JP2010285552A - 酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物、それで成形された歯車成型体及び歯車ブランク成型体並びにそれを用いた歯車、歯車ブランク、減速機及びパワーステアリング装置 - Google Patents

酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物、それで成形された歯車成型体及び歯車ブランク成型体並びにそれを用いた歯車、歯車ブランク、減速機及びパワーステアリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、高温環境に耐えかつ高剛性を長時間持続できる酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を提供することである。この酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を用いて、歯車成型体と、歯車ブランク成型体と、歯車と、歯車ブランクと、それを用いた減速機と、かかる減速機を用いたパワーステアリング装置も提供する。
【解決手段】本発明に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体とを含む樹脂分(A)及び酸化亜鉛系ウィスカー(B)が、質量比(A:B)で92:8〜99.9:0.1の範囲で配合されてなり、ポリエーテルサルホン及びポリアリーレンスルフィドの合計量と、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の量との質量比が70:30〜95:5であり、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比が50:50〜90:10である。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐熱性構造部材の成形に好適な酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物に関し、さらに、当該組成物を成形して得た歯車成型体及び歯車ブランク成型体と、ウォームとウォームホイールなどの、小歯車と大歯車とを有する減速機に特に好適に使用される歯車及び歯車ブランク(gear blank)と、この歯車を用いた減速機と、かかる減速機を備えたパワーステアリング装置とに関する。
自動車用の電動パワーステアリング(EPS又はelectronic power steeringとも云う)装置には減速機が用いられる。例えばコラム型EPSでは、電動モータの回転を、減速機において、ウォーム等の小歯車からウォームホイール等の大歯車に伝えることで減速するとともに出力を増幅したのち、コラムに付与することで、ステアリング操作をトルクアシストしている。
近年、例えば、軽四輪自動車又は普通自動車の中でも比較的小型車に用いる電動パワーステアリング装置においては、歯打ち音の低減による低騒音化、軽量化及び摩擦抵抗を小さくするために、減速機の、小歯車と大歯車のうち少なくとも一方、より好ましくは大歯車を樹脂化することが一般化しつつある。詳しくは、前記大歯車を、金属製の芯金と、この芯金に外嵌された、樹脂製の環状の歯車本体とで構成することが行われる。
熱可塑性組成樹脂組成物に耐衝撃性を与えるように改良する方法として、(1)非極性α−オレフィン系樹脂及び結晶性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂と、(2)非極性α−オレフィン系単量体と極性ビニル系単量体とから形成される共重合体(Aセグメント)及び少なくとも1種のビニル系単量体から形成されるビニル系重合体又は共重合体(Bセグメント)とよりなり、一方のセグメントが他方のセグメント中に微細な粒子として分散相を形成している多相構造グラフト共重合体とから構成され、前記成分(1)と成分(2)との溶融粘度比が0.05以上の熱可塑性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
また、前記歯車の構成において歯車本体を形成する樹脂としては、例えば、モノマーキャスティングナイロン、PA6、PA66、PA46などのポリアミド樹脂、ポリアリーレンスルフィドと、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体と、無機系ウィスカーとを含む樹脂組成物が広く用いられる。また、主に吸水や熱などによる寸法変化を抑制して歯車の寸法安定性を向上するため、ポリアミド樹脂に、ガラス繊維などの強化繊維を配合することも行われている(例えば、特許文献2を参照。)。
さらにポリアミド樹脂には、歯車の潤滑性を向上して回転時に作用する負荷を低減し、それによって疲労強度や耐磨耗性を向上して歯車を長寿命化するために、例えば四フッ化エチレン樹脂等のフッ素系樹脂の粉末や、あるいはステアリン酸アルミニウム等を添加することも検討されている(例えば、特許文献3を参照。)。
また、耐久性を向上させるために、ポリアリーレンスルフィドと、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体と、無機系ウィスカーとを含む樹脂組成物によって形成したことを特徴とする歯車が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。
さらに、熱可塑性耐熱性樹脂組成物として、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ノルボルネン樹脂、無機ウィスカー及びグリシジルメタクリテートを含む組成が開示されている(例えば、特許文献5を参照。)。また、ポリフェニレンスルフィド樹脂に、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を含有させた組成も開示されている(例えば、特許文献6を参照。)。また、芳香族ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂及びガラス繊維を含有させた組成も開示されている(例えば、特許文献7を参照。)。さらに、芳香族ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ガラス繊維及び板状の無機充填剤を含有させた組成も開示されている(例えば、特許文献8を参照。)。
特開平6−192490号公報 特開2002−156025号公報 特開2002−327829号公報 特開2004−278548号公報 特開平8−337720号公報 特開2001−31867号公報 特開2002−249663号公報 特開2002−249662号公報 特公昭63−33775号公報 特開平1−131220号公報 特許第2600761号公報 米国特許第5505525号公報 米国特許第3530735号公報
近年、これまでに比べてより大型の自動車の電動パワーステアリング装置においても、減速機の歯車の樹脂化が検討されている。また、環境問題に対処するための低燃費化に対応したり、あるいは車内の居住性を向上したりするために、自動車の大きさを問わず、電動パワーステアリング装置の搭載スペースの削減、すなわち電動パワーステアリング装置のより一層の小型化が進行しつつある。
しかし、従来のポリアミド樹脂製の歯車は、こうした新たな電動パワーステアリング装置の減速機に適用した場合に、当該減速機に要求される耐久性能を十分に満足することができず、比較的早期に破損してしまうという新たな問題を有することが、発明者の検討によって明らかとなった。これは、大型の自動車ほど、電動パワーステアリング装置における電動モータの出力を大きくしなければならず、減速機に伝わる伝達トルクが大きくなるためである。また電動パワーステアリング装置を小型化するほど、特に減速機の大歯車は、モジュールを増加させて面圧を低下させる等の対策をとるのが難しくなり、小歯車から伝わる面圧が高くなる傾向にあるためである。
また、ポリアミド樹脂製の歯車は、特許文献2で開示されるようにガラス繊維などの強化繊維を加えて寸法安定性を向上する対策がとられているものの、それでもなお吸水による寸法変化が大きい。このためポリアミド樹脂製の歯車は、特に自動車を海外輸出するための航送時や、あるいは経年変化などによって大きく膨張する結果、電動パワーステアリング装置のトルクを大きく変動させてしまうという、別の問題を有することも明らかとなった。
なお同様の問題は、電動パワーステアリング装置の減速機に限らず、小歯車と大歯車とを有する一般の減速機においても存在する。
また、特許文献1に記載されたAセグメント及びBセグメントとよりなる熱可塑性樹脂組成物を使用した場合、耐熱性と耐衝撃性等の機械特性を同時に改良することはできないという問題があった。
さらに、特許文献4に記載されたポリアリーレンスルフィドと、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体と、無機系ウィスカーとを含む樹脂組成物を使用した場合、耐久性は改善されるものの、耐熱性が不十分であり、歯車を高温なエンジンルーム内に配置できないという問題があった。特許文献5又は6に記載された熱可塑性耐熱性樹脂組成物についても同様の問題がある。特許文献7又は8に記載された芳香族ポリサルホン樹脂組成物はガラス繊維、板状無機結晶を配合するため、成型時の流動性は改善されるが、得られた成形物の異方性が大きいという問題がある。
本発明の目的は、従来の樹脂化された歯車に使用される樹脂組成物に比べて、耐久性能、寸法安定性及び耐熱性に優れた酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物、特に高温環境に耐えかつ高剛性を長時間持続できる酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を提供することである。本発明の目的は、この酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を用いて、さらに、高温環境に耐えかつ高剛性を長時間持続できる歯車成形体と、歯車と、それを用いた減速機と、かかる減速機を用いたパワーステアリング装置とを提供することである。
本発明者は、鋭意検討した結果、ポリエーテルサルホン(polyethersulfone、略記は「PESf」とする)とポリアリーレンスルフィド(polyarylene sulfide、略記は「PAS」とする)とエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体と酸化亜鉛系ウィスカーとを配合し、その組成比を所定の比率とすることで、前記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体とを含む樹脂分(A)及び酸化亜鉛系ウィスカー(B)が、質量比(A:B)で92:8〜99.9:0.1の範囲で配合されてなり、かつ、ポリエーテルサルホン及びポリアリーレンスルフィドの合計量と、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の量との質量比が70:30〜95:5であり、かつ、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比が50:50〜90:10であることを特徴とする。
本発明に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物では、前記酸化亜鉛系ウィスカーが、正四面体の中心に位置する核部と、該核部から正四面体の各頂点の方向に伸びる4つの針状部とを備えた立体形状を有することが好ましい。ウィスカーの形状の異方性が小さく、得られた成形体は、異方性が生じることなく均一に補強されている。
本発明に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物では、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体が、
(i) α−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体との共重合体、
(ii) 上記(i)の共重合体の存在下に、ビニル単量体を重合してなるグラフト化前駆体、及び
(iii) 上記(ii)のグラフト化前駆体の単独重合体であるグラフト共重合体、又は、上記(ii)のグラフト化前駆体とエチレン系重合体若しくはビニル重合体とをグラフト化したグラフト共重合体、からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物では、ポリアリーレンスルフィドが、構造単位の95モル%以上がフェニレンスルフィド(化1)であることが好ましい。
Figure 2010285552
本発明に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物では、(1)芯金と、該芯金の外周に外嵌された環状の歯車本体とを備えた歯車の前記歯車本体、又は、(2)芯金と、該芯金の外周に外嵌された環状の歯車ブランク本体とを備えた歯車ブランクの前記歯車ブランク本体、を形成するための組成物であることが好ましい。
本発明に係る歯車成型体又は歯車ブランク成型体は、本発明に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物で形成されていることを特徴とする。
本発明に係る歯車又は歯車ブランクは、(1)芯金と、該芯金の外周に外嵌された環状の歯車本体とを備えるか、又は、(2)芯金と、該芯金の外周に外嵌された環状の歯車ブランク本体とを備え、該歯車本体又は該歯車ブランク本体が本発明に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物で形成されていることを特徴とする。
本発明に係る減速機は、小歯車及び大歯車を備え、かつ両歯車のうち少なくとも一方を、本発明に係る歯車によって構成したことを特徴とする。
本発明に係るパワーステアリング装置は、本発明に係る減速機を備え、操舵補助用の電動モータの回転を、この減速機を介して減速して舵取機構に伝えることを特徴とする。
本発明の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、従来の、ポリアミド樹脂製やポリアリーレンスルフィドと、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体と、無機系ウィスカーとを含む樹脂組成物のものに比べて、耐久性能と耐熱性を著しく向上することができ、特にその成形体は高温環境に耐えかつ高剛性を長時間持続できる。また、本発明の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、ポリアミド樹脂製のものに比べて吸水による寸法変化が小さいことから、寸法安定性にも優れている。したがって、歯車成形体用の樹脂組成物として好適である。
そして本発明の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を用いた歯車(歯車ブランクから切削加工して得た歯車を含む。)、それを用いた減速機及びかかる減速機を用いたパワーステアリング装置は、高温環境にて使用できる。例えば、当該減速機は、パワーステアリング装置において、コラムアシスト型の減速機のみならず、自動車のエンジンルーム内に配置されるピニオンアシスト型の減速機として使用することができる。よって、より大型の自動車用のパワーステアリング装置に使用したり、より小型化したりできる。
実施例1〜6及び比較例1〜5におけるPESf/(PESf+PPS)と荷重たわみ温度との関係を示した。
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
(酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物)
本実施形態に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、ポリエーテルサルホン(PESf)とポリアリーレンスルフィド(PAS)とエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体とを含む樹脂分(A)及び酸化亜鉛系ウィスカー(B)が、質量比(A:B)で92:8〜99.9:0.1の範囲で配合されてなり、かつ、ポリエーテルサルホン及びポリアリーレンスルフィドの合計量と、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の量との質量比が70:30〜95:5であり、かつ、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比が50:50〜90:10である。
(ポリエーテルサルホン、PESf)
ポリエーテルサルホンとしては特に制限はなく、有機溶媒中、アルカリ金属化合物の存在下、ジハロジフェニル化合物と二価フェノール化合物を重縮合させるか、あるいは、二価フェノールのアルカリ金属二塩とジハロジフェニル化合物とを重縮合させることによって得られるものが好ましく用いられる。
前記有機溶媒としては、有機極性溶媒が好ましい。例えば、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、N−メチル−2−ピペリドンなどのピペリドン系溶媒、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの2−イミダゾリノン系溶媒、ヘキサメチルホスホラスアミド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホンなどのジフェニル化合物などのケトン系溶媒あるいはこれらの二種以上の混合物が挙げられる。該有機溶媒として好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホラスアミド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,3−ジオキソラン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群から選ばれた一種または二種以上の化合物が用いられる。
前記アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、あるいはアルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。特に炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの無水アルカリ金属炭酸塩が好ましい。
前記ジハロジフェニル化合物としては、スルホン基を有するジハロジフェニル化合物、例えば4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンなどのジハロジフェニルスルホン類、1,4−ビス(4−クロルフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−フルオロフェニルスルホニル)ベンゼンなどのビス(ハロゲノフェニルスルホニル)ベンゼン類、4,4’−ビス(4−クロルフェニルスルホニル)ビフェニル、4,4’−ビス(4−フルオロフェニルスルホニル)ビフェニルなどのビス(ハロゲノフェニルスルホニル)ビフェニル類、などが挙げられる。中でも入手が容易であることから、ジハロジフェニルスルホン類が好ましく、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、または4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンがより好ましく、特に(化2)で表される4,4’−ジクロロジフェニルスルホンが好ましい。これらのジハロジフェニル化合物は、二種類以上を混合して用いることもできる。
Figure 2010285552
前記二価フェノール化合物としては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、4,4’−ビフェノールの他に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジフェニルスルホン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどのジヒドロキシジフェニルエーテル類、あるいはそれらのベンゼン環の水素原子の少なくとも一つが、メチル基、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基などの低級アルコキシ基、あるいは塩素原子、臭素原子、フッ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが挙げられる。特に価格と入手の容易性から、ハイドロキノン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、または4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが好ましく、(化3)で表されるビスフェノールがより好ましく、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが特に好ましい。上記の二価フェノール化合物は、二種以上混合して用いてもよい。
Figure 2010285552
(式中、Yは単結合、−SO−、−C(CH−、または−O−を示す。)
ポリエーテルサルホンは、二価フェノール化合物とジハロジフェニルスルホン化合物が実質上等モル量で使用されて重縮合されたものが好ましい。分子量を調整するために、二価フェノール化合物を等モルから僅かに過剰量あるいは過小量で使用して得られたものでもよい。また同様に分子量を調整するために、少量のモノハロジフェニル化合物あるいは一価フェノール化合物を重合溶液中に添加して得られたものでも良い。
ポリエーテルサルホンとしては、(化2)で表されるビスフェノールと(化3)で表される4,4’−ジクロロジフェニルスルホンを重縮合させて得られたポリマーが好ましい。その繰り返し単位は、(化4)で表される。
Figure 2010285552
(式中、Yは単結合、−SO−、−C(CH−、または−O−を示す。)
ポリエーテルサルホンを得る際の重縮合の反応温度は、160〜340℃が好ましい。この反応温度が高すぎると、生成物ポリマーの分解反応が進むため、高純度のポリエーテルサルホンを得ることができず、この反応温度が低すぎると、有用な高分子量の重合体が得られない。
ポリエーテルサルホンの重量平均分子量としては、ポリスチレン換算で3万〜15万を有するものが好まれる。
(ポリアリーレンスルフィド、PAS)
ポリアリーレンスルフィドは、ポリアミド樹脂に比べて機械的強度、耐熱性等に優れる上、吸水による寸法変化が小さいため寸法安定性に優れている。かかるポリアリーレンスルフィドは、(化5)で表される繰り返し単位(アリーレンスルフィド)を主たる構成要素とする種々の芳香族ポリマーである。すなわち、ポリアリーレンスルフィドは、
(a)(化5)で表されるアリーレンスルフィドのうち1種のみからなるホモポリマーや、
(b)(化5)のアリーレンスルフィドの2種以上からなるランダムまたはブロックコポリマー、あるいは
(c)(化5)のアリーレンスルフィドの1種または2種以上と、他の繰り返し単位とからなるランダムまたはブロックコポリマー、などである。
Figure 2010285552
(式中、Arはアリーレン基を示す)
このうち(a)のホモポリマーが、工業的な入手のしやすさ等を考慮すると最も好ましいが、加工性や耐熱性の点で、すなわち加工性や耐熱性を微調整することなどを考慮すると、(b)、(c)のコポリマーのうちいずれかを用いることもできる。
なお(c)のコポリマーにおけるアリーレンスルフィド単位の含有割合は、コポリマーを構成する個々の繰り返し単位の総モル数に対する、アリーレンスルフィド単位のモル%で表して50モル%以上であるのが好ましく、70モル%以上であるのがより好ましく、90モル%以上であるのがさらに好ましい。アリーレンスルフィド単位の含有割合が50モル%未満では、コポリマーが、ポリアリーレンスルフィドとしての、歯車本体の耐久性能と寸法安定性とを向上する効果を十分に発揮できないものとなってしまうおそれがある。
(化5)の繰り返し単位を有するポリアリーレンスルフィドは、例えば極性溶媒中で、アルカリ金属の硫化物と、(化6)で表されるジハロ芳香族化合物とを重合反応させる公知の方法(例えば、特許文献9を参照。)によって合成することができる。
(化6)X−Ar−X
(式中、Xはハロゲン原子、Arは(化5)中のものと同じアリーレン基を示す)
上記の重合反応に使用するアルカリ金属の硫化物としては、例えば硫化リチウム(LiS)、硫化ナトリウム(NaS)、硫化カリウム(KS)、硫化ルビジウム(RbS)、硫化セシウム(CsS)などを挙げることができる。また上記の反応系中で、NaSHとNaOHとを反応させることによって生成させた硫化ナトリウムを用いることもできる。
またジハロ芳香族化合物としては、例えばp−ジクロロべンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジブロモべンゼン、2,6−ジクロロナフタレン、4,4′−ジクロロビフエニル、p,p′−ジクロロジフェニルエーテル、4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、4,4′−ジクロロジフエニルスルホキシド、4,4′−ジクロロジフェニルケトンなどを挙げることができる。またジハロ芳香族化合物は、例えば炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、フェニル基などの置換基を有していても良い。置換基を有するジハロ芳香族化合物としては、例えば2,5−ジクロロトルエン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、3,5−ジクロロ安息香酸などを挙げることができる。これらのジハロ芳香族化合物はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、ポリアリーレンスルフィドに多少の分岐構造または架橋構造を導入するために、1分子当たり3個以上のハロゲン原子を有するポリハロ芳香族化合物を、少量併用してもよい。
ポリハロ芳香族化合物としては、例えば1,2,3−トリクロロべンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,4−トリクロロべンゼン、1,2,4−トリブロモべンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼンなどのトリハロ芳香族化合物、およびこれらのアルキル置換体などを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも特に経済性、反応性、物性などの観点から、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼンがより好ましい。
ただしポリアリーレンスルフィドは、その成形性を向上することなどを考慮すると、できるだけ分岐の少ない直鎖状であるのが好ましい。
極性溶媒としては、例えばN−アルキルピロリドン類(N−メチル−2−ピロリドンなど)、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン類、テトラアルキル尿素類、へキサアルキル燐酸トリアミド類などに代表されるアプロチック有機アミド溶媒が、反応系の安定性が高く、高分子量のポリマーを得やすいので好適に使用できる。
(化5)で表されるポリアリーレンスルフィドの具体例としては、(化1)で表されるp−フェニレンスルフィドのホモポリマーとしての、直鎖状のポリ−p−フェニレンスルフィド(poly‐p‐phenylene sulfide、略記は「PPS」とする。)が、加工性に優れる上、工業的にも入手しやすいことから最も好適に使用できる。また、かかる直鎖状のポリ−p−フェニレンスルフィドは、歯車本体の靭性や機械的強度を向上する効果にも優れている。ここで、構造単位の95モル%以上がフェニレンスルフィド(化1)であることが好ましい。共重合体構造単位としては、ビフェニレンスルフィド、ビフェニレンエーテルスルフィド、ナフタレンスルフィド、及びそれらのアルキル置換体、ハロゲン置換体が挙げられる。
Figure 2010285552
ポリアリーレンスルフィドのその他の例としては、例えばポリアリーレンケトンスルフィド、ポリアリーレンケトンケトンスルフィドなどのホモポリマー、あるいはp−フェニレンスルフィドとm−フェニレンスルフィドとのランダムまたはブロックコポリマー、p−またはm−フェニレンスルフィドとアリーレンケトンスルフィドとのランダムまたはブロックコポリマー、p−またはm−フェニレンスルフィドとアリーレンケトンケトンスルフィドとのランダムまたはブロックコポリマー、p−またはm−フェニレンスルフィドとアリーレンスルホンスルフィドとのランダムまたはブロックコポリマーなどを挙げることができる。
ポリアリーレンスルフィドは基本的に結晶性であり、その結晶化度は任意に制御することができ、本実施のポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドの配合比においては、その相溶性を高めるために結晶化度を小さくする方がよい。ポリアリーレンスルフィドのみでは結晶化度が30%〜50%となり、その溶融粘度を下げるために樹脂温度を高めるので、その樹脂の熱分解を生じる可能性がある。上記の配合比での結晶化度は30%未満であるので、押出加工性に優れる。特に好ましくは15%以下である。
また本実施形態においては、できるだけ高分子量の、したがって高溶融粘度のポリアリーレンスルフィドを用いるのが好ましい。具体的には、その溶融粘度(温度310℃、剪断速度1200/秒)が70Pa・S以上であるポリアリーレンスルフィドを用いるのが好ましい。溶融粘度がこの範囲よりも小さい場合には、引張破断伸びを高くすることが困難で、その他の機械的物性も不十分になるおそれがある。なお、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は、上記の範囲内でも20〜600Pa・Sであるのが好ましく、30〜400Pa・Sであるのがさらに好ましく、100〜300Pa・Sであるのが特に好ましい。
(エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体)
エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体は、ポリエーテルサルホンとポリ−p−フェニレンスルフィドなどのポリアリーレンスルフィドとを均質となるように溶融分散させる相溶化剤として働き、かつ、ポリ−p−フェニレンスルフィドなどのポリアリーレンスルフィドに柔軟性、靭性を付与して、歯車本体等の成形体の耐久性能を向上する効果を有する。かかるエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体としては、
(i) α−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体との共重合体、
(ii) 上記(i)の共重合体の存在下に、ビニル単量体を重合してなるグラフト化前駆体、及び
(iii) 上記(ii)のグラフト化前駆体の単独重合体であるグラフト共重合体、又は、上記(ii)のグラフト化前駆体とエチレン系重合体若しくはビニル重合体とをグラフト化したグラフト共重合体、からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。ここで、(ii)のグラフト化前駆体とエチレン系重合体若しくはビニル重合体とをグラフト化したグラフト共重合体は、グラフト化前駆体を、エチレン系重合体又はビニル重合体とともに溶融下で混練することによって得ることができる。
(i)の、α−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体との共重合体としては、α−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体との二元共重合体の他、α−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体と他の不飽和単量体との三元以上の共重合体も使用可能である。共重合体中の、α−オレフィン起源の繰り返し単位の含有割合は50〜99.5質量%であるのが好ましく、60〜99質量%であるのがさらに好ましく、70〜98質量%であるのが特に好ましい。また、不飽和グリシジル基含有単量体起源の繰り返し単位の含有割合は0.5〜50質量%であるのが好ましく、1〜40質量%であるのがさらに好ましく、2〜30質量%であるのが特に好ましい。さらに三元以上の共重合体に含まれる他の不飽和単量体起源の繰り返し単位の含有割合は40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがさらに好ましく、20質量%以下であるのが特に好ましい。
エボキシ基含有α−オレフィン系共重合体は、α−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体との、あるいはα−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体と他の不飽和単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
α−オレフィン系単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1、へキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等を挙げることができ、特にエチレンが好ましい。
また不飽和グリシジル基含有単量体としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸モノグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸トリグリシジルエステル、マレイン酸モノグリシジルエステル、クロトン酸グリシジルエステル、フマル酸モノグリシジルエステルなどのグリシジルエステル類;ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類;p−グリシジルスチレン等を挙げることができ、特にα,β−不飽和酸のグリシジルエステルが好ましい。
他の不飽和単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル単量体;ビニルエーテル単量体;(メタ)アクリロニトリル、スチレンなどのビニル芳香族単量体;一酸化炭素などを挙げることができる。
α−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体との二元または三元以上の共重合体の具体例としては、例えばエチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸グリシジル共重合体等を挙げることができる。中でもエチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸グリシジル共重合体などの、エポキシ基含有エチレン系共重合体が好ましく、特に次に述べる(ii)のグラフト化前駆体や(iii)のグラフト共重合体の原料としては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましい。これらの共重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記(ii)のグラフト化前駆体は、上記(i)の共重合体の存在下、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネートなどの特定のラジカル(共)重合性有機過酸化物を用いて、ビニル単量体を(共)重合させることによって製造される。その具体的な製造方法は、例えば、特許文献10に記載のとおりである。かかるグラフト化前駆体は、(i)の共重合体と、分子中に、ラジカル(共)重合性有機過酸化物に起因する活性酸素を含有するビニル共重合体との混合物であって、単独で加熱するか、あるいはエチレン系(共)重合体やビニル(共)重合体とともに溶融下で混練するとグラフト化して、前記(iii)のグラフト共重合体を生成する。ここで言うグラフト化とは、(i)の共重合体と、(ii)の前駆体中で生成したビニル共重合体や、後から加えたエチレン系(共)重合体、ビニル(共)重合体などがグラフト化反応、架橋反応などの混在した反応によって化学的に結合することを意味する。
また(ii)のグラフト化前駆体を、ポリエーテルサルホン、ポリアリーレンスルフィドおよび酸化亜鉛ウィスカーと混合し、溶融、混練して樹脂組成物を調製する系では、この混練時に上記のグラフト化が進行して、生成したグラフト共重合体と、ポリエーテルサルホン、ポリアリーレンスルフィドおよび酸化亜鉛ウィスカーとが渾然一体となって、耐久性能に優れた歯車本体等の成形体を形成しうる良好な樹脂組成物を得ることができる。一方、あらかじめ別に生成した(iii)のグラフト共重合体を、改めてポリエーテルサルホン、ポリアリーレンスルフィドおよび酸化亜鉛ウィスカーと混合し、溶融、混練して樹脂組成物を調製する系では、グラフト共重合体中の、(i)の共重合体の部分がポリエーテルサルホン及びポリアリーレンスルフィドとの良好な相溶性を有するため、同様に耐久性能に優れた歯車本体等の成形体を形成しうる良好な樹脂組成物を得ることができる。(ii)のグラフト化前駆体における、(i)の共重合体の含有割合は5〜95質量%であるのが好ましく、20〜90質量%であるのがさらに好ましい。共重合体の含有割合が5質量%未満では、ポリアリーレンスルフィドとの相溶性か不十分となるおそれがあり、逆に95質量%を超えると、樹脂組成物の耐熱性や寸法安定性が低下するおそれがある。
ビニル単量体としては、例えばスチレン、メチルスチレン、クロルスチレン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸の、炭素数1〜7のアルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル単量体;α、β−不飽和酸のグリシジルエステル単量体;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル単量体等を挙げることができる。
(酸化亜鉛ウィスカー)
酸化亜鉛ウィスカーは、ポリエーテルサルホン及びポリアリーレンスルフィドを補強して、歯車本体の耐久性能をさらに向上させる効果を有する。具体的には、酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物の耐衝撃強度と耐久性を向上させる。酸化亜鉛系ウィスカーとしては、例えば金属亜鉛を酸素などの酸化性の雰囲気中で加熱酸化により、酸化亜鉛のc軸方向結晶成長をa軸方向結晶成長に比べて大きくする異方向結晶成長の針状結晶となるように製造され、例えば特許文献11の実施例に基づいて製造される。本願発明で用いる酸化亜鉛ウィスカーは、六方晶ウルツ鉱型結晶構造の酸化亜鉛において異方向結晶成長した針状結晶である。特に正四面体の中心に位置する核部と、そこから正四面体の各頂点の方向に伸びる4つの針状部とを備えた、いわゆるテトラポッドのような立体形状を有する酸化亜鉛系ウィスカーが好適に使用される。かかる立体形状を有する酸化亜鉛系ウィスカーは、単純な針状のものなどに比べて形状の異方性が小さいため、歯車本体等の成形体を、異方性を生じることなく均一に補強することができる。立体形状を有する酸化亜鉛系ウィスカーは、嵩比重が0.02〜0.1g/cmであるのが好ましい。かかる立体形状を有するものなどの、各種の酸化亜鉛系ウィスカーは、その全体を酸化亜鉛によって形成した単一の構造を有していてもよいし、結晶成長の核となる芯の部分を他の物質によって形成し、その表面を、結晶成長させた酸化亜鉛によって覆った複合構造を有していてもよい。また、酸化亜鉛系ウィスカーの表面をカップリング剤などで表面処理しても良い。立体形状を有する酸化亜鉛系ウィスカーは、例えば特許文献11等の記載に基づいて製造することができる。
(配合比)
まず、酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体とを含む樹脂分(A)及び酸化亜鉛系ウィスカー(B)が、質量比(A:B)で92:8〜99.9:0.1の範囲で配合する。質量比(A:B)は92:5〜98:2であることが好ましい。酸化亜鉛系ウィスカー(B)が0.1質量%未満であると、樹脂成分を補強して歯車本体等の成形体の耐久性能を向上する効果が得られないおそれがある。一方、酸化亜鉛系ウィスカー(B)が8質量%を超えると、脆くなりすぎるおそれがあり、また、インサート成型物(insert molding product)の表面にケバ立ちを生じさせる場合がある。酸化亜鉛系ウィスカー(B)が前記範囲で含まれることによって、酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物の耐衝撃強度と耐久性が向上する。
次に、ポリエーテルサルホン及びポリアリーレンスルフィドの合計量と、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の量との質量比を70:30〜95:5とし、好ましくは75:25〜90:10とする。この質量比において、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の量を5%未満とすると、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドの相溶化がなされにくくなり、歯車本体等の成形体の靭性が低下して、引張破断伸びが不十分となり、脆性破壊しやすくなる。一方、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の量が30%を超えると、射出圧力が不安定となり、吐出樹脂量が変動し、射出成型自体ができなくなる。
また、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比を50:50〜90:10とし、好ましくは50:50〜66.1:33.9とする。ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比において、ポリエーテルサルホンを50%以上としてポリエーテルサルホンを主な成分とした場合は、ポリアリーレンスルフィドを50%超として主な成分とした場合と比較して、予測し得ないほど荷重たわみ温度が大きく高温側に推移するため、本実施形態はこの荷重たわみ温度が高い領域を利用する。一方、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比において、ポリエーテルサルホンが90%を超えると、靭性が低下して耐久性が低下し、耐久試験を行えば破損が生じる。ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比が50:50〜66.1:33.9の範囲では、荷重たわみ温度が高温であり、また、成形体の耐久性がもっとも良好となる。
(充填剤)
酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物にはさらに、歯車本体等の成形体の機械的強度や耐熱性を向上することを目的として、種々の充填剤を配合することもできる。かかる充填剤としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリ繊維などの無機繊維状物質;ステンレス、アルミニウム、チタン、鋼、真鍮等の金属繊維状物質;ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質等の、繊維状充填剤を挙げることができる。またその他の充填剤として、例えばマイカ、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、フェライト、クレー、ガラス粉、酸化亜鉛、炭酸ニッケル、酸化鉄、石英粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等の粒状または粉末状充填剤を挙げることもできる。これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することかできる。また充填剤は、必要に応じて集束剤または表面処理剤によって処理してもよい。集束剤または表面処理剤としては、例えばエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物の等の官能性化合物を挙げることができる。これらの化合物は、充填剤に対してあらかじめ表面処理または集束処理を施すために用いてもよいし、樹脂組成物の調製の際に同時に添加してもよい。
(その他の添加剤)
酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物には、その他の添加剤として、例えばエチレングリシジルメタクリレートのような樹脂改良剤、ペンタエリスリトールテトラステアレートのような滑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤等を、適宜添加することもできる。
(樹脂組成物)
酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、一般に樹脂の組成物を調製するために用いる設備と方法を用いて調製することができる。例えば上記各原料成分のうち充填材以外の各成分をヘンシェルミキサー、タンブラー等によって予備混合し、必要があればガラス繊維等の充填材を加えてさらに混合した後、1軸または2軸の押出機を使用して溶融、混練し、押し出して成形用のペレットを製造することができる。また、必要成分の一部をマスターバッチとしてから残りの成分と混合した後、溶融、混練し、押し出して成形用のペレットを製造する方法や、各成分の分散性を高めるために、使用する原料の一部を粉砕し、粒径を揃えて混合した後、溶融、混練し、押し出して成形用のペレットを製造する方法などを採用することも可能である。本実施形態に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、各種形状の成形体のほか、形状がペレット状物である場合を含む。なお、本実施形態において、プリプレグには、グリシジル基を含む相溶化剤(エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体)が含まれるため、その成形を射出成型法によって行うときは、その成形は反応射出成型(RIM又はreaction injection moldingとも云う)又は補強反応射出成型(R-RIM又はreinforced RIMとも云う)の範疇に含まれる。
〈歯車成型体及び歯車ブランク成型体〉
本実施形態に係る歯車成型体及び歯車ブランク成型体は、本実施形態に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物で形成されている。ここで歯車成型体とは、成型金型によって得られた歯を有する歯車成型物であり、歯車ブランク成型体とは、成型金型によって得られた歯を有さない歯車成型物である。なお、歯を有さない歯車成型物は、その後、その外周面部に歯が切削加工によって形成され、歯車成形体となる。ここで歯車成型体(切削加工によって得られた歯車成形体を包含する。)とは、ウォームホイール、ピニオン、ベベルギアー、ハイボイドギアなどの一連の歯車郡が例示され、これらの成形体は、射出成型法、圧縮成形法などの成形法によって腑形される。
〈歯車及び歯車ブランク〉
本実施形態に係る歯車は、芯金と、この芯金の外周に外嵌された環状の歯車本体とを備えるとともに、上記歯車本体を、本実施形態に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物によって形成されている。本実施形態に係る歯車は、本実施形態に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を用いて、従来同様にインサート成型法などによって製造することができる。詳しくは、歯車本体の外形に対応した型窩を有するとともに、その中心部に芯金をセットする部分を有する金型を使用し、芯金をセットした状態で、インサート成型機のノズルから加熱、溶融した本実施形態に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を射出し、金型内空間に導いて冷却、固化させるいわゆるインサート成型をすることによって、芯金と、この芯金の外周に外嵌された環状の歯車本体とを備えた本実施形態の歯車を製造することができる。また、あらかじめ射出成型しておいた環状の歯車本体の中心の孔に、芯金を、高周波誘導加熱などによって加熱しながら圧入、一体化して本実施形態の歯車を製造することもできる。歯車本体の外周の歯は成型時に同時に形成してもよいし、成形後、切削加工などによって形成してもよい。成形後、歯を切削加工によって形成する場合には、その加工対象は、歯車ブランクである。本実施形態に係る歯車ブランクは、芯金と、この芯金の外周に外嵌された環状の歯車ブランク本体とを備え、歯車ブランク本体が本実施形態に係る酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物で形成されている。歯車ブランクは、成型金型に歯に対応する凹凸を設けずに前記歯車と同様にインサート成型によって形成される。ここで、芯金の周囲を取り囲んで外周面部に歯を予定するインサート成型による歯車ブランク本体とは、金型から成型物を抜き易くするために歯を有しない歯車本体をあらかじめ成型して、その後、その外周面部に歯を切削加工する歯車本体である。成型金型に雌歯の穴を設けておくと、随時ある設計変更に応じて金型の新規作製をせざるを得なくなり、経済上の観点から好ましくない。なお、インサート成型については、例えば特許文献12があり、金型内で異種物質を保持後に溶融した熱可塑性樹脂を当該金型内空間に導いて、冷却一体化させる技術は周知である。また、合成樹脂の歯車ブランクを切削加工して歯車となすことについては、例えば特許文献13があり、周知である。
なお、前述した特許文献2、特許文献3のそれぞれに、ポリアミド樹脂以外の樹脂としてポリフェニレンスルフィドを使用して歯車本体を形成してもよい旨の記載があり、特許文献4には、ポリフェニレンスルフィドに、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体と、無機系ウィスカーとを配合した樹脂組成物を使用して歯車本体を形成してもよい旨の記載がある。しかし、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンスルフィド、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体及び無機系ウィスカーの所定の組成からなる酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を使用することで、歯車の耐熱性と耐久性能を併せて得る効果の記載も示唆もない。さらに、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比において、ポリエーテルサルホンを50%以上としてポリエーテルサルホンを主な成分とした場合は、ポリアリーレンスルフィドを50%超として主な成分とした場合と比較して、予測し得ないほど荷重たわみ温度が大きく高温側に推移することについても記載されていない。よって前述の特許文献記載は、本発明を開示も示唆もするものではない。
〈減速機及びパワーステアリング装置〉
本実施形態に係る減速機は、小歯車及び大歯車を備え、かつ両歯車のうち少なくとも一方を、本実施形態に係る歯車によって構成している。また、本実施形態に係るパワーステアリング装置は、本実施形態に係る減速機を備え、操舵補助用の電動モータの回転を、この減速機を介して減速して舵取機構に伝える。本実施形態に係るパワーステアリング装置、好ましくは、電動パワーステアリング装置は、例えば、特許文献4で示されている電動パワーステアリング装置であるが、本発明は電動パワーステアリング装置であれば実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明の減速機の構成を、電動パワーステアリング装置以外の装置用の、一般の減速機に適用することができる等、本発明の特許請求の範囲内で種々の変更を施すことができる。
以下、実施例を示しながら本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されない。
(実施例)
表1及び表2に示す実施例1〜6及び比較例1〜9の各ポリマー成分及び酸化亜鉛系ウィスカー又はファイバーをヘンシェルミキサーで均一にドライブレンドし、46mmφ二軸混練押出機(池貝鉄鋼社製PCM−46)へ供給し、シリンダー温度260〜385℃にて混棟を行い、ペレット状物を得た。なお、表1及び表2における各成分の配合は、質量部を単位とする。得られたペレット状物を150℃で6時間乾燥した後、射出成型機(東芝機械社製IS−75)により、金型温度150℃シリンダー温度300〜380℃で、引張試験片及び曲げ試験片を作製した。結果を表3及び表4に示す。
表1及び表2において、各成分の詳細は次のとおりである。
(1)ポリエーテルサルホン
実施例1、2、4、5、6、比較例2〜9:住友化学株式会社製商品名スミカエクセル3600P、比重1.37、溶融粘度366Pa・s(340℃、1000s−1)、重量平均分子量3万〜15万
実施例3:BASF株式会社製商品名ウルトラゾーンE1010、比重1.37、MRF205(g/10min)、重量平均分子量3万〜15万
(2)ポリフェニレンスルフィド:株式会社クレハ製商品名Fortron KPS #W214A
(3)EGMA(エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体):住友化学株式会社製商品名ファストボンド E
(4)EGMA-g-AS(エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体を主鎖とし、この主鎖に、アクリロニトリル−スチレン共重合体からなる側鎖を結合した構造を有するグラフト共重合体のもとになるグラフト化前駆体):日本油脂株式会社製商品名モディパーA4400
(5)酸化亜鉛ウィスカー:テトラポッド状の酸化亜鉛ウィスカー〔嵩比重0.1g/cm、表面未処理、株式会社アムテック製商品名パナテトラ#WZ0511〕
(6)ガラスファイバー:旭ファイバー硝子社製 ミルドファイバー JA−FT636(繊維長3mm、直径10μm)
(7)カーボンファイバー:三菱レーヨン株式会社製商品名パイロフィル ウレタン系サイジング剤処理#TR06U(繊維長3mm)
物性の測定方法は、以下に示すとおりである。
(1)引張り物性(引張強さ、引張伸び)
ISO527
試験片(試験部)寸法:厚さ×巾×長さ=4mm×10mm×80mm
試験速度:引張降伏応力のとき50mm/min、引張弾性率のとき1mm/min
(2)曲げ物性(曲げ弾性率、曲げ強さ、曲げたわみ)
ISO178
試験片寸法:厚さ×巾×長さ=4mm×10mm×80mm
支点間距離=64mm、試験速度=2mm/min
(3)シャルピー衝撃強さ
ISO179
試験片寸法:厚さ×巾×長さ=4mm×10mm×80mm
試験片固定間距離62mm、ノッチ45°、2mm深さ
(4)荷重たわみ温度
ISO75(0.45MPa) 「フラットワイズ」法
試験片寸法:厚さ×巾×長さ=4mm×10mm×80mm
曲げ応力測定のとき1.80MPa、支点間距離=64mm、昇温速度120℃/時
(5)耐久試験
表1及び表2に示した酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物を使用して、インサート成型によって、円柱状の芯金(ステンレス製、外径85mm、内径35mm、ピニオン軸)と、芯金の周囲を取り囲んで外周面部に歯を有する歯車本体(外径115mm、厚さ18mm、)とを一体に備えたウォームホイールを製造した。そして、このウォームホイールを、入力負荷50N・mの条件で、実施例2と実施例6については20万km相当のベンチモード試験運転(ピニオンアシスト型の減速機であり、エンジンルーム内での配置に相当)を行い、操舵を繰り返す耐久試験を行った。他の実施例及び比較例については、5万km相当のベンチモード試験運転を行い、操舵を繰り返す耐久試験を行った。

Figure 2010285552
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Figure 2010285552
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表1に示した各実施例の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物は、成型体にした場合、表3に示す各物性がいずれも良好であった。特に、PESfとPPSの配合比率を示す、PESf/(PESf+PPS)が66.1%である実施例2と60.3%である実施例6は、いずれも耐久試験において20万km相当のベンチモード試験を合格しており、荷重たわみ温度が高温であり、シャルピー衝撃強さも大きく、高温における耐久性が特に優れていた。
図1に、実施例1〜6及び比較例1〜5におけるPESf/(PESf+PPS)と荷重たわみ温度との関係を示した。図1のグラフを参照すると、PESf/(PESf+PPS)が50%以上で、急激に荷重たわみ温度が高温側に大きく推移することがわかる。
次に実施例5で示したPESf/(PESf+PPS)89.3%を含む90%までの組成では、シャルピー衝撃強さが大きいが、90%を超えると、比較例2の結果に示すごとく、シャルピー衝撃強さが急激に小さくなり、靭性が低下して耐久性が低下し、耐久試験を行えば破損が生じた。
比較例1は、PESf/(PESf+PPS)が0%であり、荷重たわみ温度が低すぎる。比較例2は、PESf/(PESf+PPS)が100%であり、また、酸化亜鉛ウィスカーの配合を10%としたため、シャルピー衝撃強さが小さく、荷重たわみ温度は高いものの耐久試験によって破損した。比較例3は、酸化亜鉛ウィスカーの配合を10%であり、また、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体が配合されておらず、相溶化が不十分でシャルピー衝撃強さが小さく、耐久試験によって破損した。比較例4は、PESf/(PESf+PPS)が90.2%と90%を超えており、また、樹脂分Aに対するエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の配合が3.2%であり、相溶化が不十分でシャルピー衝撃強さが小さく、耐久試験によって破損した。比較例5は、PESf/(PESf+PPS)が40%であり、荷重たわみ温度が低かった。比較例6は、樹脂分Aに対するエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の配合が31.6%であり、インサート成型ができなかった。比較例7は、酸化亜鉛ウィスカーが配合されておらず、耐久試験によって破損した。比較例8及び比較例9は、酸化亜鉛ウィスカーの代わりにガラスファイバー又はカーボンファイバーを配合したので、シャルピー衝撃強さが小さく、耐久試験によって破損した。各実施例と比較例8及び比較例9の結果からは、酸化亜鉛ウィスカー、特にいわゆるテトラポット状の酸化亜鉛ウィスカーを使用したことが、シャルピー衝撃強さがを高め、耐久試験の結果を良好にした要因のひとつであることがわかった。
実施例では、インサート成型によってウォームホイールを製造したが、インサート成型によって、まず歯車ブランクを成型し、その後切削加工によってウォームホイールを製造した場合においても同様の結果が得られた。
本発明の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物によれば、高温環境に耐えかつ高剛性を長時間持続できるので、自動車のパワーステアリング装置で使用される歯車を形成する材料として好適である。

Claims (9)

  1. ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとエポキシ基含有α−オレフィン系共重合体とを含む樹脂分(A)及び酸化亜鉛系ウィスカー(B)が、質量比(A:B)で92:8〜99.9:0.1の範囲で配合されてなり、かつ、ポリエーテルサルホン及びポリアリーレンスルフィドの合計量と、エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体の量との質量比が70:30〜95:5であり、かつ、ポリエーテルサルホンとポリアリーレンスルフィドとの質量比が50:50〜90:10であることを特徴とする酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物。
  2. 前記酸化亜鉛系ウィスカーが、正四面体の中心に位置する核部と、該核部から正四面体の各頂点の方向に伸びる4つの針状部とを備えた立体形状を有することを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物。
  3. エポキシ基含有α−オレフィン系共重合体が、
    (i) α−オレフィンと不飽和グリシジル基含有単量体との共重合体、
    (ii) 上記(i)の共重合体の存在下に、ビニル単量体を重合してなるグラフト化前駆体、及び
    (iii) 上記(ii)のグラフト化前駆体の単独重合体であるグラフト共重合体、又は、上記(ii)のグラフト化前駆体とエチレン系重合体若しくはビニル重合体とをグラフト化したグラフト共重合体、からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物。
  4. ポリアリーレンスルフィドが、構造単位の95モル%以上がフェニレンスルフィド(化1)であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物。
    Figure 2010285552
  5. (1)芯金と、該芯金の外周に外嵌された環状の歯車本体とを備えた歯車の前記歯車本体、又は、(2)芯金と、該芯金の外周に外嵌された環状の歯車ブランク本体とを備えた歯車ブランクの前記歯車ブランク本体、を形成するための組成物であることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物。
  6. 請求項1、2、3、4又は5に記載の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物で形成されていることを特徴とする歯車成型体又は歯車ブランク成型体。
  7. (1)芯金と、該芯金の外周に外嵌された環状の歯車本体とを備えるか、又は、(2)芯金と、該芯金の外周に外嵌された環状の歯車ブランク本体とを備え、該歯車本体又は該歯車ブランク本体が請求項1、2、3、4又は5に記載の酸化亜鉛ウィスカー含有樹脂組成物で形成されていることを特徴とする歯車又は歯車ブランク。
  8. 小歯車及び大歯車を備え、かつ両歯車のうち少なくとも一方を、請求項7に記載の歯車によって構成したことを特徴とする減速機。
  9. 請求項8記載の減速機を備え、操舵補助用の電動モータの回転を、この減速機を介して減速して舵取機構に伝えることを特徴とするパワーステアリング装置。
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