JP4437015B2 - 肝幹細胞の分離方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定方法およびその分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
肝臓は非常に再生能の高い臓器として知られているが、近年の細胞生物学の進展によって、幹細胞システムに基づいてその恒常性が制御されている事が明らかになりつつある。肝臓の幹細胞を同定、分離する技術は肝臓の再生治療を実現する上で重要なテクノロジーである。
【0003】
近年、フローサイトメトリーなど細胞分離技術の発達に伴って幹細胞の分離法が開発され、特に造血系幹細胞に関しては細胞表面のさまざまな抗原を利用した分離法が開発されており、分離された一つの細胞から骨髄が再構築された例も報告されている。肝臓の幹細胞の候補としては、オーバル細胞(oval cell)、肝芽細胞、骨髄由来細胞などが考えられている。これらの細胞はいずれも肝細胞に分化することが出来、肝障害の病態に関与しているものと考えられる。肝臓の幹細胞に関しても前述したようなフローサイトメトリーを用いた方法が導入され、肝臓中にわずかしか存在しないうえに、形態的に区別できない幹細胞を選択的に分離、回収する方法が考案されている。例えば谷口らはマウス胎仔肝臓中の非血球細胞画分(CD45−Ter119−細胞)に存在するc−Met+CD49f+/low c−Kit−CD45−Ter119−細胞を各抗原に特異的な蛍光標識抗体を用いてフローサイトメトリーによって分離し、この細胞画分中に増殖能が高く、かつ肝細胞と胆管細胞の二種類の異なった細胞に分化可能な多分化能を持っている細胞が含まれていることを報告している(例えば、非特許文献1参照)。あるいは、フェリスはラミニン、デスモプラキンI、細胞間接着分子(CCAM)、ガン胎児性抗原(CEA)、ジペプチジルペプチダーゼ−4、γグルタミルトランスペプチダーゼ(gGT)、VLA−2、VLA−3、VLA−5、およびVLA−6からなる群より選択される抗原を発現する細胞について選択する工程を含む肝実質細胞から肝幹細胞を分離する方法を報告している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特表2002−520015号
【非特許文献1】
ザ ジャーナル オブ セル バイオロジー (The Journal of Cell Biology)、第156巻、第173−184頁(2002年)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在までのところ、肝臓の幹細胞に関する確実な定義がなされておらず、また幹細胞から成熟細胞に分化していく各段階で、どのような細胞表面抗原が発現しているのかについて十分には解析されていない。
一方、糖鎖は糖タンパク質や糖脂質の形で細胞表面に分布し、細胞同士あるいは細胞と細胞外マトリックスとの相互作用や細胞内シグナリング、タンパク質のターゲティングに重要な役割を果たしている。近年糖鎖の生合成に関与する糖転移酵素が多数クローニングされ、糖鎖の生物学的機能に関する情報が蓄積されつつある。
【0006】
本発明は、上述の現状に鑑みてなされたもので、肝臓細胞の未分化細胞から成熟細胞に分化する過程における細胞表面糖鎖の構造変化や糖転移酵素活性あるいは遺伝子発現を解析し、多能性を有する肝細胞前駆細胞に特異的な細胞表面糖鎖マーカーを同定し、この糖鎖マーカーにより肝幹細胞を同定し、分離する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、多能性を有する肝細胞前駆細胞の糖タンパク質はインゲンマメレクチン(E4PHA)、小麦胚レクチン(WGA)、レンズマメレクチン(LCA)、あるいはヒイロチャワンタケレクチン(AAL)との反応性が特異的に高く、初代培養肝細胞や肝癌細胞由来の糖タンパク質と大きく異なっていることを見いだし、これらの細胞表面糖鎖抗原をマーカーとして、多能性を有する肝細胞前駆細胞を同定し、フローサイトメトリーなど細胞分離技術を用いて当該細胞を分離することに成功し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、
(1) 肝臓からの、肝細胞に分化可能な肝細胞前駆細胞の分離方法であって、インゲンマメレクチン(E4PHA)を用いて前記細胞の選択を行うことを特徴とする方法、
(2) 上記(1)記載の方法により肝細胞に分化可能な肝細胞前駆細胞の分離を行う工程を含有する、肝細胞に分化可能な肝細胞前駆細胞含有組成物の製造方法、
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における多能性を有する肝細胞前駆細胞とは、肝臓において異なった機能を持つ複数の成熟細胞に分化する事の出来る多分化能と自己と同じ細胞を複製できる自己複製能を兼ね備えた細胞であり、長寿の細胞または不死の細胞であれば細胞の起源に制限は無く、肝臓に局在する細胞には限定されない。例えば、肝臓を構成する細胞集団の中で最も未分化な細胞であり、肝臓における多分化能を有する細胞の候補としては、例えば胆管上皮細胞と肝細胞に分化可能なオーバル細胞と呼ばれる前駆細胞が知られている。また、門脈周囲領域にはより未分化で多分化能を持つ細胞が存在すると考えられている。また、骨髄細胞や末梢血中にも肝細胞に分化可能な幹細胞が存在する可能性も指摘されている。本発明の多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定方法および分離方法は、これらの未分化で多能性を有する肝細胞前駆細胞候補に好適に適用される。
【0010】
多能性を有する肝細胞前駆細胞を分離するための材料としては、当該細胞を含むことが予想される器官、組織であれば特に限定はなく、例えば成体肝臓組織や胎生肝臓組織、あるいは骨髄細胞や末梢血液細胞などを肝細胞前駆細胞の同定、分離に好適に用いることができる。さらに、本発明の多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定、分離法を既存の細胞分画法によって分画された細胞群に対して適用する事によって、より未分化で多分化能を有する細胞を分離することができる。
【0011】
本発明の多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定、分離には、例えばレクチンを用いることが出来る。レクチンは免疫反応産物以外の糖結合性タンパク質あるいは糖タンパク質で細胞または複合糖質を凝集する事が出来るものと定義されており、植物性レクチンと動物性レクチンが存在する。本発明に用いられるレクチンとしては多能性を有する肝細胞前駆細胞表面に発現する糖鎖に反応するものであれば特に制限はない。本発明においては、前記細胞において特異的に発現している糖鎖に反応するレクチンが特に好適に使用される。認識する糖鎖構造(oligosaccharide structure)が詳細に調べられた種々のレクチンが糖鎖構造研究用に市販されており、これらを本発明に好適に用いることができる。これらのレクチンの糖鎖認識特異性に関しては例えば、2002年、アカデミック・プレス社(Academic Press, Inc.)発行、ウィリアム・J・レナーツ(William J. Lennarz)、ジェラルド・W・ハート(Gerald W. Hart)編集、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)、第230巻、第66−86頁や新生化学実験講座3、糖質I、糖タンパク質(上)、第3−29頁に詳しく記載されている。
【0012】
例えば、本発明者らが多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定、分離に用いることが出来ることを見いだしたレクチンは以下のものが挙げられる。インゲンマメレクチンは慣用名がE4PHAであり、バイセクティングGlcNAc構造を持つコンプレックス型糖鎖構造を認識して結合する事が知られている。小麦胚レクチンは慣用名がWGAであり、シアル酸やバイセクティングGlcNAc構造を持つハイブリッド型あるいはコンプレックス型糖鎖構造を認識して結合する。レンズマメ(レンチル)レクチンは慣用名がLCAであり、例えば2本鎖コンプレックス型糖鎖で還元末端に位置するN−アセチルグルコサミン残基にα−L−フコース残基が結合した構造の糖鎖をもつ糖ペプチドや糖タンパク質、あるいは3本鎖コンプレックス型糖鎖でα−D−マンノース残基のC−2,6で分岐した構造の糖鎖を持つ糖ペプチドや糖タンパク質に強い親和性を有する。ヒイロチャワンタケレクチンは慣用名がAALであり、フコース残基に特異的なレクチンで、α−1,2およびα−1,3−L−フコース残基に対しても結合するが、特にα−1,6−L−フコース残基を持つ糖鎖に対して強い親和性を有する。
【0013】
レクチンはそのまま、あるいはFITCなどの蛍光標識、パーオキシダーゼなどの酵素標識、ビオチン標識したレクチンを用いることができる。また、複数のレクチンを組み合わせて使用することもできる。
【0014】
本発明におけるレクチンによる多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定の為には、たとえばレクチンブロッティング法、レクチンカラム法、標識レクチンによる細胞染色法、標識レクチンを用いたフローサイトメトリーなどの方法が用いられる。これらの方法の詳細については例えば、1996年、秀潤社発行、グライコバイオロジー実験プロトコール、細胞工学別冊、実験プロトコールシリーズや1999年、医歯薬出版株式会社発行、日本電気泳動学会編集、最新電気泳動実験法などに記載されている。
【0015】
レクチンブロッティングについては例えば以下のように行う。分析対象の細胞を1回PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後、TNEバッファー(1%NP−40、0.15M NaCl、1mM EDTAとプロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ社製)を含む10mM Tris塩酸、pH 7.8)で溶解する。8〜12%SDS−ポリアクリルアミドゲルで3〜10μgのタンパク質を電気泳動後、ニトロセルロース膜にエレクトロブロッティングする。ブロッティング終了後、3%BSA(ウシ血清アルブミン)中で室温、一晩ブロッキングを行う。ビオチン化レクチンを0.05%Tween20を含むTBS(トリス緩衝生理食塩水)で1000倍程度に希釈し、この希釈液中でニトロセルロース膜を室温で30分から2時間、あるいは4℃で数時間から一晩インキュベーションする。ビオチン化レクチンは、例えば生化学工業株式会社から市販されているものを用いることが出来る。レクチンとのインキュベーションの終了した膜を0.05%Tween20を含むTBSで10分間、3回洗浄する。パーオキシダーゼ標識アビジンを0.05%Tween20を含むTBSで適当に希釈した液に洗浄後の膜を浸して室温で30分から2時間インキュベーションする。膜を0.05%Tween20を含むTBSで10分間、3回洗浄する。ECLキット(アマシャム バイオサイエンス社製)などの化学発光基質を用いて発色させ、膜上の糖タンパク質に結合しているレクチンを検出する。
【0016】
細胞由来の糖脂質を試料とする場合は、クロロホルム、メタノール、水、あるいはこれらの混合溶媒を用いて細胞から糖脂質を抽出し、これを薄層クロマトグラフィーで分離した後、直接薄層クロマトグラフ上でレクチンを用いた糖脂質の検出を行ってもよいし、あるいは、展開後の薄層クロマトグラフからアイロンあるいはATTO社製のTLCサーマルブロッター等を用いて糖脂質をPVDF膜に転写し、この膜上の糖脂質を上述した糖タンパク質の場合と同様にレクチンで検出することも出来る。
【0017】
本発明におけるレクチンによる多能性を有する肝細胞前駆細胞の分離の手段は、特に限定されるものでなく、一般的な細胞分離方法を用いればよい。例えばフローサイトメトリーによる細胞分画法や磁気ビーズによる細胞分画法、レクチンを結合させた樹脂を用いたレクチンカラムクロマトグラフィーによる分離法が用いられる。これらの方法の詳細については例えば最新電気泳動実験法、日本電気泳動学会編集、医歯薬出版株式会社や新細胞工学実験プロトコール、細胞工学 別冊8、秀潤社などに記載されている。
【0018】
レクチンフローサイトメトリーについては例えば以下のように行う。肝臓細胞をPBSで2回洗浄する。0.02%EDTAを含むPBSを加えて5分ほど放置してからよく懸濁する。2000rpmで遠心分離後、上清を捨てて、細胞をPBSで洗浄する。約5μg/ml FITC標識レクチンを細胞懸濁液に混ぜ、適当な温度で適当な時間放置する。レクチンの糖鎖構造に対する特異性は、インキュベーションの温度で変化する事が知られているので、使用するレクチンごとにインキュベーションの温度と時間を適宜設定する事が好ましい。レクチンとの反応後、細胞をPBSで3回洗浄する。細胞をPBSに懸濁し、Fluorescene activated cell sorter (FACS)にかけ、レクチンで特異的に標識された蛍光強度の強い細胞集団を分画する。
【0019】
本発明の多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定、分離には、例えば本発明のレクチンによって認識される糖鎖構造に特異的に結合する抗糖鎖抗体、またはその誘導体を用いることも出来る。糖鎖に対する抗体を調製するためには、例えば、本発明のレクチンによって認識される糖鎖構造を有する糖鎖をそのまま動物に免疫して得ることが出来るが、通常、糖鎖自体では抗原性が低いため、キャリアータンパク質などに結合した形で免疫するか、もしくは目的の糖鎖抗原を発現している細胞そのもので免疫する方法が好ましい。キャリアタンパク質としては、アルブミンやKLH(キーホールリンペットヘマグルチニン)などのタンパク質や、MHCクラスIIペプチドなどが用いられる。一般に市販されているマレイミド活性化タンパク質を用いてもよいし、同じく市販されている適当なリンカーを用いてタンパク質やペプチドと抗原となる糖鎖あるいは糖ペプチド、糖脂質、リゾ糖脂質とを結合させても良い。
【0020】
本発明の糖鎖抗原に特異的に結合する抗体は、該糖鎖抗原に特異的に結合する能力を有するものであれば、特に限定はなく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のどちらでも良い。さらに、公知技術によって修飾された抗体や抗体の誘導体、例えばヒト化抗体、Fabフラグメント、単鎖抗体などを使用することもできる。本発明の抗体は、例えば、1992年、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)発行、ジョン・E・コリガン(John E. Coligan)編集、カレント・プロトコルズ・イン・イムノロジー(Current Protocols in Immunology)に記載の方法により、容易に作製され得る。また、遺伝子工学的に抗体を作製することもできる。さらに、得られた抗体を精製後、ペプチダーゼ等によって処理することにより、抗体の断片が得られる。また、得られた精製抗体あるいは、その誘導体を酵素標識や蛍光標識して本発明の多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定、分離のために用いることが出来る。
【0021】
本発明における抗糖鎖抗体による多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定の為には、たとえばウエスタンブロッティング法、抗体カラム法、標識抗体による細胞染色法、標識抗体を用いたフローサイトメトリーなどの方法が用いられる。
【0022】
本発明における抗体による多能性を有する肝細胞前駆細胞の分離方法は、特に限定されるものでなく、一般の細胞分離方法を用いればよい。例えば、抗体を用いた磁気ビーズによる分離法、抗体を結合させた樹脂を用いたアフィニティクロマトグラフィーによる分離法、抗体を固定した抗体マトリックスによる分離法、フローサイトメーターによる分離法等が挙げられる。
【0023】
本発明の多能性を有する肝細胞前駆細胞の同定の為には、前期細胞に特異的に発現する糖鎖構造を合成する糖転移酵素の遺伝子発現やタンパク質発現、あるいは酵素活性レベルを測定しても良い。糖転移酵素としては、例えばN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII、シアリルトランスフェラーゼ、またはα−1,6フコシルトランスフェラーゼなどが挙げられる。これらの糖転移酵素の遺伝子発現レベル、酵素タンパク質発現レベル、酵素活性レベルの測定は、例えばN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIに関してはザ ジャーナル オブ バイオケミストリー (The Journal of Biochemistry)、第113巻、第692−698頁(1993年)、シアリルトランスフェラーゼに関してはザ ジャーナル オブ バイオケミストリー (The Journal of Biochemistry)、第120巻、第1−13頁(1996年)、α−1,6フコシルトランスフェラーゼに関してはザ ジャーナル オブ バイオケミストリー (The Journalof Biochemistry)、第121巻、第626−632頁(1997年)、あるいはこれらの文献に引用されている文献に記載されている方法を参考にして実施することができる。遺伝子発現レベルについては各酵素をコードする遺伝子の塩基配列をもとに適切なプローブやプライマーを作製する事によって、ノザンブロッティング法やPCR法によって測定することが出来る。酵素タンパク質発現レベルについては各酵素を認識する抗体を用いてウェスタンブロッティング法によって測定することが出来る。また、酵素活性については例えば、1996年、秀潤社発行、グライコバイオロジー実験プロトコール、細胞工学別冊、実験プロトコールシリーズに記載の方法に従って、適切なアクセプター糖鎖とドナー糖ヌクレオチドを用いて測定することが出来る。
【0024】
上記の多能性を有する肝細胞前駆細胞の分離方法を用いることにより、当該細胞を含有する組成物を製造することができる。前記組成物中の、多能性を有する肝細胞前駆細胞以外の成分には特に限定はなく、公知の細胞維持用成分、例えば生理食塩水、細胞培養用培地、血漿、血清、あるいはコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、グルコサミノグリカンなどの細胞外マトリックスなどを使用することができる。特に好適には多能性や肝細胞への分化能を維持した状態で当該細胞を増殖、維持できるものが使用される。
【0025】
本発明の方法によって分離、同定された多能性を有する肝細胞前駆細胞、ならびに該細胞を含有する組成物の用途としては、肝炎や肝ガンの治療により切除された肝臓に対する再生医療において、外科的にあるいはカテーテルなどを使用して肝細胞前駆細胞を肝臓に投与することができるほか血管内投与を行うこともできる。遺伝子治療においても、治療用遺伝子を本発明の方法によって分離、同定された多能性を有する肝細胞前駆細胞に導入した後、同様に肝臓あるいは血管内に投与する事によって、肝臓において長期に治療用遺伝子を発現させることが期待できる。
【0026】
【実施例】
以下に本発明をより詳細に説明するため実施例および実験例を示すが本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0027】
実施例1
多能性を有する肝細胞前駆細胞株としては、NIHのThorgeirsson博士から供与された20継代前後のラット肝臓上皮(RLE)細胞を用いた。対照細胞として、ヒト肝芽腫細胞 Huh6(JCRB0401、JCRB細胞バンク)、ヒト肝芽腫細胞 Huh7(JCRB0403、JCRB細胞バンク)、ラット肝ガン細胞 m31(ATCC)、マウスメラノーマ細胞 B16F10、マウス胎生期肝細胞 BNL−CL、マウス胎生期肝ガン細胞 BNL−A7を用いた。培地はいずれも10%のFCSと50μg/mlカナマイシンを含む培地で、RLEはHam−F12培地(ICN社)、Huh6とHuh7はRPMI−1640培地、m31、B16F10、BNL−CL、BNL−A7はD−MEM培地を用いて5%CO2、37℃で培養した。培養細胞を培養シャーレから回収後、1回PBSで洗浄し、TNEバッファー(1%NP−40、0.15M NaCl、1mM EDTA、プロテアーゼンヒビター(10μM aprotinin)を含む10mM Tris−HCl,pH7.8)を加えて細胞を溶解した。可溶化したタンパク質20μg相当量を2−メルカプトエタノールを含むSDS−PAGE用サンプルバッファー中、100℃で5分間変性させた後、10%SDS−PAGEゲルを用いて電気泳動を行った。泳動終了後、ニトロセルロース膜にブロッティングした。ニトロセルロース膜を3%BSA中、室温で一晩ブロッキングした。レクチンは全てホーネン社製ビオチン化レクチンを用いた。用いたレクチンはインゲンマメ(Phaseolus Vulgaris)レクチンE4PHA、小麦胚芽レクチンWGAである。レクチンを0.05%Tween20を含むTBSで1000倍に希釈し、この中にブロッキング後のニトロセルロース膜を浸して30分間室温でインキュベーションした。その後、膜を0.05%Tween20を含むTBSで10分間3回洗浄した。Peroxidase標識avidin(ABCキット、Vector Laboratories)を0.05%Tween20を含むTBSで2000倍に希釈し、この中に洗浄後のニトロセルロース膜を浸して30分間室温でインキュベーションした。その後、膜を0.05%Tween20を含むTBSで10分間3回洗浄した。最後にECLキット(Amersham Biosciences社製)を用いて発色させた。その結果、多能性を有する肝細胞前駆細胞株であるRLE細胞由来のタンパク質は肝芽腫細胞や肝癌細胞、胎生期肝細胞由来のものと比較してE4PHAで非常に強く染色された。
【0028】
実施例2
実施例1で用いた多能性を有する肝細胞前駆細胞株RLE細胞、及び対照細胞としてラット腹水肝ガン細胞AH66、灌流直後の肝細胞、48時間培養後の肝細胞、肝非実質細胞を用いて、フローサイトメーターによる解析を行った。
培地はいずれも10%FCSと50μg/mlカナマイシンを含む培地で、RLEはHam−F12培地(ICN社)、培養肝細胞は0.1μMインスリン、10μMデキザメサゾンを含むD−MEM培地を用いて5%CO2、37℃でコラーゲンコートディッシュ上で培養した。
培養細胞を培養シャーレから回収後、10mlのPBSで2回洗浄し、1mlの0.02%EDTAを含むPBSを加えて5分間放置した後、細胞をよく懸濁して1.5mlのエッペンドルフチューブに移した。5μg/ml FITC標識レクチンを100μlのPBSに混ぜ、室温で15分間インキュベーションを行った。その後、1mlのPBSで3回洗浄し、最終的に0.5mlのPBSに懸濁してFACSに供した。何も染色していないサンプルの自家発光の蛍光強度とFITCレクチンによる蛍光強度の差でレクチンの結合した細胞を定量した。用いた標識レクチンは、LCAとE4PHAならびにコントロールとしてタチナタマメレクチン(ConA)を用いた。FITC標識E4PHAを用いたFACSの結果を図1に示す。多能性を有する肝細胞前駆細胞であるRLEは対照細胞である肝ガン細胞AH66や灌流肝細胞、肝非実質細胞と比較してFITC標識E4PHAによって強く染色された。FITC標識LCAを用いたFACSの結果を図2に示す。RLEは肝細胞や肝非実質細胞と比較して、FITC標識LCAによっても強く染色された。
【0029】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における、FITC標識E4PHAを用いたFACSの結果である。
【図2】 本発明における、FITC標識LCAを用いたFACSの結果である。
Claims (2)
- 肝臓からの、肝細胞に分化可能な肝細胞前駆細胞の分離方法であって、インゲンマメレクチン(E4PHA)を用いて前記細胞の選択を行うことを特徴とする方法。
- 請求項1記載の方法により肝細胞に分化可能な肝細胞前駆細胞の分離を行う工程を含有する、肝細胞に分化可能な肝細胞前駆細胞含有組成物の製造方法。
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