JP2010506815A - 窒化アルミニウム、窒化アルミニウムのウェハーおよび粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、窒化アルミニウム製造方法であって、積み重ねまたは巻付けにより、アルミニウムベースの圧延製品を含む多層構造を調製し、それを窒素含有雰囲気下で加熱し、窒素含有雰囲気の温度が400℃〜600℃の間に維持されている一つの段階の間に大部分の窒化処理が行なわれる方法に関するものである。本発明は、原料としてのアルミニウム粉末の利用も、きわめて高い温度の利用も必要としない経済的方法によって窒化アルミニウムを得ることを可能にする。得られた窒化アルミニウムは、層状である微視的構造を有する粒子を含む。
【選択図】図5b
【選択図】図5b
Description
本発明は、粉末またはウェハーの形をした窒化アルミニウムの製造方法に関するものである。
窒化アルミニウムは、酸化ベリリウム以外には超過するもののない、並外れた高い熱伝導率を呈するセラミックである。この特性を高い体積抵抗率と誘電率と結びつけることにより、窒化アルミニウムは、出力および密度が規則的に増大するマイクロエレクトロニクスコンポーネントの組立てのための好ましい基板となっている。
ただし、窒化アルミニウム製基板の利用は、膨大な製造コストに起因するこのセラミックの価格が高いことを特にその理由として、なおも限定されたものにとどまっている。かくして、現在、主として軍事分野に用途は限定されている。
窒化アルミニウムには数多くの製造方法が存在する。最も一般的であるのは、窒素下での炭素熱還元によるアルミナの還元およびアルミニウム粉末の直接的窒化処理である。
炭素熱還元によるアルミナの還元においては、高純度のアルミナが、非常に高い温度(1700〜1900℃)でアルミニウムに還元され、形成されたアルミニウムは、
Al2O3+3C+N2=2AlN+3CO (1)
という反応にしたがって窒化物に変換される。
Al2O3+3C+N2=2AlN+3CO (1)
という反応にしたがって窒化物に変換される。
この方法は、一般に大量の炭素および酸素を含有する窒化アルミニウムを導く。なお、変換条件はコストが高い。
かくして、仏国特許出願公開第2715169号明細書(Elf Atochem)は、炭素および窒素の存在下でのウェハーの形をしたαアルミナの浸炭窒化によって得られる、ウェハーの形をした窒化アルミニウムのマクロ結晶の製造方法について記述している。
アルミニウム粉末の直接的窒化処理は、有利な純度のセラミックを得ることを可能にするが、これには、爆発性が極度に高い細かいアルミニウム粉末を取扱う必要がある。なお、
2Al+N2=2AlN (2)
という窒化処理反応は、強い発熱性を示し、アルミニウム粉末の融合を誘発し、これには、反応を停止させる集結物を生成するという欠点がある。したがって、完全な転換を得ることは困難である。
2Al+N2=2AlN (2)
という窒化処理反応は、強い発熱性を示し、アルミニウム粉末の融合を誘発し、これには、反応を停止させる集結物を生成するという欠点がある。したがって、完全な転換を得ることは困難である。
米国特許第5710382号明細書(Dow Chemical)は、かくして、希釈剤、セラミック、炭素またはその他の製品に混合されたアルミニウム粉末をさまざまな形態の窒化アルミニウムに変換する燃焼方法について記載している。点火温度は標準的には1050℃であり、最高温度は2000℃超に達し得る。
金属アルミニウム粉末の変換方法を改良する複数の試みが、先行技術において紹介されている。
欧州特許出願公開第1310455号明細書および欧州特許出願公開第1394107号明細書(Ibaragi Lab)は、500〜1000℃の間に含まれる温度で105〜305kPaの間に含まれる窒素圧力下でのアルミニウム粉末の窒化処理方法について記載している。これらの方法は、アルミニウム粉末の慎重な取扱いを必要としている。
日本国特開平09−012308号公報および欧州特許出願公開第0887308号明細書(Toyota)は、0.1〜5mmの間に含まれる直径をもつアルミニウムスクラップおよびアルミニウム粉末の混合物が500℃〜1000℃の間に含まれる温度で窒化処理される方法について記載している。アルミニウム粉末は、この方法に不可欠の開始剤である。酸素ターゲットの役目を果たすマグネシウム合金の存在は、反応に有利に作用するが、恐らくは得られた窒化物の純度に対してマイナスの影響を及ぼす。
欧州特許出願公開第0494129号明細書(Pechiney Electrometallurgie)は、金属粉末と耐熱性粉末を混合させかくして金属粉末の見かけの融合無く高温での窒化処理を実現できるようにする、金属粉末の高温窒化処理方法について記載している。
本発明が解決しようとする課題は、原料としてのアルミニウム粉末の利用も、超高温度の利用も必要としない経済的な方法によって、特に、高純度の粉末の形で窒化アルミニウムを得ることにある。
本発明の第一の目的は、窒化アルミニウムの製造方法であり、該方法は以下から成る。
(i) N−1個の間隙空間により分離されたアルミニウムベースの圧延製品から成るN個の層を含む多層構造を、積み重ねまたは巻付けによって調製し、Nが10以上であるものとし、多層構造の平均質量密度は0.4〜2g/cm3の間に含まれるように制御され、間隙空間は、前記間隙空間内での気体の循環を可能にするような形で開放されており、
(ii) 窒素含有雰囲気下で前記多層構造を加熱し、加熱用熱サイクルには、窒素含有雰囲気の温度が400℃〜660℃の間に維持されかつその間に窒化処理の大部分が行なわれる少なくとも一つの段階が含まれている。
(i) N−1個の間隙空間により分離されたアルミニウムベースの圧延製品から成るN個の層を含む多層構造を、積み重ねまたは巻付けによって調製し、Nが10以上であるものとし、多層構造の平均質量密度は0.4〜2g/cm3の間に含まれるように制御され、間隙空間は、前記間隙空間内での気体の循環を可能にするような形で開放されており、
(ii) 窒素含有雰囲気下で前記多層構造を加熱し、加熱用熱サイクルには、窒素含有雰囲気の温度が400℃〜660℃の間に維持されかつその間に窒化処理の大部分が行なわれる少なくとも一つの段階が含まれている。
本発明のもう一つの目的は、その微視的構造が層状であることを特徴とする、本発明に従った方法によって得ることのできる窒化アルミニウムウェハーにある。
本発明のさらにもう一つの目的は、層状の微視的構造をもつ粒子を含む、本発明に従った方法によって得ることのできる窒化アルミニウム粉末にある。
本発明のさらにもう一つの目的は、そのD50中央粒径のサイズが1μm未満であり、好ましくは0.7μm未満であり、D90/D10比が8未満、好ましくは6未満である、微粉化窒化アルミニウム粉末にある。
標準化されたアルミニウム合金の化学的組成は、規格EN573−3号において定義づけされている。
別段の言及のないかぎり、欧州規格第EN12258−1号の定義が適用される。スクラップおよびその再生利用についての条項は、規格EN12258−3号において記載されている。
本発明に従った方法は、少なくとも二つのステップを含む。第一のステップでは、Nが10以上であるものとしてN−1個の間隙空間により分離されたアルミニウムベースの圧延製品から成るN個の層を含む、制御された平均質量密度の多層構造を、重層または巻付けによって調製する。アルミニウム製の圧延製品は矩形の横断面を有する。好ましくはNは50以上である。
間隙空間は、前記間隙空間内で気体が循環できるような形で開放されている。
多層構造の平均質量密度は、その質量とその体積の間の比に等しく、一般的には、利用される圧延製品の平均質量密度以下である。
本発明の枠内で実現される多層構造の第一の例は、図1に表わされているような圧延製品の重層である。この実施形態においては、ほぼ同一の寸法の圧延製品のN個の層(1)が互いに積み重ねられ、各層は平均厚みeIの間隙空間(2)によって後続層から分離されている。本発明の枠内で定義されるような重層の幾何学的パラメータは、長さLE、長さ以下の幅lE、そして圧延製品により画定されるほぼ平行な平面に対して鉛直な方向における厚みeEである。かくして、圧延製品の重層には、N−1個の間隙空間によって分離されたほぼ同一の寸法のN個の圧延製品が含まれる。重層の平均質量密度は、その質量とその体積VEの間の比である。すなわち、
VE=LE・lE・eE
VE=LE・lE・eE
本発明に従った多層構造の第二の例は、図2に表わされたもののようなほぼ恒常な厚みをもつ圧延製品の円筒状巻付けによって得られるコイルである。コイルの幾何学的パラメータは、幅lB、直径DBおよび巻取り高さhBである。巻付けの各周回が一つの層すなわちひと巻き(1)を構成する。各ひと巻きは、平均厚みeIの間隙空間(2)で分離されている。かくして、圧延製品のコイルには、平均厚みeIのN−1個の間隙空間によって分離された圧延製品のN個のひと巻きが含まれる。コイルは、例えば鋼製の巻付けシリンダ(3)上に巻付けられていてよいが、好ましくは、コイルは窒化処理の前に取り除かれる引込み式シリンダ上に巻付けられている。コイルの平均質量密度は、その質量(巻付け用シリンダがある場合にはその質量を差し引いたもの)と、
VB=(3.14・(DB 2−(DB−2hB)2)/4)・lB
に等しいその体積VBとの間の比である。
VB=(3.14・(DB 2−(DB−2hB)2)/4)・lB
に等しいその体積VBとの間の比である。
基本的には、2つの因子、すなわち圧延製品の質量密度と間隙空間の平均厚みが、多層構造の平均質量密度を変動させ得る。利用されるアルミニウム製圧延製品の質量密度は、前記圧延製品がエッチングされている場合、有意な形で変動し得る。かくして、アルミニウム製コンデンサ業界で実施されているもののような電気化学エッチングを受けた圧延製品の質量密度は、アルミニウムブロックでできた類似の寸法をもつ製品の単位体積重量ものよりも30%少ない値に達し得る可能性がある。
間隙空間は複雑な形状を呈する。すなわち連続する層は、いくつかの場所で接触し、その他の場所では所与の厚みの空間によって分離され得る。間隙空間の平均厚みeIは、この間隙空間を説明することのできる一つのパラメータである。同様に、間隙空間をさらに完全に説明するものとしては、特に接点の表面密度、平均厚みの標準偏差、間隙空間の最大厚みといったような間隙空間の形状についての情報も含まれ得るが、それでもこれらの情報は本発明の枠内で不可欠なものではない。
有利なことに、本発明に従った重層または巻付けによって得られる多層構造においては、各々の間隙空間の平均厚みは制御されている。間隙空間の平均厚みの制御は、さまざまな要領で実施可能である。すなわち、例えば、圧延製品の粗度を制御することもできるし、あるいは好ましくは、圧延製品を間隔どりする役割を果たすセラミックおよび/または金属の粒子を少なくとも一つの間隙空間の中に入れることもできる。有利にも、多層構造の間隙空間の平均厚みを制御するような形で圧延製品を間隔どりするために利用可能な粒子は、アルミニウムを含む金属および/またはセラミックの粒子である。好ましくは、これらの粒子は、窒化アルミニウムを含むセラミック粒子である。間隙空間の平均厚みを制御するために利用可能な粒子の形態およびサイズは、窒化処理効率に影響を及ぼし得る。好ましくは、利用される粒子の寸法は、およそ一ミリメートルである。本発明の有利な一実施形態においては、利用される粒子はフレークであり、すなわち、その長さおよび/またはその幅はその厚みの約10倍である。
重層の場合には、間隙空間の平均厚みを制御するために例えば金属板を介して重層上に圧力を加えることができる。コイルの場合には、初期コイルの巻付け(トランスワインディング)によって得られる新しいコイルの例においては、新しいコイルの巻付け側に加えられる引張り力および初期コイルの繰出し側に加えられる保持力である巻取りパラメータに働きかけることによって、巻付けの際に間隙空間の平均厚みを制御することができる。
窒化処理反応の際に得られる効率が工業的利点を呈するためには、多層構造の平均質量密度は0.4g/cm3〜2g/cm3の間に含まれていなくてはならない。好ましくは、多層構造の平均質量密度は0.6g/cm3超、好ましくは0.8g/cm3超かつ1.8g/cm3未満、好ましくは1.4g/cm3未満である。多層構造の内部における質量密度の均一性は得られる窒化処理効率に影響を及ぼす可能性があり、質量密度が多層構造の内部で可能なかぎり均一であることが好ましい。この結果は、特に、間隙空間の厚みeIの変動を制御することによって得ることができる。有利には、間隙空間の制御された平均厚みは、多層構造のN−1個の間隙空間についてほぼ同一である。本発明の有利な実施形態においては、eIの変動は20%未満、好ましくは10%未満である。少なくとも一つの間隙空間に、圧延製品を間隔どりする役目を果たすセラミックおよび/または金属の粒子を入れる場合には、これらの粒子は好ましくは各々の間隙空間の中に導入される。
さらに、本発明者らは、窒化処理効率が工業的に有利なものとなるためには、層に平行に多層構造を横断することのできる最小距離すなわち重層の場合の幅IEまたはコイルの場合の幅lBが、少なくとも閾値と呼ばれる或る一定の値以上であることが好ましい、ということを確認した。閾値は一般的には40mm、そして好ましくは50mmである。一部の場合、特に多層構造を横断することのできる最小距離が40mm未満である場合には、アルミニウムシート内に多層構造を包み込むことが有利であり得る。
本発明者らは、窒化処理反応の際の重要な技術的パラメータは多層構造内での窒素含有雰囲気の拡散であると考えている。この拡散の一つの効果は、多層構造の端部での窒素含有雰囲気中に存在する酸素分子の反応およびその除去にあると考えられ、酸素が窒化処理反応の一つの毒であることから、これは好都合である。層間で拡散により酸素分子が走行する行程が前記閾値より小さい場合、酸素除去の現象は恐らく充分に発生せず、そのため窒化処理反応は限定されるか、さらに妨げられる可能性さえある。
多層構造の平均質量密度が過度に小さい場合、上述の拡散現象は、恐らく不充分である。その上、小さい平均質量密度を有する多層構造は取扱いがむずかしい。多層構造の平均質量密度が過度に高い場合、本発明者らは、窒化処理反応によって放出された熱に起因するアルミニウムの局所的融解現象が発生し窒化処理反応の妨げとなるということを確認した。
本発明の枠内では、熱間圧延されたスクラップが本発明に合致する多層構造の実施を可能にする場合、これを利用することが可能である。熱間圧延されたスクラップの利用は、窒化アルミニウムへの変換が通常の手順による再生利用よりもさらに収益性のよいものであることから、経済的利点を有する。
有利には、本発明の枠内で利用されるアルミニウム製の圧延製品は、99.9重量%超のアルミニウム含有量をもつ高純度のアルミニウムを含む。かくして高純度のアルミニウムを利用することにより、得られる窒化アルミニウムの純度を改善することができる。有利な一実施形態においては、アルミニウム製圧延製品は、多層構造の製造に先立ちエッチングされた、つまりその表面および/またはその粗度を増大させるための化学的および/または電気化学的な処理を受けたアルミニウムベースの圧延製品を含む。このタイプのエッチング処理は、特に高純度のアルミニウムを用いたアルミニウム製電解コンデンサの業界で一般的に利用されている。エッチング処理は同様に、リトグラフィ方法への応用のためのアルミニウム製圧延製品の業界においても、一般的に利用されている。
本発明の枠内で利用されるアルミニウム製圧延製品は、有利には、圧延製品層をほぼ完全に窒化アルミニウムに変換させるように、5〜500μmの間に含まれる厚み、そして好ましくは6〜200μmの間に含まれる厚みを有する。
第二のステップにおいては、第一のステップに由来する多層構造を窒素含有雰囲気下で加熱し、加熱用熱サイクルには、窒素含有雰囲気の温度が400℃〜660℃の間に維持され、その間に窒化処理の大部分が行なわれる少なくとも一つの段階が含まれる。加熱は、特に、閉鎖型炉内で実施され得(ロット別の処理)、そうでなければ、適合された通路をもつ炉内で実施され得る(連続処理)。この加熱ステップの熱サイクルは、複数の段階を含むことができる。
一般に、第一段階では、400℃という窒素含有雰囲気温度を達成することができる。この段階の持続時間はほとんど窒化処理効率に影響を及ぼさない。
熱処理に不可欠な第二段階においては、窒素含有雰囲気の温度は、400℃〜660℃の間に維持される。窒化処理反応の大部分は、この第二段階の間に行なわれる。反応の大部分というのは、存在するアルミニウムの50%超が反応したことを意味する。本発明は、かくして、一部の場合ではこの第二段階の終了時点で90%を越える、さらには99%を越える窒化処理効率を得ることができるようにする。かくして、広く知られた考え方に反して、金属形態のアルミニウム製品の完全な窒化処理を得るために例えば700℃超といったような高い温度を利用する必要はない。第二段階で利用される660℃という最高温度は、得られた窒化アルミニウムの品質を損うアルミニウム融解の危険性を大幅に制限することができる。窒化処理反応を開始するためには、400℃、好ましくは500℃の最低温度が必要である。窒化処理反応はきわめて発熱性のものであることから、アルミニウムが到達する温度は一部の場合においてはこの第二段階の間に窒素含有雰囲気の温度を超える可能性がある。この第二段階の持続時間は一般に2時間以上、好ましくは5時間以上である。この第二段階の最適な持続時間は、処理対象の多層構造の寸法により左右される。本発明者らは、一部の場合において、この第二段階の少なくとも一部分の間窒素含有雰囲気の温度を、400℃〜550℃の間に含まれる温度を有する下点と550℃〜660℃の間に含まれる温度を有する上点の間で変動させることが有利であるということを確認した。一回の変動は、二つの下点と一つの上点によってかまたは二つの上点と一つの下点によって画定される。有利には、第二段階の間の前記動揺の数は3回以上である。これらの動揺は、窒化処理反応が制御不能な形で加速されないようにすることができると思われる。動揺の頻度および持続時間は、試料の寸法に応じて適合されるべきである。
第三段階は、一般に、窒化された試料を取扱いできるように充分低い温度まで窒素含有雰囲気を冷却させることから成る。
任意には、第一段階と第三段階の間に一つ以上の補足的段階を導入することができる。特に、窒化処理効率が不充分である場合にこれをさらに改善するように、例えば約1000℃に達してもよい660℃超の温度で第二段階と第三段階の間に補足的段階を導入することが有用であり得る。しかしながら高温および作業持続時間の増大を理由として経済的に不利であるこの段階は、一般に必要ではなく、したがって好ましくは回避される。本発明の有利な実施形態においては、窒素含有雰囲気の温度は、加熱段階の持続時間全体にわたり660℃を上回らない。
本発明の有利な実施形態においては、雰囲気の温度は、多層構造内で測定された温度を利用して調節ループによって制御される。
有利には、窒素含有雰囲気は、二窒素N2の形で窒素を含む。窒素含有雰囲気は同様に、アンモニアNH3といったような窒素を含むその他の気体、ならびに還元性ガス例えば二水素H2、メタンCH4そしてより一般的にはCxHyという一般式をもつ炭化水素ガス、あるいはアルゴンといった希ガスをも含み得る。酸素という元素は窒化処理反応の毒であることから、窒素含有雰囲気は最小限の酸素を含有する。酸素は、特に、二酸素または水蒸気の形で存在し得る。しかしながら、本発明の枠内で制御される拡散の条件では、一部の場合で50ppmさらには100ppmという窒素含有雰囲気中の酸素含有量を許容することができる。有利には、アルミニウム圧延製品は、窒素含有雰囲気下に置かれる前に少なくとも0.1バールの真空下に置かれる。好ましい実施形態においては、利用される炉に応じた流量で、前記窒素含有雰囲気の掃気を実施する。閉鎖型炉の場合には、掃気流量は、有利には、時間あたり、炉の容積の1〜10倍の間に含まれる。可能なかぎり少ない掃気流量が、経済的に最も有利である。
本発明は、層状の微視的構造をもつ窒化アルミニウムのウェハーを直接獲得できるようにする。好ましくは、これらのウェハーの厚みは少なくとも1mmであり、層の厚みは5〜250μmの間に含まれる。有利には、ウェハーの最小幅は、40mmである。この方法は、従来の方法では窒化アルミニウム粉末から得られるウェハーの整形ステップを回避することから、経済的に非常に有利である。
もう一つの実施形態においては、得られた窒化アルミニウムは、0.5μm以下と500μmの間に含まれるサイズの粒子から成る窒化アルミニウム粉末を得るように、有利には不活性または還元性の乾燥雰囲気下で粉砕され任意にはふるいがけされる。この粉末が例えば50〜500μmの粉砕の後に非常に細かく粉砕されていない場合、本発明に従った窒化アルミニウム粉末は、層の厚みが5〜250μmの間に含まれ粉末の微視的構造が層状であることが内部に観察できる粒子を含む。この層状の構造は、一部の場合では、層に対し平行な方向と層に対し鉛直な方向の間の一定の熱特性および/または機械的特性の変動といったような技術的利点を、得られた粉末に対してもたらすことができる。本発明に従った方法により得られる、層状である微視的構造をもつ粒子を含む粉末は、微粉化粉末の形に容易に粉砕できるという利点を呈する。かくして、1μm未満そして好ましくは0.7μm未満の中央粒径サイズ(D50)をもつ微粉化された窒化アルミニウム粉末が、粗い形の窒化物から得られる。本発明に従った微粉化された粉末はさらに、8未満そして好ましくは6未満のD90/D10比を有する均一な粒度分布を呈する。本発明の一実施形態においては、窒化物は三つのステップで粉砕される。第一のステップでは、窒化処理された重層またはコイルは、1cm未満の寸法の小片を得るように、粗く破砕される。第二のステップでは、これらの小片は、500μm未満そして好ましくは100μm未満の中央直径粉末(D50)を得るためボールミル内で粉砕される。標準的には、内部で粉末の微視的構造が層状であることが観察できる粒子を含む50〜500μmの間に含まれるD50をもつ粉末が得られる。好ましくは、セラミック、特にジルコニア、アルミナまたは好ましくは窒化アルミニウムでできたボールおよびジャーを有するボールミルが利用される。第三のステップでは、ボールミルでの処理後の粉末は、流動床エアジェットミルで微粉化される。本発明の有利な実施形態においては、流動床エアジェットミル内の粉末と接触する部品はセラミック製である。有利には、粉砕作業は、10℃未満、好ましくは0℃未満の露点をもつ乾燥雰囲気下で実施される。当該発明者らは、直径および均一性に関する微粉化された粉末の優れた品質が、へき開に有利に作用する微視的構造の層状特性に結びつけることのできるものであると考えている。
利用されているアルミニウム製圧延製品が高純度アルミニウムである実施形態においては、酸素含有量が多くとも2重量%好ましくは多くとも1.5重量%であり、炭素含有量が0.03重量%未満好ましくは0.02重量%未満そしてその他の不純物の含有量が0.01重量%未満好ましくは0.005重量%未満であるようなきわめて純粋な窒化アルミニウムを得ることができる。
幅lB=39mmで質量密度が2.6g/cm3に等しいコイルを590℃で5時間窒素下で熱処理した。いかなる窒化も観察されなかった。
高さ100μmの高純度アルミニウムシート(>99.9%)を、実施例2の試験のために利用した。これらのシートは、約2.3g/cm3までその平均質量密度を減少させるような形で予めエッチングされていた。
窒化処理試験をシートの重層についてか或いはコイルについて実施した。重層の幾何学的パラメータは長さLE、幅lEおよび厚みeE(図1)である。特に異なる質量のステンレス鋼板の下での加圧下に重層を置くことによって、厚みeEの変動が得られた。コイルの幾何学的パラメータは、幅lB、直径DBおよび巻取り高さhBである(図2)。シートの一つの重層またはコイルの平均質量密度は、二つのタイプの幾何形状を比較できるようにする有用なパラメータである。コイルの場合、平均質量密度の計算のために考慮される体積VBは、
VB=(3.14・(DB 2−(DB−2hB)2)/4)・lB
である。
VB=(3.14・(DB 2−(DB−2hB)2)/4)・lB
である。
一部の試験においては、およそ1〜3mmの長さと幅そしておよそ100μmの厚みの窒化アルミニウム粒子をシート間に導入した。
試験中で利用される、異なる試料の特性は下の表1に記されている。
試料を約1m3の容積の炉の中に入れ、この中で約10-2バールの真空を実現し、次にその中に試験の持続時間全体にわたり約5Nm3/時の流量の二窒素を導入した。
二つのタイプの熱サイクルを試験した。
C1 :第1段階:0.5時間〜5時間で400℃まで上昇。
第2段階:590〜650℃の間に含まれる値に到達するまでの温度の増大。第2段階の持続時間は2時間以上である。
第3段階:60℃/時までの冷却。
C2 :第1段階:4〜5時間で400℃までの上昇。
第2段階:6時間400℃超かつ660℃未満の温度での維持。第2段階の間、雰囲気の温度は、450℃〜500℃の間に含まれる温度を有する下点と550℃〜650℃の間に含まれる温度を有する上点の間で変動し、変動回数は3回である。
第3段階:60℃/時での冷却。
C1 :第1段階:0.5時間〜5時間で400℃まで上昇。
第2段階:590〜650℃の間に含まれる値に到達するまでの温度の増大。第2段階の持続時間は2時間以上である。
第3段階:60℃/時までの冷却。
C2 :第1段階:4〜5時間で400℃までの上昇。
第2段階:6時間400℃超かつ660℃未満の温度での維持。第2段階の間、雰囲気の温度は、450℃〜500℃の間に含まれる温度を有する下点と550℃〜650℃の間に含まれる温度を有する上点の間で変動し、変動回数は3回である。
第3段階:60℃/時での冷却。
窒化処理率は、試験後の試料の計量によって決定される。一方では窒化処理されない重層およびコイルの外部表面積、そして他方では、シート間に導入され反応に関与しないAlNの粒子の重量を考慮に入れるため、計量によって得られた未加工の結果に対し修正を加える。得られた結果は、表2に記されている。
図3は、試料の平均質量密度と得られた窒化処理効率の関係を示す。窒化処理効率に対して平均質量密度が及ぼす非常に明瞭かつ予想外の効果が観察される。0.4g/cm3以下または2g/cm3超の平均質量密度について、窒化処理効率は非常に小さい。逆に、窒化処理効率は、0.6〜1.3g/cm3の間に含まれる質量密度については50%超に達する。
得られた窒化物を、走査型電子顕微鏡によって観察した。図5aでは、試料コイル22に由来するAlN粒子が観察される。粒子は約400μmの厚みを有し、厚み約80μmの窒化アルミニウムの5層の層が識別される。図5bではこの構造を概略的に示した。
得られた窒化物を、化学的分析とX線回折により特徴づけした。
試料コイル13とコイル9を用いて得た窒化物について決定された組成は、表3中に記されている。
試料コイル13について得られた回折スペクトルは、図4に記されている。
試料コイル30、コイル31、およびコイル33を、1cm未満の寸法の窒化物小片を得るように破砕した。次にこれらの小片を、セラミック(ジルコニアおよびアルミナ)のボールおよびジャーを有するボールミル中で粉砕した。31μmという中央粒径サイズ(D50)およびD90=132μmを得るように、小片を粉末へと縮小した。次に、ボールミルでの処理後の粉末を、鋼製の流動床エアジェットミルの中で微粉化した。粉砕ステップの際または粉末保管の際に利用される雰囲気に関して、特別な予防策は一切取らなかった。得られた粉末の粒度分布は、図6に示されている。この粉末の特性は、0.56μmのD50値、0.26μmのD10値そして3.47μmのD90値、つまり4.6というD90/D10比であった。
したがって微粉化された粉末は、0.7μm未満のD50値および6未満のD90/D10比を呈し、このことは非常に有利な微細性および均一性を実証している。
得られた微粉化粉末の組成は表4に示されている。
1 層
2 間隙空間
3 巻付けシリンダ
2 間隙空間
3 巻付けシリンダ
Claims (26)
- 窒化アルミニウムの製造方法であって、
(i) N−1個の間隙空間により分離されたアルミニウムベースの圧延製品から成るN個の層を含む多層構造を、積み重ねまたは巻付けによって調製し、Nが10以上であるものとして、前記多層構造の平均質量密度は0.4〜2g/cm3の間に含まれるように制御され、前記間隙空間は、前記間隙空間内での気体の循環を可能にするような形で開放されており、
(ii) 窒素含有雰囲気下で前記多層構造を加熱し、加熱用熱サイクルには、窒素含有雰囲気の温度が400℃〜660℃の間に維持されかつその間に窒化処理の大部分が行なわれる少なくとも一つの段階が含まれている、
方法。 - Nが50以上である、請求項1に記載の方法。
- 前記多層構造が、ほぼ同一の寸法の圧延製品のN個の層を重層することによって得られ、各層が、制御された平均厚みの間隙空間によって後続層から分離されている、請求項1または2に記載の方法。
- 前記多層構造が、ほぼ恒常な幅の圧延製品をコイルの形で円筒状に巻付けることによって得られ、各層がひと巻きで構成され、制御された平均厚みの間隙空間によって後続層から分離されている、請求項1または2に記載の方法。
- 前記制御された平均厚みが、N−1個の間隙空間についてほぼ同一である、請求項3または4に記載の方法。
- 前記平均質量密度が0.6g/cm3〜1.8g/cm3の間、好ましくは0.8g/cm3〜1.4g/cm3の間に含まれている、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
- 前記アルミニウム製圧延製品の厚みが、前記N個の層をほぼ完全に窒化アルミニウムに変換させるために5〜500μmの間に含まれている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
- 前記アルミニウムベースの圧延製品が、エッチング済みのアルミニウムベースの圧延製品を含む、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
- 前記平均質量密度が、金属および/またはセラミックの粒子を少なくとも一つの間隙空間内に導入することによって制御されている、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
- 前記粒子がアルミニウムを含む、請求項9に記載の方法。
- 前記窒素含有雰囲気が二窒素を含む、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
- 前記窒素含有雰囲気の掃気を実施する、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
- 窒素含有雰囲気の温度が加熱ステップの持続時間全体にわたり660℃を超えない、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
- 窒素含有雰囲気の温度が、400℃〜550℃の間に含まれる温度をもつ下点と550℃〜660℃の間に含まれる温度をもつ上点の間で、加熱ステップの少なくとも一部分の間変動している、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
- 前記動揺の回数が3以上である、請求項14に記載の方法。
- 雰囲気の温度が、前記多層構造の温度を利用する調節ループにより制御されている、請求項1〜15のいずれか一つに記載の方法。
- 各層に対して平行に前記多層構造を横断することのできる最小距離が40mm以上である、請求項1〜16のいずれか一つに記載の方法。
- 得られた窒化アルミニウムの粉砕を実施する、請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法。
- 粉砕が、乾燥、不活性または還元性雰囲気下で実施される、請求項18に記載の方法。
- 前記粉砕が、
(a) 1cm未満の寸法の小片を得るようなに、請求項1〜17のいずれか一つに記載の方法に由来する窒化アルミニウムを破砕するステップ、
(b) 500μm未満の中央直径をもつ粉末を得るように、かくして得られた小片をボールミル中で粉砕するステップ、
(c) かくして得られた粉末を流動床エアジェットミル中で微粉化するステップ、
という三つの連続的ステップで実施される、請求項18または19に記載の方法。 - アルミニウム製圧延製品がアルミニウムを含み、そのアルミニウム含有量が99.9重量%超である、請求項1〜20のいずれか一つに記載の方法。
- 微視的構造が層状であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1つに記載の方法によって得ることのできる窒化アルミニウムウェハー。
- 前記層の厚みが5〜250μmの間にあり、1mm以上の厚みをもつ請求項22に記載の窒化アルミニウムウェハー。
- 粒子の平均サイズが50〜500μmの間に含まれ、前記層の厚みが5〜250μmの間に含まれている、層状の微視的構造をもつ粒子を含む、請求項18または19に記載の方法によって得ることのできる窒化アルミニウム粉末。
- 酸素含有量が、多くとも2重量%好ましくは多くとも1.5重量%であり、炭素含有量が0.03重量%未満、好ましくは0.02重量%未満であり、その他の不純物の含有量が0.01重量%未満、好ましくは0.005重量%未満である、請求項24に記載の窒化アルミニウム粉末。
- D50中央粒径サイズが1μm未満、好ましくは0.7μm未満であり、D90/D10比が8未満、好ましくは6未満であることを特徴とする、請求項20に記載の方法により得ることのできる微粉化窒化アルミニウム粉末。
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