JP2006008846A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂95〜40重量%、および(b)オレフィン系樹脂5〜60重量%からなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、(aASTM−D1238に準じて測定したメルトフローレート(315.5℃、5000g荷重)が400g/10分を越え、かつ、クロロホルム抽出量が0.5〜4重量%のポリフェニレンスルフィド樹脂であり、前記(b)オレフィン系樹脂が、(b−1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体、または前記(b−1)と(b−2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
1.(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂95〜40重量%、および(b)オレフィン系樹脂
5〜60重量%からなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、ASTM−D1238に準じて測定したメルトフローレート(315.5℃、5000g荷重)が400g/10分を越え、かつ、クロロホルム抽出量が0.5〜4重量%のポリフェニレンスルフィド樹脂であり、前記(b)オレフィン系樹脂が、(b−1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体、または前記(b−1)と(b−2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
2.前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、フラッシュ法で得られたものであるこ
とを特徴とする上記1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
3.前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤を有機極性溶媒下で反応させて得られたポリフェニレンスルフィド樹脂であって、重合途中で水を添加することを特徴とする重合方法によりえられたポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることを特徴とする上記1または2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
4.(b)オレフィン系樹脂が、(b−1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体と(b−2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体であって、かつ電子顕微鏡で観察される樹脂組成物のモルホロジーが前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相を形成する一方、(b)オレフィン系樹脂前記の少なくとも一部はあるいは全てが(b―1)オレフィン系共重合体のシェル相中に前記(b−2)エチレン・α−オレフィン系共重合体のコア相が包含されたコアシェル型分散相を形成していることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物により構成される。
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
本発明においては、生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
本発明においては、比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩および/または水が好ましく用いられる。
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
本発明で用いる(a)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明で用いるPPS樹脂において、どのような方法で回収を行うかが重要である。
を得るためには、上記の回収を急冷条件下に行うことが好ましく、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2 以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選択される。
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄を施されたものであってもよい。
本発明の熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1に対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
性質に優れ、特に射出成形用途に適用することができる。
本発明において用いる(b)オレフィン系樹脂は、(b−1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体、または前記(b−1)と(b−2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体である。
本発明で用いる(b−1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体(エポキシ基含有オレフィン共重合体)としては、オレフィン系(共)
重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も使用することができる。
リル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げら
れるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
また、本発明で特に有用な(b−2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体は、エチレンおよび炭素数3〜20を有する少なくとも1種以上のα−オレフィンを構成成分とする共重合体である。上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとして、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、 4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも炭素数6から12であるα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上、改質効果の一層の向上が見られるためより好ましい。
本発明で用いる(b)オレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下MFRと略す。:ASTM D 1238、190℃、2160g荷重)は0.01〜70g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜60g/10分である。MFRが0.01g/10分未満の場合は流動性が悪く、70g/10分を超える場合は成形品の形状によっては衝撃強度が低くなる場合もあるので注意が必要である。
本発明の(a)PPS樹脂と(b)オレフィン系樹脂の配合割合は、PPS樹脂95〜40重量%、オレフィン系樹脂5〜60重量%であり、好ましくは、PPS樹脂85〜50重量%、オレフィン系樹脂15〜50重量%、より好ましくはPPS樹脂80〜60重量%、オレフィン系樹脂20〜40重量%である。オレフィン系樹脂が5重量%より少なすぎると柔軟性及び耐衝撃性の改良効果が得にくく、逆に、60重量%より多すぎるとPPS樹脂本来の熱安定性、バリア性、耐溶剤性が損なわれるばかりでなく、溶融混練時の増粘が大きくなり過ぎる傾向にあるため好ましくない。
更に、本発明においては、上記の如く(b−1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体と(b−2)エチレン・α−オレフィン系共重合体を併用して用いることが好ましく、その併用割合は、両者の合計に対し、(b−1)成分が5〜60重量%、(b−2)成分が95〜40重量%であり、好ましくは(b−1)成分が10〜50重量%、(b−2)成分が90〜50重量%であり、更に好ましくは(b−1)成分が10〜40重量%、(b−2)成分が90〜60重量%である。(b−1)成分が、5重量%より小さすぎると目的のモルホロジーが得られにくい傾向にあり、また、60重量%より多すぎると溶融混練時の増粘が大きくなる傾向にある。
本発明においては、高い耐熱性及び熱安定性を保持するために、(a)および(b)成分の合計100重量部に対して、フェノール系、リン系化合物の中から選ばれた1種以上の酸化防止剤を含有せしめることが好ましい。かかる酸化防止剤の配合量は、耐熱改良効果の点からは0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましく、成形時に発生するガス成分の観点からは、5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系酸化防止剤を併用して使用することは、特に耐熱性及び熱安定性保持効果が大きく好ましい。
本発明において、樹脂組成物の難燃性を改良するため難燃剤を配合しても良い。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系難燃剤 、ブロム系難燃剤 、塩素系難燃剤 、燐系難燃剤 、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤等が挙げられるが、これらの中でも燐系難燃剤が好ましい。
本発明において、樹脂組成物の耐摩耗性を向上させる観点から、ポリテトラフルオロエテレン、エチレン−テトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーンオイル等を添加しても良い。かかる添加剤の添加量は通常樹脂組成物全体の0.1〜10重量%の範囲が選択される。
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、(b)成分以外のオレフィン系樹脂を添加することが可能である。例えば、少なくとも50重量%のエチレンと、1〜35重量%の酸含有不飽和モノカルボン酸と、0〜49重量%の、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ビニルエーテル、一酸化炭素、および二酸化硫黄の少なくとも1つから選択される部分とを含み、かつさらに、共重合体において金属イオンにより酸基が0〜100%中和された重合体が挙げられる。より具体的にはかかるエチレン共重合体は、少なくとも60重量%のエチレンと、5〜15重量%のアクリル酸またはメタクリル酸と、0〜25重量%の、アクリル酸メチル、アクリル酸イソ−ブチル、およびアクリル酸n−メチルの少なくとも1つから選択される部分とを含み、かつさらに、リチウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、およびカルシウムから選択される金属イオンにより酸基が0〜70%、好ましくは30〜70%中和されたものである。
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、オレフィン系樹脂以外の樹脂を添加することが可能である。例えば、柔軟性の高い熱可塑性樹脂を少量添加することにより柔軟性及び耐衝撃性を更に改良することが可能である。但し、この量が組成物全体50重量%を超えるとPPS樹脂本来の特徴が損なわれるため好ましくなく、特に30重量%以下の添加が好ましく使用される。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えるとPPS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
本発明のPPS樹脂組成物は、PPS樹脂が本来有する優れた耐熱性、耐薬品性、バリア性とともに、優れた流動性、柔軟性及び耐衝撃性を有するものであるが、より顕著な効果を得るためには、PPS樹脂が連続相(マトリックス)を形成し、オレフィン系樹脂が分散相を形成することが好ましい。PPS樹脂が連続相を形成することによりPPSのバリア性、耐薬品性、耐熱性の優れた特性を得られる組成物の特性に大きく反映させることができる。
混練機は、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に供給してPPS樹脂の融解ピーク温度+5〜60℃の加工温度の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができるが、オレフィン系共重合体の分散形態を上述の如くコントロールするためには、せん断力を比較的強くした方が好ましい。具体的には、2軸押出機を使用して、混合時の樹脂温度がPPS樹脂の融解ピーク温度+10〜20℃となるように混練する方法などを好ましく用いることができる。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
○:コアシェル構造の形成が50%以上
×:コアシェル構造の形成が50%未満
撹拌機および底に弁のついた70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2925.00g(70.20モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)13860.00g(140.00モル)、酢酸ナトリウム2238.60g(27.30モル)、及びイオン交換水10500.00gを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14772.10gおよびNMP280.00gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.08モルであった。また、硫化水素の飛散量は仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.023モルであった。
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2960.83g(71.06モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム516.60g(6.30モル)、及びイオン交換水10500.00gを仕込み、常圧で窒素を通じながら230℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.10gおよびNMP280.00gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.08モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.017モルであった。
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2960.83g(71.06モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム516.60g(6.30モル)、及びイオン交換水10500.00gを仕込み、常圧で窒素を通じながら230℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.10gおよびNMP280.00gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.08モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.017モルであった。
p−DCBの仕込量を10354.68g(70.44モル)とした以外は、参考例1と同様にして行った。 得られたPPS−4は、MFRが350g/10分、クロロホルム抽出量が2.6%であった。
表1に示す各成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX3
0型2軸押出機で、シリンダー温度を290℃に設定し、200rpmのスクリ
ュー回転にて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。110℃で1晩乾
燥したペレットを用い、射出成形(東芝機械社製IS100FA、シリンダー温度300
℃、金型温度130℃により試験片を調製した。各サンプルの強度、モルフォロジーなどを測定した結果は表1に示すとおりであった。
参考例3のPPS−3を使用した以外は、実施例1と同様なペレタイズ、評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。流動性と靭性に劣った材料であった。
参考例4のPPS−4を使用した以外は、実施例1と同様なペレタイズ、評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。流動性に劣った材料であった。
オレフィン系共重合体の配合量を表1の様に減量した以外は、実施例1と同様なペレタイズ、評価を行った。結果は表1に示すとおりであった。明確なコアシェル構造が形成されず、耐衝撃性に劣った材料であった。
オレフィン系共重合体の配合量を表1の様に増量した以外は、実施例1と同様なペレタイズ、評価を行った。オレフィン系共重合体の量を70重量%まで増量すると海/島構造が逆転しオレフィン系共重合体が海相、PPSが島相を形成する組成物となり、成形品をトルエンに浸漬すると膨潤が激しく、耐溶剤性が著しく悪化する結果であった。
2 (b−1)官能基含有オレフィン系共重合体
3 (b−2)エチレン・α−オレフィン系共重合体
Claims (4)
- (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂95〜40重量%、および(b)オレフィン系樹脂5〜60重量%からなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物であって、前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、(a)ASTM−D1238に準じて測定したメルトフローレート(315.5℃、5000g荷重)が400g/10分を越え、かつ、クロロホルム抽出量が0.5〜4重量%のポリフェニレンスルフィド樹脂であり、前記(b)オレフィン系樹脂が、(b−1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体、または前記(b−1)と(b−2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体であることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、フラッシュ法で得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、ポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤を有機極性溶媒下で反応させて得られたポリフェニレンスルフィド樹脂であって、重合途中で水を添加することを特徴とする重合方法により得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることを特徴とする請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- (b)オレフィン系樹脂が、(b−1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体と(b−2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体であって、かつ電子顕微鏡で観察される樹脂組成物のモルホロジーが前記(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が連続相を形成する一方、前記(b)オレフィン系樹脂の少なくとも一部はあるいは全てが(b−1)オレフィン系共重合体のシェル相中に前記(b−2)エチレン・α−オレフィン系共重合体のコア相が包含されたコアシェル型分散相を形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
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