結合剤の選択のための方法。
  90. グリカン構造がα3−フコシル化構造を含む、上記請求項のうちいずれかに記載の方法または細胞。
  91. 前記構造がLewis xおよびシアリルLewis xからなる群より選択される、請求項90記載の方法または細胞。
  92. 前記結合剤が、α3−フコシル化構造、α2−フコシル化構造、非フコシル化シアリルラクトサミン、Galβ3GalNAc構造、GalNAcα構造、ポリ−N−アセチルラクトサミン構造、および特異的マンノース構造からなる群より選択される構造を認識する、上記請求項のうちいずれかに記載の方法。
  93. 前記表面が、プレート、ディッシュ、バッグ、ロッド、ペレット、ファイバー、粒子およびメッシュからなる群より選択される、請求項73または80に記載の方法。
  94. 前記粒子が、ビーズ、ミクロスフィア、ナノ粒子、およびコロイド粒子からなる群より選択される、請求項93記載の方法。
  95. 前記表面が、ガラス、シリカ、シリコン、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、ヒドロゲル、PTFE、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、デキストラン、およびポリアクリルアミドからなる群より選択される、請求項93記載の方法。
  96. 前記表面が生体適合性、天然、合成であるか、またはポリマーを含む、請求項93記載の方法。
  97. 前記ポリマーが、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン、ポリ酢酸ビニル、ブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリウレタンからなる群より選択される、請求項96記載の方法。
  98. 前記生体適合性表面が、コラーゲン、金属、ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、バイオセラミック材料、ヒアルロン酸ポリマー、アルギン酸塩、アクリル酸エステルポリマー、乳酸ポリマー、グリコール酸ポリマー、乳酸/グリコール酸ポリマー、精製タンパク質、精製ペプチド、および細胞外マトリクス組成物からなる群より選択される、請求項96記載の方法。
  99. 前記結合剤が前記表面に共有結合的に、非共有結合的に、静電的に、疎水的に付着し、または前記結合剤はグリカン結合タンパク質の複合体であって、好ましくは前記結合剤タンパク質のグリカンから結合する、好ましくはポリバレントな複合体である、請求項72〜98のうちいずれか1項に記載の方法。
  100. 少なくとも1個の幹細胞または幹細胞集団が、培養において、20、40、または100回の継代後に実質的に未分化のままである、請求項72〜99のうちいずれか1項に記載の方法。
  101. 結合剤と接触させられる前記の少なくとも1個の幹細胞が、前記結合剤を用いて分化するように誘導される、請求項72〜99のうちいずれか1項に記載の方法。
  102. 前記構造がGalβ4GlcNAc、Fucα2Galβ4GlcNAc、およびGalβ4(Fucα3)GlcNAcからなる群より選択される、請求項1〜101に記載の方法。
  103. 前記結合剤がECA、DPA、ガレクチン−1、およびUEAからなる植物レクチン群から選択される、請求項1〜102のうちいずれか1項に記載の方法。
  104. 前記タンパク質のN グリコシル化部位が変異している、組み替え非グリコシル化(aglycosylated)ECAタンパク質。
  105. 表面に結合した、請求項104記載の組み替え非グリコシル化ECAタンパク質。
  106. 請求項104記載の組み替え非グリコシル化ECAタンパク質またはその機能断片をコードするアミノ酸配列。
  107. 請求項104記載の非グリコシル化ECAタンパク質またはその機能断片をコードする核酸配列。
  108. 請求項107記載の核酸を含む宿主細胞。’
  109. 式CONJ
    B−(G−)R1−R2−(S1−)T−
    [式中、Bは前記結合剤であり、Gはグリカン(前記結合剤がグリカンを結合する場合)であり、
    R1およびR2は化学選択的連結基であり、Tはタグ、好ましくはビオチンであり、Lはタグに特異的に結合するリガンドであり;S1は任意のスペーサー基、好ましくは炭素数1〜10のアルキルであり、
    mおよびnは独立に0または1のいずれかの整数である]
    の結合剤複合体構造。
  110. 前記結合剤が、好ましくは酸化グリカンを介してグリカンと複合化する、請求項109記載の結合剤複合体。
  111. 式COMP
    B−(G−)R1−R2−(S1−)(T−)(L−)r−(S2)−SOL
    [式中、Bは結合剤であり、SOLは固相またはマトリクスまたは表面であり、Gはグリカン(前記結合剤がグリカンを結合する場合)であり、R1およびR2は化学選択的連結基であり、Tはタグ、好ましくはビオチンであり、Lはタグに特異的に結合するリガンドであり、S1およびS2は任意のスペーサー基、好ましくは炭素数1〜10のアルキルであり、m、n、p、rおよびsは独立に0または1のいずれかの整数である]
    の構造を含む複合体。
  112. 請求項111に記載の複合化結合剤。
  113. 前記結合剤が、好ましくはSOLへの酸化グリカンを介してグリカンと複合化する、請求項111記載の結合剤結合複合体。
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