皮膚は、外部環境の脅威から身体器官を保護し、体温を維持するためのサーモスタットとして作用する。皮膚は、いくつかの異なる層からなり、それぞれは特殊機能を有する。主な層には、表皮、真皮、及び皮下組織が含まれる。表皮は、真皮の上に覆い被さる、上皮細胞の重層化している層であり、これは結合組織からなる。表皮と真皮はどちらも、脂肪組織の内部層である皮下組織によってさらに支持されている。
皮膚の最上層である表皮は、厚さがわずか0.1から1.5ミリメートルである(Inlander, Skin, New York, NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。これは、ケラチノサイトからなり、その分化状態に基づいていくつかの層に分類される。表皮は、角質層と生存表皮にさらに分類され、これは、顆粒メルフィギアン(granular melphigian)と基底細胞からなる。角質層は吸湿性であり、その屈曲性と柔軟性を維持するのに少なくとも10重量%の水分を必要とする。吸湿性は、ケラチンの保水能力にある程度起因し得る。角質層がその柔軟性と屈曲性を失うと、粗く且つもろくなり、乾燥皮膚をもたらす。
表皮の真下に位置する真皮は、厚さが1.5から4ミリメートルである。これが、皮膚の3つの層のうちで最も厚い。さらに、真皮は、汗腺及び脂腺(毛穴と呼ばれる皮膚中の開口部を通じて物質を分泌し、又はにきびを分泌する)、毛包、神経終末、並びに血管及びリンパ管を含めた皮膚の構造の大部分の拠点でもある(Inlander, Skin, New York. NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。しかし、真皮の主成分は、コラーゲンとエラスチンである。
皮下組織は、皮膚の最深部層である。これは、体温保存のための断熱材及び臓器保護のための衝撃吸収材の両方として作用する(Inlander, Skin, New York. NY: People's Medical Society, 1-7 (1998))。さらに、皮下組織はまた、エネルギー予備で脂肪を蓄える。皮膚のpHは、通常5と6の間である。この酸性度は、皮脂腺の分泌物に由来する両性アミノ酸、乳酸、及び脂肪酸のためである。用語「酸外套」は、皮膚の大部分の領域上に水溶性物質が存在することを指す。皮膚の緩衝能力は、皮膚の角質層中に蓄えられたこれらの分泌物にある程度起因する。
老化の明らかな徴候の1つであるしわは、皮膚に対する環境的損傷から蓄積する生化学的、組織学的、及び生理学的変化によって生じ得る。(Benedetto, International Journal of Dermatology, 38:641-655 (1999))。さらに顔のしわの特徴的なくぼみ、溝、及びひだを生じさせ得る他の二次的要因が存在する(Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nd ed., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990))。これらの二次的要因には、重力の不断の引力、皮膚に対する頻繁且つ不断の位置的圧力(例えば、就寝中)、及び顔面筋の収縮によって生じる顔の運動の繰り返しが含まれる(Stegman et al., The Skin of the Aging Face Cosmetic Dermatological Surgery, 2nd ed., St. Louis, MO: Mosby Year Book: 5-15 (1990))。
いくつかの老化の徴候を潜在的に緩和するために、様々な技術が利用されている。これらの技術は、αヒドロキシ酸とレチノールを含有する顔用モイスチャライザーから外科的処置及び神経毒の注射にまで及ぶ。例えば、1986年には、眼形成外科医(ocuplastic surgeon)と皮膚科医からなる夫婦チームであるJeanとAlastair Carrutherは、眉間範囲の運動関連しわの治療でA型のボツリヌス毒素を使用する方法を開発した(Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York: Academic Press, 143-150 (1981))。Carruther夫妻がしわの治療でA型のボツリヌス毒素を使用したことにより、1992年にこの手法に関する影響力の大きい出版がなされた(Schantz and Scott, In Lewis GE (Ed) Biomedical Aspects of Botulinum, New York: Academic Press, 143-150 (1981))。1994年には、同じチームが顔上の他の運動関連しわでの経験を報告した(Scott, Ophthalmol, 87:1044-1049 (1980))。これにより、次にA型のボツリヌス毒素を使用する美容治療の時代が誕生した。
興味深いことに、A型のボツリヌス毒素は、人間が知っている最も致死的な天然の生物剤であると言われている。ボツリヌス菌(C. botulinum)の胞子は、土壌中に見出され、不適切に滅菌され密封された食品容器中で増殖することができる。この細菌の摂取により、ボツリヌス中毒が引き起こされる場合があり、これは致命的となり得る。ボツリヌス毒素は、シナプス伝達又は神経筋接合部全体にわたるアセチルコリンの放出を妨げることによって、筋肉麻痺を生じるように作用し、その上他の様式でも作用すると考えられている。その作用により、通常筋肉の痙攣又は収縮を引き起こすシグナルが本質的に遮断され、麻痺に陥る。しかし、ボツリヌス毒素の筋肉麻痺作用は、治療効果で使用されている。ボツリヌス毒素の制御された投与は、筋肉を麻痺させることによって、状態、例えば、機能亢進性骨格筋を特徴とする神経筋障害を治療するために使用されている。ボツリヌス毒素を用いて治療されている状態として、半側顔面痙攣、成人発症型痙性斜頚、裂肛、眼瞼痙攣、脳性麻痺、頸部ジストニア、片頭痛、斜視、顎関節障害、並びに様々な種類の筋痙攣及び痙攣が挙げられる。さらに最近、ボツリヌス毒素の筋肉麻痺作用は、治療上及び美容上の顔面への応用、例えば、しわ、眉間しわ線、及び顔面筋の痙攣又は収縮の他の結果の治療などにおいて活用されている。
A型のボツリヌス毒素に加えて、7種の他の血清学的に異なる型のボツリヌス毒素が存在し、これらもグラム陽性細菌のボツリヌス菌(Clostridium botulinum)によって産生される。これらの8種の血清学的に異なる型のボツリヌス毒素のうちで、麻痺を引き起こすことができる7種は、ボツリヌス毒素血清型A、B、C(C1としても知られる)、D、E、F及びGと命名された。これらのそれぞれは、タイプ特異性抗体を用いた中和によって区別される。7種のこれらの活性なボツリヌス毒素血清型のすべてについて、ボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、約150kDである。ボツリヌス毒素の様々な血清型は、これらが影響する動物種、並びにこれらが誘起する麻痺の重症度及び持続期間において異なる。例えば、A型ボツリヌス毒素は、ラットにおいて生じる麻痺の割合によって測定される場合、B型ボツリヌス毒素よりも500倍強力であると判定された。さらに、B型ボツリヌス毒素は、A型に対する霊長類のLD50の約12倍である、480U/kgの用量で、霊長類において非毒性であることが明らかにされている。ボツリヌス毒素の分子サイズ及び分子構造で、これは、角質層及び下にある皮膚構造の複数の層を横断することができない。
ボツリヌス菌によって放出される場合、ボツリヌス毒素は、関連する非毒素タンパク質とともに、約150kDのボツリヌス毒素タンパク質分子を含有する毒素コンプレックス(複合体)の成分である。これらの内因性非毒素タンパク質は、血球凝集素タンパク質、並びに非血球凝集素タンパク質のファミリーを含むと考えられている。非毒素タンパク質は、毒素コンプレックスが摂取されるとき、毒素コンプレックス中のボツリヌス毒素分子を安定化させ、例えば、消化性酸(digestive acid)による変性からボツリヌス毒素分子を保護すると考えられている。したがって、毒素コンプレックスの非毒素タンパク質は、特に毒素コンプレックスが消化管を介して投与されるとき、ボツリヌス毒素の活性を保護し、全身的浸透を増強する。より具体的には、非毒素タンパク質の一部は、消化管上皮を横断する浸透を特異的に増強し、一方他の非毒素タンパク質は、血液中でボツリヌス毒素分子を安定化させると考えられている。さらに、毒素コンプレックス中の非毒素タンパク質の存在により、毒素コンプレックスの分子量が、以前に述べたように約150kDである、ボツリヌス毒素分子だけの分子量よりも一般に大きくなる。例えば、ボツリヌス菌は、約900kD、500kD又は300kDの分子量を有するA型ボツリヌス毒素コンプレックスを産生することができる。興味深いことに、B型及びC型ボツリヌス毒素は、700kD又は500kDのコンプレックスのみとして産生されるようである。D型ボツリヌス毒素は、300kD及び500kDの両方のコンプレックスとして産生される。E型及びF型ボツリヌス毒素は、約300kDのコンプレックスとしてのみ産生される。
ボツリヌス毒素に対してさらなる安定性を提供するために、毒素コンプレックスは、製造中に外来の安定剤(例えば、ゼラチン、多糖、又は最も一般には追加のアルブミン)と組み合わせることによって安定化されることが多い。この安定剤は、製造、輸送、貯蔵、及び投与に関連した環境を含めて、本質的に異なる環境中で毒素コンプレックスに結合し、これを安定化させるように機能する。
一般に、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素コンプレックスとアルブミンを含有する組成物の慎重に制御された注射によって患者に投与されるが、この手法に関連するいくつかの問題が存在する。例えば、注射される毒素コンプレックスは、非毒素タンパク質とアルブミンを含有し、その両方がボツリヌス毒素を安定化し、毒素コンプレックスの分子量を増加させるので、毒素コンプレックスは、体内で長い半減期を有し、組織を通じて拡散するのが遅く、患者中に望ましくない抗原反応を引き起こす場合がある。また、非毒素タンパク質とアルブミンは、血液中でボツリヌス毒素を安定化するので、大量の毒素を血流中に放出しないように、注射を慎重に行わなければならず、さもなければ致命的な全身性中毒に至る恐れがある。したがって、注射は一般に、人体の解剖学的構造を深く理解している、高度に訓練された医療専門家によって正確に実施されなければならない。
本発明は、HIV−TAT断片又はHIV−TAT断片誘導体であるポリペプチドを付加することによって安定化される、本明細書で説明されるような、ボツリヌス毒素コンプレックス又は弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスを含む新規の組成物に関する。好適な実施形態では、安定化ポリペプチドは、配列番号1若しくは2による配列を有し、又は同類置換を通じてこれらの配列に関係している場合がある。ある特定の実施形態では、本発明による安定化されたボツリヌス毒素組成物により、浸透の改善、抗原性及び血液安定性の低減を伴った、皮膚上皮を通じたボツリヌス毒素の輸送又は送達(「経皮送達」とも呼ばれる)が可能になる。本発明の組成物は、本明細書で説明されるように、様々な治療目的、美的目的、及び/又は美容目的で、ボツリヌス毒素を対象に提供するための局所適用として使用することができる。本発明の組成物は、ボツリヌス毒素送達の他の組成物及び方法より改善された安全性プロファイルも有する。
本明細書で使用される場合、用語「ボツリヌス毒素」は、細菌によって産生されたものであっても、組換え技術によって作製されたものであっても、ボツリヌス毒素の任意の既知の型(すなわち、約150kDのボツリヌス毒素タンパク質分子)、並びに新規に発見される血清型、及び操作された変異体又は融合タンパク質を含めて、引き続いて発見することができる任意の型を指す。上述したように、現在、7種の免疫学的に異なるボツリヌス神経毒、すなわち、ボツリヌス神経毒血清型A、B、C、D、E、F及びGが特徴づけられており、そのそれぞれは、タイプ特異性抗体を用いた中和によって区別される。ボツリヌス毒素血清型は、例えば、Sigma-Aldrich 社(St. Louis、MO)及びMetabiologics, Inc.社(Madison、Wisconsin)、並びに他の供給源から市販されている。ボツリヌス毒素の様々な血清型は、これらが影響する動物種、並びにこれらが誘起する麻痺の重症度及び持続期間において異なる。少なくともボツリヌス毒素の2種の型、すなわち、A型及びB型が、ある特定の状態の治療用製剤において市販されている。例えば、A型は、商標BOTOX(登録商標)を有するAllergan、及び商標DYSPORT(登録商標)を有するIpsenの製剤中に含まれており、B型は、商標MYOBLOC(登録商標)を有するElanの製剤中に含まれている。
本発明の組成物において使用される用語「ボツリヌス毒素」は、或いは、ボツリヌス毒素誘導体、すなわち、ボツリヌス毒素活性を有するが、天然に存在するボツリヌス毒素、又は組換え天然ボツリヌス毒素に対して、任意の部分又は任意の鎖上に1又は複数の化学的変化又は官能基変化を含む化合物を指すことができる。例えば、ボツリヌス毒素は、天然のものと比較して、そのアミノ酸の少なくとも1個が欠失、修飾、又は置換された神経毒である修飾神経毒とすることができ、或いはこの修飾神経毒は、組換えにより作製された神経毒、又はその誘導体若しくは断片とすることができる。本発明の特に好適な一実施形態では、ボツリヌス毒素誘導体は、配列GDSCSVEAETAGK(配列番号3)を有するポリペプチドである。この配列は、ヒトにおける毒素の生物活性に関与するA型ボツリヌス毒素分子の一部に対応する。ボツリヌス毒素は、例えば、その特性を増強するか、又は望ましくない副作用を減少させるが、依然として所望のボツリヌス毒素活性を保持する様式で修飾されたものとすることもできる。ボツリヌス毒素は、上述したように、細菌によって産生される任意のボツリヌス毒素コンプレックスに由来してもよい。或いは、本発明で使用されるボツリヌス毒素は、組換え技術又は合成化学技術を使用して調製された毒素、例えば、様々なボツリヌス毒素血清型のサブユニット又はドメインから調製された、例えば、組換えペプチド、融合タンパク質、又はハイブリッド神経毒とすることができる(例えば、米国特許第6,444,209号明細書を参照されたい)。ボツリヌス毒素は、必要なボツリヌス毒素活性を有することが示された分子全体の一部とすることもでき、そのような場合、それ自体で使用することができ、又は組合せ若しくはコンジュゲート分子、例えば融合タンパク質の一部として使用することができる。或いは、ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素前駆体の形態とすることができ、これは、それ自体非毒性、例えば、タンパク質分解的切断で毒性となる非毒性の亜鉛プロテアーゼであってもよい。
本明細書で使用される場合、用語「ボツリヌス毒素コンプレックス」又は「毒素コンプレックス」は、関連する内因性非毒素タンパク質(すなわち、ボツリヌス菌によって産生される血球凝集素タンパク質及び非毒素非血球凝集素タンパク質)と一緒になった、ボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス毒素血清型A〜Gのうちの任意の1つに属する約150kDのボツリヌス毒素タンパク質分子、又は配列番号3のボツリヌス毒素断片)を指す。しかし、ボツリヌス毒素コンプレックスは、一単位の毒素コンプレックスとして、ボツリヌス菌に由来する必要はないことに注意されたい。例えば、ボツリヌス毒素又は修飾ボツリヌス毒素を最初に組換えにより調製し、次いで引き続いて非毒素タンパク質と組み合わせることができる。組換えボツリヌス毒素を購入し(例えば、List Biological Laboratories社、Campbell、CAから)、次いで非毒素タンパク質と組み合わせることもできる。
本発明は、ボツリヌス毒素コンプレックス(配列番号3中のポリペプチド配列などの、ボツリヌス毒素誘導体を含有するものを含めて)が、ボツリヌス菌によって産生されるボツリヌス毒素コンプレックス中に天然に見出される量と比較して低減された量の非毒素タンパク質を有する「弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックス」も企図する。一実施形態では、弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスは、任意の従来のタンパク質分離方法を使用することによって、ボツリヌス菌に由来するボツリヌス毒素コンプレックスから血球凝集素タンパク質又は非毒素非血球凝集素タンパク質の一部分を抽出して調製される。例えば、弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスは、pH7.3で赤血球に曝すことにより、ボツリヌス毒素コンプレックスを分離することによって作製することができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、欧州特許出願第1514556号明細書を参照されたい)。HPLC、透析、カラム、遠心分離、及びタンパク質からタンパク質を抽出するための他の方法を使用することができる。或いは、弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスが、合成により作製されたボツリヌス毒素を非毒素タンパク質と組み合わせることによって作製される場合、天然に存在するボツリヌス毒素コンプレックスに存在するよりも、少量の血球凝集素又は非毒素非血球凝集素タンパク質を混合物に単に添加してもよい。本発明による弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックス中の任意の非毒素タンパク質(例えば、血球凝集素タンパク質若しくは非毒素非血球凝集素タンパク質、又は両方)は、任意の量を独立に低減することができる。ある特定の例示的な実施形態では、1又は複数の非毒素タンパク質は、ボツリヌス毒素コンプレックス中に通常見出される量と比較して、少なくとも約0.5%、1%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%低減される。MYOBLOCは、0.05%のヒト血清アルブミン、0.01Mのコハク酸ナトリウム、及び0.1Mの塩化ナトリウムとともに、1ml当たり5000Uのボツリヌス毒素B型を有する。DYSPORTは、125mcgのアルブミン及び2.4mgのラクトースとともに、500Uのボツリヌス毒素A型−血球凝集素コンプレックスを有する。特に興味深い一実施形態では、ボツリヌス菌に由来するボツリヌス毒素コンプレックス中に通常見出される、実質的にすべての非毒素タンパク質(例えば、血球凝集素タンパク質と非毒素非血球凝集素タンパク質の95%超)が、ボツリヌス毒素コンプレックスから除去される。さらに、内因性非毒素タンパク質の量は、場合によっては同じ量で低減することができるが、本発明は、それぞれの内因性非毒素タンパク質を異なる量で低減すること、並びに少なくとも1つの内因性非毒素タンパク質を低減するが、他のものは低減しないことも企図する。
ボツリヌス毒素コンプレックスを不安定化させるために、内因性非毒素タンパク質の量を低減することに加えて(又はその代わりに)、本発明は、製造中に通常添加される外来の安定剤の量を低減することも企図する。そのような外来の安定剤の例はアルブミンであり、これは、ボツリヌス毒素コンプレックスの製造中に、天然に存在するボツリヌス毒素コンプレックスの内因性非毒素、非血球凝集素成分中に見出されるアルブミンの量の1000倍に等しい量で通常添加される。本発明によれば、添加される外来のアルブミンの量は、従来の千倍過剰の外来のアルブミンより少ない任意の量とすることができる。本発明のある特定の例示的な実施形態では、天然に存在するボツリヌス毒素コンプレックス中のアルブミンの量のわずか約500倍、400倍、300倍、200倍、100倍、50倍、10倍、5倍、1倍、0.5倍、0.1倍、又は0.01倍が添加される。一実施形態では、本発明の組成物に安定剤として、外来のアルブミンがまったく添加されない。他の実施形態では、アルブミンに加えて(又はその代わりに)外来の安定剤が、本発明の治療用局所用組成物に添加される。例えば、本発明によって企図されている他の安定剤には、ラクトース、ゼラチン及び多糖が含まれる。
安定化されたボツリヌス毒素コンプレックス又は安定化された弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスは、任意のボツリヌス毒素血清型(すなわち、A型〜G型)から得るか、又はこれに由来することができるが、本発明の好適な実施形態では、これらは、ボツリヌス毒素のA型血清型から得られるか、又はこれに由来する。
好適な実施形態では、本発明のボツリヌス毒素組成物は、HIV−TATの断片(例えば、配列番号1)であるか、HIV−TATの断片に由来する(例えば、配列番号1のポリペプチドの逆配列である配列番号2)非天然ポリペプチドを付加することによって安定化される。HIV−TAT断片又はその誘導体は、共有結合又は非共有結合でボツリヌス毒素分子と結合することによって、ボツリヌス毒素コンプレックス又は弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスを安定化させることができる。好適な一実施形態では、HIV−TAT断片又はその誘導体は、ボツリヌス毒素コンプレックス又は弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスと物理的に結合することによって、これらを非共有結合で安定化させる。HIV−TAT断片又はその誘導体の相対量は、望まれる安定性の程度に依存する。例えば、安定化HIV−TAT断片又はその誘導体が配列番号1又は2のポリペプチドに対応する場合、安定化ペプチドについての有用な濃度範囲は、ボツリヌス毒素コンプレックス又は弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックス1単位当たり、約0.1ngから約1.0mgとすることができる。より好ましくは、配列番号1又は2の安定化ペプチドは、ボツリヌス毒素1単位当たり約0.1mgから0.5mgの範囲とすることができる。
或いは、安定化HIV−TAT断片又はその誘導体は、当技術分野で既知の連結化学作用を使用して、ボツリヌス毒素コンプレックス又は弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックス中のボツリヌス毒素分子に共有結合で連結することができる。例として、2つの成分のカップリングは、カップリング剤又はコンジュゲート剤によって達成することができる。利用することができる、いくつかの分子間架橋結合試薬が存在する(例えば、Means, G. E. and Feeney, R. E., Chemical Modification of Proteins, Holden-Day, 1974, pp. 39-43を参照されたい)。これらの試薬の中では、例えば、J−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP、J-succinimidyl 3-(2-pyridyldithio) propionate)又はN,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド(その両方は、スルフヒドリル基に対して非常に特異的であり、不可逆的な結合を形成する);N,N’−エチレン−ビス−(ヨードアセトアミド)又は6〜11個の炭素メチレンブリッジを有する他のそのような試薬(これは、スルフヒドリル基に対して比較的特異的である);並びに1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(これは、アミノ基及びチロシン基と不可逆的結合を形成する)である。この目的に有用な他の架橋結合試薬として、p,p’−ジフルオロ−m,m’−ジニトロジフェニルスルホン(これは、アミノ基及びフェノール基と不可逆的架橋結合を形成する);アジプイミド酸ジメチル(これは、アミノ基に対して特異的である);フェノール−l,4−ジスルホニルクロリド(これは、主にアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアネート又はジイソチオシアネート、又はアゾフェニル−p−ジイソシアネート(これは、主にアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(これは、いくつかの異なる側鎖と反応する)並びにジスジアゾベンジジン(これは、主にチロシン及びヒスチジンと反応する)が挙げられる。
架橋結合試薬は、ホモ二官能性、すなわち、同じ反応を行う2つの官能基を有するものとすることができる。好適なホモ二官能性架橋結合試薬は、ビスマレイミドヘキサン(「BMH」、bismaleimidohexane)である。BMHは、2つのマレイミド官能基を含有し、これは、温和な条件下(pH6.5〜7.7)で、スルフヒドリル含有化合物と特異的に反応する。この2つのマレイミド基は、炭化水素鎖によって接続されている。したがって、BMHは、システイン残基を含有するポリペプチドの不可逆的架橋結合に有用である。
架橋結合試薬は、ヘテロ二官能性とすることもできる。ヘテロ二官能性架橋結合剤は、2つの異なる官能基、例えば、アミン反応性基とチオール反応性基を有し、これらは、それぞれ遊離のアミン及びチオールを有する2つのタンパク質を架橋結合する。ヘテロ二官能性架橋結合剤の例は、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(「SMCC」、succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxylate)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(「MBS」、m-maleimidobenzoyl-N-hydroxysuccinimide ester)、及びスクシンイミド4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(「SMPB」、succinimide 4-(p-maleimidophenyl)butyrate)、MBSの伸長鎖類似体である。これらの架橋剤のスクシンイミジル基は、一級アミンと反応し、チオール反応性マレイミドは、システイン残基のチオールと共有結合を形成する。
架橋結合試薬は、水中で低い溶解度を有することが多い。スルホン酸基などの親水性部分を架橋結合試薬に加えることによって、その水溶性を改善することができる。スルホ−MBS及びスルホ−SMCCは、水溶性で改変された架橋結合試薬の例である。
多くの架橋結合試薬により、細胞条件下で本質的に非切断可能なコンジュゲートが生じる。しかし、いくかの架橋結合試薬は、細胞条件下で切断可能な、ジスルフィドなどの共有結合を含む。例えば、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(「DSP」、dithiobis(succinimidylpropionate))、Traut試薬、及びN−スクシンイミジル3−(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(「SPDP」、N-Succinimidyl 3-(2-pyridyldithio)propionate)は、周知の切断可能な架橋剤である。切断可能な架橋結合試薬を使用することにより、標的範囲中に送達した後、安定化HIV−TAT断片又はその誘導体を、ボツリヌス毒素分子から分離することが可能になる。直接ジスルフィド結合も有用となり得る。
n−γ−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル(「GMBS」、n-γ-maleimidobutyryloxysuccinimide ester)及びスルホ−GMBSなどのいくつかの新規の架橋結合試薬により、免疫原性が低減した。本発明のいくつかの実施形態では、そのような免疫原性の低減は有利となり得る。
上記に論じたものを含めて、多数の架橋結合試薬が市販されている。その使用についての詳細な指示書は、市販供給元から容易に入手可能である。タンパク質架橋結合及びコンジュゲート製剤に対する一般の参考文献は、S. S. Wong, Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, CRC Press (1991)である。
化学的架橋結合には、スペーサーアームの使用を含むことができる。スペーサーアームにより、分子内柔軟性が提供され、又はコンジュゲートされた部分同士間の分子内距離が調節され、それによって、生物活性を保存することに役立つ場合がある。スペーサーアームは、スペーサーアミノ酸を含むポリペプチド部分の形態とすることができる。或いは、スペーサーアームは、「長鎖SPDP」(Pierce Chem. Co.社製、Rockford、Ill.、カタログ番号21651H)中などのように、架橋結合試薬の一部とすることができる。
安定化されたボツリヌス毒素コンプレックス又は弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスを作製するための化学的結合に加えて、本発明は、これらの安定化された毒素コンプレックスを作製するために、遺伝子融合技術を使用することも企図する。例えば、周知の遺伝子操作技術を使用して、融合ボツリヌス毒素/HIV−TAT断片又はボツリヌス毒素/HIV−TAT断片誘導体をコードする核酸配列は、細胞中に移植することによって、細胞に安定化された毒素コンプレックスを発現させることができる。
本発明の特に好適な実施形態では、HIV−TAT断片又はHIV−TAT断片誘導体は、ボツリヌス毒素分子又はその誘導体の末端に共有結合で結合されることによって、直鎖状分子を形成する。そのような実施形態では、ボツリヌス毒素(又はその誘導体)とHIV−TAT断片又はHIV−TAT断片誘導体との間にグリシンスペーサーを使用するのが有利であることが多い。例えば、ボツリヌス毒素誘導体が、配列番号3に記載のポリペプチドである場合、安定化されたボツリヌス毒素は、RRRQRRKKR−GG−GDSCSVEAETAGK(配列番号4)の形態を有することができる。毒素分子に1つを超える安定化ポリペプチドを付加することが望まれる場合、安定化されたボツリヌス毒素は、RRRQRRKKR−GG−毒素アミノ酸−GG−RRRQRRKKRの形態を有することができる。しかし、本発明は、安定化で、共有結合又は非供給結合によって、HIV−TAT断片又はその誘導体の反復単位(例えば、RRRQRRKKR RRRQRRKKR)を使用することも企図することに注意されたい。
ボツリヌス毒素分子を安定化するのに必要とされる安定化ポリペプチド鎖の数は(これらが、HIV−TAT断片であっても、その誘導体であっても)、対象となっている特定の血清型、並びに考慮中のボツリヌス毒素又はボツリヌス毒素断片若しくは誘導体のサイズ及び化学組成などの要因に依存する。例えば、ボツリヌス毒素誘導体が使用されており、これが比較的小さいポリペプチドである(例えば、配列番号3に記載のポリペプチド)場合、より少ない安定化ポリペプチド鎖を共有結合で結合させる必要があり、1本の共有結合で結合した安定化ポリペプチド鎖(例えば、配列番号1若しくは2のポリペプチド、又はこれらの誘導体)でも、ある特定の用途では十分となり得る。
本発明の組成物は、特定の治療を必要としている対象又は患者、すなわち、ヒト又は他の哺乳動物の皮膚又は上皮に適用される製品の形態であることが好ましい。用語「必要としている」は、薬学的必要性又は健康に関連した必要性、例えば、望ましくない顔面筋痙攣を伴う状態を治療すること、並びに美容上の必要性及び主観的必要性、例えば、顔面組織の外見を変更又は改善することの両方を含むことを意味する。一般に、本発明の組成物は、当技術分野で既知の任意の手段によって適用することができ、その非限定例には、非経口注射(例えば、皮下注射)、皮膚上への局所投与、又は皮下若しくは皮膚上(supra-dermally)に配置することができるパッチ経由が含まれる。
配列番号1のHIV−TAT断片は、様々な「カーゴ分子」の細胞内送達を促進するとして以前に認識された(例えば、米国特許第5,804,604号明細書を参照されたい)。したがって、配列番号1のHIV−TAT断片で安定化された、ボツリヌス毒素コンプレックス又は弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスが、患者の組織に接触するとき(例えば、局所投与の間)、ボツリヌス毒素の細胞浸透が増強される。さらに、配列番号2の配列を有する、HIV−TAT由来ポリペプチドも、細胞内浸透、並びに膜貫通浸透を促進する。したがって、配列番号2のポリペプチドで安定化された、ボツリヌス毒素コンプレックス又は弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスが、患者の組織に接触するとき、ボツリヌス毒素の細胞内輸送及び/又は膜貫通輸送が増強される。
一般に、本発明の組成物は、安定化されたボツリヌス毒素コンプレックス又は安定化された弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスを、1又は複数の追加の薬学的に許容される担体又は賦形剤と混合することによって調製される。その最も単純な形態では、これらは、緩衝食塩水などの単純な水性の薬学的に許容される担体又は希釈剤を含有することができる。本発明の組成物が注射によって投与される場合、そのような実施形態は特に好適である。しかし、本発明の組成物が局所適用される場合、これらは、局所用医薬組成物又は薬用化粧組成物において一般的な他の成分、すなわち、皮膚科学的又は薬学的に許容される担体、媒体、又は媒質、すなわち、適用される組織と適合している担体、媒体、又は媒質を含有することができる。本明細書で使用される場合、用語「皮膚科学的又は薬学的に許容される」は、そのように説明される組成物又はその成分が、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー応答などを伴うことなく、これらの組織に接触させて使用し、又は一般の患者において使用するのに適していることを意味する。適切な場合、本発明の組成物は、考慮中の分野、特に美容及び皮膚科学において慣例的に使用される任意の成分を含むことができる。
その形態に関して、本発明の組成物として、溶液、エマルジョン(マイクロエマルジョンを含めて)、懸濁液、クリーム、ローション、ゲル、粉末、又は皮膚及びこの組成物を使用することができる他の組織に適用するのに使用される他の一般的な固体若しくは液体組成物を挙げることができる。そのような組成物は、ボツリヌス毒素及びHIV−TAT断片又はその誘導体に加えて、そのような製品に一般に使用される他の成分、例えば、抗菌剤、モイスチャライザー及び水和剤、浸透剤、保存剤、乳化剤、天然又は合成油、溶媒、界面活性剤、清浄剤、ゲル化剤、皮膚軟化薬、抗酸化剤、芳香剤、増量剤、増粘剤、ワックス、臭気吸収剤、染料、着色剤、粉末、粘性制御剤、及び水を含有することができ、麻酔剤、かゆみ止め活性剤、植物抽出物、調整剤、濃色化剤若しくは淡色化剤、グリッター(glitter)、湿潤剤、雲母、ミネラル、ポリフェノール、シリコーン又はその誘導体、日焼け止め、ビタミン、及び植物薬(phytomedicinals)を含んでもよい。
本発明による組成物は、制御放出又は徐放組成物の形態とすることができ、ここで、安定化されたボツリヌス毒素コンプレックス又は安定化された弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスは、カプセル化されており、又は別の方法で材料内に入っており、その結果これらの組成物は、経時的に制御された様式で皮膚上に放出される。ボツリヌス毒素及びHIV−TAT断片又はその誘導体を含む組成物の分子は、基質、リポソーム、小胞、マイクロカプセル、マイクロスフェアなどの中、又は固体粒子性材料内に入れることができ、そのすべては、経時的に安定化されたボツリヌス毒素を放出するように選択及び/又は構成される。
ボツリヌス毒素は、麻痺の発生、弛緩の発生、収縮の軽減、痙攣の予防若しくは軽減、腺の分泌の低減、又は他の所望の効果で有効な量で、皮膚の下にある筋肉、又は皮膚内の腺構造に送達することができる。この様式でボツリヌス毒素を局所送達することにより、注射可能又は移植可能物質と比べて、投与量を低減し、毒性を低減し、所望の効果に対してより正確な投与量最適化を可能にすることができるであろう。
本発明の組成物は、有効量のボツリヌス毒素を投与するように適用される。本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、所望の筋肉麻痺又は他の生物学的効果若しくは美的効果を生じさせるのに十分であるが、暗黙的に安全な量、すなわち、重大な副作用を回避するのに十分低い量である、上記に定義されたようなボツリヌス毒素の量を意味する。所望の効果には、例えば、特に顔における細い線及び/又はしわの外見を減少させ、又は他の方法で顔の外見を調整する、例えば、眼を広げる、口角を持ち上げる、上唇から扇形に広がる線を平滑化する、若しくは筋肉の緊張を一般的に軽減するなどの目的で、ある特定の筋肉を弛緩させることが含まれる。最後に述べた効果である、筋肉の緊張の一般的軽減は、顔又は他の箇所で行うことができる。本発明の組成物は、単回投与治療として適用するのに適切な有効量のボツリヌス毒素を含有することができ、又は投与場所で希釈するか、複数の用途で使用するために、さらに濃縮することができる。安定化されたボツリヌス毒素コンプレックス又は安定化された弱毒化ボツリヌス毒素コンプレックスは、対象に経皮的に投与することによって、望ましくない顔面筋若しくは他の筋肉の痙攣、発汗過多、にきびなどの状態、又は筋肉の痛み若しくは痙攣の軽減が望まれている身体の他の箇所の状態を治療することができる。ボツリヌス毒素は、筋肉又は他の皮膚に関連した構造への経皮送達で局所投与される。この投与は、例えば、脚、肩、背中(腰を含めて)、腋窩、手掌、足、頸部、鼠径部、手若しくは足の背、肘、上腕、膝、太股、臀部、胴体、骨盤、又は、ボツリヌス毒素の投与が望まれる身体の任意の他の部分に行うことができる。
ボツリヌス毒素の投与は、それだけに限らないが、神経性疼痛の治療、片頭痛若しくは他の頭痛の予防若しくは低減、にきびの予防若しくは低減、ジストニア若しくはジストニア収縮(主観的であっても、臨床的であっても)の予防若しくは低減、主観的又は臨床的発汗過多に関係する症状の予防若しくは低減、分泌過多若しくは発汗の低減、免疫応答の低減若しくは増強を含めた状態を治療し、又は注射によるボツリヌス毒素の投与が提案されたか、実施された他の状態を治療するために実施することもできる。
この組成物は、医師又は他の医療専門家の指導によって、又は指導下で投与されることが最も好ましい。これらは、単回の治療又は時間をかけた一連の定期的な治療において投与することができる。上述した目的でボツリヌス毒素を経皮送達するために、上述した組成物は、その効果が望まれる1又は複数の位置で皮膚に局所適用される。その性質で、最も好ましくは、適用されるボツリヌス毒素の量は、いずれの有害な結果又は望まれない結果を生じることなく、所望の結果を生じる適用割合と適用頻度で、注意を払って適用されるべきである。したがって、例えば、本発明の局所用組成物は、皮膚表面1cm2当たり約1Uから約20,000U、好ましくは約1Uから約2,000Uのボツリヌス毒素の割合で適用されるべきである。これらの範囲内でより多い投与量を、例えば、制御放出物質とともに使用するか、皮膚上により短い時間滞留させた後に除去することができることが好ましい。
本発明は、本明細書で説明したボツリヌス毒素含有組成物を、皮膚を横断して透過させるための経皮送達デバイスも含む。そのようなデバイスは、皮膚パッチのように構成が単純であってもよく、又は組成物を投薬し、その投薬をモニターするための手段を含み、投薬されている物質に対する対象の反応をモニターすることを含めた、1又は複数の局面において対象の状態をモニターするための手段を含んでもよい、より複雑なデバイスであってもよい。
本発明の組成物は、約4.5から約6.3の範囲のpHを有する生理学的環境で使用するのに適しており、したがってそのようなpHを有することができる。本発明による組成物は、室温又は冷蔵条件下で貯蔵することができる。
本明細書で説明される以下の実施例及び実施形態は、例示的な目的のものに過ぎず、これらを考慮した様々な改変又は変更は、当業者に示唆され、本願の精神及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で引用したすべての刊行物、特許及び特許出願は、すべての目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれている。