JP6750276B2 - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、絶縁皮膜用途に適した加工性と靭性を有する、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド樹脂は優れた絶縁性、耐熱性、バリア性、耐薬品性、難燃性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有しており、射出成形、押出し成形を中心とし各種電気、電子部品、機械部品および自動車部品など過酷な環境下での絶縁皮膜に使用されている。
一方で、絶縁皮膜の製膜方法としては、樹脂を有機溶剤に溶解させた絶縁塗料を導体上に塗付し、有機溶剤を揮発させる製膜する焼付け法と、樹脂組成物を押出機内で溶融させて導体上に塗付する押出し法の2つが知られている。
焼付け法による絶縁皮膜の製膜は、絶縁塗料を塗付、揮発を繰り返しておこなうため、膜厚のコントロールが容易かつ異物の混入が少ない。
ポリフェニレンスルフィド樹脂は押出し法で製膜することができ、優れた絶縁皮膜を高効率で製膜することができるため、押出し法に適したポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が広く求められている。
特許文献1乃至2には、高い物性をもつポリフェニレンスルフィド樹脂を絶縁皮膜に使用した際に、靭性不足によって熱変化や屈曲などで皮膜が破壊する課題をエラストマーを添加することによって、靭性を付与し改良することが記載されている。
特許文献3は、PPS樹脂を用いた絶縁皮膜をPPS樹脂の融点近傍に近い高温環境下で使用する際に課題となっていた溶融変形を、反応性のポリオレフィンを組成物中に加え、使用中にPPS樹脂を増粘させ変形を抑制できることが記載されている。
特許文献4では、絶縁皮膜の部分放電開始電圧を向上させるため、樹脂絶縁皮膜の皮膜密着性を向上させることを目的として、絶縁性の樹脂と導体の間に導体と密着性の良い樹脂を用いる多層の皮膜することで達成されることが記載されている。
特開2006−12649号公報 特開2006−8847号公報 特開2015−65127号公報 特開2011−134447号公報
押出し法を用いてポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を製膜した場合、融点が高いポリフェニレンスルフィド樹脂を長時間溶融状態で保持する必要があるため、組成物中の不純物に由来する炭化物の発生がしやすく、それが導電経路となり絶縁性能が発現しないという問題がある。
特に膜厚が薄い場合は、吐出量が少ないため滞留時間がさらに長く、また、微小な炭化物でも導電経路と成り得るため、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の絶縁皮膜への適用を困難にしている。
さらに、吐出口に樹脂応力が集中しやすくなり、膜厚が不安定になり膜切れが発生しやすくなる。
特許文献1乃至4ではオレフィン系樹脂の添加により靭性が改良されているが、不純物の量が多いPPS樹脂を使用しているため、加工中に炭化物が発生するため可能性が高い。また、膜厚が薄い絶縁皮膜おいては特許文献1、2のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物では、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の粘度が大きいため吐出口に応力が集中し、膜圧の不安定や膜切れを引き起こす可能性がある。
本発明は上記課題を解決するために、以下の構成を有する。
(1)(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と、(b)オレフィン系樹脂の合計を100重量部として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂95〜80重量部、(b)オレフィン系樹脂5〜20重量部を配合してなる樹脂組成物であって、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂のクロロホルム抽出量が0.5重量%未満であり、ISO1183に準拠した330度、荷重2160gの条件で測定したMFRが600g/min以上であり、(b)オレフィン系樹脂は(b1)エポキシ基を有するオレフィン系共重合体と(b2)エチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンとの共重合体を重量比率1/1〜1/3の割合で含有し、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物はカップリング剤を含まず、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の摂氏330度、荷重2160gにおけるMFR1が110〜160g/10分であって、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を摂氏330度で2時間加熱した後の摂氏330度、荷重2160gで測定したMFR2が前記MFR1と下記(1)式の関係を満たすことを特徴するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
0.7 < (MFR1÷MFR2) < 1.6・・・(1)
(2)(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が直鎖型であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(3)(1)または(2)に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
(4)成形品が絶縁皮膜であることを特徴とする(3)に記載の成形品。
(5)絶縁皮膜の膜厚が10μm以上70μm以下であることを特徴とする(4)に記載の成形品。
本発明によれば、炭化物が少なく膜厚の薄い均質な絶縁皮膜を、押出し法を用いて製膜することができるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(1)PPS樹脂
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
かかる構造を一部有するPPS重合体は、融点が低くなるため、本発明の樹脂組成物において融点が低い場合には成形性の点で有利となる。
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、有機系低重合成分(オリゴマー)量の指標となるクロロホルム抽出量(ポリマー10g/クロロホルム200mL、ソックスレー抽出5時間処理時の残差量から算出)が0.5重量%以下であることが必要である。
本発明で用いられるPPS樹脂の重合度の指標となる粘度には特に制限はないが、優れた靭性と被覆成形加工性を付与する観点から、300℃、剪断速度1000/秒の条件下で測定された溶融粘度が5〜1000Pa・sの範囲が好ましく、更には10〜300Pa・sの範囲がより好ましく、20〜120Pa・sの範囲がより好ましい。
本発明で用いるPPS樹脂は、上記範囲外のPPS樹脂をブレンドすることにより、上記範囲内となるように調整して用いてももちろん良い。
上記の特性を有する(a)PPS樹脂は、ポリハロゲン芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で反応させて得られるPPS樹脂を回収、後処理することで高収率で製造することができる。
以下に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について説明するが、まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
[スルフィド化剤]
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
[分子量調節剤]
本発明においては、生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
[重合助剤]
本発明においては、比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩および/または水が好ましく用いられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n (式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これら重合助剤を用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜0.7モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いることは、電線被覆加工性と高靭性が高度にバランスした樹脂組成物を得る上で有効な手段の一つである。その場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.5モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが添加が容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明する。
[前工程]
本発明に用いる(a)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜220℃、好ましくは100〜220℃の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
(a)PPS樹脂の製造方法において、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明は回収方法については、公知の如何なる方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。
この徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要はない。例えば、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは徐冷速度を0.1〜1℃/分とし、その後1℃/分以上の徐冷速度で徐冷する方法を採用してもよい。
本発明は、製造工程に由来する不純物やオリゴマー等の炭化を防ぐため、徐冷してポリマーを析出、回収する工程で得られたPPS樹脂を使用することが好ましい。
[後処理工程]
本発明で用いられる(a)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、PH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のPHは4以上例えばPH4〜8程度となっても良い。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを物理的に除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。本発明において使用するPPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
本発明の熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1に対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい、また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。
有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。
これら酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄は、目的の溶融粘度およびクロロホルム抽出量を有する(a)PPS樹脂が得られる範囲で行われ、これらを適宜組み合わせて行うことも可能である。
本発明において用いる(a)PPS樹脂は、本発明で規定する範囲を満たす限り、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物に配合する(a)PPS樹脂は、組成物を成形品としたときの炭化物の発生を抑制する目的で、有機系低重合度物の指標となるクロロホルム抽出量が0.5重量%未満のものを用いる必要がある。ここで、クロロホルム抽出量は、顆粒或いは粉末のPPS樹脂10gを円筒形濾紙に秤量し、クロロホルム200mlでソックスレー抽出(バス温120℃、5時間)を行い、抽出後のクロロホルムを除去し、残渣量を秤量しポリマー重量あたりで計算した値である。
このようなクロロホルム抽出量が0.5重量%未満となるようなPPS樹脂は、上記の有機溶媒による洗浄などを組みあわせることで得ることができる。(a)PPS樹脂のクロロホルム抽出量は、好ましくは、0.45重量%以下であり、下限は理想的にはゼロであるが、通常は、0.1重量%以上である。
また、本発明で用いる(a)PPS樹脂は、組成物を成形品としたときの耐衝撃性の目標を達成するために熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPS樹脂であることが好ましい。
かくして得られたPPS樹脂は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優れ、電線(またはケーブル)被覆用途に好適に用いることができる樹脂組成物に配合することができる。
(2)オレフィン系樹脂
本発明において用いる(b)オレフィン系樹脂は、(b1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体と、(b2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体を含有するものが好ましく用いられる。
[(b1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体]
本発明で用いる(b1)エポキシ基を有するオレフィン共重合体(エポキシ基含有オレフィン共重合体)としては、オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体が挙げられる。また、主鎖中に二重結合を有するオレフィン系重合体の二重結合部分をエポキシ化した共重合体も使用することができる。
オレフィン系(共)重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入するための官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体が挙げられる。
これらエポキシ基含有成分を導入する方法は特に制限なく、前述の如きα−オレフィンなどとともに共重合せしめたり、オレフィン(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。
エポキシ基を含有する単量体成分の導入量はエポキシ基含有オレフィン系共重合体の原料となる単量体全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。
本発明で特に有用な(b1)エポキシ基含有オレフィン共重合体としては、α−オレフィンとα、β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合成分とするオレフィン系共重合体が好ましく挙げられる。上記α−オレフィンとしては、エチレンが好ましく挙げられる。また、これら共重合体にはさらに、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα,β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステル 、スチレン、アクリロニトリル等を共重合することも可能である。
またかかるオレフィン共重合体はランダム、交互、ブロック、グラフトいずれの共重合様式でも良い。
本発明においては特にα−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを共重合してなるオレフィン共重合体の使用が好ましく、中でも、α−オレフィン60〜99重量%とα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステル1〜40重量%を共重合してなるオレフィン系共重合体が特に好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルとしては、
Rは水素原子または低級アルキル基を示す)で示される化合物であり、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルおよびエタクリル酸グリシジルなどが挙げられるが、中でもメタクリル酸グリシジルが好ましく使用される。
α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルを必須共重合成分とするオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン−1−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体ーg―ポリスチレン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体ーg−アクリロニトリルースチレン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体ーg−PMMA、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。中でも、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が好ましく用いられる。
[(b2)エチレン・α−オレフィン系共重合体]
また、本発明で特に有用な(b2)エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン・α−オレフィン系共重合体は、エチレンおよび炭素数3〜20を有する少なくとも1種以上のα−オレフィンを構成成分とする共重合体である。上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとして、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、 4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも炭素数6から12であるα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の改質効果の一層の向上が見られるためより好ましい。
[オレフィン系樹脂のMFR及び密度]
本発明で用いる(b)オレフィン系樹脂のメルトフローレート(以下MFRと略す。:ASTM D 1238、190℃、2160g荷重)は0.01〜70g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜60g/10分である。MFRが0.01g/10分未満の場合は流動性が悪く、70g/10分を超える場合は成形品の形状によっては衝撃強度が低くなる場合もあるので注意が必要である。
本発明で用いる(b)オレフィン系樹脂の密度は800〜870kg/m3が好ましい。密度が870kg/m3を越えると低温靭性が発現し難く、800kg/m3未満ではハンドリング性が低下するため好ましくない。
[オレフィン系樹脂の添加量]
本発明の(a)PPS樹脂と(b)オレフィン系樹脂の配合割合は、(a)PPS樹脂と(b)オレフィン系樹脂の合計100重量部としたとき、PPS樹脂95〜80重量部、オレフィン系樹脂5〜20重量部であり、好ましくは、PPS樹脂95〜90重量部、オレフィン系樹脂5〜10重量部である。オレフィン系樹脂が5重量部より少なすぎると柔軟性及び耐衝撃性の改良効果が得にくく、逆に、20重量部より多すぎるとPPS樹脂本来の熱安定性、バリア性、耐溶剤性が損なわれるばかりでなく、溶融混練時の増粘が大きくなりすぎる傾向にあるため、好ましくない。
[(b1)と(b2)の配合割合]
更に、本発明においては、上記の如く(b1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体と(b2)エチレン・α−オレフィン系共重合体を併用して用いることが好ましく、その併用割合は、両者の重量比率で1/1〜1/3が好ましい。さらに好ましくは、1/1〜1/2である。
本発明のPPS樹脂組成物は、さらに以下に説明するような酸化防止剤あるいはその他の配合剤、添加剤を配合することが可能である。
1)酸化防止剤
本発明においては、高い耐熱性及び熱安定性を保持するために、(a)および(b)成分の合計100重量部に対して、フェノール系、リン系化合物の中から選ばれた1種以上の酸化防止剤を含有せしめることが好ましい。かかる酸化防止剤の配合量は、耐熱改良効果の点からは0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましく、成形時に発生するガス成分の観点からは、5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系酸化防止剤を併用して使用することは、特に耐熱性及び熱安定性保持効果が大きく好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられ、具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。
中でも、エステル型高分子ヒンダードフェノールタイプが好ましく、具体的には、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが好ましく用いられる。
次にリン系酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,5−ジーブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。
中でも、PPS樹脂のコンパウンド中に酸化防止剤の揮発や分解を少なくするために、酸化防止剤の融点が高いものが好ましく、具体的にはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリト−ル−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどが好ましく用いられる。
2)難燃剤
本発明において、発明の効果を損なわない範囲で樹脂組成物の難燃性を改良するため難燃剤を配合しても良い。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系難燃剤 、ブロム系難燃剤 、塩素系難燃剤 、燐系難燃剤 、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤等が挙げられるが、これらの中でも燐系難燃剤が好ましい。
燐系難燃剤 としては、燐原子を有する化合物であれば特に制限されず、赤燐、有機燐化合物、例えば、燐酸エステル、ホスホン酸とその誘導体(塩も含む)、ホスフィン酸とその誘導体(塩も含む)、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、ビホスフィン、ホスホニウム塩、ホスファゼン、ホスファフェナントレン誘導体、無機系燐酸塩等が挙げられる。
かかる難燃剤成分の含有量は、樹脂組成物全体の50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下の範囲が選択される。
3)耐摩耗性向上剤
本発明において、発明の効果を損なわない範囲で樹脂組成物の耐摩耗性を向上させる観点から、ポリテトラフルオロエテレン、エチレン−テトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、シリコーンオイル等を添加しても良い。かかる添加剤の添加量は通常樹脂組成物全体の0.1〜10重量%の範囲が選択される。
4)その他の添加物
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、オレフィン系樹脂以外の樹脂を添加することが可能である。例えば、柔軟性の高い熱可塑性樹脂を少量添加することにより柔軟性及び耐衝撃性を更に改良することが可能である。但し、この量が組成物全体50重量%を超えるとPPS樹脂本来の特徴が損なわれるため好ましくなく、特に30重量%以下の添加が好ましく使用される。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は何れも組成物全体の20重量%を越えるとPPS樹脂本来の特性が損なわれるため好ましくなく、10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の添加がよい。
本発明において、有機シランなどのカップリング剤を配合することは、絶縁皮膜製膜時に押出機内で滞留しているPPS樹脂組成物の溶融粘度を増粘させてしまい、製膜加工に適した溶融粘度の範囲外となりやすくなるため好ましくない。本発明のPPS樹脂組成物には、カップリング剤を含まないことが好ましい。
本発明の方法により得られるPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で充填材を配合して使用することも可能である。かかる充填材の具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはタルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。
[PPS樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、(a)PPS樹脂、(b)オレフィン系樹脂およびその他の成分を溶融混練することで得られる。混練は、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に供給してPPS樹脂の融解ピーク温度+5〜60℃の加工温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。具体的には、2軸押出機を使用して、混合時の樹脂温度がPPS樹脂の融解ピーク温度+10〜20℃となるように混練する方法などを好ましく用いることができる。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することも勿論可能である。
本発明のPPS樹脂組成物は後述するとおりMFRが特定の範囲であることが必要であるが、溶融混練時の溶融混練強度を制御することで、得られる樹脂組成物のMFRを制御することができる。ここで、溶融混練強度の制御方法としては、混練温度、混練速度、2軸押出機のスクリューアレンジの最適化などがあげられる。
[PPS樹脂組成物のMFR]
本発明のPPS樹脂組成物は、絶縁被膜用途に適した加工性を有するために、
PPS樹脂組成物の摂氏330度、荷重2160gにおけるMFR1が110〜160g/10分であることが重要である。ここでMFR1は、ISO1183に準拠し、メルトインデクサーを用いてPPS樹脂組成物5gを摂氏330度、荷重1000gで1分間予備加熱し、摂氏330度、荷重2160gで測定した値である。MFR1は、好ましくは、115〜140g/10分である。MFR1が110g/10分未満では、成形加工性におとり、160g/10分を越えると、膜厚がうすい絶縁皮膜などを成形するのが困難となる場合がある。
また、本発明のPPS樹脂組成物は、上記MFR1と、PPS樹脂組成物を摂氏330度で2時間加熱した後の摂氏330度、荷重2160gで測定したMFR2が前記MFR1と下記(1)式の関係を満たすことが重要である。
0.7 < (MFR1÷MFR2) < 1.6・・・(1)
(MFR1÷MFR2)の値が(1)式の範囲をはずれる樹脂組成物の場合は、樹脂組成物の滞留安定性が不足しており、絶縁皮膜などを成形する際の安定性が悪くなる。(MFR1÷MFR2)の値は、好ましくは、0.8〜1.3であり、さらに好ましくは、0.9〜1.1,特に好ましくは、0.95〜1.05の範囲である。
[PPS樹脂組成物の用途]
本発明のPPS樹脂組成物は、PPSが本来有する優れた特性に加え、炭化物が少なく膜厚の薄い均質な絶縁皮膜を、押出し法を用いて製膜することができるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を得ることができる。
本発明にポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、膜厚が70μm以下の絶縁皮膜に適しており、膜厚50μm以下の場合に特に適している。絶縁皮膜の膜厚の下限は10μm以上である。
絶縁皮膜の膜厚については、絶縁皮膜を施した導体の断面を顕微鏡などを用い、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物層の厚みを測定する。
かかる絶縁皮膜の成形方法については特に制限は無いが、PPS樹脂組成物を摂氏300度〜摂氏330度で溶融し、絶縁皮膜を施したい導体に塗付し絶縁皮膜を形成する方法でも、電線(またはケーブル)を取り囲んで押出しし、電線(またはケーブル)を被覆する方法でもよい。
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いた絶縁皮膜は、その絶縁性能が発揮できれば自動車、電気電子一般用途問わず使用することができる。
以下の実施例において、材料特性は下記の方法により行った。
[MFR]
ISO1183に準拠し、メルトインデクサーを用いてPPS樹脂、またはPPS樹脂組成物5gを摂氏330度、荷重1000gで1分間予備加熱し、摂氏330度、荷重2160gのMFRをMFR1とし、同様に、摂氏330度、2時間加熱した後の摂氏330度、2時間加熱した後のMFRをMFR2とした。
[クルロホルム抽出量]
顆粒或いは粉末のPPS樹脂10gを円筒形濾紙に秤量し、クロロホルム200mlでソックスレー抽出(バス温120℃、5時間)を行った。抽出後のクロロホルムを除去し、残渣量を秤量しポリマー重量あたりで計算した。
[炭化物の測定]
PPS樹脂組成物5gをメルトインデクサーの内部で摂氏330度2時間加熱し、溶融樹脂を取り出し冷却する。冷却後、摂氏330度で加熱したプレス機を用いて厚みが50μmのシートを作成し、そのシート中の炭化物の有無を確認した。
[絶縁皮膜の製膜方法]
導体として、幅2mm、厚み0.5mmの角型銅線を用い、該銅線の外周に後述するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を押出し被覆し、膜厚が50μmの単層の絶縁皮膜を作成した。
[押出機負荷]
皮膜製膜中に押し出し機に過負荷が発生したかどうかを確認した。
[平滑性]
皮膜の平滑性は、膜厚均一性と相関があるため、膜厚均一性を確認する指標として評価した。平滑性の判断においては、絶縁皮膜の表面に照明を照射し、表面からの反射を目視することによる確認した。
表面が平滑なものは膜厚が均一とみなすことができるため「◎:優」、肉眼で僅かにざらつき見えるものは均一性が「◎:優」よりもおとるため「○:可」、凹凸が目立つものは均一性に劣るとみなし「×:不可」とした。
[引張伸び]
ISO1A型試験片を用い、ISO527−1およびISO527−2に順じ、引張速度毎分50mmの条件で破断伸びを測定した。
[皮膜切れ]
押出し法を用いて、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を溶融させて、膜厚70μmとなるように導線を被覆し、長さ1000mの被覆電線を作成する。作成した被覆電線を円筒形状のボビンに巻き取り、その際の断線の有無を確認した。
[PPS1の調整]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム0.513kg(6.25モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.34kg(70.32モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.67kg(148.4モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、MFRが600g/10分、クロロホルム抽出量が0.43重量%のPPS1を得た。
[PPS2の調整]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.10モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.45kg(71.07モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、MFRが600g/10分、クロロホルム抽出量が4.2重量%のPPS2を得た。
[PPS3の調整]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.1モル)、及びイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水9.77kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.42kg(70.86モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.40kg(133モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、MFRが300g/10分、クロロホルム抽出量が0.27重量%のPPS2を得た。
[PPS4の調整]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム1.89kg(23.10モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.45kg(71.07モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを酸素濃度1%、220℃、12時間で熱酸化処理おこない、MFRが600g/10分、クロロホルム抽出量が3.9%のPPS4を得た。
[PPS5の調整]
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム861.00g(10.5モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p-ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を酸素気流下、200℃で熱処理しMFRが600g/10分、クロロホルム抽出量が0.42%のPPS5を得た。
[実施例1〜4]
表1に示す各成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、同方向2軸押出機でシリンダー温度300℃に設定しそれぞれ表1記載の混練強度で溶融混練しストランドカッターによりPPS樹脂組成物のペレットを作成した。得られたPPS樹脂組成物を用いて、表1記載の評価をおこなった。結果を表1にまとめて記載する。
[比較例1、2]
クロロホルム抽出量が0.5重量%以上のポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた以外は、実施例1乃至4と同様の評価を行った。皮膜中に炭化物が発生してしまった。
[比較例3]
PPS3を使用した以外は、実施例1乃至4と同様の評価を行った。押出機への負荷が大きく、膜厚均一性に劣る材料であり、電線切れが発生した。
[比較例4]
架橋反応剤を添加した以外は、実施例1乃至4と同様の評価を行った。押出機のへの負荷が大きく、膜厚均一性に劣る材料であった。滞留後のMFR2が大きく加工中増粘しているため、適切なMFRの範囲を外れてしまったためと考える。
[比較例5]
使用したオレフィン樹脂がオレフィン1のみであること以外は実施例1乃至4と同様の評価を行った。電線巻取り時評価時に電線切れが発生した。膜厚は均一であったことから、材料自身の靭性が不足していることが原因と考える。

Claims (5)

  1. (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂と、(b)オレフィン系樹脂の合計を100重量部として、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂95〜80重量部、(b)オレフィン系樹脂5〜20重量部を配合してなる樹脂組成物であって、(a)ポリフェニレンスルフィド樹脂のクロロホルム抽出量が0.5重量%未満であり、ISO1183に準拠した330度、荷重2160gの条件で測定したMFRが600g/min以上であり、(b)オレフィン系樹脂は(b1)エポキシ基を有するオレフィン系共重合体と(b2)エチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンとの共重合体を重量比率1/1〜1/3の割合で含有し、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物はカップリング剤を含まず、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の摂氏330度、荷重2160gにおけるMFR1が110〜160g/10分であって、前記ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を摂氏330度で2時間加熱した後の摂氏330度、荷重2160gで測定したMFR2が前記MFR1と下記(1)式の関係を満たすことを特徴するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
    0.7 < (MFR1÷MFR2) < 1.6・・・(1)
  2. (a)ポリフェニレンスルフィド樹脂が直鎖型であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる成形品。
  4. 成形品が絶縁皮膜であることを特徴とする請求項に記載の成形品。
  5. 絶縁皮膜の膜厚が10μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項に記載の成形品。
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