JP2010512748A - インフルエンザウイルスを培養物中で複製するための方法 - Google Patents

インフルエンザウイルスを培養物中で複製するための方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、組織培養適応ウイルス単離体を生成するために、組織培養細胞における増殖についてインフルエンザウイルスを選択する方法に関する。本発明は、この単離体から生産されたワクチンも含む。本発明は、インフルエンザAおよびBの感染を防ぐためのワクチンに関する。本発明のワクチンおよび関連する方法は、先行技術のワクチンおよび方法に対していくつかの利点を提供する。たとえば、本発明のワクチンは、孵化鶏卵の代りに組織培養細胞を用いて生産される。本発明の生産方法は、古典的なワクチン製造手順を回避することによって所要時間を節約する。加えて、本発明のワクチンは卵材料に対するアレルギーを持つものに有用である。本発明は、ワクチンに用いられ得る新たな免疫原性組成物も提供する。

Description

関連する出願への相互参照
本願は、2006年12月15日に出願された米国特許出願第60/875287号および2006年12月28日に出願された米国特許出願第60/882412号に対する優先権を主張する。米国特許出願第60/875287号および米国特許出願第60/882412号は、本明細書中に参考として援用される。
インフルエンザの流行およびパンデミックは数世紀前から認識されており、それによって多くの生命が失われている。インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科ファミリーに属するセグメント化されたRNA含有ウイルスである。流行およびパンデミックは、集団がそれに対する免疫をほとんど持たない新たなエンベロープ成分を有するウイルスの出現によってもたらされる。これらの新たな成分はしばしば、ヒトおよび動物のインフルエンザウイルスの突然変異および/または混合の結果もたらされる。
インフルエンザウイルスのカプシドはいくぶん多形性のものであるが、外表面はすべてのウイルスに対して一致しており、それは脂質エンベロープと、そこから突出する次の2タイプの糖タンパク質スパイクとからなる:赤血球凝集素(HAまたはH)およびノイラミニダーゼ(NAまたはN)。インフルエンザウイルスには次の3タイプがある:A、BおよびC。インフルエンザAウイルスのみが、2つの主要な表面糖タンパク質HAおよびNAに基づくサブタイプにさらに分類される。インフルエンザAサブタイプは株によってさらに分類される。インフルエンザBウイルスは哺乳動物にのみ感染してヒトに疾患をもたらすが、一般的にはA型ほど重度ではない。インフルエンザCウイルスも哺乳動物にのみ感染するが、子供に非常に軽い呼吸器疾患をもたらすだけである。C型ウイルスはA型およびB型とは遺伝学的にも形態学的にも異なる。
インフルエンザAウイルスは多様な動物に感染し、それらの動物には哺乳動物、たとえばヒト、ウマ、イヌ、ブタ、フェレットなど、ならびにトリ、たとえばアヒル、ニワトリおよびシチメンチョウなどが含まれる。公知のHA血清型は16種類、公知のNA血清型は9種類である。トリは特に重要なリザ−バであり、遺伝子的/抗原的に多様なウイルスのプールを生じ、それがヒトと動物との緊密な接触を介してヒト集団に戻される。ブタはヒトおよびトリインフルエンザ株の両方に対して許容的である。ブタはこの特殊な特徴のために、同じ細胞が両タイプのウイルスに感染したときにトリおよびヒトのウイルス間の遺伝子交換を起こさせる「混合容器」と考えられている。
インフルエンザウイルスのゲノムは、8つのセグメント(インフルエンザCでは7つ)における1本鎖(−)センスRNAからなる。このゲノムの構造は、過去に膨大な量の遺伝学的調査(従来の分子的調査)が行なわれたため、非常に詳細に知られている。各セグメントは1つまたは2つのウイルスタンパク質をコードする。流行およびパンデミックは、次の2つの異なる態様でインフルエンザウイルスのHAおよびNAタンパク質が遺伝学的に変化するために起こると考えられている:抗原ドリフトおよび抗原シフト。抗原ドリフトは常に起こるが、抗原シフトは時折しか起こらない。A型インフルエンザウイルスは両方の種類の変化を受ける;B型インフルエンザウイルスは、よりゆっくりしたプロセスの抗原ドリフトによってのみ変化する。
抗原ドリフトとは、主要な表面タンパク質HAおよびNAを生成するための遺伝子材料を含有する2つの遺伝子における点突然変異を通じて起こる小さなゆっくりした変化を示す。抗原シフトとは、目下のところ人々に流布していなかった新たなインフルエンザAウイルスサブタイプをヒトにおいて生成するような急激で大きな変化を示す。抗原シフトは、動物(家禽類)からヒトへの直接的伝染によっても、またはヒトインフルエンザAと動物インフルエンザAとのウイルス遺伝子が混合して遺伝子再集合と呼ばれるプロセスを通じて新たなヒトインフルエンザAサブタイプウイルスを生じることによっても起こり得る。抗原シフトの結果、新たなヒトインフルエンザAサブタイプがもたらされる。遺伝子再集合は、2つの異なるインフルエンザウイルスが同じ細胞に感染して、1つまたはそれ以上のRNAセグメントを共有または交換するときに起こる。たとえば伝染したセグメントがHAであるとき、免疫がないかまたはほとんどない集団に入る抗原的に新しい新たなウイルス株が出現し得る。その結果として流行および/またはパンデミックがもたらされ得る。
インフルエンザウイルスの細胞への進入は、末端のN−アセチルノイラミン酸(N−acetyl neuraminic acid:NANA=シアル酸)基を含有するムコタンパク質にHAスパイクが結合することによって促進される。結合後、粒子は被覆されたピットからエンドサイトーシスによって貪食され、エンドサイトーシスの小胞から最終的にはエンドソームに入る。これらは細胞によって酸性化されており、pH約5.0にてHAモノマーはエンドソーム中のトリプシン様酵素によって切断されて、内部移行のために活性化される。一旦内部移行されると、ウイルス複製が起こってインフルエンザの症状がもたらされる。
最近のインフルエンザ大流行は非常に懸念されている。イヌインフルエンザウイルス(Canine Influenza Virus:CIV)を原因とする、イヌにおける重度のタイプの呼吸器疾患が確認されている。この呼吸器疾患は伝染性が高いことが示されている。さらに、CIVは100%の感染率とともに80%の罹患率、および重度の感染においては最高5〜8%の死亡率をもたらし得る。2004年にグレーハウンド・レーシングドッグにおいて最初に検出されてから(非特許文献1)、CIVは米国中に急速に広がり、少なくとも25の州でCIVの大流行が報告されており、27の州でCIVの血清有病率が報告されている。
最近の大流行をもたらしたCIVの血清型はH3N8である。このCIV血清型は元々ウマで発見されたものであり、種の壁を越えてイヌに移ったと考えられている。イヌインフルエンザウイルスに対する有効なワクチンがないことが、このウイルスのイヌにおける急速かつ広範な伝播の主な要因である可能性がある。
インフルエンザA(H5N1、トリインフルエンザ)ウイルスは「H5N1ウイルス」とも呼ばれ、これは主にトリにおいて起こるインフルエンザAウイルスサブタイプであり、トリの間での伝染性が高く、致命的となり得る。H5N1ウイルスは通常はヒトに感染しないが、ヒトにおいてこのウイルスによる感染が起こったことはある。現在のところ、主にアジアの10カ国において200を超えるヒトの症例が確認されており、そのうち150を超える死亡例が報告されている。幸いこれまでのところ、このウイルスはトリからヒトへ、またはヒトからヒトへと容易には広まらない。しかし、そのようなことが起こって流行またはパンデミックが起こる可能性はある。流行またはパンデミックに関連する罹患および死亡を防ぐための最善の戦略は、ワクチン接種である。
現在ヒトに投与されているインフルエンザワクチンは、入院および死亡を防ぐという点からみて効果対費用比が高いが、季節性ワクチンの世界の年間生産能力は限られており、現実的に全世界の高リスク集団をカバーしていない。現在のワクチンは、毎年ワクチン製造のためのウイルスシードを提供している世界保健機関(World Health Organization:WHO)または疾病管理予防センター(Centers for Disease Control:CDC)から得られるウイルスを用いて、卵において作成されている。流布しているウイルスのHAの変化(抗原ドリフト)は、パンデミック間期におけるワクチン株の周期的な置換を必要とする。WHOは、北半球および南半球に対して含まれるべき推奨株を半年ごとに発表する。十分な製造時間を可能にするために、WHOは次の冬のワクチンにどのワクチン株が含まれるべきかを2月に決定する。一般的に、成人に対する1用量は45μgのHA(3つのウイルス各々に対して15μg)と同等の量を含有する。この用量は、1個の感染した孵化鶏卵の尿膜腔液から得られる精製ウイルスの量とほぼ同じである。1億用量の不活化インフルエンザウイルスワクチンを調製するとき、製造者は1億個の孵化鶏卵を得る必要がある。このため、ワクチン製造は高品質の孵化鶏卵を折よく入手できるかどうかと、WHO/CDCによって提供されるシード株とにかかっている。ほとんどのプロトタイプシード株は、孵化鶏卵の中でも容易に高タイターに増殖しない。この問題を克服するために、政府機関はまず、高収量の実験室株A/PR/8/34による古典的な再集合(A/PR/8/34株から6セグメントを得る6:2再集合)によって、高収量の実験室株を作成する。残念ながら、このプロセスは実行が困難なことがあり、その結果得られるワクチンの抗原性に影響するおそれがある。したがって、インフルエンザ、特にH5N1などの病原性の高い株によってもたらされる臨床的疾患を防ぐワクチンを製造するための代替的な方法を提供する必要がある。さらに、起こる可能性のある流行および/またはパンデミックを効果的に防ぐために十分に早い期間に大量の救命インフルエンザワクチンを製造する方法を提供する必要も残されている。本発明はこれらの要求および他の要求に向けられたものである。
本明細書におけるあらゆる参考文献の引用は、それらの参考文献が本出願に対する「先行技術」として利用可能であるという承認であると解釈されるべきではない。
Crawfordら、Science、310(5747):482―485(2005)
本発明は、インフルエンザAおよびBの感染を防ぐためのワクチンに関する。本発明のワクチンおよび関連する方法は、先行技術のワクチンおよび方法に対していくつかの利点を提供する。たとえば、本発明のワクチンは、孵化鶏卵の代りに組織培養細胞を用いて生産される。本発明の生産方法は、古典的なワクチン製造手順を回避することによって所要時間を節約する。加えて、本発明のワクチンは卵材料に対するアレルギーを持つものに有用である。本発明は、ワクチンに用いられ得る新たな免疫原性組成物も提供する。この新たな免疫原性組成物は、トリを含む動物をインフルエンザウイルスに対して免疫化するために用いられ得る。本発明の特定の実施形態において、ワクチンのレシピエントは哺乳動物である。1つの局面において、本発明は、イヌインフルエンザウイルス(CIV)によるイヌの呼吸器疾患からイヌを保護するワクチンを提供する。別の局面において、本発明は、遺伝学的再集合によって自然に生成されたインフルエンザウイルス株からヒトを保護するワクチンを提供する。
本発明は、組織培養細胞において増殖するために特異的に適応したインフルエンザウイルス単離体を提供する。特定の実施形態において、この適応したインフルエンザウイルス単離体は、限界希釈クローニング(limit dilution cloning)を用いて、選択された組織培養細胞系において増殖できる能力に関して選択される。1つの特定の実施形態において、培養細胞系における増殖に適応したインフルエンザウイルスの亜集団は、連続的な希釈によって複数のアリコートにし、そのインフルエンザウイルスの量が複数のインフルエンザ亜集団を含むようにすることによって選択される。次いでその複数のアリコートを培養細胞系に接触させるか、および/または培養細胞系中で増殖させる。複数のインフルエンザ亜集団の中の1つのインフルエンザウイルスの亜集団が、低い感染多重度(multiplicity of infection:MOI)で培養細胞中で増殖する亜集団として同定され、この培養細胞系における増殖に適応したインフルエンザウイルスの亜集団として選択される。関連する実施形態において、本発明は、組織培養に適応した単離体を組織培養細胞に接触させるステップと、細胞変性効果(cytopathic effects:CPE)を生成するために十分な時間増殖させるステップとを含む方法を提供する。この方法は、インフルエンザウイルスを採取するステップも含んでよい。こうした実施形態のいくつかにおいて、限界希釈クローニングプロセスは、インフルエンザウイルス単離体を連続的に希釈して各希釈物を培養細胞に接触させるステップと、細胞変性効果(CPE)を生成するために十分な時間細胞を増殖させるステップと、CPEをもたらす最高の希釈物からウイルスを採取するステップと、採取されたウイルスによってこのプロセスを繰り返すステップとを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、培養細胞に接触させる前にインフルエンザウイルス単離体を有効量のトリプシンと混合するステップも含む。いくつかの実施形態において、この混合物は、細胞を培養基から外すことなくトリプシンにウイルスタンパク質を切断させるために十分な時間インキュベートされる。ウイルスタンパク質を切断するために用いられるトリプシンはタイプIXトリプシンであってもよい。いくつかの場合において、組織培養適応単離体を組織培養細胞に接触させるステップは、約0.01未満の感染多重度(MOI)にて行なわれ、ここには約0.001未満および/または約0.0001未満の感染多重度も含まれる。その他の場合において、インフルエンザウイルス単離体は最初に組織培養細胞においてテストされて、最適なMOIが定められる。組織培養細胞は哺乳動物の胚腎臓細胞、たとえばヒト胎児由来腎臓細胞などであってもよい。インフルエンザウイルスはインフルエンザA、BまたはCウイルスであってもよい。1つの特定の実施形態において、インフルエンザAウイルスはH5N1株である。インフルエンザウイルス単離体は、鼻スワブおよび肺組織を含むあらゆる数の供給源から得られてもよく、および/または第3者、たとえばWHOなどから提供されてもよい。いくつかの実施形態において、インフルエンザウイルス単離体は最初に孵化鶏卵中で増殖されることによって、組織培養に対する適応のための大量の接種材料が得られる。いくつかの方法は、採取したウイルスを精製するステップを含む。こうした方法の1つにおいて、精製するステップはサイズ排除クロマトグラフィを用いて行なわれる。本発明の方法は、精製の前後または精製中に、インフルエンザウイルスの第2の単離体を第1の単離体と混合するステップを含んでもよく、第2の単離体は第1の単離体とは異なる株である。いくつかの方法においては、2つのウイルス単離体を混合する前に用量滴定研究が行なわれることによって、ウイルスタンパク質の同等の免疫原性を可能にする混合物が定められる。いくつかの方法においては、インフルエンザは不活性化される。このタイプの実施形態のいくつかにおいて、インフルエンザウイルスはその不活性化に有効な量のバイナリエチレンイミンで処理される。いくつかの方法においては、採取するステップは、赤血球凝集素タンパク質含有量が最大のときに行なわれる。
さらなる実施形態は、限界希釈クローニングを用いてインフルエンザウイルス単離体を滴定することによって組織培養細胞における増殖に対してインフルエンザウイルスを選択する方法によって調製されたウイルス単離体を採取することによって調製されたワクチンを含むことによって、組織培養細胞に適応したインフルエンザウイルス単離体が選択される。いくつかの実施形態において、ウイルスは、限界希釈クローニングの前に、絨毛尿膜(尿膜腔とも呼ばれる)または羊膜接種経路によって特定の病原体を含まない孵化鶏卵の接種を行なうことによって調製される。実施形態の1つにおいて、インフルエンザウイルスは最初に孵化鶏卵の羊膜を介した接種によって複製されることによって、組織培養細胞に対する適応のための接種材料が得られる。
加えて、本発明は、ヒト胎児由来腎臓(human embryonic kidney)細胞における増殖に対してインフルエンザウイルスを選択する方法を提供する。こうした方法の1つにおいて、インフルエンザウイルス単離体は限界希釈クローニングを用いて滴定されることによって、HEK細胞に適応したインフルエンザウイルス単離体が選択される。この方法は、HEK適応単離体をHEK細胞と接触させるステップと、細胞変性効果(CPE)を生成するために十分な時間細胞を増殖させるステップとを含んでもよい。このタイプの特定の実施形態において、結果的に得られるインフルエンザウイルスが採取される。本発明は、これらの方法によって得られたインフルエンザウイルス単離体を含むワクチンも提供する。この方法は、培養細胞に接触させる前に、インフルエンザウイルス単離体を有効量のタイプIXトリプシンと混合して、細胞を培養基から外すことなくトリプシンにウイルスタンパク質を切断させるために十分な時間おくステップを含んでもよい。実施形態の1つにおいて、HEK適応単離体をHEK細胞と接触させるステップは、約0.001未満のMOIで行なわれる。
いくつかの実施形態において、本発明はさらに、用量当り4μg未満のヒトインフルエンザHAが配合された、ヒトインフルエンザウイルスを含むワクチンを提供する。関連する実施形態において、本発明は、用量当り3μg未満のヒトインフルエンザHAが配合された、ヒトインフルエンザウイルスを含むワクチンを提供する。別の実施形態において、本発明は、用量当り2μg未満のヒトインフルエンザHAが配合された、ヒトインフルエンザウイルスを含むワクチンを提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、用量当り1.5〜3.5μgのヒトインフルエンザHAが配合された、ヒトインフルエンザウイルスを含むワクチンを提供する。特定のワクチン実施形態において、アジュバントはISCOMである。他のワクチン実施形態において、ウイルスの少なくとも70%は同じアミノ酸配列を有するHAを含む。さらに他のワクチン実施形態において、ウイルスの少なくとも80%は同じアミノ酸配列を有するHAを含む。さらに他のワクチン実施形態において、ウイルスの少なくとも90%は同じアミノ酸配列を有するHAを含む。さらに他のワクチン実施形態においては、ウイルスの95%より多くが同じアミノ酸配列を有するHAを含む。
本発明はさらに、インフルエンザウイルス、たとえばイヌインフルエンザウイルス(CIV)など、およびその他の疾患、たとえばその他のイヌ感染症などに対する防御免疫を誘導するための混合ワクチンを提供する。本発明はさらに、哺乳動物、たとえばイヌ、ネコ、またはウマなどをインフルエンザに対して免疫化する方法を提供する。感染症、たとえばイヌ感染症などに対するワクチンを作成および使用する方法も提供される。
特定の実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、不活性化CIV H3N8とアジュバントとを含む免疫原性組成物を含む。典型的に、アジュバントは水中油型エマルジョンを含む。こうした実施形態の1つにおいて、アジュバントはさらに水酸化アルミニウムを含む。このタイプの特定の実施形態において、アジュバントはEmunade(登録商標)である。別の実施形態において、免疫原性組成物はワクチンである。
ワクチン組成物は、用量当り約100赤血球凝集単位(hemagglutination units:HAU)から約1500HAUを含んでいてもよい。これは処置を受ける個体のサイズおよびその他の健康上の理由に依存して広範に変動し得る。この組成物は典型的に、用量当り250HAUから750HAUである。実施形態の1つにおいて、ワクチン組成物は用量当り約500HAUを含む。
任意には、本発明のワクチンは医薬的に許容できる免疫刺激薬、たとえばサイトカイン、成長因子、ケモカイン、リンパ球、単球、もしくはリンパ器官からの細胞の細胞培養からの上清、植物、バクテリアもしくは寄生生物からの細胞調製物および/もしくは抽出物、またはマイトジェンなども含んでもよい。
本発明のワクチンは、たとえば以下のような経路によって投与されてもよい:非経口投与、筋内注射、皮下注射、腹膜注射、皮内注射、経口投与、鼻腔内投与、乱切法およびそれらの組合せ。本発明の好ましい実施形態において、ワクチンは筋内注射によって投与される。
本発明は、CIV H3N8に結合する抗体を含有する、ワクチン接種された動物から得られた血清、および精製された抗体自体も提供する。本発明の特定の実施形態において、CIV H3N8に結合する精製された抗体はキメラ抗体である。
本発明はさらに混合ワクチンを提供し、その混合ワクチンは不活性化CIV、たとえばCIV H3N8などの1つまたはそれ以上の株と組合せて、1つまたはそれ以上の他のイヌ病原体および/または免疫原を含み、その免疫原は、たとえばイヌジステンパーウイルス;イヌアデノウイルス;イヌアデノウイルスタイプ2;イヌパルボウイルス;イヌパラインフルエンザウイルス;イヌコロナウイルス;イヌインフルエンザウイルス;ならびに/またはLeptospira血清型、たとえばLeptospira kirschneri血清型grippotyphosa、Leptospira interrogans血清型canicola、Leptospira interrogans icterohaemorrhagiae、および/もしくはLeptospira interrogans血清型pomonaなどに対する免疫を誘導するための免疫原などを含む。本発明の混合ワクチンに加えることができる付加的なイヌ病原体は、Bordetella bronchiseptica;リーシュマニア生物体、たとえばLeishmania majorおよびLeishmania infantumなど;Borrelia種(species:spp.)スピロヘータ、B.burgdorferi sensu stricto(ss)、B.burgdorferi ss、B.garinii、およびB.afzeliiを含む;マイコプラズマ種(例、Mycoplasma cynos);狂犬病ウイルス;ならびにEhrlichia canisを含む。
本発明は、培養細胞中でCIV H3N8を増殖させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、培養細胞はイヌ以外の哺乳動物腎臓細胞である。実施形態の1つにおいて、細胞はマディンダービーウシ腎臓(Madin−Darby bovine kidney:MDBK)細胞である。別の実施形態において、細胞はベロ(Vero)細胞である。
いくつかの実施形態において、本発明はさらに、用量当り少なくとも500HAUが配合されたCIV H3N8を含むワクチンを提供する。これらの実施形態において、アジュバントは通常水酸化アルミニウムであり、HAの少なくとも70%、典型的には少なくとも90%は同じアミノ酸配列を有する。他のワクチン実施形態においては、ウイルスの少なくとも80%は同じアミノ酸配列を有するHAを含む。さらに他のワクチン実施形態においては、ウイルスの95%より多くが同じアミノ酸配列を有するHAを含む。
本発明のこれらの局面および他の局面は、以下の図面および詳細な説明を参照することによってより良く認識されるであろう。
イヌにおけるCIVの攻撃後の臨床スコアの平均を示す図である。ワクチン未接種の対照とワクチン接種されたイヌとがCIVの攻撃を受け、day−2から攻撃の10日後までの毎日、眼および鼻の分泌物、くしゃみ、咳、抑うつならびに呼吸困難などの臨床的徴候がモニタされた。臨床的徴候を実施例1に記載されるガイドラインに従ってスコア付けし、各処置群に対する平均臨床スコアを日数に対してプロットした。 イヌにおける攻撃後の鼻のCIV脱落を示す図である。ワクチン未接種の対照とワクチン接種されたイヌとがCIVの攻撃を受けた。攻撃の前日(day−1)に鼻スワブを回収して、これらのイヌがCIVを持たないことを確認した。攻撃を受けたイヌにおいて、10日間(攻撃後のday1からday10)毎日鼻スワブを回収し、MDCK単層上で滴定を行なうことによって、鼻のウイルス脱落をモニタした。各処置群に対する平均ウイルスタイターをLog10TCID50/mLで表わして算出し、攻撃後の日数に対してプロットした。
インフルエンザワクチンを生産する伝統的な方法は、単離株を少なくとも部分的に孵化鶏卵において増殖させることを伴っており、これは卵の使用が安価かつ効率的であり、大量のインフルエンザの増殖のための容易に分かる代替的選択肢がないためである。これはヒトインフルエンザの場合に特に当てはまる。なぜならインフルエンザウイルスを増殖させるために使用できる多くの細胞系がヒトワクチン製造に対してFDAに承認されておらず、組織培養においては非常に低いタイターしか得られないためである。
卵においてワクチンが作成されるとき、それは一般的に次のように作成される。最初に咽喉スワブまたは類似の供給源からウイルスが回収されて卵において単離される。卵における最初の単離は困難だが、ウイルスは卵宿主に適応し、その後の卵における増殖は比較的容易に起こる。卵における増殖の後、ウイルスは精製され、ホルマリンまたはベータプロピオラクトンで不活性化される。卵はウイルス増殖のために最適ではないことを示唆する証拠が増えている。たとえば、卵に基づく製造に用いられる従来の産卵群は、こうした卵にルーチン的に見出される内因性ウイルスによってウイルス調製物が汚染される危険性が高い。加えて、何百万もの卵を別個に接種および採取すること、ならびに複雑な下流処理を行なうことは、環境中の混入物がウイルス調製物に導入される機会を多く与えることとなり、2004年にワクチンのリコールがあったのもこれが原因であると思われる。前に述べたとおり、卵材料を完全に取除くことは困難であり、そのためにワクチンに対する感受性がもたらされ得る。加えて、大量の好適な卵が入手不可能であることによるロジスティックの問題のため、要求が突然増加したときにこのプロセスは完全に柔軟性を欠く。卵における増殖によってウイルスの抗原性が低減し得るという証拠もある。このことに一致して、卵においてインフルエンザAまたはBウイルスを増殖させると、HA突然変異の範囲を有する不均一なウイルス生成物がもたらされる。直接的な対比として、哺乳動物宿主細胞における対応する増殖によって得られるインフルエンザウイルスは、元々単離されたウイルスと構造的に同一である(Rochaら、J.Gen.Virol、1993;74:2513−2518)。さらに、哺乳動物細胞において増殖したインフルエンザウイルスは、卵で増殖したウイルスよりも容易に、かつ高タイターでヒト血清における中和およびHA阻害抗体を誘導する(Oxfordら、Bull WHO、1987;65:181−187)。
残念なことに、すべてのインフルエンザウイルス株は卵において増殖するように見えるのに対し、これまでに多くの株が組織培養細胞においてよく増殖せず、組織培養細胞において増殖する株であっても有効なワクチンを生成するために必要な量まで増殖しないことがしばしばある。ここで本発明者らは、限界希釈クローニングを用いて組織培養においてインフルエンザウイルスを増殖させれば、組織培養に適応した単離体を生成できることを開示する。驚くべきことに、孵化鶏卵の羊膜を通じた接種によって得られるウイルスの複製によって、組織培養細胞(例、ベロ細胞)において増殖されるときに複製および高レベルのHAの生成が可能なウイルス集団が得られることを発明者は発見した。その結果得られるウイルス単離体は、孵化鶏卵を用いて得られるものにほぼ等しいHAタイターを生成し、HAタイターはワクチンの可能性を示す重要な尺度の1つである。したがって、本発明の1つの重要な局面は、組織培養に適応し、かつインフルエンザワクチン、特に哺乳動物ワクチンの生産における使用に対して好適なインフルエンザウイルスのウイルス単離体を生成する方法に向けられる。この方法は、限界希釈クローニングを用いて組織培養に適応したウイルスを単離および同定することを含む。その結果得られる単離体を処理してワクチンを生産できる。よって本発明は、改善されたインフルエンザウイルスワクチンを生産する方法にも向けられる。
この目的のために、限界希釈クローニングを用いてウイルスを滴定することによって組織培養に適応したインフルエンザウイルスを選択し、このプロセスを2回またはそれ以上繰り返す方法が提供される。いくつかの方法において、使用される組織培養細胞はHEK細胞である。細胞へのウイルス進入の効率を上げるために、トリプシンまたは同等のプロテアーゼが用いられてもよい。さらなる方法は、トリプシンを滴定して、使用されるトリプシンロットおよび使用される細胞に対する最良の濃度を識別するステップを含む。使用される各インフルエンザウイルスおよび特定の細胞に対する最良の感染多重度(MOI)の識別は、組織培養増殖の成功にも寄与する。単離された組織培養適応ウイルスを用いて、標準的な方法に従ってワクチンを生産できる。いくつかの実施形態において、ワクチンはアジュバントのISCOMの使用を含む。いくつかの実施形態において、ワクチンはアジュバントの水酸化アルミニウムの使用を含む。ワクチンに2つ以上のウイルス株または単離体が含まれるとき、方法は2つの株を免疫学的に等しい量混合するステップを含んでもよい。本明細書においては、組織培養に適応したウイルス単離体およびそのウイルス単離体から作成されたワクチンに対する方法および組成物が提供される。
I.組織培養に適応したウイルスを選択する方法
本発明の方法において用いられるウイルスの供給源は、本発明にとって重要ではない。たとえば、ウイルスは、WHOからのシードウイルスストックのように、感染した動物または患者からの単離によって得られてもよく、適切な機関(例、ATCC)から購入することによって、または研究所から得られてもよい。特にCIVは、肺炎を含む重度の呼吸器疾患をもたらすことが知られている。よってこれらの症状を示しているイヌは有用な供給源である。ウイルスを単離するために適した試料は以下を含む:鼻の洗浄液/吸引物、鼻咽頭スワブ、咽喉スワブ、気管支肺胞上皮洗浄液、気管吸引物、胸膜液穿刺、痰、排出腔塗抹、および解剖試料。生きた動物からの試料は、最適には早く回収されるべきであり、いくつかの場合には病気の発症から4日以内に回収される。試料は使用まで保存するための適切な輸送媒体の中に回収されても、または直ちに使用されてもよい。保存されるときには、ウイルスは4℃などの低温に保たれることによって生存性を確実にしてもよい。試料からインフルエンザウイルスを単離するために、(たとえば遠心分離によって)大きな混入物が除去されてもよく、上清はさまざまな希釈度でさまざまな細胞に接種されてもよい。代替的には、動物からのウイルスは最初に鶏卵において増殖させられてもよい。プロセスのあらゆる時点で、ウイルス単離体が本当にインフルエンザであることを確認するための方法が用いられてもよい。
組織培養適応単離体を調製するプロセスにおけるあらゆる時間に所望のインフルエンザウイルスの存在を確認するために、さまざまなスクリーニング方法が用いられてもよい。ウイルスは、インフルエンザウイルスに対するあらゆる公知のアッセイおよび/または好適なアッセイを用いてアッセイすることによってスクリーニングされてもよい。こうしたアッセイは、ウイルス複製、(例、抗血清による)不活性化、転写、複製、翻訳、ビリオン取込み、病原性、HAもしくはNA活性、ウイルス収量、および/または形態形成の量的および/または質的測定を(単独または組合せて)含み、逆遺伝学、再集合、相補、および/または感染などの方法が用いられる。
A.組織培養細胞
インフルエンザウイルスの増殖が可能なあらゆる哺乳動物宿主細胞が本明細書の方法に対して用いられてもよい。典型的には、宿主細胞は偶発的な物質(adventitious agents)を好適に排除し、ワクチン生産に対するWHOの要求に従って認定可能な継代数である。いくつかの細胞系を用いてインフルエンザウイルスを単離および増殖してもよい。用いられているいくつかの細胞系は以下を含む:ベロ細胞(サル腎臓細胞)、MDCK細胞(マディンダービーイヌ腎臓(Madin−Darby canine kidney)細胞)、BHK−21細胞(ベビーハムスター腎臓(baby hamster kidney))ならびにBSC(サル腎臓細胞)およびHEK細胞(ヒト胎児由来腎臓細胞)。よって、インフルエンザウイルスの増殖が可能なあらゆる組織培養細胞が用いられてもよい。好適な細胞は、以下を含むがそれらに限定されない:ベロ、MDBK、BK21、CV−1、およびあらゆる哺乳動物胚腎臓細胞(例、HEK)。いくつかの実施形態においては、ベロ細胞または哺乳動物胚腎臓細胞が用いられる。いくつかの実施形態においては、ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK細胞)が用いられる。
上述の細胞系の増殖に対する適切な組織培養培地は当業者に公知となるであろう。こうした培地は、最高20%v/vの濃度の適切な血清(例、ウシ胎児血清)を含有してもよい。上述の細胞系を増殖させるために20%v/v未満の血清(2〜5%v/v)を含有する培地が用いられてもよいことが当業者に認識されるであろう。
B.細胞に対してトリプシンを最適化する
細胞培養においてウイルスの高タイターストックを増殖させるために、適切な量のプロテアーゼを用いて、細胞への内部移行のために赤血球凝集素を活性化してもよい。プロテアーゼを含有する溶液が直接単離体に加えられてもよいし、ワクチンの生産のための単離体の増殖のために単離体を希釈してプロテアーゼに入れてもよい。増殖のための適切なMOIにウイルスを希釈するためにプロテアーゼが用いられてもよい。
プロテアーゼは、ウイルスタンパク質に損傷を与えて増殖および/または細胞への感染を不可能にすることなく内部移行のためにHAを活性化できるあらゆるプロテアーゼであってもよい。こうしたプロテアーゼは、原核生物プロテアーゼ、プロナーゼ、トリプシン、およびサブチリシン(A)、たとえばトリプシンIXなどを含むがこれらに限定されない。
使用されるプロテアーゼの量は、細胞に対する毒性の影響は非常に小さいがウイルスを活性化するためには十分な量であるべきである。毒性の影響は、たとえばプレートまたは培養基からの分離、細胞デブリの存在、死んだ細胞の出現および生存可能な細胞の欠乏など、細胞に対する損傷の特徴を確認することによって分析できる。よって「有効量のトリプシン」とは、十分な時間用いられるときに、細胞を培養基から分離させたりその他の毒性の影響をもたらしたりすることなく、トリプシンがウイルスタンパク質を切断できるような量である。組織培養中の活性ウイルスの生成を増加させるためにプロテアーゼの滴定が用いられてもよい。滴定は、細胞に対する損傷が最小限であるトリプシンの最大量を識別するステップを含む。この量は、使用される組織培養細胞およびプロテアーゼのロットによって変動し得る。したがって、新たなプロテアーゼロットを使用する前に滴定して最適なレベルを確立してもよく、各プロテアーゼを各組織培養細胞に対して滴定してもよい。滴定は、組織培養細胞にプロテアーゼの段階希釈物を接種するステップと、それらを適切な時間インキュベートするステップとを含む。たとえば、プロテアーゼの半段階(half−step)希釈物(10−0.5)が用いられてもよい。インキュベーション時間は細胞系によって変動するが、典型的には約2日から約7日間である。使用される細胞に対する典型的なインキュベーション時間を用いてプロテアーゼレベルが定められてもよい。たとえば、インフルエンザウイルスに対して4日間のインキュベーションが最善であるときには、プロテアーゼのみの存在下で約4日間インキュベートすることによってプロテアーゼをテストしてもよい。細胞に対する毒性がないか、または毒性が非常に小さいプロテアーゼの最低希釈物を用いることができる。哺乳動物の組織培養細胞、たとえばベロ細胞などにおいて使用できるトリプシン濃度の範囲は約0.5μg/mLから約10μg/mLであるが、より一般的には培地の約2.5μg/mLである。
一旦プロテアーゼの最適レベルが識別されると、ウイルスを適切な量のプロテアーゼ(例、トリプシン)とともに感染培地中に希釈することによって、ウイルスが細胞培地に加えられたときに最適レベルに達するようにされてもよい。最適量のトリプシンは、組織培養適応単離体を生成するための限界希釈クローニング、ならびに単離体の増殖および採取のために用いられてもよい。
C.限界希釈クローニング
典型的なウイルス培養物は不均一である。よって、たとえばマイクロタイタープレートのウェル中の個々のウイルス粒子は、感染性および複製などに関して異なる可能性がある。連続的な希釈を用いて培養物中のウイルスの亜集団、たとえば細胞に最もよく適応する亜集団などを選択する。連続的な希釈は、ウイルス培養物を消滅するまで連続的に希釈することによって、たとえば最良のMOIを定めるステップを含む。典型的に、このステップは10倍希釈の連続を含むが、ウイルスのタイターに依存して変動し得る。
典型的には、細胞にウイルスの効果を生じる最高希釈度を識別するために限界希釈が用いられる。ウイルスの効果は細胞変性効果(CPE)であってもよい。細胞変性効果は、インフルエンザウイルス感染によってもたらされる細胞に対するあらゆる効果である。これらの効果は以下を含むがそれらに限定されない:細胞の円形化、変性、脱落(sloughing)、アポトーシス、活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)の誘導、細胞の顆粒化に次ぐフラグメント化、および支持物(組織培養皿など)からの細胞の分離。最高希釈度のウェルが採取される。次いでこの採取されたウイルスが消滅するまで希釈され、このプロセスが繰り返される。典型的には、(トリプシンを含むかまたは含まない)適切な培地において連続的な10倍希釈物が作成され、各希釈物の0.2mLが組織培養細胞を含有するプレートまたはマイクロタイタープレートのウェルに加えられ、細胞のCPEを識別するために十分な時間インキュベートされる。血清はトリプシンを不活性化するため、培地は典型的に血清を含有しない。CPEをもたらす最高希釈度を含有するウェルまたはプレートが採取され、次いで希釈されてこのプロセスが繰り返される。このプロセスは典型的には少なくとも2回繰り返されるが、最高5回繰り返されてもよい。いくつかの場合には、このプロセスは3回繰り返される。
本発明の方法によって生成されるウイルス培養物は、ウイルス中のHAタンパク質の配列の均一性を特徴とする。いくつかの方法を用いて配列の均一性の程度を測定してもよい。たとえば、HAタンパク質自体の配列決定またはこうしたタンパク質をコードするRNAの配列決定によるものなどである。典型的には、本発明の方法によって生成されるウイルス調製物が含有するウイルスにおいては、HAタンパク質の少なくとも70%が同じアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態においては、HAタンパク質の80%、または少なくとも90%が同じアミノ酸配列を有する。
D.インフルエンザウイルスをテストする方法
本明細書の方法に対するプロセス中のあらゆる時に、インフルエンザウイルスの活性および存在を確認するためのテストを行なってもよい。たとえば、赤血球凝集は次のようにして識別できる。ウイルスが表面HAタンパク質を有するとき、それはRBCに付着してRBCを凝集できる。サンプル中のウイルスの濃度が高ければ、サンプルをRBCと混合したときにウイルスとRBCとの格子が形成される。この現象は赤血球凝集と呼ばれる。これはインフルエンザウイルスなどの赤血球凝集を起こすウイルスの存在およびタイターを検出するための簡単なやり方である。サンプル中にRBCの赤血球凝集を起こすために十分なウイルスがないときには、RBCはウェルの底でペレットを形成する。完全な赤血球凝集を示す最高希釈度がエンドポイントとして取られる。ウイルスタイターはHA単位(HAU)で表わされ、これはミリリットル当りの希釈度の逆数である。たとえば、50μL中の1/32希釈においてはウェルに完全な赤血球凝集があるが、次に高い希釈度のウェルには赤血球凝集がないとき、このウイルスのタイターは50μL当り32HAU、または1mL当り640HAUである。
インフルエンザウイルスを同定および定量化するために用い得るその他のアッセイは、CPEの識別(本明細書に考察されるとおり)、ウエスタンブロット、ELISA、PCR、ならびにウイルスのどこかの部分、特にHA抗原に対して特異的な抗体および/またはプローブを用いてインフルエンザウイルスを同定するその他の方法を含む。
II.増殖および採取の方法
ウイルス単離体の生成後、単離体は採取されてもよい。標準的な方法が用いられてもよい。採取された単離体は将来の使用のために保存されるか、または標準的な方法を用いてワクチンを生産するために用いられてもよい。ウイルスは、最大量のウイルスが生成されているとき;HAアッセイによる測定において最大量の赤血球凝集素が生成されているとき;および/または細胞が溶解されるときに採取されてもよい。
組織培養適応単離体を得た後に、その単離体を増殖させて採取してもよい。組織培養適応ウイルスを増殖および採取する方法は本発明にとって重要ではなく、標準的な方法が用いられてもよい。しかし、いくつかの実施形態においては、ウイルスは最もよく適応した組織培養細胞中で増殖させられる。採取されたウイルス単離体は将来の使用のために保存されるか、または標準的な方法を用いてワクチンを生産するために用いられてもよい。適量のプロテアーゼ(例、トリプシン)中の適切なMOIのウイルスを細胞に加え、高タイターのウイルスを生成するために十分な時間、および/または細胞が溶解されるまで置くことによって、ウイルスを適切な組織培養細胞において増殖させられる。ウイルスは、最大量のウイルスが生成されているときか、最大量の赤血球凝集素が生成されているときか、および/または細胞が溶解されるときに採取されてもよい。本明細書においては、卵におけるウイルスの最適な前増殖(尿膜腔または羊膜を通じた接種)によって、組織培養細胞におけるウイルスの適応を増加できることが見出された。
A.卵における前増殖
卵培養における継代は組織培養細胞におけるウイルスの適応を促進することが示された。よって、標準的な技術に従って孵化鶏卵においてウイルス単離体を前増殖させることが望ましいと思われる。たとえば、ウイルスは9〜12日齢の孵化鶏卵の尿膜腔内に注射されるか、または羊膜を介して注射され、約3日間増殖される。次いで尿膜腔液または羊水が回収され、回収された材料は、ワクチンの生産に用いるために適切なMOIで組織培養において増殖させられてもよい。代替的には、回収された材料が限界希釈クローニングに直接用いられてもよい。羊膜を通じた卵の接種は、ベロ細胞で増殖させたときに複製可能で高レベルのHAタンパク質を生成できるウイルスを富ませることが見出された。
B.MOI
本明細書においては、低いMOIによって、より良いおよび/またはより高いタイターのウイルス単離体がもたらされることが確認された。特定の理論に限定することなく、低いMOIは欠陥のあるウイルス粒子の量を低減させることによって、より効率的な感染プロセスをもたらすと考えられる。いくつかの実施形態において、使用されるMOIは約0.01(100個の細胞当り1つのウイルス)未満である。他の実施形態において、MOIは約0.003未満である。いくつかの実施形態において、MOIは約0.001未満である。MOIは、高タイターのウイルスをもたらすか、および/または約3日から4日で細胞を溶解させるような最低MOIが選択されてもよい。
III.ワクチン生産
一旦組織培養適応ウイルスから所望の単離体が得られると、そのウイルスを用いてワクチンが生産されてもよい。多くのタイプのウイルスワクチンが公知であり、それらのワクチンは弱毒化ワクチン、不活性化ワクチン、サブユニットワクチン、および分解ワクチンを含むがそれらに限定されない。
A.弱毒化ウイルスを生成する方法
弱毒化ワクチンは、もはや疾患を起こさないように弱毒化または変化された生ウイルスワクチンである。このワクチンは多くの態様で生産でき、たとえば反復した世代に対する組織培養中の増殖および遺伝子操作によって病原性に関与する遺伝子を変異または除去させることなどによって生産できる。組織培養適応単離体を用いて、標準的な方法を用いて弱毒化ウイルスを生成できる。たとえば、病原性に関与するか、または疾患の発現に関与するウイルス遺伝子および/またはタンパク質が一旦同定されると、それらを変異または変化させることによって、ウイルスがなおも感染して細胞内で複製することはできるが疾患をもたらすことはできないようにしてもよい。この生成の例は、HA1/HA2切断部位に突然変異を起こさせることである。組織培養適応ウイルスは、たとえばウイルスの低温適応などのあらゆる標準的な方法を用いて弱毒化されてもよい。
弱毒化ウイルスの生成後に、標準的な方法(たとえば本明細書の方法)を用いてワクチンを調製してもよい。標準的な方法を用いて、たとえばサイズ排除クロマトグラフィを用いてウイルスを精製できる。次いで標準的なアジュバントおよびワクチン調製物を用いてワクチンを調製でき、たとえばISCOM、ナノビーズ、鉱油、植物油、水酸化アルミニウム、サポニン、非イオン性界面活性剤、スクアレン、およびブロックコポリマーなどを単独または組合せてアジュバントとして使用できる。米国およびヨーロッパにおける現行の市販ワクチンはいかなるアジュバントも含有しておらず(生ワクチンも不活化ワクチンも)、このことがワクチンにおいてこのように高濃度のHA(ウイルス株当り15μgのHA、3価の配合物に対しては45μgのHA)が必要である理由の1つとなっている。
B.不活性化ワクチン、サブユニットワクチンおよび分解ウイルスワクチンを生産する方法
一旦所望のウイルスが得られると、そのウイルスを用いて免疫原性組成物、たとえばワクチンなどを生産してもよい。「不活化(killed)」ワクチンの例は、不活性化ワクチン、分解ワクチンおよびサブユニットワクチンである。これらのワクチンは標準的な方法を用いてインフルエンザを処置するために調製できる。
たとえば、サブユニットワクチンは一般的に、免疫系を活性化するウイルスの部分のみを単離することを含む。インフルエンザの場合には、精製したHAおよびNAを用いてサブユニットワクチンが調製されているが、ウイルスタンパク質のあらゆる混合物を用いてサブユニットワクチンを生産してもよい。一般的には、HAなどのウイルスタンパク質が組換えウイルス形態から抽出され、WHOによって推奨される株からのウイルスタンパク質の混合物を含有するようにサブユニットワクチンが配合される。たとえば、1995〜1996年のワクチンは、2つのA株および1つのB株からのHAおよびNAを含有した(A/Singapore/6/86(HlNl);A/Johannesburg/33/94(H3N2);およびB/Beijing/84/93)。H3N8 CIVに対しては、H3および/またはN8抗原が用いられてもよい。
一般的に、ウイルスタンパク質がウイルスから抽出され、それらのウイルスタンパク質の混合物を含有するようにサブユニットワクチンが配合される。タンパク質は、標準的な方法を用いてサブユニットワクチンに対する組織培養適応ウイルス単離体から単離されてもよい。代替的には、組換え技術を用いてタンパク質が生成されてもよい。特定のタンパク質を生成するための技術は当該技術分野において公知である。
分解ワクチンは一般的に、エンベロープに包まれたウイルスを界面活性剤で処理することによって中のタンパク質を可溶化することを含む。インフルエンザウイルスの場合には、HAおよびNAが可溶化される。たとえば、分解ワクチンを生産するためにトリトンX−100などの非イオン性界面活性剤が用いられてもよい。
不活性化ウイルスワクチンは、採取されたウイルスを不活性化して、哺乳動物における免疫応答を誘導するためのワクチンとして用いるために公知の方法を用いてそのウイルスを配合することによって調製される。不活性化ステップ、サブユニットの精製、および/または分解は、サイズ排除によるウイルスの精製の前または後に行なわれてもよい。たとえば、不活性化ワクチンの生産は、細胞材料の除去、ウイルスの不活性化、精製およびウイルスエンベロープの可溶化を含んでもよい。他の実施形態は、ウイルスの精製の次に、たとえばホルムアルデヒドなどを用いた不活性化を含んでもよい。
一旦調製されると、ワクチンのいずれか(たとえば弱毒化ワクチン、分解ワクチン、サブユニットワクチンまたは不活性化ワクチン)をテストすることによって、そのウイルスおよび/もしくはワクチンが類似の抗原性を維持すること、哺乳動物において血清学的応答を生成すること、ならびに/または哺乳動物における疾患からの保護を提供することを確認してもよい。
C.採取されたウイルスのさらなる処理
1.採取されたウイルスの清澄
採取の後、および/または採取されたウイルスの不活性化の後に、たとえばマイクロキャリアを除去するための沈降および限外ろ過による上清の濃縮などによって、細胞材料およびその他の妨げとなる材料が除去されてもよい。組織培養細胞において増殖させられたインフルエンザは、宿主細胞のタンパク質を含有する。上清の何らかのさらなる清澄化が必要となり得る。細胞DNAは酵素処理(例、Benzonase)によって除去できる。最初に妨げとなる材料を除去した後に、標準的な方法を用いてウイルスを不活性化してもよい。代替的には、たとえばサイズ排除クロマトグラフィなどによるさらなる精製の後に不活性化が行なわれてもよい。
2.ウイルスの不活性化
インフルエンザウイルスは、あらゆる数の態様で、あらゆる数の薬剤によって不活性化されてもよい。不活性化の方法は本発明にとって重要ではない。不活性化は、混入材料または妨げとなる材料が除去された後に起こってもよい。不活性化は、公知の不活性化剤の使用を含んでもよい。こうした不活性化剤は以下を含むがそれらに限定されない:UV照射、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、バイナリエチレンイミン(binary ethyleneimine:BEI)、およびベータプロピオラクトン。いくつかの実施形態においてはBEIが用いられ、これはBEIがウイルスタンパク質に損傷を与えることなくウイルス核酸を破壊することが公知であるためである。加えて、BEIはタンパク質含有量および温度に影響されない。不活性化剤は、溶液中のすべてのウイルス粒子を不活性化するために十分に高い濃度で用いられる。たとえば、BEIは約0.5mMから10mMの最終濃度で用いられてもよく、この濃度は以下を含むがそれらに限定されない:1.5、3、4、5および6mM、ならびに約1mMから6mMおよび1mMから3mMの範囲を含む。実施形態の1つにおいて、BEIは約6mMの濃度で用いられる。典型的には、BEIは約1.5mMの濃度で用いられ、37℃にて48時間インキュベートされる。CIVに対するワクチンの調製において、BEIは約0.5mMから10mM、通常は4mMから8mM、しばしば5mMから7mMの最終濃度で用いられてもよい。実施形態の1つにおいて、BEIは約6mMの濃度で用いられる。いくつかの実施形態において、不活性化は、不活性化剤に対する適切なpHおよび温度において起こる。pHおよび温度は、結果的に得られる不活性化ウイルスがなおも免疫原性であることを確実にするように選択され得る。不活性化は適量の撹拌とともに進行することによって、薬剤が溶液中のすべてのウイルス粒子に接触することを確実にしてもよい。
不活性化の後、不活性化剤は、不活性化剤の不活性化、不活性化剤の沈降、不活性化剤のろ過、およびクロマトグラフィ、またはこれらの方法の混合を含むがそれらに限定されない方法を用いて除去されてもよい。たとえば、BEIはチオ硫酸ナトリウムの添加によって不活性化できる。残余BEIは、サイズ排除方法を用いてもウイルス/ウイルスタンパク質から分離できる。一旦無害性(生ウイルスの不在)が確認されると、ウイルス溶液をさらに処理してワクチンを生産してもよい。
3.さらなる処理
ウイルス溶液をさらに処理することによって、たとえば混入物を除去し、ウイルスをさらに濃縮し、もっと強い免疫応答を提供してもよい。さらなる処理のいくつかの例には、標準的な方法を用いた細胞材料の初期の除去、細胞DNAの除去、濃縮、およびアジュバントへの配合が含まれる。組織培養細胞において増殖させられたインフルエンザは宿主細胞タンパク質を含有する。たとえば、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞にて増殖させられたインフルエンザはHEKタンパク質を有し、MDBKまたはベロ細胞において増殖させられればそれぞれウシまたはサルのタンパク質を有する。これらのタンパク質は、当業者に公知の方法によって検出できる。DNAの除去に対しては多くの方法が公知であり、その中には、たとえばBenzonaseなど、細胞DNAを分解することが知られるさまざまなDNアーゼ酵素の添加が含まれる。初期濃縮ステップが行なわれることによって、クロマトグラフィによる付加的な精製に最も適した濃度のウイルス溶液を提供できる。このステップはあらゆる標準的な方法を用いて実行でき、その方法には、約100Kの分子量カットオフを有する膜(例、100KのMWCOを有するポリスルホン膜)を用いた限外ろ過が含まれるがこれに限定されない。ウイルス溶液は最高約100倍濃縮されてもよく、それは90倍、80倍、70倍、60倍、50倍、40倍、30倍、20倍、10倍、および5倍を含むがそれらに限定されない。いくつかの実施形態において、ウイルス溶液は最高約50倍濃縮されるが、より典型的には20倍および30倍を含む。
4.精製
ウイルスは、密度遠心分離などの標準的な方法を用いて精製されてもよい。いくつかの実施形態において、ウイルスはサイズ排除ゲルクロマトグラフィによって精製される。サイズ排除を用いる利点の1つは、密度遠心分離を用いるよりも収率が良いことである。ウイルスの精製をもたらすあらゆるサイズ排除ゲルが用いられてもよい。Sepharoseゲル(例、Sepharose CL−2B)など、あらゆる標準的なゲルが用いられてもよい。いくつかの実施形態において、カラムの長さは約70cmから120cmであることによって必要な分離を達成し、その長さは約80、90、100および110cmを含むがそれらに限定されない。他の実施形態において、カラムの長さは約80cmから100cmであり、たとえばカラムの長さは約90cmである。いくつかの実施形態において、この長さは連続する複数のカラム、たとえば2つの45cmカラムまたは3つの30cmカラム(例、長さ30〜32cm掛ける直径30cmのカラム)などによって達成される。濃縮されたウイルスは標準的な方法を用いて適用されてもよく、たとえばウイルスはカラム体積(column volume:CV)の5〜10%、典型的には5〜7%CVにて適用される。次いでカラムからのウイルスピークを回収して、標準的な方法、たとえば限外ろ過などを用いてさらに濃縮してもよい。いくつかの実施形態においては、合計の長さが90cmの連続する2つから3つのカラムが用いられ、最終ピークがプールされて限外ろ過によって濃縮される。
5.エンベロープタンパク質の可溶化
濃縮ウイルスピーク材料は、たとえば非イオン性界面活性剤によるものなどの標準的な方法を用いて可溶化されてもよい。可溶化を行なうことによってISCOMS(下記を参照)の配合物に対する材料を調製してもよい。非イオン性界面活性剤の例は、ノナノイル−N−メチルフカミド(Nonanoyl−N−Methylfucamide)(Mega9)、トリトンX−100、オクチルグルコシド、ジギトニン、C12E8、ルブロール、ノニデットP−40、およびTween(たとえばTween20、80または120)を含むがこれらに限定されない。可溶化の後に、ウイルスを用いてワクチンを生産しても、および/またはアジュバントを加えてもよい。たとえば、ISCOMアジュバントの生成のために、脂質混合物を加えてISCOM形成を助けてもよい。脂質混合物は、ホスファチジルコリンおよび合成コレステロールを含んでもよい。いくつかの実施形態において、ウイルスは室温で撹拌されながらMega9によって破壊され、次いで脂質混合物(ホスファチジルコリンおよびコレステロール)が加えられて撹拌が続けられてもよい。
6.アジュバントの形成
ワクチンおよび/または医薬組成物に適切なアジュバントが加えられてもよい。アジュバントの例には、油と水とのエマルジョンを含有するもの、および水酸化アルミニウムをさらに含むものが含まれる。後者の場合には、商業的供給源からの水酸化アルミニウム、たとえばAlhydrogel(Superfos Biosector、Frederikssund、Denmark)およびRehydrogel(Reheis Inc.)などが用いられてもよい。油と水とのエマルジョンは典型的に、鉱油または代謝性の油(例、植物油、魚油)を含む。非イオン性界面活性剤または表面活性剤が乳化剤として用いられてもよい。乳化剤の例は、Tween80/Span80、Arlecel80/Tween80、およびMontanides(Seppic、Paris、France)を含む。アジュバントエマルジョンの場合、一般的には体積の5〜25%が油で体積の75〜95%が水性である。いくつかの実施形態において、アジュバントエマルジョンは体積の20%が油で80%が水性である。水酸化アルミニウムの量は通常、水相の約5%から15%である。いくつかの実施形態においては、Emunade(登録商標)がアジュバントである。
いくつかの実施形態に対しては、ISCOMがアジュバントとして用いられる。ISCOMは免疫刺激複合体(Immune Stimulating Complex)の頭字語であり、その技術はMoreinらによって説明されている(Nature、308:457−460(1984))。ISCOMは新規のワクチン送達系であり、従来のアジュバント技術とは異なっている。ISCOMは2つの態様の1つによって便利に形成できる。いくつかの実施形態においては、ISCOMの形成の際に構造に抗原が物理的に組み込まれる。他の実施形態においては、ISCOMマトリックス(たとえばIsconovaから供給されるものなど)は抗原を含有しないが、免疫化の前にエンドユーザによって選択された抗原と混合される。混合後の抗原はISCOMマトリックスとともに溶液中に存在するが、構造には物理的に組み込まれていない。
一般的に、ISCOMにおいては、Quil Aが臨界濃度で疎水性/親水性結合によって自発的にミセルを形成し、精製免疫原を閉じ込めることができることに基づいて、精製抗原は多量体の形で提示される。これらのミセル構造のサイズは35nmのオーダーであり、免疫系によって容易に認識される。従来のデポーアジュバントとは異なり、ISCOMは注射部位ならびに不適切な局所的、体液性および細胞媒介免疫応答から迅速に取除かれる。特定の実施形態において、ISCOMは以下のようにして形成される。標準的な方法を用いて、たとえば非イオン性界面活性剤(例、Mega−9、トリトンX−100、オクチルグルコシド、ジギトニン、ノニデットP−40、C12、ルブロール、Tween80)などによって、ウイルスが可溶化される。ISCOM形成を助けるために脂質混合物が加えられる。脂質混合物は、ホスファチジルコリンおよび合成コレステロールを含んでもよい。いくつかの実施形態において、混合物は最初に撹拌しながら室温にて非イオン性界面活性剤で処理され、次いで脂質混合物(たとえば同じ割合のホスファチジルコリンおよびコレステロール)が加えられて撹拌が続けられる。Quil A(サポニンの精製グリコシド)がウイルス脂質混合物に加えられて撹拌が続けられる。Quil Aは、Quil Aの最終濃度が約0.01%から0.1%になるように加えられてもよく、この最終濃度は0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、および0.09%を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、最終濃度は約0.05%である。(たとえば、酢酸アンモニウムによるダイアフィルトレーションなどによって)非イオン性界面活性剤が除去される。Quil AによってISCOMのマトリックスが形成される。電子顕微鏡法によって見られるISCOM粒子の形態は、ほぼ35nmのサイズの典型的なケージ様の構造を示す。ISCOM形成段階は、接線流ダイアフィルトレーション(tangential flow diafiltration)を用いることによって改良できる。Quil Aが臨界濃度で疎水性/親水性結合によって自発的にミセルを形成し、精製抗原を閉じ込めることができることに基づいて、ISCOMは多量体の形の精製抗原を提示する。ISCOMの形成は、電子顕微鏡法によって典型的なケージ様の構造が形成されたことを確認することによって確認できる。ISCOM提示による免疫応答は、凝集した膜タンパク質のみのミセルとして提示される類似の抗原ペイロードよりも少なくとも10倍良いことが示された。ISCOMは細胞媒介応答を誘導することも見出されており、これは従来の全ウイルスワクチンにはみられないことである。いくつかの実施形態において、最終濃度は約0.05%である。
ワクチンおよび/または医薬組成物に免疫刺激薬も加えられてもよい。免疫刺激薬は以下を含む:サイトカイン、成長因子、ケモカイン、リンパ球、単球、もしくはリンパ器官からの細胞の細胞培養からの上清、植物からの細胞調製物および/もしくは抽出物、バクテリア、寄生生物からの細胞調製物および/もしくは抽出物、またはマイトジェン、ならびにその他のウイルスおよび/もしくはその他の供給源に由来する新規の核酸(例、2本鎖RNA、CpG)、ブロックコポリマー、ナノビーズ、または当該技術分野において公知のその他の化合物であり、これらは単独または組合せて用いられる。
アジュバントおよびその他の免疫刺激薬の特定の例は、以下を含むがそれらに限定されない:リゾレシチン;グリコシド(例、サポニンおよびサポニン誘導体、たとえばQuil AまたはGPI−0100など);カチオン界面活性剤(例、DDA);四級炭化水素アンモニウムハロゲン化物;プルロニックポリオール;ポリアニオンおよび多原子イオン;ポリアクリル酸、非イオン性ブロックポリマー(例、Pluronic F−127);およびMDP(例、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン)。
D.ワクチンの効力
サブユニット、弱毒化、分解、および/または不活性化ウイルスワクチンが、その元となった臨床的単離体または組織培養適応単離体と類似の抗原性を維持しているかどうかを定めるための方法は、当該技術分野において周知である。こうした公知の方法には、抗血清または抗体の使用、HAおよびNAの活性および阻害、ならびにDNAスクリーニング(プローブハイブリダイゼーションまたはPCRなど)によって抗原決定基をコードするドナー遺伝子が不活性化ウイルスに存在することを確認することが含まれる。ワクチンが血清学的応答を誘導するかどうかを確認する方法も当該技術分野において周知であり、この方法には、ワクチンによって実験動物を免疫化した後に、疾患を起こすウイルスを接種して、疾患の症状の有無を確認することが含まれる。よってインフルエンザワクチンの効力を動物においてテストすることができ、通常はフェレット、マウスおよびモルモットが用いられる。抗体タイターは、赤血球凝集阻害(Hemagglutinatin inhibition:HI)もしくはノイラミニダーゼ阻害(Neuraminidase inhibition:NI)方法を用いるか、または組織培養においてウイルスを中和する抗体に対するテスト(マイクロ中和テスト)を行なうことによってテストでき、こうした方法は一般的に公知である。攻撃(Challenge)研究は、ワクチンを評価するための重要な情報を提供できる。
処置に好適な医薬組成物および/またはワクチンは、滅菌した水溶液または非水性溶液とともに混合物となったウイルスまたはウイルスサブユニットを含む。医薬組成物および/またはワクチンを生成するプロセスは、組織培養適応単離体を単離し、そのウイルス単離体を増殖させて精製し、ウイルスを不活性化および/または弱毒化し、適切なタイターを生理学的に許容できる希釈剤および免疫刺激剤と混合するステップを含んでもよい。代替的には、ウイルスタンパク質をサブユニットワクチンのために精製して、適量を生理学的に許容できる希釈剤および免疫刺激剤と混合してもよい。ウイルスは十分に精製されることによって、ウイルスの不活性化ステップおよび/または免疫原性を妨げ得る混入材料または物質がなくなるようにされてもよい。
適切なタイターのウイルスまたは適切な濃度のウイルスタンパク質を希釈剤および免疫刺激剤と混合してもよい。TCID50の測定は、ウイルスタイターを測定するためのやり方の1つである(50%組織培養感染用量(50% tissue culture infective dose))。たとえば、約10から1012TCID50のタイター(不活性化前のタイターに基づく)を用いることができ、このタイターは10、10、10、10、1010および1011を含むがこれらに限定されない。任意には、タイターはHAタイターによって分析されてもよく、ワクチンに含まれるウイルス当り約1μgから30μgのHAを含有してもよく、これはアジュバント配合物に対する1μgから10μg、および非アジュバントワクチンに対する1μgから30μgを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、タイターは約15μgである。よって、たとえば非アジュバントワクチンに3つのウイルスが含まれるとき、成人に対する1用量は45μgのHA(3つのウイルス株の各々に対して15μg)と同等の量を含有する。他の実施形態において、各株の量は(たとえば抗原性に依存して)異なっていてもよいが、最終濃度は約1μgから約60μgのHAであり、これは2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50および55μgを含む。別の実施形態において、アジュバントワクチンは約1μgから30μgの量のHAを含有することが期待され、これは2、5、10および20μgを含む。ワクチンの体積は典型的に約50μlから5000μlであり、これは100、500、1000、2000および5000μlを含む。
標準的な生理学的に許容できる希釈剤が用いられてもよく、この希釈剤にはたとえば、EMEM、ハンクス平衡塩類溶液、ならびにリン酸緩衝食塩水(Phosphate Buffered Saline:PBS)および生理食塩水(Normal Saline)が含まれる。
適切な免疫刺激アジュバントがワクチンおよび/または医薬組成物に加えられてもよい。免疫刺激アジュバントの例には以下が含まれるがそれらに限定されない:鉱油、植物油、水酸化アルミニウム、サポニン、非イオン性界面活性剤、スクアレン、ブロックコポリマー、ナノビーズ、ISCOM、ISCOMマトリックスまたは当該技術分野において公知のその他の化合物であり、これらは単独または組合せて用いられる。
アジュバントに加えて、インフルエンザに対して有用なあらゆる適切な抗ウイルス剤も医薬組成物に含まれてもよい。こうした抗ウイルス剤は、たとえばリマンタジン、アマンタジン、ノイラミニダーゼ阻害剤(ザナミビルおよびオセルタミビルなど)、ガンマインターフェロン、グアニジン、ヒドロキシベンズイミダゾール、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、チオセミカルバゾン、メチサゾン、リファンピン、リバビリン、ピリミジンまたはプリン類似体、およびフォスカーネットなどを含む。
本明細書の方法を用いて、2つ以上のウイルスまたはウイルスタンパク質の株を有するワクチンを生産できる。混合物を免疫原性的に滴定することによってほぼ同等の免疫原性を与えてもよい。免疫原性的に滴定するとは、最終産物が免疫原性の違いを一様にするように生産されることを意味する。たとえば、株Aと株Bとの混合物が調製され、株Aの方が免疫原性が5倍高いとき、これらの株は株A:株Bが1:5の比率で混合される。
IV.ワクチンの投与
ワクチン組成物および/または医薬組成物の投与は、予防の目的で行なわれてもよい。予防的に与えられるとき、組成物はインフルエンザウイルス感染のあらゆる徴候が明らかになる前に与えられる。組成物の予防的投与は、あらゆるその後の感染を防止または弱める働きをする。医薬組成物および/またはワクチンは当該技術分野において公知のあらゆる態様で投与されてもよく、その態様には吸入、鼻腔内(たとえば弱毒化ワクチンによる)、経口および非経口によるものが含まれる。投与の非経口経路の例には、皮内、筋内、静脈内、腹膜内、および皮下が含まれる。いくつかの実施形態において、ワクチンは上腕における筋内注射または深部皮下注射によって投与される。過去にワクチン接種を受けなかったか、またはインフルエンザに暴露されなかった(非感作)子供には、2週間から4週間の間隔を置いて第2の用量を与えてもよい。最初の免疫化から適切な時間が経った後に、1回またはそれ以上の追加ワクチン接種が投与されてもよい。
有効量のワクチンおよび/または医薬組成物が投与される。有効量とは、十分な体液性または細胞性免疫を誘導するなどの所望の生物学的効果を得るために十分な量である。この有効量は、ワクチンのタイプ、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重に依存し得る。所望の生物学的効果の例は、症状の非生成、症状の低減、組織または鼻分泌物におけるウイルスタイターの低減、インフルエンザウイルスによる感染からの完全な保護、およびインフルエンザウイルスによる感染からの部分的な保護を含むが、それらに限定されない。
いくつかの実施形態において、CIVワクチンの免疫学的に有効な量は、用量当り約100HAUから約1500HAUである。典型的に、組成物は用量当り250HAUから750HAUである。実施形態の1つにおいて、ワクチン組成物は用量当り約500HAUを含む。
溶液として投与されるときのワクチンは、水溶液、シロップ、エリキシル剤、またはチンキの形で調製されてもよい。こうした配合物は当該技術分野において公知であり、適切な溶媒系において抗原とその他の適切な添加剤とを溶解することによって調製される。こうした溶媒は、たとえば水、食塩水、エタノール、エチレングリコール、グリセロール、およびA1液などを含む。適切な添加剤は、認可された染料、香料、甘味料、および抗菌性保存剤、たとえばチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)などを含む。こうした溶液は標準的な方法を用いて安定化されてもよく、その方法はたとえば、部分的に加水分解されたゼラチン、ソルビトールまたは細胞培養培地の添加によるものなどであり、溶液はさらに標準的な方法を用いて緩衝されてもよく、緩衝にはたとえばリン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、および/またはリン酸二水素カリウムなどの試薬が用いられてもよい。液体配合物は懸濁液およびエマルジョンも含んでもよい。懸濁液の調製にはたとえばコロイドミルなどが用いられ、エマルジョンにはたとえばホモジナイザなどが用いられる。
V.ウイルス株およびWHO
十分なワクチンストックを生産させる時間を与えるために、(冬季流行期に対する)今年のワクチンにどのインフルエンザAおよびB株を用いるかに関する決定は、インフルエンザ流行期のかなり前に行なわれる必要がある。この決定を助ける世界的な精巧かつ高性能な疫学的モニタリングシステムが存在する。加えて、WHOは通常、ワクチンの生産に用いるためのシードウイルスを調製する。
16種類のHAサブタイプおよび9種類のNAサブタイプが公知である。HAおよびNAタンパク質の多くの異なる組合せが可能である。現在はいくつかのインフルエンザAサブタイプ(すなわちH1N1、H1N2およびH3N2)のみが一般的に人々に流布している。他のサブタイプは最も一般的には他の動物種において見出される。たとえば、H7N7およびH3N8ウイルスはウマの病気をもたらし、H3N8はイヌの病気ももたらすことが最近示されている。
トリとヒトとの両方に感染することが公知であるトリインフルエンザAウイルスの3つの著名なサブタイプは、インフルエンザA H5−H5感染、たとえばHPAI H5N1ウイルス、インフルエンザA H7、およびインフルエンザA H9などである。しかし、ヒトに感染して流行またはパンデミックをもたらす次の株は、いずれのサブタイプにも由来し得る。
ウイルスは、たとえば患者のサンプルなどから標準的な方法を用いて得られても、American Type Culture Collection(またはその他のコレクション)、またはウイルスを研究している特定の研究所から得られてもよい。いくつかの実施形態においては、季節性ウイルスおよびパンデミックの可能性のある株を含むウイルスがWHOまたはCDCから得られる。
VI.血清学的応答の検出
ワクチンが血清学的応答を誘導するかどうかを確認する方法も当該技術分野において周知である。たとえば、実験動物に免疫原性化合物/ワクチンを注射して、血清中の抗ウイルス抗体を同定してもよい。ワクチンが保護性であるかどうかを確認する方法は当該技術分野において周知であり、その方法は、実験動物をワクチンで免疫化した後に疾患をもたらすウイルスを接種して、疾患の症状の有無を確認することを含む。
赤血球凝集阻害テストを行なうことによって、赤血球凝集素に対する血清学的応答の存在を確認してもよい。赤血球凝集阻害(hemagglutination inhibition:HAI)アッセイは、たとえばCIV(H3N8)などの公知のインフルエンザサブタイプを用いることによって、シチメンチョウ赤血球(red blood cells:RBCs)によって、すべてのテスト血清サンプルにおいて行なわれてもよい。簡単に述べると、テスト血清の連続的な2倍希釈を、V底96ウェルマイクロタイタープレート中のPBSにおいて行なう。テスト血清を含有するウェルの各々に、4〜8HAU/50μlのCIVを含有する等体積のウイルス懸濁液を加え、プレートを室温にて30分間インキュベートする。次いで、等体積の0.5%シチメンチョウRBC懸濁液を加えた。次いでプレートを室温にて30分間インキュベートし、HAIの結果を読取る。HA阻害を示す血清の最高希釈度の逆数が、テストサンプルのHAIタイターとみなされる。
インフルエンザウイルスに対する抗体の存在を定めるその他の方法には、ノイラミニダーゼ阻害テスト、ウエスタンブロット、ELISA、PCR、およびインフルエンザウイルス抗体の同定に対するその他の方法が含まれる。これらのアッセイは当該技術分野において公知である。
VII.実施例
以下の実施例は、マスターシードの生産のために均一なウイルス集団を生成するための、インフルエンザウイルスの単離、適応および精製の手順を提供する。この実施例はベロ細胞(American Type Culture Collection、CCL81)を用いるが、インフルエンザウイルスを許容するあらゆる細胞型が用いられてもよい。
実施例1:化学薬品および生物学的製剤
使用された感染培地は以下を含有した:1リットルのDMEM(Cambrex、カタログ番号04−096)またはその同等物;2〜7℃にて保存、20mLのL−グルタミン(Cellgro、カタログ番号25−005−CV)またはその同等物;−10℃またはそれ以下にて凍結保存。それは一旦解凍されると2〜7℃にて最長4週間保存され、タイプIXトリプシン(Sigma製品番号T0303、CAS番号9002−07−7)またはその同等物はアリコートされて−5℃から−30℃にて凍結保存された。感染培地は細胞の感染の前に新たに作成された。
細胞培養培地調製は次のとおりであった:1リットルのDMEM、20mLのL−グルタミン、50mLのウシ胎児血清(Gibco、カタログ番号04−4000DK)またはその同等物(注:BSEのない国に由来する)。完全培地は、調製後30日以内の期間2〜7℃にて保存された。
細胞を継代するために用いられたEDTA−トリプシン(Cellgro、カタログ番号98−102−CVまたはその同等物)は−5℃から−30℃にて保存され、使用期限は製造者によって指定された。
実施例2:細胞培養物の調製
ウイルス感染ステップのために用いられるプロテアーゼの希釈度はロットによって変動し得るため、新たなトリプシンロットは使用前に滴定することによって最適レベルを確立した。滴定の一例は、半対数(half log)希釈(10−1、10−1.5、10−2、10−2.5など)を用いて、L−グルタミンを含有するDMEM中でタイプIXトリプシンを連続希釈することである。ベロ細胞の新鮮な集密的単層を有する96ウェルプレートを用いて、プレートの各ウェルを280μLのPBSを用いて2回洗浄する。洗浄の直後に、プレートの行にタイプIXトリプシンの各希釈物を200μL加える。次いでプレートを5%のCOとともに37℃プラスまたはマイナス2℃にてインキュベートし、4日後に細胞を観察する。細胞の健康状態への影響がないかまたはほとんどないトリプシンの最低希釈度が、インフルエンザの単離および感染の最適化の両方に用いるためのトリプシンの適切な濃度として選択される。各濃度の中で接種されたウェル間の変動はほとんどまたはまったくみられないことが望ましく、かつ一般的である。
ベロ細胞におけるウイルスの限界希釈クローニングのために、集密的な単層が用いられ、それは典型的に3〜4日齢であり;96ウェルFalconマイクロテストプレート中で増殖させられた。細胞はATCC CCL81に由来し、継代132から156の間で用いられた。
液体窒素(liquid nitrogen:LN)からのベロ細胞調製は以下のとおりだった:ベロ細胞の1つのアンプルがLNから取出され、36℃プラスまたはマイナス2℃の水浴中で解凍された。バイアルの全内容物を、10%のウシ胎児血清が補われた10mLの細胞培養培地を含有する25cm組織培養フラスコにピペットで移した。フラスコを4〜6%のCO中で36℃プラスまたはマイナス2℃にてインキュベートした。約1時間後、上清および非付着細胞を静かに除去し、10mLの新鮮な組織培養培地が加えられた。90〜100%の集密度に達するまで、細胞を4〜6%のCO中で36℃プラスまたはマイナス2℃にてインキュベートした。
ベロ細胞の継代は次のとおりであった:10〜20mLのPBSを用いて約3分間単層を洗浄した。PBSをデカントし、3mLのEDTA−トリプシン(Cellgro、カタログ番号98−102−CV)で置換して、単層を約3分間、または細胞がフラスコから離れるまでインキュベートした。トリプシンを希釈および中和するための調製増殖培地(FBSを含有する)17mLを加えることによって、懸濁液を希釈した。次いで血球計算器を用いて細胞をカウントすることにより、懸濁液1mL当りの細胞カウントを定めた。この懸濁液を用いて調製可能なフラスコの数は、次のとおりに算出された:1mL(懸濁液)当りの細胞X所望の懸濁液のmL数=各容器に対するプレートのmL数。1mL当りの細胞(所望)を合計すると懸濁液のmL数となり、懸濁液の合計mL数は可能な体積未満である必要がある。そうでなければプレーティング細胞密度を調整してこれに適合させてもよいが、ただし細胞が集密的になるまでの時間の長さはプレーティングにおける細胞密度が低くなるとより長くなる。通常、容器は1mL当り1x10から1x10細胞の細胞密度の細胞懸濁液を用いてプレーティングされた。細胞は3〜4日間、または集密的になるまでインキュベートされた。
ベロ細胞を維持および増殖させるためのこれらの技術は、たとえばマディンダービーイヌ腎臓(MDCK)およびHEK293など、使用された他の細胞系にも同様に適用された。
ウイルス単離体の増殖に特に好適なHEK293細胞をクローニングした。GT−D22(またはD22)と呼ばれるこのHEK293サブクローンは、HEK293細胞(ATCC番号CRL−1573;ATCCバッチ番号F−11285、継代33)の最初の調製物から単離された。HEK293細胞はサブクローニングされ、p53の発現のための遺伝子を有する組換えアデノウイルスタイプ5の生産性の改善に基づいて選択された。正常な形態および適切な増殖速度を有するクローンがトリプシン処理されて、さらなる分析のために1ウェル当り1〜2x10細胞が播種された。最高生成クローンはさらなるサブクローニングおよび選択を受けた。D22サブクローンが最終的に選択された。D22サブクローンのインフルエンザ増殖能力は、ブタインフルエンザウイルス(Swine Influenza Virus:SIV)を用いて示された。
生インフルエンザウイルスを用いて作業するときにはバイオセーフティ上の注意を払った。インフルエンザはクラス2病原体であり、実験室でのウイルスの取扱いに対するCDC−NIH、HHS Publication No.(CDC)88−8395(Biosafety in Microbiological and Biomedical Laboratories)に見出される勧告に従った。
実施例3:限界希釈クローニング
限界希釈クローニングのための希釈管の調製およびサンプル希釈は以下のとおりだった。試験管(12x75mm)をラックに設置してラベル付けした。1プレート当り1サンプルを行ない、各サンプルに対する希釈シリーズは10−1から10−10であった。血清学的ピペットを用いて各試験管に1.8mLの量の希釈培地を分注した。第1の管はウイルス識別によってラベル付けされた。希釈剤対照として用いるため、および希釈実施の際に何らかの間違いがあったときに置換するために、いくつかの付加的な管が調製された。サンプルを約5秒間ボルテックスし、次いで200μLのサンプルを10−1希釈管にピペッティングすることによって最初の希釈を行なった。10−10まで連続的な希釈を続けた。各希釈に対してサンプルをボルテックスし、希釈ごとにピペットチップを交換した。
希釈物を次のようにして細胞プレートに移した。使用の直前に、細胞プレートから培地を無菌的に注いだ。各ウェルを、12チャネルピペッタを用いて280μLの滅菌PBSによって2〜3回リンスした。プレートを無菌的に空にするが、乾かさないようにした。プレートにはウイルス識別、日付および希釈スキームをラベル付けした。各希釈物は、プレートに加える前に簡単にボルテックスした。1000μLのチップを有する電動Finnpipetteまたはその他の適切なピペッタを用いて、ウェル当り200μLのサンプルをプレートの単一行に接種した。サンプルはウイルス濃度に従って載せた。最初に2行の希釈剤対照がプレートに加えられ、その後に最高希釈度のウイルス(10−10)が続き、残りのサンプルが続けられた。サンプルは10−10から10−1まで順番に載せた。
実施例4:ウイルス調製
ウイルスの採取およびCPEは以下のとおり評価された。4日のインキュベーション期間の後に、顕微鏡検査によって細胞変性効果(CPE)を読取った。細胞デブリの存在、死んだ細胞の出現および生存可能な細胞の欠乏はインフルエンザウイルスに対して典型的であるため、これらを用いてCPEを特徴付けた。最初のウイルス希釈物において時々非特異的な干渉が観察されたため、いくつかの希釈物のCPEを調べることが重要だった。CPEを評価するときには、CPEを示す最高希釈度のウェル中のCPEの程度を定めることが重要だった。CPEを示す最高サンプル希釈度のウェルを選択することによって最高レベルの成功が得られたが、これらのウイルスに対しては最小程度のCPEを示す1つまたは複数のウェルを優先させた。一旦選択されると、単一チャネル1000μLピペッタを用いて液体を吸引することによって、ウェルの内容物を採取した。通常、液体を繰り返しピペッティングすることによって、緩く付着した細胞をウェル底から除去し、懸濁液中の細胞またはウイルスのあらゆる凝集塊の破壊を助けた。次いで、採取された液を用いて、限界希釈クローニングの付加的なラウンドを行なうか、または時にはクローニング後のシードの生成のための新鮮な単層への接種を行なった。典型的には、ウイルスの均一な集団を生成するために、即時継続の2から3ラウンドの限界希釈クローニングを行なった。このプロセスの各ステップにおいてHAタイターを分析し、その結果を表1に示す。
A/Indonesia/05/2005(INDOH5N1)、A/Vietnam/1203/04(VNH5N1)、A/New Caledonia/20/99(A/NC/20/99(R))、およびA/Wisconsin/67/05(A/Wis/67/05R)は、CDCによって提供される再集合インフルエンザウイルスである。再集合ウイルスに対しては、表面糖タンパク質HAおよびNAをコードする遺伝子はインフルエンザ株(INDOH5N1、VNH5N1、A/New Caledonia/20/99およびA/Wis/67/05)からのものであるのに対し、残りの内部遺伝子はA/PR/8/34からのものである。野生型(PR8再集合を伴わない)インフルエンザ株A/New Caledonia/20/99(A/NC/20/99)、A/Wisconsin/67/05(A/Wis/67/05)およびB/Malaysis/2506/04にも限界希釈クローニングが適用された。ウイルスは逆遺伝学技術を用いて生成され、孵化鶏卵中で継代された。ベロ細胞における限界希釈クローニングに対しては卵材料が直接的に用いられた(HA滴定に対する手順は実施例5に示される)。
Figure 2010512748
上の表1にみられるとおり、細胞培養系は卵によるものと同程度に高いウイルスタイターを生成できる。加えて、初めはベロ細胞での検出可能な増殖がみられなかったウイルス株、すなわちVNH5N1およびB/Malaysia/2506/04を、限界希釈クローニングによってベロ細胞での増殖に適応させることができた。VNH5N1およびB/Malaysia/2506/04を限界希釈クローニング前に卵の羊膜において増殖させると、これらのウイルスのベロ細胞での増殖に対する適応が高められた。
SRID(Single Radial Immunodiffusion:単一放射状免疫拡散)を用いて赤血球凝集素を定量すると、濃縮ベロ細胞培養培地中のB/Malaysia/2506/04について最高132μg/mLの赤血球凝集素タンパク質が得られた。HA/mL培養物のμgでの収量は、ベロ細胞を用いる公知の公開された方法よりも10倍良かった。現在、ヒトワクチンの用量は約15μg/ウイルス株と同等である。したがって、1mlの濃縮ベロ細胞培養培地から約8〜9用量を得ることができる。
実施例5:羊膜を通じたインフルエンザの継代は、ウイルスが組織培養細胞において増殖できる能力を高める
インフルエンザウイルスVNH5N1−PR8/CDC−RGをCDCから受取った。このウイルスは、PR8ウイルスバックボーンにおけるトリH5N1インフルエンザウイルスのVietnam株からのH5およびN1遺伝子からなる再集合体ウイルスである。このウイルスを、尿膜腔から接種された11日齢の孵化鶏卵において増殖させた。尿膜腔液は接種の2〜3日後に採取され、これは2560赤血球凝集素単位(HAU)/mlのウイルス収量を有した。
尿膜腔液(約200μl)を1.25μg/mlのタイプIXトリプシンを含有する5mLのDMEM中で希釈し、36±2℃にて60分間ベロ細胞(ATCC CCL番号81、継代147)の集密的単層に吸収させた。培養物に1.25μg/mlのタイプIXトリプシンを含有する25mLのDMEMを供給して3日間インキュベートし、培養上清を採取した。採取液においては赤血球凝集素活性は検出できなかった。
ウイルス含有尿膜腔液を1:10,000に希釈し、100μlを11日齢の孵化鶏卵の尿膜腔および羊膜の両方に接種した。卵を約39℃にて3日間インキュベートし、尿膜腔液および羊水を別々に採取した。
ベロ細胞(継代132から152)を、5%のウシ胎児血清を含有するDMEM中で、1x10から1x10細胞/ml、200μl/ウェルにて96ウェルプレートに植え、36±2℃、3〜5%のCOにて3〜4日間(集密的になるまで)インキュベートした。尿膜腔液または羊水中のVNH5N1ウイルスを、1.25μg/mlのタイプIXトリプシンを含有するDMEM中で10−1から10−10まで連続的に希釈した。ベロ細胞から培地を除去し、ウェルを280μlのリン酸緩衝食塩水でリンスし、次いでウイルスの各希釈物200μlを8つの複製(replicate)ウェルに接種した。プレートを36±2℃、3〜5%のCOにて4日間インキュベートした。尿膜腔由来ウイルスの10−7希釈に比べて、羊水由来ウイルスは最高10−9希釈まで細胞変性効果を有することによって証明されるとおり、羊水はベロ細胞においてより高いタイターに増殖するウイルスをもたらした(表2を参照)。細胞変性効果を示す最高希釈度の1つのウェルからのウイルスを採取して、2回目の限界希釈によってクローニングした。再び、羊水由来ウイルスは尿膜腔由来ウイルスに対してみられるものよりも高い希釈度で細胞変性効果を示した(約10倍多いウイルス)。
Figure 2010512748
Figure 2010512748
表2中のインフルエンザクローンは、列表示A−Hおよび行1−10(それぞれ希釈シリーズ10−1から10−10)の組合せに基づいて識別された。たとえば、クローン名B4は、列Bおよび行4(10−4希釈)において見出されるウェルから採取されたウイルスを表わす。
第3の限界希釈から採取されたウイルス(約100μl)を、1.25μg/mlのタイプIXトリプシンを含有する5mLのDMEM中で希釈し、集密的なベロ細胞(継代132〜152)に接種して、36±2℃にて60分間インキュベートした。吸収の後、1.25μg/mlのタイプIXトリプシンを含有する45mLのDMEMを加え、培養物を36±2℃にて4日間インキュベートした。採取された培養上清の赤血球凝集素をテストし、羊膜増殖ウイルスに由来する両方のクローンが、HAの4倍から8倍高い収量をもたらした(表3を参照)。
Figure 2010512748
G9G4C5ウイルスは、その後ローラーボトル(5120HAU/mlが得られた)および5リットルのバイオリアクタ(7680HAU/mlが得られた)中のベロ細胞における増殖によって増加させた。
タイプBインフルエンザウイルスのB/Malaysia/2506/04でも同様の結果が得られた。このウイルスも、尿膜腔液から得られたウイルスをベロ細胞で増殖させたときには測定可能な赤血球凝集素が得られなかった。しかし、羊水増殖に由来するウイルスは、2度の限界希釈クローニング後に640HAU/mlを、5リットルのバイオリアクタにおける増殖の後に5120HAU/mlをもたらした。
実施例6:赤血球凝集素の定量化
この手順の目的は、最終生成物におけるウイルス液中のインフルエンザウイルス赤血球凝集素活性を定量することであった。
使用された材料は以下を含んだ:PBS、Cambrex、517−16Qまたはその同等物、Alsevers溶液、E8085またはその同等物、Alsevers溶液中の新鮮な雄鶏赤血球(1:1の比率)。Alsevers中に一晩置くことによって受容体を安定化させる。2回洗浄し、PBS中の10%懸濁液として、またはAlsevers中の50%懸濁液として保存する。回収から4日以内に使用する、マイクロタイタープレート、Falcon U底プレート、カタログ番号3911またはその同等物、8チャネルマイクロピペット、5〜50μLまたはその同等物、Centrifuge Beckman TJ−6またはその同等物、20〜200μLマイクロピペットまたはその同等物、ディスポーザブル200μLピペットチップ、公知のタイターの正の対照ウイルス、不活性化した抗原。2〜7℃にて保存され、テストの日に現状のまま用いられる。
A.PBS中の標準化0.5%雄鶏赤血球(Rooster Red Blood Cell:rRBC)懸濁液は、最初にrRBC溶液を室温(15〜30℃)に平衡化させることによって調製された。Alsevers中の雄鶏RBCは、回収日から4日間の使用期限を有する。Alsevers中のrRBCの十分な体積を50mLのコニカル遠心管に移した。管の45mLの印までPBSまたはAlseversを満たし、管を数回逆さまにして混合し、次いで400xg、4℃にて10分間遠心分離することによって、rRBCを洗浄した。上清をピペットで除去した。上清に何らかの溶血があるときには、洗浄ステップを最高3回繰り返した。最終洗浄の後、集められた雄鶏RBC0.25mLを49.75mLのPBSに加え、逆さまにして混合した。細胞懸濁液に調製日、使用されたPBSのロット番号、およびPBS中の0.5%雄鶏赤血球であることをラベル付けし、2〜7℃で保存した(最大保存時間は4日間)。
B.サンプル材料をテストするために必要なマイクロタータープレートの数を定めた。すべてのテストサンプルは、各々2行の1:2および1:3希釈スキームを用いてテストされた。2行の1:2希釈スキームの正の対照ウイルスおよび2行のPBS対照も用いられた。その他のサンプルは必要に応じてテストされた。黒の油性マーカを用いてマイクロタイタープレート上の行標識を示した。一例を下の表2に示す。
Figure 2010512748
マイクロタイタープレートの各ウェルに50μLのPBSを加えた。1:3希釈スキームを用いる行およびPBS対照の行のウェル番号1に追加の50μLのPBSを加えた。各マイクロタイタープレートは、次のマイクロタイタープレートに進む前にサンプル添加からrRBCの添加までを完了させた。表示される行のウェル1に50μLのサンプルおよび正の対照ウイルスを加えた。マルチチャネルピペッタを用いて50μLのアリコートを移すことによって、サンプルの連続的な2倍希釈物を調製した。適切なチップを無菌的にマルチチャネルピペッタに押付け、ピペッタが50μLに設定されていることを確認した。材料を最低7回吸上げて放出することによって、1列のウェル内容物を混合した。混合に用いたチップを廃棄した。さらなるチップを押付け、各ウェル中の50μLの材料を次の列のウェルに移した。すべての行が連続的に希釈されるまでこれらのステップを繰り返した。マイクロタイタープレートの行12から50μLを確実に取除いた。マルチチャネルピペッタを用いて各ウェルに50μlの0.5%rRBC懸濁液を送達した。rRBC懸濁液は、最高希釈度のウェルから最低希釈度のウェルへと加えられた。各プレートを穏やかに撹拌して内容物を混合した。最上部のマイクロタイタープレート上に蓋カバーを置き、プレートを積み重ねて室温(約20〜25℃)にて45〜60分間インキュベートした。
インキュベーション期間の後、プレートをマイクロタイタープレートビューアの上に置いて読取り、PBS対照ウェルが許容可能かどうかを判断した(PBSウェルはいかなる赤血球凝集も示すべきではない)。その特徴も定めた。rRBCは、シールドを有さない完全なボタンとして沈降したはずである。シールド反応とはrRBCの分散である。PBS対照ウェルが許容可能であれば、他のウェルの赤血球凝集をスコア付けした。PBS対照ウェルが許容可能でなければこのテストは無効であり、テストを繰り返した。赤血球凝集の結果は、赤血球凝集に対して陽性(+)、部分的(+/−)および陰性(0)として記録した。陽性反応はrRBCの完全なシールドまたは細胞の全体的な分散を示した。陰性反応はrRBCによって形成される全体的なボタンを示した。「+/−」を示したウェルは、エンドポイント算出の目的のために陰性とみなした。各希釈度(すなわち1:2および1:3)の複製の各々に対して、凝集(ボタンなし)が起こった最高希釈度を識別し、完全な凝集を示す最終希釈度の逆数としてタイターを計算した。テストされたサンプルおよび正の対照ウイルスのタイターレベルを識別した。重複希釈の各組のエンドポイントタイターの演算的平均値を定めた。0.5mL(50μL)のサンプル、PBSおよび正の対照ウイルス当りのHA単位も定めた。0.05mLの値に20を掛けることによって、1mL当りのHA単位を算出した。
算出は以下のとおりに行なわれた:1:2および1:3テストサンプル希釈物の各々に対し、重複物の演算的平均値を記録した。最高タイターを記録した。HA/0.05mLx20=HA/1mLを乗算した。オフテスト日付、および1mL(ウイルス液)当りのHA単位または用量(最終生成物)当りのHA単位としての結果を記録した。バルクまたは最終生成物に対する妥当性テストは、最低希釈度における完全な凝集(ボタンなし)と、最高希釈度における凝集なし(ボタン)とを含む。正の対照ロットは確立された範囲内にあるべきである。列挙されるパラメータの外側のタイター範囲は「テストなし」または無効テストを構成し、偏りなしで繰り返される必要がある。
実施例7:ワクチンの生産
ウイルス株は、WHO、CDCまたはその他の政府機関によって指定されたパンデミック株または季節性株である。ヒトワクチン製造プロセスの確認の目的のために、CDCによって提供されるインフルエンザウイルス再集合体VNH5N1−PR8/CDC−RG参照株が用いられる。ワクチン調製の希釈剤としてリン酸緩衝食塩水が、アジュバントとしてISCOMが用いられる。コレステロールとホスファチジルコリンとの同等部分の脂質混合物を用いて、ISCOM形成における親水性/疎水性複合化プロセスを助ける。ウイルスを破壊するために用いられる非イオン性界面活性剤は、ダイアフィルトレーションによって除去される。ISCOMの形成は電子顕微鏡法によって確認される。バイナリエチレンイミン(BEI)を用いてウイルスが不活性化され、次いでBEIはチオ硫酸ナトリウムによって中和される。このプロセスを以下のステップ1〜19においてより詳細に示す。
インフルエンザ株はベロ(アフリカミドリザル腎臓)細胞において生成され、アジリジン化合物バイナリエチレンイミン(BEI)によって不活性化され、濃縮され、ろ過およびゲルクロマトグラフィによって精製される。ウイルスはQuil Aおよび脂質混合物とともにアジュバントに配合されて、薬物産物が作成される。
ステージ1A−ベロ細胞をワーキングセルバンク(Working Cell Bank:WCB)から回復させる。継代数はマスターセルバンク(Master Cell Bank:MCB)から20継代に制限される。液体窒素中のWCBから1つのアンプルを解凍し、(典型的には)25cmのNuncフラスコ中の、20%v/vのニュージーランドまたはオーストラリア由来の照射ウシ胎児血清、4mMのL−グルタミンを含有するダルベッコ改変最小必須培地(Dulbecco’s Modified Minimum Essential medium:DMEM)中に、4〜5x10細胞/cmにて播種する。フラスコを36℃プラスまたはマイナス2℃でインキュベートし、約1時間後に上清および未付着の細胞を除去し、フラスコに新鮮な培地を再供給して以前と同様にインキュベートする。
ステージ2A−トリプシン/EDTA溶液を用いて集密的な単層を採取し、細胞をより静的なフラスコまたはローラーボトルに再び植えることによって、細胞の増殖を継続させる。20〜30g/Lにおけるマイクロキャリアの使用によってバイオリアクタ中でさらなる増殖が行なわれてもよい。
ステージ3A−バイオリアクタまたはローラーボトルのいずれかの中で培養基の所望の生成体積が達成されるとき、細胞をダルベッコ改変最小必須培地(DMEM)で2回洗浄して、感染培地中でトリプシンを不活性化する残余の血清を除去する。
ステージ1B−大規模な製造に先立って、ワーキングウイルスシード(Working Virus Seed:WVS)を別個に調製して凍結する。−70℃で保存されるマスターシードウイルスまたはワーキングシードウイルス(MSV+1)を解凍し、タイプIXブタトリプシンを含有するウイルス感染培地中で希釈して、所望のMOIを得る。ローラーボトルまたはバイオリアクタ中の集密的なベロ細胞単層に予め定められた体積を接種し、36℃プラスまたはマイナス2.0℃にて典型的には40〜72時間インキュベートするとき、最高100%の細胞変性効果(CPE)が確認される。ウイルスは採取されて−50℃またはそれ以下で凍結される。
ステージ4−ワーキングシードウイルス(継代MSV+2以下)を解凍し、0.5〜5.0μg/mLのタイプIXブタトリプシンを含有するウイルス感染培地中で希釈して、所望の感染多重度を得る。培地中でトリプシンを使用することによって、ウイルスの細胞への付着および侵入を助ける。
ステージ4A−バイオリアクタを用いたインフルエンザウイルスの生成。5リットルのバイオリアクタを、30g/Lの密度のSoloHill Plastic Plusマイクロキャリアとともに調製した。バイオリアクタの、5%v/vのニュージーランドまたはオーストラリア由来の照射ウシ胎児血清、4mMのL−グルタミンを含有するダルベッコ改変最小必須培地に、2x10ベロ細胞/mLを植え、36℃プラスまたはマイナス2℃でインキュベートした。細胞集密度が80〜100%に達した後、ベロ細胞を含有するマイクロキャリアを沈降させて、1洗浄当り2リットルの無血清DMEMによって2回洗浄した。2.5μg/mLのトリプシンIXを含有する感染培地をバイオリアクタに加えた。たとえばVNH5N1などのウイルスシードも0.0001〜0.0003のMOIでバイオリアクタに加えた。ウイルスの調製を5日間続けた。CPE観察およびHA滴定のためにバイオリアクタを毎日サンプリングした。80〜100%CPEが達成された後にウイルスを採取した。
ステージ5−採取したウイルスにバイナリエチレンイミン(BEI)を加えて1.5mMの最終濃度を与え、pH7.3プラスまたはマイナス0.3で36℃プラスまたはマイナス2℃にて(撹拌しながら)1時間保持する。
ステージ6−ステージ5の完了後、採取物を第2の容器に移し、不活性化プロセスを36℃±2℃にて(撹拌しながら)48時間続ける。この時間後にチオ硫酸ナトリウムを最終濃度3mMになるように加えて、あらゆる残余BEIを中和する。
ステージ7−7μおよび1μフィルタを通じて培養物を澄ませ、無害のクリアランスまで2℃〜8℃で保存する。無害テストの実施には10日間かかる。
ステージ8−接線流限外ろ過系を用いて、100Kの分子量カットオフ(molecular weight cut off:MWCO)を有するポリスルホン膜を用いて抗原を濃縮する。最高約50倍の濃縮物が得られる。
ステージ9−結果的に得られる濃縮培養液を適切な緩衝液で平衡化し、DNアーゼ(Benzonase)で処理することによって細胞DNAを分解する。
ステージ10−サイズ排除ゲルクロマトグラフィを用いて濃縮物を精製する。現在用いられるゲルは架橋Sepharose(CL−2B、Pharmacia)である。必要な分離を達成するために、カラムの長さは90cmである。CL−2Bは支持のためにカラムの壁に依存する「ソフト」ゲルである。典型的には、この90cmの長さは連続する2x45cmまたは3x30cmのカラム(例、高さ30〜32cm掛ける直径30cm)によって達成される。濃縮されたウイルスはカラム体積の約5〜7%で適用される。
ステージ11−100K MWCOポリスルホン膜によるベンチスケールの接線流限外ろ過系を用いて、ウイルスピーク材料を再濃縮する。
ステージ12−5mlの10%(w/v)界面活性剤(ノナノイル−N−メチルグルカミド)Mega9溶液を200mlの抗原溶液に加えることによって、再濃縮ウイルスピーク材料を可溶化する。この溶液を、ガラス容器中で20〜25℃にて1時間、マグネチックスターラーバーによってゆっくり混合する。
ステージ13−20mLの再濃縮ウイルスピーク当り50μlの脂質混合物を加える。脂質混合物は各10mg/mLの卵由来ホスファチジルコリンおよびコレステロールを含有する。20〜25℃にて撹拌を続けることによって、再濃縮ウイルスにおける脂質の均一な分布を確実にする。(10%w/v保存溶液からの)Quil Aを加えて0.05%の最終濃度にする。溶液を20〜25℃にて約30分間撹拌する。
ステージ14−50mMの酢酸アンモニウムによるダイアフィルトレーションによって、この混合物からMega9界面活性剤を除去する(ISCOMを形成させるため)。これは100K MWCOポリスルホン膜によるベンチスケールの接線流限外ろ過系を用いて行なわれる。使用される酢酸アンモニウムの体積は、再濃縮ウイルスピーク混合物の体積の最低約10倍である。ダイアフィルトレーションは、供給流と透過流とのバランスを取ることによってずっと一定の体積を維持することによってもたらされる。界面活性剤はISCOMの形成を妨げる。電子顕微鏡法によって、典型的なケージ様の構造が形成されたことが確認される。
ステージ15−ダイアフィルトレーションの最終ステップとしてISCOMが再濃縮される。
ステージ16−十分なQC放出の後、ISCOMのバッチを配合して、1mLの用量当り1μgから20μgのヒトインフルエンザHAのワクチンを作成する。希釈剤としてリン酸緩衝食塩水(PBS)が用いられる。
ステージ17−調合されたワクチンを、クラスA条件下で単一用量の最終容器に充填する。無菌性、実験動物種における安全性、抽出可能な体積および視覚的外観のために、サンプルが取られる。ワクチンはラベル付けされ、包装されて、2℃から7℃にて隔離して保持される。
ステージ18−最終QAクリアランスの後、生成物は発送まで完成品の冷蔵倉庫(2℃から7℃)に放出される。
実施例8:フェレットにおけるベロ細胞由来ワクチンの効力
ベロ由来インフルエンザワクチンがフェレットを血清変換する能力を評価した。2006−2007流行期のインフルエンザ株(A/NC/20/99、A/Wis/67/05、どちらもPR8再集合、およびB/Malaysia、すべてCDCから得られた)に基づく3価のヒトインフルエンザワクチンを、限界希釈クローニング後にベロ細胞において生産した。その結果得られたワクチン、ISCOMアジュバントを有するかまたは有さない「SPflu0607」を、4〜6月齢のメスのフェレットの左の後脚に注射した。対照比較として、商業的に入手可能なヒトインフルエンザワクチンのFluzone(登録商標)(Sanofi−Pasteurによって製造される)およびFluvirin(登録商標)(Chironによって製造される)をSPflu0607とともにテストした。単一放射状免疫拡散(SRID)を用いてワクチン中の赤血球凝集素(HA)タンパク質の量を測定した。フェレットの血清変換を赤血球凝集素阻害(HI)によって測定した。1:40より大きいかまたはそれに等しいHIタイターを陽性とみなす。表3を参照。
Figure 2010512748
上記の結果は、ベロ細胞由来ワクチンが商業的に入手可能な卵由来ワクチンに匹敵するものであることを示す。
実施例9:CIVワクチンを調製するためのイヌインフルエンザウイルス増殖の方法
病気のイヌの鼻分泌物からイヌインフルエンザを単離した。鼻スワブを取って、ゲンタマイシンおよびアンホテリシンを含有する2mLの組織培養培地に入れた。その結果得られるスワブ材料0.8mLを、1.3μg/mLのタイプIXトリプシンを含有する10mLのDMEM組織培養培地中の集密的なマディンダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞に接種して、36±2℃にて2日間インキュベートした。培地をデカントすることによってフラスコを採取し、ウイルスは標準的な抗血清を用いて国立獣医学研究所(National Veterinary Services laboratory)によってH3N8と同定された。MDCK継代ウイルスは1ml当り160赤血球凝集素単位を含有した。96ウェルプレート中の集密的なMDCK細胞に10倍連続希釈物を接種し、細胞変性効果を示す最高希釈度の単一ウェルを採取することによって、ウイルスをクローニングした(組織培養培地は1.3μg/mLのタイプIXトリプシンを含有するDMEMであった)。この手順をもう一度繰り返した。次いで、このクローンを75cmフラスコ中のMDCK細胞において増殖させた。その結果得られたウイルス(継代4)は、1ml当り640赤血球凝集素単位を得た。次いで、0.8μg/mLのタイプIXトリプシンを含有する300mLのDMEMを用いて1050cmのローラーボトル中の集密的な単層に0.23MOIを接種することによって、このウイルスをマディンダービーウシ腎臓細胞において継代した。ローラーボトルを36±2℃にて3日間インキュベートした。採取されたウイルスは2560HAU/mlを得た。MDBK細胞におけるHAの収量が増加していることから、ワクチン調製のためのウイルスのスケールアップに対して、この細胞系が選択された。ウイルスはバイオリアクタ中で増殖された。5Lのバイオリアクタに、1リットル当り5グラムのCytodex IIIマイクロキャリアに付着した3.0x10細胞/mLのMDBK細胞を播種した。抗生物質を含まない5%のウシ胎児血清を含有するDMEM中で、細胞を36±2℃にて4日間増殖させた。マイクロキャリアを沈降させた後、90%の培地を除去して無血清DMEMで置換した。タイプIXトリプシンを、最終5,000mLの中に10μg/mLの濃度になるように加えた。0.01のMOIでウイルスを細胞に感染させた。マイクロキャリア上のMDBK細胞とともにウイルスを36±2℃にて2日間インキュベートし、次いで上清を採取した。その結果得られたウイルスは10,240HAU/mlをもたらした。
実施例10:卵中での継代のない臨床的単離体の限界希釈クローニングは均一な集団を生成し、TCID50/mLおよびHAタイターを改善する
イヌインフルエンザウイルスH3N8(野生型)を診断研究所から受取り、鼻スワブから単離した。受取ってすぐに鼻スワブを処理し、MDCK細胞の集密的な単層を含有する25cmのフラスコへの接種に用いた。感染培地は以下を含んだ:DMEM、4mMのL−グルタミン/ml、1.3μg/mLのタイプIX、およびゲンタマイシン。フラスコを3〜5%のCOとともに36±2℃にてインキュベートし、CPEが始まったときに採取した。採取液においてHAアッセイを行なった結果、160HAU/mlおよび7.94のTCID50/mlタイターが得られた。
MDCK細胞を、5%のウシ胎児血清を含有するDMEM中で、1x10から1x10細胞/ml、200μl/ウェルにて96ウェルプレートに植え、36±2℃、3〜5%のCOにて3〜4日間(集密的になるまで)インキュベートした。CIV H3N8ウイルスを、「限界希釈ラウンド1」の部分に規定されるとおりに希釈した。希釈は、1.3μg/mlのタイプIXトリプシン、4mMのL−グルタミン、およびゲンタマイシンを含有するDMEMにおいて行なった。MDCK細胞から培地を除去し、280μlのリン酸緩衝食塩水でウェルをリンスし、次いでウイルスの各希釈物200μlを8つの複製ウェルに接種した。プレートを36±2℃、3〜5%のCOで4日間インキュベートした。2ラウンドの限界希釈クローニングを行ない、限界希釈ラウンド2は限界希釈ラウンド1の直後に行なった。このプロセスは、より高いTCID50/mlおよび赤血球凝集タイターの両方を生成するウイルス単離体をもたらした。最低程度の細胞変性効果を示すものの中でより高い希釈度のウェルからのウイルスを採取して、2回目の限界希釈によってクローニングした。
限界希釈ラウンド1
継代1材料を定量した結果、7.5TCID50/mlが得られた。この値を用いてウイルスを希釈して5サンプルを得た。
A.10−4
B.10−5
C.10ウイルス粒子/ウェル(10−6.5
D.3ウイルス粒子/ウェル(10−7.02
E.1ウイルス粒子/ウェル(10−7.5
Figure 2010512748
限界希釈クローニングのラウンド2のためにウェルA11を採取した。
限界希釈ラウンド2
Figure 2010512748
ウェルA5からのウイルスを採取
限界希釈クローニングの第2ラウンドから採取されたウイルス(約200μl)を用いて、MDCK細胞の集密的な単層および以下を補ったDMEMを含有する75cmのフラスコに接種した;1.3μg/mlのタイプIXトリプシン、4mMのL−グルタミン/ml、および25μg/mlのゲンタマイシン。採取された培養上清を滴定してTCID50/mlおよび赤血球凝集タイターを定めた(表4を参照)。
Figure 2010512748
免疫原性試験のために行なわれた研究室実験において、ウイルスは5Lのバイオリアクタ中のMDBK細胞において増殖させられ、その結果10,240HAU/mlの赤血球凝集タイターが得られた。
実施例11:不活性化イヌインフルエンザワクチンのイヌにおける効力
イヌインフルエンザウイルス(CIV)血清型H3N8は、イヌにおける重度の呼吸器疾患の原因となる。しかし、現在利用可能なCIVに対する有効なワクチンはない。この研究の目的は、限界希釈および組織培養細胞におけるCIVの増殖によって調製された不活性化CIVワクチンが、病原性CIVの攻撃によって誘導される臨床的疾患および肺病変を防ぐ効力を評価することである。ワクチンは、Emunade(登録商標)アジュバントが補われたバイナリエチレンイミン(BEI)不活性化CIV抗原からなり、その抗原投与レベルは用量当り500赤血球凝集単位(HAU)である。8匹の7週齢のCIV血清陰性のイヌ群にワクチンを筋内接種し、最初のワクチンの21日後に追加用量を投与した。ワクチン未接種のものはイヌにおけるワクチンによって免疫応答の刺激を示したのに比べて、ワクチン接種したイヌは、追加ワクチン接種の2週間後にそれより有意に高いレベルのHA阻害抗体タイターを示した。ワクチン未接種の対照およびワクチン接種したイヌを、追加ワクチン接種の16日後に非相同の病原性CIV単離体で攻撃し、臨床的徴候、直腸温および鼻のCIV脱落を攻撃後の10日間毎日モニタした。すべての対照イヌ(100%)は、眼および鼻の分泌物、くしゃみならびに咳を含む臨床的徴候を起こして、攻撃ウイルスの病原性を示した。ワクチン接種群は対照群(中央値スコア=6.8;p=0.0051)に比べて有意に低い臨床的徴候を示した(中央値スコア=4.3)。ワクチン接種群のイヌのうちの1匹(12.5%)だけが1日だけ鼻のCIV脱落を示したのに対し、対照群のすべてのイヌ(100%)がワクチン接種のもの(p=0.0003)よりも有意に高いウイルス脱落を有した。ウイルス脱落は対照群における攻撃後7日間続いた。攻撃の10日後にすべてのイヌを安楽死させて、肺病変の評価のために検死を行なった。対照群のすべてのイヌ(100%)がさまざまな程度の肺硬化を示したのに対し、ワクチン接種群では1匹(12.5%)だけが軽い肺硬化を示した。肺スコアはワクチン接種されたイヌ(中央値スコア=0;p=0.0005)に比べて対照イヌ(中央値スコア=4.9)の方が有意に高かった。これらの結果は、この研究においてテストされたワクチン配合物が、臨床的徴候を有意に減少させ、ウイルスの脱落を低減させ、CIVが誘導する肺硬化を防ぐことによって、CIV感染からイヌを保護することを明解に示す。
研究の概要
この研究の目的は、Emunade(登録商標)をアジュバントとしたCIVワクチン配合物が、イヌにおけるCIV攻撃を防ぐ効力をテストすることであった。
最初にイヌを8日間新しい環境に慣れさせた。テスト群に対して、第1のワクチン接種をday 0に行ない、追加接種をday 21に与えた。対照群にはワクチン接種をしなかった。day 37に両方の群にCIVによる攻撃を与えた。この研究の全体を通じて、以下に記載するとおりにイヌをモニタして観察した。攻撃の10日後にイヌを安楽死させて検死を行なった。
実験動物
実験動物はday 0において平均48.25日齢であった。8匹のイヌが対照群に、8匹のイヌがテスト群にいた。平均体重は1.8kgだった。研究に用いられたイヌには呼吸感染症またはCIVワクチン接種の履歴はなかった。これらのイヌがCIV抗体に対して陰性である(HAタイター<10)ことを確認するために、day −1に血液サンプルを回収して、赤血球凝集阻害アッセイによってテストした。day −1に鼻スワブも取って、ワクチン接種の時点でイヌがCIVを有していないことを確認した。
ワクチン接種前のモニタリング
第1のワクチンの投与の前日に、排気した血清分離管中にすべてのイヌから血液サンプルを回収して、それらのイヌがCIV抗体に対して陰性であることを確認した。同じ日に鼻スワブを取って、イヌがCIVを有していないことを確認した。
第1のワクチン投与の2日前に、イヌの理学的診断によってイヌの全体的な健康状態を評価した。臨床的評価および直腸温は第1のワクチン投与および追加ワクチン投与の2日前からワクチン投与の日まで行なった。
ワクチン投与
この研究には、イヌインフルエンザウイルスワクチンCIV H3N8−Emunade(登録商標)が用いられた。最初に、重度の呼吸器疾患のイヌからイヌインフルエンザウイルス(H3N8)を単離した。マディンダービーウシ腎臓(MDBK)−KC細胞のMCS+19継代レベルのもの、すなわちマスター細胞ストック(Master Cell Stock)の19継代後のものを用いてCIV H3N8を増殖させた。次いで、6mMのBEIによって36℃にて60時間ウイルスを不活性化させた。60mMのチオ硫酸ナトリウムによってBEIを中和した。
この研究に対するワクチンは800mLのストックが調製されて、800個の1mL用量にアリコートされた。800mLの溶液は表5に示されるとおりに調製した。
Figure 2010512748
不活性化CIV H3N8ウイルスを生理食塩水で希釈し、次いで水酸化アルミニウムをアジュバントとして加えた。水相の残りの成分をアジュバント抗原に加えた。油相は別に調製してから10分間にわたって水相に加え、1時間継続的に混合した。Silversonホモジナイザを用いて30分間この連続物を均質化した。
2〜7℃にて保存されていたCIVワクチンバイアルを最低30分間室温に平衡化させた。ワクチンを3mLの注射器に(注射器当り1mL)装填して免疫化に用いた。第1用量のワクチンをday 0に右の後脚に筋内投与し、第2用量をday 21に左の後脚に筋内投与した。
ワクチン投与後の手順
各ワクチン投与の3〜6時間以内に、すべてのイヌに対して直腸温および注射部位の観察を含む完全な臨床的評価を行なうことにより、あらゆる即時型反応を測定した。臨床的評価は各ワクチン投与後の7日間毎日続けられ、以下の臨床的評価ガイド(Clinical Assessment Guide)に従ってスコア付けされた。研究日day 20およびday 36にイヌから血を採り、血清サンプルを用いて赤血球凝集阻害によってCIV抗体を測定した。
攻撃前の手順
攻撃投与の前に、攻撃前の2日間(day 35およびday 36)および攻撃の日(day 37)にすべてのイヌに対する臨床的評価を行ない、直腸温を記録した。臨床的評価ガイドに従って臨床的徴候をスコア付けした。
攻撃
攻撃材料:MDCK細胞から単離された、ワクチン接種されたイヌへの攻撃に用いられるCIV14−06Aウイルスは、元々イヌ呼吸器疾患に罹ったイヌから回収されたフィールドサンプルから単離された。攻撃ウイルスの平均タイターは7.7Log10TCID50/mLだった。攻撃の当日、滅菌した低温のダルベッコ最小必須培地(DMEM)中で攻撃材料を1:4に希釈して、イヌ1匹当り7.4Log10TCID50の攻撃用量を目標とした。
攻撃投与:すべてのイヌはday 37に攻撃投与された。4匹のイヌをPlexiglasチャンバに入れ、8mLの攻撃ウイルス(2mL/イヌ)を用いて約20分間にわたりエアロゾルを生成した。イヌは合計40分間エアロゾルに露出された。
攻撃後のモニタリング
攻撃後の10日間毎日、各イヌに対して直腸温を記録し、臨床的評価を行なった。攻撃後の10日間毎日、各イヌから鼻スワブを回収した。本明細書に記載されるとおり、各回収の後に毎日鼻スワブを処理して滴定した。攻撃の10日後、安楽死の直前に、真空血清分離管中に血液サンプルを回収した。
検死
攻撃を受けたすべてのイヌは、AVMA認可の方法(ケタミンカクテルおよびBeuthanasia−D)を用いて攻撃後のday 10(Day 47)に安楽死させ、検死を行なった。安楽死の直後に肺を評価した。可視硬化の範囲を評価し、各肺葉の硬化のパーセントとしてスコア付けした。このパーセンテージを加重スコアに変換し、各イヌに対する合計スコアを算出した。検視の際に、ウイルスの単離および滴定のため、ならびに組織病理学のために肺組織を回収した。
ウイルス滴定
ウイルスタイターのために赤血球凝集(HA)アッセイを行なった。ウイルスをV底マイクロタイタープレートにおいて連続的に2倍希釈し、このウイルス懸濁液に等体積の0.5%シチメンチョウ赤血球(RBC)懸濁液を加えた。プレートを室温にて30分間インキュベートし、HAの結果を読取った。HA活性を示すウイルスの最高希釈度を1HA単位とみなした。すべてのアッセイを重複して行ない、エンドポイントHAタイターを測定した。
攻撃材料の能力を確認し、攻撃投与されたイヌにおけるウイルス脱落を測定するために、MDCK細胞における滴定によって、攻撃材料、鼻スワブおよび肺組織中のウイルスタイターを定めた。MDCK細胞を96ウェル組織培養プレートに2日間播種し、連続的に10倍希釈されたウイルス懸濁液または肺組織および鼻スワブから調製されたサンプルを接種した。プレートを36±2℃の温度および5%のCOにおいてインキュベートした。感染の7日後にプレートの細胞変性効果(CPE)を観察し、感染性に対する50%エンドポイントをSpearman−Karber法を用いて算出した。ウイルスタイターはLog10TCID50/mLとして表わされた。
血清学的応答の検出
イヌ血清サンプルにおけるCIVの抗体を赤血球凝集阻害(HAI)アッセイによって測定した。簡単に述べると、テスト血清の連続的な2倍希釈を、V底96ウェルマイクロタイタープレート中のPBSにおいて行なった。テスト血清を含有する各ウェルに、4〜8HAUのCIV25−06Bを含有する等体積のウイルス懸濁液を加え、プレートを室温にて30分間インキュベートして抗原−抗体反応を起こした。次いで、等体積の0.5%シチメンチョウRBC懸濁液を加えた。プレートを室温にて30分間インキュベートし、HAIの結果を読取った。HA阻害を示す血清の最高希釈度の逆数が、テストサンプルのHAIタイターとみなされた。すべてのアッセイを重複して行ない、エンドポイントHAIタイターを定めた。
結果:臨床スコア
攻撃の2日前から攻撃の10日後までの毎日、すべてのイヌの眼の分泌物、鼻の分泌物、くしゃみ、咳、呼吸困難および抑うつを含む臨床的徴候がモニタされた。攻撃後の10日間に対する眼の分泌物、鼻の分泌物、くしゃみ、咳、抑うつおよび呼吸困難に対する毎日の臨床スコアを合計して、各イヌに対する合計臨床スコアを得た。ワクチン接種群および対照群に対する合計臨床スコアを、ウィルコクソン精密順位和検定(Wilcoxon Exact Rank Sum tests)を用いて比較し、両側p値を算出した。
対照群およびワクチン接種群の両方のイヌが、攻撃の2日後から臨床的徴候の範囲を示し始めた(図1)。対照群の8匹のイヌすべて(100%)が、攻撃後の10日間の観察期間内に最高5日間続くさまざまな程度の咳を示した。他方、ワクチン接種群では2匹のイヌ(25%)のみが軽い咳を示し、それは10日間の攻撃後の期間全体のうち1日しか観察されなかった。咳は対照群のイヌによって示される支配的な徴候であった。それに対し、ワクチン接種群によって示された支配的な臨床的徴候は、軽度の眼の分泌物のみであった。臨床スコアは、ワクチン接種されたイヌ(中央値スコア=4.3)よりも対照群(中央値スコア=6.8)において有意に高かった(p=0.0051)。これらのデータは、CIVワクチンが、CIVで誘導される臨床的徴候からイヌを守ることを示唆する。
結果:鼻のウイルス脱落
攻撃の1日前(day−1)および攻撃後のday 1からday 10までの毎日鼻スワブを回収および処理することによって、すべてのイヌにおける鼻のウイルス脱落をモニタした。鼻スワブのウイルスタイター(Log10TCID50/mL)を定めて、時間に対してプロットした。ウィルコクソン精密順位和検定を用いて対照群およびワクチン接種群の曲線下面積を比較した。Log10TCID50/mLとして表わされる各群に対する平均ウイルスタイターを、攻撃後の日数に対してプロットした(図2)。
対照群は、攻撃後のday 1から鼻分泌物中のウイルスの脱落を開始した。ウイルス脱落は攻撃後のday 5にピークに達し(1.25Log10TCID50/mL)、その後day 7に急落した(図2)。対照群のすべてのイヌ(100%)は、攻撃後の10日間の観察中の1つまたはそれ以上の時点においてウイルス脱落に対して陽性だった。他方、ワクチン接種群では1匹のイヌ(12.5%)のみ(ID No CXTAMM)が、1日だけ(day 3)鼻分泌物中にウイルスを脱落させた。ワクチン未接種の対照イヌは、ワクチン接種されたイヌ(p=0.0003)に比べて有意に高い鼻ウイルス脱落を示した。これらの結果は、CIVワクチンがワクチン接種されたイヌによる鼻ウイルス脱落を有意に阻害することを明らかに示す。
結果:血清学的応答
一次ワクチン接種および追加ワクチン接種の後に、HAIアッセイからの幾何学的平均抗体タイター(GMT)を算出した。免疫化間のタイターの増加の倍数を報告した。ウィルコクソン精密順位和検定を用いて、対照群およびワクチン接種群の間の抗体タイターを比較した。この研究において登録される16匹のイヌはすべて、一次ワクチン接種の時点では健康かつ血清陰性(すなわちCIV抗体に対して陰性)(HAIタイター<10)だった。ワクチン接種の前日(Day−1)に回収された鼻スワブから、これらのイヌには鼻のCIV脱落はないことが確認された。対照イヌは攻撃のときにも血清陰性のままだった。
HAI抗体タイターを表にして、対照群およびワクチン接種群の間で比較した。すべてのワクチン接種されたイヌは、第1のワクチン接種後にかなりのレベルの抗体タイターを生じた。HAI抗体タイターはGMT22を有して10から40の範囲であり、このタイターは対照のイヌに比べて有意であった(p=0.0070)。第2のワクチン接種は抗体タイターを6倍高くし(GMT=135)、これは対照よりも有意に高かった(p=0.0002)。抗体タイターは80から160の範囲であり、ほとんどのイヌがHAIタイター160を示した(75%)。すべての対照イヌは攻撃のときまでCIV抗体を有さないままだった(HAIタイター<10)。攻撃後のワクチン接種されたイヌにおける抗体タイターは非常に高レベルに達し(GMT=546)、これはワクチンが病原性CIVに対する免疫系を引起す効力を示している。これらのイヌにおけるHAIタイターは120から1920の範囲だった。ワクチン未接種の対照もCIV攻撃の後に抗体を作成し、そのGMTは149であった。
結果:肺硬化、ウイルス分離および組織病理学
肺硬化/肺炎は、すべてのインフルエンザ感染における主要な病理学的病変である。攻撃モデルの開発に対する過去の研究において、我々は攻撃の6日および14日後にイヌにおける重度の肺硬化を観察した。したがって、CIVワクチンがCIVの誘導する肺硬化を防ぐかどうかを評価するために、対照群およびワクチン接種群のすべてのイヌを攻撃の10日後に安楽死させて検死を行なった。肺病変を評価し、各肺葉の硬化のパーセントとしてスコア付けした。検死の際にスコア付けされた各肺葉の硬化のパーセントを、イヌに対する肺スコアリングシステム(Diseases of the Swine(1999)、第8版、Ch.61、p.913−940におけるブタインフルエンザウイルス肺スコアリングシステムと同様)に基づいて加重スコアに変換した。ウィルコクソン精密順位和検定を用いて、ワクチン接種群および対照群に対する中央肺スコアを比較し、両側p値を報告した。対照に対するワクチン効率の軽減したフラクション推定およびその推定に対する95%の信頼空間も報告した。
対照群のすべてのイヌ(100%)がさまざまな程度の肺硬化を示したのに対し、ワクチン接種群では1匹のイヌのみが軽い肺硬化を示した(12.5%)。ワクチン未接種の対照イヌにおける肺病変は、出血および赤みがかった硬化ならびに肝変を特徴とした。対照群の肺スコアは0.10から14.70の範囲であり、その中央肺スコアは4.9だった。対照群の肺スコアはワクチン接種群の肺スコアよりも有意に高かった(p=0.0005;軽減フラクション推定は93.5%)。この肺スコアは、この研究において用いられるCIVワクチン配合物がイヌをCIVに誘導される肺硬化から守ることを明解に示す。
検視の際に病変部をスコア付けすることに加えて、肺組織も無菌的に回収してウイルスを単離し、かつ組織病理学のためにホルマリンに入れた。ワクチン接種されたイヌおよび対照イヌのどちらの肺組織サンプルにおいてもCIVは検出できず、これは鼻のウイルス脱落がなかったことと相関した。インフルエンザウイルスは急性感染症をもたらし、そのウイルス脱落および臨床的徴候のピークは最初の7日以内であることから、この結果は予想されていた。ウイルスは感染の10日後までに肺組織から完全に排除された。これらの結果は過去の研究の結果と一致している。組織病理学的検査では、対照イヌおよびワクチン接種されたイヌからの肺組織における炎症を示唆するさまざまな程度の組織病理学的変化が示された。この結果は予想外ではなかった。なぜならあらゆる病原体に対する免疫応答は、たとえ病原体特異的免疫が存在していてもある程度の炎症応答を誘導すると考えられるためである。さらに、この組織は肺病変を有する範囲から選択的に回収されていないため、対照イヌおよびワクチン接種されたイヌにおける組織病理学的肺病変部の重症度を比較することはできなかった。したがってこの研究においては、ワクチンの効力を評価するための基準として組織病理学を用いることはできなかった。
結論
ワクチン接種は、第1(GMT=22)および第2のワクチン接種(GMT=135)に続くHAIアッセイによって定められるとおり、有意に高い抗体応答を誘導し、ワクチンによる免疫応答の刺激を示した。
ワクチンは、イヌ1匹当り500HAUの用量において、CIVにより誘導される臨床的徴候、特に咳を有意に減少させ、CIVにより誘導される臨床的疾患の制御にワクチンが有効であることを示した。
ワクチンは、ワクチン接種されたイヌにおける鼻のウイルス脱落を有意に低減させ、これはワクチンが感染症を低減させる効力を示した。
ワクチンは、CIVにより誘導される肺硬化からイヌを保護することに成功し、最も重症な臨床的結果である肺炎に対するワクチンの効果を証明した。
ワクチンは、イヌにおいて主要な有害反応をもたらすことはなく、ワクチンの安全性を示した。
臨床的評価ガイド
鼻分泌物
0=無
0.5=漿液性分泌物:水分泌液が鼻孔から滴下する。ここでは鼻の外に流出する分泌液が記録される。
1=粘液膿性分泌物、軽度から中程度:粘液が混ざった濁った分泌液が、鼻から口への少なくとも中間点まで垂れ下がる。
2=粘液膿性分泌物、重度:粘液が口を通り過ぎる。

眼分泌物
0=無:眼の隅にある少量の乾燥して固まった材料は眼分泌物とみなさない。
0.5=漿液性分泌物:眼の外側を流れる透明な分泌液。
1=粘液膿性分泌物、軽度から中程度:粘液が混ざった濁った分泌液が、眼から口への少なくとも中間点まで垂れ下がる。
2=粘液膿性分泌物、重度:分泌液または粘液が鼻への中間点まで垂れ下がるか、または眼を縁取って眼の内側または外側の隅の毛を浸す。


0=無
0.5=軽度:1度の簡単な咳のみが観察される。
1.0=中程度:咳は持続的であり、観察期間中に繰り返し起こる。
2.0=重度:咳に息詰まりまたはレッチング音が伴う。

くしゃみ
0=無
2=有

呼吸困難
0=無(正常な呼吸)
2=有(浅速呼吸)

抑うつ
0=無(通常の活動)
2=有:通常に比べてイヌの活動または遊びが少ない。観察が行なわれたときにイヌが嗜眠性であるか横になっていて立ちたがらないときに記録される。

明瞭な理解のために上述の発明を詳細に説明したが、添付の請求項の範囲内で特定の変更が行なわれてもよいことが明らかになるだろう。本明細書に引用されるすべての出版物および特許文書は、すべての目的に対してその各々が個別に示されたのと同程度に、その全体にわたってここに引用により援用される。
上述から、本発明はいくつかの使用を提供することが明らかになるだろう。たとえば、本発明は、公知の病原性株に加えて、細胞培養適応単離体の調製および/またはワクチンに対する新たに同定された病原性インフルエンザウイルス株のいずれかの使用を提供する。本発明は、インフルエンザ増殖に対して許容的であるか、または許容的にできるあらゆる新たに同定された細胞培養細胞の使用を提供する。本発明は、組織培養適応株を調製して、少なくとも弱毒化、サブユニット、分解または不活化ウイルスを有し、さらにアジュバント、キャリア、賦形剤、抗インフルエンザ医薬品、およびウイルスに対する免疫応答を増加させるその他の薬剤を有するワクチンにすることを提供する。ワクチンはインフルエンザとの接触の前または接触後に用いられてもよい。

Claims (35)

  1. 限界希釈クローニングによって組織培養細胞における増殖についてヒトインフルエンザウイルスを選択する方法であって、前記方法は、
    インフルエンザウイルス単離体を連続的に希釈するステップと、
    各希釈物を培養細胞に接触させるステップと、
    細胞変性効果(CPE)を生成するために十分な時間前記細胞を増殖させるステップと、
    CPEをもたらす最高希釈度からウイルスを採取するステップと、
    前記採取されたウイルスによって前記プロセスを繰り返すステップと
    を含む、方法。
  2. 前記培養細胞に接触させる前に、前記インフルエンザウイルス単離体を有効量のトリプシンと混合するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記トリプシンはタイプIXトリプシンである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記組織培養適応単離体を前記組織培養細胞に接触させる前記ステップは、約0.01未満のMOIで行なわれる、請求項2に記載の方法。
  5. 前記組織培養細胞は哺乳動物胚腎臓細胞である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記哺乳動物胚腎臓細胞はヒト胎児由来腎臓細胞である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記インフルエンザウイルスはインフルエンザA、BまたはCウイルスである、請求項1に記載の方法。
  8. 前記インフルエンザAウイルスはH5N1株である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記インフルエンザウイルス単離体が最初に孵化鶏卵において増殖させられることによって、組織培養に対する適応のための大量の接種材料を得る、請求項1に記載の方法。
  10. 前記インフルエンザウイルス単離体は、最初に羊膜において増殖させられる、請求項9に記載の方法。
  11. ヒトインフルエンザウイルスワクチンの前記生産のための方法であって、請求項1に記載の前記採取されたウイルスを精製するステップを含む、方法。
  12. 精製する前記ステップは、サイズ排除クロマトグラフィを用いて行なわれる、請求項11に記載の方法。
  13. 前記ウイルスを不活性化するために有効な量のバイナリエチレンイミン(BEI)で前記ウイルスを処理するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
  14. BEI不活性化ヒトインフルエンザウイルスおよびアジュバントを含む、免疫原性組成物。
  15. 用量当り4μg未満のヒトインフルエンザHAが配合された、ヒトインフルエンザウイルスを含むワクチンであって、前記HAの少なくとも70%は同じアミノ酸配列を有する、ワクチン。
  16. 前記ヒトインフルエンザウイルスはBEIによって不活性化される、請求項15に記載のワクチン。
  17. 前記ワクチンはISCOMをさらに含む、請求項15に記載のワクチン。
  18. 前記HAの少なくとも90%は同じアミノ酸配列を有する、請求項15に記載のワクチン。
  19. 限界希釈クローニングによって組織培養細胞における増殖についてイヌインフルエンザウイルス(CIV)H3N8を選択する方法であって、前記方法は、
    インフルエンザウイルス単離体を連続的に希釈するステップと、
    各希釈物を培養細胞に接触させるステップと、
    細胞変性効果(CPE)を生成するために十分な時間前記細胞を増殖させるステップと、
    CPEをもたらす最高希釈度からウイルスを採取するステップと、
    前記採取されたウイルスによって前記プロセスを繰り返すステップと
    を含む、方法。
  20. 前記培養細胞に接触させる前に、前記インフルエンザウイルス単離体を有効量のトリプシンと混合するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記トリプシンはタイプIXトリプシンである、請求項19に記載の方法。
  22. 前記組織培養細胞は哺乳動物胚腎臓細胞である、請求項19に記載の方法。
  23. 前記哺乳動物胚腎臓細胞はマディンダービーウシ腎臓(MDBK)細胞である、請求項5に記載の方法。
  24. 不活性化イヌインフルエンザウイルス(CIV)H3N8およびアジュバントを含む、免疫原性組成物。
  25. 前記アジュバントは油と水とのエマルジョンである、請求項24に記載の免疫原性組成物。
  26. 前記アジュバントは水酸化アルミニウムである、請求項24に記載の免疫原性組成物。
  27. 前記不活性化CIV H3N8はバイナリエチレンイミン不活性化CIV H3N8である、請求項24に記載の免疫原性組成物。
  28. 請求項24に記載の前記免疫原性組成物を含む、ワクチン。
  29. 免疫学的有効量の1つまたはそれ以上の付加的な不活性化CIV血清型をさらに含む、請求項28に記載のワクチン。
  30. 付加的な病原体をさらに含み、前記付加的な病原体は、イヌジステンパーウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパルボウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌコロナウイルス、Leptospira血清型、Leishmania生物体、Borrelia種(spp.);Bordetella bronchiseptica、Mycoplasma種、狂犬病ウイルス、Ehrlichia canis、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項28に記載のワクチン。
  31. 前記CIV H3N8は500HAU/用量で配合され、前記HAの少なくとも70%は同じアミノ酸配列を有する、請求項28に記載のワクチン。
  32. 前記アジュバントは水酸化アルミニウムである、請求項31に記載のワクチン。
  33. 前記HAの少なくとも90%は同じアミノ酸配列を有する、請求項34に記載のワクチン。
  34. イヌをCIVに対して免疫化する方法であって、請求項28に記載の前記ワクチンを前記イヌに注射するステップを含む、方法。
  35. 請求項34に記載の前記方法によって免疫化されたイヌから得られるCIV H3N8に結合する抗体を含む、血清。
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